説明

光電変換素子、欠陥検査装置及び欠陥検査方法

【課題】コストを増加させずに処理の高速化と解像度の変更が可能な光電変換素子と、それを用いた欠陥検査装置及び欠陥検査方法を提供する。
【解決手段】複数のセンサ画素を有する光電変換素子1において、マルチプレクサ5と、複数の水平転送レジスタ3a〜3dとを有する。センサ画素は、水平転送レジスタ3a〜3dのそれぞれに対応するように、複数のブロック2a〜2dに分割される。複数のブロック2a〜2dの電荷が、対応するそれぞれの水平転送レジスタ3a〜3dを介してマルチプレクサ5に読み出され、マルチプレクサ5を介して出力されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子と、それを用いた欠陥検査装置及び欠陥検査方法に関する。より詳細には、光電変換素子の高速化と、検査対象の欠陥(傷、クラックなど)や異物を検出する欠陥検査装置及び欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセンサ画素を有するCCD(Charge Coupled Device)やTDI(Time Delay Integration)等の光電変換素子において、処理の高速化を図る手段としては、例えば、センサ画素のクロックレートを上げる方法や、センサ画素を複数のブロックに分割してブロック毎に並列に信号を出力する、いわゆるマルチ出力方式がある。
【0003】
光電変換素子の高速化方法に関する先行技術としては、特許文献1に記載のように、センサ画素を偶数画素と奇数画素に分けて信号を出力し、A/D変換後に統合する方法などがある。
【0004】
また、光電変換素子の解像度を任意に変更する手段としては、倍率の異なる結像光学系を複数持つ方法や、画像データ取得後の画像処理により変換する方法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−167932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の光電変換素子の高速化方法では、センサ画素を偶数画素と奇数画素の2つのみに分割して信号を出力するため、処理速度は2倍にしかならない。
【0007】
また、センサ画素のクロックレートを上げる方法では、光電変換素子は容量性負荷であるために、クロックレートを2倍にすると負荷も2倍になる。このため、駆動回路の能力が不足する恐れがあるので、駆動回路全体を見直して新たに開発を行う必要があり、開発期間やコストが増大するという課題がある。
【0008】
更に、マルチ出力方式では、増やした出力数だけA/D変換器が必要となり、コストの上昇や、実装基板の実装密度または面積が大きくなるといった課題がある。
【0009】
また、光電変換素子の解像度を変更する手段として、倍率の異なる結像光学系を複数持つ方法では、コストが増加し、画像データ取得後の画像処理により変換する方法では、処理に必要な実装部品やメモリなどが増えるため、コストの上昇や、実装基板の実装密度または面積が大きくなるという課題がある。
【0010】
本発明は、コストを増加させずに処理の高速化と解像度の変更が可能な光電変換素子と、それを用いた欠陥検査装置及び欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基本的には、次のような特徴を有する。
【0012】
複数のセンサ画素を有する光電変換素子において、マルチプレクサと、複数の水平転送レジスタとを有する。前記センサ画素は、前記水平転送レジスタのそれぞれに対応するように、複数のブロックに分割される。前記複数のブロックの電荷が、対応するそれぞれの前記水平転送レジスタを介して前記マルチプレクサに読み出され、前記マルチプレクサを介して出力されるように、前記光電変換素子を構成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、開発コストや製造コストを増加させずに、処理の高速化と解像度の変更が可能な光電変換素子を提供することができ、この光電変換素子を用いた欠陥検査装置及び欠陥検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】従来の光電変換素子の一例を示す図である
【図1B】本発明による光電変換素子における統合機能の一実施例を示す図である。
【図2A】従来の光電変換素子における電荷読み出し方法の一例を示す図である。
【図2B】本発明による光電変換素子における画素の画素方向加算機能の一実施例を示す図である。
【図2C】本発明による光電変換素子における画素のライン方向加算機能の一実施例を示す図である。
【図2D】本発明による光電変換素子において、加算レジスタの容量を大きくした一実施例を示す図である。
【図3】画素結合レジスタを複数段設けた光電変換素子の一実施例を示す図である。
【図4】統合機能、画素方向加算機能、及びライン方向加算機能を組み合わせた光電変換素子の一実施例を示す図である。
【図5】本発明による光電変換素子を有する欠陥検査装置の一実施例を示す図である。
【図6】素子構成制御部が実行する制御処理の設定手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施例による光電変換素子は、マルチプレクサを有し、センサ画素を複数(N個)のブロックに分割し、電荷をブロック毎に並列にマルチプレクサへ出力する。この際、分割した各ブロックに対応するN個の水平転送レジスタの出力を、マルチプレクサで読み込んで統合する。マルチプレクサは、読み込み速度のN倍の速度で信号を出力する。マルチプレクサが入出力する信号は、電荷、電流、または電圧によるものであるが、以下の実施例では、主に電荷を入出力するものとして説明する。
【0016】
また、光電変換素子上で画素を画素方向またはライン方向(スキャン方向)に加算することで、光電変換素子の解像度を任意に変更可能である。なお、以下の実施例では、光電変換素子上のセンサ画素に対し、スキャン方向をライン方向と呼び、ライン方向に垂直方向を画素方向と呼ぶ。ライン方向は、垂直転送レジスタにより電荷が転送される方向であり、画素方向は、水平転送レジスタにより電荷が転送される方向である。
【0017】
本実施例による光電変換素子によれば、マルチプレクサの出力速度が所望の速度となるように、マルチプレクサと複数(N個)の水平転送レジスタとを組み合わせることにより、水平転送レジスタのクロックレート、すなわち光電変換素子のセンサ画素のクロックレートを遅くすることができる。従って、光電変換素子の高速駆動に起因して発生するノイズの低減が図れると共に、SN比の向上も図れる。更に、センサ画素のクロックレートが遅くても良いため、新たに駆動回路を開発する必要がなく、既存の技術による駆動回路で高速化を図れ、開発コストを格段に抑えることができる効果がある。
【0018】
また、本実施例によれば、光電変換素子上で画素を画素方向またはライン方向に加算することで、光電変換素子の解像度を任意に変更できるため、この光電変換素子を用いた欠陥検査装置は、検出する欠陥の大きさ、形状、及び種類や、検査対象の表面形状、検査速度、及び光学倍率に合わせて最適な解像度が設定可能であり、検出感度を向上させる効果がある。また、ライン方向に画素を加算する場合に、加算レジスタの容量を前段のレジスタ(ライン遅延レジスタ)よりも大幅に大きくすることで、ダイナミックレンジが向上し、欠陥の大きさ、形状、及び種類がより高度に識別可能となるという効果がある。
【0019】
以下、光電変換素子と、それを用いた欠陥検査装置及び欠陥検査方法の実施例を、図面を用いて説明する。以下の実施例では、光電変換素子として、垂直転送レジスタを有するTDI(Time Delay Integration)センサを例に挙げて説明する。垂直転送レジスタは、光電変換素子のセンサ画素でもあるので、以下の実施例では、センサ画素のことを「センサ画素及び垂直転送レジスタ」と称する。
【0020】
本実施例による光電変換素子は、マルチプレクサによる統合機能、画素結合レジスタによる画素の画素方向加算機能、及びライン遅延レジスタと加算レジスタによる画素のライン方向加算機能を有する。初めに、マルチプレクサによる統合機能について、図1Aと図1Bを用いて従来技術と対比しながら説明する。
【0021】
図1Aは、従来の光電変換素子の一例を示す図である。従来の光電変換素子では、次のようにして高速化を図っている。光電変換素子1上の複数のセンサ画素及び垂直転送レジスタ2をブロックに分割する。図1Aの例では、2つのブロック2a、2bに分割している。各ブロック2a、2bの電荷は、各ブロック2a、2bに対応した水平転送レジスタ3a、3bに転送される。水平転送レジスタ3a、3bの電荷は、1画素毎に読み出され、図示しないアンプにより電圧に変換され、水平転送レジスタ3a、3bに対応したA/D変換器4a、4bでアナログ信号からデジタル信号に変換される。上述した出力方法は、一般にマルチ出力方式と呼ばれており、ブロックの分割数をNとすると、ブロックを分割しない場合に比べてN倍の処理速度の向上を図っている。
【0022】
図1Bは、本発明による光電変換素子における統合機能の一実施例を示す図である。本実施例による光電変換素子では、水平転送レジスタに接続されるマルチプレクサを有し、次のようにして高速化を図る。
【0023】
光電変換素子1上の複数のセンサ画素及び垂直転送レジスタ2を、複数(N個)のブロックに分割する。図1Bの例では、4個のブロック2a〜2dに分割している(N=4)。各ブロック2a〜2dの電荷は、各ブロック2a〜2dに対応する水平転送レジスタ3a〜3dに転送される。水平転送レジスタの数は、センサ画素及び垂直転送レジスタ2の分割数(N)に合わせる。水平転送レジスタ3a〜3dの電荷は、1画素毎にマルチプレクサ5により読み出される。
【0024】
マルチプレクサ5は、接続されている水平転送レジスタの数がN個の場合には、水平転送レジスタからの電荷読み出し速度のN倍の速度で信号を出力することで、入力速度と出力速度のバランスを取っている。例えば、本実施例のように、接続されている水平転送レジスタの数が4個(N=4)の場合には、マルチプレクサ5は、水平転送レジスタからの電荷読み出し速度の4倍の速度で信号を出力する。マルチプレクサ5の出力は、図示しないアンプにより電圧に変換され、A/D変換器4でアナログ信号からデジタル信号に変換される。
【0025】
本実施例による光電変換素子では、従来の光電変換素子に比べて、A/D変換器の数を減らすことができる。また、ブロック分割数を増やしても、A/D変換器の数は増えない。ブロック分割数を増やすことで処理の高速化が図れるので、センサ画素のクロックレートを遅くしても良い。従って、駆動回路の性能向上を図るためのコストを増加させずに、従来の回路技術を用いても光電変換素子の高速化が可能となる。また、センサ画素のクロックレートを遅くすることで、高速駆動に起因して発生するノイズが低減でき、SN比も向上することが可能となる。
【0026】
なお、図1Bに示した実施例では、光電変換素子として、垂直転送レジスタを有するTDI(Time Delay Integration)センサを例に挙げて説明しているが、1次元のラインスキャン型のCCD(Charge Coupled Device)ラインセンサを光電変換素子として用いても良い。CCD(Charge Coupled Device)ラインセンサを用いても、上述したようにマルチプレクサと複数の水平転送レジスタとを組み合わせることにより、コストを増加させずに処理の高速化が達成でき、ノイズの低減やSN比の向上も可能である。
【0027】
次に、本実施例による光電変換素子が有する、画素結合レジスタによる画素の画素方向加算機能と、ライン遅延レジスタと加算レジスタによる画素のライン方向加算機能について、図2A〜図2Dを用いて従来技術と対比しながら説明する。
【0028】
図2Aは、従来の光電変換素子における電荷読み出し方法の一例を示す図である。従来の電荷読み出し方法では、光電変換素子1上のセンサ画素及び垂直転送レジスタ2から水平転送レジスタ3に電荷を一括転送し、水平転送レジスタ3は、1画素ずつ電荷をアンプ(図示せず)に転送し、電圧に変換する。このため、画素加算を行う場合には、図示しない後段の画像処理部で行うこととなる。
【0029】
本実施例による光電変換素子では、画素方向とライン方向とでは、画素の加算機能が異なる。以下、図2Bを用いて画素の画素方向の加算機能を、図2Cと図2Dを用いて画素のライン方向の加算機能を、それぞれ説明する。
【0030】
図2Bは、光電変換素子における画素の画素方向加算機能の一実施例を示す図である。本実施例での光電変換素子1は、センサ画素及び垂直転送レジスタ2と、水平転送レジスタ3a、3b、3c、3dと、画素結合レジスタ6a、6b、6c、6dを有する。センサ画素及び垂直転送レジスタ2は、複数のブロックに分割する。図2Bの例では、4個のブロック2a、2b、2c、2dに分割している。各ブロック2a〜2dは、水平転送レジスタ3a〜3dにそれぞれ対応しており、水平転送レジスタ3a〜3dは、画素結合レジスタ6a〜6dにそれぞれ対応している。なお、ブロックと水平転送レジスタと画素結合レジスタの数は、本実施例では4個であるが、複数であればよく、4個に限定されない。
【0031】
本実施例による光電変換素子1の、画素の画素方向加算機能を説明する。光電変換素子1上のセンサ画素及び垂直転送レジスタ2は、水平転送レジスタ3a〜3dに電荷を一括転送する。この際、各ブロック2a〜2dの電荷は、各ブロック2a〜2dに対応する水平転送レジスタ3a〜3dに転送される。水平転送レジスタ3a〜3dは、1画素ずつ電荷をそれぞれに対応する画素結合レジスタ6a〜6dに転送する。画素結合レジスタ6a〜6dは、水平転送レジスタ3a〜3dから転送された画素を加算し、加算した画素の電荷をアンプ(図示せず)に転送する。アンプに転送された電荷は、電圧に変換される。ここで、画素結合レジスタ6a〜6dの容量は、それぞれ水平転送レジスタ3a〜3dの画素数分の容量と同等以上とする。
【0032】
本実施例による光電変換素子では、以上のようにして、光電変換素子1上で画素の画素方向加算を行うことが可能である。なお、本実施例では、画素結合レジスタ6a〜6dはいずれも1段のみであるが、複数段設けることで任意の解像度を得ることができる。
【0033】
図3は、画素結合レジスタを複数段設けた光電変換素子の一実施例を示す図である。図3では、一例として、画素結合レジスタを2段としている。画素結合レジスタ6a〜6dが1段目を構成し、画素結合レジスタ6m、6nが2段目を構成している。画素結合レジスタ6a、6bに転送された画素は、画素結合レジスタ6mに転送され、画素結合レジスタ6c、6dに転送された画素は、画素結合レジスタ6nに転送される。このように、画素結合レジスタを複数段として1画素の大きさを変えることで、画素方向の解像度が変更可能となる。
【0034】
図2Cは、光電変換素子における画素のライン方向加算機能の一実施例を示す図である。本実施例での光電変換素子1は、センサ画素及び垂直転送レジスタ2と、水平転送レジスタ3と、ライン遅延レジスタ7a、7bと、加算レジスタ8を有する。センサ画素及び垂直転送レジスタ2は、複数のブロックに分割する。図2Cの例では、4個のブロック2a、2b、2c、2dに分割している。なお、ブロックの数は、本実施例では4個であるが、複数であればよく、4個に限定されない。
【0035】
ライン遅延レジスタ7aと7bには、ラインスキャンの1ライン毎に、それぞれのラインスキャンに対応する電荷が転送される。すなわち、ライン遅延レジスタ7aと7bは、異なる時間のラインスキャンの電荷が転送され、この電荷をそれぞれ格納する。なお、図2Cでは、光電変換素子1は2個のライン遅延レジスタを有しているが、ライン遅延レジスタの数は3個以上であってもよい。
【0036】
本実施例による光電変換素子1の、画素のライン方向加算機能を説明する。光電変換素子1上のセンサ画素及び垂直転送レジスタ2は、各ブロック2a〜2dの電荷を水平転送レジスタ3に一括転送する。水平転送レジスタ3は、1画素ずつ電荷を1ライン毎に、各ラインスキャンに対応するライン遅延レジスタ7a、7bに転送する。ライン遅延レジスタ7a、7bは、転送された電荷を加算レジスタ8に転送する。加算レジスタ8は、転送された電荷を加算し、アンプ(図示せず)に転送する。アンプに転送された電荷は、電圧に変換される。ここで、加算レジスタ8の容量は、ライン遅延レジスタ7a、7bの画素数×ライン分の容量と同等以上とする。
【0037】
本実施例による光電変換素子では、以上のようにして、光電変換素子1上で画素のライン方向加算を行うことが可能である。なお、本実施例では、ライン遅延レジスタを2段とし、2つのライン遅延レジスタ7a、7bを設けたが、2段以上設けて1画素の大きさを変えることで、任意の解像度を得ることができる。また、2つのライン遅延レジスタ7a、7bをダブルバッファメモリのように交互に切り替えて使うことで、任意の解像度を得るようにしても良い。以上のようにして、本実施例による光電変換素子では、ライン方向の解像度が変更可能となる。
【0038】
図2Dは、図2Cに示した光電変換素子において、加算レジスタ8の容量を大きくした一実施例を示す図である。図2Cに示した画素のライン方向加算機能の一実施例において、2つのライン遅延レジスタ7a、7bをダブルバッファメモリのように使う時には、図2Dに示すように、加算レジスタ8の容量をライン遅延レジスタ7a、7bの画素数×ライン分の容量よりも大幅に大きくし、飽和容量(Full Well)を増加させる。加算レジスタ8の飽和容量をライン遅延レジスタ7a、7bの電荷に対応する容量以上に大きくすることで、任意の加算に対応できる。従って、ダイナミックレンジを大きくすることも可能となる。
【0039】
なお、図2B〜図2Dに示した実施例では、光電変換素子として、垂直転送レジスタを有するTDI(Time Delay Integration)センサを例に挙げて説明しているが、1次元のラインスキャン型のCCD(Charge Coupled Device)ラインセンサを光電変換素子として用いても良い。CCD(Charge Coupled Device)ラインセンサを用いても、上述したようにマルチプレクサと複数の水平転送レジスタとを組み合わせることにより、コストを増加させずに処理の高速化と解像度の変更が達成でき、ノイズの低減やSN比の向上も可能である。
【0040】
以上の説明では、マルチプレクサによる統合機能、画素結合レジスタによる画素方向加算機能、及びライン遅延レジスタと加算レジスタによるライン方向加算機能という、光電変換素子の3つの機能を個別に説明したが、これらの3つの機能は、組み合わせることもできる。
【0041】
図4は、統合機能、画素方向加算機能、及びライン方向加算機能という3つの機能を組み合わせた光電変換素子の一実施例を示す図である。本実施例での光電変換素子1は、センサ画素及び垂直転送レジスタ2と、水平転送レジスタ3a〜3hと、マルチプレクサ5a、5bと、ライン遅延レジスタ7a〜7dと、加算レジスタ8a〜8hと、画素結合レジスタ6a〜6hを有する。センサ画素及び垂直転送レジスタ2は、複数のブロックに分割する。図4の例では、8個のブロック2a〜2hに分割している。各ブロック2a〜2hは、水平転送レジスタ3a〜3hにそれぞれ対応している。また、加算レジスタ8a〜8hは、画素結合レジスタ6a〜6hにそれぞれ対応している。
【0042】
なお、ブロックと水平転送レジスタと加算レジスタと画素結合レジスタの数は、本実施例では8個であるが、複数であればよく、8個に限定されない。ライン遅延レジスタの数も、図4に示した数に限定されない。
【0043】
マルチプレクサの数は、1個でも複数でもよい。各マルチプレクサは、複数の水平転送レジスタから信号を読み出し、読み出した信号を1つずつ出力する。
【0044】
センサ画素及び垂直転送レジスタ2を分割したブロック2a〜2hの電荷は、各ブロック2a〜2hに対応する水平転送レジスタ3a〜3hに転送される。水平転送レジスタ3a〜3hの電荷は、1画素毎にマルチプレクサ5a、5bにより読み出される。マルチプレクサ5aは、水平転送レジスタ3a〜3dの電荷を、マルチプレクサ5bは、水平転送レジスタ3e〜3hの電荷を、それぞれ読み出すものとする。
【0045】
マルチプレクサ5aは、接続されている水平転送レジスタの数がN個の場合には、水平転送レジスタからの電荷読み出し速度のN倍の速度で信号を出力することで、入力速度と出力速度のバランスを取っている。例えば、図4に示したように、接続されている水平転送レジスタの数が4個(N=4)の場合には、マルチプレクサ5aは、水平転送レジスタからの電荷読み出し速度の4倍の速度で信号を出力する。マルチプレクサ5bも、マルチプレクサ5aと同様の方法で決められた速度で、信号を出力する
マルチプレクサ5a、5bの出力は、ラインスキャンの1ライン毎に、マルチプレクサ5a、5bにそれぞれ対応するライン遅延レジスタ7a〜7dに転送される。図4では、マルチプレクサ5aにはライン遅延レジスタ7a、7bが対応し、マルチプレクサ5bにはライン遅延レジスタ7c、7dが対応している。ライン遅延レジスタ7aと7bには、異なる時間のラインスキャンの電荷が転送される。ライン遅延レジスタ7cと7dにも、異なる時間のラインスキャンの電荷が転送される。ライン遅延レジスタ7a〜7dは、転送された電荷をそれぞれ格納する。
【0046】
ライン遅延レジスタ7a、7bは、転送された電荷を加算レジスタ8a〜8dに転送し、ライン遅延レジスタ7c、7dは、転送された電荷を加算レジスタ8e〜8hに転送する。
【0047】
加算レジスタ8a〜8hは、1画素ずつ電荷をそれぞれに対応する画素結合レジスタ6a〜6hに転送することで、加算レジスタ8a〜8hで転送する画素数分の画素加算を行う。
【0048】
画素結合レジスタ6a〜6hは、加算レジスタ8a〜8hから転送された画素を加算し、加算した画素の電荷をアンプ(図示せず)に転送する。アンプに転送された電荷は、電圧に変換され、A/D変換器(図示せず)でアナログ信号からデジタル信号に変換される。
【0049】
なお、マルチプレクサによる統合機能、画素結合レジスタによる画素方向加算機能、及びライン遅延レジスタと加算レジスタによるライン方向加算機能という3つの機能は、常に併用する必要はない。本実施例による光電変換素子では、この3つの機能のうち、必要な機能を選択して組み合わせて使用することができる。
【0050】
以上の方法により、マルチプレクサによる統合機能、画素結合レジスタによる画素方向加算機能、及びライン遅延レジスタと加算レジスタによるライン方向加算機能の3つの機能を有する光電変換素子が実現できる。
【0051】
このため、本実施例による光電変換素子では、従来の光電変換素子に比べて、マルチプレクサによる統合機能によりA/D変換器の数を減らすことができる。また、ブロック分割数を増やしても、A/D変換器の数は増えない。ブロック分割数を増やすことで処理の高速化が図れるので、センサ画素のクロックレートを遅くしても良い。従って、駆動回路の性能向上を図るためのコストを増加させずに、従来の回路技術を用いても光電変換素子の高速化が可能となる。また、センサ画素のクロックレートを遅くすることで、高速駆動に起因して発生するノイズが低減でき、SNも向上することが可能となる。
【0052】
更に、加算レジスタの容量を、ライン遅延レジスタの画素数×ライン分の容量と同等以上とすることで、ライン方向の加算が光電変換素子1上で行え、ライン方向の解像度が変更可能となる。本実施例では、ライン遅延レジスタは2段のみであるが、2段以上設けることで、任意の解像度を得るようにしても良い。
【0053】
更に、2つのライン遅延レジスタをダブルバッファメモリのような使い方をすることで、任意の解像度を得るようにしても良い。この時には、図2Dに示したように、加算レジスタの容量をライン遅延レジスタの画素数×ライン分の容量よりも大幅に大きくすることで、任意の加算に対応できるため、ダイナミックレンジを大きくすることも可能となる。
【0054】
更に、画素結合レジスタの容量を、加算レジスタの画素数分の容量と同等以上とすることにより、光電変換素子1上で画素加算が行え、画素方向の解像度が変更可能となる。図4に示した実施例では、画素結合レジスタは1段のみであるが、図3に示したように複数段設けることで、任意の解像度を得るようにしても良い。なお、図4に示した実施例では、光電変換素子として、垂直転送レジスタを有するTDI(Time Delay Integration)センサを例に挙げて説明しているが、1次元のラインスキャン型のCCD(Charge Coupled Device)ラインセンサを光電変換素子として用いても良い。
【0055】
図5は、本発明による光電変換素子を有する欠陥検査装置の一実施例を示す図である。本実施例での欠陥検査装置は、光学式のウエハ検査装置であり、検査対象であるウエハの欠陥(傷、クラックなど)や異物を検出する。
【0056】
図5に示すように、本実施例の欠陥検査装置は、照明光を放射する光源21、ビームエキスパンダー22、検査対象である試料25を搭載するステージ24、対物レンズ23、結像レンズ26、及び検出器であるイメージセンサ27を備える。更に、表示部31、入力部30、画像処理部28、光電変換素子を制御する素子構成制御部32、及び制御CPU29を備える。
【0057】
イメージセンサ27は、本発明の一実施例による光電変換素子を有する。すなわち、光電変換素子は、マルチプレクサによる統合機能、画素結合レジスタによる画素方向加算機能、及びライン遅延レジスタと加算レジスタによるライン方向加算機能という3つの機能を有する。本実施例の欠陥検査装置は、この3つの機能のうち、必要な機能を選択して組み合わせて使用することができる。
【0058】
光源21からの照明光は、ビームエキスパンダー22を介して、ステージ24に搭載された試料25に照射される。試料25からの反射光は、対物レンズ23、結像レンズ26等を介して、イメージセンサ27にて検出される。
【0059】
表示部31は、画像処理結果や光電変換素子の構成情報等を表示する。制御CPU29は、入力部30にて入力した情報や、画像処理部28、イメージセンサ27、ステージ24、及び素子構成制御部32のデータや情報を制御する。
【0060】
素子構成制御部32は、検出する欠陥の大きさ、形状、及び種類や、検査対象(試料25)の表面形状、検査速度、及び光学倍率に応じて、マルチプレクサによる統合機能、画素結合レジスタによる画素方向加算機能、及びライン遅延レジスタと加算レジスタによるライン方向加算機能という光電変換素子の3つの機能の組合せを、切り替え制御する。この3つの機能の切り替え制御は、ユーザが入力した光電変換素子の設定に基づいて行われる。ユーザは、入力部30を介して、統合機能が必要かどうか、解像度を変更するかどうか、及び解像度を変更する場合には画素の加算方向(画素方向、ライン方向、または両方の方向)という光電変換素子の制御の設定を指定する。 素子構成制御部32を設けることで、任意の解像度や感度に、光電変換素子の構成を制御することができる。
【0061】
図6は、素子構成制御部32が実行する制御処理の設定手順を示すフローチャートである。 素子構成制御部32の制御処理の設定手順は、次の通りである。
【0062】
ステップ101で、光電変換素子の設定が入力される。ユーザは、入力部30を介して、統合機能が必要か、解像度を変更するか、及び解像度を変更する場合にはどの方向(画素方向、ライン方向、または両方の方向)に加算して解像度を変更するか、という光電変換素子の設定を指定する。
【0063】
ステップ102で、入力した設定に従い、統合機能が必要かどうか判断する。必要な場合は、ステップ103に進み、不要の場合は、ステップ104に進む。
【0064】
ステップ103では、入力した設定に従い、マルチプレクサによる統合機能を設定する。
【0065】
ステップ104で、入力した設定に従い、解像度を変更するかどうか判断する。解像度を変更する場合は、ステップ105に進み、変更しない場合は、ステップ109に進む。
【0066】
ステップ105で、入力した設定に従い、画素を加算する方向を選択する。
【0067】
画素方向に加算する場合は、ステップ106に進んで画素結合レジスタによる画素方向加算機能を設定し、その後、ステップ109に進む。
【0068】
画素方向とライン方向に加算する場合は、ステップ107に進んで、画素結合レジスタによる画素方向加算機能、及びライン遅延レジスタと加算レジスタによるライン方向加算機能を設定し、その後、ステップ109に進む。
【0069】
ライン方向に加算する場合は、ステップ108に進んで、ライン遅延レジスタと加算レジスタによるライン方向加算機能を設定し、その後、ステップ109に進む。
【0070】
ステップ109では、設定した情報(例えば、設定値や、設定の正常終了の可否)を表示部31に表示する。ユーザは、素子構成制御部32の設定が正常である場合には、欠陥検査などの他の操作に移り、設定が正常でない場合には、ステップ101に戻り、再度設定をやり直す。
【0071】
本実施例による欠陥検査装置は、このような構成により、検出する欠陥の大きさ、形状、及び種類や、検査対象の表面形状、検査速度、及び光学倍率に対して最適な解像度に設定が可能である。このため、光電変換素子以外のハードは、従来の欠陥検査装置からの変更が不要となり、簡便に装置の解像度や感度の変更・調整が可能となる。更に、光電変換素子に対し、ライン遅延レジスタの画素数×ライン分の容量よりも大幅に大きな容量を持つ加算レジスタを用いることで、ダイナミックレンジが拡大し、欠陥の大きさ、形状、及び種類がより高度に識別可能となる。
【0072】
なお、本実施例では、図5に示したように、光源21をステージ24の斜方に配置して斜方照明とし、イメージセンサ27をステージ24の上方に配置して上方検出としている。光源21とイメージセンサ27の配置は、この場所に限られるものではなく、光源21からの照明光がステージ24に搭載された試料25に照射し、イメージセンサ27が試料25からの反射光を検出できる限り、任意の場所で良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1…光電変換素子、2…垂直転送レジスタ、2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2h…ブロック、3,3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h…水平転送レジスタ、4,4a,4b…A/D変換器、5,5a,5b…マルチプレクサ、6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g,6h,6m,6n…画素結合レジスタ、7a,7b,7c,7d…ライン遅延レジスタ、8,8a,8b,8c,8d,8e,8f,8g,8h…加算レジスタ、21…光源、22…ビームエキスパンダー、23…対物レンズ、24…ステージ、25…試料、26…結像レンズ、27…イメージセンサ、28…画像処理部、29…制御CPU、30…入力部、31…表示部、32…素子構成制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサ画素を有する光電変換素子において、
マルチプレクサと、複数の水平転送レジスタとを有し、
前記センサ画素は、前記水平転送レジスタのそれぞれに対応するように、複数のブロックに分割され、
且つ、前記複数のブロックの電荷が、対応するそれぞれの前記水平転送レジスタを介して前記マルチプレクサに読み出され、前記マルチプレクサを介して出力されるように構成する、
ことを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
請求項1記載の光電変換素子において、
N個の前記水平転送レジスタを有し、
前記マルチプレクサは、読み出し速度のN倍の速度で出力する光電変換素子。
【請求項3】
複数のセンサ画素を有する光電変換素子において、
複数の水平転送レジスタと、前記水平転送レジスタのそれぞれに対応する複数の画素結合レジスタとを有し、
前記画素結合レジスタのそれぞれの容量は、対応する前記水平転送レジスタの容量よりも大きく、
前記センサ画素は、前記水平転送レジスタのそれぞれに対応するように、複数のブロックに分割され、
前記水平転送レジスタのそれぞれには、前記センサ画素の対応する前記ブロックの電荷が転送され、
前記画素結合レジスタのそれぞれには、対応する前記水平転送レジスタの電荷が転送される、
ことを特徴とする光電変換素子。
【請求項4】
複数のセンサ画素を有する光電変換素子において、
水平転送レジスタと、電荷を加算する加算レジスタと、ラインスキャンの対応する1ライン毎に電荷を格納する複数のライン遅延レジスタとを有し、
前記センサ画素は、複数のブロックに分割され、
前記水平転送レジスタには、前記センサ画素の前記ブロックの電荷が転送され、
前記ライン遅延レジスタのそれぞれは、対応するラインスキャン毎に前記水平転送レジスタの電荷を格納し、
前記加算レジスタは、前記ライン遅延レジスタのそれぞれから前記電荷が転送され、この電荷を加算する、
ことを特徴とする光電変換素子。
【請求項5】
請求項4記載の光電変換素子において、
前記加算レジスタの容量は、複数の前記ライン遅延レジスタの容量の合計よりも大きい光電変換素子。
【請求項6】
複数のセンサ画素を有する光電変換素子において、
マルチプレクサと、複数の水平転送レジスタと、ラインスキャンの対応する1ライン毎に電荷を格納する複数のライン遅延レジスタと、複数の加算レジスタと、前記加算レジスタのそれぞれに対応する複数の画素結合レジスタとを有し、
前記センサ画素は、前記水平転送レジスタのそれぞれに対応するように、複数のブロックに分割され、
前記水平転送レジスタのそれぞれには、前記センサ画素の対応する前記ブロックの電荷が転送され、
前記マルチプレクサは、複数の前記水平転送レジスタから信号を読み出して出力し、
前記ライン遅延レジスタのそれぞれは、対応するラインスキャン毎に前記マルチプレクサが出力した信号を格納し、
前記加算レジスタは、複数の前記ライン遅延レジスタから前記信号が転送され、
前記画素結合レジスタのそれぞれには、対応する前記加算レジスタの信号が転送される、
ことを特徴とする光電変換素子。
【請求項7】
光電変換素子を有する検出器を備え、前記検出器により試料からの反射光を検出して前記試料の欠陥を検査する欠陥検査装置において、
素子構成制御部を備え、
前記光電変換素子は、複数のブロックに分割されたセンサ画素と、対応する前記ブロックから電荷が転送される複数の水平転送レジスタと、複数の前記水平転送レジスタから信号を読み出して出力する統合機能を備えるマルチプレクサと、ラインスキャンの対応する1ライン毎に前記マルチプレクサが出力した信号を格納する複数のライン遅延レジスタと、複数の前記ライン遅延レジスタから前記信号が転送される複数の加算レジスタと、対応する前記加算レジスタの信号が転送されて画素を加算する画素方向加算機能を備える複数の画素結合レジスタとを有し、
前記素子構成制御部は、指定された設定に従い、前記統合機能、前記画素方向加算機能、及び複数の前記ライン遅延レジスタと複数の前記加算レジスタとにより画素を加算するライン方向加算機能を切り替え制御する素子構成制御部を有する、
ことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項8】
光電変換素子を有する検出器を用いて試料からの反射光を検出し、前記試料の欠陥を検査する欠陥検査方法において、
マルチプレクサと水平転送レジスタと画素結合レジスタとライン遅延レジスタと加算レジスタとを有する前記光電変換素子の制御の設定を入力するステップと、
前記光電変換素子が前記設定に応じて、複数のブロックに分割されたセンサ画素のそれぞれに対応する複数の前記水平転送レジスタから、前記マルチプレクサが信号を読み出して出力する統合機能を設定するステップと、
前記光電変換素子が前記設定に応じて、センサ画素から複数の前記水平転送レジスタに電荷を転送し、この電荷を前記水平転送レジスタから複数の前記画素結合レジスタに転送する画素方向加算機能、及び、センサ画素から前記水平転送レジスタに電荷を転送し、この電荷を前記水平転送レジスタから複数の前記ライン遅延レジスタに転送し、この電荷を前記ライン遅延レジスタから前記加算レジスタに転送するライン方向加算機能のうち、少なくとも一方を設定するステップと、
を備えることを特徴とする欠陥検査方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−70288(P2012−70288A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214634(P2010−214634)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】