説明

乗員検知装置

【課題】大人と子供とを精度良く判別する。
【解決手段】乗員検知装置10は、単眼距離画像センサ11から出力される距離画像に基づき、乗員領域の体積を推定し、該体積が所定体積閾値以上であるか否かを判定する体積判定部56と、車両上下方向の所定位置よりも下方側に車室内の乗員の膝部が存在するか否かを判定する膝部判定部57と、体積判定部56により乗員領域の体積が所定体積閾値以上であると判定された場合であって、膝部判定部57により所定位置よりも下方側に膝部が存在すると判定された場合には乗員は大人であると判定し、膝部判定部57により車両上下方向の所定位置よりも下方側に膝部が存在しないと判定された場合には乗員は子供であると判定する乗員判定部58とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗員検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば撮像装置の撮像により得られた画像から乗員の頭部位置を検知し、この頭部位置から乗員の着座状態を判定する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来、例えば撮像装置の撮像により得られた画像から乗員の頭部重心位置と肩幅とを検知し、乗員が大人であるか、あるいは子供であるかを判定する装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−331790号公報
【特許文献2】特開2007−198929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る装置によれば、乗員の姿勢が変化することに伴って頭部位置が変動することから、大人と子供とを精度良く区別することができない虞がある。
また、乗員の腕の動作状態や撮像装置の撮像方向などに起因して、肩幅の検出が困難になる場合があり、乗員が大人であるか、あるいは子供であるかを的確に判定することができないという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、大人と子供とを精度良く判別することが可能な乗員検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る乗員検知装置は、車室内の撮像領域を撮像して撮像結果を出力する撮像手段(例えば、実施の形態での受光部22)と、前記撮像手段から出力された撮像結果に基づき、3次元空間での前記撮像領域の距離の情報を有する距離画像を生成する距離画像生成手段(例えば、実施の形態での処理部23)と、前記距離画像に基づき、乗員領域の体積を推定し、該体積が所定体積閾値以上であるか否かを判定する体積判定手段(例えば、実施の形態での体積判定部56)と、前記距離画像に基づき、車両上下方向の所定位置よりも下方側に前記車室内の乗員の膝部が存在するか否かを判定する膝部判定手段(例えば、実施の形態での膝部判定部57)と、前記体積判定手段により前記乗員領域の体積が前記所定体積閾値以上であると判定された場合であって、前記膝部判定手段により前記所定位置よりも下方側に前記膝部が存在すると判定された場合には前記乗員は大人であると判定し、前記膝部判定手段により前記車両上下方向の所定位置よりも下方側に前記膝部が存在しないと判定された場合には前記乗員は子供であると判定する乗員判定手段(例えば、実施の形態での乗員判定部58)とを備える。
【0007】
さらに、本発明の第2態様に係る乗員検知装置では、前記膝部判定手段は、前記距離画像を構成する複数の画素毎に前記3次元空間での法線ベクトルの逆方向に固定長の逆ベクトルを算出し、該逆ベクトルにより指定される前記3次元空間での位置座標を内部座標とする内部座標設定手段(例えば、実施の形態でのステップS11)と、前記3次元空間を構成する複数の単位空間毎に該単位空間内に含まれる前記内部座標の総数に係るスコア値を算出し、前記複数の画素毎に対応する前記内部座標が含まれる前記単位空間の前記スコア値を前記複数の画素毎に対応させて示すスコア画像を生成するスコア画像生成手段(例えば、実施の形態でのステップS12)と、前記スコア値に基づいて前記膝部を抽出する膝部抽出手段(例えば、実施の形態でのステップS61)とを備える。
【0008】
さらに、本発明の第3態様に係る乗員検知装置では前記距離画像に基づき、前記乗員の頭部領域を抽出する頭部領域抽出手段(例えば、実施の形態での頭部領域判定部54)を備え、前記体積判定手段が、前記頭部領域を含む前記乗員領域の体積を推定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1態様に係る乗員検知装置によれば、身体全体の大きさに比べて頭部のみの大きさは大人と子供とで差が小さく、シートに着座した大人の頭部の位置とシート上で立ち上がった子供の頭部の位置とはほぼ一致する場合がある。
このとき、立ち上がった子供では膝部が検出され難いことに比べて、着座した大人では膝部が検出され易く、シートに着座した大人の体積とシート上で立ち上がった子供の体積とが所定体積閾値以上であると判定された場合であっても、車両上下方向の所定位置よりも下方側に膝部が存在するか否かを判定することによって、乗員が大人であるか、あるいは子供であるかを、容易かつ精度良く判定することができる。
【0010】
さらに、本発明の第2態様に係る乗員検知装置によれば、画素毎に設定される固定長の逆ベクトルによる内部座標を用いた投票方式によって単位空間毎のスコア値を算出し、スコア値が球形状の指標となることに応じて乗員の膝部を抽出することから、演算負荷の増大を防止しつつ検知精度を向上させることができる。
【0011】
さらに、本発明の第3態様に係る乗員検知装置によれば、シートに着座した大人の頭部の位置とシート上で立ち上がった子供の頭部の位置とがほぼ一致し、さらに、シートに着座した大人の体積とシート上で立ち上がった子供の体積とが同程度であると判定された場合であっても、車両上下方向の所定位置よりも下方側に膝部が存在するか否かを判定することによって、乗員が大人であるか、あるいは子供であるかを、容易かつ精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る乗員検知装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る乗員検知装置の構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る偏微分フィルターのカーネルの例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る観測画素座標P(v,u)と頭部ベクトルH(v,u)と内部座標I(v,u)との対応関係を模式的に示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るボクセル空間Vの一例をシート座標系で示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る距離画像の各画素(v,u)と内部座標I(v,u)とボクセル空間Vとの対応関係の例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る距離画像Lの一例と、3次元空間でのボクセル空間V単位でのスコア値の分布の一例と、スコア画像Sの一例とを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る2値化画像Bの一例と、領域分割画像Eの一例とを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る領域分割部によって分割された2つの画像領域Ea,Ebと、領域結合部によって2つの画像領域Ea,Ebが結合された画像領域F0との例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る領域分割部によって分割された2つの画像領域Ea,Ebと、領域結合部によって2つの画像領域Ea,Ebが結合された画像領域F0との例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る領域結合部により生成された領域結合画像Fの一例と、球形状判定部による処理後の領域結合画像Fの一例と、体積判定部による処理後の領域結合画像Fの一例とを示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る領域結合画像Fを構成する画像領域Fmのカメラ座標系での各軸の最大値および最小値の一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係るシート座標系での法線ベクトルN(v,u)と正面領域SAとの対応関係の一例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る距離画像から抽出された正面領域SAの一例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る乗員領域を車両左右方向から見たサイドビュー画像と、乗員領域の輝度画像と、乗員領域のスコア画像との例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る乗員検知装置の動作を示すフローチャートである。
【図17】図16に示す頭部領域検知の処理を示すフローチャートである。
【図18】図17に示す内部座標設定の処理を示すフローチャートである。
【図19】図17に示すスコア画像生成の処理を示すフローチャートである。
【図20】図17に示す頭部領域判定の処理を示すフローチャートである。
【図21】図16に示す膝部判定の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る乗員検知装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0014】
本実施の形態による乗員検知装置10は、例えば図1、図2に示すように、単眼距離画像センサ11と、制御装置12とを備えて構成され、例えば車両13に搭載されたエアバッグ(例えば、フロントエアバッグ)14の展開を制御するエアバッグシステム15の一部を構成している。
【0015】
単眼距離画像センサ11は単眼の撮像装置であって、例えば、車両13のルーフ前部の中央部(例えば、左右のサンバイザー間の位置など)に配置され、少なくとも車室内のシート16(例えば、助手席)およびシート16に着座した乗員やシート16に設置されたチャイルドシートなどを撮像対象として含み、これらの撮像対象を斜め上方の前方側から撮像するように設定されている。
【0016】
単眼距離画像センサ11は、例えば、発光部21と、受光部22と、処理部23とを備えて構成されている。
【0017】
発光部21は、例えば、赤外線領域の光を発光するLEDなどの発光体31と、発光体31の発光を制御する駆動回路32と、発光体31の発光による光を撮像対象に向けて拡散させる散乱板33とを備えて構成されている。
【0018】
駆動回路32は、例えば、受光部22から出力される発光制御の指令信号と、処理部23から出力される光量制御の指令信号とに応じて制御される。
【0019】
受光部22から出力される発光制御の指令信号は、発光部21の動作と受光部22の動作との同期をとって、発光部21から出力された発光パルスと、この発光パルスが撮像対象で反射されて受光部22に入力されて成る受光パルスとの位相差(時間差)を検知可能にするために、発光パルスの発光タイミングを指示する。
処理部23から出力される光量制御の指令信号は、発光部21から出力される発光パルスの発光量を指示する。
【0020】
受光部22は、例えば、発光部21から撮像対象に向けて照射された発光パルスが撮像対象で反射されてなる受光パルスを受けるレンズ36と、フィルター37と、レンズ36およびフィルター37を透過した受光パルスを検出するCMOSセンサなどの受光素子38とを備えて構成されている。
【0021】
受光部22は、処理部23から出力される制御信号に応じて発光部21に発光制御の指令信号を出力すると共に、受光素子38による受光パルスの検出結果として画像データを出力する。
この画像データは、受光素子38において受光パルスが検出された位置(つまり、撮像対象での発光パルスの反射点の位置)に対応する二次元配列の画素から構成され、各画素は、受光素子38で検出された受光パルスの光量(つまり、パルス数)の情報と、発光パルスと受光パルスとの位相差(時間差)の情報とを有している。
【0022】
処理部23は、発光部21に光量制御の指令信号を出力すると共に、受光部22に各種動作を指示する制御信号を出力しており、例えば、距離画像生成部41と、輝度画像生成部42とを備えて構成されている。
【0023】
距離画像生成部41は、受光部22から出力された画像データに基づき、各画素毎に、発光パルスと受光パルスとの位相差(時間差)の情報と発光パルスおよび受光パルスの速度(つまり光の速度)とから、3次元空間での単眼距離画像センサ11から撮像対象の反射点までの距離の情報を生成する。そして、二次元配列の各画素毎に単眼距離画像センサ11から撮像対象までの距離を示す距離画像を生成して、この距離画像を制御装置12に出力する。
【0024】
輝度画像生成部42は、受光部22から出力される画像データに基づき、二次元配列の各画素毎に受光素子38により検出された受光パルスの光量(つまり、パルス数)を示す輝度画像を生成して、この輝度画像を制御装置12に出力する。
【0025】
制御装置12は、例えば、画像処理部51と、内部座標設定部52と、スコア画像生成部53と、頭部領域判定部54と、シート領域検知部55と、体積判定部56と、膝部判定部57と、乗員判定部58と、駆動制御部59とを備えて構成されている。
【0026】
画像処理部51は、先ず、単眼距離画像センサ11から出力された距離画像に基づき、二次元配列の各画素毎の距離の情報に対応する3次元空間での撮像対象の反射点の位置をカメラ座標系で記述し、このカメラ座標系での各軸成分(X座標、Y座標、Z座標)を、二次元配列の各画素毎に対応させて示す3つのX画像およびY画像およびZ画像(XYZ画像)を生成する。
【0027】
なお、カメラ座標系は、例えば単眼距離画像センサ11の受光素子38の撮像面に直交する受光軸をZ軸とするXYZ座標系である。
そして、これらのXYZ画像に対して、輝度画像を参照して平滑化およびノイズ除去などの画像処理を行なう。
【0028】
さらに、画像処理部51は、カメラ座標系での各軸成分(X座標、Y座標、Z座標)を、シート座標系つまり車両前後方向をT軸かつ車両左右方向をB軸かつ車両上下方向をH軸とするTBH座標系での各軸成分(T座標、B座標、H座標)に変換して、予め記憶している車室内の所定の構造物(例えば、ピラー、ドア、ダッシュボード、センターコンソールなど)に関連するデータを除去する。
そして、このデータ除去後のシート座標系での各軸成分(T座標、B座標、H座標)をカメラ座標系での各軸成分(X座標、Y座標、Z座標)に変換して、この変換後の各軸成分(X座標、Y座標、Z座標)による3つのX画像およびY画像およびZ画像(XYZ画像)を出力する。
【0029】
内部座標設定部52は、画像処理部51から出力された3つのXYZ画像に基づき、距離画像を構成する複数の画素毎に3次元空間での法線ベクトルの逆方向に固定長の逆ベクトルを算出し、該逆ベクトルにより指定される3次元空間での位置座標を内部座標とする。
【0030】
先ず、内部座標設定部52は、画像処理部51から出力された3つのXYZ画像に対して、例えば図3(A)、(B)に示すカーネルからなるソーベルフィルターなどの偏微分フィルターによる畳み込み演算により、各画素毎に横方向の偏微分と縦方向の偏微分とを行なうことによって、3つのXYZ画像毎に横偏微分画像(X横偏微分画像Xu、Y横偏微分画像Yu、Z横偏微分画像Zu)および縦偏微分画像(X縦偏微分画像Xv、Y縦偏微分画像Yv、Z縦偏微分画像Zv)を算出する。
【0031】
そして、内部座標設定部52は、例えば下記数式(1)に示すように記述される縦画素vおよび横画素uで指定される距離画像の各画素(v,u)毎の法線ベクトルN(v,u)を、各横偏微分画像の画素値(X横偏微分画像Xu(v,u)、Y横偏微分画像Yu(v,u)、Z横偏微分画像Zu(v,u))および各縦偏微分画像の画素値(X縦偏微分画像Xv(v,u)、Y縦偏微分画像Yv(v,u)、Z縦偏微分画像Zv(v,u))と、カメラ座標系での各軸(X軸、Y軸、Z軸)の単位ベクトル(i、j、k)とに基づき算出する。
【0032】
【数1】

【0033】
そして、内部座標設定部52は、例えば下記数式(2)に示すように、法線ベクトルN(v,u)を画素面積|N(v,u)|で除算して正規化を行ない、さらに、符号を反転させることによって、逆ベクトルEを算出する。
【0034】
【数2】

【0035】
そして、内部座標設定部52は、例えば下記数式(3)に示すように、人体の頭部の厚さに対する所定頭部厚HeadThick(例えば、90mmなど)を逆ベクトルE(v,u)に乗算して、固定長の頭部ベクトルH(v,u)を算出する。
【0036】
【数3】

【0037】
そして、内部座標設定部52は、例えば図4および下記数式(4)、(5)に示すように、距離画像の各画素(v,u)の位置をカメラ座標系で示す観測画素座標P(v,u)と頭部ベクトルH(v,u)と合成して、内部座標I(v,u)を算出する。
【0038】
【数4】

【0039】
【数5】

【0040】
そして、内部座標設定部52は、距離画像の各画素(v,u)毎に対応する内部座標I(v,u)の各軸成分(X内部座標、Y内部座標、Z内部座標)を、各画素(v,u)毎の画素値に対応させて示す3つのX内部座標画像IXおよびY内部座標画像IYおよびZ内部座標画像IZを生成する。
【0041】
スコア画像生成部53は、3次元空間を構成する複数の単位空間毎に該単位空間内に含まれる内部座標I(v,u)の総数に係るスコア値を算出し、距離画像の各画素(v,u)毎に対応する内部座標I(v,u)が含まれる単位空間のスコア値を、所定の大きさの球形状の指標として、各画素(v,u)毎の画素値に対応させて示すスコア画像Sを生成する。
【0042】
先ず、スコア画像生成部53は、例えば図5に示すように、単眼距離画像センサ11の撮像領域を含む3次元空間を構成する複数の単位空間(3次元の座標空間)として、例えば、所定長(例えば、50mmなど)を一辺の長さとする複数の立方体(ボクセル空間)Vを設定する。
【0043】
そして、スコア画像生成部53は、例えば図6(A),(B)に示すように、距離画像の各画素(v,u)毎に対応する内部座標I(v,u)が含まれるボクセル空間Vに対して、各画素(v,u)の画素面積をスコア値として加算する。
これにより、例えば図7(A)に示すような距離画像Lの全画素(v,u)に対して、ボクセル空間V毎のスコア値の加算が完了すると、例えば図7(B)に示すような3次元空間でのボクセル空間V単位でのスコア値の分布が得られる。
【0044】
そして、スコア画像生成部53は、例えば図7(C)に示すように、距離画像の各画素(v,u)毎に対応する内部座標I(v,u)が含まれるボクセル空間Vのスコア値を、各画素(v,u)毎の画素値に対応させて示すスコア画像Sを生成する。
【0045】
頭部領域判定部54は、内部座標設定部52により生成された3つの各内部座標画像IX,IY,IZ毎に、例えば図3(A)、(B)に示すカーネルからなるソーベルフィルターなどの偏微分フィルターによる畳み込み演算により、各画素毎に横方向の偏微分と縦方向の偏微分とを行なうことによって、横偏微分画像および縦偏微分画像を算出する。
【0046】
そして、頭部領域判定部54は、3つの各内部座標画像IX,IY,IZ毎に横偏微分画像と縦偏微分画像とを合成することによって、3つの内部エッジ画像DX,DY,DZを生成する。
そして、例えば下記数式(6)に示すように、3つの内部エッジ画像DX,DY,DZを合成して、さらに、画素面積|N(v,u)|で除算して正規化を行なうことによって、3次元空間での複数の内部座標I(v,u)の分布に対してエッジを抽出した内部エッジ画像Dを生成する。
【0047】
【数6】

【0048】
そして、頭部領域判定部54は、例えば下記数式(7)に示すように、内部エッジ画像Dにおいて、画素値が所定閾値EdgeThresh未満の領域を「1」とし、画素値が所定閾値EdgeThresh以上の領域を「0」とする2値化処理を行なうことによって、例えば図8(A)に示すような2値化画像Bを生成する。
【0049】
【数7】

【0050】
そして、頭部領域判定部54は、2値化画像Bにおいて、例えば8近傍ラベリングなどのラベリング処理を行なうことによって、例えば図8(B)に示すような、複数の異なる画像領域En(nは任意の自然数)からなる領域分割画像Eを生成する。
【0051】
そして、頭部領域判定部54は、内部座標設定部52により生成された3つの各内部座標画像IX,IY,IZを参照しつつ、領域分割画像Eにおいて、複数の画像領域のうち内部座標I(v,u)の平均値の差が所定差以下の画像領域同士を単一の画像領域に結合して、領域結合画像Fを生成する。
なお、領域分割画像Eにおいて互いに結合されなかった画像領域は、変更無しに領域結合画像Fに含まれる。
【0052】
例えば、内部エッジ画像Dにおいて乗員が着用している帽子のつば部分などに起因して所定閾値EdgeThresh以上のエッジが抽出されと、例えば図9(A),図10(A)に示すように、頭部領域判定部54によって乗員の頭部領域が2つの画像領域Ea,Ebに分割される。
一方、2つの画像領域Ea,Ebは単一の人体部位である頭部領域であることから、各画像領域Ea,Ebでの内部座標I(v,u)はほぼ等しく、2つの画像領域Ea,Eb間において内部座標I(v,u)の平均値の差は所定差以下となり、例えば図9(B),図10(B)に示すように、頭部領域判定部54によって2つの画像領域Ea,Ebが単一の画像領域F0に結合される。
【0053】
そして、頭部領域判定部54は、スコア画像生成部53により生成されたスコア画像Sを参照しつつ、領域結合画像Fにおいて、複数の画像領域のうち、スコア値の平均値が所定の閾平均値以下の画像領域を除去する。
【0054】
例えば、頭部領域判定部54は、図11(A)に示すように複数の画像領域F1,…,F5により構成される領域結合画像Fから、所定の大きさの球形状の度合いが所定程度よりも低い画像領域、例えば乗員の胴体部に対応する画像領域F3と乗員の左右の大腿部に対応する画像領域F4,F5とを除去し、例えば図11(B)に示すような除去後の領域結合画像Fを生成する。
【0055】
そして、頭部領域判定部54は、画像処理部51により生成されたXYZ画像を参照しつつ、領域結合画像Fにおいて、複数の画像領域のうち、体積が上限体積値以上または下限体積値以下の画像領域を除去する。
なお、上限体積値および下限体積値は、人体の頭部の体積に対する閾値であって、人体の頭部の体積が上限体積値未満かつ下限体積値よりも大きいとして予め記憶されている。
【0056】
例えば、頭部領域判定部54は、図12に示すように、領域結合画像Fを構成する複数の画像領域Fm(mは任意の自然数)毎に、カメラ座標系での各軸の最大値(XMAX,YMAX,ZMAX)および最小値(XMIN,YMIN,ZMIN)を算出する。
そして、下記数式(8)に示すように、各軸の最大値(XMAX,YMAX,ZMAX)および最小値(XMIN,YMIN,ZMIN)から体積volを算出し、この体積volが、人体の頭部の体積に対する所定範囲を外れる上限体積値以上または下限体積値以下であるか否かを判定する。
【0057】
【数8】

【0058】
これにより、頭部領域判定部54は、例えば図11(B)に示すように複数の画像領域F1,F2により構成される領域結合画像Fから、体積が上限体積値以上または下限体積値以下となる画像領域、例えばシート16のヘッドレスト16aに対応する画像領域F1を除去し、例えば図11(C)に示すような除去後の領域結合画像Fを生成する。
【0059】
そして、頭部領域判定部54は、スコア画像生成部53により生成されたスコア画像Sを参照しつつ、領域結合画像Fを構成する複数の画像領域のうち、スコア値の平均値が最も高い画像領域を、乗員の頭部が存在する頭部領域であると判定する。
【0060】
シート領域検知部55は、例えば、XYZ画像あるいは距離画像に対して、適宜の特徴量抽出や、テンプレートマッチングや、シートモデルとの比較などの各種の処理を行なうことによって、シート16が存在する領域を検知する。
例えば、シート領域検知部55は、図13,図14に示すように、法線ベクトルN(v,u)が車両左右方向(B方向)に傾く角度が所定閾角度以下である領域を正面領域SAとして距離画像から抽出する。
【0061】
そして、シート領域検知部55は、例えば、頭部領域判定部54によって領域分割画像Eから形成された領域結合画像F(つまり、スコア値の平均値が所定の閾平均値以下の画像領域が除去される前の領域結合画像F)を構成する複数の画像領域のうち、正面領域SAが抽出された画像領域毎に対して、正面領域SAのシート座標系でのB軸の最大値および最小値から、車両左右方向(B方向)の位置(例えば、中心位置など)および長さ(B方向幅)を算出する。
そして、B方向の位置が所定位置範囲内かつB方向の長さ(B方向幅)が所定長さ範囲内である正面領域SAを、シート16のヘッドレスト16aが存在するヘッドレスト領域であると検知し、該ヘッドレスト領域に基づきヘッドレスト16aの位置を算出する。
【0062】
そして、シート領域検知部55は、シート座標系でのTH画像(つまり、単眼距離画像センサ11の撮像領域を車両左右方向から見たサイドビュー画像)などにおいて、ヘッドレスト16aの位置を中心とする2つの異なる円弧間においてシート16の腰部の領域を探索する。
そして、腰部の領域の厚さから、予め記憶している所定シート厚さを車両後方側から差し引いて、あるいは、予め記憶している所定人体厚さを車両前方側から差し引いて腰部の位置を算出し、ヘッドレスト16aの位置および腰部の位置に基づきシート16の前面形状を算出する。
そして、算出した前面形状よりも車両後方側の領域をシート16の領域であると検知し、このシート16の領域をXYZ画像(あるいはXYZ画像に対応する距離画像)から除去する。
【0063】
体積判定部56は、シート領域検知部55によってXYZ画像(あるいはXYZ画像に対応する距離画像)からシート16の領域が除去されて得られるシート領域除去画像に基づき、例えばシート領域除去画像を構成する複数の単位空間(例えば、ボクセル空間V)のうち少なくとも一点以上のデータ点を含む単位空間の総数などに基づき、頭部領域判定部54により検知された頭部領域を含む領域(乗員領域)の体積を推定する。
そして、推定した乗員領域の体積が所定体積以上であるか否かを判定し、この判定結果を出力する。
なお、乗員領域の体積に対する所定体積は、例えば成人男性の体積あるいはシート16上で立ち上がっている子供の体積が含まれる体積範囲の下限値となるように設定されている。
【0064】
膝部判定部57は、体積判定部54によって乗員領域の体積が所定体積以上であると判定された場合に、例えば、スコア画像Sを参照しつつ、シート領域除去画像に基づいて、車両上下方向の所定位置よりも下方側に乗員の膝部が存在するか否かを判定する。
【0065】
例えば図15(A)に示すように、膝部判定部57は、車両上下方向の所定位置を、少なくともシート16に着座した大人の膝部Vよりも上方の位置に設定する。
そして、この所定位置の高さ(例えば、車室内のフロアからの高さなど)Hthよりも下方側の領域において、スコア値が所定値以上の画素数を算出し、この画素数が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
そして、画素数が所定の閾値以上であると判定された場合には、乗員の膝部が存在すると判定し、一方、画素数が所定の閾値未満であると判定された場合には、乗員の膝部が存在しないと判定する。
【0066】
乗員判定部58は、例えば図15(A)〜(C)に示すように、膝部判定部57において所定位置の高さ(例えば、車室内のフロアからの高さなど)Hthよりも下方側の領域において乗員の膝部Vが存在すると判定された場合には、乗員領域にはシート16に着座した大人が存在すると判定する。一方、所定位置の高さHthよりも下方側の領域において乗員の膝部Vが存在しないと判定された場合には、乗員領域にはシート16上で立ち上がっている子供が存在すると判定する。
【0067】
駆動制御部59は、乗員判定部58による判定結果と、例えば車両13の急減速を検出する加速度センサなどの衝突センサ70から出力される検出結果の信号とに基づき、車両13に搭載されたエアバッグ(例えば、フロントエアバッグ)14の展開を制御する。
【0068】
本実施の形態による乗員検知装置10は上記構成を備えており、次に、この乗員検知装置10の動作について説明する。
【0069】
先ず、例えば図16に示すステップS01においては、単眼距離画像センサ11から出力された距離画像に対する前処理として、カメラ座標系でのXYZ画像を生成し、これらのXYZ画像に対して輝度画像を参照して平滑化およびノイズ除去などの画像処理を行なう。
そして、画像処理後のXYZ画像を、一時的にシート座標系の画像に変換して車室内の所定の構造物(例えば、ピラー、ドア、ダッシュボード、センターコンソールなど)に関連するデータを除去し、この除去後の画像を、再びカメラ座標系でのXYZ画像に変換する。
【0070】
次に、ステップS02においては、後述するように、距離画像に基づき、乗員の頭部が存在する頭部領域を検知する頭部領域検知の処理を行なう。
【0071】
次に、ステップS03においては、距離画像に基づき、シート16が存在する領域を検知するシート領域検知の処理を行なう。
このステップS03においては、例えば法線ベクトルN(v,u)が車両左右方向(B方向)に傾く角度が所定閾角度以下である領域を正面領域SAとして、B方向の位置が所定位置範囲内かつB方向の長さ(B方向幅)が所定長さ範囲内である正面領域SAをシート16のヘッドレスト16aが存在するヘッドレスト領域であると検知する。
【0072】
そして、シート16はシートバック16bの角度が変化した場合であっても、ヘッドレスト16aの位置と腰部の位置との相対的な位置関係は不変であることに応じて、ヘッドレスト16aの位置から腰部の位置を算出し、ヘッドレスト16aの位置および腰部の位置に基づきシート16の前面形状を算出する。
そして、算出した前面形状よりも車両後方側の領域をシート16の領域であると検知し、このシート16の領域をXYZ画像(あるいはXYZ画像に対応する距離画像)から除去する。
【0073】
次に、ステップS04においては、XYZ画像(あるいはXYZ画像に対応する距離画像)からシート16の領域が除去されて得られるシート領域除去画像に基づき、頭部領域検知部52により検知された頭部領域を含む領域(乗員領域)の体積を推定する。
そして、推定した乗員領域の体積が所定体積以上であるか否かを判定する。
【0074】
次に、ステップS05においては、乗員領域の体積が所定体積以上であると判定された場合に、例えば、スコア画像Sを参照しつつ、シート領域除去画像に基づいて、車両上下方向の所定位置よりも下方側に乗員の膝部が存在するか否かを判定する膝部判定の処理を行なう。
【0075】
次に、ステップS06においては、膝部判定の処理において所定位置の高さ(例えば、車室内のフロアからの高さなど)よりも下方側の領域において乗員の膝部が存在すると判定された場合には、乗員領域にはシート16に着座した大人が存在すると判定する。
一方、膝部判定の処理において所定位置の高さHthよりも下方側の領域において乗員の膝部が存在しないと判定された場合には、乗員領域にはシート16上で立ち上がっている子供が存在すると判定する。
【0076】
次に、ステップS07においては、乗員領域に大人または子供の何れが存在するかの乗員判定の処理による判定結果と、例えば車両13の急減速を検出する加速度センサなどの衝突センサ70から出力される検出結果の信号とに基づき、車両13に搭載されたエアバッグ(例えば、フロントエアバッグ)14の展開を制御し、エンドに進む。
【0077】
以下に、上述したステップS02の頭部領域検知の処理について説明する。
先ず、例えば図17に示すステップS11においては、XYZ画像に対応する距離画像を構成する複数の画素毎に3次元空間での法線ベクトルの逆方向に固定長の逆ベクトルを算出し、該逆ベクトルにより指定される3次元空間での位置座標を内部座標とする内部座標設定の処理を行なう。
【0078】
次に、ステップS12においては、3次元空間を構成する複数の単位空間毎に該単位空間内に含まれる内部座標の総数に係るスコア値を算出し、距離画像の各画素毎に対応する内部座標が含まれる単位空間のスコア値を、所定の大きさの球形状の指標として、各画素毎の画素値に対応させて示すスコア画像Sを生成するスコア画像生成の処理を行なう。
【0079】
次に、ステップS13においては、3次元空間での複数の内部座標の分布およびスコア画像Sに基づき、複数の画像領域のうちから乗員の頭部が存在する頭部領域を判定する頭部領域判定の処理を行なう。
【0080】
以下に、上述したステップS11の内部座標設定の処理について説明する。
先ず、例えば図18に示すステップS21においては、3つのXYZ画像に対して、例えばソーベルフィルターなどの偏微分フィルターによる畳み込み演算により、各画素毎に横方向の偏微分と縦方向の偏微分とを行なうことによって、3つのXYZ画像毎に横偏微分画像および縦偏微分画像を算出する。
【0081】
次に、ステップS22においては、上記数式(1)を用いて、横偏微分画像および縦偏微分画像と、カメラ座標系での各軸(X軸、Y軸、Z軸)の単位ベクトルとにより、縦画素vおよび横画素uで指定される距離画像の各画素(v,u)毎の法線ベクトルN(v,u)を算出する。
【0082】
次に、ステップS23においては、上記数式(2),(3)を用いて、法線ベクトルN(v,u)の逆方向に固定長の逆ベクトル、つまり頭部ベクトルH(v,u)を算出する。
【0083】
次に、ステップS24においては、上記数式(4),(5)を用いて、距離画像の各画素(v,u)の位置をカメラ座標系で示す観測画素座標P(v,u)と頭部ベクトルH(v,u)と合成して、内部座標I(v,u)を算出し、リターンに進む。
【0084】
以下に、上述したステップS12でのスコア画像生成の処理について説明する。
先ず、例えば図19に示すステップS31においては、単眼距離画像センサ11の撮像領域を含む3次元空間を構成する複数の単位空間(3次元の座標空間)として、所定長(例えば、50mmなど)を一辺の長さとする複数の立方体(ボクセル空間)Vを設定する。
【0085】
次に、ステップS32においては、距離画像の各画素(v,u)毎に対応する内部座標I(v,u)が含まれるボクセル空間Vに対して、各画素(v,u)の画素面積をスコア値として加算する。
【0086】
次に、ステップS33においては、距離画像の各画素(v,u)毎に対応する内部座標I(v,u)が含まれるボクセル空間Vのスコア値を、各画素(v,u)毎の画素値に対応させて示すスコア画像Sを生成し、リターンに進む。
【0087】
以下に、上述したステップS13での頭部領域判定の処理について説明する。
先ず、例えば図20に示すステップS41においては、距離画像の各画素(v,u)毎に対応する内部座標I(v,u)の各軸成分(X内部座標、Y内部座標、Z内部座標)を、各画素(v,u)毎の画素値に対応させて示す3つのX内部座標画像IXおよびY内部座標画像IYおよびZ内部座標画像IZ毎に、例えばソーベルフィルターなどの偏微分フィルターによる畳み込み演算により、各画素毎に横方向の偏微分と縦方向の偏微分とを行なうことによって、横偏微分画像および縦偏微分画像を算出する。
【0088】
次に、ステップS42においては、3つの各内部座標画像IX,IY,IZ毎に横偏微分画像と縦偏微分画像とを合成することによって、3つの内部エッジ画像DX,DY,DZを生成する。
そして、3つの内部エッジ画像DX,DY,DZを合成し、画素面積|N(v,u)|で除算して正規化を行なうことによって、3次元空間での複数の内部座標I(v,u)の分布に対してエッジを抽出した内部エッジ画像Dを生成する。
そして、内部エッジ画像Dにおいて、画素値が所定閾値EdgeThresh未満の領域を「1」とし、画素値が所定閾値EdgeThresh以上の領域を「0」とする2値化処理を行なうことによって、2値化画像Bを生成する。
【0089】
次に、ステップS43においては、2値化画像Bにおいて、例えば8近傍ラベリングなどのラベリング処理を行なうことによって、複数の異なる画像領域からなる領域分割画像Eを生成する。
次に、ステップS44においては、領域分割画像Eを構成する複数の画像領域毎に内部座標I(v,u)の平均値を算出する。
次に、ステップS45においては、内部座標I(v,u)の平均値の差が所定差よりも大きい画像領域同士は、互いに独立した画像領域であるとし、一方、内部座標I(v,u)の平均値の差が所定差以下の画像領域同士は単一の画像領域に結合して、領域結合画像Fを生成する。
【0090】
次に、ステップS46においては、領域結合画像Fを構成する複数の画像領域毎にスコア値の平均値を算出する。
次に、ステップS47においては、領域結合画像Fを構成する複数の画像領域のうちから、スコア値の平均値が所定の閾平均値以下の画像領域を除去する。
【0091】
次に、ステップS48においては、領域結合画像Fを構成する複数の画像領域毎に、カメラ座標系での各軸の最大値および最小値を算出し、上記数式(8)を用いて、各軸の最大値および最小値から画像領域の体積を算出する。
次に、ステップS49においては、領域結合画像Fを構成する複数の画像領域のうちから、体積が所定範囲を外れる上限体積値以上または下限体積値以下である画像領域を除去する。
【0092】
次に、ステップS50においては、距離画像の各画素(v,u)毎の法線ベクトルN(v,u)が車両左右方向(B方向)に傾く角度が所定閾角度以下である領域を正面領域SAとして距離画像から抽出する。
【0093】
次に、ステップS51においては、領域結合画像Fを構成する複数の画像領域のうち、正面領域SAが抽出された画像領域毎に対して、正面領域SAのシート座標系でのB軸の最大値および最小値から車両左右方向の幅寸法(B方向幅)を算出する。
次に、ステップS52においては、領域結合画像Fを構成する複数の画像領域のうちから、B方向幅が所定閾値以上の正面領域SAを有する画像領域を除去する。そして、スコア画像Sを参照しつつ、この時点での領域結合画像Fにおいて、複数の画像領域のうち、スコア値の平均値が最も高い画像領域を、乗員の頭部が存在する頭部領域であると判定する。
【0094】
以下に、上述したステップS05での膝部判定の処理について説明する。
先ず、例えば図21に示すステップS61においては、車両上下方向の所定位置の高さ(例えば、車室内のフロアからの高さなど)Hthよりも下方側の領域において、スコア値が所定値以上の画素数を算出する。
次に、ステップS62においては、画素数が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS63に進み、このステップS63においては、乗員領域にはシート16に着座した大人が存在すると判定して、リターンに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS64に進み、このステップS64においては、乗員領域にはシート16上で立ち上がっている子供が存在すると判定して、リターンに進む。
【0095】
上述したように、本実施の形態による乗員検知装置10によれば、身体全体の大きさに比べて頭部のみの大きさは大人と子供とで差が小さく、シート16に着座した大人の頭部の位置とシート16上で立ち上がった子供の頭部の位置とはほぼ一致する場合がある。
このとき、立ち上がった子供では膝部が検出され難いことに比べて、着座した大人では膝部が検出され易く、車両上下方向の所定位置よりも下方側に膝部が存在するか否かを判定することによって、乗員が大人であるか、あるいは子供であるかを、容易かつ精度良く判定することができる。
【0096】
さらに、距離画像の各画素(v,u)毎に設定される固定長の逆ベクトルによる内部座標を用いた投票方式によって単位空間毎のスコア値を算出し、スコア値が球形状の指標となることに応じて乗員の膝部を抽出することから、演算負荷の増大を防止しつつ検知精度を向上させることができる。
【0097】
さらに、シート16に着座した大人の頭部の位置とシート16上で立ち上がった子供の頭部の位置とがほぼ一致し、さらに、シート16に着座した大人の体積とシート16上で立ち上がった子供の体積とが同程度であると判定された場合であっても、車両上下方向の所定位置よりも下方側に膝部が存在するか否かを判定することによって、乗員が大人であるか、あるいは子供であるかを、容易かつ精度良く判定することができる。
【0098】
なお、上述した実施の形態において、膝部判定部57は画素数に基づいて大人と子供の判定を行ったが、これに限定されず、画素面積等の他の指標に基づいて判定を行なってもよい。
【符号の説明】
【0099】
10 乗員検知装置
11 単眼距離画像センサ
12 制御装置
22 受光部(撮像手段)
23 処理部(距離画像生成手段)
52 内部座標設定部
53 スコア画像生成部
54 頭部領域判定部(頭部領域抽出手段)
55 シート領域検知部
56 体積判定部(体積判定手段)
57 膝部判定部(膝部判定手段)
58 乗員判定部(乗員判定手段)
59 駆動制御部
ステップS11 内部座標設定手段
ステップS12 スコア画像生成手段
ステップS61 膝部抽出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の撮像領域を撮像して撮像結果を出力する撮像手段と、
前記撮像手段から出力された撮像結果に基づき、3次元空間での前記撮像領域の距離の情報を有する距離画像を生成する距離画像生成手段と、
前記距離画像に基づき、乗員領域の体積を推定し、該体積が所定体積閾値以上であるか否かを判定する体積判定手段と、
前記距離画像に基づき、車両上下方向の所定位置よりも下方側に前記車室内の乗員の膝部が存在するか否かを判定する膝部判定手段と、
前記体積判定手段により前記乗員領域の体積が前記所定体積閾値以上であると判定された場合であって、前記膝部判定手段により前記所定位置よりも下方側に前記膝部が存在すると判定された場合には前記乗員は大人であると判定し、前記膝部判定手段により前記車両上下方向の所定位置よりも下方側に前記膝部が存在しないと判定された場合には前記乗員は子供であると判定する乗員判定手段と
を備えることを特徴とする乗員検知装置。
【請求項2】
前記膝部判定手段は、
前記距離画像を構成する複数の画素毎に前記3次元空間での法線ベクトルの逆方向に固定長の逆ベクトルを算出し、該逆ベクトルにより指定される前記3次元空間での位置座標を内部座標とする内部座標設定手段と、
前記3次元空間を構成する複数の単位空間毎に該単位空間内に含まれる前記内部座標の総数に係るスコア値を算出し、前記複数の画素毎に対応する前記内部座標が含まれる前記単位空間の前記スコア値を前記複数の画素毎に対応させて示すスコア画像を生成するスコア画像生成手段と、
前記スコア値に基づいて前記膝部を抽出する膝部抽出手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の乗員検知装置。
【請求項3】
前記距離画像に基づき、前記乗員の頭部領域を抽出する頭部領域抽出手段を備え、
前記体積判定手段が、前記頭部領域を含む前記乗員領域の体積を推定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗員検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−127912(P2012−127912A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281752(P2010−281752)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】