光波面制御装置およびその製造方法
【課題】歩留まりおよび消費電力が改善される。
【解決手段】支持基板層11aおよび中間層11bが順に積層された底面部11cと、底面部11c上に形成され、内壁にトーションバー12を介してマイクロミラー13が一体的に形成され、上面にスペーサ14を備えるデバイス部11dとを有するミラー基板11と、一対の透明電極16が、マイクロミラー13の両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、スペーサ14を介してミラー基板11と接合する上部ガラス基板15と、により構成するようにした。
【解決手段】支持基板層11aおよび中間層11bが順に積層された底面部11cと、底面部11c上に形成され、内壁にトーションバー12を介してマイクロミラー13が一体的に形成され、上面にスペーサ14を備えるデバイス部11dとを有するミラー基板11と、一対の透明電極16が、マイクロミラー13の両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、スペーサ14を介してミラー基板11と接合する上部ガラス基板15と、により構成するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光波面制御装置およびその製造方法に関し、特に光波面の位相を制御する光波面制御装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フェムト秒光パルスの整形や空間光ビーム形状の歪みの補正、ディスプレイまたはレーザ加工などにおいて、光波面の位相を制御する光制御装置(以下、「光波面制御装置」と呼ぶ。)が利用されている。
【0003】
まず、この光波面制御装置の原理について以下に説明する。
図31は、光波面制御装置における光波面の制御を行わない場合の模式図、図32は、光波面制御装置における光波面の制御を行う場合の模式図である。
【0004】
図31、図32に示すように、光波面制御装置200には、複数のマイクロミラー200aがアレイ状に並んで設置されている。各マイクロミラー200aは、独立に上下への併進動作および時計回り・反時計回りの回転動作が可能である。
【0005】
この光波面制御装置200に対し、光が入射されると、入射される光の波面の遅れや進みに応じて、マイクロミラー200aが上下への併進動作および時計回り・反時計回りの回転動作を行う。このため、マイクロミラー200aの高さが低いところでは、反射により通過する光路が長くなるので、この部分の光の伝搬を遅らせ、位相を遅延させることができる。また、マイクロミラー200aの回転角を調整することによって、連続的な位相プロファイルを生成することが可能となる。なお、各マイクロミラー200aの併進距離や回転角度といった可変動作量が入射光の半波長以上であれば、反射による位相遅延量を2π以上とでき、任意の位相遅延を与えることが可能となる。
【0006】
以上の原理によって、図31、図32のように入射した光の波面を制御することが可能となり、光波面制御装置は様々な用途に利用されている(例えば、特許文献1参照。)。
続いて、光波面制御装置の従来例について以下に説明する。
【0007】
図33は、光波面制御装置の従来例の斜視模式図、図34は、光波面制御装置の従来例の断面模式図である。
光波面制御装置300は、図33、図34に示すように、シリコン(Si)基板301上に、櫛歯形状の電極が配置された下側櫛歯302および同様に配置された上側櫛歯303が形成されたシリコンオンインシュレータ(SOI:Silicon On Insulator)構造をなしており、上側櫛歯303および下側櫛歯302の櫛歯部にマイクロミラー300aが設置されている。
【0008】
そして、この光波面制御装置300は、マイクロミラー300aを上下に併進動作、並びに左右に回転動作をさせるため、櫛歯形状の電極をマイクロミラー300aと同一面に2個、下側に2個、合計4個配置するとともに、SOI構造のSi基板301にバイアス電圧を印加できる構成となっている。
【0009】
この光波面制御装置300は、例えば、以下のように作製することができる。
図35は、従来の光波面制御装置の作製工程の要部断面模式図である。
まず、Si基板301、酸化シリコン(SiO2)層301aおよびSi層を有するSOI構造を形成する。そして、下側櫛歯302の電極を作製するために、SOI構造のSi層に対して、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)加工を行うことによって、Si層302aが形成される(図35(A))。
【0010】
続いて、DRIE加工が施されたSi層302a上に、SiO2層303aaを挟んで陽極接合によりSi層303aが貼り合わされる。この段階では、下側櫛歯302となるSi層302aの電極は粗い加工精度でよい(図35(B))。
【0011】
続いて、貼り合わされたSi層303aを所望の厚さ(マイクロミラー300aおよび上側櫛歯303の電極の厚さ)にするために、Si層303aの表面を研磨する。
続いて、上側櫛歯303の電極およびマイクロミラー300aを作製するため、Si層303aおよびSiO2層303aaを露光およびパターニングの後に、DRIE加工し、上側櫛歯303が形成される(図35(C))。
【0012】
最後に、上側櫛歯303をマスクとしてDRIE加工を行い、高い加工精度によって、下側櫛歯302の電極を作製する(図35(D))。
以上により、光波面制御装置300が形成される。
【0013】
次に、このように形成された光波面制御装置300のマイクロミラー300aの動作について以下に説明する。
図36は、従来の光波面制御装置におけるマイクロミラーの各動作を表した断面模式図である。
【0014】
Si基板301にバイアス電圧を印加することにより、マイクロミラー300aがSi基板301側に引き寄せられ、上側櫛歯303と下側櫛歯302の中央位置までマイクロミラー300aが移動する。この位置がマイクロミラー300aの初期位置となる(図36(A))。
【0015】
この初期位置において、2個の下側櫛歯302に同一の電圧を印加すると、マイクロミラー300aが下方向に併進動作を行うことができる(図36(B))。
そして、同様に、2つの上側櫛歯303に同一の電圧を印加するとマイクロミラー300aが上方向に併進動作を行うことができる。
【0016】
また、上側櫛歯303と下側櫛歯302について、対角線状に位置する上側櫛歯303および下側櫛歯302に電圧を印加すると、マイクロミラー300aは時計回り若しくは反時計回りに回転動作を行わせることができる(図36(C))。
【0017】
以上のように、上側櫛歯303と下側櫛歯302への電圧の印加を組み合わせることによって、併進動作および回転動作を自由に実現させることができ、光波面制御装置300に入射する光波面の向きに応じて、マイクロミラー300aを自由に動作させることが可能となる。
【特許文献1】米国特許第6713367号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、上述のようにマイクロミラー300aを上側櫛歯303および下側櫛歯302に電極を印加することによって、動作させることには以下のような問題点があった。
第1に、図33、図34の従来の構造では、マイクロミラー300aを動作させるためには、図36(A)に示したように、マイクロミラー300aを初期位置に配置させるために、Si基板301にバイアス電圧を印加してマイクロミラー300aをSi基板301側に引き寄せ、マイクロミラー300aを上側櫛歯303と下側櫛歯302との間の中央位置に保つ必要がある。すなわち、光波面制御装置300を使用する際には、設置されている全てのマイクロミラー300aにバイアス電圧を印加して、マイクロミラー300aを初期位置に保たなければならない。この時、光の波面制御に寄与しないマイクロミラー300aについても常に電圧を印加する必要があり、消費電力が大きくなるという問題がある。
【0019】
第2に、図35に示したように、図33、図34の従来の光波面制御装置300の作製では、Si層302aのDRIE加工後に、Si層302a上に、SiO2層303aaを介して貼り合わされたSi層303aを研磨し、更にDRIE加工を行った。このように、従来の光波面制御装置300の作製には、非常に複雑な工程を経るため、作製に多大な工程数を要するとともに、装置作製の歩留まりが低くなるという問題がある。
【0020】
特に、従来の光波面制御装置300の作製工程において、DRIE加工によって、上側櫛歯303をマスクとして下側櫛歯302を作製する際、上側櫛歯303の側壁粗さが下側櫛歯302の加工精度に影響するため、下側櫛歯302の側壁が(上側櫛歯303の側壁よりも)更に粗くなる可能性が大きくなる。下側櫛歯302または上側櫛歯303の側面が粗くなると、マイクロミラー300aを動作させるために電圧を印加させた際に、マイクロミラー300aが円滑に動作しないという問題もある。
【0021】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、装置の作製歩留まりおよび消費電力が改善された光波面制御装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明では上記課題を解決するために、光波面の位相を制御する光波面制御装置10において、図1に示すように、支持基板層11aおよび額縁状の中間層11bが順に積層された底面部11cと、底面部11c上に形成され、内壁にトーションバー12を介してマイクロミラー13が一体的に形成され、上面にスペーサ14を備えるデバイス部11dとを有するミラー基板11と、一対の透明電極16が、マイクロミラー13の両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、スペーサ14を介してミラー基板11と接合する上部ガラス基板15と、を有することを特徴とする光波面制御装置10が提供される。
【0023】
このような光波面制御装置によれば、支持基板層および中間層が順に積層された底面部と、底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、一対の透明電極が、マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、スペーサを介してミラー基板と接合する上部ガラス基板と、が形成されるようになる。
【0024】
また、本発明では上記課題を解決するために、光波面の位相を制御する光波面制御装置の製造方法において、第1の支持基板層および中間層が順に積層された底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板を作製する工程と、一対の透明電極が、前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板を作製する工程と、を有することを特徴とする光波面制御装置の製造方法が提供される。
【0025】
このような光波面制御装置によれば、支持基板層および中間層が順に積層された底面部と、底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板が作製され、一対の透明電極が、マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、スペーサを介してミラー基板と接合する上部ガラス基板が作製されるようになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、支持基板層および中間層が順に積層された底面部と、底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、一対の透明電極が、マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、スペーサを介してミラー基板と接合する上部ガラス基板と、を形成するようにした。これにより、マイクロミラーの併進動作および回転運動を実現し、消費電力を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されない。
まず、本発明の概要について説明し、その後に、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明における光波面制御装置の概要図である。
光波面制御装置10は、支持基板層11aおよび中間層11bからなる底面部11cと、内壁に一体的に形成されたトーションバー12を介してマイクロミラー13を備えるデバイス部11dと、が順に積層されたミラー基板11と、透明電極16が両端に長手方向に設置された上部ガラス基板15とが、デバイス部11dの縁に形成されたスペーサ14を介して、結合されることによって構成される。
【0029】
次に、本発明の動作原理について、図2を用いて以下に説明する。
図2は、本発明の動作原理の断面模式図である。なお、図2では、トーションバー12およびマイクロミラー13の長手方向に対して直交する方向の断面図であり、デバイス部11dの側壁、中間層11bおよびスペーサ14の記載は省略している。
【0030】
光波面制御装置10では、上部ガラス基板15に設置された2つの透明電極16に印加する電圧Vにより、マイクロミラー13の併進動作および回転動作が実現できる。例えば、上部ガラス基板15に設置された2つの透明電極16に電圧Vを印加すると、図2(A)に示すように、印加された電圧Vによってマイクロミラー13は引力を受け、そして、上方への併進動作を行う。一方、片方の透明電極16に電圧Vを印加すると、図2(B)に示すように、電圧Vが印加された透明電極16側のマイクロミラー13が引力を受けて、回転動作を行う。さらに、この回転動作に加えて、支持基板層11aに、電圧Vを印加すると、図2(C)に示すように、マイクロミラー13は支持基板層11aからも引力を受けて、回転動作を行いながら、下方への併進動作を伴わせることができる。
【0031】
以上のように、マイクロミラー13の併進動作および回転運動を実現させるために、従来技術のように初期位置を保つために支持基板層11aにバイアス電圧を印加する必要がなくなり、従来技術と比較して消費電力を削減することができる。
【0032】
次に、第1の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態は、マイクロミラーをアレイ状に複数並べて構成される光波面制御装置を例にあげて以下に説明する。
【0033】
図3は、第1の実施の形態における光波面制御装置用上部ガラス基板の斜視模式図、図4は、第1の実施の形態における光波面制御装置用上部ガラス基板の透明電極のパターンの平面模式図、図5は、第1の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の斜視模式図、図6は、第1の実施の形態における光波面制御装置の断面模式図、図7は、第1の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の平面模式図、図8は、第1の実施の形態における光波面制御装置の平面模式図である。なお、便宜上、実際のサイズと異なる記載が部分的にある。
【0034】
図3に示すように、光波面制御装置用上部ガラス基板20は、ガラス基板22に、電極パッド23、マイクロミラー電位用配線24、インジウム錫酸化膜(ITO)電極25、スペーサ貼付位置26およびフレキシブル基板21により構成されている。なお、光波面制御装置用上部ガラス基板20を、後に説明する光波面制御装置用ミラー基板30にスペーサ36を介して接合させる時には、図3に示すITO電極25が光波面制御装置用ミラー基板30と対向するようにして接合させる。一方、ガラス基板22は、縦(ITO電極25の長手方向。以下同様。)を約30mm、横を約20mm、ITO電極25は、縦を約300μmから約600μm、横を約3μmから約10μm、厚さを約0.1μmとしている。
【0035】
ガラス基板22に、図4に示すように、透明電極のパターンを利用して、ITOを塗布して、マスク露光およびエッチングにより容易にITO電極25を形成することができる。なお、ITO電極25は、透明であるだけでなく、配線としての機能も有する。そして、後に形成されるマイクロミラー35、1つに対しその両端に重なるように、2つのITO電極25を配置するようにしている。なお、マイクロミラー35の幅が小さい場合など、マイクロミラー35の両端に重なるようにITO電極25を設置すると、制御したいマイクロミラー35の隣のマイクロミラーに電圧を印加してしまって動かしてしまうという現象が起こることがある。このような現象を避けるためには、マイクロミラー35の両端もしくは、マイクロミラー35の両端からやや内側と重なるようにして、ITO電極25を形成するようにすればよい。そして、このITO電極25はガラス基板22の両端の電極パッド23と接続してあり、また、電極パッド23に、外部の制御回路から電圧を入力することができるフレキシブル基板21が実装されている。したがって、外部からの制御による電圧がフレキシブル基板21を介して電極パッド23、そして、ITO電極25に電圧を印加して、マイクロミラー35の併進動作および回転動作を実現することができる。
【0036】
一方、図5に示すように、光波面制御装置用ミラー基板30は、Si基板31、SiO2層32およびSi層33により構成されるSOI構造であり、Si層33の内壁に一体的に形成されたトーションバー34を介して複数のマイクロミラー35と、はんだバンプにより構成されるスペーサ36が縁に形成されている。なお、各マイクロミラー35の上には金属膜(不図示。)が形成されている。また、SOI構造は、縦を約3mm、横を約3mm、Si基板31、SiO2層32およびSi層33の厚さをそれぞれ、約400μm、約3μmおよび約10μm、トーションバー34は、縦を約30μm、横を約2μm、厚さを約2μm、マイクロミラー35は、縦を約300μmから約600μm、横を約10μmから約30μm、厚さを約10μm、スペーサ36は厚さを約3μmとしている。
【0037】
スペーサ36は、光波面制御装置用上部ガラス基板20と光波面制御装置用ミラー基板30との間のスペーサとして、光波面制御装置用上部ガラス基板20のマイクロミラー電位用配線24上のスペーサ貼付位置26に接合される。そして、スペーサ36は、金(Au)−錫(Sn)系などのはんだバンプにより構成されており、電極パッド23と接続されたマイクロミラー電位用配線24からマイクロミラー35への電位をSi基板31に印加するための配線としての機能も兼ねている。
【0038】
なお、マイクロミラー35の反射率を高めたい場合、マイクロミラー35の表面に金属膜を形成することにより、その反射率を高めることが可能となる。
上記の光波面制御装置用上部ガラス基板20と、光波面制御装置用ミラー基板30とを、スペーサ36を介して接合することによって、図6に示すように、光波面制御装置40が形成される。なお、図6は、光波面制御装置用ミラー基板30のA−A’面の断面図であり、マイクロミラー35上に、金属膜37を形成した場合を示している。
【0039】
そして、光波面制御装置用上部ガラス基板20と光波面制御装置用ミラー基板30とを接合する際は、図7に示すように、光波面制御装置用ミラー基板30上に、あらかじめ位置合わせマーカ41をパターニングしておく。そして、図8に示すように、光波面制御装置用ミラー基板30の位置合わせマーカ41と、光波面制御装置用上部ガラス基板20の同様の位置合わせマーカ(不図示。)と重なるように位置調整を行って、光波面制御装置用上部ガラス基板20と光波面制御装置用ミラー基板30とを接合する。
【0040】
なお、光波面制御装置用上部ガラス基板20と光波面制御装置用ミラー基板30とを接合して、Si基板31の電位を外部から設定するために、Si基板31の裏面に、例えば図6に示すように、銀ペースト38を塗布し、同箇所とガラス基板22の電極パッド(図6には不図示。)をワイヤボンディング45で接続している。
【0041】
以上のような光波面制御装置40は例えば以下の方法によって作製することができる。
図9は、第1の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の作製工程の要部断面模式図である。なお、図9は、図5におけるA−A’面およびB−B’面における断面図を示している。
【0042】
まず、Si層33a、SiO2層32aおよびSi基板31により構成されるSOI構造を形成する(図9(A):A−A’面およびB−B’面の断面図である。)。
続いて、このSOI構造のSi層33aの表面にAu/クロム(Cr)にて、メタライズを行って、金属膜37aを形成する(図9(B):A−A’面およびB−B’面の断面図である。)。
【0043】
続いて、メタライズを行ったSOI構造に対し、マイクロミラー35形成用のパターンのマスクを用いて露光し、DRIEを行うことにより金属膜37aの一部を除去し、金属膜37を形成する(図9(C):B−B’面の断面図である。)。
【0044】
続いて、さらに、金属膜37をマスクとして、Si層33aをエッチングし、Si層33を形成する(図9(D):B−B’面の断面図である。)。
続いて、Si層33の形成後、例えば、フッ化水素(HF)を用いて、SiO2層32aを溶解し、SiO2層32が形成される(図9(E):B−B’面の断面図である)。
【0045】
SiO2層32が形成されると同時に、アレイ状のマイクロミラー35およびトーションバー34が形成される(図9(E’):A−A’面の断面図である)。
以上の工程によって形成された光波面制御装置用ミラー基板30に対して、ITO電極25、電極パッド23などが形成された光波面制御装置用上部ガラス基板20を、はんだバンプによって構成されるスペーサ36を介して接合すれば、これまで説明してきたような併進動作および回転動作が可能な光波面制御装置40を形成することができる。
【0046】
以上のように光波面制御装置40の作製工程を、図35の従来の光波面制御装置の作製工程と比較すると、DRIE加工の回数が減ることや、マイクロミラー35とトーションバー34を同時に形成することができることなど、作製工程数を大幅に削減でき、作製工程を簡素化でき、また、図35の従来の光波面制御装置300の作製工程が必要としたような精密加工を必要としないために、本発明による光波面制御装置40は完成度が高まり、完成した光波面制御装置40の信頼性や、歩留まりの向上に繋がる。
【0047】
図10は、マイクロミラーおよびトーションバーの要部断面模式図である。
図10は、トーションバー34と一体的に形成されたマイクロミラー35との断面を模式的に示したものである。なお、トーションバー34が一体的に形成されたSi層33などの記載については省略している。
【0048】
また、既述の通り、本発明において形成されるトーションバー34は、図10(A)に示すように、SOI構造をエッチングすることによって、マイクロミラー35と同時に形成されるため、トーションバー34とマイクロミラー35は同じ厚さとなる。なお、トーションバー34のばね定数は、その厚さの3乗に比例して硬くなることが分かっている。このため、一定の駆動電圧に対する併進距離や回転角度といった可変動作量を大きくするためには、図10(B)に示すように、厚さを薄くしたトーションバー34aを形成することが望ましい。しかし、本発明の作製工程では、トーションバー34とマイクロミラー35の厚さは等しく形成されるので、トーションバー34の厚さを薄くすると、マイクロミラー35の厚さも薄くなる。ところが、厚さが薄いマイクロミラー35は長手方向に反りやすくなる性質がある。このため、マイクロミラー35の表面を平坦に保つためには、マイクロミラー35はある程度の厚さが必要となる。そこで、マイクロミラー35およびトーションバー34を形成後、改めて、トーションバー34をマイクロミラー35の厚さよりも薄く加工することによって、マイクロミラー35の反りを抑制し、かつ可変動作量を大きくすることができる。
【0049】
また、光波面制御装置40を実際に使用する際には、外部の制御回路などとの電気接続が必要であり、また、ゴミ付着の防止等のためのパッケージングを行うことが必要である。本発明の構成では、ガラス基板22をパッケージング用の窓と兼用できるため、従来例と比較して簡素な光波面制御装置40を実現できる。
【0050】
以下に、第1の実施の形態を利用した実施例について、図面を用いて説明する。
[実施例1−1]
実施例1−1では、被制御光として1次元の空間光ビームの場合を例にあげ、図11を用いて以下に説明する。
【0051】
図11は、第1の実施の形態における光波面制御装置を用いた空間光ビーム補正の機構図である。
空間光ビーム補正機構50において、左上の入力口から、入力された入力空間光ビーム51が、ビームスプリッタ53aを通過して、本発明の概要で説明した光波面制御装置40に入射される。
【0052】
入射された入力空間光ビーム51は、光波面制御装置40において、光波面が制御されて反射し、ビームスプリッタ53aにより下方に進む。
そして、下方に進む制御された入力空間光ビーム51はビームスプリッタ53aaによって、出力空間光ビーム52として出力されると同時に波面センサ54によって検出される。
【0053】
波面センサ54によって検出された出力空間光ビーム52の信号は制御回路55に送られる。そして、制御回路55は、所望の空間光ビーム形状になるように光波面制御装置40を制御し、空間光ビームの光波面が補正されて、反射される。このようにして、所望の空間光ビーム形状が得られるまで、このフィードバックが繰り返される。
【0054】
空間光ビームは、例えば、レンズや回折格子などの光学素子を通過するとともに、ビームプロファイルが理想的なガウシアンビームから外れ、光ファイバなどへの統合効率が劣化するなどの問題がある。
【0055】
この問題に関して、以上のような光波面の制御を行うことによって、入力空間光ビームを理想的なガウシアンビームに近づかせることが可能となり、光ファイバなどへの統合効率の劣化を抑えることが可能となる。
【0056】
[実施例1−2]
実施例1−2では、被制御光として1次元の光短パルスの場合を例にあげ、図12を用いて以下に説明する。
【0057】
図12は、第1の実施の形態における光波面制御装置を用いた光短パルス整形の機構図である。
光短パルス整形機構50aは、実施例1−1と同様に、左上の入力口からの入力光短パルス51aが、ビームスプリッタ53aを通過し、回折格子56により分光され、光波面制御装置40に入射され、そこで各周波数成分の位相がシフトされる。
【0058】
そして、位相がシフトされた入力光短パルス51aは、再び、回折格子56において、任意の光短パルスとして合波され、ビームスプリッタ53aにより反射して、下方に進む。
【0059】
そして、下方に進む合波された入力光短パルス51aはビームスプリッタ53aaによって、出力光短パルス52aとして出力されると同時に波面センサ54によって検出される。
【0060】
波面センサ54によって検出された出力光短パルス52aの信号は制御回路55に送られる。そして、制御回路55は、所望の光短パルス形状になるように光波面制御装置40を制御し、反射される光短パルスの光波面が整形される。このようにして、所望の光短パルス形状が得られるまで、このフィードバックが繰り返される。
【0061】
以上により、実施例1−1と同様に、入力光短パルスを理想的なガウシアンビームに近づかせることが可能となり光ファイバなどへの統合効率の劣化を抑えることが可能となる。
【0062】
[実施例1−3]
実施例1−1および実施例1−2では1次元の空間光ビームの補正および1次元の光短パルスの整形の場合を例にあげて説明した。これに対し、実施例1−3では被制御光として2次元の空間光ビームの場合を例にあげ、図13を用いて以下に説明する。
【0063】
図13は、第1の実施の形態における光波面制御装置を用いた2次元の空間光ビーム補正の機構図である。
空間光ビーム補正機構50bでは、2つの光波面制御装置40a,40bを、それぞれのマイクロミラーの長手方向が直交するように設置し、さらに、反射ミラー57を光波面制御装置40a,40bの上面に設置することにより構成される。
【0064】
このように構成されることによって、まず、光波面制御装置40aに入射した入射空間光ビーム51bの1次元方向の光波面が制御されて反射される。
次に、光波面制御装置40aにおいて反射された空間光ビームは、反射ミラー57で反射され、光波面制御装置40bに入射する。
【0065】
光波面制御装置40bに入射された空間光ビームは、残りの1次元方向の光波面が制御されて、出射空間光ビーム52bとして出射され、2次元の空間光ビームの光波面を制御することが可能となる。
【0066】
[実施例1−4]
実施例1−1および実施例1−2では、光波面制御装置用ミラー基板30において、同方向にそろった同一の複数のマイクロミラー35によって構成されるマイクロミラーアレイが1組形成された場合、そして、実施例1−3では、光波面制御装置40を2組利用した場合を例にして説明した。これに対し、実施例1−4では、光波面制御装置用ミラー基板において、同様に2組のマイクロミラーアレイが1つに形成された場合を例にあげ、図14を用いて以下に説明する。
【0067】
図14は、第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置の斜視模式図である。
光波面制御装置60は、光波面制御装置用上部ガラス基板60aと光波面制御装置用ミラー基板60bとから構成されている。なお、光波面制御装置用上部ガラス基板60aを、光波面制御装置用ミラー基板60bにスペーサ66aを介して接合させる時には、図14に示すITO電極65が光波面制御装置用ミラー基板60bと対向するようにして接合させる。
【0068】
光波面制御装置用上部ガラス基板60aは、ガラス基板62に、電極パッド63,63a、マイクロミラー電位用配線64、ITO電極65、スペーサ貼付位置66およびフレキシブル基板61により構成されている。なお、電極パッド63aは、Si基板67cから電圧を印加する際に使用される。
【0069】
光波面制御装置用ミラー基板60bは、Si基板67c、額縁上に形成されたSiO2層67bおよびSi層67aにより構成されるSOI構造に、Si層67aの内壁に一体的に形成されたトーションバー68aを介して複数のマイクロミラー68およびスペーサ66aが形成されている。
【0070】
そして、光波面制御装置用ミラー基板60bには、2組のマイクロミラーアレイ62a,62bが互いに直交するように形成されており、光波面制御装置用上部ガラス基板60aには、2組のマイクロミラーアレイ62a,62bのそれぞれのマイクロミラー68に対して、2組の電極群65a,65bが形成されている。
【0071】
このような2組のマイクロミラーアレイ62a,62bを有する光波面制御装置60の利用についてさらに以下に説明する。
図15は、第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置に反射体を適用した例図である。なお、図15では、光波面制御装置の光波面制御装置用上部ガラス基板の記載については省略しており、図15中の破線は光の道筋を表している。
【0072】
図15に示すように、2組のマイクロミラーアレイ62a,62bを備えて、1つの反射体63が設置された光波面制御装置60cでは、マイクロミラーアレイ62aは、入射した入射光の1次元方向の光波面を制御して、反射体63に反射させる。
【0073】
そして、反射体63から反射された入射光は、マイクロミラーアレイ62bにおいて、残りの1次元方向の光波面が制御されて、出射光として出射され、2次元の空間光ビームの光波面を制御することが可能となる。
【0074】
また、反射体の他の構成例について以下に説明する。
図16は、第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置に反射体を適用した別の例図である。なお、図16では、光波面制御装置の光波面制御装置用上部ガラス基板の記載については省略しており、図16中の破線は光の道筋を表している。
【0075】
図16には反射体63b,63cとしてハーフミラーを利用した場合を例にあげており、ハーフミラーはマイクロミラーアレイ62a,62bの上面に、光波面制御装置用ミラー基板60bと45度および135度を成して配置されている。光波面制御装置60dの鉛直方向から入射された光は、マイクロミラーアレイ62aに到達し、1次元の光波面が制御されて反射される。そして、この反射光は、再び反射体63bにより反射されて進行方向が90度変化して、反射体63cに到達し、同様にマイクロミラーアレイ62bにより残りの1次元の光波面が制御される。その結果、実施例1−3と同様に、入射光に対して2次元的に光波面が制御された出射光を得ることができる。このような方法による入射光の波面の2次元的な制御は、入射光および出射光が光波面制御装置用ミラー基板60bの鉛直方向となるため、光学部品の配置や光軸の調整を容易に行うことができる。
【0076】
図17は、第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置に反射体を適用した別の例図である。なお、図17では、光波面制御装置の光波面制御装置用上部ガラス基板の記載については省略しており、図17中の破線は光の道筋を表している。
【0077】
光波面制御装置60eのマイクロミラーアレイ62a,62bが長手方向に平行に形成されており、それらの上面に、像を90度回転させることができるプリズム63fを挟んで二つの反射体63d,63eを設定している。光波面制御装置60eの鉛直方向から入射された光は、マイクロミラーアレイ62aに到達し、1次元の光波面の制御が行われて反射される。そして、この反射光は、再び反射体63dにより更に反射されて、進行方向が90度変化し、プリズム63fを通過し、像が90度回転した反射光が反射体63eに到達し、同様にマイクロミラーアレイ62bにより残りの1次元の光波面の制御が行われる。この結果、入射光に対して2次元的に光波面が制御された出射光を得ることができる。このような方法による入射光の波面の2次元的な制御でも、入射光および出射光がミラー基板の鉛直方向となるため、光学部品の配置や光軸の調整を容易に行うことができる。
【0078】
以上、説明したように、本発明によって、従来例と比較して、非常に簡易な作製工程によって、併進動作および回転動作を行うことが可能で、消費電力が少ない光波面制御装置を得ることができる。また、マイクロミラーアレイを2組用いることで、光波面を2次元的に制御することができる。
【0079】
次に、第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態の光波面制御装置では、SOI構造にマイクロミラーを配列させたミラー基板と、マイクロミラーに対応する電極が形成されたガラス基板とが備えられていた。
【0080】
これに対して、第2の実施の形態では、ミラー基板をガラス基板で挟むことで光波面制御装置を構成させる場合を例にあげて説明する。
図18は、第2の実施の形態における光波面制御装置の概要図である。
【0081】
光波面制御装置70は、内壁に一体的に形成されたトーションバー72を介してマイクロミラー73を備えたミラー基板71が、一対の透明電極76が両端に長手方向に設置された上部ガラス基板75と、同様に透明電極76aが設置された下部ガラス基板75aとで、ミラー基板71の縁に形成されたスペーサ74を介して、挟まれることによって構成されている。
【0082】
次に、この動作原理について、図19を用いて以下に説明する。
図19は、第2の実施の形態の動作原理の断面模式図である。なお、図19では、ミラー基板71の側壁部およびスペーサ74の記載は省略している。
【0083】
まず、光波面制御装置70の上部ガラス基板75に設置された2つの透明電極76に電圧Vを印加し、下部ガラス基板75aに設置された2つの透明電極76aには印加しない場合(図19(A))、マイクロミラー73は、トーションバー72を支点として上部ガラス基板75側への併進動作を行う。
【0084】
次に、上部ガラス基板75の透明電極76の1つに電圧Vを印加し、下部ガラス基板75aの、印加された透明電極76と対角線上にある透明電極76aに同様に電圧Vを印加する場合(図19(B))、マイクロミラー73は、偶力(大きさが同一で、反対向きの力)がトーションバー72を支点として作用し、トルクのみが発生し、(併進が伴わない)純粋な回転動作を行う。
【0085】
そして、上部ガラス基板75の透明電極76の1つに電圧Vを印加し、下部ガラス基板75aの2つの透明電極76aに電圧Vを印加する場合(図19(C))、マイクロミラー73はトーションバー72を支点として回転動作とともに、下部ガラス基板75a側への併進動作を同時に行う。
【0086】
以上のように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様にマイクロミラーにトーションバーを支点として、回転動作および併進動作を自由に実現させることができるだけでなく、第1の実施の形態と異なり、波面補正に寄与しないマイクロミラーに対しては電圧を印加する必要がなく、第1の実施の形態の光波面制御装置と比較してさらに消費電力を削減することができる。
【0087】
次に、このようなマイクロミラーが複数からなる1組のマイクロミラーアレイが形成された場合を例にして以下に説明する。
図20は、第2の実施の形態における光波面制御装置の斜視模式図、図21は、第2の実施の形態における光波面制御装置の断面模式図である。なお、第1の実施の形態と同じ構成のものは特に断りが無い限り同じ符号とする。また、上部ガラス基板81を、ミラー基板82にスペーサ36を介して接合させる時には、図20に示すITO電極25がミラー基板82と対向するようにして接合させる。
【0088】
光波面制御装置80は、図20に示すように、上部ガラス基板81と下部ガラス基板83とがスペーサ36を介して挟まれるミラー基板82によって構成される。
上部ガラス基板81は、第1の実施の形態と同様に、ガラス基板22に、電極パッド23、マイクロミラー電位用配線24、ITO電極25、スペーサ貼付位置26、貫通電極84およびフレキシブル基板21により構成されている。なお、フレキシブル基板21は貫通電極84と接触するように実装されている。
【0089】
下部ガラス基板83は、上部ガラス基板81と同様に、ガラス基板22aに、マイクロミラー電位用配線24a、ITO電極25a、スペーサ貼付位置26a、貫通電極84aおよびフレキシブル基板21aにより構成されている。なお、フレキシブル基板21aは貫通電極84aと接触するように実装されている。
【0090】
ミラー基板82は、Si層33の内壁に一体的に形成されたトーションバー34を介して複数のマイクロミラー35およびSi層33の両側に突出したスペーサ36が形成されている。なお、各マイクロミラー35の上には金属膜(不図示。)が形成されている。
【0091】
また、フレキシブル基板21,21aは、その厚さは数十〜数百μmであるのに対して、マイクロミラー35表面とITO電極25,25aとの対向距離は、一般に数μm程度であって、フレキシブル基板21,21aの厚さに比べて1、2桁小さい。このため、ミラー基板82がスペーサ36を介して上部ガラス基板81および下部ガラス基板83によって挟まれる場合には、図21(A)、図21(B)に示すように、貫通電極84,84aによって接続されるフレキシブル基板21,21a同士を外側に向けて設置させるようにする。これにより、ITO電極25,25aとマイクロミラー35の表面とがフレキシブル基板21,21aの厚み以下に近付けることができ、所望のマイクロミラー35の動作を実現させることができる。
【0092】
また、スペーサ36は、上部ガラス基板81および下部ガラス基板83とミラー基板82との間のスペーサとして、上部ガラス基板81および下部ガラス基板83のマイクロミラー電位用配線24,24a上のスペーサ貼付位置26,26aに接合される。そして、スペーサ36は、Au−Sn系などのはんだバンプもしくは導電性マイクロビーズ等により構成されており、電極パッド23,23aと接続されたマイクロミラー電位用配線24,24aからマイクロミラー35への電位をSi層33に印加するための配線としての機能も兼ねている。なお、スペーサ36として導電性を有さないマイクロビーズ等を用いる場合は、下部ガラス基板83上に穴を形成しておき、その穴からプローブ等を介してマイクロミラー35面の電位を設定することができる。
【0093】
なお、マイクロミラー35の反射率を高めたい場合、図21(A)に示すように、マイクロミラー35の表面に、Au/Crなどによって金属膜85を形成することにより、その反射率を高めることが可能となる。また、図21(B)に示すように、マイクロミラー35の表面に金属膜85を形成するとともに、マイクロミラー35の裏面にも表面と同様に金属層85aを形成することにより、応力が表裏で打ち消し合い、マイクロミラー35の反りを解消させることができるという効果がある。
【0094】
以上のような光波面制御装置80は、例えば、以下の方法によって作製することができる。
図22、図23、図24は、第2の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の作製工程の要部断面模式図である。なお、図22、図23、図24は、図20のミラー基板82のA−A’面における断面図を示している。
【0095】
まず、Si層33a、SiO2層32bおよびSi基板31aにより構成されるSOI構造を形成する。なお、Si層33a、SiO2層32bおよびSi基板31aの厚さはそれぞれ、約100μm、約3μmおよび約100μmとする。
【0096】
そして、このSOI構造のSi層33aの表面の一部にAu/Crを用いてメタライズを行って、金属膜85を形成する(図22(A))。
メタライズを行ったSOI構造に対し、Si層33aの一部および金属膜85上にフォトレジストを形成し、露光などを行って、マイクロミラーパターンが描かれたフォトレジストパターン86を形成する(図22(B))。
【0097】
さらに、フォトレジストパターン86の開口部に別のフォトレジストパターン86aを同様にして形成する(図22(C))
マイクロミラーパターンが描かれたフォトレジストパターン86,86aをマスクとして、DRIEを行うことによって、Si層33aの一部を除去し、Si層33aaを形成する(図23(A))。
【0098】
Si層33aaの形成後、再びDRIEを行って、Si層33aaをエッチングし、Si層33を形成する(図23(B))。
Si層33の形成後、フォトレジストパターン86を除去して、HFを用いて、SiO2層32bの一部を溶解させる。なお、ここまでの工程にて、第1の実施の形態の光波面制御装置用ミラー基板30を形成することができる(図23(C))。
【0099】
さらに、HFにてSiO2層32bを溶解し、Si基板31aを除去すると、ミラー基板82が形成される(図24(A))。
ミラー基板82が形成されると、スペーサ36を介して、下部ガラス基板83を貼り合わせる(図24(B))。
【0100】
最後に、同様に、スペーサ36を介して、上部ガラス基板81を貼り合わせて、光波面制御装置80が完成する(図24(C))。
以上の工程のように、ミラー基板82の形成後、上部ガラス基板81および下部ガラス基板83を貼り合わせることによって容易に光波面制御装置80を形成することができる。
【0101】
一方、マイクロミラー35が形成されるSi層33の厚さが約100μm以上あれば、上記のような作製方法でよいが、厚さが100μmよりも薄い場合は、取り扱いが難しくなるために、上記のような作製方法では、Si層33を破損させる恐れがある。そこで、次のような構造にすることで、光波面制御装置を作製することができる。
【0102】
図25は、第2の実施の形態における光波面制御装置の別の斜視模式図、図26は、第2の実施の形態における光波面制御装置の別の断面模式図である。なお、図20と同じ構成のものは特に断りが無い限り同じ符号とする。また、上部ガラス基板81を、ミラー基板82aにスペーサ36を介して接合させる時には、図25に示すITO電極25がミラー基板82aと対向するようにして接合させる。
【0103】
光波面制御装置80aは、図25、図26に示すように、上部ガラス基板81がスペーサ36を介し、下部ガラス基板83aが突起部83bを嵌合させて、ミラー基板82aと接合して、構成される。
【0104】
上部ガラス基板81は、図20と同様に、ガラス基板22に、電極パッド23、マイクロミラー電位用配線24、ITO電極25、スペーサ貼付位置26、貫通電極84およびフレキシブル基板21により構成されている。なお、フレキシブル基板21は貫通電極84と接触するように実装されている。
【0105】
下部ガラス基板83aは、図20と同様に、ガラス基板22aに、マイクロミラー電位用配線24a、ITO電極25a、貫通電極84aおよびフレキシブル基板21aにより構成されている。なお、フレキシブル基板21aは貫通電極84aと接触するように実装されている。さらに、光波面制御装置80と異なり、突起部83bが設置されており、ITO電極25aは突起部83bに沿うように形成されている。
【0106】
ミラー基板82aは、Si層33の内壁に一体的に形成されたトーションバー34を介して複数のマイクロミラー35およびスペーサ36が形成されている。さらに、SiO2層32と、SiO2層32と同様に内側が除去された額縁状のSi基板31aが形成されている。なお、各マイクロミラー35の上には金属膜(不図示。)が形成されている。
【0107】
そして、図26に示すように、このような光波面制御装置80aの断面図によれば、下部ガラス基板83aは、新たに設置した突起部83bがミラー基板82aの額縁状のSi基板31aに嵌合して、接合することがわかる。
【0108】
以下に、光波面制御装置80aの作製方法について図を用いて説明する。なお、光波面制御装置80aは、光波面制御装置80の作製方法の図22から図23(B)までは同じ工程であるために、図23(B)に続いて説明する。ただし、光波面制御装置80aでは、図22、図23中のSi基板31a、SiO2層32bおよびSi層33の厚さを、それぞれ約100μm、約3μmおよび約10μmとする。
【0109】
図27は、第2の実施の形態における光波面制御装置のミラー基板の別の作製工程の要部断面模式図である。
図23(B)に続いて、Si層33の形成後、再びDRIEにて、Si基板31aの一部をエッチングする(図27(A))。
【0110】
Si基板31aの一部のエッチング後、フォトレジストパターン86を除去して、HFを用いて、SiO2層32bの一部を溶解して、ミラー基板82を形成する(図27(B))。
【0111】
そして、一部に突起部83bを有する下部ガラス基板83aを張り合わせる。なお、突起部83bの高さは、Si基板31aの高さと等しくする(図27(C))。
最後に、スペーサ36を介して、同様に、上部ガラス基板81を張り合わせて、光波面制御装置80aが完成する(図27(D))。
【0112】
このような作製工程によって、マイクロミラーが形成された層の厚さが薄いために、取り扱いが難しい場合でも、光波面制御装置80aを作製することが可能となる。
また、第2の実施の形態の光波面制御装置80,80aでも、第1の実施の形態と同様に、上部ガラス基板81、下部ガラス基板83,83aおよびミラー基板82,82aにそれぞれマーカを形成しておき、マーカの位置合わせを行いながら一体化して、マイクロミラー35とITO電極25との相対位置を調整することによって実装することが可能である。そのため、従来の光波面制御装置と比較して極めて簡易なプロセスで作製することが可能である。なお、光波面制御装置80aの突起部83bでは、顕微鏡でITO電極25を観察して位置合わせを行いながら張り合わせる。
【0113】
また、上部ガラス基板81と下部ガラス基板83,83aとで同一の材料を用いることができるため、量産効果によるコストダウンも見込め、かつ、上部ガラス基板81および下部ガラス基板83,83aとしてはSi基板等と比較して安価なガラス基板を用いることができるため、光波面制御装置の低コスト化も実現できる利点がある。
【0114】
さらに、第1の実施の形態と同様に、光波面制御装置80,80aを実際に使用する際には、外部の制御回路との電気接続、ゴミ付着の防止等を行うためにパッケージングを行う必要があるが、本発明の構成では、ガラス基板をパッケージング用の窓と兼用できるため、従来例と比較して簡素なデバイスを実現できる。
【0115】
以下に、第2の実施の形態を利用した実施例について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施例では光波面制御装置80を利用した場合について説明するが、光波面制御装置80aを利用しても同様に実施することができる。
【0116】
[実施例2−1]
実施例2−1では、被制御光として1次元の空間ビームの場合を例にあげ、図28を用いて以下に説明する。
【0117】
図28は、第2の実施の形態における光波面制御装置を用いた空間光ビーム補正の機構図である。
空間光ビーム補正機構90において、左上の入力口から、入力された入力空間光ビーム91が、ハーフミラー93を通過して、本発明の概要で説明した光波面制御装置80に入射される。
【0118】
入力空間光ビーム91が入射された光波面制御装置80の下部ガラス基板83側からモニタ光94を入射して、波面センサ95が、その反射光をモニタリングすることによって、光波面制御装置80のマイクロミラー35の傾斜角および併進量の情報を得ることができる。
【0119】
そして、制御回路96は波面センサ95のマイクロミラー35の傾斜角および併進量の情報から所望の光波面の形状が得られるまで光波面制御装置80のマイクロミラー35を制御し、入力空間光ビーム91の光波面が補正される。このようにして、所望の空間光ビームの形状が得られるまで、このフィードバックが繰り返される。
【0120】
入力空間光ビーム91が制御されて所望の光波面となった出力空間光ビーム92は、再び、ハーフミラー93により下方に進んで、出力される。
以上のような光波面の制御を行うことによって、入力空間光ビームを理想的なガウシアンビームに近づかせることが可能となる。
【0121】
[実施例2−2]
実施例2−2では、被制御光として1次元の光短パルスの場合を例にあげ、図29を用いて以下に説明する。
【0122】
図29は、第2の実施の形態における光波面制御装置を用いた光短パルス整形の機構図である。
光短パルス光整形機構90aは、実施2−1と同様に、左上の入力口からの入力光短パルス91aが、ハーフミラー93aを通過し、回折格子97により分光され、光波面制御装置80に入射される。
【0123】
入力光短パルス91aが入射された光波面制御装置80の下部ガラス基板83側からモニタ光94を入射して、波面センサ95が、その反射光をモニタリングすることによって、光波面制御装置80のマイクロミラー35の傾斜角および併進量の情報を得ることができる。
【0124】
そして、制御回路96は波面センサ95のマイクロミラー35の傾斜角および併進量の情報から所望の光波面の形状が得られるように、光波面制御装置80のマイクロミラー35を制御し、入力光短パルス91aの各周波数成分の位相がシフトされる。このようにして、所望の入力光短パルス91aの形状が得られるまで、このフィードバックが繰り返される。
【0125】
入力光短パルス91aが制御されて所望の光波面となった出力光短パルス92aは、再び、回折格子97において合波され、ハーフミラー93aにより下方に進んで、出力される。
【0126】
以上により、実施例2−1と同様に、入力光短パルスを理想的なガウシアンビームに近づかせることが可能となる。
[実施例2−3]
実施例2−1および実施例2−2では、光波面制御装置80のミラー基板82において、同方向にそろった同一の複数のマイクロミラー35によって構成されるマイクロミラーアレイが1組形成された場合を例にして説明した。これに対し、実施例2−3では、光波面制御装置のミラー基板において、2組のマイクロミラーアレイが1つに形成された場合を例にあげ、図30を用いて以下に説明する。
【0127】
図30は、第2の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置の斜視模式図である。なお、上部ガラス基板101を、ミラー基板102にスペーサ66aを介して接合させる時には、図30に示すITO電極65がミラー基板102と対向するようにして接合させる。
【0128】
光波面制御装置100は、上部ガラス基板101および下部ガラス基板103によって挟まれるミラー基板102から構成されている。なお、第1の実施の形態の図14と同じ構成のものは、特に断りがない限り同じ符号とし、その説明は省略する。
【0129】
図30に示すように、ミラー基板102に、2組のマイクロミラーアレイ102a,102bが、互いに直交するように形成されるとともに、マイクロミラーアレイ102a,102bに対して、上部ガラス基板101には電極群101a,101b、下部ガラス基板103には電極群103a,103bが形成されている。
【0130】
この光波面制御装置100のように、2組のマイクロミラーアレイ102a,102bを備える光波面制御装置100の上面に、例えば実施例1−4と同様に、反射体を設置することによって、入射した被制御光をマイクロミラーアレイ102aにより反射させ、上面に配置した反射体で反射させて、マイクロミラーアレイ102bに光を入射させて反射させることにより、光波面を2次元的に制御することが可能である。
【0131】
なお、実施例2−3ではミラー基板102に2組のマイクロミラーアレイ102a,102bを備えた場合を例にして説明したが、実施例1−3のように、2つの光波面制御装置を利用した光波面を2次元状に操作する方法も可能である。
【0132】
以上のように、内壁に一体的に形成されたトーションバーを介してマイクロミラーが形成されたミラー基板と、透明電極が形成されたガラス基板とをスペーサで接合させた光波面制御装置は、マイクロミラーの併進動作および回転動作を実現でき、初期位置を保つためのバイアス電圧が不要であるため、消費電力を削減することができる。また、光波面制御装置の作製工程は簡素化でき、精密加工を必要としないため、歩留まりの向上および完成後の信頼性を向上させることができる。
【0133】
今回示した実施例は、本発明の光波面制御装置を構成させるために上記材料を利用した場合を例として説明したが、本発明の光波面制御装置を構成可能な他の材料系の組み合わせにしても同様の効果が得られる。
【0134】
(付記1) 光波面の位相を制御する光波面制御装置において、
第1の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層された底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、
一対の透明電極が、前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板と、
を有することを特徴とする光波面制御装置。
【0135】
(付記2) 前記ミラー基板は、前記第1の支持基板層および前記デバイス部がシリコン、前記中間層が酸化シリコンによって構成されるSOI構造であることを特徴とする付記1記載の光波面制御装置。
【0136】
(付記3) 前記底面部に代わり、一対の透明電極が前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記デバイス部に別のスペーサを介して接合する下部ガラス基板を有することを特徴とする付記1記載の光波面制御装置。
【0137】
(付記4) 前記別のスペーサに代わって下から順に積層された額縁状の第2の支持基板層と前記中間層とを介して、前記第2の支持基板層と同じ高さの突起部が一部にさらに形成され、前記突起部が前記第2の支持基板層と嵌合して、前記デバイス部と接合する前記下部ガラス基板を有することを特徴とする付記3記載の光波面制御装置。
【0138】
(付記5) 前記デバイス部および前記第2の支持基板層がシリコン、前記中間層が酸化シリコンによって構成されるSOI構造であることを特徴とする付記4記載の光波面制御装置。
【0139】
(付記6) 前記マイクロミラーが直交するように配置された一対の前記ミラー基板と、一対の前記上部ガラス基板と、さらに、前記ミラー基板からの光を他の前記ミラー基板へ反射させる反射体とを備えていることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0140】
(付記7) 同一面上に別のマイクロミラーをさらに形成した前記デバイス部と、同一面上に前記別のマイクロミラーに対応した別の一対の透明電極をさらに配置した前記上部ガラス基板と、さらに、前記マイクロミラーからの光を前記別のマイクロミラーへ反射させる反射体とを備えていることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0141】
(付記8) 前記スペーサは、はんだバンプまたは導電性マイクロビーズであることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
(付記9) 前記透明電極は、インジウム錫酸化物で形成されることを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0142】
(付記10) 前記トーションバーの厚さが、前記マイクロミラーおよび前記別のマイクロミラーの厚さよりも薄いことを特徴とする付記1乃至9のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0143】
(付記11) 金属膜が前記マイクロミラーおよび前記別のマイクロミラーの、表面および裏面の少なくとも表面に形成されていることを特徴とする付記1乃至10のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0144】
(付記12) 光波面の位相を制御する光波面制御装置の製造方法において、
第1の支持基板層および中間層が順に積層された底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板を作製する工程と、
一対の透明電極が、前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板を作製する工程と、
を有することを特徴とする光波面制御装置の製造方法。
【0145】
(付記13) 前記底面部に代わり、一対の透明電極が前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記デバイス部に別のスペーサを介して接合する下部ガラス基板を有することを特徴とする付記12記載の光波面制御装置の製造方法。
【0146】
(付記14) 前記別のスペーサに代わって下から順に積層された額縁状の第2の支持基板層と前記中間層とを介して、前記第2の支持基板層と同じ高さの突起部が一部にさらに形成され、前記突起部が前記第2の支持基板層と嵌合して、前記デバイス部と接合する前記下部ガラス基板を有することを特徴とする付記13記載の光波面制御装置の製造方法。
【0147】
(付記15) 前記マイクロミラーが直交するように配置された一対の前記ミラー基板と、一対の前記上部ガラス基板と、さらに、前記ミラー基板からの光を他の前記ミラー基板へ反射させる反射体とを備えていることを特徴とする付記12乃至14のいずれか1項に記載の光波面制御装置の製造方法。
【0148】
(付記16) 同一面上に別のマイクロミラーをさらに形成した前記デバイス部と、同一面上に前記別のマイクロミラーに対応した別の一対の透明電極をさらに配置した前記上部ガラス基板と、さらに、前記マイクロミラーからの光を前記別のマイクロミラーへ反射させる反射体とを備えていることを特徴とする付記12乃至15のいずれか1項に記載の光波面制御装置の製造方法。
【0149】
(付記17) 前記トーションバーの厚さを、前記マイクロミラーおよび前記別のマイクロミラーの厚さよりも薄く形成することを特徴とする付記12乃至16のいずれか1項に記載の光波面制御装置の製造方法。
【0150】
(付記18) 金属膜が前記マイクロミラーおよび前記他のマイクロミラーの、表面および裏面の少なくとも表面に形成されていることを特徴とする付記12乃至17のいずれか1項に記載の光波面制御装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明における光波面制御装置の概要図である。
【図2】本発明の動作原理の断面模式図である。
【図3】第1の実施の形態における光波面制御装置用上部ガラス基板の斜視模式図である。
【図4】第1の実施の形態における光波面制御装置用上部ガラス基板の透明電極のパターンの平面模式図である。
【図5】第1の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の斜視模式図である。
【図6】第1の実施の形態における光波面制御装置の断面模式図である。
【図7】第1の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の平面模式図である。
【図8】第1の実施の形態における光波面制御装置の平面模式図である。
【図9】第1の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の作製工程の要部断面模式図である。
【図10】マイクロミラーおよびトーションバーの要部断面模式図である。
【図11】第1の実施の形態における光波面制御装置を用いた空間光ビーム補正の機構図である。
【図12】第1の実施の形態における光波面制御装置を用いた光短パルス整形の機構図である。
【図13】第1の実施の形態における光波面制御装置を用いた2次元の空間光ビーム補正の機構図である。
【図14】第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置の斜視模式図である。
【図15】第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置に反射体を適用した例図である。
【図16】第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置に反射体を適用した別の例図(その1)である。
【図17】第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置に反射体を適用した別の例図(その2)である。
【図18】第2の実施の形態における光波面制御装置の概要図である。
【図19】第2の実施の形態の動作原理の断面模式図である。
【図20】第2の実施の形態における光波面制御装置の斜視模式図である。
【図21】第2の実施の形態における光波面制御装置の断面模式図である。
【図22】第2の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の作製工程の要部断面模式図(その1)である。
【図23】第2の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の作製工程の要部断面模式図(その2)である。
【図24】第2の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の作製工程の要部断面模式図(その3)である。
【図25】第2の実施の形態における光波面制御装置の別の斜視模式図である。
【図26】第2の実施の形態における光波面制御装置の別の断面模式図である。
【図27】第2の実施の形態における光波面制御装置のミラー基板の別の作製工程の要部断面模式図である。
【図28】第2の実施の形態における光波面制御装置を用いた空間光ビーム補正の機構図である。
【図29】第2の実施の形態における光波面制御装置を用いた光短パルス整形の機構図である。
【図30】第2の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置の斜視模式図である。
【図31】光波面制御装置における光波面の制御を行わない場合の模式図である。
【図32】光波面制御装置における光波面の制御を行う場合の模式図である。
【図33】光波面制御装置の従来例の斜視模式図である。
【図34】光波面制御装置の従来例の断面模式図である。
【図35】従来の光波面制御装置の作製工程の要部断面模式図である。
【図36】従来の光波面制御装置におけるマイクロミラーの各動作を表した断面模式図である。
【符号の説明】
【0152】
10 光波面制御装置
11 ミラー基板
11a 支持基板層
11b 中間層
11c 底面部
11d デバイス部
12 トーションバー
13 マイクロミラー
14 スペーサ
15 上部ガラス基板
16 透明電極
【技術分野】
【0001】
本発明は光波面制御装置およびその製造方法に関し、特に光波面の位相を制御する光波面制御装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フェムト秒光パルスの整形や空間光ビーム形状の歪みの補正、ディスプレイまたはレーザ加工などにおいて、光波面の位相を制御する光制御装置(以下、「光波面制御装置」と呼ぶ。)が利用されている。
【0003】
まず、この光波面制御装置の原理について以下に説明する。
図31は、光波面制御装置における光波面の制御を行わない場合の模式図、図32は、光波面制御装置における光波面の制御を行う場合の模式図である。
【0004】
図31、図32に示すように、光波面制御装置200には、複数のマイクロミラー200aがアレイ状に並んで設置されている。各マイクロミラー200aは、独立に上下への併進動作および時計回り・反時計回りの回転動作が可能である。
【0005】
この光波面制御装置200に対し、光が入射されると、入射される光の波面の遅れや進みに応じて、マイクロミラー200aが上下への併進動作および時計回り・反時計回りの回転動作を行う。このため、マイクロミラー200aの高さが低いところでは、反射により通過する光路が長くなるので、この部分の光の伝搬を遅らせ、位相を遅延させることができる。また、マイクロミラー200aの回転角を調整することによって、連続的な位相プロファイルを生成することが可能となる。なお、各マイクロミラー200aの併進距離や回転角度といった可変動作量が入射光の半波長以上であれば、反射による位相遅延量を2π以上とでき、任意の位相遅延を与えることが可能となる。
【0006】
以上の原理によって、図31、図32のように入射した光の波面を制御することが可能となり、光波面制御装置は様々な用途に利用されている(例えば、特許文献1参照。)。
続いて、光波面制御装置の従来例について以下に説明する。
【0007】
図33は、光波面制御装置の従来例の斜視模式図、図34は、光波面制御装置の従来例の断面模式図である。
光波面制御装置300は、図33、図34に示すように、シリコン(Si)基板301上に、櫛歯形状の電極が配置された下側櫛歯302および同様に配置された上側櫛歯303が形成されたシリコンオンインシュレータ(SOI:Silicon On Insulator)構造をなしており、上側櫛歯303および下側櫛歯302の櫛歯部にマイクロミラー300aが設置されている。
【0008】
そして、この光波面制御装置300は、マイクロミラー300aを上下に併進動作、並びに左右に回転動作をさせるため、櫛歯形状の電極をマイクロミラー300aと同一面に2個、下側に2個、合計4個配置するとともに、SOI構造のSi基板301にバイアス電圧を印加できる構成となっている。
【0009】
この光波面制御装置300は、例えば、以下のように作製することができる。
図35は、従来の光波面制御装置の作製工程の要部断面模式図である。
まず、Si基板301、酸化シリコン(SiO2)層301aおよびSi層を有するSOI構造を形成する。そして、下側櫛歯302の電極を作製するために、SOI構造のSi層に対して、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)加工を行うことによって、Si層302aが形成される(図35(A))。
【0010】
続いて、DRIE加工が施されたSi層302a上に、SiO2層303aaを挟んで陽極接合によりSi層303aが貼り合わされる。この段階では、下側櫛歯302となるSi層302aの電極は粗い加工精度でよい(図35(B))。
【0011】
続いて、貼り合わされたSi層303aを所望の厚さ(マイクロミラー300aおよび上側櫛歯303の電極の厚さ)にするために、Si層303aの表面を研磨する。
続いて、上側櫛歯303の電極およびマイクロミラー300aを作製するため、Si層303aおよびSiO2層303aaを露光およびパターニングの後に、DRIE加工し、上側櫛歯303が形成される(図35(C))。
【0012】
最後に、上側櫛歯303をマスクとしてDRIE加工を行い、高い加工精度によって、下側櫛歯302の電極を作製する(図35(D))。
以上により、光波面制御装置300が形成される。
【0013】
次に、このように形成された光波面制御装置300のマイクロミラー300aの動作について以下に説明する。
図36は、従来の光波面制御装置におけるマイクロミラーの各動作を表した断面模式図である。
【0014】
Si基板301にバイアス電圧を印加することにより、マイクロミラー300aがSi基板301側に引き寄せられ、上側櫛歯303と下側櫛歯302の中央位置までマイクロミラー300aが移動する。この位置がマイクロミラー300aの初期位置となる(図36(A))。
【0015】
この初期位置において、2個の下側櫛歯302に同一の電圧を印加すると、マイクロミラー300aが下方向に併進動作を行うことができる(図36(B))。
そして、同様に、2つの上側櫛歯303に同一の電圧を印加するとマイクロミラー300aが上方向に併進動作を行うことができる。
【0016】
また、上側櫛歯303と下側櫛歯302について、対角線状に位置する上側櫛歯303および下側櫛歯302に電圧を印加すると、マイクロミラー300aは時計回り若しくは反時計回りに回転動作を行わせることができる(図36(C))。
【0017】
以上のように、上側櫛歯303と下側櫛歯302への電圧の印加を組み合わせることによって、併進動作および回転動作を自由に実現させることができ、光波面制御装置300に入射する光波面の向きに応じて、マイクロミラー300aを自由に動作させることが可能となる。
【特許文献1】米国特許第6713367号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、上述のようにマイクロミラー300aを上側櫛歯303および下側櫛歯302に電極を印加することによって、動作させることには以下のような問題点があった。
第1に、図33、図34の従来の構造では、マイクロミラー300aを動作させるためには、図36(A)に示したように、マイクロミラー300aを初期位置に配置させるために、Si基板301にバイアス電圧を印加してマイクロミラー300aをSi基板301側に引き寄せ、マイクロミラー300aを上側櫛歯303と下側櫛歯302との間の中央位置に保つ必要がある。すなわち、光波面制御装置300を使用する際には、設置されている全てのマイクロミラー300aにバイアス電圧を印加して、マイクロミラー300aを初期位置に保たなければならない。この時、光の波面制御に寄与しないマイクロミラー300aについても常に電圧を印加する必要があり、消費電力が大きくなるという問題がある。
【0019】
第2に、図35に示したように、図33、図34の従来の光波面制御装置300の作製では、Si層302aのDRIE加工後に、Si層302a上に、SiO2層303aaを介して貼り合わされたSi層303aを研磨し、更にDRIE加工を行った。このように、従来の光波面制御装置300の作製には、非常に複雑な工程を経るため、作製に多大な工程数を要するとともに、装置作製の歩留まりが低くなるという問題がある。
【0020】
特に、従来の光波面制御装置300の作製工程において、DRIE加工によって、上側櫛歯303をマスクとして下側櫛歯302を作製する際、上側櫛歯303の側壁粗さが下側櫛歯302の加工精度に影響するため、下側櫛歯302の側壁が(上側櫛歯303の側壁よりも)更に粗くなる可能性が大きくなる。下側櫛歯302または上側櫛歯303の側面が粗くなると、マイクロミラー300aを動作させるために電圧を印加させた際に、マイクロミラー300aが円滑に動作しないという問題もある。
【0021】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、装置の作製歩留まりおよび消費電力が改善された光波面制御装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明では上記課題を解決するために、光波面の位相を制御する光波面制御装置10において、図1に示すように、支持基板層11aおよび額縁状の中間層11bが順に積層された底面部11cと、底面部11c上に形成され、内壁にトーションバー12を介してマイクロミラー13が一体的に形成され、上面にスペーサ14を備えるデバイス部11dとを有するミラー基板11と、一対の透明電極16が、マイクロミラー13の両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、スペーサ14を介してミラー基板11と接合する上部ガラス基板15と、を有することを特徴とする光波面制御装置10が提供される。
【0023】
このような光波面制御装置によれば、支持基板層および中間層が順に積層された底面部と、底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、一対の透明電極が、マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、スペーサを介してミラー基板と接合する上部ガラス基板と、が形成されるようになる。
【0024】
また、本発明では上記課題を解決するために、光波面の位相を制御する光波面制御装置の製造方法において、第1の支持基板層および中間層が順に積層された底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板を作製する工程と、一対の透明電極が、前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板を作製する工程と、を有することを特徴とする光波面制御装置の製造方法が提供される。
【0025】
このような光波面制御装置によれば、支持基板層および中間層が順に積層された底面部と、底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板が作製され、一対の透明電極が、マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、スペーサを介してミラー基板と接合する上部ガラス基板が作製されるようになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、支持基板層および中間層が順に積層された底面部と、底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、一対の透明電極が、マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、スペーサを介してミラー基板と接合する上部ガラス基板と、を形成するようにした。これにより、マイクロミラーの併進動作および回転運動を実現し、消費電力を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されない。
まず、本発明の概要について説明し、その後に、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明における光波面制御装置の概要図である。
光波面制御装置10は、支持基板層11aおよび中間層11bからなる底面部11cと、内壁に一体的に形成されたトーションバー12を介してマイクロミラー13を備えるデバイス部11dと、が順に積層されたミラー基板11と、透明電極16が両端に長手方向に設置された上部ガラス基板15とが、デバイス部11dの縁に形成されたスペーサ14を介して、結合されることによって構成される。
【0029】
次に、本発明の動作原理について、図2を用いて以下に説明する。
図2は、本発明の動作原理の断面模式図である。なお、図2では、トーションバー12およびマイクロミラー13の長手方向に対して直交する方向の断面図であり、デバイス部11dの側壁、中間層11bおよびスペーサ14の記載は省略している。
【0030】
光波面制御装置10では、上部ガラス基板15に設置された2つの透明電極16に印加する電圧Vにより、マイクロミラー13の併進動作および回転動作が実現できる。例えば、上部ガラス基板15に設置された2つの透明電極16に電圧Vを印加すると、図2(A)に示すように、印加された電圧Vによってマイクロミラー13は引力を受け、そして、上方への併進動作を行う。一方、片方の透明電極16に電圧Vを印加すると、図2(B)に示すように、電圧Vが印加された透明電極16側のマイクロミラー13が引力を受けて、回転動作を行う。さらに、この回転動作に加えて、支持基板層11aに、電圧Vを印加すると、図2(C)に示すように、マイクロミラー13は支持基板層11aからも引力を受けて、回転動作を行いながら、下方への併進動作を伴わせることができる。
【0031】
以上のように、マイクロミラー13の併進動作および回転運動を実現させるために、従来技術のように初期位置を保つために支持基板層11aにバイアス電圧を印加する必要がなくなり、従来技術と比較して消費電力を削減することができる。
【0032】
次に、第1の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態は、マイクロミラーをアレイ状に複数並べて構成される光波面制御装置を例にあげて以下に説明する。
【0033】
図3は、第1の実施の形態における光波面制御装置用上部ガラス基板の斜視模式図、図4は、第1の実施の形態における光波面制御装置用上部ガラス基板の透明電極のパターンの平面模式図、図5は、第1の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の斜視模式図、図6は、第1の実施の形態における光波面制御装置の断面模式図、図7は、第1の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の平面模式図、図8は、第1の実施の形態における光波面制御装置の平面模式図である。なお、便宜上、実際のサイズと異なる記載が部分的にある。
【0034】
図3に示すように、光波面制御装置用上部ガラス基板20は、ガラス基板22に、電極パッド23、マイクロミラー電位用配線24、インジウム錫酸化膜(ITO)電極25、スペーサ貼付位置26およびフレキシブル基板21により構成されている。なお、光波面制御装置用上部ガラス基板20を、後に説明する光波面制御装置用ミラー基板30にスペーサ36を介して接合させる時には、図3に示すITO電極25が光波面制御装置用ミラー基板30と対向するようにして接合させる。一方、ガラス基板22は、縦(ITO電極25の長手方向。以下同様。)を約30mm、横を約20mm、ITO電極25は、縦を約300μmから約600μm、横を約3μmから約10μm、厚さを約0.1μmとしている。
【0035】
ガラス基板22に、図4に示すように、透明電極のパターンを利用して、ITOを塗布して、マスク露光およびエッチングにより容易にITO電極25を形成することができる。なお、ITO電極25は、透明であるだけでなく、配線としての機能も有する。そして、後に形成されるマイクロミラー35、1つに対しその両端に重なるように、2つのITO電極25を配置するようにしている。なお、マイクロミラー35の幅が小さい場合など、マイクロミラー35の両端に重なるようにITO電極25を設置すると、制御したいマイクロミラー35の隣のマイクロミラーに電圧を印加してしまって動かしてしまうという現象が起こることがある。このような現象を避けるためには、マイクロミラー35の両端もしくは、マイクロミラー35の両端からやや内側と重なるようにして、ITO電極25を形成するようにすればよい。そして、このITO電極25はガラス基板22の両端の電極パッド23と接続してあり、また、電極パッド23に、外部の制御回路から電圧を入力することができるフレキシブル基板21が実装されている。したがって、外部からの制御による電圧がフレキシブル基板21を介して電極パッド23、そして、ITO電極25に電圧を印加して、マイクロミラー35の併進動作および回転動作を実現することができる。
【0036】
一方、図5に示すように、光波面制御装置用ミラー基板30は、Si基板31、SiO2層32およびSi層33により構成されるSOI構造であり、Si層33の内壁に一体的に形成されたトーションバー34を介して複数のマイクロミラー35と、はんだバンプにより構成されるスペーサ36が縁に形成されている。なお、各マイクロミラー35の上には金属膜(不図示。)が形成されている。また、SOI構造は、縦を約3mm、横を約3mm、Si基板31、SiO2層32およびSi層33の厚さをそれぞれ、約400μm、約3μmおよび約10μm、トーションバー34は、縦を約30μm、横を約2μm、厚さを約2μm、マイクロミラー35は、縦を約300μmから約600μm、横を約10μmから約30μm、厚さを約10μm、スペーサ36は厚さを約3μmとしている。
【0037】
スペーサ36は、光波面制御装置用上部ガラス基板20と光波面制御装置用ミラー基板30との間のスペーサとして、光波面制御装置用上部ガラス基板20のマイクロミラー電位用配線24上のスペーサ貼付位置26に接合される。そして、スペーサ36は、金(Au)−錫(Sn)系などのはんだバンプにより構成されており、電極パッド23と接続されたマイクロミラー電位用配線24からマイクロミラー35への電位をSi基板31に印加するための配線としての機能も兼ねている。
【0038】
なお、マイクロミラー35の反射率を高めたい場合、マイクロミラー35の表面に金属膜を形成することにより、その反射率を高めることが可能となる。
上記の光波面制御装置用上部ガラス基板20と、光波面制御装置用ミラー基板30とを、スペーサ36を介して接合することによって、図6に示すように、光波面制御装置40が形成される。なお、図6は、光波面制御装置用ミラー基板30のA−A’面の断面図であり、マイクロミラー35上に、金属膜37を形成した場合を示している。
【0039】
そして、光波面制御装置用上部ガラス基板20と光波面制御装置用ミラー基板30とを接合する際は、図7に示すように、光波面制御装置用ミラー基板30上に、あらかじめ位置合わせマーカ41をパターニングしておく。そして、図8に示すように、光波面制御装置用ミラー基板30の位置合わせマーカ41と、光波面制御装置用上部ガラス基板20の同様の位置合わせマーカ(不図示。)と重なるように位置調整を行って、光波面制御装置用上部ガラス基板20と光波面制御装置用ミラー基板30とを接合する。
【0040】
なお、光波面制御装置用上部ガラス基板20と光波面制御装置用ミラー基板30とを接合して、Si基板31の電位を外部から設定するために、Si基板31の裏面に、例えば図6に示すように、銀ペースト38を塗布し、同箇所とガラス基板22の電極パッド(図6には不図示。)をワイヤボンディング45で接続している。
【0041】
以上のような光波面制御装置40は例えば以下の方法によって作製することができる。
図9は、第1の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の作製工程の要部断面模式図である。なお、図9は、図5におけるA−A’面およびB−B’面における断面図を示している。
【0042】
まず、Si層33a、SiO2層32aおよびSi基板31により構成されるSOI構造を形成する(図9(A):A−A’面およびB−B’面の断面図である。)。
続いて、このSOI構造のSi層33aの表面にAu/クロム(Cr)にて、メタライズを行って、金属膜37aを形成する(図9(B):A−A’面およびB−B’面の断面図である。)。
【0043】
続いて、メタライズを行ったSOI構造に対し、マイクロミラー35形成用のパターンのマスクを用いて露光し、DRIEを行うことにより金属膜37aの一部を除去し、金属膜37を形成する(図9(C):B−B’面の断面図である。)。
【0044】
続いて、さらに、金属膜37をマスクとして、Si層33aをエッチングし、Si層33を形成する(図9(D):B−B’面の断面図である。)。
続いて、Si層33の形成後、例えば、フッ化水素(HF)を用いて、SiO2層32aを溶解し、SiO2層32が形成される(図9(E):B−B’面の断面図である)。
【0045】
SiO2層32が形成されると同時に、アレイ状のマイクロミラー35およびトーションバー34が形成される(図9(E’):A−A’面の断面図である)。
以上の工程によって形成された光波面制御装置用ミラー基板30に対して、ITO電極25、電極パッド23などが形成された光波面制御装置用上部ガラス基板20を、はんだバンプによって構成されるスペーサ36を介して接合すれば、これまで説明してきたような併進動作および回転動作が可能な光波面制御装置40を形成することができる。
【0046】
以上のように光波面制御装置40の作製工程を、図35の従来の光波面制御装置の作製工程と比較すると、DRIE加工の回数が減ることや、マイクロミラー35とトーションバー34を同時に形成することができることなど、作製工程数を大幅に削減でき、作製工程を簡素化でき、また、図35の従来の光波面制御装置300の作製工程が必要としたような精密加工を必要としないために、本発明による光波面制御装置40は完成度が高まり、完成した光波面制御装置40の信頼性や、歩留まりの向上に繋がる。
【0047】
図10は、マイクロミラーおよびトーションバーの要部断面模式図である。
図10は、トーションバー34と一体的に形成されたマイクロミラー35との断面を模式的に示したものである。なお、トーションバー34が一体的に形成されたSi層33などの記載については省略している。
【0048】
また、既述の通り、本発明において形成されるトーションバー34は、図10(A)に示すように、SOI構造をエッチングすることによって、マイクロミラー35と同時に形成されるため、トーションバー34とマイクロミラー35は同じ厚さとなる。なお、トーションバー34のばね定数は、その厚さの3乗に比例して硬くなることが分かっている。このため、一定の駆動電圧に対する併進距離や回転角度といった可変動作量を大きくするためには、図10(B)に示すように、厚さを薄くしたトーションバー34aを形成することが望ましい。しかし、本発明の作製工程では、トーションバー34とマイクロミラー35の厚さは等しく形成されるので、トーションバー34の厚さを薄くすると、マイクロミラー35の厚さも薄くなる。ところが、厚さが薄いマイクロミラー35は長手方向に反りやすくなる性質がある。このため、マイクロミラー35の表面を平坦に保つためには、マイクロミラー35はある程度の厚さが必要となる。そこで、マイクロミラー35およびトーションバー34を形成後、改めて、トーションバー34をマイクロミラー35の厚さよりも薄く加工することによって、マイクロミラー35の反りを抑制し、かつ可変動作量を大きくすることができる。
【0049】
また、光波面制御装置40を実際に使用する際には、外部の制御回路などとの電気接続が必要であり、また、ゴミ付着の防止等のためのパッケージングを行うことが必要である。本発明の構成では、ガラス基板22をパッケージング用の窓と兼用できるため、従来例と比較して簡素な光波面制御装置40を実現できる。
【0050】
以下に、第1の実施の形態を利用した実施例について、図面を用いて説明する。
[実施例1−1]
実施例1−1では、被制御光として1次元の空間光ビームの場合を例にあげ、図11を用いて以下に説明する。
【0051】
図11は、第1の実施の形態における光波面制御装置を用いた空間光ビーム補正の機構図である。
空間光ビーム補正機構50において、左上の入力口から、入力された入力空間光ビーム51が、ビームスプリッタ53aを通過して、本発明の概要で説明した光波面制御装置40に入射される。
【0052】
入射された入力空間光ビーム51は、光波面制御装置40において、光波面が制御されて反射し、ビームスプリッタ53aにより下方に進む。
そして、下方に進む制御された入力空間光ビーム51はビームスプリッタ53aaによって、出力空間光ビーム52として出力されると同時に波面センサ54によって検出される。
【0053】
波面センサ54によって検出された出力空間光ビーム52の信号は制御回路55に送られる。そして、制御回路55は、所望の空間光ビーム形状になるように光波面制御装置40を制御し、空間光ビームの光波面が補正されて、反射される。このようにして、所望の空間光ビーム形状が得られるまで、このフィードバックが繰り返される。
【0054】
空間光ビームは、例えば、レンズや回折格子などの光学素子を通過するとともに、ビームプロファイルが理想的なガウシアンビームから外れ、光ファイバなどへの統合効率が劣化するなどの問題がある。
【0055】
この問題に関して、以上のような光波面の制御を行うことによって、入力空間光ビームを理想的なガウシアンビームに近づかせることが可能となり、光ファイバなどへの統合効率の劣化を抑えることが可能となる。
【0056】
[実施例1−2]
実施例1−2では、被制御光として1次元の光短パルスの場合を例にあげ、図12を用いて以下に説明する。
【0057】
図12は、第1の実施の形態における光波面制御装置を用いた光短パルス整形の機構図である。
光短パルス整形機構50aは、実施例1−1と同様に、左上の入力口からの入力光短パルス51aが、ビームスプリッタ53aを通過し、回折格子56により分光され、光波面制御装置40に入射され、そこで各周波数成分の位相がシフトされる。
【0058】
そして、位相がシフトされた入力光短パルス51aは、再び、回折格子56において、任意の光短パルスとして合波され、ビームスプリッタ53aにより反射して、下方に進む。
【0059】
そして、下方に進む合波された入力光短パルス51aはビームスプリッタ53aaによって、出力光短パルス52aとして出力されると同時に波面センサ54によって検出される。
【0060】
波面センサ54によって検出された出力光短パルス52aの信号は制御回路55に送られる。そして、制御回路55は、所望の光短パルス形状になるように光波面制御装置40を制御し、反射される光短パルスの光波面が整形される。このようにして、所望の光短パルス形状が得られるまで、このフィードバックが繰り返される。
【0061】
以上により、実施例1−1と同様に、入力光短パルスを理想的なガウシアンビームに近づかせることが可能となり光ファイバなどへの統合効率の劣化を抑えることが可能となる。
【0062】
[実施例1−3]
実施例1−1および実施例1−2では1次元の空間光ビームの補正および1次元の光短パルスの整形の場合を例にあげて説明した。これに対し、実施例1−3では被制御光として2次元の空間光ビームの場合を例にあげ、図13を用いて以下に説明する。
【0063】
図13は、第1の実施の形態における光波面制御装置を用いた2次元の空間光ビーム補正の機構図である。
空間光ビーム補正機構50bでは、2つの光波面制御装置40a,40bを、それぞれのマイクロミラーの長手方向が直交するように設置し、さらに、反射ミラー57を光波面制御装置40a,40bの上面に設置することにより構成される。
【0064】
このように構成されることによって、まず、光波面制御装置40aに入射した入射空間光ビーム51bの1次元方向の光波面が制御されて反射される。
次に、光波面制御装置40aにおいて反射された空間光ビームは、反射ミラー57で反射され、光波面制御装置40bに入射する。
【0065】
光波面制御装置40bに入射された空間光ビームは、残りの1次元方向の光波面が制御されて、出射空間光ビーム52bとして出射され、2次元の空間光ビームの光波面を制御することが可能となる。
【0066】
[実施例1−4]
実施例1−1および実施例1−2では、光波面制御装置用ミラー基板30において、同方向にそろった同一の複数のマイクロミラー35によって構成されるマイクロミラーアレイが1組形成された場合、そして、実施例1−3では、光波面制御装置40を2組利用した場合を例にして説明した。これに対し、実施例1−4では、光波面制御装置用ミラー基板において、同様に2組のマイクロミラーアレイが1つに形成された場合を例にあげ、図14を用いて以下に説明する。
【0067】
図14は、第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置の斜視模式図である。
光波面制御装置60は、光波面制御装置用上部ガラス基板60aと光波面制御装置用ミラー基板60bとから構成されている。なお、光波面制御装置用上部ガラス基板60aを、光波面制御装置用ミラー基板60bにスペーサ66aを介して接合させる時には、図14に示すITO電極65が光波面制御装置用ミラー基板60bと対向するようにして接合させる。
【0068】
光波面制御装置用上部ガラス基板60aは、ガラス基板62に、電極パッド63,63a、マイクロミラー電位用配線64、ITO電極65、スペーサ貼付位置66およびフレキシブル基板61により構成されている。なお、電極パッド63aは、Si基板67cから電圧を印加する際に使用される。
【0069】
光波面制御装置用ミラー基板60bは、Si基板67c、額縁上に形成されたSiO2層67bおよびSi層67aにより構成されるSOI構造に、Si層67aの内壁に一体的に形成されたトーションバー68aを介して複数のマイクロミラー68およびスペーサ66aが形成されている。
【0070】
そして、光波面制御装置用ミラー基板60bには、2組のマイクロミラーアレイ62a,62bが互いに直交するように形成されており、光波面制御装置用上部ガラス基板60aには、2組のマイクロミラーアレイ62a,62bのそれぞれのマイクロミラー68に対して、2組の電極群65a,65bが形成されている。
【0071】
このような2組のマイクロミラーアレイ62a,62bを有する光波面制御装置60の利用についてさらに以下に説明する。
図15は、第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置に反射体を適用した例図である。なお、図15では、光波面制御装置の光波面制御装置用上部ガラス基板の記載については省略しており、図15中の破線は光の道筋を表している。
【0072】
図15に示すように、2組のマイクロミラーアレイ62a,62bを備えて、1つの反射体63が設置された光波面制御装置60cでは、マイクロミラーアレイ62aは、入射した入射光の1次元方向の光波面を制御して、反射体63に反射させる。
【0073】
そして、反射体63から反射された入射光は、マイクロミラーアレイ62bにおいて、残りの1次元方向の光波面が制御されて、出射光として出射され、2次元の空間光ビームの光波面を制御することが可能となる。
【0074】
また、反射体の他の構成例について以下に説明する。
図16は、第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置に反射体を適用した別の例図である。なお、図16では、光波面制御装置の光波面制御装置用上部ガラス基板の記載については省略しており、図16中の破線は光の道筋を表している。
【0075】
図16には反射体63b,63cとしてハーフミラーを利用した場合を例にあげており、ハーフミラーはマイクロミラーアレイ62a,62bの上面に、光波面制御装置用ミラー基板60bと45度および135度を成して配置されている。光波面制御装置60dの鉛直方向から入射された光は、マイクロミラーアレイ62aに到達し、1次元の光波面が制御されて反射される。そして、この反射光は、再び反射体63bにより反射されて進行方向が90度変化して、反射体63cに到達し、同様にマイクロミラーアレイ62bにより残りの1次元の光波面が制御される。その結果、実施例1−3と同様に、入射光に対して2次元的に光波面が制御された出射光を得ることができる。このような方法による入射光の波面の2次元的な制御は、入射光および出射光が光波面制御装置用ミラー基板60bの鉛直方向となるため、光学部品の配置や光軸の調整を容易に行うことができる。
【0076】
図17は、第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置に反射体を適用した別の例図である。なお、図17では、光波面制御装置の光波面制御装置用上部ガラス基板の記載については省略しており、図17中の破線は光の道筋を表している。
【0077】
光波面制御装置60eのマイクロミラーアレイ62a,62bが長手方向に平行に形成されており、それらの上面に、像を90度回転させることができるプリズム63fを挟んで二つの反射体63d,63eを設定している。光波面制御装置60eの鉛直方向から入射された光は、マイクロミラーアレイ62aに到達し、1次元の光波面の制御が行われて反射される。そして、この反射光は、再び反射体63dにより更に反射されて、進行方向が90度変化し、プリズム63fを通過し、像が90度回転した反射光が反射体63eに到達し、同様にマイクロミラーアレイ62bにより残りの1次元の光波面の制御が行われる。この結果、入射光に対して2次元的に光波面が制御された出射光を得ることができる。このような方法による入射光の波面の2次元的な制御でも、入射光および出射光がミラー基板の鉛直方向となるため、光学部品の配置や光軸の調整を容易に行うことができる。
【0078】
以上、説明したように、本発明によって、従来例と比較して、非常に簡易な作製工程によって、併進動作および回転動作を行うことが可能で、消費電力が少ない光波面制御装置を得ることができる。また、マイクロミラーアレイを2組用いることで、光波面を2次元的に制御することができる。
【0079】
次に、第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態の光波面制御装置では、SOI構造にマイクロミラーを配列させたミラー基板と、マイクロミラーに対応する電極が形成されたガラス基板とが備えられていた。
【0080】
これに対して、第2の実施の形態では、ミラー基板をガラス基板で挟むことで光波面制御装置を構成させる場合を例にあげて説明する。
図18は、第2の実施の形態における光波面制御装置の概要図である。
【0081】
光波面制御装置70は、内壁に一体的に形成されたトーションバー72を介してマイクロミラー73を備えたミラー基板71が、一対の透明電極76が両端に長手方向に設置された上部ガラス基板75と、同様に透明電極76aが設置された下部ガラス基板75aとで、ミラー基板71の縁に形成されたスペーサ74を介して、挟まれることによって構成されている。
【0082】
次に、この動作原理について、図19を用いて以下に説明する。
図19は、第2の実施の形態の動作原理の断面模式図である。なお、図19では、ミラー基板71の側壁部およびスペーサ74の記載は省略している。
【0083】
まず、光波面制御装置70の上部ガラス基板75に設置された2つの透明電極76に電圧Vを印加し、下部ガラス基板75aに設置された2つの透明電極76aには印加しない場合(図19(A))、マイクロミラー73は、トーションバー72を支点として上部ガラス基板75側への併進動作を行う。
【0084】
次に、上部ガラス基板75の透明電極76の1つに電圧Vを印加し、下部ガラス基板75aの、印加された透明電極76と対角線上にある透明電極76aに同様に電圧Vを印加する場合(図19(B))、マイクロミラー73は、偶力(大きさが同一で、反対向きの力)がトーションバー72を支点として作用し、トルクのみが発生し、(併進が伴わない)純粋な回転動作を行う。
【0085】
そして、上部ガラス基板75の透明電極76の1つに電圧Vを印加し、下部ガラス基板75aの2つの透明電極76aに電圧Vを印加する場合(図19(C))、マイクロミラー73はトーションバー72を支点として回転動作とともに、下部ガラス基板75a側への併進動作を同時に行う。
【0086】
以上のように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様にマイクロミラーにトーションバーを支点として、回転動作および併進動作を自由に実現させることができるだけでなく、第1の実施の形態と異なり、波面補正に寄与しないマイクロミラーに対しては電圧を印加する必要がなく、第1の実施の形態の光波面制御装置と比較してさらに消費電力を削減することができる。
【0087】
次に、このようなマイクロミラーが複数からなる1組のマイクロミラーアレイが形成された場合を例にして以下に説明する。
図20は、第2の実施の形態における光波面制御装置の斜視模式図、図21は、第2の実施の形態における光波面制御装置の断面模式図である。なお、第1の実施の形態と同じ構成のものは特に断りが無い限り同じ符号とする。また、上部ガラス基板81を、ミラー基板82にスペーサ36を介して接合させる時には、図20に示すITO電極25がミラー基板82と対向するようにして接合させる。
【0088】
光波面制御装置80は、図20に示すように、上部ガラス基板81と下部ガラス基板83とがスペーサ36を介して挟まれるミラー基板82によって構成される。
上部ガラス基板81は、第1の実施の形態と同様に、ガラス基板22に、電極パッド23、マイクロミラー電位用配線24、ITO電極25、スペーサ貼付位置26、貫通電極84およびフレキシブル基板21により構成されている。なお、フレキシブル基板21は貫通電極84と接触するように実装されている。
【0089】
下部ガラス基板83は、上部ガラス基板81と同様に、ガラス基板22aに、マイクロミラー電位用配線24a、ITO電極25a、スペーサ貼付位置26a、貫通電極84aおよびフレキシブル基板21aにより構成されている。なお、フレキシブル基板21aは貫通電極84aと接触するように実装されている。
【0090】
ミラー基板82は、Si層33の内壁に一体的に形成されたトーションバー34を介して複数のマイクロミラー35およびSi層33の両側に突出したスペーサ36が形成されている。なお、各マイクロミラー35の上には金属膜(不図示。)が形成されている。
【0091】
また、フレキシブル基板21,21aは、その厚さは数十〜数百μmであるのに対して、マイクロミラー35表面とITO電極25,25aとの対向距離は、一般に数μm程度であって、フレキシブル基板21,21aの厚さに比べて1、2桁小さい。このため、ミラー基板82がスペーサ36を介して上部ガラス基板81および下部ガラス基板83によって挟まれる場合には、図21(A)、図21(B)に示すように、貫通電極84,84aによって接続されるフレキシブル基板21,21a同士を外側に向けて設置させるようにする。これにより、ITO電極25,25aとマイクロミラー35の表面とがフレキシブル基板21,21aの厚み以下に近付けることができ、所望のマイクロミラー35の動作を実現させることができる。
【0092】
また、スペーサ36は、上部ガラス基板81および下部ガラス基板83とミラー基板82との間のスペーサとして、上部ガラス基板81および下部ガラス基板83のマイクロミラー電位用配線24,24a上のスペーサ貼付位置26,26aに接合される。そして、スペーサ36は、Au−Sn系などのはんだバンプもしくは導電性マイクロビーズ等により構成されており、電極パッド23,23aと接続されたマイクロミラー電位用配線24,24aからマイクロミラー35への電位をSi層33に印加するための配線としての機能も兼ねている。なお、スペーサ36として導電性を有さないマイクロビーズ等を用いる場合は、下部ガラス基板83上に穴を形成しておき、その穴からプローブ等を介してマイクロミラー35面の電位を設定することができる。
【0093】
なお、マイクロミラー35の反射率を高めたい場合、図21(A)に示すように、マイクロミラー35の表面に、Au/Crなどによって金属膜85を形成することにより、その反射率を高めることが可能となる。また、図21(B)に示すように、マイクロミラー35の表面に金属膜85を形成するとともに、マイクロミラー35の裏面にも表面と同様に金属層85aを形成することにより、応力が表裏で打ち消し合い、マイクロミラー35の反りを解消させることができるという効果がある。
【0094】
以上のような光波面制御装置80は、例えば、以下の方法によって作製することができる。
図22、図23、図24は、第2の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の作製工程の要部断面模式図である。なお、図22、図23、図24は、図20のミラー基板82のA−A’面における断面図を示している。
【0095】
まず、Si層33a、SiO2層32bおよびSi基板31aにより構成されるSOI構造を形成する。なお、Si層33a、SiO2層32bおよびSi基板31aの厚さはそれぞれ、約100μm、約3μmおよび約100μmとする。
【0096】
そして、このSOI構造のSi層33aの表面の一部にAu/Crを用いてメタライズを行って、金属膜85を形成する(図22(A))。
メタライズを行ったSOI構造に対し、Si層33aの一部および金属膜85上にフォトレジストを形成し、露光などを行って、マイクロミラーパターンが描かれたフォトレジストパターン86を形成する(図22(B))。
【0097】
さらに、フォトレジストパターン86の開口部に別のフォトレジストパターン86aを同様にして形成する(図22(C))
マイクロミラーパターンが描かれたフォトレジストパターン86,86aをマスクとして、DRIEを行うことによって、Si層33aの一部を除去し、Si層33aaを形成する(図23(A))。
【0098】
Si層33aaの形成後、再びDRIEを行って、Si層33aaをエッチングし、Si層33を形成する(図23(B))。
Si層33の形成後、フォトレジストパターン86を除去して、HFを用いて、SiO2層32bの一部を溶解させる。なお、ここまでの工程にて、第1の実施の形態の光波面制御装置用ミラー基板30を形成することができる(図23(C))。
【0099】
さらに、HFにてSiO2層32bを溶解し、Si基板31aを除去すると、ミラー基板82が形成される(図24(A))。
ミラー基板82が形成されると、スペーサ36を介して、下部ガラス基板83を貼り合わせる(図24(B))。
【0100】
最後に、同様に、スペーサ36を介して、上部ガラス基板81を貼り合わせて、光波面制御装置80が完成する(図24(C))。
以上の工程のように、ミラー基板82の形成後、上部ガラス基板81および下部ガラス基板83を貼り合わせることによって容易に光波面制御装置80を形成することができる。
【0101】
一方、マイクロミラー35が形成されるSi層33の厚さが約100μm以上あれば、上記のような作製方法でよいが、厚さが100μmよりも薄い場合は、取り扱いが難しくなるために、上記のような作製方法では、Si層33を破損させる恐れがある。そこで、次のような構造にすることで、光波面制御装置を作製することができる。
【0102】
図25は、第2の実施の形態における光波面制御装置の別の斜視模式図、図26は、第2の実施の形態における光波面制御装置の別の断面模式図である。なお、図20と同じ構成のものは特に断りが無い限り同じ符号とする。また、上部ガラス基板81を、ミラー基板82aにスペーサ36を介して接合させる時には、図25に示すITO電極25がミラー基板82aと対向するようにして接合させる。
【0103】
光波面制御装置80aは、図25、図26に示すように、上部ガラス基板81がスペーサ36を介し、下部ガラス基板83aが突起部83bを嵌合させて、ミラー基板82aと接合して、構成される。
【0104】
上部ガラス基板81は、図20と同様に、ガラス基板22に、電極パッド23、マイクロミラー電位用配線24、ITO電極25、スペーサ貼付位置26、貫通電極84およびフレキシブル基板21により構成されている。なお、フレキシブル基板21は貫通電極84と接触するように実装されている。
【0105】
下部ガラス基板83aは、図20と同様に、ガラス基板22aに、マイクロミラー電位用配線24a、ITO電極25a、貫通電極84aおよびフレキシブル基板21aにより構成されている。なお、フレキシブル基板21aは貫通電極84aと接触するように実装されている。さらに、光波面制御装置80と異なり、突起部83bが設置されており、ITO電極25aは突起部83bに沿うように形成されている。
【0106】
ミラー基板82aは、Si層33の内壁に一体的に形成されたトーションバー34を介して複数のマイクロミラー35およびスペーサ36が形成されている。さらに、SiO2層32と、SiO2層32と同様に内側が除去された額縁状のSi基板31aが形成されている。なお、各マイクロミラー35の上には金属膜(不図示。)が形成されている。
【0107】
そして、図26に示すように、このような光波面制御装置80aの断面図によれば、下部ガラス基板83aは、新たに設置した突起部83bがミラー基板82aの額縁状のSi基板31aに嵌合して、接合することがわかる。
【0108】
以下に、光波面制御装置80aの作製方法について図を用いて説明する。なお、光波面制御装置80aは、光波面制御装置80の作製方法の図22から図23(B)までは同じ工程であるために、図23(B)に続いて説明する。ただし、光波面制御装置80aでは、図22、図23中のSi基板31a、SiO2層32bおよびSi層33の厚さを、それぞれ約100μm、約3μmおよび約10μmとする。
【0109】
図27は、第2の実施の形態における光波面制御装置のミラー基板の別の作製工程の要部断面模式図である。
図23(B)に続いて、Si層33の形成後、再びDRIEにて、Si基板31aの一部をエッチングする(図27(A))。
【0110】
Si基板31aの一部のエッチング後、フォトレジストパターン86を除去して、HFを用いて、SiO2層32bの一部を溶解して、ミラー基板82を形成する(図27(B))。
【0111】
そして、一部に突起部83bを有する下部ガラス基板83aを張り合わせる。なお、突起部83bの高さは、Si基板31aの高さと等しくする(図27(C))。
最後に、スペーサ36を介して、同様に、上部ガラス基板81を張り合わせて、光波面制御装置80aが完成する(図27(D))。
【0112】
このような作製工程によって、マイクロミラーが形成された層の厚さが薄いために、取り扱いが難しい場合でも、光波面制御装置80aを作製することが可能となる。
また、第2の実施の形態の光波面制御装置80,80aでも、第1の実施の形態と同様に、上部ガラス基板81、下部ガラス基板83,83aおよびミラー基板82,82aにそれぞれマーカを形成しておき、マーカの位置合わせを行いながら一体化して、マイクロミラー35とITO電極25との相対位置を調整することによって実装することが可能である。そのため、従来の光波面制御装置と比較して極めて簡易なプロセスで作製することが可能である。なお、光波面制御装置80aの突起部83bでは、顕微鏡でITO電極25を観察して位置合わせを行いながら張り合わせる。
【0113】
また、上部ガラス基板81と下部ガラス基板83,83aとで同一の材料を用いることができるため、量産効果によるコストダウンも見込め、かつ、上部ガラス基板81および下部ガラス基板83,83aとしてはSi基板等と比較して安価なガラス基板を用いることができるため、光波面制御装置の低コスト化も実現できる利点がある。
【0114】
さらに、第1の実施の形態と同様に、光波面制御装置80,80aを実際に使用する際には、外部の制御回路との電気接続、ゴミ付着の防止等を行うためにパッケージングを行う必要があるが、本発明の構成では、ガラス基板をパッケージング用の窓と兼用できるため、従来例と比較して簡素なデバイスを実現できる。
【0115】
以下に、第2の実施の形態を利用した実施例について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施例では光波面制御装置80を利用した場合について説明するが、光波面制御装置80aを利用しても同様に実施することができる。
【0116】
[実施例2−1]
実施例2−1では、被制御光として1次元の空間ビームの場合を例にあげ、図28を用いて以下に説明する。
【0117】
図28は、第2の実施の形態における光波面制御装置を用いた空間光ビーム補正の機構図である。
空間光ビーム補正機構90において、左上の入力口から、入力された入力空間光ビーム91が、ハーフミラー93を通過して、本発明の概要で説明した光波面制御装置80に入射される。
【0118】
入力空間光ビーム91が入射された光波面制御装置80の下部ガラス基板83側からモニタ光94を入射して、波面センサ95が、その反射光をモニタリングすることによって、光波面制御装置80のマイクロミラー35の傾斜角および併進量の情報を得ることができる。
【0119】
そして、制御回路96は波面センサ95のマイクロミラー35の傾斜角および併進量の情報から所望の光波面の形状が得られるまで光波面制御装置80のマイクロミラー35を制御し、入力空間光ビーム91の光波面が補正される。このようにして、所望の空間光ビームの形状が得られるまで、このフィードバックが繰り返される。
【0120】
入力空間光ビーム91が制御されて所望の光波面となった出力空間光ビーム92は、再び、ハーフミラー93により下方に進んで、出力される。
以上のような光波面の制御を行うことによって、入力空間光ビームを理想的なガウシアンビームに近づかせることが可能となる。
【0121】
[実施例2−2]
実施例2−2では、被制御光として1次元の光短パルスの場合を例にあげ、図29を用いて以下に説明する。
【0122】
図29は、第2の実施の形態における光波面制御装置を用いた光短パルス整形の機構図である。
光短パルス光整形機構90aは、実施2−1と同様に、左上の入力口からの入力光短パルス91aが、ハーフミラー93aを通過し、回折格子97により分光され、光波面制御装置80に入射される。
【0123】
入力光短パルス91aが入射された光波面制御装置80の下部ガラス基板83側からモニタ光94を入射して、波面センサ95が、その反射光をモニタリングすることによって、光波面制御装置80のマイクロミラー35の傾斜角および併進量の情報を得ることができる。
【0124】
そして、制御回路96は波面センサ95のマイクロミラー35の傾斜角および併進量の情報から所望の光波面の形状が得られるように、光波面制御装置80のマイクロミラー35を制御し、入力光短パルス91aの各周波数成分の位相がシフトされる。このようにして、所望の入力光短パルス91aの形状が得られるまで、このフィードバックが繰り返される。
【0125】
入力光短パルス91aが制御されて所望の光波面となった出力光短パルス92aは、再び、回折格子97において合波され、ハーフミラー93aにより下方に進んで、出力される。
【0126】
以上により、実施例2−1と同様に、入力光短パルスを理想的なガウシアンビームに近づかせることが可能となる。
[実施例2−3]
実施例2−1および実施例2−2では、光波面制御装置80のミラー基板82において、同方向にそろった同一の複数のマイクロミラー35によって構成されるマイクロミラーアレイが1組形成された場合を例にして説明した。これに対し、実施例2−3では、光波面制御装置のミラー基板において、2組のマイクロミラーアレイが1つに形成された場合を例にあげ、図30を用いて以下に説明する。
【0127】
図30は、第2の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置の斜視模式図である。なお、上部ガラス基板101を、ミラー基板102にスペーサ66aを介して接合させる時には、図30に示すITO電極65がミラー基板102と対向するようにして接合させる。
【0128】
光波面制御装置100は、上部ガラス基板101および下部ガラス基板103によって挟まれるミラー基板102から構成されている。なお、第1の実施の形態の図14と同じ構成のものは、特に断りがない限り同じ符号とし、その説明は省略する。
【0129】
図30に示すように、ミラー基板102に、2組のマイクロミラーアレイ102a,102bが、互いに直交するように形成されるとともに、マイクロミラーアレイ102a,102bに対して、上部ガラス基板101には電極群101a,101b、下部ガラス基板103には電極群103a,103bが形成されている。
【0130】
この光波面制御装置100のように、2組のマイクロミラーアレイ102a,102bを備える光波面制御装置100の上面に、例えば実施例1−4と同様に、反射体を設置することによって、入射した被制御光をマイクロミラーアレイ102aにより反射させ、上面に配置した反射体で反射させて、マイクロミラーアレイ102bに光を入射させて反射させることにより、光波面を2次元的に制御することが可能である。
【0131】
なお、実施例2−3ではミラー基板102に2組のマイクロミラーアレイ102a,102bを備えた場合を例にして説明したが、実施例1−3のように、2つの光波面制御装置を利用した光波面を2次元状に操作する方法も可能である。
【0132】
以上のように、内壁に一体的に形成されたトーションバーを介してマイクロミラーが形成されたミラー基板と、透明電極が形成されたガラス基板とをスペーサで接合させた光波面制御装置は、マイクロミラーの併進動作および回転動作を実現でき、初期位置を保つためのバイアス電圧が不要であるため、消費電力を削減することができる。また、光波面制御装置の作製工程は簡素化でき、精密加工を必要としないため、歩留まりの向上および完成後の信頼性を向上させることができる。
【0133】
今回示した実施例は、本発明の光波面制御装置を構成させるために上記材料を利用した場合を例として説明したが、本発明の光波面制御装置を構成可能な他の材料系の組み合わせにしても同様の効果が得られる。
【0134】
(付記1) 光波面の位相を制御する光波面制御装置において、
第1の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層された底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、
一対の透明電極が、前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板と、
を有することを特徴とする光波面制御装置。
【0135】
(付記2) 前記ミラー基板は、前記第1の支持基板層および前記デバイス部がシリコン、前記中間層が酸化シリコンによって構成されるSOI構造であることを特徴とする付記1記載の光波面制御装置。
【0136】
(付記3) 前記底面部に代わり、一対の透明電極が前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記デバイス部に別のスペーサを介して接合する下部ガラス基板を有することを特徴とする付記1記載の光波面制御装置。
【0137】
(付記4) 前記別のスペーサに代わって下から順に積層された額縁状の第2の支持基板層と前記中間層とを介して、前記第2の支持基板層と同じ高さの突起部が一部にさらに形成され、前記突起部が前記第2の支持基板層と嵌合して、前記デバイス部と接合する前記下部ガラス基板を有することを特徴とする付記3記載の光波面制御装置。
【0138】
(付記5) 前記デバイス部および前記第2の支持基板層がシリコン、前記中間層が酸化シリコンによって構成されるSOI構造であることを特徴とする付記4記載の光波面制御装置。
【0139】
(付記6) 前記マイクロミラーが直交するように配置された一対の前記ミラー基板と、一対の前記上部ガラス基板と、さらに、前記ミラー基板からの光を他の前記ミラー基板へ反射させる反射体とを備えていることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0140】
(付記7) 同一面上に別のマイクロミラーをさらに形成した前記デバイス部と、同一面上に前記別のマイクロミラーに対応した別の一対の透明電極をさらに配置した前記上部ガラス基板と、さらに、前記マイクロミラーからの光を前記別のマイクロミラーへ反射させる反射体とを備えていることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0141】
(付記8) 前記スペーサは、はんだバンプまたは導電性マイクロビーズであることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
(付記9) 前記透明電極は、インジウム錫酸化物で形成されることを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0142】
(付記10) 前記トーションバーの厚さが、前記マイクロミラーおよび前記別のマイクロミラーの厚さよりも薄いことを特徴とする付記1乃至9のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0143】
(付記11) 金属膜が前記マイクロミラーおよび前記別のマイクロミラーの、表面および裏面の少なくとも表面に形成されていることを特徴とする付記1乃至10のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0144】
(付記12) 光波面の位相を制御する光波面制御装置の製造方法において、
第1の支持基板層および中間層が順に積層された底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板を作製する工程と、
一対の透明電極が、前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板を作製する工程と、
を有することを特徴とする光波面制御装置の製造方法。
【0145】
(付記13) 前記底面部に代わり、一対の透明電極が前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記デバイス部に別のスペーサを介して接合する下部ガラス基板を有することを特徴とする付記12記載の光波面制御装置の製造方法。
【0146】
(付記14) 前記別のスペーサに代わって下から順に積層された額縁状の第2の支持基板層と前記中間層とを介して、前記第2の支持基板層と同じ高さの突起部が一部にさらに形成され、前記突起部が前記第2の支持基板層と嵌合して、前記デバイス部と接合する前記下部ガラス基板を有することを特徴とする付記13記載の光波面制御装置の製造方法。
【0147】
(付記15) 前記マイクロミラーが直交するように配置された一対の前記ミラー基板と、一対の前記上部ガラス基板と、さらに、前記ミラー基板からの光を他の前記ミラー基板へ反射させる反射体とを備えていることを特徴とする付記12乃至14のいずれか1項に記載の光波面制御装置の製造方法。
【0148】
(付記16) 同一面上に別のマイクロミラーをさらに形成した前記デバイス部と、同一面上に前記別のマイクロミラーに対応した別の一対の透明電極をさらに配置した前記上部ガラス基板と、さらに、前記マイクロミラーからの光を前記別のマイクロミラーへ反射させる反射体とを備えていることを特徴とする付記12乃至15のいずれか1項に記載の光波面制御装置の製造方法。
【0149】
(付記17) 前記トーションバーの厚さを、前記マイクロミラーおよび前記別のマイクロミラーの厚さよりも薄く形成することを特徴とする付記12乃至16のいずれか1項に記載の光波面制御装置の製造方法。
【0150】
(付記18) 金属膜が前記マイクロミラーおよび前記他のマイクロミラーの、表面および裏面の少なくとも表面に形成されていることを特徴とする付記12乃至17のいずれか1項に記載の光波面制御装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明における光波面制御装置の概要図である。
【図2】本発明の動作原理の断面模式図である。
【図3】第1の実施の形態における光波面制御装置用上部ガラス基板の斜視模式図である。
【図4】第1の実施の形態における光波面制御装置用上部ガラス基板の透明電極のパターンの平面模式図である。
【図5】第1の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の斜視模式図である。
【図6】第1の実施の形態における光波面制御装置の断面模式図である。
【図7】第1の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の平面模式図である。
【図8】第1の実施の形態における光波面制御装置の平面模式図である。
【図9】第1の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の作製工程の要部断面模式図である。
【図10】マイクロミラーおよびトーションバーの要部断面模式図である。
【図11】第1の実施の形態における光波面制御装置を用いた空間光ビーム補正の機構図である。
【図12】第1の実施の形態における光波面制御装置を用いた光短パルス整形の機構図である。
【図13】第1の実施の形態における光波面制御装置を用いた2次元の空間光ビーム補正の機構図である。
【図14】第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置の斜視模式図である。
【図15】第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置に反射体を適用した例図である。
【図16】第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置に反射体を適用した別の例図(その1)である。
【図17】第1の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置に反射体を適用した別の例図(その2)である。
【図18】第2の実施の形態における光波面制御装置の概要図である。
【図19】第2の実施の形態の動作原理の断面模式図である。
【図20】第2の実施の形態における光波面制御装置の斜視模式図である。
【図21】第2の実施の形態における光波面制御装置の断面模式図である。
【図22】第2の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の作製工程の要部断面模式図(その1)である。
【図23】第2の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の作製工程の要部断面模式図(その2)である。
【図24】第2の実施の形態における光波面制御装置用ミラー基板の作製工程の要部断面模式図(その3)である。
【図25】第2の実施の形態における光波面制御装置の別の斜視模式図である。
【図26】第2の実施の形態における光波面制御装置の別の断面模式図である。
【図27】第2の実施の形態における光波面制御装置のミラー基板の別の作製工程の要部断面模式図である。
【図28】第2の実施の形態における光波面制御装置を用いた空間光ビーム補正の機構図である。
【図29】第2の実施の形態における光波面制御装置を用いた光短パルス整形の機構図である。
【図30】第2の実施の形態における2組のマイクロミラーアレイを備える光波面制御装置の斜視模式図である。
【図31】光波面制御装置における光波面の制御を行わない場合の模式図である。
【図32】光波面制御装置における光波面の制御を行う場合の模式図である。
【図33】光波面制御装置の従来例の斜視模式図である。
【図34】光波面制御装置の従来例の断面模式図である。
【図35】従来の光波面制御装置の作製工程の要部断面模式図である。
【図36】従来の光波面制御装置におけるマイクロミラーの各動作を表した断面模式図である。
【符号の説明】
【0152】
10 光波面制御装置
11 ミラー基板
11a 支持基板層
11b 中間層
11c 底面部
11d デバイス部
12 トーションバー
13 マイクロミラー
14 スペーサ
15 上部ガラス基板
16 透明電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光波面の位相を制御する光波面制御装置において、
第1の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層された底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、
一対の透明電極が、前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板と、
を有することを特徴とする光波面制御装置。
【請求項2】
前記ミラー基板は、前記第1の支持基板層および前記デバイス部がシリコン、前記中間層が酸化シリコンによって構成されるSOI構造であることを特徴とする請求項1記載の光波面制御装置。
【請求項3】
前記底面部に代わり、一対の透明電極が前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記デバイス部に別のスペーサを介して接合する下部ガラス基板を有することを特徴とする請求項1記載の光波面制御装置。
【請求項4】
前記別のスペーサに代わって下から順に積層された額縁状の第2の支持基板層と前記中間層とを介して、前記第2の支持基板層と同じ高さの突起部が一部にさらに形成され、前記突起部が前記第2の支持基板層と嵌合して、前記デバイス部と接合する前記下部ガラス基板を有することを特徴とする請求項3記載の光波面制御装置。
【請求項5】
同一面上に別のマイクロミラーをさらに形成した前記デバイス部と、同一面上に前記別のマイクロミラーに対応した別の一対の透明電極をさらに配置した前記上部ガラス基板と、さらに、前記マイクロミラーからの光を前記別のマイクロミラーへ反射させる反射体とを備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【請求項6】
前記トーションバーの厚さが、前記マイクロミラーおよび前記別のマイクロミラーの厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【請求項7】
金属膜が前記マイクロミラーおよび前記別のマイクロミラーの、表面および裏面の少なくとも表面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【請求項8】
光波面の位相を制御する光波面制御装置の製造方法において、
第1の支持基板層および中間層が順に積層された底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板を作製する工程と、
一対の透明電極が、前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板を作製する工程と、
を有することを特徴とする光波面制御装置の製造方法。
【請求項9】
前記底面部に代わり、一対の透明電極が前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記デバイス部に別のスペーサを介して接合する下部ガラス基板を有することを特徴とする請求項8記載の光波面制御装置の製造方法。
【請求項10】
同一面上に別のマイクロミラーをさらに形成した前記デバイス部と、同一面上に前記別のマイクロミラーに対応した別の一対の透明電極をさらに配置した前記上部ガラス基板と、さらに、前記マイクロミラーからの光を前記別のマイクロミラーへ反射させる反射体とを備えていることを特徴とする請求項8又は9に記載の光波面制御装置の製造方法。
【請求項1】
光波面の位相を制御する光波面制御装置において、
第1の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層された底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、
一対の透明電極が、前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板と、
を有することを特徴とする光波面制御装置。
【請求項2】
前記ミラー基板は、前記第1の支持基板層および前記デバイス部がシリコン、前記中間層が酸化シリコンによって構成されるSOI構造であることを特徴とする請求項1記載の光波面制御装置。
【請求項3】
前記底面部に代わり、一対の透明電極が前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記デバイス部に別のスペーサを介して接合する下部ガラス基板を有することを特徴とする請求項1記載の光波面制御装置。
【請求項4】
前記別のスペーサに代わって下から順に積層された額縁状の第2の支持基板層と前記中間層とを介して、前記第2の支持基板層と同じ高さの突起部が一部にさらに形成され、前記突起部が前記第2の支持基板層と嵌合して、前記デバイス部と接合する前記下部ガラス基板を有することを特徴とする請求項3記載の光波面制御装置。
【請求項5】
同一面上に別のマイクロミラーをさらに形成した前記デバイス部と、同一面上に前記別のマイクロミラーに対応した別の一対の透明電極をさらに配置した前記上部ガラス基板と、さらに、前記マイクロミラーからの光を前記別のマイクロミラーへ反射させる反射体とを備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【請求項6】
前記トーションバーの厚さが、前記マイクロミラーおよび前記別のマイクロミラーの厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【請求項7】
金属膜が前記マイクロミラーおよび前記別のマイクロミラーの、表面および裏面の少なくとも表面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【請求項8】
光波面の位相を制御する光波面制御装置の製造方法において、
第1の支持基板層および中間層が順に積層された底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板を作製する工程と、
一対の透明電極が、前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板を作製する工程と、
を有することを特徴とする光波面制御装置の製造方法。
【請求項9】
前記底面部に代わり、一対の透明電極が前記マイクロミラーの両端部もしくは両端部近傍にそれぞれ重なるように配置され、前記デバイス部に別のスペーサを介して接合する下部ガラス基板を有することを特徴とする請求項8記載の光波面制御装置の製造方法。
【請求項10】
同一面上に別のマイクロミラーをさらに形成した前記デバイス部と、同一面上に前記別のマイクロミラーに対応した別の一対の透明電極をさらに配置した前記上部ガラス基板と、さらに、前記マイクロミラーからの光を前記別のマイクロミラーへ反射させる反射体とを備えていることを特徴とする請求項8又は9に記載の光波面制御装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2008−176268(P2008−176268A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153046(P2007−153046)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
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