説明

光偏向素子、光偏向器、及び画像形成装置

【課題】可動板と捻り梁との接合部における応力による可動板のたわみを抑制することができる光偏向素子、光偏向器、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】光偏向素子は、光反射性を有する反射鏡42が設けられた可動板41と、支持枠44と、可動板41を支持枠44に対して回動可能に連結する弾性支持梁43と、可動板41の反射鏡42と反対の面側に設けられた磁石37とを備え、弾性支持梁43は、可動板41の回動軸Xに垂直な断面で見たときに、幅が反射鏡42側から磁石37側に向けて漸次増加する形状をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向素子、光偏向素子を備える光偏向器、及び光偏向器を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、反射面を回動させることによって、光源から反射面に入射する光束を偏向させて、当該偏向光によって画像形成面上を走査することで画像形成面に画像を形成する光偏向器が知られている。高解像度の画像を形成するためには、より高い周波数で反射面を回動させることが必要である。MEMS(Micro Electro Mechanical System)の技術を応用して製作されたミラーデバイスは、従来から用いられているポリゴンミラーやガルバノミラーでは実現が困難な高い周波数で駆動させることが可能である。このミラーデバイスは、反射面が形成又は取り付けられた可動板と、弾性を有する捻り梁と、駆動源とを備え、捻り梁を軸にして反射面を往復回動させることによって、光源から反射面に入射する光束を偏向させる光偏向器である。
可動板は高速かつ高精度で回動させることが必要であるが、高速で回動するために、可動板自身の慣性モーメントによって、「動たわみ」と呼ばれる変形が生じ、当該動たわみによって反射面の平坦度が損なわれ、形成される画像が劣化することがあった。
【0003】
特許文献1には、ミラー基板(可動板)の厚さの分布を適切に設定することで、ミラー基板の回動中心梁から回動軸に直交する方向における、ミラー基板の剛性の分布を、動撓みを発生させる曲げモーメントの分布に対応する剛性分布とすることによって、ミラー基板の動的な撓みを低減し、ミラー基板の慣性を低減して偏向角を大きくすることができる、偏向ミラー、光走査装置および画像形成装置が開示されている。
特許文献2には、可動板の反射面と反対側の面であってねじり軸を挟む両側の少なくとも一方の面に凹部を形成することによって、剛性を落とすことを抑制して慣性力を低減できる、光偏向器及びその製造方法、それを用いた光学機器そしてねじれ揺動体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−300927号公報
【特許文献2】特開2003−131161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、可動板と捻り梁との接合部は、可動板が振られることによって捻り梁を変形させる力や、捻り梁が変形することで発生する抗力が、捻り梁と可動板との間で伝えられる部分であって、特許文献1や特許文献2では議論されていない力が加えられている。当該力による応力によって、特許文献1や特許文献2では議論されていないたわみが発生し、根元付近でのたわみ形状が異なっている。したがって、特許文献1や特許文献2に記載された動たわみの抑制方法だけでは、可動板の動たわみを充分抑制することは、難しいという課題があった。
すなわち、従来では、捻り梁の断面形状によっては、可動板と捻り梁との接合部に生じる応力は可動板の一方の面側と他方の面側とで異なることとなり、このような応力に起因して可動板にたわみが生じるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる光偏向素子は、光反射性を有する光反射部が設けられた可動板と、
支持部と、
前記可動板を前記支持部に対して回動可能に連結する連結部と、
前記可動板の前記光反射部と反対の面側に設けられた磁石とを備え、
前記連結部は、前記可動板の回動中心軸に垂直な断面で見たときに、前記光反射部側から前記磁石側に向けて、幅が漸次増加する形状をなしていることを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかる光偏向素子によれば、連結部は、光反射部側の幅より磁石側の幅が大きくなっている。可動板が回動されると、連結部は捻られて各部分が変形し、その変形量に応じた応力が発生する。連結部の断面は、光反射部側の幅より磁石側の幅が大きい形状であるため、連結部の磁石側の幅方向での両端に生ずる応力が最も大きくなる。連結部に発生した応力の影響による可動板のたわみも、磁石側が光反射部側より大きくなる。磁石は、一般的に可動板より剛性が高い材質で形成されている。したがって、可動板は、磁石の剛性によって、可動板の磁石側が変形し難くなっている。連結部に発生した応力の影響による可動板のたわみが大きくなる側を、可動板の変形し難い側にすることで、可動板全体としてのたわみを小さくすることができる。
【0009】
[適用例2]本適用例にかかる光偏向素子は、光反射性を有する光反射部が設けられた可動板と、
支持部と、
前記可動板を前記支持部に対して回動可能に連結する互いに平行な複数の梁で構成された連結部と、
前記可動板の前記光反射部と反対の面側に設けられた磁石とを備え、
前記連結部は、前記可動板の回動中心軸に垂直な断面で見たときに、前記複数の梁が前記光反射部に平行な方向に並んで設けられ、前記光反射部側から前記磁石側に向けて、前記光反射部に平行な方向における前記各梁の幅と隣り合う前記梁同士の間の距離とを合計した長さが漸次増加する形状をなしていることを特徴とする。
【0010】
この光偏向素子によれば、連結部に発生した応力の影響による可動板のたわみが大きくなる側を、可動板の変形し難い側にすることで、可動板全体としてのたわみを小さくすることができる。また、連結部は、複数の梁に分割されている。光偏向素子における可動板の回動周波数(共振周波数)は一定の値であり、連結部のばね定数の値は、可動板の重量と回動周波数とによって一義的に定まる値である。複数の梁によって当該ばね定数を実現する場合、一本の梁によって当該ばね定数を実現する場合の連結部のばね定数より、それぞれの梁のばね定数が小さくなる。これにより、一本の梁で構成した連結部に比べて、連結部の長さを短くすることができる。連結部の長さを短くすることで、光偏向素子を小さくすることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記複数の梁は、前記可動板の回動中心軸を介して対向する互いに平行な第1の梁および第2の梁を備え、
前記第1の梁および前記第2の梁は、前記可動板の回動中心軸に垂直な断面で見たときに、前記光反射部側から前記磁石側に向けて、互いの離間距離が大きくなるようにそれぞれ傾斜した形状をなしていることが好ましい。
この光偏向素子によれば、第1の梁と第2の梁とで、光反射部側の幅より磁石側の幅が大きい連結部を構成することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記可動板および前記連結部は、単結晶シリコンで構成されていることが好ましい。
この光偏向素子によれば、可動板および連結部を、単結晶シリコンをエッチングすることで略同時に一体に形成することができる。一体に形成できることで、組み立て工程を不要にすることができ、接合部分において強度低下などが生ずることを抑制することができる。
【0013】
[適用例5]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記可動板の両板面は、それぞれ、前記単結晶シリコンの(100)面で構成され、
前記連結部は、前記単結晶シリコンの(100)面および(111)面で構成されていることが好ましい。
この光偏向素子によれば、単結晶シリコンが(100)面や(111)面に沿ってエッチングされ易いことを利用して、効率よく、また、精度良く、光偏向素子の各面を形成して、効率的に精度良く光偏向素子を形成することができる。
【0014】
[適用例6]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記連結部は、前記可動板の両板面とそれぞれ同一面となるように連続的に形成された面を有することが好ましい。
この光偏向素子によれば、可動板と連結部との間に生じる応力を抑制することができる。
[適用例7]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記可動板は、その回動中心軸に垂直な断面で見たときに、前記光反射部側から前記磁石側に向けて幅が漸減する部分を有することが好ましい。
この光偏向素子によれば、可動板の光反射部側の面の面積を減ずることなく、可動板の質量を削減して、可動板の慣性モーメントを低減することができる。
【0015】
[適用例8]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記可動板は、前記光反射部とは反対の面に形成された凹部を有し、
前記磁石の少なくとも一部は、前記凹部内に設けられていることが好ましい。
この光偏向素子によれば、可動板の質量を削減して、可動板の慣性モーメントを低減することができる。また、磁石の重心を可動板の回動中心軸に近づけることができる。その結果、可動板および磁石の回動中心軸まわりの慣性モーメントを低減することができる。
【0016】
[適用例9]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記磁石は、永久磁石であることが好ましい。
この光偏向素子によれば、例えば可動板に対向配置したコイルにより磁界を発生させることにより、可動板を往復回動させることができる。
[適用例10]本適用例にかかる光偏向器は、上記適用例のいずれかに記載の光偏向素子を備えることを特徴とする。
本適用例にかかる光偏向器によれば、連結部に発生した応力の影響による可動板のたわみが大きくなる側を、可動板の変形し難い側にすることで、可動板全体としてのたわみを小さくすることができる。
【0017】
[適用例11]本適用例にかかる画像形成装置は、光を出射する光出射部と、
上記適用例に記載の光偏向器とを備え、
前記光出射部から出射した光を前記光偏向器により走査することにより、画像を形成することを特徴とする。
本適用例にかかる画像形成装置によれば、可動板のたわみに起因する画像の劣化を抑制して、品質の高い画像を安定して形成することができる。
【0018】
[適用例12]本適用例にかかる光偏向器は、光束が反射される反射面が形成された反射手段が固定されており板状の形状を有する可動板と、一端が前記可動板の端面に接続されており、前記可動板を前記反射面に平行な回動軸回りに回動可能に支持する弾性支持梁と、前記弾性支持梁の前記一端の反対側の一端が接続されており、前記弾性支持梁を支持する支持枠と、を備える光偏向素子と、前記可動板を回動させる駆動源と、を備え、前記駆動源を構成する駆動源要素を配置する駆動源配置部が、前記可動板における前記反射面が形成された可動板表面の反対側の可動板裏面に配設されており、前記弾性支持梁の前記回動軸に垂直な断面における断面形状は、前記可動板表面側の梁表面の幅より前記可動板裏面側の梁裏面の幅が大きい形状であることを特徴とする。
【0019】
本適用例にかかる光偏向器によれば、弾性支持梁は、梁表面の幅より梁裏面の幅が大きくなっている。可動板が回動されると、弾性支持梁は捻られて各部分がたわみ、たわみ量に比例する応力が発生する。弾性支持梁の断面は、梁表面の幅より梁裏面の幅が大きい形状であるため、梁裏面の両端に生ずる応力が最も大きくなる。弾性支持梁に発生した応力の影響による可動板のたわみも、梁裏面に近い可動板裏面側が可動板表面側より大きくなる。可動板裏面には駆動源配置部が配設されており、駆動源配置部には、駆動源要素が配設されて固定される。駆動源要素は例えば磁石などであり、一般的に可動板より剛性が高い材質で形成されている。したがって、可動板は、可動板裏面に固定された駆動源要素の剛性によって、可動板裏面側が変形し難くなっている。弾性支持梁に発生した応力の影響による可動板のたわみが大きくなる側を、可動板の変形し難い側にすることで、可動板全体としてのたわみを小さくすることができる。
【0020】
[適用例13]上記適用例にかかる光偏向器は、前記弾性支持梁が、複数の副支持梁で構成されており、前記梁表面の幅は、前記可動板表面側の複数の副梁表面の幅に複数の前記副梁表面の間の前記反射面に平行な方向における距離を加えた幅であり、前記梁裏面の幅は、前記可動板裏面側の複数の副梁裏面の幅に複数の前記副梁裏面の間の前記反射面に平行な方向における距離を加えた幅であることが好ましい。
【0021】
この光偏向器によれば、弾性支持梁は、複数の副支持梁に分割されている。光偏向素子における可動板の回動周波数は一定の値であり、弾性支持梁のばね定数の値は、可動板の重量と回動周波数とによって一義的に定まる値である。複数の副支持梁によって当該ばね定数を実現する場合、一本の弾性支持梁によって当該ばね定数を実現する場合の弾性支持梁のばね定数より、それぞれの副支持梁のばね定数が小さくなる。これにより、一本の弾性支持梁に比べて、複数の副支持梁の長さを短くすることができる。副支持梁の長さを短くすることで、光偏向素子を小さくすることができる。
【0022】
[適用例14]上記適用例にかかる光偏向器は、前記複数の副支持梁におけるそれぞれの副支持梁が、前記反射面に略平行であって前記副梁表面及び前記副梁裏面と、前記反射面に垂直であって前記回動軸を含む軸平面に対して、前記副梁表面との接続部が前記副梁裏面との接続部より近い位置にある第一梁側面及び第二梁側面と、を有する第一副支持梁と、前記軸平面に関して前記第一副支持梁と対称の断面形状を有する第二副支持梁と、を含むことが好ましい。
【0023】
この光偏向器によれば、複数の副支持梁が、第一副支持梁と第二副支持梁とを備えている。第一副支持梁は、副梁表面との接続部が副梁裏面との接続部より近い位置にある第一梁側面及び第二梁側面と、を有しており、第二副支持梁は、軸平面に関して第一副支持梁と対称の断面形状を有している。これにより、第一副支持梁と第二副支持梁とで、可動板表面側の幅より可動板裏面側の幅が大きい弾性支持梁を構成することができる。
【0024】
[適用例15]上記適用例にかかる光偏向器は、前記可動板及び前記弾性支持梁が、単結晶シリコンで一体に形成されていることが好ましい。
この光偏向器によれば、可動板及び弾性支持梁を、単結晶シリコンをエッチングすることで略同時に形成することができる。一体に形成できることで、組み立て工程を不要にすることができ、接合部分において強度低下などが生ずることを抑制することができる。
【0025】
[適用例16]上記適用例にかかる光偏向器は、前記可動板表面、前記可動板裏面、前記梁表面、前記梁裏面、前記副梁表面、及び前記副梁裏面が、シリコン結晶の(100)面で形成されており、前記弾性支持梁における前記梁表面と前記梁裏面とを接続する2個の梁側面と、前記第一梁側面及び前記第二梁側面と、前記第二副支持梁における軸平面に関して前記第一梁側面及び前記第二梁側面と対称な位置にある面とが、シリコン結晶の(111)面で形成されていることが好ましい。
この光偏向器によれば、光偏向素子の面がシリコン結晶の(100)面やシリコン結晶の(111)面で形成されている。これにより、単結晶シリコンが(100)面や(111)面に沿ってエッチングされ易いことを利用して、効率よく、また、精度良く、光偏向素子の各面を形成して、効率的に精度良く光偏向素子を形成することができる。
【0026】
[適用例17]上記適用例にかかる光偏向器は、前記可動板表面と、前記梁表面又は前記副梁表面と、が略同一平面上に形成されていると共に、前記可動板裏面と、前記梁裏面又は前記副梁裏面と、が略同一平面上に形成されていることが好ましい。
この光偏向器によれば、可動板表面と梁表面、可動板表面と副梁表面、可動板裏面と梁裏面、及び可動板裏面と副梁裏面は、略同一平面である。これにより、境目に段差がないため、段差の角の部分に応力集中が発生することを、実質的に排除し、大きな応力が発生することを抑制することができる。
【0027】
[適用例18]上記適用例にかかる光偏向器は、前記可動板の板状形状の側面が、前記可動板表面及び前記可動板裏面に略平行に延在する凹部を有することが好ましい。
この光偏向器によれば、側面に凹部を形成することで、可動板の可動板表面の面積を減ずることなく、凹部に相当する重量を削減して、可動板の慣性モーメントを低減することができる。
【0028】
[適用例19]上記適用例にかかる光偏向器は、前記駆動源配置部が、前記可動板裏面に形成された凹部であって、前記駆動源要素は前記凹部に配設されていることが好ましい。
この光偏向器によれば、駆動源配置部として可動板裏面に凹部が形成されることで、凹部に相当する重量を削減して、可動板の慣性モーメントを低減することができる。駆動源要素は、例えば磁石のようにシリコンより比重が大きい部材である。当該比重が大きい部材を可動板裏面に形成された凹部に配設することで、可動板裏面に配設する構成に比べて比重の大きい部材を可動板の回動中心軸に近い位置に配設することができ、可動板と駆動源要素を合わせた回動中心軸まわりの慣性モーメントを低減することができる。
【0029】
[適用例20]上記適用例にかかる光偏向器は、前記駆動源が、永久磁石とコイルとを備え、前記駆動源要素は、前記永久磁石又は前記コイルであることが好ましい。
この光偏向器によれば、駆動源配置部に配設された永久磁石又はコイルの一方と、例えば光偏向器が取り付けられた筐体に配設された永久磁石又はコイルのもう一方とが協働することによって、可動板を往復回動させることができる。
【0030】
[適用例21]本適用例にかかる画像形成装置は、光源と、上記適用例のいずれかに記載の光偏向素子を備える光偏向器、又は上記適用例のいずれかに記載の光偏向器と、を備え、前記光源から射出された光束を前記光偏向素子を備える光偏向器又は前記光偏向器によって偏向させることで画像を形成することを特徴とする。
本適用例にかかる画像形成装置によれば、可動板のたわみを全体として小さくすることができる光偏向素子を備える光偏向器、又は可動板のたわみを全体として小さくすることができる光偏向器を備えることによって、可動板のたわみに起因する画像の劣化を抑制して、品質の高い画像を安定して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】投射型画像表示装置の主要な構成要素を示す説明図。
【図2】(a)は、光偏向素子の形状を示す平面図。(b)は、(a)に矢印Cで示した方向から見た側面図。(c)は、(a)にA−Aで示した断面における断面図。(d)は、(a)にB−Bで示した断面における断面図。(e)は、可動板及び弾性支持梁の斜視図。
【図3】(a)は、素子筐体の筐体本体の外形形状を示す平面図。(b)は、(a)にD−Dで示した断面における素子筐体の筐体本体及び封止蓋の断面形状を示す断面図。(c)は、(a)にE−Eで示した断面における素子筐体の筐体本体及び封止蓋の断面形状を示す断面図。
【図4】(a)は、主走査偏向器を封止蓋側から見た平面図。(b)は、(a)にF−Fで示した断面における主走査偏向器の断面図。(c)は、(a)にG−Gで示した断面における主走査偏向器の断面図。(d)は、(a)にG−Gで示した断面における可動板が回動した状態を示す断面図。
【図5】(a)は、光偏向素子の形状を示す平面図。(b)は、(a)にH−Hで示した断面における断面図。(c)は、光偏向素子の形状を示す平面図。(d)は、(c)にJ−Jで示した断面における断面図。
【図6】印刷装置の全体構成を模式的に示す断面図。
【図7】印刷装置が備える露光ユニットの概略構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、光偏向素子、光偏向器、及び画像形成装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態は、光偏向素子を有する光偏向器を備える画像形成装置としての、光偏向素子を有する主走査偏向器を備える投射型画像表示装置を例にして説明する。なお、以下の説明において参照する図面では、図示の便宜上、部材又は部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0033】
<投射型画像表示装置>
最初に、投射型画像表示装置1について、図1を参照して説明する。図1は、投射型画像表示装置の主要な構成要素を示す説明図である。
図1に示すように、投射型画像表示装置1は、光束LをスクリーンSの横方向(主走査方向)及び縦方向(副走査方向)に2次元的に走査することにより、スクリーンS上に画像を形成(描画)する装置である。
【0034】
投射型画像表示装置1は、光源ユニット2と、光走査ユニット3と、図示省略した表示装置制御部と、を備えている。光源ユニット2から光束Lが射出され、当該光束Lが光走査ユニット3によって2次元的に走査されてスクリーンSに投射されて、スクリーンS上に画像が形成される。
なお、スクリーンSは、投射型画像表示装置1に一体に備えられたものであっても別体であってもよい。また、スクリーンSの表面側(光Lの照射側)で画像を視認するように構成してもよいし、スクリーンSの裏面側(光Lの照射側とは反対側)から画像を視認するように構成してもよい。
【0035】
光源ユニット2は、レーザー光源21と、ダイクロイックプリズム22とを備えている。レーザー光源21は、3色の光のいずれかを射出する、レーザー光源21R、レーザー光源21G、又はレーザー光源21Bである。レーザー光源21Rは赤色の光束LRを射出し、レーザー光源21Gは緑色の光束LGを射出し、レーザー光源21Bは青色の光束LBを射出する。
【0036】
ダイクロイックプリズム22は、3色の光のいずれかを選択的に反射する、ダイクロイックプリズム22R、ダイクロイックプリズム22G、又はダイクロイックプリズム22Bである。ダイクロイックプリズム22Rは、赤色光を選択的に反射させる反射部を備えている。レーザー光源21Rから射出された赤色の光束LRは、ダイクロイックプリズム22Rに入射し、反射部で反射されてダイクロイックプリズム22Gに向けて射出される。当該光束を、光束L1と表記する。
【0037】
ダイクロイックプリズム22Gは、緑色光を選択的に反射させる反射部を備えている。レーザー光源21Gから射出された緑色の光束LGは、ダイクロイックプリズム22Gに入射し、反射部で反射されてダイクロイックプリズム22Bに向けて射出される。ダイクロイックプリズム22Rからダイクロイックプリズム22Gに向けて射出された光束L1は、ダイクロイックプリズム22Gの反射部を透過して、ダイクロイックプリズム22Bに向けて射出される。ダイクロイックプリズム22Gが、光束LGを反射し、光束L1を透過させることで、光束LGと光束L1とが合成された光束L2が、ダイクロイックプリズム22Bに向けて射出される。
【0038】
ダイクロイックプリズム22Bは、青色光を選択的に反射させる反射部を備えている。レーザー光源21Bから射出された青色の光束LBは、ダイクロイックプリズム22Bに入射し、反射部で反射されて射出される。ダイクロイックプリズム22Gからダイクロイックプリズム22Bに向けて射出された光束L2は、ダイクロイックプリズム22Bの反射部を透過して、射出される。ダイクロイックプリズム22Bが、光束LBを反射し、光束L2を透過させることで、光束LBと光束L2とが合成された光束Lが、射出される。光束Lは、3色の光束LRと、光束LGと、光束LBとが合成された光束である。
【0039】
光走査ユニット3は、主走査偏向器31と、副走査偏向器32と、固定反射鏡34とを備えている。
主走査偏向器31は、光偏向素子40を備えており、光偏向素子40は、回動軸Xを回動軸(回動中心軸)として回動する可動板41に固定された反射鏡42を備えている。
光源ユニット2のダイクロイックプリズム22Bから射出された光束Lは、反射鏡42によって反射されて、回動軸Xの軸方向に略直角な主走査方向に走査される。光源ユニット2、又はレーザー光源21が、光源(光出射部)に相当する。主走査偏向器31が、光偏向器に相当する。
【0040】
副走査偏向器32は、例えば、ガルバノミラーにより構成されており、主走査方向に略平行な回動軸Yを回動軸として回動する副走査反射鏡48を備えている。
主走査偏向器31の反射鏡42によって反射された光束Lは、副走査反射鏡48によって反射されて、主走査方向に略直角な副走査方向に走査される。
副走査反射鏡48によって反射された光束Lは、固定反射鏡34で反射されて、スクリーンSに照射される。主走査偏向器31による主走査方向の走査と、副走査偏向器32による副走査方向の走査とによって、スクリーンS上に、2次元の画像が形成される。
【0041】
<光偏向素子>
次に、主走査偏向器31が備える光偏向素子40について、図2を参照して説明する。図2は、光偏向素子の形状を示す図である。図2(a)は、光偏向素子の形状を示す平面図であり、図2(b)は、図2(a)に矢印Cで示した方向から見た側面図であり、図2(c)は、図2(a)にA−Aで示した断面における断面図であり、図2(d)は、図2(a)にB−Bで示した断面における断面図であり、図2(e)は、可動板及び弾性支持梁の斜視図である。
図2に示すように、光偏向素子40は、可動板41と、反射鏡(光反射部)42と、一対の弾性支持梁(連結部)43,43と、支持枠(支持部)44と、を備えている。可動板41と弾性支持梁43と支持枠44とは、例えばシリコン基板をエッチングして形成され、一体に形成されている。
【0042】
可動板41は、一対の弾性支持梁43,43が捩れ変形することによって、回動軸Xを軸に回動可能である。
可動板41の形状は、円形の平板である。反射鏡42は、平板形状の可動板41の可動板表面41Aに、配設されている。反射鏡42は、例えばアルミニウムの薄膜であり、平滑に仕上げられたシリコンの面である可動板表面41Aに、例えばスパッタリングによって形成される。
【0043】
可動板41における可動板表面41Aの反対側の面である可動板裏面41Bには、裏面凹部41Cが形成されている。光偏向素子40が主走査偏向器31に組み込まれた状態で、裏面凹部41Cには、後述するように、駆動装置36(図4参照)の磁石37(図4参照)が固定される。裏面凹部41Cが、駆動源配置部及び可動板裏面に形成された凹部に相当する。
このように、可動板41は、反射鏡42(光反射部)とは反対の可動板裏面41Bに形成された裏面凹部41C(凹部)を有し、磁石37の少なくとも一部は、裏面凹部41C内に設けられている。
【0044】
円形の平板形状の側面には、円周方向に延在するV溝41Dが、全周に亘って形成されている。V溝41Dが、可動板表面及び可動板裏面に略平行に延在する凹部に相当する。このような可動板41は、図2(d)に示すように、その回動軸X(回動中心軸)に垂直な断面で見たときに、反射鏡42(光反射部)側から37磁石側に向けて幅が漸減する部分を有する。
【0045】
一対の弾性支持梁43,43は、それぞれの弾性支持梁43の一端が、可動板41の側面における円形平板形状の中心に関して略対称の位置において接続されており、回動軸Xの軸方向に沿ってそれぞれの中心軸が一直線となる方向及び位置に延在している。これにより、1対の弾性支持梁43,43は、可動板41を支持枠44に対して回動可能に連結している。
【0046】
弾性支持梁43は、副支持梁43a及び副支持梁43b(複数の梁)を有している。副支持梁43a及び副支持梁43bは、略平行四辺形の断面形状を有している。断面形状が略平行四辺形の副支持梁43aの4面を、副梁表面431a、副梁裏面432a、副梁側面433a、副梁側面434aと表記し、副支持梁43bの4面を、副梁表面431b、副梁裏面432b、副梁側面433b、副梁側面434bと表記する。
【0047】
副支持梁43aの副梁表面431aと可動板表面41Aと、及び副梁裏面432aと可動板裏面41Bとは、エッチングして光偏向素子40を形成するシリコン基板における同一の面であり、副梁表面431aは、可動板表面41Aと略同一平面上にあり、副梁裏面432aは、可動板裏面41Bと略同一平面上にある。このように、弾性支持梁43(連結部)は、可動板41の両板面とそれぞれ同一面となるように連続的に形成された面(副梁表面431aおよび副梁裏面432a)を有する。
【0048】
副梁側面433aは、両側がそれぞれ、表稜線436aにおいて副梁表面431aと、裏稜線439aにおいて副梁裏面432aと接しており、副梁側面434aは、両側がそれぞれ、表稜線437aにおいて副梁表面431aと、裏稜線438aにおいて副梁裏面432aと接している。
表稜線436aと、裏稜線439aと、表稜線437aと、裏稜線438aとは、回動軸Xの軸方向に略平行である。反射鏡42の反射面に平行な方向において、表稜線436aより裏稜線439aの方が回動軸Xから遠い位置に位置しており、表稜線437aより裏稜線438aの方が回動軸Xから遠い位置に位置している。
【0049】
副支持梁43bの副梁表面431bと可動板表面41Aと、及び副梁裏面432bと可動板裏面41Bとは、エッチングして光偏向素子40を形成するシリコン基板における同一の面であり、副梁表面431bは、可動板表面41Aと略同一平面上にあり、副梁裏面432bは、可動板裏面41Bと略同一平面上にある。このように、弾性支持梁43(連結部)は、可動板41の両板面とそれぞれ同一面となるように連続的に形成された面(副梁表面431bおよび副梁裏面432b)を有する。
【0050】
副支持梁43bの副梁表面431b、副梁裏面432b、副梁側面433b、及び副梁側面434bは、反射鏡42の反射面に垂直であって回動軸Xを含む回動軸平面に関して、副支持梁43aの副梁表面431a、副梁裏面432a、副梁側面433a、又は副梁側面434aと対称の位置に位置している。副梁表面431b、副梁裏面432b、副梁側面433b、及び副梁側面434bの各面が接する稜線である、表稜線436b、裏稜線439b、表稜線437b、及び裏稜線438bは、回動軸平面に関して、副支持梁43aの表稜線436a、裏稜線439a、表稜線437a、又は裏稜線438aと対称の位置に位置している。
【0051】
表稜線436bと、裏稜線439bと、表稜線437bと、裏稜線438bとは、回動軸Xの軸方向に略平行である。反射鏡42の反射面に平行な方向において、表稜線436bより裏稜線439bの方が回動軸Xから遠い位置に位置しており、表稜線437bより裏稜線438bの方が回動軸Xから遠い位置に位置している。
副支持梁43a及び副支持梁43bが、第一副支持梁又は第二副支持梁に相当する。副梁側面433a及び副梁側面434aと、副梁側面433b及び副梁側面434bとが、第一梁側面又は第二梁側面に相当する。
【0052】
このような副支持梁43aおよび副支持梁43b(第1の梁および第2の梁)は、可動板41の回動軸X(回動中心軸)を介して対向し、互いに平行となるように設けられている。
そして、副支持梁43aおよび副支持梁43bは、可動板41の回動軸X(回動中心軸)に垂直な断面で見たときに、反射鏡42(光反射部)側から磁石37側に向けて、互いの離間距離が大きくなるようにそれぞれ傾斜した形状をなしている。
【0053】
このような弾性支持梁43は、図2(c)に示すように、可動板41の回動軸Xに垂直な断面で見たときに、副支持梁43aおよび副支持梁43bが反射鏡42に平行な方向に並んで設けられ、反射鏡42側から磁石37側に向けて、反射鏡42に平行な方向における副支持梁43aの幅および副支持梁43bの幅と、隣り合う副支持梁43aおよび副支持梁43b間の距離とを合計した長さが漸次増加する形状をなしている。
【0054】
このようにして、弾性支持梁43(連結部)は、可動板41の回動軸X(回動中心軸)に垂直な断面で見たときに、反射鏡42(光反射部)側から磁石37側に向けて、幅が漸次増加する形状をなしている。
支持枠44は、略方形の板の内側に支持枠開口45が形成された額縁状の形状を有している。可動板41(反射鏡42)と一対の弾性支持梁43,43(副支持梁43aと副支持梁43bの組が一対)とは、支持枠開口45に配設されている。副支持梁43aと副支持梁43bの可動板41と接続された一端の反対側の一端が、支持枠44における額縁形状の対向する2辺の略中央にそれぞれ接続されている。
【0055】
光偏向素子40は、例えばシリコン基板をエッチングすることによって、可動板41と弾性支持梁43(副支持梁43aと副支持梁43b)と支持枠44とを一体に形成し、可動板表面41Aに、例えばスパッタリングによってアルミニウムの薄膜を形成することによって反射鏡42を形成することで、形成する。副梁表面431aと副梁表面431bと可動板表面41Aと副梁裏面432aと副梁裏面432bと可動板裏面41Bと支持枠44の両面とは、単結晶シリコンの(100)面で構成されている。副梁側面433aと副梁側面434aと副梁側面433bと副梁側面434bとV溝41Dを構成する溝面とは、単結晶シリコンの(111)面で構成されている。
【0056】
このように、可動板41の両板面は、それぞれ、単結晶シリコンの(100)面で構成され、弾性支持梁43は、単結晶シリコンの(100)面および(111)面で構成されている。単結晶シリコンが(100)面や(111)面に沿ってエッチングされ易いことを利用して、効率よく、また、精度良く、光偏向素子40の各面を形成して、効率的に精度良く光偏向素子40を形成することができる。
【0057】
また、可動板41および弾性支持梁43が単結晶シリコンで構成されていると、可動板41および弾性支持梁43を、単結晶シリコンをエッチングすることで略同時に一体に形成することができる。また、可動板41および弾性支持梁43を一体に形成することで、組み立て工程を不要にすることができ、接合部分において強度低下などが生ずることを抑制することができる。
【0058】
一対の弾性支持梁43,43(一対の副支持梁43aと副支持梁43bの組)が回動軸Xを中心にして捩れることによって、可動板41(反射鏡42)は、回動軸Xを中心にして回動する。主走査偏向器31が投射型画像表示装置1に組み込まれた状態で、図2(a)に示した回動軸Xは、図1に示した回動軸Xと同じものである。反射鏡42が、反射手段(光反射性を有する光反射部)に相当する。
【0059】
<素子筐体>
次に、主走査偏向器31が備える素子筐体50について、図3を参照して説明する。図3は、素子筐体の筐体本体及び封止蓋の外形形状を示す図である。図3(a)は、素子筐体の筐体本体の外形形状を示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)にD−Dで示した断面における素子筐体の筐体本体及び封止蓋の断面形状を示す断面図であり、図3(c)は、図3(a)にE−Eで示した断面における素子筐体の筐体本体及び封止蓋の断面形状を示す断面図である。
【0060】
図3に示すように、素子筐体50は、筐体本体52及び封止蓋51を備えている。筐体本体52は、略直方体を有し、上面53において外面に開口する素子室54が形成されている。筐体本体52の外面における上面53の反対側の外面を外底面57と表記する。本実施形態の主走査偏向器31では、上面53側を上側と表記し、外底面57側を下側と表記する。外底面57には、駆動装置36(図4参照)の駆動コイル38(図4参照)を配設するための外底面凹部57aが形成されている。
【0061】
筐体本体52の素子室54を囲む部分を、側壁52aと表記する。素子室54における底面54aと側壁52aとの角部には、素子室54側に膨出した支持部56が形成されている。底面54aと支持部56とに囲まれた素子室54の部分を、素子室凹部54bと表記する。素子室凹部54bは、略直方体形状の空間である。素子室54の平面形状は、支持枠44の外形形状と相似形であって、支持枠44の外形形状より僅かに大きくなっており、光偏向素子40を素子室54内に配置することができる。素子室54内に配置された光偏向素子40は、支持枠44が支持部56に当接して支持される(図4参照)。素子室凹部54bの平面形状は、光偏向素子40の支持枠開口45の平面形状と略相似形状であり、支持部56は、可動板41や弾性支持梁43に接触することなく、支持枠44を支持する。
【0062】
封止蓋51を上面53に載せて、封止蓋51と上面53とを接合することによって、素子室54は封止される。反射鏡42に入射する光束は、封止蓋51を透過して入射し、反射鏡42によって反射された光束は、封止蓋51を透過して主走査偏向器31から射出される。
筐体本体52は、例えば低温焼成のセラミックスで形成する。セラミックス材料の膜を形成し、焼結することを繰り返し、積層させることによって、筐体本体52を形成する。
【0063】
<主走査偏向器>
次に、主走査偏向器31について、図4を参照して説明する。図4は、主走査偏向器の構成を示す図である。図4(a)は、主走査偏向器を封止蓋側から見た平面図であり、図4(b)は、図4(a)にF−Fで示した断面における主走査偏向器の断面図であり、図4(c)は、図4(a)にG−Gで示した断面における主走査偏向器の断面図であり、図4(d)は、図4(a)にG−Gで示した断面における可動板が回動した状態を示す断面図である。
【0064】
図4に示すように、主走査偏向器31は、光偏向素子40と、素子筐体50と、駆動装置36とを備えている。
光偏向素子40は、支持枠44が素子筐体50の筐体本体52における支持部56に固定されることによって、筐体本体52に固定されている。光偏向素子40の可動板41と反射鏡42と一対の弾性支持梁43,43とは、筐体本体52における素子室凹部54bの部分に位置しており、可動板41及び可動板41と一体に形成された反射鏡42は回動可能である。
【0065】
可動板41における反射鏡42が配設された反対側の可動板裏面41Bに形成された裏面凹部41Cには、駆動装置36の磁石37が固定されている。筐体本体52の外底面凹部57aには、駆動装置36の駆動コイル38が固定されている。駆動コイル38は、筐体本体52の底部を介して可動板41と略対向する位置に配設されている。駆動装置36が、駆動源に相当し、磁石37が、永久磁石及び駆動源要素に相当し、駆動コイル38が駆動源要素に相当する。裏面凹部41Cが、駆動源配置部及び可動板裏面に形成された凹部に相当する。
【0066】
周期的に変化する電流(交流)が駆動コイル38に供給されることにより、駆動コイル38は上方(可動板41側)に向く磁界と、下方に向く磁界とを交互に発生させる。この磁界により、駆動コイル38に対し磁石37の両端(主走査偏向器31においては、回動軸Xから遠い位置に位置する両端)に位置する一対の磁極のうち一方の磁極が接近し他方の磁極が離間するような力が磁石37に作用する。磁石37が固定された可動板41は一対の弾性支持梁43,43が捩れ変形することによって回動可能であって、図4(d)に示すように、回動軸X回りに回動させられる。
【0067】
上記したように、光偏向素子40は、支持枠44が筐体本体52における支持部56に固定されることによって、筐体本体52に固定されている。封止蓋51は、蓋裏の接続面と筐体本体52の上面53とを接合することによって筐体本体52に固定されており、素子室54は封止蓋51によって封止されている。
封止蓋51の筐体本体52への接合は、封止蓋51及び筐体本体52を構成する材料によって適切な方法を選択するが、金属接合、共晶結合、又は陽極接合などの接合方法を用いて接合する。
【0068】
反射鏡42に向けて射出された光束L10は、そのほとんどが封止蓋51を透過して、反射鏡42に入射する。光束が封止蓋51に入射する際や封止蓋51から射出される際には、わずかに反射されて反射光束が発生するが、本実施形態では当該反射光束は省略して説明する。また、大気と、封止蓋51と、負圧状態の素子室54とで屈折率が異なることによって、それぞれの境界において屈折が生ずるが、本実施形態では当該屈折は省略して説明する。
【0069】
図4(d)に示したように、光束L10は直進して反射鏡42に入射する。反射鏡42に入射した光束L10が反射鏡42によって反射されて、光束L20が射出される。
可動板41は回動させられて、可動板411から可動板412の範囲で往復回動する。反射された光束は、光束L21から光束L22の範囲で走査される。
可動板41が回動させられて、一対の弾性支持梁43,43がねじられる。弾性支持梁43がねじられたとき、弾性支持梁43を構成する副支持梁43a及び副支持梁43bにおいては、副梁側面433aと副梁側面434a、及び副梁側面433bと副梁側面434bに大きな応力が発生する。副支持梁43a又は副支持梁43bと可動板41との接続部分においては、副支持梁43aと副支持梁43bとが開いた側の内側に最も大きい応力が発生する。すなわち、副支持梁43aにおける裏稜線439a及び副支持梁43bにおける裏稜線439bの周辺の応力が大きくなる。
【0070】
可動板41においては、副支持梁43a又は副支持梁43bとの接続部分において、裏稜線439a及び裏稜線439bとの接続部分の周辺の応力が大きくなり、比例してたわみも大きくなる。
光偏向素子40においては、可動板41における裏稜線439a及び裏稜線439bとの接続部分に近い位置に磁石37が固定されている。磁石37は例えば鉄系の金属で形成されており、可動板41を構成するシリコンに比べて高い剛性を有している。このため、副支持梁43a及び副支持梁43bがねじられて発生する応力による可動板41のたわみは、最も大きい部分において、たわみ量を軽減することができる。
【0071】
<他の光偏向素子の例>
次に、光偏向素子40とは一部の構成が異なる光偏向素子60及び光偏向素子80について、図5を参照して説明する。図5は、光偏向素子の形状を示す図である。図5(a)は、光偏向素子の形状を示す平面図であり、図5(b)は、図5(a)にH−Hで示した断面における断面図である。図5(c)は、光偏向素子の形状を示す平面図であり、図5(d)は、図5(c)にJ−Jで示した断面における断面図である。
【0072】
図5(a)及び図5(b)に示すように、光偏向素子60は、可動板41と、反射鏡42と、一対の弾性支持梁63,63と、支持枠44と、を備えている。可動板41と、反射鏡42と、支持枠44とは、光偏向素子40における可動板41と反射鏡42と支持枠44と実質的に同じものである。光偏向素子60は、弾性支持梁63が光偏向素子40における一対の弾性支持梁43,43とは異なることが、光偏向素子40とは異なっている。
【0073】
可動板41と弾性支持梁63と支持枠44とは、例えばシリコン基板をエッチングして形成され、一体に形成されている。可動板41は、弾性支持梁63が捩れ変形することによって、回動軸X1を軸に回動可能である。
一対の弾性支持梁63,63は、光偏向素子40における弾性支持梁43と同様に、それぞれの弾性支持梁63の一端が、可動板41の側面における円形平板形状の中心に関して略対称の位置において接続されており、回動軸X1の軸方向に沿ってそれぞれの中心軸が一直線となる方向及び位置に延在している。
【0074】
弾性支持梁63は回動軸X1に直交する断面における断面形状が、台形形状である。台形形状の断面を形成する4面を、梁表面631、梁裏面632、梁側面634、梁側面635と表記する。
梁表面631と梁裏面632と可動板表面41Aと可動板裏面41Bと支持枠44の両面とは、単結晶シリコンの(100)面で構成されている。梁側面634と梁側面635とV溝41Dを構成する溝面とは、単結晶シリコンの(111)面で構成されている。
【0075】
弾性支持梁63の梁表面631と可動板表面41Aと、及び梁裏面632と可動板裏面41Bとは、エッチングして光偏向素子60を形成するシリコン基板における同一の面であり、梁表面631は、可動板表面41Aと略同一平面上にあり、梁裏面632は、可動板裏面41Bと略同一平面上にある。梁側面634は、両側がそれぞれ、表稜線636において梁表面631と、裏稜線639において梁裏面632と接しており、梁側面635は、両側がそれぞれ、表稜線637において梁表面631と、裏稜線638において梁裏面632と接している。
【0076】
表稜線636と、裏稜線639と、表稜線637と、裏稜線638とは、回動軸X1の軸方向に略平行である。回動軸X1に直交する方向において、梁裏面632の幅は、梁表面631の幅より広くなっている。表稜線636より裏稜線639の方が回動軸X1から遠い位置に位置しており、表稜線637より裏稜線638の方が回動軸X1から遠い位置に位置している。
【0077】
一対の弾性支持梁63,63が回動軸X1を中心にして捩れることによって、可動板41(反射鏡42)は、回動軸X1を中心にして回動する。光偏向素子60を備える主走査偏向器が投射型画像表示装置1に組み込まれた状態で、図5(a)に示した回動軸X1は、図1に示した回動軸Xと同じものである。光偏向素子60を備える主走査偏向器は、光偏向素子40を備える主走査偏向器31と同様に稼働する。
【0078】
光偏向素子60を備える主走査偏向器が稼働する際は、可動板41が回動させられて、一対の弾性支持梁63,63がねじられる。弾性支持梁63がねじられたとき、中立軸から遠い裏稜線638及び裏稜線639の部分に最も大きい応力が発生する。
光偏向素子60の可動板41においては、弾性支持梁63との接続部分において、裏稜線638及び裏稜線639との接続部分の周辺の応力が大きくなり、比例してたわみも大きくなる。
【0079】
光偏向素子60においては、光偏向素子40と同様に、可動板41における裏稜線638及び裏稜線639との接続部分に近い位置に磁石37が固定される。磁石37は例えば鉄系の金属で形成されており、可動板41を構成するシリコンに比べて高い剛性を有している。このため、弾性支持梁63がねじられて発生する応力による可動板41のたわみは、最も大きい部分において、たわみ量を軽減することができる。
【0080】
図5(c)及び図5(d)に示すように、光偏向素子80は、可動板41と、反射鏡42と、一対の弾性支持梁83,83と、支持枠44と、を備えている。可動板41と、反射鏡42と、支持枠44とは、光偏向素子40における可動板41と反射鏡42と支持枠44と実質的に同じものである。光偏向素子80は、一対の弾性支持梁83,83の弾性支持梁83が光偏向素子40における弾性支持梁43とは異なることが、光偏向素子40と異なっている。
【0081】
可動板41と弾性支持梁83と支持枠44とは、例えばシリコン基板をエッチングして形成され、一体に形成されている。可動板41は、弾性支持梁83が捩れ変形することによって、回動軸X2を軸に回動可能である。
一対の弾性支持梁83,83は、それぞれの弾性支持梁83の一端が、可動板41の側面における円形平板形状の中心に関して略対称の位置において接続されており、回動軸X2の軸方向に沿ってそれぞれの中心軸が一直線となる方向及び位置に延在している。
【0082】
弾性支持梁83は、2個の副支持梁43a及び2個の副支持梁43bを有している。副支持梁43a及び副支持梁43bは、光偏向素子40の弾性支持梁43を構成する副支持梁43a又は副支持梁43bと同等のものである。弾性支持梁83において、2個の副支持梁43aは、回動軸X2に関して片側に、回動軸X2の軸方向に平行に延在し、並んで配設されている。2個の副支持梁43bは、反射鏡42の面に垂直であって回動軸X2を含む面に関して、2個の副支持梁43aと対称の位置に配設されている。
【0083】
弾性支持梁43における副支持梁43a及び副支持梁43bと同様に、弾性支持梁83における副支持梁43a及び副支持梁43bにおいて、表稜線436aと、裏稜線439aと、表稜線437aと、裏稜線438aとは、回動軸X2の軸方向に略平行である。回動軸X2から遠い方に位置する副支持梁43aと副支持梁43bとに関して、反射鏡42の反射面に平行な方向において、表稜線436aより裏稜線439aの方が回動軸X2から遠い位置に位置しており、表稜線437aより裏稜線438aの方が回動軸X2から遠い位置に位置している。
【0084】
一対の弾性支持梁83,83(一対の、2個の副支持梁43aと2個の副支持梁43bからなる組)が回動軸X2を中心にして捩れることによって、可動板41(反射鏡42)は、回動軸X2を中心にして回動する。光偏向素子80を備える主走査偏向器が投射型画像表示装置1に組み込まれた状態で、図5(c)に示した回動軸X2は、図1に示した回動軸Xと同じものである。光偏向素子80を備える主走査偏向器は、光偏向素子40を備える主走査偏向器31と同様に稼働する。
【0085】
光偏向素子80を備える主走査偏向器が稼働する際は、可動板41が回動させられて、一対の弾性支持梁83,83がねじられる。弾性支持梁83がねじられたとき、弾性支持梁83を構成する副支持梁43a及び副支持梁43bにおいては、弾性支持梁43における副支持梁43a及び副支持梁43bと同様の応力が発生する。したがって、回動軸X2から遠い方の副支持梁43aにおける裏稜線439a及び回動軸X2から遠い方の副支持梁43bにおける裏稜線439bの周辺の応力が大きくなる。
【0086】
可動板41においては、当該副支持梁43a又は副支持梁43bとの接続部分において、裏稜線439a及び裏稜線439bとの接続部分の周辺の応力が大きくなり、比例してたわみも大きくなる。
光偏向素子80においては、光偏向素子40と同様に、可動板41における裏稜線439a及び裏稜線439bとの接続部分に近い位置に磁石37が固定される。磁石37は例えば鉄系の金属で形成されており、可動板41を構成するシリコンに比べて高い剛性を有している。このため、弾性支持梁83がねじられて発生する応力による可動板41のたわみは、最も大きい部分において、たわみ量を軽減することができる。
【0087】
<印刷装置>
次に、投射型画像表示装置とは異なる、光偏向器を備える画像形成装置としての印刷装置について、図6及び図7を参照して説明する。本実施形態で説明する印刷装置101は、電子写真方式を採用する印刷装置である。図6は、印刷装置の全体構成を模式的に示す断面図である。図7は、印刷装置が備える露光ユニットの概略構成を示す説明図である。
印刷装置101は、露光・現像・転写・定着を含む一連の画像形成プロセスによって、トナーからなる画像を紙やOHPシートなどの記録媒体に記録するものである。
【0088】
図6に示すように、印刷装置101は、感光体111と、帯電ユニット112と、露光ユニット110と、現像ユニット114と、転写ユニット115と、クリーニングユニット116と、からなる画像形成ユニットを備えている。印刷を実施する際には、図6に矢印aで示した方向に感光体111が回転する。帯電ユニット112と、露光ユニット110と、現像ユニット114と、転写ユニット115と、クリーニングユニット116とは、感光体111の回転方向に沿ってこの順番で、感光体111の周囲に配設されている。
【0089】
印刷装置101は、また、紙などの記録媒体Pを収容する給紙トレイ117と、定着装置118とを備えている。給紙トレイ117は画像形成ユニットの一方の側(図6では、画像形成ユニットの図における下側)に配設されており、定着装置118は画像形成ユニットを挟んで給紙トレイ117の略反対側(図6では、画像形成ユニットの図における上側)に配設されている。
【0090】
画像形成ユニットでは、帯電ユニット112によって、感光体111が帯電され、露光ユニット110によって潜像が形成され、現像ユニット114によってトナーで現像され、現像された画像が転写ユニット115に転写される。
より詳細には、まず、図示しないホストコンピューターからの指令により、感光体111、現像ユニット114に設けられた現像ローラー(図示省略)、及び転写ユニット115の中間転写ベルト151が回転を開始する。感光体111は、回転しながら、帯電ユニット112に対向する部分が帯電ユニット112により順次帯電される。
【0091】
感光体111の帯電された領域は、感光体111の回転に伴って露光位置に至り、露光ユニット110によって、第1色目、例えばイエローYの画像情報に応じた潜像が前記領域に形成される。
感光体111上に形成された潜像は、感光体111の回転に伴って、現像ユニット114に対向する現像位置に至り、イエロー現像のための現像装置、例えば現像装置144によってイエロートナーで現像される。イエロートナーで現像されることによって、感光体111上にイエロートナー像が形成される。
【0092】
現像ユニット114は、軸146を軸に回転する保持体145と、現像装置141、現像装置142、現像装置143、及び現像装置144と、を備えている。現像装置141、現像装置142、現像装置143、及び現像装置144は、保持体145に保持されており、軸146のまわりに回転可能である。保持体145が回転して、例えばイエロートナーで現像する場合の現像装置144のように、現像する色に対応した現像装置141、現像装置142、現像装置143、又は現像装置144が、感光体111と対向する位置に位置される。
【0093】
感光体111上に形成されたイエロートナー像などの像は、感光体111の回転に伴って、感光体111が転写ユニット115の一次転写ローラー152と対向している一次転写位置に至る。このとき、一次転写ローラー152には、トナーの帯電極性とは逆の極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。一次転写電圧が印加された一次転写ローラー152によって、感光体111上に形成されたイエロートナー像などの像が中間転写ベルト151に転写(一次転写)される。中間転写ベルト151は、駆動ローラー154を回転させることで一次転写ローラー152および従動ローラー153を従動回転させながら回転する。なお、この間、二次転写ローラー155は、中間転写ベルト151から離間している。
【0094】
潜像の形成、現像、及び一次転写と同様の処理が、他の色(本実施形態では、第2色目、第3色目、及び第4色目)について繰り返して実行されることにより、各画像信号に対応した各色のトナー像が、中間転写ベルト151に重なり合って転写される。これにより、中間転写ベルト151上にはフルカラートナー像が形成される。
記録媒体Pは、給紙トレイ117から、給紙ローラー171及びレジローラー172によって、二次転写ローラー155と駆動ローラー154とが、中間転写ベルト151を間に挟んで対向している二次転写位置へ搬送される。
【0095】
中間転写ベルト151上に形成されたフルカラートナー像は、中間転写ベルト151の回転に伴って二次転写位置に至る。このとき、二次転写ローラー155は中間転写ベルト151に押圧されるとともに二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加されている。二次転写位置に至った記録媒体P及び中間転写ベルト151におけるフルカラートナー像が形成された部分は、二次転写ローラー155と駆動ローラー154とに挟まれて互いに凹圧され、二次転写電圧が印加された二次転写ローラー155によって、フルカラートナー像が記録媒体Pに転写(二次転写)される。
記録媒体Pに転写されたフルカラートナー像は、定着装置118によって加熱および加圧されて記録媒体Pに融着される。その後、片面プリントの場合には、記録媒体Pは、排紙ローラー対173によって露光ユニット110の外部へ排出される。
【0096】
一方、感光体111は一次転写位置を経過した後に、クリーニングユニット116のクリーニングブレード161によって、その表面に付着しているトナーが掻き落とされ、次の潜像を形成するための帯電に備える。掻き落とされたトナーは、クリーニングユニット116内の残存トナー回収部に回収される。
両面プリントの場合には、定着装置118によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを一旦排紙ローラー対173により挟持した後に、排紙ローラー対173を反転駆動するとともに、搬送ローラー174及び搬送ローラー176からなる搬送ローラー対を駆動して、当該記録媒体Pを搬送路175を通じて表裏反転して二次転写位置へ帰還させ、前述と同様の動作により、記録媒体Pの他方の面に画像を形成する。
【0097】
印刷装置101が備える露光ユニット110は、図示省略したパーソナルコンピューターなどのホストコンピューターから画像情報及び画像形成指令を受け、一様に帯電された感光体111上に、レーザー光を選択的に照射することによって、画像情報に対応する静電的な潜像を形成する装置である。
図7に示すように、露光ユニット110は、光偏向器に相当するアクチュエーター103と、レーザー光源121と、コリメータレンズ122と、fθレンズ123とを備えている。アクチュエーター103は、回動軸X0まわりに回動可能な可動板241と、可動板241上に形成された反射鏡242とを有している。
【0098】
露光ユニット110にあっては、レーザー光源121からコリメータレンズ122を介してアクチュエーター103の反射鏡242にレーザー光L0が照射される。照射されたレーザー光L0は、反射鏡242で反射されて、fθレンズ123を介して感光体111上に照射される。
その際、アクチュエーター103が駆動されて、可動板241が回動軸X0まわりに回動することにより、可動板241上に形成された反射鏡242で反射されたレーザー光L0は、感光体111の軸線方向に走査(主走査)される。同時に、感光体111が回転することにより、反射鏡242で反射されたレーザー光L0は、感光体111の周方向に走査(副走査)される。レーザー光L0が感光体111上を主走査方向及び副走査方向に走査されることによって、感光体111上に面状の画像が形成される。レーザー光源121が、光源に相当する。アクチュエーター103が、光偏向器に相当し、反射鏡242が、反射手段に相当する。
【0099】
レーザー光源121から射出されるレーザー光L0の強度は、図示しないホストコンピューターから受けた画像情報に応じて変化する。感光体111に照射されるレーザー光L0の強度によって、照射された部分におけるトナー像の濃度が定まり、同じ部分における各色の濃度の組み合わせによって、当該部分の色調や濃度が定まる。
このようにして露光ユニット110は、感光体111上を選択的に露光して画像形成(描画)を行う。
【0100】
以下、実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)光偏向素子40において、弾性支持梁43を構成する副支持梁43aでは、表稜線436aより裏稜線439aの方が回動軸Xから遠い位置に位置しており、表稜線437aより裏稜線438aの方が回動軸Xから遠い位置に位置している。副支持梁43bでは、表稜線436bより裏稜線439bの方が回動軸Xから遠い位置に位置しており、表稜線437bより裏稜線438bの方が回動軸Xから遠い位置に位置している。このような弾性支持梁43(連結部)は、可動板41の回動軸X(回動中心軸)に垂直な断面で見たときに、反射鏡42(光反射部)側から磁石37側に向けて、幅が漸次増加する形状をなしている。この構成において、可動板41が回動させられて、弾性支持梁43(副支持梁43a及び副支持梁43b)がねじられたとき、副支持梁43aにおける裏稜線439a及び副支持梁43bにおける裏稜線439bの周辺の応力が大きくなる。可動板41においては、裏稜線439a及び裏稜線439bとの接続部分の周辺の応力が大きくなり、比例してたわみも大きくなる。可動板41における裏稜線439a及び裏稜線439bとの接続部分に近い位置にはシリコンに比べて高い剛性を有する磁石37が固定されているため、副支持梁43a及び副支持梁43bがねじられて発生する応力による可動板41のたわみは、最も大きい部分において、たわみ量を軽減することができる。これにより、可動板41のたわみ量を軽減することができる。
【0101】
(2)光偏向素子60において、弾性支持梁63は台形形状の断面を有し、弾性支持梁63がねじられたとき、中立軸から遠い裏稜線638及び裏稜線639の部分に最も大きい応力が発生する。可動板41においては、裏稜線638及び裏稜線639との接続部分の周辺の応力が大きくなり、比例してたわみも大きくなる。可動板41における裏稜線638及び裏稜線639との接続部分に近い位置にシリコンに比べて高い剛性を有する磁石37が固定されているため、弾性支持梁63がねじられて発生する応力による可動板41のたわみは、最も大きい部分において、たわみ量を軽減することができる。これにより、可動板41のたわみ量を軽減することができる。
【0102】
(3)光偏向素子80において、弾性支持梁83を構成する副支持梁43aでは、表稜線436aより裏稜線439aの方が回動軸X2から遠い位置に位置しており、表稜線437aより裏稜線438aの方が回動軸X2から遠い位置に位置している。副支持梁43bでは、表稜線436bより裏稜線439bの方が回動軸X2から遠い位置に位置しており、表稜線437bより裏稜線438bの方が回動軸X2から遠い位置に位置している。この構成において、可動板41が回動させられて、弾性支持梁83(副支持梁43a及び副支持梁43b)がねじられたとき、回動中心から遠い方の副支持梁43aにおける裏稜線439a及び回動中心から遠い方の副支持梁43bにおける裏稜線439bの周辺の応力が大きくなる。可動板41においては、当該裏稜線439a及び裏稜線439bとの接続部分の周辺の応力が大きくなり、比例してたわみも大きくなる。可動板41における裏稜線439a及び裏稜線439bとの接続部分に近い位置にはシリコンに比べて高い剛性を有する磁石37が固定されているため、副支持梁43a及び副支持梁43bがねじられて発生する応力による可動板41のたわみは、最も大きい部分において、たわみ量を軽減することができる。これにより、可動板41のたわみ量を軽減することができる。
【0103】
(4)弾性支持梁43は、副支持梁43aと副支持梁43bとで構成されており、弾性支持梁83は、2個の副支持梁43aと2個の副支持梁43bとで構成されている。弾性支持梁を複数の副支持梁で構成することにより、単一の弾性支持梁とくらべて、ねじれ量が一定で弾性支持梁に発生する最大応力が同じ場合の、弾性支持梁の剛性を小さくすることができる。剛性を同じにする場合には、剛性を規定する他の要素である弾性支持梁の長さを短くすることができる。
【0104】
(5)可動板41は、円形の平板形状の側面に、円周方向に延在するV溝41Dが、全周に亘って形成されている。このような可動板41は、その回動軸X(回動中心軸)に垂直な断面で見たときに、反射鏡42(光反射部)側から37磁石側に向けて幅が漸減する部分を有する。これにより、反射鏡42の面積を減ずることなく、可動板41の慣性モーメントを減少させることができる。
【0105】
(6)可動板41における可動板裏面41Bには裏面凹部41Cが形成されており、裏面凹部41Cには磁石37が固定されている。すなわち、可動板41は、反射鏡42(光反射部)とは反対の可動板裏面41Bに形成された裏面凹部41C(凹部)を有し、磁石37の少なくとも一部は、裏面凹部41C内に設けられている。磁石37を可動板裏面41Bより凹んだ裏面凹部41Cに固定することで、可動板裏面41Bに固定する構成より、磁石37を回動軸Xなどの回動軸に近い位置に配置することができる。可動板41を構成するシリコンより比重が大きい磁石37を回動軸に近い位置に配置することで、可動板41と磁石37とから成る系の、回動軸まわりの慣性モーメントを小さくすることができる。
【0106】
(7)副梁表面431aは、可動板表面41Aと略同一平面上にあり、副梁裏面432aは、可動板裏面41Bと略同一平面上にあり、副梁表面431bは、可動板表面41Aと略同一平面上にあり、副梁裏面432bは、可動板裏面41Bと略同一平面上にある。すなわち、副支持梁43a及び副支持梁43bと、可動板41とは、可動板表面41A側も可動板裏面41B側も、接続部分に段差がない状態で接続されている。このように、弾性支持梁43(連結部)は、可動板41の両板面とそれぞれ同一面となるように連続的に形成された面を有する。これにより、段差の角部において応力集中が発生することに起因して応力が高くなることを抑制することができる。
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0107】
(変形例1)前記実施形態においては、弾性支持梁として、台形形状断面を有する弾性支持梁63や、平行四辺形断面を有する副支持梁43a及び副支持梁43bを有する弾性支持梁43や、2個の副支持梁43a及び2個の副支持梁43bを有する弾性支持梁83を例に説明したが、弾性支持梁の構成はこれらの構成に限らない。台形形状断面を有する副支持梁を複数備える構成であってもよいし、台形形状断面を有する副支持梁と平行四辺形断面を有する副支持梁とを組み合わせた構成であってもよい。弾性支持梁の幅が、剛性が高い駆動源要素が配設された側のように可動板における剛性が高い側が広くなるような形状であれば、弾性支持梁の構成はどのような構成であってもよい。
【0108】
(変形例2)前記実施形態においては、可動板41は、円形の平板形状の側面に、円周方向に延在するV溝41Dが、全周に亘って形成されていたが、可動板の周囲に溝などの凹部を形成することは必須ではない。可動板の端面は平坦であってもよい。また、凹部がV字形状の溝であることも必須ではない。溝の形状はどのような形状であってもよい。
(変形例3)前記実施形態においては、可動板41は、円形の平板形状であったが、可動板が円形であることは必須ではない。可動板の平板形状は、長円形状や楕円形状や多角形形状などであってもよい。
【0109】
(変形例4)前記実施形態においては、可動板41における可動板裏面41Bには、駆動源配置部としての裏面凹部41Cが形成されており、裏面凹部41Cには駆動源要素としての磁石37が固定されていたが、駆動源配置部が可動板に形成された凹部であることは必須ではない。可動板の平坦な裏面に駆動源要素を配置する構成であってもよい。
(変形例5)前記実施形態においては、副梁表面431aは、可動板表面41Aと略同一平面上にあり、副梁裏面432aは、可動板裏面41Bと略同一平面上にあり、副梁表面431bは、可動板表面41Aと略同一平面上にあり、副梁裏面432bは、可動板裏面41Bと略同一平面上にあった。しかし、弾性支持梁の表裏の面が可動板の表裏の面と同一平面であることは必須ではない。弾性支持梁の表裏の面の何れか又は両方が、可動板の表裏の面と同一平面ではない構成であってもよい。
【0110】
(変形例6)前記実施形態においては、副走査偏向器32は、ガルバノミラーにより構成されていたが、副走査偏向器32のように使用される光偏向器にも、主走査偏向器31のような光偏向素子を用いた光偏向器を採用できる。
(変形例7)前記実施形態においては、支持枠44は、略方形の板の内側に支持枠開口45が形成された額縁状の形状を有していたが、支持枠44などの支持枠が額縁状の形状であることは必須ではない。弾性支持梁を支持することができる充分な強度を実現できれば、支持枠の形状はどのような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0111】
1…投射型画像表示装置 3…光走査ユニット 31…主走査偏向器 36…駆動装置 37…磁石 38…駆動コイル 40…光偏向素子 41…可動板 41A…可動板表面 41B…可動板裏面 41C…裏面凹部 42…反射鏡 43…弾性支持梁 43a,43b…副支持梁 44…支持枠 50…素子筐体 51…封止蓋 52…筐体本体 56…支持部 60…光偏向素子 63…弾性支持梁 80…光偏向素子 83…弾性支持梁 101…印刷装置 241…可動板 242…反射鏡 411,412…可動板 431a,431b…副梁表面 432a,432b…副梁裏面 433a,433b,434a,434b…副梁側面 436a,436b,437a,437b…表稜線 438a,438b,439a,439b…裏稜線 631…梁表面 632…梁裏面 634,635…梁側面 636,637…表稜線 638,639…裏稜線 X,X1,X2…回動軸 2…光源ユニット 21,21B,21G,21R…レーザー光源 22,22B,22G,22R…ダイクロイックプリズム 32…副走査偏向器 34…固定反射鏡 41D…V溝 45…支持枠開口 48…副走査反射鏡 52a…側壁 53…上面 54…素子室 54a…底面 54b…素子室凹部 57…外底面 57a…外底面凹部 103…アクチュエーター 110…露光ユニット 111…感光体 112…帯電ユニット 114…現像ユニット 115…転写ユニット 116…クリーニングユニット 117…給紙ユニット 118…定着装置 121…レーザー光源 122…コリメータレンズ 123…fθレンズ 141〜144…現像装置 145…保持体 146…軸 151…中間転写ベルト 152…一次転写ローラー 153…従動ローラー 154…駆動ローラー 155…二次転写ローラー 161…クリーニングブレード 171…給紙ローラー 172…レジローラー 173…排紙ローラー対 174…搬送ローラー 175…搬送路 176…搬送ローラー P…記録媒体 S…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射性を有する光反射部が設けられた可動板と、
支持部と、
前記可動板を前記支持部に対して回動可能に連結する連結部と、
前記可動板の前記光反射部と反対の面側に設けられた磁石とを備え、
前記連結部は、前記可動板の回動中心軸に垂直な断面で見たときに、前記光反射部側から前記磁石側に向けて、幅が漸次増加する形状をなしていることを特徴とする光偏向素子。
【請求項2】
光反射性を有する光反射部が設けられた可動板と、
支持部と、
前記可動板を前記支持部に対して回動可能に連結する互いに平行な複数の梁で構成された連結部と、
前記可動板の前記光反射部と反対の面側に設けられた磁石とを備え、
前記連結部は、前記可動板の回動中心軸に垂直な断面で見たときに、前記複数の梁が前記光反射部に平行な方向に並んで設けられ、前記光反射部側から前記磁石側に向けて、前記光反射部に平行な方向における前記各梁の幅と隣り合う前記梁同士の間の距離とを合計した長さが漸次増加する形状をなしていることを特徴とする光偏向素子。
【請求項3】
前記複数の梁は、前記可動板の回動中心軸を介して対向する互いに平行な第1の梁および第2の梁を備え、
前記第1の梁および前記第2の梁は、前記可動板の回動中心軸に垂直な断面で見たときに、前記光反射部側から前記磁石側に向けて、互いの離間距離が大きくなるようにそれぞれ傾斜した形状をなしている請求項2に記載の光偏向素子。
【請求項4】
前記可動板および前記連結部は、単結晶シリコンで構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の光偏向素子。
【請求項5】
前記可動板の両板面は、それぞれ、前記単結晶シリコンの(100)面で構成され、
前記連結部は、前記単結晶シリコンの(100)面および(111)面で構成されている請求項4に記載の光偏向素子。
【請求項6】
前記連結部は、前記可動板の両板面とそれぞれ同一面となるように連続的に形成された面を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の光偏向素子。
【請求項7】
前記可動板は、その回動中心軸に垂直な断面で見たときに、前記光反射部側から前記磁石側に向けて幅が漸減する部分を有する請求項1ないし6のいずれかに記載の光偏向素子。
【請求項8】
前記可動板は、前記光反射部とは反対の面に形成された凹部を有し、
前記磁石の少なくとも一部は、前記凹部内に設けられている請求項1ないし7のいずれかに記載の光偏向素子。
【請求項9】
前記磁石は、永久磁石である請求項1ないし8のいずれかに記載の光偏向素子。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の光偏向素子を備えることを特徴とする光偏向器。
【請求項11】
光を出射する光出射部と、
請求項10に記載の光偏向器とを備え、
前記光出射部から出射した光を前記光偏向器により走査することにより、画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−107675(P2011−107675A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105742(P2010−105742)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】