説明

位置把握システム

【課題】低出力の通信手段を用いて、被管理者の位置情報を把握することができるとともに、監視エリアの変更に対して容易に対応することができる位置把握システムを提供する。
【解決手段】作業者12に装着される送受信機21から受信した位置情報を処理し、その処理に基づいて作業者12の位置を把握する監視センタ15を備える。送受信機21と監視センタ15との間には、それらの間の信号の伝達を中継する中継装置14を設ける。作業者12の位置情報に基づいて作業者12が仮想エリアの外に逸脱したことを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、登下校中や校内にいる児童、屋外の作業場の作業者等の被管理者を、少数の管理者のもとで位置把握できるようにした位置把握システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下校中の児童の位置を把握して、保護者や学校関係者に連絡するようにした防犯システムとして、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、児童が携帯するZigBee端末としての携帯電話機からの位置情報を受信する監視センタが設けられている。そして、監視センタにおいて、携帯電話機からの位置情報に基づいて、児童が集団で下校している状態を監視するとともに、児童が単独になる地点及び時刻を予測して、その予測内容を保護者や学校関係者に連絡するようになっている。
【0003】
また、特許文献1に記載の実施例2においては、監視センタに異常を判定する機能が付加されている。そして、監視センタにおいて、児童が所定の通学路上を下校しているか否かを判別して、通学路から所定距離以上逸脱したときに、保護者や学校関係者に異常状態を連絡するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−193710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この特許文献1に記載された従来の防犯システムを作業場における作業者の位置把握に適用しようとした場合、作業者にPHS(Personal Handyphone System)等の携帯電話機を所有させる必要がある。従って、システムの稼働にともなって、位置情報の発信等のために通信費用が発生することになる。特に、同時に多数の作業者の管理を行う場合には、その費用が作業者ごとに発生し、運用コスト上不都合であった。また、基地局の位置によって通信エリアが制約されることから、作業場に対応する管理エリアを柔軟に設定することができず、従って作業場の変更に容易に対応することができないという問題もあった。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、被管理者の位置情報の把握をローコストで行うことができるとともに、管理エリアの変更に対して容易に対応することができる位置把握システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明においては、被管理者に装着される送信機から受信した位置情報に基づき、被管理者の位置を地図とともに表示部に表示させるようにした位置把握システムにおいて、前記地図上に仮想エリアを設定するとともに、その仮想エリアを前記地図とともに表示部に表示させるようにした設定部と、前記位置情報に基づき、被管理者が前記仮想エリアの外に逸脱したことを判別する判別部と、その判別部による判別結果に基づき、被管理者の逸脱を報知する報知部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
前記の構成において、前記送信機と処理装置との間には、それらの間の信号の伝達を中継する中継手段を設けることが好ましい。
また、前記の構成において、前記送信機は、受信機能を有し、外部からの信号によって起動及び停止されるように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、被管理者の位置情報の把握をローコストで行うことができるとともに、管理エリアの変更に対して容易に対応することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態の位置把握システムの概要を示す構成図。
【図2】図1の位置把握システムにおける送受信機を示す斜視図。
【図3】図1の位置把握システムにおける送受信機の電気構成を示すブロック図。
【図4】図1の位置把握システムにおける中継器を示す側面図。
【図5】中継装置の電気構成を示すブロック図。
【図6】図1の位置把握システムにおける監視センタの処理装置の電気構成を示すブロック図。
【図7】監視センタ及び中継装置の記憶部に記憶された作業者情報を示す説明図。
【図8】中継装置及び監視センタにおける表示部の表示画面を示す図。
【図9】送受信機と中継装置と監視センタとの間におけるジョブフローを示す図。
【図10】送受信機の動作を示すフローチャート。
【図11】中継装置の動作を示すフローチャート。
【図12】監視センタの動作を示すフローチャート。
【図13】第2実施形態の位置把握システムにおける監視センタの動作を示すフローチャート。
【図14】第3実施形態の位置把握システムにおける監視センタの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した位置把握システムの第1実施形態を、図1〜図12に従って説明する。
【0012】
この第1実施形態においては、図1に示すように、屋外の作業場11に多数の被管理者としての作業者12と、単数または複数の管理者としての監督者13とが配置される。そして、その作業場11の状態を作業場11内または作業場11の近傍に配置された中継手段としての中継装置14において監視できるとともに、その中継装置14を介して監視センタ15において監視して管理できるようになっている。なお、監視センタ15及び中継装置14において、前記作業場11を含むように後述の仮想エリア80が設定され、その仮想エリア80内の作業者を常時監視できるようになっている。
【0013】
そこで、以下に、第1実施形態の位置把握システムの構成及び作用を詳細に説明する。
前記作業者12及び監督者13はそれぞれ1台の図2及び図3に示す送信機としての送受信機21を衣服に装着する。この送受信機21は、GPS信号の受信機能,位置情報としての測位データの作成機能,GPS信号以外の各種信号の受信及び発信の機能と、アラートの報知機能等を備えている。
【0014】
前記送受信機21は、本体22と、その本体22を前記衣服に取り付けるための取付具23とよりなる。
前記送受信機21の本体22の前面には、この送受信機21の所有者の氏名34,所有者を示す識別コード35及び所有者の顔写真36が表示されている。本体22の端部には充電コネクタ37が設けられている。
【0015】
次に、図3において送受信機21の本体22に内装された電気的構成について説明する。
GPS受信部44は、衛星からGPS(Global Positiong System:全地球測位システム)信号を受信する。送受信機21全体の動作を制御する制御部41は、位置データ作成部42を有し、その位置データ作成部42は前記GPS受信部44が受信したGPS信号から、緯度及び経度で表される自身の位置情報である測位データFを作成する。制御部41は記憶部43を有し、その記憶部43には後述の図10に示すプログラムのデータや各種の一時データ等を記憶する。送信部45は前記中継装置14及び他の送受信機21に向けて自身の測位データFと識別コードCとを含む位置データDを送信する。受信部46は、前記中継装置14及び他の送受信機21からの信号を受信する。電源47は二次電池よりなり、前記充電コネクタ37から入力された電力を蓄える。そして、この電源47は本体22内の電装品に対して電力を供給する。ブザー48及びランプ49は後述のアラートを報知するためのものである。制御部41は時間カウントを行うためのタイマ50を備え、このタイマ50が一定時間カウントするごとに、例えば10秒カウントするごとに制御部41からGPS起動信号が出力されて、前記GPS受信部44がGPS信号の受信動作を行うようになっている。なお、このGPS起動信号の出力間隔は任意に設定可能である。センサ33は取付具23に対する本体22の装着状態を検出し、制御部41はその検出を条件にして前記中継装置14からの信号により起動及び停止される。
【0016】
そして、前記送受信機21は、マルチホップ機能を構成するアドホックネットワーク,いわゆるZigBeeによる通信ネットワークを構成するようになっている。ここで、監督者13所有の送受信機21のうちのひとつがコーディネータの役割を果たし、他はルータあるいはエンドデバイスの機能を果たす。そして、通信を司る低層,ZigBee Allianceを規定する中層,ユーザが利用する上層よるなる構造のデータが転送される。従って、送受信機21は、送受信機能を備え、アクセスポイントの介在なしに他の送受信機21と相互に接続される。特にこの第1実施形態においては、図1からも明らかなように、各送受信機21がそれぞれ単独で他の送受信機21に接続されるメッシュ型の通信ネットワークが構成されるようになっている。
【0017】
次に、図4及び図5に基づいて前記中継装置14の構成について説明する。
前記中継装置14は、ボディ部51を備え、その下部には移動用のキャスタ52が取り付けられている。従って、中継装置14は自在に移動して設置位置を変更できる。前記ボディ部51の上面は設置面53となっており、その設置面53には制御装置を構成するノート型パーソナルコンピュータ(以下、単にパソコンという)54が設置されている。従って、パソコン54は、制御部55,記憶部56,ディスプレーよりなる表示部57及びキーボードよりなる操作部58を備えている。前記記憶部56には図11に示すプログラムのデータや一時データを保存する。
【0018】
前記ボディ部51の上部には、太陽電池パネル59が前記設置面53を覆うように支持されている。従って、太陽電池パネル59はパソコン54のための日除けや屋根の機能を果たしている。この太陽電池パネル59によって発電された電力は、前記ボディ部51内の二次電池よりなる電源60に蓄えられる。そして、この電源60により前記パソコン54が動作される。受信部61は、前記送受信機21からの信号を直接受信するとともに、監視センタ15からの信号をパケット通信により携帯電話網17を介して受信する。送信部62は、前記送受信機21に対して信号を直接送信するとともに、監視センタ15に対して前記パケット通信により携帯電話網17を介して信号を送信する。従って、この中継装置14は監視センタ15と送受信機21との間の中継装置能を果たす。
【0019】
次に、図6に基づいて、前記監視センタ15の構成を説明する。
監視センタ15の設定部,判別部としての制御装置71は、制御部72,記憶部73,表示部74及び操作部75を備えている。受信部76はパケット通信により携帯電話網17を介して前記中継装置14からの信号を受信し、送信部77はパケット通信により中継装置14に対して信号を送信する。報知部としての報知装置78はアラートを報知する。前記記憶部73は図12に示すプログラムデータや一時データを保存する。なお、前記中継装置14の制御装置としてのパソコン54の機能は、この監視センタ15の制御装置71と基本的に同じ機能を有するが、それらの動作ソフトは一部異なる。
【0020】
次に、前記のように構成された第1実施形態の位置把握システムの動作を説明する。
さて、この位置把握システムにおいては、図9に示すように、作業者12及び監督者13が所有する送受信機21のGPS受信部44がGPS信号を受信すると、その送受信機21の位置データ作成部42が自身の位置を緯度及び経度を示す位置情報としての測位データFを作成し、その測位データFを送受信機21自身の識別コードCとともに位置データDとして送信する。そして、その送信された位置データDは、送受信機21の通信ネットワークを介して中継装置14に受信され、あるいは中継装置14に直接受信される。中継装置14はその受信データを処理し、表示部57に表示された図8に示す地図82上で仮想エリア80とともに作業者12及び監督者13の位置を表示する。
【0021】
また、中継装置14は受信したデータを監視センタ15に対して送信する。監視センタ15においては、受信したデータを処理して、中継装置14と同様に表示部74に表示された地図82上で仮想エリア80とともに作業者12及び監督者13の位置を表示する。そして、監視センタ15は作業者12が作業場11と対応する仮想エリア80から逸脱したりした場合には、監視センタ15内においてアラートを報知するとともに、アラート信号を中継装置14に対して送信し、中継装置14においてもアラートが報知される。さらに、そのアラート信号は中継装置14から送受信機21に送信されて、逸脱該当作業者12及び監督13者の送受信機21のブザー48及びランプ49が動作される。
【0022】
そこで、以下にさらに詳細を説明する。図10に示すルーチンは、送受信機21の記憶部43に格納されたプログラムが制御部41の制御のもとに進行するものである。
図10において、受信部46が中継装置14からオン信号を受信すると(S1)、送受信機21の取付具23に対する本体22の装着状態がセンサ33によって検出されていることを条件として、制御部41のタイマ50が起動される(S2)。そして、そのタイマ50のカウントにより10秒経過されるごとに(S3)、GPS受信部44が動作されて、GPS信号が受信され(S4)、位置データ作成部42において、自身の位置を表す測位データF(図3に示す)が作成される(S5)。この測位データFは、自位置の緯度及び経度で表される。この実施形態においては、緯度をX,経度をYとしている。そして、その測位データF及び自身の識別コードCを含む位置データDが他の送受信機21及び中継装置14に向けて発信される。
【0023】
次いで、センサ33がオフされたか否か、つまり送受信機21の本体22が取付具23から外れたか否かが判別され(S7)、外れた場合には、その情報が中継装置14に向けて発信される(S8)。つまり、何らかの原因により送受信機21の本体22が取付具23から外され、作業者12に対する管理が不可能になる事態が生じた場合は、その管理不可能事態を示す信号が中継装置14に向けて発信される。
【0024】
次いで、送信部45が中継装置14から前記の送受信機21の外れや後述の逸脱者発生等の異常事態に対応したアラート情報を受信したか否かが判別される(S9)。アラート情報を受けた場合には、アラート情報受信終了の判別までブザー48が鳴動するとともにランプ49が点滅して、アラートが報知される(S10,S11)。次いで、中継装置14からのオフ信号が受信されたか否かが判別され(S12)、受信にともない前記制御部41及びそのタイマ50が停止されて、送受信機21の作動が終了する。オフ信号が受信されない場合は、プログラムがS3に戻って、タイマ50による10秒のカウントを待つ。
【0025】
前記中継装置14においては、図11に示すルーチンが実行される。このルーチンの実行は、パソコン54の記憶部56に格納されたプログラムが制御部72の制御のもとに実行されるものである。
【0026】
パソコン54の起動スイッチ(図示しない)がオンされると、前記プログラムの実行が開始され(S21)、送受信機21からの位置データDの受信が待たれる(S22)。そして、受信にともない、その位置データDが記憶部56に記憶され(S23)、その位置データD中の測位データFが記憶部56に記憶された地図データと照合されて、表示部である画面の地図上において表示される(S24)。なお、この表示内容や記憶部56における位置データDの処理動作は監視センタ15の動作と同じなので、後述の監視センタ15の作用とともに詳述する。
【0027】
これと同時に、前記位置データDがパケット通信を利用して送信部62から携帯電話網17を介して監視センタ15に向けて送信される。次いで、受信部61が監視センタ15から異常事態を示すアラート情報を受信したか否かが判別され、受信ととともに、そのアラート情報を処理して(S27)、その処理結果を送受信機21に向けて送信する(S28)。送受信機21はこの情報を受けて、前記S27処理ステップにおいてアラートのための処理を行う。
【0028】
次いで、パソコン54の停止等の動作にともなうプログラム実行の終了動作の有無が判別され(S29)、終了動作が判別された場合は、プログラム実行が終了される(S30)。終了動作が行われない場合は、前記S22に戻る。
【0029】
前記監視センタ15においては、図12に示すルーチンが実行される。このルーチンの実行は、制御装置71の記憶部73に格納されたプログラムが制御部72の制御のもとに実行されるものである。
【0030】
監視センタ15の制御装置71の起動スイッチ(図示しない)がオンされると、図12に示すプログラムの実行が開始され(S51)、中継装置14からの位置データDの受信が待たれる(S52)。このとき、作業場11に対応して、記憶部73に記憶された地図上には、図8に示す仮想エリア80があらかじめ設定されている。仮想エリア80は、2本の緯度X1,X2と、2本の経度Y1,Y2を設定することにより、それらの緯度X1,X2線と、経度Y1,Y2線とに囲まれたエリアである。この仮想エリア80のデータは、制御装置71と起動とともに前記中継装置14に送信され、中継装置14においても仮想エリア80が設定される。
【0031】
そして、位置データDの受信にともない、そのデータ内容が記憶部73に記憶される。この場合、図13に示すように、記憶部73の所定の領域には、各作業者12ごとの番地が作業者氏名N(氏名34と同じ)前記及び識別コードCとともに設定されている。その各番地には、作業者12の現在位置を示す測位データFを記憶する領域が割り当てられている。そして、中継装置14から各作業者12の位置データDを受信するごとに、測位データFが最新のものに書き換えられて、新たに記憶される(S53)。書き換えられた古い測位データFは、前記記憶部73の図示しない別の領域に作業者氏名及び識別コードとともに、履歴情報として保存される。次いで、最新の測位データFが記憶部73に記憶された地図データと照合されて、送受信機21を有する作業者12及び監督者13が図8に示すように画面79上において地図とともに表示される(S54)。この場合、作業者12、監督者13はそれぞれ異なる色の丸等のマークを用いて表示される。図11に示す中継装置14の処理ステップS23及びS24は、この処理ステップS53及びS54の動作と同様である。
【0032】
次いで、作業者12が仮想エリア80から逸脱したか否かが判別される(S55)。この判別は、各作業者12の最新の測位データFが前記仮想エリア80を区画する緯度X1,X2線及び経度Y1,Y2線の内側に位置するか否かを演算して実行される。そして作業者12の仮想エリア80からの逸脱にともない、逸脱した作業者12のマークが目立つ色(例えば、赤の点滅)に切り換えられ、同時に監視センタ15の報知装置78からアラートが発せられるとともに、アラート情報が中継装置14に対して送信される(S56)。従って、中継装置14のパソコン54の内蔵スピーカ(図示しない)がアラートを報知するとともに、監督者13全員及び逸脱該当作業者12の送受信機21のブザー48及びランプ49がアラート報知を行う。次いで、逸脱した作業者12の直近に位置する監督者13、つまり逸脱作業者12に最も近い測位データFを有する監督者13が探し出されて(S57)、表示が点滅等に切り換えられる。また、画面79の上部には、逸脱者の氏名Nが表示される(S58)。そして、探し出された監督者13の携帯電話に対して逸脱者の存在を知らせる電子メールが送信される。
【0033】
S55において逸脱者が存在しないと判別された場合、S59において監督者13に対して電子メールが送信された後は、システムに不具合あるか否か、例えばいずれかの送受信機21において本体22が取付具23から外されたか否かが判別される(S60)。この不具合の判別には、他の不具合、例えば中継装置14の機能が停止して、中継装置14からの信号が途絶えた場合も含まれる。そして、不具合が存在する場合は、監視センタ15内においてアラート報知されるとともに、中継装置14に対してアラート情報が送信される(S61)。そのため、中継装置14は、監督者13に対してアラート信号を送信し、監督者13の送受信機21がアラートを報知する。その後、プログラム実行の終了動作が判別され(S62)、終了動作が判別された場合は、プログラム実行が終了される(S63)。終了動作が行われない場合は、前記S22に戻る。
【0034】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 作業者12の測位データFを取得するために、送受信機21が相互に連絡される通信ネットワークと、そのネットワークのアドホップ機能とを利用している。このため、測位データF取得のためにPHS電話網や携帯電話網を用いる必要がなく、まして、アンテナ設置が必要になることはなく、従って、測位データF取得のための費用発生を防止でき、ローコストのシステム稼働が可能になる。
【0035】
(2) 前記のように、送受信機21が相互に連絡される通信ネットワークと、そのネットワークのアドホップ機能とを利用して、位置データDを転送するようになっている。従って、各送受信機21の信号を遠方まで到達させる必要はなく、このため、各送受信機21を低パワーで動作させればよく、電力消費を抑えることができ、送受信機21の長時間運転が可能となる。
【0036】
(3) 作業者12及び監督者13の測位データFをGPSデータから取得するため、作業者12及び監督者13の位置を電波状況(例えば電離層の状況)に関係なく正確に、かつリアルタイムに把握することが可能になり、作業者12の管理を有効に行うことができる。従って、監督者13の人数を少なくすることが可能になり、このため、前記と同様にローコストを達成できる。
【0037】
(4) 前記送受信機21は、本体22が取付具23から送受信機21の使用中に外された場合は、監督者13等に対してアラートが発生されるようになっている。従って、取付具23を作業者12の衣服に固定すれば、本体22の取り外しを直ちに認識できて、管理不能状態の発生等を防止することができる。
【0038】
(5) 送受信機21は設定された時間ごと(10秒ごと)にGPS信号を受信して、測位データFを発信するようになっている。このため、電源電力の浪費を防いで、送受信機21の長時間の稼動が可能となる。
【0039】
(6) 送受信機21の起動及び停止が外部から行われるようになっている。このため、作業者12が何らかのミス等により不必要時に送受信機21を起動してしまうことを防止できて、無駄な電力の消費を回避できる。また、逆に、送受信機21の必要時に、例えば作業者12が送受信機21を停止してしまうようなことを防止でき、管理不能に陥ることを防止できる。
【0040】
(7) 作業場11と監視センタ15との間に中継装置14が介在されているため、作業場11と監視センタ15とが遠距離を隔てていても、監視センタ15において作業場11を監視できる。従って、監視センタ15において、複数の作業場11を監視することも可能となる。
【0041】
(8) 中継装置14が移動可能であるため、中継装置14の配置換えが容易である。このため、作業場11の変更や移動に対してスムーズに対応できる。
(9) 中継装置14の電源を太陽電池から得るようになっているため、中継装置14に給電線を接続するような煩わしさを回避できる。また、作業場11が、給電設備が存在しない山間僻地のような場所であっても、位置把握システムを支障なく稼働できる。
【0042】
(10) 監視センタ15において、作業場11を含む仮想エリア80を設定して、その仮想エリア80との関連において作業者12や監督者13を表示できるため、作業者12や監督者13の所在を一目で判別でき、管理を容易に行うことができる。
【0043】
(11) 逸脱者が生じた場合には、画面79上にその氏名Nを表示し、監督者13に対してアラートを発生できるので、作業者12の行方不明等の不慮の事態を未然に回避できる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した位置把握システムの第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0045】
この第2実施形態においては、監視センタ15のプログラムにおいて実行において、S55の否定判断の後に図13に示す処理ステップS101〜104の処理が加入されたものである。すなわち、図13において、逸脱者が生じていない場合(S55)、各作業者12の移動速度が判別される(S101)。この移動速度の判別は、作業者12の最新及び履歴の測位データFの数値の変化速度から判別される。そして、作業者12の移動速度が通常の歩行速度より速い場合は、その移動速度が一定時間継続しているか否かが判別され(S102)、継続している場合は、作業者12が仮想エリア80内に位置していたとしても、作業者12の異常事態であるとしてアラートが発せられる(S56)。この異常事態としては、例えば、事故や病人が発生したことにより、通報しようとする作業者12が疾走している場合や、作業者12が斜面を滑落した場合等がある。そして、処理ステップS57〜S59において、逸脱者が生じた場合と同様な処理が実行される。
【0046】
前記S101において移動速度が通常の歩行速度以下であると判断された場合は、各作業者12が他の作業者12との距離が一定距離(例えば2m)以下の接近状態であるか否かが判断される(S103)。この判断は、作業者12の測位データFの数値が接近しているか否かによって行われる。接近状態である場合は、その接近状態の累積時間が最新及び履歴情報からカウントされる(S104)。そして、その累積時間が所定時間以上である場合には、例えば、急病者に対して別の作業者が付き添っているケースや、複数人が巻き込まれる事故のケース等の不都合事態の可能性があるとしてアラートが発せられ(S56)、次いで、処理ステップS56〜S59において、該当する複数の作業者12に対して逸脱者の場合と同様な処理が実行される。
【0047】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができ、特にこの実施形態においては以下の効果を得ることができる。
(12) 作業者12の行動や状況について異常事態を直ちに把握できるため、迅速な対応が可能となる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化した位置把握システムの第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0049】
この第3実施形態においては、送受信機21から送信される位置データDが携帯電話網によって伝送されるパケット信号の形式となっている。
監視センタ15の動作において、図14に示すように、図13のS52の否定判定の後に、処理ステップS201及びS202の処置が加入されている。そして、作業者12からの位置データDが受信されない場合(S52)、その非受信時間がカウントされる(S201)。そして、そのカウント時間が所定時間以上である場合には、作業者12が仮想エリア80から外れて、つまり作業場11の外部に位置して、監視範囲から外れたとして、携帯電話網による監視に切り換える(S202)。この処理ステップS202においては、携帯電話網の基地局から位置データDのパケット信号が受信されるのを待つ。そして、受信された場合には、図13の処理ステップS56〜S59以降の処理が行われる。
【0050】
従って、この第3実施形態においては、前記第1実施形態に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(13) 作業者12が仮想エリア80から離れた監視不可能な距離まで遠ざかっても、その監視を携帯電話網に切り換えて監視を継続できる。従って、作業者12が仮想エリア80内の監視から遠距離に位置したとしても、その作業者12を把握できる。
【0051】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 中継装置14に監視センタ15の機能を全て持たせること。このように構成した場合は、中継装置14が監視センタ15の機能を果たすため、位置把握システムの機動性が向上する。
【0052】
・ 中継装置14を建物の内部等の施設に設置すること。この場合、中継装置14は移動可能ではなく、固定状態に配置される。
・ 中継装置14を省略すること。この場合、送受信機21との間の送受信を監視センタ15が直接行うことになる。このように構成すると、建物や施設内の作業者12の管理に適する。この場合、建物や施設内に位置データDを受信するためのアンテナを設ければ、中継装置14が存在しなくても、広範囲の作業者12の管理を行うことができる。
【0053】
・ 中継装置14を複数台用いて、広範囲の作業場11を管理できるようにすること。
・ 送受信機21の本体22に太陽電池パネルを設け、その送受信機21の駆動電力を太陽光から得るようにすること。
【0054】
・ 送受信機21を児童に携行させ、その児童の登下校時や校内所在時の位置把握を行い得るようにすること。従って、この場合は、児童が被管理者となり、管理者は例えば学校関係者となる。
【0055】
(別の技術的思想)
上記実施形態により把握される請求項以外の技術的思想について、以下にそれらの効果とともに記載する。
【0056】
(A) 前記報知部は管理者所有の送受信機に信号を送信して、その送受信機に設けられた報知器を報知動作させることを特徴とする請求項3に記載の位置把握システム。
このように構成すれば、管理者が異常事態に対して有効に対処することが可能となる。
【0057】
(B) 前記送受信機は位置情報の伝達を中継する中継装置能を有することを特徴とする請求項3または前記技術的思想(A)項に記載の位置把握システム。
この構成によれば、アクセスポイント等が不要な通信ネットワークを構築でき、簡易でローコストな運用が可能となる。
【0058】
(C) 前記送受信機は、被管理者から外されたことを検出する検出手段を有するとともに、送受信機の送信部は検出手段の検出結果を送信することを特徴とする請求項3、前記(A)項,(B)項のうちのいずれか一項に記載の位置把握システム。
【0059】
この構成によれば、送受信機の外れや脱落を直ちに検出できて、不測事態を未然に防止できる。
・タグの構成
【符号の説明】
【0060】
11…作業場、12…被管理者としての作業者、13…監督者、14…中継装置、15…監視センタ、21…送受信機、57…表示部、74…表示部、80…仮想エリア、82…地図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被管理者に装着される送信機から受信した位置情報に基づき、被管理者の位置を地図とともに表示部に表示させるようにした位置把握システムにおいて、
前記地図上に仮想エリアを設定するとともに、その仮想エリアを前記地図とともに表示部に表示させるようにした設定部と、
前記位置情報に基づき、被管理者が前記仮想エリアの外に逸脱したことを判別する判別部と、
その判別部による判別結果に基づき、被管理者の逸脱を報知する報知部と
を備えたことを特徴とする位置把握システム。
【請求項2】
前記送信機と処理装置との間には、それらの間の信号の伝達を中継する中継手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の位置把握システム。
【請求項3】
前記送信機は、受信機能を有し、外部からの信号によって起動及び停止されることを特徴とする請求項1または2に記載の位置把握システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−48493(P2011−48493A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194710(P2009−194710)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】