内燃機関の電子制御装置
【課題】演算処理が過負荷状態であることを精度良く判定することのできる内燃機関の電子制御装置を提供する。
【解決手段】ECU40において演算処理を実行するCPU41は、内燃機関10のクランク軸17の回転に同期して実行が要求される回転同期タスクと、回転同期タスクよりも優先順位が低い処理であって一定時間毎に実行が要求される時間同期タスクと、回転同期タスク及び時間同期タスクがともに実行されていないことを条件として実行されるアイドルタスクタスクとを、それらの実行優先順位に基づき実行する。ECU40は、アイドルタスク実行時間と回転同期タスク実行時間とを計測し、アイドルタスク実行時間が回転同期タスク実行時間以下であるときには、CPU41による演算処理が過負荷状態であると判定する。
【解決手段】ECU40において演算処理を実行するCPU41は、内燃機関10のクランク軸17の回転に同期して実行が要求される回転同期タスクと、回転同期タスクよりも優先順位が低い処理であって一定時間毎に実行が要求される時間同期タスクと、回転同期タスク及び時間同期タスクがともに実行されていないことを条件として実行されるアイドルタスクタスクとを、それらの実行優先順位に基づき実行する。ECU40は、アイドルタスク実行時間と回転同期タスク実行時間とを計測し、アイドルタスク実行時間が回転同期タスク実行時間以下であるときには、CPU41による演算処理が過負荷状態であると判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内燃機関を制御する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の電子制御装置は、同機関の制御に必要な各種処理を予め定められた実行優先順位に基づいて順に実行することにより、複数の処理からなる機関制御を行う。具体的には、これらの各種処理は、優先順位の高い順に、内燃機関のクランク軸の回転に同期して実行が要求される回転同期処理と、一定時間毎(例えば10ms)に実行が要求される時間同期処理と、回転同期処理及び時間同期処理がともに実行されていないことを条件に実行されるアイドルタスク処理とに分類される。そして、優先順位の低い処理の実行中において優先順位の高い処理の実行が要求された場合には、実行中の処理を一旦停止した上で優先順位の高い処理が割り込み処理される。
【0003】
ここで、内燃機関の回転速度が上昇するほど上記回転同期処理の実行回数が増大するため、電子制御装置において演算処理を実行するCPU(中央処理装置)の負荷が増大する。こうした回転速度の上昇に伴い演算処理の負荷が増大して過負荷状態に達すると、この回転同期処理よりも実行優先順位の低い処理の完了が遅延したり、実行されなかったりする不都合が生じ、機関制御を継続することができなくなるおそれがある。ちなみに、処理能力の高いCPUを採用して演算能力に大幅な余裕を持たせるようにすればこうした不都合の発生を抑えることはできる。しかし、こうした処理能力の高いCPUを採用する場合には、コストが増大してしまう。
【0004】
そこで従来、CPUでの演算処理が過負荷状態である旨判定された場合には、優先順位の低い処理の実行を停止して演算負荷を軽減することにより、CPUをリセットすることなく、機関制御を継続することが可能な電子制御装置が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−366374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1記載の電子制御装置では、CPUの負荷状態を示す負荷指標値と予め設定された一定の閾値(固定値)とを比較することにより、CPUでの演算処理が過負荷状態であるか否かを判定するようにしている。このような閾値を設定するに際して、CPUの処理能力の限界値を設定してしまうと、負荷指標値が閾値に達した段階でCPUでの演算処理が破綻してしまうおそれがある。そのため、上記閾値の設定に際しては、処理能力の限界値に対してある程度の余裕代を設けた値を設定する必要がある。しかし、このような余裕代を設けてしまうと、CPUでの演算処理にまだ余裕があるにもかかわらず過負荷状態にあると判定されてしまうことから、CPUの負荷状態を精度よく判定することができない。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、演算処理が過負荷状態であることを精度良く判定することのできる内燃機関の電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関のクランク軸の回転に同期して実行が要求される回転同期処理と、前記回転同期処理よりも優先順位が低い処理であって一定時間毎に実行が要求される時間同期処理と、前記回転同期処理及び前記時間同期処理がともに実行されていないことを条件として実行されるアイドルタスク処理とを、それらの実行優先順位に基づき実行する演算手段を備える電子制御装置であって、前記アイドルタスク処理の実行時間と前記回転同期処理の実行時間とを計測し、前記アイドルタスク処理の実行時間が前記回転同期処理の実行時間以下であるときには、前記演算手段による演算処理が過負荷状態であると判定する過負荷判定手段を備えることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、アイドルタスク処理の実行時間と回転同期処理の実行時間とが実際に計測され、アイドルタスク処理の実行時間が回転同期処理の実行時間以下であるときには、演算手段が過負荷状態であると判定される。ここで、アイドルタスク処理の実行時間は、演算手段で行われる演算処理の負荷が高くなるほど短くなる傾向があるため、アイドルタスク処理の実行時間に基づいて演算処理の負荷状態を把握することができる。そして、演算処理が過負荷状態であるか否かを判定する際の閾値として、固定値ではなく、回転同期処理の実際の実行時間が設定される。このように内燃機関の回転速度の上昇に伴って実行回数が増大する回転同期処理の実際の実行時間が上記閾値として設定されるため、過負荷状態の判定時における演算状況に対応した適切な閾値が設定され、これにより電子制御装置において演算処理が過負荷状態であることを精度良く判定することができるようになる。
【0009】
アイドルタスク処理の実行時間と回転同期処理の実行時間とを計測する際には、請求項2に記載されるように、所定期間におけるアイドルタスク処理の実行時間と、同所定期間における回転同期処理の実行時間とを計測するといった態様を採用することができる。
【0010】
また、アイドルタスク処理の実行時間と回転同期処理の実行時間とを計測する際には、請求項3に記載されるように、所定期間におけるアイドルタスク処理の実行時間と回転同期処理の最大実行時間とを計測するといった態様を採用することもできる。この場合には、機関運転中において複数回実行される回転同期処理にあってその最大実行時間とアイドルタスク処理の実行時間とが比較されるため、演算処理が過負荷状態であることを、より精度良く判定することができる。
【0011】
前記所定期間を設定するに際しては、請求項4に記載されるように、過負荷判定手段は、回転同期処理の実行間隔を基準として所定期間を設定するといった態様を採用することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の電子制御装置において、前記過負荷判定手段により前記演算手段が過負荷状態である旨判定されるときに、同演算手段の負荷を低減する負荷低減処理を実行することを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、過負荷判定手段により演算手段が過負荷状態である旨判定されるときに、同演算手段の負荷を低減する負荷低減処理が実行されるため、演算処理の過負荷状態が継続されることが抑制され、回転同期処理よりも優先順位の低いアイドル処理や時間同期処理が実行されなくなるといった不都合の発生を抑制することができる。したがって、内燃機関の運転を適切に継続することができるようになる。
【0014】
上記負荷低減処理は、具体的には、請求項6に記載されるように、内燃機関の回転速度を低下させる回転速度低下処理であるものとすることができる。この場合には、回転同期処理の実行回数が減少することにより、演算処理の負荷が低減されるようになる。
【0015】
上記回転速度低下処理として、より具体的には、請求項7に記載されるような内燃機関の吸入空気量を減量補正するといった態様、請求項8に記載されるような内燃機関の点火時期を遅角補正するといった態様、請求項9に記載されるような内燃機関の出力トルクに対する要求値を減少補正するといった態様を採用することができる。
【0016】
さらに、上記回転速度低下処理としては、請求項10に記載されるように、機関に接続された変速機の出力軸回転速度に対する入力軸回転速度の比である変速比が小さくなるように、変速機に対して変速要求を行うといった態様を採用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第1の実施形態について図1〜図3を参照して説明する。図1は、本実施形態にかかる内燃機関の電子制御装置により制御される内燃機関10と、その周辺構成の概略構成図である。
【0018】
内燃機関10は複数の気筒19を有し、この気筒19内には、ピストン16が往復動可能にそれぞれ収容されているとともに、気筒19の内周面とピストン16の頂面とによって燃焼室12が区画形成されている。同機関10には、燃焼室12内に燃料を噴射供給する燃料噴射弁20と、燃焼室12内で空気と燃料との混合気を点火する点火プラグ18とが設けられている。また、ピストン16は、内燃機関10の出力軸であるクランク軸17に接続されている。
【0019】
燃焼室12に吸入空気を供給する吸気通路11には、同通路11を流通する吸入空気の量(吸入空気量)を調整するスロットルバルブ14と、同バルブ14の開度TAを調節するスロットル用アクチュエータ15が設けられている。また、スロットルバルブ14には、同バルブ14の開度TAに応じた信号を出力するスロットル開度センサ32が取り付けられている。また、吸気通路11においてスロットルバルブ14の上流側には、吸入空気量に応じた信号を出力するエアフロメータ31が取り付けられている。吸気通路11を通じて供給される空気と、上記燃料噴射弁20により供給される燃料は、燃焼室12で混合されるとともに上記点火プラグ18により点火されて燃焼し、燃焼後の排気は排気通路13に排出される。この排気通路13には、同通路13を流通する排気中の酸素濃度に応じた信号を出力する酸素濃度センサ33が取り付けられている。
【0020】
そして、燃焼室12での混合気の燃焼によるピストン16の往復動に伴い、クランク軸17が回転する。このクランク軸17の回転は、自動変速機60を介して、同機関10が搭載された車両の駆動輪(図示略)に伝達される。
【0021】
なお、この自動変速機60は、同変速機60の出力軸の回転速度Noutに対する入力軸の回転速度Ninの比、すなわち変速比(Nin/Nout)が自動的に変更される周知の自動変速機である。本実施形態ではこうした自動変速機として、変速比を段階的に変更することが可能な多段変速機を採用しているが、この他に変速比を無段階に調整可能な無段変速機等を採用することもできる。
【0022】
内燃機関10には、同機関10の運転状態を把握するべく、上述した各種センサに加えてさらに種々のセンサが設けられている。具体的には、ピストン16の往復動により回転するクランク軸17の位置を検知するためのクランク角センサ34や、運転者によるアクセルペダル(図示略)の踏み込み量を検知するためのアクセルペダル踏込量センサ35等が設けられている。これらのセンサにより出力された信号は、同機関10を総括的に制御するECU40に入力される。
【0023】
ECU40には、演算処理を実行する中央処理装置(CPU)41、各種制御プログラムやデータが予め記憶されている読み出し専用メモリ(ROM)42、CPU41の演算結果等が一時的に記憶される揮発性メモリ(RAM)43、記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリ(EEPROM)44が備えられている。また、この他にも、図示しないA/D変換器や入出力インターフェイス等も備えられている。このCPU41が演算手段に相当する。また、このECU40は、上記自動変速機60の変速を総括的に制御するT−ECU50と電気的に接続されており、このT−ECU50との間で信号が入出力される。
【0024】
T−ECU50は、上記ECU40と同様に、図示しない中央処理装置(CPU)等を含んで構成されており、自動変速機60が搭載された車両の走行状態等に基づいて変速比を決定して、その決定された変速比となるように自動変速機60を制御する。
【0025】
CPU41は、各種センサからの信号に基づき内燃機関10の運転状態を把握するとともに、把握した運転状態に応じて、同機関10の制御に必要な各種処理を予め定められた実行優先順位に基づいて順に実行することにより、複数の処理からなる機関制御を行う。こうした機関制御に必要な各種処理のプログラムは上記ROM42に記憶されている。より具体的には、実行優先順位の高い順に、クランク軸17の回転に同期して実行が要求される回転同期タスク(回転同期処理に相当)と、一定時間毎(例えば10ms)に実行が要求される時間同期タスク(時間同期処理に相当)と、回転同期タスク及び時間同期タスクがともに実行されていないことを条件に実行されるアイドルタスク(アイドルタスク処理に相当)とに分類される。そして、優先順位の低いタスクの実行中において優先順位の高いタスクの実行が要求された場合には、実行中のタスクを一旦停止した上で優先順位の高いタスクが割り込み処理される。
【0026】
回転同期タスクとしては、例えば、点火プラグ18の点火時期を調整する点火時期制御、燃料噴射弁20における燃料噴射時期や燃料噴射量の制御等が挙げられる。また、時間同期処理としては、例えば、スロットルバルブ14の開度を制御するスロットル制御、酸素濃度センサ33の出力値に基づき燃焼室12の混合気の空燃比を目標空燃比に収束させる空燃比制御等が挙げられる。さらに、アイドルタスクは、内燃機関の運転には直接的には関連しない処理が主に分類され、例えば、上記EEPROM44に記憶されている各種学習値等のデータの再書き込み処理(リフレッシュ処理)等が挙げられる。なお、回転同期タスク、時間同期タスクとしてそれぞれ分類される複数のタスク間においても優先順位が段階的に定められており、定められた優先順位に基づきタスクが順に実行される。
【0027】
ところで、内燃機関10の回転速度NEが上昇するほど回転同期タスクの実行回数が増大して実行間隔が短くなるため、演算処理を実行するCPU41の負荷が増大する。こうした回転速度NEの上昇に伴い演算処理の負荷が増大してCPU41が過負荷状態に達すると、この回転同期タスクよりも実行優先順位の低い処理の完了が遅延したり、実行されなかったりする不都合が生じ、機関制御を継続することができなくなる可能性が生じる。
【0028】
そこで、ECU40は、所定期間ΔTにおける回転同期タスクの実行時間Trとアイドルタスクの実行時間Tiを計測する「タスク実行時間計測処理」を実行する。そして、これら計測された実行時間Tr,Tiに基づき「負荷監視処理」によりCPU41が過負荷状態であるか否かを判定し、過負荷状態である旨判定されたときには演算処理の負荷を低減させるようにしている。なお、所定期間ΔTは、回転同期タスクの実行間隔を基準とした期間、すなわち回転同期タスクが開始されてから、次の回転同期タスクが開始されるまでの期間が所定期間ΔTとして設定される。
【0029】
以下、図2を参照して、CPU41により実行される回転同期タスク、時間同期タスク、アイドルタスクの実行態様について説明し、併せて「タスク実行時間計測処理」の実施態様について説明する。
【0030】
図2(a)には、クランク軸17の回転速度NEが低い時、すなわち低回転時における実行態様の一例を、図2(b)には、クランク軸17の回転速度NEが高い時、すなわち高回転時における実行態様の一例を示している。それら図2(a)及び図2(b)に示されるように、上記所定期間ΔT内におけるアイドルタスク実行時間Tiは、CPU41における演算処理の負荷が高くなる図2(b)の状態の方が図2(a)の状態よりも短くなる。
【0031】
上述したように、回転同期タスクと時間同期タスクとアイドルタスクとでは、回転同期タスクの優先順位が最も高いため、この回転同期タスクの実行が要求されると、回転同期タスクが優先的に実行される。すなわち、図2(a)に示すように、時刻t11において回転同期タスクの実行が要求されると、この時刻t11から回転同期タスクが開始されて時刻t12に終了する。同様に、時刻t15において回転同期タスクの実行が要求されると、この時刻t15から回転同期タスクが開始されて時刻t17に終了する。ここで、「タスク実行時間計測処理」では、回転同期タスクの実行間隔である時刻t11から時刻t15までの期間が、上記所定期間ΔTとして設定されるとともに、その所定期間ΔTにおける回転同期タスク実行時間Trとして、時刻t11から時刻t12までの時間が計測されて、上記RAM43に記憶される。
【0032】
また、回転同期タスクが実行されていないときに時間同期タスクの実行が要求された場合は、要求された時刻から時間同期タスクが開始される。また、回転同期タスクが既に実行されている時に時間同期タスクの実行が要求された場合には、既に実行されている回転同期タスクが終了した後に時間同期タスクが開始される。これに対し、時間同期タスクが既に実行されている時に回転同期タスクの実行が要求された場合には、既に実行されている時間同期タスクが一旦停止されるとともに回転同期タスクが割り込み処理され、この回転同期タスクが終了した後に、停止されていた時間同期タスクが再開される。
【0033】
すなわち、回転同期タスクが実行されていない時刻t13において時間同期タスクの実行が要求されると、この時刻t13から時間同期タスクが開始されて時刻t14に終了する。一方、既に回転同期タスクが実行されている時刻t16において時間同期タスクの実行が要求された場合には、既に実行されている回転同期タスクが終了する時刻t17まで待ってから時間同期タスクが開始される。
【0034】
さらに、アイドルタスクは、上記回転同期タスク及び時間同期タスクがともに実行されていない時刻t12から時刻t13までの期間、及び時刻t14から時刻t15までの期間において実行される。したがって、「タスク実行時間計測処理」では、所定期間ΔTにおけるアイドルタスク実行時間Tiとして、これら時刻t12から時刻t13までの時間と時刻t14から時刻t15までの時間との合計時間が計測されて、RAM43に記憶される。
【0035】
一方、図2(b)に示す高回転時では、時刻t21において回転同期タスクの実行が要求されると、この時刻t21から回転同期タスクが開始されて時刻t22に終了する。同様に、時刻t24、時刻t27、時刻t29において回転同期タスクの実行が要求されると、要求のあった時刻において優先的に回転同期タスクが開始される。ここで、例えば回転同期タスクの実行間隔である時刻t21から時刻t24までの期間を所定期間ΔT1、時刻24から時刻t27までの期間を所定期間ΔT2、時刻t27から時刻t29までの期間を所定期間ΔT3とする。また、所定期間ΔT1における回転同期タスク実行時間Trを回転同期タスク実行時間Tr1、所定期間ΔT2における回転同期タスク実行時間Trを回転同期タスク実行時間Tr2、所定期間ΔT3における回転同期タスク実行時間Trを回転同期タスク実行時間Tr3とすると、各所定期間ΔT1,ΔT2,ΔT3における各回転同期タスク実行時間Tr1,Tr2,Tr3が順次計測されて、計測された最新の回転同期タスク実行時間TrがRAM43にて順次更新される。
【0036】
また、時刻t23において時間同期タスクの実行が要求されると、要求された時間同期タスクはこの時刻t23から開始される。しかし、こうして開始された時間同期タスクの実行が完了する前の時刻t24に回転同期タスクの実行が要求されると、既に実行されている時間同期タスクが一旦停止されて回転同期タスクが割り込み処理され、この回転同期タスクが終了する時刻t25から、停止されていた時間同期タスクが再開される。
【0037】
さらに、アイドルタスクは、上記回転同期タスク及び時間同期タスクがともに実行されていない時刻t22から時刻t23までの期間、及び時刻t26から時刻t27までの期間において実行される。ここで、「タスク実行時間計測処理」では、上述した各所定期間ΔT1,ΔT2,ΔT3)においてそれぞれアイドルタスク実行時間Ti1,Ti2が順次計測される。すなわち、所定期間ΔT1におけるアイドルタスク実行時間Ti1として、時刻t22から時刻t23までの時間が計測され、所定期間ΔT2におけるアイドルタスク実行時間Ti2として、時刻t26から時刻t27までの時間が計測される。そして、計測された最新のアイドルタスク実行時間TiがRAM43にて順次更新される。なお、所定期間ΔT3では、アイドルタスクが実行されなかったため、所定期間ΔT3におけるアイドルタスク実行時間Tiは、「0」とされる。
【0038】
次に、図3を参照して、ECU40により実行される「負荷監視処理」についてその実行手順を説明する。同図3のフローチャートに示される一連の処理は、一定時間毎に繰り返し実行される。なお、上述した「タスク実行時間計測処理」や図3に示す「負荷監視処理」におけるステップS100からステップS120までの処理が、本実施形態における上記過負荷判定手段に相当する。
【0039】
この一連の処理では、まず、回転同期タスク実行時間Trとアイドルタスク実行時間Tiが読み込まれる(ステップS100)。ここでは、上述した「タスク実行時間計測処理」により計測されてRAM43に記憶されている回転同期タスク実行時間Trとアイドルタスク実行時間Tiが読み込まれる。例えば、図2(b)に示したアイドルタスク実行時間Ti1が計測された後であってアイドルタスク実行時間Ti2が計測される前に本処理が実行される場合には、回転同期タスク実行時間Tr1とアイドルタスク実行時間Ti1とが読み込まれる。
【0040】
アイドルタスク実行時間Tiは、CPU41において演算処理の負荷が高くなるほど短くなる傾向があるため、アイドルタスク実行時間Tiに基づいて演算処理の負荷状態を把握することができる。また、回転同期タスク1回分の処理(例えば点火時期制御にかかる点火時期の計算等)に要する時間は、制御プログラムの構築段階である程度予測することができるものの、実際には内燃機関10や同機関10を搭載する車両の状態によって変動することがある。
【0041】
そこで、次のステップでは、読み込まれたアイドルタスク実行時間Tiが上述した回転同期タスク実行時間Tr以下であるか否かが判定される(ステップS110)。すなわち、実際に計測された回転同期タスク実行時間Trを、この判定時における演算状況に対応した閾値として設定し、アイドルタスク実行時間Tiとの比較を行う。
【0042】
この判定処理を通じて、アイドルタスク実行時間Tiが回転同期タスク実行時間Trよりも長い旨(Ti>Tr)判定された場合には(ステップS110:NO)、CPU41が過負荷状態ではないと判断されて、本処理は終了される。
【0043】
例えば、先の図2(a)に示すアイドルタスク実行時間Tiと回転同期タスク実行時間Trとが読み込まれ、(Ti>Tr)の関係となっているときには、上記ステップS110に示す判定処理が実行された場合に、「Ti≦Tr」の関係が満たされない。そのため、この判定時における演算状況は過負荷状態ではなく、CPU41の演算処理には、余裕があると判断される。
【0044】
一方、アイドルタスク実行時間Tiが回転同期タスク実行時間以下である旨(Ti≦Tr)判定された場合には(ステップS110:YES)、今回の判定時における演算状況は過負荷状態であると判定される(ステップS120)。ここでは、回転速度NEの上昇に伴い回転同期タスクの実行回数が増大することにより、CPU41が過負荷状態にあると判断される。
【0045】
例えば、先の図2(b)に示すアイドルタスク実行時間Ti1と回転同期タスク実行時間Tr1が読み込まれ、(Ti1≦Tr1)の関係となっているときには、上記ステップS110に示す判定処理が実行された場合に、「Ti≦Tr」の関係が満たされるため、その判定時における演算状況は過負荷状態であると判定される。
【0046】
そして、CPU41が過負荷状態である旨判定された場合には、続いてスロットル開度TAが減少補正され(ステップS130)、本処理は終了される。
このステップS130では、アクセルペダルの踏み込み量や機関回転速度等に基づいて算出される目標スロットル開度TAtに対して補正量ΔTAだけ減算されたスロットル開度TA(=TAt−ΔTA)となるように、スロットル用アクチュエータ15が駆動される。上記補正量ΔTAとしては、機関回転速度NEを減少させてCPU41の演算処理の負荷を低減させることのできる量が予め設定されている。このステップS130の処理は、上記負荷低減処理として実行される回転速度低下処理に相当する。
【0047】
ステップS130の処理によってスロットル開度TAが減少補正されると、内燃機関10の燃焼室12に供給される吸入空気量が減少し、同機関10の回転速度NEは低下する。これにより、図2(b)に示される高回転時における各種タスクの実行態様が、図2(a)に示されるような低回転時における実行態様に近付くようになり、CPU41の負荷が低減される。
【0048】
以上説明した第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)アイドルタスク実行時間Tiと回転同期タスク実行時間Trとが実際に計測され、アイドルタスク実行時間Tiが回転同期タスク実行時間Tr以下であるときには、CPU41が過負荷状態であると判定される(ステップS120)。ここで、CPU41が過負荷状態であるか否かを判定する際の閾値として、固定値ではなく、回転同期タスクの実際の実行時間である回転同期タスク実行時間Trが計測されてその計測値が閾値として設定される。このように内燃機関10の機関回転速度NEの上昇に伴って実行回数が増大する回転同期タスクの実際の実行時間Trが上記閾値として設定される。そのため、過負荷状態の判定時における演算状況に対応した適切な閾値が設定され、これによりECU40において演算処理が過負荷状態であること、すなわちCPU41が過負荷状態であることを精度良く判定することができるようになる。
【0049】
(2)CPU41が過負荷状態である旨判定されるとき(ステップS120)に、CPU41の負荷を低減する負荷低減処理としてスロットル開度TAが減少補正される(ステップS130)。そのため、演算処理の過負荷状態が継続されることが抑制され、回転同期タスクよりも優先順位の低いアイドルタスクや時間同期タスクが実行されなくなるといった不都合の発生を抑制することができる。したがって、内燃機関10の運転を適切に継続することができるようになる。
【0050】
(3)CPU41の負荷を低減する負荷低減処理として、内燃機関10の機関回転速度NEを低下させる回転速度低下処理が実行される。より具体的にはスロットル開度TAの減少補正が実行されるため(ステップS130)、所定時間内における回転同期タスクの実行回数を減少させることができ、これによりCPU41の演算処理の負荷が低減されるようになる。
【0051】
(4)CPU41の過負荷状態を精度良く判定するとともに、過負荷状態と判定されたときにはその負荷を低減させることにより、内燃機関10の運転を適切に継続することができる。したがって、処理能力の高いCPUを採用して演算能力に大幅な余裕を持たせることなく機関制御を適切に維持することができるため、ECU40のコストアップを抑制することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第2の実施形態について、先の図1、図4及び図5を参照して説明する。
【0053】
本実施形態と上記第1の実施形態とでは、次の点において異なる。すなわち、第1の実施形態では、「タスク実行時間計測処理」により、所定期間ΔTにおける回転同期タスク実行時間Trが順次計測されて、RAM43に記憶される回転同期タスクが順次更新されるとともに、「負荷監視処理」により、この回転同期タスク実行時間Trを閾値としてCPU41が過負荷状態であるか否かが判定されていた。
【0054】
これに対し、本実施形態の「タスク実行時間計測処理」では、所定期間ΔTにおける回転同期タスクの実行時間Trが順次計測されるとともに、計測された回転同期タスク実行時間Trの最大実行時間TrmaxがRAM43において記憶される。そして、「負荷監視処理」により、この最大実行時間Trmaxを閾値としてCPU41が過負荷状態であるか否かが判定される。なお、上記第1の実施形態と同様の処理については、詳細な説明を省略する。
【0055】
まず、図4を参照して、「タスク実行時間計測処理」の詳細について説明する。
上記第1の実施形態と同様に、時刻t31、時刻t34、時刻37において回転同期タスクの実行が要求されると、要求のあった時刻において優先的に回転同期タスクが開始される。ここで、上述したように、回転同期タスク1回分の処理に要する時間は、内燃機関10や同機関10を搭載する車両の状態によって変動することがある。そこで、本実施形態における「タスク実行計測処理」では、回転同期タスク実行時間Trのうち、その最大実行時間TrmaxをRAM43に記憶するようにしている。具体的には、計測された回転同期タスク実行時間Trと、RAM43に先に記憶された最大実行時間Trmaxとを比較し、計測された回転同期タスク実行時間Trが最大実行時間Trmaxを上回る場合には、計測された回転同期タスク実行時間Trを最大実行時間Trmaxとして更新する。
【0056】
例えば、図4に示す所定期間ΔT1(時刻t31〜時刻t34)において計測された回転同期タスク実行時間Tr1が、先に記憶された最大実行時間Trmaxを上回る場合には、この回転同期タスク実行時間Tr1により、最大実行時間Trmaxが更新される。これに対し、所定期間ΔT2(時刻t34〜時刻t37)において計測された回転同期タスク実行時間Tr2が、先に記憶された最大実行時間Trmax(Tr1)以下である場合には、記憶されている最大実行時間Trmaxがそのまま保持される。
【0057】
一方、アイドルタスクについては、「タスク実行時間計測処理」にて、上記所定期間ΔT1におけるアイドルタスク実行時間Ti1(時刻t32〜時刻t33)や、上記所定期間ΔT2におけるアイドルタスク実行時間Ti2(時刻t36〜時刻t37)が順次計測されて、計測された最新のアイドルタスク実行時間TiがRAM43にて順次更新される。
【0058】
次に、図5を参照して、ECU40により実行される本実施形態の「負荷監視処理」についてその実行手順を説明する。同図5のフローチャートに示される一連の処理は、一定時間毎に繰り返し実行される。なお、上述した「タスク実行時間計測処理」や、図5に示す「負荷監視処理」におけるステップS200からステップS220までの処理が、本実施形態における過負荷判定手段に相当する。
【0059】
この一連の処理では、まず、最大実行時間Trmaxとアイドルタスク実行時間Tiが読み込まれる(ステップS200)。ここでは、上記「タスク実行時間計測処理」によってRAM43に記憶された最大実行時間Trmaxとアイドルタスク実行時間Tiが読み込まれる。
【0060】
そして、アイドルタスク実行時間Tiが最大実行時間Trmax以下であるか否かが判定される(ステップS210)。
この判定処理を通じて、アイドルタスク実行時間Tiが最大実行時間Trmaxよりも長い旨(Ti>Trmax)判定された場合には(ステップS210:NO)、この判定時における演算状況は過負荷状態ではないと判断されて、本処理は終了される。
【0061】
一方、アイドルタスク実行時間Tiが最大実行時間Trmax以下である旨(Ti≦Trmax)判定された場合には(ステップS210:YES)、この判定時における演算状況が過負荷状態であると判定される(ステップS220)。
【0062】
例えば、先の図4に示すアイドルタスク実行時間Ti1と最大実行時間Trmaxが読み込まれ、(Ti1<Trmax)の関係になっているときには、上記ステップS210に示す判定処理が実行された場合に、「Ti1≦Trmax(=Tr1)」の関係が満たされるため、この判定時における演算状況は、過負荷状態であると判定される。
【0063】
そして、CPU41が過負荷状態である旨判定された場合には、スロットル開度TAが減少補正されて(ステップS230)、本処理は終了される。このステップS230の処理は、上記ステップS130の処理と同一である。
【0064】
例えば、先の図4において、回転同期タスク実行時間Tr1(=最大実行時間Trmax)>アイドルタスク実行時間Ti2>回転同期タスク実行時間Tr2といった関係になっている場合にあって、上記第1の実施形態における「負荷監視処理」が実行されてアイドルタスク実行時間Ti2が回転同期タスク実行時間Tr2と比較されたときには、(Ti2>Tr2)の関係になるため、過負荷状態である旨の判定結果は得られない。しかし、本実施形態における「負荷監視処理」によれば、回転同期タスク実行時間Trのうち、その最大実行時間Trmaxが過負荷の判定に用いる閾値とされる。そのため、上記ステップS210では、最大実行時間Trmaxとして記憶された回転同期タスク実行時間Tr1とアイドルタスク実行時間Ti2との比較がなされ、同ステップS210にて肯定判定される(Trmax>アイドルタスク実行時間Ti2)ことにより、CPU41が過負荷状態であることを、より精度良く判定することができる。
【0065】
以上説明した第2の実施形態によれば、上記(1)〜(4)に示す作用効果に加えて、以下の作用効果を奏することができる。
(5)「タスク実行時間計測処理」により、機関運転中に複数回実行される回転同期タスクにあってその最大実行時間Trmaxとアイドルタスク実行時間Tiとが比較されるため、演算処理が過負荷状態であることを、より精度良く判定することができる。
【0066】
(第3の実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第3の実施形態について、図1、図6及び図7を参照して説明する。
【0067】
本実施形態と上記第1の実施形態とでは、次の点において異なる。すなわち、第1の実施形態の「タスク実行時間計測処理」では、回転同期タスクの実行間隔を基準として、回転同期タスクが開始されてから次の回転同期タスクが開始されるまでの期間、すなわち1回の回転同期タスクの実行を含む期間が所定期間ΔTとして設定されていた。これに対し、本実施形態の「タスク実行時間計測処理」では、回転同期タスクの実行間隔を基準として、予め規定された回数の回転同期タスクの実行を含む期間が所定期間ΔTとして設定される。例えば、規定回数が3回とされている場合には、1回目の回転同期タスクが開始されてから、2回目及び3回目の回転同期タスクが実行された後、その次の回転同期タスクが開始されるまでの期間が所定期間ΔTとして設定される。さらに、本実施形態の「負荷判定処理」では、そうした所定期間ΔTにおける回転同期タスク実行時間Trの積算値である回転同期タスク積算実行時間TrSと、同所定期間ΔTにおけるアイドルタスク実行時間Tiの積算値であるアイドルタスク積算実行時間TiSとが比較されることにより、CPU41が過負荷状態か否かが判定される。なお、上記第1の実施形態とで同様の処理については、詳細な説明を省略する。
【0068】
まず、図6を参照して、本実施形態における「タスク実行時間計測処理」の詳細について説明する。ここでは、所定期間ΔTにおける回転同期タスクの規定回数が3回とされている例について説明するが、この規定回数は適宜変更することができる。
【0069】
上記第1の実施形態と同様に、時刻t41、時刻t44、時刻t47、時刻t49において回転同期タスクの実行が要求されると、要求のあった時刻において優先的に回転同期タスクが開始される。ここで、本実施形態の「タスク実行時間計測処理」では、上記規定回数が3回と定められているため、時刻t41から時刻t49までの期間が所定期間ΔTとして設定される。そして、この所定期間ΔTにおける回転同期タスク積算実行時間TrSとして、この所定期間ΔTにおいて実行される3回の回転同期タスクの実行時間の合算時間が計測されて、RAM43に記憶される。この図6に示す例では、時刻t41から時刻t42までの時間、時刻t44から時刻t45までの時間、及び時刻t47から時刻t48までの時間を合計した時間が回転同期タスク積算実行時間TrSとして記憶される。
【0070】
一方、アイドルタスクは、回転同期タスク及び時間同期タスクがともに実行されていない時刻t42から時刻t43までの期間や、時刻t46から時刻t47までの期間において実行される。したがって、「タスク実行時間計測処理」では、所定期間ΔTにおけるアイドルタスク積算実行時間TiSとして、時刻t42から時刻t43までの時間及び時刻t46から時刻t47までの時間の合計時間が計測されて、RAM43に記憶される。
【0071】
次に、図7を参照して、ECU40により実行される本実施形態の「負荷監視処理」についてその実行手順を説明する。同図7のフローチャートに示される一連の処理は、一定時間毎に繰り返し実行される。なお、上述した「タスク実行時間計測処理」や、図7に示す「負荷監視処理」におけるステップS300からステップS320までの処理が、本実施形態における上記過負荷判定手段に相当する。
【0072】
この一連の処理では、まず回転同期タスク積算実行時間TrSとアイドルタスク積算実行時間TiSが読み込まれる(ステップS300)。ここでは、上述した「タスク実行時間計測処理」により計測されてRAM43に記憶されている回転同期タスク積算実行時間TrSとアイドルタスク積算実行時間TiSが読み込まれる。
【0073】
そして、読み込まれたアイドルタスク積算実行時間TiSが回転同期タスク積算実行時間TrS以下であるか否かが判定される(ステップS310)。
この判定処理を通じて、アイドルタスク積算実行時間TiSが回転同期タスク積算実行時間TrSよりも長い旨(TiS>TrS)判定された場合には(ステップS310:NO)、この判定時における演算状況は過負荷状態ではないと判断されて、本処理はそのまま終了される。
【0074】
一方、アイドルタスク実行時間Tiが回転同期タスク実行時間以下である旨(TiS≦TrS)判定された場合には(ステップS310:YES)、この判定時における演算状況が過負荷状態であると判定される(ステップS320)。
【0075】
例えば、先の図6に示されるアイドルタスク積算実行時間TiSと回転同期タスク積算実行時間TrSとが読み込まれ、(TiS≦TrS)といった関係になっているときには、上記ステップS310に示す判定処理が実行された場合に、「TiS≦TrS」の関係が満たされるため、この判定時における演算状況は、過負荷状態であると判定される。
【0076】
そして、CPU41が過負荷状態である旨判定された場合には、スロットル開度TAが減少補正されて(ステップS330)、一連の処理が終了される。なお、このステップS330の処理は、上記ステップS130の処理と同一である。
【0077】
以上、説明した第3の実施形態によれば、上記(1)〜(4)に示す作用効果と同様の作用効果を奏することができる。また、上記第1の実施形態及び第2の実施形態と比較して、所定期間ΔTが長く設定されるため、「負荷監視処理」の実行周期を長くすることができ、これにより「負荷監視処理」の実行に伴うCPU41の演算負荷を低下させることも可能になる。
【0078】
(第4の実施形態)
次に、図1及び図8を参照して、本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第4の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を説明する。
【0079】
上記第1の実施形態では、上記負荷低減処理として実行される回転速度低下処理としてスロットル開度TAを減少補正するようにしたが、本実施形態では、内燃機関10の点火時期を遅角補正するようにしており、先の図3に示したステップS130の処理を、図8に示すステップS430の処理に変更することにより実施される。
【0080】
すなわち、本実施形態における「負荷監視処理」では、第1実施形態で説明したステップS120においてCPU41が過負荷状態であると判定されると、点火時期Tが遅角補正されて(ステップS430)、本処理は終了される。
【0081】
このステップS430では、機関運転状態に基づいて設定された点火時期Tから補正量ΔTだけ遅角させた点火時期Tとなるように、点火プラグ18の点火時期が遅角補正される。この補正量ΔTは、機関回転速度NEを減少させてCPU41の演算処理の負荷を低減させることのできる量が予め設定されている。こうした点火時期の遅角補正によっても、機関回転速度NEを低下させることができる。なお、ステップS430の処理は、本実施形態における負荷低減処理として実行される回転速度低下処理に相当する。
【0082】
この第4の実施形態によっても、上記(1)〜(4)に示した作用効果に準ずる作用効果を奏することができる。
(第5の実施形態)
以下、図1及び図9を参照して、本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第5の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を説明する。
【0083】
上記第1の実施形態では、上記負荷低減処理として実行される回転速度低下処理としてスロットル開度TAを減少補正するようにしたが、本実施形態では、アクセルペダルの踏み込み量や機関回転速度NE等に基づいて算出される機関の要求トルクを減少補正するようにしている。本実施形態は、先の図3に示したステップS130の処理を、図9に示すステップS530の処理に変更することにより実施される。
【0084】
すなわち、本実施形態における「負荷監視処理」では、第1実施形態で説明したステップS120においてCPU41が過負荷状態であると判定されると、要求トルクTOが減少補正されて(ステップS530)、本処理は終了される。
【0085】
このステップS530では、目標要求トルクTOtから補正量ΔTOだけ減少させた要求トルクTO(=TOt−ΔTO)が算出されて、この要求トルクTOが得られるように機関出力が制御される。なお、目標要求トルクTOtは、上記アクセルペダル踏込量センサ35によって検出されるアクセルペダルの踏み込み量や、クランク角センサ34によって検出される機関回転速度NE等に基づいて算出される。また、補正量ΔTOは、機関回転速度NEを減少させてCPU41の演算処理の負荷を低減させることのできる量が予め設定されている。
【0086】
こうした要求トルクTOの減少補正がなされると、減少補正された要求トルクTOに応じて算出される吸入空気量を燃焼室12に供給するべく、スロットルバルブ14の開度がスロットル用アクチュエータ15の駆動を通じて調整される。これにより、機関回転速度NEを低下させることができる。なお、ステップS530の処理は、本実施形態における負荷低減処理として実行される回転速度低下処理に相当する。
【0087】
この第5の実施形態によっても、上記(1)〜(4)に示した作用効果に準ずる作用効果を奏することができる。
(第6の実施形態)
以下、図1及び図10を参照して、本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第6の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を説明する。
【0088】
上記第1の実施形態では、上記負荷低減処理として実行される回転速度低下処理としてスロットル開度TAを減少補正するようにしたが、本実施形態では、自動変速機60の変速比が小さくなるように同自動変速機60の変速を制御するようにしている。本実施形態は、先の図3に示したステップS130の処理を、図10に示すステップS630の処理に変更することにより実施される。
【0089】
すなわち、ステップS120においてCPU41が過負荷状態であると判定されると、変速比が小さくなるように変速要求がなされて(ステップS630)、本処理は終了される。
【0090】
具体的には、ECU40は、T−ECU50に対して、自動変速機60の変速比が小さくなるように変速要求を出力する。この変速要求を受けたT−ECU50は、変速比が小さくなるように自動変速機60に対して変速指示を出し、自動変速機60ではシフトアップが実行される。例えば現在の変速段が3速段であれば、4速段へのシフトアップがなされる。これにより、自動変速機60の出力軸の回転速度Noutに対する入力軸の回転速度Ninが減少されて、クランク軸17の回転速度、すなわち機関回転速度NEを低下させることができる。なお、ステップS630の処理は、本実施形態における負荷低減処理として実行される回転速度低下処理に相当する。
【0091】
この第6の実施形態によっても、上記(1)〜(4)に示した作用効果に準ずる作用効果を奏することができる。
(その他の実施形態)
なお、この発明にかかる内燃機関の電子制御装置は、上記各実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、同実施の形態を適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0092】
・上記第1〜第3の各実施形態では、スロットルバルブ14の開度TAを減少補正することにより、吸入空気量を減少させる例を示したが、内燃機関10の吸入空気量を減量補正することのできる態様であれば、他の例を採用してもよい。例えば、吸入空気量の調整に関与する吸気バルブのバルブ特性を変更する可変動弁機構を内燃機関10に設けるとともに、この可変動弁機構の制御を通じて、内燃機関10の吸入空気量を減少補正させる態様を採用してもよい。また、スロットル開度TAの制御と、可変動弁機構の制御を組み合わせることにより、吸入空気量を減量補正するようにしてもよい。
【0093】
・上記第1〜第3の各実施形態では、予め設定された補正量ΔTAを適用する例を示したが、CPU41の負荷状態に応じて補正量ΔTAを可変とする態様を採用してもよい。例えば、「負荷監視処理」においてCPU41が過負荷状態である旨判定された際のアイドルタスク実行時間Tiと回転同期タスク実行時間Trとの乖離が大きいほど、すなわち過負荷の度合が高いほど、補正量ΔTAが多くなるように設定するといった態様を採用することができる。
【0094】
・上記第4〜第6の各実施形態では、上記第1の実施形態の「負荷判定処理」において実行される回転速度低下処理の態様を変更するようにした例をそれぞれ示した。しかし、上記第2又は第3の実施形態の「負荷判定処理」において実行される回転速度低下処理の態様についても、上記第4〜第6の各実施形態で示した回転速度低下処理の態様にそれぞれ変更するようにしてもよい。
【0095】
・さらに、上記各実施形態では、CPU41が過負荷状態である旨判定されたときに、回転速度低下処理としてスロットル開度TA、点火時期T、要求トルクTO、変速比の変更要求のいずれかを実行する例を示したが、これらの回転速度低下処理を適宜組み合わせて実行するようにしてもよい。
【0096】
・上記各実施形態では、CPU41の負荷を低減させる処理として、回転速度低下処理を実行する例を示したが、CPU41が過負荷状態であると判定されたときにCPU41の負荷を低減させることのできる処理であれば、他の処理を実行するようにしてもよい。例えば、回転同期タスクに分類される複数のタスクのうち、優先順位の低いタスクの実行回数を減少させるといった態様を採用することもできる。
【0097】
・上記第2の実施形態の「タスク実行時間計測処理」では、所定期間ΔTにおける回転同期タスク実行時間Trを順次計測するとともに、計測した最新の回転同期タスク実行時間Trと、先に記憶された最大実行時間Trmaxとを比較することにより最大実行時間Trmaxを更新するようにした。しかし、最大実行時間Trmaxの設定態様は、この例に限られない。例えば、計測された回転同期タスク実行時間Trを、予め定められた回数の計測が終了するまで記憶するとともに、記憶されている回転同期タスク実行時間Trのうちの最も長い時間を最大実行時間Trmaxとして設定して更新するようにしてもよい。この場合には、CPU41の過負荷状態を判定する時の演算状況に対応したさらに適切な最大実行時間Trmaxを閾値として設定することができるようになる。
【0098】
・上記第3の実施形態の「タスク実行時間計測処理」では、所定期間ΔTにおける回転同期タスク積算実行時間TrSを計測し、その計測された回転同期タスク積算実行時間TrSを過負荷の判定に用いる閾値として設定する例を示したが、CPU41の過負荷状態を判定する閾値としては、他の値を採用することもできる。例えば、上記第2の実施形態で説明した最大実行時間Trmaxを計測し、所定期間ΔTにおける回転同期タスクの実行回数を上記最大実行時間Trmaxに乗じて得られた値を上記閾値とする態様を採用することもできる。例えば、先の図6に示した例においては、計測された最大実行時間Trmaxに「3」を乗じた値を同閾値として設定することも可能である。
【0099】
・さらに、上記各実施形態では、回転同期タスクの実行間隔を基準として所定期間ΔTが設定される例を示したが、所定期間ΔTとしては、必ずしも回転同期タスクの実行間隔を基準とすることを要しない。すなわち、予め固定された所定期間を設定するようにしても良い。要するに、実際に計測された時間同期タスクの実行時間を閾値として設定することにより、上記(1)に示す作用効果を奏することができるようになる。
【0100】
・また、回転同期タスクの実行時間とアイドルタスクの実行時間との比較の際には、上記各実施形態で示したように値を直接比較するようにするのではなく、それら各実行時間の比率によってCPU41の過負荷状態を判定するようにしてもよい。
【0101】
・上記各実施形態のECU40により制御される内燃機関としては、上述した内燃機関10の例に限られず、適宜変更してもよい。例えば、吸気通路11内に燃料を噴射するポート噴射型の燃料噴射弁を備える内燃機関を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第1の実施形態について、電子制御装置により制御される内燃機関とその周辺構成を示す概略構成図。
【図2】同実施形態にかかる回転同期タスク、時間同期タスク、アイドルタスクの実行態様を示すタイムチャートであって、(a)は低回転時におけるタイムチャート、(b)は高回転時におけるタイムチャートを示す。
【図3】同実施形態にかかる「負荷監視処理」について、その実行手順を示すフローチャート。
【図4】第2の実施形態にかかる回転同期タスク、時間同期タスク、アイドルタスクの実行態様を示すタイムチャート。
【図5】同実施形態にかかる「負荷監視処理」について、その実行手順を示すフローチャート。
【図6】第3の実施形態にかかる回転同期タスク、時間同期タスク、アイドルタスクの実行態様を示すタイムチャート。
【図7】同実施形態にかかる「負荷監視処理」について、その実行手順を示すフローチャート。
【図8】第4の実施形態にかかる「負荷監視処理」について、その実行手順の一部を示すフローチャート。
【図9】第5の実施形態にかかる「負荷監視処理」について、その実行手順の一部を示すフローチャート。
【図10】第6の実施形態にかかる「負荷監視処理」について、その実行手順の一部を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0103】
10…内燃機関、11…吸気通路、12…燃焼室、13…排気通路、14…スロットルバルブ、15…スロットル用アクチュエータ、16…ピストン、17…クランク軸、18…点火プラグ、19…気筒、20…燃料噴射弁、31…エアフロメータ、32…スロットル開度センサ、33…酸素濃度センサ、34…クランク角センサ、35…アクセルペダル踏込量センサ、40…電子制御装置(ECU)、41…中央処理装置(CPU)、42…読み出し専用メモリ(ROM)、43…揮発性メモリ(RAM)、44…不揮発性メモリ(EEPROM)、50…T−ECU、60…自動変速機。
【技術分野】
【0001】
この発明は内燃機関を制御する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の電子制御装置は、同機関の制御に必要な各種処理を予め定められた実行優先順位に基づいて順に実行することにより、複数の処理からなる機関制御を行う。具体的には、これらの各種処理は、優先順位の高い順に、内燃機関のクランク軸の回転に同期して実行が要求される回転同期処理と、一定時間毎(例えば10ms)に実行が要求される時間同期処理と、回転同期処理及び時間同期処理がともに実行されていないことを条件に実行されるアイドルタスク処理とに分類される。そして、優先順位の低い処理の実行中において優先順位の高い処理の実行が要求された場合には、実行中の処理を一旦停止した上で優先順位の高い処理が割り込み処理される。
【0003】
ここで、内燃機関の回転速度が上昇するほど上記回転同期処理の実行回数が増大するため、電子制御装置において演算処理を実行するCPU(中央処理装置)の負荷が増大する。こうした回転速度の上昇に伴い演算処理の負荷が増大して過負荷状態に達すると、この回転同期処理よりも実行優先順位の低い処理の完了が遅延したり、実行されなかったりする不都合が生じ、機関制御を継続することができなくなるおそれがある。ちなみに、処理能力の高いCPUを採用して演算能力に大幅な余裕を持たせるようにすればこうした不都合の発生を抑えることはできる。しかし、こうした処理能力の高いCPUを採用する場合には、コストが増大してしまう。
【0004】
そこで従来、CPUでの演算処理が過負荷状態である旨判定された場合には、優先順位の低い処理の実行を停止して演算負荷を軽減することにより、CPUをリセットすることなく、機関制御を継続することが可能な電子制御装置が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−366374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1記載の電子制御装置では、CPUの負荷状態を示す負荷指標値と予め設定された一定の閾値(固定値)とを比較することにより、CPUでの演算処理が過負荷状態であるか否かを判定するようにしている。このような閾値を設定するに際して、CPUの処理能力の限界値を設定してしまうと、負荷指標値が閾値に達した段階でCPUでの演算処理が破綻してしまうおそれがある。そのため、上記閾値の設定に際しては、処理能力の限界値に対してある程度の余裕代を設けた値を設定する必要がある。しかし、このような余裕代を設けてしまうと、CPUでの演算処理にまだ余裕があるにもかかわらず過負荷状態にあると判定されてしまうことから、CPUの負荷状態を精度よく判定することができない。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、演算処理が過負荷状態であることを精度良く判定することのできる内燃機関の電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関のクランク軸の回転に同期して実行が要求される回転同期処理と、前記回転同期処理よりも優先順位が低い処理であって一定時間毎に実行が要求される時間同期処理と、前記回転同期処理及び前記時間同期処理がともに実行されていないことを条件として実行されるアイドルタスク処理とを、それらの実行優先順位に基づき実行する演算手段を備える電子制御装置であって、前記アイドルタスク処理の実行時間と前記回転同期処理の実行時間とを計測し、前記アイドルタスク処理の実行時間が前記回転同期処理の実行時間以下であるときには、前記演算手段による演算処理が過負荷状態であると判定する過負荷判定手段を備えることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、アイドルタスク処理の実行時間と回転同期処理の実行時間とが実際に計測され、アイドルタスク処理の実行時間が回転同期処理の実行時間以下であるときには、演算手段が過負荷状態であると判定される。ここで、アイドルタスク処理の実行時間は、演算手段で行われる演算処理の負荷が高くなるほど短くなる傾向があるため、アイドルタスク処理の実行時間に基づいて演算処理の負荷状態を把握することができる。そして、演算処理が過負荷状態であるか否かを判定する際の閾値として、固定値ではなく、回転同期処理の実際の実行時間が設定される。このように内燃機関の回転速度の上昇に伴って実行回数が増大する回転同期処理の実際の実行時間が上記閾値として設定されるため、過負荷状態の判定時における演算状況に対応した適切な閾値が設定され、これにより電子制御装置において演算処理が過負荷状態であることを精度良く判定することができるようになる。
【0009】
アイドルタスク処理の実行時間と回転同期処理の実行時間とを計測する際には、請求項2に記載されるように、所定期間におけるアイドルタスク処理の実行時間と、同所定期間における回転同期処理の実行時間とを計測するといった態様を採用することができる。
【0010】
また、アイドルタスク処理の実行時間と回転同期処理の実行時間とを計測する際には、請求項3に記載されるように、所定期間におけるアイドルタスク処理の実行時間と回転同期処理の最大実行時間とを計測するといった態様を採用することもできる。この場合には、機関運転中において複数回実行される回転同期処理にあってその最大実行時間とアイドルタスク処理の実行時間とが比較されるため、演算処理が過負荷状態であることを、より精度良く判定することができる。
【0011】
前記所定期間を設定するに際しては、請求項4に記載されるように、過負荷判定手段は、回転同期処理の実行間隔を基準として所定期間を設定するといった態様を採用することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の電子制御装置において、前記過負荷判定手段により前記演算手段が過負荷状態である旨判定されるときに、同演算手段の負荷を低減する負荷低減処理を実行することを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、過負荷判定手段により演算手段が過負荷状態である旨判定されるときに、同演算手段の負荷を低減する負荷低減処理が実行されるため、演算処理の過負荷状態が継続されることが抑制され、回転同期処理よりも優先順位の低いアイドル処理や時間同期処理が実行されなくなるといった不都合の発生を抑制することができる。したがって、内燃機関の運転を適切に継続することができるようになる。
【0014】
上記負荷低減処理は、具体的には、請求項6に記載されるように、内燃機関の回転速度を低下させる回転速度低下処理であるものとすることができる。この場合には、回転同期処理の実行回数が減少することにより、演算処理の負荷が低減されるようになる。
【0015】
上記回転速度低下処理として、より具体的には、請求項7に記載されるような内燃機関の吸入空気量を減量補正するといった態様、請求項8に記載されるような内燃機関の点火時期を遅角補正するといった態様、請求項9に記載されるような内燃機関の出力トルクに対する要求値を減少補正するといった態様を採用することができる。
【0016】
さらに、上記回転速度低下処理としては、請求項10に記載されるように、機関に接続された変速機の出力軸回転速度に対する入力軸回転速度の比である変速比が小さくなるように、変速機に対して変速要求を行うといった態様を採用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第1の実施形態について図1〜図3を参照して説明する。図1は、本実施形態にかかる内燃機関の電子制御装置により制御される内燃機関10と、その周辺構成の概略構成図である。
【0018】
内燃機関10は複数の気筒19を有し、この気筒19内には、ピストン16が往復動可能にそれぞれ収容されているとともに、気筒19の内周面とピストン16の頂面とによって燃焼室12が区画形成されている。同機関10には、燃焼室12内に燃料を噴射供給する燃料噴射弁20と、燃焼室12内で空気と燃料との混合気を点火する点火プラグ18とが設けられている。また、ピストン16は、内燃機関10の出力軸であるクランク軸17に接続されている。
【0019】
燃焼室12に吸入空気を供給する吸気通路11には、同通路11を流通する吸入空気の量(吸入空気量)を調整するスロットルバルブ14と、同バルブ14の開度TAを調節するスロットル用アクチュエータ15が設けられている。また、スロットルバルブ14には、同バルブ14の開度TAに応じた信号を出力するスロットル開度センサ32が取り付けられている。また、吸気通路11においてスロットルバルブ14の上流側には、吸入空気量に応じた信号を出力するエアフロメータ31が取り付けられている。吸気通路11を通じて供給される空気と、上記燃料噴射弁20により供給される燃料は、燃焼室12で混合されるとともに上記点火プラグ18により点火されて燃焼し、燃焼後の排気は排気通路13に排出される。この排気通路13には、同通路13を流通する排気中の酸素濃度に応じた信号を出力する酸素濃度センサ33が取り付けられている。
【0020】
そして、燃焼室12での混合気の燃焼によるピストン16の往復動に伴い、クランク軸17が回転する。このクランク軸17の回転は、自動変速機60を介して、同機関10が搭載された車両の駆動輪(図示略)に伝達される。
【0021】
なお、この自動変速機60は、同変速機60の出力軸の回転速度Noutに対する入力軸の回転速度Ninの比、すなわち変速比(Nin/Nout)が自動的に変更される周知の自動変速機である。本実施形態ではこうした自動変速機として、変速比を段階的に変更することが可能な多段変速機を採用しているが、この他に変速比を無段階に調整可能な無段変速機等を採用することもできる。
【0022】
内燃機関10には、同機関10の運転状態を把握するべく、上述した各種センサに加えてさらに種々のセンサが設けられている。具体的には、ピストン16の往復動により回転するクランク軸17の位置を検知するためのクランク角センサ34や、運転者によるアクセルペダル(図示略)の踏み込み量を検知するためのアクセルペダル踏込量センサ35等が設けられている。これらのセンサにより出力された信号は、同機関10を総括的に制御するECU40に入力される。
【0023】
ECU40には、演算処理を実行する中央処理装置(CPU)41、各種制御プログラムやデータが予め記憶されている読み出し専用メモリ(ROM)42、CPU41の演算結果等が一時的に記憶される揮発性メモリ(RAM)43、記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリ(EEPROM)44が備えられている。また、この他にも、図示しないA/D変換器や入出力インターフェイス等も備えられている。このCPU41が演算手段に相当する。また、このECU40は、上記自動変速機60の変速を総括的に制御するT−ECU50と電気的に接続されており、このT−ECU50との間で信号が入出力される。
【0024】
T−ECU50は、上記ECU40と同様に、図示しない中央処理装置(CPU)等を含んで構成されており、自動変速機60が搭載された車両の走行状態等に基づいて変速比を決定して、その決定された変速比となるように自動変速機60を制御する。
【0025】
CPU41は、各種センサからの信号に基づき内燃機関10の運転状態を把握するとともに、把握した運転状態に応じて、同機関10の制御に必要な各種処理を予め定められた実行優先順位に基づいて順に実行することにより、複数の処理からなる機関制御を行う。こうした機関制御に必要な各種処理のプログラムは上記ROM42に記憶されている。より具体的には、実行優先順位の高い順に、クランク軸17の回転に同期して実行が要求される回転同期タスク(回転同期処理に相当)と、一定時間毎(例えば10ms)に実行が要求される時間同期タスク(時間同期処理に相当)と、回転同期タスク及び時間同期タスクがともに実行されていないことを条件に実行されるアイドルタスク(アイドルタスク処理に相当)とに分類される。そして、優先順位の低いタスクの実行中において優先順位の高いタスクの実行が要求された場合には、実行中のタスクを一旦停止した上で優先順位の高いタスクが割り込み処理される。
【0026】
回転同期タスクとしては、例えば、点火プラグ18の点火時期を調整する点火時期制御、燃料噴射弁20における燃料噴射時期や燃料噴射量の制御等が挙げられる。また、時間同期処理としては、例えば、スロットルバルブ14の開度を制御するスロットル制御、酸素濃度センサ33の出力値に基づき燃焼室12の混合気の空燃比を目標空燃比に収束させる空燃比制御等が挙げられる。さらに、アイドルタスクは、内燃機関の運転には直接的には関連しない処理が主に分類され、例えば、上記EEPROM44に記憶されている各種学習値等のデータの再書き込み処理(リフレッシュ処理)等が挙げられる。なお、回転同期タスク、時間同期タスクとしてそれぞれ分類される複数のタスク間においても優先順位が段階的に定められており、定められた優先順位に基づきタスクが順に実行される。
【0027】
ところで、内燃機関10の回転速度NEが上昇するほど回転同期タスクの実行回数が増大して実行間隔が短くなるため、演算処理を実行するCPU41の負荷が増大する。こうした回転速度NEの上昇に伴い演算処理の負荷が増大してCPU41が過負荷状態に達すると、この回転同期タスクよりも実行優先順位の低い処理の完了が遅延したり、実行されなかったりする不都合が生じ、機関制御を継続することができなくなる可能性が生じる。
【0028】
そこで、ECU40は、所定期間ΔTにおける回転同期タスクの実行時間Trとアイドルタスクの実行時間Tiを計測する「タスク実行時間計測処理」を実行する。そして、これら計測された実行時間Tr,Tiに基づき「負荷監視処理」によりCPU41が過負荷状態であるか否かを判定し、過負荷状態である旨判定されたときには演算処理の負荷を低減させるようにしている。なお、所定期間ΔTは、回転同期タスクの実行間隔を基準とした期間、すなわち回転同期タスクが開始されてから、次の回転同期タスクが開始されるまでの期間が所定期間ΔTとして設定される。
【0029】
以下、図2を参照して、CPU41により実行される回転同期タスク、時間同期タスク、アイドルタスクの実行態様について説明し、併せて「タスク実行時間計測処理」の実施態様について説明する。
【0030】
図2(a)には、クランク軸17の回転速度NEが低い時、すなわち低回転時における実行態様の一例を、図2(b)には、クランク軸17の回転速度NEが高い時、すなわち高回転時における実行態様の一例を示している。それら図2(a)及び図2(b)に示されるように、上記所定期間ΔT内におけるアイドルタスク実行時間Tiは、CPU41における演算処理の負荷が高くなる図2(b)の状態の方が図2(a)の状態よりも短くなる。
【0031】
上述したように、回転同期タスクと時間同期タスクとアイドルタスクとでは、回転同期タスクの優先順位が最も高いため、この回転同期タスクの実行が要求されると、回転同期タスクが優先的に実行される。すなわち、図2(a)に示すように、時刻t11において回転同期タスクの実行が要求されると、この時刻t11から回転同期タスクが開始されて時刻t12に終了する。同様に、時刻t15において回転同期タスクの実行が要求されると、この時刻t15から回転同期タスクが開始されて時刻t17に終了する。ここで、「タスク実行時間計測処理」では、回転同期タスクの実行間隔である時刻t11から時刻t15までの期間が、上記所定期間ΔTとして設定されるとともに、その所定期間ΔTにおける回転同期タスク実行時間Trとして、時刻t11から時刻t12までの時間が計測されて、上記RAM43に記憶される。
【0032】
また、回転同期タスクが実行されていないときに時間同期タスクの実行が要求された場合は、要求された時刻から時間同期タスクが開始される。また、回転同期タスクが既に実行されている時に時間同期タスクの実行が要求された場合には、既に実行されている回転同期タスクが終了した後に時間同期タスクが開始される。これに対し、時間同期タスクが既に実行されている時に回転同期タスクの実行が要求された場合には、既に実行されている時間同期タスクが一旦停止されるとともに回転同期タスクが割り込み処理され、この回転同期タスクが終了した後に、停止されていた時間同期タスクが再開される。
【0033】
すなわち、回転同期タスクが実行されていない時刻t13において時間同期タスクの実行が要求されると、この時刻t13から時間同期タスクが開始されて時刻t14に終了する。一方、既に回転同期タスクが実行されている時刻t16において時間同期タスクの実行が要求された場合には、既に実行されている回転同期タスクが終了する時刻t17まで待ってから時間同期タスクが開始される。
【0034】
さらに、アイドルタスクは、上記回転同期タスク及び時間同期タスクがともに実行されていない時刻t12から時刻t13までの期間、及び時刻t14から時刻t15までの期間において実行される。したがって、「タスク実行時間計測処理」では、所定期間ΔTにおけるアイドルタスク実行時間Tiとして、これら時刻t12から時刻t13までの時間と時刻t14から時刻t15までの時間との合計時間が計測されて、RAM43に記憶される。
【0035】
一方、図2(b)に示す高回転時では、時刻t21において回転同期タスクの実行が要求されると、この時刻t21から回転同期タスクが開始されて時刻t22に終了する。同様に、時刻t24、時刻t27、時刻t29において回転同期タスクの実行が要求されると、要求のあった時刻において優先的に回転同期タスクが開始される。ここで、例えば回転同期タスクの実行間隔である時刻t21から時刻t24までの期間を所定期間ΔT1、時刻24から時刻t27までの期間を所定期間ΔT2、時刻t27から時刻t29までの期間を所定期間ΔT3とする。また、所定期間ΔT1における回転同期タスク実行時間Trを回転同期タスク実行時間Tr1、所定期間ΔT2における回転同期タスク実行時間Trを回転同期タスク実行時間Tr2、所定期間ΔT3における回転同期タスク実行時間Trを回転同期タスク実行時間Tr3とすると、各所定期間ΔT1,ΔT2,ΔT3における各回転同期タスク実行時間Tr1,Tr2,Tr3が順次計測されて、計測された最新の回転同期タスク実行時間TrがRAM43にて順次更新される。
【0036】
また、時刻t23において時間同期タスクの実行が要求されると、要求された時間同期タスクはこの時刻t23から開始される。しかし、こうして開始された時間同期タスクの実行が完了する前の時刻t24に回転同期タスクの実行が要求されると、既に実行されている時間同期タスクが一旦停止されて回転同期タスクが割り込み処理され、この回転同期タスクが終了する時刻t25から、停止されていた時間同期タスクが再開される。
【0037】
さらに、アイドルタスクは、上記回転同期タスク及び時間同期タスクがともに実行されていない時刻t22から時刻t23までの期間、及び時刻t26から時刻t27までの期間において実行される。ここで、「タスク実行時間計測処理」では、上述した各所定期間ΔT1,ΔT2,ΔT3)においてそれぞれアイドルタスク実行時間Ti1,Ti2が順次計測される。すなわち、所定期間ΔT1におけるアイドルタスク実行時間Ti1として、時刻t22から時刻t23までの時間が計測され、所定期間ΔT2におけるアイドルタスク実行時間Ti2として、時刻t26から時刻t27までの時間が計測される。そして、計測された最新のアイドルタスク実行時間TiがRAM43にて順次更新される。なお、所定期間ΔT3では、アイドルタスクが実行されなかったため、所定期間ΔT3におけるアイドルタスク実行時間Tiは、「0」とされる。
【0038】
次に、図3を参照して、ECU40により実行される「負荷監視処理」についてその実行手順を説明する。同図3のフローチャートに示される一連の処理は、一定時間毎に繰り返し実行される。なお、上述した「タスク実行時間計測処理」や図3に示す「負荷監視処理」におけるステップS100からステップS120までの処理が、本実施形態における上記過負荷判定手段に相当する。
【0039】
この一連の処理では、まず、回転同期タスク実行時間Trとアイドルタスク実行時間Tiが読み込まれる(ステップS100)。ここでは、上述した「タスク実行時間計測処理」により計測されてRAM43に記憶されている回転同期タスク実行時間Trとアイドルタスク実行時間Tiが読み込まれる。例えば、図2(b)に示したアイドルタスク実行時間Ti1が計測された後であってアイドルタスク実行時間Ti2が計測される前に本処理が実行される場合には、回転同期タスク実行時間Tr1とアイドルタスク実行時間Ti1とが読み込まれる。
【0040】
アイドルタスク実行時間Tiは、CPU41において演算処理の負荷が高くなるほど短くなる傾向があるため、アイドルタスク実行時間Tiに基づいて演算処理の負荷状態を把握することができる。また、回転同期タスク1回分の処理(例えば点火時期制御にかかる点火時期の計算等)に要する時間は、制御プログラムの構築段階である程度予測することができるものの、実際には内燃機関10や同機関10を搭載する車両の状態によって変動することがある。
【0041】
そこで、次のステップでは、読み込まれたアイドルタスク実行時間Tiが上述した回転同期タスク実行時間Tr以下であるか否かが判定される(ステップS110)。すなわち、実際に計測された回転同期タスク実行時間Trを、この判定時における演算状況に対応した閾値として設定し、アイドルタスク実行時間Tiとの比較を行う。
【0042】
この判定処理を通じて、アイドルタスク実行時間Tiが回転同期タスク実行時間Trよりも長い旨(Ti>Tr)判定された場合には(ステップS110:NO)、CPU41が過負荷状態ではないと判断されて、本処理は終了される。
【0043】
例えば、先の図2(a)に示すアイドルタスク実行時間Tiと回転同期タスク実行時間Trとが読み込まれ、(Ti>Tr)の関係となっているときには、上記ステップS110に示す判定処理が実行された場合に、「Ti≦Tr」の関係が満たされない。そのため、この判定時における演算状況は過負荷状態ではなく、CPU41の演算処理には、余裕があると判断される。
【0044】
一方、アイドルタスク実行時間Tiが回転同期タスク実行時間以下である旨(Ti≦Tr)判定された場合には(ステップS110:YES)、今回の判定時における演算状況は過負荷状態であると判定される(ステップS120)。ここでは、回転速度NEの上昇に伴い回転同期タスクの実行回数が増大することにより、CPU41が過負荷状態にあると判断される。
【0045】
例えば、先の図2(b)に示すアイドルタスク実行時間Ti1と回転同期タスク実行時間Tr1が読み込まれ、(Ti1≦Tr1)の関係となっているときには、上記ステップS110に示す判定処理が実行された場合に、「Ti≦Tr」の関係が満たされるため、その判定時における演算状況は過負荷状態であると判定される。
【0046】
そして、CPU41が過負荷状態である旨判定された場合には、続いてスロットル開度TAが減少補正され(ステップS130)、本処理は終了される。
このステップS130では、アクセルペダルの踏み込み量や機関回転速度等に基づいて算出される目標スロットル開度TAtに対して補正量ΔTAだけ減算されたスロットル開度TA(=TAt−ΔTA)となるように、スロットル用アクチュエータ15が駆動される。上記補正量ΔTAとしては、機関回転速度NEを減少させてCPU41の演算処理の負荷を低減させることのできる量が予め設定されている。このステップS130の処理は、上記負荷低減処理として実行される回転速度低下処理に相当する。
【0047】
ステップS130の処理によってスロットル開度TAが減少補正されると、内燃機関10の燃焼室12に供給される吸入空気量が減少し、同機関10の回転速度NEは低下する。これにより、図2(b)に示される高回転時における各種タスクの実行態様が、図2(a)に示されるような低回転時における実行態様に近付くようになり、CPU41の負荷が低減される。
【0048】
以上説明した第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)アイドルタスク実行時間Tiと回転同期タスク実行時間Trとが実際に計測され、アイドルタスク実行時間Tiが回転同期タスク実行時間Tr以下であるときには、CPU41が過負荷状態であると判定される(ステップS120)。ここで、CPU41が過負荷状態であるか否かを判定する際の閾値として、固定値ではなく、回転同期タスクの実際の実行時間である回転同期タスク実行時間Trが計測されてその計測値が閾値として設定される。このように内燃機関10の機関回転速度NEの上昇に伴って実行回数が増大する回転同期タスクの実際の実行時間Trが上記閾値として設定される。そのため、過負荷状態の判定時における演算状況に対応した適切な閾値が設定され、これによりECU40において演算処理が過負荷状態であること、すなわちCPU41が過負荷状態であることを精度良く判定することができるようになる。
【0049】
(2)CPU41が過負荷状態である旨判定されるとき(ステップS120)に、CPU41の負荷を低減する負荷低減処理としてスロットル開度TAが減少補正される(ステップS130)。そのため、演算処理の過負荷状態が継続されることが抑制され、回転同期タスクよりも優先順位の低いアイドルタスクや時間同期タスクが実行されなくなるといった不都合の発生を抑制することができる。したがって、内燃機関10の運転を適切に継続することができるようになる。
【0050】
(3)CPU41の負荷を低減する負荷低減処理として、内燃機関10の機関回転速度NEを低下させる回転速度低下処理が実行される。より具体的にはスロットル開度TAの減少補正が実行されるため(ステップS130)、所定時間内における回転同期タスクの実行回数を減少させることができ、これによりCPU41の演算処理の負荷が低減されるようになる。
【0051】
(4)CPU41の過負荷状態を精度良く判定するとともに、過負荷状態と判定されたときにはその負荷を低減させることにより、内燃機関10の運転を適切に継続することができる。したがって、処理能力の高いCPUを採用して演算能力に大幅な余裕を持たせることなく機関制御を適切に維持することができるため、ECU40のコストアップを抑制することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第2の実施形態について、先の図1、図4及び図5を参照して説明する。
【0053】
本実施形態と上記第1の実施形態とでは、次の点において異なる。すなわち、第1の実施形態では、「タスク実行時間計測処理」により、所定期間ΔTにおける回転同期タスク実行時間Trが順次計測されて、RAM43に記憶される回転同期タスクが順次更新されるとともに、「負荷監視処理」により、この回転同期タスク実行時間Trを閾値としてCPU41が過負荷状態であるか否かが判定されていた。
【0054】
これに対し、本実施形態の「タスク実行時間計測処理」では、所定期間ΔTにおける回転同期タスクの実行時間Trが順次計測されるとともに、計測された回転同期タスク実行時間Trの最大実行時間TrmaxがRAM43において記憶される。そして、「負荷監視処理」により、この最大実行時間Trmaxを閾値としてCPU41が過負荷状態であるか否かが判定される。なお、上記第1の実施形態と同様の処理については、詳細な説明を省略する。
【0055】
まず、図4を参照して、「タスク実行時間計測処理」の詳細について説明する。
上記第1の実施形態と同様に、時刻t31、時刻t34、時刻37において回転同期タスクの実行が要求されると、要求のあった時刻において優先的に回転同期タスクが開始される。ここで、上述したように、回転同期タスク1回分の処理に要する時間は、内燃機関10や同機関10を搭載する車両の状態によって変動することがある。そこで、本実施形態における「タスク実行計測処理」では、回転同期タスク実行時間Trのうち、その最大実行時間TrmaxをRAM43に記憶するようにしている。具体的には、計測された回転同期タスク実行時間Trと、RAM43に先に記憶された最大実行時間Trmaxとを比較し、計測された回転同期タスク実行時間Trが最大実行時間Trmaxを上回る場合には、計測された回転同期タスク実行時間Trを最大実行時間Trmaxとして更新する。
【0056】
例えば、図4に示す所定期間ΔT1(時刻t31〜時刻t34)において計測された回転同期タスク実行時間Tr1が、先に記憶された最大実行時間Trmaxを上回る場合には、この回転同期タスク実行時間Tr1により、最大実行時間Trmaxが更新される。これに対し、所定期間ΔT2(時刻t34〜時刻t37)において計測された回転同期タスク実行時間Tr2が、先に記憶された最大実行時間Trmax(Tr1)以下である場合には、記憶されている最大実行時間Trmaxがそのまま保持される。
【0057】
一方、アイドルタスクについては、「タスク実行時間計測処理」にて、上記所定期間ΔT1におけるアイドルタスク実行時間Ti1(時刻t32〜時刻t33)や、上記所定期間ΔT2におけるアイドルタスク実行時間Ti2(時刻t36〜時刻t37)が順次計測されて、計測された最新のアイドルタスク実行時間TiがRAM43にて順次更新される。
【0058】
次に、図5を参照して、ECU40により実行される本実施形態の「負荷監視処理」についてその実行手順を説明する。同図5のフローチャートに示される一連の処理は、一定時間毎に繰り返し実行される。なお、上述した「タスク実行時間計測処理」や、図5に示す「負荷監視処理」におけるステップS200からステップS220までの処理が、本実施形態における過負荷判定手段に相当する。
【0059】
この一連の処理では、まず、最大実行時間Trmaxとアイドルタスク実行時間Tiが読み込まれる(ステップS200)。ここでは、上記「タスク実行時間計測処理」によってRAM43に記憶された最大実行時間Trmaxとアイドルタスク実行時間Tiが読み込まれる。
【0060】
そして、アイドルタスク実行時間Tiが最大実行時間Trmax以下であるか否かが判定される(ステップS210)。
この判定処理を通じて、アイドルタスク実行時間Tiが最大実行時間Trmaxよりも長い旨(Ti>Trmax)判定された場合には(ステップS210:NO)、この判定時における演算状況は過負荷状態ではないと判断されて、本処理は終了される。
【0061】
一方、アイドルタスク実行時間Tiが最大実行時間Trmax以下である旨(Ti≦Trmax)判定された場合には(ステップS210:YES)、この判定時における演算状況が過負荷状態であると判定される(ステップS220)。
【0062】
例えば、先の図4に示すアイドルタスク実行時間Ti1と最大実行時間Trmaxが読み込まれ、(Ti1<Trmax)の関係になっているときには、上記ステップS210に示す判定処理が実行された場合に、「Ti1≦Trmax(=Tr1)」の関係が満たされるため、この判定時における演算状況は、過負荷状態であると判定される。
【0063】
そして、CPU41が過負荷状態である旨判定された場合には、スロットル開度TAが減少補正されて(ステップS230)、本処理は終了される。このステップS230の処理は、上記ステップS130の処理と同一である。
【0064】
例えば、先の図4において、回転同期タスク実行時間Tr1(=最大実行時間Trmax)>アイドルタスク実行時間Ti2>回転同期タスク実行時間Tr2といった関係になっている場合にあって、上記第1の実施形態における「負荷監視処理」が実行されてアイドルタスク実行時間Ti2が回転同期タスク実行時間Tr2と比較されたときには、(Ti2>Tr2)の関係になるため、過負荷状態である旨の判定結果は得られない。しかし、本実施形態における「負荷監視処理」によれば、回転同期タスク実行時間Trのうち、その最大実行時間Trmaxが過負荷の判定に用いる閾値とされる。そのため、上記ステップS210では、最大実行時間Trmaxとして記憶された回転同期タスク実行時間Tr1とアイドルタスク実行時間Ti2との比較がなされ、同ステップS210にて肯定判定される(Trmax>アイドルタスク実行時間Ti2)ことにより、CPU41が過負荷状態であることを、より精度良く判定することができる。
【0065】
以上説明した第2の実施形態によれば、上記(1)〜(4)に示す作用効果に加えて、以下の作用効果を奏することができる。
(5)「タスク実行時間計測処理」により、機関運転中に複数回実行される回転同期タスクにあってその最大実行時間Trmaxとアイドルタスク実行時間Tiとが比較されるため、演算処理が過負荷状態であることを、より精度良く判定することができる。
【0066】
(第3の実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第3の実施形態について、図1、図6及び図7を参照して説明する。
【0067】
本実施形態と上記第1の実施形態とでは、次の点において異なる。すなわち、第1の実施形態の「タスク実行時間計測処理」では、回転同期タスクの実行間隔を基準として、回転同期タスクが開始されてから次の回転同期タスクが開始されるまでの期間、すなわち1回の回転同期タスクの実行を含む期間が所定期間ΔTとして設定されていた。これに対し、本実施形態の「タスク実行時間計測処理」では、回転同期タスクの実行間隔を基準として、予め規定された回数の回転同期タスクの実行を含む期間が所定期間ΔTとして設定される。例えば、規定回数が3回とされている場合には、1回目の回転同期タスクが開始されてから、2回目及び3回目の回転同期タスクが実行された後、その次の回転同期タスクが開始されるまでの期間が所定期間ΔTとして設定される。さらに、本実施形態の「負荷判定処理」では、そうした所定期間ΔTにおける回転同期タスク実行時間Trの積算値である回転同期タスク積算実行時間TrSと、同所定期間ΔTにおけるアイドルタスク実行時間Tiの積算値であるアイドルタスク積算実行時間TiSとが比較されることにより、CPU41が過負荷状態か否かが判定される。なお、上記第1の実施形態とで同様の処理については、詳細な説明を省略する。
【0068】
まず、図6を参照して、本実施形態における「タスク実行時間計測処理」の詳細について説明する。ここでは、所定期間ΔTにおける回転同期タスクの規定回数が3回とされている例について説明するが、この規定回数は適宜変更することができる。
【0069】
上記第1の実施形態と同様に、時刻t41、時刻t44、時刻t47、時刻t49において回転同期タスクの実行が要求されると、要求のあった時刻において優先的に回転同期タスクが開始される。ここで、本実施形態の「タスク実行時間計測処理」では、上記規定回数が3回と定められているため、時刻t41から時刻t49までの期間が所定期間ΔTとして設定される。そして、この所定期間ΔTにおける回転同期タスク積算実行時間TrSとして、この所定期間ΔTにおいて実行される3回の回転同期タスクの実行時間の合算時間が計測されて、RAM43に記憶される。この図6に示す例では、時刻t41から時刻t42までの時間、時刻t44から時刻t45までの時間、及び時刻t47から時刻t48までの時間を合計した時間が回転同期タスク積算実行時間TrSとして記憶される。
【0070】
一方、アイドルタスクは、回転同期タスク及び時間同期タスクがともに実行されていない時刻t42から時刻t43までの期間や、時刻t46から時刻t47までの期間において実行される。したがって、「タスク実行時間計測処理」では、所定期間ΔTにおけるアイドルタスク積算実行時間TiSとして、時刻t42から時刻t43までの時間及び時刻t46から時刻t47までの時間の合計時間が計測されて、RAM43に記憶される。
【0071】
次に、図7を参照して、ECU40により実行される本実施形態の「負荷監視処理」についてその実行手順を説明する。同図7のフローチャートに示される一連の処理は、一定時間毎に繰り返し実行される。なお、上述した「タスク実行時間計測処理」や、図7に示す「負荷監視処理」におけるステップS300からステップS320までの処理が、本実施形態における上記過負荷判定手段に相当する。
【0072】
この一連の処理では、まず回転同期タスク積算実行時間TrSとアイドルタスク積算実行時間TiSが読み込まれる(ステップS300)。ここでは、上述した「タスク実行時間計測処理」により計測されてRAM43に記憶されている回転同期タスク積算実行時間TrSとアイドルタスク積算実行時間TiSが読み込まれる。
【0073】
そして、読み込まれたアイドルタスク積算実行時間TiSが回転同期タスク積算実行時間TrS以下であるか否かが判定される(ステップS310)。
この判定処理を通じて、アイドルタスク積算実行時間TiSが回転同期タスク積算実行時間TrSよりも長い旨(TiS>TrS)判定された場合には(ステップS310:NO)、この判定時における演算状況は過負荷状態ではないと判断されて、本処理はそのまま終了される。
【0074】
一方、アイドルタスク実行時間Tiが回転同期タスク実行時間以下である旨(TiS≦TrS)判定された場合には(ステップS310:YES)、この判定時における演算状況が過負荷状態であると判定される(ステップS320)。
【0075】
例えば、先の図6に示されるアイドルタスク積算実行時間TiSと回転同期タスク積算実行時間TrSとが読み込まれ、(TiS≦TrS)といった関係になっているときには、上記ステップS310に示す判定処理が実行された場合に、「TiS≦TrS」の関係が満たされるため、この判定時における演算状況は、過負荷状態であると判定される。
【0076】
そして、CPU41が過負荷状態である旨判定された場合には、スロットル開度TAが減少補正されて(ステップS330)、一連の処理が終了される。なお、このステップS330の処理は、上記ステップS130の処理と同一である。
【0077】
以上、説明した第3の実施形態によれば、上記(1)〜(4)に示す作用効果と同様の作用効果を奏することができる。また、上記第1の実施形態及び第2の実施形態と比較して、所定期間ΔTが長く設定されるため、「負荷監視処理」の実行周期を長くすることができ、これにより「負荷監視処理」の実行に伴うCPU41の演算負荷を低下させることも可能になる。
【0078】
(第4の実施形態)
次に、図1及び図8を参照して、本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第4の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を説明する。
【0079】
上記第1の実施形態では、上記負荷低減処理として実行される回転速度低下処理としてスロットル開度TAを減少補正するようにしたが、本実施形態では、内燃機関10の点火時期を遅角補正するようにしており、先の図3に示したステップS130の処理を、図8に示すステップS430の処理に変更することにより実施される。
【0080】
すなわち、本実施形態における「負荷監視処理」では、第1実施形態で説明したステップS120においてCPU41が過負荷状態であると判定されると、点火時期Tが遅角補正されて(ステップS430)、本処理は終了される。
【0081】
このステップS430では、機関運転状態に基づいて設定された点火時期Tから補正量ΔTだけ遅角させた点火時期Tとなるように、点火プラグ18の点火時期が遅角補正される。この補正量ΔTは、機関回転速度NEを減少させてCPU41の演算処理の負荷を低減させることのできる量が予め設定されている。こうした点火時期の遅角補正によっても、機関回転速度NEを低下させることができる。なお、ステップS430の処理は、本実施形態における負荷低減処理として実行される回転速度低下処理に相当する。
【0082】
この第4の実施形態によっても、上記(1)〜(4)に示した作用効果に準ずる作用効果を奏することができる。
(第5の実施形態)
以下、図1及び図9を参照して、本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第5の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を説明する。
【0083】
上記第1の実施形態では、上記負荷低減処理として実行される回転速度低下処理としてスロットル開度TAを減少補正するようにしたが、本実施形態では、アクセルペダルの踏み込み量や機関回転速度NE等に基づいて算出される機関の要求トルクを減少補正するようにしている。本実施形態は、先の図3に示したステップS130の処理を、図9に示すステップS530の処理に変更することにより実施される。
【0084】
すなわち、本実施形態における「負荷監視処理」では、第1実施形態で説明したステップS120においてCPU41が過負荷状態であると判定されると、要求トルクTOが減少補正されて(ステップS530)、本処理は終了される。
【0085】
このステップS530では、目標要求トルクTOtから補正量ΔTOだけ減少させた要求トルクTO(=TOt−ΔTO)が算出されて、この要求トルクTOが得られるように機関出力が制御される。なお、目標要求トルクTOtは、上記アクセルペダル踏込量センサ35によって検出されるアクセルペダルの踏み込み量や、クランク角センサ34によって検出される機関回転速度NE等に基づいて算出される。また、補正量ΔTOは、機関回転速度NEを減少させてCPU41の演算処理の負荷を低減させることのできる量が予め設定されている。
【0086】
こうした要求トルクTOの減少補正がなされると、減少補正された要求トルクTOに応じて算出される吸入空気量を燃焼室12に供給するべく、スロットルバルブ14の開度がスロットル用アクチュエータ15の駆動を通じて調整される。これにより、機関回転速度NEを低下させることができる。なお、ステップS530の処理は、本実施形態における負荷低減処理として実行される回転速度低下処理に相当する。
【0087】
この第5の実施形態によっても、上記(1)〜(4)に示した作用効果に準ずる作用効果を奏することができる。
(第6の実施形態)
以下、図1及び図10を参照して、本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第6の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を説明する。
【0088】
上記第1の実施形態では、上記負荷低減処理として実行される回転速度低下処理としてスロットル開度TAを減少補正するようにしたが、本実施形態では、自動変速機60の変速比が小さくなるように同自動変速機60の変速を制御するようにしている。本実施形態は、先の図3に示したステップS130の処理を、図10に示すステップS630の処理に変更することにより実施される。
【0089】
すなわち、ステップS120においてCPU41が過負荷状態であると判定されると、変速比が小さくなるように変速要求がなされて(ステップS630)、本処理は終了される。
【0090】
具体的には、ECU40は、T−ECU50に対して、自動変速機60の変速比が小さくなるように変速要求を出力する。この変速要求を受けたT−ECU50は、変速比が小さくなるように自動変速機60に対して変速指示を出し、自動変速機60ではシフトアップが実行される。例えば現在の変速段が3速段であれば、4速段へのシフトアップがなされる。これにより、自動変速機60の出力軸の回転速度Noutに対する入力軸の回転速度Ninが減少されて、クランク軸17の回転速度、すなわち機関回転速度NEを低下させることができる。なお、ステップS630の処理は、本実施形態における負荷低減処理として実行される回転速度低下処理に相当する。
【0091】
この第6の実施形態によっても、上記(1)〜(4)に示した作用効果に準ずる作用効果を奏することができる。
(その他の実施形態)
なお、この発明にかかる内燃機関の電子制御装置は、上記各実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、同実施の形態を適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0092】
・上記第1〜第3の各実施形態では、スロットルバルブ14の開度TAを減少補正することにより、吸入空気量を減少させる例を示したが、内燃機関10の吸入空気量を減量補正することのできる態様であれば、他の例を採用してもよい。例えば、吸入空気量の調整に関与する吸気バルブのバルブ特性を変更する可変動弁機構を内燃機関10に設けるとともに、この可変動弁機構の制御を通じて、内燃機関10の吸入空気量を減少補正させる態様を採用してもよい。また、スロットル開度TAの制御と、可変動弁機構の制御を組み合わせることにより、吸入空気量を減量補正するようにしてもよい。
【0093】
・上記第1〜第3の各実施形態では、予め設定された補正量ΔTAを適用する例を示したが、CPU41の負荷状態に応じて補正量ΔTAを可変とする態様を採用してもよい。例えば、「負荷監視処理」においてCPU41が過負荷状態である旨判定された際のアイドルタスク実行時間Tiと回転同期タスク実行時間Trとの乖離が大きいほど、すなわち過負荷の度合が高いほど、補正量ΔTAが多くなるように設定するといった態様を採用することができる。
【0094】
・上記第4〜第6の各実施形態では、上記第1の実施形態の「負荷判定処理」において実行される回転速度低下処理の態様を変更するようにした例をそれぞれ示した。しかし、上記第2又は第3の実施形態の「負荷判定処理」において実行される回転速度低下処理の態様についても、上記第4〜第6の各実施形態で示した回転速度低下処理の態様にそれぞれ変更するようにしてもよい。
【0095】
・さらに、上記各実施形態では、CPU41が過負荷状態である旨判定されたときに、回転速度低下処理としてスロットル開度TA、点火時期T、要求トルクTO、変速比の変更要求のいずれかを実行する例を示したが、これらの回転速度低下処理を適宜組み合わせて実行するようにしてもよい。
【0096】
・上記各実施形態では、CPU41の負荷を低減させる処理として、回転速度低下処理を実行する例を示したが、CPU41が過負荷状態であると判定されたときにCPU41の負荷を低減させることのできる処理であれば、他の処理を実行するようにしてもよい。例えば、回転同期タスクに分類される複数のタスクのうち、優先順位の低いタスクの実行回数を減少させるといった態様を採用することもできる。
【0097】
・上記第2の実施形態の「タスク実行時間計測処理」では、所定期間ΔTにおける回転同期タスク実行時間Trを順次計測するとともに、計測した最新の回転同期タスク実行時間Trと、先に記憶された最大実行時間Trmaxとを比較することにより最大実行時間Trmaxを更新するようにした。しかし、最大実行時間Trmaxの設定態様は、この例に限られない。例えば、計測された回転同期タスク実行時間Trを、予め定められた回数の計測が終了するまで記憶するとともに、記憶されている回転同期タスク実行時間Trのうちの最も長い時間を最大実行時間Trmaxとして設定して更新するようにしてもよい。この場合には、CPU41の過負荷状態を判定する時の演算状況に対応したさらに適切な最大実行時間Trmaxを閾値として設定することができるようになる。
【0098】
・上記第3の実施形態の「タスク実行時間計測処理」では、所定期間ΔTにおける回転同期タスク積算実行時間TrSを計測し、その計測された回転同期タスク積算実行時間TrSを過負荷の判定に用いる閾値として設定する例を示したが、CPU41の過負荷状態を判定する閾値としては、他の値を採用することもできる。例えば、上記第2の実施形態で説明した最大実行時間Trmaxを計測し、所定期間ΔTにおける回転同期タスクの実行回数を上記最大実行時間Trmaxに乗じて得られた値を上記閾値とする態様を採用することもできる。例えば、先の図6に示した例においては、計測された最大実行時間Trmaxに「3」を乗じた値を同閾値として設定することも可能である。
【0099】
・さらに、上記各実施形態では、回転同期タスクの実行間隔を基準として所定期間ΔTが設定される例を示したが、所定期間ΔTとしては、必ずしも回転同期タスクの実行間隔を基準とすることを要しない。すなわち、予め固定された所定期間を設定するようにしても良い。要するに、実際に計測された時間同期タスクの実行時間を閾値として設定することにより、上記(1)に示す作用効果を奏することができるようになる。
【0100】
・また、回転同期タスクの実行時間とアイドルタスクの実行時間との比較の際には、上記各実施形態で示したように値を直接比較するようにするのではなく、それら各実行時間の比率によってCPU41の過負荷状態を判定するようにしてもよい。
【0101】
・上記各実施形態のECU40により制御される内燃機関としては、上述した内燃機関10の例に限られず、適宜変更してもよい。例えば、吸気通路11内に燃料を噴射するポート噴射型の燃料噴射弁を備える内燃機関を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明にかかる内燃機関の電子制御装置を具体化した第1の実施形態について、電子制御装置により制御される内燃機関とその周辺構成を示す概略構成図。
【図2】同実施形態にかかる回転同期タスク、時間同期タスク、アイドルタスクの実行態様を示すタイムチャートであって、(a)は低回転時におけるタイムチャート、(b)は高回転時におけるタイムチャートを示す。
【図3】同実施形態にかかる「負荷監視処理」について、その実行手順を示すフローチャート。
【図4】第2の実施形態にかかる回転同期タスク、時間同期タスク、アイドルタスクの実行態様を示すタイムチャート。
【図5】同実施形態にかかる「負荷監視処理」について、その実行手順を示すフローチャート。
【図6】第3の実施形態にかかる回転同期タスク、時間同期タスク、アイドルタスクの実行態様を示すタイムチャート。
【図7】同実施形態にかかる「負荷監視処理」について、その実行手順を示すフローチャート。
【図8】第4の実施形態にかかる「負荷監視処理」について、その実行手順の一部を示すフローチャート。
【図9】第5の実施形態にかかる「負荷監視処理」について、その実行手順の一部を示すフローチャート。
【図10】第6の実施形態にかかる「負荷監視処理」について、その実行手順の一部を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0103】
10…内燃機関、11…吸気通路、12…燃焼室、13…排気通路、14…スロットルバルブ、15…スロットル用アクチュエータ、16…ピストン、17…クランク軸、18…点火プラグ、19…気筒、20…燃料噴射弁、31…エアフロメータ、32…スロットル開度センサ、33…酸素濃度センサ、34…クランク角センサ、35…アクセルペダル踏込量センサ、40…電子制御装置(ECU)、41…中央処理装置(CPU)、42…読み出し専用メモリ(ROM)、43…揮発性メモリ(RAM)、44…不揮発性メモリ(EEPROM)、50…T−ECU、60…自動変速機。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク軸の回転に同期して実行が要求される回転同期処理と、前記回転同期処理よりも優先順位が低い処理であって一定時間毎に実行が要求される時間同期処理と、前記回転同期処理及び前記時間同期処理がともに実行されていないことを条件として実行されるアイドルタスク処理とを、それらの実行優先順位に基づき実行する演算手段を備える電子制御装置であって、
前記アイドルタスク処理の実行時間と前記回転同期処理の実行時間とを計測し、前記アイドルタスク処理の実行時間が前記回転同期処理の実行時間以下であるときには、前記演算手段による演算処理が過負荷状態であると判定する過負荷判定手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記過負荷判定手段は、所定期間における前記アイドルタスク処理の実行時間と前記所定期間における前記回転同期処理の実行時間とを計測する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記過負荷判定手段は、所定期間における前記アイドルタスク処理の実行時間と前記回転同期処理の実行時間であってその最大実行時間とを計測する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記過負荷判定手段は、前記回転同期処理の実行間隔を基準として前記所定期間を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記過負荷判定手段により前記演算手段が過負荷状態である旨判定されるときに、同演算手段の負荷を低減する負荷低減処理を実行する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記負荷低減処理は、前記内燃機関の回転速度を低下させる回転速度低下処理である
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記回転速度低下処理として、前記内燃機関の吸入空気量を減量補正する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記回転速度低下処理として、前記内燃機関の点火時期を遅角補正する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項9】
請求項7〜8のいずれか1項に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記回転速度低下処理として、前記内燃機関の出力トルクに対する要求値を減少補正する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記機関には変速機が接続されており、
前記回転速度低下処理として、前記変速機の出力軸回転速度に対する入力軸回転速度の比である変速比が小さくなるように前記変速機に対して変速要求を行う
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項1】
内燃機関のクランク軸の回転に同期して実行が要求される回転同期処理と、前記回転同期処理よりも優先順位が低い処理であって一定時間毎に実行が要求される時間同期処理と、前記回転同期処理及び前記時間同期処理がともに実行されていないことを条件として実行されるアイドルタスク処理とを、それらの実行優先順位に基づき実行する演算手段を備える電子制御装置であって、
前記アイドルタスク処理の実行時間と前記回転同期処理の実行時間とを計測し、前記アイドルタスク処理の実行時間が前記回転同期処理の実行時間以下であるときには、前記演算手段による演算処理が過負荷状態であると判定する過負荷判定手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記過負荷判定手段は、所定期間における前記アイドルタスク処理の実行時間と前記所定期間における前記回転同期処理の実行時間とを計測する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記過負荷判定手段は、所定期間における前記アイドルタスク処理の実行時間と前記回転同期処理の実行時間であってその最大実行時間とを計測する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記過負荷判定手段は、前記回転同期処理の実行間隔を基準として前記所定期間を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記過負荷判定手段により前記演算手段が過負荷状態である旨判定されるときに、同演算手段の負荷を低減する負荷低減処理を実行する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記負荷低減処理は、前記内燃機関の回転速度を低下させる回転速度低下処理である
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記回転速度低下処理として、前記内燃機関の吸入空気量を減量補正する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記回転速度低下処理として、前記内燃機関の点火時期を遅角補正する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項9】
請求項7〜8のいずれか1項に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記回転速度低下処理として、前記内燃機関の出力トルクに対する要求値を減少補正する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の内燃機関の電子制御装置において、
前記機関には変速機が接続されており、
前記回転速度低下処理として、前記変速機の出力軸回転速度に対する入力軸回転速度の比である変速比が小さくなるように前記変速機に対して変速要求を行う
ことを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−59857(P2010−59857A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226196(P2008−226196)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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