説明

乗用型苗移植機

【課題】 乗用型苗移植機において、旋回時に、操縦者は機体の旋回操向操作以外に、作業装置の駆動の入り切り操作や作業装置の上昇・下降操作をしなければならず、旋回時の操向操作に専念できず、未だ、旋回操作性の点において課題があった。
【解決手段】 ステアリングハンドルにて操向操作される左右前輪と、左右後輪を設けた走行車両に、苗移植作業装置を昇降自在に装着した乗用型苗移植機において、走行距離算出手段にて苗移植作業装置を上昇させる指令を出力してからの走行距離を算出して、該走行距離に応じて制御することにより、先ず苗移植作業装置が下降する指令を出力し、その後に線引きマーカを下降させる自動旋回モードを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行車両に昇降用リンク装置を介して苗移植作業装置を装着した乗用型苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、操向用前輪の直進状態から所定角以上の操向作動によって左右後輪の旋回内側のもののサイドクラッチを切って制動する旋回連繋機構を設けた乗用型田植機がある。この乗用型田植機では、前輪に対する操向操作を行うだけで、旋回内側の後輪を制動させて旋回を操作性良く行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−94051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら、旋回時に、操縦者は機体の旋回操向操作以外に、作業装置の駆動の入り切り操作や作業装置の上昇・下降操作をしなければならず、旋回時の操向操作に専念できず、未だ、旋回操作性の点において課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、ステアリングハンドル(16)にて操向操作される左右前輪(6)と左右後輪(7)を設け走行車両(1)に苗移植作業装置(3)を昇降自在に装着した乗用型苗移植機において、走行距離算出手段にて苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力してからの走行距離を算出して、該走行距離に応じて制御することにより、先ず苗移植作業装置(3)が下降する指令を出力し、その後に線引きマーカ(195)を下降させ自動旋回モードを設けことを特徴とする乗用型苗移植機としたものである。
【0006】
従って、先ず苗移植作業装置(3)が下降する指令を出力し、その後に線引きマーカ(195)を下降させることができる
請求項2記載の発明は、苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力してから線引きマーカ(195)を下降させるまでの間の自動旋回モード中に、報知ブザーや報知灯などの報知手段(B)を作動させるが、機体が停止しているときは前記報知手段(B)を作動させない制御装置(170)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗用型苗移植機としたものである。
【0007】
従って、報知手段(B)の作動により、旋回時に苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力してから線引きマーカ(195)を下降させるまでの間の自動旋回モードであることを操縦が認識できるので作業性及び安全性が向上すると共に、機体上の苗が少なくなった時には、畦際での旋回時に畦から機体に苗供給をすべく、機体前部又は側部を畦に着けて機体を停止するが、機体が停止しているときは前記報知手段(B)を作動させないので、作業性が良い。
【0008】
請求項3記載の発明は、苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力してから線引きマーカ(195)を下降させるまでの間の自動旋回モード中に左右後輪(7)を下動させる構成としことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗用型苗移植機としたものである。
【0009】
従って、増速時に駆動反力で機体が前上がり気味になるのが左右後輪(7)が下動することにより修正されて、機体が水平状態となり、苗の植付け姿勢が安定して適性な苗の植付けが行える
【0010】
請求項4記載の発明は、左右前輪(6)を所定角度以上に操向操作すると苗移植作業装置(3)の駆動を切ると共に苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力して苗移植作業装置(3)を上昇させ、且つ、走行距離算出手段にて走行距離を算出して、該走行距離に応じて制御することにより、先ず苗移植作業装置(3)が下降する指令を出力し、その後に線引きマーカ(195)を下降させると共に苗移植作業装置(3)の駆動を開始する自動旋回モードを設け、自動旋回モードにて、ステアリングハンドル(16)を所定値よりも早く回転操作した場合には、苗移植作業装置(3)の駆動を切ると共に苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力するときの左右前輪(6)の前記所定角度を小さく設定し、ステアリングハンドル(16)を所定値よりも遅く回転操作した場合には、苗移植作業装置(3)の駆動を切ると共に苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力するときの左右前輪(6)の前記所定角度を大きく設定する構成としたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の乗用型苗移植機としたものである。
【0011】
従って、機体の前進速度が速い場合には作業者が旋回時にステアリングハンドル(16)を早く回すので、早いタイミングで苗移植作業装置(3)は上昇し、また、機体の前進速度が遅い場合には作業者が旋回時にステアリングハンドル(16)をゆっくりと回すので、遅いタイミングで苗移植作業装置(3)は上昇する。従って、機体の前進速度に応じたタイミングで苗移植作業装置(3)は上昇するので、適切な自動旋回が行える
【0012】
請求項5記載の発明は、左右後輪(7)は、エンジン(12)からの動力を各別に入り切りする左右サイドクラッチ(I)を介して駆動される構成とし、左右前輪(6)を所定角度以上に操向操作すると旋回内側となる後輪(7)のサイドクラッチ(I)を切る構成とし、苗移植作業装置(3)にはセンターフロート(165)を設け左右前輪(6)を所定角度以上に操向操作すると苗移植作業装置(3)の駆動を切ると共に苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力して苗移植作業装置(3)を上昇させ、且つ、走行距離算出手段にて走行距離を算出して、該走行距離に応じて制御することにより、先ず苗移植作業装置(3)が下降する指令を出力し、その後に線引きマーカ(195)を下降させると共に苗移植作業装置(3)の駆動を開始する自動旋回モードを設け、自動旋回モードにて苗移植作業装置(3)が下降してセンターフロート(165)が接地した後、センターフロート(165)が基準位置から上動すればセンターフロート(165)が基準位置になるまで苗移植作業装置(3)が上昇するが、センターフロート(165)が基準位置から下動しても苗移植作業装置(3)は昇降しない下降制御のみを規制する制御を行い、苗移植作業装置(3)の駆動を開始すると下降制御のみを規制する制御を解除して通常の昇降制御を行う構成とし、左右前輪(6)を所定角度以上に操向操作してから苗移植作業装置(3)の駆動を開始するまでの間の自動旋回モード中に、報知ブザーや報知灯などの報知手段(B)を所定間隔で作動させる制御装置(170)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の乗用型苗移植機としたものである。
【0013】
従って、左右前輪(6)および左右後輪(7)が旋回時に圃場を乱して圃場表面に凹凸が多数でき、その凹凸により下降した苗移植作業装置(3)のセンターフロート(165)が上下動するが、苗移植作業装置(3)は上昇方向のみ制御されることとなり、圃場面の凹凸に対して苗移植作業装置(3)が頻繁に上昇・下降を繰り返す現象がなくなり、安定した旋回が行える。そして、苗移植作業装置(3)の駆動を開始すると通常の昇降制御になるので、圃場内での苗移植作業装置(3)の上下方向の位置制御が旋回中及び植付作業中共に適正に行えて、良好な苗移植作業が行える。また、報知手段(B)の所定間隔での作動により、旋回時に左右前輪(6)を所定角度以上に操向操作してから苗移植作業装置(3)の駆動を開始するまでの間の自動旋回モードであることを操縦が認識できるので作業性及び安全性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、旋回時の操向操作に専念できて、容易に且つ適性に機体の旋回が安全に行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を示す全体側面図である。
【図2】図1に示す乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】図1に示す乗用型田植機の走行車両の伝動構成を示す概略平面図である。
【図4】図1に示す乗用型田植機のミッションケースの展開断面図である。
【図5】図1に示す乗用型田植機の主クラッチ及び後輪ブレーキの操作構成を示す平面図である。
【図6】図1に示す乗用型田植機の制御ブロック図である。
【図7】図1に示す乗用型田植機の旋回制御の考え方を示す図である。
【図8】図7の旋回制御のフローチャート図である。
【図9】田植装置の正面図である。
【図10】耕盤深さと上限車速との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を図面に基づき詳細に説明する。図1の側面図に示すように、乗用型田植機は走行車両1に昇降用リンク装置2で苗移植作業装置の一種である田植装置3を装着すると共に施肥装置4を設け、全体で乗用施肥田植機として機能するように構成されている。走行車両1は、駆動輸である左右各一対の前輪6、6および後輪7、7を有する四輪駆動車両である。
【0017】
メインフレーム10の上にミッションケース11とエンジン12が前後に配設されており、該ミッションケース11の後部に油圧ポンプ13が設けられ、またミッションケース11の前部からステアリングポスト14が上方に突設されている。
【0018】
そして、ステアリングポスト14の上端部にステアリングハンドル16と操作パネル17が設けられている。機体の上部には操縦用のフロアとなるステップ19が取り付けられ、エンジン12の上方部に操縦席20が設置されている。前輪6、6は、ミッションケース11の左右側方に向きを変更可能に設けた前輪支持ケース22、22に軸支されている。また、後輪7、7は、後輪横フレーム23の左右両端部に一体に取り付けた後輪支持ケース24、24に軸支されている。後輪横フレーム23はメインフレーム10の後端部に前後方向に突設したローリング軸25で回動自在に支持されている。
【0019】
エンジン12の回転動力は、ベルト31を介して油圧ポンプ13の駆動軸であるカウンタ軸32に伝えられ、さらに該カウンタ軸32からベルト33を介して油圧式変速装置HSTの入力軸35に伝えられ、油圧式変速装置HSTの出力軸36からベルトを介してミッション入力軸34に伝えられる。
【0020】
なお、ミッション入力軸34上には、メインクラッチ43が設けられており、油圧式変速装置HSTの駆動力はメインクラッチ43を介してミッション入力軸34に伝動される。メインクラッチ43は周知の多板クラッチであり、図4に示すようにメインクラッチ軸側の摩擦板44とミッション入力軸側の摩擦板45、両摩擦板を押し付けるスプリング46、切替操作用の固定部材47と摺動部材48などから構成されている。
【0021】
ミッションケース11のケーシング40の前部には、ミッション入力軸34、カウンタ軸50、走行一次軸51、走行二次軸52、植付一次軸53、植付二次軸54がそれぞれ平行に支承されている。ミッション入力軸34のギヤG1とカウンタ軸50のギヤG2、およびギヤG2と走行一次軸51のギヤG3がそれぞれ互いに噛合しており、ミッション入力軸34の回転が走行一次軸51に順方向に伝えられる。
【0022】
主変速装置Kとして、走行一次軸51に前記ギヤG3とギヤG4がそれぞれ定位置に献着され、走行二次軸52に互いに一体に成形されたギヤG5、G6が軸方向に摺動自在に嵌合している。シフタ56でギヤG5、G6を移動させ、ギヤG4、G5が噛合すると低速の植付作業速、ギヤG3とギヤG4が噛合すると高速の路上走行速になる。ギヤG5、G6がいずれのギヤとも噛合しない位置がニュートラルになる。この主変速装置Kの操作する主変速レバー90は操作パネル17に設けられている。
【0023】
また、株間変速装置Cとして、植付一次軸53に互いに一体に成形されたギヤG9、GLOが軸方向に摺動自在に嵌合しているとともに、植付二次軸54にギヤG11、G12がそれぞれ取り付けられている。シフタ57でギヤG9、GL0を適宜に移動させることにより、ギヤG9とギヤG11、ギヤG10とギヤ11、およびギヤG11とギヤG12の3通りの組み合わせが得られ、3段階の株間切替を行える。植付二次軸54からベベルギヤG13、G14を介して植付部伝動軸58に伝動される。
【0024】
ケーシング40の後部には、リヤアクスル60、60とフロントアクスル61、61が支承され、前記走行二次軸52からリヤデフ装置Dを介してリヤアクスル60、60に伝動されるとともに、リヤデフ装置Dからフロントデフ装置Eを介して左右フロントアクスル61、61に伝動される。そして、左右フロントアクスル61、61により各々左右前輪6、6が駆動回転される構成となっている。
【0025】
リヤデフ装置Dは、走行二次軸52のギヤG15に噛合するギヤG16が外周部に形成された容器63を備え、該容器内の縦軸64に取り付けた一次ベベルギヤG17と左右のリヤアクスル60、60に各別に取り付けた二次ベベルギヤG18、G18とが互いに噛合する状態で収納されており、各アクスルに伝動される駆動力が適宜変動するようになっている。
【0026】
フロントデフ装置Eもリヤデフ装置Dと同様の構成で、容器65、縦軸66、リヤデフ装置側のギヤG19、フロントデフ装置側のギヤG20、縦軸66に取り付けたベベルギヤG21、フロントアクスル61に取り付けたベベルギヤG22を備えている。上記リヤデフ装置Dおよびフロントデフ装置Eにはデフ機能を停止し、左右両アクスルに駆動力が均等に伝動されるようにするデフロック装置F、Hが設けられている。このデフロック装置F(H)は、容器63(65)に形成された爪69(70)とアクスルの角棒部に嵌合するデフロック部材71(72)の爪73(74)とアクスル60(61)を互いに固定するようになっている。この後輪のデフロック装置Fを操作するデフロックレバー91は操作パネル17に設けられている。
【0027】
なお、前輪のデフロック装置Hは、ステップ19に設けたデフロックペダル91'を踏み込むとデフ機能が停止される構成となっている。このデフロックレバ一91及びデフロックペダル91'は、共に機体の前部に配置されており、例えば圃場の畦を乗り越えて機体を圃場から出す時等に、操縦者は機体から降りて機体の前方に立って(自分の身体をウエイト代わりにするために機体の前端部に乗って)機体を前進若しくは後進させてこの畦越えを安全に行う。
【0028】
この時、左右前輪6、6の何れか又は左右後輪7、7の何れかが空回りした場合に即座に操縦者は機体前部にあるデフロックレバー91及びデフロックペダル91'を容易な姿勢で操作できてデフロック状態にして安全に畦越えを行うことができる。
【0029】
リヤアクスル60、60はベベルギヤG23、G24、…によってサイドクラッチ軸76、76に伝動連結され、さらに該サイドクラッチ軸76、76からリヤ出力軸77、77にサイドクラッチI、Iを介して伝動される。サイドクラッチIは多板クラッチであり、サイドクラッチ軸側の摩擦板80、リヤ出力軸側の摩擦板81を備えている。リヤ出力軸77に摺動自在に嵌合する作動筒82は、板ばね83によって両摩擦板80、81を押し付ける方向に付勢されており、常時はサイドクラッチIが入った状態となっている。シフタ85Iで作動筒82を付勢方向と逆向きに移動させると、サイドクラッチIが切れる。
【0030】
更に、リヤ出力軸77、77には後輪ブレーキ装置J、Jが設けられている。後輪ブレーキ装置Jは、リヤ出力軸77に取り付けたディスク87、…にプレッシャプレート88、…を押し付けて制動するものであり、このプレッシャプレート88、…の作動はシフタ85Jで行う。すなわち、常時はサイドクラッチIが入で、後輪ブレーキ装置Jが掛かっていない状態であり、シフタ85Iを操作して作動筒82を付勢方向と逆向きに移動させるとサイドクラッチIが切れ、シフタ85Jを操作すると後輪ブレーキ装置Jが掛かるのである。
【0031】
そして、後輪ブレーキ装置J、Jの操作(左右シフタ85J・85Jの操作)は、ステップ19上に設けたペダル140で行う。即ち、左右シフタ85J・85Jには、各々左右ブレーキ操作アーム86J・86Jの基部が固着され、該左右ブレーキ操作アーム86J・86Jは連携機構141にてペダル140に連携されている。また、ペダル140はメインクラッチ43の切替操作用の固定部材47に連携されており、ペダル140を踏込み操作すると、左右シフタ85J・85Jが回動操作されて左右後輪ブレーキ装置J、Jが作動すると共に、メインクラッチ43が切り操作されて、機体が停止する構成となっている。
【0032】
一方、サイドクラッチI、Iの左右シフタ85I・85Iには、各々左右クラッチ操作アーム86I・86Iの基部が固着され、該左右クラッチ操作アーム86I・86Iの上端部には各々左右連結ロッド142・142の後端部が連携されている。そして、左右連結ロッド142・142の先端部は、機体に基部が固定された支軸143に回動自在に支持された揺動アーム144の左右両端部に連結されている。
【0033】
この揺動アーム144の支軸143が貫通した部位には、作動体145が固定されている。そして、平面視で作動体145の前部はギヤ145aに構成され、後部は中央が凹んだカム145bに構成されている。また、作動体145の前部ギヤ145aには、機体に設けた電動モータ146の駆動ギヤ146aを噛合させている。従って、電動モータ146にて支軸143回りに揺動アーム144揺動させて、左右連結ロッド142・142によりサイドクラッチI、Iの左右シフタ85I・85Iを回動操作して、サイドクラッチI、Iの入り切り操作ができる構成となっている。
【0034】
また、作動体145の後部カム145bには、機体に支軸147に回動自在に支持された揺動アーム148の先端に設けた従動ローラ149が引張バネ150にて付勢されて接当している。そして、揺動アーム148の他端に連携ワイヤ151の一端が連結され、連携ワイヤ151の他端はリヤデフ装置Dのデフロック装置Fのデフロック部材71を操作する操作アームに連結されている。従って、電動モータ146にて支軸143回りに揺動アーム144揺動させると、従動ローラ149はカム145bの凸部に乗りあがって、連携ワイヤ151を引き、デフロック部材71を操作してリヤデフ装置Dのデフロック装置Fを作動させて、リヤデフ装置Dはデフロックされる。
【0035】
尚、電動モータ181は、後述するようにステアリングハンドル16の操作に連携して作動する構成となっている。
リヤ出力軸77、77の後端部はケーシング40外に突出し、この突出端部に前記後輪支持ケース24、24に伝動する左右後輪伝動軸89、89が接続されている。そして、この左右後輪伝動軸89、89により各々左右後輪7、7が駆動回転される構成となっている。
【0036】
主変速レバー90の操作位置は、後から前方に操作する順に植付作業速、ニュートラル、路上走行速となっている。また、デフロックレバー91を前方に操作するとデフロック、後方に操作するとデフオンとなる。
【0037】
110はHST操作レバーであって、その回動支点部にはHST用ポテンショメータPM−Hが設けられており、HST操作レバー110の操作位置を検出できる構成となっている。一方、油圧式変速装置HSTを変速操作するトラニオン軸のアームには、変速電動モータMO−Hが連結されており、HST用ポテンショメータPM−Hの入力で制御装置170の変速電動モータ作動手段により、該電動モータMO−Hが作動して油圧式変速装置HSTが変速操作されるようになっている。即ち、HST操作レバー110をその操作位置の中間にすると、その位置をHST用ポテンショメータPM−Hが検出して制御装置170に入力し変速電動モータ作動手段により、該電動モータMO−Hを作動させて油圧式変速装置HSTをニュートラル(中立)にする。そして、HST操作レバー110をその操作位置の中間位置から前方に操作するほど、その位置をHST用ポテンショメータPM−Hが検出して制御装置170に入力し変速電動モータ作動手段により、該電動モータMO−Hを作動させて油圧式変速装置HSTを前進側に増速する。逆に、HST操作レバー110をその操作位置の中間位置から後方に操作するほど、その位置をHST用ポテンショメータPM−Hが検出して制御装置170に入力し変速電動モータ作動手段により、該電動モータMO−Hを作動させて油圧式変速装置HSTを後進側に増速する。
【0038】
このHST操作レバー110の操作によって変速電動モータMO−Hが油圧式変速装置HSTを変速操作するトラニオン軸のアームを作動させて油圧式変速装置HSTを変速する状態を、主変速レバー90の操作位置(植付作業速、路上走行速)に応じて下記のように変更した制御にすると、且つ操作性が良くて、より安全な田植作業が行なえる。
【0039】
即ち、主変速レバー90を路上走行速位置に操作している場合には、HST操作レバー110を中間位置から前方及び後方に向けて増速操作しても、逆に、前方又は後方位置から中間位置に向けて減速操作しても、変速電動モータMO−Hには連続した一定電流が流れて、変速電動モータMO−Hは早く連続作動して、油圧式変速装置HSTは速やかに変速されて、路上での走行が快適に行なえる。
【0040】
また、主変速レバー90を植付作業速位置に操作している場合には、HST操作レバー110を中間位置から前方及び後方に向けて増速操作すると、変速電動モータMO−Hにはパルス電流が流れて、変速電動モータMO−Hはパルス制御されて作動して、油圧式変速装置HSTは穏やかに変速されて、植付け作業時に急発進が防止できて安全であると共に、徐々に増速されるので苗の植付け性能も良くなる。逆に、前方又は後方位置から中間位置に向けて減速操作すると、変速電動モータMO−Hには連続した一定電流が流れて、変速電動モータMO−Hは早く連続作動して、油圧式変速装置HSTは速やかに変速されて、早く減速するので安全であり、機体旋回時等には早い減速で操作性良く手動旋回操作が行える。
【0041】
尚、主変速レバー90を路上走行速位置と植付作業速位置との何れに操作していても、HST操作レバー110が中間位置(ニュートラル)の近くでは、増速側に操作しても減速側に操作しても、変速電動モータMO−Hにはパルス電流が流れて、変速電動モータMO−Hはパルス制御されて作動するようにしてあり、油圧式変速装置HSTは穏やかに変速されて、油圧式変速装置HSTをニュートラルに操作し易い。
【0042】
従って、圃場内で田植作業を行なう場合には、デフロックレバー91をデフロックにし、チェンジレバーを作業速にシフトし、田植装置3の苗載台に苗を載置し施肥装置4の肥料タンクに粒状肥料入れて、各部を駆動させて前進すると、左右後輪7、7のデフロック装置Fはデフロックされてデフ機能が停止した状態であるので、機体の直進性が良くて良好な田植作業と施肥作業が同時に行なえる。また、路上走行の場合には、リヤデフ装置D及びフロントデフ装置E共にデフ機能が働く状態に操作すれば、安全に走行できる。
【0043】
195・195は田植装置3の左右側方に設けられた左右線引きマーカであって、制御装置170のマーカ上下動制御手段にて駆動制御される左右電動モータMO−M・MO−Mにて各々上下動自在に構成されており、電動モータMO−Mにて下動された時には、次工程の機体の左右中心となる泥面に線を引く状態となり、電動モータMO−Mにて上動された時には、田植装置3の苗載台163の前側に収納された状態となる。
【0044】
尚、200は機体前部に設けた予備苗載台、201は直進走行の指標とするセンターマスコットである。
次に、田植装置3は、走行車両1に昇降用リンク装置2で昇降自在に装着されているのであるが、その昇降させる構成と田植装置3の構成について説明する。
【0045】
先ず、走行車両1に基部が回動自在に設けた一般的な油圧シリンダー160のピストン上端部を昇降用リンク装置2に連結し、走行車両1に設けた油圧ポンプ13にて電磁油圧バルブ161を介して油圧シリンダー160に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー160のピストンを伸出・縮退させて昇降用リンク装置2に連結した田植装置3が上下動されるように構成されている。
【0046】
田植装置3は、昇降用リンク装置2の後部にローリング軸を介してローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース162と、該植付伝動ケース162に設けられた支持部材に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台163と、植付伝動ケース162の後端部に装着され前記苗載台163の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植付ける苗植付け具164…と、植付伝動ケース162の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンターフロート165・サイドフロート166…等にて構成されている。センターフロート165・サイドフロート166…は、圃場を整地すると共に苗植付け具164…にて苗が植付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。
【0047】
PTO伝動軸167は両端にユニバーサルジョイントを有し、施肥駆動ケース168の動力を田植装置3の植付伝動ケース162に伝達すべく設けている。センターフロートセンサ169はセンターフロート165前部の上下位置を検出するポテンショメータにより構成され、センターフロート165の前部上面とリンクにより連携されている。そして、センターフロートセンサ169のセンターフロート165前部の上下位置検出に基づいて、制御装置170の昇降制御手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて田植装置3の上下位置を、センターフロート165の揺動姿勢が予め設定された田植装置3に対する基準姿勢の許容範囲内(不感帯幅内)になるように昇降制御するように構成されている。
【0048】
即ち、センターフロート165の前部が外力にて適正範囲以上(基準姿勢の許容範囲外)に持ち上げられた時には油圧ポンプ13にてミッションケース11内から汲み出された圧油を油圧シリンダー160に送り込んでピストンを突出させ昇降用リンク装置2を上動させて田植装置3を所定位置まで上昇せしめ、また、センターフロート165の前部が適正範囲以上(基準姿勢の許容範囲外)に下がった時には油圧シリンダー160内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて田植装置3を所定位置まで下降せしめ、そして、センターフロート165の前部が適正範囲にあるとき(田植装置3が適正な所定位置にある時)には油圧シリンダー160内の圧油の出入りを止めて田植装置3を一定位置に保持せしめるべく設けられている。このように、センターフロート165を田植装置3の自動高さ制御のための接地センサとして用いている。
【0049】
次に、田植作業時に、走行車両1の後部に昇降用リンク装置2を介して昇降自在に連結した田植装置3を圃場の泥土面(水平面)に沿わせるローリング制御について説明する。
走行車両1には、左右傾斜角の加速度を検出する傾斜角速度センサS1が設けられている。
【0050】
昇降用リンク装置2の後部縦枠F1の下端部に、田植装置3が前後方向に向いたローリング軸R回りに回動(ローリング)自在に支持されている。縦枠F1の上部には、両ロッド型のローリング油圧シリンダCYが、シリンダ部を当該縦枠F1に固定して左右方向に設けられている。そして、そのシリンダの左右両ロッドCYa,CYaと田植装置3の苗載台フレームF2の左右支柱部F2a,F2aとがリンクLI,LIを介して連結されている。ローリング油圧シリンダCYは、モータで駆動の油圧ポンプによって供給される作動油で作動する。ローリング油圧シリンダCYが作動してロッドCYa,CYaが左右にスライドすると、田植装置3がローリング軸R回りにローリングする。田植装置3の左右傾斜角度は、左右傾斜センサS2によって検出される。また、ローリング油圧シリンダCYの作動量は、ストロークセンサS3によって検出される。
【0051】
田植作業時には、表土面の凹凸に応じて田植装置3の対地高さを制御する前記昇降制御と、表土面の左右傾斜に応じて田植装置3のローリング軸R回りの姿勢を制御するローリング制御とを行い、苗の植付深さを一定に維持する。
【0052】
ローリング制御は、傾斜角速度センサS1の検出値と左右傾斜センサS2の検出値が制御装置170に入力され、予め定められているルールに基づいてローリング制御手段にてモータへの出力量を決定し、左右傾斜センサS2が所定の目標値(通常は水平)の不感帯内に収まるように田植装置3をローリングさせる。この場合、左右傾斜が急激に変化する場合は、傾斜角速度センサS1の検出結果に基づいて制御する周知の手法で行う。なお、傾斜角速度センサS1と左右傾斜センサS2を用いる制御の周知の手法については、例えば特開平6−133612号公報に記載されている。
【0053】
ステアリングハンドル16の下方にフィンガーレバー171が配置され、該フィンガーレバー171を上下方向に操作するとポテンショメータにより構成されるフィンガーレバースイッチ172が作動されて、制御装置170のPTOクラッチ作動手段によりPTOクラッチ作動ソレノイド173を操作して、施肥駆動ケース168内に設けられた動力を断接するPTOクラッチを操作して施肥装置4及び田植装置3への動力を入り切り操作できるように構成されていると共に、制御装置170の昇降制御手段により、電磁油圧バルブ161を操作して手動にて田植装置3を上下動できるように構成されている。
【0054】
即ち、フィンガーレバー171を「上」に操作すると、PTOクラッチが切れ施肥装置4及び田植装置3の作動が停止し且つ電磁油圧バルブ161が強制的に田植装置3を上昇する側に切換えられる。
【0055】
そして、フィンガーレバー171を「上」に操作した後に、フィンガーレバー171を「下」に1回操作すると、電磁油圧バルブ161がセンターフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態となり、田植装置3が上昇された状態であればセンターフロート165が接地して適正姿勢になるまで田植装置3は下降する。更にもう一回、フィンガーレバー171を「下」に操作すると、電磁油圧バルブ161がセンターフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、PTOクラッチが入り施肥装置4及び田植装置3が駆動される。以降、フィンガーレバー171を「下」に操作する度に、電磁油圧バルブ161がセンターフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、PTOクラッチが入りと切りに交互に切り換えられる。
【0056】
次に、ステアリングハンドル16にて前輪6、6が操向操作される部分の構成について図5に基づいて説明する。
ステアリングハンドル16は、ステアリングポスト14内に設けられたステアリング軸上部に固定されており、ステアリング軸の回転はミッションケース11内に設けられたステアリング変速歯車を介して減速され下出力軸174に伝動される。そして、出力軸174の下端は、ミッションケース11底面から突出してピットマンアーム175が固定されている。該ピットマンアーム175の前部左右側と左右前輪支持ケース22、22とは左右ロッド176、176にて連結されている。
【0057】
従って、ステアリングハンドル16を回動操作すると、ステアリング軸・ステアリング変速歯車・出力軸174・ピットマンアーム175・左右ロッド176、176・左右前輪支持ケース22、22へと伝達されて、左右前輪6、6が左右操向操作される。
【0058】
また、出力軸174の下端部には操向角度センサとしてのポテンショメータPMが設けられており、ステアリングハンドル16を所定量以上(機体を右旋回させる意思を持って作業者が右に回す量、例えば、ステアリングハンドル16が左右に最大360度〜400度回転する構成であれば、250度以上)右に回すと、ポテンショメータPMの検出回転角度が制御装置170に入力され、制御装置170の旋回制御手段にて電動モータ146を駆動させて、支軸143回りに揺動アーム144を矢印(イ)方向に揺動させる。すると、先ず、従動ローラ149がカム145bの凸部に乗りあがって、連携ワイヤ151を引き、デフロック部材71を操作してリヤデフ装置Dのデフロック装置Fを作動させて、リヤデフ装置Dがデフロックされる。引き続き、右連結ロッド142により右サイドクラッチIの右シフタ85Iを回動操作して、右サイドクラッチIが切り操作される。この時、左連結ロッド142には遊び部142aがあるので、左サイドクラッチIの左シフタ85Iが回動操作されることはない。
【0059】
従って、右旋回の初期は、左右後輪7・7はリヤデフ装置Dにより差動回転するので、スムーズに機体の旋回を開始でき、然も、ステアリングハンドル16の操作荷重も軽くて操作性が良い。そして、旋回が進むにつれて、右サイドクラッチIが切れて旋回中心側の右後輪7が遊転状態となるので、右後輪7が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、左右前輪6・6と左後輪7との駆動回転で右旋回がスムーズできれいにできる。
【0060】
逆に、ステアリングハンドル16を所定量以上(250度以上)左に回すと、ポテンショメータPMの検出回転角度が制御装置170に入力され、制御装置170の旋回制御手段にて電動モータ146を駆動させて、支軸143回りに揺動アーム144を矢印(ロ)方向に揺動させる。すると、先ず、従動ローラ149がカム145bの凸部に乗りあがって、連携ワイヤ151を引き、デフロック部材71を操作してリヤデフ装置Dのデフロック装置Fを作動させて、リヤデフ装置Dがデフロックされる。引き続き、左連結ロッド142により左サイドクラッチIの左シフタ85Iを回動操作して、左サイドクラッチIが切り操作される。この時、右連結ロッド142には遊び部142aがあるので、右サイドクラッチIの右シフタ85Iが回動操作されることはない。
【0061】
従って、左旋回の初期は、左右後輪7・7はリヤデフ装置Dにより差動回転するので、スムーズに機体の旋回を開始でき、然も、ステアリングハンドル16の操作荷重も軽くて操作性が良い。そして、旋回が進むにつれて、左サイドクラッチIが切れて旋回中心側の左後輪7が遊転状態となるので、左後輪7が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、左右前輪6・6と右後輪7との駆動回転で左旋回がスムーズできれいにできる。
【0062】
一方、機体旋回時にステアリングハンドル16を所定量(機体を右旋回させる意思を持って作業者が右に回す量、例えば、ステアリングハンドル16が左右に最大390度回転する構成であれば、200度)回すと、ポテンショメータPMの検出回転角度が制御装置170に入力され、変速電動モータ作動手段により電動モータMO−Hを作動させて油圧式変速装置HSTを車速が旋回に適した速度になるまで減速する。更に、ポテンショメータPMの検出回転角度が制御装置170に入力され、制御装置170のPTOクラッチ作動手段によりPTOクラッチ作動ソレノイド173を操作して、施肥駆動ケース168内に設けられた動力を断接するPTOクラッチを操作して施肥装置4及び田植装置3への動力を切り操作した後に、制御装置170の田植装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて田植装置3を最大位置まで上昇させる。
【0063】
この田植装置3を上昇させるタイミングを、ステアリングハンドル16を早く回した場合とゆっくり回した場合とで変更するように制御すると、機体の前進速度に応じた田植装置3の上昇タイミングにすることができる。
【0064】
即ち、機体の前進速度が速い場合には、作業者は旋回時にステアリングハンドル16を早く回し、機体の前進速度が遅い場合には、作業者は旋回時にステアリングハンドル16をゆっくりと回す。この車速に応じて作業者がステアリングハンドル16操作を早くしたりゆっくりしたりすることに着目して、ステアリングハンドル16の回転角度を検出するポテンショメータPMの検出回転角の変動速さ(例えば、0.1秒あたりの角度変化により、回転速さが認識できる)により、ステアリングハンドル16が所定値よりも遅く回転操作された場合には、上記のステアリングハンドル16が200度回転した時点で、変速電動モータ作動手段により電動モータMO−Hを作動させて油圧式変速装置HSTを車速が旋回に適した速度になるまで減速し、制御装置170のPTOクラッチ作動手段によりPTOクラッチ作動ソレノイド173を操作して施肥装置4及び田植装置3への動力を切り操作し、制御装置170の田植装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて田植装置3を最大位置まで上昇させる。また、ステアリングハンドル16が所定値よりも早く回転操作された場合には、上記のステアリングハンドル16が110度回転した時点で、変速電動モータ作動手段により電動モータMO−Hを作動させて油圧式変速装置HSTを車速が旋回に適した速度になるまで減速し、制御装置170のPTOクラッチ作動手段によりPTOクラッチ作動ソレノイド173を操作して施肥装置4及び田植装置3への動力を切り操作し、制御装置170の田植装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて田植装置3を最大位置まで上昇させる。
【0065】
すると、機体の前進速度が速い場合には作業者が旋回時にステアリングハンドル16を早く回すので、早いタイミングで田植装置3は上昇し、また、機体の前進速度が遅い場合には作業者が旋回時にステアリングハンドル16をゆっくりと回すので、若干遅いタイミングで田植装置3は上昇する。従って、機体の前進速度に応じたタイミングで田植装置3は上昇するので、適切な自動旋回が行える。
【0066】
尚、車速が旋回に適した速度になるまで減速するタイミングを、ステアリングハンドル16操作に連携するのではなくて、田植装置3の上昇に連携させる場合には、制御装置170の田植装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて、田植装置3のセンターフロート165前端が最下端まで下動したことをセンターフロートセンサ169が検出した時に、変速電動モータ作動手段により電動モータMO−Hを作動させて油圧式変速装置HSTを車速が旋回に適した速度になるまで減速するようにすると、田植装置3の上昇初期、即ち、旋回初期に減速されるので、旋回後の次工程での植付け条合わせ(前工程の最外側の植付け条から植付け条幅に合わせた距離に次工程の最内側の植付け条が位置するように機体の左右位置を位置調節するステアリングハンドル16操作)が容易に行なえて作業性及び作業効率が良い。
【0067】
また、走行車両1には昇降用リンク装置2が最大位置まで上昇した時に昇降用リンク装置2が接当して「入り」となる最大上昇位置検出スイッチを設けて、この最大上昇位置検出スイッチが昇降用リンク装置2の接当により「入り」になった時に、上記制御装置170の田植装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160の作動を停止させる構成となっている。ところが、例えば、この最大上昇位置検出スイッチの取付け位置が調整間違いで昇降用リンク装置2と接当しないようになっていたり、最大上昇位置検出スイッチが故障して昇降用リンク装置2が接当しても「入り」にならない場合等には、油圧シリンダー160が最大伸張しても電磁油圧バルブ161は圧油を油圧シリンダー160に送り続ける為に、油圧回路に設けたリリーフ弁が作動して圧油をオイルタンクに戻すようになる。この場合、圧油をオイルタンクに戻す為にリリーフ弁が作動し続けると、油温が上昇して油圧回路は故障してしまう。そこで、制御装置170の田植装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて田植装置3を最大位置まで上昇させる指令が出て、10秒後(田植装置3が作業位置から最大上昇位置まで上昇するのに十分な時間後)に、この上昇指令を中止するように制御すれば、仮に、最大上昇位置検出スイッチの取付け位置調整不良や故障していて、田植装置3が最大位置まで上昇した後にリリーフ弁が作動しても、そのリリーフ弁の作動時間は短時間であり、油圧回路が故障することが回避できて、良好な作業が適正に行える。
【0068】
そして、旋回途中から旋回終了において、制御装置170は旋回内側の後輪7の回転数の検出に基づいて、車体が90度旋回した時点(n1≧N1+n0)で田植装置3を下降させる。その時、田植装置3が下降してセンターフロート165が接地したことをセンターフロートセンサ169が検出(センターフロート165が接地して最下動位置から上動して基準位置に戻ったことをセンターフロートセンサ169が検出)すると、制御装置170の昇降制御手段により、田植装置3の下降制御のみが規制される。即ち、センターフロート165が基準位置であれば電磁油圧バルブ161は中立位置で油圧シリンダー160は作動せず田植装置3は上下動しない。そして、センターフロート165が基準位置から上動すれば電磁油圧バルブ161は切換えられて油圧シリンダー160は伸長作動して田植装置3はセンターフロート165が基準位置になるまで上動される。しかし、センターフロート165が基準位置から下動しても電磁油圧バルブ161は中立位置のままで油圧シリンダー160は作動せず田植装置3は上下動しない。
【0069】
次に、機体が180度旋回した時点(n2≧N2+n0)で制御装置170の変速電動モータ作動手段により電動モータMO−Hを作動させて油圧式変速装置HSTを旋回前の速度まで増速する。また、次工程側の線引きマーカ195の線引き作用状態への下動を自動的に行わせる。
【0070】
そして、機体が植付開始位置に来た時点(n2≧N2+n+n0)で前記田植装置3の下降制御のみが規制された制御を解除して、センターフロートセンサ169の検出に基づく通常の昇降制御を行う。また、PTOクラッチの入りを自動的に行わせる。
【0071】
一方、下記の自動旋回設定スイッチ192を「1」〜「3」の何れかの位置に設定して(自動旋回モードで)上記の自動旋回を行なっている間、即ち、機体旋回時にステアリングハンドル16を所定量(機体を右旋回させる意思を持って作業者が右に回す量、例えば、ステアリングハンドル16が左右に最大390度回転する構成であれば、200度)回した時点から機体が180度旋回してPTOクラッチの入りを自動的に行わせるまでの間、自動旋回モードであることを操縦者に報知すべく、制御装置170の報知ブザー制御手段により報知ブザーBを所定間隔で鳴らすと、操縦者は機体が自動旋回モードで旋回していることを認識できて、作業性及び安全性が向上する。
【0072】
また、機体上の苗が少なくなった時には、畦際での旋回時に畦から機体に苗供給をすべく、機体前部又は側部を畦に着けて機体を停止するが、この停止中に自動旋回モードであることを報知する報知ブザーBが鳴っていると、うるさくて煩わしいので、機体が停止している時(旋回外側の駆動されている後輪7の回転が停止していることを検出すれば、機体が停止していることを確実に認識できる)は制御装置170の報知ブザー制御手段により報知ブザーBが鳴らないように制御すれば、作業性が良い。
【0073】
上記自動旋回制御のフローを図8に示す。
まず、圃場の硬軟や水深、新盤深さ等の圃場条件の相違に対応するために、操作パネル17に設けた補正設定ダイヤル206を操作して、圃場に適した補正値n0を設定する。また、下記の自動旋回設定スイッチ192を自動旋回モードである「1」の位置に設定する。
【0074】
そして、左旋回すべくステアリングハンドル16を左回転に200度以上回転操作すると(θ≧θ1=左回転200度)、自動旋回モードであることを操縦者に報知すべく制御装置170の報知ブザー制御手段により報知ブザーBが所定間隔で鳴り始め、左後輪伝動軸89の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し始めると共に、ポテンショメータPMの検出回転角度が制御装置170に入力され、変速電動モータ作動手段により電動モータMO−Hを作動させて油圧式変速装置HSTを車速が旋回に適した速度になるまで減速する(前記のように、制御装置170の田植装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて田植装置3を最大位置まで上昇させる際に、制御装置170の田植装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて、田植装置3のセンターフロート165前端が最下端まで下動したことをセンターフロートセンサ169が検出した時に、変速電動モータ作動手段により電動モータMO−Hを作動させて油圧式変速装置HSTを車速が旋回に適した速度になるまで減速するようにしても良い)。同時に、制御装置170のPTOクラッチ作動手段によりPTOクラッチ作動ソレノイド173を操作して、施肥駆動ケース168内に設けられた動力を断接するPTOクラッチを操作して施肥装置4及び田植装置3への動力を切り操作する。その後、制御装置170の田植装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて田植装置3を最大位置まで上昇させて、同時に、次工程で線引き作用状態に下降させる左右線引きマーカ195・195を制御装置170のマーカ上下動制御手段にて決定する(前工程が左側線引きマーカ195を下降させていれば、右線引きマーカ195を下降させるように決定し、前工程が右側線引きマーカ195を下降させていれば、左線引きマーカ195を下降させるように決定する。即ち、前工程の逆側の線引きマーカ195が下降するように決定する)。
【0075】
尚、苗を機体に搭載する為に、旋回途中で畦に機体を着けて手動操作にて田植装置3を下降させ、苗搭載後に再び田植装置3を手動操作で上昇させても、この次工程で線引き作用状態に下降させる左右線引きマーカ195・195の決定は変更されない。また、自動旋回制御中に手動操作で田植装置3を下降させても、線引きマーカ195は下降しないようにプログラムされている。従って、自動旋回制御中に、畦に機体を着けて苗補給をしても、苗補給後は、適切な自動旋回が継続されて良好な田植作業が作業性良く行える。
【0076】
そして、左後輪伝動軸89の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出して、回転数n1がn1≧N1+n0になると、旋回開始から機体が90度以上旋回したことになるので田植装置3を下げる。この田植装置3の降下で枕地が均平化される。そして、田植装置3が下降してセンターフロート165が接地したことをセンターフロートセンサ169が検出(センターフロート165が接地して最下動位置から上動して基準位置に戻ったことをセンターフロートセンサ169が検出)すると、制御装置170の昇降制御手段により、田植装置3の下降制御のみが規制された状態の田植装置3の上下方向の位置制御が開始される。
【0077】
引き続き、左後輪伝動軸89の回転数を検出して、回転数n2がn2≧N2+n0になると、旋回開始から機体が180度旋回したことになるので、制御装置170の変速電動モータ作動手段により電動モータMO−Hを作動させて油圧式変速装置HSTを旋回前の速度まで増速する。また、前記決定された側の線引きマーカ195の電動モータMO−Mに制御装置170のマーカ上下動制御手段が下降指令をだして、次工程側の線引きマーカ195を下降させる。
【0078】
引き続き、左後輪伝動軸89の回転数を検出して、回転数n2がn2≧N2+n+n0になると、旋回が終了して機体が植付開始位置に到達したことになるので、前記田植装置3の下降制御のみが規制された制御を解除して、通常の田植装置3の昇降制御が開始され、PTOクラッチを入りにして苗植付け具164を作動させて苗の植付けを開始させると共に施肥装置4も作動させて施肥を開始する。尚、nは、旋回終了から植付け開始位置までの距離(後輪7の車軸から苗植付け具164までの間隔の2倍の距離)を機体が前進する左後輪伝動軸89の回転数である。
【0079】
このようにサイドクラッチIが切れている後輪7の後輪伝動軸89の回転数を検出するため、動力の伝わっている後輪7の回転数検出に比べてよりスリップなどの影響を受け難い特徴がある。また、後輪7より回転の速い後輪伝動軸89の回転数を検出するため、容易にその測定精度をあげることができる。その結果、機体を旋回させて往復工程で苗を植付ける各工程の苗の植付け始めが自動的にほぼ一定となる効果がある。
【0080】
また、旋回開始から機体が90度以上旋回した時点で田植装置3を下げてセンターフロート165が接地したことをセンターフロートセンサ169が検出すると、田植装置3の下降制御のみが規制された状態の田植装置3の上下方向の位置制御を開始し、旋回が終了して機体が植付開始位置に到達した時点で田植装置3の下降制御のみが規制された制御を解除して、通常の田植装置3の昇降制御を開始するようにしたので、左右前輪6、6および後輪7、7が旋回時に圃場を乱して圃場表面に凹凸が多数できるが、その凹凸により下降された田植装置3のセンターフロート165が上下動するが、センターフロート165の下動によるセンターフロートセンサ169の下降制御の検出は、制御装置170に規制されて田植装置3は下降方向には制御されないから、田植装置3は上昇方向のみ制御されることとなり、圃場面の凹凸に対して田植装置3が頻繁に上昇・下降を繰り返す現象がなくなり、安定した旋回が行える。そして、PTOクラッチを入りにして苗植付け具164を作動させて苗の植付けが開始し施肥装置4も作動して施肥を開始する時には、通常の昇降制御になるので圃場内での田植装置3の上下方向の位置制御が旋回中及び植付作業中共に適正に行えて、良好な田植作業が行える。
【0081】
更に、旋回開始時に車速を減速して旋回がスムースに行えるようにした一方、旋回開始から機体が180度旋回した時点で(機体が植付位置に来る前に)旋回前の速度まで増速するようにしたので、機体が植付位置に到達して植付作業が開始する際には、機体の速度は増速中若しくは旋回前の速度に増速された状態であるから、田植作業時間が短縮されて効率の良い作業が行える。
【0082】
尚、前記旋回制御時には田植装置3「下げ」からPTOクラッチ「入り」までの間に田植装置3の油圧シリンダー160の油圧感度を鈍感(田植装置3上昇側に切り替わりにくい)状態にすることが望ましく、この鈍感状態にすることで旋回跡を均平にすることができ、枕地処理が容易に精度よく行える。また、旋回終了直後も、畦際の泥土表面は荒れて凹凸があるので、PTOクラッチ「入り」後しばらくの間、油圧感度を鈍感(田植装置3上昇側に切り替わりにくい)状態にしたままの方が植付けが適正に行える。
【0083】
一方、旋回開始から機体が180度旋回した時点で旋回前の速度まで増速開始するようにしているが、この増速時には駆動反力で機体が前上がり気味になり、増速中に植付けが始まっていると、植付け姿勢が乱れると謂う問題がある。そこで、左右後輪7,7を油圧装置で上下昇降自在に構成して、旋回後の増速している間、制御装置170に設けた左右後輪下動制御手段により左右後輪7,7を油圧装置で下動させるようにすると、増速時に駆動反力で機体が前上がり気味になるのが左右後輪7,7が下動することにより修正されて、機体が水平状態となり、苗の植付け姿勢が安定して適性な苗の植付けが行なえる。
【0084】
また、田植装置3が前下がりになるように昇降用リンク装置2にピッチング装置を設けて、上記旋回後の増速している間、制御装置170に設けたピッチング制御手段により田植装置3が前下がりになるようにしても、増速時に駆動反力で機体が前上がり気味になるのが田植装置3が前下がりになることにより修正されて、田植装置3が水平状態となり、苗の植付け姿勢が安定して適性な苗の植付けが行なえる。
【0085】
また、センターフロートセンサ169のセンターフロート165前部の上下位置検出に基づいて、制御装置170の昇降制御手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて田植装置3の上下位置を、センターフロート165の揺動姿勢が予め設定された田植装置3に対する基準姿勢の許容範囲内(不感帯幅内)になるように昇降制御するように構成において、圃場の硬軟を検出して上記不感帯幅内を変動させて昇降制御の感度を補正するような制御を設けている場合には、この旋回後の増速時には、該感度補正を停止するようにした方が、増速による悪影響を昇降制御が受けないので、苗の植付け深さが安定し、良好な田植作業が行える。
【0086】
次に、後進時に田植装置3を自動的に上昇させる制御構成について説明する。
先ず、HST操作レバー110を後進側に操作すると、その基部に設けた接当片が接当してONになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置170の田植装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて田植装置3を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0087】
このように、HST操作レバー110を後進側に操作すると、自動的に田植装置3を基大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に田植装置3は最大位置まで上昇しているので、田植装置3が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0088】
また、操作パネル17には、自動旋回設定スイッチ192が設けられており、この自動旋回設定スイッチ192を「OFF」位置にすると、自動旋回制御及び後進時の田植装置3の自動上昇を行わせない状態となり、自動旋回設定スイッチ192を「1」〜「3」の何れかの位置に設定すると、自動旋回制御及び後進時の田植装置3の自動上昇を行う状態となる。そして、操作位置「1」〜「3」は、電動モータ146を駆動させてリヤデフ装置DをデフロックしてサイドクラッチIを切り操作するステアリングハンドル16の回動角度を設定する為のものであり、操作位置「1」にした時には、前記のようにステアリングハンドル16を250度以上左に回すと、電動モータ146を駆動させて、リヤデフ装置Dがデフロックされ、サイドクラッチIが切り操作される。そして、操作位置「2」にした時には、ステアリングハンドル16を300度以上左に回すと、電動モータ146を駆動させて、リヤデフ装置Dがデフロックされ、サイドクラッチIが切り操作され、操作位置「3」にした時には、ステアリングハンドル16を350度以上左に回すと、電動モータ146を駆動させて、リヤデフ装置Dがデフロックされ、サイドクラッチIが切り操作される。
【0089】
圃場が湿田の場合は左右後輪7・7がデフ差動した方が旋回半径が小さくて旋回がスムーズに行えるので、湿田の場合は、操作位置「2」または「3」にして田植作業を行う。
なお、自動旋回設定スイッチ192をOFFにしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時にHST操作レバー110を後進側に操作しても田植装置3が自動上昇しないので、田植装置3を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に田植装置3をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル16を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動旋回制御が働かないので、ステアリングハンドル16を左右何れかに200度以上回転しても田植装置3は上昇しないし、250度以上回転しても自動旋回制御にならず、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0090】
また、安全の為に、路上走行時やトラックへの機体積み降ろし時等の非作業時には、自動旋回設定スイッチ192はOFFにしておく。
また、路上走行で自動旋回設定スイッチ192をOFFにするのを忘れた場合には、操縦者の意図に反して自動旋回制御が作動して危険であるので、主変速レバー90を「路上走行速」に操作すると、それを検出して自動的に自動旋回設定スイッチ192がOFFになるように構成すれば、仮に操縦者が自動旋回設定スイッチ192をOFFにするのを忘れた場合でも自動旋回制御は作動せず、然も、路上走行速(移動速)で左右後輪7・7はステアリングハンドル16を如何様に操作してもデフ差動状態のままであるから、安全に走行できる。
【0091】
更には、苗載台163の各条毎の各苗載部には苗減少を検出する苗検出スイッチが各々設けられているが、路上走行時には苗載台163から全ての苗を取り出して空の状態で走行するから、この全ての苗検出スイッチが苗の無いことを検出している場合は、自動的に自動旋回設定スイッチ192がOFFになるように構成すると、路上走行時に操縦者が自動旋回設定スイッチ192をOFFにするのを忘れた場合でも自動旋回制御は作動せず、安全に走行できる。また、施肥装置4の肥料タンクに肥料が無いことを検出して、自動的に自動旋回設定スイッチ192がOFFになるように構成しても良い。
【0092】
尚、上記のように自動的に自動旋回設定スイッチ192がOFFにされた場合には、音声メッセージで自動旋回が解除(切り)になっていることを報知するようにすれば、更に、作業性が向上する。
【0093】
また、図1と図2の田植機の平面略図に示すようにサイドマーカー210を機体本体の前方部両側に設けているが、サイドマーカーの先端に機体の前後方向に平行な棒210aを配置することで、苗植付けの条合わせを行うときに機体が隣接条に平行になっているのを容易に確認できるようになる。
【0094】
上記実施例の乗用型田植機は、走行車両1に昇降用リンク装置2を介して田植装置3を装着した構成であり、水田圃場では走行車両1の前輪6、6および後輪7、7は耕盤上を走行し、田植装置3のセンターフロート165・サイドフロート166…は泥面上に接地した状態で田植作業がおこなわれるので、昇降用リンク装置2の角度を検出すると、耕盤の深さが判る。即ち、昇降用リンク装置2の角度が大きいほど耕盤は深い。
【0095】
そこで、昇降用リンク装置2の角度が判るように、走行車両1と昇降用リンク装置2との間に角度検出用のポテンショメータPM−Kを装着して、昇降用リンク装置2の角度を検出できるようにする。そして、ポテンショメータPM−Kにより昇降用リンク装置2の角度を検出して、昇降用リンク装置2の角度が大きいほど(耕盤が深いほど)制御装置170の変速電動モータ作動手段により、図10のように前進速度の上限を遅くする。即ち、深い耕盤の圃場ほど、前進最高速度が遅くなるように制御される。このようにすると、耕盤の深い圃場で高速の前進速度で植付け作業をして、前輪6、6および後輪7、7で泥土を押して側方の前工程で植付けた苗を倒してしまったり、前輪6、6および後輪7、7で大量の泥土を持ち上げて側方に落として側方の前工程で植付けた苗を泥土で押し潰したりするような事態が回避できて、適切な田植作業が行なえる。また、耕盤の深い圃場で高速の前進速度で植付け作業をして、前輪6、6および後輪7、7のスリップ率が大きく変動する為に株間が変わってしまうような事態が回避できて、適切な株間の田植作業が行える。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、上記実施例の乗用型田植機以外に、乗用型野菜移植機や乗用型イ草移植機等の色々な乗用型苗移植機に適用できる。
【符号の説明】
【0097】
走行車両苗移植作業装置(田植装置)左右前輪左右後輪12エンジン16ステアリングハンドル、165:センターフロート、170制御装置、195:線引きマーカ、報知手段(報知ブザー)左右サイドクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドル(16)にて操向操作される左右前輪(6)と左右後輪(7)を設け走行車両(1)に苗移植作業装置(3)を昇降自在に装着した乗用型苗移植機において、走行距離算出手段にて苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力してからの走行距離を算出して、該走行距離に応じて制御することにより、先ず苗移植作業装置(3)が下降する指令を出力し、その後に線引きマーカ(195)を下降させ自動旋回モードを設けことを特徴とする乗用型苗移植機。
【請求項2】
苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力してから線引きマーカ(195)を下降させるまでの間の自動旋回モード中に、報知ブザーや報知灯などの報知手段(B)を作動させるが、機体が停止しているときは前記報知手段(B)を作動させない制御装置(170)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗用型苗移植機。
【請求項3】
苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力してから線引きマーカ(195)を下降させるまでの間の自動旋回モード中に左右後輪(7)を下動させる構成としことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗用型苗移植機。
【請求項4】
左右前輪(6)を所定角度以上に操向操作すると苗移植作業装置(3)の駆動を切ると共に苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力して苗移植作業装置(3)を上昇させ、且つ、走行距離算出手段にて走行距離を算出して、該走行距離に応じて制御することにより、先ず苗移植作業装置(3)が下降する指令を出力し、その後に線引きマーカ(195)を下降させると共に苗移植作業装置(3)の駆動を開始する自動旋回モードを設け、自動旋回モードにて、ステアリングハンドル(16)を所定値よりも早く回転操作した場合には、苗移植作業装置(3)の駆動を切ると共に苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力するときの左右前輪(6)の前記所定角度を小さく設定し、ステアリングハンドル(16)を所定値よりも遅く回転操作した場合には、苗移植作業装置(3)の駆動を切ると共に苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力するときの左右前輪(6)の前記所定角度を大きく設定する構成としたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の乗用型苗移植機。
【請求項5】
左右後輪(7)は、エンジン(12)からの動力を各別に入り切りする左右サイドクラッチ(I)を介して駆動される構成とし、左右前輪(6)を所定角度以上に操向操作すると旋回内側となる後輪(7)のサイドクラッチ(I)を切る構成とし、苗移植作業装置(3)にはセンターフロート(165)を設け左右前輪(6)を所定角度以上に操向操作すると苗移植作業装置(3)の駆動を切ると共に苗移植作業装置(3)を上昇させる指令を出力して苗移植作業装置(3)を上昇させ、且つ、走行距離算出手段にて走行距離を算出して、該走行距離に応じて制御することにより、先ず苗移植作業装置(3)が下降する指令を出力し、その後に線引きマーカ(195)を下降させると共に苗移植作業装置(3)の駆動を開始する自動旋回モードを設け、自動旋回モードにて苗移植作業装置(3)が下降してセンターフロート(165)が接地した後、センターフロート(165)が基準位置から上動すればセンターフロート(165)が基準位置になるまで苗移植作業装置(3)が上昇するが、センターフロート(165)が基準位置から下動しても苗移植作業装置(3)は昇降しない下降制御のみを規制する制御を行い、苗移植作業装置(3)の駆動を開始すると下降制御のみを規制する制御を解除して通常の昇降制御を行う構成とし、左右前輪(6)を所定角度以上に操向操作してから苗移植作業装置(3)の駆動を開始するまでの間の自動旋回モード中に、報知ブザーや報知灯などの報知手段(B)を所定間隔で作動させる制御装置(170)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の乗用型苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−239791(P2011−239791A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192639(P2011−192639)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【分割の表示】特願2005−129957(P2005−129957)の分割
【原出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】