説明

位置情報提供システム

【課題】 路側に多くのセンサーを配備設置することなく、多くの移動体の所在位置を認知および提供できる位置情報提供システムを提供すること。
【解決手段】 小型電波発信器11からの電波を受信するアンテナ17と、この受信電波を以後の処理方式に合った周波数に変換する周波数変換部18と、アナログ信号をディジタル信号に変換するA−D変換部19と、受信電波の到来方向を推定処理する到来方向推定処理部20と、受信電波の画像処理と前記移動体12との距離を画像演算処理する画像化処理部21と、受信電波の受信範囲内の背景を撮影する撮影部22と、その背景と画像化処理部21による電波の可視化画像とを合成処理する画像合成処理部23と、受信電波の発信位置が位置情報として取得対象か否かを判定する保護対象判定処理部24と、取得された固有情報を解読するRFID受信解読処理部25と、カーナビゲーション位置情報26と固有情報とをVICS入出力部27に出力する位置情報生成処理部28などとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上の移動体、特に、車両や人などの所在位置を認知し、その位置情報を提供する位置情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシステムとしては、無線タグ(RF−ID)を用いた物流分野の管理システムがあるが、この管理システムは特定された車両や人など、個々の移動体の位置を認知するシステムではなかった。
【0003】
ただ、この物流分野などでは、GPSを利用した車両の位置管理は行われているが、これも物流などの個別分野単独での展開にとどまっていた。
【0004】
その理由として、個々の移動体の所在位置を認知するためには、地上、すなわち、路側に多くのセンサーを配備設置する必要があり、このことは、経済面からみても現実的ではなく実現困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、路側に多くのセンサーを配備設置することなく、多くの移動体の所在位置を認知および提供できる位置情報提供システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の位置情報提供システムは、移動体に携帯させたIDを付けた小型電波発信器からの発信電波を受信するアンテナと、このアンテナによる受信電波を以後の処理方式に合った周波数に変換する周波数変換部と、この周波数変換されたアナログ信号をディジタル信号に変換するA−D変換部と、前記アンテナによる受信電波の到来方向を推定処理する到来方向推定処理部と、前記アンテナによる受信電波を画像処理し、さらに、受信された電波強度によって前記移動体との距離を演算処理する画像化処理部と、前記アンテナによる受信電波の受信範囲内の背景を撮影する撮影部と、この撮影部により撮影された背景と前記画像化処理部で画像処理された電波の可視化画像とを合成処理する画像合成処理部と、前記受信電波の発信位置が位置情報として取得する対象か否かを判定する保護池沼判定処理部と、前記A−D変換部によって取得された固有情報を解読するRFID受信解読処理部と、カーナビゲーション位置情報を取得して、この位置情報と前記解読された固有情報とをVICS(Vehicle Information and Communication System)入出力部に出力する位置情報生成処理部などとからなる電波発射源可視化装置を車両などの移動体に搭載していることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の位置情報提供システムにおいては、前記アンテナは、複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナであることを特徴とするものである。
【0008】
さらに、本発明の位置情報提供システムにおいては、前記位置情報生成処理部からのVICS入出力部に出力された前記固有情報が付加された位置情報は、前記VICS入出力部からVICS/インターネット網を介して、位置情報提供サーバにおくられ、さらに、複数のユーザーに送られることを特徴とするものである。
【0009】
さらに、本発明の位置情報提供システムにおいては、前記複数のユーザーは、前記小型電波発信器を携帯している携帯ユーザーおよびインターネット利用者や物流管理センターなどの特定ユーザーであることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、本発明の位置情報提供システムにおいては、前記位置情報提供サーバは、特定ユーザーを抽出処理する特定ユーザー抽出処理部を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動体個々に固有のIDを付けた小型電波発信器を携帯させており、また、移動体個々の位置情報が特定して判別できる電波発射源可視化装置を、カーナビゲーションと連動させて、車両などの移動体に搭載させているので、路側にセンサーを配備設置することなく、移動体個々の所在位置を認知することができ、さらに、その認知した位置情報を必要とするユーザーにリアルタイムで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態につき、図1乃至図2を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明による実施形態の情報伝達手順を示した説明図で、ブロックAには、携帯電話や小型電波発信器を携帯している歩行者1や車2などの移動体3の所在位置が、電波発射源可視化装置(後記)を搭載した車4の運転者によって認知され、その認知された位置情報がアンテナ5に送られている状況が示されている。
【0014】
そして、このアンテナ5からの発信電波はVICS回線を介してVICS/ITSネットワーク6に送られ、ここで、認知された移動体3の特定情報であるID情報が位置情報に付加されて、位置情報サービスセンター7に送られる。
【0015】
さらに、この位置情報サービスセンター7からは、送られて来た位置情報を必要としているところに、例えば、歩行者1が子供であれば、その保護者8に子供の所在位置が提供され、また、宅配便の情報センター9などには宅配便の現在位置などの物流管理情報が提供されるシステム構成になっている。
【0016】
なお、移動体3のID情報は、例えば、歩行者1であれば、歩行者1の氏名や年齢などの個人情報であり、一方、歩行者以外では、特定された宅配便の依頼人氏名などである。
【0017】
また、ブロックA内に示されているブロックBには車4からは塀10で遮られて移動体3が見通せない状況が示されているが、このような状況においても、車4には、前記したように、電波を利用した電波発射源可視化装置(後記)がナビ(不図示)と連動された状態で搭載されているので、この電波発射源可視化装置(後記)が電波発射源である移動体3からの回折電波を捉えることができ、そして、車4の運転者は移動体の所在位置をナビの画面を通して認知できるシステム構成になっている。
【0018】
このようなシステム構成において、子供や老人などの歩行者1、および車2などの移動体3それぞれに固有のIDを付けた小型電波発信器(後記)が携帯されているので、この小型電波発信器(後記)から発信する電波が車4に搭載されている電波発射源可視化装置によって受信され、その受信電波の発信位置が演算処理される。
【0019】
この演算処理された発信位置の位置情報は、連動しているカーナビゲーション(不図示)の画面上に表示され、車4の運転者は、この表示から、移動体3が所在する位置情報と移動体固有のID情報とを認知することができる。
【0020】
同時に、この位置情報とID情報とは、VICSなどのナビの通信手段からアンテナ5およびVICS/ITSネットワーク6を介して、移動体3の位置情報を必要とするユーザー8に提供される、一方で、物流管理の分野においては宅急便(登録商標)が位置する位置情報が物流管理センター9に提供される。
【0021】
図2は、本発明による位置情報提供システムの構成ブロック図で、このシステム構成は、小型電波発信器11を携帯している歩行者や車両などの移動体12と、位置情報抽出機能を有する電波発射源可視化装置(後記)が搭載されている車両13、およびネットワークを有する位置情報提供システム14との3ブロックに分けられ、さらに、前記車両13のブロックは小型電波発信器11からRFID付電波を受信処理する機能(技術)を有する前記電波発射源可視化装置15とカーナビゲーション機能、すなわち、位置情報認知機能やVICS機能などを有する車両積載機材16との2ブロックに区分して示されている。
【0022】
これらのうち、電波発射源可視化装置15は、小型電波発信器11から固有のRFID付電波を受信する複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナ17と、その受信電波を受けて以後の処理方式に合わせるために、ある周波数にダウンコンバートする周波数変換部18と、周波数変換されたアナログ信号をディジタル信号に変換するA−D変換部19と、発信電波の到来方向を探知推定する到来方向推定処理部20と、受信電波を画像処理し、さらに、受信された電波強度により移動体12との距離を演算処理する画像化処理部21と、この画像化処理部21から受けた電波の可視化画像と、撮影部22によって撮影された撮影画像、すなわち、電波受信範囲内の周辺を撮影した背景画像とを合成する画像合成処理部23などとから構成されている。
【0023】
さらに、電波発射源可視化装置15側には、到来方向推定処理部20と画像化処理部21および画像合成処理部23とからの出力を受けて、受信電波の発信位置が位置情報として取得する対象か否かの判定を行う保護対象判定処理部24と、A−D変換部19で取得された固有情報を解読するRFID受信解読処理部25と、車両積載機材16からカーナビゲーション位置情報26を取得して、そのカーナビゲーション位置情報26と前記固有情報とをVICS入出力部27に出力する位置情報生成処理部28とが設けられている。
【0024】
また、位置情報提供システム14においては、VICS入出力部27からのVICS出力が、VICS/インターネット網29を介して、位置情報提供サーバ30に送られて保存され、そして、特定ユーザー抽出処理部31で特定ユーザーの抽出が行われる。
【0025】
さらに、VICS出力は特定ユーザー抽出処理部31で抽出された特定ユーザーや、小型電波発信器を携帯している携帯ユーザーおよびインターネット利用者などに提供されるシステム構成になっている。
【0026】
このようなシステム構成において、いま、移動体12が携帯している小型電波発信器11からは固有のIDを有する電波が発せられている。
【0027】
そして、電波発射源可視化装置15を搭載している車両13側では、その電波がアレーアンテナ17で受信され、この受信電波の到来方向が探知されるが、この到来方向はアレーアンテナ17の中心を原点とした方位角および仰角で表される。
【0028】
また、この受信電波は周波数変換部18に入力されて、以後の処理方式に合ったある周波数にダウンコンバートされ、さらに、この周波数変換されたアナログ信号はA−D変換部19に送られてディジタル変換され、到来方向推定処理部20に入力されるが、この到来方向推定処理部20ではアレーアンテナ17による受信電波の方位角および仰角から到来方向が推定処理される。
【0029】
この受信電波の到来方向を推定処理した後、画像化処理部21で受信電波の信号強度から電波発信源である移動体12との距離が演算処理され、次いで、画像合成処理部23において、撮影部22で撮影された電波受信範囲内の背景画像と受信電波の発信源である移動体12の画像位置とが合成処理される。
【0030】
同時に、到来方向推定処理部20からの到来方向と、画像化処理部21からの画像強度および画像合成処理部23による画像位置とが、保護対象判定処理部24に送られ、ここで、移動体12が携帯している小型電波発信器11からの発信位置が位置情報として取得する対象であるか否かの判定が行われる。
【0031】
なお、この判定は、「周波数が一致しているか」、あるいは、「到来方向が前方からか後方からか」などで判断される。
【0032】
一方、A−D変換部19で取得されたディジタル情報信号は、RFID受信解読処理部25に入力され、電波発信源である小型電波発信器11の固有情報が解読される。
【0033】
そして、小型電波発信器11からの発信位置が、前記保護対象判定処理部24により、位置情報として取得する対象であると判断された場合、カーナビゲーション画面(不図示)に表示されているカーナビゲーション位置情報26を位置情報生成処理部28で取得し、その位置情報と電波発信源である小型電波発信器11の固有情報をVICS入出力部27に出力する。
【0034】
VICSに出力された小型電波発信器11の位置情報と固有情報とは、VICS/インターネット網29を介して、位置情報提供サーバ30に送られ、ここで、地図上に表示するなどの処理が施される。
【0035】
このように処理された位置情報は、一般インターネットユーザーおよび小型電波発信器11の携帯ユーザーや、特定ユーザ抽出処理部31で抽出された特定ユーザーなどに、取得対象として特定されている移動体3の所在位置が位置情報として提供される。
【0036】
このように、本発明の実施形態にかかる位置情報提供システムにおいては、移動体個々に固有のIDを付けた小型電波発信器を携帯させ、さらに、視覚的に視認できない移動体の所在位置でも、認知しうる電波発射源可視化装置を車両などにカーナビゲーションと連動させて搭載しているので、地上の路側にセンサーを配備設置することなく、移動体個々の所在位置を認知でき、また、必要とするユーザーにリアルタイムで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による実施形態の情報伝達手順を示した説明図である。
【図2】本発明による位置情報提供システムの構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0038】
1 歩行者
2,4 車
3,12 移動体
5 アンテナ
6 VICS/ITSネットワーク
7 位置情報サービスセンター
8 保護者
9 情報センター
10 塀
11 小型電波発信器
13 車両
14 位置情報提供システム
15 電波発射源可視化装置
16 車両積載機材
17 アレーアンテナ
18 周波数変換部
19 A−D変換部
20 到来方向推定処理部
21 画像化処理部
22 撮影部
23 画像合成処理部
24 保護対象判定処理部
25 RFID受信解読処理部
26 カーナビゲーション位置情報
27 VICS入出力部
28 位置情報生成処理部
29 VICS/インターネット網
30 位置情報提供サーバ
31 特定ユーザー抽出処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に携帯させたIDを付けた小型電波発信器からの発信電波を受信するアンテナと、このアンテナによる受信電波を以後の処理方式に合った周波数に変換する周波数変換部と、この周波数変換されたアナログ信号をディジタル信号に変換するA−D変換部と、前記アンテナによる受信電波の到来方向を推定処理する到来方向推定処理部と、前記アンテナによる受信電波を画像処理し、さらに、受信された電波強度によって前記移動体との距離を演算処理する画像化処理部と、前記受信電波の受信範囲内の背景を撮影する撮影部と、この撮影部により撮影された背景と前記画像化処理部で画像処理された電波の可視化画像とを合成処理する画像合成処理部と、前記受信電波の発信位置が位置情報として取得する対象か否かを判定する保護対象判定処理部と、前記A−D変換部によって取得された固有情報を解読するRFID受信解読処理部と、カーナビゲーションゲーション位置情報を取得して、この位置情報と前記解読された固有情報とをVICS入出力部に出力する位置情報生成処理部とを含んでなる電波発射源可視化装置を移動体に搭載していることを特徴とする位置情報提供システム。
【請求項2】
前記アンテナは、複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナであることを特徴とする請求項1記載の位置情報提供システム。
【請求項3】
前記位置情報生成処理部からのVICS入出力部に出力された前記固有情報が付加された位置情報は、前記VICS入出力部から通信網を介して、位置情報提供サーバにおくられ、さらに、複数のユーザーに送られることを特徴とする請求項1記載の位置情報提供システム。
【請求項4】
前記複数のユーザーは、前記小型電波発信器を携帯している携帯ユーザー、インターネット利用者または特定ユーザーであることを特徴とする請求項3記載の位置情報提供システム。
【請求項5】
前記位置情報提供サーバは、特定ユーザーの情報を抽出処理する特定ユーザー抽出処理部を有することを特徴とする請求項3記載の位置情報提供システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−248422(P2007−248422A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76288(P2006−76288)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】