説明

レーザ画像計測装置

【課題】環境変化に左右されない正確な測距値を取得可能なレーザ画像計測装置を得る。
【解決手段】レーザ光の発振時間と反射光の受光時間との時間差に基づき対象物までの距離を導出するために、基準となる変調信号Mを生成する基準信号発生部20と、変調信号Mにより変調されたレーザ光を出射するレーザ光送信部30と、レーザ光を走査して整形された送信ビームLを出射するレーザ光走査部40と、反射光を受信信号に変換する受信部50と、レーザ光走査部40内のレーザ光走査光学系5から基準固定距離に設置されて送信ビームLが照射される基準反射板6と、受信信号から基準反射板6および対象物の距離値Dzを導出する信号処理部60と、を備える。レーザ光走査部40および受信部50は、基準反射板6からの反射光を、対象物に対する距離測定と同一の光路で送受信する。信号処理部60は、基準反射板6の距離変動量ΔDzから、対象物の距離値を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光の発振時間と対象物による反射光の受光時間との時間差に基づいて、対象物までの距離を導出するレーザ画像計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ画像計測装置としては、装置内部に一定距離の基準点を設け、測距値の校正を行うとともに、固定位置に設置した受光器で走査光を受信し、走査幅の校正を行うものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−10636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレーザ画像計測装置は、測距値校正用の受信経路と対象物測距用の受信経路とが異なっているので、装置の環境条件(温度や振動など)の変化により、光学的経路や電気的特性に差が生じ、測距値に誤差が生じるという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、装置の環境条件に変化がある場合を想定して、環境変化に左右されずに、正確な測距値を得ることのできるレーザ画像計測装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るレーザ画像計測装置は、レーザ光の発振時間と対象物による反射光の受光時間との時間差に基づいて、対象物までの距離を導出するレーザ画像計測装置であって、基準となる変調信号を生成する基準信号発生部と、変調信号により変調されたレーザ光を出射するレーザ光送信部と、レーザ光を走査して整形された送信ビームを出射するレーザ光走査部と、反射光を受信信号に変換する受信部と、レーザ光走査部内のレーザ光走査光学系から基準固定距離に設置されて送信ビームが照射される基準反射板と、受信信号から基準反射板および対象物の距離値を導出する信号処理部と、を備え、レーザ光走査部および受信部は、基準反射板からの反射光を、対象物に対する距離測定と同一の光路で送受信し、信号処理部は、基準反射板の距離変動量から、対象物の距離値を補正するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、同一の送信受信経路(同一の光学的経路、同一の受光器やアンプ)により測距値の校正と対象物の測距とを行うので、レーザ画像計測装置の環境条件の変化に対して左右されない、正確な測距値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーザ画像計測装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1において環境変化に起因して生じる距離データの誤差を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1による送信ビームの変形例を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1による位相検波器の変形例を用いた場合の取得電圧の経時特性を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1の変形例における補正処理を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るレーザ画像計測装置の全体構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2による走査幅補正信号の生成処理を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態2における送信ビームの走査領域に対する基準反射板の具体的な配置例を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態2における送信ビームの走査角の変化特性を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態2の変形例によるレーザ画像計測装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、図1および図2を参照しながら、この発明の実施の形態1について説明する。
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーザ画像計測装置の全体構成を示すブロック図である。
図2は環境変化(経時変化)に起因して生じる距離データの誤差(後述する距離変動量ΔDz)を示す説明図である。
【0010】
図1において、レーザ画像計測装置は、発振器1および分配器2から構成される基準信号発生部20と、レーザ装置3および変調器4から構成されるレーザ光送信部30と、レーザ光走査光学系5から構成されるレーザ光走査部40と、基準反射板6、受信光学系7および受光器8から構成される受信部50と、位相検波器9、距離演算装置10、距離補正装置11および3次元画像処理装置12から構成される信号処理部60と、を備えている。
【0011】
基準信号発生部20において、発振器1は、基準となる正弦波の変調信号Mを生成し、分配器2は、発振器1からの変調信号Mを2つに分岐して変調器4および位相検波器9に入力する。
【0012】
レーザ光送信部30において、レーザ装置3はレーザ光を出射し、変調器4は、分配器2からの変調信号Mに基づき、レーザ光に対して変調をかける。
レーザ光走査光学系5は、空間中にレーザ光を照射して走査し、送信ビームLの形状を整形する。
【0013】
受信部50において、受信光学系7は、対象物などにより反射されたレーザ光(反射光)を受信して、受光器8上に集光する。受光器8は、受信された反射光を受信信号(電気信号)に変換して信号処理部60に入力する。
【0014】
基準反射板6は、送信ビームLの走査端部に位置して反射光を発生するように、レーザ光走査部40内のレーザ光走査光学系5から基準固定距離に設置されており、レーザ光の送信ビームLを反射して、反射光を受信部50に入力する。
なお、図1では、基準反射板6を送信ビームLの一端に1個のみ設置したが、たとえば送信ビームLの走査両端部に設置するなど、任意数の基準反射板6を設置することができる。
【0015】
位相検波器9は、基準信号発生部20内の分配器2からの変調信号Mと、受信部50内の受光器8からの受信信号とを入力信号として位相検波を行い、位相信号P(電気信号)を生成する。
距離演算装置10は、位相検波器9からの位相信号Pに基づき、対象物および基準反射板6の距離値Dz(測距値)を算出する。
【0016】
距離補正装置11は、距離演算装置10で算出された基準反射板6の距離値Dzを補正し、補正距離値Dz’を生成する。
3次元画像処理装置12は、距離補正装置11からの補正距離値Dz’と、レーザ光走査光学系5からの走査角信号θsとに基づき、3次元画像Gを生成する。
【0017】
次に、図2を参照しながら、図1に示したこの発明の実施の形態1に係るレーザ画像計測装置の動作について説明する。
まず、レーザ光送信部30内の変調器4は、基準信号発生部20内の発振器1からの変調信号Mに基づき、レーザ装置3から出射されたレーザ光に対して強度変調をかけた後、レーザ光走査部40に出射する。
続いて、レーザ光走査部40内のレーザ光走査光学系5は、変調器4から出射されたレーザ光を1次元走査して、送信ビームLに整形する。
【0018】
受信部50は、対象物からの反射光を、受信視野Rを有する受信光学系7により集光した後、受光器8により受信信号に変換して信号処理部60に入力する。
なお、ここでは、理解し易いように、送信ビームLと受信視野Rとを便宜的に離散表示しているが、実際には、送信ビームLおよび受信視野Rの各端部は一致しているものとする。
【0019】
信号処理部60内の位相検波器9は、受信信号に対し、基準となる変調信号Mと位相検波を行い、反射光の受信強度(実施の形態2とともに後述する強度信号A)と、変調信号Mと受信信号との位相差に相当する位相信号Pとを生成する。なお、この発明の実施の形態1においては、位相検波器9からの強度信号は、特に用いられていない。
【0020】
距離演算装置10は、位相信号Pに基づき対象物の視線方向の距離値Dzを算出する。
具体的には、距離値Dzは、光速c、位相差Δφ、変調信号Mの周波数fを用いて、以下の式(1)により導出される。
【0021】
Dz=(c×Δφ)/(4×π×f) ・・・(1)
【0022】
距離補正装置11は、時刻tにおける基準反射板6の距離値Dzと初回の基準反射板6の距離値Dzとの距離変動量ΔDz(=Dz−Dz)を算出し、距離値Dzから距離変動量ΔDzを差分することにより、補正距離値Dz’(=Dz−ΔDz)を導出する。
【0023】
その後、3次元画像処理装置12は、レーザ光走査光学系5で得られた走査角信号θsと、距離補正装置11で得られた複数の補正距離値Dz’とを用いて、3次元画像Gを生成する。
【0024】
ここで、基準反射板6の位置は固定されているので、一般的に、時刻tにおける基準反射板6の距離値Dzと、初回の基準反射板6の距離値Dzとは同一値であり、距離変動量ΔDzは「0」である。
しかし、装置の環境変化(温度変化や振動など)が生じると、レーザ発振からレーザ受光までの光路長の変化や電気的特性の変化が生じて、位相信号Pに遅延が生じる場合がある。これにより、図2に示すように、時刻tにおける基準反射板6の距離値Dzと初回の基準反射板6の距離値Dzとの間に誤差(距離変動量ΔDz)が生じる。
【0025】
この発明の実施の形態1に係るレーザ画像計測装置においては、基準固定距離の基準反射板6からの反射光を、対象物に対する距離測定と同一の光路(レーザ光走査部40および受信部50)で送受信するので、装置の環境変化(温度変化や振動など)により生じる距離値の誤差が、対象物の距離値Dzと基準反射板6の距離値Dzとに関して、それぞれ同一値となる。
したがって、基準反射板6の距離変動量ΔDzを用いて対象物の距離値Dzを差分することにより、環境変化に対して左右されない高精度の距離測定が可能となる。
【0026】
次に、図3〜図5を参照しながら、この発明の実施の形態1(図1)の変形例について説明する。
図3は送信ビームLの具体例を示す説明図であり、図3(a)はペンシルビームの1次元走査を示し、図3(b)および図3(c)はペンシルビームの2次元走査を示し、図3(d)はファンビームの1次元走査を示している。
【0027】
図4は位相検波器9に代えて時間差計測回路を用いた場合の取得電圧の経時特性を示す説明図である。
また、図5はレーザ画像計測装置が移動する場合に生じる距離差の補正処理を示す説明図である。
【0028】
図1においては、レーザ光送信部30において変調器4を用いたが、変調器4を用いてレーザ光に強度変調をかけるのではなく、レーザ装置3に変調信号Mを入力して、変調レーザ光を直接得るように構成してもよい。たとえば、レーザ装置3としてレーザダイオードを用い、変調信号Mに同期した駆動電流を注入することにより、変調レーザ光を直接取得することができる。
【0029】
また、レーザ光走査光学系5からの送信ビームLは、図3(a)に示すように、ペンシルビームを照射して1次元走査する場合もあり、図3(b)や図3(c)に示すように、ペンシルビームを2次元走査する場合もあり、図3(d)に示すように、ファンビームを照射して1次元走査する場合もある。
【0030】
また、受信光学系7において、走査せずに受信視野Rを確保する場合を示したが、送信ビームL(レーザ光)と受信視野Rとの両方を同時に走査することにより、図3に示す受信視野Rを確保することもできる。
【0031】
また、基準反射板6は、図1、図3(a)および図3(b)に示すように、レーザ光走査範囲の一部に設置したが、図3(c)や図3(d)に示すように、レーザ光走査範囲の一列に基準反射板6を設置してもよい。
また、図3に示す受信視野Rを複数の受光素子で得る場合には、各受光素子で基準反射板6からの反射光を受光できるように、図3(c)や図3(d)のように基準反射板6を設置することにより、全受光素子での補正を行うことができる。
【0032】
また、変調信号Mを正弦波としたが、変調信号Mは、正弦波でなくパルスであってもよい。この場合、送信系から受信系までのパルスの到達時間を計測して距離を導出するために、信号処理部60内の位相検波器9に代えて、たとえば時間差計測回路を用いればよい。
【0033】
このとき、時間差計測回路として、公知(たとえば、特開2004−117356号公報参照)の時間・電圧変換器を用いた場合には、図4のように、経過時間(環境変化)に対する電圧Vの特性を取得することができる。
【0034】
図4において、たとえば初期には、実線で示すように、ゲート開始時刻t(ゲート電圧Vgのオン時刻)からの時間経過に比例して上昇する電圧Vが生成され、基準反射板6からの反射パルスを受信した時刻tにおいて、電圧Vが生成される。
【0035】
その後、環境変化に対応した基準反射板6の計測距離の変化とともに、ゲート開始時刻tがゲート開始時刻tに変化した場合には、図4内の1点鎖線で示すように、ゲート開始時刻tからの基準反射板6からの反射パルスを受信した時刻tにおいて、電圧Vが生成される。
【0036】
このように、2つ以上のゲートタイミングで距離データを取得することにより、経過時間に対する電圧Vの特性を取得することができる。
つまり、経過時間に対する電圧特性として、時間・電圧変換特性の傾きΔV/Δt(=(V−V)/(t−t))を算出することができる。
【0037】
これにより、温度などによる経過時間に対する電圧特性の変化や、複数の時間・電圧変換器を用いた場合の経過時間に対する電圧特性のばらつき、を補正することができ、環境変化に対して左右されない、高精度の距離測定が可能となる。
【0038】
一方、レーザ画像計測装置が移動体に搭載されている場合など、レーザ画像計測装置と対象物との間隔が変化する場合、特に、ペンシルビームによるラスタースキャンや、ファンビームによるラインスキャンのレーザ走査方式のレーザ画像計測装置の場合には、取得画像内にて複数の距離測定が行われることから、取得画像の各画素の取得時間に相当する距離差が生じる。
【0039】
したがって、この場合、信号処理部60内の距離補正装置11は、図5に示すように、受信視野R内の1箇所以上を、距離値(測距値)Dzの校正領域Z1、Z2とし、取得画像G1、G2ごとの校正領域Z1、Z2における距離値Dzに基づき、レーザ画像計測装置の移動速度Svを導出し、取得画像G1、G2内における各画素の取得時間に相当する距離差を補正する。
【0040】
具体的には、取得画像G1の取得時刻Tにおける距離値Dzと、取得画像G2の取得時刻Tにおける距離値Dzとを用いて、取得画像G1の時間間隔T−Tにおける距離変動量ΔDz(=Dz−Dz)を求め、レーザ画像計測装置の移動速度Sv(=(Dz−Dz)/(T−T))を導出する。
【0041】
次に、信号処理部60内の3次元画像処理装置12は、取得画像G1、G2の各画素における距離測定と、校正領域Z1、Z2での距離測定との時間間隔Δtに基づき、各画素におけるレーザ画像計測装置の位置変動量Δp(=Sv×Δt)を導出する。
その後、取得画像G1、G2から各画素の位置変動量Δpを差分して補正する。
【0042】
この場合、信号処理部60内の3次元画像処理装置12は、レーザ画像計測装置の移動速度Svを導出する手段と、取得画像G1、G2の各画素におけるレーザ画像計測装置の位置変動量Δpを導出する手段と、取得画像G1、G2から各画素の位置変動量Δpを差分する手段とを備えている。
【0043】
これにより、レーザ画像計測装置が移動体に搭載されている場合など、レーザ画像計測装置と対象物との間隔が変化する場合でも、取得画像G1、G2の各画素の取得時間差(T−T)で生じる距離差を補正することができるので、高精度の距離測定が可能となる。
【0044】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1)に係るレーザ画像計測装置は、レーザ光の発振時間と対象物による反射光の受光時間との時間差に基づき、対象物までの距離を導出するために、基準となる変調信号Mを生成する基準信号発生部20と、変調信号Mにより変調されたレーザ光を出射するレーザ光送信部30と、レーザ光を走査して整形された送信ビームLを出射するレーザ光走査部40と、反射光を受信信号に変換する受信部50と、レーザ光走査部40内のレーザ光走査光学系5から基準固定距離に設置されて送信ビームLが照射される基準反射板6と、受信信号から基準反射板6および対象物の距離値Dzを導出する信号処理部60と、を備えている。
【0045】
レーザ光走査部40および受信部50は、基準反射板6からの反射光を、対象物に対する距離測定と同一の光路で送受信し、信号処理部60は、基準反射板6の距離変動量ΔDzから、対象物の距離値Dzを補正する。
すなわち、測距値校正用の一定距離の基準点となる基準反射板6と、対象物からの反射光を受光して受信信号に変換する受信部50と、受信信号から距離値Dzおよび3次元画像Gを算出する信号処理部60とにより、同一の送受信経路(同一の光学的経路、同一の受光器やアンプ)で、距離値Dz(測距値)の校正と、対象物の測距とを行う。
【0046】
また、信号処理部60は、受信信号に基づく取得画像G1、G2内の少なくとも1つ以上の画素を距離値Dzの校正領域Z1、Z2とし、異なる時刻T、Tでの取得画像G1、G2ごとの校正領域Z1、Z2における距離変動量ΔDzからレーザ画像計測装置の移動速度Svを導出し、取得画像G1、G2内における移動速度Svによる距離差を補正する。
【0047】
これにより、レーザ画像計測装置が移動する場合をも含めて、レーザ画像計測装置の環境条件(温度や振動など)の変化に対して左右されない、正確な距離値Dz(測距値)および3次元画像Gを得ることができる。
【0048】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1〜図5)では、送信ビームLの走査幅Wの補正について考慮しなかったが、図6および図7のように、レーザ光走査部40A内に走査幅補正装置13を設け、位相検波器9Aからの強度信号Aに応じて走査幅Wを補正するように構成してもよい。
【0049】
以下、図6および図7を参照しながら、この発明の実施の形態2について説明する。
図6はこの発明の実施の形態2に係るレーザ画像計測装置の全体構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「A」を付して詳述を省略する。
また、図7は強度信号A(強度データ)に基づく走査幅補正信号Cwを生成処理を示す説明図である。
【0050】
図6において、レーザ画像計測装置は、基準信号発生部20と、レーザ光送信部30と、レーザ光走査部40Aと、基準反射板6と、受信部50と、信号処理部60Aと、を備えている。
【0051】
この場合、信号処理部60A内の位相検波器9Aは、位相信号Pを距離演算装置10に入力するのみならず、反射光の受信強度を示す強度信号A(電気信号)をレーザ光走査部40Aに入力する。
【0052】
レーザ光走査部40Aは、レーザ光走査光学系5Aに加えて、走査幅補正装置13を備えている。走査幅補正装置13は、位相検波器9Aからの強度信号Aに応じて、レーザ光走査光学系5Aに対する走査幅補正信号Cwを生成する。
また、レーザ光走査部40Aにおける走査幅Wの補正精度を高くするために、基準反射板6は、送信ビームLの両端部のそれぞれにおいて、レーザ光走査光学系5Aから基準固定距離となるように設置されている。
【0053】
位相検波器9Aは、基準信号発生部20からの変調信号Mと受信部50からの受信信号とにより位相検波を行い、位相信号P(電気信号)を生成するとともに、反射光の受信強度を示す強度信号Aを生成する。
【0054】
次に、図7を参照しながら、図6に示したこの発明の実施の形態2に係るレーザ画像計測装置の動作について説明する。
ここでは、前述と同様の距離測定動作の説明を省略し、走査幅補正装置13による走査幅Wの補正動作のみに注目して説明する。
【0055】
走査幅補正装置13は、図7に示すように、位相検波器9Aから入力される基準反射板6からの強度信号A(強度データ)に応じて、走査幅補正信号Cwを生成する。
具体的には、任意時刻tにおける走査幅Wと、初回時刻tにおける初回走査幅Wと差分から、走査幅変動量ΔW(=W−W)を算出し、走査幅Wが初回走査幅Wと等しくなるように、走査幅変動量ΔWを相殺するための走査幅補正信号Cwを生成する。
これにより、レーザ光走査光学系5Aは、走査幅補正信号Cwに基づき、走査幅Wが初回走査幅Wと一致するようにレーザ光を走査する。
【0056】
図7においては、環境変化などにより、走査幅W(任意時刻tの強度信号Aに基づく)が、初回走査幅W(初回時刻tの強度信号Aに基づく)に対して、走査幅変動量ΔWだけ減少した場合を示している。
【0057】
この場合、走査幅補正信号Cwにより、送信ビームLの両端部がΔW/2ずつ広げられることにより、走査幅Wが初回走査幅Wと一致(2点鎖線参照)される。
すなわち、送信ビームLの両端部が基準反射板6の位置(初回走査幅W)と一致するように、送信ビームLの走査幅Wが補正されることになる。
【0058】
以上のように、この発明の実施の形態2(図6、図7)に係るレーザ画像計測装置の信号処理部60Aは、位相検波器9Aにより、基準反射板6からの反射光の強度信号A(受信強度)を導出する。
レーザ光走査部40Aは、レーザ光走査光学系5Aに対して走査幅補正信号Cwを入力する走査幅補正装置13を備えており、走査幅補正装置13は、強度信号Aに基づいて送信ビームLの走査幅Wを導出し、レーザ光走査光学系5Aによる走査幅Wを制御する。
【0059】
このように、基準反射板6からの反射光を受信して実際にレーザ走査している走査幅Wを導出して補正を行うことにより、レーザ画像計測装置の温度変化や振動などの環境変化に対して左右されずに、安定した撮像領域を確保することができる。
【0060】
なお、変調信号Mは、前述と同様に、正弦波に限らずパルスでもよく、送信系から受信系までのパルスの到達時間を計測して距離を導出するために、位相検波器9Aに代えて、たとえば時間差計測回路を用いてもよい。
【0061】
また、この場合、強度信号Aは、反射パルス光のピーク値に相当する電気信号となる。
また、走査幅補正装置13は、強度信号Aに基づき走査幅Wを導出したが、距離値Dzを受信強度として用いて走査幅Wを導出してもよい。
【0062】
また、レーザ光走査光学系5Aにおいては、前述と同様に、ペンシルビームを照射して1次元走査または2次元走査する場合もあり、ファンビームを照射して1次元走査する場合もある。
また、受信光学系7においては、走査せずに受信視野Rを確保する場合もあり、送信レーザ光および受信視野Rの両方を同時に走査する場合もある。
【0063】
次に、図8〜図10を参照しながら、この発明の実施の形態2(図6、図7)の変形例について説明する。
基準反射板6の配置については、図8のように、種々の適用例が考えられる。
図8は送信ビームLの走査領域に対する基準反射板6の具体的な配置例を示す説明図であり、図8(a)、図8(b)は、走査端の1箇所以上に基準反射板6が設置された場合を示し、図8(c)〜図8(e)は、走査する1列に基準反射板6が設置された場合を示している。
【0064】
また、レーザ光走査光学系5Aとして、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スキャナのような、正弦波駆動の光学系を用いた場合には、図9のような走査特性となる。
【0065】
図9は走査周期(横軸)に対する送信ビームLの走査角θ(縦軸)の変化特性を示す説明図であり、走査角θの振幅は、走査幅Wに相当している。
図9において、走査幅Wの両端付近(遮蔽領域)は、走査速度が遅くなるので、レーザ光送信部30内のレーザ装置3として、「JIS C6802(レーザ光の安全基準)」に記載された「クラス1アイセーフ条件(眼に対して安全なレベル)」を満たさない走査領域となる。
【0066】
したがって、図8(a)または図8(d)のように、基準反射板6を受信視野Rの両端部に設置することにより、基準反射板6が遮蔽板として機能して、遮蔽領域(アイセーフ条件を満たさない走査領域)に対応する送信ビームLの端部を遮蔽するので、「クラス1アイセーフ条件」を満たすレーザ画像計測装置を提供することができ、レーザ光走査端でのレーザ光の人の目に対する安全性を高めることができる。
【0067】
また、図6のように、走査幅補正装置13により基準反射板6からの強度信号Aを計測するとともに、図10のように、レーザ光送信部30B内にインタロック装置14を設けることにより、レーザパワーモニタ機能を備えたレーザ画像計測装置を実現することができる。
【0068】
図10はこの発明の実施の形態2の変形例によるレーザ画像計測装置を示すブロック図であり、前述(図6参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「B」を付して詳述を省略する。
【0069】
図10において、レーザ光走査部40B内の走査幅補正装置13Bは、基準反射板6からの強度信号Aが規定強度値よりも高い強度値を示す場合、またはレーザ光の走査幅Wが規定走査幅よりも狭くなった場合に、異常信号Eを生成する。
【0070】
また、レーザ光送信部30Bは、レーザ装置3を制御するインタロック装置14を備えており、インタロック装置14は、走査幅補正装置13Bからの異常信号Eに応答してインタロック信号Bを生成し、レーザ装置3によるレーザ出力を停止させる。
これにより、レーザ光の過大出力などの異常発生時において、自動的にレーザ光の出力を遮断することにより、安全性を確保することができる。
【0071】
以上のように、この発明の実施の形態2の変形例(図10)によれば、走査幅補正装置13Bは、基準反射板6からの反射光の受信信号が異常を示す場合に異常信号Eを生成し、レーザ光送信部30Bは、異常信号Eに応答してインタロック信号Bをレーザ装置3に入力するインタロック装置14を備えているので、前述と同様の効果に加え、受信信号の異常発生時にレーザ発振を禁止して安全性を確保することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 発振器、2 分配器、3 レーザ装置、4 変調器、5、5A レーザ光走査光学系、6 基準反射板、7 受信光学系、8 受光器、9、9A 位相検波器、10 距離演算装置、11 距離補正装置、12 3次元画像処理装置、13、13B 走査幅補正装置、14 インタロック装置、20 基準信号発生部、30、30B レーザ光送信部、40、40A、40B レーザ光走査部、50 受信部、60、60A 信号処理部、A、A、A 強度信号、B インタロック信号、Cw 走査幅補正信号、Dz 距離値、Dz’ 補正距離値、E 異常信号、G 3次元画像、G1、G2 取得画像、L 送信ビーム、M 変調信号、P 位相信号、R 受信視野、W、W 走査幅、W 初回走査幅、Z1、Z2 校正領域、θ 走査角、θs 走査角信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の発振時間と対象物による反射光の受光時間との時間差に基づいて、前記対象物までの距離を導出するレーザ画像計測装置であって、
基準となる変調信号を生成する基準信号発生部と、
前記変調信号により変調された前記レーザ光を出射するレーザ光送信部と、
前記レーザ光を走査して整形された送信ビームを出射するレーザ光走査部と、
前記反射光を受信信号に変換する受信部と、
前記レーザ光走査部内のレーザ光走査光学系から基準固定距離に設置されて前記送信ビームが照射される基準反射板と、
前記受信信号から前記基準反射板および前記対象物の距離値を導出する信号処理部と、を備え、
前記レーザ光走査部および前記受信部は、前記基準反射板からの反射光を、前記対象物に対する距離測定と同一の光路で送受信し、
前記信号処理部は、前記基準反射板の距離変動量から、前記対象物の距離値を補正することを特徴とするレーザ画像計測装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、
前記変調信号および前記受信信号を入力信号として位相信号を生成する位相検波器と、
前記位相信号に基づき前記距離値を算出する距離演算装置と、
前記距離演算装置で算出された前記基準反射板の距離値を補正して補正距離値を生成する距離補正装置と、
前記補正距離値と前記レーザ光走査光学系からの走査角信号とに基づき3次元画像を生成する3次元画像処理装置と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ画像計測装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、
前記受信信号に基づく取得画像内の少なくとも1つ以上の画素を前記距離値の校正領域とし、
異なる時刻での取得画像ごとの校正領域における距離変動量から前記レーザ画像計測装置の移動速度を導出し、
前記取得画像内における前記移動速度による距離差を補正することを特徴とする請求項1に記載のレーザ画像計測装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、前記基準反射板からの反射光の受信強度を導出し、
前記レーザ光走査部は、前記レーザ光走査光学系に対して走査幅補正信号を入力する走査幅補正装置を備え、
前記走査幅補正装置は、前記受信強度に基づいて前記送信ビームの走査幅を導出し、前記レーザ光走査光学系による走査幅を制御することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のレーザ画像計測装置。
【請求項5】
前記基準反射板は、前記送信ビームの端部を遮蔽するように配置されたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレーザ画像計測装置。
【請求項6】
前記レーザ光送信部は、前記レーザ装置に対してインタロック信号を入力するインタロック装置を備え、
前記インタロック装置は、前記基準反射板からの反射光の受信信号が異常を示す場合に、前記インタロック信号により前記レーザ装置のレーザ発振を禁止することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のレーザ画像計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−93256(P2012−93256A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241286(P2010−241286)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】