説明

光半導体用ステム

【課題】小型化が可能で、かつ、半導体発光素子とレンズとの距離を設計値通りに一定に保つことができ、更に、組立の効率化を図ることができる光半導体モジュール用金属ステム、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属ステム1aのベース部11a外周部には、環状溝部15が形成されている。光透過キャップ3aを金属ステム1aに抵抗溶接する際には、金属キャップ3aのフランジ部33の端面35が金属ステム1aのベース部11aの表面16に当接する。したがって、受/発光素子2の光軸に対するレンズ4の光軸の傾斜を抑制することができ、かつ、受/発光素子2とレンズ4の中心との距離を一定に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体用ステム、光半導体モジュール及び光半導体モジュールの製造方法に関し、より特定的には、光半導体素子等を気密封止するために用いられる光半導体用ステム、光半導体モジュール及び光半導体モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバに接続される光通信用光半導体モジュールは、素子搭載部に光半導体素子等を搭載された金属ステムを気密封止するために取り付けられる光透過キャップを備える。従来、光半導体モジュールを構成する一部として、光ファイバ、光ファイバと光半導体素子とを光結合させるための光透過キャップ、レーザーダイオードなどの発光素子やフォトダイオードなどの受光素子といった光半導体素子を搭載した金属ステムが知られている。
【0003】
図3(a)は、従来の光ファイバによる光通信用光半導体モジュールを示す断面図であり、図3(b)は図3(a)のB部拡大図である。図3(a)に示される光半導体モジュールは、金属ステム1と、リード13と、受/発光素子2と光透過キャップ3とを備える。金属ステム1は金属材料によって構成され、円盤状のベース部11と、ベース部11の表面に形成された素子搭載部12とを備える。受/発光素子2は、例えば半導体レーザ、発光ダイオード等の発光素子と、フォトダイオード等の受光素子とを含む素子であり、金属ステム1の素子搭載部12上に実装されている。リード13は、光半導体モジュールの入出力端子を構成する。リード13の各々は、金属ステム1のベース部11を貫通し、かつ、金属ステム1との間が絶縁されるように、ベース部11に取り付けられている。また、リード13の各々は、ボンディングワイヤ14を介して、受/発光素子2に電気的に接続されている。
【0004】
光透過キャップ3は受/発光素子2を気密状態に封止するために、金属ステム1のベース部11に取り付けられ、円形状のキャップ天板部30とキャップ天板部30の外周縁の全体に接続される円筒形状の円筒部32と、円筒部32の開放端に接続されるフランジ部301と、レンズ4を備える。キャップ天板部30の中央部には、開孔を形成することによって、光透過用の窓部31が形成されている。レンズ4は受/発光素子2と光ファイバ6とを光結合させるため、すなわち、受/発光素子2から出射された光を光ファイバ6へと入射し、光ファイバ6から出射された光を受/発光素子2へと入射するために設けられている。レンズ4は、例えば、低融点ガラスや半田を用いて、または、熱封着によって、キャップ天板部30に取り付けられている。また、光透過キャップ3のフランジ部301には、突起部302が形成されている。突起部302は、円筒部32の軸中心を取り囲み、かつ、フランジ部301の表面から環状に突出するように形成されている。また、光透過キャップ3のフランジ部301の端面303からレンズ4までの距離は、受/発光素子2の発光面(受光面)からレンズ4までの距離に応じた所定の寸法に設定されている。
【0005】
光半導体モジュールは、図3(a)に示されるように、円筒形状の金属製スリーブ5及びフェルール部7を介して、光ファイバ6に接続される。金属製スリーブ5の内壁は、段付孔構造、すなわち、図3(a)における上端から下端へと段階的に内径が大きくなるように形成されている。フェルール部7は、光ファイバ6を挿入するための貫通孔を有し、金属製スリーブ5の中空内部に挿入されている。また、フェルール部7における受/発光素子2側の端面は、ファイバ端面における入射光の反射によって生じる光損失を抑制するために、光軸に対して傾斜するように研磨されている。尚、金属製スリーブ5の長さは、レンズ4から光ファイバ6の端面までの距離が所定の寸法となるように設定されている。
【0006】
ここで、上記のような従来の光半導体モジュールの製造方法について説明する。まず図3(a)に示されるように、素子搭載部12上に受/発光素子2が搭載された金属ステム1を用意し、突起部302の先端部がベース部11表面の外周部分に当接するように、光透過キャップ3が金属ステム1に載置される。次に、受/発光素子2がレンズ4の光軸上に位置するように、金属ステム1と光透過キャップ3との相対位置が調整される。次に、突起部302に加圧・通電して抵抗溶接を行うことによって、光透過キャップ3は、金属ステム1に固着される。これにより、受/発光素子2は金属ステム1と光透過キャップ3とによって気密封止される。光透過キャップ3を金属ステム1に固着した後に、フェルール部7を介して光ファイバ6が取り付けられた金属製スリーブ5を、キャップ天板部30の外方面上に配置する。その後、金属製スリーブ5をキャップ天板部30に当接させた状態のまま、金属製スリーブ5をレンズ4の光軸と直行する方向(図3(a)における左右方向)に摺動させることにより、レンズ4と光ファイバ6との間で光軸の位置関係が調整される。そして、金属製スリーブ5と光透過キャップ3とをレーザ等を用いて溶接することによって、光ファイバ6はフェルール部7及び金属製スリーブ5を介して、光透過キャップ3に対して固定される。
【0007】
上記のような光半導体モジュールの製造方法においては、受/発光素子2が搭載された金属ステム1に光透過キャップ3を抵抗溶接する際に、光透過キャップ3に設けられた突起部302の潰れの程度が一定ではなく、ばらつきやすいという問題がある。突起部302の潰れの程度がばらつくと、レンズ4と受/発光素子2との距離が設計値からずれるため、受/発光素子2と光ファイバ6との結合損失が増加するという問題がある。
【0008】
そこで、抵抗溶接時における突起部の潰れのばらつきが大きいことに起因する結合損失を低減させるために、フランジ部に抵抗溶接用の突起が形成されていない光透過キャップを用いた光半導体モジュールが知られている(例えば、特許文献1参照)特許文献1に記載の光半導体モジュールは、受/発光素子が搭載された鍔付きステムと、フランジ部を有する光透過キャップと、断面が階段状に形成され、段毎に突起部が形成された段付輪体とを備える。当該光半導体モジュールは、受/発光素子とレンズとの位置関係が一定に維持されるため、高い光結合効率を得ることができる。
【特許文献1】特開平6−291369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の従来の光半導体モジュールは、金属ステムと、光透過キャップとに加えて、これらを接続するための段付輪体を別途必要とする。段付輪体の外形は、必然的に光透過キャップの外形より大きくなるため、組立後の光半導体モジュールのサイズもまた大きくなる。したがって、特許文献1に記載の光半導体モジュールは、小型化に不向きであるという問題がある。また、互いに光軸の位置調整がされた金属ステム及び光透過キャップの各々に対して、段付輪体を抵抗溶接する際には、再度の光軸調整が必要であるため、光半導体モジュールの製造時の作業効率が悪いという問題もある。
【0010】
そこで、本発明は、小型化が可能で、かつ、半導体発光素子とレンズとの距離を一定に保つことができ、更に、組立の効率化を図ることができる金属ステム及びそれを用いた光半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、光半導体モジュールの一部を構成する金属ステムであって、金属よりなるベース部と、ベース部表面に光半導体素子搭載用の素子搭載部と、ベース部とは絶縁された状態で立設してなるリード部とからなり、ベース部表面の外周端より内側に位置する環状溝部を設ける。
【0012】
このような構成によれば、光半導体素子を気密封止するために、光透過キャップを金属ステムに抵抗溶接する際に、金属キャップのフランジ部端面が金属ステムのベース部端面に当接するため、フランジ部に設けられた突起部の押し込み量を一定にすることができる。
【0013】
ここで、環状に設けられた溝部は、ベース部の端面と平行方向環状であることが良い。
【0014】
このような構成によれば、光透過キャップを金属ステムに抵抗溶接する際に、光透過キャップのフランジ部が金属ステムのベース部の表面に面接触するため、光半導体素子の光軸に対する光透過キャップの中心軸の傾きを抑制することが可能となる。
【0015】
第2の発明は、光半導体素子が封入される光半導体モジュールであって、ベース部の外周端に略垂直方向に溝部を環状に設けた金属ステムと、光透過用窓を有する天板部と、天板部の外周端から略垂直方向に延在する円筒壁部により形成された円筒部と、円筒部から天板部と平行方向環状に延出するフランジ部と、光透過用窓で封着された光学レンズと、フランジ部から略垂直方向に突出する突起部が環状に設けられた光透過キャップとからなり、光半導体素子が実装された金属ステムと、光透過キャップとからなり光学レンズを備えた窓部に結合された光ファイバとを備えた光半導体モジュールであって、突起部と金属ステムとが溶着され、フランジ部端面と金属ステムのベース部の表面とが当接した状態で抵抗溶接されてなる。
【0016】
このような構成によれば、光透過キャップを金属ステムに抵抗溶接する際に、光透過キャップのフランジ部が金属ステムのベース部の表面に当接するため、フランジ部に設けられた突起部の押し込み量を一定にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る金属ステム、光半導体モジュールによれば、天板部に形成された開孔を覆うように取り付けられるレンズと、光半導体素子との距離が一定の光半導体モジュールを構成することが可能となる。また、金属ステムに溝部を平坦状に形成することによって、光透過キャップを金属ステムに抵抗溶接する際に、光透過キャップのフランジ部と金属ステムのベース部の表面とが面接触するため、光半導体素子の光軸と、レンズの光軸との傾きが抑制され、結合損失がより低減される光半導体モジュールを安定して構成することができる。更に、光透過キャップを金属ステムに溶接する際に、部品点数が必要最小限であり、かつ、溝部を設けたことで組立作業時の幅方向のズレを抑制することができるため、金属ステムに対する光透過キャップの位置決め精度が向上し、組立作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1(a)は本発明の実施の形態1に係る光通信用光半導体モジュールを示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示されるA部拡大図である。図1(a)に示される光半導体モジュール100aは、金属ステム1aと、金属ステム1a上に実装された受/発光素子2と、リード13と、光透過キャップ3aとを備える。
【0020】
金属ステム1aは、例えば、鉄やコバール等の金属材料によって形成され、円盤状のベース部11aと、ベース部11aの表面に形成された素子搭載部12と、ベース部11aの外周端に環状に設けられた環状溝部15とを備える。環状溝部15は、ベース部11aの外周に沿ってベースの軸中心を環状に取り囲むようにベース部11aに設けられている。受/発光素子2は、例えば、半導体レーザや発光ダイオード等の発光素子、フォトダイオード等の受光素子の少なくとも一方または両方を含む素子である。リード13は、光半導体モジュール100aの入出力端子を構成する。リード13の各々は、ベース部11aを貫通し、かつ、ベース部11aとの間が絶縁された状態でベース部11aに取り付けられている。また、リード13の各々は、ボンディングワイヤ14を介して、受/発光素子2と電気的に接続されている。
【0021】
光透過キャップ3aは、金属ステム1a上に実装された受/発光素子2を気密状態に封止するために、ベース部11aの表面に取り付けられるものである。光透過キャップ3aは、キャップ天板部30と、円筒部32と、フランジ部33と、突起部34と、レンズ4とを備える。
【0022】
キャップ天板部30は、平面視において円形状を有し、その中央に円形状の開孔によって、光を透過させるための窓部31が形成されている。円筒部32はキャップ天板部30の外周縁の全体に接続され、キャップ天板部30に対して直交する一方向(図1(a)においては、下方向)へと延びる円筒形状に形成されている。フランジ部33は、円筒部32の開放端の全体に接続され、円筒部32の中心軸に対して直交する方向へと広がるように形成され、かつ、キャップ天板部30の外方面を含む平面(図1(a)に示される二点鎖線)から所定の第2の距離D2まで環状に形成されている。第2の距離D2は受/発光素子2の発光面(受光面)からレンズ4までの距離が、所定の寸法となるように設定されている。突起部34は、円筒部32の軸中心を円形状に取り囲むように、かつ、キャップ天板部30の外方面を含む平面(図1(a)に示される二点鎖線)から所定の第1の距離D1まで環状に突出するようにフランジ部33に形成されている。尚、突起部34は、光透過キャップ3aを金属ステム1aに抵抗溶接するために用いられるものである。
【0023】
ここで、ベース部11a表面の外周端より内側に環状に設けられた環状溝部15の内径は、光透過キャップ3aの内径よりも大きく設定されている。また、環状溝部15の外形は光透過キャップ3aの外形よりも小さく、かつ、突起部34の外形より大きく設定されている。
【0024】
実施の形態1においては、図1(b)に示されるように、環状溝部15のベース部11a表面からの高さLは、フランジ部33表面からの突起部34の高さRより小さく設定されている。一例として、環状溝部15の高さLは、突起部34の高さRに対して、40%以上70%以下の範囲に設定されることが好ましい。
【0025】
尚、図1(a)及び図1(b)において、ベース部11a表面の外周端より内側に形成される環状溝部15及び突起部34は、図示によって特定される形状以外の形状に形成されても良い。より具体的には、環状溝部15及び突起部34の形状及び寸法は、組立工程において、金属ステム1aのベース部11a上に光透過キャップ3aを図1(a)に示される状態に配置したときに、突起部34の先端がベース部11a外周の環状溝部15の底面に当接し、かつ、フランジ部33の端面35とベース部11aの表面16との間に所定寸法の隙間が形成されるように設定されていれば良い。このように構成されていれば、フランジ部33の端面35は、抵抗溶接時に突起部34が溶融した後に、初めてベース部11aに当接することができる。
【0026】
またフランジ部33の端面35の平面度と、ベース部11aの表面のうち抵抗溶接時に端面35が当接する部分の平面度とは、光透過キャップ3aの取付精度を確保する観点から、0.020mm以下に設定されることが望ましい。
【0027】
レンズ4は、キャップ天板部30に形成された窓部31を覆うように、キャップ天板部30に取り付けられている。レンズ4は、例えば、低融点ガラスや半田等を用いて、あるいは、熱封着によってキャップ天板部30に取り付けられる。
【0028】
光半導体モジュール100aは、図1(a)に示されるように、円筒形状の金属製スリーブ5と、円筒形状のフェルール部7とを介して、光ファイバ6に接続される。金属製スリーブ5の内壁は、段付孔構造、すなわち、図1(a)における上端から下端へと段階的に内径が大きくなるように形成されている。フェルール部7は、その軸中心を貫通する細孔を有し、金属製スリーブ5の中空部分の上端に挿入されている。また、フェルール部7における受/発光素子2側の端面は、入射光のファイバ端面での反射による光損失を抑制するために、光軸に対して所定角度だけ傾斜するように研磨されている。尚、金属製スリーブ5の長さは、レンズ4から光ファイバ6の端面までの距離が所定の寸法となるように設定されている。
【0029】
ここで、図1(a)に示される光半導体モジュール100aの製造方法について説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係る光通信用半導体モジュールの製造工程を示す概略工程図である。まず、図2(a)に示されるように、溶接用電極10a上に、素子搭載部12に受/発光素子2が搭載された金属ステム1aが配置される。このとき、金属ステム1aは、そのベース部11aの下面における外周部分が溶接用電極10aの上面に接するように配置される。一方、光透過キャップ3aは、溶接用電極10bによって保持され、キャップ天板部30の内方面がベース部11aの表面に対向するように配置される。
【0030】
次に、図2(b)に示されるように、溶接用電極10a及び10bを互いに近づけるように移動させることによって、突起部34の先端がベース部11a表面の外周端より内側に設けられた環状溝部15の底面に当接するように、光透過キャップ3aを金属ステム1aに対して配置する。
【0031】
次に、光透過キャップ3aのレンズ4の光軸と、受/発光素子2の光軸とが一致するように、金属ステム1aに対する光透過キャップ3aの位置が調整される。その後、一対の溶接用電極10a及び10bを互いに近づく方向に加圧しながら、溶接用電極10a及び10bの間に通電して、光透過キャップ3aを金属ステム1aに抵抗溶接する。抵抗溶接の過程において、突起部34が溶融するため、溶接用電極10a及び10bの間に加えられる圧力によって、光透過キャップ3aは、ベース部11aの表面16に近づくように移動する。そして、図2(c)に示されるように、突起部34の溶融がさらに進行すると、フランジ部33の端面35がベース部11aの表面16に当接する。
【0032】
次に、溶融された突起部34が冷却されると、受/発光素子2は、金属ステム1aと光透過キャップ3aとで気密封止された状態となる。そして、図2(d)に示されるように、溶接用電極10a及び10bが、それぞれ金属ステム1a及び光透過キャップ3aから取り外され、金属ステム1aへ光透過キャップ3aの抵抗溶接が完了する。
【0033】
その後、図1(a)に示したように、光透過キャップ3aのキャップ天板部30の外方面上に、金属製スリーブ5とフェルール部7とを介して光ファイバ6が取り付けられる。組立の一例として、まず、光ファイバ6は、フェルール部7に形成された細孔に挿通するように、フェルール部7に固定される。次に、フェルール部7は金属製スリーブ5の貫通孔に嵌合するように、金属製スリーブ5に取り付けられる。そして、フェルール部7を介して、光ファイバ6が固定された金属製スリーブ5は、その開放端部がキャップ天板部30の外方面に当接するように配置される。金属製スリーブ5は、その開放端がキャップ天板部30の外方面に当接した状態のまま、レンズ4の光軸と直交する方向に摺動され、レンズ4の光軸と光ファイバ6の光軸との相対位置が調整される。光軸調整が完了した後、金属製スリーブ5は、レーザ等を用いて光透過キャップ3aに溶接され、固定される。
【0034】
以上のように、実施の形態1に係る金属ステム1aは、ベース部11a表面の外周端より内側に環状に設けられた環状溝部15を備える。光透過キャップ3aを金属ステム1aに抵抗溶接する工程において、フランジ部33の端面35がベース部11aの表面16に当接するため、突起部34のベース部11a表面の外周端より内側に環状に設けられた環状溝部15への押し込み量が一定となる。したがって、ベース部11a上の素子搭載部12に実装された受/発光素子2からレンズ4までの距離を、キャップ天板部30の外方面を含む平面からフランジ部33の端面35までの距離によって規定することができる。
【0035】
また、実施の形態1においては、光透過キャップ3aを金属ステム1aに抵抗溶接する工程において、突起部34が溶融すると、フランジ部33の端面35は、図2(d)に示されるように、ベース部11aの表面16に面接触する。したがって、受/発光素子2の光軸に対する光透過キャップ3aの傾きが抑制されるので、金属ステム1aと光透過キャップ3aの組立精度が向上し、受/発光素子2の光軸に対してレンズ4の光軸が傾くことに起因する結合損失を低減することが可能となる。
【0036】
更に、実施の形態1に係る光透過キャップ3aと金属ステム1aによれば、受/発光素子2とレンズ4との距離は、設計値通りに規定されるため、受/発光素子2に含まれる発光素子から出射された光を、レンズ4を介して、光ファイバ6に効率的に結合させることが可能となる。同様に、光ファイバ6から出射された光を、レンズ4を介して、受/発光素子2に含まれる受光素子に効率的に結合させることが可能となる。
【0037】
このようにベース部11a表面の外周端より内側に環状に設けられた環状溝部15を形成することにより、組立時にベース部11a外周に設けられた環状溝部15に、金属キャップ3aの突起部34が収容されることによって、光軸に対して直交する方向における突起部34の移動が規制される。これにより、組立時の作業性が向上すると共に、光透過キャップ3aが光軸に対して直交する方向にずれることを抑制することが可能となる。また、ベース部11a表面の外周端より内側に環状に環状溝部15を設けたことで、光透過キャップ3aを抵抗溶接する際に、突起部34がつぶれたりすることにより発生するスプラッシュにより金属微粒がベース部11a内部に入り込むのを防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、例えば、窓部を有する金属シェルと、ガラス等のレンズを含む光透過キャップを、金属ステムに抵抗溶接するため等に有用であり、特に、光ファイバを介する光通信に用いられる光半導体モジュール等に適している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)本発明の実施形態1に係る光通信用光半導体モジュールを示す断面図、(b)図1(a)に示されるA部の拡大図
【図2】本発明の実施の形態1に係る光通信用光半導体モジュールの製造工程を示す概略工程図
【図3】(a)従来の光通信用光半導体モジュールを示す断面図、(b)図3(a)に示されるB部の拡大図
【符号の説明】
【0040】
1 金属ステム
2 受/発光素子
3 光透過キャップ
4 レンズ
5 金属製スリーブ
6 光ファイバ
7 フェルール部
8 溶接用電極
11 ベース部
12 素子搭載部
13 リード
14 ボンディングワイヤ
15 環状溝部
16 表面
30 キャップ天板部
31 窓部
32 円筒部
33 フランジ部
34 突起部
35 端面
301 フランジ部
302 突起部
303 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体モジュールの一部を構成する金属ステムであって、金属よりなるベース部と、前記ベース部表面に光半導体素子搭載用の素子搭載部と、前記ベース部とは絶縁された状態で立設してなるリード部とからなり、前記ベース部表面の外周端より内側に位置する環状溝部を設けたことを特徴とする金属ステム。
【請求項2】
前記環状に設けられた溝部が、前記ベース部の端面と平行方向環状であることを特徴とする請求項1記載の金属ステム。
【請求項3】
前記ベース部の外周端に略垂直方向に溝部を環状に設けた金属ステムと、光透過用窓を有する天板部と、前記天板部の外周端から略垂直方向に延在する円筒壁部により形成された円筒部と、前記円筒部から前記天板部と平行方向環状に延出するフランジ部と、前記光透過用窓で封着された光学レンズと、前記フランジ部から略垂直方向に突出する突起部が環状に設けられた光透過キャップとからなり、光半導体素子が実装された前記金属ステムと、前記光透過キャップとからなり光学レンズを備えた窓部に結合された光ファイバとを備えた光半導体モジュールにおいて、前記突起部と前記金属ステムとが溶着され、前記フランジ部端面と前記金属ステムのベース部の表面とが当接していることを特徴とする光半導体モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−108786(P2008−108786A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287807(P2006−287807)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】