説明

レベルシフト回路

【課題】バッテリの電源投入時等の電源電圧の急激なオーバーシュートに対する耐性を向上させるレベルシフト回路を提供する。
【解決手段】レベルシフト回路1は、バッテリからの高電圧レベルの入力信号VINを入力するレベルシフト部10と、レベルシフト部10の中間信号Vmを一定以下に制限するクランプ部20と、中間信号をより低電圧のCMOSレベルで出力する出力バッファ部30とを備える。出力バッファ部30の初段においてpMOSトランジスタ31の負荷を抵抗32とすることにより、電源電圧のオーバーシュートに対する耐性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベルシフト回路に関し、特にバッテリによる高電圧レベルの信号をより低電圧レベルの信号に変換するレベルシフト回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、エンジン制御、自動変速制御を始め空調、電装品に至るまで様々な箇所で電子制御化が高度に進んでいる。一般にエンジンや電装品等の制御対象機器に用いられるスイッチやセンサは、車両に搭載されるバッテリからの12V(又は24V)の電源により駆動される。その一方でECU(エンジンコントロールユニット)その他の電子制御装置はCMOSやTTL等のロジックレベルで動作し、例えば5Vの電源により駆動される。このような電源電圧の異なる機器間で信号の入出力を確実に行うには、信号レベルを変換するレベルシフト回路が必要となる。
【0003】
図5は、12Vのバッテリで駆動される高電圧レベルの信号をより低電圧レベルに変換するレベルシフト回路の従来例である。この従来のレベルシフト回路は、高電圧レベルの信号を入力するレベルシフト部51と、このレベルシフト部51が出力する信号の電圧を一定以下にクランプするクランプダイオード52と、前記信号を5Vレベルの信号として出力する出力バッファ部53とを備えている。従来の出力バッファ部53は、例えばCMOSレベルの信号を出力するために,単段又は多段のCMOSインバータ回路により構成される(例えば特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−200030号公報
【特許文献2】特開2005−269216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示される従来のレベルシフト回路は、レベルシフト部51が変換した信号の電圧をクランプダイオード52が最大で5.6Vにクランプすることにより、出力バッファ部53にバッテリ系の高電圧が直接印加しないよう保護が図られている。しかし、車両内においてバッテリ系の電源ラインVBB(12V)とロジック系の電源ラインVCC(5V)とが接近して配線されることにより、これらのライン間に浮遊容量が存在し、また車体フレームを介して電気的に導通するグランド間にもインダクタ成分が少なからず存在する。
【0006】
バッテリの電源投入時や接続時において12Vの電源ラインVBBの電圧が急激に変化すると、上述の浮遊容量やインダクタ成分の存在により電源ラインVCCの電圧が誘導されて一時的に5V以上にオーバーシュートする場合がある。その結果、クランプダイオード52によるクランプ電圧が5.6V以上となり、出力バッファ部53のうち特にグランドに接続する初段のnMOSトランジスタQのゲートに耐圧以上の電圧が印加されて素子破壊を招くおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、バッテリの電源投入時等の電源電圧の急激なオーバーシュートに対する耐性を向上させるレベルシフト回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)かかる目的を達成するために本発明のレベルシフト回路は、第1の電圧電源で駆動され入力信号を入力してレベルシフトした中間信号を出力するレベルシフト部と、レベルシフトされた前記中間信号の振幅を制限するクランプ部と、前記第1の電源電圧よりも低電圧である第2の電圧電源にソースが接続され、前記中間信号をゲート入力するpMOSトランジスタと、前記pMOSトランジスタのドレインとグランドとの間に接続される抵抗と、を備える。
【0009】
(2)また、本発明のレベルシフト回路は、前記第2の電圧電源で駆動され、前記pMOSトランジスタのドレイン出力を反転させて出力するCMOSインバータ回路を更に備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明のレベルシフト回路は、簡素な構成により、バッテリの電源投入時等の電圧の急激なオーバーシュートに対する耐性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1の実施の形態によるレベルシフト回路の回路図である。
【図2】図2は、第1の実施の形態によるレベルシフト回路の直流特性をグラフで示す図である。
【図3】図3は、第2の実施の形態によるレベルシフト回路の回路図である。
【図4】図4は、第2の実施の形態によるレベルシフト回路の直流特性をグラフで示す図である。
【図5】図5は、従来技術によるレベルシフト回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態によるレベルシフト回路1の回路図である。このレベルシフト回路1は、レベルシフト部10と、クランプ部20と、出力バッファ部30とを備えている。
【0013】
レベルシフト部10は、12Vレンジの振幅を有するバッテリ系の入力信号VINが入力される入力バッファであり、例えば定電流源11と、pnpバイポーラトランジスタである入力トランジスタ12と、トランジスタ12のベースに接続された入力抵抗14と、同じくpnpバイポーラトランジスタである入力トランジスタ13と、入力トランジスタ13のコレクタに接続されたnMOSトランジスタ16とからなる差動増幅回路を入力段に備えている。
【0014】
2つの入力トランジスタ12,13は、互いに同一特性を有し、逆耐圧特性を確保する上ではラテラル型pnpトランジスタであることが望ましい。また、入力トランジスタ12,13は、互いにエミッタ結合され、12Vの電源ラインVBBに接続した定電流源11からの一定のバイアス電流が各エミッタに供給される。入力信号VINがベースに入力される側の入力トランジスタ12のコレクタは、直接、フレームグランド(以下、単に「グランド」という。)に接続され、他方、nMOSトランジスタ16をコレクタ負荷とする側の入力トランジスタ13のベースとコレクタとは短絡している。つまり、レベルシフト部10が出力する信号(これを「中間信号Vm」という)のグランドに対する電位が、入力信号VINの同相成分に相当する電位となるように回路構成されている。また、入力段をバイポーラトランジスタによる差動増幅回路で構成することにより、スイッチングの高速化が図られている。
【0015】
入力トランジスタ13のコレクタ負荷であるnMOSトランジスタ16は、同じくnMOSトランジスタ17とともにカレントミラー回路を構成している。ゲートドレイン間が短絡する側のnMOSトランジスタ17のドレインには定電流源15が接続され、常時一定のドレイン電流が供給される。このように入力トランジスタ13の負荷をアクティブ負荷で構成することにより、入力信号VINに対する電力増幅率を向上させている。
【0016】
クランプ部20は、npnバイポーラトランジスタ21のベースとエミッタとを短絡したダイオード接続により構成される。npnバイポーラトランジスタ21のコレクタ(カソード)は5Vの電源ラインVCCに接続し、エミッタ(アノード)はレベルシフト部10の出力(中間信号Vm)のノードに接続している。すなわち、クランプ部20は、レベルシフト部10が出力する中間信号Vmの振幅を電源ラインVCCの5Vにダイオード順方向電圧降下分0.6Vを加えた約5.6Vにクランプしてそれ以下に制限するように構成されている。
【0017】
出力バッファ部30は、その初段にpMOSトランジスタ31と、pMOSトランジスタ31のドレインとグランドとの間に接続された抵抗32とを備えている。pMOSトランジスタ31のゲートには、レベルシフト部10からの中間信号Vmが入力される。pMOSトランジスタ31のソースには、5Vの電源ラインVCCが接続される。抵抗32の一端が接続されたpMOSトランジスタ31のドレイン出力は、5V系の信号レベルに変換された反転出力VNOUTとして外部に出力される。
【0018】
出力バッファ部30の後段は、それぞれのドレインが結合したpMOSトランジスタ33とnMOSトランジスタ34とを備えている。pMOSトランジスタ33のソースは5Vの電源ラインVCCに接続し、nMOSトランジスタ34のソースはグランドに接続している。このように、出力バッファ部30の後段はCMOSインバータ回路として構成され、pMOSトランジスタ33及びnMOSトランジスタ34の各ゲートに入力される反転出力VNOUTを反転して5VのCMOSレベルの信号に変換した非反転出力VPOUTを各ドレインを介して外部出力するよう構成されている。
【0019】
[第1の実施の形態によるレベルシフト回路の動作]
図2は、第1の実施の形態によるレベルシフト回路1の直流特性をグラフで示す図である。レベルシフト部10に低電位(L)の入力信号VINが入力されると、入力トランジスタ12を流れる電流のほうが入力トランジスタ13を流れるよりも大きくなる。したがって、入力トランジスタ13のコレクタ出力である中間信号Vmの電位が下がる。入力トランジスタ13のベースとコレクタとは短絡しているので、中間信号Vmの電位は、入力トランジスタ12のベース電流による入力抵抗14の電圧降下分を無視すれば、入力信号VINとほぼ同電位となる。
【0020】
入力信号VINが低電位(L)のときには、出力バッファ部30のpMOSトランジスタ31はオンし、抵抗32にドレイン電流が多く流れるので反転出力VNOUTは高電位(H)となる。また、pMOSトランジスタ33はオフし、nMOSトランジスタ34はオンするため、非反転出力VPOUTは低電位(L)となる。
【0021】
入力信号VINが0〜5.6Vの範囲では、図2に示すようにレベルシフト部10が出力する中間信号Vmは、入力信号のVINとほぼ同電位で変化する。入力信号VINが5.6V以上になると、入力トランジスタ13のコレクタ電流がクランプ部20を介して電源ラインVCCに流れるため、中間信号Vmの振幅が5.6Vに保持される。
【0022】
また、入力信号VINが高電位(H)のときには、入力トランジスタ13を流れる電流のほうが入力トランジスタ12を流れるよりも大きくなる。したがって、中間信号Vmの電位が上がる。このとき、出力バッファ部30のpMOSトランジスタ31はオフし、抵抗32へのドレイン電流が少なくなるので反転出力VNOUTは低電位(L)となる。さらに、pMOSトランジスタ33はオンし、nMOSトランジスタ34はオフするため、非反転出力VPOUTは高電位(H)となる。
【0023】
このように、本実施の形態のレベルシフト回路1は、12Vのバッテリ系の入力信号VINをより低い5Vの信号レベルに変換して反転出力VNOUT及び非反転出力VPOUTを出力する。
【0024】
また、出力バッファ部30の初段を従来のnMOSトランジスタに換えて抵抗32をpMOSトランジスタ31の負荷抵抗とした。これにより、バッテリの電源投入時や接続時において電源ラインVCCの電圧がオーバーシュートし、同時に中間信号Vmの電位が5.6V以上となっても、pMOSトランジスタ31のゲートソース間電圧は0.6Vに保たれ、pMOSトランジスタ31及び抵抗32等に対する過電圧の印加や過電流が流れるのを防止する。したがって、回路の耐性及び信頼性を向上させることができる。
【0025】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の第2の実施の形態によるレベルシフト回路2の回路図である。なお、図3において、上述の第1の実施の形態と共通又は対応する構成要素に対し共通の符号を使用している。また、ここでは、第1の実施の形態と相違し又は追加した構成についてのみ説明し、その他共通する構成要素については第1の実施の形態における説明により参照される。
【0026】
この第2の実施の形態によるレベルシフト回路2は、レベルシフト部10と、クランプ部20と、出力バッファ部40とを備えている。出力バッファ部40は、初段にnMOSトランジスタ41と、nMOSトランジスタ41のソースとグランドとの間に接続された抵抗42とを備えている。nMOSトランジスタ41のゲートには、レベルシフト部10からの中間信号Vmが入力される。nMOSトランジスタ41のドレインには、5Vの電源ラインVCCが接続される。また、抵抗42の一端が接続されたnMOSトランジスタ41のソース出力は、5V系の信号レベルに変換された非反転出力VPOUTとして外部に出力される。なお、出力バッファ部40の初段を上述のnMOSトランジスタ41に換えてnpnバイポーラトランジスタ(不図示)を用いて構成してもよい。
【0027】
出力バッファ部40の後段は、それぞれのドレインが結合したpMOSトランジスタ43とnMOSトランジスタ44とを備えている。pMOSトランジスタ43のソースは5Vの電源ラインVCCに接続し、nMOSトランジスタ44のソースはグランドに接続している。このように、出力バッファ部40の後段はCMOSインバータ回路として構成され、pMOSトランジスタ43及びnMOSトランジスタ44の各ゲートに入力される非反転出力VPOUTを反転して5VのCMOSレベルの信号に変換した反転出力VNOUTを各ドレインを介して外部出力するよう構成されている。
【0028】
[第2の実施の形態によるレベルシフト回路の動作]
図4は、第2の実施の形態によるレベルシフト回路2の直流特性をグラフで示す図である。入力信号VINが0〜5.6Vの範囲では、レベルシフト部10で変換される中間信号Vmの電位は、入力信号のVINに従ってほぼ同一電位で変動する。入力信号VINが5.6V以上になると、入力トランジスタ13のコレクタ電流がクランプ部20を介して電源ラインVCCに流れ、これにより中間信号Vmが5.6Vにクランプされる。
【0029】
レベルシフト部10に低電位(L)の入力信号VINが入力されると、出力バッファ部40のnMOSトランジスタ41がオフし、抵抗42に電流が流れないので非反転出力VPOUTは低電位(L)となる。また、pMOSトランジスタ43はオンし、nMOSトランジスタ44はオフするため、反転出力VNOUTは高電位(H)となる。
【0030】
入力信号VINが低電位から高電位に変化するに従って、出力バッファ部40の非反転出力VPOUTの電位は、中間信号Vmの電位(=入力信号VINの電位、但し5.6V以下の範囲)からnMOSトランジスタ41のゲートソース間電圧だけ降下した電位で変化する。すなわち、レベルシフト部10に高電位(H)の入力信号VINが入力されると、出力バッファ部40のnMOSトランジスタ41がオンし、非反転出力VPOUTは高電位(H)となる。同時に、pMOSトランジスタ43はオフし、nMOSトランジスタ44はオンするため、反転出力VNOUTは低電位(L)となる。
【0031】
このように、本実施の形態のレベルシフト回路2は、12Vのバッテリ系の入力信号VINをより低い5Vの信号レベルに変換して非反転出力VPOUT及び反転出力VNOUTを出力する。特に入力信号VINが0〜5.6Vの範囲では、線形性を有して非反転出力VPOUTを入力信号VINに追従させて変化させることができる。
【0032】
さらに、出力バッファ部40の初段をnMOSトランジスタ41によるソースフォロアとしたので、バッテリの電源投入時や接続時において電源ラインVCCの電圧がオーバーシュートしてもnMOSトランジスタ41のゲートソース間電圧だけレベルダウンした電圧が抵抗42に印加されるだけであり、回路の耐性が確保される。
【0033】
以上、本発明に好適な実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…レベルシフト回路、10…レベルシフト部、11…定電流源、12,13…入力トランジスタ、14…入力抵抗、15…定電流源、16,17…nMOSトランジスタ
20…クランプ部、21…npnバイポーラトランジスタ
30…出力バッファ部、31…pMOSトランジスタ、32…抵抗、33…pMOSトランジスタ、34…nMOSトランジスタ
40…出力バッファ部、41…nMOSトランジスタ、42…抵抗、43…pMOSトランジスタ、44…nMOSトランジスタ
51…レベルシフト部、52…クランプダイオード、53…出力バッファ部
Q…nMOSトランジスタ、VBB…電源ライン(12V)、VCC…電源ライン(5V)、VIN…入力信号、Vm…中間信号、VNOUT…反転出力、VPOUT…非反転出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電圧電源で駆動され入力信号を入力してレベルシフトした中間信号を出力するレベルシフト部と、
レベルシフトされた前記中間信号の振幅を制限するクランプ部と、
前記第1の電源電圧よりも低電圧である第2の電圧電源にソースが接続され、前記中間信号をゲート入力するpMOSトランジスタと、
前記pMOSトランジスタのドレインとグランドとの間に接続される抵抗と、を備えるレベルシフト回路。
【請求項2】
前記第2の電圧電源で駆動され、前記pMOSトランジスタのドレイン出力を反転させて出力するCMOSインバータ回路を更に備える請求項1に記載のレベルシフト回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−155497(P2011−155497A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15788(P2010−15788)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】