説明

位置ずれ量検出方法および該位置ずれ量検出方法を用いた外観検査方法

【課題】 メモリ容量が問題とならない位置ずれ量の検出を行い、位置ずれ量に基づき基板の位置を補正し基板の外観検査を行う。
【解決手段】 参照テーブル424に基づいて、推定基準点位置設定部413により推定基準点位置および仮基準点位置設定部415により仮基準点位置が設定される。距離指標値算出部414が推定基準点位置と仮基準点位置との距離の標準偏差を求め、該標準偏差が最小となるときの回転角および仮基準点位置と基準点位置との位置差分値を位置ずれ量425として取得する。該位置ずれ量425に基づき被検査基板6の位置合わせを行うことで、メモリの使用容量を増やすことなく、確実に位置合わせを行うことができるとともに、外観検査を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査基板の位置ずれ量を検出するための基準位置を正確に検出し、該基準位置に基づき位置ずれ量を求める位置ずれ量検出方法および、該方法により検出された位置ずれ量に基づき被検査基板の位置合わせを行い、被検査基板の外観検査を行う外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの製造において、生産性を向上するため歩留まりの改善が求められている。しかし、製造プロセス等の複雑化によりデバイスの欠陥が増える傾向にあり、歩留まりを改善するためには、製造過程で発生する欠陥を正確に検出することが重要となっている。
【0003】
製造過程での欠陥として配線パターンの変形、切断、短絡等や、パーティクル、レジスト残りによる膜厚変動等がある。これらの欠陥を検出するためには、欠陥を有しない参照基板を撮像した参照画像と対象基板を撮像した対象画像とを比較し、対象画像と参照画像との画素値の差分計算を行う。そして、対象画像に欠陥が含まれている場合、欠陥位置の画素情報と参照画像の画素情報とが異なるため差分量が大きくなる性質を利用して、一定値以上の差分値を持つ位置を欠陥として検出していた。
【0004】
そのため、欠陥検査において参照基板と対象基板の位置合わせの精度が検査精度を左右する重要な要素となっている。参照基板と対象基板の位置合わせを行うための技術として、対象基板から位置合わせのための基準となる位置、例えばアライメントマークや、ステージの回転中心と対象基板から検出した基準点との相対位置を精度良く検出することで、該基準となる位置に基づき参照基板に対する対象基板の位置合わせを行う技術が知られている。
【0005】
例えば、基準となる位置を検出する技術として、ウェハ上に形成されたアライメントマークの位置を検出するためのマーク検知技術が知られており、特許文献1には、検出したいアライメントマークをテンプレートとして用いてテンプレートマッチングを行い、ウェハ上のアライメントマークの位置を検知する技術が開示されている。この技術を利用することで、結果的に位置合わせを行うための位置ずれ量を検出することができる。しかし、テンプレートマッチングは、XY方向に対する位置ずれ量の検出精度が高いという特徴を有するが、対象基板の回転や変倍に弱く、演算量が多いため処理に時間がかかるという問題を有する。さらに、テンプレートマッチングは、照明等の変化による対象画像の濃淡やコントラストの変化に弱いという問題も有する。そのため、テンプレートマッチングにより検出されるアライメントマークの位置は必ずしも精度が高く検出されているとは限らない。
【0006】
そこで、上述したように対象画像に濃淡のばらつき等が存在する場合でも、基準となる位置を検出し、基準となる位置に基づき位置ずれ量を検出することができる技術として、特許文献2に記載されたパターンマッチング方法が知られている。特許文献2に記載されたパターンマッチング方法は、参照画像から抽出された特徴パターンを用いて、対象画像から特徴パターンの位置をテンプレートマッチングの一種である正規化相関法により検出する。しかし、上述したように対象画像の状態等により必ずしも精度が高く検出されているとは限らない。そのため、参照画像中の基準点に対応する候補位置を対象画像から算出し、各候補位置に対して一般化ハフ変換により対象画像中の基準点としてもっとも適した候補位置を検出することで、参照画像に対するXY方向、回転角、および倍率についての位置ずれ量を検出することでパターンマッチングを行うものである。
【0007】
具体的には、参照画像から特徴的な領域を特徴パターンとして設定するとともに、参照画像に対する対象画像のパターンマッチングの際に基準となる基準点を設定し、各特徴パターンと基準点との相対的な位置情報を参照テーブルとして生成する。そして、対象画像から特徴パターンと近似する画像情報を有する位置を正規化相関法等により取得する。
【0008】
続いて、正規化相関法により取得された対象画像における特徴パターンと近似する位置からみた基準点の候補位置を一般化ハフ変換により検出する。一般化ハフ変換では、対象画像の回転角θおよび伸縮倍率κの複数の組み合わせによる基準点の複数の候補位置を求めるためのパラメータ空間を投票空間として設定し、投票により最大得票位置となる候補位置の座標を基準点、およびその時の回転角θおよび伸縮倍率κを求める。
【0009】
ここで、一般化ハフ変換および正規化相関法について簡単に説明する。図12は一般化ハフ変換による画像のXY方向の位置ずれ量、回転方向の位置ずれ量および伸縮倍率の変化による位置ずれ量の検出を説明するための図である。一般化ハフ変換では、まず、参照図形91の輪郭上の各エッジ点911における接線の傾きAを調べ、エッジ点911を原点とした参照図形91の基準点910の相対位置が相対極座標(r,α)として求められる。そして、傾きAをインデックスとして相対位置を参照できるようにした表1に例示する参照テーブルが準備される。
【表1】

【0010】
ここで、認識の対象となる対象図形の輪郭上にあるエッジ点のXY座標が(x,y)であり、エッジ点における接線の傾きがAである場合に、参照図形91をθだけ回転し、κ倍伸縮したものが対象図形であると仮定すると、対象図形における基準点のXY座標(x,y)は、数式1により求めることができる。
【数1】

【0011】
そこで、数式1のθおよびκについて所定の刻み幅で全ての組み合わせについて計算し、(x,y,θ,κ)の4次元空間に投票を行う。このとき、数式1のr,αは、(A−θ)をインデックスとして参照テーブル(表1)から該当する相対極座標を取得したものである。参照テーブルに(A−θ)に対応するr,αが複数登録されている場合には、全ての組み合わせについて投票が行われる。対象図形の輪郭上の全てのエッジ点に対して投票を行うことにより、対象図形における基準点のXY座標近傍に多数の投票が集まることとなり、最大の得票数を取得したエッジ点が対象図形における基準点XY座標であり、同時にθおよびκを求めることができる。
【0012】
また、正規化相関法では、座標(x,y)における参照画像の画素値がf(x,y)であり、対象画像の画素値がg(x,y)と表されるものとすると、数式2により対象画像を参照画像から(m,n)だけずらして重ねたときの両者の類似度C(相関値とも呼ばれる)が求められる。
【数2】

【0013】
数式2において、fav,gavは、参照画像および対象画像において互いに対応する領域の画素値の平均値である。数式2による演算を全ての(m,n)に対して行い、類似度Cが最も大きくなるときの(m,n)が参照画像に対する対象画像の画像情報が近似する位置として求められる。
【0014】
以上の手法を組み合わせることで特許文献2ではXY方向の位置ずれ量、回転方向の位置ずれ量および倍率の変化による位置ずれ量を検出し、パターンマッチングを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−210577号公報
【特許文献2】特開2004−192506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献2のパターンマッチング法で用いられている基準点を検出する方法において検出精度を向上させるには、回転角θおよび倍率κの刻み幅を細かく(すなわち、分解能を高く)し、これに応じた投票空間を設定する必要がある。そのため、回転角や倍率の分解能を高くすると、該分解能に比例して投票空間を構成するために必要とするメモリ容量が増大するという問題があった。また、仮に分解能の高い投票空間を設定できたとしても、投票のための候補位置が多すぎることによって投票数の分散が起こりやすくなり最大得票位置が決まらないという問題があった。また、対象画像から特徴パターンと一致する位置を正規化相関法により取得する際、対象画像中の特徴パターンと一致する領域内に欠陥を有する場合、正しく取得することができない場合がある。そのため、誤検出された特徴パターンと一致する位置に基づき基準点の位置を算出するため、算出された基準点の位置の精度が低下するという問題があった。
【0017】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、使用するメモリ容量が問題とならない新規な手法により被検査基板の基準となる位置を検出し、基準となる位置に基づき位置ずれ量を検出することで検査対象物の位置合わせを行い、被検査基板上の外観検査を行う外観検査および位置ずれ量検出を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するため、ステージに載置された参照基板を撮像し取得した複数の基準画像に対応するステージ上での位置を示す基準画像位置と、ステージの回転中心である基準点位置とのそれぞれの相対位置情報を参照テーブルとして生成する準備工程と、被検査基板を撮像し取得した基準画像に画像情報が近似する特徴画像のステージ上での位置をあらわす特徴画像位置を取得する特徴画像位置取得工程と、参照テーブルを参照して、各特徴画像位置からみた基準点位置に相当するそれぞれのステージ上での位置を推定基準点位置として設定する推定基準点位置設定工程と、推定基準点位置設定工程で取得したそれぞれの推定基準点位置の平均位置を仮基準点位置として設定する仮基準位置設定工程と、基準点位置を中心とする回転角を所定の分解能で変位させつつ、回転角ごとに推定基準点位置と仮基準点位置との距離の標準偏差または距離の分散をそれぞれ算出する距離指標値算出工程と、距離指標値算出工程で算出される距離の標準偏差または距離の分散が最小となるときの回転角および仮基準点位置と基準点位置との位置差分値を位置ずれ量として取得する位置ずれ量取得工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
このように構成された発明では、回転角および推定基準点位置との複数の組み合わせごとに、距離指標値算出工程により距離の標準偏差または距離の分散を算出し、距離の標準偏差または距離の分散が最小となるときの位置ずれ量をメモリに記憶しておけば、メモリ空間上にすべての組み合わせに応じた投票空間を設ける必要がない。したがって、回転角の分解能を高くした場合でもメモリ容量が問題とならない処理を行うことができる。
【0020】
また、本願発明に係る位置ずれ量検出方法において、特徴画像位置取得工程により取得された特徴画像位置が、基準画像の画像情報が近似する特徴画像の位置として取得されたか否かを判定する不正特徴画像位置判定工程とをさらに備え、不正特徴画像位置判定工程は、推定基準点位置と仮基準点位置との距離の値が、距離の標準偏差に基づき設定される閾値よりも大きい場合、推定基準点位置に対応する特徴画像位置を不正と判定し、不正な特徴画像位置を削除することを特徴とする。
【0021】
このように構成された発明では、特徴画像位置取得工程において誤検出等により不正な特徴画像位置が取得されていた場合でも、不正特徴画像位置判定工程により、不正な特徴画像位置を削除することができ、仮基準点位置の算出精度を落とさないため、位置ずれ量の検出精度の低下を防ぐことができる。
【0022】
また、本願発明に係る位置ずれ量検出方法において、特徴画像位置取得工程の前に、前記被検査基板に対してプリアライメントを行うプリアライメント工程を備えることを特徴とする。
【0023】
このように構成された発明では、特徴画像位置取得工程の前にプリアライメントを行うことで、被検査基板の回転方向の位置ずれ量について、プリアライメントの性能に基づき回転角の変位させる範囲を決めることができるため、位置ずれ量の算出を高速に行うことができる。
また、本発明の外観検査方法は、上記した位置ずれ量検出方法を用いて、位置ずれ量取得工程により取得された位置ずれ量に基づき、被検査基板の位置合わせを行い、被検査基板の外観検査を行う検査工程と、を備えることを特徴とする。
【0024】
このように構成された発明では、回転角および推定基準点位置との複数の組み合わせごとに、距離指標値算出工程により距離の標準偏差または距離の分散を算出し、距離の標準偏差または距離の分散が最小となるときの位置ずれ量をメモリに記憶しておけば、メモリ空間上にすべての組み合わせに応じた投票空間を設ける必要がない。したがって、回転角の分解能を高くした場合でもメモリ容量が問題とならない処理を行うことができる。その結果、該基板の外観検査を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、参照基板に対する被検査基板の位置ずれ量であるXY軸方向の位置ずれ量および回転方向の位置ずれ量を検出するために、投票空間を設ける必要がないため、投票数が分散して最大得票数を有する仮基準点位置が決まらないことによる各位置ずれ量の検出が行えない事態の発生を防ぐことができるとともに、距離の標準偏差または距離の分散が最小となるときの位置ずれ量をメモリ領域に確保すればよく、メモリ容量が問題とならない位置ずれ量の検出を行うことができる。そして、検出された位置ずれ量に基づき基板の位置合わせを行い該基板の外観検査を確実に行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】外観検査装置の構成を示す説明図である。
【図2】コンピュータの構造を示す図である。
【図3】コンピュータの機能構成を示すブロック図である。
【図4】準備作業のフローを示す図である。
【図5】参照基板の一例を示す図である。
【図6】参照基板の回転中心を示す外観図である。
【図7】外観検査の一連のフローを示す図である。
【図8】被検査基板の一例を示す図である。
【図9】第1の実施形態の位置ずれ量を取得する処理のフローを示す図である。
【図10】第2の実施形態のコンピュータの機能構成を示すブロック図である。
【図11】第2の実施形態の位置ずれ量を取得する処理のフローを示す図である。
【図12】一般化ハフ変換による位置ずれ量の検出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本実施形態に係る外観検査装置1の構成を示す説明図である。外観検査装置1は、基板Wを保持するとともに移動する基板保持部2、基板Wを撮像することにより基板Wの全体あるいは一部を二次元画像の画像データとして取得する撮像部3、並びに、基板保持部2および撮像部3に接続されたコンピュータ4とから構成される。
【0028】
基板保持部2は、基板Wを水平に保持するステージ21およびステージ21をX・Y・θ方向に移動するステージ駆動部22を有し、ステージ21は平板状の外形を有しており、またステージ21の上面には、図示しない吸着溝が設けられており、これらの吸着溝の内底部には図示しない複数の吸引孔が分散して形成されている。これらの吸引孔は、真空ポンプ等に接続されており、真空ポンプを動作することによって、吸着溝内の雰囲気を排気することができる。これにより、ステージ21の上面に基板Wを載置する際には、吸引孔の吸引圧により基板Wを水平に保ちつつ、ステージ21の上面に固定的に保持することができる。
【0029】
また、ステージ駆動部22は、ステージ21を図1中のX軸方向、Y軸方向、およびZ軸周りの回転方向に移動させるための機構である。ステージ駆動部22は、ステージ21を回転させる回転機構23、ステージ21を回転可能に支持する支持プレート24、支持プレート24をX軸方向に移動させるX方向移動機構25、X方向移動機構25を介して支持プレート24を支持するベースプレート27をY軸方向に移動させるY方向移動機構26から構成される。
【0030】
回転機構23は、リニアモータ231と、ステージ21の中央部下面側と支持プレート24との間に図示しない回転軸とを備える。リニアモータ231はステージ21の端部に取り付けられた図示しない移動子と、支持プレート24の上面に敷設された図示しない固定子とからなる。このため、リニアモータ231を動作させると、固定子に沿って移動子がX軸方向に移動し、支持プレート24上の回転軸を中心としてステージ21が所定の角度の範囲内で回転する。
【0031】
X方向移動機構25は、リニアモータ251と、支持プレート24とベースプレート27との間に、X方向に伸びる一対のガイド部252とを備える。リニアモータ251は、支持プレート24の下面に取り付けられた図示しない移動子と、ベースプレート27の上面に敷設された図示しない固定子とからなる。このため、リニアモータ251を動作させると、ベースプレート27上のガイド部252に沿って支持プレート24がX軸方向に移動する。
【0032】
Y方向移動機構26は、リニアモータ261と、ベースプレート27と基台28との間に、ベースプレート27の一部を案内するY軸方向に伸びる図示を省略するガイド部とを備える。リニアモータ261は、ベースプレート27の下面に取り付けられた図示しない移動子と、外観検査装置1の基台28上に敷設された図示しない固定子とからなる。このため、リニアモータ261を動作させると、基台28上の図示しないガイド部に沿ってベースプレート27がY軸方向に移動する。
【0033】
撮像部3は、ステージ21の上方に配設されており、ステージ21に保持された基板Wを撮像するための機構である。撮像部3は、照明光を出射する光源31、基板Wに照明光を導くとともに基板Wからの光が入射する光学系32、および、光学系32により結像された基板Wの像を電気信号に変換し、コンピュータ4へと出力する撮像デバイス33を有する。撮像部3としては、例えば、CCDカメラなどを用いることができる。
【0034】
コンピュータ4は、ステージ駆動部22、撮像部3を制御するとともに、撮像部3によって撮像された基板Wの画像に基づいて所定の処理を行う。次に、コンピュータ4の構成について図2を用いて詳述する。
【0035】
コンピュータ4は、図2に示すように、各種演算処理を行う演算部41(例えば、CPUなど)、基本プログラムおよび各種情報を記憶する記憶部42(例えば、ROMやRAMなど)をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインはさらに情報記憶を行う固定ディスク43(例えば、ハードディスクドライブなど)と、各種情報を表示する表示部44(例えばディスプレイなど)、操作者からの入力を受け付ける入力部45(例えば、キーボードおよびマウスなど)、コンピュータ読み取り可能な記録媒体46(例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等)から読み取りを行う読取装置47、並びに、ステージ駆動部22や撮像部3との間で通信を行う通信部48が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。なお、例えば表示部44と入力部45との機能が一体となったタッチパネルディスプレイなどを用いても良い。
【0036】
コンピュータ4には、事前に読取装置47を介して記録媒体46からプログラム461が読み出され、固定ディスク43に記憶される。そして、プログラム461が記憶部42(例えば、RAMなど)にコピーされるとともに演算部41が記憶部42のプログラム461に従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータ4がプログラム461を実行することにより)、コンピュータ4が基板Wの検査を実行する。
【0037】
図3は、演算部41がプログラム461に従って動作することにより実現する機能構成を示すブロック図である。なお、これらの機能は専用の電気回路により実現されてもよく、部分的に電気回路が用いられてもよい。
【0038】
演算部41は、参照テーブル生成部402と、位置ずれ量取得部401と、補正量算出部416と、検査部404とからなる。参照テーブル生成部402は、あらかじめ取得された基準画像位置座標422と基準点位置座標423とから、これらの相対的な位置関係をあらわす相対位置情報を参照テーブル424として生成し、記憶部42に記憶する機能を有する。また、位置ずれ量取得部401は、基準となる基板の位置と検査対象となる基板の位置とのXY方向、回転方向および伸縮倍率による位置ずれ量425を取得するため、特徴画像位置取得部412、推定基準点位置設定部413、距離指標値算出部414、仮基準点位置設定部415とを備える。
【0039】
特徴画像位置取得部412は、基準画像データ421を用いて検査対象となる基板から指定された画像と画像情報が一致する特徴画像を取得する機能を有する。推定基準点位置設定部413は、特徴画像位置取得部412で取得された特徴画像と参照テーブル424とから後述する推定基準点位置を取得し、仮基準点位置設定部415が推定基準点位置を用いて仮基準点位置を設定する。そして、距離指標値算出部414が各推定基準点位置と仮基準点位置との間の距離指標値を算出する。これらの各部が動作することで位置ずれ量取得部401は位置ずれ量425を取得することができる。位置ずれ量425に基づき実際にステージ21を補正するための補正量の算出を補正量算出部416が行う。そして、検査部404は位置合わせが行なわれた基板に対して検査を行う。
【0040】
コンピュータ4にて検査が行われる前の準備作業の流れについて図4で説明する。また、図5は半導体チップであるダイ50が複数形成された参照基板5を説明するための図である。以下、図3、図4および図5を参照しつつ、準備作業について説明する。
【0041】
準備作業では、別途検査が行われ欠陥や伸縮変化を有しない参照基板5が図示を省略するプリアライメント装置によってプリアライメントが行なわれる(ステップS11)。そして、外観検査装置1のステージ21上に搬入され載置される(ステップS12)。プリアライメント装置では、例えば、基準と考える位置に対する基板の回転方向の大きな位置ずれ等を±1度程度の回転方向の位置ずれの精度までオリエンテーションフラットを基準として基板の回転補正等が行なわれる。そして、プリアライメント装置から搬送ロボット等によりステージ21上に搬送される。
【0042】
続いて、ダイ50の連続した配置と、ステージ21が移動するX方向およびY方向の移動方向とが垂直、水平となるようにプリアライメント装置から搬送ロボットによってステージ21に参照基板5が搬送される際に発生する参照基板5の微小回転を補正する(ステップS13)。その具体的な方法について、図6を用いて説明する。図6は参照基板5に対してステージ21の回転中心を基準に撮像部3により撮像した外観図である。なお、説明の都合上、図6には点線にて参照基板5を図示しているが、後述する表示部44には画像502が表示される。
【0043】
ステージ21の上方に配設された撮像部3は、Y方向移動機構26によりY方向に移動しているステージ21に載置された参照基板5を撮像する。図6には参照基板5上に整列配置されたダイ50間に形成されるスクライブラインが画像502として撮像されている。そして、撮像された画像502は表示部44に表示される。操作者は、表示部44に表示された画像502に対して、入力部45を介して、参照基板5の一方の周端から他方の周端までスクライブラインに沿った基準線501を指定する。
【0044】
すなわち、基準線501が指定されることで、基準線501の始点503と終点504とのステージ21に対する座標位置、および始点503から下ろされた垂線505が参照基板5の周端で交わる交点506の座標位置とがステージ21に対する座標位置としてあらわされ、三平方の定理を用いてステージ21上に載置された参照基板5の基準と考える位置からの回転角(基準線501と垂線505とのなす角)を算出することができる。算出された回転角に基づきテージ21を回転機構23によりステージ21の回転中心のまわりに終点504が交点506と一致する方向に回動させることで参照基板5の位置を補正する。
【0045】
以上の動作により補正された参照基板5の配置された状態をステージ21上に回転方向の位置ずれを有しない状態で配置されたと定義する。この配置を基準に後述する被検査基板6の位置ずれ量を検出する。なお、本発明において検出する位置ずれ量とは、参照基板5に対する被検査基板6のステージ21上でのXY方向の位置ずれ、回転方向の位置ずれおよび/または伸縮倍率の変化による位置ずれをさすものである。
【0046】
次に、参照基板5の全体像が表示部44に表示され、操作者によって入力部45を介して、参照画像となる撮像領域が矩形領域として指定される(ステップS14)。また、併せて指定された領域のステージ21における座標を記憶部42に記憶しておく。本実施例では、まず、図5(a)の参照基板5上の点線で示される撮像領域301aが指定されている。ここで、参照画像49の一例として撮像領域301aを撮像した画像を図5(b)に示す。図5(b)は参照画像49を拡大して示す外観図である。すなわち、図5(b)で示すように、操作者によって指定された撮像領域が参照画像49として表示部44に拡大して表示される。なお、参照画像49は、参照基板5上の回路パターンの設計データ等から直接生成されてもよい。
【0047】
次に、表示部44に表示された参照画像49から操作者によって入力部45を介して、操作者が参照画像49中の特徴的な領域と認識する領域を基準画像491aとして1箇所指定する(ステップS15)。指定された基準画像491aは、基準画像データ421として記憶部42に記憶される。なお、矩形領域の指定については、特徴的な領域を包含するように指定すればよいが、矩形領域が大きすぎると以降の処理において演算時間の増大に繋がるため、経験的には画像を構成する画素として32画素角程度とすることが好ましい。
【0048】
続いて、基準画像491aを示す画像領域における右下の位置を基準画像位置492aとして設定する(ステップS16)。この設定は、操作者によらず、あらかじめ基準画像491a内で右下の位置を基準画像位置492aとするように決めている。なお、基準画像位置として設定する位置は、右下の位置に限られるものではなく、例えば、基準画像内の重心位置や他の四隅の点を基準画像位置として設定してもよい。また、操作者によって基準画像の設定とあわせて基準画像位置を設定する構成としてもよい。
【0049】
次に、所定の数の基準画像が指定されていなければステップS14に戻り(ステップS17)、所定の数の基準画像が指定されるまで、ステップS14からステップ16が繰り返される。したがって、図5(a)に示すとおり、撮像領域302b、302c、302dの3箇所についても、基準画像491b、491c、491dを指定し、基準画像位置492b、492c、492dが設定されることとなる。なお、設定された4つの基準画像位置491a、491b、491c、491dについては、基準画像位置座標422として記憶部42にステージ21上の位置をあらわす座標として記憶される。
【0050】
4箇所の撮像領域301a、302b、302c、301dのそれぞれについて基準画像491a、491b、491c、491dが指定されると、参照テーブル生成部402は、それぞれの基準画像491a、491b、491c、491dに対応する4つの基準画像位置492a、492b、492c、492dについてステージ21の回転中心である(ステージ21上の座標系における原点でもある)基準点位置490との相対的な位置関係をあらわす相対位置情報を参照テーブル424として生成する(ステップS18)。具体的には、ステージ21の回転中心である基準点位置490は、ステージ21上の位置をあらわす座標として記憶部42に基準点位置座標423として記憶されている。
【0051】
そして、ステップS16で記憶部42に記憶している基準画像位置座標422と基準点位置座標423とから、それぞれの相対位置を極座標として求め、記憶部42に参照テーブル424として記憶される。これにより、各基準画像位置492a、492b、492c、492dと基準点位置490の相対位置情報を参照テーブル424として生成することができる。表2は参照テーブル424の内容を例示しており、P,P,P,Pは4つの基準画像491a、491b、491c、491dに対応し、極座標の距離と角度は、r,αに添字を付して示している。なお、参照テーブル424の構造は実質的に同様であれば表2に示されるものには限定されず、例えば、XY座標系であってもよく、基準点位置490を基準とした各基準画像位置492a、492b、492c、492dとの相対位置をあらわすものであってもよい。
【表2】

【0052】
なお、本実施例では、撮像領域として4箇所の撮像領域301a、302b、302c、301dを指定した。その理由は、例えば1箇所について基準画像の情報が後述する被検査基板から取得できなかったとしても、残りの基準画像を用いて精度よく位置ずれ量の検出を行うことができるためである。したがって、4箇所以上の撮像領域を指定してもよい。また、少なくとも2箇所以上の撮像領域が指定されれば、本発明を実施することができる。
【0053】
次に、外観検査装置1において基板Wの検査が行われる際の動作について説明する。図7は外観検査の一連のフローを示す図である。また、図8(a)は検査対象となる被検査基板6の一例を示す図であり、反時計回り方向にわずかに回転した例を示している。また、図面を用いた説明の便宜上、被検査基板6上に形成されているダイ50は図示を省略している。図8(b)は被検査基板6を撮像して取得した対象画像51の一例を示す図である。以下に、図3、図7および図8を参照して外観検査の一連の流れを説明する。
【0054】
検査に際して、図示しないプリアライメント装置によって被検査基板6の位置合わせが行なわれ(ステップS21)、プリアライメント装置から図示しない搬送ロボット等により外観検査装置1に被検査基板6が搬入されるとともに、基板保持部2を構成するステージ21上に載置される(ステップS22)。したがって、ステージ21上に載置された被検査基板6は回転方向の位置ずれ量はプリアライメント装置の位置合わせ精度および搬送ロボットの搬送精度に依存し、例えばプリアライメント装置の回転方向の位置合わせ精度が±1.0度以内であれば、経験的におよそ±1.5度以内に回転方向の位置ずれ量がおさまっていると仮定することができる。
【0055】
ステージ駆動部22が被検査基板6を撮像部3の下方へ移動させるとともに、記憶部42に記憶されている基準画像位置座標422に基づき撮像部3が被検査基板6を撮像し対象画像51を取得する(ステップS23)。取得された対象画像51は、コンピュータ4へと転送される。本実施例では、図8(a)に示すとおり、4つの基準画像位置座標422を撮像部3により撮像することで、不要な領域を撮像する必要がなくなり処理の高速化を行うことができる。
【0056】
4箇所の撮像領域302a、302b、302c、302dにおいて対象画像51が取得されると、コンピュータ4の位置ずれ量取得部401により、参照基板5に対する被検査基板6の位置ずれ量425が取得される(ステップS24)。位置ずれ量取得部401による位置ずれ量425の取得については後で詳細に説明を行う。
【0057】
位置ずれ量425が取得されると、補正量算出部416が位置ずれ量425に基づきステージ21の位置を補正するための補正量を算出する。そして、算出された補正量に基づきステージ駆動部22を駆動させることで被検査基板6を載置するステージ21を駆動し、被検査基板6の参照基板5に対する位置ずれを補正するように位置合わせを行う(ステップS25)。
【0058】
補正量はステップS24で算出されたXY方向の位置ずれ量(x,y)と、回転方向の位置ずれ量θと、伸縮倍率の変化による位置ずれ量κとから数式3により算出することができる。そして、回転機構23によりステージ21を回転方向の位置ずれ量θだけ回動させた後、XY方向の位置ずれについては数式3によって算出されたX方向の補正値Xaと、Y方向の補正値Yaに基づきX方向移動機構25、Y方向移動機構26によりステージ21をXY方向に移動することで位置合わせを行うことができる。すなわち、補正量とは、参照基板5に対する被検査基板6の位置ずれに対して、ステージ21を移動させることによって位置ずれを補正するためのステージ21のXY方向および回転方向の移動量を示すものである。
【数3】

【0059】
そして、被検査基板6に対して所定の検査が行われる(ステップS26)。所定の検査としては、例えば、被検査基板6を撮像して得られた検査画像と、欠陥を有しないマスタ画像との画素値の差分を求めることで欠陥を検出する方法や、他の既知の検査方法を適用することができる。
【0060】
検査後の被検査基板6は図示しない搬送ロボット等により外観検査装置1から搬出される(ステップS27)。
【0061】
続いて、位置ずれ量取得部401による位置ずれ量425を取得する処理の流れについ図8、図9を用いて詳細に説明する。
【0062】
位置ずれ量取得部401は、基準となる参照基板に対して検査対象となる被検査基板が、XY方向、回転方向および/または伸縮によりどれだけずれているかを取得する機能を有し、特徴画像位置取得部412と、推定基準点位置設定部413と、距離指標値算出部414、仮基準点位置設定部415から構成されている。
【0063】
特徴画像位置取得部412は、記憶部42に記憶されている基準画像データ421に基づき対象画像51から正規化相関法により基準画像と画像情報が近似する画像領域を特徴画像として取得する機能を有する。なお、画像情報としては、基準画像を構成する各画素における階調値等を用いることができる。そして、特徴画像位置取得部412は対象画像から特徴画像を取得することで特徴画像位置を取得する(ステップS231)。
【0064】
本実施例を用いて具体的に説明する。図8(b)は対象画像51を拡大して示す外観図である。ステップS22で取得された対象画像51に対して、記憶部42に記憶されている基準画像データ421に基づき基準画像491aを左上から順に画素単位で逐次移動させつつ、基準画像491aと重複する対象画像の画像領域での類似している割合を類似度C(数式2により算出される値)として算出していく。数式2によって算出される類似度Cは、基準画像491aと対象画像51の画像領域との相関が高ければ1.0に近づき、相関が低ければ−1.0に近づく。すなわち、基準画像491aと対象画像51の画像領域が似ている(すなわち、類似度が高い)領域であれば1.0に近づき、似ていない(すなわち、類似度が低い)領域では−1.0に近づくものである。
【0065】
基準画像491aを対象画像51に対して走査した結果、最も類似度Cが1.0に近づいた領域で決定される画像領域を特徴画像とし、特徴画像位置を取得することができる。なお、最も類似度Cが1.0に近づいた領域を特徴画像としているのは、対象画像において基準画像と一致する画像領域に欠陥や撮像不良等が存在する場合、類似度Cが1.0とはならないためである。したがって、どの程度類似していれば特徴画像とするか、あらかじめ操作者等の経験則に基づき類似度Cの閾値を設定することが好ましい。このようにすることで、所定の類似度を有する画像領域を特徴画像として取得することができ、位置ずれ量の取得を好適に行うことができる。
【0066】
本実施例では、図8(b)において特徴画像511aが取得されたことを示している。同様に他の3つの基準位置画像491b、491c、491dを用いて特徴画像511b、511c、511dが取得された様子を図8(a)に示している。したがって、最終的に4つの特徴画像511a、511b、511c、511dが取得される。なお、図示の都合上、取得された各特徴画像をあらわす特徴的なパターンは省略している。
【0067】
そして、4つの特徴画像511a、511b、511c、511dに対して、右下の位置が特徴画像位置512a、512b、512c、512d(極座標)として取得される。なお、特徴画像位置としては、基準画像における基準画像位置に相当する特徴画像内での位置が特徴画像位置として取得される。そして、取得された4つの特徴画像位置512a、512b、512c、512dは基準画像位置と同様にステージ21上の位置をあらわす座標として記憶部42に一時的に記憶される。
【0068】
前述した手法により取得された特徴画像511a、511b、511c、511dは、上述したように被検査基板6の回転や被検査基板6上の欠陥等により必ずしも基準画像と完全に一致した画像領域として見つかるとは限らない。そのため、高精度に位置ずれ量を取得するため以降の処理ステップにより仮基準点位置510を設定する必要がある。
【0069】
被検査基板6の伸縮や回転による参照基板5に対する位置ずれ量を検出するため、伸縮倍率κと回転角θとの複数の組み合わせを設定する(ステップS232、ステップS233)。すなわち、伸縮倍率κ、回転角θを所定の分解能Δκ、Δθで変位させる。なお、伸縮倍率κを考慮する必要がない場合は、回転角θのみ設定するようにしてもよい。また、伸縮倍率κは参照基板に対する被検査基板の伸縮率をあらわすものであり、回転角θは、ステージ21の回転中心である基準点位置490を中心とする回転角をあらわす。
【0070】
続いて、推定基準位置設定部413により、それぞれの回転角θおよび伸縮倍率κの複数の組み合わせについて、参照テーブル424に記述されている相対位置情報を参照して、それぞれの特徴画像位置512a、512b、512c、512dからみた参照基板5における各基準点位置に相当する位置である4つの推定基準点位置513a、513b、513c、513dをステージ21における位置をあらわす座標として設定する(ステップS234)。
【0071】
具体的には、被検査基板6における複数の特徴画像位置の座標(x(Pi),y(Pi))に対して、参照テーブル424に記述された相対位置情報である(r(Pi),α(Pi))が関連づけられており、被検査基板6をθだけ回転させて、κだけ伸縮することで参照基板5に一致する場合、被検査基板6中の推定基準点位置となる座標(xi,yi)は数式4により算出することができる。ここで、iは特徴画像位置に付けられたインデックス番号をあらわす添字であり、本実施例では0≦i≦3の範囲をとる。
【数4】

【0072】
さらに、仮基準点位置設定部415により、各推定基準点位置513a、513b、513c、513dから仮基準点位置510を算出する(ステップS235)。仮基準点位置510の座標(O,O)は、各推定基準点位置513a、513b、513c、513dの座標からx座標,y座標についてそれぞれの平均を求めることで算出される平均位置の座標である。具体的には数式5を用いて算出することができる。したがって、仮基準点位置510は、ステージ21における位置をあらわす座標として算出される。
【数5】

【0073】
次に距離指標値算出部414が各推定基準点位置513a、513b、513c、513dと仮基準点位置510とから距離指標値を算出する(ステップS236)。距離指標値とは、ステージ21上における各推定基準点位置513a、513b、513c、513dの座標(xi,yi)と仮基準点位置510の座標(O,O)との位置ずれを評価するためのものであり、例えば、各推定基準点位置513a、513b、513c、513dと仮基準点位置510との距離の標準偏差を用いることができる。距離指標値として標準偏差を用いる場合の算出式を数式6に示す。ここで、hは推定基準点位置と仮基準点位置との距離をあらわす。なお、距離指標値として各推定基準点位置と仮基準点位置との距離の分散を用いてもよい。
【数6】

【0074】
なお、ここで数式7は数式6における各推定基準点位置513a、513b、513c、513dと仮基準点位置510との各座標間の距離から算出される平均をあらわし、数式8は数式6における推定基準点位置513a、513b、513c、513dと仮基準点位置510との各座標間の距離の平均をあらわしている。
【数7】

【数8】

【0075】
位置ずれ量取得部401は距離指標値を変数である評価値fに代入するとともに、距離指標値が算出された時の回転角θ、伸縮倍率κおよび、基準点位置490と仮基準点位置510との位置差分値を位置ずれ量425として記憶部42に記憶する(ステップS237)。なお、位置差分値とは、基準点位置490のXY座標と、仮基準点位置510のXY座標の符号付きの差分値である。そして、回転角θおよび/または伸縮倍率κについて所定の分解能Δκ、Δθで変位させるとともに、すべての回転角θおよび/または伸縮倍率κの組み合わせについて繰り返し処理が完了するまで処理が行なわれる(ステップS238、ステップS239)。
【0076】
ここで、処理が繰り返されるごとに、記憶部42に記憶されている評価値fと、直近で算出した距離指標値とを比較し、距離指標値の方が小さい場合は、評価値fに新たな距離指標値を代入するとともに、回転角θおよび/または伸縮倍率κおよび仮基準点位置の座標(O,O)を用いて位置ずれ量425を更新する。すなわち、記憶部42に記憶される位置ずれ量425は、逐次更新されるため回転角θと伸縮倍率κとのすべての組み合わせ数に応じたメモリ空間を確保する必要がない。したがって、回転角θと伸縮倍率κの組み合わせの数を増やしたとしても(すなわち、分解能を高くしたとしても)、位置ずれ量425を記憶可能にするメモリ空間だけでよく、使用するメモリ容量を増大することはない。
【0077】
上記ステップS232からステップS239までの処理を繰り返すことで、伸縮倍率κと回転角θのすべての組み合わせにおける最小の評価値fとなるときの位置ずれ量425を求めることができる(ステップS240)。位置ずれ量425が取得されるとステップS25に戻りステージ21の位置合わせのための補正量を算出し位置合わせが行なわれる。
【0078】
以上に説明したように、外観検査装置1では距離指標値を用いることで、回転角θと伸縮倍率κの組み合わせに応じた投票空間を確保する必要がなく、位置ずれ量425のみをメモリ領域に確保することで、最終的に被検査基板6の位置合わせを行うことができる。したがって、例えば位置合わせを高精度に行うため回転角θや伸縮倍率κの分解能を高くした場合でも、大きなメモリ容量を確保する必要がなく、メモリ容量が問題とならないため、分解能を高くした場合でも位置ずれ量を取得することができ、基板の位置合わせを確実におこなうことができる。
【0079】
次に図10および図11を用いて第2の実施形態について説明する。第1の実施形態とは、図10における位置ずれ量取得部401に不正特徴画像位置判定部514を備える点で異なり、残余の点については同様であるため、図3と同一の構成については同一符号を用いるとともに説明を省略する。また、図11においてもステップS337を有する点で異なり、残余の点については同様であるため、図9と同一のステップについては同一符号を用いるとともに説明を省略する。すなわち、第2の実施形態は、特徴画像位置取得部412において取得された特徴画像位置の有効性について判定を行う点に特徴を有するものである。以下に、第2の実施形態について説明を行う。
【0080】
第2の実施形態では、位置ずれ量取得部401に不正特徴画像位置判定部514を備える。不正特徴画像位置判定部514は、特徴画像位置取得部412で取得された特徴画像位置が適正か否かを判定する機能を有する。すなわち、特徴画像位置取得部412で取得された特徴画像位置が誤検出等により不正な特徴画像位置であると判定された場合、以後の処理に用いないようにするため削除される。
【0081】
また、第2の実施形態では、処理の流れとしてステップS337が追加されている。ステップ337は取得された特徴画像位置の有効性について判定を行うものである。具体的には、推定基準点位置と仮基準点位置との距離の値が、推定基準点位置と仮基準点位置と特徴画像位置を不正と判定し、不正な特徴画像位置を削除する。の距離の標準偏差に基づき設定される閾値よりも大きい場合、推定基準点位置に対応する
次に閾値の設定について説明する。特徴画像の位置を検出するための誤差を[−0.5,+0.5]の一様乱数と仮定すると、その標準偏差は約0.28555となる。したがって、特徴画像の位置がすべて正常に検出できているならば、推定される推定基準点位置のばらつきについても、標準偏差の1.75(0.50000÷0.28555)倍以内に収まっていると期待できる。そして、実験的に閾値としては推定基準点位置と仮基準点位置との距離の標準偏差に1.40ないし1.50倍の係数を掛けた値を用いることが適切であるという結果を得ることができた。さらに最適な値として、推定基準点位置と仮基準点位置との距離の標準偏差を√2(ルート2)倍した閾値を用いることが適切である。
このように閾値を設定し、不正な特徴画像位置を削除することで、以降の繰り返し処理では不正な特徴画像位置を用いないようにする。これにより、特徴画像位置として取得された位置が誤検出等であった場合の位置ずれ量の精度低下を防ぐことができる。
なお、閾値において係数を適宜設定することで、不正な特徴画像位置を削除する精度を調整することが可能である。例えば、係数を大きくすることで特徴画像位置を不正か否かを判定する基準を緩和することができる。
<変形例>
【0082】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記の実施の形態に限られるものではなく様々な変形が可能である。
【0083】
また、上記実施形態では、半導体基板の外観検査方法において位置合わせを行うための位置ずれ量の検出が行なわれているが、検査の対象となる対象物はこれに限られない。例えば、プリント配線基板、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板やフォトマスク等の検査において上述の位置ずれ量検出方法および外観検査方法が用いられてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、表示部に表示された画像に対して操作者が特徴的な画像領域である基準画像を指定しているがこれに限られるものではない。例えば、既知のアライメントマークを基準画像として用いることも可能である。
【0085】
また、位置ずれ量の検出技術については外観検査以外の分野に利用されてもよく、例えば、半導体基板や、プリント配線基板、フラットパネルディスプレイ基板の配線パターン等の露光に利用されてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、特徴画像位置を取得するための好適な例として正規化相関法を用いているが、これに限られず他の既知の手法を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る外観検査方法および位置ずれ量の検出方法は、被検査基板の外観検査を行うために、基準となる位置に対してXY方向、回転方向について高い分解能で位置合わせを必要とするような場合に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 外観検査装置
2 基板保持部
3 撮像部
4 コンピュータ
5 参照基板
6 被検査基板
21 ステージ
22 ステージ駆動部
41 演算部
42 記憶部
44 表示部
45 入力部
49 参照画像
51 対象画像
401 位置ずれ量取得部
402 参照テーブル生成部
403 検査部
412 特徴画像位置取得部
413 推定基準位置設定部
414 距離指標値算出部
415 仮基準点位置設定部
421 基準画像データ
422 基準画像位置座標
423 基準点位置座標
424 参照テーブル
425 位置ずれ量
490 基準点位置
491a、491b、491c、491d 基準画像
492a、492b、492c、492d 基準画像位置
510 仮基準点位置
511a、511b,511c、511d 特徴画像
512a、512b、512c、512d 特徴画像位置
513a、513b、513c、513d 推定基準点位置
514 不正特徴画像位置判定部
W 基板
θ 回転角
κ 伸縮倍率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージに載置された参照基板を撮像し取得した複数の基準画像に対応する前記ステージ上での位置を示す基準画像位置と、前記ステージの回転中心である基準点位置とのそれぞれの相対位置情報を参照テーブルとして生成する準備工程と、
被検査基板を撮像し取得した前記基準画像に画像情報が近似する特徴画像の前記ステージ上での位置をあらわす特徴画像位置を取得する特徴画像位置取得工程と、
前記参照テーブルを参照して、各前記特徴画像位置からみた前記基準点位置に相当するそれぞれの前記ステージ上での位置を推定基準点位置として設定する推定基準点位置設定工程と、
前記推定基準点位置設定工程で取得したそれぞれの前記推定基準点位置の平均位置を仮基準点位置として設定する仮基準位置設定工程と、
前記基準点位置を中心とする回転角を所定の分解能で変位させつつ、前記回転角ごとに前記推定基準点位置と前記仮基準点位置との距離の標準偏差または距離の分散をそれぞれ算出する距離指標値算出工程と、
前記距離指標値算出工程で算出される距離の標準偏差または距離の分散が最小となるときの回転角および仮基準点位置と前記基準点位置との位置差分値を位置ずれ量として取得する位置ずれ量取得工程と、を備えることを特徴とする位置ずれ量検出方法。
【請求項2】
前記特徴画像位置取得工程により取得された前記特徴画像位置が、前記基準画像の画像情報が近似する特徴画像の位置として取得されたか否かを判定する不正特徴画像位置判定工程とをさらに備え、
前記不正特徴画像位置判定工程は、前記推定基準点位置と前記仮基準点位置との距離の値が、前記距離の標準偏差に基づき設定される閾値よりも大きい場合、前記推定基準点位置に対応する特徴画像位置を不正と判定し、不正な特徴画像位置を削除することを特徴とする請求項4に記載の位置ずれ量検出方法。
【請求項3】
前記特徴画像位置取得工程の前に、前記被検査基板に対してプリアライメントを行うプリアライメント工程をさらに備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の位置ずれ量検出方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の位置ずれ量検出方法を用い、
前記位置ずれ量取得工程により取得された前記位置ずれ量に基づき、前記被検査基板の位置合わせを行い、前記被検査基板の外観検査を行う検査工程と、
を備えることを特徴とする外観検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−47463(P2012−47463A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186958(P2010−186958)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】