説明

停止判断装置、ナビゲーション装置、停止判断方法、停止判断プログラムおよび記録媒体

【課題】移動体が停止したか否かを精度よく判断すること。
【解決手段】ナビゲーション装置100の停止判断部110は、自装置が搭載された移動体が停止しているか否かを判断する。撮影部111は、移動体の移動に応じて撮影画像に変化が生じる方向に向けられている。移動速度情報取得部112は、移動体の移動速度情報を取得する。判断部113は、撮影部111によって撮影された撮影画像の変化の有無に基づいて、移動体が停止しているか否かを判断する。補正量取得部121は、判断部113による判断結果に基づいて、移動体の移動状態を検出するセンサ131からの出力信号を補正するための補正量を取得する。補正部123は、補正量を用いてセンサ131からの出力信号を補正する。算出部124は、補正部123によって補正されたセンサ131からの出力信号を用いて移動体の現在位置を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自装置を搭載している移動体が停止しているか否かを判断する停止判断装置、ナビゲーション装置、停止判断方法、停止判断プログラムおよび記録媒体に関する。ただし、この発明の利用は、上述した停止判断装置、ナビゲーション装置、停止判断方法、停止判断プログラムおよび記録媒体に限られない。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置では、車両やナビゲーション装置本体に搭載された各種センサからの出力値やGPS衛星からの受信信号(GPS信号)、周辺の地図情報(マップマッチング)などに基づいて車両の位置を算出している。各種センサとは、たとえば、ジャイロセンサや車速センサ、加速度センサなどである。たとえば、ジャイロセンサは、角度の変化によって出力信号の電圧値が変化するセンサである。また、車速センサは、車両の移動速度に応じた車速パルスを出力する。
【0003】
また、加速度センサは、加速度の変化によって出力信号の電圧値が変化するセンサである。ここで、加速度センサが検出する加速度には、車両の進行による加速度と、車両の傾きによる重力加速度の2種類がある。ナビゲーション装置は、車速センサからの出力値が取得できる場合には、加速度センサからは車両の傾きによる重力加速度のみを検出し、車両の傾きを算出する。
【0004】
ナビゲーション装置は、各種センサからの出力電圧値の中心電圧値に対する変化量に基づいて、それぞれのパラメータを検出している。しかし、それぞれのセンサは、デバイスごとに固有の特性を有し、デバイスごとに中心電圧値が異なる。このため、デバイスごとの特性に応じた補正をおこなわないと、パラメータの検出結果に誤差が生じてしまう。このため、ナビゲーション装置は、車両が停止しているときの各センサの出力電圧値をオフセットに設定し、パラメータの検出結果に誤差が生じるのを防止している。
【0005】
ここで、車両が停止しているか否かは、たとえば、車速センサや加速度センサからの出力信号によって判断する方法が知られている(たとえば、下記特許文献1および2参照)。
【0006】
また、ナビゲーション装置に車速センサを接続することができない場合に、GPS信号から算出した車両の現在位置の移動量に基づいて、車両の速度を算出する方法が知られている。しかし、この方法では、車両がトンネル内に入った場合などGPS信号を受信できないときには、車両の速度を算出することができない。このため、車速センサからの出力値が取得できない場合において、加速度センサから出力される車両の進行による加速度に基づいて車両の移動量を算出し、車両の速度を算出する方法が提案されている(たとえば、下記特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平05−306936号公報
【特許文献2】特開平08−285621号公報
【特許文献3】特開平05−010774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1および2にかかる技術では、ナビゲーション装置にセンサを接続できないと車両が停止しているか否かを判断できないという問題点が一例として挙げられる。また、車速センサには、車両の停止中にも車速パルスを出力するものがある。このような車速センサが接続されたナビゲーション装置は、車両が停止している間も車両が移動していると誤認識するため、停止判断を正確におこなうことができないという問題点が一例として挙げられる。さらに、加速度センサからの出力によって車両が停止しているか否かを判断する場合、車両の停止中に生じる振動によって停止判断を正確におこなうことができない場合があるという問題点が一例として挙げられる。
【0009】
また、上述した特許文献3にかかる技術では、坂道など傾斜がある地点において、車両が停止しているか否か(すなわち、車両の移動速度が0か否か)の判断を正確におこなうことができないという問題が一例として挙げられる。加速度センサの出力値は、車両の進行による加速度のみならず、車両の傾きによる重力加速度にも影響される。このため、傾斜のある坂道で車両が停止している場合、ナビゲーション装置は、車両にかかる重力加速度を移動による加速度と取り違えてしまい、車両が移動していると判断してしまう。
【0010】
また、ナビゲーション装置における車両の現在位置の算出には、GPS信号のみならず各種センサからの出力信号も用いられる。車両が停止しているか否かを正しく判断できないと、ナビゲーション装置が検出する車両の走行状態と実際の車両の走行状態との間の誤差が大きくなり、車両の現在位置の算出精度が低下してしまうという問題点が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる停止判断装置は、移動体に搭載される停止判断装置であって、前記移動体の移動に応じて撮影画像に変化が生じる方向に向けられた撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された撮影画像の変化の有無に基づいて、前記移動体が停止しているか否かを判断する判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7の発明にかかるナビゲーション装置は、移動体に搭載されるナビゲーション装置であって、前記移動体の移動に応じて撮影画像に変化が生じる方向に向けられた撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された撮影画像の変化の有無に基づいて、前記移動体が停止しているか否かを判断する判断手段と、前記判断手段による判断結果に基づいて、前記移動体の移動状態を検出するセンサからの出力信号を補正するための補正量を取得する補正量取得手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項9の発明にかかる停止判断方法は、移動体に搭載される停止判断装置で用いられる停止判断方法であって、前記移動体の移動に応じて撮影画像に変化が生じる方向に向けられた撮影手段によって前記移動体の周辺を撮影する撮影工程と、前記撮影工程で撮影された撮影画像の変化の有無に基づいて、前記移動体が停止しているか否かを判断する判断工程と、を含んだことを特徴とする。
【0014】
また、請求項10の発明にかかる停止判断プログラムは、請求項9に記載の停止判断方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0015】
また、請求項11の発明にかかる記録媒体は、請求項10に記載の停止判断プログラムを記録したコンピュータに読み取り可能なことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる停止判断装置、ナビゲーション装置、停止判断方法、停止判断プログラムおよび記録媒体の好適な実施の形態を詳細に説明する。以下の実施の形態では、停止判断装置を停止判断部としてナビゲーション装置に設け、その判断結果をナビゲーション装置の処理に利用する場合について説明する。
【0017】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかるナビゲーション装置の機能的構成を示すブロック図である。図1に示すナビゲーション装置100は、停止判断部110、補正量取得部121、記録部122、補正部123、算出部124、センサ131によって構成される。また、停止判断部110は、撮影部111、移動速度情報取得部112、判断部113によって構成される。
【0018】
停止判断部110は、自装置が搭載された移動体が停止しているか否かを判断する。撮影部111は、移動体に設けられており、たとえば、移動体の移動に応じて撮影画像に変化が生じる方向に向けられている。撮影部111は、具体的には、たとえば動画や静止画を撮影するカメラである。また、移動体の移動に応じて撮影画像に変化が生じる方向とは、移動体の周りの景色を撮影できる方向である。たとえば、撮影部111が移動体の外側に取り付けられている場合、移動体の本体とは逆方向を向ける。また、撮影部111が移動体の内側に取り付けられている場合、移動体の窓から外の景色が写る方向を向ける。
【0019】
また、撮影部111は、移動体が停止しているにもかかわらず撮影画像に変化が生じるのを回避する方向に向けられていてもよい。具体的には、たとえば移動体の後方に撮影部111を設置したり、撮影方向を道路に向けるなどである。これにより、他の移動体や歩行者など、移動体が停止しているにもかかわらず撮影画像に変化が生じてしまう要因が撮影画像に写る可能性を低減し、後述する判断部113の判断の精度を向上させることができる。
【0020】
移動速度情報取得部112は、移動体の移動速度情報を取得する。移動速度情報取得部112は、たとえば、ナビゲーション装置100や移動体の本体に設置されているセンサ131からの出力信号を取得し、その信号から移動速度情報を抽出または算出する。
【0021】
判断部113は、撮影部111によって撮影された撮影画像の変化の有無に基づいて、移動体が停止しているか否かを判断する。判断部113は、たとえば、撮影画像の所定時間当たりの変化量が所定量以下となった場合、移動体が停止していると判断する。より詳細には、撮影画像内において隣り合う画素の色調が所定量以上異なる領域の位置の変化量が所定距離以下となった場合、移動体が停止していると判断する。
【0022】
また、判断部113は、撮影部111の撮影画像のうち、一部の領域の画像を用いて移動体が停止しているか否かを判断してもよい。具体的には、たとえば、撮影画像のうち移動体と接近した領域の画像を用いて移動体が停止しているか否かを判断することとしてもよい。これにより、他の移動体や歩行者など、移動体が停止しているにもかかわらず撮影画像に変化が生じてしまう要因が判断対象となる画像に写る可能性を低減し、停止判断の精度を向上させることができる。
【0023】
また、判断部113は、移動速度情報取得部112によって取得された移動速度情報によって前記移動体の移動速度が所定速度以下と判断される場合にのみ移動体が停止しているか否かを判断してもよい。これにより、判断部113の停止判断処理にかかる処理負荷を軽減することができる。また、移動体が高速で移動している場合、撮影画像はぶれが生じる場合が多い。画像にぶれが生じてコントラストが小さくなると、判断部113は、移動体が停止しているものと誤認識してしまう可能性がある。移動速度情報が所定速度以下となった場合にのみ移動体が停止しているか否かを判断することによって、判断部113による停止判断の精度を向上させることができる。
【0024】
さらに、判断部113は、撮影部111によって撮影された撮影画像の変化の有無だけではなく、他の停止判断手法による判断結果を考慮して、最終的な停止判断をおこなってもよい。他の停止判断手法とは、たとえば車速センサや加速度センサからの出力信号に基づく停止判断や、GPS信号などを用いて算出した現在位置の変化に基づく停止判断など、従来から用いられている停止判断手法である。この場合、判断部113は、たとえば、これら複数の停止判断手法のうち、すべて(または過半数)の停止判断手法によって停止していると判断された場合に、移動体が停止したと判断する。
【0025】
つぎに、補正量取得部121は、判断部113による判断結果に基づいて、移動体の移動状態を検出するセンサ131からの出力信号を補正するための補正量を取得する。センサ131は、ナビゲーション装置100に内蔵されているものでもよいし、ナビゲーション装置100以外の場所、たとえば、移動体の本体に内蔵されているものであってもよい。センサ131は、たとえば、ジャイロセンサ、加速度センサ、車速センサなどである。補正量取得部121は、たとえば、判断部113によって移動体が停止していると判断された時点におけるセンサ131からの出力を補正量(オフセット)として記録部122に記録しておく。補正量取得部121は、移動体が停止するごとに補正量をあらたに取得する。そして、補正量取得部121は、記録部122に記録されている補正量を最新の補正量に書き換える。なお、記録部122は、補正量取得部121に一体として設けられていてもよい。
【0026】
補正部123は、補正量取得部121によって取得された(記録部122に記録された)補正量を用いてセンサ131からの出力信号を補正する。また、算出部124は、補正部123によって補正されたセンサ131からの出力信号を用いて移動体の現在位置を算出する。算出部124は、補正部123によって補正された出力信号を用いて移動体の現在位置を算出するため、精度よく移動体の現在位置を算出することができる。
【0027】
つぎに、ナビゲーション装置100による停止判断処理および位置算出処理について説明する。図2は、ナビゲーション装置による停止判断処理および位置算出処理の手順を示すフローチャートである。図2のフローチャートにおいて、停止判断部110の撮影部111は、まず、移動体の周辺の画像を撮影する(ステップS201)。また、移動速度情報取得部112によって、移動体の移動速度を取得する(ステップS202)。
【0028】
判断部113は、移動速度情報取得部112によって取得された移動体の移動速度が所定速度以下でない場合には(ステップS203:No)、ステップS209に移行する。一方、移動体の移動速度が所定速度以下である場合には(ステップS203:Yes)、撮影部111によって撮影された撮影画像が変化しているか否かを判断する(ステップS204)。撮影画像が変化している場合(ステップS204:Yes)、判断部113は、移動体が停止していないと判断する(ステップS205)。一方、撮影画像が変化していない場合(ステップS204:No)、判断部113は、移動体が停止していると判断する(ステップS206)。
【0029】
補正量取得部121は、判断部113によって移動体が停止していると判断された場合(ステップS206参照)、センサ131からの出力信号を補正するための補正量を取得する(ステップS207)。そして、補正量取得部121は、ステップS207で取得した補正量を記録部122に記録する(ステップS208)。なお、記録部122には、あらかじめ補正量の初期値を記録しておいてもよい。この場合、補正量取得部121は、ステップS207で取得した補正量によって、記録部122に記録された初期値を書き換える。
【0030】
つづいて、補正部123は、記録部122に記録されている補正量を用いてセンサ131からの出力信号を補正する(ステップS209)。算出部124は、補正量取得部121によって補正された出力信号を用いて移動体の現在位置を算出して(ステップS210)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0031】
以上説明したように、実施の形態にかかるナビゲーション装置は、撮影部111によって撮影された画像に基づいて移動体が停止しているか否かを判断する。これにより、センサ131が接続できない場合や、センサ131からの出力信号に誤差がある場合であっても、正確に停止判断をおこなうことができる。また、判断部113は、撮影部111によって撮影された画像のうち、一部の領域のみを用いて停止判断をおこなうことによって、停止判断の精度を高めることができる。さらに、移動体の移動速度が所定速度以下の場合にのみ判断部113による停止判断をおこなうことによって、判断部113の処理負荷を軽減するとともに、停止判断の精度を高めることができる。
【0032】
また、ナビゲーション装置100は、停止判断部110による停止判断の判断結果を用いてセンサ131からの出力信号を補正するため、センサ131の誤差を低減することができる。さらに、ナビゲーション装置100は、補正量を用いて補正された出力信号を用いて移動体の現在位置を算出するため、移動体の現在位置を精度よく算出することができる。
【実施例】
【0033】
(ナビゲーション装置300のハードウェア構成)
つぎに、上述した実施の形態にかかるナビゲーション装置100の実施例について説明する。図3は、ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置300は、CPU301、ROM302、RAM(メモリ)303、磁気ディスクドライブ304、磁気ディスク305、光ディスクドライブ306、光ディスク307、音声I/F(インターフェース)308、マイク309、スピーカ310、入力デバイス311、映像I/F312、カメラ313、ディスプレイ314、通信I/F315、GPSユニット316、ジャイロセンサ317、加速度センサ318、車速センサ319を備えている。また、各構成部301〜319はバス320によってそれぞれ接続されている。
【0034】
CPU301は、ナビゲーション装置300の全体の制御を司る。ROM302は、ブートプログラム、通信プログラム、データベース作成プログラム、データ解析プログラムなどのプログラムを記録している。RAM303は、CPU301のワークエリアとして使用される。
【0035】
磁気ディスクドライブ304は、CPU301の制御に従って磁気ディスク305に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。磁気ディスク305は、磁気ディスクドライブ304の制御で書き込まれたデータを記録する。磁気ディスク305としては、たとえば、HD(ハードディスク)やFD(フレキシブルディスク)を用いることができる。
【0036】
光ディスクドライブ306は、CPU301の制御に従って光ディスク307に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。光ディスク307は、光ディスクドライブ306の制御に従ってデータが読み出される着脱自在な記録媒体である。光ディスク307は、書き込み可能な記録媒体を利用することもできる。また、この着脱可能な記録媒体として、光ディスク307のほか、MO、メモリカードなどであってもよい。
【0037】
磁気ディスク305または光ディスク307に記録される情報の他の一例として、経路探索・経路誘導などに用いる地図データが挙げられる。地図データは、建物、河川、地表面などの地物(フィーチャ)を表す背景データと、道路の形状を表す道路形状データとを有しており、ディスプレイ314の表示画面において2次元または3次元に描画される。ナビゲーション装置300が経路誘導中の場合は、地図データと後述するGPSユニット316によって取得された自車の現在地点とが重ねて表示されることとなる。
【0038】
音声I/F308は、音声入力用のマイク309および音声出力用のスピーカ310に接続される。マイク309に受音された音声は、音声I/F308内でA/D変換される。また、スピーカ310からは音声が出力される。なお、マイク309から入力された音声は、音声データとして磁気ディスク305あるいは光ディスク307に記録可能である。
【0039】
入力デバイス311は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えたリモコン、キーボード、マウス、タッチパネルなどが挙げられる。さらに、入力デバイス311は、デジタルカメラや携帯電話端末などの他の情報処理端末を接続し、データの入出力をおこなうことができる。
【0040】
映像I/F312は、映像入力用のカメラ313および映像出力用のディスプレイ314と接続される。映像I/F312は、具体的には、たとえば、ディスプレイ314全体の制御をおこなうグラフィックコントローラと、即時表示可能な画像情報を一時的に記録するVRAM(Video RAM)などのバッファメモリと、グラフィックコントローラから出力される画像データに基づいて、ディスプレイ314を表示制御する制御ICなどによって構成される。
【0041】
カメラ313は、車両内外の映像を撮影し、画像データとして出力する。カメラ313で撮像された画像は、画像データとして磁気ディスク305あるいは光ディスク307に記録可能である。ディスプレイ314には、アイコン、カーソル、メニュー、ウインドウ、あるいは文字や画像などの各種データが表示される。このディスプレイ314は、たとえば、CRT、TFT液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどを採用することができる。
【0042】
通信I/F315は、無線を介してネットワークに接続され、ナビゲーション装置300とCPU301とのインターフェースとして機能する。通信I/F315は、さらに、無線を介してインターネットなどの通信網に接続され、この通信網とCPU301とのインターフェースとしても機能する。通信網には、LAN、WAN、公衆回線網や携帯電話網などがある。
【0043】
GPSユニット316は、GPS衛星からの電波を受信し、車両の現在地点(ナビゲーション装置300の現在地点)を示す情報を算出する。GPSユニット316の出力情報は、後述する各種センサ(ジャイロセンサ317、加速度センサ318、車速センサ319など)の出力値とともに、CPU301による車両の現在地点の算出に際して利用される。現在地点を示す情報は、たとえば緯度・経度、高度などの、地図データ上の1点を特定する情報である。
【0044】
ジャイロセンサ317は、車両の角度を検出する。ジャイロセンサ317から出力される出力信号は、車両の角度によって電圧値が変化する。CPU301は、車両の停止時におけるジャイロセンサ317からの出力電圧値を基準電圧値として、基準電圧値との差に基づいて車両の角度を検出する。
【0045】
加速度センサ318は、車両の加速度を検出する。加速度センサ318から出力される出力信号は、車両の加速度によって電圧値が変化する。CPU301は、車両の加速度が0の場合における加速度センサ318からの出力電圧値を基準電圧値として、基準電圧値との差に基づいて車両の加速度を検出する。車両の加速度が0の場合とは、車両が停止している場合の他、たとえば車両が等速直線運動をおこない、かつ傾きが0である場合などである。加速度センサ318が検出する加速度には、車両の進行による加速度と、車両の傾きによる重力加速度の2種類がある。ナビゲーション装置300は、後述する車速センサ319からの出力値が取得できる場合には、加速度センサ318からは車両の傾きによる重力加速度のみを検出し、車両の傾きを算出する。
【0046】
車速センサ319は、車両の移動速度を検出する。車速センサ319は、車両の移動速度に応じた車速パルスを出力する。ジャイロセンサ317、加速度センサ318、車速センサ319の出力値は、CPU301による現在地点の算出や、速度や方位の変化量の測定に用いられる。
【0047】
また、実施の形態にかかるナビゲーション装置100の構成のうち、撮影部111はカメラ313によって、移動速度情報取得部112、判断部113、補正量取得部121、補正部123、算出部124はCPU301によって、記録部122はROM302、磁気ディスク305、光ディスク307によって、センサ131はジャイロセンサ317、加速度センサ318、車速センサ319によって、それぞれの機能を実現する。
【0048】
(ナビゲーション装置300による停止判断処理および現在位置算出処理)
つぎに、ナビゲーション装置300による車両の停止判断処理および現在位置算出処理について説明する。ナビゲーション装置300のCPUは、各種センサ(ジャイロセンサ317、加速度センサ318、車速センサ319など)やGPSユニット316からの出力信号を用いて車両の現在位置を算出し、経路誘導や経路探索などの処理をおこなっている。ここで、CPU301は、各種センサからの出力には、それぞれのデバイスごとに固有の特性があるため、車両が停止しているときの出力信号を補正量(オフセット)として各種センサからの出力を補正している。また、車両の現在位置を算出する際にも、移動体が移動しているか否かを正確に認識できないと、実際の車両の位置との間に誤差が生じてしまう。このため、ナビゲーション装置300では、カメラ313によって撮影された画像を用いて車両の停止判断をおこない、車両の停止判断の精度を高めている。
【0049】
図4は、ナビゲーション装置による車両の停止判断処理および現在位置算出処理の手順を示すフローチャートである。図4のフローチャートにおいて、ナビゲーション装置300は、自装置の電源がオンにされるまで待機する(ステップS401:Noのループ)。自装置の電源がオンにされると(ステップS401:Yes)、ナビゲーション装置300のCPU301は、車両に設置されたカメラ313によって撮影された車両周辺の画像を連続的に取得する(ステップS402)。カメラ313から取得する画像は、動画であってもよいし、所定時間ごとに撮影した静止画であってもよい。
【0050】
CPU301は、ステップS402で取得した車両周辺の画像のうち、最新の画像(現在の画像)と、最新の画像の撮影時刻から1秒前に撮影された画像(1秒前の画像)とを比較する(ステップS403)。なお、最新の画像と比較する画像は、1秒前の画像には限らず、たとえば、ユーザが任意に設定できるようにしてもよい。
【0051】
ステップS403で現在の画像と1秒前の画像とを比較した結果、両画像の変化量が所定量以下である場合(ステップS404:Yes)、CPU301は、車両が停止していると判断する(ステップS405)。CPU301は、たとえば、磁気ディスク305や光ディスク307に各種センサからの現在の出力を補正量(オフセット)として記録する(ステップS406)。磁気ディスク305や光ディスク307には、補正量の初期値(まだ一度も停止判断による補正量の取得がおこなわれていない場合に用いる補正量)または前回停車時に書き込まれた補正量が記録されている。ステップS406において、CPU301は、磁気ディスク305や光ディスク307に記録されている補正量を直近に取得した補正量に書き換える。なお、補正量の書き換えは、車両が停止していると判断されるごとにおこなわなくてもよい。たとえば、電源がオンにされた後、初めに停止したと判断された際にのみ設定をおこなってもよい。
【0052】
一方、ステップS404で、両画像の変化量が所定量以下ではない場合(ステップS404:No)、CPU301は、車両は移動していると判断する(ステップS407)。ナビゲーション装置300は、ステップS406で記録した補正量(まだ一度も停止判断による補正量の取得がおこなわれていない場合には補正量の初期値)を用いて各種センサからの出力信号を補正して(ステップS408)、補正後の出力信号を用いて車両の現在位置を算出する(ステップS409)。上述のように、各種センサを補正する補正量は車両が停止するごと(または走行ごと)に書き換えられるため、各種センサからの出力信号をより正確に補正することができ、ナビゲーション装置300が算出する現在位置の精度を向上させることができる。なお、ステップS405およびS406の停止判断結果は、各種センサの補正量取得に限らず、ナビゲーション装置300の各種処理に用いられる。
【0053】
ナビゲーション装置300の電源がオフにされるまでは(ステップS410:No)、CPU301はステップS402に戻り、以降の処理を繰り返す。そして、ナビゲーション装置300の電源がオフにされると(ステップS410:Yes)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0054】
ここで、図5および図6を用いて、ナビゲーション装置300の停止判断(図4のステップS404,S405,S407)の詳細について説明する。図5および図6は、現在の画像と1秒前の画像との比較処理を模式的に示した説明図である。図5に示す画像P1が撮影された1秒後に、図6に示す画像P2が撮影されたものとすると、画像P2が「現在の画像」、画像P1が「1秒前の画像」となる。CPU301は、1秒前の画像である画像P1と、現在の画像である画像P2に共通に写っている物体Mの外端の位置の変化量を算出する。物体Mの外端は、物体Mの色と背景の色との境界となっている。このため、CPU301は、物体Mの外端を、画像P1,P2の中で隣り合う画素の色調が所定量以上異なる領域として抽出することができる。
【0055】
CPU301は、このように抽出した物体Mの外端の位置を画像P1,P2で比較し、その位置の変化量Δd1が所定距離以下の場合には、車両が停止していると判断する。一方、変化量Δd1が所定距離より大きい場合には、車両が移動していると判断する。なお、この判断に用いる閾値(所定距離)は、たとえば、カメラ313から物体Mまでの距離を画像解析し、その距離に応じて変更してもよい。
【0056】
このように、図4のステップS404,S405,S407においてCPU301がおこなう画像処理は高度な処理を必要としない。このため、車両の停止判断処理に対するCPU301の処理負担を軽微なものとすることができる。また、CPU301の処理負担をさらに軽減するため、車両の移動速度が低速な場合にのみ、画像を用いた停止処理をおこなうこととしてもよい。
【0057】
この場合、CPU301は、図4のステップS402の後に、GPSユニット316やジャイロセンサ317、加速度センサ318、車速センサ319などの出力信号から車両の現在の移動速度を検出する。そして、車両の現在の移動速度が所定速度以下である場合にのみ、ステップS403以降の処理をおこなう。加速度センサ318や車速センサ319の出力信号は、車両の停止時に0にならない可能性はあるが、高速での移動時と同じ出力であることはない。また、高速での移動時に画像処理をおこなうと、比較対象となる2つの画像から基準となる物体や線(たとえば、図5および図6の物体Mの外端など)を抽出するのが困難となり、場合によってはCPU301の処理負荷が増大する可能性がある。また、カメラ313の解像度によっては、画像のぶれなどによって、車両が移動しているにもかかわらず停止していると誤認識してしまう可能性がある。
【0058】
一方、所定速度以下となるまでは画像処理による停止判断をおこなわないこととすれば、画像処理による停止判断を常時おこなう場合と同様の精度の判定結果を得られるとともに、CPU301の処理負担を軽減することができる。
【0059】
また、カメラ313の設置位置や設置角度を変更したり、カメラ313で撮影した画像のうち一部の領域のみを用いることによって、停止判断の精度を向上させるようにしてもよい。カメラ313の設置位置や設置角度によっては、画像内に他の動く物体(他の車両や歩行者など)が写ってしまい、車両が停止していることを正しく判断できない場合がある。このような誤認識を回避するため、たとえば、車両の後方に設置されたバックカメラによって撮影された画像を用いて停止判断をおこなう方法がある。
【0060】
図7は、バックカメラによる画像の撮影領域を模式的に示した図である。また、図8は、図7に示したカメラによって撮影された画像の一例を示す図である。図7に示すように、車庫入れ時などに車両後方の安全を確認するため、カメラ(バックカメラ)313が取り付けられている車両がある。この場合、バックカメラ313で撮影した画像を停止判断に用いることにより、あらたな機器を接続することなく画像を用いた停止判断をおこなうことができる。
【0061】
また、バックカメラ313を下向きに取り付ける、または撮影方向を下向きに制御して、撮影範囲を道路(地面)方向とすることによって、他の移動体などが画像内に写る可能性を低減し、停止判断の精度を向上させることができる。図7に示した例では、バックカメラ313は、車両後方の地面に近い領域Eを撮影する。バックカメラ313によって撮影された画像は、たとえば、図8に示すような画像となる。
【0062】
また、図8に示すように、カメラ313によって撮影された画像のうち、一部の領域のみを用いることによって、停止判断の精度をより向上させることができる。具体的には、カメラ313によって撮影された画像のうち、車両の本体側に近い領域Sのみを用いて停止判断をおこなう。これにより、停止判断処理に用いる画像内に他の移動体などが写る可能性を低減し、より精度よく停止判断をおこなうことができる。
【0063】
なお、上述した説明では、ナビゲーション装置300はカメラ313によって撮影された画像の変化の有無だけ停止判断をおこなうこととしたが、これに限らず、他の停止判断手法による判断結果を考慮して、最終的な停止判断をおこなってもよい。他の停止判断手法とは、たとえば車速センサや加速度センサからの出力信号に基づく停止判断や、GPS信号などを用いて算出した現在位置の変化に基づく停止判断など、従来から用いられている停止判断手法である。この場合、ナビゲーション装置300は、たとえば、これら複数の停止判断手法のうち、すべて(または過半数)の停止判断手法によって停止していると判断された場合に、車両が停止したと判断する。
【0064】
以上説明したように、ナビゲーション装置300は、カメラ313によって撮影された画像に基づいて車両が停止しているか否かを判断する。これにより、各種センサがナビゲーション装置300に接続できない場合や、各種センサからの出力信号に誤差がある場合であっても、正確に停止判断をおこなうことができる。また、ナビゲーション装置300は、カメラ313によって撮影された画像のうち、一部の領域のみを用いて停止判断をおこなうことによって、停止判断の精度を高めることができる。さらに、車両の移動速度が所定速度以下の場合にのみ画像を用いた停止判断をおこなうことによって、CPU301の処理負荷を軽減するとともに、停止判断の精度を高めることができる。
【0065】
また、ナビゲーション装置300は、画像を用いた停止判断の判断結果を用いて補正量を取得して各種センサからの出力信号を補正するため、各種センサの誤差を低減することができる。さらに、ナビゲーション装置300は、補正量を用いて補正された出力信号を用いて移動体の現在位置を算出するため、車両の現在位置を精度よく算出することができる。
【0066】
なお、本実施の形態で説明した停止判断方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態にかかるナビゲーション装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーション装置による停止判断処理および位置算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】ナビゲーション装置による車両の停止判断処理および現在位置算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】現在の画像と1秒前の画像との比較処理を模式的に示した説明図である。
【図6】現在の画像と1秒前の画像との比較処理を模式的に示した説明図である。
【図7】バックカメラによる画像の撮影領域を模式的に示した図である。
【図8】図7に示したカメラによって撮影された画像の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
100 ナビゲーション装置
110 停止判断部
111 撮影部
112 移動速度情報取得部
113 判断部
121 補正量取得部
122 記録部
123 補正部
124 算出部
131 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される停止判断装置であって、
前記移動体の移動に応じて撮影画像に変化が生じる方向に向けられた撮影手段と、
前記撮影手段によって撮影された撮影画像の変化の有無に基づいて、前記移動体が停止しているか否かを判断する判断手段と、
を備えることを特徴とする停止判断装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記撮影画像の所定時間当たりの変化量が所定量以下となった場合、前記移動体が停止していると判断することを特徴とする請求項1に記載の停止判断装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記撮影画像内において隣り合う画素の色調が所定量以上異なる領域の位置の変化量が所定距離以下となった場合、前記移動体が停止していると判断することを特徴とする請求項2に記載の停止判断装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記撮影画像のうち一部の領域の画像を用いて前記移動体が停止しているか否かを判断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の停止判断装置。
【請求項5】
前記判断手段は、前記撮影画像のうち前記移動体と接近した領域の画像を用いて前記移動体が停止しているか否かを判断することを特徴とする請求項4に記載の停止判断装置。
【請求項6】
前記移動体の移動速度情報を取得する移動速度情報取得手段を備え、
前記判断手段は、前記移動速度情報取得手段によって取得された移動速度情報に基づいて前記移動体の移動速度が所定速度以下と判断される場合、前記移動体が停止しているか否かを判断することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の停止判断装置。
【請求項7】
移動体に搭載されるナビゲーション装置であって、
前記移動体の移動に応じて撮影画像に変化が生じる方向に向けられた撮影手段と、
前記撮影手段によって撮影された撮影画像の変化の有無に基づいて、前記移動体が停止しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段による判断結果に基づいて、前記移動体の移動状態を検出するセンサからの出力信号を補正するための補正量を取得する補正量取得手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
前記補正量取得手段によって取得された補正量を用いて前記センサからの出力信号を補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された前記出力信号を用いて前記移動体の現在位置を算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項7に記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
移動体に搭載される停止判断装置で用いられる停止判断方法であって、
前記移動体の移動に応じて撮影画像に変化が生じる方向に向けられた撮影手段によって前記移動体の周辺を撮影する撮影工程と、
前記撮影工程で撮影された撮影画像の変化の有無に基づいて、前記移動体が停止しているか否かを判断する判断工程と、
を含んだことを特徴とする停止判断方法。
【請求項10】
請求項9に記載の停止判断方法をコンピュータに実行させることを特徴とする停止判断プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載の停止判断プログラムを記録したコンピュータに読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−2754(P2009−2754A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163003(P2007−163003)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】