説明

ロータリーダンパ及びそれを具備する自動車部品並びに回転動作補助機構

【課題】負荷の変化に対応して発揮する制動力を自動調節可能としたロータリーダンパを提供する。
【解決手段】ケーシング1内に粘性流体が充填される流体室2を形成し、この流体室2内にベーン3を配設する。ベーン3には、流体通路5を形成すると共に、この流体通路5を通過する粘性流体の流量を負荷の変化に対応させて自動的に変化させる弁6を設ける。かかる構成により、制御対象物の回転モーメントの変化に伴う負荷の変化に対応して発揮する制動力を自動的に調節して、制御対象物の回転速度の変動を極めて小さいものとすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパに関し、より詳しくは、負荷の変化に対応して発揮する制動力を自動的に調節することができるロータリーダンパに関するものである。また、本発明は、かかるロータリーダンパを具備する自動車部品及び回転動作補助機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転動作する制御対象物に対して、所定の制動力を与えて、その回転動作を緩慢なものとさせるロータリーダンパが知られている。
【0003】
粘性流体が充填される流体室内に配設されるベーンを備え、該ベーンが揺動することにより、粘性流体の抵抗を発生させるロータリーダンパとしては、ベーンが一方向へ揺動した場合にのみ制動力を発揮し得るように逆止弁を有して構成される一方向性のもの(例えば、下記特許文献1及び2参照。)と、ベーンの揺動方向を問わずに制動力を発揮し得るように逆止弁を設けないで構成される双方向性のものとがある。
【0004】
この種のロータリーダンパは、ベーンが揺動することにより押圧される粘性流体が、ベーンとケーシングとの僅かな隙間等を通じて移動する際に生じる抵抗により、制御対象物の回転動作を緩慢なものとさせるものである。
【0005】
従って、ロータリーダンパが発揮する制動力の大きさは、粘性流体が移動の際に通過する隙間等の大きさを変えることによって変化させることができる。すなわち、隙間等を大きくすれば、粘性流体の抵抗は小さくなるので、制動力を小さくでき、逆に、隙間等を小さくすれば、粘性流体の抵抗は大きくなるので、制動力を大きくできる。
【0006】
従来のロータリーダンパは、通常、粘性流体が移動する際に通過する隙間等の大きさが一定であるため、発揮する制動力も一定である。
【0007】
しかしながら、発揮する制動力が一定のロータリーダンパでは、負荷が小さいときは、制動力が相対的に大きくなり、逆に、負荷が大きいときは、制動力が相対的に小さくなるので、負荷が変化した場合には、制御対象物の回転速度が大きく変動することになる。
【0008】
従って、かかるロータリーダンパを、例えば、自動車のコンソールボックスの内蓋、自動車のインストルメントパネルに形成された開口部に設置されるグローブボックス等のように、物品を収容する収納部を有し、その収納部が回動する制御対象物に対して適用した場合には、物品が収容されていない状態では、制御対象物の回転モーメントが小さく、ロータリーダンパに加えられる負荷が小さいため、制御対象物の回転動作が極端に遅くなる。その逆に、物品が収容された状態では、制御対象物の回転モーメントが大きく、ロータリーダンパに加えられる負荷が大きくなるため、制御対象物の回転動作が速くなってしまうことになる。
【0009】
一方、従来、外部から操作することにより、粘性流体が移動する際に通過する隙間等の大きさを変化させて、発揮する制動力を調節できるロータリーダンパも知られている(例えば、下記特許文献3及び4参照。)。
【0010】
しかしながら、かかるロータリーダンパでは、制動力の調節はできるものの、その調節は、調節後に、ロータリーダンパに加えられる負荷が一定であることを前提として行われるものである。従って、ロータリーダンパの設置当初に、制御対象物に合わせて発揮する制動力を調節しても、その後に当該制御対象物の重量等が変化して、ロータリーダンパに加えられる負荷が変化した場合には、改めて調節し直さない限り、当該制御対象物を所望の回転速度で回転動作させることはできない。
【0011】
また、かかるロータリーダンパでは、制動力を調節するために、外部から操作しなければならないので、例えば、上記したコンソールボックスの内蓋、グローブボックス等のように、回転モーメントが頻繁に変化し、また、その変化量が一定でない制御対象物に対しては、不向きである。すなわち、そのような制御対象物に対して、かかるロータリーダンパを適用したとすると、物品の出し入れに伴い回転モーメントが変化する度に、その回転モーメントの変化量を予測して外部から操作することにより、ロータリーダンパの制動力を調節し直さなければならないこととなり、適切な制動力の調節が困難である上、その操作が非常に煩わしく不便である。
【0012】
また、従来の一方向性のロータリーダンパでは、それを可能にする弁が独立の部材として形成された後、ロータリーダンパの一構成部品として組み付けられているため、部品点数の増加のみならず、弁を組み付ける工程も必要となり、製造コストを引き上げる要因となっていた。
【0013】
また、上記したように、ロータリーダンパは、その緩衝作用により、制御対象物の回転動作を緩慢なものとすることができる。従って、例えば、自動車のリクライニングシートに適用した場合には、該シートのシートバックを前方へ付勢するリクライニング機構のばね部材の付勢力に抗して、シートバックの前方への回転動作を緩慢にさせることができる(例えば、下記特許文献5参照。)。
【0014】
しかしながら、従来のロータリーダンパでは、負荷の変化に対応して制動力を調節できないため、例えば、ヘッドレストを取り外し可能なリクライニングシートにおいては、ヘッドレストを取り付けているときと、取り外しているときとで、シートバックの回転モーメントが変化することになるので、ヘッドレストの有無により、シートバックの回転速度が大きく変化してしまうことになる。
【0015】
また、その他の自動車部品として、アームレストについても、ロータリーダンパを利用することが提案されている(例えば、下記特許文献6参照。)が、例えば、物品収納部を有するアームレストにおいては、物品を収納しているときと、収納していないときとで、アームレストの回転モーメントが変化することになるので、負荷の変化に対応して制動力を調節できないロータリーダンパでは、アームレストの回転モーメントの変化により、その回転速度が大きく変化してしまうことになる。
【0016】
また、制御対象物を一方向へ付勢するばね部材を備える回転動作補助機構として、ばね部材の支点位置を変えることにより、ばね部材の応力が変化することを利用して、制御対象物に作用するばね部材の付勢力を調節可能としたものが知られている(例えば、下記特許文献7参照。)。
【0017】
しかしながら、かかる回転動作補助機構では、制御対象物に作用するばね部材の付勢力を調節するために、使用者が何らかの操作をして、ばね部材の支点位置を変えなければならず、その操作が煩わしく不便である。
【0018】
【特許文献1】特開平7−301272号公報
【特許文献2】特開2002−81482公報
【特許文献3】特開平7−197970号公報
【特許文献4】特開平7−301272号公報
【特許文献5】特開平8−38290号公報
【特許文献6】特開2002−67767公報
【特許文献7】特開2001−169840公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は上記した点に鑑みなされたものであり、負荷の変化に対応して発揮する制動力を自動的に調節することができるロータリーダンパを提供することを課題とする。また、回転モーメントが変化しても回転速度の変動が小さい自動車部品を提供することを課題とする。また、制御対象物の回転モーメントの変化に対応して、制御対象物に作用するばね部材の付勢力を自動的に調節することができる回転動作補助機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明は、以下のロータリーダンパ、自動車部品及び回転動作補助機構を提供する。
1.ケーシング内に形成され、粘性流体が充填される流体室と、該流体室内に配設されるベーンと、該ベーン又は前記流体室を仕切る隔壁部に形成される流体通路と、該流体通路を通過する前記粘性流体の流量を負荷の変化に対応させて自動的に変化させる弁とを具備し、前記弁が、前記ベーン又は前記隔壁部に支持される被支持部と、一面側に形成される受圧面が前記粘性流体の圧力を受けることにより変形して前記流体通路を通過する前記粘性流体の流量を調節する流量調節部とを有する板ばねから成り、前記流量調節部は、無負荷のときに前記流体通路を閉鎖しないように設けられ、前記流量調節部の変形の度合いが負荷の変化に対応して変化することによって、負荷が大きくなるに従って、前記流体通路を通過する粘性流体の流量を少なくし、逆に、負荷が小さくなるに従って、その流量を多くすることを特徴とするロータリーダンパ。
2.前記1に記載のロータリーダンパを具備することを特徴とする自動車部品。
3.制御対象物の一方向への回転を付勢するばね部材を備える回転動作補助機構であって、少なくとも前記ばね部材の応力に対抗して前記制御対象物の一方向への回転を遅動させる前記1に記載のロータリーダンパを設けたことを特徴とする回転動作補助機構。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、制御対象物の回転モーメントの変化に伴う負荷の変化に対応して発揮する制動力を自動的に調節して、制御対象物の回転速度の変動を極めて小さいものとすることができるロータリーダンパを提供することが可能となる。
【0022】
また、本発明によれば、回転モーメントが変化しても回転速度の変動が小さい自動車部品、例えば、グローブボックス、コンソールボックス、リクライニングシート、アームレストなどを提供することが可能となる。
【0023】
また、本発明によれば、制御対象物の回転モーメントの変化に対応して、制御対象物に作用するばね部材の付勢力を自動的に調節することができる回転動作補助機構を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るロータリーダンパについて、図面に示した実施例に基づき詳細に説明するが、これらの実施例によって本発明の範囲は、何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
図1から図3は、本実施例に係るロータリーダンパD1の内部構造を示す図である。これらの図に示したように、ロータリーダンパD1におけるケーシング1は、一端が開口し、他端が底壁1aにより閉塞された筒状部1bと、該筒状部1bの開口部を閉塞する閉塞部1cとを有して構成される。筒状部1bの外周面には、回転動作をする制御対象物を一方向へ付勢するばね部材の一端を支持可能な溝1dが形成されている。また、筒状部1bには、内周面から軸心に向かって突出する隔壁部4が設けられている。隔壁部4の先端面は、ロータ7の外周面が摺接するように曲面に形成されている。
【0026】
ケーシング1内には、ロータ7が設けられる。このロータ7がケーシング1の軸心に沿ってケーシング1内に設けられることにより、ロータ7とケーシング1との間には、隔壁部4により仕切られた空間が形成される。この空間が流体室2である。流体室2内には、シリコンオイル等の粘性流体が充填される。
【0027】
ここで、ロータ7は、軸心に沿って貫通形成された中空部7aを有する。この中空部7aには制御対象物の回転中心となる支軸が挿通される。このようにロータ7に中空部7aを形成することにより、ロータ7を支軸に直接連結できるため、ロータリーダンパD1の設置スペースを小さくすることができる。
【0028】
ベーン3は、ロータ7の外周面から筒状部1bの内周面に向かって突出するように、ロータ7と一体に成形されている。このベーン3は、軸方向に沿った長さが、ケーシング1内でロータ7が回転した際に、一方の端面が閉塞部1cに摺接し、他方の端面が筒状部1bの底壁1aに摺接する程度の長さを有する。また、半径方向に沿った長さは、先端面が筒状部1bの内周面に摺接する程度の長さを有する。かかるベーン3は、流体室2内に配設される。これにより、1つの流体室2内が、2つの室(以下、それぞれを「第1の室2a」、「第2の室2b」という。)に分けられる。
【0029】
流体通路5は、一方の開口部が第1の室2aに、他方の開口部が第2の室2bにそれぞれ連通するように、ベーン3に、ロータ7の軸心に対して略平行な方向に沿って形成されている(図3参照)。このように流体通路5をロータ7の軸心に対して略平行な方向に沿って設けるようにすると、ロータ7を成形する金型の形状をより単純なものとすることができるため、金型の製作コストを低く抑えることが可能となる。
【0030】
弁6は、流体通路5を通過する粘性流体の流量を、負荷の変化に対応して自動的に調節する、すなわち、外部から何ら操作することなしに、負荷が大きくなるに従って、流体通路5を通過する粘性流体の流量を少なくし、逆に、負荷が小さくなるに従って、その流量を多くする働きをするものである。本実施例では、このような働きを簡易な構成で達成すべく、以下の弁6が採用されている。
【0031】
すなわち、この弁6は、図3及び図4に示したように、ベーン3に支持される被支持部6cと、一面側に形成される受圧面が粘性流体の圧力を受けることにより変形して流体通路5を通過する粘性流体の流量を調節する流量調節部6dとを有する板ばねからなる。
【0032】
被支持部6cは、ベーン3に固定される。流量調節部6dは、一面側に、傾斜角度を異ならせた2つの斜面6a,6bからなる受圧面が形成され、無負荷のときに、流体通路5を閉鎖しないように設けられる(図3参照)。このように、流量調節部6dの一面側に傾斜角度が異なる2つの斜面6a,6bからなる受圧面が形成されることにより、粘性流体の圧力を受ける面に屈曲した部位が形成されるため、単に1つの斜面を有するものと比較して、より広い範囲の負荷の変化に対応が可能となる。
【0033】
上記のように構成されるロータリーダンパD1は、以下のように作用する。すなわち、制御対象物に支軸を介して連結されたロータ7が、制御対象物の回転に伴ってケーシング1内で、図1において、反時計回り方向に回転すると、ベーン3が第2の室2b内の粘性流体を押圧する。これにより、第2の室2b内の粘性流体は、流体通路5内に流入する。図3及び図5(a)に示したように、流体通路5の一方の開口部側に位置して設けられた弁6は、流量調節部6dが流体通路5を閉鎖しないように設けられているため、第2の室2bから流体通路5内に流入した粘性流体は、弁6によってその移動を殆ど妨げられることなく、流体通路5を通過して第1の室2a内に流入する。このため、粘性流体の抵抗は非常に小さいものとなる。従って、ロータリーダンパD1は、制御対象物の回転動作に影響を与える程の制動力を発揮しない。
【0034】
上記とは逆に、ロータ7が、制御対象物の逆方向への回転に伴ってケーシング1内で、図1において、時計回り方向に回転すると、ベーン3が第1の室2a内の粘性流体を押圧する。これにより、弁6の流量調節部6dに形成された受圧面6a,6bが粘性流体の圧力を受けることとなる。
【0035】
この際、制御対象物の回転モーメントが小さく、ロータリーダンパD1に加えられる負荷が小さいときには、ベーン3が第1の室2a内の粘性流体を押圧する力も弱く、それによって生じる粘性流体の圧力も小さいため、弁6の流量調節部6dは、粘性流体の圧力を受けていないとき(図5(a)参照)よりも流体通路5を閉鎖する方向へ僅かに変形するだけである。
【0036】
一方、制御対象物の回転モーメントが大きく、ロータリーダンパD1に加えられる負荷が大きいときには、ベーン3が第1の室2a内の粘性流体を押圧する力も強く、それによって生じる粘性流体の圧力も大きいため、弁6の流量調節部6dは、図5(b)に示したように、2つの斜面6a,6bのうち、傾斜角度の小さい方の斜面6aを有する部分により、流体通路5の第1の室2a側の開口部の一部を閉鎖するように変形する。
【0037】
そして、ロータリーダンパD1に対して、所定以上の負荷が加えられた場合には、弁6の流量調節部6dは、傾斜角度の小さい斜面6aを有する部分のみならず、それよりも傾斜角度が大きい斜面6bを有する部分が大きく変形して、図5(c)に示したように、流体通路5を完全に閉鎖する。
【0038】
このようにロータリーダンパD1は、負荷の変化に対応して変形の度合いが変化する流量調節部6dを有する弁6を採用したことにより、負荷が大きくなるに従って、弁6の流量調節部6dと流体通路5の第1の室2a側の開口部との隙間を小さなものとして、該開口部を徐々に閉鎖していくことができる。このため、流体通路5を通じて第1の室2aから第2の室2bへ移動する粘性流体の流量を次第に少なくなるように制限していくことが可能である。
【0039】
従って、ロータリーダンパD1によれば、外部から何ら操作しなくても、負荷が小さいときには発揮する制動力が小さく、負荷が大きいときには発揮する制動力が大きくなるように、負荷の変化に対応して発揮する制動力の大きさを自動的に調節することができる。その結果、ロータリーダンパD1によれば、制御対象物の回転モーメントが変化しても、回転速度の変動を極めて小さくすることができる。
【0040】
なお、弁6の流量調節部6dが流体通路5を完全に閉鎖した場合には、粘性流体は、流体通路5を通過して第1の室2aから第2の室2bへ移動できなくなり、ケーシング1とベーン3との間に形成される僅かな隙間等を通じてしか両室2a,2b間を移動できなくなるため、ロータリーダンパD1は、さらに大きな制動力を発揮することとなる。
【0041】
本実施例に係るロータリーダンパD1の特性を確認するために、粘性流体の移動を規制する弁として、通常の逆止弁、すなわち、流体通路を通過する粘性流体の逆流を防いで一方向にだけ流す弁が設けられたロータリーダンパを比較例として、これとの比較実験を行った。比較例に係るロータリーダンパのその他の構成については、本実施例に係るロータリーダンパD1と同じである。
【0042】
実験は、一端が軸支され、他端が自由端である板状体を制御対象物として用い、この制御対象物の回転中心となる支軸に、本実施例に係るロータリーダンパD1を連結した。比較例についても同様である。そして、この制御対象物の自由端が60度の角度位置から0度の角度位置まで自由落下するまでにかかる動作時間を計測した。制御対象物の回転モーメントは、制御対象物に重さの異なる錘を付けることにより変化させた。結果を表1に示すと共に、平均動作時間をグラフ化したものを図6に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1及び図6に示した結果をみると、比較例に係るロータリーダンパに制御された制御対象物は、回転モーメントが変化すると、その動作時間も大きく変化することがわかる。これに対し、本実施例に係るロータリーダンパD1に制御された制御対象物は、回転モーメントが変化してもその動作時間の変動が極めて小さいことがわかる。すなわち、回転モーメントが0.5N・mのときと3.0N・mのときの平均動作時間の差を比較すると、本実施例に係るロータリーダンパD1に制御された制御対象物は、6.01秒であり、変動が小さいのに対し、比較例に係るロータリーダンパに制御された制御対象物は、21.95秒であり、変動が非常に大きい。また、回転モーメントが1.0N・mのときと3.0N・mのときの平均動作時間の差を比較すると、本実施例に係るロータリーダンパD1に制御された制御対象物は、僅かに3.49秒であり、変動が非常に小さいのに対し、比較例に係るロータリーダンパに制御された制御対象物は、13.73秒となお変動が大きい。この結果から、本実施例に係るロータリーダンパD1によれば、制御対象物の回転モーメントが変化しても、負荷の変化に対応して発揮する制動力を自動的に調節して、制御対象物の回転速度の変動を極めて小さくすることができることが確認された。
【実施例2】
【0045】
本実施例に係るロータリーダンパD2は、図7、図9及び図11に示したように、流体通路5が、それぞれベーン3の厚さ方向に貫通し、相互に連通する大孔部5aと、該大孔部5aよりも小さい孔からなる小孔部5bとを有して構成される。また、弁6は、図10に示したように、被支持部6e,6fと流量調節部6gとを有する板ばねからなる。
【0046】
この弁6は、図10に示したように、粘性流体の通路を確保するため、被支持部(両端部)6e,6fの間に位置する流量調節部6gの中央部分の幅が、被支持部(両端部)6e,6fの幅よりも小さく形成されている。また、弁6は、被支持部(両端部)6e,6fによってケーシング1の内面(筒状部1bの底壁1a及び閉塞部1cの内面)を傷付けないように、被支持部(両端部)6e,6fがそれぞれ側面視で略U字状に折り返されている。他方、流量調節部6dは、一面側が突出するように撓められている。
【0047】
この弁6は、図7、図9及び図11に示したように、流体通路5を構成する大孔部5aと小孔部5bとの境界部に位置し、ベーン3の厚さ方向に略直交する方向に沿って形成された溝5cの内部に配設される。
【0048】
なお、この弁6は、実施例1と同様に、無負荷のときに流量調節部6gによって流体通路6を閉鎖しないように設けられる。すなわち、ロータリーダンパD2に対して負荷が加えられていないときは、図11(a)に示したように、弁6の被支持部(両端部)6e,6fが溝5c内においてベーン3に当接し、該ベーン3に支持された状態にあっても、流量調節部6gは、一面側が突出するように撓められた形状を維持しているため、その流量調節部6gと流体通路5を構成する小孔部5bの大孔部5a側の開口部(以下、単に「小孔部5bの開口部」という。)との間には、粘性流体が通過可能な隙間が形成されている。
【0049】
上記のように構成されるロータリーダンパD2は、ロータ7がケーシング1内で、図7において、反時計回り方向に回転すると、ベーン3が第1の室2a内の粘性流体を押圧する。これにより、弁6の流量調節部6gが流体通路5の大孔部5a内に流入した粘性流体の圧力を受けて、小孔部5bの開口部を閉鎖する方向へ変形する。
【0050】
この際、ロータリーダンパD2に加えられる負荷が小さいときには、ベーン3が第1の室2a内の粘性流体を押圧する力も弱く、それによって生ずる粘性流体の圧力も小さいため、弁6の流量調節部6gは、粘性流体の圧力を受けていないとき(図11(a)参照)よりも小孔部5bの開口部を閉鎖する方向へ僅かに変形するだけである。
【0051】
一方、ロータリーダンパD2に加えられる負荷が大きいときには、ベーン3が第1の室2a内の粘性流体を押圧する力も強く、それによって生ずる粘性流体の圧力も大きいため、弁6の流量調節部6gは、負荷が小さいときよりも、さらに小孔部5bの開口部を閉鎖する方向へ変形する。
【0052】
そして、所定以上の負荷が加えられた場合には、弁6の流量調節部6gがさらに大きく変形して、図11(b)に示したように、小孔部5bの開口部を完全に閉鎖する。
【0053】
このようにロータリーダンパD2は、実施例1と同様に、負荷の変化に対応して変形の度合いが変化する流量調節部6gを有する弁6を採用したことにより、負荷が大きくなるに従って、弁6の流量調節部6gと流体通路5を構成する小孔部5bの開口部との隙間を小さなものとして、該開口部を徐々に閉鎖していくことができるため、流体通路5を通じて第1の室2aから第2の室2bへ移動する粘性流体の流量を次第に少なくなるように制限していくことが可能である。
【0054】
従って、ロータリーダンパD2によれば、外部から何ら操作しなくても、負荷が小さいときには発揮する制動力が小さく、負荷が大きいときには発揮する制動力が大きくなるように、負荷の変化に対応して発揮する制動力の大きさを自動的に調節することができる。その結果、実施例1と同様に、制御対象物の回転モーメントが変化しても、回転速度の変動を極めて小さくすることができる。
【0055】
なお、弁6の流量調節部6gが流体通路5の小孔部5bを完全に閉鎖した場合には、粘性流体は、流体通路5を通過することができなくなり、ケーシング1とベーン3との間に形成される僅かな隙間等を通じてしか第1の室2aと第2の室2bとの間を移動できなくなるため、ロータリーダンパD2は、さらに大きな制動力を発揮することとなる。
【0056】
上記とは逆に、ロータ7がケーシング1内で、図7において、時計回り方向に回転した場合には、ベーン3は第2の室2b内の粘性流体を押圧する。これにより、第2の室2b内の粘性流体は、流体通路5の小孔部5b内に流入する。この際、弁6の流量調節部6gは、図11(a)に示したように、小孔部5bの開口部を閉鎖しないように設けられているため、小孔部5b内に流入した粘性流体は、弁6によってその移動を殆ど妨げられることなく、大孔部5a内に流入し、さらに第1の室2a内に流入する。このため、粘性流体の抵抗は非常に小さいものとなる。従って、ロータリーダンパD2は、制御対象物の回転動作に影響を与える程の制動力を発揮しない。
【実施例3】
【0057】
図12から図15は、本実施例に係るロータリーダンパD3の内部構造を示す図である。これらの図に示したように、ロータリーダンパD3におけるケーシング1は、断面略円形の筒状部1eと、該筒状部1eの両端部を閉塞する第1及び第2閉塞部1f,1gとを有して構成される。筒状部1eの一方の端部を閉塞する第1閉塞部1fは、その内面に、後述する硬質部材12cが配設される断面略円弧状の凹部が形成されており、該凹部に硬質部材12cが配設されることにより、後述する転動部材12bが当接する凸部を有する面が形成される(図14及び図17参照)。なお、第1閉塞部1fの内面に凹部を形成する代わりに、その部位を隆起させて、第1閉塞部1fの内面自体に凸部を形成してもよい。第1及び第2閉塞部1f,1gは、ともに回転軸として機能するロータ7が挿通される軸挿通孔1h,1iを有し、筒状部1eに対してかしめ加工により取り付けられている。
【0058】
ロータ7は、両端部側がそれぞれ第1及び第2閉塞部1f,1gに形成された軸挿通孔1h,1iに支持されることにより、ケーシング1の軸心に沿って設けられる。このロータ7は、中空であり、その中空部内には、内軸13が設けられている。内軸13は、ロータ7に係合して、ロータ7と共に回転し得る形状に形成されていると共に、中途で分断されており、その分断された部位には、コイルばね14が配設されている。かかる構成により、コイルばね14の弾性を利用して内軸13が伸縮可能となるため、内軸13を制御対象物に簡単に取り付けることができる。
【0059】
なお、例えば、本実施例に係るロータリーダンパD3を、外蓋と内蓋とからなる二重蓋の開閉支持機構として適用する場合には、内軸13に対し、外蓋の基端部を回転自由に連結し、内蓋の基端部を、該内蓋が回転動作することにより内軸13が回転するように係合させて取り付けることで、外蓋と内蓋をそれぞれ独立させて開閉動作させることができる。また、本実施例と異なり、例えば、内軸13をロータ7の中空部内に回転可能に設けた構造を採用した場合には、ロータ7に内蓋の基端部を連結し、内軸13に外蓋の基端部を連結することで、外蓋と内蓋をそれぞれ独立させて開閉動作させることができる。
【0060】
隔壁部4は、図15に示したように、ケーシング1を構成する筒状部1eの内周面から軸心方向に向かって突出するように互いに対向して設けられ、その先端面は、ロータ7の外周面と摺接するように断面略円弧状に形成されている。
【0061】
ベーン3は、図15に示したように、ロータ7に突設され、隔壁部4に仕切られた流体室2をさらに第1の室2aと第2の室2bとに分割するように配設されている。なお、本実施例では、2つの隔壁部4によりケーシング1内に形成された2つの流体室2をそれぞれ第1の室2aと第2の室2bとに分割するように、ロータ7を挟んで対峙するように2つのベーン3が設けられている。各ベーン3には、図12に示したように、厚さ方向に貫通する流体通路5が形成されている。
【0062】
流体室2には、シリコンオイル等の粘性流体が充填される。そして、ケーシング1内の所定の部位には、粘性流体の外部への漏れを防止するため、Oリング等のシール部材が配設されている。
【0063】
弁6は、流体通路5を通じて第1の室2aから第2の室2bへ移動する粘性流体の流量を、負荷の変化に対応して変化させる、すなわち、負荷が大きくなる程流体通路5を通過する粘性流体の流量を少なくし、負荷が小さくなる程その流量を多くする機能を有する。かかる機能を発揮するものであれば、その構造は限定されるものではないが、本実施例では、このような働きを簡易な構造で達成すべく、以下の構造を有する弁6を採用した。
【0064】
すなわち、この弁6は、図12、図15及び図16に示したように、被支持部6cと流量調節部6dとを有する板ばねからなり、略中央部分に位置する被支持部6cは、プッシュナット15を用いてベーン3に固定される。流量調節部6dは、無負荷のときに流体通路5を閉鎖しないように、被支持部6cから端部にかけて傾斜した形状に形成されている。
【0065】
この弁6の好ましい形態としては、図16(a)に示したように、流量調節部6dの一面側に傾斜角度を異ならせた2以上の斜面6a,6bからなる受圧面が形成されていることである。これにより、粘性流体の圧力を受ける面に屈曲した部位が形成されるため、単に1つの斜面を有するものと比較して、より広い範囲の負荷の変化に対応が可能となる。
【0066】
本実施例に係るロータリーダンパD3は、さらにクリック機構部12を有して構成される。クリック機構部12としては、所定の回転角度でロータ7の回転を停止させる機能を有するものであれば、その構造は限定されるものではない。例えば、一対のカム部材を用い、そのカム面同士が押し付け合うように配設され、一方のカム面に対して、他方のカム面を相対的に摺動させる構造のものを採用することもできるが、このようなカム部材を用いた構造では、カム部材自体が高価であること、およびカム面の偏摩耗により円滑なロータ7の回転が得られなくなるおそれがあること等から、本実施例では、以下の構造を有するクリック機構部12を採用した。
【0067】
すなわち、本実施例のクリック機構部12は、図12に示したように、ケーシング1内に設けられるばね部材12aと、該ばね部材12aに付勢されることにより、ケーシング1内に形成された凸部を有する面に当接して配設され、ロータ7が回転することにより、上記当接面に沿って転動する転動部材12bとを備えて構成される。ここで、本実施例では、転動部材12bが当接する面(当接面)を構成する凸部は、第1閉塞部1fの内面に形成された凹部に配設される、所定の硬度を有する硬質部材12cから構成される。
【0068】
ばね部材12aは、コイルばねからなり、ケーシング1内において、一方の端部がばね受け部材12dに、他方の端部がロータ7と一体に成形され、ケーシング1を構成する筒状部1eの内径とほぼ同じ外径を有する筒部7cの端壁7dにそれぞれ支持されて配設されている。ここで、ばね受け部材12dは、略中央にロータ7が挿通される孔部12eを有する円板からなり、ロータ7に沿って軸方向に移動可能に筒部7c内に設けられている(図12、図13及び図17参照)。
【0069】
転動部材12bは、鋼球からなり、ばね受け部材12dと第1閉塞部1fとの間に設けられ、ばね受け部材12dを介してばね部材12aに付勢されることにより、ケーシング1内に設けられた凸部を有する面、すなわち、本実施例においては、第1閉塞部1fの内面と硬質部材12cの外周面から構成される面に当接して配設されている。なお、本実施例では、転動部材12bとして鋼球を採用しているが、これに限定されるものではなく、所定の硬度を有し、転動可能な形状に形成されたものであればよい。
【0070】
硬質部材12cは、平行ピンからなり、第1閉塞部1fに形成された凹部に回転可能に配設されている。なお、硬質部材12cとしては、所定の硬度を有し、第1閉塞部1f内面のように、平坦な面に突起を形成し得る形状のものであればよく、例えば、平行ピンに代えて鋼球を用いることも可能である。鋼球や平行ピンは、熱処理等が施され、所定の硬度を有するものが市販されており、しかもカム部材の製造コストないしは部品価格よりも低価格で提供されているため、これらの市販品を転動部材12bあるいは硬質部材12cとして利用することで、製造コストを大幅に低減することが可能である。
【0071】
なお、硬質部材12cを配設しない場合には、第1閉塞部1f自体に凸部を形成し、かつ該第1閉塞部1fに熱処理等を施す必要がある。但し、この場合でも、互いに摺接し合うカム面同士を構成する一対のカム部材に熱処理等を施さなければならない場合と比較すると、製造コストを低く抑えることができる。
【0072】
本実施例のクリック機構部12によれば、上記のように、偏摩耗が最も生じやすい凸部が硬質部材12cから構成されているため、当該部位における摩耗を生じ難くすることができると共に、転動部材12bの当接面を形成する第1閉塞部1fを熱処理しなくても済むという利点がある。また、硬質部材12cを回転可能に設けたことで、転動部材12bと接触した際に該硬質部材12cが回転して、その際に生ずる摩擦を小さくすることができる。
【0073】
上記のように構成されるロータリーダンパD3は、以下のように使用される。すなわち、外蓋と内蓋とからなる二重蓋の開閉支持機構として用いられた場合には、ロータリーダンパD3は、ケーシング1が不動部位に固定されると共に、内軸13に、内蓋を構成するフレームの基端部と、外蓋を構成するフレームの基端部とがそれぞれ連結されて設置される。
【0074】
ここで、内蓋が物品を収容可能に構成されているとすると、物品を十分に収容しているときと、全く収容していないときでは、内蓋の重量が大きく変化する。また、内蓋を外蓋と一緒に閉める場合には、外蓋の重量分も内蓋の重量に加えられることとなる。従って、内蓋に物品を全く収容していない状態で、かつその内蓋のみを閉める場合と、内蓋に物品を十分に収容した状態で、かつその内蓋を外蓋と一緒に閉める場合とでは、ロータリーダンパD3に加えられる負荷が大きく変化することとなる。
【0075】
ロータリーダンパD3は、内蓋の閉止方向への回転動作に伴って、ロータ7が、図15において、反時計回り方向へ回転することにより、ベーン3が第1の室2a内の粘性流体を押圧する。これにより、弁6の流量調節部6dは、粘性流体の圧力を受けて流体通路5を閉鎖する方向へ変形するが、ロータリーダンパD3に加えられる負荷が小さいとき、例えば、内蓋に物品を全く収容していない状態で、かつその内蓋のみを閉めるときには、ベーン3が第1の室2a内の粘性流体を押圧する力も弱く、粘性流体の圧力も小さいため、図16(b)に示したように、粘性流体の圧力を受けていないとき(図16(a)参照)よりも流体通路5を閉鎖する方向へ僅かに変形するだけである。
【0076】
一方、ロータリーダンパD3に加えられる負荷が大きいとき、例えば、内蓋に物品を十分に収容した状態で、かつその内蓋を外蓋と一緒に閉めるときには、ベーン3が第1の室2a内の粘性流体を押圧する力も強く、粘性流体の圧力も大きいため、弁6の流量調節部6dは、図16(c)に示したように、2つの斜面6a,6bのうち、傾斜角度の小さい方の斜面6aを有する部分により流体通路5の第1の室2a側の開口部の一部を閉鎖するように大きく変形する。
【0077】
そして、所定以上の負荷が加えられた場合には、弁6の流量調節部6dは、傾斜角度の小さい斜面6aを有する部分のみならず、それよりも傾斜角度が大きい斜面6bを有する部分が大きく変形して、図16(d)に示したように、流体通路5を完全に閉鎖する。
【0078】
このようにロータリーダンパD3は、実施例1と同様に、負荷の変化に対応して変形の度合いが変化する流量調節部6dを有する弁6を採用したことにより、負荷が大きくなるに従って、弁6の流量調節部6dと流体通路5の開口部との隙間を小さなものとして、該開口部を徐々に閉鎖していくことができるため、流体通路5を通じて第1の室2aから第2の室2bへ移動する粘性流体の流量を次第に少なくなるように制限していくことが可能である。
【0079】
従って、ロータリーダンパD3によれば、外部から何ら操作しなくても、負荷が小さいときには発揮する制動力が小さく、負荷が大きいときには発揮する制動力が大きくなるように、負荷の変化に対応して発揮する制動力の大きさを自動的に調節することができる。その結果、実施例1と同様に、制御対象物としての内蓋の回転モーメントが変化しても、回転速度の変動を極めて小さくすることができる。
【0080】
なお、弁6の流量調節部6dが流体通路5を完全に閉鎖した場合には、粘性流体は、流体通路5を通過することができなくなり、ケーシング1とベーン3との間に形成される僅かな隙間等を通じてしか第1の室2aと第2の室2bとの間を移動できなくなるため、ロータリーダンパD3は、さらに大きな制動力を発揮することとなる。
【0081】
上記とは逆に、内蓋を閉止状態から開放させる場合には、内蓋の開放方向への回転動作に伴って、ロータ7が、図15において、時計回り方向へ回転することにより、ベーン3が第2の室2b内の粘性流体を押圧する。この際、弁6の流量調節部6dは、図16(a)に示したように、流体通路5を全開状態にしている。従って、第2の室2b内の粘性流体は、その流体通路5を通じて第1の室2aへ大量に移動することができるので、ロータリーダンパD3は制動力を発揮せず、内蓋をスムースに開放させることができる。
【0082】
また、ロータリーダンパD3は、クリック機構部12を備えて構成されるため、内蓋を、例えば全開位置において自立させることができる。すなわち、内蓋が全閉位置から全閉位置に向かって開放動作していくのに伴って、内軸13及びこれに係合するロータ7が回転する。それにより、ばね部材12aに付勢された転動部材12bが、図17(a)に示したように、第1閉塞部1fの内面に沿って転動していく。
【0083】
そして、内蓋が全開する直前の位置に達したときには、図17(b)に示したように、転動部材12bが硬質部材12cの最頂部へ乗り上げ、その直後、すなわち、内蓋が全開位置に達するときには、図17(c)に示したように、硬質部材12cの最頂部から該硬質部材12cの曲面(外周面)に沿って転がり落ちて、第1閉塞部1fの内面に至る。これにより、内軸13及びロータ7の回転が停止し、内蓋を全開位置にて自立させることができる。一方、全開状態の内蓋に対して、閉止方向へ一定以上の外力を加えると、転動部材12bが上記とは逆方向へ転動し、硬質部材12cを乗り越える。これにより、内蓋の自立状態が解除される。
【0084】
このように本実施例に係るロータリーダンパD3によれば、負荷の変化に対応して発揮する制動力を自動調節することができると共に、ロータ7を所定の回転角度で停止させることも可能である。しかも、かかる作用を簡易な構造で達成でき、さらに、単体にて達成することができる。従って、この1つのロータリーダンパD3のみで、制御対象物に対し、ダンパ機能とクリック機能とを付与することができる。
【実施例4】
【0085】
本実施例に係るロータリーダンパD4は、図18及び図19に示したように、1つのベーン3に形成される2つの貫通孔のうち、一方を主として弁6用の弁孔として機能させ、他方を逆止弁11用の弁孔として機能させることとし、また、弁6に加えて逆止弁11を設けた点で、実施例3に係るロータリーダンパD3と相違する。
【0086】
すなわち、実施例3では、1つのベーン3に2つの流体通路5を形成し、これらは、いずれも主として弁6が第1の室2aから第2の室2bへ移動する粘性流体の流量を負荷の変化に対応して変化させるための弁孔として機能するものであるが、本実施例は、図18及び図19に示したように、1つのベーン3に形成される2つの貫通孔のうち、一方を主として弁6用の弁孔(流体通路5)として機能させ、他方を逆止弁11用の弁孔11aとして機能させることとしたものである。
【0087】
ここで、逆止弁11は、例えば、弁6を構成する板ばねとは別個の板ばね等から構成することもできるが、部品点数の削減等の観点から、図19(a)に示したように、弁6と逆止弁11とを1つの板ばねから構成することが好ましい。
【0088】
この逆止弁11は、無負荷のときにおいて、弁孔11aを閉鎖するように設けられ、粘性流体が第2の室2bから第1の室2aへ移動する場合にのみ、図19(b)に示したように、粘性流体の圧力を受けて変形し、弁孔11aを開放するように動作する。これにより、粘性流体が第2の室2bから第1の室2aへ移動する場合には、流体通路5と弁孔11aの2つの貫通孔を通じて粘性流体が大量に移動可能となるため、その際に発生する粘性流体の抵抗を極めて小さくすることができる。
【実施例5】
【0089】
本実施例に係るロータリーダンパD5は、図20に示したように、クリック機構部に代えて、ケーシング1内に、非制動力発揮方向へ回転するロータ7を付勢するばね部材16を設けた点で、実施例3に係るロータリーダンパD3と相違する。
【0090】
このばね部材16は、コイルばねからなり、一端が第1閉塞部1fに、他端がロータ7と一体に成形されると共に、ケーシング1を構成する筒状部1eの内径とほぼ同じ外径を有する筒部7cの端壁7dにそれぞれ支持されて配設されている。
【0091】
ロータリーダンパD5によれば、かかるばね部材16を有することにより、実施例3で説示した使用例でいえば、ばね部材16がねじられることにより、該ばね部材16に蓄積されたエネルギーが内蓋を開放させる際に放出され、内蓋の開放動作に伴って非制動力発揮方向へ回転するロータ7を付勢するため、内蓋を自動的に又は小さい力で開放させることができる。
【実施例6】
【0092】
図21から図23は本実施例に係るロータリーダンパD6の内部構造を示す図である。これらの図に示したように、ロータリーダンパD6におけるケーシング1は、図21から図23に示したように、断面略円形の筒状部1mと、筒状部1mの一端側において、該筒状部1mと一体に成形された第1閉塞部1nと、筒状部1mの他端側において、かしめ加工により取り付けられた第2閉塞部1oとを有して構成される。筒状部1mの両端部は、第1及び第2閉塞部1n,1oにより閉塞される。第1及び第2閉塞部1n,1oは、それぞれ略中央に孔部1p,1qを有すると共に、該孔部1p,1qの周縁には、次述するロータ7に形成される溝7e,7fに嵌合して、ロータ7を支持する突起部1r,1sが設けられている。
【0093】
ロータ7は、略中央に中空部7aを有する。この中空部7aには、制御対象物と共に回転する軸が挿通される。ロータ7の両端面には、それぞれ環状の溝7e,7fが形成されている。ロータ7は、各溝7e,7fに第1及び第2閉塞部1n,1oの突起部1p,1qがそれぞれ嵌合されることにより支持され、ケーシング1に対して相対的に回転可能に設けられている。
【0094】
隔壁部4は、ケーシング1内において、ロータ7の周囲に形成される空間を仕切るように設けられる。より詳細には、隔壁部4は、図21に示したように、ケーシング1を構成する筒状部1mの内周面から軸心方向に向かって突出するように互いに対向して設けられ、その先端面は、ロータ7の外周面と摺接するように断面略円弧状に形成されている。
【0095】
上記のようにロータ7周囲の空間が隔壁部4により仕切られることによってケーシング1内に形成される空間が流体室2であり、この流体室2には、シリコンオイル等の粘性流体が充填される。
【0096】
ベーン3は、図21及び図22に示したように、ロータ7の外周面から筒状部1mの内周面に向かって突出するように、ロータ7と一体に成形されている。本実施例において、ベーン3は、ロータ7を挟んで対称的な位置に設けられている。各ベーン3は、図22に示したように、ロータ7の回転に伴って、先端面3aが筒状部1mに、上端面3bが第2閉塞部1oに、下端面3cが第1閉塞部1nに、それぞれ摺接する大きさの板状に形成されている。また、各ベーン3には、それぞれ厚さ方向に貫通する流体通路5が形成されている。なお、流体通路5の数は限定されるものではなく、1つのベーン3に複数形成することもできる。
【0097】
弁6は、図21、図23及び図24に示したように、ベーン3の一側面3dと一定の間隔を置いて、ベーン3の一側面3dに対向し、かつ流体通路5を閉塞しうる面積を有する面(以下「対向面」という。)6mと、対向面6mと表裏の位置関係にあって、ベーン3の揺動に伴い粘性流体の圧力を受ける面(以下「受圧面」という。)6nとを有すると共に、ベーン3の一側面3d側から突出する付け根部6o以外の部分が何れにも係わり合いを持たずに存するように、ベーン3と一体に成形される。
【0098】
弁6は、外力を受けることにより変形し、その外力が除去されると、もとの形状に復帰する弾性を有する。どの程度の外力を受けることにより弁6が変形を生じるかは、弁6の材質、大きさ、形状等をどのように設定するかによって異なる。特に弁6の付け根部6oの幅や厚さ、付け根部6o付近の形状等をどのように設定するかによって異なる。このことは、外力を受けることにより弁6がどの程度変形するかについても同様である。
【0099】
例えば、図25に示したように、弁6の付け根部6oを断面略円弧状とし、ベーン3の付け根部6o付近に窪み3eを形成することで、弁6の対向面6mがベーン3の一側面3dにより密着して流体通路5を閉鎖するように、弁6を変形させることができる。
【0100】
弁6は、無負荷のときは、対向面6mがベーン3の一側面3dと一定の間隔を置いて離間した状態にあるので、流体通路5を開放する。一方、弁6は、ロータリーダンパD6に所定以上の負荷が加えられると、その際に生ずる粘性流体の圧力を受圧面6nが受けることにより変形し、対向面6mがベーン3の一側面3dに密着して、流体通路5を閉鎖する。そして、弁6は、ロータリーダンパD6に対する負荷が除去されると、弁6の有する弾性により、もとの形状、すなわち、無負荷のときの状態に復帰する。
【0101】
図21に示したように、ベーン3の一側面3d側に弁6を配置した構成にすると、ロータリーダンパD6は、ベーン3が一方向へ揺動した場合にのみ制動力を発揮する一方向性のものとなる。一方、ベーン3の両側面側にそれぞれ弁6を配置した構成(図示せず)とすれば、ロータリーダンパD6は、ベーン3が一方向へ揺動した場合のみならず、逆方向へ揺動した場合にも制動力を発揮する双方向性のものとなる。
【0102】
上記のように構成されるロータリーダンパD6は、ケーシング1が不動部位に固定されると共に、制御対象物と共に回転する軸がロータ7の中空部7aに挿通され、該軸を介してロータ7が制御対象物に連結されて用いられる。
【0103】
制御対象物が一方向へ回転動作することにより、制御対象物に連結されたロータ7が、図21において、時計回り方向へ回転したとすると、ロータ7の回転に伴いベーン3がロータ7と同じく時計回り方向へ揺動する。それにより、弁6の受圧面6nが流体室2に充填された粘性流体の圧力を受けることになる。
【0104】
この際、ロータリーダンパD6に加えられる負荷が小さければ、粘性流体の圧力も小さいため、受圧面6nが粘性流体の圧力を受けても弁6は僅かに変形するだけであり、流体通路5はその弁6によって一部が閉鎖されるだけである。一方、ロータリーダンパD6に加えられる負荷が大きければ、粘性流体の圧力も大きいため、弁6は負荷が小さいときよりも大きく変形し、それにより流体通路5はその弁6によって負荷が小さいときよりも多くの部分が閉鎖されることになる。そして、ロータリーダンパD6に加えられる負荷が所定以上になると、弁6はさらに大きく変形し、対向面6mがベーン3の一側面3dに密着して、流体通路5を完全に閉鎖する。
【0105】
このように、弁6は、負荷の変化に応じて変形の度合いが変化するため、負荷が大きくなるに従って、自動的に、流体通路5を徐々に閉鎖していき、流体通路5を通じて移動する粘性流体の流量を次第に少なくなるように制限していくことが可能である。ここで「自動的に」とは、「外部から何等操作しなくても」という意味である。従って、かかる弁6を有するロータリーダンパD6によれば、負荷が小さいときには発揮する制動力を小さくし、負荷が大きいときには発揮する制動力を大きくするように、負荷の変化に対応して発揮する制動力の大きさを自動的に調節することができるので、負荷の大きさが変化した際に、ロータリーダンパD6に対して何等操作を加えなくても、制御対象物の回転速度の変動を極めて小さいものにすることができる。
【0106】
ベーン3が、図21において、反時計回り方向へ揺動したときには、弁6は流体通路5を開放しているため、粘性流体は弁6によって流量を制限されることなく流体通路5を通じて移動することができる。従って、粘性流体の抵抗は非常に小さいものとなるので、制御対象物は、ロータリーダンパD6が発揮する制動力の影響を受けずに回転動作することとなる。
【0107】
また、本実施例において採用された弁6は、ベーン3と一体に成形されているため、従来のロータリーダンパと比較して、部品点数を削減することができ、また、弁6を組み付ける工程も不要である。従って、製造コストを低減させることができる。また、従来のように、逆止弁を独立の部材として形成した後、それをロータリーダンパの一構成部品として組み付ける場合には、製造ラインにおいて、逆止弁を付け忘れるという事故が生じる危険が存在していたが、弁6をベーン3と一体に成形することにより、このような事故を完全に無くすことができる。
【実施例7】
【0108】
本実施例に係るロータリーダンパD7は、図26に示したように、流体通路5が隔壁部4に形成されると共に、弁6が隔壁部4と一体に成形されている点で、実施例6に係るロータリーダンパD6と相違する。
【0109】
本実施例のように流体通路5を隔壁部4に形成した場合には、弁6は、図26に示したように、隔壁部4の一側面4aと一定の間隔を置いて、隔壁部4の一側面4aに対向し、かつ流体通路5を閉塞し得る面積を有する面(対向面)6mと、対向面6mと表裏の位置関係にあって、ベーン3の揺動に伴い粘性流体の圧力を受ける面(受圧面)6nとを有すると共に、隔壁部4の一側面4a側から突出する付け根部6o以外の部分が何れにも係わり合いを持たずに存するように、隔壁部4と一体に成形される。なお、流体通路5の数は限定されるものではなく、1つの隔壁部4に複数形成することもできる。
【0110】
この弁6は、無負荷のときは、対向面6mが隔壁部4の一側面4aと一定の間隔を置いて離間した状態にあるので、流体通路5を開放し、ロータリーダンパD7に所定以上の負荷が加えられると、その際に生ずる粘性流体の圧力を受圧面6nが受けることにより変形し、対向面6mが隔壁部4の一側面4aに密着して、流体通路5を閉鎖する。
【0111】
図26に示したように、隔壁部4の一側面4a側に弁6を配置した構成にすると、ロータリーダンパD7は、ベーン3が一方向へ揺動した場合にのみ制動力を発揮する一方向性のものとなる。一方、隔壁部4の両側面側にそれぞれ弁6を配置した構成(図示せず)とすれば、ロータリーダンパD7は、ベーン3が一方向へ揺動した場合のみならず、逆方向へ揺動した場合にも制動力を発揮する双方向性のものとなる。
【0112】
上記のように構成されるロータリーダンパD7によっても、実施例6に係るロータリーダンパD6と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例8】
【0113】
本実施例に係るロータリーダンパD8は、図27に示したように、ベーン3を2つに分割し、分割されたもの同士の間に形成される隙間に弁6を配置した点で、実施例6に係るロータリーダンパD6と相違する。なお、これと同様に、隔壁部4を2つに分割し、分割されたもの同士の間に形成される隙間に弁6を配置した構成を採用することもできる。かかる構成を採用した場合でも、弁6はベーン3又は隔壁部4と一体に成形される。
【0114】
上記のように構成されるロータリーダンパD8によれば、弁6が粘性流体の圧力の大きさに応じて変形することにより、ベーン3の揺動方向を問わずに、流体通路5を通過する粘性流体の流量を負荷の変化に対応して自動的に変化させることができる。従って、ロータリーダンパD8に対して何等操作を加えなくても、制御対象物の回転方向を問わずに、制御対象物の回転速度の変動を極めて小さいものとすることができる。
【実施例9】
【0115】
図28は、本実施例に係るロータリーダンパD9の内部構造を示す図である。この図に示したように、ロータリーダンパD9は、ケーシング1内に設けられるロータ7と、該ロータ7とケーシング1との間に設けられる隔壁部4により仕切られた粘性流体が充填される流体室2と、ロータ7に突設され、流体室2内に配設される係合部17に遊びを有して係合可能な弁体18と、該弁体18と係合部17との間に形成される流体通路5と、該流体通路5内に設けられる弾性部材19とを有して構成される。
【0116】
ケーシング1には、内周面から軸心に向かって突出する隔壁部4が設けられている。隔壁部4の先端面は、ロータ7の外周面が摺接するように曲面に形成されている。ロータ7は、軸心に沿って貫通形成された中空部7aを有する。この中空部7aには制御対象物の回転中心となる軸が挿通される。
【0117】
係合部17は、ロータ7の外周面からケーシング1の内周面に向かって突出するように、ロータ7に突設されている。この係合部17は、ロータ7の一部を構成するように、ロータ7と一体に成形されており、軸方向に沿った長さが、ケーシング1に対してロータ7が相対的に回転した際に、一方の端面がケーシング1の開口部を閉塞する閉塞部(図示せず)に摺接し、他方の端面がケーシング1の底壁に摺接する程度の長さを有する。また、半径方向に沿った長さは、ケーシング1の内周面からロータ7の外周面までの半径方向に沿った距離よりも短く形成されている。また、係合部17は、その先端部が二股に分岐して形成されており、その二股部の各先端部17a,17bの間隙により、後述する弁体18の突起部18bが係合される係合溝17cが形成されている。
【0118】
ケーシング1内にロータ7が回転可能に設けられることにより、ロータ7とケーシング1との間には、隔壁部4により仕切られた空間が形成される。この空間が流体室2であり、該流体室2内には、シリコンオイル等の粘性流体が充填される。そして、流体室2内には、上記した係合部17が配設される。
【0119】
弁体18は、図29に示したように、平面視で略円弧状の円弧部18aと、該円弧部18aのロータ7との対向面の略中央から突出する突起部18bとを有する略T字状に形成されている。また、突起部18bを挟んだ円弧部18aの、係合部17に対向する両対向面と、突起部18bの一方の側面には、還流溝(第1乃至第3還流溝18c−18e)が形成されている。この第1乃至第3還流溝18c−18eは、いずれも上記各面の略中央に位置して形成されている。なお、突起部18bを挟んだ円弧部18aの両対向面に第1乃至第3還流溝18c−18eを形成するのに代えて、該第1乃至第3還流溝18c−18eを係合部17の各先端部17a,17bに形成してもよい。
【0120】
弁体18の軸方向長さhは、上記した係合部17の軸方向長さとほぼ同じ長さであり、また、円弧部18aの幅dは、係合部17の両先端部17a,17bに接する程度に広く形成されている。
【0121】
上記形状に形成された弁体18は、円弧部18aがケーシング1の内周面と係合部17との間に配置され、突起部18bが係合溝17cに遊びを有して配置されて、流体室2内に設けられる。
【0122】
弁体18がこのように配設されることにより、弁体18と係合部17との間には、第1乃至第3還流溝18c−18eと、突起部18b先端面と係合溝32f底面との間隙とからなる、粘性流体が通過可能な流体通路5が形成される。また、円弧部18aは、その幅dが、係合部17の両先端部17a,17bに接する程度に広く形成されているため、例えば、ケーシング1がロータ7の周りで制動力発揮方向Xへ回転した場合に、円弧部18aの外周面とケーシング1の内周面が摺接する面積が大きくなるので、弁体18aとケーシング1との密着性が高まり、シール性を向上させることができる。
【0123】
弾性部材19は、図30に示したように、一面側が突出するように曲成された板ばねからなる。なお、本実施例では、弾性部材19として、側面視で略く字状に曲げ加工されたものを採用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、側面視で略円弧状に湾曲した形状に曲げ加工されたものを採用することもできる。
【0124】
弾性部材19は、厚さ方向に貫通する切欠き19aを有するものであることが好ましい。切欠き19aを有することにより、例えば、ケーシング1がロータ7の周りで非制動力発揮方向Yへ回転した場合には、粘性流体が切欠き19aを通じて移動することとなり、移動し易くなるため、切欠き19aがないものと比較して流体通路5を通過する粘性流体の流量を増大させることができ、これにより、その際に発生する粘性流体の抵抗を非常に小さくすることができるからである。なお、切欠き19aに代えて厚さ方向に貫通する孔部が形成されたものであっても同様の効果を奏することができる。
【0125】
弾性部材19は、流体通路5内に、無負荷のときに、該流体通路5を閉鎖しないように設けられる。具体的には、弾性部材19は、例えば、図31及び図32に示したように、流体通路5内において、一面側を弁体18の突起部18bの他方の側面に当接させ、他面側を突起部18bの他方の側面に対向する、係合部17に形成された二股部のうちの他方の先端部17b内面に当接させて配設されている。なお、弾性部材19の一面側と他面側の位置関係を、上記とは逆の位置関係として、弾性部材19を流体通路5内に配設しても良いことは勿論である。
【0126】
上記のように構成されるロータリーダンパD9は、以下のように作用する。すなわち、例えば、開閉動作する制御対象物に適用した場合において、その制御対象物が閉じている状態では、図31(a)及び図32(a)に示したように、弁体18は、流体通路5内に配設された弾性部材19に付勢されることにより、突起部18bの一方の側面が係合部17に形成された二股部のうちの一方の先端部17a内面に当接した状態にある。また、弁体18がかかる位置に存する状態のときに、流体通路5は全開の状態にある。
【0127】
ここで、ロータリーダンパD9は、ケーシング1が制御対象物に固定され、ロータ7が制御対象物の回転中心となる支軸に連結され、制御対象物の回転動作に伴い、ケーシング1がロータ7の周りで回転するように設置されている。
【0128】
制御対象物が開方向へ回転動作すると、それに伴ってケーシング1が制動力発揮方向Xへ回転する(図28参照)。それにより、隔壁部4が流体室2内の粘性流体を押圧する。ロータ7は制御対象物の回転動作に伴って回転しないように設けられているので、隔壁部4が粘性流体を押圧すると、押圧された粘性流体の圧力を受けて、弁体18が、突起部18bにより弾性部材19に対して圧力を加えながら制動力発揮方向Xへ移動する。これにより、弾性部材19が、図31(b)及び図32(b)に示したように変形して、弁体18の突起部18bと係合部17の他方の先端部17bとの対向面間の隙間が減少すると共に、第3還流溝18eの流体通路5内における開口面積が減少する。このため、流体通路5を通過する粘性流体の流量が制限を受けることとなる。そして、この粘性流体の流量の制限の度合いは、弾性部材19の変形の大きさに比例し、弾性部材19の変形が大きい程流体通路5を通過する粘性流体の流量が減少することとなる。
【0129】
従って、制御対象物の回転モーメントが小さく、ロータリーダンパD9に加えられる負荷が小さい場合には、弁体18が受ける粘性流体の圧力も小さく、弁体18の移動に伴って生ずる弾性部材19の変形も小さいので、粘性流体が流体通路5を通過する際に発生する抵抗も小さいものとなり、ロータリーダンパD9が発揮する制動力も小さいものとなる。一方、制御対象物の回転モーメントが大きく、ロータリーダンパD9に加えられる負荷が大きい場合には、弁体18が受ける粘性流体の圧力も大きく、弁体18の移動に伴って生ずる弾性部材19の変形も大きくなるので、粘性流体が流体通路5を通過する際に発生する抵抗も大きいものとなり、ロータリーダンパD9が発揮する制動力も大きいものとなる。
【0130】
このように、ロータリーダンパD9によれば、負荷が大きくなるに従って、自動的に流体通路5を徐々に閉鎖していくことができるため、流体通路5を通過する粘性流体の流量を次第に少なくなるように制限していくことが可能である。従って、負荷の大きさが変化した際に、ロータリーダンパD9に対して何らの操作を加えなくても、制御対象物の回転速度の変動を極めて小さいものとすることができる。
【0131】
また、所定以上の負荷が加えられた場合には、図31(c)及び図32(c)に示したように、弁体18の突起部18bと係合部17の他方の先端部17bとの対向面間に隙間がなくなるように、弾性部材19が大きく変形して、流体通路5を完全に閉鎖する。これにより、粘性流体は、流体通路5を通じて移動できなくなるため、ロータリーダンパD9は、さらに大きな制動力を発揮することとなる。
【0132】
上記とは逆に、制御対象物を閉じるときには、制御対象物の閉方向への回転動作に伴って、ケーシング1が非制動力発揮方向Yへ回転する(図28参照)。それにより、隔壁部4が上記とは逆方向に流体室2内の粘性流体を押圧する。弁体18は、隔壁部4に押圧された粘性流体の圧力と弾性部材19の付勢力を受けることにより、非制動力発揮方向Yへ移動し、図31(a)及び図32(a)に示した原位置に復帰する。これにより、流体通路5は、全開の状態となる。従って、粘性流体は、流体通路5を通じて大量に移動することができるため、ロータリーダンパD9は、制御対象物の回転動作に影響を与える程の制動力を発揮しない。
【0133】
なお、本発明は上記構造のものに限定されるものではなく、例えば、弁体18が係合溝17cの幅よりも小さい幅を有する略直方体に形成されると共に、直交する二面に粘性流体が通過可能な還流溝を有する構成としても良い。また、隔壁部4をロータ7の外周面に突設し、その先端面がケーシング1の内周面に摺接するように形成し、ケーシング1の内周面に係合溝17cを有する係合部17を設けた構成としても良い。また、係合部17を略凸字状に形成し、弁体18を略凹字状に形成した構成としても良い。
【0134】
本発明は、また、上記した実施例に係るロータリーダンパを具備することを特徴とする自動車部品を提供する。ここにいう「自動車部品」は、何ら限定されるものではないが、グローブボックス、コンソールボックス、リクライニングシート、アームレストなどが典型例として挙げられる。以下、図面に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【0135】
図33及び図34は、自動車のインストルメントパネルに形成された開口部に設置されるグローブボックスを示す図である。このグローブボックス100の回転動作を制御するため、例えば、上記した実施例9に係るロータリーダンパD9を適用したとすると、ロータリーダンパD9は、グローブボックス100と、その支持体(グローブボックス100を支持するインストルメントパネル)110との連結部に設けられる。
【0136】
グローブボックス100は、ボックス本体120の下部両側に設けられた基部120a,120bがそれぞれ支軸130a,130bを介してボックス本体120を支持する支持体110に連結され、ボックス本体120が各支軸130a,130bを中心として回転動作することにより、その内部に形成された物品を収納する空間である収納部140が回動するようになっている。
【0137】
ロータリーダンパD9は、ケーシング1がグローブボックス100のボックス本体120に固定され、ロータ7が支軸130aに連結されて配設される。なお、図33に示した実施例では、ロータリーダンパD9がボックス本体120の片側にのみ設けられているが、ロータリーダンパD9をボックス本体120の両側に配設しても良いことは勿論である。また、ロータリーダンパD9のケーシング1は、支持体110に固定されていてもよい。この場合、ロータ7はボックス本体120の回転動作に伴ってケーシング1内で回転し得るように支軸130aに連結される。
【0138】
上記のように構成されるグローブボックス100は、ボックス本体120が開方向へ回転動作すると、それに伴って収納部140が回動する。この時、収納部140に物品が収容されている場合と収容されていない場合とではボックス本体120の回転モーメントの大きさが異なることになる。また、収納部140に物品が収容されている場合でも、その物品の重さによってボックス本体120の回転モーメントの大きさが変化する。従って、収容部140に収容される物品の有無により又は収納部140に収容された物品の重さによって、ロータリーダンパD9に加えられる負荷は変化することとなるが、上記したようにロータリーダンパD9によれば、負荷の変化に対応して発揮する制動力を自動的に調節することができるため、何ら操作しなくても、ボックス本体120の回転モーメントが変化に伴う回転速度の変動を極めて小さいものとすることができる。
【0139】
一方、ボックス本体120を閉じるときには、ロータリーダンパD9の緩衝作用が働かないため、ボックス本体120は自由に回転動作することができる。
【0140】
図35及び図37は、自動車に設置されるコンソールボックスを示す図である。このコンソールボックス200が備える外蓋210と内蓋220とからなる二重蓋の回転動作を制御するため、例えば、上記した実施例3に係るロータリーダンパD3を適用したとすると、ロータリーダンパD3は、ケーシング1に突設された脚部1kがコンソールボックス200の本体部230に取り付けられることにより、ケーシング1が固定されるとともに、内軸13に、内蓋220を構成するフレーム220aの基端部と、外蓋210を構成するフレーム210aの基端部とがそれぞれ連結されて設置される。
【0141】
コンソールボックス200の内蓋220は、図37に示したように、物品収納部220bを有しており、物品を十分に収容しているときと、全く収容していないときでは、その重量が大きく変化するものである。また、内蓋220を外蓋210と一緒に閉める場合には、外蓋210の重量分も内蓋220の重量に加えられることとなる。従って、内蓋220に物品を全く収容していない状態で、かつその内蓋220のみを閉める場合と、内蓋220に物品を十分に収容した状態で、かつその内蓋220を外蓋210と一緒に閉める場合とでは、内蓋220の回転モーメントは、大きく変化することとなる。
【0142】
しかし、ロータリーダンパD3によれば、上記したように負荷が小さいときには発揮する制動力が小さく、負荷が大きいときには発揮する制動力が大きくなるように、負荷の変化に対応して発揮する制動力の大きさを自動的に調節することができるので、内蓋220の回転モーメントが変化した際に、何ら操作を加えなくても、内蓋220の回転速度の変動を極めて小さいものとすることができる。
【0143】
一方、内蓋220を開けるときには、ロータリーダンパD3の緩衝作用が働かないため、内蓋220はスムースに回転動作することができる。
【0144】
また、ロータリーダンパD3は、クリック機構部12を有して構成されるため、内蓋220を、例えば、全開位置において自立させることもできる。
【0145】
図38及び図40は、自動車に設置されるリクライニングシートを示す図である。このリクライニングシート300が備えるシートバック310の回転動作を制御するため、例えば、上記した実施例2に係るロータリーダンパD2を適用したとすると、ロータリーダンパD2は、例えば、図39に示したように、シートバック310とシートクッション320の両側の連結部のうち、リクライニング機構330が設けられていない側の連結部に設置される。具体的には、図39及び図40に示したように、シートバック310を支持する支軸340には、シートバック310に固定されるアッパーヒンジブラケット350が回転自由に取り付けられると共に、その外側に、シートクッション320に固定されるロアーヒンジブラケット360が取り付けられ、ロータリーダンパD2は、ロアーヒンジブラケット360の外側から、支軸340に連結されると共に、ケーシング1がシートバック310の回転動作に伴って支軸340を中心として回転し得るように、取付ネジ370を介してアッパーヒンジブラケット350に連結されている。なお、図40において、符号380は、支軸340の先端部に形成されたネジ部340aに螺合し、支軸340にロータリーダンパD2を取り付けるためのナットである。
【0146】
シートバック310とシートクッション320の両側の連結部の一方側には、図38に示したように、シートバック310の位置(傾斜角度)を多段階的に調節可能なリクライニング機構330が設けられているが、リクライニング機構330のみでは、シートバック310を前方に付勢するばね部材331を備えているため、不注意に操作レバー332を持ち上げて、ギア333,334のかみ合いによるロックを解除すると、シートバック310が前方に勢いよく回転して着座者に衝突し、不快感を与えるおそれがある。
【0147】
この点、ロータリーダンパD2を具備するリクライニングシート300によれば、前方へ回動するシートバック310に対して、ロータリーダンパD2が制動力を付与することにより、ばね部材331の付勢力に抗して、シートバック310の回転動作を緩慢なものとさせることができるので、かかる不具合を解消することができる。
【0148】
また、リクライニングシート300は、シートバック310にヘッドレスト(図示せず)を取り付けているときと、取り外しているときとで、シートバック310の回転モーメントが変化することになるので、ヘッドレストの有無により、シートバック310の回転速度が大きく変化してしまうことになる。
【0149】
しかし、ロータリーダンパD2によれば、上記したように負荷が小さいときには発揮する制動力が小さく、負荷が大きいときには発揮する制動力が大きくなるように、負荷の変化に対応して発揮する制動力の大きさを自動的に調節することができるので、シートバック310の回転モーメントが変化した際に、何ら操作を加えなくても、シートバック310の回転速度の変動を極めて小さいものとすることができる。
【0150】
一方、シートバック310を後方へ回転動作させるときには、ロータリーダンパD2の緩衝作用が働かないため、シートバック310を小さい力で回転動作させることができる。
【0151】
図41及び図42は、自動車のリヤシートを構成するシートバックの前面に形成された格納凹部に起立した姿勢で収納可能なアームレストを示す図である。このアームレスト400の回転動作を制御するため、例えば、上記した実施例7に係るロータリーダンパD7を適用したとすると、ロータリーダンパD7は、アームレスト400の本体フレーム410の内側に配設され、本体フレーム410に突設された係合ピン420に、ケーシング1の外周に突設された突出部1tを係合させることにより、ケーシング1が本体フレーム410の前後方向への回転動作に伴って支軸430を中心として回動し得るように本体フレーム410に固定されると共に、ロータ7が連結ピン440を用いて支軸430に連結されて、設置される。
【0152】
アームレスト400は、自動車のリヤシートを構成するシートバック(図示せず)に取り付けられるブラケット450に支持された支軸430に、本体フレーム410が回動可能に支持されている。本体フレーム410には、両端部がブラケット450に形成された略円弧状のガイド溝450a内に配置されるガイドバー460が設けられており、このガイドバー460が本体フレーム410の回動に伴ってガイド溝450a内を移動し得る範囲が、アームレスト400の前後方向への回転角度範囲として設定されている。
【0153】
このアームレスト400は、少なくとも乗員の肘掛けとして使用可能な構造を備えると共に、物品を収納可能に構成される。従って、物品を収納しているときと、収納していないときとで、アームレスト400の回転モーメントが変化することになるので、物品を収納しているか否かで、アームレスト400の回転速度が大きく変化してしまうことになる。
【0154】
しかし、ロータリーダンパD7によれば、上記したように負荷が小さいときには発揮する制動力が小さく、負荷が大きいときには発揮する制動力が大きくなるように、負荷の変化に対応して発揮する制動力の大きさを自動的に調節することができるので、アームレスト400の回転モーメントが変化した際に、何ら操作を加えなくても、アームレスト400の回転速度の変動を極めて小さいものとすることができる。
【0155】
また、アームレスト400を使用するときには、シートバック前面に形成された格納凹部(図示せず)に起立した姿勢で収納されたアームレスト400を、手前に引き出して、前方へ回転動作させることになるが、この際、アームレスト400から手を離しても、ロータリーダンパD7の緩衝作用により、アームレスト400をゆっくりとした速度で回転動作させることができ、また、その終点においてほとんど衝撃を発生させることなく停止させて、使用姿勢とすることができる。
【0156】
一方、アームレスト400を収納するときには、ロータリーダンパD7の緩衝作用が働かないため、アームレスト400を小さい力で回転動作させることができる。
【0157】
本発明は、また、制御対象物を一方向へ付勢するばね部材を備える回転動作補助機構であって、ばね部材の応力に対抗して制御対象物の一方向への回転を遅動させるように、上記した実施例に係るロータリーダンパを設けたことを特徴とする回転動作補助機構を提供する。以下、図面に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【0158】
図43乃至図45は、本発明の一実施例に係る回転動作補助機構を備えた昇降ケースを示す図である。これらの図に示したように、昇降ケース500は、可動アーム510及び補助アーム520を介して固定板530に連結されており、使用者が図示しない取手等を把持して下方向に引き出すことにより、収納位置から使用位置へ回転動作をしつつ下降する一方、上方向へ押し上げることにより、使用位置から収納位置へ回転動作をしつつ上昇するようになっている。
【0159】
本実施例に係る回転動作補助機構は、ばね部材20を備えると共に、上記した実施例1に係るロータリーダンパD1を有して構成される。
【0160】
ばね部材20は、制御対象物を一方向へ付勢する働きをするものであり、本実施例においては、制御対象物たる昇降ケース500を上昇させる方向へ付勢する働きをする。ばね部材20としては、引張りコイルばね等を採用することもできるが、本実施例では、渦巻きばねが採用されている。渦巻きばねは、引張りコイルばね等と比較して設置スペースが小さくて済むという利点があるからである。
【0161】
ばね部材20は、不動部位に支点となる一端20aが、可動部位に作用点となる他端20bがそれぞれ支持され、昇降ケース500が下降する際の回転動作に伴って巻き締められることにより、昇降ケース500を上昇させる方向へ付勢するエネルギーを蓄積するように配設されている。
【0162】
ここで、ばね部材20の一端20aを支持する不動部位として、本実施例では、固定板530に固定されるロータリーダンパD1のケーシング1に形成された溝1d(図1及び図44参照)を活用している。すなわち、ばね部材20の一端20aは、この溝1dに係合することにより支持されている。このようにロータリーダンパD1のケーシング1に、ばね部材20の一端20aを支持する溝1dを設けることにより、固定板530等にばね部材20の一端20aを支持するための支持部を別途形成しなくても良いという利点がある。ばね部材20の他端20bを固定する可動部位としては、可動アーム510に形成された係止部510aを活用している。
【0163】
ロータリーダンパD1の配設箇所は限定されるものではないが、本実施例では、図44に示したように、ケーシング1が渦巻きばねからなるばね部材20の略中央に形成される空間内部に位置するように、固定板530に固定されている。これにより、ばね部材20及びロータリーダンパD1を含む回転動作補助機構全体を小型化することができるので、回転動作補助機構の設置スペースを小さくすることができるという利点がある。なお、ばね部材20とロータリーダンパD1とを独立させた形で配設することも勿論可能である。
【0164】
上記のように構成される回転動作補助機構は、以下のように作用する。すなわち、図45に示したように、昇降ケース500を収納位置から使用位置へ下降させると、それに伴って可動アーム510が昇降ケース500の回転方向と同じ方向(以下「下降方向」という。)に回動する。ばね部材20の他端20bは、可動アーム510に支持されているため、可動アーム510が下降方向へ回動していくことによって巻き締められていく。従って、ばね部材20の応力は、昇降ケース500が下降していくに従い大きくなる。そして、ばね部材20の応力は、下降する昇降ケース500に対し、これを支持する力として作用するため、昇降ケース500の回転動作は緩慢なものとなり、操作の安全性を確保することができる。
【0165】
一方、ロータリーダンパD1は、昇降ケース500の下降に伴う可動アーム510の回動によって、可動アーム510と共に回転する支軸540に連結されたロータ7がケーシング1内で、図1において、反時計回り方向に回転する。このようにロータ7が反時計回り方向へ回転する場合は、上記したように、ベーン3の揺動により発生する粘性流体の抵抗が非常に小さいものとなり、ロータリーダンパD1が発揮する制動力も小さいものとなる。従って、昇降ケース500は、下降するときには、ロータリーダンパD1の緩衝作用の影響を受けずに回転動作する。
【0166】
上記とは逆に、昇降ケース500を使用位置から収納位置へ上昇させるときには、ばね部材20の応力が、上昇する昇降ケース500に対し、これを持ち上げる力として作用するため、使用者は昇降ケース500を小さい力で上昇させることができる。
【0167】
もっとも、ばね部材20は、一端20aが不動部位に支持されているため、一定範囲の応力しか発揮し得ない。従って、ばね部材20のみでは、昇降ケース500の回転動作を十分に補助することは困難である。すなわち、昇降ケース500は、図43に示したように、棚550を有して構成され、物品を収納可能であるため、昇降ケース500に物品が収納されている場合と収納されていない場合、あるいは収納された物品の総重量が重い場合と軽い場合とでは、昇降ケース500全体の重量が異なり、昇降ケース500の回転モーメントが変化することとなる。従って、一定範囲の応力しか発揮し得ないばね部材20を設けただけでは、全体の重量が軽い昇降ケース500を使用位置から収納位置へ上昇させる際に、使用者の操作する力とばね部材20の応力とにより昇降ケース500の回転速度が大きく加速され、これにより、昇降ケース500が勢いよく回転動作をして収納位置にて停止することとなって、その停止時に大きな衝撃が発生するおそれがある。一方、停止時の衝撃を小さくするため、昇降ケース500に作用するばね部材20の付勢力を小さく設定すると、全体の重量が重い昇降ケース500を使用位置から収納位置へ上昇させる際の使用者の負担が大きなものとなる。
【0168】
しかし、本実施例の回転動作補助機構は、ロータリーダンパD1を具備するため、使用者による特別な操作を必要とすることなしに、かかる不具合を解消することができる。
【0169】
すなわち、ロータリーダンパD1によれば、上記したように負荷が小さいときには発揮する制動力が小さく、負荷が大きいときには発揮する制動力が大きくなるように、負荷の変化に対応して発揮する制動力の大きさを自動的に調節することができるので、昇降ケース500の回転モーメントが変化した場合でも、何ら操作を加えることなく、昇降ケース500に作用するばね部材20の付勢力を調節することが可能である。従って、本実施例の回転動作補助機構によれば、昇降ケース500の回転モーメントの変化に拘わらず、昇降ケース500が収納位置にて停止した際に発生する衝撃を常に小さいものとすることが可能である。
【0170】
また、本実施例の回転動作補助機構によれば、上記のように収納位置における停止時の衝撃を常に小さくすることが可能であるため、昇降ケース500に作用するばね部材20の付勢力を使用に支障のない範囲で大きく設定することができる。従って、全体の重量が重い昇降ケース500を使用位置から収納位置へ上昇させる場合でも、使用者の負担を小さくすることが可能である。
【0171】
また、所定以上の負荷が加えられるとロータリーダンパD1は、さらに大きな制動力を発揮するため、その制動力により、昇降ケース500に作用するばね部材20の付勢力(ばね部材20により昇降ケース500を持ち上げる力)をほぼゼロとし、昇降ケース500の回転動作を停止させることも可能である。
【0172】
なお、本発明に係る回転動作補助機構は、上記した昇降ケース以外にも種々の制御対象物に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】図1は、実施例1に係るロータリーダンパの内部構造を示す図である。
【図2】図2は、図1のA−A部断面図である。
【図3】図3は、図1のB−B部断面図である。
【図4】図4は、実施例1において採用した弁を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A部断面図である。
【図5】図5は、実施例1において採用した弁の作用を説明するための図である。
【図6】図6は、実施例1に係るロータリーダンパと比較例に係るロータリーダンパとの比較実験の結果を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例2に係るロータリーダンパの内部構造を示す図である。
【図8】図8は、図7のA−A部断面図である。
【図9】図9は、図7のB−B部断面図である。
【図10】図10は、実施例2において採用した弁を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図11】図11は、実施例2において採用した弁の作用を説明するための図であり、(a)及び(b)はいずれも図9のA−A部断面図である。
【図12】図12は、実施例3に係るロータリーダンパの内部構造を示す図である。
【図13】図13は、図12のA−A部断面図である。
【図14】図14は、図12のB−B部断面図である。
【図15】図15は、図12のC−C部断面図である。
【図16】図16は、実施例3において採用した弁の作用を説明するための図である。
【図17】図17は、実施例3において採用したクリック機構部の作用を説明するための図である。
【図18】図18は、実施例4に係るロータリーダンパの内部構造を示す図である。
【図19】図19は、実施例4において採用した弁と逆止弁の構成と作用を説明するための図である。
【図20】図20は、実施例5に係るロータリーダンパの内部構造を示す図である。
【図21】図21は、実施例6に係るロータリーダンパの内部構造を示す図である。
【図22】図22は、図21のA−A部断面図である。
【図23】図23は、図21のB−B部断面図である。
【図24】図24は、実施例6において採用したベーンと弁の構成を示す図ある。
【図25】図25は、ベーンと弁の他の構成を示す図ある。
【図26】図26は、実施例7に係るロータリーダンパの内部構造を示す図である。
【図27】図27は、実施例8に係るロータリーダンパの内部構造を示す図である。
【図28】図28は、実施例9に係るロータリーダンパの内部構造を示す図である。
【図29】図29は、実施例9において採用した弁体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のA−A部断面図である。
【図30】図30は、実施例9において採用した弾性部材を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図31】図31は、実施例9において採用した弁体と弾性部材の作用を説明するための図である。
【図32】図32は、実施例9において採用した弁体と弾性部材の作用を説明するための図である。
【図33】図33は、本発明の一実施例に係るグローブボックスを示す図である。
【図34】図34は、図33のA−A部断面図である。
【図35】図35は、本発明の一実施例に係るコンソールボックスを示す図である。
【図36】図36は、本発明の一実施例に係るコンソールボックスを示す図である。
【図37】図37は、本発明の一実施例に係るコンソールボックスを示す図である。
【図38】図38は、本発明の一実施例に係るリクライニングシートを示す概略右側面図である。
【図39】図39は、本発明の一実施例に係るリクライニングシートを示す概略左側面図である。
【図40】図40は、本発明の一実施例に係るリクライニングシートに採用されたロータリーダンパの取り付け方法を説明するための図である。
【図41】図41は、本発明の一実施例に係るアームレストの要部を示す右側面図である。
【図42】図42は、図41のA−A部断面図である。
【図43】図43は、本発明の一実施例に係る回転動作補助機構を備えた昇降ケースを示す正面図である。
【図44】図44は、本発明の一実施例に係る回転動作補助機構を備えた昇降ケースを示す左側面図である。
【図45】図45は、本発明の一実施例に係る回転動作補助機構の作用を説明するための図である。
【符号の説明】
【0174】
1 ケーシング
2 流体室
3 ベーン
4 隔壁部
5 流体通路
6 弁
7 ロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に形成され、粘性流体が充填される流体室と、該流体室内に配設されるベーンと、該ベーン又は前記流体室を仕切る隔壁部に形成される流体通路と、該流体通路を通過する前記粘性流体の流量を負荷の変化に対応させて自動的に変化させる弁とを具備し、
前記弁が、前記ベーン又は前記隔壁部に支持される被支持部と、一面側に形成される受圧面が前記粘性流体の圧力を受けることにより変形して前記流体通路を通過する前記粘性流体の流量を調節する流量調節部とを有する板ばねから成り、
前記流量調節部は、無負荷のときに前記流体通路を閉鎖しないように設けられ、前記流量調節部の変形の度合いが負荷の変化に対応して変化することによって、負荷が大きくなるに従って、前記流体通路を通過する粘性流体の流量を少なくし、逆に、負荷が小さくなるに従って、その流量を多くすることを特徴とするロータリーダンパ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリーダンパを具備することを特徴とする自動車部品。
【請求項3】
制御対象物の一方向への回転を付勢するばね部材を備える回転動作補助機構であって、少なくとも前記ばね部材の応力に対抗して前記制御対象物の一方向への回転を遅動させる請求項1に記載のロータリーダンパを設けたことを特徴とする回転動作補助機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2009−103306(P2009−103306A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310057(P2008−310057)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【分割の表示】特願2002−279365(P2002−279365)の分割
【原出願日】平成14年9月25日(2002.9.25)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【出願人】(000236665)不二ラテックス株式会社 (82)
【Fターム(参考)】