説明

不揮発性半導体記憶装置

【課題】消去動作時のバックトンネリングを抑制し、これにより消去特性を向上し、信頼性が高い3次元積層構造の不揮発性半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】第1方向に交互に積層された複数の電極膜WLと複数の電極間絶縁膜14とを有する積層構造体MLと、前記積層構造体を前記第1方向に貫通する第1半導体ピラーSPと、前記電極膜と前記第1半導体ピラーとの間に設けられた第1記憶層48と、前記記憶層と前記第1半導体ピラーとの間に設けられた第1内側絶縁膜42と、前記第1記憶層と前記電極膜との間に設けられた第1外側絶縁膜43と、前記第1外側絶縁膜と前記電極膜との間に設けられ、比誘電率が前記第1外側絶縁膜よりも高い第1キャップ絶縁膜44と、を備えたことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体記憶装置に関し、特に、基板上に複数の絶縁膜及び電極膜が交互に積層された不揮発性半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の不揮発性半導体記憶装置(メモリ)においては、シリコン基板上の2次元平面内に素子を集積してきた。メモリの記憶容量を増加させるには1つの素子の寸法を小さくする(微細化する)が、近年その微細化もコスト的、技術的に困難なものになってきた。
【0003】
一方、メモリの3次元化などのアイデアが多数出されているが、一般的な3次元デバイスにおいては、各層ごとに少なくとも3回のリソグラフィ工程を含むプロセスを必要とするため、3次元化してもコストを低減することはできず、積層数を4層以上にすると却ってコストの増加を招いてしまう。
【0004】
これに対し、一括加工型3次元積層メモリセルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば積層数によらず、積層メモリを一括して形成することが可能なため、コストの増加を抑えることが可能となる。
【0005】
この一括加工型3次元積層メモリにおいては、シリコン基板上にワード線となる電極膜と絶縁膜とを交互に積層させて積層体を形成し、この積層体に貫通ホールを一括して形成する。そして、例えば、貫通ホールの側面に電荷蓄積層を設け、その内側にシリコンを埋め込むことにより、シリコンピラーが設けられる。そして、電荷蓄積層とシリコンピラーとの間にトンネル絶縁膜が設けられ、電荷蓄積層と電極膜との間にブロック絶縁膜が設けられる。これにより、各電極膜とシリコンピラーとの交差部分にメモリセルが形成される。
【0006】
さらに、2つの貫通ホールを底で繋げることにより、U字構造のシリコンピラーを形成することもできる。すなわち、U字構造の貫通ホールの側壁に電荷蓄積層を含むメモリ膜を形成し、その内側にシリコンを埋め込む。これにより、U字構造のシリコンピラーからなるメモリストリングが形成される。
【0007】
このような構造を有する3次元積層メモリにおいて、消去動作を十分に行うことが難しく、また、十分に消去するために過剰な消去電圧を印加すると信頼性が劣化することがあり得る。例えば、消去動作を行うとブロック酸化膜側からの電子注入(バックトンネリング)が起こるため、メモリセルを所望のしきい値以下に下げることができなくなるだけでなく、その電子がチャネル側に到達した際に生成するホットホールがトンネル絶縁膜に再注入され、トンネル絶縁膜の信頼性を劣化させる。
【0008】
このように、一括加工型3次元積層構造の不揮発性半導体記憶装置において、消去動作時のバックトンネリングを抑制し、これにより消去特性を改善すると供に、信頼性を向上させることが強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−266143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、消去動作時のバックトンネリングを抑制し、これにより消去特性を向上し、信頼性が高い3次元積層構造の不揮発性半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、第1方向に交互に積層された複数の電極膜と複数の電極間絶縁膜とを有する積層構造体と、前記積層構造体を前記第1方向に貫通する第1半導体ピラーと、前記電極膜と前記第1半導体ピラーとの間に設けられた第1記憶層と、前記第1記憶層と前記第1半導体ピラーとの間に設けられた第1内側絶縁膜と、前記第1記憶層と前記電極膜との間に設けられた第1外側絶縁膜と、前記第1外側絶縁膜と前記電極膜との間に設けられ、比誘電率が前記第1外側絶縁膜よりも高い第1キャップ絶縁膜と、を備えたことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、消去動作時のバックトンネリングを抑制し、これにより消去特性を向上し、信頼性が高い3次元積層構造の不揮発性半導体記憶装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の全体構成を例示する模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成を例示する模式的斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の電極膜の構成を例示する模式的平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の特性を例示するグラフ図である。
【図6】本発明の実施形態及び比較例の不揮発性半導体記憶装置の特性を例示する模式図である。
【図7】本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の製造方法の一工程における要部の構造を例示する模式的断面図である。
【図9】本発明の実施形態及び比較例の不揮発性半導体記憶装置の特性を例示する模式図である。
【図10】本発明の実施形態に係る別の不揮発性半導体記憶装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る別の不揮発性半導体記憶装置の構成を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成を例示する模式的断面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の全体構成を例示する模式的断面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成を例示する模式的斜視図である。
図4は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の電極膜の構成を例示する模式的平面図である。
なお、図3においては、図を見易くするために、導電部分のみを示し、絶縁部分は図示を省略している。
【0016】
本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置110は、3次元積層型のフラッシュメモリである。
まず、図2及び図3により、不揮発性半導体記憶装置110の全体の構成の概要を説明する。
【0017】
図2に表したように、不揮発性半導体記憶装置110においては、例えば単結晶シリコンからなる半導体基板11が設けられる。
【0018】
本具体例において、半導体基板11においては、メモリセルが形成されるメモリアレイ領域MRと、メモリアレイ領域MRの例えば周辺に設けられた周辺領域PRとが設定されている。周辺領域PRにおいては、半導体基板11の上には、各種の周辺領域回路PR1が設けられる。
【0019】
メモリアレイ領域MRにおいては、半導体基板11の上に例えば回路部CUが設けられ、回路部CUの上にメモリ部MUが設けられる。なお、回路部CUは必要に応じて設けられ、省略可能である。回路部CUとメモリ部MUとの間には、例えば酸化シリコンからなる層間絶縁膜13が設けられている。
【0020】
メモリ部MUは、3次元マトリクス状に配列したメモリセルトランジスタを有するマトリクスメモリセル部MU1と、マトリクスメモリセル部MU1の配線を接続する配線接続部MU2と、を有する。
【0021】
図3は、マトリクスメモリセル部MU1の構成を例示している。
すなわち、図2においては、マトリクスメモリセル部MU1として、図3のA−A’断面の一部と、図3のB−B’線断面の一部が例示されている。
【0022】
図2及び図3に表したように、マトリクスメモリセル部MU1においては、半導体基板11の主面11a上に、積層構造体MLが設けられている。積層構造体MLは、主面11aに対して垂直な方向に交互に積層された複数の電極膜WLと複数の電極間絶縁膜14とを有する。
【0023】
ここで、本願明細書において、説明の便宜上、XYZ直交座標系を導入する。この座標系においては、半導体基板11の主面11aに対して垂直な方向をZ軸方向(第1方向)とする。そして、主面11aに対して平行な平面内の1つの方向をY軸方向(第2方向)とする。そして、Z軸とY軸とに垂直な方向をX軸方向(第3方向)とする。
【0024】
積層構造体MLにおける電極膜WL及び電極間絶縁膜14の積層方向は、Z軸方向である。
【0025】
そして、この積層構造体MLをZ軸方向に貫通する半導体ピラーSP(第1半導体ピラーSP1)が設けられる。この半導体ピラーSPは、積層構造体MLをZ方向に貫通する貫通ホールTHの中に半導体を埋め込むことによって形成される。
【0026】
図1は、マトリクスメモリセル部MU1の構成を例示しており、例えば図3のB−B’線断面の一部に相当する。
図1に表したように、不揮発性半導体記憶装置110は、Z軸方向に交互に積層された複数の電極膜WLと複数の電極間絶縁膜14とを有する積層構造体MLと、積層構造体MLをZ軸方向に貫通する半導体ピラーSP(第1半導体ピラーSP1)と、電極膜WLのそれぞれと半導体ピラーSPとの間に設けられた記憶層48(第1記憶層)と、内側絶縁膜42(第1内側絶縁膜)と、外側絶縁膜43(第1外側絶縁膜)と、キャップ絶縁膜44(第1キャップ絶縁膜)と、を備える。
【0027】
内側絶縁膜42は、記憶層48と半導体ピラーSPとの間に設けられ、トンネル絶縁膜として機能する。
外側絶縁膜43は、記憶層48と電極膜WLとの間に設けられ、ブロック絶縁膜として機能する。
キャップ絶縁膜44は、外側絶縁膜43と電極膜WLとの間に設けられ、キャップ絶縁膜44の比誘電率は、外側絶縁膜43よりも高い。
外側絶縁膜43はブロック絶縁膜として機能するが、外側絶縁膜43とキャップ絶縁膜44とを合わせた絶縁膜をブロック絶縁膜として見なしても良い。
なお、電極間絶縁膜14は、電極膜WLどうしを絶縁する層間絶縁膜として機能する。
【0028】
電極膜WLには、任意の導電材料を用いることができ、例えば、不純物が導入されて導電性が付与されたアモルファスシリコンまたはポリシリコンなどを用いることができ、また、金属及び合金なども用いることができる。電極膜WLには所定の電気信号が印加され、電極膜WLは、不揮発性半導体記憶装置110のワード線として機能する。
【0029】
電極間絶縁膜14、内側絶縁膜42及び外側絶縁膜43には、例えばシリコン酸化膜を用いることができる。キャップ絶縁膜44には、外側絶縁膜43よりも比誘電率が高い絶縁膜である例えばシリコン窒化膜を用いることができる。
【0030】
記憶層48には、例えばシリコン窒化膜を用いることができ、半導体ピラーSPと電極膜WLとの間に印加される電界によって、電荷を蓄積または放出し、情報を記憶する部分として機能する。記憶層48は単層膜でも良く、また積層膜であっても良い。
【0031】
なお、後述するように電極間絶縁膜14、内側絶縁膜42、外側絶縁膜43及び記憶層48には、上記に例示した材料に限らず、キャップ絶縁膜44の比誘電率が外側絶縁膜43よりも高い条件を満たしつつ任意の材料を用いることができる。
【0032】
このように、不揮発性半導体記憶装置110においては、電極膜WLと半導体ピラーSPとが交差する部分において、記憶層48を有するセルトランジスタ形成される。セルトランジスタは3次元マトリクス状に配列し、この記憶層48に電荷を蓄積させることにより、各セルトランジスタがデータを記憶するメモリセルMCとして機能する。
【0033】
なお、図2及び図3においては、電極膜WLが4枚描かれているが、積層構造体MLにおいて、設けられる電極膜WLの数は任意である。
【0034】
なお、図2及び図3に表したように、積層構造体MLの上には、選択ゲート電極SGが設けられる。選択ゲート電極SGには、任意の導電材料を用いることができ、例えばポリシリコンまたはアモルファスシリコンなどを用いることができる。選択ゲート電極SGは、例えば、X軸方向に沿って延在する帯状の形状を有している。
【0035】
なお、図2に表したように、積層構造体MLの最上部(半導体基板11から最も遠い側)には、層間絶縁膜15が設けられている。そして、積層構造体MLの上に層間絶縁膜16が設けられ、その上に選択ゲート電極SGが設けられ、選択ゲート電極SGどうしの間には層間絶縁膜17が設けられている。そして、選択ゲート電極SGに貫通ホールが設けられ、その内側面に選択ゲートトランジスタの選択ゲート絶縁膜SGIが設けられ、その内側に半導体が埋め込まれている。この半導体は、半導体ピラーSPと繋がっている。
【0036】
そして、層間絶縁膜17の上に層間絶縁膜18が設けられ、その上に、ソース線SL(第2の配線)とビア22とが設けられている。ソース線SLの周りには層間絶縁膜19が設けられている。ビア22は、例えば、バリア層20と金属層21との積層膜を有する。
【0037】
そして、ソース線SLの上に層間絶縁膜23が設けられ、その上にビット線BL(第1の配線)が設けられている。ビット線BLは、例えば、Y軸に沿った帯状の形状を有している。なお、層間絶縁膜15、16、17、18、19及び23、並びに、選択ゲート絶縁膜SGIには、例えば酸化シリコンを用いることができる。
【0038】
このように、積層構造体ML及び選択ゲート電極SGには、積層方向(Z軸方向)に延びる複数の貫通ホールTHが形成され、その内部の側面に絶縁膜が設けられ、その内側の空間に半導体材料が埋め込まれて半導体ピラーSPとなる。すなわち、積層構造体MLに設けられる半導体ピラーSPは、積層構造体MLの上部の選択ゲート電極SGもさらに貫通している。
【0039】
そして、本具体例においては、2本ずつの半導体ピラーSPは、半導体基板11の側で接続されている。
すなわち、不揮発性半導体記憶装置110は、第1半導体ピラーSP1と第2半導体ピラーSP2とを半導体基板11の側で電気的に接続する半導体接続部CP(第1半導体接続部CP1)をさらに備える。半導体接続部CPは、半導体ピラーSPとなる材料からなる。半導体接続部CPは、バックゲートBG(接続部導電層)に対向している。
【0040】
ただし、本発明は、これに限らず、後述するように、それぞれの半導体ピラーSPが独立しており、半導体基板11の側で半導体接続部CPによって接続されなくても良い。以下では、図2及び図3に例示したように、2本の半導体ピラーSPが半導体接続部CPによって接続される場合として説明する。
【0041】
なお、ここで、不揮発性半導体記憶装置110において半導体ピラーは複数設けられており、半導体ピラーの全体または任意の半導体ピラーを指す場合には、「半導体ピラーSP」と言い、特定の半導体ピラーどうしの関係を説明する際などにおいて、特定の半導体ピラーを指す場合に、「第n半導体ピラーSPn」(nは1以上の任意の整数)と言うことにする。他の構成要素も同様に、例えば、半導体接続部の全体または任意の半導体接続部を指す場合には、「半導体接続部CP」と言い、特定の半導体接続部を指す場合に「第n半導体接続部CPn」(nは1以上の任意の整数)と言う。
【0042】
図3に表したように、第1半導体接続部CP1によって接続された第1及び第2半導体ピラーSP1及びSP2がペアとなって1つのU字形状のNANDストリングとなり、第2半導体接続部CP2によって接続された第3及び第4半導体ピラーSP3及びSP4がペアとなって別のU字形状のNANDストリングとなる。
【0043】
図4に表したように、電極膜WLにおいては、0以上の整数であるmにおいて、上記のnが(4m+1)及び(4m+4)である半導体ピラーSP(4m+1)及びSP(4m+4)に対応する電極膜が共通に接続され電極膜WLAとなり、nが(4m+2)及び(4m+3)である半導体ピラーSP(4m+2)及び(4m+3)に対応する電極膜が共通に接続され電極膜WLBとなる。すなわち、電極膜WLは、X軸方向に対向して櫛歯状に互いに組み合わされた電極膜WLA及び電極膜WLBの形状を有している。なお、図1に表したように、電極膜WLAと電極膜WLBとは、絶縁層ILによって互いに分断される。
【0044】
そして、図2に例示した配線接続部MU2のように、X軸方向における一方の端において、電極膜WLBは、ビアプラグ31によってワード配線32に接続され、例えば半導体基板11に設けられる駆動回路と電気的に接続される。そして、同様に、X軸方向における他方の端において、電極膜WLAは、ビアプラグによってワード配線に接続され、駆動回路と電気的に接続される。すなわち、Z軸方向に積層された各電極膜WL(電極膜WLA及び電極膜WLB)のX軸方向における長さが階段状に変化させられ、X軸方向の一方の端では電極膜WLAによって駆動回路との電気的接続が行われ、X軸方向の他方の端では、電極膜WLBによって駆動回路との電気的接続が行われる。
【0045】
これにより、半導体基板11からの距離が同じ電極膜WLにおいて、ペアとなる第1半導体ピラーSP1及び第2半導体ピラーSP2とで異なる電位が設定できる。これにより、第1半導体ピラーSP1と第2半導体ピラーSP2とに対応する同層のメモリセルは互いに独立して動作できる。第3半導体ピラーSP3及び第4半導体ピラーSP4に関しても同様である。
【0046】
なお、電極膜WLAと電極膜WLBとの組み合せを1つの消去ブロックとすることができ、消去ブロックごとに、電極膜WLA及び電極膜WLBと、別の電極膜WLA及び電極膜WLBと、が分断される。
なお、各消去ブロックに含まれる半導体ピラーのX軸方向及びY軸方向における数は任意である。
【0047】
また、バックゲートBGは、ビアプラグ33によってバックゲート配線34に接続される。
【0048】
図2及び図3に表したように、半導体ピラーSPの半導体接続部CPとは反対の端のそれぞれが、ビット線BLまたはソース線に接続され、半導体ピラーSPのそれぞれに、選択ゲート電極SG(第1〜第4選択ゲート電極SG1〜SG4)が設けられることにより、任意の半導体ピラーSPの任意のメモリセルMCに所望のデータを書き込み、また読み出すことができる。
【0049】
すなわち、不揮発性半導体記憶装置110は、第2半導体ピラーSP2と、第2半導体ピラーSP2に関して設けられる積層膜と、第1半導体接続部CP1と、ビット線BLと、ソース線SLと、をさらに備える。
【0050】
第2半導体ピラーSP2は、Y軸方向において第1半導体ピラーSP1と隣接し、積層構造体MLをZ軸1方向に貫通する。
そして、第2半導体ピラーSP2に関して設けられる積層膜は、電極膜WLと第2半導体ピラーSP2との間に設けられた第2記憶層(記憶層48)と、第2記憶層と第2半導体ピラーSP2との間に設けられた第2内側絶縁膜(内側絶縁膜42)と、第2記憶層と電極膜WLとの間に設けられた第2外側絶縁膜(外側絶縁膜43)と、第2外側絶縁膜と電極膜WLとの間に設けられ、比誘電率が第2外側絶縁膜よりも高い第2キャップ絶縁膜(キャップ絶縁膜44)と、を有する。
【0051】
第1半導体接続部CP1は、第1半導体ピラーSP1と第2半導体ピラーSPとをZ軸方向における同じ側(半導体基板11の側)で電気的に接続する。ビット線BLは、第1半導体ピラーSP1の第1半導体接続部CP1とは反対の側の第1端部と接続され、Y軸方向に延在する。ソース線SLは、第2半導体ピラーSP2の第1半導体接続部CP1とは反対の側の第2端部と接続され、X軸方向に延在する。
【0052】
そして、不揮発性半導体記憶装置110は、第3半導体ピラーSP3と、第3半導体ピラーSP3に関して設けられる積層膜と、第4半導体ピラーSP4と、第4半導体ピラーSP4に関して設けられる積層膜と、第2半導体接続部CP2と、をさらに有する。
【0053】
第3半導体ピラーSP3は、Y軸方向において、第2半導体ピラーSP2の第1半導体ピラーSP1とは反対の側で第2半導体ピラーSP2と隣接し、積層構造体MLをZ軸方向に貫通する。
第3半導体ピラーSP3に関して設けられる積層膜は、電極膜WLと第3半導体ピラーSP3との間に設けられた第3記憶層(記憶層48)と、第3記憶層と第3半導体ピラーSP3との間に設けられた第3内側絶縁膜(内側絶縁膜42)と、第3記憶層と電極膜WLとの間に設けられた第3外側絶縁膜(外側絶縁膜43)と、第3外側絶縁膜と電極膜WLとの間に設けられ、比誘電率が第3外側絶縁膜よりも高い第3キャップ絶縁膜(キャップ絶縁膜44)と、を有する。
【0054】
第4半導体ピラーSP4は、Y軸方向において、第3半導体ピラーSP3の第2半導体ピラーSP2とは反対の側で第3半導体ピラーSP3と隣接し、積層構造体MLをZ軸方向に貫通する。
第4半導体ピラーSP4に関して設けられる積層膜は、電極膜WLと第4半導体ピラーSP4との間に設けられた第4記憶層(記憶層48)と、第4記憶層と第4半導体ピラーSP4との間に設けられた第4内側絶縁膜(内側絶縁膜42)と、第4記憶層と電極膜WLとの間に設けられた第4外側絶縁膜(外側絶縁膜43)と、第4外側絶縁膜と電極膜WLとの間に設けられ、比誘電率が第4外側絶縁膜よりも高い第4キャップ絶縁膜(キャップ絶縁膜44)と、を有する。
第2半導体接続部CP2は、第3半導体ピラーSP3と第4半導体ピラーSP4とを、Z軸方向における第1半導体接続部CP1の側(半導体基板11の側)で電気的に接続する。
【0055】
そして、ビット線BLは、第4半導体ピラーSP4の第2半導体接続部CP2とは反対の側の第4端部と接続される。そして、ソース線SLは、第3半導体ピラーSP3の第2半導体接続部CP2とは反対の側の第3端部と接続される。
【0056】
このような構造を有する不揮発性半導体記憶装置110においては、高比誘電率のキャップ絶縁膜44を用いることで、消去動作時のバックトンネリングを抑制し、これにより消去特性を向上すると供に、信頼性を向上させることができる。以下、不揮発性半導体記憶装置110の特性について説明する。
【0057】
図5は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、不揮発性半導体記憶装置110の半導体ピラーSP、内側絶縁膜42、記憶層48、外側絶縁膜43及びキャップ絶縁膜44に印加される電界E1をシミュレーションした結果を例示しており、横軸は位置Xr(例えばX軸方向における位置)を表し、縦軸は電界E1を表す。
【0058】
なお、同図は、半導体ピラーSPのX−Y平面内の中心から電極膜WLまでの距離(貫通ホールTHの半径に相当する)が33nm(ナノメートル)であり、半導体ピラーSPと電極膜WLとの間に20V(ボルト)の電圧を印加した時のシミュレーション結果を例示している。位置Xrが0nm〜11nmの範囲が半導体ピラーSPに対応し、位置Xrが11nm〜17nmの範囲が内側絶縁膜42に対応し、位置Xrが17nm〜20nmの範囲が記憶層48に対応し、位置Xrが20nm〜31nmの範囲が外側絶縁膜43に対応し、位置Xrが31nm〜33nmの範囲がキャップ絶縁膜44に対応し、位置Xrが33nmよりも大きい領域は電極膜WLに対応する。すなわち、半導体ピラーSPの直径が22nmであり、内側絶縁膜42の厚さが6nmであり、記憶層48の厚さが3nmであり、外側絶縁膜43の厚さが11nmであり、キャップ絶縁膜44の厚さが2nmである。そして、内側絶縁膜42及び外側絶縁膜43にシリコン酸化膜(比誘電率が約4)を用い、記憶層48及びキャップ絶縁膜44にシリコン窒化膜(比誘電率が約7)を用いた場合を例示している。
【0059】
そして、同図には、比較例として、キャップ絶縁膜44を用いず、外側絶縁膜43の厚さを13nmとした場合が、特性RC(破線)として例示されている。一方、本実施形態の特性は、特性EC(実線)として例示されている。
【0060】
図5に表したように、キャップ絶縁膜44を用いない比較例の特性RCにおいては、電極膜WLと外側絶縁膜43とが接する位置(位置Xrが33nm)において、電界E1が約0.6×10MV/cmと高い。このため、電極膜WLから外側絶縁膜43に電子が注入され易い。すなわち、バックトンネリングが起き易い。
【0061】
これに対し、キャップ絶縁膜44を備える実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置110の特性ECにおいては、電極膜WLとキャップ絶縁膜44とが接する位置(位置Xrが33nm)において、電界E1は約0.3×10MV/cmと低く、比較例に対し半減している。このため、電極膜WLからキャップ絶縁膜44及び外側絶縁膜43に電子が注入され難く、バックトンネリングが起き難い。
【0062】
図6は、本発明の実施形態及び比較例の不揮発性半導体記憶装置の特性を例示する模式図である。
すなわち、図6(a)及び(b)は、それぞれ実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置110、及び、比較例の不揮発性半導体記憶装置の特性をモデル的に例示するエネルギーバンド図である。
【0063】
図6(b)に表したように、キャップ絶縁膜44を用いない比較例の不揮発性半導体記憶装置の場合、電極膜WLとブロック絶縁膜(外側絶縁膜43)との界面における電界E1が高いので、電極膜WLとブロック絶縁膜との界面でエネルギー差が小さくなり、電荷cg(電子)は電極膜WLからブロック絶縁膜に注入され易い。
【0064】
一方、図6(a)に表したように、キャップ絶縁膜44を用いる不揮発性半導体記憶装置110の場合は、電極膜WLとキャップ絶縁膜44との界面における電界E1が低いので、電極膜WLとキャップ絶縁膜44との界面でエネルギー差が大きく、電荷cg(電子)は電極膜WLからキャップ絶縁膜44に向かって注入され難い。
【0065】
このように、本実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置110においては、高比誘電率のキャップ絶縁膜44を用いることで、バックトンネリングを抑制できる。
【0066】
なお、一括加工型3次元積層構造を有する不揮発性半導体記憶装置110においては、パイプ状の記憶層48の外側に外側絶縁膜43(ブロック絶縁膜)が設けられ、内側に内側絶縁膜42(トンネル絶縁膜)が設けられるので、円筒の外側と内側とにおける曲率半径の差によって、外側絶縁膜43及び内側絶縁膜42に比誘電率が同じ材料を用いた場合においても、外側絶縁膜43と内側絶縁膜42とで、印加される電界に差が生じる。このため、外側絶縁膜43に高誘電率材料などの新規材料を用いることなく良好な特性が得られる。すなわち、外側絶縁膜43(及び内側絶縁膜42)に、従来から半導体装置に多用され、信頼性が高くプロセスインテグレーションの整合性の高い例えばシリコン酸化膜を用いることができる。
【0067】
これに対し、平面型のメモリの場合は、ブロック絶縁膜とトンネル絶縁膜とに、比誘電率が同じ材料を用いた場合には、書き込み/消去動作時にトンネル電流を流すとブロック絶縁膜にもトンネル絶縁膜に印加される電界とほぼ同じ強度の電界がかかるため、ブロック絶縁膜に電流が流れてしまう。このため、特に消去バイアス印加時においては、ゲート電極からの電子の逆注入によりしきい値を下げることができないという問題が発生する。この問題を解決するため、ブロック絶縁膜にトンネル絶縁膜よりも比誘電率が高い材料を用い、トンネル絶縁膜に印加される電界と、ブロック絶縁膜に印加される電界と、の間に差を設け、ブロック絶縁膜のリーク電流を低減することで、所望の書き込み/消去動作を可能としている。しかしながら、比誘電率が高い材料を用いることは、プロセスインテグレーションの整合性を低下させ、また、比誘電率が高い材料に固有の誘電分極の遅延によって誘電率が経時的に変化し、動作が不安定になる可能性がある。
【0068】
これに対し、既に説明したように、本実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置110においては、パイプ状の記憶層48の内外の側面に内側絶縁膜42と外側絶縁膜43とが設けられ、曲率半径差により電界差を発生させることができるので、外側絶縁膜43に要求される比誘電率の制約を緩和することができ、例えば、内側絶縁膜42と外側絶縁膜43との両方に、プロセスインテグレーションの整合性が高く、信頼性が高いシリコン酸化膜を用いることができる。
【0069】
そして、例えば外側絶縁膜43に比誘電率の低いシリコン酸化膜を用いた場合に、外側絶縁膜43と電極膜WLとの間に高比誘電率のキャップ絶縁膜44を設けることで、図5及び図6に関して説明した作用によって、消去動作時のバックトンネリングを抑制し、これにより消去特性を向上させる供に、信頼性を向上させることができる。
【0070】
すなわち、不揮発性半導体記憶装置110において、外側絶縁膜43として特にシリコン酸化膜を用いつつ、シリコン酸化膜よりも比誘電率が高いキャップ絶縁膜44を用いることによって、消去特性と信頼性が良好であると供に、プロセスインテグレーションの整合性が高く、高信頼性の不揮発性半導体記憶装置が得られる。
【0071】
このように、外側絶縁膜43は酸化シリコンを含み、キャップ絶縁膜44は窒化シリコンを含むことが望ましい。また、外側絶縁膜43は酸化シリコンを含み、キャップ絶縁膜44は酸化アルミニウムを含むことが望ましい。
【0072】
不揮発性半導体記憶装置110において、キャップ絶縁膜44の厚さは、外側絶縁膜44よりも薄いことが望ましい。
例えば、キャップ絶縁膜44及び記憶層48の両方にシリコン窒化膜を用いた時、キャップ絶縁膜44の厚さが比較的厚い場合は、記憶層48に電荷が保持される現象と同時に、キャップ絶縁膜44にも電荷が保持される現象が起きる可能性がある。この時、キャップ絶縁膜44の厚さを比較的薄くすることによって、キャップ絶縁膜44中の電荷は、電極膜WL及び外側絶縁膜43のいずれかの方向に移動し、キャップ絶縁膜44中に留まり難くできる。
【0073】
例えば、外側絶縁膜43の厚さは、例えば5nm〜20nm程度に設定できる。そして、キャップ絶縁膜44の厚さは、例えば1nm〜4nm程度に設定できる。ただし、上記の数値は一例であり、本発明はこれには限定されず、外側絶縁膜43及びキャップ絶縁膜44の厚さは、これらの膜に用いる材料や貫通ホールTHの径などの他に、不揮発性半導体記憶装置の動作条件等に基づいて、適切に設定できる。
【0074】
なお、上記においては、外側絶縁膜43が単層膜である場合として説明したが、外側絶縁膜43が、複数の層からなる積層膜であっても良い。この場合には、複数の層の平均の比誘電率を外側絶縁膜43の比誘電率と見なし、キャップ絶縁膜44の比誘電率を、この比誘電率よりも高くすれば良い。なお上記の平均の比誘電率は、例えば、積層膜を、複数の層が直列に接続された電気容量と見なしたとき、積層膜の全体に印加される電圧と、その時に蓄積される電荷から求められる実効的な比誘電率とすることができる。
【0075】
例えば、外側絶縁膜43が、2層のシリコン酸化膜と、それらの間に積層されたシリコン窒化膜と、の積層膜であっても良く、この場合にはこの積層膜の平均の比誘電率よりも高い誘電率を有するシリコン窒化膜(またはシリコン酸窒化膜)を、キャップ絶縁膜44として用いることができる。
【0076】
また、上記においては、外側絶縁膜43とキャップ絶縁膜44とが別体である場合として説明したが、本発明はこれに限らない。
すなわち、外側絶縁膜43とキャップ絶縁膜44との境界が明確に区別されず、記憶層48と電極膜WLとの間に設けられる絶縁膜において、記憶層48の側(内側)の部分に比べて、電極膜WLの側(外側)の部分における比誘電率が相対的に高くても良い。例えば、記憶層48と電極膜WLとの間に設けられる絶縁膜において、記憶層48の側の部分から電極膜WLの側の部分に行くに従って、その絶縁膜に含まれる元素の比率が相対的に変化し、その結果、電極膜WLの側で比誘電率が相対的に高くされても良い。
【0077】
以下、不揮発性半導体記憶装置110の製造方法の例について説明する。
【0078】
図7は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図8は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の製造方法の一工程における要部の構造を例示する模式的断面図である。
すなわち、図8(a)及び(b)は、図7(c)の部分C及び部分Dの模式的断面図である。
【0079】
図7(a)に表したように、シリコンからなる半導体基板11の上に、層間絶縁膜13となるシリコン酸化膜を例えば厚さ100nmで堆積させ、さらに、バックゲートBGとなる導電膜BGfを例えば200nmで堆積させる。導電膜BGfには、例えばAsドープのアモルファスシリコン、または、Pドープのアモルファスシリコン等を用いることができる。その後、導電膜BGfに、リソグラフィ及びRIE(Reactive Ion Etching)を用いて、半導体接続部CPが形成される溝パタンCPpを形成し、溝パタンCPp中に、シリコン窒化膜からなる犠牲層Sfを埋め込む。
【0080】
その後、導電膜BGf及び犠牲層Sfの上に、電極間絶縁膜14となる絶縁膜14f及び電極膜WLとなる導電膜WLfを、交互に所望の繰り返しの数で堆積させ、その上に層間絶縁膜15を堆積させる。導電膜WLfには、例えばAsドープのアモルファスシリコン、または、Pドープのアモルファスシリコン等を用いることができる。これにより積層構造体MLが形成される。なお、ここでは、層間絶縁膜15は積層構造体MLに含まれるものとする。その後、リソグラフィ及びRIEを用いて、積層構造体MLに貫通ホールTHを一括加工により形成する。このとき貫通ホールTHは、溝パタンCPpに埋め込まれた犠牲層Sfに到達する深さとし、これにより、犠牲層Sfの一部が露出する。
【0081】
その後、図7(b)に表したように、ホットリン酸(HPO)処理を行い、犠牲層Sfを除去する。これにより、2本の貫通ホールTHを溝パタンCPpで接続したU字形状のメモリホールMHが形成される。
【0082】
そして、図7(c)に表したように、メモリホールMH内に、キャップ絶縁膜44となるシリコン窒化膜を厚さ2nmで堆積させる。さらに、キャップ絶縁膜44の上(側面を含む)に、外側絶縁膜43となるシリコン酸化膜を厚さ10nmで、記憶層48となるシリコン窒化膜を厚さ4nmで、内側絶縁膜42となるシリコン酸化膜を5nmで、順次堆積させ、キャップ絶縁膜44、外側絶縁膜43、記憶層48及び内側絶縁膜42からなる積層膜49を形成する。その後、残余の空間に、半導体ピラーSP(チャネル)となるノンドープのアモルファスシリコン膜SPfを埋め込む。
【0083】
その後、アモルファスシリコン膜SPfをエッチバックし、積層膜49を露出させる。 これにより、図8(a)に表したように、電極膜WLの側面に、キャップ絶縁膜44、外側絶縁膜43、記憶層48及び内側絶縁膜42の積層膜49が形成される。
【0084】
そして、図8(b)に表したように、半導体接続部CPの部分においても積層膜49が形成される。
【0085】
その後、希フッ酸処理及びホットリン酸処理を順次行い、露出された積層膜49を除去する。
【0086】
その後、図7(d)に表したように、層間絶縁膜16と、選択ゲート電極SGとなるアモルファスシリコン膜SGFと、層間絶縁膜18と、を順次堆積させ、その後、これらの膜に、メモリホールMH内のアモルファスシリコン膜SPfに達する選択ゲートホールSGHを形成する。
【0087】
その後、選択ゲートホールSGH内の内側面に、選択ゲートトランジスタの選択ゲート絶縁膜SGIとなるシリコン窒化膜を堆積させ、選択ゲートホールSGHの底部のシリコン窒化膜をエッチング除去した後、選択ゲートトランジスタのチャネルとなる例えばアモルファスシリコンを堆積させ、所望の深さまでエッチバックする。
その後、所定のコンタクト形成及び配線工程を経ることで、図1〜図4に例示した不揮発性半導体記憶装置110が形成される。
【0088】
このようにして形成された不揮発性半導体記憶装置110の特性について説明する。
図9は、本発明の実施形態及び比較例の不揮発性半導体記憶装置の特性を例示する模式図である。
すなわち、図9(a)、(b)及び(c)は、メモリセルの消去特性を評価した結果を例示するグラフ図であり、横軸は消去パルスの印加時間Tpを示し、縦軸はメモリセルMCのしきい値電圧のシフト量ΔVthを示す。そして、図9(a)、(b)及び(c)は、それぞれ消去電圧が、−18V(ボルト)、−20V及び−22Vの時の結果を示しており、実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置110の特性ECと、比較例の不揮発性半導体記憶装置の特性RCと、を示している。
【0089】
なお、比較例の不揮発性半導体記憶装置においては、キャップ絶縁膜44が設けられず、積層膜49が、外側絶縁膜43、記憶層48及び内側絶縁膜42からなり、外側絶縁膜43の厚さが12nmとされている以外は、不揮発性半導体記憶装置110と同様の構成である。
【0090】
図9に表したように、消去電圧がどの場合も、不揮発性半導体記憶装置110の書き込み特性は、比較例よりも向上している。
すなわち、比較例の特性RCにおいては、消去パルスの印加時間Tpを長くしたときに、しきい値電圧のシフト量ΔVthの低下の程度が飽和する傾向にあり、しきい値電圧が十分に低下しない。
【0091】
これに対して、本実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置110の特性ECにおいては、消去パルスの印加時間Tpを長くするにつれ、しきい値電圧のシフト量ΔVthが飽和することなく低下しており、しきい値電圧が十分に低下する。
【0092】
このように、不揮発性半導体記憶装置110においては、消去動作が比較例に比べて改善されている。これは、既に説明したように、キャップ絶縁膜44を設けることで消去動作時のバックトンネリングが抑制されることの効果である。
【0093】
不揮発性半導体記憶装置110においては、消去特性が改善されるため、消去動作が高速化でき、また、消去電圧の印加の際にメモリセルMCに与えられるストレスが緩和されるので、メモリセルMCの信頼性が向上できる。
【0094】
なお、図8(b)に例示したように、不揮発性半導体記憶装置110においては、キャップ絶縁膜44が半導体接続部CPの部分にも設けられるので、この部分における外側絶縁膜43にも電子が注入され難く、バックトンネリングが起き難い。
【0095】
このように、不揮発性半導体記憶装置110は、半導体接続部CPに対向して設けられたバックゲートBGと、バックゲートBGと半導体接続部CPとの間に設けられた接続部記憶層(記憶層48)と、接続部記憶層と半導体接続部CPとの間に設けられた接続部内側絶縁膜(内側絶縁膜42)と、接続部記憶層とバックゲートBGとの間に設けられた接続部外側絶縁膜(外側絶縁膜43)と、接続部外側絶縁膜とバックゲートBGとの間に設けられ、比誘電率が接続部外側絶縁膜よりも高い接続部キャップ絶縁膜(キャップ絶縁膜44)と、をさらに備えることができる。
【0096】
そして、図7(c)に関して説明したように、上記の接続部記憶層、接続部内側絶縁膜、接続部外側絶縁膜及び接続部キャップ絶縁膜は、半導体ピラーSPに対向して設けられる記憶層48、内側絶縁膜42、外側絶縁膜43及びキャップ絶縁膜のそれぞれと同時に形成することができ、それぞれと実質的に同じ材料からなる。
【0097】
図10は、本発明の実施形態に係る別の不揮発性半導体記憶装置の構成を例示する模式的断面図である。
図11は、本発明の実施形態に係る別の不揮発性半導体記憶装置の構成を例示する模式的斜視図である。
なお、図11においては、図を見易くするために、導電部分のみを示し、絶縁部分は図示を省略している。
【0098】
図10及び図11に表したように、本実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置120においては、半導体ピラーSPはU字形状に接続されておらず、それぞれの半導体ピラーSPが独立している。すなわち、不揮発性半導体記憶装置120においては、直線状のNANDストリングが設けられる。そして、積層構造体MLの上に上部選択ゲート電極USGが設けられ、積層構造体MLの下に下部選択ゲート電極LSGが設けられている。
【0099】
上部選択ゲート電極USGと半導体ピラーSPとの間には、例えば酸化シリコンからなる上部選択ゲート絶縁膜USGIが設けられ、下部選択ゲート電極LSGと半導体ピラーSPとの間には、例えば酸化シリコンからなる下部選択ゲート絶縁膜LSGIが設けられる。
【0100】
そして、下部選択ゲート電極LSGの下側に、ソース線SLが設けられている。ソース線SLの下に層間絶縁膜13aが設けられ、ソース線SLと下部選択ゲート電極LSGとの間に層間絶縁膜13bが設けられている。
【0101】
下部選択ゲート電極LSGの下方において半導体ピラーSPはソース線SLに接続され、上部選択ゲート電極USGの上方において半導体ピラーSPはビット線BLに接続されている。そして、上部選択ゲート電極USGと下部選択ゲート電極LSGとの間の積層構造体MLにおいてメモリセルMCが形成され、半導体ピラーSPが、直線状の1つのNANDストリングとして機能する。
【0102】
上部選択ゲート電極USG及び下部選択ゲート電極LSGは、それぞれ層間絶縁膜17及び層間絶縁膜13cによって分断され、X軸方向に沿って延在する帯状の形状を有している。
【0103】
一方、半導体ピラーSPの上部に接続されるビット線BL、及び、半導体ピラーSPの下部に接続されるソース線SLは、Y軸方向に延在する帯状の形状を有している。
そして、この場合は、電極膜WLは、X−Y平面に平行な板状の導電膜である。
【0104】
このような構造の不揮発性半導体記憶装置120においても、図1に関して説明したキャップ絶縁膜44が用いられる。この場合も、消去動作時のバックトンネリングが抑制され、これにより消去特性が向上され、信頼性が高まる。
【0105】
なお、不揮発性半導体記憶装置120のように、半導体ピラーSPのそれぞれがU字形状に接続されず、直線形状のNANDストリングの構造の場合には、貫通ホールTHの壁面に積層膜49を形成した後、貫通ホールTHの底面において、半導体基板11(ソース線SLを含む)や下部選択ゲートとのコンタクトとを取るためにエッチングを行い、また、貫通ホールTHの中に半導体ピラーSPとなるアモルファスシリコン膜SPfを埋め込む際にも、良好なコンタクトを得るために自然酸化膜を除去する希フッ酸系のエッチングが行われることがある。この場合には、このウエットエッチングにより、貫通ホールTHの側壁に形成したシリコン酸化膜などが除去されるので、選択ゲートトランジスタの選択ゲート絶縁膜SGIや、メモリセルMCの積層膜49のトンネル絶縁膜(内側絶縁膜42)として、シリコン酸化膜を用いるには工夫が必要である。
【0106】
これに対し、U字形状のNANDストリング構造を有する不揮発性半導体記憶装置110の場合においては、下部選択ゲートトランジスタがなく、下部の半導体基板11とのコンタクトが不要なため、上記のウエットエッチングを行う必要が本質的にない。このため、貫通ホールTHの壁面に積層膜49を堆積した後に、連続して半導体ピラーSPとなるアモルファスシリコン膜SPfを埋め込むことができ、これにより、トンネル絶縁膜(内側絶縁膜42)としてシリコン酸化膜を用いることが可能となる。このように、不揮発性半導体記憶装置110においては、絶縁膜として用いる材料に対する制約が緩和され、用いる材料の選択範囲が広がる。
【0107】
そして、既に説明したように、本実施形態のように、一括加工型3次元積層構造を採用することで、パイプの内側と外側との曲率半径差による電界の差を利用することで、外側絶縁膜43に要求される比誘電率の制約を緩和することができ、内側絶縁膜42と外側絶縁膜43との両方に、プロセスインテグレーションの整合性が高く、高信頼性のシリコン酸化膜を用いることができる。
【0108】
さらに、高比誘電率のシリコン窒化膜などのキャップ絶縁膜44を設けることで、消去動作時のバックトンネリングを抑制し、これにより消去特性を向上し、信頼性が高い3次元積層構造の不揮発性半導体記憶装置を提供できる。
【0109】
なお、上記においては、記憶層48としてシリコン窒化膜(窒化シリコン)を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限らず、記憶層48には、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、ハフニア、ハフニウム・アルミネート、窒化ハフニア、窒化ハフニウム・アルミネート、ハフニウム・シリケート、窒化ハフニウム・シリケート、酸化ランタン及びランタン・アルミネートよりなる群から選択されたいずれかの単層膜、または、前記群から選択された複数からなる積層膜を用いることができる。
【0110】
また、キャップ絶縁膜44の比誘電率が外側絶縁膜43よりも高ければ良く、電極間絶縁膜14、内側絶縁膜42、外側絶縁膜43及びキャップ絶縁膜44には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、ハフニア、ハフニウム・アルミネート、窒化ハフニア、窒化ハフニウム・アルミネート、ハフニウム・シリケート、窒化ハフニウム・シリケート、酸化ランタン及びランタン・アルミネートよりなる群から選択されたいずれかの単層膜、または、前記群から選択された複数からなる積層膜を用いることができる。
【0111】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれは良い。
【0112】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、不揮発性半導体記憶装置を構成する半導体基板、電極膜、絶縁膜、絶縁層、積層構造体、電荷蓄積層、半導体ピラー、ワード線、ビット線、ソース線、メモリストリング等、各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0113】
その他、本発明の実施の形態として上述した不揮発性半導体記憶装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての不揮発性半導体記憶装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0114】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0115】
11…半導体基板、 11a…主面、 13、13a、13b、13c、15、16、17、18、19、23…層間絶縁膜、 14…電極間絶縁膜、 14f…絶縁膜、 20…バリア層、 21…金属層、 22…ビア、 31、33…ビアプラグ、 32…ワード配線、 34…バックゲート配線、 42…内側絶縁膜(第1〜第4内側絶縁膜、接続部内側絶縁膜)、 43…外側絶縁膜(第1〜第4外側絶縁膜、接続部外側絶縁膜)、 44…キャップ絶縁膜(第1〜第4キャップ絶縁膜、接続部キャップ絶縁膜)、 48…記憶層(第1〜第4記憶層、接続部記憶層)、 49…積層膜、 110、120…不揮発性半導体記憶装置、 BG…バックゲート(接続部導電層)、 BGf…導電膜、 BL…ビット線(第1の配線)、 C、D 部分、 cg…電荷、 CP…半導体接続部、 CP1、CP2…第1及び第2半導体接続部、 CPp 溝パタン、 CU…回路部、 EC、RC…特性、 IL…絶縁層、 LSG…下部選択ゲート電極、 LSGI…下部選択ゲート絶縁膜、 MC…メモリセル、 MH…メモリホール、 ML…積層構造体、 MR…メモリアレイ領域、 MU…メモリ部、 MU1…マトリクスメモリセル部、 MU2…配線接続部、 PR…周辺領域、 PR1…周辺領域回路、 SG…選択ゲート電極、 SG1〜SG4 第1〜第4選択ゲート電極、 SGH…選択ゲートホール、 SGI…選択ゲート絶縁膜、 SGF…アモルファスシリコン膜、 SL…ソース線(第2の配線)、 SP…半導体ピラー、 SP1〜SP4…第1〜第4半導体ピラー、 SPf…アモルファスシリコン膜、 Sf…犠牲層、 TH 貫通ホール、 USG…上部選択ゲート電極、 USGI…上部選択ゲート絶縁膜、 WL、WLA、WLB 電極膜、 WLf 導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に交互に積層された複数の電極膜と複数の電極間絶縁膜とを有する積層構造体と、
前記積層構造体を前記第1方向に貫通する第1半導体ピラーと、
前記電極膜と前記第1半導体ピラーとの間に設けられた第1記憶層と、
前記第1記憶層と前記第1半導体ピラーとの間に設けられた第1内側絶縁膜と、
前記第1記憶層と前記電極膜との間に設けられた第1外側絶縁膜と、
前記第1外側絶縁膜と前記電極膜との間に設けられ、比誘電率が前記第1外側絶縁膜よりも高い第1キャップ絶縁膜と、
を備えたことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第1キャップ絶縁膜の厚さは、前記第1外側絶縁膜の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1外側絶縁膜は、酸化シリコンを含み、前記第1キャップ絶縁膜は、窒化シリコンを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第1方向に対して垂直な第2方向において前記第1半導体ピラーと隣接し、前記積層構造体を前記第1方向に貫通する第2半導体ピラーと、
前記電極膜と前記第2半導体ピラーとの間に設けられた第2記憶層と、
前記第2記憶層と前記第2半導体ピラーとの間に設けられた第2内側絶縁膜と、
前記第2記憶層と前記電極膜との間に設けられた第2外側絶縁膜と、
前記第2外側絶縁膜と前記電極膜との間に設けられ、比誘電率が前記第2外側絶縁膜よりも高い第2キャップ絶縁膜と、
前記第1半導体ピラーと前記第2半導体ピラーとを前記第1方向における同じ側で電気的に接続する半導体接続部と、
前記第1半導体ピラーの前記半導体接続部とは反対の側の第1端部と接続され、前記第2方向に延在する第1の配線と、
前記第2半導体ピラーの前記半導体接続部とは反対の側の第2端部と接続され、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に延在する第2の配線と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
前記半導体接続部に対向して設けられた接続部導電層と、
前記接続部導電層と前記半導体接続部との間に設けられた接続部記憶層と、
前記接続部記憶層と前記半導体接続部との間に設けられた接続部内側絶縁膜と、
前記接続部記憶層と前記接続部導電層との間に設けられた接続部外側絶縁膜と、
前記接続部外側絶縁膜と前記接続部導電層との間に設けられ、比誘電率が前記接続部外側絶縁膜よりも高い接続部キャップ絶縁膜と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の不揮発性半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−9409(P2011−9409A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150738(P2009−150738)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】