説明

光導波路の製造方法及び樹脂充填装置

【課題】充填用樹脂を空隙部内に隙間無く充填すると共に、充填用樹脂の充填時における空隙部の変形を抑制することが可能な光導波路の製造方法及び樹脂充填装置を提供する。
【解決手段】空隙部222内への樹脂充填において、空隙部222内の充填用樹脂を減圧吸引しているときの単位時間当りの圧力変化Pが、下記式(1)の関係を満たすように空隙部222内における吸引圧力を調整する。
P≦0.75×Y0.55 式(1)
(式(1)中、Pは、前記他方の孔から前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの前記空隙部の単位時間当りの圧力変化(kPa)を表し、Yは、充填用樹脂の粘度(Pa・s)を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の製造方法及び樹脂充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光導波路の製造方法としては、例えば、高分子導波路用原盤の光導波路コアに対応する凸部を正確に写し取った鋳型を作製し、この鋳型の凹部へ毛細管現象を利用して樹脂を充填する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、コア形成用の凹部は非常に微細である事が多く、粘度の高い樹脂を高速で充填することは困難であることから、鋳型の凹部の一端から減圧吸引を行うことによって樹脂の充填を行う方法も用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
このような微細な空隙部へ、減圧吸引により樹脂を充填する充填装置としては、一般的には、真空注入方法が用いられている(例えば、特許文献3参照)
【0005】
特許文献3の技術によれば、二つの開口部を有する密閉構造物に、注入材料を入れた容器を一方の開口部に連結し、該密閉構造物の他方の開口部に真空ポンプ等の排気系に接続された流路を連結する。次いで、該密閉構造物内を排気してほぼ真空状態として、圧力差を利用して充填させている。
【特許文献1】特願2003−58871号公報
【特許文献2】特開2005−043748号公報
【特許文献3】特開平8−95070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術によれば、充填時の圧力変化により、空隙部内に隙間無く充填用樹脂を充填させることが困難となる場合や、該空隙部が変形する場合があった。
本発明は、充填用樹脂を空隙部内に隙間無く充填すると共に、充填用樹脂の充填時における空隙部の変形を抑制することが可能な光導波路の製造方法及び樹脂充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。即ち、
請求項1に記載の発明によれば、鋳型形成用樹脂により構成された鋳型形成用樹脂層から形成され、長尺状の凹部を有すると共に該凹部の両端部に該鋳型形成用樹脂層の厚み方向に貫通する孔の設けられた鋳型を作製する鋳型作製工程と、前記鋳型に、該鋳型の前記凹部の形成された側から第1の基材を密着させる密着工程と、前記凹部の一方の孔に充填用樹脂を供給する共に、他方の孔から該充填用樹脂を減圧吸引して前記第1の基材と前記鋳型の凹部により形成された空隙部に該充填用樹脂を充填させる充填工程と、前記空隙部に充填された前記充填用樹脂を硬化させる硬化工程と、前記充填用樹脂を硬化させた後に、前記鋳型を前記第1の基材から剥離する剥離工程と、を有し、前記充填工程において、前記他方の孔から前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの単位時間当りの圧力変化Pが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする光導波路の製造方法である。
[数1]
P≦0.75×Y0.55 式(1)
(式(1)中、Pは、前記他方の孔から前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの前記空隙部の単位時間当りの圧力変化(kPa)を表し、Yは、充填用樹脂の粘度(Pa・s)を表す。)
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、前記鋳型形成用樹脂は、ポリジメチルシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の光導波路の製造方法である。
【0009】
請求項3に記載の発明によれば、両端部に外部へ通じる孔の形成された長尺状の空隙部の一方の孔に流路を介して接続され、他方の孔へ供給された充填用樹脂を、該一方の孔から該流路を介して減圧吸引する吸引手段と、前記流路に設けられ、前記空隙部にかかる吸引圧力を調整する圧力調整手段と、前記空隙部における吸引圧力を計測する計測手段と、
前記計測手段による吸引圧力の計測結果に基づいて、前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの前記空隙部における単位時間当りの圧力変化Pが、下記式(1)の関係を満たすように、前記圧力調整手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする樹脂充填装置である。
[数2]
P≦0.75×Y0.55 式(1)
(式(1)中、Pは、前記他方の孔から前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの前記空隙部の単位時間当りの圧力変化(kPa)を表し、Yは、充填用樹脂の粘度(Pa・s)を表す。)
【0010】
請求項4に記載の発明によれば、前記吸引手段は、前記空隙部内及び前記流路内の空気を外部へ排気して減圧吸引を行い、前記圧力調整手段は、前記吸引手段による前記空隙部内の空気の排気流量を変更する流量変更手段を含み、前記制御手段は、前記計測手段による吸引圧力の計測結果に基づいて、前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの前記空隙部における単位時間当りの圧力変化Pが、上記式(1)の関係を満たすように、前記流量変更手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の樹脂充填装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明によれば、前記流路の、前記計測手段と前記圧力調整手段との間に設けられ、内部の圧力に応じて容積可変する圧力緩衝容器を備えた事を特徴とする請求項3または請求項4に記載の樹脂充填装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充填用樹脂を空隙部内に隙間無く充填すると共に、充填用樹脂の充填時における空隙部の変形を抑制することが可能な光導波路の製造方法及び樹脂充填装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の樹脂充填装置、及びこの樹脂充填装置を用いて作製される光導波路の製造方法の一の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
本実施の形態の光導波路の製造方法は、以下の1)から6)の工程を有している。
(1)鋳型形成用樹脂により構成された鋳型形成用樹脂層から形成され、長尺状の凹部を有すると共に凹部の両端部に鋳型形成用樹脂層の厚み方向に貫通する孔の設けられた鋳型を作製する鋳型作製工程。
(2)鋳型に、鋳型の凹部の形成された側から第1の基材を密着させる密着工程。
(3)凹部の一方の孔に充填用樹脂を供給する共に、他方の孔から充填用樹脂を減圧吸引して第1の基材と鋳型の凹部により形成された空隙部に充填用樹脂を充填させる充填工程。
(4)空隙部に充填された充填用樹脂を硬化させる硬化工程。
(5)充填用樹脂を硬化させた後に、鋳型を第1の基材から剥離する剥離工程。
(6)硬化工程により空隙部に対応する形状に硬化した充填用樹脂の形成された第1の基材上に第2の基材を形成する基材形成工程。
【0015】
そして、上記充填工程において、他方の孔からの充填用樹脂を減圧吸引しているときの単位時間当りの圧力変化Pが、下記式(1)の関係を満たしている。
[数1]
P≦0.75×Y0.55 式(1)
(式(1)中、Pは、前記他方の孔から前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの前記空隙部の単位時間当りの圧力変化(kPa)を表し、Yは、充填用樹脂の粘度(Pa・s)を表す。)
【0016】
なお、本実施の形態では、上記硬化工程により空隙部に対応する形状に硬化した硬化性樹脂による領域を、コア部と称して説明する場合がある。
【0017】
まず、図1を用いて光導波路の製造工程の1つの態様を説明する。
【0018】
図1(A)〜図1(G)は、光導波路の製造方法における各工程を表す概念図である。
【0019】
なお、説明を簡明にするため、上記長尺状の凹部としては、直方体状の凹部が1つのみ設けられている場合を説明する。
【0020】
図1(C)に示すように、鋳型作製工程は、鋳型200を作製する工程である。
鋳型200は、鋳型形成用樹脂により構成され、且つ、直方体状の凹部220を有すると共に、この凹部220の両端部に鋳型形成用樹脂層200aの厚み方向に貫通する孔280及び孔260が設けられている。
【0021】
この鋳型200の作製には、まず、図1(A)に示すように、凹部220に対応する凸部120を備えた原盤100を用意する。そして、図1(B)に示すように、この原盤100の凸部120の形成面に、鋳型形成用樹脂を塗布又は注型した後に、この鋳型形成用樹脂を硬化させることによって鋳型形成用樹脂層200aを作製する。
【0022】
その後、この鋳型形成用樹脂層200aを原盤100から剥離することによって、凹部220の形成された鋳型形成用樹脂層200aが得られる(図示省略)。
【0023】
さらに、図1(C)に示すように、鋳型形成用樹脂層200aの凹部220の長尺方向両端部各々に、鋳型形成用樹脂層200aの厚み方向に貫通する孔280及び孔260を形成することによって、鋳型200を作製する。
【0024】
この孔280及び孔260の形成には、凹部220の長尺方向両端部を打ち抜く方法を用いればよいが、このような方法に限られない。
【0025】
次に、密着工程として、図1(D)に示すように、上記鋳型作製工程で作製した鋳型200の、凹部220の形成された側から第1の基材300を密着させて、部材201を作製する。
その後、充填工程として、鋳型200の凹部220に形成されている一方の孔(例えば、孔260)から充填用樹脂を供給すると共に、他方の孔(例えば、孔280)からこの充填用樹脂を減圧吸引することで、凹部220と第1の基材300とによって形成された空隙部222内に充填用樹脂を充填する。
【0026】
その後、硬化工程として、空隙部222内に充填された充填用樹脂を硬化させた後に、剥離工程として、鋳型200を第1の基材300から剥離すると、図1(E)に示されるように、第1の基材300上に、上記硬化工程により空隙部222に対応する形状に硬化した充填用樹脂であるコア部320が形成された状態となる。
【0027】
さらに、基材形成工程として、コア部320の形成された第1の基材300の、コア部320の形成面に第2の基材を接着する。そして最後に、図1(G)に示すように、孔260及び孔280内で硬化した充填用樹脂部分をダイシングソー等で切り落とすことで、光導波路402を作製する。
【0028】
次に、各工程について詳細に説明する。
まず、鋳型形成用樹脂により構成された鋳型形成用樹脂層から形成され、長尺状の凹部を有すると共に凹部の両端部に鋳型形成用樹脂層の厚み方向に貫通する孔の設けられた鋳型を作製する鋳型作製工程について詳細に説明する。
【0029】
鋳型200の作製は、上述のように、形成対象となるコア部320と同形状及び同じ大きさの凸部120の形成された原盤100を用いて行う事が好ましいが、このような方法に限定されるものではない。以下では、この原盤100を用いて鋳型200を作製する場合について説明する。
【0030】
まず、鋳型作製工程においては、原盤100を作製する。原盤100の作製には、従来の方法、例えばフォトリソグラフィー法等、特に制限なく用いることができる。また、本出願人が先に出願した電着法又は光電着法により光導波路を作製する方法(特願2002−10240号)も、原盤を作製するのに適用できる。
【0031】
原盤100に形成する凸部120の大きさは、適宜定められるが、光導波路402を作製する場合には、光導波路402の用途等に応じて適宜定められる。
例えば、シングルモード用の光導波路を作製する場合には、断面の一辺の長さが10μm×10μm程度の直方体状のコア部320と同形状及び同じ大きさの凸部120を、マルチモード用の光導波路を作製する場合には、断面の一辺の長さが50μm以上100μm以下の範囲内の直方体状のコア部320と同形状及び同じ大きさの凸部120を形成すればよい。なお、用途によっては、断面の一辺の長さが数百μm程度の直方体状のコア部320と同型状及び同じ大きさの凸部120を形成してもよい。
【0032】
この作製した原盤100を用いて、鋳型200を作製する。
鋳型200の作製としては、原盤100の凸部120の形成面に、鋳型形成用樹脂を塗布、または注型する等の方法により鋳型形成用樹脂層200aを形成した後に、必要に応じて乾燥処理を行い、この鋳型形成用樹脂を硬化させる硬化処理を行う。
その後、この鋳型形成用樹脂層200aを原盤100から剥離することによって、凹部220の形成された鋳型形成用樹脂層200aが得られる。
【0033】
さらに、鋳型形成用樹脂層200aの凹部220の長尺方向両端部各々に、鋳型形成用樹脂層200aの厚み方向に貫通する孔280及び孔260を形成することによって、鋳型200を作製する。
【0034】
この孔280及び孔260は、例えば、第1の基材300を鋳型200の凹部220の形成された側の面から密着させる密着工程が行われた後の状態において、鋳型200と第1の基材300との密着性を阻害しない孔が形成されるような方法で形成すればよく、例えば、鋳型形成用樹脂層200aを所定形状に打ち抜く事によって形成することができる。
【0035】
このように、鋳型200と第1の基材300との間の密着性を阻害しないように孔280及び孔260を形成するため、鋳型200と第1の基材300との間の密着性が阻害されることがなく、鋳型200と第1の基材300との間の領域の、鋳型200の凹部220以外の領域に、孔280及び孔260の何れか一方から充填される充填用樹脂が浸透することを抑制することができる。
【0036】
鋳型形成用樹脂層200aの厚さは、鋳型200としての取扱性を考慮して適宜決められるが、一般的に0.1mm以上50mm以下の範囲内であることが適切である。
また、前記原盤100の表面には、予め離型剤塗布等の離型処理を行って、剥離工程において鋳型形成用樹脂層200aとの剥離を促進することが望ましい。
【0037】
上記孔280及び孔260の内、充填工程において充填用樹脂を供給される孔として用いられる孔(孔280及び孔260の内の何れか一方。本実施の形態では、孔260として説明する。)は、供給される充填用樹脂を溜める機能、すなわち液溜まりとして利用できる。
【0038】
充填用樹脂の供給される側の孔260の形状や大きさは、この孔260が凹部220(または空隙部222)に連通し、且つ、液溜まりの機能を有していれば特に制限されない。ただし、この孔260が液溜まり機能を有するためには、鋳型200を第1の基材300に密着させた状態において、孔260の断面積が、第1の基材300に近づくほど大きく、且つ第1の基材から離れるほど小さくなる錐型にすることが好ましい。また、このような錐型とすることで、この孔260を介した空隙部222への充填用樹脂の充填や、剥離工程における第1の基材300と鋳型200との剥離がし易くなる。
【0039】
一方、充填工程において充填用樹脂を減圧吸引により吸引する孔として用いられる孔(本実施の形態では、孔280として説明する)は、空隙部222内に供給された充填用樹脂を空隙部222に充填するためにこの空隙部222内を減圧するための減圧吸引口として機能する。
【0040】
この充填用樹脂を減圧吸引により吸引する孔として用いられる孔280は、鋳型200の凹部220に連通し、且つ、減圧吸引に用いることができれば、その形状や大きさに特に制限はない。
【0041】
この鋳型作製工程において用いる鋳型形成用樹脂としては、硬化性の樹脂が用いられ、その硬化物が原盤100から容易に剥離できること、鋳型200は繰り返し用いられるため鋳型200として一定以上の機械的強度や寸法安定性を有すること、鋳型200に形成された凹部220の形状を維持する硬さ(硬度)を有すること、第1の基材300との密着性が良好なことが好ましい。
【0042】
鋳型形成用樹脂には、原盤100の表面に塗布や注型等することが可能で、また、原盤100に形成された凸部120を正確に転写しなければならないので、ある限度以下の粘度、例えば、500mPa・s以上7000mPa・s以下の範囲内の粘度を有することが好ましい。(なお、本実施の形態において用いる「鋳型形成用樹脂」の中には、硬化後に、弾性を有するコム状体となるものも含まれる。)また、粘度調節のために溶剤を、溶剤の悪影響が出ない程度に加えることができる。
【0043】
この鋳型形成用樹脂としては、上記のごとき剥離性、機械強度、寸法安定性、硬度、第1の基材300との密着性の点から、硬化後に、シリコーンゴム(シリコーンエラストマー)、またはシリコーン樹脂となる硬化性オルガノポリシロキサンが好ましく用いられる。
硬化性オルガノポリシロキサンは、分子中にメチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが好ましい。また、硬化性オルガノポリシロキサンは、一液性のものでもまた硬化剤と併せて用いる二液性のものでもよく、また、熱により硬化するものでも、また室温で硬化する(例えば空気中の水分で硬化する)ものでもよく、更に他の条件により硬化(紫外線による硬化等)するものであってもよい。
【0044】
硬化性オルガノポリシロキサンとしては、硬化後にシリコーンゴムとなるものが好ましく、これには、通常液状シリコーンゴム(「液状」の中にはペースト状のように粘度の高いものも含まれる)と称されているものが用いられ、硬化剤と組み合わせて用いる二液型のものが好ましく、中でも付加型の液状シリコーンゴムは、表面と内部が均一にかつ短時間に硬化し、またその際、副生成物がなく又は少なく、かつ離型性に優れ、収縮率も小さいので好ましい。
【0045】
上記液状シリコーンゴムの中でも特に、液状ジメチルシロキサンゴム及びポリジメチルシロキサンゴムが密着性、剥離性、強度及び硬度の点から好ましい。
【0046】
液状シリコーンゴムの粘度は、成形するコア部320の形状に対応する大きさ及び形状の凸部120を正確に転写し、かつ気泡の混入を少なくして脱泡し易くする観点と、数ミリの厚さの鋳型200を形成する観点から、500mPa・s以上7000mPa・s以下の範囲内であることがより好ましく、2000mPa・s以上5000mPa・s以下の範囲内であることがより好ましい。
【0047】
なお、鋳型形成用樹脂には、必要に応じて各種添加剤を加えることができる。
【0048】
ここで、鋳型200の表面エネルギーは、10dyn/cm以上30dyn/cm以下の範囲内、好ましくは15dyn/cm以上24dyn/cm以下の範囲内にあることが、第1の基材300との密着性の点からみて好ましい。
【0049】
鋳型200のシェア(Share)ゴム硬度は、15以上80以下、好ましくは20以上60以下であることが、凸部120の型取り性能、鋳型200の凹部220の形状の維持、及び原盤100からの剥離性の点からみて好ましい。
また、鋳型200の表面粗さ(二乗平均粗さ(RMS))は、0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下にすることが、凸部120の型取り性能の点からみて好ましい。
【0050】
また、鋳型200は、紫外線領域及び/又は可視領域において光透過性であることが好ましい。鋳型200が可視領域において光透過性であることが好ましいのは、密着工程において鋳型200を第1の基材300に密着させる際に位置決めが容易に行え、また充填工程において、充填用樹脂が空隙部222に充填される様子が観察でき、充填完了等が容易に確認しうるからである。
また鋳型200が紫外領域において光透過性であることが好ましいのは、充填用樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合に、鋳型200を透して紫外線硬化を行うためであり、鋳型200の紫外領域(250nm以上400nm以下の波長領域内)における透過率が80%以上であることが好ましい。
【0051】
硬化性オルガノポリシロキサン、中でも硬化後シリコーンゴムとなる液状シリコーンゴムは、第1の基材300との密着性と剥離性という、相反する特性に優れ、ナノ構造を転写する能力を持ち、シリコーンゴムと第1の基材300を密着させると液体の侵入を防ぐことができる。このようなシリコーンゴムを用いた鋳型200は、高精度に原盤100の凸部120を転写し、且つ第1の基材300に良く密着するため、鋳型200と第1の基材300の間の空隙部222のみに効率良く充填用樹脂を充填することが可能となる。またさらに、第1の基材300と鋳型200との剥離も容易である。
従って、この鋳型200から、高精度に形状を維持した光導波路402を、極めて簡便に作製することができる。
【0052】
次に、鋳型に、鋳型の凹部の形成された側から第1の基材を密着させる密着工程について説明する。
後述する樹脂充填装置を用いて空隙部222に充填用樹脂を充填する場合には、詳細は後述するが、一方の孔(例えば孔280)から充填用樹脂を減圧吸引することで空隙部222内に充填用樹脂を充填する。このため、第1の基材としては、機械的強度、耐熱性、鋳型200との密着性、フレキシビリティー等を考慮して選択される。
【0053】
また、後述する樹脂充填装置を用いて空隙部222に充填用樹脂を充填することで、光導波路402を作製する場合には、光導波路402から作製される光学素子は、種々の階層における光配線に用いられることから、第1の基材は、光学素子の用途に応じ、さらに、屈折率及び光透過性等の光学的特性も考慮して選択される。
【0054】
上記特性を有する第1の基材300としては、脂環式アクリル樹脂フィルム、脂環式オレフィン樹脂フィルム、三酢酸セルロースフィルム、含フッ素樹脂フィルム等が挙げられる。また、第1の基材300は、可撓性を有していることが好ましい。
【0055】
なお、後述する樹脂充填装置を用いて空隙部222に充填用樹脂を充填することで、光導波路402を作製する場合には、第1の基材300の屈折率は、コア部320との屈折率差を確保するため、1.55より小さく、好ましくは1.52より小さくすることが望ましい。
【0056】
上記脂環式アクリル樹脂フィルムとしてはトリシクロデカン等の脂肪族環状炭化水素をエステル置換基に導入した、OZ−1000、OZ−1100(日立化成(株)製)等が用いられる。
【0057】
また、脂環式オレフィン樹脂フィルムとしては、主鎖にノルボルネン構造を有するもの、及び主鎖にノルボルネン構造を有し、かつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基(アルキル基としては炭素数1から6のものやシクロアルキル基)等の極性基をもつものが挙げられる。
中でも上記のごとき主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基等の極性基をもつ脂環式オレフィン樹脂は、低屈折率(屈折率が1.50近辺であり、コア部320と第1の基材300との屈折率の差を確保できる)及び高い光透過性等の優れた光学特性と有し、鋳型200との密着性に優れ、更に耐熱性に優れているので好ましい。
【0058】
また、第1の基材300の厚さは、積層する際のハンドリングの容易さや、機械的強度を保つためには、少なくとも20μm以上であることが望ましいが、フレキシビリティ、剛性、及び取り扱いの容易さ等が求められる場合には、0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0059】
なお、後述する樹脂充填装置を用いて空隙部222に充填用樹脂を充填することで、光導波路402を作製する場合には、第1の基材300の厚さは、少なくとも20μmであることが好ましく、厚さが20μmより薄いと製造時にコア部320に曲げの力が加わり、コア部320に歪みが入り易く、歩留まりの悪化もしくは性能が著しく低下する。また、作製される光導波路402の機械強度を確保する意味では、第1の基材300は、厚い方が望ましい。
【0060】
次に、凹部の一方の孔に硬化性樹脂を供給する共に、他方の孔から硬化性樹脂を減圧吸引して第1の基材と鋳型の凹部により形成された空隙部に硬化性樹脂を充填させる充填工程について説明する。
【0061】
この充填工程においては、充填用樹脂を、凹部220に設けられた一対の穴の内の一方の孔(例えば、孔260)に供給し、他方の孔280から、この充填用樹脂を減圧吸引して、鋳型200と第1の基材300との間に形成された空隙部222に充填する。
【0062】
この減圧吸引については、詳細を後述する樹脂充填装置により行い、この樹脂充填装置を用いて充填用樹脂を減圧吸引することで、空隙部222内に隙間無く充填用樹脂が充填される。減圧吸引により空隙部222内に充填用樹脂を充填する方法を用いることで、鋳型200と第1の基材300との密着性が向上し、充填用樹脂内に気泡が混入することを抑制することができる。
【0063】
この充填工程において、孔280から充填用樹脂を減圧吸引しているときの空隙部222内の単位時間当りの圧力変化Pは、上記式(1)と同じ下記式(1)の関係を満たしている。このため、詳細は、樹脂充填装置の説明欄において行うが、空隙部222内の急激な圧力変化を抑制しつつ充填用樹脂を減圧吸引するので、空隙部222内に隙間無く充填用樹脂が充填される。
【0064】
[数2]
P≦0.75×Y0.55 式(1)
【0065】
式(1)中、Pは、前記他方の孔から前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの前記空隙部の単位時間当りの圧力変化(kPa)を表し、Yは、充填用樹脂の粘度(Pa・s)を表す。
【0066】
この圧力変化Pが、0.75×Y0.55を超えると、詳細は後述するが、空隙部222内に充填される充填用樹脂が空隙部222内に隙間無く充填されない場合がある。
【0067】
充填用樹脂としては、放射線硬化性、電子線硬化性、及び熱硬化性等の樹脂を用いることができ、中でも紫外線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
前記充填用樹脂としての、紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が好ましく用いられる。
【0068】
また、上記紫外線硬化性樹脂として、エポキシ系、ポリイミド系、及びアクリル系紫外線硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0069】
充填用樹脂は、鋳型200の凹部220と第1の基材300との間に形成された空隙部222に充填されるため、用いる充填用樹脂は、低粘度である方が早く充填される。
このため、充填用樹脂の粘度は、10mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲内、望ましくは20mPa・s以上1000mPa・s以下の範囲内、更に望ましくは30mPa・s以上500mPa・s以下の範囲内にするのが好ましい。
【0070】
この他に、原盤100に形成された凸部120の形状を高精度に再現するためには、充填用樹脂の硬化前後の体積変化が小さいことが必要である。従って、充填用樹脂としては、硬化前後の体積変化のできるだけ小さいものが望ましく、10%以下、好ましくは6%以下であるのが望ましい。なお、充填用樹脂を、溶剤を用いて低粘度化することは、硬化前後の体積変化が大きいので、できれば避ける方が好ましい。
【0071】
充填用樹脂の硬化前後の体積変化(収縮)を小さくするために、充填用樹脂として用いられる上記樹脂にポリマーを添加することができる。このポリマーとしては、充填用樹脂として用いられる上記樹脂との相溶性を有し、かつ該樹脂の屈折率、弾性率、及び透過性等に悪影響を及ぼさないものが好ましい。
また、充填用樹脂として保ちれる上記樹脂にポリマーを添加することによって、硬化前後の体積変化を小さくする他、粘度や充填用樹脂のガラス転移点を高度に制御できる。この添加するポリマーとしては、例えばアクリル系、メタクリル酸系、及びエポキシ系のもの等が用いられるがこれに限定されるものではない。
【0072】
次に、空隙部に充填された充填用樹脂を硬化させる硬化工程について説明する。
【0073】
充填用樹脂に紫外線硬化性樹脂を用いている場合には、硬化工程では、例えば、紫外線ランプ、紫外線LED、及び紫外線照射装置等を用いて充填用樹脂を硬化させる。
また、充填用樹脂に熱硬化性樹脂を用いている場合には、硬化工程では、例えば、オーブン中での加熱等により充填用樹脂を硬化させる。
【0074】
なお、上記鋳型作製工程、密着工程、充填工程、及び硬化工程で用いる鋳型200は、屈折率等の条件を満たせば、そのまま基材形成工程において用いる第2の基材として用いることも可能である。
この場合には、鋳型200を第1の基材300から剥離することなく、そのまま鋳型200を第2の基材400として用いることができる。この場合、鋳型200とコア部320との接着性を向上させるために、鋳型200を予めオゾン処理することが好ましい。
【0075】
次に、硬化性樹脂を硬化させた後に、鋳型を第1の基材から剥離する剥離工程について説明する。
【0076】
上記硬化工程によって、充填用樹脂が硬化してコア部320が形成されるが、上述のように、コア部320を構成する充填用樹脂と鋳型200との間には接着性は無いため、容易に鋳型200を、コア部320の形成された第1の基材300から剥離することができる。
【0077】
次に、硬化工程により空隙部に対応する形状に硬化した硬化性樹脂(コア部320)の形成された第1の基材300上に第2の基材400を形成する基材形成工程を経た後に、孔260及び孔280内で硬化した充填用樹脂部分をダイシングソー等で切り落とすことで、光導波路402を作製することができる。
【0078】
コア部320の形成された第1の基材300のコア部320の形成面に積層する第2の基材400としては、上記第1の基材300や、クラッド用硬化性樹脂を塗布して硬化させた層、及び高分子材料の溶剤溶液を塗布して乾燥して得られる高分子膜等が挙げられる。
クラッド用硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が用いられる。紫外線硬化性樹脂としては、アクリル系、エポキシ系等各種存在するが、無溶剤系のもので体積収縮率が4%以上5%以下のものが市販されており入手可能である。紫外線硬化性樹脂を用いることによって、良好な光透過性を確保することができる。熱硬化性樹脂は紫外線硬化性樹脂に比べ体積収縮率はより小さいが、一般的にその反面光透過性が若干低下する。
【0079】
クラッド用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするために、このクラッド用硬化性樹脂と相溶性を有し、またこのクラッド用硬化性樹脂の屈折率、弾性率、透過特性に悪影響を及ぼさないポリマー(例えばメタクリル酸系、エポキシ系)を、このクラッド用硬化性樹脂に添加してもよい。
【0080】
第2の基材400として、フィルム状の第2の基材400を用いる場合は、接着剤を用いて第1の基材300に貼り合わせればよい。このとき、接着剤の屈折率は、第2の基材400の屈折率に近いことが望ましい。用いる接着剤は紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が用いられる。
【0081】
以上のようにして光導波路402を作製することができるが、この光導波路402の作製における充填工程において、樹脂充填装置を用いて吸引圧力の圧力変化を上記式(1)に示す範囲内に調整することにより、空隙部222内の充填用樹脂の吸引圧力の急激な圧力変化を抑制し、空隙部222内に充填用樹脂を隙間無く充填することができるとともに、充填用樹脂の充填時における空隙部222の変形を抑制することができる。
【0082】
この樹脂充填装置について説明する。
【0083】
なお、本実施の形態の樹脂充填装置は、上記説明した光導波路402の作製における充填工程にいて、空隙部222内に充填用樹脂を充填するときに用いる場合を説明するが、樹脂充填装置は、このような光導波路402の作製における充填工程において用いられるのみではなく、減圧吸引により空隙部内に充填用樹脂を充填するための装置として用いることができる。このため、空隙部内に充填する充填用樹脂としては、上記挙げた樹脂に限られず、目的に応じた種類の樹脂を用いることができる。
【0084】
なお、本実施の形態の樹脂充填装置を、上記説明した光導波路402の作製における充填工程において空隙部222内に充填用樹脂を充填するときに用いることで、光導波路402のコア部320を空隙部222の形状に合わせて精度良く形成することができ、良好な光学特性を有する光導波路402を作製することができる。
【0085】
また、本実施の形態の樹脂充填装置を、光導波路402の作製以外の用途に用いた場合についても同様に、空隙部222内に充填対象となる充填用樹脂を隙間無く充填することができる。
【0086】
図2に示すように、本実施の形態の樹脂充填装置10は、充填用樹脂16を鋳型200に供給するための樹脂供給部20と、鋳型200の空隙部222から充填用樹脂を減圧吸引する減圧吸引部52と、を含んで構成されている。
なお、本実施の形態では、樹脂充填装置10は、樹脂供給部20と減圧吸引部52との双方を含んで構成される場合を説明するが、少なくとも減圧吸引部52を含んだ構成であればよく、樹脂供給部20は樹脂充填装置10とは別体として設けられた構成であってもよい。
【0087】
樹脂供給部20は、充填用樹脂16を貯留した容器18と、鋳型の孔260に連結する連結部24と、連結部24と容器18とを連通する供給管19と、注入弁22と、を含んで構成されている。
【0088】
注入弁22は、供給管19に設けられ、後述する圧力制御部12に信号授受可能に接続されている。注入弁22は、圧力制御部12の制御によって、容器18内の充填用樹脂16を空隙部222へ供給または供給停止を行う。
【0089】
減圧吸引部52は、空隙部222に充填する充填用樹脂16の粘度を示す情報や、各種情報を取得する取得部14と、圧力制御部12と、圧力調整部53と、真空ポンプ50と、第1の圧力計測部36と、圧力緩衝容器34と、を含んで構成されている。
【0090】
なお、本実施の形態の樹脂充填装置10及び後述する樹脂充填装置11が、本発明の樹脂充填装置に相当する。また、本実施の形態の圧力制御部12が、本発明の樹脂充填装置の制御部に相当し、本実施の形態の圧力調整部53が、本発明の樹脂充填装置の圧力調整手段に相当し、本実施の形態の第1の圧力計測部36が、本発明の樹脂充填装置の計測手段に相当する。また、本実施の形態の圧力緩衝容器34が、本発明の樹脂充填装置の圧力緩衝容器に相当する。
【0091】
取得部14は、各種情報を取得し、一例には、無線通信網や有線通信網を介してパーソナルコンピュータ等の外部装置から各種情報を取得する構成であってもよいし、キーボードやタッチパネル等のユーザによって操作指示されることで各種情報が入力される機器であってもよい。本実施の形態では、取得部14は、各種情報を表示するとともにユーザによって操作指示されることで各種情報が入力されるタッチパネルとして構成されているとして説明するが、このような形態に限られない。
【0092】
圧力制御部12は、樹脂充填装置10における樹脂の減圧吸引時の圧力を制御する制御部であって、CPU(中央処理装置)12A、ROM(リードオンリメモリ)12B、RAM(ランダムアクセスメモリ)12C、入出力ポート(図示省略)、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス(図示省略)を含んだマイクロコンピュータで構成されている。
【0093】
なお、ROM12Bには、後述する吸引圧力を制御するための制御プログラム(図6、図7に示す処理ルーチン)と、圧力変化の許容値を示す許容値情報が予め記憶されている。
この圧力変化の許容値を示す許容値情報とは、空隙部222に充填用樹脂を充填するために孔280から充填用樹脂を減圧吸引しているときの単位時間当りの圧力変化P(上記式(1)参照)の、樹脂充填装置10における、充填用樹脂の減圧吸引における空隙部222内の圧力変化の最大許容値を示す値である。この許容値は、0.75×Y0.55によって示される値であり、このYは、上記式(1)で示したように、充填用樹脂の粘度(Pa・s)を示している。
【0094】
圧力調整部53は、3つの流路を含んで構成されており、鋳型200の孔280に連結される減圧吸引流路32A、減圧吸引流路32Aに分岐32Dを介して連結された減圧流路32B、減圧吸引流路32Aに分岐32Dを介して連結された大気解放流路32Cを含んで構成されている。
【0095】
これらの減圧吸引流路32A、減圧流路32B、及び大気解放流路32Cは、管状であって、分岐32Dを介して互いに連通するように連結されている。
【0096】
減圧吸引流路32Aの一方の開口は、吸引弁28を介して、連結部26によって鋳型200の孔280に連結されている。
【0097】
吸引弁28は、減圧吸引流路32Aに設けられており、圧力制御部12に信号授受可能に接続されている。吸引弁28は、圧力制御部12によって、空隙部222内の充填用樹脂16を吸引可能となるように弁を解放したり、充填用樹脂16の吸引を停止するように弁を閉じたりするように制御される。
【0098】
減圧吸引流路32Aの他方の開口は、分岐32Dを介して減圧流路32Bに連通されている。減圧流路32Bの分岐32D側とは反対側の開口は、真空ポンプ50に接続されている。
【0099】
減圧吸引流路32Aには、第1の減圧用流量制御弁38が接続されている。
【0100】
第1の減圧用流量制御弁38は、逆止弁38B付きの可変絞り弁38Aから構成され、圧力制御部12に信号授受可能に接続されている。
第1の減圧用流量制御弁38は、圧力制御部12の制御によって、真空ポンプ50の排気による減圧吸引流路32Aの該第1の減圧用流量制御弁38が設けられた領域内を流れる空気の流量を調整する。
【0101】
減圧吸引流路32Aの、上記第1の減圧用流量制御弁38と分岐32Dとの間には、第2の圧力計測部40が設けられている。第2の圧力計測部40は、減圧吸引流路32Aの、上記第1の減圧用流量制御弁38と分岐32Dとの間の該第2の圧力計測部40の設けられた領域の、空気の吸引圧力を測定する。第2の圧力計測部40は、圧力制御部12に信号授受可能に接続されており、第2の圧力計測部40による圧力測定結果は圧力制御部12に出力される。
【0102】
減圧流路32Bは、一方の開口が分岐32Dに接続され、他方の開口が真空ポンプ50に接続されている。
【0103】
この減圧流路32Bには、第2の減圧用流量制御弁42が接続されている。また、この減圧流路32Bの、第2の減圧用流量制御弁42と真空ポンプ50との間には、減圧用2方弁44が接続されている。
【0104】
第2の減圧用流量制御弁42は、逆止弁42B付きの可変絞り弁42Aから構成され、圧力制御部12に信号授受可能に接続されている。
第2の減圧用流量制御弁42は、圧力制御部12の制御によって、減圧流路32Bの該第2の減圧用流量制御弁42の設けられた領域内を流れる空気の流量を調整することで、真空ポンプ50による過剰な減圧吸引を抑制する。
【0105】
減圧用2方弁44は、弁の解放または閉鎖によって、減圧流路32Bの、真空ポンプ50と第2の減圧用流量制御弁42との間の該減圧用2方弁44の設けられた領域を解放した状態、または閉鎖した状態とする。減圧用2方弁44は、圧力制御部12に信号授受可能に接続されており、圧力制御部12の制御によって、該領域を解放した状態、または閉鎖した状態とする。
【0106】
なお、本実施の形態では、減圧用2方弁44による減圧流路32Bの解放または閉鎖による急激な圧力変化(上記許容値を超える圧力変化)が空隙部222にかかることを抑制するために、減圧用2方弁44は、減圧流路32Bにおいて第2の減圧用流量制御弁42より真空ポンプ50側に設けられている場合を説明するが、この減圧用2方弁44の開閉による空隙部222の圧力変化が、後述する圧力制御部12において制御する急激な圧力変化とみなす範囲を超えない(上記許容値以下の圧力変化)構成である場合には、減圧流路32Bにおいて、第2の減圧用流量制御弁42を減圧用2方弁44より真空ポンプ50側に設けた構成であっても良い。
【0107】
大気解放流路32Cは、一方の開口が分岐32Dに接続され、他方の開口49が大気中(空気中)に解放されている。
【0108】
この大気解放流路32Cには、大気解放用流量制御弁46が接続されている。また、この大気解放流路32Cの、大気解放用流量制御弁46と大気に解放された開口49との間に、大気解放用2方弁48が接続されている。
【0109】
大気解放用流量制御弁46は、逆止弁46B付きの可変絞り弁46Aからなり、圧力制御部12に信号授受可能に接続されている。
大気解放用流量制御弁46では、圧力制御部12の制御によって、開口49から流れ込んだ空気が大気解放流路32C内を分岐32D方向へと流れる流量を調整することで、空隙部222内の圧力が大気圧へと急激に昇圧するような圧力変化を抑制する。
【0110】
大気解放用2方弁48は、弁の解放または閉鎖によって、大気解放流路32Cを大気に解放した状態または、閉鎖した状態とする。この大気解放用2方弁48は、圧力制御部12に信号授受可能に接続されており、圧力制御部12の制御によって、大気解放流路32Cを大気に解放した状態または閉鎖した状態とする。
【0111】
なお、本実施の形態では、大気解放用2方弁48による大気解放流路32Cの大気への解放または閉鎖による急激な圧力変化が空隙部222にかかることを抑制するために、大気解放用2方弁48は、大気解放流路32Cにおいて大気解放用流量制御弁46より開口49側に設けられている場合を説明するが、この大気解放用2方弁48の開閉による空隙部222の圧力変化が、後述する圧力制御部12において制御する急激な圧力変化とみなす範囲を超えない(許容値以下の)構成である場合には、大気解放流路32Cにおいて、大気解放用流量制御弁46を大気解放用2方弁48より開口49側に設けた構成であってもよい。
【0112】
真空ポンプ50は、減圧流路32Bの一対の開口の内の分岐32Dに接続された開口とは異なる方の開口に接続されている。
真空ポンプ50は、排気により、減圧流路32B、減圧吸引流路32A、及び孔280を介して空隙部222内を排気して、この空隙部222内を真空に近い状態として、圧力差を利用して空隙部222内に充填用樹脂16を充填させる。この真空ポンプ50は、本実施の形態では、圧力制御部12に信号授受可能に接続されており、圧力制御部12の制御によって駆動開始及び駆動停止が制御される。
【0113】
圧力緩衝容器34は、減圧吸引流路32Aの流路の、第1の圧力計測部36と第1の減圧用流量制御弁38との間に設けられている。
圧力緩衝容器34には、減圧吸引流路32Aに連通する2つの開口(開口34A、及び開口34B)が設けられている。
【0114】
詳細には、図2に示すように、減圧吸引流路32Aは、減圧吸引流路32Aの一対の開口の内、孔280に連結される側の開口を含む流路である減圧吸引流路33Aと、減圧吸引流路32Aの分岐32Dに連結される側の開口を含む流路である減圧吸引流路33Bと、から構成されている。
そして、減圧吸引流路33Aの一対の開口の内の一方が孔280に連結され、他方の開口が、圧力緩衝用容器の開口34Aに連結されている。また、減圧吸引流路33Bの一対の開口の内の一方が分岐32Dに連結され、他方の開口が圧力緩衝容器34の開口34Bに連結されている。
【0115】
この圧力緩衝容器34は、内部の圧力に応じて容積可変する容器である。
この圧力緩衝容器34としては、圧力に応じて容積可変であればよく、金属材料や樹脂材料を用いることができるが、圧力緩和機能の高さから、樹脂材料により構成されていることが好ましい。
【0116】
圧力緩衝容器34を樹脂材料により構成することによって、樹脂材料の弾性を利用して、真空ポンプ50による空隙部222内の充填用樹脂16の減圧吸引時に、空隙部222に係る急激な圧力変化を緩和することができる。
なお、本実施の形態における「急激な圧力変化」とは、上記許容値を超える圧力変化を示している
【0117】
この圧力緩衝容器34を構成する樹脂材料としては、テトロン、ポリエステル、及びケプラー等で網状に補強したポリ塩化ビニル(PVC)等を好適に用いることができる。
この圧力緩衝容器34の形状としては、容積可変に構成されていれば、どのような形状であってもよいが、円筒型容器や、ホース状の容器等を用いることができる。
【0118】
この圧力緩衝容器34の容積は、大きいほど樹脂充填装置10による減圧吸引時において、空隙部222にかかる圧力変化を穏やかにすることができるため好ましい。具体的には、圧力緩衝容器34の容積は、空隙部222と、孔260及び孔280と、の容積の総和と比較して30000倍以上であることが好ましく、3000倍以上がより好ましい。
【0119】
本発明の樹脂充填装置の計測手段に相当する第1の圧力計測部36は、減圧吸引流路32Aの、孔280と圧力緩衝容器34との間に設けられている。このため、第1の圧力計測部36は、空隙部222にかかる吸引圧力を計測する。この第1に圧力計測部36は、圧力制御部12に信号授受可能に接続されており、第1の圧力計測部36による圧力測定結果は、圧力制御部12に出力される。
【0120】
上記構成の樹脂充填装置10においては、上述のように、空隙部222に連通する一方の孔260から充填用樹脂を供給し、真空ポンプ50により減圧流路32B、減圧吸引流路32A、及び孔280を介して空隙部222内を排気することにより、この空隙部222内を真空に近い状態として、圧力差を利用して空隙部222内に充填用樹脂16を充填させる。
【0121】
ここで、空隙部222内の空気を排気することで、充填用樹脂16の減圧吸引を行うことによって、空隙部222内が急激に真空状態へ近づくと、鋳型200と第1の基材300との間に、鋳型200と第1の基材300との密着力以外の力が加わり、空隙部222の形状が変化する場合がある。
【0122】
具体的には、図4(A)に示すように、第1の基材300に密着された鋳型200の長尺状の空隙部222の断面が、空隙部222内に圧力が加わっていない状態(すなわち、大気圧下)では、図4(B)に示すように、鋳型200の凹部220及び第1の基材300によって形成されている空隙部222の形状は矩形であるとする。そして、この空隙部222内が大気圧から真空状態へと急激に変化すると、空隙部222の形状が変形し、例えば、鋳型200を構成する材料に比べて第1の基材300を構成する材料の方が高い弾性率である場合には、図4(C)に示すように、鋳型200と第1の基材300とが密着する面の距離を縮めた台形のような形状に変形する。たとえば、この変形した状態のまま、真空ポンプ50の減圧吸引を継続して空隙部222内に充填用樹脂16を充填し後に、空隙部222内が大気圧となるように昇圧したとしても、空隙部222の形状は変形したままの状態で維持される場合がある。これは、第1の基材300と鋳型200との密着力や、鋳型200を構成する材料の弾性等の影響により、空隙部222内が変形された状態で維持されるためと考えられる。
このような場合には、目的とする形状のコア部320を得ることは困難である。
【0123】
また、一般的な技術として、空隙部222内を減圧吸引することにより充填用樹脂を空隙部222内に充填する方法としては、空隙部222の孔280と真空ポンプ50とを管状の流路によりつなぎ、この流路における孔280と真空ポンプ50との間の領域に電磁式用2方弁のみを設けた構成も知られている。ここで、真空ポンプ50には、一般的に脈動があることから、電磁式用2方弁を流路に設けても、電磁式用2方弁の開閉によって、空隙部222に急激な圧力変化が生じる場合がある。
【0124】
例えば、図3に示すように、理想的な状態では、図3(A)の線図60に示すように、空隙部222内の減圧吸引によって、空隙部222内の圧力が除々に上昇し(図3(A)の線図60A参照)、このときの時間と圧力との関係は一次直線の関係を示すと考えられ、さらに、空隙部222内が真空状態に近い状態となると、線図60Bに示すように、圧力は一定に近い状態となると考えられる。
【0125】
しかしながら、従来の一般的な技術では、空隙部222内の減圧吸引を行うと、真空ポンプ50の脈動や電磁式用2方弁の開閉により、図3(B)に示すように、空隙部222内が真空状態へと近づくまでの間に急激な圧力変化が生じて一次直線の関係から大きく外れるような線図61Aが得られる場合がある。また、同様に、空隙部222内が真空状態に近い状態になった後においても、図3(C)に示すように、急激な圧力変化を示す線図61Bが得られる場合がある。
【0126】
このような急激な圧力変化は、孔280からの減圧吸引により空隙部222内に充填されつつある充填用樹脂16の空隙部222内における流れを乱し、図5(A)に示すように、充填される途中の空隙部222内における充填用樹脂16の吸引方向先端側の領域と、この先端側の領域以外の領域と、に加わる減圧吸引力に差が生じ、図5(B)に示すように、充填用樹脂16の一部が、該先端側の領域以外の領域16Aから分離して、液滴状の充填用樹脂16Bが吸引方向先端部に生じた状態となる場合がある。
このため、空隙部222内において連続した状態で充填用樹脂16を移動させることが困難となり、充填用樹脂16の空隙部222内における連続した充填が困難となり、充填用樹脂16を空隙部222内に隙間無く充填することが困難となる場合がある。
【0127】
そこで、本実施の形態の樹脂充填装置10では、図7に示す処理ルーチンが実行されて、空隙部222内への充填用樹脂16の充填時における空隙部222内の圧力変化が、上記許容値以下となるように調整する。
【0128】
なお、本実施の形態の樹脂充填装置10の、第1の減圧用流量制御弁38、第2の減圧用流量制御弁42、大気解放用流量制御弁46、第2の圧力計測部40、減圧用2方弁44、及び大気解放用2方弁48が、本発明の樹脂充填装置の圧力調整手段に相当し、第1の減圧用流量制御弁38、第2の減圧用流量制御弁42、及び大気解放用流量制御弁46が、流量変更手段に相当する。
【0129】
なお、本実施の形態では、この図7に示す処理に先立ち、樹脂充填装置10のCPU12Aでは、予め図6に示す処理が実行されているものとして説明する。なお、本実施の形態では、説明を簡略化するために、RAM12C内には、1種類の充填用樹脂の粘度を示す情報と、この粘度を示す情報に基づいて上記式(1)を用いて算出した許容値情報と、が記憶されるものとして説明する。
【0130】
樹脂充填装置10の図示を省略する電源スイッチがユーザによって操作される等によって樹脂充填装置10への電力供給が開始されると、図6に示す処理が実行されてステップ200へ進み、取得部14から、樹脂充填装置10における空隙部222への充填対象となる充填用樹脂の粘度を示す情報が入力されるまで否定判断を繰り返し、肯定されるとステップ202へ進む。
【0131】
ステップ200における充填用樹脂の粘度を示す情報の入力は、例えば、取得部14がユーザ等によって操作されることにより、取得部14によって充填用樹脂の粘度を示す情報が入力されると、この粘度を示す情報が圧力制御部12へ出力される。圧力制御部12では、この粘度を示す情報を受け付けたか否かを判別することによって、充填用樹脂の粘度を示す情報が入力されたか否かを判別することができる。
【0132】
次のステップ202では、上記ステップ200で入力された充填用樹脂の粘度を示す情報に基づいて、樹脂充填装置10における空隙部222への充填用樹脂の充填における圧力変化の許容値を算出する。
【0133】
ステップ202の処理は、上記ステップ200で入力された充填用樹脂の粘度を示す情報を上記式(1)のY(Pa・s)として、上記式(1)0.75×Y0.55を演算することによって算出することができる。
上記ステップ202で算出された許容値は、RAM12C内に記憶される。
【0134】
図7に示す処理ルーチンは、圧力制御部12のROM12Bに予め記憶されている処理プログラムであって、圧力制御部12のCPU12Aによって読み出されることによって実行される。
【0135】
圧力制御部12のCPU12Aでは、図示を省略するスイッチがユーザ等によって操作されることによって樹脂充填装置10の駆動開始指示を示す信号を受け付けると、図7に示す処理ルーチンが実行されて、ステップ100へ進む。
【0136】
なお、図7に示す処理ルーチンの実行前には、樹脂充填装置10に部材201が装着された状態、すなわち、減圧吸引流路32Aの一方の開口が連結部26を介して孔280に連結されており、且つ、樹脂供給部20の供給管19が連結部24を介して孔260へ連結された状態にあるとして説明する。
【0137】
また、図7に示す処理ルーチンの実行前においては、初期状態として、注入弁22、大気解放用2方弁48、及び減圧用2方弁44は閉鎖した状態にあり、吸引弁28は解放した状態にあるとして説明する。
また、この初期状態として、第1の減圧用流量制御弁38、第2の減圧用流量制御弁42、及び大気解放用流量制御弁46各々は、最も流量が多くなるように解放した状態と空気の流れを閉鎖するように閉鎖した状態と、の中間の状態にあり、具体的には、最も流量が多くなるように解放した状態の50%の流量となるように流路を閉じた状態にあるとして説明する。
【0138】
ステップ100では、樹脂供給開始を示す信号を注入弁22へ出力する。樹脂供給開始を示す信号を受け付けた注入弁22は、供給管19を解放する。ステップ100の処理によって、空隙部222内への充填用樹脂の供給が開始されて、真空ポンプ50の減圧吸引により空隙部222内に充填可能な状態となる。
【0139】
ステップ102では、真空ポンプ50へ駆動開始を示す指示信号を出力する。駆動開始を示す指示信号を受け付けた真空ポンプ50は、減圧吸引を開始する。
【0140】
次のステップ104では、減圧用2方弁44へ解放指示を示す信号を出力する。
ステップ104の処理によって、減圧用2方弁44が解放された状態となり、真空ポンプ50により減圧流路32B、減圧吸引流路32A、及び孔280を介して空隙部222内の減圧吸引が開始される。
【0141】
次のステップ106では、第1の圧力計測部36による圧力計測結果を読取り、次のステップ108において、単位時間当りの圧力変化を算出する。
【0142】
この圧力変化の算出は、例えば、第1の圧力計測部36から出力される圧力測定結果を計測時間に対応付けてRAM12Cに順次記憶するようにし、上記ステップ106では、このRAM12Cに記憶された最新の計測時間から所定時間前までの間における圧力測定結果を読取り、ステップ108において、該間の圧力測定結果に基づいて、単位時間当りの圧力変化を、空隙部222内の単位時間当りの圧力変化として算出することによって得ることができる。
【0143】
次のステップ109では、RAM12Cに記憶されている許容値情報を読み取る。この許容値情報は、上記図6に示す処理ルーチンが実行されて、ステップ202の処理によって算出された値を示す情報であり、空隙部222内へ充填する対象となる充填用樹脂の粘度を示す情報に基づいて、上記式(1)に基づいて算出された値である。
【0144】
次のステップ110では、上記ステップ108で算出した単位時間当りの圧力変化が、上記ステップ109で読み取った許容値情報以下であるか否かを判別する。
【0145】
ステップ110で肯定されると、ステップ132へ進み、否定されると、ステップ112へ進む。
【0146】
ステップ112では、上記ステップ108で算出した単位時間当りの圧力変化の、上記ステップ109で読み出した許容値に対する超過量を算出する。
【0147】
次のステップ114では、上記ステップ112で算出した超過量を示す超過量情報に対応する、調整圧力情報を読み取る。
【0148】
この調整圧力情報とは、第2の圧力計測部40で測定されるべき圧力を示す情報であって、第1の圧力計測部36で測定された圧力測定結果に基づいて上記ステップ108で算出された単位時間当りの圧力変化が、上記ステップ109で読み取った許容値以下となるように流路(減圧吸引流路32A、減圧流路32B、大気解放流路32C)内の空気の流量を調整したときに、該第2の圧力計測部40で測定される圧力を示す情報である。
【0149】
すなわち、この調整圧力情報の調整圧力となるように、流路(減圧吸引流路32A、減圧流路32B、大気解放流路32C)内の空気の流量が調整されれば、空隙部222内の単位時間当りの圧力変化が許容値以下となる。
【0150】
この調整圧力情報は、例えば、図6及び図7の処理が実行される前に、樹脂充填装置10において予め測定されてROM12B内に記憶しておけばよい。具体的には、ROM12B内に、超過量情報に対応する調整圧力情報を、予め記憶しておけばよい。
【0151】
次のステップ116では、第2の減圧用流量制御弁42へ、流量を予め定めた所定量減少することを示す流量減少信号を出力する。この流量減少信号を受け付けた第2の減圧用流量制御弁42は、減圧流路32Bにおける該減圧用流量制御弁42が設けられた領域の、真空ポンプ50により吸引される空気の流量を該所定量減少させる。
【0152】
次のステップ118では、大気解放用2方弁48へ、解放指示を示す信号を出力する。解放指示を示す信号を受け付けた大気解放用2方弁48は、弁を解放する。
【0153】
次のステップ120では、第1の減圧用流量制御弁38へ、流量を、予め定めた所定量減少することを示す流量減少信号を出力する。この流量減少信号を受け付けた第1の減圧用流量制御弁38は、減圧吸引流路33Bにおける該第1の減圧用流量制御弁38の設けられた領域の、真空ポンプ50に吸引される空気の流量を該所定量減少させる。
【0154】
なお、上記ステップ116〜ステップ120、及び後述するステップ126〜ステップ130における「所定量」とは、予め、各制御弁を調整することによって、各弁の設けられている流路における空気の流量が変化しても空隙部222内に急激な圧力変化は生じず、且つ各弁の設けられている流路内の空気の流量を好適に調整可能な値が予め定められているとする。
【0155】
次のステップ122では、第2の圧力計測部40による圧力計測結果を読取り、次のステップ124において、上記ステップ122で読み取った圧力測定結果が、上記ステップ114で読み取った調整圧力情報の調整圧力と同じ値であるか否かを判別し、否定されると、ステップ126へ進む。なお、ここで、「同じ値」とは、調整圧力に対する圧力測定結果が±3%の範囲内で一致していればよい。
【0156】
ステップ126では、第2の減圧用流量制御弁42へ、流量を予め定めた所定量減少することを示す流量減少信号を出力する。この流量減少信号を受け付けた第2の減圧用流量制御弁42は、減圧流路32Bにおける該減圧用流量制御弁42の設けられた領域の、真空ポンプ50に吸引される空気の流量を該所定量減少させる。
【0157】
次のステップ128では、大気解放用流量制御弁46へ、流量を予め定めた所定量増加させることを示す流量増加信号を出力する。この流量増加信号を受け付けた大気解放用流量制御弁46は、大気解放流路32Cにおける該大気解放用流量制御弁46の設けられた領域における、開口49から分岐32Dへ向かう方向へ流れる大気の流量を該所定量増加させる。
【0158】
次のステップ130では、第1の減圧用流量制御弁38へ、流量を、予め定めた所定量減少することを示す流量減少信号を出力した後に、上記ステップ122へ戻る。
この流量減少信号を受け付けた第1の減圧用流量制御弁38は、減圧吸引流路33Bにおける該第1の減圧用流量制御弁38の設けられた領域の、真空ポンプ50に吸引される空気の流量を該所定量減少させる。
【0159】
上記ステップ124で肯定されると、次のステップ132において、空隙部222への充填用樹脂の充填が完了したか否かを判別し、充填が未完了である場合には、上記ステップ106へ戻り、充填完了である場合には、本ルーチンを終了する。
【0160】
ステップ132の判断は、例えば、孔280に連結される連結部26に充填用樹脂を検知するためのセンサを予め設けて、このセンサを圧力制御部12に信号授受可能に接続し、このセンサから充填用樹脂が検知された事を示す信号を受け付けたときに、充填完了であると判別すればよい。
【0161】
以上説明したように、本実施の形態の樹脂充填装置10によれば、空隙部222内への樹脂充填において、空隙部222内の吸引圧力変化が上記許容値以下となるように、即ち、上記式(1)の関係を示すように、空隙部222内における吸引圧力を調整する。
このため、空隙部222内への充填用樹脂の充填時に、空隙部222内に急激な圧力変化が生じることを抑制することができ、空隙部222内において充填用樹脂が不連続に充填されることを抑制することができ、空隙部222内に充填用樹脂を隙間無く充填することができると共に、充填時における空隙部222の変形を抑制することができる。
【0162】
なお、本実施の形態の樹脂充填装置10には、圧力緩衝容器34が設けられていることから、空隙部222内における急激な吸引圧力変化を抑制することができるが、図8に示すように、樹脂充填装置11は、圧力緩衝容器34を有さない構成であってもよい。なお、樹脂充填装置11の構成及び作用は、圧力緩衝容器34を有さない構成である以外は、樹脂充填装置10と同じであるため、詳細な説明を省略する。
なお、図2に示す圧力緩衝容器34の設けられた構成であるほうが、空隙部222内における急激な圧力変化を抑制することができる点で好ましい。
【0163】
なお、本実施の形態では、説明を簡略化するために、図7の処理前には、RAM12C内に、1種類の充填用樹脂に対応する許容値を示す情報が記憶されているものとして説明したが、2種類以上の充填用樹脂各々を識別するための識別情報と、これらの充填用樹脂各々に対応する許容値情報と、が予め対応づけてRAM12C内に記憶されているようにしてもよい。
【0164】
この場合には、図6に示す処理ルーチンのステップ202の処理において、充填用樹脂の識別情報と、充填用樹脂の粘度を示す情報と、が入力されるようにすればよい。
そしてさらに、RAM12C内には、充填用樹脂の識別情報と、図6に示す処理ルーチンのステップ202の処理によって算出した許容値情報と、を対応づけて記憶すればよい。
【0165】
そして、上記図7に示す処理の実行前に、RAM12C内に記憶されている充填用樹脂の識別情報を、タッチパネル式に構成されている取得部14に表示し、この取得部14を介してユーザによって取得部14に表示された複数の識別情報の内の一つが選択されると、この選択された識別情報の充填用樹脂に対応する許容値情報を、図7で説明した上記ステップ109で読み取るようにすればよい。
【0166】
このようにすれば、樹脂充填装置10において、異なる種類の充填用樹脂を、適宜、効率よく充填することができる。
【0167】
また、本実施の形態の樹脂充填装置10では、空隙部222内の圧力変化Pが許容値以下となるように制御するために、図7に示すステップ106〜ステップ130の処理を実行する場合を説明したが、圧力調整方法は、このような制御方法に限られない。
【0168】
例えば、調整圧力情報に対応して、第1の減圧用流量制御弁38、第2の減圧用流量制御弁42、及び大気解放用流量制御弁46の調整量や、減圧用2方弁44及び大気解放用2方弁48の開閉を示す情報を、予めROM12Bに記憶し、上記ステップ106〜ステップ114の処理によって、圧力変化の超過量を算出した後に調整圧力情報を読み取った後に、上記ステップ116〜ステップ120の処理に換えて、該調整圧力情報に対応する、第1の減圧用流量制御弁38、第2の減圧用流量制御弁42、及び大気解放用流量制御弁46の調整量、及び減圧用2方弁44及び大気解放用2方弁48の開閉を示す情報に基づいて、各弁を制御するようにしてもよい。
【0169】
この調整圧力情報に対応する、第1の減圧用流量制御弁38、第2の減圧用流量制御弁42、及び大気解放用流量制御弁46の調整量は、予め測定してROM12Bに記憶しておけばよい。
【実施例】
【0170】
以下に、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0171】
(実施例1)
−原盤の作製−
Si基板に厚膜レジスト(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを介して露光して、現像し、断面が正方形で直方体状の凸部(幅:0.05mm、長さ100mm、高さ0.05mm)を形成した。次に、これを120℃でポストベークして、原盤を作製した。
【0172】
−鋳型の作製−
次に、この作製した原盤に離型剤を塗布した後、熱硬化性ジメチルシロキサン樹脂(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184)を流し込み、120℃で30分間加熱して固化させた後剥離して、断面が正方形で、且つ上記凸部に対応する凹部を有する、ポリジメチルシロキサンゴムからなる鋳型形成用樹脂層を形成した。次に、この鋳型形成用樹脂層の凹部の両端部に、各々鋳型形成用樹脂層の厚み方向へ貫通する孔
(直径3mm)を打ち抜き形成して鋳型を作製した。
【0173】
−光導波路の作製−
次に、上記作製した鋳型と、鋳型より一回り大きい設計膜厚100μmの第1の基材(JSR(株)製,アートンフィルム)とを用意して、この第1の基材を鋳型の凹部の形成面側から密着させて、鋳型200と第1の基材300からなる部材201を作製した。これによって、第1の基材と鋳型の凹部によって、一対の穴を介して外部に連通する空隙部が形成された。
【0174】
この第1の基材と鋳型の凹部によって形成された空隙部と、孔と、の容積の総和は、約25mmであった。
【0175】
次にこの作製した部材201を、上記図8で示す樹脂充填装置11に装着した。
部材201の樹脂充填装置10の装着は、樹脂供給部20の供給管19を、連結部24を介して鋳型200の孔260に連結させると共に、減圧吸引流路33Aを、連結部26を介して鋳型200の孔280に連結させることによって行った。
【0176】
なお、樹脂充填装置10の供給管19及び減圧吸引流路32A、減圧流路32B、及び大気解放流路32Cの内径(直径)は、鋳型200の孔260及び孔280と同じであり、鋳型200が樹脂充填装置10に装着されることによって、樹脂充填装置10の供給管19及び減圧吸引流路32A、減圧流路32B、大気解放流路32C、及び空隙部222内には、開口49以外からは大気の流入の無い、密閉された状態となった。
【0177】
樹脂充填装置11の第1の減圧用流量制御弁38、第2の減圧用流量制御弁42、及び大気解放用流量制御弁46としては、スピードコントローラ(CKD社製、商品名:FCM)を用いた。また、減圧用2方弁44及び大気解放用2方弁48としては、電磁式用2方弁(CKD社製、商品名APK11)を用いた。
また、真空ポンプ50としては、ダイヤフラム式吸引ポンプ(最大吸引圧33.25kPa)を用いた。なお、真空ポンプ50は、20kPaの吸引力で吸引した。
【0178】
この空隙部222内に充填する充填用樹脂としては、粘度が0.37Pa・sのアクリル系紫外線硬化性樹脂(JSR社製)を用いた。
【0179】
そして、樹脂充填装置10の圧力制御部12のCPU12Aにおいて、上記図6及び図7に示す処理ルーチンを実行させて、空隙部222内への充填用樹脂の充填を行った。この樹脂充填装置10による充填処理が開始されてから終了するまでの間の第1の圧力計測部36による計測結果に基づいて、単位時間当りの圧力変化Pを記録したところ、この圧力変化Pは、常に0.4kPa以下であり、許容値0.43(0.75×0.370.55=0.43)以下であった。
【0180】
また、充填開始から充填完了までの時間は、10分であった。
【0181】
充填用樹脂を空隙部222内に充填した後に、鋳型200と第1の基材300からなる部材201を、樹脂充填装置10から取り外し、50mW/cm2の紫外光を、鋳型200を透して5分間照射して、充填用樹脂を紫外線硬化させた。
【0182】
次に、鋳型200を第1の基材300から剥離したところ、第1の基材300上に前記原盤凸部と同じ形状である直方体のコア部320が形成された。
【0183】
この形成されたコア部320は、上記作製した原盤100に設けられた凸部120の形状及び大きさと同一の直方体状であり、凹みや変形は生じていなかった。
【0184】
このため、充填用樹脂が空隙部222内において液滴状にならず、空隙部222内に隙間無く充填用樹脂が充填されたといえる。また、充填時において、空隙部222の変形を抑制することができたといえる。
【0185】
さらに、第1の基材300のコア部320の形成面に、第2の基材400として、第1の基材300と同じ屈折率の紫外線硬化性樹脂を塗布した後に、50mW/cm2の紫外光を10分間照射して硬化させ(硬化後の膜厚10μm)て、光導波路を作製した。
【0186】
このため、空隙部222内に隙間無く充填用樹脂の充填された光導波路を作製することができた。
【0187】
(実施例2)
実施例1で、充填用樹脂として用いた、粘度が0.37Pa・sのアクリル系紫外線硬化性樹脂に換えて、粘度が0.25Pa・sのアクリル系紫外線硬化性樹脂(JSR社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂充填装置11によって、部材201の空隙部222に充填用樹脂の充填を行い、光導波路を作製した。
【0188】
実施例1と同様にして、樹脂充填装置11の圧力制御部12のCPU12Aにおいて、上記図6及び図7に示す処理ルーチンを実行させて、空隙部222内への充填用樹脂の充填を行なった。この樹脂充填装置10による充填処理が開始されてから終了するまでの間の第1の圧力計測部36による計測結果に基づいて、単位時間当りの圧力変化Pを記録したところ、この圧力変化Pは、常に0.25kPa以下であり、許容値0.35(0.75×0.250.55=0.35)以下であった。
【0189】
また、充填開始から充填完了までの時間は、7分であり、実施例1で用いた充填用樹脂を用いて充填を行った場合に比べて、高速に充填を行うことができた。これは、実施例1で用いた充填用樹脂に比べて、実施例2で用いた充填用樹脂の粘度が低かったためと考えられる。
【0190】
さらに、実施例1と同様にして、充填用樹脂を紫外線硬化させた後に、鋳型200を第1の基材300から剥離したところ、第1の基材300上に前記原盤凸部と同じ形状である直方体のコア部320が形成されていた。
【0191】
この形成されたコア部320は、上記作製した原盤100に設けられた凸部120の形状及び大きさと同一の直方体状であり、凹みや変形は生じていなかった。
【0192】
このため、実施例2においても、充填用樹脂が空隙部222内において液滴状にならず、空隙部222内に隙間無く充填用樹脂が充填されたといえる。また、充填において、空隙部222の変形はなかったと考えられる。
【0193】
さらに、第1の基材300のコア部320の形成面に、第2の基材400として、第1の基材300と同じ屈折率の紫外線硬化性樹脂を塗布した後に、50mW/cm2の紫外光を10分間照射して硬化させ(硬化後の膜厚10μm)て、光導波路を作製した。
【0194】
このため、空隙部222内に隙間無く充填用樹脂の充填された光導波路を作製することができた。
【0195】
(実施例3)
実施例1で、充填用樹脂として用いた、粘度が0.37Pa・sのアクリル系紫外線硬化性樹脂に換えて、粘度が0.20Pa・sのアクリル系紫外線硬化性樹脂(JSR社製)を用いた点と、樹脂充填装置として、図2に示す樹脂充填装置10を用いた以外は、実施例1と同様にして、空隙部222に充填用樹脂を充填し、光導波路を作製した。
【0196】
なお、樹脂充填装置10の圧力緩衝容器34としては、テトロンで網状に補強されたPVCチューブ(内径10mm、長さ1500mm)を用いた。この圧力緩衝容器34の容積は、118000mmであり、第1の基材と鋳型の凹部によって形成された空隙部と、孔と、の容積の総和の約5000倍であった。
【0197】
実施例1と同様にして、樹脂充填装置11の圧力制御部12のCPU12Aにおいて、上記図6及び図7に示す処理ルーチンを実行させて、空隙部222内への充填用樹脂の充填を行なった。この樹脂充填装置10による充填処理が開始されてから終了するまでの間の第1の圧力計測部36による計測結果に基づいて、単位時間当りの圧力変化Pを記録したところ、この圧力変化Pは、常に0.25kPa以下であり、許容値0.31(0.75×0.200.55=0.31)以下であった。
【0198】
また、充填開始から充填完了までの時間は、5分であり、実施例1で用いた充填用樹脂を用いて充填を行った場合に比べて、高速に充填を行うことができた。これは、実施例1で用いた充填用樹脂に比べて、実施例3で用いた充填用樹脂の粘度が低かったためと考えられる。
【0199】
さらに、実施例1と同様にして、充填用樹脂を紫外線硬化させた後に、鋳型200を第1の基材300から剥離したところ、第1の基材300上に前記原盤凸部と同じ形状である直方体のコア部320が形成されていた。
【0200】
この形成されたコア部320は、上記作製した原盤100に設けられた凸部120の形状及び大きさと同一の直方体状であり、凹みや変形は生じていなかった。
【0201】
このため、実施例3においても、充填用樹脂が空隙部222内において液滴状にならず、空隙部222内に隙間無く充填用樹脂が充填されたといえる。また、充填時における空隙部222の変形は抑制されていたといえる。
【0202】
さらに、第1の基材300のコア部320の形成面に、第2の基材400として、第1の基材300と同じ屈折率の紫外線硬化性樹脂を塗布した後に、50mW/cm2の紫外光を10分間照射して硬化させ(硬化後の膜厚10μm)て、光導波路を作製した。
【0203】
このため、空隙部222内に隙間無く充填用樹脂の充填された光導波路を作製することができた。
【0204】
(比較例1)
実施例1で用いた樹脂充填装置10に換えて、下記構成の樹脂充填装置を用いた以外は、実施例1と同様にして空隙部222内に充填用樹脂を充填し、光導波路を作製した。
【0205】
比較例1で用いた樹脂充填装置の構成は、実施例1で用いた樹脂充填装置11の内の、
圧力緩衝容器34、第1の減圧用流量制御弁38、第2の圧力計測部40を有さない構成である。
そして、この樹脂充填装置では、単に、真空ポンプ50から流路を介して直接空隙部222内を減圧吸引し、実施例1〜3のような、図6及び図7に示す圧力変化及び調整圧力によるフィードバック処理ルーチンは実行されない構成とした。
すなわち、比較例で用いた樹脂充填装置では、第1の圧力計測部36による圧力計測結果をもとに空隙部222内の加減圧の制御を行うことによって充填用樹脂の充填を行った。
【0206】
なお、真空ポンプ50としては、ダイヤフラム式吸引ポンプ(最大吸引圧33.25kPa)を用いて、20kPaの吸引力で吸引し、空隙部222内に実施例1で用いた充填用樹脂を充填した。
【0207】
この比較例1で用いた樹脂充填装置による充填処理が開始されてから終了するまでの間の第1の圧力計測部36による計測結果に基づいて、単位時間当りの圧力変化Pを記録したところ、この圧力変化Pは、0.5kPa以下であり、許容値0.43(0.75×0.370.55=0.43)を超える場合があった。また、圧力変化がこの許容値0.43を超える度に、空隙部222内において充填用樹脂が液滴状となって分離し、連続した充填ができなかった。
このため、充填用樹脂の不連続な充填により形成された空間がその後方から充填される充填用樹脂に押し出されるように、充填時間を十分延長して充填を終えた。
【0208】
このため、充填開始から充填完了までの時間は、50分であり、実施例1〜3で行った充填処理における充填開始から充填完了までの時間に比べて、充填処理に要する時間が長かった。
【0209】
さらに、実施例1と同様にして、充填用樹脂を紫外線硬化させた後に、鋳型200を第1の基材300から剥離したところ、第1の基材300上に形成されたコア部320の形状には、欠けや凹みが見られ、前記原盤凸部の形状である直方体とは異なる形状であった。
【0210】
このため、比較例1においては、充填用樹脂が空隙部222内において液滴状になり、空隙部222内に隙間無く充填用樹脂を充填することが困難であった。また、充填時におおいて、空隙部222の変形がみられた。さらに、充填処理に要する時間が実施例1〜3に比べて長く、生産性が低下してしまうと考えられる。
【0211】
さらに、第1の基材300のコア部320の形成面に、第2の基材400として、第1の基材300と同じ屈折率の紫外線硬化性樹脂を塗布した後に、50mW/cm2の紫外光を10分間照射して硬化させ(硬化後の膜厚10μm)て、光導波路を作製した。
【0212】
しかしながら、コア部320の形状に、原盤の凸部の形状とは異なる箇所があることから、空隙部222内に隙間無く充填用樹脂の充填された光導波路を作製することは困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】(A)〜(G)本実施の形態の光導波路の作製工程を示す概略図である。
【図2】本実施の形態の樹脂充填装置を示す模式図である。
【図3】(A)は、空隙内へ充填用樹脂を充填するときの空隙内の圧力変化を示す線図であり、(B)は、(A)の線図の一部拡大図であり、(C)は、(A)の線図の一部拡大図である。
【図4】(A)は、第1の基材上に鋳型が密着された部材を鋳型側から見た模式図であり、(B)は、(A)のA−A’断面図であり、(B)は、(A)のA−A’断面図である。
【図5】(A)(B)従来の樹脂充填装置を用いて空隙内へ充填用樹脂の充填を行ったときに生じる充填用樹脂の空隙内での分離を示す模式図である。
【図6】本実施の形態の樹脂充填装置で実行される処理を示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態の樹脂充填装置で実行される処理を示すフローチャートである。
【図8】本実施の形態の樹脂充填装置の図2とは異なる形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0214】
10、11 樹脂充填装置
12 圧力制御部
14 取得部
16 充填用樹脂
26 連結部
32A 減圧吸引流路
32B 減圧流路
32C 大気解放流路
32D 分岐
33A 減圧吸引流路
33B 減圧吸引流路
34 圧力緩衝容器
36 第1の圧力計測部
38 第1の減圧用流量制御弁
42 第2の減圧用流量制御弁
44 減圧用2方弁
46 大気解放用流量制御弁
48 大気解放用2方弁
50 真空ポンプ
53 圧力調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型形成用樹脂により構成された鋳型形成用樹脂層から形成され、長尺状の凹部を有すると共に該凹部の両端部に該鋳型形成用樹脂層の厚み方向に貫通する孔の設けられた鋳型を作製する鋳型作製工程と、
前記鋳型に、該鋳型の前記凹部の形成された側から第1の基材を密着させる密着工程と、
前記凹部の一方の孔に充填用樹脂を供給する共に、他方の孔から該充填用樹脂を減圧吸引して前記第1の基材と前記鋳型の凹部により形成された空隙部に該充填用樹脂を充填させる充填工程と、
前記空隙部に充填された前記充填用樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記充填用樹脂を硬化させた後に、前記鋳型を前記第1の基材から剥離する剥離工程と、
を有し、
前記充填工程において、前記他方の孔から前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの単位時間当りの圧力変化Pが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする光導波路の製造方法。
[数1]
P≦0.75×Y0.55 式(1)
(式(1)中、Pは、前記他方の孔から前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの前記空隙部の単位時間当りの圧力変化(kPa)を表し、Yは、充填用樹脂の粘度(Pa・s)を表す。)
【請求項2】
前記鋳型形成用樹脂は、ポリジメチルシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
両端部に外部へ通じる孔の形成された長尺状の空隙部の一方の孔に流路を介して接続され、他方の孔へ供給された充填用樹脂を、該一方の孔から該流路を介して減圧吸引する吸引手段と、
前記流路に設けられ、前記空隙部にかかる吸引圧力を調整する圧力調整手段と、
前記空隙部における吸引圧力を計測する計測手段と、
前記計測手段による吸引圧力の計測結果に基づいて、前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの前記空隙部における単位時間当りの圧力変化Pが、下記式(1)の関係を満たすように、前記圧力調整手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする樹脂充填装置。
[数2]
P≦0.75×Y0.55 式(1)
(式(1)中、Pは、前記他方の孔から前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの前記空隙部の単位時間当りの圧力変化(kPa)を表し、Yは、充填用樹脂の粘度(Pa・s)を表す。)
【請求項4】
前記吸引手段は、前記空隙部内及び前記流路内の空気を外部へ排気して減圧吸引を行い、
前記圧力調整手段は、前記吸引手段による前記空隙部内の空気の排気流量を変更する流量変更手段を含み、
前記制御手段は、前記計測手段による吸引圧力の計測結果に基づいて、前記充填用樹脂を減圧吸引しているときの前記空隙部における単位時間当りの圧力変化Pが、上記式(1)の関係を満たすように、前記流量変更手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の樹脂充填装置。
【請求項5】
前記流路の、前記計測手段と前記圧力調整手段との間に設けられ、内部の圧力に応じて容積可変する圧力緩衝容器を備えた事を特徴とする請求項3または請求項4に記載の樹脂充填装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−279634(P2008−279634A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124632(P2007−124632)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】