内燃機関の排気浄化装置
【課題】排気浄化触媒の熱劣化を阻止する。
【解決手段】機関排気通路内に酸化機能を有する排気浄化触媒13を配置し、排気浄化触媒13上流の機関排気通路内に小型酸化触媒14と、小型酸化触媒14に燃料を供給するための燃料供給弁15とを配置する。燃料供給弁15から小型酸化触媒14に燃料を供給する際には供給燃料の一部を小型酸化触媒14に流入させることなく小型酸化触媒14の側方を通って排気浄化触媒13に流入させる。
【解決手段】機関排気通路内に酸化機能を有する排気浄化触媒13を配置し、排気浄化触媒13上流の機関排気通路内に小型酸化触媒14と、小型酸化触媒14に燃料を供給するための燃料供給弁15とを配置する。燃料供給弁15から小型酸化触媒14に燃料を供給する際には供給燃料の一部を小型酸化触媒14に流入させることなく小型酸化触媒14の側方を通って排気浄化触媒13に流入させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機関排気通路内に、流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには排気ガス中に含まれるNOxを吸蔵し流入する排気ガスの空燃比がリッチになると吸蔵したNOxを放出するNOx吸蔵触媒を配置し、NOx吸蔵触媒上流の機関排気通路内に排気通路の断面よりも小さな断面を有する小型の燃料改質触媒を配置して機関から排出された排気ガスの一部を燃料改質触媒内に流通させ、NOx吸蔵触媒からNOxを放出すべきときには燃料改質触媒の上流側端面に向けて燃料を噴射するようにした内燃機関が公知である(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
この内燃機関ではNOx吸蔵触媒からNOxを放出すべきときに噴射された燃料は燃料改質触媒内において改質され、改質された燃料、例えばH2やCOを含む還元能力の高い燃料がNOx吸蔵触媒に送り込まれる。その結果、NOx吸蔵触媒から放出されたNOxが良好に還元せしめられることになる。
【特許文献1】特開2005−127257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのように改質された燃料をNOx吸蔵触媒に送り込むとNOx吸蔵触媒の入口部分、即ちNOx吸蔵触媒の上流側端部において激しい改質燃料の酸化反応が生じ、その結果極めて大きな酸化反応熱が発生するためにNOx吸蔵触媒の上流側端部が熱劣化するという問題を生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するために本発明によれば、機関排気通路内に酸化機能を有する排気浄化触媒を配置し、排気浄化触媒上流の機関排気通路内に排気浄化触媒よりも体積が小さくかつ排気浄化触媒に流入する排気ガスの一部が流通する小型酸化触媒と、この小型酸化触媒に燃料を供給するための燃料供給弁とを配置し、燃料供給弁から供給された燃料を小型酸化触媒において改質するようにした内燃機関の排気浄化装置において、燃料供給弁から小型酸化触媒に燃料を供給する際に供給燃料の一部を小型酸化触媒に流入させることなく小型酸化触媒の側方を通って排気浄化触媒に流入させるようにしている。
【発明の効果】
【0006】
燃料供給弁からの供給燃料の一部が排気浄化触媒に流入せしめられると排気浄化触媒の上流側端部には重質の燃料が付着する。その結果排気浄化触媒の上流側端部の活性が低下するために排気浄化触媒の上流側端部における酸化反応が抑制され、斯くして排気浄化触媒の上流側端部が熱劣化するのが阻止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に圧縮着火式内燃機関の全体図を示す。
図1を参照すると、1は機関本体、2は各気筒の燃焼室、3は各燃焼室2内に夫々燃料を噴射するための電子制御式燃料噴射弁、4は吸気マニホルド、5は排気マニホルドを夫々示す。吸気マニホルド4は吸気ダクト6を介して排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7aの出口に連結され、コンプレッサ7aの入口は吸入空気量検出器8を介してエアクリーナ9に連結される。吸気ダクト6内にはステップモータにより駆動されるスロットル弁10が配置され、更に吸気ダクト6周りには吸気ダクト6内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置11が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置11内に導かれ、機関冷却水によって吸入空気が冷却される。
【0008】
一方、排気マニホルド5は排気ターボチャージャ7の排気タービン7bの入口に連結され、排気タービン7bの出口は排気管12を介して酸化機能を有する排気浄化触媒13に連結される。この排気浄化触媒13上流の機関排気通路内には、即ち排気管12内には排気浄化触媒13よりも体積が小さくかつ排気浄化触媒13に流入する排気ガスの一部が流通する小型酸化触媒14が配置され、この小型酸化触媒14上流の機関排気通路内には、即ち排気管12内には小型酸化触媒14に燃料を供給するための燃料供給弁15が配置される。
【0009】
図1に示される実施例ではこの排気浄化触媒13は酸化触媒からなり、排気浄化触媒13下流の、即ち酸化触媒13下流の機関排気通路内には排気ガス中のパティキュレートを捕集するためのパティキュレートフィルタ16が配置される。また、図1に示される実施例ではパティキュレートフィルタ16下流の機関排気通路内にNOx吸蔵触媒17が配置される。
【0010】
排気マニホルド5と吸気マニホルド4とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路18を介して互いに連結され、EGR通路18内には電子制御式EGR制御弁19が配置される。また、EGR通路18周りにはEGR通路18内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置20が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置20内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。一方、各燃料噴射弁3は燃料供給管21を介してコモンレール22に連結され、このコモンレール22は電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ23を介して燃料タンク24に連結される。燃料タンク24内に貯蔵されている燃料は燃料ポンプ23によってコモンレール22内に供給され、コモンレール22内に供給された燃料は各燃料供給管21を介して燃料噴射弁3に供給される。
【0011】
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。小型酸化触媒14の下流には小型酸化触媒14の温度を検出するための温度センサ25が配置され、パティキュレートフィルタ16の下流には酸化触媒13又はパティキュレートフィルタ16の温度を検出するための温度センサ26が配置され、NOx吸蔵触媒17の下流にはNOx吸蔵触媒17の温度を検出するための温度センサ27が配置され、これら温度センサ25,26,27の出力信号は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。
【0012】
また、パティキュレートフィルタ16にはパティキュレートフィルタ16の前後差圧を検出するための差圧センサ28が取付けられ、この差圧センサ28および吸入空気量検出器8の出力信号は夫々対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁3、スロットル弁10の駆動用ステップモータ、EGR制御弁19および燃料ポンプ23に接続される。
【0013】
図2(A)は図1における小型酸化触媒14周りの拡大図を示しており、図2(B)は図2(A)においてB−B線に沿ってみた断面図を示している。図2(A),(B)に示される実施例では小型酸化触媒14は金属薄肉平板と金属薄肉波形板との積層構造からなる基体を有しており、この基体の表面上に例えばアルミナからなる触媒担体の層が形成されていると共にこの触媒担体上には白金Pt、ロジウムRd、パラジウムPdのような貴金属触媒が担持されている。なお、この基体はコージライトから形成することもできる。
【0014】
図2(A),(B)からわかるようにこの小型酸化触媒14は排気浄化触媒13、即ち酸化触媒13に向かう排気ガスの全流路断面よりも小さな断面、即ち排気管12の断面よりも小さな断面を有していると共に、排気管12内の中央において排気ガスの流れ方向に延びる筒状をなしている。なお、図2(A),(B)に示される実施例では小型酸化触媒14は円筒状外枠14a内に配置されており、この円筒状外枠14aは複数のステー29によって排気管12内に支持されている。
【0015】
酸化触媒13は例えば白金Ptのような貴金属触媒を担持したモノリス触媒から形成されている。これに対し図1に示される実施例ではパティキュレートフィルタ16上には貴金属触媒は担持されていない。しかしながらパティキュレートフィルタ16上に白金Ptのような貴金属触媒を担持させることもでき、この場合には酸化触媒13を省略することもできる。
【0016】
一方、図1に示されるNOx吸蔵触媒17もその基体上には例えばアルミナからなる触媒担体が担持されており、図3はこの触媒担体45の表面部分の断面を図解的に示している。図3に示されるように触媒担体45の表面上には貴金属触媒46が分散して担持されており、更に触媒担体45の表面上にはNOx吸収剤47の層が形成されている。
【0017】
図3に示される例では貴金属触媒46として白金Ptが用いられており、NOx吸収剤47を構成する成分としては例えばカリウムK、ナトリウムNa、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つが用いられている。
【0018】
機関吸気通路、燃焼室2およびNOx吸蔵触媒17上流の排気通路内に供給された空気および燃料(炭化水素)の比を排気ガスの空燃比と称すると、NOx吸収剤47は排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOxを吸蔵し、排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸蔵したNOxを放出するNOxの吸放出作用を行う。
【0019】
即ち、NOx吸収剤47を構成する成分としてバリウムBaを用いた場合を例にとって説明すると、排気ガスの空燃比がリーンのとき、即ち排気ガス中の酸素濃度が高いときには排気ガス中に含まれるNOは図3に示されるように白金Pt46上において酸化されてNO2となり、次いでNOx吸収剤47内に吸収されて炭酸バリウムBaCO3と結合しながら硝酸イオンNO3-の形でNOx吸収剤47内に拡散する。このようにしてNOxがNOx吸収剤47内に吸蔵される。排気ガス中の酸素濃度が高い限り白金Pt46の表面でNO2が生成され、NOx吸収剤47のNOx吸収能力が飽和しない限りNO2がNOx吸収剤47内に吸収されて硝酸イオンNO3-が生成される。
【0020】
これに対し、排気ガスの空燃比がリッチ或いは理論空燃比にされると排気ガス中の酸素濃度が低下するために反応が逆方向(NO3-→NO2)に進み、斯くしてNOx吸収剤47内の硝酸イオンNO3-がNO2の形でNOx吸収剤47から放出される。次いで放出されたNOxは排気ガス中に含まれる未燃HC,COによって還元される。
【0021】
このように排気ガスの空燃比がリーンであるとき、即ちリーン空燃比のもとで燃焼が行われているときには排気ガス中のNOxがNOx吸収剤47内に吸蔵される。しかしながらリーン空燃比のもとでの燃焼が継続して行われるとその間にNOx吸収剤47のNOx吸収能力が飽和してしまい、斯くしてNOx吸収剤47によりNOxを吸収できなくなってしまう。そこで本発明による実施例ではNOx吸収剤47の吸収能力が飽和する前に燃料供給弁15から燃料を供給することによって排気ガスの空燃比を一時的にリッチにし、それによってNOx吸収剤47からNOxを放出させるようにしている。
【0022】
ところで排気ガス中にはSOx、即ちSO2が含まれており、このSO2がNOx吸蔵触媒17に流入するとこのSO2は白金Pt46において酸化されてSO3となる。次いでこのSO3はNOx吸収剤47内に吸収されて炭酸バリウムBaCO3と結合しながら、硫酸イオンSO42-の形でNOx吸収剤47内に拡散し、安定した硫酸塩BaSO4を生成する。しかしながらNOx吸収剤47が強い塩基性を有するためにこの硫酸塩BaSO4は安定していて分解しづらく、排気ガスの空燃比を単にリッチにしただけでは硫酸塩BaSO4は分解されずにそのまま残る。従ってNOx吸収剤47内には時間が経過するにつれて硫酸塩BaSO4が増大することになり、斯くして時間が経過するにつれてNOx吸収剤47が吸収しうるNOx量が低下することになる。即ち、NOx吸蔵触媒17がイオウ被毒を生ずることになる。
【0023】
ところでこの場合、NOx吸蔵触媒17の温度を600℃以上のSOx放出温度まで上昇させた状態でNOx吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比をリッチにするとNOx吸収剤47からSOxが放出される。そこで本発明ではNOx吸蔵触媒17がイオウ被毒を生じたときには燃料供給弁15から燃料を供給することによってNOx吸蔵触媒17の温度をSOx放出温度まで上昇させ、NOx吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比をリッチにしてNOx吸蔵触媒17からSOxを放出させるようにしている。
【0024】
さて、図2に示される実施例では燃料供給弁15のノズル口は排気管12の断面の中央に配置されており、このノズル口から小型酸化触媒14の上流側端面に向けて、燃料F、即ち軽油Fが噴射される。このとき小型酸化触媒14が活性化していれば小型酸化触媒14内で燃料が酸化せしめられ、このとき発生する酸化反応熱によって小型酸化触媒14が昇温せしめられる。
【0025】
ところで小型酸化触媒14内は流路抵抗が大きいので小型酸化触媒14内を流れる排気ガス量は少ない。また、小型酸化触媒14内で酸化反応が生じると小型酸化触媒14内でガスが膨張するために小型酸化触媒14内を流れる排気ガス量が更に減少し、また酸化反応によりガス温が上昇するとガスの粘性が高くなるために小型酸化触媒14内を流れる排気ガス量が更に減少する。従って小型酸化触媒14内における排気ガスの流速は排気管12内を流れる排気ガスの流速に比べてかなり遅い。
【0026】
このように小型酸化触媒14内における排気ガスの流速が遅いので小型酸化触媒14内における酸化反応は活発となり、また小型酸化触媒14の体積が小さいので小型酸化触媒14の温度は急速にかなり高温まで上昇する。また、小型酸化触媒14の温度が高くなると炭素数の多い燃料中の炭化水素が分解して炭素数の少ない反応性の高い炭化水素が生成される。即ち燃料が反応性の高い燃料に改質される。従って、小型酸化触媒14に燃料が供給されると小型酸化触媒14は一方では急速に発熱する急速発熱器を構成し、他方では改質された燃料を排出する改質燃料排出器を構成する。
【0027】
ところで小型酸化触媒14により改質された燃料が排気浄化触媒13に送り込まれると排気浄化触媒13の入口部分、即ち排気浄化触媒13の上流側端部において激しい改質燃料の酸化反応が生じる。その結果極めて大きな酸化反応熱が発生するために排気浄化触媒13の上流側端部が熱劣化するという問題を生ずる。
【0028】
そこで本発明では、燃料供給弁15から小型酸化触媒14に燃料を供給する際には供給燃料の一部を図2において矢印Eで示されるように小型酸化触媒14に流入させることなく小型酸化触媒14の側方を通って排気浄化触媒13に流入させるようにしている。このように燃料供給弁15からの供給燃料、即ち軽油の一部が排気浄化触媒13に流入せしめられると排気浄化触媒13の上流側端部には軽油中に含まれる重質の燃料が付着し、排気浄化触媒13に担持されている貴金属触媒等がこの重質の燃料によって覆われてしまう。
【0029】
その結果、排気浄化触媒13の上流側端部の活性が低下するために排気浄化触媒13の上流側端部における酸化反応が抑制され、斯くして排気浄化触媒13の上流側端部が熱劣化するのを阻止できることになる。排気浄化触媒13の上流側端部に付着した重質の燃料は排気浄化触媒13の温度が上昇すると蒸発して排気浄化触媒13内を下流側に流れ、その間に酸化せしめられる。
【0030】
図2に示される実施例では燃料噴射弁15から噴射された燃料Fの一部が矢印Eで示される如く小型酸化触媒14の側方を流通するように、小型酸化触媒14の上流側端面を含む平面内における燃料供給弁15からの噴射燃料噴霧領域がこの上流側端面の領域よりも広くされている。即ち、噴射燃料噴霧領域が小型酸化触媒14の上流側端面の半径方向外方まで広げられている。このようにすると燃料噴霧の周縁部が小型酸化触媒14の周囲を排気浄化装置13に向けて流れることになる。
【0031】
なお、全噴射燃料を小型酸化触媒14の上流側端面に衝突させた場合でも衝突時の反射によってかなりの量の燃料が小型酸化触媒14の側方を飛散する場合がある。このような場合には全噴射燃料が小型酸化触媒14の上流側端面に向かうように燃料噴射弁15から燃料噴射を行うことができる。
【0032】
ところで例えば酸化触媒13が活性化していないときに小型酸化触媒14から改質された燃料を排出させるとこの改質燃料は酸化触媒13で酸化されることなく酸化触媒13を素通りし、斯くして改質燃料が大気中に排出されてしまうという問題を生ずる。また、小型酸化触媒14が活性化していないときに燃料供給弁15から燃料を供給されたとしてもこの供給燃料は小型酸化触媒14において酸化されることもないし、改質されることもない。
【0033】
本発明ではこのような状況を考慮して、目的に応じた最適な燃料供給制御が行われており、以下図4から図11を参照しつつ本発明において実行されている燃料供給制御について順次説明する。なお、図4から図11は燃料供給弁15からの燃料噴射量Q、小型酸化触媒14の温度TA、および排気浄化触媒13の温度TBの変化を示しており、図4から図11において時刻t0は昇温等何らかの目的のために燃料供給弁15から燃料の噴射を開始すべき指令が発せられたときを示している。また、図4から図11は小型酸化触媒14および排気浄化触媒13のいずれも200℃において活性化する場合を例にとって示している。
【0034】
まず初めに図4および図5について説明するとこれら図4および図5は小型酸化触媒14の発生する酸化反応熱によって排気浄化触媒13を活性化させるようにした場合を示している。なお、図4および図5の排気浄化触媒13の温度TBの変化を示す線図において破線は、機関始動時におけるように排気浄化触媒13が活性化していないときに時刻t0において排気浄化触媒13を活性化すべく燃料の噴射指令が発せられた場合を示しており、実線は、時刻t0において排気浄化触媒13が活性化している状態から非活性状態になったときに排気浄化触媒13を活性化すべく燃料の噴射指令が発せられた場合を示している。
【0035】
図4は小型酸化触媒14の温度TAからわかるように時刻t0において小型酸化触媒14が活性化していない場合を示している。小型酸化触媒14が活性化していないときに燃料供給弁15から燃料を噴射させてもこの噴射燃料は小型酸化触媒14において酸化反応を生じない。従ってこの場合には図4に示されるように小型酸化触媒14が活性化した後に燃料供給弁15からの燃料噴射が開始される。
【0036】
燃料供給弁15からの燃料噴射が開始されると小型酸化触媒14内に流入した噴射燃料は小型酸化触媒14内で酸化せしめられ、このとき小型酸化触媒14で発生する酸化反応熱によって排気浄化触媒13が昇温せしめられる。一方、このとき小型酸化触媒14の側方を流通する重質の燃料は排気浄化触媒13に付着する。なお、このとき排気浄化触媒13は非活性状態にあるのでこのとき小型酸化触媒14から改質燃料が排出されるとこの改質燃料は排気浄化触媒13を素通りして大気中に排出されることになる。
【0037】
従ってこのときには小型酸化触媒14が発熱するのに必要な第1の量QAの燃料が燃料供給弁15から供給されることになる。この場合実際には、小型酸化触媒14から改質燃料を全く排出させないようにするのは困難である。従って本発明ではこの第1の量QAは小型酸化触媒14からの改質燃料の流出を抑制しつつ小型酸化触媒14が発熱するのに必要な量とされている。
【0038】
即ち、図4に示される例では排気浄化触媒13が活性化していないとき、又は排気浄化触媒13が活性化している状態から非活性状態になったときに排気浄化触媒13を活性化すべきときには燃料供給弁15から第1の量QAの燃料が供給され、この場合小型酸化触媒14が活性化していないときには小型酸化触媒14が活性化した後に第1の量QAの燃料の供給が開始される。
【0039】
一方、図5は時刻t0において小型酸化触媒14が活性化している場合を示している。この場合には図5に示されるように時刻t0になると燃料供給弁15からただちに第1の量QAの燃料の供給が開始される。なお、図4および図5に示すいずれの場合でも燃料供給弁15からは間欠的にパルス状に燃料が供給され、排気浄化触媒13が活性化すると燃料の供給が停止される。
【0040】
図6から図9は、燃料供給弁15から供給された燃料を小型酸化触媒14により改質して小型酸化触媒14から流出する改質燃料により排気浄化触媒13を昇温させるときの燃料の供給制御を示しており、このときには第1の量QAよりも多い第2の量QBの燃料が燃料供給弁15から間欠的に噴射される。
【0041】
例えばパティキュレートフィルタ16上に堆積したパティキュレートを燃焼させるためにはパティキュレートフィルタ16の温度を600℃程度まで上昇させる必要があり、またNOx吸蔵触媒17からSOxを放出させる場合にもNOx吸蔵触媒17の温度を600℃以上のSOx放出温度まで上昇させる必要がある。このような場合には小型酸化触媒14から多量の改質燃料を排出させてこの改質燃料を排気浄化触媒13内で酸化させ、このとき発生する酸化反応熱でもってパティキュレートフィルタ16又はNOx吸蔵触媒17が昇温せしめられる。
【0042】
小型酸化触媒14から多量の改質燃料を排出させるには、即ち第1の量QAのときに比べて小型酸化触媒14からの改質燃料の流出量を増大させるには燃料供給弁15からの燃料噴射量を増大する必要があり、従ってこのとき噴射される第2の量QBは第1の量QAに比べてかなり増大される。燃料噴射量が増大されると小型酸化触媒14の温度が第1の量QAのときに比べて更に高くなるために小型酸化触媒14の酸化反応熱によっても排気浄化触媒13は昇温され、また小型酸化触媒13が高温になると燃料の改質が更に促進されるので排気浄化触媒13における燃料の酸化反応は更に促進される。従って排気浄化触媒13は急速に昇温せしめられることになる。
【0043】
図6および図7は排気浄化触媒13が活性化しているときに排気浄化触媒13を昇温させる場合を示している。なおこの場合、図6および図7における時刻t0は排気浄化触媒13を昇温すべき指令が発生せしめられたときを示している。
【0044】
図6は時刻t0において小型酸化触媒14が活性化していない場合を示している。この場合には小型酸化触媒14が活性化すると第2の量QBの燃料の供給が開始される。これに対し、図7は時刻t0において小型酸化触媒14が活性化している場合を示している。この場合にはただちに第2の量QBの燃料の供給が開始される。
【0045】
図8および図9は排気浄化触媒13が活性化していないときに時刻t0において排気浄化触媒13を昇温すべき指令が発生された場合を示している。この場合には図8および図9に示されるように第1の量QAを供給することによって小型酸化触媒14を発熱させることにより排気浄化触媒13が活性化した後に第2の量QBの燃料の供給が開始される。ただし、図8に示されるように時刻t0において小型酸化触媒14が活性化していないときには小型酸化触媒14が活性化するのを待って第1の量QAの燃料の供給が開始される。
【0046】
図6から図9に示されるように第2の量QBの燃料の供給が開始されると排気浄化触媒13の温度TBは急速に上昇し、排気浄化触媒13の温度TBが目標とする温度に達すると第2の量QBの燃料の供給が停止される。
【0047】
図10はNOx吸蔵触媒17からNOxを放出すべくNOx吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比をリッチにする場合を示している。このときには燃料供給弁15から第1の量QAおよび第2の量QBに比べて単位時間当りにおける供給量の多い第3の量QNの燃料が供給される。なお、この第3の量QNの燃料の供給は図6から図9に示される第2の量QBの燃料の供給と同じであって小型酸化触媒14および排気浄化触媒13が共に活性化しているときに行われる。
【0048】
一方、前述したようにNOx吸蔵触媒17をSOx放出温度まで昇温させるときには第1の量QAよりも多い第2の量QBの燃料が供給され、図11は、NOx吸蔵触媒17の温度がSOx放出温度まで上昇せしめられた後、NOx吸蔵触媒17からSOxを放出するためにNOx吸蔵触媒17の温度をSOx放出温度に維持しつつNOx吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比をリッチにする場合を示している。この場合には燃料供給弁15から第2の量QBに比べて単位時間当りにおける供給量の多い第4の量QSの燃料が間欠的にSOxの放出処理が完了するまで供給される。
【0049】
なお、本発明による実施例では第1の量QA、第2の量QB、第3の量QNおよび第4の量QSは図12の(A)から(D)に示されるように機関の要求トルクTQおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM32内に記憶されている。
【0050】
図13は機関始動時における触媒活性化制御の一例を示している。この図13も、小型酸化触媒14の活性化する温度TXaが200℃であり、排気浄化触媒13の活性化する温度TXbが200℃である場合を例にとって示されている。なお、図13には排気浄化触媒13に流入する排気ガスの空燃比A/Fの変化も示されている。
【0051】
図13に示される例では機関が始動されたときに小型酸化触媒14が活性化していないときには小型酸化触媒14が活性化するまで排気ガスの温度を上昇せしめる排気昇温制御が行われ、小型酸化触媒14が活性化すると排気浄化触媒13が活性化するまで燃料供給弁15から第1の量QAの燃料が供給される。この排気昇温制御は例えば燃焼室2内への燃料噴射時期を遅らすことによって行われる。
【0052】
このような排気昇温制御は機関運転中に排気浄化触媒13が活性化状態から非活性状態になったときにも行われる。即ち、本発明による実施例では排気浄化触媒13を活性化すべきときに小型酸化触媒14が活性化していないときには小型酸化触媒14が活性化するまで燃焼室2から排出される排気ガスの温度を上昇せしめ排気昇温制御が行われる。なお、この排気昇温制御は行った方が好ましいが必ずしも行う必要はない。
【0053】
図14に触媒の活性化制御ルーチンを示す。このルーチンは一定時間毎の割込みによって実行される。
図14を参照するとまず初めにステップ50において排気浄化触媒13の温度TBが図13に示されるTXbよりも高いか否か、即ち排気浄化触媒13が活性化しているか否かが判別される。排気浄化触媒13が活性化していないときにはステップ51に進んで小型酸化触媒14の温度TAが図13に示されるTXaよりも高いか否か、即ち小型酸化触媒14が活性化しているか否かが判別される。小型酸化触媒14が活性化していないときにはステップ52に進んで排気昇温制御が開始される。
【0054】
次いでステップ51において小型酸化触媒14が活性化したと判断されるとステップ53に進んで燃料供給弁15からの第1の量QAの燃料の噴射が開始される。次いでステップ54では排気昇温制御が停止される。一方、ステップ50において排気浄化触媒13が活性化したと判断されたときにはステップ55に進んで第1の量Qの燃料の噴射が停止される。次いでステップ54に進む。
【0055】
次に図15から図18を参照しつつ本発明による排気浄化処理について説明する。
本発明による実施例ではNOx吸蔵触媒17に単位時間当り吸蔵されるNOx量NOXAが要求トルクTQおよび機関回転数Nの関数として図17(A)に示すマップの形で予めROM32内に記憶されており、このNOx量NOXAを積算することによってNOx吸蔵触媒17に吸蔵されたNOx量ΣNOXが算出される。本発明による実施例では図15に示されるようにこのNOx量ΣNOXが許容値NXに達する毎に燃料供給弁15から第3の量QNの燃料が供給される。このときNOx吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比A/Fが一時的にリッチにされ、それによってNOx吸蔵触媒17からNOxが放出される。
【0056】
一方、排気ガス中に含まれるパティキュレート、即ち粒子状物質はパティキュレートフィルタ16上に捕集され、順次酸化される。しかしながら捕集される粒子状物質の量が酸化される粒子状物質の量よりも多くなると粒子状物質がパティキュレートフィルタ16上に次第に堆積し、この場合粒子状物質の堆積量が増大すると機関出力の低下を招いてしまう。従って粒子状物質の堆積量が増大したときには堆積した粒子状物質を除去しなければならない。この場合、空気過剰のもとでパティキュレートフィルタ16の温度を600℃程度まで上昇させると堆積した粒子状物質が酸化され、除去される。
【0057】
従って本発明による実施例ではパティキュレートフィルタ16上に堆積した粒子状物質の量が許容量を越えたときには排気ガスの空燃比がリーンのもとでパティキュレートフィルタ16の温度を上昇させ、それによって堆積した粒子状物質を酸化除去するようにしている。具体的に言うと本発明による実施例では差圧センサ28により検出されたパティキュレートフィルタ16の前後差圧ΔPが図15に示されるように許容値PXを越えたときに堆積粒子状物質の量が許容量を越えたと判断され、このとき燃料供給弁15から第2の量QBの燃料が噴射される。その結果、パティキュレートフィルタ16に流入する排気ガスの空燃比がリーンに維持されつつパティキュレートフィルタ16の温度Tが昇温せしめられる。なお、パティキュレートフィルタ16の温度Tが高くなるとNOx吸蔵触媒17からNOxが放出されるために捕獲されているNOx量ΣNOXは減少する。
【0058】
一方、前述したようにNOx吸蔵触媒17からSOxを放出させるにはNOx吸蔵触媒17の温度をSOx放出温度まで上昇させかつNOx吸蔵触媒17に送り込まれる排気ガスの空燃比をリッチにする必要がある。そこで本発明による実施例では図16に示されるようにNOx吸蔵触媒17に吸蔵されているSOx量ΣSOXが許容値SXに達したときには燃料供給弁15から第2の量QNの燃料が噴射され、それによってNOx吸蔵触媒17の温度TCがNOx放出温度TXsまで上昇せしめられる。次いで燃料供給弁15から第4の量QSの燃料が噴射され、それによりNOx吸蔵触媒17の温度TCがSOx放出温度TXsに維持されつつNOx吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比がリッチとされる。
【0059】
なお、単位時間当りNOx吸蔵触媒17に吸蔵されるSOx量SOXZは要求トルクTQおよび機関回転数Nの関数として図17(B)に示すようなマップの形で予めROM32内に記憶されており、このSOx量SOXZを積算することにより吸蔵SOx量ΣSOXが算出される。
【0060】
図18に排気浄化処理ルーチンを示す。このルーチンも一定時間毎の割込みによって実行される。
図18を参照するとまず初めにステップ60において図17(A)に示すマップから単位時間当り吸蔵されるNOx量NOXAが算出される。次いでステップ61ではこのNOXAがNOx吸蔵触媒17に吸蔵されているNOx量ΣNOXに加算される。次いでステップ62では吸蔵NOx量ΣNOXが許容値NXを越えたか否かが判別され、ΣNOX>NXとなったときにはステップ63に進んでNOx吸蔵触媒に送り込まれる排気ガスの空燃比を一時的にリーンからリッチに切換えるリッチ処理、即ち燃料供給弁15から第3の量QNの燃料を噴射する処理が行われ、ΣNOXがクリアされる。
【0061】
次いでステップ64では差圧センサ28によりパティキュレートフィルタ16の前後差圧ΔPが検出される。次いでステップ65では差圧ΔPが許容値PXを越えたか否かが判別され、ΔP>PXとなったときにはステップ66に進んでパティキュレートフィルタ16の昇温制御が行われる。この昇温制御はパティキュレートフィルタ16に流入する排気ガスの空燃比をリーンに維持しつつ燃料供給弁15から第2の量QBの燃料を供給することによって行われる。
【0062】
次いでステップ67では図17(B)に示すマップから単位時間当り吸蔵されるSOx量SOXZが算出される。次いでステップ68ではこのSOXZがNOx吸蔵触媒17に吸蔵されているSOx量ΣSOXに加算される。次いでステップ69では吸蔵SOx量ΣSOXが許容値SXを越えたか否かが判別され、ΣSOX>SXとなったときにはステップ70に進んでNOx吸蔵触媒17の温度TCをSOx放出温度TXsまで上昇させる昇温制御、即ち燃料供給弁15からの第2の量QBの燃料の供給制御が行われる。次いでステップ71ではNOx吸蔵触媒17に送り込まれる排気ガスの空燃比をリッチに維持するリッチ処理、即ち燃料供給弁15から第4の量Qの燃料を噴射する処理が行われ、ΣSOXがクリアされる。
【0063】
次に図19および図20を参照しつつ燃料供給弁15の配置、或いは小型酸化触媒14の配置又は形状に関する種々の変形例について順次説明する。
【0064】
まず初めに図19(A)から説明するとこの図19(A)に示される変形例では燃料供給弁15のノズル口が高温の排気ガス流に直接晒されないように排気管12の内壁面上に形成された凹部内に配置されている。また、この実施例では噴射燃料の一部が矢印Eで示される如く小型酸化触媒14の側方を流通するように噴射燃料Fの一部が小型酸化触媒14の円筒状外枠14aの外壁面上に衝突せしめられている。
【0065】
また、図19(B)に示す変形例では小型酸化触媒14の上流側端面上に上流側端面の周縁部から上流に向けて延びるトラフ状の燃料案内部14bが形成されており、燃料供給弁15から燃料案内部14bに向けて燃料が噴射される。この変形例では燃料案内部14bに衝突して反射した燃料の一部が矢印Eで示されるように小型酸化触媒14の側方を流通せしめられる。
【0066】
一方、図19(C)に示される変形例では小型酸化触媒14は排気管12内の周辺部に配置されている。図20(B)は図20(A)のB−B断面に沿ってみた断面図を示している。図20(A),(B)に示される変形例では小型酸化触媒14の中心部に排気ガスの流れ方向に延びる燃料流通用貫通孔48が形成されており、小型酸化触媒14の上流側端面に向けて燃料供給弁15から燃料が噴射される。従ってこの変形例では噴射燃料Fの一部が矢印Eで示されるように貫通孔48内を通って排気浄化触媒13に送り込まれる。
【0067】
図21は排気浄化処理システムの種々の変形例を示している。しかしながらいずれの変形例においても酸化機能を有する排気浄化触媒13の上流に小型酸化触媒14と燃料供給弁15とが配置されていることには変りはない。
【0068】
図21(A)に示される変形例では図1に示される実施例と同様に排気浄化触媒13が酸化触媒からなる。しかしながらこの変形例では酸化触媒13のすぐ下流にNOx吸蔵触媒17が配置され、NOx吸蔵触媒17の下流に酸化触媒80とパティキュレートフィルタ16とが配置されている。更に酸化触媒80の上流にはもう一つの燃料供給弁81が配置されている。
【0069】
一方、図21(B)に示す変形例では排気浄化触媒13がNOx吸蔵触媒から構成される。このNOx吸蔵触媒17の下流には図21(A)と同様に燃料供給弁81、酸化触媒80およびパティキュレートフィルタ16が配置される。図21(A),(B)に示される実施例ではパティキュレートフィルタ16を再生する際には燃料供給弁81のみから、或いは燃料供給弁15に加えて燃料供給弁81からも燃料が供給される。
【0070】
図21(C)に示される変形例では図1に示される実施例と同様に排気浄化触媒13が酸化触媒からなり、酸化触媒13のすぐ下流にパティキュレートフィルタ16が配置されている。しかしながらこの変形例では排気浄化触媒13およびパティキュレートフィルタ16下流の機関排気通路内にアンモニアの存在のもとで排気ガス中のNOxを還元することのできるNOx選択還元触媒17と、NOx選択還元触媒17に尿素水を供給するための尿素水供給弁83とが配置される。尿素水供給弁83からは排気ガス中に含まれるNOxを還元するのに必要な量の尿素水が供給され、排気ガス中のNOxはNOx選択還元触媒82において尿素水から生成されたアンモニアによって還元される。
【0071】
この変形例ではNOx選択還元触媒82を活性化すべきときには図4或いは図5に示されるように燃料供給弁15から第1の量QAの燃料が供給されるか、或いは図6から図9に示されるように第2の量QBの燃料が供給される。即ち、第1の量QAの燃料又は第2の量QBの燃料のいずれか一方又は双方が供給される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】圧縮着火式内燃機関の全体図である。
【図2】図1の小型酸化触媒周りの拡大図である。
【図3】NOxの吸放出作用を説明するための図である。
【図4】燃料供給弁からの第1の量QAの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図5】燃料供給弁からの第1の量QAの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図6】燃料供給弁からの第2の量QBの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図7】燃料供給弁からの第2の量QBの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図8】燃料供給弁からの第2の量QBの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図9】燃料供給弁からの第2の量QBの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図10】燃料供給弁からの第3の量QNの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図11】燃料供給弁からの第4の量QSの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図12】燃料供給量QA,QB,QN,QSのマップを示す図である。
【図13】触媒の活性化制御を示すタイムチャートである。
【図14】触媒の活性化制御を実行するためのフローチャートである。
【図15】NOx放出制御とパティキュレートフィルタの昇温制御を示すタイムチャートである。
【図16】NOx放出制御とSOx放出制御を示すタイムチャートである。
【図17】吸蔵NOx量NOXAおよび吸蔵SOx量SOXZのマップを示す図である。
【図18】排気浄化処理を実行するためのフローチャートである。
【図19】種々の変形例を示す図である。
【図20】変形例を示す図である。
【図21】種々の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
4 吸気マニホルド
5 排気マニホルド
7 排気ターボチャージャ
12 排気管
13 排気浄化触媒
14 小型酸化触媒
15 燃料供給弁
16 パティキュレートフィルタ
17 NOx吸蔵触媒
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機関排気通路内に、流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには排気ガス中に含まれるNOxを吸蔵し流入する排気ガスの空燃比がリッチになると吸蔵したNOxを放出するNOx吸蔵触媒を配置し、NOx吸蔵触媒上流の機関排気通路内に排気通路の断面よりも小さな断面を有する小型の燃料改質触媒を配置して機関から排出された排気ガスの一部を燃料改質触媒内に流通させ、NOx吸蔵触媒からNOxを放出すべきときには燃料改質触媒の上流側端面に向けて燃料を噴射するようにした内燃機関が公知である(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
この内燃機関ではNOx吸蔵触媒からNOxを放出すべきときに噴射された燃料は燃料改質触媒内において改質され、改質された燃料、例えばH2やCOを含む還元能力の高い燃料がNOx吸蔵触媒に送り込まれる。その結果、NOx吸蔵触媒から放出されたNOxが良好に還元せしめられることになる。
【特許文献1】特開2005−127257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのように改質された燃料をNOx吸蔵触媒に送り込むとNOx吸蔵触媒の入口部分、即ちNOx吸蔵触媒の上流側端部において激しい改質燃料の酸化反応が生じ、その結果極めて大きな酸化反応熱が発生するためにNOx吸蔵触媒の上流側端部が熱劣化するという問題を生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するために本発明によれば、機関排気通路内に酸化機能を有する排気浄化触媒を配置し、排気浄化触媒上流の機関排気通路内に排気浄化触媒よりも体積が小さくかつ排気浄化触媒に流入する排気ガスの一部が流通する小型酸化触媒と、この小型酸化触媒に燃料を供給するための燃料供給弁とを配置し、燃料供給弁から供給された燃料を小型酸化触媒において改質するようにした内燃機関の排気浄化装置において、燃料供給弁から小型酸化触媒に燃料を供給する際に供給燃料の一部を小型酸化触媒に流入させることなく小型酸化触媒の側方を通って排気浄化触媒に流入させるようにしている。
【発明の効果】
【0006】
燃料供給弁からの供給燃料の一部が排気浄化触媒に流入せしめられると排気浄化触媒の上流側端部には重質の燃料が付着する。その結果排気浄化触媒の上流側端部の活性が低下するために排気浄化触媒の上流側端部における酸化反応が抑制され、斯くして排気浄化触媒の上流側端部が熱劣化するのが阻止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に圧縮着火式内燃機関の全体図を示す。
図1を参照すると、1は機関本体、2は各気筒の燃焼室、3は各燃焼室2内に夫々燃料を噴射するための電子制御式燃料噴射弁、4は吸気マニホルド、5は排気マニホルドを夫々示す。吸気マニホルド4は吸気ダクト6を介して排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7aの出口に連結され、コンプレッサ7aの入口は吸入空気量検出器8を介してエアクリーナ9に連結される。吸気ダクト6内にはステップモータにより駆動されるスロットル弁10が配置され、更に吸気ダクト6周りには吸気ダクト6内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置11が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置11内に導かれ、機関冷却水によって吸入空気が冷却される。
【0008】
一方、排気マニホルド5は排気ターボチャージャ7の排気タービン7bの入口に連結され、排気タービン7bの出口は排気管12を介して酸化機能を有する排気浄化触媒13に連結される。この排気浄化触媒13上流の機関排気通路内には、即ち排気管12内には排気浄化触媒13よりも体積が小さくかつ排気浄化触媒13に流入する排気ガスの一部が流通する小型酸化触媒14が配置され、この小型酸化触媒14上流の機関排気通路内には、即ち排気管12内には小型酸化触媒14に燃料を供給するための燃料供給弁15が配置される。
【0009】
図1に示される実施例ではこの排気浄化触媒13は酸化触媒からなり、排気浄化触媒13下流の、即ち酸化触媒13下流の機関排気通路内には排気ガス中のパティキュレートを捕集するためのパティキュレートフィルタ16が配置される。また、図1に示される実施例ではパティキュレートフィルタ16下流の機関排気通路内にNOx吸蔵触媒17が配置される。
【0010】
排気マニホルド5と吸気マニホルド4とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路18を介して互いに連結され、EGR通路18内には電子制御式EGR制御弁19が配置される。また、EGR通路18周りにはEGR通路18内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置20が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置20内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。一方、各燃料噴射弁3は燃料供給管21を介してコモンレール22に連結され、このコモンレール22は電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ23を介して燃料タンク24に連結される。燃料タンク24内に貯蔵されている燃料は燃料ポンプ23によってコモンレール22内に供給され、コモンレール22内に供給された燃料は各燃料供給管21を介して燃料噴射弁3に供給される。
【0011】
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。小型酸化触媒14の下流には小型酸化触媒14の温度を検出するための温度センサ25が配置され、パティキュレートフィルタ16の下流には酸化触媒13又はパティキュレートフィルタ16の温度を検出するための温度センサ26が配置され、NOx吸蔵触媒17の下流にはNOx吸蔵触媒17の温度を検出するための温度センサ27が配置され、これら温度センサ25,26,27の出力信号は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。
【0012】
また、パティキュレートフィルタ16にはパティキュレートフィルタ16の前後差圧を検出するための差圧センサ28が取付けられ、この差圧センサ28および吸入空気量検出器8の出力信号は夫々対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁3、スロットル弁10の駆動用ステップモータ、EGR制御弁19および燃料ポンプ23に接続される。
【0013】
図2(A)は図1における小型酸化触媒14周りの拡大図を示しており、図2(B)は図2(A)においてB−B線に沿ってみた断面図を示している。図2(A),(B)に示される実施例では小型酸化触媒14は金属薄肉平板と金属薄肉波形板との積層構造からなる基体を有しており、この基体の表面上に例えばアルミナからなる触媒担体の層が形成されていると共にこの触媒担体上には白金Pt、ロジウムRd、パラジウムPdのような貴金属触媒が担持されている。なお、この基体はコージライトから形成することもできる。
【0014】
図2(A),(B)からわかるようにこの小型酸化触媒14は排気浄化触媒13、即ち酸化触媒13に向かう排気ガスの全流路断面よりも小さな断面、即ち排気管12の断面よりも小さな断面を有していると共に、排気管12内の中央において排気ガスの流れ方向に延びる筒状をなしている。なお、図2(A),(B)に示される実施例では小型酸化触媒14は円筒状外枠14a内に配置されており、この円筒状外枠14aは複数のステー29によって排気管12内に支持されている。
【0015】
酸化触媒13は例えば白金Ptのような貴金属触媒を担持したモノリス触媒から形成されている。これに対し図1に示される実施例ではパティキュレートフィルタ16上には貴金属触媒は担持されていない。しかしながらパティキュレートフィルタ16上に白金Ptのような貴金属触媒を担持させることもでき、この場合には酸化触媒13を省略することもできる。
【0016】
一方、図1に示されるNOx吸蔵触媒17もその基体上には例えばアルミナからなる触媒担体が担持されており、図3はこの触媒担体45の表面部分の断面を図解的に示している。図3に示されるように触媒担体45の表面上には貴金属触媒46が分散して担持されており、更に触媒担体45の表面上にはNOx吸収剤47の層が形成されている。
【0017】
図3に示される例では貴金属触媒46として白金Ptが用いられており、NOx吸収剤47を構成する成分としては例えばカリウムK、ナトリウムNa、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つが用いられている。
【0018】
機関吸気通路、燃焼室2およびNOx吸蔵触媒17上流の排気通路内に供給された空気および燃料(炭化水素)の比を排気ガスの空燃比と称すると、NOx吸収剤47は排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOxを吸蔵し、排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸蔵したNOxを放出するNOxの吸放出作用を行う。
【0019】
即ち、NOx吸収剤47を構成する成分としてバリウムBaを用いた場合を例にとって説明すると、排気ガスの空燃比がリーンのとき、即ち排気ガス中の酸素濃度が高いときには排気ガス中に含まれるNOは図3に示されるように白金Pt46上において酸化されてNO2となり、次いでNOx吸収剤47内に吸収されて炭酸バリウムBaCO3と結合しながら硝酸イオンNO3-の形でNOx吸収剤47内に拡散する。このようにしてNOxがNOx吸収剤47内に吸蔵される。排気ガス中の酸素濃度が高い限り白金Pt46の表面でNO2が生成され、NOx吸収剤47のNOx吸収能力が飽和しない限りNO2がNOx吸収剤47内に吸収されて硝酸イオンNO3-が生成される。
【0020】
これに対し、排気ガスの空燃比がリッチ或いは理論空燃比にされると排気ガス中の酸素濃度が低下するために反応が逆方向(NO3-→NO2)に進み、斯くしてNOx吸収剤47内の硝酸イオンNO3-がNO2の形でNOx吸収剤47から放出される。次いで放出されたNOxは排気ガス中に含まれる未燃HC,COによって還元される。
【0021】
このように排気ガスの空燃比がリーンであるとき、即ちリーン空燃比のもとで燃焼が行われているときには排気ガス中のNOxがNOx吸収剤47内に吸蔵される。しかしながらリーン空燃比のもとでの燃焼が継続して行われるとその間にNOx吸収剤47のNOx吸収能力が飽和してしまい、斯くしてNOx吸収剤47によりNOxを吸収できなくなってしまう。そこで本発明による実施例ではNOx吸収剤47の吸収能力が飽和する前に燃料供給弁15から燃料を供給することによって排気ガスの空燃比を一時的にリッチにし、それによってNOx吸収剤47からNOxを放出させるようにしている。
【0022】
ところで排気ガス中にはSOx、即ちSO2が含まれており、このSO2がNOx吸蔵触媒17に流入するとこのSO2は白金Pt46において酸化されてSO3となる。次いでこのSO3はNOx吸収剤47内に吸収されて炭酸バリウムBaCO3と結合しながら、硫酸イオンSO42-の形でNOx吸収剤47内に拡散し、安定した硫酸塩BaSO4を生成する。しかしながらNOx吸収剤47が強い塩基性を有するためにこの硫酸塩BaSO4は安定していて分解しづらく、排気ガスの空燃比を単にリッチにしただけでは硫酸塩BaSO4は分解されずにそのまま残る。従ってNOx吸収剤47内には時間が経過するにつれて硫酸塩BaSO4が増大することになり、斯くして時間が経過するにつれてNOx吸収剤47が吸収しうるNOx量が低下することになる。即ち、NOx吸蔵触媒17がイオウ被毒を生ずることになる。
【0023】
ところでこの場合、NOx吸蔵触媒17の温度を600℃以上のSOx放出温度まで上昇させた状態でNOx吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比をリッチにするとNOx吸収剤47からSOxが放出される。そこで本発明ではNOx吸蔵触媒17がイオウ被毒を生じたときには燃料供給弁15から燃料を供給することによってNOx吸蔵触媒17の温度をSOx放出温度まで上昇させ、NOx吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比をリッチにしてNOx吸蔵触媒17からSOxを放出させるようにしている。
【0024】
さて、図2に示される実施例では燃料供給弁15のノズル口は排気管12の断面の中央に配置されており、このノズル口から小型酸化触媒14の上流側端面に向けて、燃料F、即ち軽油Fが噴射される。このとき小型酸化触媒14が活性化していれば小型酸化触媒14内で燃料が酸化せしめられ、このとき発生する酸化反応熱によって小型酸化触媒14が昇温せしめられる。
【0025】
ところで小型酸化触媒14内は流路抵抗が大きいので小型酸化触媒14内を流れる排気ガス量は少ない。また、小型酸化触媒14内で酸化反応が生じると小型酸化触媒14内でガスが膨張するために小型酸化触媒14内を流れる排気ガス量が更に減少し、また酸化反応によりガス温が上昇するとガスの粘性が高くなるために小型酸化触媒14内を流れる排気ガス量が更に減少する。従って小型酸化触媒14内における排気ガスの流速は排気管12内を流れる排気ガスの流速に比べてかなり遅い。
【0026】
このように小型酸化触媒14内における排気ガスの流速が遅いので小型酸化触媒14内における酸化反応は活発となり、また小型酸化触媒14の体積が小さいので小型酸化触媒14の温度は急速にかなり高温まで上昇する。また、小型酸化触媒14の温度が高くなると炭素数の多い燃料中の炭化水素が分解して炭素数の少ない反応性の高い炭化水素が生成される。即ち燃料が反応性の高い燃料に改質される。従って、小型酸化触媒14に燃料が供給されると小型酸化触媒14は一方では急速に発熱する急速発熱器を構成し、他方では改質された燃料を排出する改質燃料排出器を構成する。
【0027】
ところで小型酸化触媒14により改質された燃料が排気浄化触媒13に送り込まれると排気浄化触媒13の入口部分、即ち排気浄化触媒13の上流側端部において激しい改質燃料の酸化反応が生じる。その結果極めて大きな酸化反応熱が発生するために排気浄化触媒13の上流側端部が熱劣化するという問題を生ずる。
【0028】
そこで本発明では、燃料供給弁15から小型酸化触媒14に燃料を供給する際には供給燃料の一部を図2において矢印Eで示されるように小型酸化触媒14に流入させることなく小型酸化触媒14の側方を通って排気浄化触媒13に流入させるようにしている。このように燃料供給弁15からの供給燃料、即ち軽油の一部が排気浄化触媒13に流入せしめられると排気浄化触媒13の上流側端部には軽油中に含まれる重質の燃料が付着し、排気浄化触媒13に担持されている貴金属触媒等がこの重質の燃料によって覆われてしまう。
【0029】
その結果、排気浄化触媒13の上流側端部の活性が低下するために排気浄化触媒13の上流側端部における酸化反応が抑制され、斯くして排気浄化触媒13の上流側端部が熱劣化するのを阻止できることになる。排気浄化触媒13の上流側端部に付着した重質の燃料は排気浄化触媒13の温度が上昇すると蒸発して排気浄化触媒13内を下流側に流れ、その間に酸化せしめられる。
【0030】
図2に示される実施例では燃料噴射弁15から噴射された燃料Fの一部が矢印Eで示される如く小型酸化触媒14の側方を流通するように、小型酸化触媒14の上流側端面を含む平面内における燃料供給弁15からの噴射燃料噴霧領域がこの上流側端面の領域よりも広くされている。即ち、噴射燃料噴霧領域が小型酸化触媒14の上流側端面の半径方向外方まで広げられている。このようにすると燃料噴霧の周縁部が小型酸化触媒14の周囲を排気浄化装置13に向けて流れることになる。
【0031】
なお、全噴射燃料を小型酸化触媒14の上流側端面に衝突させた場合でも衝突時の反射によってかなりの量の燃料が小型酸化触媒14の側方を飛散する場合がある。このような場合には全噴射燃料が小型酸化触媒14の上流側端面に向かうように燃料噴射弁15から燃料噴射を行うことができる。
【0032】
ところで例えば酸化触媒13が活性化していないときに小型酸化触媒14から改質された燃料を排出させるとこの改質燃料は酸化触媒13で酸化されることなく酸化触媒13を素通りし、斯くして改質燃料が大気中に排出されてしまうという問題を生ずる。また、小型酸化触媒14が活性化していないときに燃料供給弁15から燃料を供給されたとしてもこの供給燃料は小型酸化触媒14において酸化されることもないし、改質されることもない。
【0033】
本発明ではこのような状況を考慮して、目的に応じた最適な燃料供給制御が行われており、以下図4から図11を参照しつつ本発明において実行されている燃料供給制御について順次説明する。なお、図4から図11は燃料供給弁15からの燃料噴射量Q、小型酸化触媒14の温度TA、および排気浄化触媒13の温度TBの変化を示しており、図4から図11において時刻t0は昇温等何らかの目的のために燃料供給弁15から燃料の噴射を開始すべき指令が発せられたときを示している。また、図4から図11は小型酸化触媒14および排気浄化触媒13のいずれも200℃において活性化する場合を例にとって示している。
【0034】
まず初めに図4および図5について説明するとこれら図4および図5は小型酸化触媒14の発生する酸化反応熱によって排気浄化触媒13を活性化させるようにした場合を示している。なお、図4および図5の排気浄化触媒13の温度TBの変化を示す線図において破線は、機関始動時におけるように排気浄化触媒13が活性化していないときに時刻t0において排気浄化触媒13を活性化すべく燃料の噴射指令が発せられた場合を示しており、実線は、時刻t0において排気浄化触媒13が活性化している状態から非活性状態になったときに排気浄化触媒13を活性化すべく燃料の噴射指令が発せられた場合を示している。
【0035】
図4は小型酸化触媒14の温度TAからわかるように時刻t0において小型酸化触媒14が活性化していない場合を示している。小型酸化触媒14が活性化していないときに燃料供給弁15から燃料を噴射させてもこの噴射燃料は小型酸化触媒14において酸化反応を生じない。従ってこの場合には図4に示されるように小型酸化触媒14が活性化した後に燃料供給弁15からの燃料噴射が開始される。
【0036】
燃料供給弁15からの燃料噴射が開始されると小型酸化触媒14内に流入した噴射燃料は小型酸化触媒14内で酸化せしめられ、このとき小型酸化触媒14で発生する酸化反応熱によって排気浄化触媒13が昇温せしめられる。一方、このとき小型酸化触媒14の側方を流通する重質の燃料は排気浄化触媒13に付着する。なお、このとき排気浄化触媒13は非活性状態にあるのでこのとき小型酸化触媒14から改質燃料が排出されるとこの改質燃料は排気浄化触媒13を素通りして大気中に排出されることになる。
【0037】
従ってこのときには小型酸化触媒14が発熱するのに必要な第1の量QAの燃料が燃料供給弁15から供給されることになる。この場合実際には、小型酸化触媒14から改質燃料を全く排出させないようにするのは困難である。従って本発明ではこの第1の量QAは小型酸化触媒14からの改質燃料の流出を抑制しつつ小型酸化触媒14が発熱するのに必要な量とされている。
【0038】
即ち、図4に示される例では排気浄化触媒13が活性化していないとき、又は排気浄化触媒13が活性化している状態から非活性状態になったときに排気浄化触媒13を活性化すべきときには燃料供給弁15から第1の量QAの燃料が供給され、この場合小型酸化触媒14が活性化していないときには小型酸化触媒14が活性化した後に第1の量QAの燃料の供給が開始される。
【0039】
一方、図5は時刻t0において小型酸化触媒14が活性化している場合を示している。この場合には図5に示されるように時刻t0になると燃料供給弁15からただちに第1の量QAの燃料の供給が開始される。なお、図4および図5に示すいずれの場合でも燃料供給弁15からは間欠的にパルス状に燃料が供給され、排気浄化触媒13が活性化すると燃料の供給が停止される。
【0040】
図6から図9は、燃料供給弁15から供給された燃料を小型酸化触媒14により改質して小型酸化触媒14から流出する改質燃料により排気浄化触媒13を昇温させるときの燃料の供給制御を示しており、このときには第1の量QAよりも多い第2の量QBの燃料が燃料供給弁15から間欠的に噴射される。
【0041】
例えばパティキュレートフィルタ16上に堆積したパティキュレートを燃焼させるためにはパティキュレートフィルタ16の温度を600℃程度まで上昇させる必要があり、またNOx吸蔵触媒17からSOxを放出させる場合にもNOx吸蔵触媒17の温度を600℃以上のSOx放出温度まで上昇させる必要がある。このような場合には小型酸化触媒14から多量の改質燃料を排出させてこの改質燃料を排気浄化触媒13内で酸化させ、このとき発生する酸化反応熱でもってパティキュレートフィルタ16又はNOx吸蔵触媒17が昇温せしめられる。
【0042】
小型酸化触媒14から多量の改質燃料を排出させるには、即ち第1の量QAのときに比べて小型酸化触媒14からの改質燃料の流出量を増大させるには燃料供給弁15からの燃料噴射量を増大する必要があり、従ってこのとき噴射される第2の量QBは第1の量QAに比べてかなり増大される。燃料噴射量が増大されると小型酸化触媒14の温度が第1の量QAのときに比べて更に高くなるために小型酸化触媒14の酸化反応熱によっても排気浄化触媒13は昇温され、また小型酸化触媒13が高温になると燃料の改質が更に促進されるので排気浄化触媒13における燃料の酸化反応は更に促進される。従って排気浄化触媒13は急速に昇温せしめられることになる。
【0043】
図6および図7は排気浄化触媒13が活性化しているときに排気浄化触媒13を昇温させる場合を示している。なおこの場合、図6および図7における時刻t0は排気浄化触媒13を昇温すべき指令が発生せしめられたときを示している。
【0044】
図6は時刻t0において小型酸化触媒14が活性化していない場合を示している。この場合には小型酸化触媒14が活性化すると第2の量QBの燃料の供給が開始される。これに対し、図7は時刻t0において小型酸化触媒14が活性化している場合を示している。この場合にはただちに第2の量QBの燃料の供給が開始される。
【0045】
図8および図9は排気浄化触媒13が活性化していないときに時刻t0において排気浄化触媒13を昇温すべき指令が発生された場合を示している。この場合には図8および図9に示されるように第1の量QAを供給することによって小型酸化触媒14を発熱させることにより排気浄化触媒13が活性化した後に第2の量QBの燃料の供給が開始される。ただし、図8に示されるように時刻t0において小型酸化触媒14が活性化していないときには小型酸化触媒14が活性化するのを待って第1の量QAの燃料の供給が開始される。
【0046】
図6から図9に示されるように第2の量QBの燃料の供給が開始されると排気浄化触媒13の温度TBは急速に上昇し、排気浄化触媒13の温度TBが目標とする温度に達すると第2の量QBの燃料の供給が停止される。
【0047】
図10はNOx吸蔵触媒17からNOxを放出すべくNOx吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比をリッチにする場合を示している。このときには燃料供給弁15から第1の量QAおよび第2の量QBに比べて単位時間当りにおける供給量の多い第3の量QNの燃料が供給される。なお、この第3の量QNの燃料の供給は図6から図9に示される第2の量QBの燃料の供給と同じであって小型酸化触媒14および排気浄化触媒13が共に活性化しているときに行われる。
【0048】
一方、前述したようにNOx吸蔵触媒17をSOx放出温度まで昇温させるときには第1の量QAよりも多い第2の量QBの燃料が供給され、図11は、NOx吸蔵触媒17の温度がSOx放出温度まで上昇せしめられた後、NOx吸蔵触媒17からSOxを放出するためにNOx吸蔵触媒17の温度をSOx放出温度に維持しつつNOx吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比をリッチにする場合を示している。この場合には燃料供給弁15から第2の量QBに比べて単位時間当りにおける供給量の多い第4の量QSの燃料が間欠的にSOxの放出処理が完了するまで供給される。
【0049】
なお、本発明による実施例では第1の量QA、第2の量QB、第3の量QNおよび第4の量QSは図12の(A)から(D)に示されるように機関の要求トルクTQおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM32内に記憶されている。
【0050】
図13は機関始動時における触媒活性化制御の一例を示している。この図13も、小型酸化触媒14の活性化する温度TXaが200℃であり、排気浄化触媒13の活性化する温度TXbが200℃である場合を例にとって示されている。なお、図13には排気浄化触媒13に流入する排気ガスの空燃比A/Fの変化も示されている。
【0051】
図13に示される例では機関が始動されたときに小型酸化触媒14が活性化していないときには小型酸化触媒14が活性化するまで排気ガスの温度を上昇せしめる排気昇温制御が行われ、小型酸化触媒14が活性化すると排気浄化触媒13が活性化するまで燃料供給弁15から第1の量QAの燃料が供給される。この排気昇温制御は例えば燃焼室2内への燃料噴射時期を遅らすことによって行われる。
【0052】
このような排気昇温制御は機関運転中に排気浄化触媒13が活性化状態から非活性状態になったときにも行われる。即ち、本発明による実施例では排気浄化触媒13を活性化すべきときに小型酸化触媒14が活性化していないときには小型酸化触媒14が活性化するまで燃焼室2から排出される排気ガスの温度を上昇せしめ排気昇温制御が行われる。なお、この排気昇温制御は行った方が好ましいが必ずしも行う必要はない。
【0053】
図14に触媒の活性化制御ルーチンを示す。このルーチンは一定時間毎の割込みによって実行される。
図14を参照するとまず初めにステップ50において排気浄化触媒13の温度TBが図13に示されるTXbよりも高いか否か、即ち排気浄化触媒13が活性化しているか否かが判別される。排気浄化触媒13が活性化していないときにはステップ51に進んで小型酸化触媒14の温度TAが図13に示されるTXaよりも高いか否か、即ち小型酸化触媒14が活性化しているか否かが判別される。小型酸化触媒14が活性化していないときにはステップ52に進んで排気昇温制御が開始される。
【0054】
次いでステップ51において小型酸化触媒14が活性化したと判断されるとステップ53に進んで燃料供給弁15からの第1の量QAの燃料の噴射が開始される。次いでステップ54では排気昇温制御が停止される。一方、ステップ50において排気浄化触媒13が活性化したと判断されたときにはステップ55に進んで第1の量Qの燃料の噴射が停止される。次いでステップ54に進む。
【0055】
次に図15から図18を参照しつつ本発明による排気浄化処理について説明する。
本発明による実施例ではNOx吸蔵触媒17に単位時間当り吸蔵されるNOx量NOXAが要求トルクTQおよび機関回転数Nの関数として図17(A)に示すマップの形で予めROM32内に記憶されており、このNOx量NOXAを積算することによってNOx吸蔵触媒17に吸蔵されたNOx量ΣNOXが算出される。本発明による実施例では図15に示されるようにこのNOx量ΣNOXが許容値NXに達する毎に燃料供給弁15から第3の量QNの燃料が供給される。このときNOx吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比A/Fが一時的にリッチにされ、それによってNOx吸蔵触媒17からNOxが放出される。
【0056】
一方、排気ガス中に含まれるパティキュレート、即ち粒子状物質はパティキュレートフィルタ16上に捕集され、順次酸化される。しかしながら捕集される粒子状物質の量が酸化される粒子状物質の量よりも多くなると粒子状物質がパティキュレートフィルタ16上に次第に堆積し、この場合粒子状物質の堆積量が増大すると機関出力の低下を招いてしまう。従って粒子状物質の堆積量が増大したときには堆積した粒子状物質を除去しなければならない。この場合、空気過剰のもとでパティキュレートフィルタ16の温度を600℃程度まで上昇させると堆積した粒子状物質が酸化され、除去される。
【0057】
従って本発明による実施例ではパティキュレートフィルタ16上に堆積した粒子状物質の量が許容量を越えたときには排気ガスの空燃比がリーンのもとでパティキュレートフィルタ16の温度を上昇させ、それによって堆積した粒子状物質を酸化除去するようにしている。具体的に言うと本発明による実施例では差圧センサ28により検出されたパティキュレートフィルタ16の前後差圧ΔPが図15に示されるように許容値PXを越えたときに堆積粒子状物質の量が許容量を越えたと判断され、このとき燃料供給弁15から第2の量QBの燃料が噴射される。その結果、パティキュレートフィルタ16に流入する排気ガスの空燃比がリーンに維持されつつパティキュレートフィルタ16の温度Tが昇温せしめられる。なお、パティキュレートフィルタ16の温度Tが高くなるとNOx吸蔵触媒17からNOxが放出されるために捕獲されているNOx量ΣNOXは減少する。
【0058】
一方、前述したようにNOx吸蔵触媒17からSOxを放出させるにはNOx吸蔵触媒17の温度をSOx放出温度まで上昇させかつNOx吸蔵触媒17に送り込まれる排気ガスの空燃比をリッチにする必要がある。そこで本発明による実施例では図16に示されるようにNOx吸蔵触媒17に吸蔵されているSOx量ΣSOXが許容値SXに達したときには燃料供給弁15から第2の量QNの燃料が噴射され、それによってNOx吸蔵触媒17の温度TCがNOx放出温度TXsまで上昇せしめられる。次いで燃料供給弁15から第4の量QSの燃料が噴射され、それによりNOx吸蔵触媒17の温度TCがSOx放出温度TXsに維持されつつNOx吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比がリッチとされる。
【0059】
なお、単位時間当りNOx吸蔵触媒17に吸蔵されるSOx量SOXZは要求トルクTQおよび機関回転数Nの関数として図17(B)に示すようなマップの形で予めROM32内に記憶されており、このSOx量SOXZを積算することにより吸蔵SOx量ΣSOXが算出される。
【0060】
図18に排気浄化処理ルーチンを示す。このルーチンも一定時間毎の割込みによって実行される。
図18を参照するとまず初めにステップ60において図17(A)に示すマップから単位時間当り吸蔵されるNOx量NOXAが算出される。次いでステップ61ではこのNOXAがNOx吸蔵触媒17に吸蔵されているNOx量ΣNOXに加算される。次いでステップ62では吸蔵NOx量ΣNOXが許容値NXを越えたか否かが判別され、ΣNOX>NXとなったときにはステップ63に進んでNOx吸蔵触媒に送り込まれる排気ガスの空燃比を一時的にリーンからリッチに切換えるリッチ処理、即ち燃料供給弁15から第3の量QNの燃料を噴射する処理が行われ、ΣNOXがクリアされる。
【0061】
次いでステップ64では差圧センサ28によりパティキュレートフィルタ16の前後差圧ΔPが検出される。次いでステップ65では差圧ΔPが許容値PXを越えたか否かが判別され、ΔP>PXとなったときにはステップ66に進んでパティキュレートフィルタ16の昇温制御が行われる。この昇温制御はパティキュレートフィルタ16に流入する排気ガスの空燃比をリーンに維持しつつ燃料供給弁15から第2の量QBの燃料を供給することによって行われる。
【0062】
次いでステップ67では図17(B)に示すマップから単位時間当り吸蔵されるSOx量SOXZが算出される。次いでステップ68ではこのSOXZがNOx吸蔵触媒17に吸蔵されているSOx量ΣSOXに加算される。次いでステップ69では吸蔵SOx量ΣSOXが許容値SXを越えたか否かが判別され、ΣSOX>SXとなったときにはステップ70に進んでNOx吸蔵触媒17の温度TCをSOx放出温度TXsまで上昇させる昇温制御、即ち燃料供給弁15からの第2の量QBの燃料の供給制御が行われる。次いでステップ71ではNOx吸蔵触媒17に送り込まれる排気ガスの空燃比をリッチに維持するリッチ処理、即ち燃料供給弁15から第4の量Qの燃料を噴射する処理が行われ、ΣSOXがクリアされる。
【0063】
次に図19および図20を参照しつつ燃料供給弁15の配置、或いは小型酸化触媒14の配置又は形状に関する種々の変形例について順次説明する。
【0064】
まず初めに図19(A)から説明するとこの図19(A)に示される変形例では燃料供給弁15のノズル口が高温の排気ガス流に直接晒されないように排気管12の内壁面上に形成された凹部内に配置されている。また、この実施例では噴射燃料の一部が矢印Eで示される如く小型酸化触媒14の側方を流通するように噴射燃料Fの一部が小型酸化触媒14の円筒状外枠14aの外壁面上に衝突せしめられている。
【0065】
また、図19(B)に示す変形例では小型酸化触媒14の上流側端面上に上流側端面の周縁部から上流に向けて延びるトラフ状の燃料案内部14bが形成されており、燃料供給弁15から燃料案内部14bに向けて燃料が噴射される。この変形例では燃料案内部14bに衝突して反射した燃料の一部が矢印Eで示されるように小型酸化触媒14の側方を流通せしめられる。
【0066】
一方、図19(C)に示される変形例では小型酸化触媒14は排気管12内の周辺部に配置されている。図20(B)は図20(A)のB−B断面に沿ってみた断面図を示している。図20(A),(B)に示される変形例では小型酸化触媒14の中心部に排気ガスの流れ方向に延びる燃料流通用貫通孔48が形成されており、小型酸化触媒14の上流側端面に向けて燃料供給弁15から燃料が噴射される。従ってこの変形例では噴射燃料Fの一部が矢印Eで示されるように貫通孔48内を通って排気浄化触媒13に送り込まれる。
【0067】
図21は排気浄化処理システムの種々の変形例を示している。しかしながらいずれの変形例においても酸化機能を有する排気浄化触媒13の上流に小型酸化触媒14と燃料供給弁15とが配置されていることには変りはない。
【0068】
図21(A)に示される変形例では図1に示される実施例と同様に排気浄化触媒13が酸化触媒からなる。しかしながらこの変形例では酸化触媒13のすぐ下流にNOx吸蔵触媒17が配置され、NOx吸蔵触媒17の下流に酸化触媒80とパティキュレートフィルタ16とが配置されている。更に酸化触媒80の上流にはもう一つの燃料供給弁81が配置されている。
【0069】
一方、図21(B)に示す変形例では排気浄化触媒13がNOx吸蔵触媒から構成される。このNOx吸蔵触媒17の下流には図21(A)と同様に燃料供給弁81、酸化触媒80およびパティキュレートフィルタ16が配置される。図21(A),(B)に示される実施例ではパティキュレートフィルタ16を再生する際には燃料供給弁81のみから、或いは燃料供給弁15に加えて燃料供給弁81からも燃料が供給される。
【0070】
図21(C)に示される変形例では図1に示される実施例と同様に排気浄化触媒13が酸化触媒からなり、酸化触媒13のすぐ下流にパティキュレートフィルタ16が配置されている。しかしながらこの変形例では排気浄化触媒13およびパティキュレートフィルタ16下流の機関排気通路内にアンモニアの存在のもとで排気ガス中のNOxを還元することのできるNOx選択還元触媒17と、NOx選択還元触媒17に尿素水を供給するための尿素水供給弁83とが配置される。尿素水供給弁83からは排気ガス中に含まれるNOxを還元するのに必要な量の尿素水が供給され、排気ガス中のNOxはNOx選択還元触媒82において尿素水から生成されたアンモニアによって還元される。
【0071】
この変形例ではNOx選択還元触媒82を活性化すべきときには図4或いは図5に示されるように燃料供給弁15から第1の量QAの燃料が供給されるか、或いは図6から図9に示されるように第2の量QBの燃料が供給される。即ち、第1の量QAの燃料又は第2の量QBの燃料のいずれか一方又は双方が供給される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】圧縮着火式内燃機関の全体図である。
【図2】図1の小型酸化触媒周りの拡大図である。
【図3】NOxの吸放出作用を説明するための図である。
【図4】燃料供給弁からの第1の量QAの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図5】燃料供給弁からの第1の量QAの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図6】燃料供給弁からの第2の量QBの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図7】燃料供給弁からの第2の量QBの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図8】燃料供給弁からの第2の量QBの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図9】燃料供給弁からの第2の量QBの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図10】燃料供給弁からの第3の量QNの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図11】燃料供給弁からの第4の量QSの燃料の供給制御を示すタイムチャートである。
【図12】燃料供給量QA,QB,QN,QSのマップを示す図である。
【図13】触媒の活性化制御を示すタイムチャートである。
【図14】触媒の活性化制御を実行するためのフローチャートである。
【図15】NOx放出制御とパティキュレートフィルタの昇温制御を示すタイムチャートである。
【図16】NOx放出制御とSOx放出制御を示すタイムチャートである。
【図17】吸蔵NOx量NOXAおよび吸蔵SOx量SOXZのマップを示す図である。
【図18】排気浄化処理を実行するためのフローチャートである。
【図19】種々の変形例を示す図である。
【図20】変形例を示す図である。
【図21】種々の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
4 吸気マニホルド
5 排気マニホルド
7 排気ターボチャージャ
12 排気管
13 排気浄化触媒
14 小型酸化触媒
15 燃料供給弁
16 パティキュレートフィルタ
17 NOx吸蔵触媒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関排気通路内に酸化機能を有する排気浄化触媒を配置し、該排気浄化触媒上流の機関排気通路内に該排気浄化触媒よりも体積が小さくかつ排気浄化触媒に流入する排気ガスの一部が流通する小型酸化触媒と、該小型酸化触媒に燃料を供給するための燃料供給弁とを配置し、該燃料供給弁から供給された燃料を小型酸化触媒において改質するようにした内燃機関の排気浄化装置において、該燃料供給弁から小型酸化触媒に燃料を供給する際に供給燃料の一部を小型酸化触媒に流入させることなく小型酸化触媒の側方を通って排気浄化触媒に流入させるようにした内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
上記小型酸化触媒は排気浄化触媒に向かう排気ガスの全流路断面よりも小さな断面を有すると共に排気ガスの流れ方向に延びる筒状をなす請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
燃料供給弁から小型酸化触媒の上流側端面に向けて燃料が噴射される請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
上記上流側端面を含む平面内における燃料供給弁からの噴射燃料噴霧領域が該上流側端面の領域よりも広い請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
小型酸化触媒の中心部に排気ガスの流れ方向に延びる燃料流通用貫通孔が形成されている請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
小型酸化触媒の上流側端面上に該上流側端面の周縁部から上流に向けて延びる燃料案内部が形成されており、燃料供給弁から該燃料案内部に向けて燃料が噴射される請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
上記小型酸化触媒は排気浄化触媒に向かう排気ガスが流通する排気管内の中央に配置されている請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
上記燃料供給弁から供給された燃料により小型酸化触媒で発生する酸化反応熱でもって排気浄化触媒を昇温させるときには小型酸化触媒が発熱するのに必要な第1の量の燃料を燃料供給弁から供給し、該燃料供給弁から供給された燃料を小型酸化触媒により改質して小型酸化触媒から流出する改質燃料により排気浄化触媒を昇温させるとき、或いは排気浄化触媒において排気浄化処理を行うときには上記第1の量よりも多くの燃料を燃料供給弁から供給するようにした請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
上記第1の量は小型酸化触媒からの改質燃料の流出を抑制しつつ小型酸化触媒が発熱するのに必要な量とされており、上記第1の量よりも多くの燃料を燃料供給弁から供給するときには小型酸化触媒からの改質燃料の流出量が増大せしめられる請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
排気浄化触媒が活性化していないとき、又は排気浄化触媒が活性化している状態から非活性状態になったときに排気浄化触媒を活性化すべきときには上記第1の量の燃料が供給され、それによって小型酸化触媒が発熱せしめられる請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項11】
排気浄化触媒を活性化すべきときに小型酸化触媒が活性化していないときには小型酸化触媒が活性化した後に上記第1の量の燃料の供給が開始される請求項10に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項12】
排気浄化触媒を活性化すべきときに小型酸化触媒が活性化していないときには小型酸化触媒が活性化するまで燃焼室から排出される排気ガスの温度が上昇せしめられる請求項11に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項13】
排気浄化触媒を昇温すべきときに排気浄化触媒が活性化していないときには小型酸化触媒を発熱させることにより排気浄化触媒が活性化した後に燃料供給弁から第1の量よりも多い第2の量の燃料の供給が開始される請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項14】
排気浄化触媒を昇温すべきときに排気浄化触媒が活性化しているときには、小型酸化触媒が活性化していればただちに、小型酸化触媒が活性化していなければ小型酸化触媒が活性化した後に燃料供給弁から上記第1の量よりも多い第2の量の燃料の供給が開始される請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項15】
排気浄化触媒が酸化触媒からなると共に排気浄化触媒下流の機関排気通路内に排気ガス中のパティキュレートを捕集するためのパティキュレートフィルタが配置され、パティキュレートフィルタを再生すべくパティキュレートフィルタを昇温させるときには燃料供給弁から上記第1の量よりも多い第2の量の燃料が供給される請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項16】
排気浄化触媒は、流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには排気ガス中に含まれるNOxを吸蔵し流入する排気ガスの空燃比がリッチになると吸蔵したNOxを放出するNOx吸蔵触媒から構成されており、NOx吸蔵触媒からNOxを放出すべく排気ガスの空燃比をリッチにするときには燃料供給弁から上記第1の量に比べて単位時間当りにおける供給量の多い第3の量の燃料が供給される請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項17】
NOx吸蔵触媒をSOx放出温度まで昇温させるときには燃料供給弁から上記第1の量よりも多い第2の量の燃料が供給され、NOx吸蔵触媒からSOxを放出するためにNOx吸蔵触媒の温度をSOx放出温度に維持しつつ排気ガスの空燃比をリッチにするときには燃料供給弁から上記第2の量に比べて単位時間当りにおける供給量の多い第4の量の燃料が供給される請求項16に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項18】
排気浄化触媒下流の機関排気通路内にアンモニアの存在のもとで排気ガス中のNOxを還元することのできるNOx選択還元触媒と、NOx選択還元触媒に尿素水を供給するための尿素水供給弁とが配置されており、NOx選択還元触媒を活性化すべきときには燃料供給弁から上記第1の量の燃料又は該第1の量の燃料よりも多い第2の量の燃料のいずれか一方が供給される請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項1】
機関排気通路内に酸化機能を有する排気浄化触媒を配置し、該排気浄化触媒上流の機関排気通路内に該排気浄化触媒よりも体積が小さくかつ排気浄化触媒に流入する排気ガスの一部が流通する小型酸化触媒と、該小型酸化触媒に燃料を供給するための燃料供給弁とを配置し、該燃料供給弁から供給された燃料を小型酸化触媒において改質するようにした内燃機関の排気浄化装置において、該燃料供給弁から小型酸化触媒に燃料を供給する際に供給燃料の一部を小型酸化触媒に流入させることなく小型酸化触媒の側方を通って排気浄化触媒に流入させるようにした内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
上記小型酸化触媒は排気浄化触媒に向かう排気ガスの全流路断面よりも小さな断面を有すると共に排気ガスの流れ方向に延びる筒状をなす請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
燃料供給弁から小型酸化触媒の上流側端面に向けて燃料が噴射される請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
上記上流側端面を含む平面内における燃料供給弁からの噴射燃料噴霧領域が該上流側端面の領域よりも広い請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
小型酸化触媒の中心部に排気ガスの流れ方向に延びる燃料流通用貫通孔が形成されている請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
小型酸化触媒の上流側端面上に該上流側端面の周縁部から上流に向けて延びる燃料案内部が形成されており、燃料供給弁から該燃料案内部に向けて燃料が噴射される請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
上記小型酸化触媒は排気浄化触媒に向かう排気ガスが流通する排気管内の中央に配置されている請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
上記燃料供給弁から供給された燃料により小型酸化触媒で発生する酸化反応熱でもって排気浄化触媒を昇温させるときには小型酸化触媒が発熱するのに必要な第1の量の燃料を燃料供給弁から供給し、該燃料供給弁から供給された燃料を小型酸化触媒により改質して小型酸化触媒から流出する改質燃料により排気浄化触媒を昇温させるとき、或いは排気浄化触媒において排気浄化処理を行うときには上記第1の量よりも多くの燃料を燃料供給弁から供給するようにした請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
上記第1の量は小型酸化触媒からの改質燃料の流出を抑制しつつ小型酸化触媒が発熱するのに必要な量とされており、上記第1の量よりも多くの燃料を燃料供給弁から供給するときには小型酸化触媒からの改質燃料の流出量が増大せしめられる請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
排気浄化触媒が活性化していないとき、又は排気浄化触媒が活性化している状態から非活性状態になったときに排気浄化触媒を活性化すべきときには上記第1の量の燃料が供給され、それによって小型酸化触媒が発熱せしめられる請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項11】
排気浄化触媒を活性化すべきときに小型酸化触媒が活性化していないときには小型酸化触媒が活性化した後に上記第1の量の燃料の供給が開始される請求項10に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項12】
排気浄化触媒を活性化すべきときに小型酸化触媒が活性化していないときには小型酸化触媒が活性化するまで燃焼室から排出される排気ガスの温度が上昇せしめられる請求項11に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項13】
排気浄化触媒を昇温すべきときに排気浄化触媒が活性化していないときには小型酸化触媒を発熱させることにより排気浄化触媒が活性化した後に燃料供給弁から第1の量よりも多い第2の量の燃料の供給が開始される請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項14】
排気浄化触媒を昇温すべきときに排気浄化触媒が活性化しているときには、小型酸化触媒が活性化していればただちに、小型酸化触媒が活性化していなければ小型酸化触媒が活性化した後に燃料供給弁から上記第1の量よりも多い第2の量の燃料の供給が開始される請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項15】
排気浄化触媒が酸化触媒からなると共に排気浄化触媒下流の機関排気通路内に排気ガス中のパティキュレートを捕集するためのパティキュレートフィルタが配置され、パティキュレートフィルタを再生すべくパティキュレートフィルタを昇温させるときには燃料供給弁から上記第1の量よりも多い第2の量の燃料が供給される請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項16】
排気浄化触媒は、流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには排気ガス中に含まれるNOxを吸蔵し流入する排気ガスの空燃比がリッチになると吸蔵したNOxを放出するNOx吸蔵触媒から構成されており、NOx吸蔵触媒からNOxを放出すべく排気ガスの空燃比をリッチにするときには燃料供給弁から上記第1の量に比べて単位時間当りにおける供給量の多い第3の量の燃料が供給される請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項17】
NOx吸蔵触媒をSOx放出温度まで昇温させるときには燃料供給弁から上記第1の量よりも多い第2の量の燃料が供給され、NOx吸蔵触媒からSOxを放出するためにNOx吸蔵触媒の温度をSOx放出温度に維持しつつ排気ガスの空燃比をリッチにするときには燃料供給弁から上記第2の量に比べて単位時間当りにおける供給量の多い第4の量の燃料が供給される請求項16に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項18】
排気浄化触媒下流の機関排気通路内にアンモニアの存在のもとで排気ガス中のNOxを還元することのできるNOx選択還元触媒と、NOx選択還元触媒に尿素水を供給するための尿素水供給弁とが配置されており、NOx選択還元触媒を活性化すべきときには燃料供給弁から上記第1の量の燃料又は該第1の量の燃料よりも多い第2の量の燃料のいずれか一方が供給される請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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【図11】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−156164(P2009−156164A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335212(P2007−335212)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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