説明

レーン案内システム、車載装置

【課題】経路案内と巧みに融合したレーン案内を実現する。
【解決手段】各レーンの路面に埋設されたレーンマーカ10は、道路情報(道路名称など)と、配置情報(例えば「13」は1行目すなわち左側レーンの3列目すなわち交差点入口から3番目にあるレーンマーカ10の位置を示している。)と、進行方向情報(直進・右左折)の情報を送信する。この情報を受信したナビゲーション装置では、経路案内の実行中は、現在走行中のレーンが経路案内による進行方向と合致するか否か判定し、合致しない場合に限り経路案内のよる進行方向と合致するレーンへの変更を促す報知を行う。この報知によって、車両の乗員は、経路案内に沿って車両を走行させるためにレーン変更が必要であることがわかり、レーン変更のための運転操作を行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数レーンを有する道路においてレーンを案内する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
経路案内中に右左折交差点に近づくと、画面に全レーンの方向表示(案内する方向のレーンは強調した白色、案内する方向以外のレーンはトーンダウンした灰色)を行い、音声にて「まもなく右方向です。さらに右へお寄り下さい」等の案内を行うナビゲーション装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−272240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したレーン案内技術においては次のような問題点がある。つまり、経路案内中に右左折すべき交差点に近づいたとき、運転者が自主的に適切なレーンに変更済みであっても、レーン変更を促す案内音声が流れるため、運転者としては「さらにレーン変更が必要なのか?」と一瞬迷うおそれがある。
【0004】
なお、例えば特開2001−307291号公報には、レーン毎に専用の情報を送受信して、現在走行しているレーンに関する情報を運転者に報知する技術が開示されているが、この技術は経路案内との連携は全く想定していない。
【0005】
本発明は、経路案内と巧みに融合したレーン案内を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係るレーン案内システムによれば、路側装置の路側送信手段が、複数レーンを有する道路において各レーンに対応し、且つ交差点を基準として進行方向手前側の所定位置に設けられており、レーン毎に固有の情報として、少なくともレーンを区別する情報及び直進・右左折などのレーンの進行方向を示す情報を送信する。このレーン毎に固有の情報を受信手段を介して受信した車載装置は、レーン案内手段によって次のようなレーン案内を車両の乗員に対して行う。
【0007】
つまり、経路案内手段による経路案内の実行中は、現在走行中のレーンが経路案内に適合するか否か判定し、適合しない場合に限り経路案内に適合するレーンへの変更を促す報知を行う。例えば路側送信手段から送信された情報によれば現在走行中のレーンの進行方向が直進または左折であるのに対して、経路案内の内容が次の交差点で右折することとなっている場合には、右折レーンへの変更を促す報知を行う。報知は、具体的には表示装置へ表示や音声出力手段から音声を出力させることによって案内する。この報知によって、車両の乗員は、経路案内に沿って車両を走行させるためにレーン変更が必要であることがわかり、レーン変更のための運転操作を行える。また、現在走行中のレーンが経路案内に適合している場合には当然ながら上記レーン変更を促す案内はされないため、従来技術にて生じていた問題は発生しない。
【0008】
このように、本発明システムによれば、経路案内と巧みに融合したレーン案内を実現することができる。
請求項2に示すように、車載装置のレーン案内手段は、経路案内手段による経路案内を実行していない場合には、現在走行中のレーンの報知を行うようにしてもよい。この報知によって、乗員は車両が走行しているレーンが自分の意図しているレーンなのか否かを判断することができ、意図していないレーンを走行しているのであれば、レーン変更のための運転操作を行うことができる。
【0009】
路側装置の路側送信手段に関しては、レーン毎に1個以上設ければ良いが、請求項3に示すように複数個設ければ、種々の面で有効である。例えば、ある1個の路側送信手段からの情報を車載装置が受信できなかった場合でも、別の路側送信手段からの情報を車載装置が受信できれば、レーン案内に支障は出ないからである。また、ある1個の路側送信手段からの情報に基づいてレーン案内を行った結果、運転者が誤ったレーンへ運転操作してしまった場合であっても、別の路側送信手段からの情報に基づいてさらにレーン案内ができる。そのため、正しいレーンへ戻ることができる。
【0010】
このように、レーン毎に複数の路側送信手段を設ける場合には、請求項4に示すように、路側送信手段に関して、レーン毎に固有の情報として、交差点との位置関係を区別する情報も送信可能に構成するとよい。例えば交差点から近い順番を数字で示すことなどが考えられる。
【0011】
そして、車載装置のレーン案内手段が、次のような処理を行うようにするとよい。つまり、路側送信手段から受信した情報中のレーンを区別する情報が従前の情報と異なっている場合に、レーン毎に固有の情報を記憶手段に記憶し、その記憶した情報に基づいて現在走行中のレーンの判定及びレーン案内を行う。このようにすれば、同一レーンを走行している間はレーン毎に固有の情報を更新記憶させる必要がなくなる。そして、路側送信手段から受信した情報中の「交差点との位置関係を区別する情報」が交差点に最も近い情報であった場合には、記憶手段に記憶されているレーン毎に固有の情報を削除する。路側送信手段は前方に存在する交差点に対するレーン案内のための情報を送信するものであるため、交差点に最も近い路側送信手段からの情報を受け取った場合には、それ以降にレーン案内する必要性が低くなるので、ここで情報をクリアするのである。当然ながら、さらに車両が進行して次の交差点に近づいた場合には、その交差点基準として進行方向手前側に設けられた路側送信手段からの情報に基づいて同様のレーン案内を行うこととなる。
【0012】
また、レーン毎に固有の情報を更新記憶させるタイミングとしては、路側装置の路側送信手段がレーン毎に固有の情報として道路を区別する情報も送信可能であれば、請求項5に示すようにしてもよい。つまり、車載装置のレーン案内手段が、道路を区別する情報が従前の情報と異なっている場合に、レーン毎に固有の情報を記憶手段に記憶し、その記憶した情報に基づいて現在走行中のレーンの判定及びレーン案内を行うのである。
【0013】
相対的に大きな交差点の手前に存在する道路へ右左折するような場合を想定する。例えば大きな交差点を基準として路側送信手段がレーン毎に5個設けられている場合、交差点から3番目の路側送信手段付近に存在する道路にて右左折するような道路状況も考えられる。この右左折した道路も複数レーンを有しており、路側送信手段が設けられていれば、従前走行していた道路における交差点に最も近い路側送信手段からの情報を受け取る前に、別の道路へ移動して、その道路に対応する情報を受信することとなる。そのため、新たなレーン毎に固有の情報を受信した場合には、レーン毎に固有の情報を記憶手段に記憶し、その記憶した情報に基づいて現在走行中のレーンの判定及びレーン案内を行う。

路側装置の路側送信手段については、例えば請求項6に示すように、レーン毎の路面に埋設することが考えられる。もちろん、レーン毎に路上機を設け、車両上方から電波あるいは光ビーコンにて情報送信するようにしてもよい。しかし、路面に埋設する場合には、次のような有利な点がある。つまり、車両上方からの情報を受信するためには、車載受信手段をダッシュボードに埋め込んだり、フロントガラスに貼り付けたりして、車のデザインを損なわないように賢明に努力をする必要がある。これに対して、道路に埋設した路側送信手段からの情報を受信するのであれば、車載受信手段は車両の底部やバンパー部分に設置することができ、車両デザインを気にする必要はない。したがって、非常に有効である。
【0014】
一方、車載装置の車載受信手段については、請求項7に示すように、車両の前端付近及び後端付近それぞれに設けることが考えられる。このようにすれば、車両前端付近に設けた車載受信手段にてアンテナで情報を取りこぼしたときでも、後端付近に設けた車載受信手段にて情報を受信することができる。
【0015】
なお、請求項8に示すように、請求項1〜7の何れかに記載のレーン案内システムに用いられる車載装置であって、当該各請求項において車載装置に関して記載された構成を備える車載装置として実現することもできる。このような車載装置であれば、上述したレーン案内システムに用いられることによって、上述の効果を発揮する上で有意な役割を果たすこととなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0017】
[ナビゲーション装置20の構成説明]
図1は、本発明のレーン案内システムに用いて有効な車載装置の概略構成を示すブロック図である。本車載装置は、ナビゲーション装置20、前端受信部51及び後端受信部52によって構成される。
【0018】
ナビゲーション装置20は、車両に搭載され、車両の現在位置を検出する位置検出器21と、利用者からの各種指示を入力するための操作スイッチ群22と、操作スイッチ群22と同様に各種指示を入力可能であってナビゲーション装置20とは別体となったリモートコントロール端末(以下、リモコンと称す)23aと、リモコン23aからの信号を入力するリモコンセンサ23bと、パケット通信網等に接続して外部と通信を行う外部通信機24と、地図データや音声データ等が記録された地図記憶媒体からデータを入力する地図データ入力器25と、地図や各種情報の表示を行うための表示部26と、各種のガイド音声等を出力するための音声出力部27と、利用者が発話した音声に基づく電気信号を出力するマイクロフォン28と、車内LAN40を介して他の装置と様々な情報をやりとりする車内LAN通信部30と、上述した位置検出器21,操作スイッチ群22,リモコンセンサ23b,外部通信機24,地図データ入力器25,マイクロフォン28からの入力に応じて各種処理を実行し、外部通信機24,表示部26,音声出力部27,車内LAN通信部30を制御する制御部29とを備えている。
【0019】
位置検出器21は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの電波を図示しないGPSアンテナを介して受信してその受信信号を出力するGPS受信機21aと、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープ21bと、車両の前後方向の加速度等から走行した距離を検出するための距離センサ21cとを備えている。そして、これら各センサ等21a〜21cからの出力信号に基づいて制御部29が、車両の位置,方位,速度等を算出する。なお、GPS受信機21aからの出力信号に基づいて現在位置を求める方式は様々な方式があるが、単独測位方式、相対測位方式の何れであってもよい。
【0020】
操作スイッチ群22は、表示部26の表示面と一体に構成されたタッチパネル及び表示部26の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等から構成される。なお、タッチパネルと表示部26とは積層一体化されており、タッチパネルには、感圧方式,電磁誘導方式,静電容量方式,あるいはこれらを組み合わせた方式など各種の方式があるが、その何れを用いてもよい。
【0021】
外部通信機24は、路側に設置された光ビーコンや電波ビーコン等を介してVICSの情報センタから事故情報や渋滞情報等を取得する。
地図データ入力器25は、図示しない地図データ記憶媒体(例えばハードディスクやDVD−ROM等)に記憶された各種データを入力するための装置である。地図データ記憶媒体には、地図データ(ノードデータ、リンクデータ、コストデータ、背景データ、道路データ、名称データ、マークデータ、交差路データ、施設のデータ等)、案内用の音声データ、音声認識データ等が記憶されている。
【0022】
表示部26は、カラー表示装置であり、液晶ディスプレイ,有機ELディスプレイ,CRTなどがあるが、その何れを用いてもよい。表示部26の表示画面には、位置検出器21にて検出した車両の現在位置と地図データ入力器25より入力された地図データとから特定した現在地を示すマーク、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種施設のマーク等の付加データとを重ねて表示することができる。また、施設のガイド等も表示できる。
【0023】
音声出力部27は、地図データ入力器25より入力した施設のガイドや各種案内の音声を出力することができる。
マイクロフォン28は、利用者が音声を入力(発話)するとその入力した音声に基づく電気信号(音声信号)を制御部29に出力するものである。利用者はこのマイクロフォン28に様々な音声を入力することにより、ナビゲーション装置20を操作することができる。
【0024】
車内LAN通信部30は、車内LAN40を介して車内LAN40に接続された様々な機器、例えば図示しないエンジンECU等と通信を行うものである。
制御部29は、CPU,ROM,RAM,SRAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいて各種処理を実行する。例えば、位置検出器21からの各検出信号に基づき座標及び進行方向の組として車両の現在位置を算出し、地図データ入力器25を介して読み込んだ現在位置付近の地図等を表示部26に表示する処理や、地図データ入力器25に格納された地図データと、操作スイッチ群22やリモコン23a等の操作に従って設定された目的地とに基づいて現在位置から目的地までの最適な経路を算出する経路算出処理や、その算出した経路を表示部26に表示させたり音声出力部27に音声として出力させることにより経路を案内する経路案内処理等を実行する。
【0025】
また、制御部29は、音声認識処理も実行可能な構成となっている。もちろん、音声認識に係る処理部とナビゲーションに係る処理部とを分離して構成することも可能であるが、ここでは制御部29内に音声認識処理を実行可能な構成を構築している。
【0026】
また、ナビゲーション装置20は、車内LAN40を介して前端受信部51及び後端受信部52とも接続されている。
前端受信部51及び後端受信部52は、道路面に埋設されたレーンマーカ10から送信される情報を受信するためのものであり、本実施形態においては、前端受信部51の受信アンテナが車両の前端付近(例えばフロントバンパ)に設けられ、後端受信部52の受信アンテナが車両の後端付近(例えばリアバンパ)に設けられている。このように車両の前後端付近の両方に受信アンテナを設けたのは、車両走行中に路面に埋設されたレーンマーカ10からの情報を受信する場合、前端受信部51の受信アンテナで情報を取りこぼしたときでも、後端受信部52の受信アンテナにて当該情報を受信することができるようにするためである。
【0027】
[レーンマーカ10の説明]
ここで、レーンマーカ10に関して図2を参照して説明する。
図2(a)に示すように、レーンマーカ10は、複数レーンを有する道路の各レーンの中央に埋設されている。これらレーンマーカ10は、交差点入口から進行方向手前側の所定位置に設けられている。ここで、「交差点入口」とは、交差点の曲がり角から5m手前の位置を指す。これは、道路交通法で規定されている駐停車禁止エリアを考慮したものである。そして、図2(a)に示す例では、交差点入口の位置を「1列目」とし、そこから所定間隔で「5列目」までの位置にそれぞれレーンマーカ5が設けられている。この所定間隔は、例えば車長や法定速度等を考慮して決定することが考えられる。例えば普通車の車長+法定速度60km/hの場合の適切な車間距離や、トレーラなどの大型車の車長+法定速度60km/hの場合の適切な車間距離などを考慮し、20m〜50m程度の間隔にすることが考えられる。もちろん、間隔を短くすればそれだけ前端受信部51及び後端受信部52によって情報を受信できる機会が増えるため有利であるが、設置すべきレーンマーカ10の数が多くなる。したがって、上述した20m〜50m程度の間隔が妥当な間隔の一例として挙げられる。
【0028】
また、図2(a)に示す左側通行2レーンの例においては、左側レーンを1行目、右側レーンを2行目、そして交差点近くにおいて右側レーンのさらに右側に設けられた右折レーンを3行目とし、レーンマーカ10の位置を行列にて特定するようにしている。なお、右折レーンは距離が短いため、図2(a)に示すように3列目までしかレーンマーカ10が設けられていない。
【0029】
このように各レーンに対して複数個のレーンマーカ10を設けた場合のメリットは以下のとおりである。例えば、ある1個のレーンマーカ10からの情報を前端受信部51及び後端受信部52によって受信できなかった場合でも、別のレーンマーカ10からの情報を前端受信部51及び後端受信部52によって受信できれば、レーン案内に支障は出ないからである。また、ある1個のレーンマーカ10からの情報に基づいてレーン案内を行った結果、運転者が誤ったレーンへ運転操作してしまった場合であっても、別のレーンマーカ10からの情報に基づいてさらにレーン案内ができる。そのため、正しいレーンへ戻ることができる。なお、レーン案内の詳細は後述する。
【0030】
なお、このようなメリットのため、各レーンに複数個のレーンマーカ10を設けることが好ましいのであるが、もしも各レーンにレーンマーカ10を1個しか設けることができない場合には、次のような考慮をするとよい。つまり、車線変更をする必要がある車両を考えると、交差点から交差点入口付近は車線変更禁止の道路標示がある場合があるので、より手前で安全に車線変更を促す必要がある。したがって、例えば、車線変更禁止始まり位置より手前約30mあたりに設置する、といった考慮が必要である。
【0031】
レーンマーカ10は、例えば道路近傍に設置した制御コンピュータに接続し、各レーンマーカ10が発信する情報の管理や電源供給などを制御コンピュータ主導で行ってもよい。一方、各レーンマーカ10が送信する情報は固定であり、また、後述するように道路情報・行列識別番号・直進/右左折といった単純な情報であるため、制御コンピュータを用いず、レーンマーカ10単体で作動するようにしてもよい。例えばレーンマーカ10を路面に埋設する前に情報をセットし、駆動電源は例えば太陽光発電を用いるようにすることなどが考えられる。
【0032】
レーンマーカ10が情報を送信する方法としては、電波によるものが考えられるが、電波に限らなくても良い。例えば光によるものであってもよい。要は、下記に示す情報を送信可能な送信方法であればよい。
【0033】
それでは、レーンマーカ10が送信する情報について図2(b)を参照して説明する。
レーンマーカ10が送信する情報は、道路情報/配置情報/進行方向情報の3つである。以下、順番に説明する。
【0034】
(1)道路情報
道路名称を格納する。例えば、国道1号線のように他と重複しない固有名称が良い。
(2)配置情報
レーンマーカ10が埋め込まれている位置を行列番号にて格納する。図2(a)に示す例においては、左側レーンを1行目、右側レーンを2行目、右折レーンを3行目とし、交差点入口から近い順番に1列目〜5列目とされている。したがって、配置情報「13」は、1行目すなわち左側レーンの、3列目すなわち交差点入口から3番目にあるレーンマーカ10の位置を示している。
【0035】
(3)進行方向情報
レーンの進行方向を格納する。直進/右左折のように具体的な進路を格納しても良いし、ビット表現で進路を表現しても良い。
【0036】
図2(a)に示す例では、左側レーンを走行した場合、交差点において直進と左折が可能であり、右側レーンを走行した場合、そのまま直進すれば交差点を直進のみ可能であり、途中で右折レーンへ移動した場合は右折のみ可能となる。そのため、図2(b)に示すように、左側レーンに設けられたレーンマーカ10に関しては、進行方向情報として「直進/左折」という情報を送信するように設定する。一方、右側レーンに設けられたレーンマーカ10に関しては、列によって2種類に分ける。具体的には、5列目と4列目の2つのレーンマーカ10においては進行方向情報として「直進/右折」という情報を送信するように設定し、3列目〜1列目の3つのレーンマーカ10においては進行方向情報として「直進」という情報を送信するように設定する。そして、右折レーンに設けられたレーンマーカ10に関しては、進行方向情報として「左折」という情報を送信するように設定する。
【0037】
[レーン案内のための作動説明]
次に、制御部29が実行する処理のうち、レーン案内に関する処理について、図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
図3はレーン案内のメイン処理を示すフローチャートであり、最初のステップS10にて、前端受信部51または後端受信部52によってレーンマーカ10から送信される情報を受信したか否かを判断する。情報を受信していなければ(S10:N)、S10の処理を繰り返し実行し、情報を受信した場合には(S10:Y)、S20へ移行する。
【0039】
S20では、受信したレーンマーカ情報の分析を行う。このレーンマーカ情報分析の詳細を図3のフローチャートを参照して説明する。
図3の最初のステップS210では、列番号=1であるか否か判定する。列番号「1」は、交差点入口に最も近い位置に設けられたレーンマーカ10である。したがって、このレーンマーカ10を通過した時点で交差点を通過したと判定し、ナビゲーション装置20内で記憶した情報をクリアする役割を持たせる。この点については後述する。
【0040】
S210での判定において列番号=1でない場合(S210:N)、つまり、列番号が2以上の場合には、S220へ移行し、道路情報は前回と同じか否か判定する。ここでいう「前回の道路情報」とは制御部29内のメモリに記憶されているレーンマーカ情報中の道路情報のことである。
【0041】
道路情報が前回と同じ場合には(S220:Y)、S230へ移行し、行番号は前回と同じか否か判定する。ここでいう「前回の行番号」とは制御部29内のメモリに記憶されているレーンマーカ情報中の配置情報における行番号のことである。
【0042】
行番号が前回と同じ場合には(S230:Y)、S240へ移行し、書き替えフラグを倒す。そして、図4の処理を終了して図3のS30へ移行する。
また、道路情報が前回と同じでない場合(S220:N)、あるいは行番号が前回と同じでない場合(S230:N)には、S250へ移行して、受信したレーンマーカ情報を制御部29内のメモリに記憶する。そして、書き替えフラグを立てて(S260)図4の処理を終了し、図3のS30へ移行する。
【0043】
このS220及びS230での処理の実質的意味について補足する。交差点に向かって車両が同一レーンを走行していく場合には、レーンマーカ10から受信したレーンマーカ情報中の道路情報及び行番号は変化せず(S220:N,S230:N)、レーンマーカ10の列番号が順調にカウントダウンしていくこととなる。
【0044】
このようにレーンマーカ10の列番号を順調にカウントダウンしている状況(列番号2 以上)で別の道路へ進路を変更した場合には、S220にて否定判定され、レーンマーカ情報を記憶し(S250)、書き替えフラグを立てる(S260)。このような処理は、進路変更後の道路のレーンマーカ情報を受信し、進路変更を判定する役割を果たしている。
【0045】
また、走行している道路に変化は無いが、レーンを変更した場合もレーン案内を行う必要が生じるため、それを判定する役割を持たせている。今まで走行していたレーンと異なるレーンに変更した場合も、レーンマーカ情報を最新情報として記憶し(S250)、情報を書き替えたことを示すフラグを立てる(S260)。
【0046】
一方、S210での判定において列番号=1である場合(S210:Y)、S270へ移行し、レーンマーカ情報をクリアする。そして、図4の処理を終了し、図3のS30へ移行する。
【0047】
図3のS30では、情報がクリアされているか、または書き替えフラグが倒れているか否か判定する。情報がクリアされているか、または書き替えフラグが倒れている場合には(S30:Y)、S10へ戻る。つまり、情報がクリアされている場合には、レーン案内に用いるレーンマーカ情報が存在せず、また書き替えフラグが倒れている場合には、たとえレーンマーカ情報が存在しても、その情報に基づくレーン案内が不要だと考えられるため、次のレーンマーカ情報を受信するためにS10へ戻るのである。
【0048】
一方、S30にて否定判定の場合、つまりレーンマーカ情報が存在し、且つ書き替えフラグが立っている場合には、レーン案内の必要があるため、S40以降の処理を実行する。
【0049】
S40では、経路案内中か否か判定し、経路案内中でなければ(S40:N)、ドライバがその方向に進行するか先読みできないため、現在走行しているレーン情報を音声出力部27から「○○レーンを走行中です」といった内容の案内音声を出力する。例えば「直進または左折レーンを走行中です。」といった案内内容である。なお、「走行レーンを確認して下さい。」といった案内内容であってもよい。
【0050】
一方、経路案内中の場合は(S40:Y)、レーンマーカ情報中の進行方向情報が経路案内における方向と合致するか否か判定する(S60)。例えば経路案内に従えば直近の交差点を直進するようになっている場合は、左側レーン・右側レーンの何れを走行していても進行方向は合致する。しかし、直近の交差点を右折する経路案内となっている場合は、右側レーンを走行していても5列目及び4列目のレーンマーカ10を通過するまでは進行方向が合致すると判定するが、3列目〜1列目のレーンマーカ10から情報には「直進」という進行方向情報しかないため、進行方向は合致しない。3列目〜1列目のレーンマーカ10の場合は、右折レーンを走行している場合にしか進行方向が合致しない。
【0051】
進行方向が合致する場合は(S60:Y)、特に案内をせずにS10へ戻る。一方、 進行方向が合致しない場合は(S60:N)、移動すべきレーンに関する情報を音声出力部27から「今、○○レーンを走行中です。△△レーンへ変更して下さい」といった内容の案内音声を出力する。例えば、「今、直進レーンを走行中です。右折レーンへ変更して下さい。」といった案内内容である。
【0052】
以上、実施形態のレーン案内システムの構成及び作動について説明したが、本実施形態におけるレーン案内システムの構成と特許請求の範囲に記載した構成との対応は次のとおりである。本実施形態におけるレーンマーカ10が特許請求の範囲における路側送信手段に相当する。また、表示部26、音声出力部27及び制御部29等などが経路案内手段及びレーン案内手段に相当する。また、前端受信部51または後端受信部52が車載受信手段に相当し、ナビゲーション装置20、前端受信部51及び後端受信部52が車載装置に相当する。
【0053】
[実施形態のレーン案内システムによる効果]
以上、本実施形態のレーン案内システムの構成および作動について説明したが、本実施形態のレーン案内システムによれば、下記のような効果を奏する。
【0054】
(1)ナビゲーション装置20による経路案内の実行中は、現在走行中のレーンが経路案内による進行方向と合致するか否か判定し(図3のS60)、合致しない場合に限り(S60:N)経路案内のよる進行方向と合致するレーンへの変更を促す報知を行う(S70)。この報知によって、車両の乗員は、経路案内に沿って車両を走行させるためにレーン変更が必要であることがわかり、レーン変更のための運転操作を行える。また、現在走行中のレーンが経路案内に適合している場合には当然ながらレーン変更を促す案内はされないため、従来技術にて生じていた問題は発生しない。このように、本発明システムによれば、経路案内と巧みに融合したレーン案内を実現することができる。
【0055】
(2)また、ナビゲーション装置20による経路案内を実行していない場合には(S40:N)、現在走行中のレーンの報知を行う(S50)。この報知によって、乗員は車両が走行しているレーンが自分の意図しているレーンなのか否かを判断することができ、意図していないレーンを走行しているのであれば、レーン変更のための運転操作を行うことができる。
【0056】
(3)レーンマーカ10は、各レーンの路面に埋設されている。このレーンマーカ10は路側送信手段の一例であるが、例えばレーン毎に路上機を設け、車両上方から電波あるいは光ビーコンにて情報送信するようにしてもよい。しかし、路面に埋設する場合には、次のような有利な点がある。つまり、車両上方からの情報を受信するためには、受信アンテナをダッシュボードに埋め込んだり、フロントガラスに貼り付けたりして、車のデザインを損なわないように賢明に努力をする必要がある。これに対して、道路に埋設したレーンマーカ10からの情報を受信するのであれば、前端受信部51または後端受信部52は車両の底部やバンパ部分に設置することができ、車両デザインを気にする必要はない。したがって、非常に有効である。
【0057】
[他の実施形態]
以下、他の実施形態について説明する。
(イ)上述した実施形態では、音声出力部27から案内音声を出力することでレーン案内を行ったが、表示部26にて表示することで行っても良い。もちろん、音声出力部27からの音声出力と表示部26での表示を併用しても良い。
【0058】
(ロ)上述した実施形態では、書き替えフラグを立てたり倒したりし、そのフラグの状態に応じてレーン案内を出力するか否か判定した(図3のS30)。しかし、ナビゲーション装置20において、レーンマーカ情報の書き替え有無自体を監視する仕組みを採用した場合には、書き替えフラグによる判定の仕組みを採用する必要は無い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】レーン案内システムの概略構成図である。
【図2】レーンマーカ10の配置状態や送信する情報の説明図である。
【図3】レーン案内処理を示すフローチャートである。
【図4】図3中におけるレーンマーカ情報分析処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
10…レーンマーカ、20…ナビゲーション装置、21…位置検出器、21a…GPS受信機、21b…ジャイロスコープ、21c…距離センサ、22…操作スイッチ群、23a…リモコン、23b…リモコンセンサ、24…外部通信機、25…地図データ入力器、26…表示部、27…音声出力部、28…マイクロフォン、29…制御部、30…車内LAN通信部、40…車内LAN、51…前端受信部、52…後端受信部、60…車高検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数レーンを有する道路において各レーンに対応して設けられ、レーン毎に固有の情報を送信する路側送信手段を有する路側装置と、
車両の乗員に対して経路案内を行う経路案内手段と、前記路側送信手段から送信される情報を受信する車載受信手段と、前記車載受信手段にて受信した情報に基づいて現在走行中のレーンを判定し、車両の乗員に対して所定のレーン案内を行うレーン案内手段とを有する車載装置と、
を備え、
前記路側装置の路側送信手段は、交差点を基準として進行方向手前側の所定位置に設けられていると共に、前記レーン毎に固有の情報として、少なくともレーンを区別する情報及び直進・右左折などのレーンの進行方向を示す情報を送信可能に構成されており、
前記車載装置のレーン案内手段は、
前記経路案内手段による経路案内の実行中は、現在走行中のレーンが前記経路案内に適合するか否か判定し、適合しない場合に限り経路案内に適合するレーンへの変更を促す報知を行うレーン案内を実行すること
を特徴とするレーン案内システム。
【請求項2】
請求項1に記載のレーン案内システムにおいて、
前記車載装置のレーン案内手段は、
前記経路案内手段による経路案内を実行していない場合には、現在走行中のレーンの報知を行うレーン案内を実行すること
を特徴とするレーン案内システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーン案内システムにおいて、
前記路側装置の路側送信手段は、レーン毎に複数個設けられていること
を特徴とするレーン案内システム。
【請求項4】
請求項3に記載のレーン案内システムにおいて、
前記路側装置の路側送信手段は、前記レーン毎に固有の情報として、前記交差点との位置関係を区別する情報も送信可能に構成されており、
前記車載装置のレーン案内手段は、
前記レーンを区別する情報が従前の情報と異なっている場合に、前記レーン毎に固有の情報を記憶手段に記憶し、その記憶した情報に基づいて現在走行中のレーンの判定及びレーン案内を行い、
前記交差点との位置関係を区別する情報が交差点に最も近い情報であった場合には、前記記憶手段に記憶されている前記レーン毎に固有の情報を削除すること
を特徴とするレーン案内システム。
【請求項5】
請求項4に記載のレーン案内システムにおいて、
前記路側装置の路側送信手段は、前記レーン毎に固有の情報として、道路を区別する情報も送信可能に構成されており、
前記車載装置のレーン案内手段は、前記道路を区別する情報が従前の情報と異なっている場合に、前記レーン毎に固有の情報を記憶手段に記憶し、その記憶した情報に基づいて現在走行中のレーンの判定及びレーン案内を行うこと
を特徴とするレーン案内システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のレーン案内システムにおいて、
前記路側装置の路側送信手段は、前記レーン毎の路面に埋設されていること
を特徴とするレーン案内システム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載のレーン案内システムにおいて、
前記車載装置の車載受信手段は、車両の前端付近及び後端付近それぞれに設けられていること
を特徴とするレーン案内システム。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載のレーン案内システムに用いられる車載装置であって、当該請求項において車載装置に関して記載された構成を備える車載装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−192619(P2007−192619A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9869(P2006−9869)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】