説明

光ファイバ配線板

【課題】使用する信号光の波長の制約や光伝達路の長さの制約が少なく、かつ、光ファイバの位置ずれがしにくい光ファイバ配線板を提供する。
【解決手段】光ファイバ配線板1は、基板10と、基板10の外周より内側において、基板10上に配置された光ファイバ20と、基板10の外周より内側において、光ファイバ20の延びる方向(X方向)における光ファイバ20の一方の端部20aの外側に、光路変換用の第1ミラー36aを有する第1ミラー部材30aと、光ファイバ20及び第1ミラー部材30aを覆うように、基板10上に形成される上部クラッド層50と、を備える。光ファイバ20の一方の端部20aと第1ミラー部材30aとは、光ファイバ20の一方の端部20aと第1ミラー部材30aとが互いに光信号を送受可能な位置となるように、基板10上に形成されている。上部クラッド層50は、信号光が透過可能な材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバとミラー部材と基板とが一体となった光ファイバ配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
情報伝達量が増大するに伴い、幹線やアクセス系といった通信分野のみならず、ルータやサーバ内の情報伝達処理にも信号光を用いる光インターコネクション技術の開発が進められている。具体的には、ルータ装置やサーバ装置内の複数のボード間又は各ボード内の短距離の信号伝送に光を用いる光伝送路を電気配線板に複合した光電気複合基板の開発がなされている。
【0003】
基板上の光伝送路としては、光ファイバに比べ、配線の自由度が高く、かつ、高密度化が可能であり、高精度な配線ピッチを得やすい光導波路を用いることが望ましい。基板上の光伝送路としては、特に、加工性や経済性に優れたポリマー材料を用いた光導波路が有望である。
【0004】
例えば、特許文献1には、ミラー付きの光導波路と電気配線板とを複合化した光電気配線板が開示されている。しかし、ポリマー材料で形成された光導波路は、炭化水素基由来の吸収帯がその光導波路中に存在するため、使用する信号光の波長に制限を受ける。使用する信号光として低損失な波長の光を選択しても、光導波路の長さを数cm〜数m程度にしないと、光伝搬損失が大きく光信号の伝送が困難である。特に、基板のサイズが大きくなると、基板上に長い距離の光導波路を形成することは、光伝搬損失の制約により、困難になる。
また、光路変換用の斜面を形成する方法として、特許文献1に記載のように、ミラー部材を光導波路中に挿入する方法や、ダイシングソーやレーザアブレーションを用いて形成する方法が一般的である。しかし、これらの方法では、光導波路の光伝達路に直接加工を行うため、極めて高歩留まりの加工技術が必要になる等の問題があった。
【0005】
一方、光導波路よりも低損失な光ファイバは、多量の情報の高速通信が可能であることから、家庭用及び産業用の情報通信に広く利用されている。また、例えば自動車には、各種電装品(例えば、カーナビゲーションシステム等)が装備されているが、それらの電装品の光通信にも採用されている。
【0006】
このような光ケーブルを有する基板に接続する光ファイバコネクタとして、特許文献2に開示されているものがある。これらの光ケーブルコネクタを、基板の受発光素子間を接続するためのジャンパー線として用いることにより、低損失な光信号の送受ができる。しかし、この方法では、光ファイバコネクタと基板間に光学素子を設ける必要があるため、基板上に多数の光素子を高精度に実装する必要があると共に、光ファイバコネクタ−基板とを高精度に実装する必要があった。また、このようなコネクタを光ファイバの内装配線化は極めて困難となる。さらにこの光ファイバコネクタはあくまでも基板外部接続機構であるため、光ファイバの配線部分の取りまわしが基板外となるため煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−284634号公報
【特許文献2】特開2008−275717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、使用する信号光の波長の制約や光伝達路の長さの制約が少なく、かつ、光ファイバの位置ずれがしにくい光ファイバ配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光ファイバ配線板は、基板と、前記基板の外周より内側において、前記基板上に配置された光ファイバと、前記基板の外周より内側において、前記光ファイバの延びる方向における前記光ファイバの一方の端部の外側に、光路変換用の第1ミラーを有する第1ミラー部材と、前記光ファイバ及び前記第1ミラー部材を覆うように、前記基板上に形成される上部クラッド層と、を備える。前記光ファイバの一方の端部と前記第1ミラー部材とは、前記光ファイバの一方の端部と前記第1ミラー部材とが互いに光信号を送受可能な位置となるように、前記基板上に形成されている。前記上部クラッド層は、信号光が透過可能な材料で形成されている。
【0010】
本発明に係る光ファイバ配線板は、さらに、前記基板上に配置された第1段部を備えることが好ましい。前記光ファイバの一方の端部は、前記第1段部に載置されていることが好ましい。
【0011】
前記光ファイバは、コアと、前記コアを覆うクラッドと、前記クラッドを被覆する被覆層とを有することが好ましい。前記光ファイバの一方の端部は、前記被覆層が除去されている。前記第1段部は、前記被覆層の厚さと同じ厚さを有することが好ましい。
【0012】
前記第1ミラー部材は、前記コアの外径と前記被覆層の厚さとの合計寸法よりも厚いことが好ましい。
【0013】
本発明に係る光ファイバ配線板は、さらに、前記光ファイバの一方の端部の位置を案内する第1光ファイバガイド部材を備えることが好ましい。
【0014】
前記第1ミラーは、前記光ファイバの一方の端部から受光した信号光の向きを前記基板に対して垂直方向に傾けること、及び、前記基板に対して垂直方向から受光した信号光の向きを前記光ファイバの一方の端部に傾けることの少なくともいずれかができるように構成されていることが好ましい。
【0015】
本発明に係る光ファイバ配線板は、さらに、前記光ファイバの延びる方向における前記光ファイバの他方の端部の外側に、光路変換用の第2ミラーを有する第2ミラー部材を備えることが好ましい。前記第2ミラーは、前記光ファイバの他方の端部と前記第2ミラー部材とは、前記光ファイバの他方の端部と前記第2ミラー部材とが互いに光信号を送受可能な位置となるように、前記基板上に形成されていることが好ましい。前記第2ミラー部材及び前記光ファイバの他方の端部は、前記上部クラッド層により覆われた状態で、前記基板上に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、使用する信号光の波長の制約や光伝達路の長さの制約が少なく、かつ、光ファイバの位置ずれがしにくい光ファイバ配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る光ファイバ配線板の一例を示す断面図である。
【図2】図1に示した光ファイバ配線板の製造方法の一例を示す断面図である。
【図3】図2に続く光ファイバ配線板の製造方法の一例を示す断面図である。
【図4】図3に続く光ファイバ配線板の製造方法の一例を示す断面図である。
【図5】図4に続く光ファイバ配線板の製造方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る光ファイバ配線板について、最初に各構成の概要を、次に各構成の製造方法を、図面を参照して説明する。なお、各図面において、各構成を説明するために、各構成の寸法比率を互いに異なるものとしているものがある。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る光ファイバ配線板1は、基板10と、複数の光ファイバ20と、複数の第1ミラー部材30aと、複数の第2ミラー部材30bと、上部クラッド層50と、第1段部60aと、第2段部60bと、第1光ファイバガイド部材70aと、第2光ファイバガイド部材70bとを備える。
【0020】
光ファイバ配線板1は、以下のように構成されている。すなわち、例えば、基板10の表面12に直交する垂直方向(Z方向)の信号光は、上部クラッド層50の外側から入射され、入射した信号光は第1ミラー部材30aの第1ミラー36aによって光路をX方向(光ファイバ20の端部20aが延びる方向)に変換され、変換された信号光は光ファイバ20の端部20aの端面21aから光ファイバ20内を通る。光ファイバ20の他方の端部20bの端面21bからX方向に出射した信号光は、第2ミラー部材30bの第2ミラー36bによって信号光の光路を垂直方向(Z方向)に変換され、上部クラッド層50の外側に出射される。
ここで、使用する信号光には、特に制限はないが、主に光ファイバ20に対して低損失な波長の信号光を用いることが好ましく、光ファイバ20及び上部クラッド層50に対して低損失な波長の信号光を用いることがさらに好ましい。
【0021】
図1に示すように、基板10は、一方の表面12及び他方の表面14を有する。基板10は、例えば矩形状のプリント基板(FR−4、耐熱性ガラス基材エポキシ樹脂積層板)であることが好ましい。
基板10は、図示はしないが、電気配線板を備えていてもよい。この場合、電気配線板は、基板10の一方の表面12と他方の表面14とに複数の電気配線を備える。複数の電気配線のうち所定数の電気配線は、基板10の一方の表面12に形成され、残り数の電気配線は他方の表面14に形成される。
基板10の一方の表面12には、複数の光ファイバ20を固定するための接着層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0022】
各光ファイバ20は、コア26と、コア26を覆うクラッド24と、クラッド24を被覆する被覆層22とを有する。したがって、各光ファイバ20は、信号光はコア26とクラッド24との境界で反射しながらコア26の内側と進むように構成されている。各光ファイバ20の端面21a及び21bから所定の範囲である端部20a及び20bは、被覆層22が除去され、クラッド24が露出している。つまり、光ファイバ20は、光ファイバ保護用の被覆層22が施されている被覆付き光ファイバである。そして、光ファイバ20は、光ファイバ保護用の被覆層22うち、第1光ファイバガイド部材70a及び第2光ファイバガイド部材70bに搭載される端部20a及び20bの部分の被覆層22を取り除き、それ以外の部分については光ファイバ保護用の被覆層22を残している。
各光ファイバ20は、特に限定はないが、信号光を導波し得る光ファイバであればよい。各光ファイバ20の断面形状は略円形であることが好ましい。各光ファイバ20の外径は、第1ミラー部材30a及び第2ミラー部材30bの第1ミラー36a及び第2ミラー36bの位置を一定に制御することができるよう、200μm以下であればよく、125μmや80μmであるとさらによい。
また、各光ファイバ20の外径において、少なくとも光ファイバ20の端面21a及び21bから所定の範囲(第1光ファイバガイド部材70a及び第2光ファイバガイド部材70bの案内溝72に案内される範囲)内の部分である端部20a及び20bの範囲の外径が、上述の径であることが好ましい。
端部20aのクラッド24は、各光ファイバ20の端部20aの端面21aが第1ミラー部材30aの第1ミラー36aに対向するように、第1光ファイバガイド部材70aの案内溝72に挿入されている。同様に、端部20bのクラッド24は、各光ファイバ20の端部20bの端面21bが第2ミラー部材30bの第2ミラー36bに対向するように、第2光ファイバガイド部材70bの案内溝72に挿入されている。
各光ファイバ20は、基板10を上から見た状態(Z方向から見た状態)において、各光ファイバ20の全体が基板10の外周より内側に、かつ、基板10の一方の表面12上に配置されている。
また、複数の光ファイバ20は、基板10を上から見た状態(Z方向から見た状態)において、互いに交差するように、基板10の一方の表面12に配置されていてもよい。このように、複数の光ファイバ20は、光導波路では配置をすることが難しい互いに交差するレイアウトを基板10の一方の表面12にすることができるので、複数の光ファイバ20は、光伝送路を光導波路で形成する場合よりも、基板10の一方の表面12に、柔軟にかつ高密に光伝送路を形成することができる。
【0023】
第1段部60a及び第2段部60bは、厚さが一定の板の形状を有し、基板10の一方の表面12に形成されている。第1段部60a及び第2段部60bは、それぞれ、光ファイバ20の端部20a及び20bにおいてコア26の延びる方向がX方向と一致するように、Z方向において光ファイバ20の被覆層22の厚さ寸法と同じ厚さ寸法を有することが好ましい。
第1段部60aと第2段部60bとは、光ファイバ20が第1段部60aと第2段部60bとの間に配置することができる程度に離れて基板10の一方の表面12に配置されている。第1段部60aと第2段部60bとは、例えば、基板10の両端部の近傍に配置される。
【0024】
複数の第1ミラー部材30a及び複数の第2ミラー部材30bは、それぞれ、第1段部60a及び第2段部60bの上に形成されている。各第1ミラー部材30aは、第1段部60aの上に形成された片台形部材32aと、片台形部材32aの傾斜面34に形成された第1ミラー36aとを有する。各第2ミラー部材30bは、第2段部60bの上に形成された片台形部材32bと、片台形部材32bの傾斜面34に形成された第2ミラー36bとを有する。
第1ミラー36a及び第2ミラー36bは、それぞれ、光ファイバ20の端面21a及び21bからX方向に出射した信号光の光路をZ方向に変換することができるように、また、Z方向の信号光の光路をX方向に変換することができるように、基板10に配置された光ファイバ20の端部20a及び20bの延長線上に位置している。
第1段部60a及び第2段部60bの上面から複数の第1ミラー部材30a及び複数の第2ミラー部材30bまでのそれぞれの高さ寸法は、信号光の光路を効率よく変換することが可能になるように、{(コア26の直径)+(クラッド24の肉厚寸法)}以上にすることが好ましい。
【0025】
第1光ファイバガイド部材70a及び第2光ファイバガイド部材70bは、それぞれ、第1段部60a及び第2段部60bの上に形成されている。第1光ファイバガイド部材70aは、それぞれに各光ファイバ20の端部20aにおけるクラッド24が差し込まれる複数の案内溝72を有する。同様に、第2光ファイバガイド部材70bは、それぞれに各光ファイバ20の端部20bにおけるクラッド24が差し込まれる複数の案内溝72を有する。したがって、案内溝の幅方向(X方向及びZ方向のいずれにも直交する方向)の寸法は、クラッド24の外径と略等しいか、若干広いことが好ましい。
案内溝72の溝深さ寸法は、光ファイバ20の端部20a及び20bが案内溝72の幅方向(X方向及びZ方向のいずれにも直交する方向)にずれることを抑制できるように、(クラッド24の外径)/2以上にすることが好ましい。
第1光ファイバガイド部材70a及び第2光ファイバガイド部材70bの材料及び製法は、特に限定されないが、それぞれ、感光性材料でパターニングにより第1段部60a及び第2段部60bの上側の表面に形成することが好ましい。
【0026】
本実施形態では、複数の光ファイバ20の端面21a及び21bは、それぞれ、複数の光ファイバ20の端面21a及び21bが同一平面上に位置するように、かつ、複数の光ファイバ20の端面21a及び21bが基板10の一方の表面12の広がる方向(X方向とZ方向とのいずれにも直交する方向)に並ぶように、第1段部60a及び第2段部60bの上に形成されている。同様に、複数の第1ミラー部材30a及び複数の第2ミラー部材30bは、それぞれ、複数の第1ミラー部材30a及び複数の第2ミラー部材30bの第1ミラー36a及び第2ミラー36bが同一平面上に位置するように、かつ、複数の第1ミラー部材30a及び複数の第2ミラー部材30bの第1ミラー36a及び第2ミラー36bが基板10の一方の表面12の広がる方向(X方向とZ方向とのいずれにも直交する方向)に並ぶように、第1段部60a及び第2段部60bの上に形成されている。
【0027】
上部クラッド層50は、上部クラッド層50が複数の光ファイバ20、第1ミラー部材30a及び第2ミラー部材30bを覆うように、基板10の一方の表面12上に形成されている。つまり、上部クラッド層50の一部は、光ファイバ20の端部20aと第1ミラー部材30aの第1ミラー36aとの間、各光ファイバ20の端部20bと第2ミラー部材30bの第2ミラー36bとの間、及び、各光ファイバ20の端部20a及び20bをそれぞれ第1段部60a及び第2段部60b側に押さえつけるように案内溝72の間に形成されている。換言すると、第1ミラー部材30aの第1ミラー36a及び第2ミラー部材30bの第2ミラー36bの表面側(信号光を反射する側)には、上部クラッド層50の一部が形成されている。したがって、上部クラッド層50は、信号光を透過する材料で形成されている。上部クラッド層50の信号光を透過する材料としては、例えば、クラッド材料やコア材料を挙げることができる。
【0028】
以上の光ファイバ配線板1は、光伝達路として光ファイバ20を用いているので、使用する信号光の波長の制約や光伝達路の長さの制約が少ない。また、以上の光ファイバ配線板1は、光ファイバ20を上部クラッド層50で覆っている。光ファイバ20の端部20a及び20bの位置は、それぞれ、第1光ファイバガイド部材70a及び第2光ファイバガイド部材70bによって所定位置に案内されている。上部クラッド層50は、上部クラッド層50が各光ファイバ20の端部20a及び20bをそれぞれ第1段部60a及び第2段部60b側に押さえつけるように、案内溝72の間に形成されている。これらのため、光ファイバ20の全体や光ファイバ20の端部20a及び20bの位置がずれにくい。
【0029】
次に、図2から図5を参照して、光ファイバ配線板1の製造方法の一例を説明する。
【0030】
まず、図2に示すように、基板10の一方の表面12に第1段部60a及び第2段部60bを形成する。
基板10の材質としては、特に制限はなく、例えば、ガラスエポキシ樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板、シリコン基板、プラスチック基板、金属基板、樹脂層付き基板、金属層付き基板、プラスチックフィルム、樹脂層付きプラスチックフィルム、金属層付きプラスチックフィルム等が挙げられる。
基板10として柔軟性及び強靭性のある基材、例えば、クラッド層形成用樹脂フィルム及びコア層形成用樹脂フィルムのキャリアフィルムを基板として用いることで、フレキシブルな光ファイバコネクタとしてもよい。また、基板10は、光路変換用のミラー部材にて光路変換された信号光が基板10を透過する場合には、信号光の波長に対して透明な材料を用いるとよい。
第1段部60a及び第2段部60bの材料及び製法は、特に限定されないが、Z方向において光ファイバ20の被覆層22の厚さ寸法と同じ厚さ寸法を有するように、感光性材料でパターニングにより基板10の一方の表面12に形成することが好ましい。
【0031】
次に、図3に示すように、複数の第1ミラー部材30a及び複数の第2ミラー部材30bは、それぞれ、例えば、第1段部60a及び第2段部60b上にパターニング等により複数の直方体形状のクラッド層を形成し、例えば、ダイシングソー(商品名「DAC552」、株式会社ディスコ社製)を用いて45°の傾斜面34を形成して片台形部材32a及び32bを得る。
また、第1光ファイバガイド部材70a及び第2光ファイバガイド部材70bは、それぞれ、第1段部60a及び第2段部60bの上に、パターニング等により複数の直方体形状のクラッド層を形成して得る。
【0032】
次に、図4に示すように、第1ミラー36a及び第2ミラー36bは、それぞれ、例えば蒸着装置(商品名「RE−0025」、株式会社ファースト技研製)を用いて片台形部材32a及び32bの傾斜面34とその周辺とを金属層としてAuを0.5μm蒸着させて得る。
【0033】
次に、図5に示すように、まず、複数の光ファイバ20の光ファイバ保護用の被覆層22のうち、第1光ファイバガイド部材70a及び第2光ファイバガイド部材70bに搭載される端部20a及び20bの部分の被覆層22を取り除き、それ以外の部分については光ファイバ保護用の被覆層22を残す。
そして、端部20a及び20bのクラッド24を、それぞれ、各光ファイバ20の端部20a及び20bの端面21a及び21bが第1ミラー部材30a及び第2ミラー部材30bの第1ミラー36a及び第2ミラー36bに対向するように、第1光ファイバガイド部材70a及び第2光ファイバガイド部材70bの案内溝72に挿入する。
また、各光ファイバ20を基板10の上から見た状態(Z方向から見た状態)において、各光ファイバ20の全体が基板10の外周より内側に、かつ、基板10の一方の表面12上に配置する。
【0034】
そして、図1に示すように、上部クラッド層50が複数の光ファイバ20、第1ミラー部材30a及び第2ミラー部材30bを覆うように、上部クラッド層50をラミネートにより基板10の一方の表面12上に形成する。これにより、上部クラッド層50の一部は、光ファイバ20の端部20aと第1ミラー部材30aの第1ミラー36aとの間、各光ファイバ20の端部20bと第2ミラー部材30bの第2ミラー36bとの間、及び、各光ファイバ20の端部20a及び20bをそれぞれ第1段部60a及び第2段部60b側に押さえつけるように案内溝72の間に形成される。
上部クラッド層50の形成方法は特に限定されず、例えば、上部クラッド層50は、クラッド層形成用樹脂の塗布又はクラッド層形成用樹脂フィルムのラミネートにより形成してもよい。また、上部クラッド層50は、クラッド層形成用樹脂組成物を常法により塗布する方法で形成してもよい。ラミネートに用いるクラッド層形成用樹脂フィルムは、例えば、クラッド層形成用樹脂組成物を溶媒に溶解して、キャリアフィルムに塗布し、溶媒を除去することにより容易に製造することができる。
【0035】
以上のようにして、使用する信号光の波長の制約や光伝達路の長さの制約が少ない光ファイバ配線板1を得ることができる。得られた光ファイバ配線板1は、光ファイバ20を上部クラッド層50で覆っている。光ファイバ20の端部20a及び20bの位置をそれぞれ第1光ファイバガイド部材70a及び第2光ファイバガイド部材70bによって所定位置に案内している。上部クラッド層50は、上部クラッド層50が各光ファイバ20の端部20a及び20bをそれぞれ第1段部60a及び第2段部60b側に押さえつけるように、案内溝72の間に形成されている。これらのため、光ファイバ20や光ファイバ20の端部20a及び20bの位置がずれにくい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上詳細に説明したように、光ファイバ配線板に関し、特に、使用する信号光の波長の制約や光伝達路の長さの制約が少なく、かつ、光ファイバの位置ずれがしにくい光ファイバ配線板を得ることを目的とする。
このため、ボード内光電気変換基板等(特に、基板のサイズが大きいもの)の幅広い分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 光ファイバ配線板
10 基板
12 基板の一方の表面
14 基板の他方の表面
20 光ファイバ
20a 光ファイバの一方の端部
20b 光ファイバの他方の端部
21a 光ファイバの一方の端面
21b 光ファイバの他方の端面
22 光ファイバの被覆層
24 光ファイバのクラッド
26 光ファイバのコア
30a 第1ミラー部材
30b 第2ミラー部材
32a 第1ミラー部材の片台形部材
32b 第2ミラー部材の片台形部材
34 第1ミラー部材及び第2ミラー部材の傾斜面
36a 第1ミラー部材の第1ミラー
36b 第2ミラー部材の第2ミラー
50 上部クラッド層
60a 第1段部
60b 第2段部
70a 第1光ファイバガイド部材
70b 第2光ファイバガイド部材
72 第1光ファイバガイド部材及び第2光ファイバガイド部材の案内溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の外周より内側において、前記基板上に配置された光ファイバと、
前記基板の外周より内側において、前記光ファイバの延びる方向における前記光ファイバの一方の端部の外側に、光路変換用の第1ミラーを有する第1ミラー部材と、
前記光ファイバ及び前記第1ミラー部材を覆うように、前記基板上に形成される上部クラッド層と、を備え、
前記光ファイバの一方の端部と前記第1ミラー部材とは、前記光ファイバの一方の端部と前記第1ミラー部材とが互いに光信号を送受可能な位置となるように、前記基板上に形成され、
前記上部クラッド層は、信号光が透過可能な材料で形成されている、光ファイバ配線板。
【請求項2】
さらに、前記基板上に配置された第1段部を備え、
前記光ファイバの一方の端部は、前記第1段部に載置されている、請求項1に記載の光ファイバ配線板。
【請求項3】
前記光ファイバは、コアと、前記コアを覆うクラッドと、前記クラッドを被覆する被覆層とを有し、
前記光ファイバの一方の端部は、前記被覆層が除去されており、
前記第1段部は、前記被覆層の厚さと同じ厚さを有する、請求項2に記載の光ファイバ配線板。
【請求項4】
前記第1ミラー部材は、前記コアの外径と前記被覆層の厚さとの合計寸法よりも厚い、請求項3に記載の光ファイバ配線板。
【請求項5】
さらに、前記光ファイバの一方の端部の位置を案内する第1光ファイバガイド部材を備える、請求項1から4のいずれかに記載の光ファイバ配線板。
【請求項6】
前記第1ミラーは、前記光ファイバの一方の端部から受光した信号光の向きを前記基板に対して垂直方向に傾けること、及び、前記基板に対して垂直方向から受光した信号光の向きを前記光ファイバの一方の端部に傾けることの少なくともいずれかができるように構成されている、請求項1から5のいずれかに記載の光ファイバ配線板。
【請求項7】
さらに、前記光ファイバの延びる方向における前記光ファイバの他方の端部の外側に、光路変換用の第2ミラーを有する第2ミラー部材を備え、
前記第2ミラーは、前記光ファイバの他方の端部と前記第2ミラー部材とは、前記光ファイバの他方の端部と前記第2ミラー部材とが互いに光信号を送受可能な位置となるように、前記基板上に形成され、
前記第2ミラー部材及び前記光ファイバの他方の端部は、前記上部クラッド層により覆われた状態で、前記基板上に配置されている、請求項1から6のいずれかに記載の光ファイバ配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−173498(P2012−173498A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35092(P2011−35092)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】