説明

内燃機関の制御装置

【課題】自動停止中の内燃機関の再始動性を向上させる。
【解決手段】車両の運転条件に応じて内燃機関1の自動停止・自動再始動を行う内燃機関の制御装置であって、コースト時にも内燃機関1の自動停止・自動再始動が可能な内燃機関の制御装置において、内燃機関1を始動させるモータジェネレータ8と、内燃機関1と駆動輪5との動力伝達経路に設けられ、この動力伝達経路を断続するロックアップ機構を有し、コースト時に、内燃機関1が自動停止し、ロックアップ機構のロックアップが解除されると、スロットル開度を拡大する。これによって、ポンプロスが低減され、内燃機関1の起動トルクが小さくなるので、内燃機関1の自動停止により機関回転数が低下している最中の内燃機関1を必要なときに速やかに再始動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転条件に応じて内燃機関の自動停止・自動再始動を行う内燃機関の制御装置であって、特に、コースト時にも内燃機関の自動停止が可能な内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関の停止途中に、内燃機関の再始動要求があった場合に、内燃機関の機関回転数が所定の再始動禁止領域(800〜200rpm)内にある場合には、機関回転数が前記再始動禁止領域の下限値を下回るまでは内燃機関の再始動が禁止されるように制御する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−339781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような特許文献1においては、内燃機関の機関回転数が所定の再始動禁止領域(800〜200rpm)内にあるタイミングで内燃機関の再始動要求があると、内燃機関の始動要求に対して速やかに対応できない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明の内燃機関の制御装置は、コースト時にも前記内燃機関の自動停止・自動再始動が可能なものであって、前記内燃機関と駆動輪との動力伝達経路に設けられ、この動力伝達経路を断続するロックアップ機構を有し、コースト時に、前記内燃機関が自動停止し、前記ロックアップ機構のロックアップが解除されると、スロットル開度を拡大することを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ポンプロスが低減され、内燃機関の起動トルクが小さくなるので、内燃機関の自動停止により機関回転数が低下している最中の内燃機関を必要なときに速やかに再始動させることができる。また、ポンプロスが低減され、内燃機関の自動停止による機関回転数の低下率を小さくできるため、内燃機関の自動停止により機関回転数が低下している最中では、内燃機関の自動再始動時の始動手段の余裕トルクが増大し、コースト時における内燃機関の始動性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る内燃機関の制御装置のシステム構成図である。図1に示すように、内燃機関1後端側と車両の駆動輪5とを結ぶ動力伝達経路には、この動力伝達経路を断続するロックアップ機構付きのトルクコンバータ2、自動変速機3、終減速装置としてのファイナルギヤ4が介装されている。尚、自動変速機3は、複数の遊星歯車機構を備えた有段式の自動変速機であっても良く、あるいはベルト式やトロイダル式等の無段変速機であっても良い。
【0007】
この内燃機関1の前端には、クランクシャフト6と一体に回転するクランクプーリ7が配設されている。そして、このクランクプーリ7と、モータジェネレータ8の出力軸8aに取り付けられたモータプーリ9とには、ベルト10が巻き掛けられている。すなわち、始動手段としてのモータジェネレータ8とクランクシャフト6とは同期回転するよう構成されている。
【0008】
モータジェネレータ8は、発電機とスタータの機能を1台で担うものであり、内燃機関1の始動時等の力行運転時にはスタータとして機能し、内燃機関1の回転を受けた回生運転時には発電機として機能するものである。尚、モータジェネレータ8は、コントロールユニット11により、起動及び停止並びに、力行運転、回生運転の切り換えが制御されている。
【0009】
このコントロールユニット11により、スロットル弁12の開度が制御されている。
【0010】
また、コントロールユニット11には、車両の車速を検出する車速センサ13、内燃機関1の機関回転数を検出する機関回転数検出手段としての回転数センサ14、アクセルペダルのON−OFF及びアクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ15、ブレーキペダルのON−OFF及びブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサ16、自動変速機3のセレクト位置を検出するセレクト位置センサ17、スロットル弁12下流側の吸気通路に設けられ、スロットル弁12下流側における吸気通路内の圧力を検出する圧力検出手段としてのブーストセンサ18からの信号が入力されている。
【0011】
ここで、本実施形態いおいては、回転数センサ14の検出値である機関回転数と、ブーストセンサ18の検出値である吸気通路内の圧力(吸入負圧)と、を用いて吸入空気量を演算している。詳述すると、図2に示すような吸入空気量算出マップを予めコントロールユニット11のROMに格納し、この吸入空気量算出マップを用いて、吸入空気量を演算する。この吸入空気量算出マップから明らかなように、吸入負圧が大きく、機関回転数が大きくなるほど吸入空気量は大きくなり、吸入負圧が小さく、機関回転数が小さくなるほど吸入空気量は小さくなる。
【0012】
また、このコントロールユニット11により、スロットル弁12の開度が制御されている。
【0013】
そして、コントロールユニット11は、暖機運転終了後に車両を一時停止する場合に、自動停止条件(後述)が成立すると、内燃機関1の燃料噴射を停止して内燃機関1を停止させる。また、コントロールユニット11は、自動再始動条件(後述)が成立するとエンジン1の自動再始動を行う。
【0014】
前述の自動停止条件は、例えば、自動変速機3のセレクトレバーがDレンジにあり、ブレーキペダルが運転者によって踏み込まれ(ブレーキON)、アクセルペダルが踏まれておらず(アクセルOFF)、車速が0(km/h)、等の条件が成立した場合に成立する。また、自動再始動条件は、例えば、内燃機関1の自動停止中に、アクセルペダルが運転者によって踏み込まれた(アクセルON)場合や、運転者によって踏み込まれていたブレーキペダルが戻された(ブレーキOFF)場合等に成立する。
【0015】
そして、コントロールユニット11は、図3に示すように、自車両に加速要求がない状態、すなわちアクセルペダルが踏まれておらず(アクセルOFF)、燃料噴射が停止して、内燃機関1が空転状態となったコースト時において、ブレーキペダルが踏み込まれ(ブレーキON)、トルクコンバータ2のロックアップ機構のロックアップが解除されると内燃機関1を自動停止させる。これは、ロックアップ解除までは、内燃機関1と自動変速機3と車軸が機械的に結合状態であり、内燃機関1のフリクション変化が車両の減速感に影響するためである。尚、トルクコンバータ2のロックアップ機構のロックアップが解除されるタイミングで内燃機関1の回転が「0」になるわけではない。
【0016】
また、コースト時に内燃機関1を自動停止させると、スロットル開度を拡大させ、体積効率が一定となるようにスロットル開度を制御する。尚、本実施形態においては、始動に必要な空気量が確保できればよいので、内燃機関1を自動停止し体積効率を一定とする際には、排気量に依らず体積効率が20%程度となるようスロットル開度を制御する。一般に、体積効率一定とするためには、内燃機関1の機関回転数の低下に応じて、スロットル開度を拡大する方向に制御する。
【0017】
そして、コースト時に内燃機関1を自動停止している状態で、ブレーキペダルが戻される(ブレーキOFFになる)と、モータジェネレータ8の励磁を開始し、内燃機関1を再始動させる。換言すると、コースト時に内燃機関1を自動停止させ、この自動停止により内燃機関1の回転数が「0」に向かって低下している際に、ブレーキペダルが戻される(ブレーキOFFになる)と、モータジェネレータ8の励磁を開始し、内燃機関1を再始動させる。
【0018】
尚、初爆後は、スロットル開度はアクセル開度に応じたスロットル開度に制御され、体積効率一定となるようなスロットル開度の制御を終了する。つまり、初爆後は、スロットル開度及び体積効率は通常制御されることになる。
【0019】
上述した従来技術のように、内燃機関の自動停止中に内燃機関の再始動要求があった場合に、そのときの内燃機関の機関回転数が所定の再始動禁止領域(800〜200rpm)内にある場合には機関回転数が前記再始動禁止領域の下限値を下回るまで内燃機関の再始動が禁止されるものにおいては、図4に示すように、機関回転数が再始動禁止領域の下限値以下になってからスタータモータに励磁するため、スタータモータによる内燃機関の再始動が、始動要求(ブレーキOFF)から大きく遅れることになる。
【0020】
一方、本実施形態においては、図3に示すように、コースト時に、内燃機関1の自動停止により機関回転数が低下している最中にブレーキペダルが戻される(ブレーキOFFになる)と、直ちにモータジェネレータ8の励磁を開始しているので、始動要求に対して可及的速やかに内燃機関1を再始動させることができる。
【0021】
そして、本実施形態においては、コースト時に、内燃機関1を自動停止させると、機関回転数の低下に伴いスロットル開度を拡大するよう制御しているので、ポンプロスが低減され、内燃機関1の起動トルクが小さくなるので、内燃機関1の自動停止により機関回転数が低下している最中の内燃機関1を必要なときに速やかに再始動させることができる。また、ポンプロスが低減され、内燃機関1の自動停止による機関回転数の低下率を小さくできるため、内燃機関1の自動停止の際に機関回転数を相対的に高く維持でき、内燃機関1の自動停止により機関回転数が低下している最中では、内燃機関1の自動再始動時のモータジェネレータ8の余裕トルクが増大し、コースト時における内燃機関1の始動性の向上を図ることができる。
【0022】
さらに、本実施形態においては、コースト時に内燃機関1を自動停止させると、スロットル開度を拡大させ、体積効率が一定となるようにスロットル開度を制御しているので、各気筒の筒内空気量のばらつきが低減され、自動再始動による初爆時にトルクショックが毎回一定となり、運転者に違和感を与えずに内燃機関1の再始動が可能になる。また、体積効率が一定であるため、燃料、点火時期などの適合が容易となり、再始動時(再加速時)の制御性を向上させることができると共に、工数削減による原価低減を図ることができる。
【0023】
また、本実施形態においては、機関回転数と吸気通路内の圧力と、を用いて吸入空気量を演算しているので、内燃機関1の機関回転数が、停止前等の極低回転領域であっても、精度よく吸入空気量の計量を行うことができる。
【0024】
尚、上述した本実施形態においては、コースト時に内燃機関1を停止させると、スロットル開度を拡大させ、体積効率が一定となるようにスロットル開度を制御しているが、吸気通路内の圧力と機関回転数に応じてスロットル開度を拡大制御することでも、各気筒の筒内空気量のばらつきを低減でき、初爆時にトルクショックが毎回一定となって、運転者に違和感を与えずに自動停止させている内燃機関1の再始動が可能になる。
【0025】
また、本実施形態においては、始動手段であるモータジェネレータ8が、発電機とスタータの機能を1台で担うものであるが、始動手段としてスタータの機能のみを有するスタータモータを適用することも可能である。始動手段がスタータモータである場合には、上述の図3において、ブレーキOFFのタイミングでスタータモータが始動することになる。
【0026】
上述した実施形態から把握し得る本発明の技術的思想について、その効果とともに列記する。
【0027】
(1) 車両の運転条件に応じて内燃機関の自動停止・自動再始動を行う内燃機関の制御装置であって、コースト時にも前記内燃機関の自動停止・自動再始動が可能な内燃機関の制御装置において、前記内燃機関を始動させる始動手段と、前記内燃機関と駆動輪との動力伝達経路に設けられ、この動力伝達経路を断続するロックアップ機構を有し、コースト時に、前記内燃機関が自動停止し、前記ロックアップ機構のロックアップが解除されると、スロットル開度を拡大する。これによって、ポンプロスが低減され、内燃機関の起動トルクが小さくなるので、内燃機関の自動停止により機関回転数が低下している最中の内燃機関を必要なときに速やかに再始動させることができる。また、ポンプロスが低減され、内燃機関の自動停止による機関回転数の低下率を小さくできるため、自動停止の際に機関回転数を相対的に高く維持でき、内燃機関の自動停止により機関回転数が低下している最中では、内燃機関の自動再始動時の始動手段の余裕トルクが増大し、コースト時における内燃機関の始動性の向上を図ることができる。
【0028】
(2) 前記(1)に記載の内燃機関の制御装置において、前記ロックアップ機構のロックアップが解除されると、体積効率が一定となるように、スロットル開度を制御する。これによって、初爆時にトルクショックが毎回一定となり、運転者に違和感を与えずに内燃機関の再始動が可能になる。また、体積効率が一定であるため、燃料、点火時期などの適合が容易となり、再始動時(再加速時)の制御性を向上させることができると共に、工数削減による原価低減を図ることができる。
【0029】
(3) 前記(1)または(2)に記載の内燃機関の制御装置は、スロットル弁下流側の吸気通路に設けられ、スロットル弁下流側における吸気通路内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記内燃機関の機関回転数を検出する機関回転数検出手段と、を有し、前記圧力検出手段の検出値と、前記機関回転数検出手段の検出値と、を用いて吸入空気量を演算する。これによって、内燃機関の機関回転数が、停止前等の極低回転領域であっても、精度よく吸入空気量の計量を行うことができる。
【0030】
(4) 前記(1)に記載の内燃機関の制御装置は、スロットル弁下流側の吸気通路に設けられ、スロットル弁下流側における吸気通路内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記内燃機関の機関回転数を検出する機関回転数検出手段と、を有し、前記ロックアップ機構のロックアップが解除されると、前記圧力検出手段の検出値と、前記機関回転数検出手段の検出値とに応じて、スロットル開度を制御する。これによって、初爆時にトルクショックが毎回一定となり、運転者に違和感を与えずに自動停止させている内燃機関の再始動が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る内燃機関の制御装置のシステム構成図。
【図2】吸入空気量算出マップの特性例を示す説明図。
【図3】本発明に係る内燃機関の制御装置おいて、コースト時における内燃機関の自動停止・自動再始動の動作を説明するタイミングチャート。
【図4】従来のコースト時における内燃機関の自動停止・自動再始動の動作を説明するタイミングチャート。
【符号の説明】
【0032】
1…内燃機関
2…トルクコンバータ
3…自動変速機
5…駆動輪
8…モータジェネレータ
9…コントロールユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転条件に応じて内燃機関の自動停止・自動再始動を行う内燃機関の制御装置であって、コースト時にも前記内燃機関の自動停止・自動再始動が可能な内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関を始動させる始動手段と、
前記内燃機関と駆動輪との動力伝達経路に設けられ、この動力伝達経路を断続するロックアップ機構を有し、
コースト時に、前記内燃機関が自動停止し、前記ロックアップ機構のロックアップが解除されると、スロットル開度を拡大することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記ロックアップ機構のロックアップが解除されると、体積効率が一定となるように、スロットル開度を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
スロットル弁下流側の吸気通路に設けられ、スロットル弁下流側における吸気通路内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記内燃機関の機関回転数を検出する機関回転数検出手段と、を有し、
前記圧力検出手段の検出値と、前記機関回転数検出手段の検出値と、を用いて吸入空気量を演算することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
スロットル弁下流側の吸気通路に設けられ、スロットル弁下流側における吸気通路内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記内燃機関の機関回転数を検出する機関回転数検出手段と、を有し、
前記ロックアップ機構のロックアップが解除されると、前記圧力検出手段の検出値と、前記機関回転数検出手段の検出値とに応じて、スロットル開度を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−71205(P2010−71205A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240139(P2008−240139)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】