説明

ワーク取り出し方法

【課題】ワークの状態に関係なく密集した複数のワークの中から任意のワークを簡単に取り出すことができるワーク取り出し方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るワーク取り出し方法によれば、検出されたワークWの位置及び姿勢に基づき任意のワークWが第1方向D1に押し動かされる。こうしてワークW上に第1チャック15aで把持可能な第1把持領域A1が確保される。その結果、第1チャック15aはワークWの第1把持領域A1を確実に把持することができる。その後、ワークWの一端が持ち上げられて、第2チャック15bが把持可能な第2把持領域A2が確保される。その結果、第2チャック15bはワークWの第2把持領域A2を確実に把持することができる。こうしてワーク取り出し装置1は、ワークWの状態に関係なく密集した複数のワークWの中から任意のワークWを簡単に取り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパレットなどからワークを取り出す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パレットなどの収納箱には例えば複数のワークすなわち物品が密集して収納される。こうした物品の取り出しに際して、例えばロボットハンドが用いられる。従来、ロボットハンドは例えば吸着部材や磁石などを用いて収納箱から物品を持ち上げる。その他、例えばロボットハンドで引っ掛けるためのバンドが予め物品に装着される技術も知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−255787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸着部材による取り出しでは、表面の粗い物品に吸着部材が吸着することが困難な場合がある。また、磁石による取り出しの実現には物品が磁性材料から形成されることが必要であり、非鉄金属や金属以外の材質の物品を取り出すことは不可能である。加えて、磁性材料の物品の場合には物品が磁石によって磁性を帯びてしまうことが問題となることもある。また、バンドの装着にあたってコストが嵩んでしまう。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、ワークの状態に関係なく密集した複数のワークの中から任意のワークを簡単に取り出すことができるワーク取り出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によれば、第1方向に長尺に延びるとともに第1方向に直交する第2方向に並列に配置されるワークを、当該ワークを把持する第1及び第2把持機構を有するロボットハンドにより取り出すワーク取り出し方法であって、
任意に選択された取り出し対象の前記ワークを撮像した画像の処理に基づき当該ワークの位置及び姿勢を検出する工程と、
前記検出された位置及び姿勢に基づいて、前記ロボットハンドに形成される当接部を前記ワークに当接させて所定の距離にわたって前記ワークを前記第1方向に押し動かし、前記ワーク上に第1把持領域を確保する工程と、
前記第1把持機構によって前記ワークの前記第1把持領域を把持して前記ワークの一端を持ち上げて前記ワークを傾斜姿勢に保持し、前記ワーク上に第2把持領域を確保する工程と、
前記第2把持機構によって前記ワークの前記第2把持領域を把持して前記ワークの他端を持ち上げる工程と、を備えるワーク取り出し方法が提供される。
【0007】
本発明に係るワーク取り出し方法では、前記当接部は、前記第1及び第2把持機構のうちの少なくともいずれか一方に形成される。また、本発明に係るワーク取り出し方法では、前記ワークは、前記第1方向に長尺に延びる本体部分と、当該本体部分の外周面から突き出る突部と、を備え、前記第1方向への前記ワークの押し動かしの実現にあたって前記当接部は前記突部に当接する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のワーク取り出し方法によれば、ワークの状態に関係なく密集した複数のワークの中から任意のワークを簡単に取り出すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のワーク取り出し方法の実施に用いられる一具体例に係るワーク取り出し装置の構成を示す図である。
【図2】ワーク取り出し装置とワークとの関係を示す部分拡大斜視図である。
【図3】本発明に係るワーク取り出し方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】取り出し対象のワーク上に作業ツールを配置する工程を示す部分拡大斜視図である。
【図5】ワークを押し出す工程を示す部分拡大斜視図である。
【図6】第1チャックでワークの第1把持領域を把持する工程を示す部分拡大斜視図である。
【図7】ワークの他端を支点にしてワークの一端を持ち上げる工程を示す部分拡大斜視図である。
【図8】第2チャックでワークの第2把持領域を把持する工程を示す部分拡大斜視図である。
【図9】ワークの他端を持ち上げる工程を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明のワーク取り出し方法の実施に用いられる一具体例に係るワーク取り出し装置1の構成を示す図である。ワーク取り出し装置1は、例えば6軸の垂直多関節型のロボットを構成する多関節ロボット2を備える。多関節ロボット2は、例えば床面Fに不動に固定されるベース台3と、例えば床面Fに直交する回転軸線X1回りに回転自在にベース台3に連結されるハンドリングロボット4と、を備える。
【0011】
ハンドリングロボット4は、回転軸線X1回りに回転自在にベース台3に連結される基部5と、床面Fに平行な回転軸線X2回りに回転自在に基部5に連結される基端アーム6と、回転軸線X2に平行な回転軸線X3回りに回転自在に基端アーム6の先端に連結される先端アーム7と、第1及び第2回転軸線X1、X2に垂直な方向に延びる回転軸線X4回りに回転自在に先端アーム7の先端に連結される手首要素8と、手首要素8に連結されるロボットハンド9と、を備える。手首要素8は、回転軸線X4に直交する回転軸線X5回りでロボットハンド9の回転を可能にする。同時に、手首要素8は、回転軸線X4及びX5に直交する回転軸線X6回りの作業ツールすなわちロボットハンド9の回転を可能にする。回転軸線X1〜X6の回転の実現にあたって多関節ロボット2には例えばサーボモータ(図示せず)が組み込まれればよい。
【0012】
本実施形態では、作業ツールには例えば後述のワークをハンドリングするロボットハンド9が用いられるものの、例えばアーク溶接、スポット溶接、組立、検査、シーリング、レーザ、又はウォータジェットなどの加工の種類に応じて選択される他の作業ツールが手首要素8に連結されてもよい。
【0013】
図2を併せて参照すると、ロボットハンド9は、手首要素8に連結されて例えば回転軸線X6に直交しつつ広がる支持プレート13と、支持プレート13に連結されて回転軸線X6に沿って相互に平行に延びる1対の第1及び第2支持アーム14a、14bと、第1及び第2支持アーム14a、14bの先端にそれぞれ連結される第1及び第2把持機構すなわち第1及び第2チャック15a、15bと、を備える。第1及び第2チャック15a、15bは、回転軸線X6に平行な方向に、支持プレート13に最大限に接近する後退位置と支持プレート13から最大限に離れる前進位置の間で、第1及び第2支持アーム14a、14bに対してそれぞれ相対移動することができる。
【0014】
第1及び第2チャック15a、15bはそれぞれ、床面Fに平行な第1方向D1に沿って広がるとともに相互に対向する1対の把持爪16、16を備える。図2の位置では、把持爪16、16同士は、例えば作動空気供給源(図示せず)から供給される作動空気に基づき、床面Fに平行で第1方向D1に直交する第2方向D2に相互に近づいたり相互に離れたりすることができる。図2から明らかなように、ロボットハンド9には当接部17が形成される。ここでは、当接部17は、第1チャック15aの把持爪16の一方の側面に形成される。当接部17は、例えば第1チャック15aの把持爪16、16の相互に対向する内向き面に直交する側面であって、第2チャック15bとは反対側に配置される側面に形成される。
【0015】
ロボットハンド9は、例えば第1及び第2支持アーム14a、14bの間で支持プレート13に固定される視覚センサ18を備える。視覚センサ18は、例えば回転軸線X6に平行な方向に(ここでは、下向き)に視野を有する撮像装置と、撮像装置の視野内に配置される物体に向かってレーザを投光するレーザスリット投光器と、を備える(それぞれ図示せず)。撮像装置には例えばCCDカメラが用いられる。視覚センサ18は、レーザスリット投光器から投光されるレーザの投光箇所を撮像装置で撮像する。撮像された画像の画像データは後述の画像処理装置に向かって出力される。ここでは、後述されるように、視覚センサ18は、レーザが投光されたワークの画像の画像データを出力する。
【0016】
床面F上にはパレット21が配置される。パレット21内には例えば複数のワークWが収納される。本実施形態では、ワークWは、第1方向D1に長尺に延びる本体部分すなわちロッド部分22と、このロッド部分22の外周面から外側に突き出る突部すなわちフランジ23と、を備える。ロッド部分22は例えば円柱形に形成される。フランジ23は、ロッド部分22の軸心回りにロッド部分22の外周面から半径方向外側に突き出る円盤形のフランジから形成される。ここでは、フランジ23は、ロッド部分22の外周面から90°の角度で突き出る。フランジ23は例えばロッドの一端に形成される。その一方で、ロッド部分22の他端にはフランジ23は形成されない。
【0017】
パレット21内でワークWは第2方向D2に並列に配置される。すなわち、隣接するワークW同士の間でロッド部分22の軸心はほぼ平行に規定される。図2から明らかなように、ワークW同士は、隣り合うロッド部分22同士がほぼ接触する程度の距離で隣接して配置される。ワークWのフランジ23は、例えば第1方向D1に規定されるパレット21の両側縁から外側に配置される。第2方向D2に規定されるワークW同士の距離が小さいことから、一方の側縁でフランジ23同士の間に重なりが生じ得る。ここでは、パレット21内には同一の種類のみのワークWが配置される。
【0018】
図1に示されるように、ワーク取り出し装置1は、ワーク取り出しソフトウェアプログラムを記憶する記憶装置24と、ワーク取り出しソフトウェアプログラムに基づき様々な演算を実行することによって多関節ロボット2の動作を制御する制御装置25と、を備える。演算処理にあたってワーク取り出しソフトウェアプログラムは一時的にメモリ(図示せず)に読み出されればよい。なお、ワーク取り出しソフトウェアプログラムは例えばFD(フレキシブルディスク)やCD−ROMその他の可搬性記録媒体から記憶装置24に取り込まれてもよく、LANやインターネットといったコンピュータネットワークから記憶装置24に取り込まれてもよい。
【0019】
演算処理に基づき制御装置25はハンドリングロボット4の各サーボモータや作動空気供給源に駆動指令を出力する。駆動指令を受けたサーボモータは、各回転軸線X1〜X6回りの駆動に基づきハンドリングロボット4を所定の姿勢に移動させる。こうしてロボットハンド9のチャック15a、15bはワークWに対して所定の位置に位置決めされる。また、駆動指令を受けた作動空気供給源は作動空気の供給に基づき把持爪16、16を作動させる。その結果、把持爪16、16は例えばワークWを掴んだり放したりすることができる。こうしてハンドリングロボット4は所定のワークWの取り出し作業を実行することができる。
【0020】
ワーク取り出し装置1は、多関節ロボット2に接続される画像処理装置26をさらに備える。図2に示されるように、視覚センサ18の撮像装置はパレット21内のワークWを撮像する。撮像にあたってレーザスリット投光器は任意のワークWに向かってレーザを投光する。画像処理装置26は、投光されたワークWの形状と、例えば予め記憶装置24に記憶されたワークデータで特定される形状モデルとを照合する。ここでは、形状モデルは例えばロッド部分22の軸線の位置及び方向、並びにフランジ23の位置を特定する。画像処理装置26は、照合の結果に基づきワークWの位置及び姿勢を検出することができる。検出の結果は制御装置25に向かって出力される。
【0021】
次に、本発明の一実施形態に係るワーク取り出し方法を説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るワーク取り出し方法の処理の流れを示すフローチャートである。まず、制御装置25はワーク取り出しソフトウェアプログラムを実行する。ステップS1で、制御装置25からの駆動指令に基づきロボットハンド9はパレット21内の任意のワークW上に位置決めされる。図4に示されるように、第1方向D1に規定されるパレット21の一方の側縁にフランジ23を配置するワークWのうちで最も外側にフランジ23を配置するワークWが任意の取り出し対象のワークWとして選択される。すなわち、パレット21の側縁から外側に向かう第1方向D1の移動を妨げられないワークWが選択される。
【0022】
制御装置25は視覚センサ18に駆動指令を出力する。その結果、ステップS2で、視覚センサ18はワークWの一端付近でロッド部分22及びフランジ23の画像を撮像する。レーザスリット投光器はワークW上にレーザを投光する。画像処理装置26は、撮像された画像の画像データに基づきワークWの位置及び姿勢を検出する。ここでは、ワークWのロッド部分22の軸線の位置及び方向、並びにフランジ23の位置が検出される。制御装置25は、ワークWの位置及び姿勢の検出を確認すると(ステップS3、YES)、ステップ4に処理を進める。その一方で、ワークWの位置及び姿勢が検出されなかった場合は(ステップS3、NO)、制御装置25はステップS1から処理をやり直す。
【0023】
制御装置25は、ステップS4で、検出したワークWの位置及び姿勢に基づいてロボットハンド9を押し出し位置に位置決めする。押し出し位置では、第1チャック15aの当接部17がワークWのフランジ23の内向き面に対向する。チャック15a、15bはロッド部分22の軸線に平行に配置される。すなわち、第2チャック15bは、第1チャック15aよりもパレット21の内側でワークWのロッド部分22上に配置される。このとき、第1チャック15aは第1支持アーム14a上で前進位置に位置決めされる一方で、第2チャック15bは第2支持アーム14b上で後退位置に位置決めされる。すなわち、第2チャック15bは第1チャック15aに比べてワークWから大きな距離で離れる。
【0024】
このとき、図5に示されるように、制御回路25は、ステップS5で、フランジ23の内向き面に当接部17を押し当てて第1方向D1に所定の距離にわたってロボットハンド9を押し動かす。ワークWは第1方向D1に所定の距離にわたって移動させられる。その結果、ワークWのロッド部分22はパレット21の側縁から所定の長さで突き出る。こうして、パレット21の側縁又は他のワークWのフランジ23の外向き面から外側には、ワークWのロッド部分22上に第1チャック15aの第1把持領域A1が確保される。なお、第1方向D1におけるワークWの移動距離は、パレット21の側縁又は他のワークWのフランジ23の外向き面とワークWのフランジ23の内向き面との間に第1チャック15aの把持爪16、16が進入することが可能な距離に設定されればよい。
【0025】
続いて、図6に示されるように、制御回路25は駆動指令に基づきワークWに向かってロボットハンド9自体を降下させる。降下は例えば回転軸線X6に沿って実行される。その結果、第1チャック15aの把持爪16、16同士の間にロッド部分22の第1把持領域A1が配置される。第1チャック15aへの駆動指令に基づき、ステップS6で、第1チャック15aの把持爪16、16はロッド部分22の第1把持領域A1を把持する。前述のように、第2チャック15bは支持プレート13に接近する後退位置に配置されることから、第1チャック15aの把持爪16がロッド部分22の位置まで降下するにも拘わらず、第2チャック15bの把持爪16のロッド部分22への衝突や接触は回避される。
【0026】
制御回路25は、把持爪16、16によるロッド部分22の把持を確認すると(ステップS7、YES)、ステップS8に処理を進める。その一方で、把持爪16、16による把持が確認されないと(ステップS7、NO)、ステップS6の処理がやり直される。その後、ステップS8で、ロボットハンド9の移動に基づきフランジ23を有しないワークWの他端を支点にしてフランジ23を有するワークWの一端が持ち上げられる。図7に示されるように、ワークWは傾斜姿勢で保持される。この傾斜姿勢では、床面Fに対するロッド部分22の軸線の交差角は例えば20°程度に設定される。ロッド部分22の軸線と支持プレート13とはほぼ平行な位置関係が保持される。こうしてワークWが傾斜姿勢を確立することから、第2チャック15bの把持爪16の下方にはロッド部分22上に第2把持領域A2が確保される。
【0027】
続いて、制御回路25の駆動指令に基づき、第2チャック15bは後退位置から前進位置に移動させられる。前述のように、ロッド部分22の軸線と支持プレート13とはほぼ平行な位置関係が保持されることから、第2チャック15bの把持爪16、16同士の間にロッド部分22の第2把持領域A2が配置される。その後、図8に示されるように、ステップS9で、第2チャック15bの把持爪16、16はロッド部分22の第2把持領域A2を把持する。第1チャック15aの把持爪16、16の第1把持領域A1の把持は維持される。制御回路25は、把持爪16、16によるロッド部分22の把持を確認すると(ステップS10、YES)、ステップS11に処理を進める。その一方で、把持爪16、16による把持が確認されないと(ステップS10、NO)、ステップS9の処理がやり直される。
【0028】
続いて、図9に示されるように、ステップS11で、制御回路25の駆動指令に基づきロボットハンド9の支持プレート13は例えば水平姿勢を確立する。こうして第2チャック15bは、フランジ23を有しないワークWの他端を持ち上げる。こうしてロボットハンド9はパレット21からワークWを取り出す。支持プレート13の水平姿勢に基づき、取り出されたワークWは例えば床面Fに平行な水平姿勢に持ち上げられる。その後、ロボットハンド9の移動に基づきワークWは所定の位置に運ばれる。所定の位置にワークWを運んだワーク取り出し装置1では、パレット21上の他のワークWに対して前述のステップS1〜S11までの処理が繰り返される。こうしてパレット21からワークWが順次取り出されていく。
【0029】
以上のような本発明に係るワーク取り出し方法によれば、検出されたワークWの位置及び姿勢に基づき任意のワークWが第1方向D1に押し動かされ、ワークW上に第1チャック15aで把持可能な第1把持領域A1が確保される。その結果、第1チャック15aはワークWの第1把持領域A1を確実に把持することができる。その後、ワークWの一端が持ち上げられて、第2チャック15bが把持可能な第2把持領域A2が確保される。その結果、第2チャック15bはワークWの第2把持領域A2を確実に把持することができる。こうしてワーク取り出し装置1は、ワークWの状態に関係なく密集した複数のワークWの中から任意のワークWを簡単に取り出すことができる。
【0030】
しかも、ワーク取り出し装置1では、ワークWを押し動かす当接部17が例えば第1チャック15aの把持爪16の側面に形成されることから、通常のチャックに特別な構成が追加される必要はない。従って、本発明に係るワーク取り出し方法の実施に用いられるワーク取り出し装置1はそれほど大きなコストをかけずに構築されることが可能である。
【0031】
その他、ワーク取り出し装置1では、パレット21の他方の側縁にフランジ23を配置するワークWの取り出しにあたって、ロボットハンド9は前述の姿勢から回転軸線X6回りに180°にわたって回転すればよい。こうして第1チャック15aの把持爪16の当接部17がパレット21の他方の側縁でフランジ23に当接することができる。また、当接部17は、第1チャック15aの把持爪16において第2チャック15bに対向する他方の側面に形成されてもよい。同様に、当接部17は、第2チャック15bの把持爪16の相互に対向する内向き面に直交する両方の側面又はいずれか一方の側面に形成されてもよい。
【0032】
本発明に係るワーク取り出し方法は、例えばロッド部分22の両端にフランジ23を有しない円柱形のロッド部分22のみのワークWにも適用されることが可能である。こうしたワークWの取り出しにあたって、例えば第1及び第2チャック15a、15bのいずれかの把持爪16に形成される当接部17が、パレット21の一方の側縁に配置されるロッド部分22の一端の端面に押し当てられればよい。こうしてワークWが前述と同様に第1方向D1に移動させられて、ロッド部分22の他端がパレット21の他方の側縁から外側に押し出されればよい。その後は、前述と同様の処理が実行されればよい。
【0033】
また、当接部17は、必ずしも把持爪16に形成される必要はなく、例えば把持爪16とは別個に第1及び第2チャック15a、15bの少なくともいずれかに取り付けられる平板状の当接部材(図示せず)上に形成されてもよい。ここでは、当接部材は、例えば第1チャック15aの把持爪16、16の相互に対向する内向き面に直交する側面であって第2チャック15bとは反対側に配置される側面に平行に向き合う裏面と、この裏面の裏側で当接部17を形成する表面とを形成する。この当接部材の当接部17がワークWに面接触してワークWが押し動かされる。なお、当接部材は、把持爪16の把持動作を妨げない位置に配置されればよい。その他、当接部材は、把持爪16の基端から先端に向かうにつれて把持爪16の側面から離れる傾斜姿勢で第1チャック15aに取り付けられてもよい。当接部17でのワークWの押し動かしにあたって、ロボットハンド9は、当接部17が例えばフランジ23に面接触するように当接部17の傾斜姿勢に応じて傾斜姿勢を確立すればよい。
【0034】
その他、ワークWでは、フランジ23は、必ずしもロッド部分22の一端に形成される必要はなく、ロッド部分22の両端の間でロッド部分22の両端から所定の距離を隔てた位置に形成されてもよい。また、例えば図2の例では、パレット21上にワークWが一列にのみ配列されているものの、この一列のワーク群の上にさらに追加のワーク群が配置されてもよい。このとき、追加のワーク群では、ワークWのロッド部分22は第2方向D2に長尺に延びる。すなわち、フランジ23は、第2方向D2に規定されるパレット21の側縁から外側に配置される。このとき、ロボットハンド9は、ワークWの取り出しにあたって、図2の状態から回転軸線X6回りに90°の回転角で回転した状態で位置決めされればよい。
【符号の説明】
【0035】
9 ロボットハンド(作業ツール)
15a 第1把持機構(第1チャック)
15b 第2把持機構(第2チャック)
17 当接部
22 本体部分(ロッド部分)
23 突部(フランジ)
D1 第1方向
D2 第2方向
W ワーク
A1 第1把持領域
A2 第2把持領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に長尺に延びるとともに第1方向に直交する第2方向に並列に配置されるワークを、当該ワークを把持する第1及び第2把持機構を有するロボットハンドにより取り出すワーク取り出し方法であって、
任意に選択された取り出し対象の前記ワークを撮像した画像の処理に基づき当該ワークの位置及び姿勢を検出する工程と、
前記検出された位置及び姿勢に基づいて、前記ロボットハンドに形成される当接部を前記ワークに当接させて所定の距離にわたって前記ワークを前記第1方向に押し動かし、前記ワーク上に第1把持領域を確保する工程と、
前記第1把持機構によって前記ワークの前記第1把持領域を把持して前記ワークの一端を持ち上げて前記ワークを傾斜姿勢に保持し、前記ワーク上に第2把持領域を確保する工程と、
前記第2把持機構によって前記ワークの前記第2把持領域を把持して前記ワークの他端を持ち上げる工程と、を備えることを特徴とするワーク取り出し方法。
【請求項2】
前記当接部は、前記第1及び第2把持機構のうちの少なくともいずれか一方に形成されることを特徴とする請求項1に記載のワーク取り出し方法。
【請求項3】
前記ワークは、前記第1方向に長尺に延びる本体部分と、当該本体部分の外周面から突き出る突部と、を備え、
前記第1方向への前記ワークの移動の実現にあたって前記当接部は前記突部に当接することを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク取り出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−115915(P2012−115915A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265237(P2010−265237)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】