ロールの製造装置
【課題】定着ロールや加圧ロールとして使用される外径が一様でないロールを効率的に製造する。
【解決手段】中空の芯棒体9と、芯棒体9の外周に形成される弾性層10とからなるロール11で、弾性層10の外径が一様でなく最大径Dmax と最小径Dmin とが存在するロール11の製造装置である。ロール成形型1キャビティ3内に芯棒体9を同芯に挿入した状態で液状弾性体材料101を注入したロール成形型1を加熱して該液状弾性体材料101を硬化せしめて弾性層10を形成するための加熱手段12と、その後、芯棒体9を選択的に冷却して芯棒体9を弾性層10と共に熱収縮せしめ、ロール成形型1とキャビティ3の内周と芯棒体9の外周に形成されている弾性層10外周との間に所定の間隙Cを形成するために芯棒体9内に装填される冷却手段16と、この状態でロール成形型1のキャビティ3の一端から上記ロール11を弾性層10と共に効率良く引抜く。
【解決手段】中空の芯棒体9と、芯棒体9の外周に形成される弾性層10とからなるロール11で、弾性層10の外径が一様でなく最大径Dmax と最小径Dmin とが存在するロール11の製造装置である。ロール成形型1キャビティ3内に芯棒体9を同芯に挿入した状態で液状弾性体材料101を注入したロール成形型1を加熱して該液状弾性体材料101を硬化せしめて弾性層10を形成するための加熱手段12と、その後、芯棒体9を選択的に冷却して芯棒体9を弾性層10と共に熱収縮せしめ、ロール成形型1とキャビティ3の内周と芯棒体9の外周に形成されている弾性層10外周との間に所定の間隙Cを形成するために芯棒体9内に装填される冷却手段16と、この状態でロール成形型1のキャビティ3の一端から上記ロール11を弾性層10と共に効率良く引抜く。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子複写機やレーザープリンター等の定着ロールや加圧ロールとして使用されるロールの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のロールとしては芯棒体と、該芯棒体の外周に形成される弾性層とからなり、加圧対象のシートの皺寄(しわより)防止のために、中央部の外径が両端部の外径よりも小さな逆クラウン形状が付与されている。また小径あるいは肉厚が薄い強度の弱い定着ロールのヒートロールとして使用する時、芯棒体に外力が作用することによって該芯棒体が変形し、ロールに過度の紙しわ抑制作用による用紙の波うち変形が発生することあるが、このような場合には該ヒートロールに対向して配置されるプレッシャーロールをクラウン形状としてこのような過度の紙しわ抑制作用を修正する場合がある。上記ロールはロール成形型のキャビティ内に芯棒体を挿入した状態で液状弾性体材料を注入し、加熱して該液状弾性体材料を硬化させて弾性層とすることによってロールを製造し、該ロールを該ロール成形型から脱型する方法によって製造される。
上記ロールを上記ロール成形型から脱型させる方法としては、該ロール成形型のキャビティの一端から製造されたロールを引抜く方法が一般的であるが、該ロールが上記したように逆クラウン形状を有している場合、あるいは中央部の外径が両端部の外径よりも大きい正クラウン形状、端から他端にかけて径が大きくなるテーパー形状、径が軸に沿って大きくなったり小さくなったりするコルゲート形状の場合は最大径と最小径との差がアンダーカット部分となって該ロールを該ロール成形型のキャビティから引抜くことができなくなる。
ロール脱型対策として、従来はロール成形型を分割型とする手段が提供されている(例えば特許文献1)。この方法ではロール製造後にロール成形型を分割してロールを取り出すことができるから、アンダーカット部分が存在しても脱型は可能である
【0003】
【特許文献1】特開平7−1510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら成形型を分割すると、分割型相互の境界線に沿って製品にパーティングラインが形成され、ロール表面が平滑にならないと云う問題が生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、中空の芯棒体9と、上記芯棒体9の外周に形成される弾性層10とからなるロール11であって、該弾性層10の外径は一様でなく最大径Dmax と最小径Dmin とが存在するロール11の製造装置であって、ロール成形型1キャビティ3内に上記芯棒体9を同芯に挿入した状態で液状弾性体材料101を注入した該ロール成形型1を加熱することによって該ロール成形型1内に注入された該液状弾性体材料101を硬化せしめて弾性層10を形成するための加熱手段と、その後上記芯棒体9を選択的に冷却して上記芯棒体9を上記弾性層10と共に熱収縮せしめ、上記ロール成形型1と上記キャビティ3の内周と上記芯棒体9の外周に形成されている弾性層10外周との間に所定の間隙Cを形成するために上記芯棒体9内に装填される冷却手段と、この状態で上記ロール成形型1のキャビティ3の一端から上記ロール11を引抜き脱型する脱型手段とからなるロール11の製造装置を提供するものである。
【0006】
上記加熱手段は上記芯棒体9内に挿入されるパイプヒーター12および/または上記ロール成形型1の外周に被着されるジャケット型ヒーター13であることが好ましい。
【0007】
また上記冷却手段は固体または液体または気体の冷媒を上記芯棒体9内に装填する冷媒装填手段16であることが好ましく、また記芯棒体9内の冷媒を受止する受止手段14が付設されていることが好ましい。
また更に上記冷却手段は固体または液体を上記芯棒体9内に装填する手段であって、上記冷媒は上記芯棒体9内の所定の位置にのみ装填され、上記受止手段14は上記冷媒の上記芯棒体9内における装填位置に対応して、上記芯棒体9内で上下位置調節可能にされていることが好ましい。
【0008】
上記冷媒装填手段16は液体または気体である冷媒を上記芯棒体9内において吹付ける吹付け手段24であって、該吹付け手段24は上記芯棒体内を上下移動可能にされることによって、上記芯棒体9内の所定の位置においてのみ冷媒吹付けを行なうように設定されていることが好ましい。
【0009】
上記冷却手段は液体または気体の冷媒が循環している冷却筒18,21であることが好ましく、上記冷却筒18,21は上記芯棒体9の所定の位置のみを冷却するように該位置に対応する部分が拡径され、該拡径部分19A,21Bのみが上記芯棒体9内周に接触するように設定されていることが好ましく、上記冷却筒18,21の拡径部分19A,21Bの外周には弾性層20が形成されていることが好ましい。
【0010】
上記冷却手段には、上記ロール成形型1を保温または加熱する手段が付設されていることが好ましい。
上記加熱手段と、上記冷却手段とはターンテーブルTまたはコンベア上に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
〔作用〕
ロール成形型1内に注入した液状弾性体材料101を加熱手段12,13によって加熱して硬化せしめて弾性層10を形成した後、該ロール成形型1内に挿入してある中空の芯棒体9を冷却手段によって選択的に冷却して該芯棒体9を弾性層10と共に熱収縮させることによってロール11外径を縮小し、ロール成形型1と、該ロール11外周(弾性層10外周)と該ロール成形型1のキャビティ3の内周との間に所定の間隙Cを形成する。上記間隙Cの巾Wcが上記ロール成形型1のキャビティ3の内径のアンダーカット部分Uを形成する最大径と最小径との差(Dmax −Dmin =ΔD)の1/2(ΔD/2)に等しいかまたはそれ以上になると、上記アンダーカット部分Uが解消され上記ロール11は上記ロール成形型1のキャビティ3の一端から引抜くことが出来る。
【0012】
上記冷却手段は、上記芯棒体9内に固体または液体または気体の冷媒を装填する冷媒装填手段16であるか、または上記芯棒体9内において液体または気体の冷媒を吹付ける吹付け手段24である。
【0013】
本発明ではロール11のアンダーカット部分Uのみを冷却して縮径せしめてもよい。この場合には、上記冷却手段に上記芯棒体9内の冷媒を受止する受止手段14を付設しておき、該受止手段14を上記芯棒体9内の所定の位置に設定し、この状態で該受止手段14によって固体または液体の冷媒を受止する。
更に冷媒が液体または気体の場合には、上記吹付け手段24を上記芯棒体9内において、上下させることによって所定の吹付け位置に該吹付け手段24を配置する。
このように、ロール11のアンダーカット部分Uを冷却することによって、冷媒の使用量を節減することが出来る。
【0014】
冷媒が固体または液体の場合には、上記冷媒を使用後に受取る受取り手段15と、該受取り手段15と該冷媒装填手段16とを連絡する冷媒回収循環経路17とを付設しておけば、冷媒の再使用が可能になり、冷媒の使用量を節減することが出来る。
【0015】
また冷却手段として、液体または気体の冷媒が循環している冷却筒18を使用すると、冷媒の使用量が節減される。上記芯棒体9の所定の位置のみを冷却するためには、上記冷却筒18の該位置に対応する部分のみを拡径し、該拡径部分19Aのみが上記芯棒体9の内周に接触するように設定する。このようにすれば熱交換量を削減して冷媒使用量を節減することが出来る。この場合、上記冷却筒18の拡径部分19Aのみの外周に弾性層20が形成されていると、該拡径部分19Aが上記芯棒体9内周に密接することになって冷却効率が向上する。
【0016】
上記冷却手段に上記ロール成形型1を保温または加熱する手段が付設されていると、ロール成形型1と上記芯棒体9との温度差を大きくとることが出来て、ロール11のアンダーカット部分Uを解消するための時間が短縮される。
【0017】
上記加熱手段と、上記冷却手段とはターンテーブルTまたはコンベア上に配置されていると、多数個のロール成形型1を逐次加熱手段と冷却手段とに送り込むことが出来、大量生産が容易になる。
【0018】
〔効果〕
本発明ではアンダーカット部分が存在するロールであって、弾性層が例えば0.3mm程度の薄いロールであっても、分割型を使用することなく脱型することが出来、表面にパーティングラインや傷のない平滑なロールを大量連続的に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を図1〜図19に示すー実施例に基づいて以下に詳細に説明する。
【0020】
〔準備段階〕
図1に示すようにロール成形型本体2の逆クラウン形状のキャビティ3内にはチューブ状の離型性フィルム8が挿入され、図2に示すように該フィルム8と該成形型本体2のキャビティ3内周との間隙を真空引きすることによって、該フィルム8は該キャビティ3内周に密着せしめられる。
【0021】
該離型性フィルム8としては、例えばフッ素樹脂のような離型性材料が使用される。
【0022】
次いで図3に示すように、該成形型本体2のキャビティ3内には、キャビティ3中心軸に沿って鉄基金属あるいはアルミニウムを材料とする中空の芯棒体9が挿入され、該成形型本体2の上下端にはキャップ4,5が装着され、ロール成形型1が組立てられる。該芯棒体9は上下キャップ4,5の軸受け6,7によって上下支持される。
【0023】
〔材料注入工程〕
材料注入工程にあっては、上記準備段階において芯棒体9を挿入したロール成形型1のキャビティ3内周と該芯棒体9との間隙内には、図4に示すように、下側のキャップ5の材料注入口5Aから、液状弾性体材料101が注入充填される材料注入工程が実施される。
【0024】
上記液状弾性体材料101としては、例えばシリコンゴムプレポリマー、ウレタンゴムプレポリマー、アクリル樹脂プレポリマー等のゴムまたはエラストマーの前駆体が使用される。
【0025】
〔加熱工程〕
上記液状弾性体材料101が注入充填された該ロール成形型1は加熱手段によって所定温度に加熱して液状弾性体材料101を硬化せしめて弾性層10を形成する加熱硬化工程が実施される。このようにして本実施例では逆クラウン形状のロール11が製造される。上記加熱条件は例えばシリコンプレポリマーの場合には200℃、10分である。
【0026】
加熱手段としては図5に示すように、上側のキャップ4に挿入口4Aを設けておき、該挿入口4Aを介してロール成形型1内に挿入されている該芯棒体9内に電熱式パイプヒーター12を挿入する手段、あるいは図6に示すように、該ロール成形型1の外周に二つ割りあるいは三つ割り以上のジャケット型電熱式ヒーター13を装着する手段、あるいは該芯棒体9内に電熱式パイプヒーター12を挿入すると共に、該ロール成形型1の外周に二つ割りあるいは三つ割り以上のジャケット型電熱式ヒーター13を装着する手段、あるいは上記ロール成形型1全体を加熱炉に入れる手段等が適用される。
【0027】
本実施例の場合、上記ロール成形型1のキャビティ3内周最大径Dmax (両端部)は65.555mm(25℃)、最小径Dmin (中央部)は65.444mm(25℃)、ΔD=Dmax −Dmin =0.111mm、芯棒体9はストレート形状で、外径が64.745mm(25℃)、内径が40mm(25℃)、長さ300mm、離型性フィルム厚0.03mmに設定した。
【0028】
〔冷却工程〕
上記加熱工程の後は該成形型1の芯棒体9から電熱式パイプヒーター12を抜取り、あるいは二つ割りあるいは三つ割り以上のジャケット型電熱式ヒーター13を該ロール成形型1から取はずし、下側のキャップ5の挿入口5Bを介して該芯棒体9の下端から冷媒受止手段としての円板状移動蓋14を挿着し、更に該ロール成形型1の下側に冷媒受取り手段としてのとしての受取りロート15を配置する。該移動蓋14の外周にはガスケット14Aが装着されている。そして室温(25℃)において、直ちに上側のキャップ4をとりはずして図7に示すように冷却手段としての冷媒装填手段であるバルブ16A付ホッパー16のバルブ16Aを開いてペレット状のドライアイスDを芯棒体9内に下端から略100mmの高さまで(全長の1/3)投入充填した。該ドライアイスDは上記移動蓋14上に受止められるが、この場合のドライアイス使用量は400gであった。
【0029】
本実施例では、該芯棒体9のアンダーカット部分Uとなる下端部付近のみが該ドライアイスDによって冷却される。上記冷却工程の間ドライアイスDは蒸発するので連続的に補給して充填量を一定に確保した。この場合のロール成形型1と芯棒体9の中央より60mm下の位置での側面温度の時間的変化を測定した。その結果は図8に示される。
【0030】
更に上記側面温度変化にもとづくこの位置でのロール成形型1のキャビティ3の内周とロール11の外周との間に形成された間隙Cの巾の時間的変化を図9に示す。ロール11冷却後は移動蓋14下方に移動させ、残存しているドライアイスDを該受取りロート15に受取って回収し、循環経路17を介してホッパー16に戻す。
【0031】
図8、図9を参照すると、ドライアイスD投入後2分ないし5分程度でロール成形型1の側面温度は200℃から160℃に低下し、芯棒体9の側面温度は200℃から60℃に低下した。その時の間隙Cの巾Wcは0069mm>ΔD/2(0.11÷2=0.05mm)であった。
【0032】
本実施例では、冷却工程における冷却手段としてホッパー16からドライアイスDを芯棒体9内に投入充填した。上記冷却手段に代えて図11に示すような冷却筒18を該芯棒体9内に挿入してもよい。該冷却筒18は金属製本体19と、該本体19内に設定されている冷媒経路20とからなり、該冷媒経路20に液体あるいは気体の冷媒を循環させる。
【0033】
更に部分的に芯棒体9を冷却するためには、図12に示すように冷却筒18の本体19の所定個所に拡径部分19Aを設定する。該拡径部分19Aの外周には該芯棒体9内周に対する密接性を高めるために、ゴムやエラストマー等からなる弾性層20を形成することが望ましいが、弾性層20は本発明にとって必須のものではない。
【0034】
図13には該冷却筒の変形21が示される。該冷却筒21は中空21Aになっており、冷媒注入パイプ22と冷媒排出口23とを介して冷媒が該冷却筒21の中空21A内に循環せしめられる。
芯棒体9を部分的に冷却するには、図12に示す冷却筒18と同様に図14に示すように拡径部21Bを設定する。該拡径部21B外周に弾性層を形成してもよい。
【0035】
更に芯棒体9を冷却する手段としては、図15に示すように冷媒吹付け手段としての上下移動可能なスプレーパイプ24を使用してもよい。該スプレーパイプ24においては、スプレーノズル24Aから液体または気体の冷媒が芯棒体9の内周に全長にわたってあるいは部分的に吹付けられる。
【0036】
なお冷却工程にあっては、ロール成形型1外周を保温して温度低下を防止したり、ロール成形型1外周にジャケット型電熱ヒーター13を装着して加熱しつゝ芯棒体9内を冷却してもよい。このようにすれば、内外温度差が大きくとれ、アンダーカット部分が効率的に解消出来る。
【0037】
〔脱型工程〕
上記冷却工程後、成形されたロール11はロール成形型1のキャビティ3から図10に示すように円滑に引抜くことが出来た。脱型手段としてはロール11を手で引抜くか、あるいはグリップ等でロール11の端部を掴んで引抜いてもよい。
【0038】
上記冷媒は芯棒体内部全体に充填してもよいが、本実施例のように芯棒体9の下端(引抜き方向反対側端)付近、望ましくは下端から長さの1/3程度充填する。
【0039】
本実施例では冷媒としてドライアイスDを使用したが、本発明ではその他水、氷、液体窒素、液化炭酸ガスあるいは上記液体窒素や液化炭酸ガスを気化せしめた低温ガス等の固体、液体あるいは気体の冷媒を使用することが出来、また水等で冷却した後、更に低温のその他の冷媒で本冷してもよい。本発明で使用する冷媒は冷却効率の点からみて15℃以下であることが望ましい。
【0040】
更に上記実施例以外、ロールは正クラウン形状、テーパー形状、あるいはコルゲート形状等であってもよい。
【0041】
図16、図17には正クラウン形状のロール11Aを製造するロール成形型1Aが示される。本ロール成形型1Aの成形型本体2Aは正クラウン形状のキャビティ3Aを有する。
上記ロール11Aを製造する場合には、図16に示すように芯棒体9内部で移動蓋14を上方に移動させて正クラウン形状のアンダーカット部分Uである中央部最大径付近に位置させ、ホッパー16からドライアイスDを投入すると、該ドライアイスDは該移動蓋14に受止められ芯棒体9内部中央部分に充填される。このようにしてロール11Aのアンダーカット部分Uのみが選択的に冷却されることによって縮径してアンダーカット部分Uが解消され、図17に示すように芯棒体9と弾性層10Aとからなるロール11Aがロール成形型1Aから引き抜かれる。
【0042】
図12、図14に示す冷却筒18,21を使用する場合には、該冷却筒18,21を芯棒体9内で上下移動させ、拡径部19A,21Bを該芯棒体9の中央部のアンダーカット部分Uに位置させ、この部分Uのみを冷却する。
【0043】
上記加熱工程、冷却工程、脱型工程は図18、図19に示すようにターンテーブルT1 ,T2 上に配置される加熱ステーションA1 ,A2 または加熱ステーションA1 ,A2 ,A3 、冷却ステーションB、脱型投入ステーションCにおいて、連続的に行なわれてもよい。ターンテーブルT1 の場合は20分1回の割合で回転され、加熱工程A1 +A2 =5+5=10分、冷却工程は5分、脱型および新規ロール成形型1投入は5分のタイムスケジュールが割当てられる。ターンテーブルT2 の場合はターンテーブルT1 の場合よりも加熱工程に長時間(9.9分)を要する場合であり、加熱工程はA1 +A2 +A3 =3.3+3.3+3.3=9.9分、冷却工程3.3分、脱型および新規ロール成形型1投入は3.3分計16.5分のタイムスケジュールが割当てられる。
【0044】
本発明ではターンテーブルTに代えてコンベア上に各ステーションを設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明にあっては、大径で弾性層が薄いロールであっても、該ロールを短時間の冷却工程で成形型から円滑に脱型することが出来るから、生産効率が向上する。したがって本発明は産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】離型性フィルムを挿入した状態のロール成形型側断面図。
【図2】離型性フィルムをキャビティ内周に密着させた状態のロール成形型側断面図。
【図3】芯棒体を挿入した上下にキャップを装着した状態のロール成形型側断面図。
【図4】液状弾性体材料を充填した状態のロール成形型側断面図。
【図5】ロール成形型に電熱式パイプヒーターを挿入し加熱して液状弾性体材料を硬化せしめて弾性層とした状態のロール成形型側断面図。
【図6】ロール成形型に二つ割りジャケット型電熱ヒーターを装着し加熱して液状弾性体材料を硬化せしめて弾性層とした状態のロール成形型側断面図。
【図7】冷却した状態のロール成形型側断面図。
【図8】冷却工程におけるロール成形型とロールの芯棒体の側面温度の時間的変化を示すグラフ
【図9】冷却工程におけるロール成形型キャビティ内周とロール外周との間隙の巾の時間的変化を示すグラフ
【図10】ロール脱型説明側断面図。
【図11】冷却筒の説明側断面図。
【図12】拡径部を有する冷却筒の説明側断面図。
【図13】変形冷却筒の説明側断面図。
【図14】拡径部を有する変形冷却筒の説明側断面図。
【図15】スプレーパイプを冷却手段とした説明図。
【図16】正クラウン形状のロールを製造する場合のロール成形型側断面図。
【図17】正クラウン形状のロールの側面図。
【図18】各ステーションの配置図。
【図19】他の実施例の各ステーションの配置図。
【符号の説明】
【0047】
1,1A ロール成形型
2,2A ロール成形型本体
3,3A キャビティ
4,5 上下キャップ
8 離型性フィルム
9 芯棒体
10,10A 弾性層
101 液状弾性体材料
11,11A ロール
12 電熱式パイプヒーター(加熱手段)
13 ジャケット型電熱ヒーター(加熱手段)
14 移動蓋(冷媒受止手段)
14A ガスケット
15 受取りロート(冷媒受取り手段)
16 ホッパー(冷媒装填手段(冷却手段)
16A バルブ
17 循環経路
18,21 冷却筒(冷却手段)
24 スプレーパイプ(冷媒吹付け手段)(冷却手段)
D 冷媒(ドライアイス)
C キャビティ内周とロール外周との間の間隙
T ターンテーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子複写機やレーザープリンター等の定着ロールや加圧ロールとして使用されるロールの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のロールとしては芯棒体と、該芯棒体の外周に形成される弾性層とからなり、加圧対象のシートの皺寄(しわより)防止のために、中央部の外径が両端部の外径よりも小さな逆クラウン形状が付与されている。また小径あるいは肉厚が薄い強度の弱い定着ロールのヒートロールとして使用する時、芯棒体に外力が作用することによって該芯棒体が変形し、ロールに過度の紙しわ抑制作用による用紙の波うち変形が発生することあるが、このような場合には該ヒートロールに対向して配置されるプレッシャーロールをクラウン形状としてこのような過度の紙しわ抑制作用を修正する場合がある。上記ロールはロール成形型のキャビティ内に芯棒体を挿入した状態で液状弾性体材料を注入し、加熱して該液状弾性体材料を硬化させて弾性層とすることによってロールを製造し、該ロールを該ロール成形型から脱型する方法によって製造される。
上記ロールを上記ロール成形型から脱型させる方法としては、該ロール成形型のキャビティの一端から製造されたロールを引抜く方法が一般的であるが、該ロールが上記したように逆クラウン形状を有している場合、あるいは中央部の外径が両端部の外径よりも大きい正クラウン形状、端から他端にかけて径が大きくなるテーパー形状、径が軸に沿って大きくなったり小さくなったりするコルゲート形状の場合は最大径と最小径との差がアンダーカット部分となって該ロールを該ロール成形型のキャビティから引抜くことができなくなる。
ロール脱型対策として、従来はロール成形型を分割型とする手段が提供されている(例えば特許文献1)。この方法ではロール製造後にロール成形型を分割してロールを取り出すことができるから、アンダーカット部分が存在しても脱型は可能である
【0003】
【特許文献1】特開平7−1510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら成形型を分割すると、分割型相互の境界線に沿って製品にパーティングラインが形成され、ロール表面が平滑にならないと云う問題が生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、中空の芯棒体9と、上記芯棒体9の外周に形成される弾性層10とからなるロール11であって、該弾性層10の外径は一様でなく最大径Dmax と最小径Dmin とが存在するロール11の製造装置であって、ロール成形型1キャビティ3内に上記芯棒体9を同芯に挿入した状態で液状弾性体材料101を注入した該ロール成形型1を加熱することによって該ロール成形型1内に注入された該液状弾性体材料101を硬化せしめて弾性層10を形成するための加熱手段と、その後上記芯棒体9を選択的に冷却して上記芯棒体9を上記弾性層10と共に熱収縮せしめ、上記ロール成形型1と上記キャビティ3の内周と上記芯棒体9の外周に形成されている弾性層10外周との間に所定の間隙Cを形成するために上記芯棒体9内に装填される冷却手段と、この状態で上記ロール成形型1のキャビティ3の一端から上記ロール11を引抜き脱型する脱型手段とからなるロール11の製造装置を提供するものである。
【0006】
上記加熱手段は上記芯棒体9内に挿入されるパイプヒーター12および/または上記ロール成形型1の外周に被着されるジャケット型ヒーター13であることが好ましい。
【0007】
また上記冷却手段は固体または液体または気体の冷媒を上記芯棒体9内に装填する冷媒装填手段16であることが好ましく、また記芯棒体9内の冷媒を受止する受止手段14が付設されていることが好ましい。
また更に上記冷却手段は固体または液体を上記芯棒体9内に装填する手段であって、上記冷媒は上記芯棒体9内の所定の位置にのみ装填され、上記受止手段14は上記冷媒の上記芯棒体9内における装填位置に対応して、上記芯棒体9内で上下位置調節可能にされていることが好ましい。
【0008】
上記冷媒装填手段16は液体または気体である冷媒を上記芯棒体9内において吹付ける吹付け手段24であって、該吹付け手段24は上記芯棒体内を上下移動可能にされることによって、上記芯棒体9内の所定の位置においてのみ冷媒吹付けを行なうように設定されていることが好ましい。
【0009】
上記冷却手段は液体または気体の冷媒が循環している冷却筒18,21であることが好ましく、上記冷却筒18,21は上記芯棒体9の所定の位置のみを冷却するように該位置に対応する部分が拡径され、該拡径部分19A,21Bのみが上記芯棒体9内周に接触するように設定されていることが好ましく、上記冷却筒18,21の拡径部分19A,21Bの外周には弾性層20が形成されていることが好ましい。
【0010】
上記冷却手段には、上記ロール成形型1を保温または加熱する手段が付設されていることが好ましい。
上記加熱手段と、上記冷却手段とはターンテーブルTまたはコンベア上に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
〔作用〕
ロール成形型1内に注入した液状弾性体材料101を加熱手段12,13によって加熱して硬化せしめて弾性層10を形成した後、該ロール成形型1内に挿入してある中空の芯棒体9を冷却手段によって選択的に冷却して該芯棒体9を弾性層10と共に熱収縮させることによってロール11外径を縮小し、ロール成形型1と、該ロール11外周(弾性層10外周)と該ロール成形型1のキャビティ3の内周との間に所定の間隙Cを形成する。上記間隙Cの巾Wcが上記ロール成形型1のキャビティ3の内径のアンダーカット部分Uを形成する最大径と最小径との差(Dmax −Dmin =ΔD)の1/2(ΔD/2)に等しいかまたはそれ以上になると、上記アンダーカット部分Uが解消され上記ロール11は上記ロール成形型1のキャビティ3の一端から引抜くことが出来る。
【0012】
上記冷却手段は、上記芯棒体9内に固体または液体または気体の冷媒を装填する冷媒装填手段16であるか、または上記芯棒体9内において液体または気体の冷媒を吹付ける吹付け手段24である。
【0013】
本発明ではロール11のアンダーカット部分Uのみを冷却して縮径せしめてもよい。この場合には、上記冷却手段に上記芯棒体9内の冷媒を受止する受止手段14を付設しておき、該受止手段14を上記芯棒体9内の所定の位置に設定し、この状態で該受止手段14によって固体または液体の冷媒を受止する。
更に冷媒が液体または気体の場合には、上記吹付け手段24を上記芯棒体9内において、上下させることによって所定の吹付け位置に該吹付け手段24を配置する。
このように、ロール11のアンダーカット部分Uを冷却することによって、冷媒の使用量を節減することが出来る。
【0014】
冷媒が固体または液体の場合には、上記冷媒を使用後に受取る受取り手段15と、該受取り手段15と該冷媒装填手段16とを連絡する冷媒回収循環経路17とを付設しておけば、冷媒の再使用が可能になり、冷媒の使用量を節減することが出来る。
【0015】
また冷却手段として、液体または気体の冷媒が循環している冷却筒18を使用すると、冷媒の使用量が節減される。上記芯棒体9の所定の位置のみを冷却するためには、上記冷却筒18の該位置に対応する部分のみを拡径し、該拡径部分19Aのみが上記芯棒体9の内周に接触するように設定する。このようにすれば熱交換量を削減して冷媒使用量を節減することが出来る。この場合、上記冷却筒18の拡径部分19Aのみの外周に弾性層20が形成されていると、該拡径部分19Aが上記芯棒体9内周に密接することになって冷却効率が向上する。
【0016】
上記冷却手段に上記ロール成形型1を保温または加熱する手段が付設されていると、ロール成形型1と上記芯棒体9との温度差を大きくとることが出来て、ロール11のアンダーカット部分Uを解消するための時間が短縮される。
【0017】
上記加熱手段と、上記冷却手段とはターンテーブルTまたはコンベア上に配置されていると、多数個のロール成形型1を逐次加熱手段と冷却手段とに送り込むことが出来、大量生産が容易になる。
【0018】
〔効果〕
本発明ではアンダーカット部分が存在するロールであって、弾性層が例えば0.3mm程度の薄いロールであっても、分割型を使用することなく脱型することが出来、表面にパーティングラインや傷のない平滑なロールを大量連続的に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を図1〜図19に示すー実施例に基づいて以下に詳細に説明する。
【0020】
〔準備段階〕
図1に示すようにロール成形型本体2の逆クラウン形状のキャビティ3内にはチューブ状の離型性フィルム8が挿入され、図2に示すように該フィルム8と該成形型本体2のキャビティ3内周との間隙を真空引きすることによって、該フィルム8は該キャビティ3内周に密着せしめられる。
【0021】
該離型性フィルム8としては、例えばフッ素樹脂のような離型性材料が使用される。
【0022】
次いで図3に示すように、該成形型本体2のキャビティ3内には、キャビティ3中心軸に沿って鉄基金属あるいはアルミニウムを材料とする中空の芯棒体9が挿入され、該成形型本体2の上下端にはキャップ4,5が装着され、ロール成形型1が組立てられる。該芯棒体9は上下キャップ4,5の軸受け6,7によって上下支持される。
【0023】
〔材料注入工程〕
材料注入工程にあっては、上記準備段階において芯棒体9を挿入したロール成形型1のキャビティ3内周と該芯棒体9との間隙内には、図4に示すように、下側のキャップ5の材料注入口5Aから、液状弾性体材料101が注入充填される材料注入工程が実施される。
【0024】
上記液状弾性体材料101としては、例えばシリコンゴムプレポリマー、ウレタンゴムプレポリマー、アクリル樹脂プレポリマー等のゴムまたはエラストマーの前駆体が使用される。
【0025】
〔加熱工程〕
上記液状弾性体材料101が注入充填された該ロール成形型1は加熱手段によって所定温度に加熱して液状弾性体材料101を硬化せしめて弾性層10を形成する加熱硬化工程が実施される。このようにして本実施例では逆クラウン形状のロール11が製造される。上記加熱条件は例えばシリコンプレポリマーの場合には200℃、10分である。
【0026】
加熱手段としては図5に示すように、上側のキャップ4に挿入口4Aを設けておき、該挿入口4Aを介してロール成形型1内に挿入されている該芯棒体9内に電熱式パイプヒーター12を挿入する手段、あるいは図6に示すように、該ロール成形型1の外周に二つ割りあるいは三つ割り以上のジャケット型電熱式ヒーター13を装着する手段、あるいは該芯棒体9内に電熱式パイプヒーター12を挿入すると共に、該ロール成形型1の外周に二つ割りあるいは三つ割り以上のジャケット型電熱式ヒーター13を装着する手段、あるいは上記ロール成形型1全体を加熱炉に入れる手段等が適用される。
【0027】
本実施例の場合、上記ロール成形型1のキャビティ3内周最大径Dmax (両端部)は65.555mm(25℃)、最小径Dmin (中央部)は65.444mm(25℃)、ΔD=Dmax −Dmin =0.111mm、芯棒体9はストレート形状で、外径が64.745mm(25℃)、内径が40mm(25℃)、長さ300mm、離型性フィルム厚0.03mmに設定した。
【0028】
〔冷却工程〕
上記加熱工程の後は該成形型1の芯棒体9から電熱式パイプヒーター12を抜取り、あるいは二つ割りあるいは三つ割り以上のジャケット型電熱式ヒーター13を該ロール成形型1から取はずし、下側のキャップ5の挿入口5Bを介して該芯棒体9の下端から冷媒受止手段としての円板状移動蓋14を挿着し、更に該ロール成形型1の下側に冷媒受取り手段としてのとしての受取りロート15を配置する。該移動蓋14の外周にはガスケット14Aが装着されている。そして室温(25℃)において、直ちに上側のキャップ4をとりはずして図7に示すように冷却手段としての冷媒装填手段であるバルブ16A付ホッパー16のバルブ16Aを開いてペレット状のドライアイスDを芯棒体9内に下端から略100mmの高さまで(全長の1/3)投入充填した。該ドライアイスDは上記移動蓋14上に受止められるが、この場合のドライアイス使用量は400gであった。
【0029】
本実施例では、該芯棒体9のアンダーカット部分Uとなる下端部付近のみが該ドライアイスDによって冷却される。上記冷却工程の間ドライアイスDは蒸発するので連続的に補給して充填量を一定に確保した。この場合のロール成形型1と芯棒体9の中央より60mm下の位置での側面温度の時間的変化を測定した。その結果は図8に示される。
【0030】
更に上記側面温度変化にもとづくこの位置でのロール成形型1のキャビティ3の内周とロール11の外周との間に形成された間隙Cの巾の時間的変化を図9に示す。ロール11冷却後は移動蓋14下方に移動させ、残存しているドライアイスDを該受取りロート15に受取って回収し、循環経路17を介してホッパー16に戻す。
【0031】
図8、図9を参照すると、ドライアイスD投入後2分ないし5分程度でロール成形型1の側面温度は200℃から160℃に低下し、芯棒体9の側面温度は200℃から60℃に低下した。その時の間隙Cの巾Wcは0069mm>ΔD/2(0.11÷2=0.05mm)であった。
【0032】
本実施例では、冷却工程における冷却手段としてホッパー16からドライアイスDを芯棒体9内に投入充填した。上記冷却手段に代えて図11に示すような冷却筒18を該芯棒体9内に挿入してもよい。該冷却筒18は金属製本体19と、該本体19内に設定されている冷媒経路20とからなり、該冷媒経路20に液体あるいは気体の冷媒を循環させる。
【0033】
更に部分的に芯棒体9を冷却するためには、図12に示すように冷却筒18の本体19の所定個所に拡径部分19Aを設定する。該拡径部分19Aの外周には該芯棒体9内周に対する密接性を高めるために、ゴムやエラストマー等からなる弾性層20を形成することが望ましいが、弾性層20は本発明にとって必須のものではない。
【0034】
図13には該冷却筒の変形21が示される。該冷却筒21は中空21Aになっており、冷媒注入パイプ22と冷媒排出口23とを介して冷媒が該冷却筒21の中空21A内に循環せしめられる。
芯棒体9を部分的に冷却するには、図12に示す冷却筒18と同様に図14に示すように拡径部21Bを設定する。該拡径部21B外周に弾性層を形成してもよい。
【0035】
更に芯棒体9を冷却する手段としては、図15に示すように冷媒吹付け手段としての上下移動可能なスプレーパイプ24を使用してもよい。該スプレーパイプ24においては、スプレーノズル24Aから液体または気体の冷媒が芯棒体9の内周に全長にわたってあるいは部分的に吹付けられる。
【0036】
なお冷却工程にあっては、ロール成形型1外周を保温して温度低下を防止したり、ロール成形型1外周にジャケット型電熱ヒーター13を装着して加熱しつゝ芯棒体9内を冷却してもよい。このようにすれば、内外温度差が大きくとれ、アンダーカット部分が効率的に解消出来る。
【0037】
〔脱型工程〕
上記冷却工程後、成形されたロール11はロール成形型1のキャビティ3から図10に示すように円滑に引抜くことが出来た。脱型手段としてはロール11を手で引抜くか、あるいはグリップ等でロール11の端部を掴んで引抜いてもよい。
【0038】
上記冷媒は芯棒体内部全体に充填してもよいが、本実施例のように芯棒体9の下端(引抜き方向反対側端)付近、望ましくは下端から長さの1/3程度充填する。
【0039】
本実施例では冷媒としてドライアイスDを使用したが、本発明ではその他水、氷、液体窒素、液化炭酸ガスあるいは上記液体窒素や液化炭酸ガスを気化せしめた低温ガス等の固体、液体あるいは気体の冷媒を使用することが出来、また水等で冷却した後、更に低温のその他の冷媒で本冷してもよい。本発明で使用する冷媒は冷却効率の点からみて15℃以下であることが望ましい。
【0040】
更に上記実施例以外、ロールは正クラウン形状、テーパー形状、あるいはコルゲート形状等であってもよい。
【0041】
図16、図17には正クラウン形状のロール11Aを製造するロール成形型1Aが示される。本ロール成形型1Aの成形型本体2Aは正クラウン形状のキャビティ3Aを有する。
上記ロール11Aを製造する場合には、図16に示すように芯棒体9内部で移動蓋14を上方に移動させて正クラウン形状のアンダーカット部分Uである中央部最大径付近に位置させ、ホッパー16からドライアイスDを投入すると、該ドライアイスDは該移動蓋14に受止められ芯棒体9内部中央部分に充填される。このようにしてロール11Aのアンダーカット部分Uのみが選択的に冷却されることによって縮径してアンダーカット部分Uが解消され、図17に示すように芯棒体9と弾性層10Aとからなるロール11Aがロール成形型1Aから引き抜かれる。
【0042】
図12、図14に示す冷却筒18,21を使用する場合には、該冷却筒18,21を芯棒体9内で上下移動させ、拡径部19A,21Bを該芯棒体9の中央部のアンダーカット部分Uに位置させ、この部分Uのみを冷却する。
【0043】
上記加熱工程、冷却工程、脱型工程は図18、図19に示すようにターンテーブルT1 ,T2 上に配置される加熱ステーションA1 ,A2 または加熱ステーションA1 ,A2 ,A3 、冷却ステーションB、脱型投入ステーションCにおいて、連続的に行なわれてもよい。ターンテーブルT1 の場合は20分1回の割合で回転され、加熱工程A1 +A2 =5+5=10分、冷却工程は5分、脱型および新規ロール成形型1投入は5分のタイムスケジュールが割当てられる。ターンテーブルT2 の場合はターンテーブルT1 の場合よりも加熱工程に長時間(9.9分)を要する場合であり、加熱工程はA1 +A2 +A3 =3.3+3.3+3.3=9.9分、冷却工程3.3分、脱型および新規ロール成形型1投入は3.3分計16.5分のタイムスケジュールが割当てられる。
【0044】
本発明ではターンテーブルTに代えてコンベア上に各ステーションを設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明にあっては、大径で弾性層が薄いロールであっても、該ロールを短時間の冷却工程で成形型から円滑に脱型することが出来るから、生産効率が向上する。したがって本発明は産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】離型性フィルムを挿入した状態のロール成形型側断面図。
【図2】離型性フィルムをキャビティ内周に密着させた状態のロール成形型側断面図。
【図3】芯棒体を挿入した上下にキャップを装着した状態のロール成形型側断面図。
【図4】液状弾性体材料を充填した状態のロール成形型側断面図。
【図5】ロール成形型に電熱式パイプヒーターを挿入し加熱して液状弾性体材料を硬化せしめて弾性層とした状態のロール成形型側断面図。
【図6】ロール成形型に二つ割りジャケット型電熱ヒーターを装着し加熱して液状弾性体材料を硬化せしめて弾性層とした状態のロール成形型側断面図。
【図7】冷却した状態のロール成形型側断面図。
【図8】冷却工程におけるロール成形型とロールの芯棒体の側面温度の時間的変化を示すグラフ
【図9】冷却工程におけるロール成形型キャビティ内周とロール外周との間隙の巾の時間的変化を示すグラフ
【図10】ロール脱型説明側断面図。
【図11】冷却筒の説明側断面図。
【図12】拡径部を有する冷却筒の説明側断面図。
【図13】変形冷却筒の説明側断面図。
【図14】拡径部を有する変形冷却筒の説明側断面図。
【図15】スプレーパイプを冷却手段とした説明図。
【図16】正クラウン形状のロールを製造する場合のロール成形型側断面図。
【図17】正クラウン形状のロールの側面図。
【図18】各ステーションの配置図。
【図19】他の実施例の各ステーションの配置図。
【符号の説明】
【0047】
1,1A ロール成形型
2,2A ロール成形型本体
3,3A キャビティ
4,5 上下キャップ
8 離型性フィルム
9 芯棒体
10,10A 弾性層
101 液状弾性体材料
11,11A ロール
12 電熱式パイプヒーター(加熱手段)
13 ジャケット型電熱ヒーター(加熱手段)
14 移動蓋(冷媒受止手段)
14A ガスケット
15 受取りロート(冷媒受取り手段)
16 ホッパー(冷媒装填手段(冷却手段)
16A バルブ
17 循環経路
18,21 冷却筒(冷却手段)
24 スプレーパイプ(冷媒吹付け手段)(冷却手段)
D 冷媒(ドライアイス)
C キャビティ内周とロール外周との間の間隙
T ターンテーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の芯棒体と、上記芯棒体の外周に形成される弾性層とからなるロールであって、該弾性層の外径は一様でなく最大径と最小径とが存在するロールの製造装置であって、ロール成形型キャビティ内に上記芯棒体を同芯に挿入した状態で液状弾性体材料を注入した該ロール成形型を加熱することによって該ロール成形型内に注入された該液状弾性体材料を硬化せしめて弾性層を形成するための加熱手段と、その後上記芯棒体を選択的に冷却して上記芯棒体を上記弾性層と共に熱収縮せしめ、上記ロール成形型と上記キャビティの内周と上記芯棒体の外周に形成されている弾性層外周との間に所定の間隙を形成するために上記芯棒体内に装填される冷却手段と、この状態で上記ロール成形型のキャビティの一端から上記ロールを引抜き脱型する脱型手段とからなることを特徴とするロールの製造装置。
【請求項2】
上記加熱手段は上記芯棒体内に挿入されるパイプヒーターおよび/または上記ロール成形型の外周に被着されるジャケット型ヒーターである請求項1に記載のロールの製造装置。
【請求項3】
上記冷却手段は固体または液体または気体の冷媒を上記芯棒体内に装填する冷媒装填手段である請求項1または請求項2に記載のロールの製造装置。
【請求項4】
上記冷却手段には、上記芯棒体内の冷媒を受止する受止手段が付設されている請求項3に記載のロールの製造装置。
【請求項5】
上記冷却手段は固体または液体を上記芯棒体内に装填する手段であって、上記冷媒は上記芯棒体内の所定の位置にのみ装填され、上記受止手段は上記冷媒の上記芯棒体内における装填位置に対応して、上記芯棒体内で上下位置調節可能にされている請求項4に記載のロールの製造装置。
【請求項6】
上記冷媒装填手段は液体または気体である冷媒を上記芯棒体内において吹付ける吹付け手段であって、該吹付け手段は上記芯棒体内を上下移動可能にされることによって、上記芯棒体内の所定の位置においてのみ冷媒吹付けを行なうように設定されている請求項3に記載のロールの製造装置。
【請求項7】
上記冷却手段には、上記芯棒体内に装填される固体または液体の冷媒を使用後に受取る受取り手段と、上記受取り手段と上記冷媒装填手段とを連絡する冷媒回収循環経路とが付設されている請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載のロールの製造装置。
【請求項8】
上記冷却手段は液体または気体の冷媒が循環している冷却筒である請求項1または請求項2に記載のロールの製造装置。
【請求項9】
上記冷却筒は上記芯棒体の所定の位置のみを冷却するように該位置に対応する部分が拡径され、該拡径部分のみが上記芯棒体内周に接触するように設定されている請求項8に記載のロールの製造装置。
【請求項10】
上記冷却筒の拡径部分の外周には弾性層が形成されている請求項9に記載のロールの製造装置。
【請求項11】
上記冷却手段には、上記ロール成形型を保温または加熱する手段が付設されている請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のロールの製造装置。
【請求項12】
上記加熱手段と、上記冷却手段とはターンテーブルまたはコンベア上に配置されている請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のロールの製造装置。
【請求項1】
中空の芯棒体と、上記芯棒体の外周に形成される弾性層とからなるロールであって、該弾性層の外径は一様でなく最大径と最小径とが存在するロールの製造装置であって、ロール成形型キャビティ内に上記芯棒体を同芯に挿入した状態で液状弾性体材料を注入した該ロール成形型を加熱することによって該ロール成形型内に注入された該液状弾性体材料を硬化せしめて弾性層を形成するための加熱手段と、その後上記芯棒体を選択的に冷却して上記芯棒体を上記弾性層と共に熱収縮せしめ、上記ロール成形型と上記キャビティの内周と上記芯棒体の外周に形成されている弾性層外周との間に所定の間隙を形成するために上記芯棒体内に装填される冷却手段と、この状態で上記ロール成形型のキャビティの一端から上記ロールを引抜き脱型する脱型手段とからなることを特徴とするロールの製造装置。
【請求項2】
上記加熱手段は上記芯棒体内に挿入されるパイプヒーターおよび/または上記ロール成形型の外周に被着されるジャケット型ヒーターである請求項1に記載のロールの製造装置。
【請求項3】
上記冷却手段は固体または液体または気体の冷媒を上記芯棒体内に装填する冷媒装填手段である請求項1または請求項2に記載のロールの製造装置。
【請求項4】
上記冷却手段には、上記芯棒体内の冷媒を受止する受止手段が付設されている請求項3に記載のロールの製造装置。
【請求項5】
上記冷却手段は固体または液体を上記芯棒体内に装填する手段であって、上記冷媒は上記芯棒体内の所定の位置にのみ装填され、上記受止手段は上記冷媒の上記芯棒体内における装填位置に対応して、上記芯棒体内で上下位置調節可能にされている請求項4に記載のロールの製造装置。
【請求項6】
上記冷媒装填手段は液体または気体である冷媒を上記芯棒体内において吹付ける吹付け手段であって、該吹付け手段は上記芯棒体内を上下移動可能にされることによって、上記芯棒体内の所定の位置においてのみ冷媒吹付けを行なうように設定されている請求項3に記載のロールの製造装置。
【請求項7】
上記冷却手段には、上記芯棒体内に装填される固体または液体の冷媒を使用後に受取る受取り手段と、上記受取り手段と上記冷媒装填手段とを連絡する冷媒回収循環経路とが付設されている請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載のロールの製造装置。
【請求項8】
上記冷却手段は液体または気体の冷媒が循環している冷却筒である請求項1または請求項2に記載のロールの製造装置。
【請求項9】
上記冷却筒は上記芯棒体の所定の位置のみを冷却するように該位置に対応する部分が拡径され、該拡径部分のみが上記芯棒体内周に接触するように設定されている請求項8に記載のロールの製造装置。
【請求項10】
上記冷却筒の拡径部分の外周には弾性層が形成されている請求項9に記載のロールの製造装置。
【請求項11】
上記冷却手段には、上記ロール成形型を保温または加熱する手段が付設されている請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のロールの製造装置。
【請求項12】
上記加熱手段と、上記冷却手段とはターンテーブルまたはコンベア上に配置されている請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のロールの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
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【図6】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−268938(P2007−268938A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99733(P2006−99733)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】
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