説明

保護テープ剥離装置

【課題】保護テープの剥離方向がいずれの方向であっても、適正な圧力でワークの表面の保護テープに剥離テープを貼着すること。
【解決手段】本発明のある実施の形態において、保護テープ剥離装置は、表面に保護テープ23が貼着されたワーク2を保持する保持手段1上にワーク2が保持されていない状態で、保護テープ23の剥離方向に応じた基準面の位置と圧着部材35との接触による通電を検知することによって剥離方向に応じた基準面の高さ位置を検出する高さ位置検出機構を備える。また、剥離方向に応じた基準面の高さ位置と、予め定められる剥離テープ31、ワーク2、ダイシングテープ22および保護テープ23の厚みとをもとに、下端面によって保護テープ23の非粘着面を押圧する際の圧着部材送り機構の駆動量を制御する制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等のワークに貼着された保護テープを剥離する保護テープ剥離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICやLSI等のデバイスが表面に形成されたウェーハ等のワークは、ダイシング装置等の分割装置によって個々のデバイスに分割され、各種電子機器に利用されている。また、近年では、電子機器の小型化や軽量化等を図るため、ワークの裏面を研削することでワークの厚さを例えば100μm以下や50μm以下等のように極めて薄く加工している。
【0003】
ここで、研削装置で裏面研削する際、ワークの表面には、塩化ビニール等で形成されたデバイス保護用の保護テープが貼着されるようになっており、この保護テープは、研削の終了後、ダイシング装置でダイシングされる前にワークの表面から剥離される。ワークの表面から保護テープを剥離する方法としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等で形成された剥離テープを保護テープに貼着し、剥離テープとともに保護テープを引っ張ることで剥離する方法が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
また、剥離テープとして熱により粘着性を発生する熱圧着式の剥離テープを用いるものも知られている。この場合の保護テープに対する剥離テープの貼着は、例えば保護テープ側が露出するように所定の保持面上にワークを保持した状態で圧着部材によって剥離テープを保護テープに押し付け、保護テープと剥離テープとを熱圧着することによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−197583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように熱圧着式の剥離テープを用い、裏面研削によって薄く加工されたワークの表面に貼着された保護テープを剥離する場合、熱圧着時の圧着部材の圧力が高すぎるとワークが破損してしまう事態が生じ得る。このため、ワークを保持する保持面の高さを事前に検出し、適正な圧力で圧着部材を保護テープに押圧する必要があった。ここで、保護テープの剥離方向はワークの品種等によって異なる場合があり、圧着部材による押圧は、この保護テープの剥離方向に応じた保持面上の位置で行われる。したがって、上記した保持面の高さは、この保護テープの剥離方向に応じた保持面上の位置で検出する必要があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みて為されたものであり、保護テープの剥離方向がいずれの方向であっても、適正な圧力でワークの表面の保護テープに剥離テープを貼着することができる保護テープ剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる保護テープ剥離装置は、表面に保護テープが貼着されたワークを保持する保持面を有する保持手段と、熱によって剥離テープの粘着面に粘着性を生じさせて前記保護テープに前記剥離テープを貼着する剥離テープ貼着手段と、前記保持面と前記保護テープに貼着した前記剥離テープとを相対的に移動させて前記剥離テープを介して前記保護テープを前記ワークの表面から剥離する剥離駆動手段と、を備えた保護テープ剥離装置であって、前記保持手段は、導電性を有し、前記保持面の外周側に前記保持面と同一平面の基準面を形成する枠体と、前記保持面に直交する回転軸を軸中心として前記保持手段を回転させる回転駆動機構と、を有し、前記剥離テープ貼着手段は、予め定められる前記保護テープの剥離方向に応じた前記基準面の位置上方に、前記粘着面が前記保護テープと対向するように前記剥離テープを位置付ける剥離テープ位置付け機構と、少なくとも押圧端面が導電性を有し、前記剥離テープ位置付け機構によって位置付けられた前記剥離テープを前記押圧端面によって前記粘着面と反対側の非貼着面側から押圧して前記保護テープに貼着する圧着部材と、前記圧着部材に熱を与える熱付与機構と、前記圧着部材を前記基準面に対して進退移動させる圧着部材送り機構と、を有し、前記保護テープの剥離方向に応じた前記基準面の位置と前記圧着部材との接触による通電を検知することによって、前記剥離方向に応じた前記基準面の高さ位置を検出する高さ位置検出手段と、前記剥離方向に応じた前記基準面の高さ位置と、予め定められる前記ワーク、前記保護テープおよび前記剥離テープの厚みとをもとに、前記押圧端面によって前記非粘着面を押圧する際の前記圧着部材送り機構の駆動量を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保護テープの剥離方向に応じた基準面の位置と圧着部材との接触による通電を検知し、剥離方向に応じた基準面の高さ位置を検出することができる。そして、検出した剥離方向に応じた基準面の高さ位置と、予め設定されるワーク、保護テープおよび剥離テープの厚みとをもとに、実際に剥離テープを押圧してその粘着面を保護テープに貼着する際の圧着部材送り機構の駆動量を制御することができる。したがって、保護テープの剥離方向がいずれの方向であっても、適正な圧力でワークの表面の保護テープに剥離テープを貼着することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、保護テープ剥離装置を構成する保持手段およびこの保持手段に保持されるワークの構成を説明する概略斜視図である。
【図2】図2は、保護テープ剥離装置の構成を説明する概略側面図である。
【図3】図3は、保護テープ剥離装置の主要な制御系の構成例を示すブロック図である。
【図4】図4は、保持手段の基準向きを説明する説明図である。
【図5】図5は、被押圧位置を説明する説明図である。
【図6】図6は、高さ位置検出処理に伴う保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。
【図7】図7は、図6の動作に続く保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。
【図8】図8は、図7の動作に続く保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。
【図9】図9は、図8の動作に続く保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。
【図10−1】図10−1は、保護テープ剥離処理に伴う保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。
【図10−2】図10−2は、図10−1に続く保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。
【図10−3】図10−3は、図10−2に続く保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。
【図11−1】図11−1は、図10−3に続く保護テープ剥離処理に伴う保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。
【図11−2】図11−2は、図11−1に続く保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。
【図11−3】図11−3は、図11−2に続く保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。
【図12】図12は、図11−3に続く保護テープ剥離処理に伴う保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態である保護テープ剥離装置について図面を参照して説明する。図1は、保護テープ剥離装置を構成する保持手段1およびこの保持手段1に保持されるワーク2の構成を説明する概略斜視図である。また、図2は、保護テープ剥離装置の構成を説明する概略側面図であり、図3は、保護テープ剥離装置の主要な制御系の構成例を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態の保護テープ剥離装置が剥離対象とするワーク2は、略円板形状を有し、表面に複数のデバイス(不図示)が形成されたものであり、研削装置によって薄く研削加工された後で保護テープ剥離装置によって表面に貼着された保護テープが剥離され、その後分割装置(ダイシング装置)によって個々のデバイスに分割される。ここで、保護テープ剥離装置は、例えば、フレーム21の内側開口部を覆うように外周部が装着されたダイシングテープ22の表面に裏面が貼着された状態のワーク2を扱う。そして、保護テープ剥離装置は、このワーク2の裏面側を下にして保持手段1上に搬入し、ワーク2の表面に貼着された保護テープ23を剥離する。なお、剥離される保護テープ23は、ワーク2が研削装置で研削加工される際、デバイスが形成された表面側を保護するために貼着されるものである。ただし、保護テープ剥離装置が扱うワーク2は、フレーム21と一体になったものに限定されるものではなく、ワーク2そのものを保持手段1上に載置する構成としてもよい。
【0013】
保持手段1は、保護テープ剥離装置が扱う上記のワーク2に応じた大きさのチャックテーブルを主体とするものである。具体的には、保持手段1は、吸引保持部11と、この吸引保持部11を囲繞する枠体12とを含み、保持面である吸引保持部11の上面と基準面である枠体12の上面とが同一平面上に形成されて保持手段1の上面を構成している。換言すると、保持手段1の上面は、中央の保持面と、この保持面を囲繞する基準面とで構成される。
【0014】
吸引保持部11は、例えばポーラスセラミックス等から構成され、図3に示す吸引機構51によって保持手段1上に搬入されたワーク2の裏面側をダイシングテープ22を介して吸引保持する。一方、枠体12は、少なくとも吸引保持部11の保持面と同一平面を形成する基準面(上面)が金属等の導電材料で形成され、後述する高さ位置検出処理では、この基準面の高さ位置が検出される。
【0015】
この保持手段1は、図2中に矢印A1で示すように、図3に示す保持手段移動機構53によって水平方向に移動可能に設けられる。また、保持手段1は、図2中に矢印A2で示すように、図3に示す回転駆動機構52によって水平面内で回転可能に設けられる。ここで、図1等では、保持手段1の上面において、後述する保持手段1の基準向きを視覚的に識別するためのマークM1を付して示している。
【0016】
また、本実施の形態の保護テープ剥離装置は、図2に示すように、保持手段1の上方に位置する剥離テープ貼着手段3を備える。この剥離テープ貼着手段3は、剥離テープ31と、剥離テープ31の端部をカッター32の下方位置まで案内するローラ331,332と、剥離テープ31を切断するカッター32と、剥離テープ31の端部を基準面内の後述する被押圧位置上方に位置付ける剥離テープ位置付け機構34と、剥離テープ位置付け機構34によって下方に位置付けられた剥離テープ31を保護テープ23に熱圧着する圧着部材35とを含む。
【0017】
剥離テープ31は、不図示のテープ供給部から供給され、少なくとも端部において粘着面311が下に向けられてワーク2の表面に貼着された保護テープ23と対向配置される。
【0018】
カッター32は、図3に示すカッター送り機構54によって鉛直方向に昇降移動可能に設けられ、図2に示す退避位置と、この退避位置から下降して下方の剥離テープ31を切断する切断位置との間で昇降移動する。
【0019】
剥離テープ位置付け機構34は、剥離テープ31の端部を把持する把持部341を有し、図2に示す退避位置と剥離テープ31の端部近傍のテープ把持位置との間で水平方向に移動可能に設けられる。
【0020】
圧着部材35は、少なくとも押圧端面としての下端面が金属等の導電材料で形成され、図3に示す圧着部材送り機構56によって鉛直方向に昇降移動可能に設けられる。また、圧着部材35には、図3に示す熱付与機構57によって熱が付与されるようになっており、圧着部材35は、図2に示す退避位置から下降して下方の剥離テープ31を押圧し、付与される熱で保護テープ23に剥離テープ31を熱圧着する。また、圧着部材35の下端面は、保持手段1の枠体12の基準面(上面)と協働して鉛直下方に位置する基準面内の被押圧位置の高さ位置を検出する高さ位置検出手段としての高さ位置検出機構58(図3を参照)を構成する。この高さ位置検出機構58は、圧着部材35と枠体12の基準面との通電によってこれらの接触を検知し、接触した時点での圧着部材35の駆動量を検出信号として制御手段4に出力することで、基準面内の被押圧位置の高さ位置を検出する。
【0021】
また、本実施の形態の保護テープ剥離装置は、図3に示すように、装置内の適所に収められた制御手段4を備える。この制御手段4は、マイクロコンピュータ等で構成され、保護テープ剥離装置を構成する各部の動作を制御して保護テープ剥離装置を統括的に制御する。具体的には、制御手段4は、吸引機構51や回転駆動機構52、保持手段移動機構53、カッター送り機構54、剥離テープ位置付け機構34、圧着部材送り機構56、熱付与機構57を駆動して装置各部の動作を制御するとともに、高さ位置検出機構58からの検出信号を入力し、基準面内の被押圧位置の高さ位置を検出するための処理(高さ位置検出処理)と、実際にワーク2の表面から保護テープ23を剥離させるための処理(保護テープ剥離処理)とを行う。ここで、高さ位置検出処理は、保護テープ剥離処理を行う前の装置のセットアップ時に行う処理であり、例えば剥離対象とするワーク2の品種を変更する際や剥離対象とするワーク2が搬入される保持手段1を部品交換等によって交換した際等に適宜行われる。
【0022】
ここで、制御手段4は、保護テープ剥離装置の動作に必要な設定値等の各種データ等を記憶した記憶手段6と接続されている。この記憶手段6は、更新記憶可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵或いはデータ通信端子で接続されたハードディスク、CD−ROM等の情報記憶媒体およびその読取装置等によって実現される。
【0023】
つぎに、制御手段4が行う高さ位置検出処理および保護テープ剥離処理について順に説明する。図4は、保持手段1の基準向きを説明する説明図であり、保持手段1および剥離テープ貼着手段3を模式的に示した概略平面図である。また、図5は、被押圧位置を説明する説明図であり、ワーク2および保持手段1を模式的に示した概略平面図である。なお、図5中では、ワーク2の表面に貼着された保護テープ23や、ダイシングテープ22およびこのダイシングテープ22によってワーク2と一体化されたフレーム21の図示を省略している。
【0024】
本実施の形態の保護テープ剥離装置では、保持手段1は、予め定められる基準向きを向いた状態で剥離テープ貼着手段3の下方に進入するようになっている。以下では、図4に示すように、例えば保持手段1の上面に付されたマークM1を保持手段1の進入方向に向けた保持手段1の向きを基準向きとする。
【0025】
そして、保護テープ剥離処理で実際にワーク2から保護テープ23を剥離する際には、上記のように剥離テープ貼着手段3の下方に進入した保持手段1が回転し、被押圧位置が圧着部材35の鉛直下方に移動するようになっている。そして、剥離テープ貼着手段3は、この被押圧位置の保護テープ23に剥離テープ31を押し付けて熱圧着し、その後剥離テープ31とともに保護テープ23を引っ張ることで保護テープ23をワーク2から剥離する。
【0026】
ここで、どの方向に保護テープ23を剥がすのか(ワーク2上のどの位置から保護テープ23を剥がすのか)は、例えば結晶方位を含む扱うワーク2の品種等に応じて決まっている。例えば、図5中に矢印A5で示す方向が保護テープ23の剥離方向として定められている場合であれば、保護テープ23は、矢印A5始点側の剥離位置P5から矢印A5の剥離方向に沿ってワーク2から剥がされる。
【0027】
一方で、保持手段1上にどの向きでワーク2を搬入するのか(基準向きの保持手段1上にどの向きでワーク2を搬入するのか)も、予め決まっている。例えば、図5中に示すマークM11が指し示す方向が保持手段1に対するワーク2の搬入向きであるならば、ワーク2は、このマークM11によって示される搬入向きが保持手段1の進入方向に向かうように、基準向きを向いた保持手段1に搬入される。換言すれば、ワーク2は、そのマークM11の位置が保持手段1のマークM1の位置に配置される向きで保持手段1上に載置される。
【0028】
このように、本実施の形態では、保持手段1の基準向きと、この基準向きを向いた保持手段1に対して搬入されるワーク2の搬入向きが既知である。したがって、ワーク2が実際に保持手段1上に載置された際にその保護テープ23の剥離位置が位置する保持手段1の基準面内の位置(本明細書では、この位置のことを「被押圧位置」と呼ぶ。)も事前に定まる。例えば、上記したように保護テープ23の剥離方向が図5中に矢印A5で示す方向として定められている場合、保護テープ23の剥離位置P5が置かれる保持手段1上の位置は、枠体12の基準面内の図5中に一点鎖線で示す位置E5となり、この位置E5が被押圧位置となる。なお、保護テープ剥離処理でワーク2から保護テープ23を剥離する際には、保持手段1が回転して被押圧位置E5が圧着部材35の鉛直下方に移動され、剥離位置P5での保護テープ23と剥離テープ31との熱圧着が実現される。
【0029】
ところで、図5中に矢印A6で示す方向が保護テープ23の剥離方向として定められている場合であれば、保護テープ23は矢印A6始点側の剥離位置P6から矢印A6の剥離方向に沿ってワーク2から剥がされるが、この場合に保護テープ23の剥離位置P6が置かれる保持手段1上の位置は、枠体12の基準面内の図5中に二点鎖線で示す位置E6となり、この位置E6が被押圧位置となる。このように、保護テープ23の剥離位置が置かれる基準面内の被押圧位置は、保護テープ23の剥離方向に応じて異なる。本実施の形態では、保護テープ剥離処理で剥離対象とするワーク2について定められている保護テープ23の剥離方向をもとにこの被押圧位置を予め設定し、設定値として記憶手段6に記憶しておく。そして、高さ位置検出処理では、この被押圧位置の高さ位置を検出する。
【0030】
まず、高さ位置検出処理について説明する。図6〜図9は、高さ位置検出処理に伴う保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。なお、図6〜図9の各図では、上段において保護テープ剥離装置の概略側面図を示し、下段において保護テープ剥離装置を構成する保持手段1の概略平面図を示しており、各図中においてその上段と下段とで各部の位置関係を揃えて図示している。
【0031】
すなわち、高さ位置検出処理ではまず、制御手段4が保持手段移動機構53を駆動し、図6中に矢印A11で示すようにワークが載置されていない状態で保持手段1を剥離テープ貼着手段3の下方に移動させる。ここでの制御によって、保持手段1は、上記した基準向きを向いた状態で剥離テープ貼着手段3の下方に進入する。
【0032】
つづいて、制御手段4が上記のように予め設定される被押圧位置をもとに回転駆動機構52を駆動し、この被押圧位置が圧着部材35の鉛直下方に位置するように保持手段1を回転させる。例えば、枠体12の基準面内の図6中に一点鎖線で示す位置E1が被押圧位置として設定されている場合には、保持手段1を図7中に矢印A12で示すように反時計回りに水平面内で回転させてこの被押圧位置E1を圧着部材35の鉛直下方に移動させる。なお、被押圧位置が保持手段1の基準向きにおいて圧着部材35の鉛直下方となる位置と一致している場合には、保持手段1の回転は不要である。
【0033】
つづいて、制御手段4が圧着部材送り機構56を駆動し、図8中に矢印A13で示すように圧着部材35を下降させる。このとき、高さ位置検出機構58は、圧着部材35の下端面が枠体12の基準面の被押圧位置E1と接触した際の通電を検知することによって、この被押圧位置E1の高さ位置を検出する。ここで検出された被押圧位置E1の高さ位置は、設定値として記憶手段6に記憶される。
【0034】
その後、制御手段4が圧着部材送り機構56を駆動して図9中に矢印A14で示すように圧着部材35を退避位置まで上昇させるとともに、回転駆動機構52を駆動して保持手段1を基準向きに移動させる。ここでは、保持手段1を図9中に矢印A15で示すように時計回りに回転させてマークM1を保持手段1の進入方向側を向くように移動させる。
【0035】
つぎに、保護テープ剥離処理について説明する。図10−1〜図10−3,図11−1〜図11−3および図12は、保護テープ剥離処理に伴う保護テープ剥離装置の動作を説明する図である。
【0036】
ここで、保護テープ剥離処理に先立ち、不図示の搬送手段が保持手段1上に剥離対象のワーク2を搬入するようになっており、制御手段4が吸引機構51を駆動してワーク2の裏面を吸引保持させる。その後、制御手段4が保持手段移動機構53を駆動し、このようにして実際に剥離対象とするワーク2が搬入された保持手段1を、図10−1中に矢印A211で示すように剥離テープ貼着手段3の下方に移動させる。その後、制御手段4が被押圧位置をもとに回転駆動機構52を駆動し、この被押圧位置が圧着部材35の鉛直下方に位置するように、保持手段1を図10−1中に矢印A212で示すように回転させる。なお、被押圧位置が保持手段1の基準向きにおいて圧着部材35の鉛直下方となる位置と一致している場合には、保持手段1の回転は不要である。
【0037】
つづいて、制御手段4が剥離テープ位置付け機構34を駆動し、図10−2中に矢印A22で示すように退避位置からテープ把持位置まで水平移動させるとともに、テープ把持位置において把持部341に剥離テープ31の端部近傍を把持させる。
【0038】
その後、制御手段4の制御のもと、図10−3中に矢印A23で示すように把持部341が剥離テープ31の端部近傍を把持したまま剥離テープ位置付け機構34が退避位置に復帰する。剥離テープ位置付け機構34は、このように駆動されることによって剥離テープ31を所定量引き出し、剥離テープ31の端部を圧着部材35の鉛直下方に位置付ける。この結果、被押圧位置に置かれるように保持手段1上に載置された保護テープ23の剥離位置上方に、剥離テープ31の端部が位置付けられる。
【0039】
つづいて、把持部341が剥離テープ31の端部を把持したままの状態で制御手段4が圧着部材送り機構56を駆動し、図11−1中に矢印A24で示すように圧着部材35を退避位置から所定の駆動量下降させる。さらにこのとき、制御手段4が熱付与機構57を駆動し、圧着部材35に熱を付与させる。ここで、圧着部材35の駆動量は、事前に高さ位置検出処理の過程で検出され、記憶手段6に設定値として記憶された基準面内の被押圧位置の高さ位置をもとに決定される。具体的には、制御手段4は、この設定値と既知である剥離テープ31、ワーク2、ダイシングテープ22および保護テープ23の厚みをもとに、圧着部材35の下端面が剥離テープ31を間に介した状態で保護テープ23と接するための圧着部材35の駆動量を決定する。ワーク2、ダイシングテープ22および保護テープ23の厚みは、予め記憶手段6に記憶しておけばよい。なお、使用する保護テープ23によって必要な押圧力が異なる場合があるが、このような場合には、保護テープの品種毎の熱圧着時の押圧力を予め設定して記憶手段6に記憶しておくようにしてもよい。そして、使用する保護テープ23の品種に応じた熱圧着時の押圧力を加味して圧着部材35の駆動量を決定するようにしてもよい。
【0040】
そして、圧着部材35は、このように駆動されることによって下方の剥離テープ31を粘着面311の反対側の非粘着面側から押圧し、その粘着面311を保護テープ23(詳細には保護テープ23の剥離位置)に押し付けるとともに、付与される熱によって剥離テープ31と保護テープ23の当接部分を加熱し、保護テープ23に剥離テープ31を熱圧着する。
【0041】
つづいて、把持部341が剥離テープ31の端部を把持し、かつ圧着部材35が剥離テープ31を押圧したままの状態で制御手段4がカッター送り機構54を駆動し、図11−2中に矢印A25で示すようにカッター32を退避位置から切断位置まで下降させる。カッター32は、このように駆動されることによって下方の剥離テープ31を切断する。
【0042】
つづいて、制御手段4が圧着部材送り機構56を駆動して図11−3中に矢印A26で示すように圧着部材35を退避位置まで上昇させるとともに、カッター送り機構54を駆動して図11−3中に矢印A27で示すように圧着部材35を退避位置まで上昇させる。このとき、把持部341が剥離テープ31の端部を把持した状態は維持される。この結果、保護テープ23の剥離位置に、切断された剥離テープ31aの粘着面が貼着される。
【0043】
つづいて、把持部341が切断された剥離テープ31aの端部を把持した状態で制御手段4が保持手段移動機構53を駆動し、保持手段1を図12中に矢印A28で示すように進入方向にさらに移動させる。この結果、一部がワーク2上の保護テープ23に貼着された剥離テープ31aの一端が把持部341によって引っ張られ、剥離テープ31aの粘着力によって保持手段1の移動とともに保護テープ23が剥離される。この結果、保護テープ23は、その剥離位置を始点とし、剥離方向に沿ってワーク2から剥がされる。なお、ここでは、剥離テープ貼着手段3は移動させずに保持手段1を移動させることとしたが、保持手段1(保持面)と保護テープ23に貼着した剥離テープ31aとが相対的に移動される構成であれば別の構成でもよい。例えば、保持手段1を移動させずに剥離テープ貼着手段3側を移動させる構成としてもよいし、保持手段1および剥離テープ貼着手段3の双方を逆方向に移動させて保持手段1と保護テープ23に貼着した剥離テープ31aとを相対移動させることとしてもよい。
【0044】
以上の保護テープ剥離処理を終えると、不図示の搬入出手段が保持手段1上のワーク2を搬出するようになっており、その後新たに剥離対象のワーク2が保持手段1上に搬入されて上記した動作が繰り返される。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、剥離対象とするワーク2に貼着された保護テープ23の剥離方向をもとに、保護テープ剥離装置においてこのワーク2が搬入される保持手段1上の基準面内の被押圧位置(保護テープ23の剥離位置が置かれる基準面内の位置)を予め設定しておき、この被押圧位置の高さ位置を事前に検出することができる。そして、実際にワーク2から保護テープ23を剥離する際、検出した高さ位置をもとに保護テープ23と剥離テープ31とを熱圧着させるための圧着部材35の駆動量を決定することができる。具体的には、検出した高さ位置と、既知である剥離テープ31、ワーク2、ダイシングテープ22および保護テープ23の厚みとをもとに、圧着部材35の駆動量を決定することができる。したがって、圧着部材35の下端面によって剥離テープ31を介して保護テープ23を押圧する際に、この圧着部材35を、保持手段1の基準面内における被押圧位置の高さ位置に応じた駆動量で下降させることができる。これによれば、保護テープの剥離方向がいずれの方向であっても、適正な圧力でワークの表面の保護テープに剥離テープを貼着することできるという効果を奏することができ、剥離テープ31の貼着時にワーク2を破損するといった事態が生じない。したがって、ワーク2を破損することなくワーク2の表面に貼着された保護テープ23を確実に剥離することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明の保護テープ剥離装置は、保護テープの剥離方向がいずれの方向であっても、適正な圧力でワークの表面の保護テープに剥離テープを貼着するのに適している。
【符号の説明】
【0047】
1 保持手段
11 吸引保持部
12 枠体
3 剥離テープ貼着手段
31 剥離テープ
32 カッター
34 剥離テープ位置付け機構
35 圧着部材
4 制御手段
51 吸引機構
52 回転駆動機構
53 保持手段移動機構
54 カッター送り機構
56 圧着部材送り機構
57 熱付与機構
58 高さ位置検出機構
6 記憶手段
2 ワーク
23 保護テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に保護テープが貼着されたワークを保持する保持面を有する保持手段と、熱によって剥離テープの粘着面に粘着性を生じさせて前記保護テープに前記剥離テープを貼着する剥離テープ貼着手段と、前記保持面と前記保護テープに貼着した前記剥離テープとを相対的に移動させて前記剥離テープを介して前記保護テープを前記ワークの表面から剥離する剥離駆動手段と、を備えた保護テープ剥離装置であって、
前記保持手段は、
導電性を有し、前記保持面の外周側に前記保持面と同一平面の基準面を形成する枠体と、
前記保持面に直交する回転軸を軸中心として前記保持手段を回転させる回転駆動機構と、
を有し、
前記剥離テープ貼着手段は、
予め定められる前記保護テープの剥離方向に応じた前記基準面の位置上方に、前記粘着面が前記保護テープと対向するように前記剥離テープを位置付ける剥離テープ位置付け機構と、
少なくとも押圧端面が導電性を有し、前記剥離テープ位置付け機構によって位置付けられた前記剥離テープを前記押圧端面によって前記粘着面と反対側の非貼着面側から押圧して前記保護テープに貼着する圧着部材と、
前記圧着部材に熱を与える熱付与機構と、
前記圧着部材を前記基準面に対して進退移動させる圧着部材送り機構と、
を有し、
前記保護テープの剥離方向に応じた前記基準面の位置と前記圧着部材との接触による通電を検知することによって、前記剥離方向に応じた前記基準面の高さ位置を検出する高さ位置検出手段と、
前記剥離方向に応じた前記基準面の高さ位置と、予め定められる前記ワーク、前記保護テープおよび前記剥離テープの厚みとをもとに、前記押圧端面によって前記非粘着面を押圧する際の前記圧着部材送り機構の駆動量を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする保護テープ剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−23606(P2011−23606A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168149(P2009−168149)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】