説明

中空成形品の製造方法および製造装置

【課題】複雑な形状の中空成形品でも高い寸法精度で成形できると共に、融着バリの問題もない中空成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】
金型(1、20)内で一対の半中空成形品(A、B)を接合端面(a、b)を有するように成形し、次いで接合端面(a、b)を対向させ、その間にハロゲンヒータまたはカーボンヒータを非接触的に挿入して接合端面(a、b)を溶融する。このとき、重力に関して上下方向あるいは縦方向になっている接合端面には空気孔(4、7、…)から空気を吹き付ける、または接合端面(a、b)近傍から熱気を吸引して過加熱を防止する。次いで移動金型(20)を固定金型(1)に対して型閉じして、一対の半中空成形品(A、B)を金型(1、20)内で互いに押し付けて接合端面(a、b)を融着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次成形において、型閉じ可能な移動金型と固定金型とを使用して対になる半中空成形品を接合端面を有するように成形し、そして2次成形において、前記固定金型に残っている一方の半中空成形品の接合端面と、前記移動金型に残っている他方の半中空成形品の接合端面とが所定の間隔になるように対向させて、対向した接合端面間にヒータを非接触的に挿入して、接合端面を溶融して前記ヒータを退避させ、そして前記移動金型を前記固定金型に対して型閉じして、または一対の半中空成形品を金型内で互いに押し付けて接合端面を融着する、中空成形品の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用の燃料タンク、オイルタンク、あるいは浮標のような中空成形品は、射出成形によっても成形されている。射出成形により中空成形品を成形するときは、一対の半中空成形品を成形する1次成形と、1次成形された一対の半中空成形品の開口部を突き合わせ、突き合わせた外周部に接合用の溶融樹脂を射出する2次成形とにより成形されている。この射出成形機を用いた成形法によると、完全に密封された中空成形品を成形することができると共に、均一な肉厚の中空成形品を作ることもでき、また複雑な形状にも対処でき、さらには各工程が自動化でき中空成形品を量産できるという利点もある。しかしながら、中空体製品によっては、この成形法によっては製造が難しい場合がある。例えば、複数のリブによって内部が複数の室に分割されたタンクのように、内部がリブまたは壁面によって区切られている中空体製品を製造する場合、2次成形においてリブ部分も接合する必要があるが、上記の成形方法では製造が難しい。また、この成形法においては、2次成形には接合用の溶融樹脂を射出しなければならないので、射出機および金型の構造が複雑になり、また成形時間が長くなることがある。さらには、2次射出圧力が小さいと接合力が弱く、逆に強いと接合端面から溶融樹脂が中空成形品の内部に漏れることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−166449号
【特許文献2】特開2009−220429号
【0004】
そこで、特許文献1により熱融着により2次成形する成形方法が提案されている。この方法によると、第1の金型の第1の凹部と第2の金型の第1の凸部とで第1の半成形品を成形し、第2の金型の第2の凹部と第1の金型の第2の凸部とで第2の半成形品を射出成形し、第2の金型を上昇移動させて各半成形品を対向させ、そして熱源を金型間に進入して接合端部を加熱溶融する。次いで、熱源を後退させた状態で、第1の金型を第2の金型に接近させて接合端部相互を密着させ、溶着接合することができる。この成形方法によると、一対の半成形品の端面を接合するときに接合用の溶融樹脂を射出する必要がないので、射出機あるいは射出操作が簡単になり、充分な接合強度も得られる。また、上述したようなリブのような、内部にも接合部分を有する、複雑な形状の中空成形品も製造できるという利点もある。さらには、1次成形した金型内で半成形品の接合端面を溶融して、金型内で中空成形品を製造できるので、寸法精度の高い中空成形品が得られ、溶着用のジグ等も格別に必要としないので、安価に中空成形品を製造できるという利点もある。
【0005】
しかしながら、熱源に問題がある。すなわち、特許文献1においては熱源に関しては格別に説明はされていないが、ヒータはシーズヒータ、セラミックヒータ、誘導加熱ヒータ等が考えられる。これらのヒータには、給電から所定の温度に達するまでの立ち上がり時間が長い、という欠点があるので、立ち上がり時間を見越して給電を開始する必要がある。ところで、一般的にヒータによる対象物の加熱は、赤外線放射による輻射によって行われる。これらのヒータは、温度が600℃程度と比較的低いので、放射される赤外線は遠赤外線の成分が多い。遠赤外線は輻射エネルギーが比較的小さいので対象物の加熱には時間がかかるし、波長が長いので、物体に浸透する能力が高く、対象物の内部も加熱してしまう。このため、表面の樹脂を十分に溶融するまでに、樹脂の表面近傍だけでなく内部まで溶融してしまう。また、溶融に時間がかかるので、樹脂は長時間加熱されて品質が損なわれる恐れもある。さらには、熱伝導による影響も大きくなる。すなわち、加熱時間が長いと加熱体の周りの空気が加熱され、加熱された空気が樹脂を広い範囲で加熱してしまうので、さらに樹脂の品質が損なわれてしまうという問題もある。
【0006】
そこで、特許文献2により、ハロゲンヒータまたはカーボンヒータを使用した中空成形品の成形方法が提案されている。この用法によると、移動型と固定型とを使用して第1、2の半成形品を接合端面を有するように成形し、第2の半成形品が残った状態で移動型をスライドさせて、それぞれの接合端面を整合させ、その間にハロゲンヒータまたはカーボンヒータからなるヒータを挿入して、接合端面を溶融してからヒータを退避させ、そして型閉じして接合端面を溶着することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の成形方法によると、半中空成形品の接合端面の溶融には、ハロゲンヒータまたはカーボンヒータが使用されるので、ヒータに給電すれば速やかに目標温度に到達する。従って、成形サイクルに合わせて、換言すると接合端面の樹脂を溶融するときのみヒータに給電すればよく、さらには温度の強弱の調整も容易であるので、無駄なエネルギーを消費することなく接合できるという効果も得られる。このようにヒータの制御応答性が優れているので、樹脂の種類、接合端面の形状、大きさ等に合わせてきめ細かくヒータを制御することもできる。また、これらのヒータからは近赤外線、中赤外線が照射されるので、接合端面の比較的表面近傍のみが溶融され、接合に関係のない他の部分を溶融することがないという、効果も得られる。また、ヒータはチューブ状の石英ガラスで覆われた線状を呈しているので、ヒータを一筆書き状にして任意の形状に形成できる。従って、ヒータを容易に接合端面の形状に相似した形状に形成でき、接合端面のみを溶融することができる。
【0008】
ハロゲンヒータまたはカーボンヒータによると、上記のように数々の効果が得られるので、通常は問題なく有効に実施されている。しかし、融着部分が縦方向あるいは上下方向に長いときには問題が生じることがある。以下、その理由を説明する。図4の(ア)は、金型内で半中空成形品A’とB’とが接合端面S’、S’で熱融着された中空成形品を示す斜視図で、その(イ)は(ア)においてイ−イ方向に見た断面図であるが、半中空成形品A’、B’の接合端面S’、S’の間にヒータを挿入して、接合端面を加熱するとき、重力の作用方向の縦方向の接合端面S’t、S’tを熱した熱は、多数の矢印で示されているように、熱気となって上昇するので、縦方向の接合端面S’t、S’tは水平方向の接合端面S’h、S’hよりも早期に加熱・溶融する、あるいは過溶融する。そうすると、半中空成形品A’とB’の接合端面S’、S’を圧着するとき縦方向の接合端面S’t、S’tに融着バリが生じる。横方向の接合端面S’h、S’hには、熱気の上昇はないのでバリは生じない。なお、図4の(イ)において参照数字1’は、固定金型を示している。
【0009】
上記のような融着バリも、横方向あるいは水平方向の接合端面S’h、S’hには生じないので、図4の(ア)に示されている半中空体A’、B’を横方向にして、すなわち半中空成形品A’、B’が上下関係になるようにして成形することが考えられるが、半中空成形品の形状によっては縦方向の接合端面は避けられないことがある。また、接合端面S’、S’が上下方向になるようにして成形すると、接合端面S’,S’の間は水平になり、重力に逆らってヒータを水平に保って出し入れしなければならないので、ヒータの駆動装置が複雑化するという、別の問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記したような問題に鑑みてなされたもので、具体的には、複雑な形状の中空成形品でも高い寸法精度で成形できると共に、充分な接合強度が得られ、半中空成形品の接合端面を溶融するとき、短時間で接合端面の表面近傍のみを溶融できると共に、他の部分を妄りに溶融することが無く、融着バリの問題、樹脂の熱劣化の問題等がなく、またエネルギーの損失が少なく溶融箇所によって加熱量を調節することも可能な、中空成形品の製造方法およびこの方法の実施に使用される中空成形品の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、金型内で対になる半成形品の接合端面を溶融して、型閉じして接合端面を融着する中空成形品の成形方法において、接合端面の溶融は、該接合端面に相似した形状のハロゲンヒータまたはカーボンヒータを使用するように構成される。このとき、縦方向になっている接合端面、あるいは重力に関して上下方向になっている接合端面には空気を吹き付ける、または接合端面近傍から熱気を吸引するように構成される。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、1次成形において、型閉じ可能な移動金型と固定金型とを使用して対になる半中空成形品を接合端面を有するように成形し、そして2次成形において、前記固定金型に残っている一方の半中空成形品の接合端面と、前記移動金型に残っている他方の半中空成形品の接合端面とが所定の間隔になるように対向させて、対向した接合端面間にヒータを非接触的に挿入して、接合端面を溶融して前記ヒータを退避させ、そして前記移動金型を前記固定金型に対して型閉じして、または一対の半中空成形品を金型内で互いに押し付けて接合端面を融着する中空成形品の製造方法において、前記ヒータには、ハロゲンヒータまたはカーボンヒータを使用し、発熱のタイミングと発熱温度を制御すると共に、重力に関して上下方向の位置関係になっている接合端面には、前記ヒータにより加熱しているとき、または加熱後に空気を吹き付け、あるいは熱気を吸引するように構成される。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の成形方法において、吹き付ける空気量あるいは吸引する熱気量は、重力に関して上方に位置する接合端面ほど多くするように構成される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、金型と、ヒータとの組み合わせからなり、前記金型は、少なくとも固定金型と移動金型を有し、前記移動金型を第1の位置で前記固定金型に対して型締めすると、接合端面を有する一対の第1、2の半中空成形品を成形するための第1、2のキャビテイが構成され、前記移動金型を所定量移動させると、前記第1、2のキャビテイを構成している凹部は互いに整合し、この整合した第2の位置では、前記固定金型と移動金型のパーティング面の間を所定の間隔に保持できると共に、前記移動金型を前記固定金型に対して型締めすることもできる製造装置であって、前記固定金型の凹部と前記移動金型の凹部の少なくとも一方の凹部の開口部を構成している、重力に関して縦方向になっている開口縁の近傍には前記金型のパーティング面に開口した空気吹き出し用、あるいは吸引用の空気孔が設けられ、前記ヒータは、第1、2の半中空成形品の接合端面と相似した形状に構成されたハロゲンヒータまたはカーボンヒータからなり、該ヒータは前記パーティング面の間に挿入、退避自在に設けられていると共に、発熱のタイミングと発熱温度が制御されるようになっている。請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の製造装置において、前記空気孔は縦方向の開口縁に沿って複数個設けられ、これらの空気孔から吹き出す空気量あるいは吸引する空気量は、個々の空気孔においてあるいは群に分けて調整されるようになっている。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によると、1次成形において、型閉じ可能な移動金型と固定金型とを使用して対になる半中空成形品を接合端面を有するように成形し、そして2次成形において、前記固定金型に残っている一方の半中空成形品の接合端面と、前記移動金型に残っている他方の半中空成形品の接合端面とが所定の間隔になるように対向させて、対向した接合端面間にヒータを非接触的に挿入して、接合端面を溶融して前記ヒータを退避させ、そして前記移動金型を前記固定金型に対して型閉じして、または一対の半中空成形品を金型内で互いに押し付けて接合端面を融着するので、すなわち金型内で対になる半中空成形品の接合端面を溶融して、金型内で接合端面を融着するので、複雑な形状の中空成形品でも高い寸法精度で成形できると共に、充分な接合強度が得られる。そして、本発明によると、半中空成形品の接合端面の溶融には、ハロゲンヒータまたはカーボンヒータが使用されるので、ヒータに給電すれば速やかに目標温度に到達する。従って、成形サイクルに合わせて、すなわち接合端面の樹脂を溶融するときのみヒータに給電すればよく、さらには温度の強弱の調整も容易であるので、無駄なエネルギーを消費することなく接合できるという効果も得られる。このようにヒータの制御応答性が優れているので、樹脂の種類、接合端面の形状、大きさ等に合わせてきめ細かくヒータを制御することもできる。また、これらのヒータからは近赤外線、中赤外線が照射されるので、接合端面の比較的表面近傍のみが溶融され、接合に関係のない他の部分を溶融することがないという、効果も得られる。また、短時間で溶融できるので樹脂の熱による劣化を招くようなこともない。さらに、これらのヒータは、発熱体がチューブ状の石英ガラスで覆われた線状を呈しているので、ヒータを一筆書き状にして任意の形状に形成できる。従って、ヒータを容易に接合端面の形状に相似した形状に形成でき、接合端面のみを溶融することができる。また、ヒータがハロゲンヒータまたはカーボンヒータから構成されているので、軽量化することができ、安価で小型の駆動装置でも駆動が可能になる。このように、駆動装置を小型化できるので、製造装置の近傍に成形品を取り出すロボットチャック等を設けることも容易になる。また、石英ガラスは、高温になっても変形しないので、接合端面とヒータとの間隔を精度良く調節でき、溶融したい部分だけを正確に溶融することができるという効果も得られる。
【0015】
特に、本発明によると、上記のような効果に加えて、重力に関して上下方向の位置関係になっている接合端面には、前記ヒータにより加熱しているとき、または加熱後に空気を吹き付け、あるいは接合端面近傍から熱気を吸引するので、上下方向の位置関係になっている接合端面が過溶融されることなく、接合端面に融着バリは生じないという本発明に特有の効果が得られる。また、他の発明によると、吹き付ける空気量あるいは吸引する熱気量は、重力に関して上方に位置する接合端面ほど多くするので、前記接合端面は均一に溶融され、均一な融着力で融着される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る製造装置を示す図で、その(ア)は固定金型と移動金型とを観音開き的に開いて示す斜視図、その(イ)は移動金型を閉じたとき構成される第1のキャビティの近傍を断面にして示す断面図、その(ウ)は第2のキャビティの近傍を断面にして示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る製造装置を使用して中空成形品を製造している途中の段階を模式的に示す断面図である。
【図3】内部にリブを有する半中空成形品の接合端面を加熱するのに適したヒータの実施の形態を示す平面図である。
【図4】従来の製造方法により製造された中空成形品を示す図で、その(ア)はその斜視図、その(イ)は(ア)において矢視イ−イ方向に見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施の形態に係る中空成形品の製造装置は、金型とヒータ装置とから構成されているが、初めに金型について説明する。図1の(ア)には、本実施の形態に係る金型が観音開き的に開かれた状態で示されている。金型は概略的には、図1の(ア)において右方に示されている固定金型1と、この固定金型1に対して型開閉される移動金型20とから構成されている。移動金型20は、可動盤19に上下方向にスライド的に駆動可能に設けられている。固定金型1は固定盤に取り付けられているが、固定盤は図1には示されていない。同様に、移動金型20を上下方向に駆動する駆動装置、可動盤19を固定盤に対して型締めする型締装置、射出ユニット等も図1には示されていない。
【0018】
固定金型1の、図1の(ア)において上方位置には、パーティング面Pから内部の方へ引き込んだ所定大きさの固定側凹部2が形成されている。この固定側凹部2は、後で説明するように、第1の半成形品Aの外表面を成形するためのものである。固定金型1の、図1の(ア)における下方位置には、所定大きさの固定側コア5がパーティング面Pから突き出るように設けられている。この固定側コア5は、第2の半成形品Bの内表面を成形するためのものである。固定側コア5の周囲に所定の間隔をおいて、図1の(ア)では省略されているが図1の(ウ)に示されているように、小さな凹部9が形成されている。この凹部9により第2の半成形品Bの接合端面に小さな凸状が成形されることになる。
【0019】
移動金型20の、図1の(ア)において上方位置には、パーティング面Pから突き出るように移動側コア22が形成されている。この移動側コア22は、後で説明するように、第1の半成形品Aの内表面を成形するためのものである。そのために移動側コア22は、固定側凹部2よりも第1の半成形品Aの肉厚分だけ小さい。移動金型20の、図1の(ア)における下方位置には、固定側コア5よりも所定量だけ大きい移動側凹部25がパーティング面Pから内側へ引き込むようにして設けられている。この移動側凹部25は、第2の半成形品Bの外表面を成形するためのものである。そのために移動側凹部25は、固定側コア5よりも第2の半成形品Bの肉厚分だけ大きい。本実施の形態によると、一対の第1、2の半成形品A、Bは、便宜上同じ大きさ、同じ形状をしているので、固定側凹部2と移動側凹部25は同じ大きさ同じ形状をし、固定側コア5と移動側コア22も同じ大きさ同じ形状をしている。図1の(イ)に示されているように、移動側コア22の外側に小さな凹部23が形成されている。この凹部23により第1の半成形品Aの接合端面に小さな凸状が成形されることになる。
【0020】
本実施の形態によると、固定側凹部2の開口部3は、図1の(ア)に示されているように、上下の水平方向の開口縁3U、3Lと左右の縦方向の開口縁3S、3Sとからなっている。これらの縦方向の開口縁3S、3Sは、重力に関して上下方向の位置関係になっている。移動側凹部25の開口部26も、同じ形状の水平方向の開口縁26U、26Lと左右の縦方向の開口縁26S、26Sとからなっている。図示の実施の形態によると、開口部3、26は、略方形を呈しているので縦方向の開口縁3S、26S、…は、直線状になっているが、開口部あるいは開口縁が円形の場合でも曲線状ではあるが縦方向の開口縁は存在する。
【0021】
本実施の形態によると、固定側凹部2の左右の縦方向の開口縁3S、3Sの側部には、空気孔4、4、…が縦方向に所定の間隔をおいて複数個設けられている。移動側凹部25の左右の縦方向の開口縁26S、26Sの側部にも、空気孔7、7、…が縦方向に複数個設けられている。図1の(イ)および(ウ)は、1次成形位置で移動金型20を固定金型1に対して型締めした状態を示す断面図であるが、これらの図も使用して、固定側凹部2、移動側コア22、空気孔4、4…等の構成についてさらに詳しく説明する。固定金型1のパーティング面P側には固定側凹部2が形成されているが、複数個の空気孔4、4、…は、この固定側凹部2の開口部3を構成している左右の縦方向の開口縁3S、3Sの外側近傍の、パーティング面Pに斜め方向すなわち開口部3の方向に開口している。このような空気孔4、4、…は、図1の(ア)に示されているように上下方向に所定の間隔をおいて複数個設けられている。これらの空気孔4、4、…から空気が左右の縦方向の開口縁3S、3Sの方向に吹き付けられ、あるいは左右の縦方向の開口縁3S、3Sの近傍から熱気が吸引され、左右の縦方向の接合端面が適温に加熱されるようになっている。これらの空気孔4、4、…は、それぞれのプレナム室6、6、…に連なり、プレナム室6、6、…は、図示されない空気源に連なっている。図1には具体的には示されていないが、空気孔4、4、…は、個々に管理されるように、あるいは複数個にまとめられて群管理されるようになっている。移動金型20の移動側凹部25の縦方向の開口縁26S、26Sの近傍にも空気孔7、7、…が同様に形成されている。これらの空気孔7、7、…もそれぞれのプレナム室8、8、…に連なり、プレナム室8、8、…は空気源に連なり、そして個々に、あるいは複数個にまとめられて群管理されるようになっている。
【0022】
このように構成されている固定側凹部2の底部には、図示されない射出ユニットに連なっている1次成形用の第1のゲート11が開口している。また、固定側コア5の頂部には射出ユニットに同様に連なっている第2のゲート12が開口している。本実施の形態では2次成形はヒータで実施されるので、2次成形用のランナ、ゲート等はなく、単純な金型構造になっている。
【0023】
ヒータ装置は、図には示されていないが、所定の形状に形成された所定の太さからなる線状のヒータ、ヒータに必要に応じて給電する電源制御装置、ヒータを固定金型1と移動金型20との間に挿入および退避させる駆動装置等から構成されている。ヒータは、ハロゲンヒータまたはカーボンヒータからなる。ハロゲンヒータは、タングステンからなるフィラメントと、フィラメントに被せられたチューブ状の石英ガラスと、チューブ内に封入されているハロゲンガスとから構成されている。フィラメントに給電してフィラメントが高温になると、フィラメントからタングステン原子が蒸発するが、いわゆるハロゲンサイクル効果によって、ハロゲンガスがタングステン原子と一時的に結合して、その後タングステン原子をフィラメントに戻すので、フィラメントの消耗は抑制され、フィラメントを高温にすることができると共に、寿命も長いという特徴を有する。一方、カーボンヒータは、カーボンワイヤーからなる発熱体と、発熱体に被せられているチューブ状の石英ガラスとから構成されており、カーボンヒータも高温にすることができると共に、寿命が長い。このようなヒータは、給電を開始して1〜数秒後には目標温度に到達するので、制御応答性が良く、容易に温度調節もできる。ハロゲンヒータは、中心波長が約1.2μmの近赤外線を、カーボンヒータは、中心波長が約2〜3μmの中赤外線をそれぞれ放射する。近赤外線、中赤外線は、いずれも輻射エネルギーが大きいので、短時間に樹脂を溶融することができる。そして、これらの赤外線は、物体へ浸透する能力が小さいので、表面近傍の樹脂だけを素早く溶融して樹脂の品質を損なうことはない。なお、中赤外線は近赤外線に比べると若干物体への浸透する能力を有するので、溶融する樹脂の厚さは若干厚くなるが、樹脂に吸収されやすく、効率的に樹脂を溶融する。
【0024】
次に、図2も使用して、上記製造装置を用いた中空成形品の製造例を説明する。移動金型20を第1の成形位置すなわち図1の(ア)に示されている位置に駆動して、型締装置により型締する。そうすると、既に説明したように、固定金型1の固定側凹部2と移動金型20の移動側コア22とにより第1の半成形品Aを成形するための第1のキャビティC1が構成され、固定側コア5と移動側凹部25とにより第2の半成形品Bを成形するための第2のキャビティC2とが構成される。これらの第1、2のキャビティC1、C2は、図1の(イ)、(ウ)にそれぞれ示されている。
【0025】
射出ユニットから可塑化された溶融樹脂を射出する。溶融樹脂はスプル、ランナ等を通って第1、2のゲート11、12を介して、それぞれのキャビティC1、C2に略同時に充填される。これにより、第1、2の半成形品A、Bが実質的に同時に成形される。このとき、第1、2の半成形品A、Bの接合端面a、bには、図2に示されているように、小さな凸状a’、b’も成形される。ある程度の冷却固化を待つ。これで1次成形を終了する。
【0026】
次いで、可動盤19すなわち移動金型20を開く。そうすると、第1、2の半成形品A、Bは、その形状、面積あるいは突起物の有無等により、第1の半成形品Aは固定金型1の方に、第2の半成形品Bは移動金型20の方にそれぞれ残って開かれる。移動金型20を上方の第2の位置へスライドさせる。そうすると、第1、2の半成形品A、Bのそれぞれの接合端面a、bは、所定の間隔だけ離間して整合する。このような整合した状態が図2に示されている。
【0027】
樹脂の種類、接合端面a、bの形状、大きさ、接合の強弱等により、通電のタイミング、発熱温度等を電源制御装置に設定しておく。ヒータを駆動して接合端面a、b間に挿入する。挿入すると、ヒータの表面と接合端面aの間、およびヒータの表面と接合端面bの間、より厳密には小さな凸状a’、b’の間は、0.5mm〜50mm程度になる。そうして、ヒータに給電する。そうすると、接合端面a、bおよびその凸状a’、b’には近赤外線または中赤外線が照射されて非接触的に瞬時に加熱溶融される。溶融したら、ヒータへの給電を停止して、ヒータを退避させる。このとき、空気孔4、4、…7、7、…から空気を吹き出し、あるいは吸引して接合端面a、bの過加熱を防止する。型締めする。この型締により第1、2の半成形品A、Bは、小さな凸状a’、b’が押し広げられ、接合端面a、bで溶着される。これにより、2次成形を終わる。移動金型20を開くと、図示されていないエジェクタピンが突き出て、中空成形品が取り出される。移動金型20を、図1の(ア)に示されている第1の位置へスライドさせて、前述したようにして1次成形をする。以下同様にして、中空成形品を製造する。
【0028】
本実施の形態によると、重力に関して上下方向の位置関係になっている接合端面a、bに空気を吹き付けるので、あるいは熱気を吸引するので、前記上下方向の接合端面a、bと他の接合端面は同程度に加熱され、前記接合端面a、bが過加熱されるようなことはない。したがって、過不足なく融着され融着バリが生じるようなことはない。
【0029】
次に、複数のリブによって内部が複数の室に分割されたタンクを製造する場合の、ヒータ装置について説明する。図3には、タンクを構成する一方の半中空成形品の開口部X、X’および内部のリブY,Zが点線で示されている。XとX’とからなる開口部は、略方形を呈しているが、リブY,Zは途中で切れている。開口部X、X’およびリブY,Zは接合端面であり、これらが他方の半中空成形品の開口部およびリブの接合端面に2次成形時により融着されることになる。当業者には容易に理解されるので詳しくは説明しないが、このような一対の半中空成形品を接合端面で融着すると、内部が形式上3個の室に分割されたタンクが成形されることになる。このような接合端面を溶融する場合、ヒータは少なくとも2本必要になる。半中空成形品の接合端面すなわち開口部X、Xを溶融する第1のヒータH1と、リブY、Zの接合端面と開口部X’、X’を溶融する第2のヒータH2が、図3に示されているように形成されている。これらの第1、2のヒータH1、H2には電源制御装置Sから給電される。本実施の形態においても、縦方向の接合端面が存在するときは、接合端面に空気を吹き付ける、あるいは熱気を吸引して過加熱を防止する。
【0030】
本実施の形態によると、ヒータにはハロゲンヒータまたはカーボンヒータが適用されるので、接合端面a、bの間は前述したように0.5mm〜50mmのように狭くなっている。したがって、空気は固定金型1の空気孔4、4、…または移動金型20の空気孔7、7、…の一方の空気孔からのみ吹き付けるように、あるいは吸引するように実施することもできる。また、上記した実施の形態では、完全に密封された中空成形品を製造する例について説明されているが、一部が開放された中空状の成形品を同様にして製造できることは明らかである。さらには、3個以上の1次成形品から1個の中空成形品を製造できることも明らかである。したがって、中空成形品の中には、一部が開放した成形品も、3個以上の複数の半成形品から成形される中空成形品も含まれることになる。また、移動金型20をスライドする代わりに回転させても実施できることは明らかである。さらには、上記実施の形態では2次成形は、移動金型20を固定金型1に対して型締めすることにより実施するようになっているが、2次成形は図示されない別の金型を使用して接合端面を上記したようにして溶融し、そして接合端面を融着することもできる。さらには、縦方向の接合端面には、温度調節された空気を吹き付けるように実施することも、また縦方向に低い接合端面には1個の空気孔でも実施できる。
【符号の説明】
【0031】
1 固定金型 2 固定側凹部
3 固定側凹部の開口部 3S 開口部の縦方向の開口縁
4 固定側の空気孔 5 固定側コア
7 可動側の空気孔 20 移動金型
22 移動側コア 25 移動側凹部
26 移動側凹部の開口部 26S 開口部の縦方向の開口縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次成形において、型閉じ可能な移動金型と固定金型とを使用して対になる半中空成形品を接合端面を有するように成形し、そして2次成形において、前記固定金型に残っている一方の半中空成形品の接合端面と、前記移動金型に残っている他方の半中空成形品の接合端面とが所定の間隔になるように対向させて、対向した接合端面間にヒータを非接触的に挿入して、接合端面を溶融して前記ヒータを退避させ、そして前記移動金型を前記固定金型に対して型閉じして、または一対の半中空成形品を金型内で互いに押し付けて接合端面を融着する中空成形品の製造方法において、
前記ヒータには、ハロゲンヒータまたはカーボンヒータを使用し、発熱のタイミングと発熱温度を制御すると共に、重力に関して上下方向の位置関係になっている接合端面には、前記ヒータにより加熱しているとき、または加熱後に空気を吹き付け、あるいは接合端面近傍から熱気を吸引することを特徴とする、中空成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成形方法において、吹き付ける空気量あるいは吸引する熱気量は、重力に関して上方に位置する接合端面ほど多くする中空成形品の製造方法。
【請求項3】
金型と、ヒータとの組み合わせからなり、
前記金型は、少なくとも固定金型と移動金型を有し、前記移動金型を第1の位置で前記固定金型に対して型締めすると、接合端面を有する一対の第1、2の半中空成形品を成形するための第1、2のキャビテイが構成され、前記移動金型を所定量移動させると、前記第1、2のキャビテイを構成している凹部は互いに整合し、この整合した第2の位置では、前記固定金型と移動金型のパーティング面の間を所定の間隔に保持できると共に、前記移動金型を前記固定金型に対して型締めすることもできる製造装置であって、
前記固定金型の凹部と前記移動金型の凹部の少なくとも一方の凹部の開口部を構成している、重力に関して縦方向になっている開口縁の近傍には前記金型のパーティング面に開口した空気吹き出し用、あるいは吸引用の空気孔が設けられ、
前記ヒータは、第1、2の半中空成形品の接合端面と相似した形状に構成されたハロゲンヒータまたはカーボンヒータからなり、該ヒータは前記パーティング面の間に挿入、退避自在に設けられていると共に、発熱のタイミングと発熱温度が制御されるようになっている中空成形品の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の製造装置において、前記空気孔は縦方向の開口縁に沿って複数個設けられ、これらの空気孔から吹き出す空気量あるいは吸引する空気量は、個々の空気孔においてあるいは群に分けて調整されるようになっている中空成形品の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−35532(P2012−35532A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178453(P2010−178453)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】