説明

作像ユニット及び画像形成装置

【課題】 画像形成装置の作像要素が寿命となったとき、これを簡単かつ能率的に交換できるようにする。
【解決手段】 感光体7と、その感光体7上に形成された静電潜像を可視像化するための二成分系現像剤101との寿命を一致させ、これらが寿命となったとき、これらを一括して交換できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に形成された静電潜像を、トナーとキャリアを有する二成分系現像剤を用いた現像装置によってトナー像として可視像化する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ又はその複合機などとして構成される上記形式の画像形成装置は、上述した像担持体や現像装置などの多数の作像要素を有している。また現像装置には二成分系現像剤が収容され、しかもその現像装置は現像に供される二成分系現像を担持して搬送する現像剤担持搬送部材などの要素を有しているのであるが、このような各要素は経時的に劣化し、遂には使用に耐え得ない状態となる。このため、通常は、これらの要素が使用し得なくなったとき、又はその直前の時期に、その要素が新たなものと交換される。この交換時期が各要素の寿命である。
【0003】
このように、この種の画像形成装置においては、その各要素が寿命となったときに、これを交換する必要があるが、個々の要素が寿命となるごとにその要素を交換するとすれば、その交換作業を頻繁に行わなければならず、大変煩しい。
【0004】
そこで、画像形成装置を構成する複数の要素が同時に寿命となるようにその寿命を設定し、これらを同時に新たなものと交換できるように構成された画像形成装置が提案されている。ところが、従来は二成分系現像剤のキャリアの寿命と、その他の要素の寿命との関連については特に考慮がなされておらず、従ってその現像剤のキャリアが劣化したときは、これを単独で新たなものと交換しなければならなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した新規な認識に基づきなされたものであり、その目的とするところは、キャリアを単独で交換することによる作業の煩雑さを回避できる画像形成装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、静電潜像の形成される像担持体と、該担持体に形成された静電潜像を、トナーとキャリアを有する二成分系現像剤を用いてトナー像として可視像化する現像装置とを具備し、前記現像装置が、現像に供される二成分系現像剤を担持して搬送する現像剤担持搬送部材を有し、前記像担持体に形成されたトナー像を転写材に転写して記録画像を得る画像形成装置において、前記像担持体の寿命と、前記二成分系現像剤のキャリアの寿命とを一致させたことを特徴とする画像形成装置を提案する。
【0007】
その際、前記像担持体と、前記現像剤担持搬送部材とをユニットケースに組付けて作像ユニットを構成し、前記二成分系現像剤を前記ユニットケースの一部によって構成された現像ケースに収容すると有利である。
【0008】
また本発明は、上記目的を達成するため、静電潜像の形成される像担持体と、該担持体に静電潜像を形成すべく、当該担持体を帯電する帯電装置と、像担持体に形成された静電潜像を、トナーとキャリアを有する二成分系現像剤を用いてトナー像として可視像化する現像装置と、像担持体に形成されたトナー像を転写材に転写した後、その像担持体表面に残留するトナーを当該表面から除去するクリーニング部材を備えたクリーニング装置とを具備し、前記現像装置が、現像に供される二成分系現像剤を担持して搬送する現像剤担持搬送部材を有し、前記像担持体に形成されたトナー像を転写材に転写して記録画像を得る画像形成装置において、前記像担持体の寿命と、前記帯電装置の寿命と、前記二成分系現像剤のキャリアの寿命と、前記クリーニング部材の寿命とを全て一致させたことを特徴とする画像形成装置を提案する。
【0009】
その際、前記像担持体と、前記帯電装置と、前記現像剤担持搬送部材と、前記クリーニング部材とをユニットケースに組付けて作像ユニットを構成し、前記二成分系現像剤を前記ユニットケースの一部によって構成された現像剤ケースに収容すると有利である。
【0010】
また、その際、前記クリーニング装置によって像担持体から除去されたトナーを現像装置において再使用すべく、当該トナーをクリーニング装置から現像装置へ搬送するトナーリサイクル装置を設けると特に有利である。
【0011】
同様に、前記クリーニング装置によって像担持体から除去されたトナーを現像装置において再使用すべく、当該トナーをクリーニング装置から現像装置へ搬送するトナーリサイクル装置を設け、該トナーリサイクル装置のトナー搬送路をユニットケースの一部によって構成すると特に有利である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の画像形成装置によれば、現像剤のキャリアと像担持体を一括して交換できるので、その作業を簡素化でき、メインテナンス費用を大幅に低減できる。
【0013】
請求項2に記載の画像形成装置によれば、現像剤のキャリアと像担持体が寿命となったとき、作像ユニットの全体を新たなものと交換しても、ユーザに対する経済的負担を軽減できる。
【0014】
請求項3に記載の画像形成装置によれば、像担持体と、帯電装置と、キャリアと、クリーニング部材の寿命が全て一致しているので、画像形成装置の要素の交換作業をより一層効率よく行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の画像形成装置によれば、各要素が寿命となったとき、作像ユニットの全体を新たなものと交換しても、ユーザに多大な経済的負担をかけることはない。
【0016】
請求項5又は6に記載の画像形成装置によれば、上記効果をより一層確実なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施例を図面に従って詳細に説明する。
【0018】
図1は、図示していない画像形成装置本体に装着された作像ユニット1の垂直断面図であり、図2はその作像ユニットの外観斜視図である。この作像ユニット1は、画像形成装置本体に着脱可能に装着され、本例では作像ユニット1を図2に矢印Aで示す方向に画像形成装置本体に対して押し込むことによって、その作像ユニット1を図1に示した画像形成装置本体内の所定の位置に装填セットし、矢印Aと反対方向に作像ユニットを引き出すことによって、その作像ユニット1を画像形成装置本体から取り出すことができる。画像形成装置は、例えば複写機、プリンタ、ファクシミリ又はその複合機などとして構成される。
【0019】
図1及び図2に示すように、作像ユニット1は、ユニットケース2と、これに組込まれた後述する各種の作像要素を有し、図に一例として示したユニットケース2は、ケース本体3と、その上部に取付けられたケースカバー4と、後述する現像装置の上壁を構成する現像ケースカバー5と、同じく後述するトナーリサイクル装置のトナー搬送路の上壁及び現像装置の上壁の一部を構成する上カバー6とを有していて、ケースカバー4、現像ケースカバー5、及び上カバー6は、ケース本体3に対してスナップフィット(所謂パッチン止め)によって着脱自在に係止されている。現像ケースカバー5に形成された開口102(図2)は、図2には示していない剤カートリッジ81(図1)によって閉鎖されている。
【0020】
図3は、図1及び図2に示したケースカバー4、現像ケースカバー5、及び上カバー6をケース本体3から外したときの様子を示す外観斜視図であり、図4は同じ状態での部分断面平面図である。
【0021】
ユニットケース2には、その内部に、静電潜像の形成される像担持体の一例であるドラム状の感光体7と、帯電装置の一例である帯電ローラ8がそれぞれ回転自在に組付けられ、帯電ローラ8は感光体7に対して平行に延びている。図3においては、帯電ローラ8を感光体7から離間した状態で示してある。
【0022】
画像形成動作時に、感光体7は図示していない駆動装置によって図1における時計方向に回転駆動され、このとき、画像形成装置本体に支持された図示していない除電装置からの除電光L1が、ケースカバー4に形成された開口34を通してユニットケース2内に入射し、感光体7の表面を照射する。これにより、感光体7は、その表面電位が例えば0乃至−150Vの基準電位に平均化される。一方、帯電ローラ8は、感光体7の表面に圧接し、その感光体7の回転によって従動回転しながら、感光体7を、その表面電位が例えば−1100V前後となるように一様に帯電する。このとき、帯電ローラ8には、図示していない電源によって所定の電圧が印加される。
【0023】
上述のように所定の極性に帯電された感光体7の表面部分には、露光部9において、光変調されたレーザ光L2が照射される。このレーザ光L2は、画像形成装置本体に支持された図示していない露光光学系から出射し、ケースカバー4に形成された開口35を通してユニットケース2に入射する。かかる露光によって、感光体7上に所定の静電潜像が形成される。例えば、レーザ光L2の照射された感光体部分(画像部)は、その表面電位が0乃至−290Vとなり、レーザ光L2の照射されない感光体部分(地肌部)の表面電位は、前述の−1100V前後をほぼ維持する。図示していない原稿を照明し、その反射光像を感光体7に結像して静電潜像を形成することもできる。
【0024】
一方、ユニットケース2には、図1及び図4に示したように現像装置10の現像スリーブ11(図3には示さず)が回転自在に支持され、このスリーブ11は画像形成動作時に図1における反時計方向に回転駆動される。また、ユニットケース2におけるケース本体3の一部と、その上部を覆う前述の現像ケースカバー5とによって現像装置10の現像ケース12が構成され、その内部に現像剤室90が区画されている。かかる現像ケース12の現像剤室90には、トナーとキャリアを有する粉体状の二成分系現像剤101(図1)が収容され、現像スリーブ11の内部には、全体を符号13で示した複数の磁石が不動に配置されている。
【0025】
現像スリーブ11が前述のように回転することによって、現像ケース12内の現像剤101は、磁石13の磁力で現像スリーブ11上に担持されつつ搬送され、ドクタブレード14より成る剤規制部材によって、搬送される現像剤の量が規制される。規制後の現像剤は、現像スリーブ11と感光体7との間の現像領域へ運ばれ、このとき、現像スリーブ11には例えば−800V前後の現像バイアス電圧が印加されているため、現像領域に搬送された現像剤中のトナーが、感光体7上の画像部に静電的に移行して付着し、感光体7上に所定のトナー像が形成される。感光体7に形成された静電潜像がトナー像として可視像化されるのである。
【0026】
このように、現像装置10は、感光体7より成る像担持体に形成された静電潜像を、トナーとキャリアを有する二成分系現像剤101を用いてトナー像として可視像化する用をなし、現像スリーブ11は、現像に供される二成分系現像剤101を担持して搬送する現像剤担持搬送部材の一例を構成する。
【0027】
一方、画像形成装置本体には、図1に示すように、転写装置の一例である転写ローラ15が感光体7に対向して回転自在に支持されている。また画像形成装置本体側には図示していない給紙装置が設けられ、この給紙装置から、転写材の一例である転写紙100が図1に矢印Bで示すように感光体7と転写ローラ15との間の転写部22へ向けて搬送される。かかる転写紙100は、その先端と感光体7上に形成されたトナー像の先端とが合致した状態で、感光体7と転写ローラ15との間の転写部22を通過する。このとき、転写ローラ15は、転写紙100を介して感光体7に当接しながら図1における反時計方向に回転し、しかもこの転写ローラ15には転写バイアス電圧が印加されているので、感光体7上のトナー像が転写紙100に転写される。
【0028】
感光体7を離れた転写紙100は、図1に矢印B1で示したように、図示していない定着装置へと搬送され、ここで熱と圧力の作用により、トナー像が転写紙100上に融着されて定着される。転写紙100の搬送方向における転写部22の下流側には、画像形成装置本体に支持された除電針16が配置されている。この除電針16は、感光体7と平行に延びる薄い金属板より成り、感光体7を向いた側の除電針16の部分は鋸歯状に形成され、その各歯の先端は鋭角にとがっている。かかる除電針16には、図示していない電源により電圧が印加され、これによって転写紙100を除電し、転写紙100を感光体7から分離しやすくしている。
【0029】
転写材として中間転写部材を用い、感光体上のトナー像をその中間転写部材に一次転写し、しかる後、そのトナー像を最終転写材である転写紙に二次転写するように構成することもできる。
【0030】
トナー像転写後に感光体7上に付着している残留トナーは、図1に示したクリーニング装置17のクリーニングブレード18によって感光体7の表面から掻き落される。このようにして感光体7の表面が清掃され、再び次の画像形成動作に移る。クリーニング装置17は、ユニットケース2におけるケース本体3の一部によって構成されたクリーニングケース19を有し、クリーニングブレード18によって掻き取られたトナーは、クリーニングケース19内に配置されたトナー搬送部材20の回転によってクリーニング装置17外に排出され、後述するように現像装置10において再使用される。トナー搬送部材20は、例えばトナー搬送スクリュー又はトナー搬送コイルなどの適宜な形態で構成される。クリーニングブレード18は、感光体7の表面に残留するトナーを当該表面から除去してその表面を清掃するクリーニング部材の一例をなすものであって、後に説明するように、ケース本体3に固定保持されている。
【0031】
以上のように、図示した画像形成装置は、感光体7より成る像担持体に形成されたトナー像を、その像担持体に向けて搬送された転写紙100に転写して記録画像を得るように構成されており、また画像形成装置本体に着脱可能に装着された作像ユニットは、上述の像担持体を含む作像要素の少なくとも1つをユニットケースに組付けたものであって、図示した例では感光体7、帯電ローラ8、現像装置10及びクリーニング装置17の各構成要素がユニットケース2に組付けられて作像ユニット1が構成されている。
【0032】
ここで、転写紙100を感光体7へ向けて正しく搬送するには、その転写紙100を案内するガイド部を設ける必要がある。このため、図1に示した画像形成装置においては、転写部22へ搬送される転写紙100を案内する上下のガイド部23,24が設けられている。下側のガイド部24は、画像形成装置本体に固定されたガイド部材によって構成され、このガイド部材は、転写部22を離れた転写紙100を矢印B1方向に案内する用もなすものである。
【0033】
ここで、上側のガイド部23についても、画像形成装置本体に固定されたガイド部材により構成することも可能であるが、このようにすると、下側のガイド部材のほかに、上側のガイド部23も独立した部材として画像形成装置本体に設ければならず、これによって部品点数が増大し、そのコストが上昇する欠点を免れない。
【0034】
そこで、本例の画像形成装置においては、画像形成装置本体に装着された作像ユニット1のユニットケース下部、図の例ではそのケース本体3の下部が、搬送される転写紙100の進行方向を規制する上側のガイド部23を構成している。ユニットケース下部がガイド部23を構成するように、作像ユニット1のユニットケース2が画像形成装置本体に対して位置決めされているのである。かかるガイド部23は、下側のガイド部24に対して上方に離間して位置していると共に、転写紙100の搬送方向に関し、転写部22よりも上流側の部位に位置し、転写部22へ搬送される転写紙100を案内する用をなす。
【0035】
このように、ユニットケース自体によって転写紙100を案内するガイド部23を構成しているので、上側のガイド部として独立した部材を設ける必要がなく、画像形成装置の部品点数の減少と、そのコストの低減を達成できる。
【0036】
図5は、作像ユニット1を構成するユニットケース2のケース本体3を図3に示した状態から上下反転させて示す斜視図である。この図から判るように、ユニットケース2、本例ではそのケース本体3の底壁21に形成された切欠25から感光体7の一部がユニットケース2の外方へ突出している。また図5における矢印Bは、図1の矢印Bと同じく、転写部22(図1)に向けて送られる転写紙100の搬送方向を示している。さらに符号Wは、転写紙100が通る通紙領域を示しており、最大幅の転写紙100もこの領域Wを通過する。
【0037】
本例では、図1及び図5に示すように、ユニットケース下部によって構成されるガイド部23が、ユニットケース2におけるケース本体3の底壁21に突設されていて、かつ転写紙100の搬送方向Bに沿って延びる複数のガイドリブ26によって構成されている。これらのリブ26は、転写紙100の搬送方向Bに対して直交する方向に互いに離間し、しかも、転写紙100が通過する通紙領域W内に設けられ、そのリブ26の自由端縁によって最大サイズの転写紙100をも確実に案内できるように構成されている。
【0038】
上述したガイドリブ26ではなく、ユニットケース下部の平坦な面、例えばその底壁21の下面によって、転写部22へ搬送される転写紙100を案内するガイド部を構成することもできるが、ガイド部が平坦な面であると、転写紙100のもつ静電気力によって、その転写紙100が平坦なガイド面に密着し、転写紙100の搬送性が低下することがある。かかる搬送性の低下が生じると、転写紙100上に転写されたトナー像に伸びや縮みが発生して異常画像となるおそれがある。また平坦な平面よりなるガイド部にトナーが付着した場合、その付着面積が大きくなるため、付着トナーが転写紙の先端に多量に再付着して転写紙に著しい汚れが発生するおそれがある。
【0039】
これに対し、図1及び図5に示した例のように、ガイドリブ26によってガイド部23を構成し、そのガイドリブ26の自由端縁によって転写紙100を案内するように構成すると、そのガイド部23に転写紙100が接しても、その接触面積が極く小さなものとなるので、転写紙100が静電気力でガイド部23に密着することを防止でき、異常画像の発生を阻止できる。しかもガイドリブ26の自由端縁により構成されるガイド部23にトナーが付着しても、そのガイド部23と転写紙100との接触面積は小さいので、転写紙100に多量のトナーが付着することを阻止でき、転写紙100に、トナーによる著しい汚れが発生することを防止できる。
【0040】
また、図1及び図5に示すように、転写紙100が通過する通紙領域W以外のユニットケース2の下部の部分、図の例ではそのケース本体3の下部の部分に、転写紙100のガイド部23よりも外方(図1における下方)に突出した突部27が設けられている。転写紙100の搬送を阻害しないユニットケース2の下部の部分に突部27が突設されているのである。図1及び図5の例では、ガイド部23によって案内される転写紙100の通紙幅範囲の両外方に、ケース本体3と一体に形成された突部27がそれぞれ設けられ、合計4個の突部27が配設されている。そして、これらの突部27がユニットケース2の底壁21より突出する高さHは、各ガイドリブ26が底壁21から突出する高さhよりも高くなっている。
【0041】
ここで、作像ユニット1を前述のように画像形成装置本体から取り出したとき、そのユニット1は、ユニットケース下部の側を下に向けて平坦な床面や机上面などの載置面上に載置される。その際、ユニットケース2の下部には、ガイド部23よりも外方に突出した突部27が設けられているので、これらの突部27が載置面に当接する。すなわち、突部27の間に存在するガイド部23、本例ではガイドリブ26の自由端縁が載置面に接することはないのである。
【0042】
上記構成によれば、載置面上にたとえ異物が存在していても、その異物がガイド部23に付着したり、その異物によってガイド部23が傷つけられるようなおそれはない。従って、この作像ユニット1を再び画像形成装置本体にそのまま装填して使用しても、転写紙100に異物が付着することはなく、ガイド部23は支障なく転写紙100を案内する機能を果たすことができる。また、たとえ突部27に載置面上の異物が付着したり、その異物によって突部27が多少傷つけられたとしても、かかる作像ユニット1を画像形成装置本体にセットしたとき、その突部27は転写紙100の通る通紙領域Wよりも外側に位置しているので、転写紙100の搬送が阻害されるおそれはない。
【0043】
図5においては、搬送される転写紙100の両側方に突部27を設けたが、通紙領域Wより外側のユニットケース下部の部分であれば、他の部位に突部27を設けてもよい。図6は、搬送される転写紙の両側方と、通紙領域Wよりも転写紙搬送方向上流側のユニットケース底壁21の部分とに、ガイドリブ26から成るガイド部23よりもユニットケース外方に突出した突部27をそれぞれ設けた例を示している。
【0044】
図1、図5及び図6に示した突部27の底壁21からの突出高さHは、作像ユニット1を載置面上に置いたとき、感光体7も、その載置面に接しないような大きさに設定されている。
【0045】
次に、本発明の理解のため、図示した画像形成装置を構成する各装置と、その各構成要素をより詳細に説明する。
【0046】
先ず、図1に例示した感光体7は積層型のOPC感光体より成り、図7はその断面構造の模式拡大図である。図7に示した積層型感光体7は、その導電性基板28上に、0.1乃至1μmの厚みを有する電荷発生層(CGL)29と、10乃至30μmの厚みを有する電荷移動層(CTL)30が順次積層されたものであり、かかる電荷発生層29と電荷移動層30とが感光層31を構成している。かかる感光体7に入射するレーザ光L2は、透光性の電荷移動層30を透過して電荷発生層29で吸収され、電荷発生層29ではこの励起エネルギによってキャリアが生成される。生成されたキャリアは外場の力で電荷移動層30に注入され、その電荷移動層30中を移動して感光体表面に達し、表面電荷を中和する。図7に示した電荷移動層30は正孔輸送型のもので、マイナス帯電したときの状態を示している。
【0047】
次に、図1及び図3に示した帯電ローラ8は、像担持体に静電潜像を形成すべく、その担持体を帯電する帯電装置の一例を構成するものであり、かかる帯電ローラ8は、金属製の芯金の外周面に導電性ゴムを巻き付けた構成となっていて、感光体7を帯電するとき感光体7の表面に接触する。かかる帯電ローラ8は、その長手方向各端部が、一方だけを図3に示した軸受33aにそれぞれ回転自在に支持され、その各軸受33aは、帯電ローラ8に対して平行に延びる帯電ローラケース33の長手方向各端部に、帯電ローラ8と共に、感光体7に対して接近又は離隔する方向に所定の範囲を移動可能に支持されている。また帯電ローラケース33の帯電ローラ8に対向した面には、その帯電ローラ8に沿って長く延びた帯電ローラ清掃部材の一例であるクリーニングパッド32が貼着されている。
【0048】
上述した各軸受33aと、帯電ローラケース33の長手方向各端部との間には、図示していない第1の圧縮スプリングが圧装され、これによって各軸受33aが感光体7に対して接近する向きに加圧され、帯電ローラ8が感光体7の表面に圧接することができる。また、帯電ローラケース33も、感光体7の表面に対して所定の範囲を接近又は離間する方向に移動可能に、該ケース33の長手方向各端部がユニットケース2のケース本体3に形成された各切欠36(図3に一方だけを示す)に組付けられている。かかる帯電ローラケース33は、ケースカバー4(図1,図2)によってケース本体3からの抜け出しが阻止されている。さらに、ケース本体3と、帯電ローラケース33の長手方向各端部との間にも、上述した第1の圧縮スプリングとは別の第2の圧縮スプリング37(図3に一方だけを示す)が圧装され、これによって帯電ローラケース33が感光体7の表面から離間する方向に付勢されている。
【0049】
ケースカバー4は、感光体7及び帯電ローラ8などに人の手が触れないようにする保護カバーの働きを為すものであるが、その他、上述のように、第2の圧縮スプリング37によって付勢された帯電ローラケース33が、ケース本体3から外れないようにするストッパとしての働きもなしている。これにより、帯電ローラケース33用の独立したストッパ部材を設ける必要がなく、構成の簡素化を達成できる。
【0050】
一方、図1に示すように、画像形成装置本体には、カム38を回転制御する電磁クラッチ39が設けられ、カム38は電磁クラッチ39の回転軸に固定されていて、電磁クラッチ39は1回の動作で120°回転するように構成されている。またこのカム38には、枢ピン40を介して画像形成装置本体に揺動可能に支持された揺動アーム41の一端41aが図示していないばねの作用で圧接し、このアーム41の他端41bは、ケースカバー4の開口34を通して帯電ローラケース33の上面に当接している。帯電ローラケース33の上面は、前述の第2の圧縮スプリング37の加圧作用によって、揺動アーム41の他端41bに圧接する。
【0051】
カム38が図1に示した回転位置を占めていて、符号aで示したカム面部分が揺動アーム41の一端41aに当っているとき、帯電ローラケース33も図1に示した位置を占めているが、このとき帯電ローラ8は、前述の第1の圧縮スプリングの押圧作用によって感光体7の表面に圧接し、その帯電ローラ8の芯金に印加された電圧により、前述の如く感光体7を所定の極性に帯電する。
【0052】
上述のように帯電ローラ8は、感光体7を帯電する帯電動作時に、感光体7の表面に接触し続けているので、感光体7に付着した微小トナーによって帯電ローラ8が汚されてしまい、感光体7に帯電むらが発生するおそれがある。このため、本例の画像形成装置では、帯電ローラ8による帯電動作時以外の適時に、電磁クラッチ39が作動してカム38が120°回転し、図1に符号aで示したカム面部分が揺動アーム41の一端41aに圧接する。これにより、揺動アーム41の他端41bは、帯電ローラケース33を感光体7の表面に接近する向きに加圧して移動させる。このとき帯電ローラ8は感光体7の表面に圧接したままであり、従ってクリーニングパッド32が帯電ローラ8の周面に圧接する。その際、帯電ローラ8は感光体7の回転に従動して回転し、クリーニングパッド32が帯電ローラ8の周面を清掃する。このようにして、帯電ローラ8がトナーによって汚されたまま、感光体7への帯電動作を行うことが阻止され、感光体7の帯電むら発生を防止することができるのである。
【0053】
また画像形成装置の作動を停止するとき、電磁クラッチ39の作動により、カム38は図1に符号aで示した面が揺動アーム41の一端41aに圧接する。これにより揺動アーム41の他端41bは図1に示した状態よりも上方に持ち上がり、帯電ローラケース33は、前述の第2の圧縮スプリング37の作用で感光体7から離間する方向に移動する。これによって帯電ローラ8も感光体7の表面から離れる。画像形成装置の作動停止状態で、長時間、帯電ローラ8が感光体7に当接したままであると、感光体7が汚染され、異常画像が発生するおそれがあるが、本例の画像形成装置においては、上述のように、その作動停止時に、帯電ローラ8を感光体7から離間させ、画像形成動作時に異常画像が発生することを阻止しているのである。
【0054】
帯電ローラ8に代え、コロナ放電器より成る帯電装置を用いることもできるが、本例のように帯電ローラ8を採用すると、コロナ放電器を用いた場合のオゾン発生量を1/100乃至1/1000に抑えることが可能となり、これによって画像形成装置本体にオゾン処理部材を付設する必要がなくなる。
【0055】
次に帯電ローラ8による帯電メカニズムについて説明する。図8は感光体7と帯電ローラ8を模式的に示す帯電モデル図であり、図9はその帯電モデルの等価回路を示している。ここで、帯電ローラ8の中心の芯金に印加する電圧をVaとし、帯電ローラ8にかかる電圧をVr、帯電ローラ8と感光体7の当接部近傍の空隙42における放電開始電圧をVg、感光体7の表面電位をVdとすると、これらの関係は、
Va=Vr+Vg+Vd (1)
と表わされる。ここで、帯電ローラ8にかかる電圧Vrは、帯電ローラ8の抵抗値をR、流れる電流値をIとすると、
Vr=I・R (2)
となり、上記空隙における放電開始電圧Vgは、感光体7の感光層31の膜厚をd、感光層31の比誘電率をKdとすると、
Vg=312+6.2×d/Kd+√(7737.6×d/Kd) (3)
で表わされる。感光体の表面電位Vdは、感光体7に供給される電荷をQ、その感光層31の静電容量をCとすると、
Vd=Q/C (4)
となる。ここで、感光体7の周速をVp、帯電ローラ8の長さをL、その誘電定数をKoとすると、
Q=I/L・Vp C=(Ko・Kd)/d となり、
Vd=(I・d)/(Ko・Kd・L・Vp) (5) となる。
よって(1)式は、
Va=I・R+312+6.2×d/Kd+√(7737.6×d/Kd)
+(I・d)/(Ko・Kd・L・Vp) (6)
となる。以上が帯電モデル式である。
【0056】
次に、帯電ローラ8による帯電の制御方式を考えると、この方式には定電圧制御方式と、定電流制御方式のいずれかの方式を採用することができる。
【0057】
定電圧制御方式は、(1)、(6)式のVaを一定とする制御方式である。この場合、(1)式で実際感光体7の帯電電位として使われるのはVdの項である。従って、Vr及びVgが変化すると、Vdに影響を与える。ここで各項について見てみると、Vrの項は、帯電ローラ8の抵抗値が変動因子である。従って、環境変動で帯電ローラ8の抵抗値が上昇すると、Vr値が上がり、Vdが下がることになる。従って、この影響を抑えるため温度検知手段を設け、Vaを補正する必要がある。又、著しく帯電ローラ抵抗値が上昇するのは低温湿時であるので、図示していないヒーター等を設け、ある温度以下とならないようにすることが望ましい。
【0058】
次に、Vgの項においては感光層31の膜厚dの影響を受けるが、実際に数値を代入し、初期でd=28μm、経時で4μm減少したとし、Kd=3.2として計算すると、Vg(28)=626、Vg(24)=599で、この差27Vの変化量となる。この程度の変化なので、帯電電位(通常800〜1000V)に対する影響は小さいと考える。なお、前記帯電ローラ抵抗値変動のところで流れる電流の値自体は小さいので、帯電ローラ抵抗値を低目(例えば10Ω以下)に抑えれば、Vdへの影響を小さくすることが可能である。
【0059】
定電流方式の場合は、(6)式でIが一定となる制御方式で、Vrの項、Vgの項の影響は受けない。しかしながら、Vdの項の感光層膜厚dの変化の影響は、Vdに直接及び、前記例で示した初期28μmで、経時で4μm変化した場合、Vdは経時でVd×24/28の値となり、仮にVdが初期850Vとすると、経時では728Vとなり100V以上も低下してしまい、帯電性能が保証できなくなるおそれがある。これを防ぐためには、感光層31の膜厚変化を検知して補正すればよいが、実際上、このような検知機構は高価でとても装着はできない。従って、感光体表面の硬度を上げ、摩耗しない感光体を使用する以外、現状では対策が難しい。
【0060】
以上の理由から、本例では、帯電ローラ8の抵抗変動に対する印加電圧補正を必要とするが、定電圧制御方式を採用している。そして、帯電ローラ8の温度検出手段として、図1に示すように、ケースカバー4に装着されたサーミスタ43が使用されている。このサーミスタ43は、帯電ローラ8の表面温度を検知し、その帯電ローラ8が温度変化してその電気抵抗が変化した分の印加電圧補正を行うための回路へ信号を送っている。かかるサーミスタ43は、帯電ローラ8が感光体7の表面から離間したとき、その帯電ローラ8に接触する位置に設けられている。
【0061】
上述のように、サーミスタ43をケースカバー4に取り付けたので、このサーミスタ用の専用の取付部材を別に設ける必要がなく、画像形成装置、特にその作像ユニット1の構成を簡素化することができる。また帯電ローラ8が感光体7より離間したとき、すなわち帯電ローラ8に電圧が印加されていないときにサーミスタ43が帯電ローラ8の周面に接触してそのローラ8の温度を検知できるように構成されているので、サーミスタ43が、帯電ローラ8へ印加された電圧の影響によって壊れるおそれはない。
【0062】
次に、現像装置10について説明する。図1、図3及び図4を参照して先に説明したように、現像ケース12には、例えば小さな鉄球より成るキャリアとトナーとを有する二成分系現像剤101が収容され、この現像剤101は、後に詳しく説明する第1及び第2の剤撹拌部材44,45によって現像ケース12の現像剤室90内を循環搬送されつつ撹拌され、現像スリーブ11に供給される。現像スリーブ11に供給された現像剤は、前述のように、その現像スリーブ11の周辺に設けられたドクタブレード14によって層厚を規制される。現像スリーブ11の周面のうち、感光体7に対向する部分は、現像ケース12から外部に露呈している。
【0063】
ここで、現像スリーブ11は、その外径が例えば16乃至20mmのアルミニウムより成る非磁性円筒体より成り、その周面は円滑に形成されるか、又は現像剤の搬送性を高めるため、現像スリーブ11の外周面に例えばV溝などの凹凸が形成されている。
【0064】
図4に示すように、現像スリーブ11の内部には軸46が貫通し、この軸46に前述の磁石13が固定されている。軸46の手前側の端部46aは、ユニットケース2のケース本体3に対して後述するように固定支持され、奥側の端部46bは、現像スリーブ11の奥側端に嵌着固定されたスリーブ端部材47に軸受を介して相対回転可能に嵌合している。またこのスリーブ端部材47の軸部47aは、ユニットケースのケース本体3に後述するように回転自在に支持されている。現像スリーブ11の手前側の端部は、軸受を介して軸46に回転自在に支持されている。なお、ここに言う「奥側」と「手前側」は、画像形成装置本体に対する作像ユニット1の着脱方向を基準としたものである。
【0065】
上述のように、軸46は、磁石13と共にユニットケース2に対して不動に支持され、かかる軸46に現像スリーブ11が回転自在に支持されている。そしてスリーブ端部材47が、これに付設されたカップリング48とこれに係合する画像形成装置本体側のカップリング49(図2)とを介して回転駆動されることにより、現像スリーブ11が図1における反時計方向に回転駆動される。現像スリーブ11へのバイアス電圧は、上述したカップリング48,49を介して、画像形成装置本体側から印加される。
【0066】
図10は、現像スリーブ11と、その内部に回転不能に配置された磁石13と、感光体7との関係を示す説明図である。ここに示したように、磁石13の個々の磁石、すなわち第1乃至第5の磁石13a乃至13eは、現像スリーブ11の周方向に配列されてそれぞれ軸46に不動に固定され、そのスリーブ11の長手方向に延びている。そして、これらの磁石13a乃至13eによって現像スリーブ11の周方向に、その法線方向の磁力分布P乃至Pが形成される。
【0067】
第1の磁石13aは感光体7にほぼ対向し、その磁力分布は、感光体7と現像スリーブ11の中心間を結ぶ線よりもθ=3°乃至10°だけ上側にピークを有している。そのピーク磁束密度は、80〜100(mT ミリテスラ)である。ピーク磁束密度が小さすぎると、現像剤のキャリアを現像スリーブ11に保持できず現像剤が飛散する。逆に大きすぎると、感光体7上に現像されたトナーの周方向への穂跡が発生しやすくなり、しかも感光体7の低電位部に付着したトナーが、再度現像スリーブ11に回収されることがある。角度θを大きくしすぎると、現像能力が低下する。
【0068】
第2の磁石13bによる磁力分布Pは、現像ケース12の開口部近傍に50〜80(mT)のピーク磁束密度をもつ。この磁力は、現像ケース12内に現像剤を搬送すると共に、現像ケース12の下側近傍の空気を現像ケース12内へ運ぶ機能を有している。これにより、現像ケース12外へのトナー飛散を防ぐことができる。空気の搬送性の効率を上げるために、ピーク磁束密度部に対応する現像ケース部分12aの形状を現像スリーブ11から離れる向きに少し膨らませるとよい。これにより現像剤の穂をスムーズに形成することができる。
【0069】
第3の磁石13cは、磁力分布Pを形成し、その磁力によって現像ケース12内へ現像剤を搬送すると共に、第4の磁石13dと協働して、磁力分布P(磁束密度10mT以下)を形成する。これによって現像に供された後の現像剤が現像スリーブ11より離される。
【0070】
第4の磁石13dの磁力は、後に詳しく説明する第2の剤撹拌部材45(図4)により供給された現像剤を現像スリーブ11に保持させる用をなす。ドクターブレード14の領域では磁束密度を小さくし、現像剤を現像スリーブ11に密着させた状態で通過させることにより、現像剤の層厚を安定して規制することができる。
【0071】
第5の磁石13eは、磁力分布Pを形成し、第4の磁石13dの磁力によって保持された現像剤を第1の磁石13aの領域へ運ぶが、現像剤を安定させると共に、現像スリーブ11の周辺の空気流を制御するため、後述する入口シール50と現像剤が接触するように、その磁力分布Pのピーク磁束密度が設定されている。
【0072】
現像スリーブ11と感光体7の間隙Gpは、現像スリーブ11とドクターブレード14の間隙Gdとの関係により決まり、
Gp=Gd×(0.8〜1.0),Gp−Gd=(0〜0.15)mmを満たす値となる。
【0073】
現像スリーブ11の周速をvs(mm/sec)、感光体7の周速をvp(mm/sec)とすると、両者の関係は以下の通りである。
vs=(1〜2.5)×vp
【0074】
図4及び図11に示すように、現像スリーブ11の奥側端部から突出するスリーブ端部材47の軸部47aは、奥側支持部材57に回転自在に嵌合し、軸46の手前側端部46aは手前側支持部材58に相対回転不能に嵌合している。これらの支持部材57,58は、図11に示すように、これらに形成された長孔に挿通されてドクタブレード14にねじ込まれたねじ59によって、ドクタブレード14に連結されている。従って、これらのねじ59を緩めれば、ドクタブレード14を現像スリーブ11に対してその略法線方向に位置調整することができる。その調整後、ねじ59を締付けてドクタブレード14を現像スリーブ11に対して固定する。ドクタブレード14を現像スリーブ11に対して上述のように動かした値と、その両者の間の隙間は一対一で対応する。また、このような調整作業は、ドクタブレード14と現像スリーブ11を現像装置から外した状態で楽に遂行することができる。
【0075】
図3及び図4に示すように、ユニットケース2のケース本体3には、その手前側に手前側外板51と、手前側内板52を有し、その奥側に奥側外板53と奥側内板54を有している。ケース本体3の各内板52,54の上端縁には、現像ケースカバー5(図1,図2)の前後の側板の下端縁がそれぞれ当接し、その前後の側板と、ケース本体3の前後の内板52,54とによって、現像ケース12の全体の前後の側板が構成されている。このように、二成分系現像剤を収容した現像ケース12は、ユニットケース2の一部によって構成されている。現像ケースカバー5の前後の側板については、その奥側の側板だけ、図1に符号5aを付して示してある。
【0076】
感光体7は、その長手方向各端部に固定されたフランジ部材86,87が、手前側の位置決め板55と奥側位置決め板56を介して、ケース本体の手前側内板52と奥側外板53とにそれぞれ回転自在に支持されている。また軸46の手前側端部46aに嵌合した手前側支持部材58も、手前側位置決め板55を介してユニットケース2の手前側内板52に回転不能に支持されている。さらに、スリーブ端部材47の軸部47aも奥側位置決め板56を介してユニットケース2の奥側外板53に回転自在に支持されている。奥側の支持部材57は、奥側内板54の凹溝に着脱可能に嵌合する。
【0077】
上述のように、感光体7と現像スリーブ11は、その手前側と奥側がそれぞれ共通の位置決め板55,56を介してユニットケースに支持され、これによって現像スリーブ11と感光体7の中心間距離が一定に保たれ、両者の間隙Gpが常に一定に維持される。
【0078】
また、図11に示したように、奥側と手前側の各支持部材57,58には、入口シールカバー60が係止され、このカバー60には、図1及び図10にも示すように、前述の入口シール50が貼着されている。入口シールカバー60は図1に示すように、現像スリーブ11と感光体7との間の現像領域の上流側に位置して、現像スリーブ11の上部を覆い、現像スリーブ上の現像剤を規制すると共に、空気の流れを規制する。入口シール50は、例えばPET又はPURなどの薄い樹脂から成り、現像装置10外へのトナーの飛散を防止している。
【0079】
また、図11に示す如く、奥側と手前側の各支持部材57,58には薄い樹脂などから成るサイドシール61,62がそれぞれ貼着され、これらのサイドシール61,62は現像スリーブ11の長手方向各端部の周面に対向し、その各端部からトナーとキャリアが飛散することを防止している。
【0080】
次に、前述の第1及び第2の撹拌部材44,45は、図4に示すように、軸63,64と、その各軸63,64に固着された複数の楕円板65,66から構成されている。図3においては、図を判りやすくするため、楕円板に関しての図示を省略してあるが、各楕円板65,66は、楕円を一部切り欠いた形状に形成されている。楕円板に代え、スクリューを各軸63,64に固定して各撹拌部材44,45を構成することもできる。
【0081】
第1の撹拌部材44は、その軸63の長手方向各端部が、ユニットケース2のケース本体3における手前側の支持壁67と奥側内板54にそれぞれ回転自在に支持され、また第2の撹拌部材45の軸64は、その長手方向各端部がユニットケース2の手前側内板52と奥側内板54とに軸受を介してそれぞれ回転自在に支持されている。またこれらの撹拌部材44,45の各軸63,64の奥側端部には、駆動ギア68,69が、その各軸に対して相対回転不能に支持され、またスリーブ端部材47にも駆動ギア70が固定されている。これらのギア70,69,68は図示していない中間ギアを介して互いに噛み合っている。
【0082】
また現像ケース12を構成するケース本体3には、第1及び第2の撹拌部材44,45の間の領域に、これらの撹拌部材44,45と平行に延びる仕切壁71が立設され、その仕切壁71の手前側と奥側は切り欠かれていて、通路71a,71bがそれぞれ形成されている。
【0083】
前述のようにスリーブ端部材47が画像形成装置本体側の駆動装置によって回転駆動されると、現像スリーブ11が回転すると共に、そのスリーブ端部材47の回転が駆動ギア70,69,68と中間ギアを介して第1及び第2の撹拌部材44,45に伝えられ、これらの部材がそれぞれ所定の方向に回転駆動される。これにより、現像ケース12内の現像剤室90に収容された現像剤が、矢印X方向に撹拌されながら搬送され、その現像剤は仕切壁71によって案内されつつ、その両端側の通路71a,71bを通して循環する。これにより、現像剤のトナーとキャリアが互いに異極性に摩擦帯電される。かかる現像剤が現像スリーブ11に供給され、また現像スリーブ11からの現像剤が撹拌部材の側に戻される。各楕円板65,66は、楕円の一部を切り欠いた形状を有しているので、その切欠部の縁に現像剤が当ることにより、現像剤の撹拌効果が高められる。
【0084】
ここで、各撹拌部材44,45における楕円板65,66のピッチをP、その楕円形の短径をYとしたとき、
P=(1/3〜4/5)×Y
を満たしていることが望ましい。ピッチPがこれよりも小さいと、現像剤の搬送力が低下するため、撹拌部材44,45の回転数が高くなり、現像剤が劣化しやすくなる。またピッチPが上式よりも大きくなると、現像剤に対する撹拌性能が低下する。
【0085】
第1及び第2の撹拌部材44,45の回転数は互いに等しく、その各楕円板65,66の外径YとピッチPも互いに等しい。また、その各楕円板65,66の短径部における周速vと、現像スリーブ11の周速vsとの関係は、
vs=(1.1〜1.5)×v
を満たすことが望ましい。
【0086】
楕円板65,66の周速vが上記式で表わされるよりも高速であると、現像剤へのストレスが大きくなり、また逆に低速であると現像スリーブ11上の現像剤の交換に時間が多くかかり、感光体7上に形成されるトナー像に濃度むらが発生する。
【0087】
各撹拌部材44,45の楕円板65,66と、仕切壁71又は現像ケース壁との間の隙間は、0.5〜2mmとすることが望ましい。この隙間がこの値よりも大きいと、現像剤を確実に搬送できなくなり、滞留する現像剤を生じ、またこの隙間が上記値よりも狭いと、現像剤が仕切壁71や現像ケース壁に過度に強く摺擦され、早期に劣化するおそれがある。
【0088】
また第2の撹拌部材45の楕円板66と現像スリーブ11との間の隙間を、1.5〜3mmに設定すると、現像剤を現像スリーブ11にスムーズに供給でき、また現像スリーブ11から現像剤をスムーズに回収することができる。両者間の隙間が大きすぎると、現像スリーブ11に対する現像剤の供給と回収が充分に行われず、逆に小さすぎると、現像剤のストレスによる劣化が早まり、またトナーの供給むらが発生する。
【0089】
現像ケース12には、図1及び図4に示すように、現像剤101のトナー濃度を検知するセンサ、本例では透磁率測定センサ72が設けられている。また画像形成装置本体には、図1及び図2に示したトナーボトル73が着脱自在に装着されている。
【0090】
現像ケース12内の現像剤室90に収容された現像剤101のトナー濃度が基準値以下になったことが、センサ72によって検知されると、その検知信号に基づくトナー補給信号によりトナーボトル73がその駆動軸74を介して回転駆動され、これによってそのトナーボトル73の補給口73aから、トナーが、上カバー6の上壁に形成された開口6a(図2)を通して、ケース本体3によって形成されたトナー補給部75(図3、図4)に供給される。
【0091】
補給トナーを収容したトナーボトル73は、その内壁面にスパイラル状の突起が形成され、その回転によって内部のトナーが順次奥側から手前側の補給口73aに送られ、トナー補給部75に補給される。その際、トナーボトル73とトナー補給部75との間には、補給トナーを案内するホッパ(図示せず)が設けられ、これによってトナーボトル73からのトナーが飛散せずにトナー補給部75に供給される。トナーボトル73を回転する駆動軸74には、図示していない電磁クラッチが設けられ、トナー補給信号が出力されると、その電磁クラッチがオンされ、トナーボトル用の駆動軸74が回転する。
【0092】
図3及び図4に示すように、トナー補給部75と、二成分現像剤の収容された現像剤室90との間には、多数の小孔が形成された薄い樹脂シートより成る遮蔽板76が配置され、またトナー補給部75には、軸77に基端部を固定された薄い樹脂シートより成るトナー送り出し部材78が配置され、その軸77に固定されたギア79は、第1の撹拌部材44の軸63に固定されたギア80に噛み合っている。遮蔽板76に形成された小孔の直径は例えば0.5〜1mm程の大きさである。軸77はケース本体3に回転自在に支持されている。
【0093】
前述のように第1の撹拌部材44が回転すると、その回転はギア80,79を介して軸77に伝えられ、トナー送り出し部材78が回転し、その先端部が遮蔽板76に摺接する。これによってトナー補給部75のトナーが、遮蔽板76の小孔を通して、撹拌部材44の設けられた現像剤室90へ送り込まれる。
【0094】
上述のように、トナーボトル73からのトナーを一旦トナー補給部75に蓄積し、遮蔽板76の小孔を通して少量ずつ現像剤室90へ送り出すので、トナーボトル73からトナーが一定量ずつ排出されなくとも、現像剤室90には一定量ずつトナーが補給されることになる。現像剤室90へ補給されたトナーは、撹拌部材44,45によって、ここに存する二成分系現像剤に撹拌混合される。
【0095】
上述したトナー補給動作を行っても、センサ72がトナー濃度低下を検知し続けたときは、トナーボトル73内のトナーが無くなったものとして、トナーエンドが近いことを表示部に表示し、その旨をユーザに報せる。このような表示がなされたにもかかわらず、トナーボトルが交換されないときは、その表示後、A4サイズの転写紙に対して50枚の画像形成動作を行ったとき、画像形成装置の作動を停止する。
【0096】
トナーボトル73の交換動作を、画像形成装置本体の前ドア(図示せず)の開閉時間により判断し、トナーボトル73の交換後、一定時間トナー補給動作を行い、センサ72の検知電圧が一定値に達したことを確認後、画像形成装置の動作禁止を解除する。
【0097】
図2に示したように、現像ケースカバー5には開口102が形成され、この開口102には図1に示した現像剤カートリッジ81が装着されている。新品の作像ユニット1が製造工場や販売店から出荷されるとき、現像剤カートリッジ81の下部開口は図示していない可撓性のシール部材によって覆われ、そのカートリッジ81の内部にトナーとキャリアを有する二成分系現像剤が収容されている。このとき現像剤室90には現像剤は存在しない。
【0098】
作像ユニット1がユーザの元に納品されたとき、図示していないローラを回転することによって、そのローラに上記シール部材を巻き取り、現像剤カートリッジ81の開口を開放する。これにより、その内部の現像剤が現像ケース12内の現像剤室90に落下する。このように、作像ユニット1がユーザの元に届けられるまで、現像剤カートリッジ81内に現像剤をシールして収納しておくので、作像ユニット1の保管中に吸湿による現像剤の劣化を防止でき、また現像剤が現像装置から漏出することも阻止できる。
【0099】
次に、二成分系現像剤を用いた現像メカニズム、特にトナーに作用する力を中心とした二成分系現像剤による磁気ブラシ現像の基本的な概念について説明する。
【0100】
現像電界について
図10に示した感光体7と現像スリーブ11との間に形成される現像電界は一般に次式で表わされる。
E=ε(Vd−Vb)/Gp (7)
E=現像電界(V/mm) ε:現像剤の誘電率 Vd:感光体の画像部電位(V) Vb:現像バイアス電圧(V) Gp:現像ギャップ(感光体と現像スリーブとのギャップ)(mm)
(7)式より、現像電界は、現像バイアス電圧でコントロールすることが可能であることがわかる。よって、画像濃度制御は現像バイアス電圧を変化させ、現像電界をコントロールすることによって行なっている。
【0101】
トナーに働く力について
a)現像剤のキャリアとトナーの付着力
キャリア粒子Cに付着するトナー粒子の付着力のモデル図を図12に示す。トナー粒子Tは、キャリアCの表面と何回かの接触・摩擦による何個かの電荷交換を行ない、qの負の電荷をもち、それに見合う正の電荷がキャリア側にある。両者の接触点での付着力Ftは、電荷qによるクーロン力と短距離ファンデルワールス力Fvとからなり、次のように表わされる。
Ft=Fv+αq/4πε (8)
ここで、rはトナー粒子半径、εは真空の誘電率、αはトナーの誘電率に依存する定数(1〜1.9)である。
【0102】
b)絶縁性磁気ブラシ現像のモデル
二成分現像では、トナー粒子に作用する現像駆動力(静電力)(q・E)がキャリアとの付着力より大きくなった時、現像が行なわれる。
q・E>Fv+αq/4πε (9)
式(9)は、図13で説明するとわかりやすい。ここではE<Eのような現像電界を示しており、直線はそれぞれの現像力を表わしている。Eの電界では現像は起こらず、Ft曲線より上のqEはqとqの間にあるので、この範囲にある電荷をもつトナーは、すべて現像可能なことになる。
【0103】
以上が、現像装置10とこれに関連する構成の説明であるが、少なくとも感光体と現像装置を組付けて成る従来の作像ユニットにおいては、その現像装置においてキャリアを有さない一成分系現像剤を用いるのが主流であった。この場合、トナー粒子を現像スリーブから感光体へ付着させるとき、二成分現像方式のキャリアのような媒体がないので、現像スリーブを感光体へ近接させる必要があり、その距離は、通常0〜0.3mmという微小なものである。従って、本実施例に採用される後述するようなトナーリサイクルを行ない、廃トナータンク等の部品を削除しようとした場合、一度感光体へ付着し、クリーニング装置で回収されたリサイクルトナーには紙粉等の異物が含まれるため、感光体と現像ローラ間のギャップが狭いと、この紙粉等の異物がそのギャップに挟まり、白スジ等の異常画像が発生しやすくなる。よって、一成分現像方式において、トナーリサイクルは不向きである。又、一成分現像方式でトナーリサイクルを実施しているものもあるが、この場合、作像ユニットの寿命は、コピー枚数で例えば10K(K=1000)枚前後と短い。
【0104】
これに対し、本例では現像方式を二成分現像方式とすることにより、感光体7と現像スリーブ11の間の距離を0.5mm以上とすることが可能で、トナーリサイクルを実施しても紙粉等の異物の挟み込みが発生することはなく、作像ユニットの寿命もコピー枚数で、例えば30K枚以上まで伸ばすことができる。よって、一成分現像方式に比べ、キャリアを使用する分のコストは上がるが、作像ユニット1の寿命が倍以上伸びるので、トータルとしてはコストダウンとなり、作像ユニット1の交換間隔が伸びる分、メンテナンス費用も削減される。
【0105】
次に転写装置について説明する。図1に示した転写ローラ15は、金属の芯金に導電性樹脂を巻きつけたもので、ここには図示されない圧縮スプリングにより軸受ごと感光体方向へ押しつけられている。この転写ローラ15に定電流を流し、感光体上のトナーを転写紙へ転写させる。この転写ローラ15も帯電ローラ8と同様の機構で、感光体7との接離を行うことが可能である。
【0106】
転写メカニズムについて説明すると、図14において、厚さdmの感光層31を有する感光体7上に体積電荷密度ρの帯電トナー層dtがあり、その下に厚さdpの転写紙100が位置する。このトナー層と転写紙との空隙をgとする。さらに転写紙100上には、帯電トナーと逆極性の電荷σcを与える。この状態において、感光体表面からxの所にある電荷量qtをもつトナーTに働く記録紙方向の力Fe(x)は、次式で表わされる。
Fe(x)=qt{−σc−ρ(dt−x)}/(ε・Kt) (10)
ここで、εは真空の誘電率、Ktはトナー層の比誘電率である。感光体表面から距離xの所にある帯電トナーTに働く静電力Fe(x)が、機械的な付着力Faとつり合い、この点でトナー層が分割され、(dt−x)の厚さのトナー層のみが転写に転写されると仮定すると、転写率ηは次式で表わされる。
η=(dt−x)/dt
=∫−1/(ρ・dt){σc+(ε・Kt)Fa/qt} (11)
なお、(10)式について体積電荷密度ρは、トナーの密度をδ、帯電トナー層の充填率をp、トナー比電荷をTpとすると、ρ=δ・p・Tpと表わせる。又、トナー電荷量qtはトナー1個の質量をmとすると、qt=Tp・mと表わせる。よって(10)式は、
Fe(x)={−σc・m・Tp−δ・p・m(dt−x)Tp}/(ε・Kt) (12)
とも書き表わせる。以上が転写モデル式である。
【0107】
次に転写制御方式について説明すると、まず、最大コピー幅サイズ紙でトナーが存在する場合について、転写モデルとして図15、図16に等価回路を示す。これにより画像部転写電流Ibを求める。
Ib=(V−Vl)/(R+Zb) (13)
ただし、Zb=(1/Cd+1/Cp+1/Ct)
Cd=Ko・Kd・L・Vp/d
Cp=Ko・Kp・L・Vp/dp
Ct=Ko・Kt・L・Vp/dt
V:転写電圧、Vl:画像部表面電位、R:転写ローラ抵抗値、Ko:誘電定数、Kd:感光層比誘電率、Kp:転写紙比誘電率、Kt:トナー層比誘電率、d:感光層膜厚、dp:転写紙厚、dt:トナー層厚、L:通紙幅、Vp:感光体周速
(13)式に各値を代入し、V−Vlの項を表わす式とすると、
V−Vl=Ib・R+(Ib・dp)/(Ko・Kp・L・Vp)+(Ib・dt)/(Ko・Kt・L・Vp)+(Ib・d)/(Ko・Kd・L・Vp) (14)
(14)式より、転写制御方式を定電流方式とすると、前記転写メカニズムで説明した転写に作用する転写電荷σcは、(14)式の転写紙の項のIb/L・Vpと同じであるので、Ibが一定となるように制御することにより、常に安定した転写電荷を与えることとなり、転写条件が安定する。
【0108】
一方、定電圧制御の場合は、(14)式においてVを一定とした時、転写ローラ15の抵抗値Rの値が環境変化で大きく変化し、抵抗値が大きくなると転写ローラ部の電圧が大きくなり、その分転写紙に印加される電圧値が小さくなり転写電荷が変化し、安定した転写条件が得られなくなる。よって転写ローラ15の抵抗値変化に対しては、定電流制御が有利である。
【0109】
次に、転写紙は存在するがトナーが存在する領域が狭い場合、又転写紙サイズが小さく、直接感光体7と転写ローラ15が接触する領域が広い場合について考慮してみる。図17及び図18は、転写紙100はあるがトナー層がない場合、図19及び図20は、直接感光体7と転写ローラ15が接触している場合である。ここで各々の流れる電流をIw、Idとすると、
Iw=(V−Vd)/(R+Zw) (15)
ただし、Zw=(1/Cd+1/Cp)
Id=(V−Vd)/(R+Zd) (16)
ただし、Zd=(1/Cd)
Vd:感光体非画像部表面電位
となる。ここで定電流制御の場合、小サイズ(A6等)の転写紙を通紙した時、印加電流の多くが感光体7へ流れ込み、結果Ibは十分な値にならず、転写電荷が小となり転写不良となる。これを防止する手段として、一度転写ローラの抵抗値を測定し、その後適正転写電荷を得られるような、この抵抗値に適した電圧を印加する方法がある。これについて説明すると、非画像形成時に電流Iが流れる電圧をVとすると、
=(V−Vd)/(R+Zd) (17)
なる関係から転写ローラの抵抗値Rが求められる。すなわち、
R=1/I・{V−Vd−(I・Id)/Cd} (18)
ここで、Vdは帯電電位、Cdは感光層の静電容量であり、この値はあらかじめわかっている値である。
【0110】
次に、画像形成時にIbが適正電流値Iとなる電圧値をVとすると、
=(V−Vl)/(R+Zb) (19)
(18)式を(19)式に代入し、Vを求めると、
=(I/I)×(V−Vd)+I(Zb−Zd)+Vl (20)
となり、非画像形成時に求めたVに対して、(20)式で導かれた電圧値Vで画像形成時に定電圧印加を行うことで、常に転写ローラの抵抗値Rに応じた適正な電圧Vで転写可能となる。
【0111】
線速の影響について考察する。感光体周速Vpと転写ローラ抵抗Rとの関係を見るため、(13)、(14)、(15)式をRについて解く式にすると、
R=(V−Vl)/(Qb・L・Vp)−Yb/Vp (21)
R=(V−Vd)/(Qw・L・Vp)−Yw/Vp (22)
R=(V−Vd)/(Qd・L・Vp)−Yd/Vp (23)
ただし、Yb/Vp=1/Cd+1/Cp+1/Ct
Yw/Vp=1/Cd+1/Cp
Yd/Vp=1/Cd
ここで、Qb、Qw、Qdは各々画像部、非画像部、非通紙部の単位面積当りの電荷量である。つまり、Qb=Ib/L・Vp、Qw=Iw/L・Vp、Qd=Id/L・Vpである。よって感光体周速を変える時には、周速に反比例して転写ローラ抵抗値を変えればよいことがわかる。
【0112】
なお、(16)式で、前記帯電ローラの帯電メカニズムのところで入れてある放電開始電圧(Vg)の項を省いてあるが、これはVgの式が、Vg=312+6.2×d/Kd+√(7737.6×d/Kd)で表わされ、d:感光層の膜厚と、Kd:感光層の比誘電率より決定される、ほぼ一定する値とみなせるため省略した。
【0113】
次に、図1に示したクリーニング装置17について説明する。クリーニング装置17のクリーニングブレード18は、平板状のポリウレタンゴム等の弾性体より成り、金属製のブレードホルダ82に接着剤又は両面テープで固定されている。ブレードボルダ82は、図3にも示すように、ケース本体3に形成された傾斜面84に設けられた2本の位置決めピン83により、傾斜面84に対して平行な方向の位置が規制され、感光体7の回転方向に対向する、いわゆるカウンター方向でケース本体3にビス85で固定されている。このビス85は、クリーニングブレード18の貼り付け面と同じ方向で、かつケース本体3に形成された傾斜面84に、ブレードホルダ82を完全に密着させ、かつその傾斜面84にならうようにし、傾斜面84に対して垂直な方向のクリーニングブレード18の位置を規制する。
【0114】
上記の様にして、感光体7に対するクリーニングブレード18の当接角と押圧が完全に保証され、クリーニング不良や異音発生等の不具合を防止している。またケース本体3にブレードホルダ82を固定するビス85のスラスト方向位置は、感光体のフランジ部材86,87を含めた両端よりさらに外側に設定することもでき、このようにすれば、感光体7をはずすことなく、クリーニングブレードのみ交換が可能となる利点が得られる。
【0115】
次にトナーリサイクル装置について説明する。
【0116】
図1及び図3に示したクリーニング装置17のクリーニングブレード18によって感光体7から掻き落されたトナーは、トナー搬送部材20によってクリーニングケース19内を手前側へ搬送され、そのケース19に一体に突設されたパイプ88を通して外部に排出される。トナー搬送部材20の奥側端部には、図示していないギアが固定され、このギアは、感光体7の奥側のフランジ部材87に一体に形成されたギアと噛み合い、感光体7の回転がトナー搬送部材20に伝えられ、そのトナー搬送部材20が回転駆動される。
【0117】
図3、図21及び図22に示すように、クリーニングケース19外に突出したトナー搬送部材20の手前側端部には、ローラ部91と、これに突設された一対のピン89が設けられ、このローラ部91にはトナーリサイクルベルト92が巻き掛けられている。このベルト92には、その周方向に沿って等ピッチで等しい長さの多数の長孔93が形成され、上述した各ピン89がいずれかの各長孔93に入り込んでいる。トナーリサイクルベルト92は、図3に示す如くケース本体3の一部により形成された樋状部94内のトナー搬送路に位置し、このトナー搬送路の上部は前述のように上カバー6(図2も参照)によって覆われている。
【0118】
図3及び図22に示すように、樋状部94には従動ローラ95が回転自在に支持され、このローラ95に上述のトナーリサイクルベルト92が巻き掛けられている。トナー搬送部材20が前述のように回転駆動されると、これと一体のローラ部91が回転し、このとき各ピン89がトナーリサイクルベルト92の長孔93に次々と係合してゆき、これによってトナーリサイクルベルト92が図22に矢印で示した方向に駆動される。またトナーリサイクルベルト92の外面には、その周方向に配列された多数の弾性フィン96が突設され、トナーリサイクルベルト92の駆動時に、各弾性フィン96は樋状部94と上カバー6の内壁面に摺接する。
【0119】
トナー搬送部材20によって、クリーニング装置17のクリーニングケース19外に排出されたトナーは、トナーリサイクルベルト92との受け渡し部付近で不安定に動いているうちに、そのベルト92の長孔93を通過し、樋状部94の内壁面上に落下する。そして、駆動されるトナーリサイクルベルト92の弾性フィン96によってトナー搬送路中を搬送され、現像装置10の現像剤室90に送り込まれる。このとき、弾性フィン96は、樋状部94の内壁面に圧接するので、トナーは残らず現像装置10へ向けて搬送され、しかもトナーに対して過大なストレスが及ぼされる不具合を阻止できる。
【0120】
また、従動ローラ95の近傍の樋状部94の内壁面部分には突部によって傾斜面94aが形成され、この傾斜面94aを各弾性フィン96が摺擦するとき、その弾性フィン96は弾性曲げ変形し、傾斜面94aを通過したところで、その各弾性フィン96は自然状態に勢いよく弾性復帰する。このため、弾性フィン96により搬送されたトナーは、図4に示した第2の撹拌部材45へと飛ばされる。このようにして確実にトナーを現像剤室90に搬送することができる。現像剤室90に搬送されたトナーは、ここに存する現像剤101に撹拌混合され、再使用される。
【0121】
図21に示すように、トナーリサイクルベルト92の厚さをt、これと一体の各弾性フィン96の厚さをtとしたとき、t<tに設定されている。これにより、弾性フィン96の腰の強さが、トナーリサイクルベルト92の腰の強さよりも強くなり、かかる弾性フィン96が図22に示すように樋状部94の内壁面に圧接してトナーを搬送するとき、その弾性フィン96自体が大きく曲げ変形することはない。そして、この弾性フィン96が傾斜面94aに接し始めると、そのフィン96が大きく曲げ変形し、次いでこれが弾性復帰するとき、勢いよくトナーを飛ばす。
【0122】
上述の如きトナーリサイクル装置を用いることにより、感光体7から回収したトナーを収容する廃トナータンクを廃止でき、その回収トナーを現像装置10において効率よく再利用することができる。
【0123】
またトナー搬送路を構成する樋状部94は、ケース本体3の一部によって構成されているので、この樋状部94と、その他のケース本体部分とを別体として構成した場合のように、その間の隙間からトナーが漏れ出る不具合を阻止でき、しかもそのトナー漏出防止用のスポンジなどのシール材を設ける必要もない。また樋状部94とその他のケース本体部分が一体化されているので、作像ユニット1の組付性が向上する。
【0124】
ところで、先にも説明したように、ユニットケース2に回転自在に支持された第1及び第2の撹拌部材44,45の軸63,64には、その奥側の端部に駆動ギア68,69がその各軸63,64に対して相対回転不能に嵌合している。このようなギアを軸に支持する際、従来はそのギアが軸からその軸線方向にずれ動いて離脱することを阻止するため、Eリング又はCリングなどから成る係止リングをその軸に嵌着し、かかる係止リングによってギアが軸から外れることを阻止するように構成していた。係止リングをギアの外れを防止するストッパとして用いていたのである。ところが、このような係止部材を用いれば、それだけ部品点数が増大し、コストが上昇する。
【0125】
これに対し、図3及び図4に示した構成例においては、上述の各駆動ギア68,69の外側に、ユニットケース2の奥側外板53が位置しており、この外板53によって、各駆動ギア68,69が各軸63,64からその軸線方向に外れることを阻するストッパが構成されている。すなわち、ユニットケース2のケース本体3は、軸63,64を回転自在に支持する奥側内板54と、そのさらに外側に位置する奥側外板53を有し、その板53,54の間に駆動ギア68,69を配置し、奥側外板53によって、駆動ギア68,69が軸63,64から外れることを阻止するストッパを構成しているのである。ギア68,69が位置する空間の上部は、現像ケースカバー5の一部によって覆われている。
【0126】
このように外板53が、その本来の機能のほかにギア68,69用のストッパの機能を兼ねるように構成することによって、従来必要とされた係止リングを省略することができ、その分、部品点数を減少させ、コストを低減することできる。
【0127】
さらに、各ギア68,69は、奥側の外板53と内板54の間の密閉された空間に位置しているので、ギア68,69に人が手を触れるおそれをなくすことができる。またケース本体3は、内板54と外板53の二重壁構造となっているので、現像装置10の現像剤が作像ユニット1の外部に漏れることをより確実に防止することができる。内板54と現像ケースカバー5の奥側の側板5a(図1)とから現像剤が多少現像剤室90の外に漏れたとしても、外板53によって、これが作像ユニット外に漏出することを阻止できるのである。
【0128】
また図23又は図24に示すように、各駆動ギア68,69に対向する奥側外板53の面にリブ状又は円筒状なとの突部97を形成しておき、その突部97に各駆動ギア68,69の端面が接触するように構成すると、各駆動ギア68,69が奥側外板53に接する面積を小さくすることができ、これによって両者間に作用する摩擦力を低減でき、ギア68,69の駆動トルクを低減できる。しかも、ギア68,69とユニットケース2の摩耗を少なくしてその寿命を延ばすことできる。
【0129】
上述のように、ギアに接するケース部分をそのギアの外側に隣接して設け、そのケース部分によってギアが軸から外れることを阻止する構成は、作像ユニット以外の各種の機械、装置にも広く適用できるものである。
【0130】
なお、各駆動ギア68,69が各軸63,64に対して、その軸線方向内側へずれることを防止する構成は各種採用でき、例えば図25に示すように、ユニットケース2の奥側内板54とこれに装着された軸受154のうちの少なくとも一方によって、各ギア68,69が軸63,64の軸線方向内側へ動くことを防止することができる。或いは図26に示すように、各軸63,64に段部163を形成し、この段部163により各ギア68,69がその軸線方向内側へずれ動くことを防止してもよい。また、図27に示すように、Eリング又はCリングより成る係止リング164によって各ギア63,64の軸線方向内側へのずれ動きを防止してもよい。
【0131】
以上の如く、図示した画像形成装置は、静電潜像の形成される感光体7より成る像担持体と、その感光体7に形成された静電潜像を、トナーとキャリアを有する二成分系現像剤を用いてトナー像として可視像化する現像装置10とを具備し、その現像装置10が、現像に供される二成分系現像剤101を担持して搬送する現像スリーブ11より成る現像剤担持搬送部材を有し、感光体7に形成されたトナー像を転写紙100より成る転写材に転写して記録画像を得るように構成されている。しかも、感光体7に静電潜像を形成すべく、その感光体7を帯電する帯電ローラ8として構成された帯電装置と、感光体7に形成されたトナー像を転写紙100に転写した後、その像担持体表面に残留するトナーを当該表面から除去するクリーニングブレード18より成るクリーニング部材を備えたクリーニング装置17とを具備している。
【0132】
このように、図示した画像形成装置は多数の要素を有し、しかも二成分系現像剤101が現像剤室90に収容されて使用される。このような各要素は、経時的に劣化し、遂には使用に耐え得ない状態となる。通常、これらの要素は、これを使用し得なくなったとき、又はその直前の時期に新たなものと交換される。この交換時期が各要素の寿命である。その際、その各要素が、全く別々に寿命となるように構成されていると、個々の要素が寿命となるごとに、その要素を交換しなければならず、その交換作業が大変煩雑となる。画像形成装置の複数の構成要素がほぼ同時に寿命となるように、その各要素を構成すれば、寿命となった複数の要素を一括して交換することができ、作業を簡素化することができる。
【0133】
ところが、従来は二成分系現像剤のキャリアの寿命と、他の作像要素の寿命の関連については何ら考慮が払われておらず、従って通常はキャリアが劣化したとき、その現像剤の交換を単独で行わざるを得なかった。
【0134】
本例では、このような観点から、像担持体の一例である感光体7と、二成分系現像剤101のキャリアの寿命とが一致するように、これらが構成されている。かかる構成によれば、感光体7と現像剤101が寿命となったとき、これらを一括して交換でき、その作業性を格段と向上させることができる。
【0135】
また図示した画像形成装置は、感光体7より成る像担持体と、現像スリーブ11より成る現像剤担持搬送部材が、ユニットケース2に組付けられて作像ユニット1が構成され、二成分系現像剤101が、ユニットケース2の一部によって構成された現像ケース12に収容されているので、上述のように、同一寿命を有する感光体7とキャリアが寿命となったとき、作像ユニット1の全体を新たなものと交換するようにしても、ユーザに対する経済的な負担が過大となることはない。作像ユニット1の全体を交換すれば、交換作業を著しく簡素化できる。しかも現像装置10の現像ケース12がユニットケース2によって構成されているので、作像ユニット全体のコストを低減でき、よってユーザに対する経済的な負担をより一層軽減することできる。
【0136】
また、感光体7の寿命と、キャリアの寿命だけでなく、帯電装置を構成する帯電ローラ8の寿命と、クリーニング部材を構成するクリーニングブレード18の寿命を全て一致させると、これらが寿命となったとき、これらを一括して交換でき、その作業性をより一層向上させることができる。
【0137】
その際、本例では感光体7より成る像担持体と、帯電ローラ8より成る帯電装置と、現像スリーブ11より成る現像剤担持搬送部材と、クリーニングブレード18より成るクリーニング部材とがユニットケース2に組付けられて作像ユニット1が構成され、二成分系現像剤101が、ユニットケース2の一部によって構成された現像ケース12に収容されているので、これらが寿命となったとき、作像ユニット1の全体を新たなものと交換するようにしても、ユーザに対する経済的負担をより一層軽減することができる。
【0138】
また、本例の画像形成装置には、そのクリーニング装置17によって、感光体7より成る像担持体から除去されたトナーを現像装置10において再使用すべく、当該トナーをクリーニング装置17から現像装置10へ搬送するトナーリサイクル装置が設けられ、これによってトナーを再使用できるので、ユーザへの経済的負担を軽減でき、寿命となった作像ユニットの全体を新たなものと交換しても、ユーザに対して過大な経済的負担をかけることはない。
【0139】
さらに、本例の画像形成装置においては、クリーニング装置17によって感光体7より成る像担持体から除去されたトナーを現像装置10において再使用すべく、当該トナーをクリーニング装置17から現像装置10へ搬送するトナーリサイクル装置が設けられていると共に、そのトナーリサイクル装置のトナー搬送路がユニットケース2の一部によって構成されているので、トナーを再利用することによってユーザに対する経済的負担を軽減でき、しかもトナーリサイクル装置を設けてもそのトナー搬送路がユニットケース2より構成されるので、作像ユニット1のコストの上昇を効果的に抑えることができ、寿命となった作像ユニットの全体を新たなものと交換しても、ユーザに対する負担をより一層確実に軽減することができる。
【0140】
ここで、作像ユニット1の各構成要素の寿命は、例えば次のようにして設定することできる。なお、ここでは各要素が使用に耐え得なくなる直前の状態となったとき、その寿命であるとしている。
【0141】
先ず現像剤の寿命、より正確にはそのキャリアの寿命は、その現像剤の撹拌及び循環などにより、キャリア表面のコーティング層が経時的に剥がされ、キャリアの摩擦帯電特性が劣化していくことにより決定される。すなわち、キャリアのコーティング層厚と、現像装置10の現像剤室90に収容される現像剤101の全量を選定することによって、現像剤101の大略の寿命を決定することができるのである。
【0142】
感光体7の寿命は、主にその感光層31が、クリーニングブレード18によって経時的に削られ、その膜厚が減少し、適正帯電電位が得られなくなることにより決定される。すなわち、感光層31の膜厚を選定することによって感光体7の大略の寿命を設定できる。
【0143】
クリーニングブレード18の寿命は、その感光体7に対する当接圧と、感光体7に当接しているブレードエッジの摩耗量とによって決定される。一般に、その摩耗量が大きくなると、感光体上の残留トナーに対するクリーニング性が劣化する。ところが、クリーニングブレード18の感光体7に対する当接圧が高い方が、クリーニングブレード18の摩耗量が大きくなるものの、そのクリーニング性が高まるので、クリーニングブレード18の寿命は延びる。但し、その当接圧が高いと、感光体7の負荷トルクが増大する不具合がある。このようなことから、感光体7に対するクリーニングブレード18の当接圧を選定することによって、クリーニングブレード18の大略の寿命を設定することができる。
【0144】
帯電ローラ8の寿命は、帯電ローラ表面に付着した微小トナーをクリーニングするクリーニングパッド32(図1)を帯電ローラ8に対して押し付ける圧力に左右され、その押し付け圧が大きいと帯電ローラ8に対するクリーニング性は良いが、経時で帯電ローラ表面に傷が発生し、画像むらとなる。また、押し付け圧が小さいと帯電ローラ8に対するクリーニング性が悪くなる。このようなことから、帯電ローラ8に対するクリーニングパッド32の押圧力を選定することによって、帯電ローラ8の大略の寿命を設定できる。
【0145】
以上が作像ユニット1を構成する各要素の寿命を決定する要因であるが、次に感光体7と現像剤101のキャリアの寿命を一致させるときのより具体的な例を示す。
【0146】
先ず、新たな作像ユニット1を使用し始めてから、S枚の転写紙に画像を形成したとき、すなわちコピー枚数がS枚となったときに感光体7と現像剤10が寿命となり、このとき作像ユニット1の全体を交換するものとする。
【0147】
現像剤101については、これが劣化して使用し得ない状態となるまで使用するとしたとき、上記S枚の画像形成を終えた直後に、キャリアの摩擦帯電特性が劣化するように、キャリアのコーティング層厚とその現像剤の量を決定する。キャリアの摩擦帯電極性は、トナー比電荷(単位重量当りの電荷量Q/M)で表わすことができ、図28にそのトナー比電荷とコピー枚数との関係を示す。トナー比電荷(Q/M)が許容範囲よりも低下すると、地肌汚れや画像濃度低下を起こすので、このような状態となる直前に、コピー枚数がS枚となるようにキャリアのコーティンク層厚とその現像剤の量を設定するのである。
【0148】
例えば、上述のS枚を30K枚、40K枚、又は50K枚(K=1000)とした場合、現像剤の寿命は、上述のようにキャリアの摩擦帯電特性の代用値であるトナー比電荷(Q/M)の値で決定されるが、この値が30K、40K、又は50K枚の各枚数通紙後でも10〜40μc/gの範囲内にあるように、しかもこの各コピー枚数に達した直後にトナー比電荷がこの値よりも低下するように、キャリアのコーティング層厚と現像剤の量を選択すれば、現像剤の寿命を正しく設定できる。具体的には、コーティング層厚を、例えば0.5μm〜1.5μmの範囲の中から選択し、かつ現像剤量(重量)を2.45N〜4.41Nの範囲の中から選択する。なお、現像剤101の量は少なければそれだけコストを低減できるので、寿命コピー枚数が30K枚のときは、50K枚のときより現像剤量を少なくする方向で、キャリアのコーティング層厚との組合せを設定することが望ましい。
【0149】
次に、感光体7についても、これが劣化するまで使用し続けると仮定したとき、コピー枚数がS枚となった直後に適正帯電電流が得られなくなるように、その感光層31の膜厚を設定する。その一例として、経時による感光層31の膜厚変化によって、その帯電電位が変化する幅を20V以下にする場合を考えると、先に帯電ローラ8の帯電メカニズムのところで示した式の中で、感光層31の膜厚の影響を受ける放電開始電圧(帯電開始電圧)Vgの項の変動が20V以下となるように、感光層31の膜厚を選定すればよい。S枚のコピー後の感光層摩耗量は予め判るので、これをlとする。初期の感光層の膜厚をd、その比誘電率をKdとし、初期の帯電開始電圧をVgs、S枚のコピー後の帯電開始電圧をVgeとすると、
Vgs=312+6.2×d/Kd+√(7737.6×d/Kd)
Vge=312+6.2×(d−l)/Kd+√{7737.6×(d−l)/Kd}
Vgs−Vge=1.931+49.17{√d−√(d−l)}
ここで、lが3μmとすると、
Vgs−Vge=5.79+49.17{√d−√(d−3)}
となり、変化幅20V以下とすると、
Vgs−Vge=5.79+49.17{√d−√(d−3)}≦20
√d−√(d−3)≦0.289
となる。ここで、√d=D、d−3=D−3とすると、
D−√(D−3)≦0.289
√(D−3)≦D−0.289
となり、その両辺を2乗すると、
−3≦D−0.578D+0.0835
0.578D≦3.0835
∴D≦5.33
√d=Dより、d=D
∴d=5.33=28.4μm
【0150】
よって、S枚コピー後に感光層31が仮に3μm摩耗するとした場合、28.4μmの膜厚の感光層を選定することで、変動幅を20V以下とすることが可能となる。
【0151】
例えば感光体7が30K枚のコピー枚数で寿命となるようにするには、30K枚の通紙後の感光層の膜厚変化による電位低下が20V以下となるように、しかもその感光体をさらにそのまま使用し続けたとしたとき、その直後に電位低下が20Vよりも大きくなるように、感光層31の膜厚を設定する。30K枚のコピー後の感光層31の摩耗量が2μmであるとすると、前述の計算式より、その初期の膜厚は13μm近傍となる。
【0152】
同様に、40K枚まで感光体7が寿命となるようにするときは、その感光層31の摩耗量は2.5μmとなるから、その初期の膜厚を20μm近傍とすればよい。
【0153】
さらに、50K枚で感光体7が寿命となるときは、感光層31の摩耗量は3μmとなるから、その初期の膜厚を28.4μm近傍とする。
【0154】
上述のようにして、現像剤と感光体の寿命を一致させることが可能となり、感光体と現像装置を一体化した作像ユニットを一括で交換できる。これにより、個々の部品を別々の時期のサービスマンが行って交換するのに比べ、メンテナンス費用を大幅に削減できる。
【0155】
また、クリーニングブレード18がS枚のコピーで寿命となるようにするには、そのブレード18の感光体表面への当接圧とクリーニングブレード18の摩耗量の関係を示した図29のグラフから判るように、例えばクリーニングブレード18の当接圧が小なるとき、S枚のコピー終了時に未だクリーニング不良が発生せず、しかもこのクリーニングブレード18をさらにそのまま使用し続けたときに、S枚のコピー直後に、クリーニング不良が発生するように、その当接圧を設定する。クリーニングブレード18の当接圧が大なるときも同様である。
【0156】
当接圧を高目に設定すると、クリーニングブレード18の摩耗量が多くなるが、クリーニングブレード18がクリーニング良好な状態で感光体を清掃できるコピー枚数が増大し、クリーニングブレード18の寿命を延ばせることは、図29からよく理解できる。但し、その当接圧が大きいと、前述のように感光体の負荷トルクが増大し、その分、駆動モータに大きな負荷がかかり、駆動モータの容量を大きくしなければならず、画像形成装置のコストが上昇する。従って、クリーニングブレード18の感光体7に対する当接圧をあまり高く設定しない方が経済的である。
【0157】
上述のようにして、クリーニングブレード18の寿命を設定でき、その寿命を感光体7と現像剤の寿命に一致させることにより、これらを同時に交換でき、メンテナンス費用をさらに安くすることができる。
【0158】
例えば、前述のように、現像剤と感光体7の寿命を30Kのコピー枚数としたとき、感光体7に対するクリーニングブレード18の当接圧を0.1176N/cm近傍とし、また寿命を40Kのコピー枚数としたときは、感光体7に対するクリーニングブレード18の当接圧を0.1568N/cm近傍に設定する。また寿命となるコピー枚数が50Kのときは、クリーニングブレード18の当接圧を0.196N/cm近傍に設定することによって、各要素の寿命をほぼ一致させることができる。
【0159】
また、S枚のコピー枚数で帯電ローラ8が寿命となり、このときこれを交換するように当該ローラ8を構成するには次のようにすればよい。
【0160】
図30及び図31は、帯電ローラ8の表面上に付着した微小トナーを清掃するクリーニングパッド32が帯電ローラ8の表面に当接する圧接力(パッド圧)と、そのパッド32によるクリーニング性と、帯電ローラ8の表面に発生する傷による画像むらの関係を示している。これらの図中に「OK」で示した範囲がクリーニングパッド32による帯電ローラ8のクリーニング性が良好で、画像むらが少ない範囲である。
【0161】
図30及び図31より、S枚コピー後でも、クリーニングパッド32によるクリーニング性が良好で、かつ画像むらの発生がなく、しかもその帯電ローラ8をそのまま使用し続けた場合に、S枚のコピー直後に、クリーニング性と画像むらが不良となるように、パッド圧を選定する。このようにして、現像剤101、感光体7、クリーニングブレード18及び帯電ローラ8の寿命を全て一致させることができる。
【0162】
例えば、その寿命までのコピー枚数Sを30Kとするときは、帯電ローラ8に対するパッド32の圧接力(パッド圧)を5.88N近傍に設定し、寿命コピー枚数Sが40Kのときは、パッド圧を7.84N近傍に設定する。同様に、寿命コピー枚数Sが50Kのときは、パッド圧を9.8N近傍に設定する。
【0163】
なお、このパッド圧も、そのパッド32による帯電ローラ8のクリーニング性を満足できれば、低目の設定することが好ましく、これにより感光体7の駆動負荷を低減できるので、その駆動モータとして小容量のものを使用でき、コストを低減できる。
【0164】
以上の通り、ユニットケース2に組付けられる交換要素、すなわち感光体7、現像剤101、クリーニングブレード18、帯電ローラ8を一定枚数コピーした後、これらが同時に寿命となるように、その各要素の材料を選び、かつ特性値を設定することで、今まで以上に経済的で無駄のないユニットとを構成でき、その部品交換時に、一つの作像ユニットを交換することで交換作業が終了し、メンテナンス性を大幅に向上させ、メンテナンス費用を大幅に削減可能となる。
【0165】
これに対し、低コストの高耐久部品の使用が可能であれば、その個々の部品の寿命を変えるように構成することも可能である。
【0166】
以上、ユニットケースに感光体と現像装置とクリーニング装置と帯電ローラの作像要素を組付けて作像ユニットを構成したが、これらの作像要素、又は他の作像要素を適宜組合せ、少なくとも1つの作像要素をユニットケースに組付けて作像ユニットを構成することもできる。通常は、少なくとも感光体と現像装置とをユニットケースに組付けて作像ユニットを構成することが多い。このように少なくとも1つの作像要素とユニットケースとを組付けて作像ユニットを構成することにより、その組立性が向上し、しかもその作像ユニットの交換時の操作性が高められる。また、本発明は、複数の作像要素を組付けて作像ユニットを構成しない画像形成装置にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】画像形成装置本体に装着された作像ユニットの垂直断面図である。
【図2】現像剤カートリッジの装着されていない作像ユニットとトナーボトルを示す概略外観斜視図である。
【図3】ケースカバー、現像ケースカバー、及び上カバーを取り外した状態の作像ユニットを示す斜視図である。
【図4】図3と同じ状態の部分断面平面図である。
【図5】ケース本体を反転させた状態を示す斜視図である。
【図6】他の例を示す、図5と同様な斜視図である。
【図7】感光体の拡大模式断面図である。
【図8】感光体と帯電ローラの模式図である。
【図9】帯電ローラと感光体と電源の等価回路を示す図である。
【図10】現像装置と感光体の関係を示す説明断面図である。
【図11】ドクタブレード、現像スリーブ、支持部材及び入口シールカバーの分解斜視図である。
【図12】現像モデルを示す説明図である。
【図13】トナー電荷とトナーに働く力との関係の一例を示すグラフである。
【図14】転写モデルを示す説明図である。
【図15】感光体と転写ローラの関係を示す説明図である。
【図16】図15の等価回路を示す図である。
【図17】感光体と転写ローラと転写紙の関係を示す説明図である。
【図18】図17の等価回路を示す図である。
【図19】感光体と転写ローラの関係を示す説明図である。
【図20】図19の等価回路を示す図である。
【図21】トナーリサイクルベルトの拡大斜視図である。
【図22】トナーリサイクルベルトの垂直断面図である。
【図23】ユニットケースの奥側外板の他の例を示す斜視図である。
【図24】ユニットケースの奥側外板のさらに他の例を示す斜視図である。
【図25】駆動ギアが軸の軸線方向内側にずれることを防止する一構成例を示す水平断面図である。
【図26】駆動ギアが軸の軸線方向内側にずれることを防止する他の構成例を示す水平断面図である。
【図27】駆動ギアが軸の軸線方向内側にずれることを防止するさらに他の構成例を示す水平断面図である。
【図28】コピー枚数とトナー比電荷との関係の一例を示すグラフである。
【図29】コピー枚数とクリーニングブレードの摩耗量との関係の一例を示すグラフである。
【図30】コピー枚数と帯電ローラのクリーニング性との関係の一例を示すグラフである。
【図31】コピー枚数と画像むらとの関係の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0168】
1 作像ユニット
2 ユニットケース
10 現像装置
12 現像ケース
17 クリーニング装置
100 転写紙
101 二成分系現像剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像の形成される像担持体と、該担持体に形成された静電潜像を、トナーとキャリアを有する二成分系現像剤を用いてトナー像として可視像化する現像装置とを具備し、前記現像装置が、現像に供される二成分系現像剤を担持して搬送する現像剤担持搬送部材を有し、前記像担持体に形成されたトナー像を転写材に転写して記録画像を得る画像形成装置において、
前記像担持体の寿命と、前記二成分系現像剤のキャリアの寿命とを一致させたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記像担持体と、前記現像剤担持搬送部材とをユニットケースに組付けて作像ユニットを構成し、前記二成分系現像剤を前記ユニットケースの一部によって構成された現像ケースに収容した請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
静電潜像の形成される像担持体と、該担持体に静電潜像を形成すべく、当該担持体を帯電する帯電装置と、像担持体に形成された静電潜像を、トナーとキャリアを有する二成分系現像剤を用いてトナー像として可視像化する現像装置と、像担持体に形成されたトナー像を転写材に転写した後、その像担持体表面に残留するトナーを当該表面から除去するクリーニング部材を備えたクリーニング装置とを具備し、前記現像装置が、現像に供される二成分系現像剤を担持して搬送する現像剤担持搬送部材を有し、前記像担持体に形成されたトナー像を転写材に転写して記録画像を得る画像形成装置において、
前記像担持体の寿命と、前記帯電装置の寿命と、前記二成分系現像剤のキャリアの寿命と、前記クリーニング部材の寿命とを全て一致させたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体と、前記帯電装置と、前記現像剤担持搬送部材と、前記クリーニング部材とをユニットケースに組付けて作像ユニットを構成し、前記二成分系現像剤を前記ユニットケースの一部によって構成された現像剤ケースに収容した請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリーニング装置によって像担持体から除去されたトナーを現像装置において再使用すべく、当該トナーをクリーニング装置から現像装置へ搬送するトナーリサイクル装置を設けた請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記クリーニング装置によって像担持体から除去されたトナーを現像装置において再使用すべく、当該トナーをクリーニング装置から現像装置へ搬送するトナーリサイクル装置を設け、該トナーリサイクル装置のトナー搬送路をユニットケースの一部によって構成した請求項4に記載の画像形成装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体と、該像担持体に形成された静電潜像を、トナーとキャリアを有する二成分系現像剤を用いてトナー像として可視像化する現像装置とを具備する作像ユニットにおいて、
前記像担持体の寿命と、前記二成分系現像剤のキャリアの寿命とが一致するように、像担持体の感光層の膜厚と、キャリアのコーティング層厚と、現像装置の現像剤室に収容される現像剤の量とを設定したことを特徴とする作像ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の作像ユニットを具備する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2006−11482(P2006−11482A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242413(P2005−242413)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【分割の表示】特願平7−145479の分割
【原出願日】平成7年5月19日(1995.5.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】