力学量センサ装置およびその製造方法
【課題】圧力センサと高精度の力学量センサとが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】圧力を検出する第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1と第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2とが、第1の基板10に変位可能な状態に形成され、第2の基板20が貼り合わされて第1空間K1と第2空間K2が互いに連通せずに形成されてなり、第1の基板10がSOI基板からなり、SOI層3からなる一部の半導体領域Sで第1力学量検出部M1と第2力学量検出部M2がそれぞれ構成されてなり、第2力学量検出部M2が、第2可動半導体領域S2aと第2固定半導体領域S2bの対向する面の静電容量の変化を測定して、第2力学量を検出する力学量センサ装置100とする。
【解決手段】圧力を検出する第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1と第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2とが、第1の基板10に変位可能な状態に形成され、第2の基板20が貼り合わされて第1空間K1と第2空間K2が互いに連通せずに形成されてなり、第1の基板10がSOI基板からなり、SOI層3からなる一部の半導体領域Sで第1力学量検出部M1と第2力学量検出部M2がそれぞれ構成されてなり、第2力学量検出部M2が、第2可動半導体領域S2aと第2固定半導体領域S2bの対向する面の静電容量の変化を測定して、第2力学量を検出する力学量センサ装置100とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサと他の力学量センサをまとめてモジュール化した、力学量センサ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサと他の力学量センサをまとめてモジュール化する技術の一例として、「電波新聞ハイテクノロジー」2004年5月13日号(非特許文献1)に開示の技術がある。
【0003】
図20は、非特許文献1に開示されている、圧力センサと加速度センサを集積したセンサダイの断面構造を示す図である。
【0004】
非特許文献1に開示されている技術は、タイヤ空気圧センサに関するものである。図20に示すセンサダイでは、タイヤ空気圧の圧力検出機能を備えた圧力センサと加速度検出機能を備えた加速度センサとが、一つの同じセンサダイに集積形成されている。図20の圧力センサは、真空状態の密閉空間(基準圧力室)Kpとタイヤ内部の空気を分断するダイヤフラム部Dpを備え、ダイヤフラム部Dpの基準圧力室Kp側の面に、ダイヤフラム部Dpのタイヤ空気圧による変形を検出するピエゾ抵抗素子が形成されている。また、図20の加速度センサは、上記圧力センサの基準圧力室Kpとは別の真空状態にある密閉空間Kaに設置されており、回転する車輪に発生する放射方向の力をカンチレバーLaの変形によって検出し、ホイールモジュールに車輪の回転の有無およびその速度を判断させる。
【0005】
図20に示す圧力センサと加速度センサのモジュール構造では、圧力センサならびに加速度センサを真空状態にある密閉空間Kp,Kaに設置することで、両センサを、タイヤ内部に存在する多くの化学物質(タイヤ硬化処理の残留物質、石鹸、水など)から保護することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「電波新聞ハイテクノロジー2004年5月13日号」電波新聞社2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両の走行を安定的に制御するためには、タイヤ空気圧や車輪の回転速度だけでなく、車両の進行方向を検出するジャイロセンサ(角速度センサ)や進行方向に対する加速度を検出する加速度センサ等の高精度の力学量センサが必要である。また、走行に伴って車両位置の高度も異なってくるため、高度変化に伴った大気圧変化を検出する、高感度の圧力センサも必要である。従って、近年においては、圧力センサ、加速度センサおよびジャイロセンサ等の高精度の力学量センサをまとめてモジュール化した小型で安価な力学量センサ装置が必要になってきている。
【0008】
上記要求に対して、図20に示した非特許文献1に開示されているモジュール構造は、基本的に、タイヤ空気圧と車輪の回転速度を検出するものである。図20のモジュール構造における加速度センサは、カンチレバーLaの変形をピエゾ抵抗素子等で検出し、車輪の回転の有無およびその速度を検出するものであり、車両の進行方向や進行方向に対する加速度を高精度で検出することはできない。
【0009】
また、図20のモジュール構造における圧力センサでは、ダイヤフラム部Dpを薄くして感度を高めるため、一般的に密閉空間Kpと反対側のシリコンダイの裏面側に点線で示した深い凹部Hpを形成する必要がある。図20のモジュール構造は通常ウエハ状態で製造され、深い凹部Hpは、シリコンウエハの裏面側の各チップ形成領域に異方性エッチングを行うことにより形成される。しかしながら、異方性エッチングは平面方向の精度に対して深さ方向の加工精度が低いため、凹部Hpの深さが各チップでばらつき、ダイヤフラム部Dpの厚さにばらつきがでてしまうといった問題がある。
【0010】
そこで本発明は、圧力センサと加速度センサ等の第2力学量センサをまとめてモジュール化した小型の力学量センサ装置およびその製造方法であって、圧力センサと高精度の第2力学量センサとが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る力学量センサ装置は、第1力学量の圧力を検出する第1力学量センサと、圧力以外の第2力学量を検出する第2力学量センサとが一体化されてなる力学量センサ装置であって、圧力によって変位する第1力学量センサの第1力学量検出部と、第2力学量によって変位する第2力学量センサの第2力学量検出部とが、半導体からなる第1の基板の主面側に、所定の間隔を置いて変位可能な状態に形成されている。そして、第1の基板の主面側に、第1力学量検出部と第2力学量検出部をそれぞれ所定の間隔を置いて覆う、第2の基板が貼り合わされており、第1の基板と第2の基板によって、第1力学量検出部と第2力学量検出部を変位可能な状態でそれぞれ気密に収容する第1空間と第2空間が、互いに連通せずにそれぞれ形成されている。第1の基板は、埋め込み酸化膜を間に挟んだ支持基板とSOI層からなるSOI基板からなり、埋め込み酸化膜に達するトレンチにより、周囲から絶縁分離された複数のSOI層からなる半導体領域が形成されている。複数の半導体領域のうち、一部の半導体領域で第1力学量センサの第1力学量検出部が構成され、複数の半導体領域のうち、別の一部の半導体領域で第2力学量センサの第2力学量検出部が構成されている。また、第2力学量検出部は、少なくとも一つの半導体領域が、埋め込み酸化膜の一部を犠牲層エッチングすることにより、変位可能に形成された第2可動電極を有する第2可動半導体領域であり、少なくとももう一つの半導体領域が、第2可動電極と対向する第2固定電極を有する第2固定半導体領域であり、第2可動電極と第2固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成されている。そして、第2可動電極が、印加される第2力学量に応じて変位し、それに伴う静電容量の変化を測定して、第2力学量を検出するようにしている。
【0012】
以上のように、上記した力学量センサ装置は、圧力を検出する第1力学量センサ(圧力センサ)と加速度や角速度等の圧力以外の第2力学量を検出する第2力学量センサとが一体化されてモジュール化された、小型の力学量センサ装置である。
【0013】
上記力学量センサ装置においては、第1力学量センサと第2力学量センサを構成するための第1の基板として、埋め込み酸化膜を間に挟んだ支持基板とSOI層からなるSOI基板が用いられている。そして、第1力学量センサの第1力学量検出部と第2力学量センサの第2力学量検出部は、それぞれ、埋め込み酸化膜に達するトレンチにより周囲から絶縁分離された複数のSOI層からなる半導体領域で構成される。従って、上記第1力学量検出部と第2力学量検出部を形成するにあたっては、上記トレンチの形成工程等を共用して同時形成が可能であり、製造コストを低減することができる。
【0014】
また、上記力学量センサ装置における第2力学量センサは、変位可能に形成された第2可動電極と第2固定電極の間の静電容量変化を測定して第2力学量を検出するものである。該第2力学量センサは、例えばカンチレバーの変形をピエゾ抵抗素子等で検出する加速度センサに較べて高精度であり、高精度の加速度センサや角速度センサ(ジャイロセンサ)とすることができる。
【0015】
さらに、上記第1力学量検出部と第2力学量検出部が構成されている第1の基板の主面側には、第2の基板が貼り合わされており、第1力学量センサと第2力学量センサが、それぞれ、互いに連通していない第1空間と第2空間に気密に収容される構成となっている。従って、第1力学量センサが収容される第1空間と第2力学量センサが収容される第2空間は、各力学量センサの性能が最適となる別々の環境条件とすることができる。例えば、第2力学量センサが収容される第2空間の圧力は、第1力学量センサが収容される第1空間の被測定媒体の圧力や基準圧と独立して設定することができ、各力学量センサの互いの干渉による性能低下を防止することができる。
【0016】
以上のようにして、上記力学量センサ装置は、圧力センサ(第1力学量センサ)と加速度センサ等の力学量センサ(第2力学量センサ)をまとめてモジュール化した小型の力学量センサ装置であって、圧力センサと高精度の第2力学量センサとが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置とすることができる。
【0017】
上記力学量センサ装置における第1力学量検出部は、例えば、少なくとも一つの半導体領域が、埋め込み酸化膜に対して交わる方向に形成された第1の壁部を第1の電極として有しており、内部に中空部が設けられることによって第1の壁部が薄肉化され、該第1の壁部がダイヤフラムとして変形変位可能に形成された第1の半導体領域とする。また、少なくとももう一つの半導体領域が、第1の壁部と対向する第2の壁部を第2の電極として有する第2の半導体領域とする。そして、第1の電極と第2の電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、少なくとも第1の電極が、被測定媒体の圧力に応じて第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位し、第1の電極と第2の電極の間隔変化に伴う静電容量の変化を測定して、圧力を検出する構成とする。
【0018】
上記構成の第1力学量検出部を有した第1力学量センサは、被測定媒体の圧力による第1の壁部(ダイヤフラム)の変形変位を静電容量の変化として測定する、静電容量型の圧力センサである。上記構成の第1力学量検出部における第1の電極(第1の壁部)と第2の電極(第2の壁部)は、いずれも一つの導電型の半導体領域(SOI層)で形成されており、PN接合部は存在していない。従って、PN接合部による容量検出特性の不安定が発生しないため、温度や外部雰囲気等の外乱に対して非常に安定した容量検出特性を維持することができる。
【0019】
また、上記構成の第1力学量センサによれば、ダイヤフラムとして機能する第1の壁部の厚さを、SOI層の厚さと独立して設定することが可能である。従って、例えばSOI層の厚さを第2力学量センサにおける第2可動半導体領域に対して最適に設定すると共に、第1力学量センサのダイヤフラムとして機能する第1の壁部の厚さを、被測定媒体の圧力検出に最適な厚さに設定することができる。
【0020】
さらに、上記構成の第1力学量センサによれば、SOI基板の埋め込み酸化膜に平行に形成されたダイヤフラムと該ダイヤフラムの変形をピエゾ抵抗素子で検出する従来の圧力センサに較べて、容易に高感度化することが可能である。すなわち、従来の圧力センサの構造では、ダイヤフラムを薄くして感度を高めるため、一般的にSOI基板の支持基板側に異方性エッチングで深い凹部を形成する必要がある。しかしながら、異方性エッチングはマスクで決定される平面方向の精度に対して深さ方向の加工精度が低いため、従来の圧力センサの構造では、凹部の深さが各チップでばらつき、ダイヤフラムの厚さにばらつきがでてしまうといった問題がある。これに対して、上記構成の第1力学量センサによれば、異方性エッチングでトレンチ加工する深さはSOI層の厚さが最大であり、後述する製造方法で示すように、ダイヤフラムとして機能する第1の壁部の厚さも、マスクで決定される面内方向の精度で確保することができる。
【0021】
トレンチ加工の容易さと高い精度を確保する上で、上記構成の第1力学量センサにおいては、第1の壁部が、埋め込み酸化膜に対して直交する方向に形成されてなることが好ましい。
【0022】
上記構成の第1力学量センサは、例えば、中空部が封止されて所定の基準圧とされると共に、第2の基板を貫通して、該第2の基板の外部と第1空間を連通する第1の貫通穴が形成されてなり、少なくとも第1の電極が、第1の貫通穴を介して第1空間に導入される被測定媒体の圧力に応じて、第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位する構成とすることができる。
【0023】
また、第1空間が封止されて所定の基準圧とされると共に、支持基板と埋め込み酸化膜を貫通して、第1の基板の外部と前記中空部を連通する第2の貫通穴が形成され、少なくとも第1の電極が、第2の貫通穴を介して中空部に導入される被測定媒体の圧力に応じて、第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位する構成としてもよい。
【0024】
以上のようにして、上記力学量センサ装置は、圧力センサ(第1力学量センサ)と加速度センサ等の静電容量型で高精度の力学量センサ(第2力学量センサ)をまとめてモジュール化した小型の力学量センサ装置であって、ばらつきのない高精度な圧力センサと第2力学量センサとが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置とすることができる。
【0025】
上記力学量センサ装置において、第2力学量センサが加速度センサである場合には、スティクション(可動部が周囲と表面張力などで付着して、動き難くなる現象)の防止や不要な高周波振動を抑制するため、第2空間が、例えば1気圧の窒素(N2)雰囲気のように、所定気圧に封止されていることが好ましい。また、第2力学量センサが角速度センサ(コリオリ力センサ)である場合には、所望の高周波数と振幅で振動体を振動させてコリオリ力による該振動体の変位を検出するため、第2空間が真空に封止されていることが好ましい。同様に、第2力学量センサがローレンツ力センサである場合にも、所望の高周波数と振幅で振動体を振動させてローレンツ力による該振動体の静電容量の変化を検出するため、第2空間が真空に封止されていることが好ましい。第2力学量センサがローレンツ力センサである場合は、例えば地磁気方向に対する車の向きを検出することができる。
【0026】
上記力学量センサ装置は、第1力学量センサおよび第2力学量センサと共に、第3力学量を検出する第3力学量センサが一体化されてなり、第3力学量によって変位する第3力学量センサの第3力学量検出部が、第1の基板の主面側に、第1力学量センサおよび第2力学量センサと所定の間隔を置いて変位可能な状態に形成されていてもよい。第3力学量センサは、第2力学量センサと同様の構造で、第3力学量検出部を変位可能な状態で気密に収容する第3空間、第3可動電極を有する第3可動半導体領域、第3固定電極を有する第3固定半導体領域を有している。そして、第3可動電極と第3固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、第3可動電極が、印加される第3力学量に応じて変位し、それに伴う静電容量の変化を測定して、第3力学量を検出する構成とする。
【0027】
さらには、第1力学量センサ、第2力学量センサおよび第3力学量センサと共に、第2力学量センサおよび第3力学量センサと同様の構造で、第4力学量を検出する第4力学量センサが一体化されていてもよい。この場合には、例えば、圧力センサ、加速度センサ、角速度センサおよびローレンツ力センサを組み合わせることができる。
【0028】
このように、上記力学量センサ装置は、圧力を検出する第1力学量センサおよび第2力学量を検出する第2力学量センサと共に、より多くの力学量センサが一体化されていていてもよい。さらに、第1力学量センサとして、絶対圧を検出する圧力センサと相対圧を検出する圧力センサが、複数個、一体化されていてもよい。また、感度の異なる圧力センサを作製するため、ダイヤフラム厚や大きさの異なるダイヤフラムが、複数個、一体化されていてもよい。
【0029】
上記力学量センサ装置の第2力学量センサが加速度センサである場合には、第2の基板を貫通して、該第2の基板の外部と第2空間を連通する第3の貫通穴が形成されており、第2の基板において、第1の基板との貼り合わせ面と反対側の外面に、第3の貫通穴を封止する封止部材が配置されていることが好ましい。また、貼り合わせ面からの封止部材の最大高さが、貼り合わせ面からの前記外面の最大高さより低く設定されている構成とする。
【0030】
第2力学量センサが加速度センサである場合には、前述したように、スティクションの防止や不要な高周波振動を抑制するため、第2空間が所定気圧に封止されてなることが好ましい。第2空間を所定気圧に封止する方法としては、例えば、1気圧の窒素(N2)雰囲気中で第1の基板と第2の基板を貼り合わせる方法が考えられる。しかしながら、この方法は、例えば第3力学量センサとして角速度センサも一体化しようとする場合、採用することができない。従って、上記のように第2の基板に外部と第2空間を連通する第3の貫通穴を形成し、第1の基板との貼り合わせ面と反対側の外面に第3の貫通穴を封止する封止部材を配置する方法が、最も簡単で、任意の力学量センサとの組合せにも適用可能である。
【0031】
上記封止部材としては、金属、多結晶シリコン、絶縁膜等のいずれであってもよいが、上記のように、貼り合わせ面からの封止部材の最大高さが、第2の基板における外面の最大高さより低く設定されてなり、封止部材が第2の基板の最上面から頭を出さないようにすることが好ましい。
【0032】
加速度センサにおいて、所定気圧での気密封止は、性能を維持する上で重要なポイントである。従って、上記のように封止部材が第2の基板の最上面から頭を出さないようにして、製造途中に封止部材が冶具や他の部品に接触し難くし、封止部材に亀裂や欠けが発生して気密封止が破れることを防止する。
【0033】
第1の基板と第2の基板を貼り合わせて第1空間と第2空間を形成するチップサイズパッケージにおいて、気密封止の破れは、ウエハ状態での取り扱いではあまり問題にならない。しかしながら、貼り合わせ後のウエハを切断分割してチップ状態になった後が重要であり、チップの移送やチップの取り扱い時に気密封止部に接触しないような構造が特に必要となる。
【0034】
封止部材を第2の基板の外面より低く設定する場合、例えば、第2の基板の外面において、枠状のリブ部が形成されており、前記外面の最大高さが、リブ部の上面に設定されてなる構成としてもよい。
【0035】
これによれば、封止部材が第2の基板の最上面から頭を出さないようにできるだけでなく、第2の基板を必要最小限の厚さにして軽くすることができ、第2の基板に必要な強度は、上記枠状のリブ部によって確保することができる。
【0036】
また、第1力学量検出部と第2力学量検出部がそれぞれ第1空間と第2空間に気密に収容される上記力学量センサ装置においては、第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線の構成も重要である。
【0037】
例えば、第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線が、第2の基板を貫通して形成されてなる構成とする。また、第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線が、支持基板と埋め込み酸化膜を貫通して形成されてなる構成としてもよい。さらに、第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線が、埋め込み酸化膜の中に形成されてなる構成とすることもできる。
【0038】
以上のようにして、上記力学量センサ装置は、圧力センサ(第1力学量センサ)と加速度センサ等の静電容量型で高精度の力学量センサ(第2力学量センサ)をまとめてモジュール化した小型の力学量センサ装置であって、圧力センサと他の力学量センサとが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置とすることができる。
【0039】
従って、上記力学量センサ装置は、例えばタイヤ空気圧と車輪の回転速度の検出だけでなく、上記第2力学量センサとして、車両の進行方向を検出するジャイロセンサ(角速度センサ)や進行方向に対する加速度を検出する加速度センサとしての機能も、第1力学量センサの圧力センサと共に組み込み可能である。また、上記力学量センサ装置の第1力学量センサは、タイヤ空気圧を検出する圧力センサだけでなく、走行に伴って車両位置の高度変化に伴った大気圧変化を検出する、高感度の圧力センサとすることもできる。上記した第1力学量センサと第2力学量センサの各検出機能を適宜組み合わせることで、車両の走行をより安定的に制御する小型で安価な力学量センサ装置を構成することができる。
【0040】
従って、上記力学量センサ装置は、車載用として好適である。
【0041】
また、上記力学量センサ装置の製造方法に関しては、請求項17〜20に記載の製造方法によって、それぞれ請求項1、13、15、2に記載の力学量センサ装置を製造することができる。尚、これら製造方法によって製造される力学量センサ装置の効果については前述したとおりであり、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る力学量センサ装置の一例を示す図で、(a)は、力学量センサ装置100の要部の断面を示す図であり、(b)は、力学量センサ装置100の上面図である。
【図2】図1に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1のより具体的な構成例を示す図で、(a)は、第1力学量検出部M1の一構成例を示した平面図であり、(b)は、(a)における一点鎖線II-IIでの断面図である。
【図3】図1に示した第2力学量センサ(加速度センサ)R2のより具体的な構成例を示す図で、第2力学量検出部M2の一構成例を示した平面図である。
【図4】力学量センサ装置100の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、(a)〜(e)は、図1(a)に示した第1の基板10の準備工程を示す図である。
【図5】力学量センサ装置100の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、(a)〜(c)は、図1(a)に示した第1の基板10の準備工程を示す図である。
【図6】力学量センサ装置100の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、図1(a)に示した第2の基板20の準備工程を示す図である。
【図7】力学量センサ装置100の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、(a)は、第1の基板10の主面側に第2の基板20を貼り合わせる、基板貼り合わせ工程を示す図である。また、(b)は、第1の基板10と第2の基板20貼り合わせ後に行なう、第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2空間K2の封止工程を示す図である。
【図8】図1に示した力学量センサ装置100の変形例で、力学量センサ装置110の要部の断面を示す図である。
【図9】力学量センサ装置110の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、力学量センサ装置110の貼り合わせ前における第1の基板11を示す図である。
【図10】力学量センサ装置110の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、(a)〜(c)は、力学量センサ装置110の貼り合わせ前における第2の基板21の準備工程を示す図である。
【図11】力学量センサ装置110の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、(a)〜(c)は、第1の基板11と第2の基板21の貼り合わせ工程、および貼り合わせ後の配線6の形成工程を示す図である。
【図12】力学量センサ装置110の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、(a),(b)は、貼り合わせ後の配線6の形成工程、および第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2空間K2の封止工程を示す図である。
【図13】図8に示した力学量センサ装置110の変形例で、力学量センサ装置120の要部の断面を示す図である。
【図14】図1と図2に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1における第1力学量検出部M1の別の構成例を示した断面図で、(a)は被測定媒体の圧力を印加する前の状態を示す図であり、(b)は圧力を印加した後の状態を示す図である。
【図15】図8に示した力学量センサ装置110の別の変形例で、別構造の第1力学量センサ(圧力センサ)R1aを有した力学量センサ装置111の要部の断面を示す図である。
【図16】(a),(b)は、加速度センサR2aを有した力学量センサ装置121の製造工程別の要部断面図である。
【図17】加速度センサR2bを有した力学量センサ装置122の要部断面図である。
【図18】(a)〜(c)は、それぞれ、別の加速度センサR2b〜R2eを有した力学量センサ装置123〜125の要部断面図である。
【図19】別の加速度センサR2fを有した力学量センサ装置126を示す図で、(a)は、力学量センサ装置126の要部の断面を示す図であり、(b)は、力学量センサ装置126の上面図である。
【図20】非特許文献1に開示されている、圧力センサと加速度センサを集積したセンサダイの断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明を実施するための形態を、図に基づいて説明する。
【0044】
図1は、本発明に係る力学量センサ装置の一例を示す図で、図1(a)は、力学量センサ装置100の要部の断面を示す図であり、図1(b)は、力学量センサ装置100の上面図である。尚、図1(a)は、図1(b)における一点鎖線I-Iでの断面に対応している。
【0045】
図1に示す力学量センサ装置100は、第1力学量の圧力を検出する第1力学量センサ(圧力センサ)R1、第2力学量の加速度を検出する第2力学量センサ(加速度センサ)R2および第3力学量の角速度を検出する第3力学量センサ(角速度センサ)R3が一体化されてなる力学量センサ装置である。
【0046】
図1(a)に示すように、圧力によって変位する第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、加速度によって変位する第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および角速度によって変位する第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3は、それぞれ、半導体からなる第1の基板10の主面側に、所定の間隔を置いて変位可能な状態に形成されている。また、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3をそれぞれ所定の間隔を置いて覆う第2の基板20が、第1の基板10の主面側に貼り合わされている。この貼り合わされた第1の基板10と第2の基板20によって、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3を変位可能な状態でそれぞれ気密に収容する第1空間K1、第2空間K2および第3空間K3が、互いに連通せずにそれぞれ形成されている。
【0047】
第1の基板10は、図1(a)に示すように、埋め込み酸化膜2を間に挟んだ支持基板1とSOI層3からなるSOI(Silicon On Insulator)基板である。第1の基板10では、埋め込み酸化膜2に達するトレンチTにより、周囲から絶縁分離された複数のSOI層3からなる半導体領域Sが形成されている。図1の力学量センサ装置100においては、これら複数の半導体領域Sの一部で第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1が構成され、別の一部で第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2が構成され、さらに別の一部で第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3が構成されている。尚、図1の力学量センサ装置100では、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3に接続する配線4が、埋め込み酸化膜2中に形成されてなる構成を採用している。また、配線4が接続する第2の基板20で覆われていない第1の基板10の半導体領域Sには、外部と電気接続するための金属パターン5が形成されている。
【0048】
図1の力学量センサ装置100における第1力学量センサ(圧力センサ)R1の第1力学量検出部M1は、図1(a)に示すように、少なくとも一つの第1の半導体領域S1aと少なくとももう一つの第2の半導体領域S1bを有している。第1の半導体領域S1aは、埋め込み酸化膜2に対して交わる方向に形成された第1の壁部Waを第1の電極として有しており、内部に中空部Haが設けられることによって第1の壁部Waが薄肉化され、該第1の壁部Waがダイヤフラムとして変形変位可能に形成された半導体領域である。第2の半導体領域S1bは、第1の壁部Waと対向する第2の壁部Wbを第2の電極として有する半導体領域である。
【0049】
図1(a)に示す第1力学量センサ(圧力センサ)R1の第1力学量検出部M1では、前記第1の電極(第1の壁部Wa)と第2の電極(第2の壁部Wb)の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、少なくとも前記第1の電極が、被測定媒体の圧力に応じて第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位し、第1の電極と第2の電極の間隔変化に伴う静電容量の変化を測定して、圧力を検出する構成となっている。
【0050】
すなわち、図1に示す構成の第1力学量センサR1は、第1の半導体領域S1aの中空部Haが封止されて所定の基準圧(例えば真空)とされると共に、第2の基板20を貫通して、該第2の基板20の外部と第1空間K1を連通する第1の貫通穴V1が形成されている。そして、少なくとも第1の電極(第1の壁部Wa)が、第1の貫通穴V1を介して第1空間K1に導入される被測定媒体の圧力に応じて、第2の電極(第2の壁部Wb)の対抗面に対して垂直方向に変形変位する構成となっている。
【0051】
図2は、図1に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1のより具体的な構成例を示す図で、図2(a)は、第1力学量検出部M1の一構成例を示した平面図であり、図2(b)は、図2(a)における一点鎖線II-IIでの断面図である。
【0052】
図2(a)に示す第1力学量検出部M1は、内部に真空の中空部Haが設けられた4個の第1の半導体領域S1aと、中空部Haが設けられていない2個の第2の半導体領域S1bとで構成されている。第1の半導体領域S1aは、中空部Haが設けられることによって薄く形成された第1の壁部Waを有しており、該第1の壁部Waが、被測定媒体の圧力に応じて変形変位してダイヤフラムとして機能する。また、第2の半導体領域S1bは、第1の壁部Waに対向する第2の壁部Wbを有している。該第1の壁部Waと第2の壁部Wbとで、被測定媒体の圧力に応じた静電容量の変化を測定する容量素子の一組の電極、すなわち第1の電極E1aと第2の電極E1bが構成されている。
【0053】
図1に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1においては、測定圧力範囲や必要とする測定感度に応じて、図2(a)に示す第1力学量検出部M1のように、第1の半導体領域S1aと第2の半導体領域S1bのサイズや数、およびダイヤフラムとして機能する第1の壁部Waの面積や厚さを適宜設定する。
【0054】
図1の力学量センサ装置100における第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2力学量検出部M2は、図1(a)に示すように、少なくとも一つの第2可動半導体領域S2aと少なくとももう一つの第2固定半導体領域S2bを有している。第2可動半導体領域S2aは、埋め込み酸化膜2の一部を犠牲層エッチングすることにより、変位可能に形成された第2可動電極を有する半導体領域である。第2固定半導体領域S2bは、前記第2可動電極と対向する第2固定電極を有する半導体領域である。
【0055】
図1(a)に示す第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2力学量検出部M2では、前記第2可動電極と第2固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、前記第2可動電極が、印加される加速度に応じて前記対向面に対して垂直方向に変位し、第2可動電極と第2固定電極の間隔変化に伴う静電容量の変化を測定して、加速度を検出する構成となっている。
【0056】
また、図1の力学量センサ装置100において、加速度センサである第2力学量センサR2では、第2可動半導体領域S2aのスティクション(可動部が周囲と表面張力などで付着して、動き難くなる現象)の防止や不要な高周波振動を抑制するため、第2空間K2が、例えば1気圧の窒素(N2)雰囲気のように、所定気圧に封止される。このため、図1に示す第2力学量センサR2では、第2の基板20を貫通して、該第2の基板20の外部と第2空間K2を連通する第3の貫通穴V3と凹部L4が形成されている。そして、第2の基板20において、第1の基板10との貼り合わせ面と反対側の外面に、第3の貫通穴V3を封止する封止部材F3が、第2の基板20の外面から突き出ないようにして、凹部L4の底面全体に配置されている。言い換えれば、図1に示す力学量センサ装置100の第2力学量センサR2では、第1の基板10と第2の基板20の貼り合わせ面からの封止部材4の最大高さが、貼り合わせ面からの第2の基板20外面の最大高さより低く設定されている。
【0057】
封止部材Fの形成には、インクジェット法やマスク蒸着法スクリーン印刷法等を用いることができる。例えば、封止部材Fとして、凹部L4の底面に下から順にチタン(Ti)/ニッケル(Ni)/金(Au)/ハンダの積層膜を形成し、該積層膜を加熱することによって第2空間K2を気密に封止する。
【0058】
図3は、図1に示した第2力学量センサ(加速度センサ)R2のより具体的な構成例を示す図で、第2力学量検出部M2の一構成例を示した平面図である。
【0059】
図3に示す第2力学量検出部M2は、2個の第2固定電極E2b1,E2b2の間に、1個の第2可動電極E2aが挿入された構成となっている。尚、図3に示す第2可動半導体領域S2aにおいて、符号a1はアンカー部、符号a2はアンカー部a1に支持された矩形枠状のバネ部、符号a3はバネ部a2と連結された重錘部であり、第2可動電極E2aが重錘部a3の両側に櫛歯形状に形成されている。また、第2の半導体領域S1bにおける符号b11とb21も、それぞれのアンカー部である。
【0060】
図1の力学量センサ装置100における第3力学量センサ(角速度センサ)R3の第3力学量検出部M3は、図1(a)に示すように、少なくとも一つの第3可動半導体領域S3aと少なくとももう一つの第3固定半導体領域S3bを有している。第3可動半導体領域S3aは、埋め込み酸化膜2の一部を犠牲層エッチングすることにより、変位可能に形成された第3可動電極を有する半導体領域である。第3固定半導体領域S3bは、前記第3可動電極と対向する第3固定電極を有する半導体領域である。
【0061】
角速度を検出する第3力学量センサR3の第3可動半導体領域S3a(第3可動電極)は、前記対向面に対してここでは図示しない領域で直交する方向に高周波振動させた状態で、角速度(コリオリ力)の検出に用いられる。すなわち、図1(a)に示す第3力学量センサ(角速度センサ)R3の第3力学量検出部M3では、前記第3可動電極と第3固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、前記第3可動電極が印加される角速度のコリオリ力に応じて前記対向面に対して垂直方向に変位し、第3可動電極と第3固定電極の対向する距離の変化に伴う静電容量の変化を測定して、角速度を検出する構成となっている。
【0062】
また、図1の力学量センサ装置100において、角速度センサ(コリオリ力センサ)である第3力学量センサR3では、振動体である第3可動電極(第3可動半導体領域S3a)を所望の高周波数と振幅で振動させ、該振動体のコリオリ力(角速度に比例)による変位を検出する。このため、第3空間K3は、振動が減衰し難い真空で封止される。尚、第3力学量センサR3は、同様の構造で、所望の高周波数と振幅で振動体を振動させてローレンツ力による該振動体の静電容量の変化を検出する、ローレンツ力センサとすることもできる。第3力学量センサR3をローレンツ力センサとすることで、例えば地磁気方向に対する車の向きを検出することが可能になる。
【0063】
以上のように、図1に示す力学量センサ装置100は、圧力を検出する第1力学量センサ(圧力センサ)R1、加速度を検出する第2力学量センサ(加速度センサ)R2および角速度を検出する第3力学量センサ(角速度センサ)R3が一体化されてモジュール化された、小型の力学量センサ装置である。
【0064】
上記力学量センサ装置100においては、第1力学量センサR1、第2力学量センサR2および第3力学量センサR3を構成するための第1の基板10として、埋め込み酸化膜2を間に挟んだ支持基板1とSOI層3からなるSOI基板が用いられている。そして、第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3は、それぞれ、埋め込み酸化膜2に達するトレンチTにより周囲から絶縁分離された複数のSOI層3からなる半導体領域Sで構成される。従って、上記第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3を形成するにあたっては、上記トレンチTの形成工程等を共用して同時形成が可能であり、製造コストを低減することができる。
【0065】
さらに、上記第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3が構成されている第1の基板10の主面側には、第2の基板20が貼り合わされており、第1力学量センサR1、第2力学量センサR2および第3力学量センサR3が、それぞれ、互いに連通していない第1空間K1,第2空間K2および第3空間K3に気密に収容される構成となっている。従って、第1力学量センサR1が収容される第1空間K1、第2力学量センサR2が収容される第2空間K2および第3力学量センサR3が収容される第3空間K3は、各力学量センサの性能が最適となる別々の環境条件とすることができる。例えば、図1の力学量センサ装置100においては、加速度センサである第2力学量センサR2が収容される第2空間K2の圧力は、圧力センサである第1力学量センサR1が収容される第1空間K1の被測定媒体の圧力と独立して、1気圧の窒素(N2)雰囲気に設定することができる。また、角速度センサである第3力学量センサR3が収容される第3空間K3の圧力は、加速度センサである第2力学量センサR2が収容される第2空間K2の1気圧の窒素(N2)雰囲気と独立して、真空に設定することができる。このように、図1の力学量センサ装置100においては、各力学量センサR1〜R3がそれぞれ互いに連通していない空間K1〜K3に気密に収容される構成となっているため、各力学量センサR1〜R3の互いの干渉による性能低下を防止することができる。
【0066】
以上のようにして、図1に例示した力学量センサ装置100は、圧力センサ(第1力学量センサR1)、加速度センサ(第2力学量センサR2)および角速度センサ(第3力学量センサR3)をまとめてモジュール化した小型の力学量センサ装置であって、圧力センサと高精度の力学量センサ(加速度センサおよび角速度センサ)とが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置となっている。
【0067】
次に、図1の力学量センサ装置100における各力学量センサR1〜R3について、より詳細に説明する。
【0068】
上記力学量センサ装置100における第1力学量検出部M1を有した第1力学量センサ(圧力センサ)R1は、被測定媒体の圧力による第1の壁部(ダイヤフラム)Waの変形変位を静電容量の変化として測定する、静電容量型の圧力センサである。上記構成の第1力学量検出部M1における第1の電極(第1の壁部Wa)と第2の電極(第2の壁部Wb)は、いずれも一つの導電型(N+)の半導体領域S1a,S1b(SOI層3)で形成されており、PN接合部は存在していない。従って、PN接合部による容量検出特性の不安定が発生しないため、温度や外部雰囲気等の外乱に対して非常に安定した容量検出特性を維持することができる。
【0069】
また、上記構成の第1力学量センサR1によれば、ダイヤフラムとして機能する第1の壁部Waの厚さを、SOI層3の厚さと独立して設定することが可能である。従って、例えばSOI層3の厚さを第2力学量センサR2における第2可動半導体領域S2aに対して最適に設定すると共に、第1力学量センサR1のダイヤフラムとして機能する第1の壁部Waの厚さを、被測定媒体の圧力検出に最適な厚さに設定することができる。
【0070】
さらに、上記構成の第1力学量センサR1によれば、SOI基板の埋め込み酸化膜に平行に形成されたダイヤフラムと該ダイヤフラムの変形をピエゾ抵抗素子で検出する従来の圧力センサに較べて、容易に高感度化することが可能である。すなわち、従来の圧力センサの構造では、ダイヤフラムを薄くして感度を高めるため、一般的にSOI基板の支持基板側に異方性エッチングで深い凹部を形成する必要がある。しかしながら、異方性エッチングはマスクで決定される平面方向の精度に対して深さ方向の加工精度が低いため、従来の圧力センサの構造では、凹部の深さが各チップでばらつき、ダイヤフラムの厚さにばらつきがでてしまうといった問題がある。これに対して、図1に示した上記構成の第1力学量センサR1によれば、異方性エッチングでトレンチ加工する深さはSOI層の厚さが最大であり、後述する製造方法で示すように、ダイヤフラムとして機能する第1の壁部Waの厚さも、マスクで決定される面内方向の精度で確保することができる。
【0071】
以上のように、一つのSOI基板において加速度センサ等の静電容量型で高精度の力学量センサと一体形成する圧力センサは、図1に例示した静電容量型の第1力学量センサR1の構成が好適である。
【0072】
上記力学量センサ装置100における第2力学量センサ(加速度センサ)R2は、変位可能に形成された第2可動電極(第2可動半導体領域S2a)と第2固定電極(第2固定半導体領域S2b)の間の静電容量変化を測定して、加速度を検出するものである。このように、第2力学量センサR2についても、静電容量型のセンサとなっており、例えば図20に示したカンチレバーLaの変形をピエゾ抵抗素子等で検出する加速度センサに較べて、高精度の加速度センサとなっている。
【0073】
また、上記力学量センサ装置100における第3力学量センサ(角速度センサ)R3も、変位可能に形成された第3可動電極(第3可動半導体領域S3a)と第3固定電極(第3固定半導体領域S3b)の間の静電容量変化を測定して、角速度を検出するものである。このように、第3力学量センサR3についても、静電容量型のセンサとなっており、高精度の角速度センサ(ジャイロセンサ)とすることができる。
【0074】
次に、図1に示した力学量センサ装置100の製造方法について説明する。
【0075】
図4〜図7は、図1に示した力学量センサ装置100の製造方法の一例を示す工程別の断面図である。
【0076】
図4(a)〜(e)と図5(a)〜(c)は、図1(a)に示した第1の基板10の準備工程を示す図である。この第1の基板10の準備工程においては、SOI基板のSOI層3にトレンチTを形成し、複数の半導体領域Sを形成すると共に、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3を構成する。
【0077】
最初に、図1(a)に示した第1の基板10の構成要素である支持基板1として、例えば、厚さが200〜500μmで、(100)面の単結晶シリコン基板を用いる。この単結晶シリコンからなる支持基板1は、比抵抗が0.001〜0.1Ω・cmのN型で、高濃度に砒素(As)やリン(P)等の不純物が含まれており、図4(a)では「N+」と表記されている。
【0078】
次に、図4(a)に示すように、上記単結晶シリコン基板1を1000〜1100℃で熱酸化して0.5〜1.5μm厚さの(SiO2)熱酸化膜2aを形成した後、熱酸化膜2aに対して単結晶シリコン基板1に達する第1のコンタクト穴2bを形成する。
【0079】
次に、第1のコンタクト穴2bを埋め込むようにして、CVD法にて高濃度のN+型の多結晶シリコンを0.1〜2μmの厚さで全面に堆積し、ホトリソグラフィ法とエッチングで所定の配線パターンとする。図4(a)では、この配線パターンが、多結晶シリコン配線4aとして示されている。
【0080】
次に、CVD法やスパッタリング法等により、(SiO2)酸化膜2cを、0.5〜2.0μmの厚さで全面に形成する。尚、最初に形成した熱酸化膜2aと後で形成した酸化膜2cが、図1(a)に示した第1の基板10の埋め込み酸化膜2となる。
【0081】
続いて、図4(b)に示すように、酸化膜2cに対して多結晶シリコン配線4aに達する第2のコンタクト穴2dを形成する。
【0082】
次に、図4(c)に示すように、N+型の第1の多結晶シリコン層3aを、全面に5〜100μmの厚さで形成する。この実施例では、20μm程度の厚さで形成した。尚、多結晶シリコン配線4aと第2のコンタクト穴2d中に埋め込まれた第1の多結晶シリコン層3aとで、図1(a)に示した埋め込み酸化膜2中の配線4が構成される。
【0083】
このように、図1の力学量センサ装置100を製造するにあたっては、第1の基板10の準備工程において、図1(a)のSOI層3を形成する前に、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3に接続する配線4を、予め埋め込み酸化膜2中の所定位置に形成しておく。
【0084】
次に、図1(a)に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1の中空部Haを形成するため、図4(d)に示すように、第1の多結晶シリコン層3aに1〜2μm幅の予備トレンチTaを形成しておく。
【0085】
次に、図4(e)に示すように、予備トレンチTaの上部と蓋するようにして、スパッタリング法等により、真空中でN+型の第2の多結晶シリコン層3bを2〜3μmの厚さで形成する。これによって、蓋された予備トレンチTaが第1力学量センサ(圧力センサ)R1の中空部Haとなり、該中空部Haが、真空の基準圧室になる。また、第1の多結晶シリコン層3aと第2の多結晶シリコン層3bとで、図1(a)に示した第1の基板10のSOI層3が構成される。
【0086】
次に、図5(a)に示すように、SOI層3上の全面にアルミニウム(Al)膜を0.1〜1μmの厚さで堆積し、ホトリソグラフィ法とエッチングで所定のパターンとして、図1(a)に示した金属パターン5を形成する。
【0087】
次に、図1(a)に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1、第2力学量センサ(加速度センサ)R2および第3力学量センサ(角速度センサ)R3を形成するため、図5(b)に示すように、埋め込み酸化膜2に達するトレンチTを形成して、SOI層3を複数の所定の半導体領域Sに分割する。これによって、第1力学量センサ(圧力センサ)R1の形成部分において、第1の壁部Waを有した第1の半導体領域S1aと第2の壁部Wbを有した第2の半導体領域S1b等が形成され、第1力学量検出部M1が完成する。尚、ダイヤフラムとして機能する第1の壁部Waの代表的な厚さは1〜2μmで、測定する圧力によりさらに厚くまたは薄くする。
【0088】
続いて、SOI層3上の所定領域にフィルムレジストの貼り付け等によるレジストマスク(図示省略)を形成し、先の工程で形成した一部のトレンチTを介して、図5(c)に示すように、埋め込み酸化膜2の所定領域をエッチング除去する。尚、図5(c)では埋め込み酸化膜2を構成している上層の酸化膜2cだけを除去したが、さらに下層の熱酸化膜2aを除去してもよい。
【0089】
これによって、第2力学量センサ(加速度センサ)R2の形成部分において、第2可動半導体領域S2aと第2固定半導体領域S2b等の形成が完了し、第2可動半導体領域S2aの第2可動電極が可動できるようになって、第2力学量検出部M2が完成する。また、第3力学量センサ(角速度センサ)R3の形成部分において、第3可動半導体領域S3aと第3固定半導体領域S3b等の形成が完了し、第3可動半導体領域S3aの第3可動電極が可動できるようになって、第3力学量検出部M3が完成する。
【0090】
以上で、図1(a)に示した第1の基板10が準備できる。
【0091】
上記第1の基板10の準備工程は、特に、埋め込み酸化膜2中の配線4と静電容量型の第1力学量センサ(圧力センサ)R1の第1力学量検出部M1を形成するため、以下の工程を有している。すなわち、上記第1の基板10の準備工程は、支持基板1上に形成された酸化膜上に第1の多結晶シリコン層3aを堆積して、該酸化膜を埋め込み酸化膜2とすると共に、該第1の多結晶シリコン層3aをSOI層の一部とするSOI基板の第1準備工程と、第1の多結晶シリコン層3aに埋め込み酸化膜2に達する予備トレンチTaを形成した後、第1の多結晶シリコン層3a上に第2の多結晶シリコン層3bを堆積し、予備トレンチTaの開口部を蓋して中空部Haとすると共に、第1の多結晶シリコン層3aと第2の多結晶シリコン層3bの積層体をSOI層3とするSOI基板の第2準備工程と、トレンチTを形成して、第1の壁部Waを有する第1の半導体領域S1aと第2の壁部Wbを有する第2の半導体領域S1bを形成するSOI基板の第3準備工程とを有している。
【0092】
図6は、図1(a)に示した第2の基板20の準備工程を示す図である。この第2の基板20の準備工程においては、第1の基板10の主面側に貼り合わせた時に、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3を変位可能な状態でそれぞれ気密に収容する第1空間K1、第2空間K2および第3空間K3が互いに連通せずにそれぞれ形成されるように、第2の基板20を準備する。
【0093】
このため、例えば、厚さが100〜400μmで、(100)面のN+型単結晶シリコン基板を第2の基板20として用い、図6に示すように、凹部L1〜L4および図1(a)に示した第1の貫通穴V1と第3の貫通穴V3を形成しておく。
【0094】
図7(a)は、図4と図5の工程で準備した第1の基板10の主面側に、図6の工程で準備した第2の基板20を貼り合わせる、基板貼り合わせ工程を示す図である。
【0095】
図7(a)に示す基板貼り合わせ工程では、例えば、Arイオン等で接合表面を活性化した後、真空中でシリコンを常温直接接合する方法や、ハンダ共晶や低融点ガラス等による接合を利用することができる。この第1の基板10と第2の基板20の貼り合わせによって、第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3をそれぞれ気密に収容する互いに連通しない第1空間K1、第2空間K2および第3空間K3が、それぞれ形成される。また、真空中での第1の基板10と第2の基板20貼り合わせによって、第3力学量センサ(角速度センサ)R3の第3空間K3は、真空で封止される。
【0096】
図7(b)は、第1の基板10と第2の基板20貼り合わせ後に行なう、第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2空間K2の封止工程を示す図である。
【0097】
図7(b)に示す第2空間K2の封止工程では、例えば1気圧の窒素(N2)雰囲気中で、第3の貫通穴V3の上部にインクジェット法やスクリーン印刷法等で封止部材F3を配置する。これによって、第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2空間K2は、1気圧の窒素(N2)雰囲気で封止される。
【0098】
図7(a),(b)に示した工程によって、第3力学量センサ(角速度センサ)R3は真空の第3空間K3に収容されるので、可動電極が動き易くなり、角速度を高感度、高精度に検出できる。一方、第2力学量センサ(加速度センサ)R2は、1気圧の窒素(N2)雰囲気の第2空間K2に収容されるので、ダンピング効果により安定した加速度測定が可能となる。また、第1力学量センサ(圧力センサ)R1では、第1空間K1が被測定媒体の圧力室となり、封止していない第1の貫通穴V1が、被測定媒体の圧力導入穴となる。
【0099】
以上の、図4〜図7に示した工程によって、図1に示した力学量センサ装置100を製造することができる。尚、この実施例ではシリコン基板や多結晶シリコン層にN+型を用いたが、高濃度にボロン等のP型不純物を導入したP+型のシリコン基板や多結晶シリコン層を用いるようにしてもよい。
【0100】
図1に示した力学量センサ装置100のように、第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3がそれぞれ第1空間K1、第2空間K2および第3空間K3に気密に収容される力学量センサ装置においては、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3に接続する配線の構成が重要である。
【0101】
次に、図1に示した力学量センサ装置100の変形例で、異なる配線構成の力学量センサ装置について説明する。
【0102】
図8は、図1に示した力学量センサ装置100の変形例で、力学量センサ装置110の要部の断面を示す図である。尚、図8に示す力学量センサ装置110において、図1に示した力学量センサ装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0103】
図8に示す力学量センサ装置110も、図1に示した力学量センサ装置100と同様に、第1力学量の圧力を検出する第1力学量センサ(圧力センサ)R1、第2力学量の加速度を検出する第2力学量センサ(加速度センサ)R2および第3力学量の角速度を検出する第3力学量センサ(角速度センサ)R3が一体化されてなる力学量センサ装置である。
【0104】
一方、図1に示した力学量センサ装置100では、第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3に接続する配線4が、第1の基板10の埋め込み酸化膜2中に形成されていた。これに対して、図8に示す力学量センサ装置110においては、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3に接続する配線6が、第2の基板21を貫通して形成されてなる構成を採用している。
【0105】
より詳細に説明すると、図8の力学量センサ装置110では、第1の基板11が一層構造の埋め込み酸化膜2eを有したSOI基板となっており、図1に示した第1の基板10のように、配線4が埋め込み酸化膜2中に形成されたSOI基板ではない。一方、図8の力学量センサ装置110において、第1の基板11と貼り合わされている第2の基板21は、単結晶シリコン基板20aの所定位置に、図1(a)に示した貫通穴V1,V3だけでなく、配線のための配線貫通穴V4が形成されている。また、貫通穴V1,V3,V4が形成された単結晶シリコン基板20aの表面は、酸化膜20bで覆われている。そして、配線6の導電材料が、配線貫通穴V4を埋め込むようにして、第2の基板21の外側表面にパターン化されて形成されている。
【0106】
第2の基板21に配線6が形成されている力学量センサ装置110においては、配線層や外部と電気接続するためのパッド部が第2の基板21の上面に形成され、図1の力学量センサ装置100において図の右側にある外部と電気接続するための領域が不要となる。従って、図8の力学量センサ装置110は、図1の力学量センサ装置100に較べて、小型化が可能である。
【0107】
次に、図8に示した力学量センサ装置110の製造方法について説明する。
【0108】
図9〜図12は、図8に示した力学量センサ装置110の製造方法の一例を示す工程別の断面図である。
【0109】
図9は、図8に示した力学量センサ装置110の貼り合わせ前における第1の基板11を示す図である。前述の実施例では、第1の基板10のSOI層3として、多結晶シリコンからなる層を酸化膜2上に形成した。これに対して、図9に示す第1の基板11では、SOI層3として、単結晶シリコンからなる層を酸化膜2e上に形成している。すなわち、該第1の基板11は、単結晶シリコンからなる支持基板1に酸化膜2eを形成した後、N+型単結晶シリコン基板を接合し、該N+型単結晶シリコン基板を接合面と反対側から研削・研磨して、所定厚さの単結晶シリコンからなるSOI層3とする。以降は、図4(c)〜(e)および図5(b),(c)で説明した第1の基板10の準備工程と同様の工程で準備することができる。この場合、予備トレンチTaの上部に蓋をするために、エピタキシャル成長によりN+型の単結晶シリコン層を形成した。このようにすることにより、気密封止および強度等がさらに向上する。
【0110】
図10(a)〜(c)は、図8に示した力学量センサ装置110の貼り合わせ前における第2の基板21の準備工程を示す図である。
【0111】
最初に、図10(a)に示すように、例えば、厚さが100〜400μmで、(100)面のN+型単結晶シリコン基板20aを準備し、第1の基板11との貼り合わせ面側の所定位置に、例えばドライエッチングやウェットエッチング等で凹部L1〜L3を形成する。
【0112】
次に、図10(b)に示すように、貼り合わせ面と反対側の所定位置に凹部L4を形成した後、図8に示した貫通穴V1,V3,V4を、ドライエッチングやレーザ光により形成する。
【0113】
次に、図10(c)に示すように、熱酸化法やCVD法等により酸化膜20bを形成し、単結晶シリコン基板20aの表面全体を酸化膜20bで覆う。
【0114】
以上で、図8に示した貼り合わせ前の第2の基板21が準備できる。
【0115】
図11(a)〜(c)と図12(a),(b)は、それぞれ、図9と図10で準備した第1の基板11と第2の基板21の貼り合わせ工程、貼り合わせ後の図8に示した配線6の形成工程、および第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2空間K2の封止工程を示す図である。
【0116】
最初に、図11(a)に示すように、Arイオン等で接合表面を活性化した後、所謂常温接合を用い、第1の基板11と第2の基板21を真空中で接合する。この第1の基板11と第2の基板21の貼り合わせによって、互いに連通しない第1力学量センサR1の第1空間K1、第2力学量センサR2の第2空間K2および第3力学量センサR3の第3空間K3が、それぞれ形成される。また、真空中での第1の基板11と第2の基板21貼り合わせによって、第3力学量センサ(角速度センサ)R3の第3空間K3は、真空で封止される。
【0117】
続いて、図11(b)に示すように、第2の基板21の上面にフィルムレジストFRを貼り付け、配線貫通穴V4を除いて第1の貫通穴V1と第3の貫通穴V3を覆う所定のパターンに加工する。
【0118】
次に、図11(c)に示すように、配線貫通穴V4を埋め込むようにして、蒸着法やスパッタ法等で、アルミニウム(Al)等の導電材料6aを全面に堆積する。これによって、第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3のそれぞれの所定位置に、配線貫通穴V4を介して、導電材料6aが接続する。
【0119】
次に、図12(a)に示すように、導電材料6aをパターニングして図8の配線6とした後、フィルムレジストFRを除去する。この工程で、第1力学量センサ(圧力センサ)R1の第1の貫通穴(圧力導入穴)V1と第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第3の貫通穴V3が、外部雰囲気となる。
【0120】
次に、図12(b)に示すように、例えば1気圧の窒素(N2)雰囲気中で、第3の貫通穴V3の上部にインクジェット法やスクリーン印刷法等で封止部材F3を配置する。これによって、第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2空間K2は、1気圧の窒素(N2)雰囲気で封止される。
【0121】
以上の図9〜図12に示した工程によって、図8に示した力学量センサ装置110を製造することができる。
【0122】
図9〜図12に示した力学量センサ装置110の製造方法は、図10に示した第2の基板21の準備工程が、第2の基板21を貫通する配線貫通穴V4を形成する、配線貫通穴形成工程を有した準備工程となっている。また、図11と図12に示したように、図11(a)の基板貼り合わせ工程後において、配線貫通穴V4を導電材料6aで埋め込んで、それぞれ第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3に接続する配線6とする、第2の基板貫通配線形成工程を有した工程となっている。
【0123】
図13は、図8に示した力学量センサ装置110の変形例で、力学量センサ装置120の要部の断面を示す図である。尚、図13に示す力学量センサ装置120において、図8に示した力学量センサ装置110と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0124】
図13に示す力学量センサ装置120も、図8に示した力学量センサ装置110と同様に、第1力学量の圧力を検出する第1力学量センサ(圧力センサ)R1、第2力学量の加速度を検出する第2力学量センサ(加速度センサ)R2および第3力学量の角速度を検出する第3力学量センサ(角速度センサ)R3が一体化されてなる力学量センサ装置である。
【0125】
一方、図8に示した力学量センサ装置110では、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3に接続する配線6が、第2の基板21を貫通して形成されていた。これに対して、図13に示す力学量センサ装置120においては、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3に接続する配線7が、第1の基板12の支持基板1と埋め込み酸化膜2eを貫通して形成されてなる構成を採用している。
【0126】
より詳細に説明すると、図13の力学量センサ装置120では、図8の力学量センサ装置110と同様に、第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3が、第1の基板12における埋め込み酸化膜2e上のSOI層3に形成されている。一方、図13の力学量センサ装置120における第1の基板12には、図8の力学量センサ装置110と異なり、支持基板1と埋め込み酸化膜2eを貫通する配線貫通穴V5が形成されている。また、該配線貫通穴V5の側壁および埋め込み酸化膜2eと反対側の支持基板1の表面は、酸化膜1aで覆われており、配線7の導電材料が、配線貫通穴V5を埋め込むようにして、第1の基板12の外側表面にパターン化されて形成されている。
【0127】
一方、図13の力学量センサ装置120において第1の基板12と貼り合わされる第2の基板22には、図8の力学量センサ装置110における第2の基板21のような配線6を形成しないため、酸化膜20bのない単結晶シリコン基板20aだけからなる第2の基板22が採用されている。
【0128】
図13の第1の基板12に配線7が形成されている力学量センサ装置120においては、配線層や外部と電気接続するためのパッド部が第1の基板12の構成要素である支持基板1の下面に形成されている。従って、例えば図13に示すように、配線7上にボンディングボール7aを形成し、ここでは図示しないセラミック基板やプリント基板の配線層にフリップチップ実装して電気的に接続することができる。また、別の集積回路ICチップと接続し、各力学量センサR1〜R3への電源供給や信号の入出力を行ってもよい。尚、図13の力学量センサ装置120についても、図8の力学量センサ装置110と同様に、図1の力学量センサ装置100に較べて小型化が可能であることは言うまでもない。
【0129】
図13に示した力学量センサ装置120の製造は、例えば、図8の力学量センサ装置110の製造で用いた第2の基板21における配線6の形成工程を、図13の第1の基板12における配線7の形成に適用することで可能である。すなわち、図10(b)で説明した単結晶シリコン基板20aへの貫通穴V4の形成工程と、図10(c),図11(a)〜(c),図12(a)で説明した配線6の形成工程を、第1の基板12における配線貫通穴V5、酸化膜1a、および配線7の形成に適用する。尚、第1の基板12への配線7の形成は、例えば、SOI層3に第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3を形成する前に予め形成しておいてもよいし、第2の基板22を貼り合わせた後で形成するようにしてもよい。
【0130】
次に、図1に示した力学量センサ装置100の変形例で、構造の異なる第1力学量センサ(圧力センサ)を有した力学量センサ装置について説明する。
【0131】
例えば、図1に示した力学量センサ装置100の第1力学量センサ(圧力センサ)Raにおいては、第1の壁部Waが、埋め込み酸化膜2に対して直交する方向に形成されている。これによって、図4(d)に示した予備トレンチTaや図5(b)に示したトレンチTを形成するにあたって、トレンチ加工の容易さと高い精度を確保することが可能である。しかしながらこれに限らず、SOI層3の厚さを変えずにダイヤフラムとして機能する第1の壁部Waの面積を大きくしたい場合には、第1の壁部Waが埋め込み酸化膜2に対して斜めに交わる方向に形成されていてもよい。
【0132】
図14は、図1と図2に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1における第1力学量検出部M1の別の構成例を示した断面図で、図14(a)は被測定媒体の圧力を印加する前の状態を示す図であり、図14(b)は圧力を印加した後の状態を示す図である。
【0133】
図14に示す構造では、対向する第1の壁部Waと第2の壁部Wbを有した第1の半導体領域S1aと第2の半導体領域S1bに、それぞれ、真空の中空部Haと中空部Hbが設けられている。このため、第1の壁部Waと第2の壁部Wbは、どちらも被測定媒体の圧力に応じて変形変位可能であり、両方がダイヤフラムとして機能する。従って、図14に示す構造は、図2(b)に示した構造に較べて被測定媒体の圧力に対する静電容量の変化が大きくなるため、より感度を高めることができる。
【0134】
図15は、図8に示した力学量センサ装置110の別の変形例で、別構造の第1力学量センサ(圧力センサ)R1aを有した力学量センサ装置111の要部の断面を示す図である。尚、図15に示す力学量センサ装置111において、図8に示した力学量センサ装置110と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0135】
図1と図8に示した力学量センサ装置100,110における第1力学量センサ(圧力センサ)R1では、第1の半導体領域S1aの中空部Haが封止されて所定の基準圧(例えば真空)とされると共に、第2の基板20を貫通して、該第2の基板20の外部と第1空間K1を連通する第1の貫通穴V1が形成されていた。そして、少なくとも第1の電極(第1の壁部Wa)が、第1の貫通穴V1を介して第1空間K1に導入される被測定媒体の圧力に応じて、第2の電極(第2の壁部Wb)に対して垂直方向に変形変位し、第1の電極と第2の電極の間隔変化に伴う静電容量の変化を測定して、圧力を検出する構成となっていた。
【0136】
一方、図15に示す力学量センサ装置111の第1力学量センサ(圧力センサ)R1aにおいては、第1の基板13と第2の基板23の貼り合わせによって、第1空間K1aが封止されて所定の基準圧(例えば真空)とされると共に、第1の基板13の支持基板1と埋め込み酸化膜2eを貫通して、第1の基板13の外部と第1の半導体領域S1aの中空部Haを連通する第2の貫通穴V2が形成されている。そして、第1力学量検出部M1aの第1の電極(第1の壁部Wa)が、第2の貫通穴V2を介して中空部Haに導入される被測定媒体の圧力に応じて、第2の電極(第2の壁部Wb)の対向面に対して垂直方向に変形変位し、第1の電極と第2の電極の間隔変化に伴う静電容量の変化を測定して、圧力を検出する構成となっている。
【0137】
図15に示す力学量センサ装置111においては、例えば、第1の基板13と第2の基板23の貼り合わせによって第3力学量センサ(角速度センサ)R3の真空の第3空間K3を形成すると同時に、第1力学量センサ(圧力センサ)R1aの真空の第1空間K1aを形成することができる。尚、第1の基板13の支持基板1と埋め込み酸化膜2eを貫通する第2の貫通穴V2の形成には、例えば、シリコンからなる支持基板1を裏面からアルカリエッチング(例えばKOH水溶液)して酸化シリコン(SiO2)からなる埋め込み酸化膜2eに到達するまでエッチングし、続いて、ドライエッチング等で埋め込み酸化膜2eに穴を開け、第1の半導体領域S1aの中空部Haへ連通させる。
【0138】
以上に説明した力学量センサ装置100,110,111において、静電容量型で高精度の他の力学量センサ(加速度センサ等)と共に一つのSOI基板に一体形成しているの第1力学量センサ(圧力センサ)R1,R1aは、いずれも、静電容量型の圧力センサであった。しかしながら、静電容量型で高精度の他の力学量センサ共に一つのSOI基板に一体形成できる圧力センサは、これに限らない。例えば、あまり高感度が要求されない場合やトレンチ加工の深さ方向精度が確保できる場合には、図20に示したようなSOI基板の埋め込み酸化膜に平行に形成されたダイヤフラムと該ダイヤフラムの変形をピエゾ抵抗素子で検出する従来構成の圧力センサであってもよい。
【0139】
次に、図1に示した力学量センサ装置100の変形例で、第2力学量センサ(加速度センサ)の第2空間を封止する別の構造と好ましい例について説明する。
【0140】
図1に示した力学量センサ装置100は、第2力学量センサR2が加速度センサであり、第2の基板20を貫通して、該第2の基板20の外部と第2空間K2を連通する第3の貫通穴V3が形成されていた。そして、第2の基板20において、第1の基板10との貼り合わせ面と反対側の外面における凹部L4に、第3の貫通穴V3を封止する封止部材F3が配置されていた。さらに、前記貼り合わせ面からの封止部材F3の最大高さは、第2の基板20における貼り合わせ面からの外面の最大高さより低く設定されていた。
【0141】
加速度センサである第2力学量センサR2においては、前述したように、スティクションの防止や不要な高周波振動を抑制するため、第2空間K2が所定気圧に封止されてなることが好ましい。第2空間K2を所定気圧に封止する方法としては、例えば、1気圧の窒素(N2)雰囲気中で第1の基板10と第2の基板20を貼り合わせる方法が考えられる。しかしながら、この方法は、図1に示した力学量センサ装置100のように真空の第3空間K3が好ましい第3力学量センサ(角速度センサ)R3も同時に一体化する場合、採用することができない。従って、上記のように第2の基板20に外部と第2空間K2を連通する第3の貫通穴V3を形成し、第1の基板10との貼り合わせ面と反対側の外面に第3の貫通穴V3を封止する封止部材F3を配置する方法が、最も簡単で、任意の力学量センサとの組合せにも適用可能である。
【0142】
封止部材F3としては、金属、多結晶シリコン、絶縁膜等のいずれであってもよいが、上記のように、貼り合わせ面からの封止部材F3の最大高さが、第2の基板20における外面の最大高さより低く設定され、封止部材F3が第2の基板20の最上面から頭を出さないようにすることが好ましい。
【0143】
加速度センサにおいて、所定気圧での気密封止は、性能を維持する上で重要なポイントである。従って、上記のように封止部材F3が第2の基板20の最上面から頭を出さないようにして、製造途中に封止部材F3が冶具や他の部品に接触し難くし、封止部材F3に亀裂や欠けが発生して気密封止が破れることを防止する。
【0144】
図1に示した力学量センサ装置100のように、第1の基板10と第2の基板20を貼り合わせて第1空間K1、第2空間K2および第3空間K3を形成するチップサイズパッケージにおいて、気密封止の破れは、ウエハ状態での取り扱いではあまり問題にならない。しかしながら、貼り合わせ後のウエハを切断分割してチップ状態になった後が重要であり、チップの移送やチップの取り扱い時に気密封止部に接触しないような構造が特に必要となる。
【0145】
尚、図1の力学量センサ装置100では、封止部材F3が、第2の基板20の外面から突き出ないようにして、凹部L4の底面全体に配置されていた。封止部材F4は、第3の貫通穴V3の開口部を覆っていれば、凹部L4の底面の一部に配置されていてもよい。
【0146】
図16〜図19は、第1力学量センサ(圧力センサ)と共にSOI基板に一体形成される第2力学量センサが加速度センサである場合において、第2空間を封止する各構造の例を説明する図である。
【0147】
図16(a),(b)は、加速度センサR2aを有した力学量センサ装置121の製造工程別の要部断面図である。
【0148】
図16に示す力学量センサ装置121は、第1の基板14と第2の基板24が貼り合わされて形成されており、加速度センサR2aを有している。加速度センサR2aの第2空間K2aは、図16(b)に示すように、封止部材F3aで所定気圧に封止されている。また、封止部材F3aの図中に一点鎖線で示した貼り合わせ面からの最大高さYaは、第2の基板24における外面の最大高さYbより低く設定されている。
【0149】
第2空間K2aの封止は、図16(a)に示すように、第2の基板24の外面に形成された凹部L4aに金(Au)またはシリコン(Si)含有金(Au)からなる金ボール7bを配置し、図16(b)に示すように、所定気圧の雰囲気中でレーザ光を照射して金ボール7bを溶かし、第3の貫通穴V3aに流し込む。この時、溶けた金ボール7bは、単結晶シリコンからなる第2の基板24との間で、金シリコン共晶合金化が起きる。これによって、第2空間K2aを所定気圧に封止する、封止部材F3aが形成される。
【0150】
図17は、加速度センサR2bを有した力学量センサ装置122の要部断面図である。
【0151】
図17に示す力学量センサ装置122は、第1の基板14と第2の基板25が貼り合わされて形成されており、加速度センサR2bを有している。加速度センサR2bの第2空間K2bは、第3の貫通穴V3bを覆う封止部材F3bで所定気圧に封止されている。また、第2の基板25においては、単結晶シリコン基板20cの上面に樹脂からなるガードリング8が形成されており、封止部材F3bの図中に一点鎖線で示した貼り合わせ面からの最大高さYaが、第2の基板25における外面の最大高さYbより低く設定されている。ガードリング8の形成には、例えば、ウエハ状態での樹脂フィルムの貼り付け、ドライフィルムレジスト、レジストディスペンス、インクジェット等を用いることができる。
【0152】
図18(a)〜(c)は、それぞれ、別の加速度センサR2b〜R2eを有した力学量センサ装置123〜125の要部断面図である。
【0153】
図18(a)に示す力学量センサ装置123は、第1の基板11と第2の基板26が貼り合わされて形成されており、加速度センサR2cを有している。加速度センサR2cの第2空間K2cは、第3の貫通穴V3cを覆う封止部材F3cで所定気圧に封止されている。また、第2の基板26の上面においては、配線6bが厚く形成されており、封止部材F3cの最大高さYaが、第2の基板26における外面の最大高さYbより低く設定されている。
【0154】
図18(b)に示す力学量センサ装置124は、第1の基板11と第2の基板27が貼り合わされて形成されており、加速度センサR2dを有している。加速度センサR2dの第2空間K2dは、第3の貫通穴V3dを覆う封止部材F3dで所定気圧に封止されている。また、第2の基板27の上面においては、配線6c上にボンディングボール7cが形成されており、封止部材F3dの最大高さYaが、第2の基板27における外面の最大高さYbより低く設定されている。
【0155】
図18(c)に示す力学量センサ装置125は、第1の基板10と第2の基板28が貼り合わされて形成されており、加速度センサR2eを有している。加速度センサR2eの第2空間K2eは、第3の貫通穴V3eを覆う封止部材F3eで所定気圧に封止されている。また、第2の基板28は、圧力センサR1、加速度センサR2eおよび角速度センサR3を取り囲む上面の周辺部28aが厚く設定されており、封止部材F3eの最大高さYaが、第2の基板28における外面の最大高さYbより低く設定されている。
【0156】
図19は、別の加速度センサR2fを有した力学量センサ装置126を示す図で、図19(a)は、力学量センサ装置126の要部の断面を示す図であり、図19(b)は、力学量センサ装置126の上面図である。尚、図19(a)は、図19(b)における一点鎖線III-IIIでの断面に対応している。
【0157】
図19に示す力学量センサ装置126は、第1の基板10と第2の基板29が貼り合わされて形成されており、加速度センサR2fを有している。加速度センサR2fの第2空間K2fは、第3の貫通穴V3fを覆う封止部材F3fで所定気圧に封止されている。また、第2の基板29は、圧力センサR1、加速度センサR2fおよび角速度センサR3をそれぞれ取り囲むようにして上面に枠状のリブ部29aが形成されており、図19(a)に示すように、封止部材F3fの最大高さYaが、第2の基板29における外面の最大高さYbより低く設定されている。
【0158】
以上の図16〜図19に示した力学量センサ装置121〜126についても、図1の力学量センサ装置100と同様に、製造途中に封止部材F3a〜F3fが冶具や他の部品に接触し難くなっており、第2空間K2a〜K2fの気密封止の破れを防止する構造となっている。また、図19に示した力学量センサ装置126においては、封止部材F3fが第2の基板29の最上面から頭を出さないようにできるだけでなく、第2の基板29を必要最小限の厚さにして軽くすることができ、第2の基板29に必要な強度は、上記枠状のリブ部29bによって確保することができる。また、本実施例では真空中で第1の基板10と第2の基板29を貼り合わせ、続いて1気圧のN2(窒素)中で加速度センサR2fの上部の貫通穴V3fを封止部材F3fで蓋をした。しかしながらこれに限らず、例えば角速度センサの上部に貫通穴を開けておき(加速度センサ上部には貫通穴なし)、1気圧のN2(窒素)雰囲気で第1の基板と第2の基板を貼り合わせ、続いて真空中で角速度センサの上部の貫通穴を封止部材で蓋をすることもできる。
【0159】
尚、以上に例示した力学量センサ装置は、いずれも、第1力学量センサ(圧力センサ)、および静電容量型で高精度の第2力学量センサ(加速度センサ)と第3力学量センサ(角速度センサ)の3個の力学量センサがSOI基板に一体化されてモジュール化された、小型の力学量センサ装置であった。しかしながらこれに限らず、本発明の力学量センサ装置は、第1力学量の圧力を検出する第1力学量センサと圧力以外の第2力学量を検出する静電容量型で高精度の第2力学量センサからなる2個の力学量センサだけがSOI基板に一体化されてモジュール化された力学量センサ装置であってもよい。例えば、圧力センサと加速度センサの組み合わせ、圧力センサと角速度センサ(コリオリ力センサ)の組み合わせ、圧力センサとローレンツ力センサの組み合わせ等である。また、例えば第1力学量センサ(圧力センサ)と共に一体化する静電容量型で高精度の第2力学量センサおよび第3力学量センサが、それぞれ面内の異なる方向の加速度を検出する加速度センサであってもよい。あるいは、第2力学量センサと第3力学量センサが、異なる方向の角速度センサであってもよい。
【0160】
さらに、本発明の力学量センサ装置は、第1力学量センサ(圧力センサ)および静電容量型で高精度の第2力学量センサと共に、より多くの力学量センサがSOI基板に一体化されてモジュール化されていてもよい。例えば、圧力センサ、加速度センサ、角速度センサおよびローレンツ力センサの組み合わせ等である。さらに、第1力学量センサとして、絶対圧を検出する圧力センサと相対圧を検出する圧力センサが、複数個、一体化されていてもよい。また、感度の異なる圧力センサを作製するため、ダイヤフラム厚や大きさの異なるダイヤフラムが、複数個、一体化されていてもよい。また、他の気密室を有するデバイスとして、イメージセンサ、発振子、光スキャン用のミラー等を、上記力学量センサと共に同時に搭載することも可能である。
【0161】
本発明の上記力学量センサ装置は、ウエハ状態で数百個のチップとして形成することができ、かつ1チップ上に上記複数の異なった力学量センサを搭載しているので、低コスト、かつ小型化で特性のそろったデバイスとすることが可能である。
【0162】
以上のようにして、上記力学量センサ装置は、圧力センサ(第1力学量センサ)と加速度センサ等の静電容量型で高精度の力学量センサ(第2力学量センサ)をまとめてモジュール化した小型の力学量センサ装置であって、圧力センサと他の力学量センサとが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置とすることができる。
【0163】
従って、上記力学量センサ装置は、図20に示したようなタイヤ空気圧と車輪の回転速度の検出だけでなく、上記第2力学量センサとして、車両の進行方向を検出するジャイロセンサ(角速度センサ)や進行方向に対する加速度を検出する加速度センサとしての機能も、第1力学量センサの圧力センサと共に組み込み可能である。また、上記力学量センサ装置の第1力学量センサは、タイヤ空気圧を検出する圧力センサだけでなく、走行に伴って車両位置の高度変化に伴った大気圧変化を検出する、高感度の圧力センサとすることもできる。上記した第1力学量センサと第2力学量センサの各検出機能を適宜組み合わせることで、車両の走行をより安定的に制御する小型で安価な力学量センサ装置を構成することができる。
【0164】
従って、上記力学量センサ装置は、車載用として好適である。
【符号の説明】
【0165】
100,110,111,120〜126 力学量センサ装置
R1,R1a 第1力学量センサ(圧力センサ)
R2,R2a〜R2f 第2力学量センサ(加速度センサ)
R3 第3力学量センサ(角速度センサ)
10〜14 第1の基板
20〜29 第2の基板
K1,K1a 第1空間
K2,K2a〜K2f 第2空間
K3 第3空間
F3,F3a〜F3f 封止部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサと他の力学量センサをまとめてモジュール化した、力学量センサ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサと他の力学量センサをまとめてモジュール化する技術の一例として、「電波新聞ハイテクノロジー」2004年5月13日号(非特許文献1)に開示の技術がある。
【0003】
図20は、非特許文献1に開示されている、圧力センサと加速度センサを集積したセンサダイの断面構造を示す図である。
【0004】
非特許文献1に開示されている技術は、タイヤ空気圧センサに関するものである。図20に示すセンサダイでは、タイヤ空気圧の圧力検出機能を備えた圧力センサと加速度検出機能を備えた加速度センサとが、一つの同じセンサダイに集積形成されている。図20の圧力センサは、真空状態の密閉空間(基準圧力室)Kpとタイヤ内部の空気を分断するダイヤフラム部Dpを備え、ダイヤフラム部Dpの基準圧力室Kp側の面に、ダイヤフラム部Dpのタイヤ空気圧による変形を検出するピエゾ抵抗素子が形成されている。また、図20の加速度センサは、上記圧力センサの基準圧力室Kpとは別の真空状態にある密閉空間Kaに設置されており、回転する車輪に発生する放射方向の力をカンチレバーLaの変形によって検出し、ホイールモジュールに車輪の回転の有無およびその速度を判断させる。
【0005】
図20に示す圧力センサと加速度センサのモジュール構造では、圧力センサならびに加速度センサを真空状態にある密閉空間Kp,Kaに設置することで、両センサを、タイヤ内部に存在する多くの化学物質(タイヤ硬化処理の残留物質、石鹸、水など)から保護することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「電波新聞ハイテクノロジー2004年5月13日号」電波新聞社2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両の走行を安定的に制御するためには、タイヤ空気圧や車輪の回転速度だけでなく、車両の進行方向を検出するジャイロセンサ(角速度センサ)や進行方向に対する加速度を検出する加速度センサ等の高精度の力学量センサが必要である。また、走行に伴って車両位置の高度も異なってくるため、高度変化に伴った大気圧変化を検出する、高感度の圧力センサも必要である。従って、近年においては、圧力センサ、加速度センサおよびジャイロセンサ等の高精度の力学量センサをまとめてモジュール化した小型で安価な力学量センサ装置が必要になってきている。
【0008】
上記要求に対して、図20に示した非特許文献1に開示されているモジュール構造は、基本的に、タイヤ空気圧と車輪の回転速度を検出するものである。図20のモジュール構造における加速度センサは、カンチレバーLaの変形をピエゾ抵抗素子等で検出し、車輪の回転の有無およびその速度を検出するものであり、車両の進行方向や進行方向に対する加速度を高精度で検出することはできない。
【0009】
また、図20のモジュール構造における圧力センサでは、ダイヤフラム部Dpを薄くして感度を高めるため、一般的に密閉空間Kpと反対側のシリコンダイの裏面側に点線で示した深い凹部Hpを形成する必要がある。図20のモジュール構造は通常ウエハ状態で製造され、深い凹部Hpは、シリコンウエハの裏面側の各チップ形成領域に異方性エッチングを行うことにより形成される。しかしながら、異方性エッチングは平面方向の精度に対して深さ方向の加工精度が低いため、凹部Hpの深さが各チップでばらつき、ダイヤフラム部Dpの厚さにばらつきがでてしまうといった問題がある。
【0010】
そこで本発明は、圧力センサと加速度センサ等の第2力学量センサをまとめてモジュール化した小型の力学量センサ装置およびその製造方法であって、圧力センサと高精度の第2力学量センサとが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る力学量センサ装置は、第1力学量の圧力を検出する第1力学量センサと、圧力以外の第2力学量を検出する第2力学量センサとが一体化されてなる力学量センサ装置であって、圧力によって変位する第1力学量センサの第1力学量検出部と、第2力学量によって変位する第2力学量センサの第2力学量検出部とが、半導体からなる第1の基板の主面側に、所定の間隔を置いて変位可能な状態に形成されている。そして、第1の基板の主面側に、第1力学量検出部と第2力学量検出部をそれぞれ所定の間隔を置いて覆う、第2の基板が貼り合わされており、第1の基板と第2の基板によって、第1力学量検出部と第2力学量検出部を変位可能な状態でそれぞれ気密に収容する第1空間と第2空間が、互いに連通せずにそれぞれ形成されている。第1の基板は、埋め込み酸化膜を間に挟んだ支持基板とSOI層からなるSOI基板からなり、埋め込み酸化膜に達するトレンチにより、周囲から絶縁分離された複数のSOI層からなる半導体領域が形成されている。複数の半導体領域のうち、一部の半導体領域で第1力学量センサの第1力学量検出部が構成され、複数の半導体領域のうち、別の一部の半導体領域で第2力学量センサの第2力学量検出部が構成されている。また、第2力学量検出部は、少なくとも一つの半導体領域が、埋め込み酸化膜の一部を犠牲層エッチングすることにより、変位可能に形成された第2可動電極を有する第2可動半導体領域であり、少なくとももう一つの半導体領域が、第2可動電極と対向する第2固定電極を有する第2固定半導体領域であり、第2可動電極と第2固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成されている。そして、第2可動電極が、印加される第2力学量に応じて変位し、それに伴う静電容量の変化を測定して、第2力学量を検出するようにしている。
【0012】
以上のように、上記した力学量センサ装置は、圧力を検出する第1力学量センサ(圧力センサ)と加速度や角速度等の圧力以外の第2力学量を検出する第2力学量センサとが一体化されてモジュール化された、小型の力学量センサ装置である。
【0013】
上記力学量センサ装置においては、第1力学量センサと第2力学量センサを構成するための第1の基板として、埋め込み酸化膜を間に挟んだ支持基板とSOI層からなるSOI基板が用いられている。そして、第1力学量センサの第1力学量検出部と第2力学量センサの第2力学量検出部は、それぞれ、埋め込み酸化膜に達するトレンチにより周囲から絶縁分離された複数のSOI層からなる半導体領域で構成される。従って、上記第1力学量検出部と第2力学量検出部を形成するにあたっては、上記トレンチの形成工程等を共用して同時形成が可能であり、製造コストを低減することができる。
【0014】
また、上記力学量センサ装置における第2力学量センサは、変位可能に形成された第2可動電極と第2固定電極の間の静電容量変化を測定して第2力学量を検出するものである。該第2力学量センサは、例えばカンチレバーの変形をピエゾ抵抗素子等で検出する加速度センサに較べて高精度であり、高精度の加速度センサや角速度センサ(ジャイロセンサ)とすることができる。
【0015】
さらに、上記第1力学量検出部と第2力学量検出部が構成されている第1の基板の主面側には、第2の基板が貼り合わされており、第1力学量センサと第2力学量センサが、それぞれ、互いに連通していない第1空間と第2空間に気密に収容される構成となっている。従って、第1力学量センサが収容される第1空間と第2力学量センサが収容される第2空間は、各力学量センサの性能が最適となる別々の環境条件とすることができる。例えば、第2力学量センサが収容される第2空間の圧力は、第1力学量センサが収容される第1空間の被測定媒体の圧力や基準圧と独立して設定することができ、各力学量センサの互いの干渉による性能低下を防止することができる。
【0016】
以上のようにして、上記力学量センサ装置は、圧力センサ(第1力学量センサ)と加速度センサ等の力学量センサ(第2力学量センサ)をまとめてモジュール化した小型の力学量センサ装置であって、圧力センサと高精度の第2力学量センサとが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置とすることができる。
【0017】
上記力学量センサ装置における第1力学量検出部は、例えば、少なくとも一つの半導体領域が、埋め込み酸化膜に対して交わる方向に形成された第1の壁部を第1の電極として有しており、内部に中空部が設けられることによって第1の壁部が薄肉化され、該第1の壁部がダイヤフラムとして変形変位可能に形成された第1の半導体領域とする。また、少なくとももう一つの半導体領域が、第1の壁部と対向する第2の壁部を第2の電極として有する第2の半導体領域とする。そして、第1の電極と第2の電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、少なくとも第1の電極が、被測定媒体の圧力に応じて第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位し、第1の電極と第2の電極の間隔変化に伴う静電容量の変化を測定して、圧力を検出する構成とする。
【0018】
上記構成の第1力学量検出部を有した第1力学量センサは、被測定媒体の圧力による第1の壁部(ダイヤフラム)の変形変位を静電容量の変化として測定する、静電容量型の圧力センサである。上記構成の第1力学量検出部における第1の電極(第1の壁部)と第2の電極(第2の壁部)は、いずれも一つの導電型の半導体領域(SOI層)で形成されており、PN接合部は存在していない。従って、PN接合部による容量検出特性の不安定が発生しないため、温度や外部雰囲気等の外乱に対して非常に安定した容量検出特性を維持することができる。
【0019】
また、上記構成の第1力学量センサによれば、ダイヤフラムとして機能する第1の壁部の厚さを、SOI層の厚さと独立して設定することが可能である。従って、例えばSOI層の厚さを第2力学量センサにおける第2可動半導体領域に対して最適に設定すると共に、第1力学量センサのダイヤフラムとして機能する第1の壁部の厚さを、被測定媒体の圧力検出に最適な厚さに設定することができる。
【0020】
さらに、上記構成の第1力学量センサによれば、SOI基板の埋め込み酸化膜に平行に形成されたダイヤフラムと該ダイヤフラムの変形をピエゾ抵抗素子で検出する従来の圧力センサに較べて、容易に高感度化することが可能である。すなわち、従来の圧力センサの構造では、ダイヤフラムを薄くして感度を高めるため、一般的にSOI基板の支持基板側に異方性エッチングで深い凹部を形成する必要がある。しかしながら、異方性エッチングはマスクで決定される平面方向の精度に対して深さ方向の加工精度が低いため、従来の圧力センサの構造では、凹部の深さが各チップでばらつき、ダイヤフラムの厚さにばらつきがでてしまうといった問題がある。これに対して、上記構成の第1力学量センサによれば、異方性エッチングでトレンチ加工する深さはSOI層の厚さが最大であり、後述する製造方法で示すように、ダイヤフラムとして機能する第1の壁部の厚さも、マスクで決定される面内方向の精度で確保することができる。
【0021】
トレンチ加工の容易さと高い精度を確保する上で、上記構成の第1力学量センサにおいては、第1の壁部が、埋め込み酸化膜に対して直交する方向に形成されてなることが好ましい。
【0022】
上記構成の第1力学量センサは、例えば、中空部が封止されて所定の基準圧とされると共に、第2の基板を貫通して、該第2の基板の外部と第1空間を連通する第1の貫通穴が形成されてなり、少なくとも第1の電極が、第1の貫通穴を介して第1空間に導入される被測定媒体の圧力に応じて、第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位する構成とすることができる。
【0023】
また、第1空間が封止されて所定の基準圧とされると共に、支持基板と埋め込み酸化膜を貫通して、第1の基板の外部と前記中空部を連通する第2の貫通穴が形成され、少なくとも第1の電極が、第2の貫通穴を介して中空部に導入される被測定媒体の圧力に応じて、第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位する構成としてもよい。
【0024】
以上のようにして、上記力学量センサ装置は、圧力センサ(第1力学量センサ)と加速度センサ等の静電容量型で高精度の力学量センサ(第2力学量センサ)をまとめてモジュール化した小型の力学量センサ装置であって、ばらつきのない高精度な圧力センサと第2力学量センサとが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置とすることができる。
【0025】
上記力学量センサ装置において、第2力学量センサが加速度センサである場合には、スティクション(可動部が周囲と表面張力などで付着して、動き難くなる現象)の防止や不要な高周波振動を抑制するため、第2空間が、例えば1気圧の窒素(N2)雰囲気のように、所定気圧に封止されていることが好ましい。また、第2力学量センサが角速度センサ(コリオリ力センサ)である場合には、所望の高周波数と振幅で振動体を振動させてコリオリ力による該振動体の変位を検出するため、第2空間が真空に封止されていることが好ましい。同様に、第2力学量センサがローレンツ力センサである場合にも、所望の高周波数と振幅で振動体を振動させてローレンツ力による該振動体の静電容量の変化を検出するため、第2空間が真空に封止されていることが好ましい。第2力学量センサがローレンツ力センサである場合は、例えば地磁気方向に対する車の向きを検出することができる。
【0026】
上記力学量センサ装置は、第1力学量センサおよび第2力学量センサと共に、第3力学量を検出する第3力学量センサが一体化されてなり、第3力学量によって変位する第3力学量センサの第3力学量検出部が、第1の基板の主面側に、第1力学量センサおよび第2力学量センサと所定の間隔を置いて変位可能な状態に形成されていてもよい。第3力学量センサは、第2力学量センサと同様の構造で、第3力学量検出部を変位可能な状態で気密に収容する第3空間、第3可動電極を有する第3可動半導体領域、第3固定電極を有する第3固定半導体領域を有している。そして、第3可動電極と第3固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、第3可動電極が、印加される第3力学量に応じて変位し、それに伴う静電容量の変化を測定して、第3力学量を検出する構成とする。
【0027】
さらには、第1力学量センサ、第2力学量センサおよび第3力学量センサと共に、第2力学量センサおよび第3力学量センサと同様の構造で、第4力学量を検出する第4力学量センサが一体化されていてもよい。この場合には、例えば、圧力センサ、加速度センサ、角速度センサおよびローレンツ力センサを組み合わせることができる。
【0028】
このように、上記力学量センサ装置は、圧力を検出する第1力学量センサおよび第2力学量を検出する第2力学量センサと共に、より多くの力学量センサが一体化されていていてもよい。さらに、第1力学量センサとして、絶対圧を検出する圧力センサと相対圧を検出する圧力センサが、複数個、一体化されていてもよい。また、感度の異なる圧力センサを作製するため、ダイヤフラム厚や大きさの異なるダイヤフラムが、複数個、一体化されていてもよい。
【0029】
上記力学量センサ装置の第2力学量センサが加速度センサである場合には、第2の基板を貫通して、該第2の基板の外部と第2空間を連通する第3の貫通穴が形成されており、第2の基板において、第1の基板との貼り合わせ面と反対側の外面に、第3の貫通穴を封止する封止部材が配置されていることが好ましい。また、貼り合わせ面からの封止部材の最大高さが、貼り合わせ面からの前記外面の最大高さより低く設定されている構成とする。
【0030】
第2力学量センサが加速度センサである場合には、前述したように、スティクションの防止や不要な高周波振動を抑制するため、第2空間が所定気圧に封止されてなることが好ましい。第2空間を所定気圧に封止する方法としては、例えば、1気圧の窒素(N2)雰囲気中で第1の基板と第2の基板を貼り合わせる方法が考えられる。しかしながら、この方法は、例えば第3力学量センサとして角速度センサも一体化しようとする場合、採用することができない。従って、上記のように第2の基板に外部と第2空間を連通する第3の貫通穴を形成し、第1の基板との貼り合わせ面と反対側の外面に第3の貫通穴を封止する封止部材を配置する方法が、最も簡単で、任意の力学量センサとの組合せにも適用可能である。
【0031】
上記封止部材としては、金属、多結晶シリコン、絶縁膜等のいずれであってもよいが、上記のように、貼り合わせ面からの封止部材の最大高さが、第2の基板における外面の最大高さより低く設定されてなり、封止部材が第2の基板の最上面から頭を出さないようにすることが好ましい。
【0032】
加速度センサにおいて、所定気圧での気密封止は、性能を維持する上で重要なポイントである。従って、上記のように封止部材が第2の基板の最上面から頭を出さないようにして、製造途中に封止部材が冶具や他の部品に接触し難くし、封止部材に亀裂や欠けが発生して気密封止が破れることを防止する。
【0033】
第1の基板と第2の基板を貼り合わせて第1空間と第2空間を形成するチップサイズパッケージにおいて、気密封止の破れは、ウエハ状態での取り扱いではあまり問題にならない。しかしながら、貼り合わせ後のウエハを切断分割してチップ状態になった後が重要であり、チップの移送やチップの取り扱い時に気密封止部に接触しないような構造が特に必要となる。
【0034】
封止部材を第2の基板の外面より低く設定する場合、例えば、第2の基板の外面において、枠状のリブ部が形成されており、前記外面の最大高さが、リブ部の上面に設定されてなる構成としてもよい。
【0035】
これによれば、封止部材が第2の基板の最上面から頭を出さないようにできるだけでなく、第2の基板を必要最小限の厚さにして軽くすることができ、第2の基板に必要な強度は、上記枠状のリブ部によって確保することができる。
【0036】
また、第1力学量検出部と第2力学量検出部がそれぞれ第1空間と第2空間に気密に収容される上記力学量センサ装置においては、第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線の構成も重要である。
【0037】
例えば、第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線が、第2の基板を貫通して形成されてなる構成とする。また、第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線が、支持基板と埋め込み酸化膜を貫通して形成されてなる構成としてもよい。さらに、第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線が、埋め込み酸化膜の中に形成されてなる構成とすることもできる。
【0038】
以上のようにして、上記力学量センサ装置は、圧力センサ(第1力学量センサ)と加速度センサ等の静電容量型で高精度の力学量センサ(第2力学量センサ)をまとめてモジュール化した小型の力学量センサ装置であって、圧力センサと他の力学量センサとが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置とすることができる。
【0039】
従って、上記力学量センサ装置は、例えばタイヤ空気圧と車輪の回転速度の検出だけでなく、上記第2力学量センサとして、車両の進行方向を検出するジャイロセンサ(角速度センサ)や進行方向に対する加速度を検出する加速度センサとしての機能も、第1力学量センサの圧力センサと共に組み込み可能である。また、上記力学量センサ装置の第1力学量センサは、タイヤ空気圧を検出する圧力センサだけでなく、走行に伴って車両位置の高度変化に伴った大気圧変化を検出する、高感度の圧力センサとすることもできる。上記した第1力学量センサと第2力学量センサの各検出機能を適宜組み合わせることで、車両の走行をより安定的に制御する小型で安価な力学量センサ装置を構成することができる。
【0040】
従って、上記力学量センサ装置は、車載用として好適である。
【0041】
また、上記力学量センサ装置の製造方法に関しては、請求項17〜20に記載の製造方法によって、それぞれ請求項1、13、15、2に記載の力学量センサ装置を製造することができる。尚、これら製造方法によって製造される力学量センサ装置の効果については前述したとおりであり、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る力学量センサ装置の一例を示す図で、(a)は、力学量センサ装置100の要部の断面を示す図であり、(b)は、力学量センサ装置100の上面図である。
【図2】図1に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1のより具体的な構成例を示す図で、(a)は、第1力学量検出部M1の一構成例を示した平面図であり、(b)は、(a)における一点鎖線II-IIでの断面図である。
【図3】図1に示した第2力学量センサ(加速度センサ)R2のより具体的な構成例を示す図で、第2力学量検出部M2の一構成例を示した平面図である。
【図4】力学量センサ装置100の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、(a)〜(e)は、図1(a)に示した第1の基板10の準備工程を示す図である。
【図5】力学量センサ装置100の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、(a)〜(c)は、図1(a)に示した第1の基板10の準備工程を示す図である。
【図6】力学量センサ装置100の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、図1(a)に示した第2の基板20の準備工程を示す図である。
【図7】力学量センサ装置100の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、(a)は、第1の基板10の主面側に第2の基板20を貼り合わせる、基板貼り合わせ工程を示す図である。また、(b)は、第1の基板10と第2の基板20貼り合わせ後に行なう、第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2空間K2の封止工程を示す図である。
【図8】図1に示した力学量センサ装置100の変形例で、力学量センサ装置110の要部の断面を示す図である。
【図9】力学量センサ装置110の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、力学量センサ装置110の貼り合わせ前における第1の基板11を示す図である。
【図10】力学量センサ装置110の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、(a)〜(c)は、力学量センサ装置110の貼り合わせ前における第2の基板21の準備工程を示す図である。
【図11】力学量センサ装置110の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、(a)〜(c)は、第1の基板11と第2の基板21の貼り合わせ工程、および貼り合わせ後の配線6の形成工程を示す図である。
【図12】力学量センサ装置110の製造方法の一例を示す工程別の断面図で、(a),(b)は、貼り合わせ後の配線6の形成工程、および第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2空間K2の封止工程を示す図である。
【図13】図8に示した力学量センサ装置110の変形例で、力学量センサ装置120の要部の断面を示す図である。
【図14】図1と図2に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1における第1力学量検出部M1の別の構成例を示した断面図で、(a)は被測定媒体の圧力を印加する前の状態を示す図であり、(b)は圧力を印加した後の状態を示す図である。
【図15】図8に示した力学量センサ装置110の別の変形例で、別構造の第1力学量センサ(圧力センサ)R1aを有した力学量センサ装置111の要部の断面を示す図である。
【図16】(a),(b)は、加速度センサR2aを有した力学量センサ装置121の製造工程別の要部断面図である。
【図17】加速度センサR2bを有した力学量センサ装置122の要部断面図である。
【図18】(a)〜(c)は、それぞれ、別の加速度センサR2b〜R2eを有した力学量センサ装置123〜125の要部断面図である。
【図19】別の加速度センサR2fを有した力学量センサ装置126を示す図で、(a)は、力学量センサ装置126の要部の断面を示す図であり、(b)は、力学量センサ装置126の上面図である。
【図20】非特許文献1に開示されている、圧力センサと加速度センサを集積したセンサダイの断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明を実施するための形態を、図に基づいて説明する。
【0044】
図1は、本発明に係る力学量センサ装置の一例を示す図で、図1(a)は、力学量センサ装置100の要部の断面を示す図であり、図1(b)は、力学量センサ装置100の上面図である。尚、図1(a)は、図1(b)における一点鎖線I-Iでの断面に対応している。
【0045】
図1に示す力学量センサ装置100は、第1力学量の圧力を検出する第1力学量センサ(圧力センサ)R1、第2力学量の加速度を検出する第2力学量センサ(加速度センサ)R2および第3力学量の角速度を検出する第3力学量センサ(角速度センサ)R3が一体化されてなる力学量センサ装置である。
【0046】
図1(a)に示すように、圧力によって変位する第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、加速度によって変位する第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および角速度によって変位する第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3は、それぞれ、半導体からなる第1の基板10の主面側に、所定の間隔を置いて変位可能な状態に形成されている。また、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3をそれぞれ所定の間隔を置いて覆う第2の基板20が、第1の基板10の主面側に貼り合わされている。この貼り合わされた第1の基板10と第2の基板20によって、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3を変位可能な状態でそれぞれ気密に収容する第1空間K1、第2空間K2および第3空間K3が、互いに連通せずにそれぞれ形成されている。
【0047】
第1の基板10は、図1(a)に示すように、埋め込み酸化膜2を間に挟んだ支持基板1とSOI層3からなるSOI(Silicon On Insulator)基板である。第1の基板10では、埋め込み酸化膜2に達するトレンチTにより、周囲から絶縁分離された複数のSOI層3からなる半導体領域Sが形成されている。図1の力学量センサ装置100においては、これら複数の半導体領域Sの一部で第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1が構成され、別の一部で第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2が構成され、さらに別の一部で第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3が構成されている。尚、図1の力学量センサ装置100では、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3に接続する配線4が、埋め込み酸化膜2中に形成されてなる構成を採用している。また、配線4が接続する第2の基板20で覆われていない第1の基板10の半導体領域Sには、外部と電気接続するための金属パターン5が形成されている。
【0048】
図1の力学量センサ装置100における第1力学量センサ(圧力センサ)R1の第1力学量検出部M1は、図1(a)に示すように、少なくとも一つの第1の半導体領域S1aと少なくとももう一つの第2の半導体領域S1bを有している。第1の半導体領域S1aは、埋め込み酸化膜2に対して交わる方向に形成された第1の壁部Waを第1の電極として有しており、内部に中空部Haが設けられることによって第1の壁部Waが薄肉化され、該第1の壁部Waがダイヤフラムとして変形変位可能に形成された半導体領域である。第2の半導体領域S1bは、第1の壁部Waと対向する第2の壁部Wbを第2の電極として有する半導体領域である。
【0049】
図1(a)に示す第1力学量センサ(圧力センサ)R1の第1力学量検出部M1では、前記第1の電極(第1の壁部Wa)と第2の電極(第2の壁部Wb)の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、少なくとも前記第1の電極が、被測定媒体の圧力に応じて第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位し、第1の電極と第2の電極の間隔変化に伴う静電容量の変化を測定して、圧力を検出する構成となっている。
【0050】
すなわち、図1に示す構成の第1力学量センサR1は、第1の半導体領域S1aの中空部Haが封止されて所定の基準圧(例えば真空)とされると共に、第2の基板20を貫通して、該第2の基板20の外部と第1空間K1を連通する第1の貫通穴V1が形成されている。そして、少なくとも第1の電極(第1の壁部Wa)が、第1の貫通穴V1を介して第1空間K1に導入される被測定媒体の圧力に応じて、第2の電極(第2の壁部Wb)の対抗面に対して垂直方向に変形変位する構成となっている。
【0051】
図2は、図1に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1のより具体的な構成例を示す図で、図2(a)は、第1力学量検出部M1の一構成例を示した平面図であり、図2(b)は、図2(a)における一点鎖線II-IIでの断面図である。
【0052】
図2(a)に示す第1力学量検出部M1は、内部に真空の中空部Haが設けられた4個の第1の半導体領域S1aと、中空部Haが設けられていない2個の第2の半導体領域S1bとで構成されている。第1の半導体領域S1aは、中空部Haが設けられることによって薄く形成された第1の壁部Waを有しており、該第1の壁部Waが、被測定媒体の圧力に応じて変形変位してダイヤフラムとして機能する。また、第2の半導体領域S1bは、第1の壁部Waに対向する第2の壁部Wbを有している。該第1の壁部Waと第2の壁部Wbとで、被測定媒体の圧力に応じた静電容量の変化を測定する容量素子の一組の電極、すなわち第1の電極E1aと第2の電極E1bが構成されている。
【0053】
図1に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1においては、測定圧力範囲や必要とする測定感度に応じて、図2(a)に示す第1力学量検出部M1のように、第1の半導体領域S1aと第2の半導体領域S1bのサイズや数、およびダイヤフラムとして機能する第1の壁部Waの面積や厚さを適宜設定する。
【0054】
図1の力学量センサ装置100における第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2力学量検出部M2は、図1(a)に示すように、少なくとも一つの第2可動半導体領域S2aと少なくとももう一つの第2固定半導体領域S2bを有している。第2可動半導体領域S2aは、埋め込み酸化膜2の一部を犠牲層エッチングすることにより、変位可能に形成された第2可動電極を有する半導体領域である。第2固定半導体領域S2bは、前記第2可動電極と対向する第2固定電極を有する半導体領域である。
【0055】
図1(a)に示す第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2力学量検出部M2では、前記第2可動電極と第2固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、前記第2可動電極が、印加される加速度に応じて前記対向面に対して垂直方向に変位し、第2可動電極と第2固定電極の間隔変化に伴う静電容量の変化を測定して、加速度を検出する構成となっている。
【0056】
また、図1の力学量センサ装置100において、加速度センサである第2力学量センサR2では、第2可動半導体領域S2aのスティクション(可動部が周囲と表面張力などで付着して、動き難くなる現象)の防止や不要な高周波振動を抑制するため、第2空間K2が、例えば1気圧の窒素(N2)雰囲気のように、所定気圧に封止される。このため、図1に示す第2力学量センサR2では、第2の基板20を貫通して、該第2の基板20の外部と第2空間K2を連通する第3の貫通穴V3と凹部L4が形成されている。そして、第2の基板20において、第1の基板10との貼り合わせ面と反対側の外面に、第3の貫通穴V3を封止する封止部材F3が、第2の基板20の外面から突き出ないようにして、凹部L4の底面全体に配置されている。言い換えれば、図1に示す力学量センサ装置100の第2力学量センサR2では、第1の基板10と第2の基板20の貼り合わせ面からの封止部材4の最大高さが、貼り合わせ面からの第2の基板20外面の最大高さより低く設定されている。
【0057】
封止部材Fの形成には、インクジェット法やマスク蒸着法スクリーン印刷法等を用いることができる。例えば、封止部材Fとして、凹部L4の底面に下から順にチタン(Ti)/ニッケル(Ni)/金(Au)/ハンダの積層膜を形成し、該積層膜を加熱することによって第2空間K2を気密に封止する。
【0058】
図3は、図1に示した第2力学量センサ(加速度センサ)R2のより具体的な構成例を示す図で、第2力学量検出部M2の一構成例を示した平面図である。
【0059】
図3に示す第2力学量検出部M2は、2個の第2固定電極E2b1,E2b2の間に、1個の第2可動電極E2aが挿入された構成となっている。尚、図3に示す第2可動半導体領域S2aにおいて、符号a1はアンカー部、符号a2はアンカー部a1に支持された矩形枠状のバネ部、符号a3はバネ部a2と連結された重錘部であり、第2可動電極E2aが重錘部a3の両側に櫛歯形状に形成されている。また、第2の半導体領域S1bにおける符号b11とb21も、それぞれのアンカー部である。
【0060】
図1の力学量センサ装置100における第3力学量センサ(角速度センサ)R3の第3力学量検出部M3は、図1(a)に示すように、少なくとも一つの第3可動半導体領域S3aと少なくとももう一つの第3固定半導体領域S3bを有している。第3可動半導体領域S3aは、埋め込み酸化膜2の一部を犠牲層エッチングすることにより、変位可能に形成された第3可動電極を有する半導体領域である。第3固定半導体領域S3bは、前記第3可動電極と対向する第3固定電極を有する半導体領域である。
【0061】
角速度を検出する第3力学量センサR3の第3可動半導体領域S3a(第3可動電極)は、前記対向面に対してここでは図示しない領域で直交する方向に高周波振動させた状態で、角速度(コリオリ力)の検出に用いられる。すなわち、図1(a)に示す第3力学量センサ(角速度センサ)R3の第3力学量検出部M3では、前記第3可動電極と第3固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、前記第3可動電極が印加される角速度のコリオリ力に応じて前記対向面に対して垂直方向に変位し、第3可動電極と第3固定電極の対向する距離の変化に伴う静電容量の変化を測定して、角速度を検出する構成となっている。
【0062】
また、図1の力学量センサ装置100において、角速度センサ(コリオリ力センサ)である第3力学量センサR3では、振動体である第3可動電極(第3可動半導体領域S3a)を所望の高周波数と振幅で振動させ、該振動体のコリオリ力(角速度に比例)による変位を検出する。このため、第3空間K3は、振動が減衰し難い真空で封止される。尚、第3力学量センサR3は、同様の構造で、所望の高周波数と振幅で振動体を振動させてローレンツ力による該振動体の静電容量の変化を検出する、ローレンツ力センサとすることもできる。第3力学量センサR3をローレンツ力センサとすることで、例えば地磁気方向に対する車の向きを検出することが可能になる。
【0063】
以上のように、図1に示す力学量センサ装置100は、圧力を検出する第1力学量センサ(圧力センサ)R1、加速度を検出する第2力学量センサ(加速度センサ)R2および角速度を検出する第3力学量センサ(角速度センサ)R3が一体化されてモジュール化された、小型の力学量センサ装置である。
【0064】
上記力学量センサ装置100においては、第1力学量センサR1、第2力学量センサR2および第3力学量センサR3を構成するための第1の基板10として、埋め込み酸化膜2を間に挟んだ支持基板1とSOI層3からなるSOI基板が用いられている。そして、第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3は、それぞれ、埋め込み酸化膜2に達するトレンチTにより周囲から絶縁分離された複数のSOI層3からなる半導体領域Sで構成される。従って、上記第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3を形成するにあたっては、上記トレンチTの形成工程等を共用して同時形成が可能であり、製造コストを低減することができる。
【0065】
さらに、上記第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3が構成されている第1の基板10の主面側には、第2の基板20が貼り合わされており、第1力学量センサR1、第2力学量センサR2および第3力学量センサR3が、それぞれ、互いに連通していない第1空間K1,第2空間K2および第3空間K3に気密に収容される構成となっている。従って、第1力学量センサR1が収容される第1空間K1、第2力学量センサR2が収容される第2空間K2および第3力学量センサR3が収容される第3空間K3は、各力学量センサの性能が最適となる別々の環境条件とすることができる。例えば、図1の力学量センサ装置100においては、加速度センサである第2力学量センサR2が収容される第2空間K2の圧力は、圧力センサである第1力学量センサR1が収容される第1空間K1の被測定媒体の圧力と独立して、1気圧の窒素(N2)雰囲気に設定することができる。また、角速度センサである第3力学量センサR3が収容される第3空間K3の圧力は、加速度センサである第2力学量センサR2が収容される第2空間K2の1気圧の窒素(N2)雰囲気と独立して、真空に設定することができる。このように、図1の力学量センサ装置100においては、各力学量センサR1〜R3がそれぞれ互いに連通していない空間K1〜K3に気密に収容される構成となっているため、各力学量センサR1〜R3の互いの干渉による性能低下を防止することができる。
【0066】
以上のようにして、図1に例示した力学量センサ装置100は、圧力センサ(第1力学量センサR1)、加速度センサ(第2力学量センサR2)および角速度センサ(第3力学量センサR3)をまとめてモジュール化した小型の力学量センサ装置であって、圧力センサと高精度の力学量センサ(加速度センサおよび角速度センサ)とが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置となっている。
【0067】
次に、図1の力学量センサ装置100における各力学量センサR1〜R3について、より詳細に説明する。
【0068】
上記力学量センサ装置100における第1力学量検出部M1を有した第1力学量センサ(圧力センサ)R1は、被測定媒体の圧力による第1の壁部(ダイヤフラム)Waの変形変位を静電容量の変化として測定する、静電容量型の圧力センサである。上記構成の第1力学量検出部M1における第1の電極(第1の壁部Wa)と第2の電極(第2の壁部Wb)は、いずれも一つの導電型(N+)の半導体領域S1a,S1b(SOI層3)で形成されており、PN接合部は存在していない。従って、PN接合部による容量検出特性の不安定が発生しないため、温度や外部雰囲気等の外乱に対して非常に安定した容量検出特性を維持することができる。
【0069】
また、上記構成の第1力学量センサR1によれば、ダイヤフラムとして機能する第1の壁部Waの厚さを、SOI層3の厚さと独立して設定することが可能である。従って、例えばSOI層3の厚さを第2力学量センサR2における第2可動半導体領域S2aに対して最適に設定すると共に、第1力学量センサR1のダイヤフラムとして機能する第1の壁部Waの厚さを、被測定媒体の圧力検出に最適な厚さに設定することができる。
【0070】
さらに、上記構成の第1力学量センサR1によれば、SOI基板の埋め込み酸化膜に平行に形成されたダイヤフラムと該ダイヤフラムの変形をピエゾ抵抗素子で検出する従来の圧力センサに較べて、容易に高感度化することが可能である。すなわち、従来の圧力センサの構造では、ダイヤフラムを薄くして感度を高めるため、一般的にSOI基板の支持基板側に異方性エッチングで深い凹部を形成する必要がある。しかしながら、異方性エッチングはマスクで決定される平面方向の精度に対して深さ方向の加工精度が低いため、従来の圧力センサの構造では、凹部の深さが各チップでばらつき、ダイヤフラムの厚さにばらつきがでてしまうといった問題がある。これに対して、図1に示した上記構成の第1力学量センサR1によれば、異方性エッチングでトレンチ加工する深さはSOI層の厚さが最大であり、後述する製造方法で示すように、ダイヤフラムとして機能する第1の壁部Waの厚さも、マスクで決定される面内方向の精度で確保することができる。
【0071】
以上のように、一つのSOI基板において加速度センサ等の静電容量型で高精度の力学量センサと一体形成する圧力センサは、図1に例示した静電容量型の第1力学量センサR1の構成が好適である。
【0072】
上記力学量センサ装置100における第2力学量センサ(加速度センサ)R2は、変位可能に形成された第2可動電極(第2可動半導体領域S2a)と第2固定電極(第2固定半導体領域S2b)の間の静電容量変化を測定して、加速度を検出するものである。このように、第2力学量センサR2についても、静電容量型のセンサとなっており、例えば図20に示したカンチレバーLaの変形をピエゾ抵抗素子等で検出する加速度センサに較べて、高精度の加速度センサとなっている。
【0073】
また、上記力学量センサ装置100における第3力学量センサ(角速度センサ)R3も、変位可能に形成された第3可動電極(第3可動半導体領域S3a)と第3固定電極(第3固定半導体領域S3b)の間の静電容量変化を測定して、角速度を検出するものである。このように、第3力学量センサR3についても、静電容量型のセンサとなっており、高精度の角速度センサ(ジャイロセンサ)とすることができる。
【0074】
次に、図1に示した力学量センサ装置100の製造方法について説明する。
【0075】
図4〜図7は、図1に示した力学量センサ装置100の製造方法の一例を示す工程別の断面図である。
【0076】
図4(a)〜(e)と図5(a)〜(c)は、図1(a)に示した第1の基板10の準備工程を示す図である。この第1の基板10の準備工程においては、SOI基板のSOI層3にトレンチTを形成し、複数の半導体領域Sを形成すると共に、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3を構成する。
【0077】
最初に、図1(a)に示した第1の基板10の構成要素である支持基板1として、例えば、厚さが200〜500μmで、(100)面の単結晶シリコン基板を用いる。この単結晶シリコンからなる支持基板1は、比抵抗が0.001〜0.1Ω・cmのN型で、高濃度に砒素(As)やリン(P)等の不純物が含まれており、図4(a)では「N+」と表記されている。
【0078】
次に、図4(a)に示すように、上記単結晶シリコン基板1を1000〜1100℃で熱酸化して0.5〜1.5μm厚さの(SiO2)熱酸化膜2aを形成した後、熱酸化膜2aに対して単結晶シリコン基板1に達する第1のコンタクト穴2bを形成する。
【0079】
次に、第1のコンタクト穴2bを埋め込むようにして、CVD法にて高濃度のN+型の多結晶シリコンを0.1〜2μmの厚さで全面に堆積し、ホトリソグラフィ法とエッチングで所定の配線パターンとする。図4(a)では、この配線パターンが、多結晶シリコン配線4aとして示されている。
【0080】
次に、CVD法やスパッタリング法等により、(SiO2)酸化膜2cを、0.5〜2.0μmの厚さで全面に形成する。尚、最初に形成した熱酸化膜2aと後で形成した酸化膜2cが、図1(a)に示した第1の基板10の埋め込み酸化膜2となる。
【0081】
続いて、図4(b)に示すように、酸化膜2cに対して多結晶シリコン配線4aに達する第2のコンタクト穴2dを形成する。
【0082】
次に、図4(c)に示すように、N+型の第1の多結晶シリコン層3aを、全面に5〜100μmの厚さで形成する。この実施例では、20μm程度の厚さで形成した。尚、多結晶シリコン配線4aと第2のコンタクト穴2d中に埋め込まれた第1の多結晶シリコン層3aとで、図1(a)に示した埋め込み酸化膜2中の配線4が構成される。
【0083】
このように、図1の力学量センサ装置100を製造するにあたっては、第1の基板10の準備工程において、図1(a)のSOI層3を形成する前に、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3に接続する配線4を、予め埋め込み酸化膜2中の所定位置に形成しておく。
【0084】
次に、図1(a)に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1の中空部Haを形成するため、図4(d)に示すように、第1の多結晶シリコン層3aに1〜2μm幅の予備トレンチTaを形成しておく。
【0085】
次に、図4(e)に示すように、予備トレンチTaの上部と蓋するようにして、スパッタリング法等により、真空中でN+型の第2の多結晶シリコン層3bを2〜3μmの厚さで形成する。これによって、蓋された予備トレンチTaが第1力学量センサ(圧力センサ)R1の中空部Haとなり、該中空部Haが、真空の基準圧室になる。また、第1の多結晶シリコン層3aと第2の多結晶シリコン層3bとで、図1(a)に示した第1の基板10のSOI層3が構成される。
【0086】
次に、図5(a)に示すように、SOI層3上の全面にアルミニウム(Al)膜を0.1〜1μmの厚さで堆積し、ホトリソグラフィ法とエッチングで所定のパターンとして、図1(a)に示した金属パターン5を形成する。
【0087】
次に、図1(a)に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1、第2力学量センサ(加速度センサ)R2および第3力学量センサ(角速度センサ)R3を形成するため、図5(b)に示すように、埋め込み酸化膜2に達するトレンチTを形成して、SOI層3を複数の所定の半導体領域Sに分割する。これによって、第1力学量センサ(圧力センサ)R1の形成部分において、第1の壁部Waを有した第1の半導体領域S1aと第2の壁部Wbを有した第2の半導体領域S1b等が形成され、第1力学量検出部M1が完成する。尚、ダイヤフラムとして機能する第1の壁部Waの代表的な厚さは1〜2μmで、測定する圧力によりさらに厚くまたは薄くする。
【0088】
続いて、SOI層3上の所定領域にフィルムレジストの貼り付け等によるレジストマスク(図示省略)を形成し、先の工程で形成した一部のトレンチTを介して、図5(c)に示すように、埋め込み酸化膜2の所定領域をエッチング除去する。尚、図5(c)では埋め込み酸化膜2を構成している上層の酸化膜2cだけを除去したが、さらに下層の熱酸化膜2aを除去してもよい。
【0089】
これによって、第2力学量センサ(加速度センサ)R2の形成部分において、第2可動半導体領域S2aと第2固定半導体領域S2b等の形成が完了し、第2可動半導体領域S2aの第2可動電極が可動できるようになって、第2力学量検出部M2が完成する。また、第3力学量センサ(角速度センサ)R3の形成部分において、第3可動半導体領域S3aと第3固定半導体領域S3b等の形成が完了し、第3可動半導体領域S3aの第3可動電極が可動できるようになって、第3力学量検出部M3が完成する。
【0090】
以上で、図1(a)に示した第1の基板10が準備できる。
【0091】
上記第1の基板10の準備工程は、特に、埋め込み酸化膜2中の配線4と静電容量型の第1力学量センサ(圧力センサ)R1の第1力学量検出部M1を形成するため、以下の工程を有している。すなわち、上記第1の基板10の準備工程は、支持基板1上に形成された酸化膜上に第1の多結晶シリコン層3aを堆積して、該酸化膜を埋め込み酸化膜2とすると共に、該第1の多結晶シリコン層3aをSOI層の一部とするSOI基板の第1準備工程と、第1の多結晶シリコン層3aに埋め込み酸化膜2に達する予備トレンチTaを形成した後、第1の多結晶シリコン層3a上に第2の多結晶シリコン層3bを堆積し、予備トレンチTaの開口部を蓋して中空部Haとすると共に、第1の多結晶シリコン層3aと第2の多結晶シリコン層3bの積層体をSOI層3とするSOI基板の第2準備工程と、トレンチTを形成して、第1の壁部Waを有する第1の半導体領域S1aと第2の壁部Wbを有する第2の半導体領域S1bを形成するSOI基板の第3準備工程とを有している。
【0092】
図6は、図1(a)に示した第2の基板20の準備工程を示す図である。この第2の基板20の準備工程においては、第1の基板10の主面側に貼り合わせた時に、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3を変位可能な状態でそれぞれ気密に収容する第1空間K1、第2空間K2および第3空間K3が互いに連通せずにそれぞれ形成されるように、第2の基板20を準備する。
【0093】
このため、例えば、厚さが100〜400μmで、(100)面のN+型単結晶シリコン基板を第2の基板20として用い、図6に示すように、凹部L1〜L4および図1(a)に示した第1の貫通穴V1と第3の貫通穴V3を形成しておく。
【0094】
図7(a)は、図4と図5の工程で準備した第1の基板10の主面側に、図6の工程で準備した第2の基板20を貼り合わせる、基板貼り合わせ工程を示す図である。
【0095】
図7(a)に示す基板貼り合わせ工程では、例えば、Arイオン等で接合表面を活性化した後、真空中でシリコンを常温直接接合する方法や、ハンダ共晶や低融点ガラス等による接合を利用することができる。この第1の基板10と第2の基板20の貼り合わせによって、第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3をそれぞれ気密に収容する互いに連通しない第1空間K1、第2空間K2および第3空間K3が、それぞれ形成される。また、真空中での第1の基板10と第2の基板20貼り合わせによって、第3力学量センサ(角速度センサ)R3の第3空間K3は、真空で封止される。
【0096】
図7(b)は、第1の基板10と第2の基板20貼り合わせ後に行なう、第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2空間K2の封止工程を示す図である。
【0097】
図7(b)に示す第2空間K2の封止工程では、例えば1気圧の窒素(N2)雰囲気中で、第3の貫通穴V3の上部にインクジェット法やスクリーン印刷法等で封止部材F3を配置する。これによって、第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2空間K2は、1気圧の窒素(N2)雰囲気で封止される。
【0098】
図7(a),(b)に示した工程によって、第3力学量センサ(角速度センサ)R3は真空の第3空間K3に収容されるので、可動電極が動き易くなり、角速度を高感度、高精度に検出できる。一方、第2力学量センサ(加速度センサ)R2は、1気圧の窒素(N2)雰囲気の第2空間K2に収容されるので、ダンピング効果により安定した加速度測定が可能となる。また、第1力学量センサ(圧力センサ)R1では、第1空間K1が被測定媒体の圧力室となり、封止していない第1の貫通穴V1が、被測定媒体の圧力導入穴となる。
【0099】
以上の、図4〜図7に示した工程によって、図1に示した力学量センサ装置100を製造することができる。尚、この実施例ではシリコン基板や多結晶シリコン層にN+型を用いたが、高濃度にボロン等のP型不純物を導入したP+型のシリコン基板や多結晶シリコン層を用いるようにしてもよい。
【0100】
図1に示した力学量センサ装置100のように、第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3がそれぞれ第1空間K1、第2空間K2および第3空間K3に気密に収容される力学量センサ装置においては、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3に接続する配線の構成が重要である。
【0101】
次に、図1に示した力学量センサ装置100の変形例で、異なる配線構成の力学量センサ装置について説明する。
【0102】
図8は、図1に示した力学量センサ装置100の変形例で、力学量センサ装置110の要部の断面を示す図である。尚、図8に示す力学量センサ装置110において、図1に示した力学量センサ装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0103】
図8に示す力学量センサ装置110も、図1に示した力学量センサ装置100と同様に、第1力学量の圧力を検出する第1力学量センサ(圧力センサ)R1、第2力学量の加速度を検出する第2力学量センサ(加速度センサ)R2および第3力学量の角速度を検出する第3力学量センサ(角速度センサ)R3が一体化されてなる力学量センサ装置である。
【0104】
一方、図1に示した力学量センサ装置100では、第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3に接続する配線4が、第1の基板10の埋め込み酸化膜2中に形成されていた。これに対して、図8に示す力学量センサ装置110においては、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3に接続する配線6が、第2の基板21を貫通して形成されてなる構成を採用している。
【0105】
より詳細に説明すると、図8の力学量センサ装置110では、第1の基板11が一層構造の埋め込み酸化膜2eを有したSOI基板となっており、図1に示した第1の基板10のように、配線4が埋め込み酸化膜2中に形成されたSOI基板ではない。一方、図8の力学量センサ装置110において、第1の基板11と貼り合わされている第2の基板21は、単結晶シリコン基板20aの所定位置に、図1(a)に示した貫通穴V1,V3だけでなく、配線のための配線貫通穴V4が形成されている。また、貫通穴V1,V3,V4が形成された単結晶シリコン基板20aの表面は、酸化膜20bで覆われている。そして、配線6の導電材料が、配線貫通穴V4を埋め込むようにして、第2の基板21の外側表面にパターン化されて形成されている。
【0106】
第2の基板21に配線6が形成されている力学量センサ装置110においては、配線層や外部と電気接続するためのパッド部が第2の基板21の上面に形成され、図1の力学量センサ装置100において図の右側にある外部と電気接続するための領域が不要となる。従って、図8の力学量センサ装置110は、図1の力学量センサ装置100に較べて、小型化が可能である。
【0107】
次に、図8に示した力学量センサ装置110の製造方法について説明する。
【0108】
図9〜図12は、図8に示した力学量センサ装置110の製造方法の一例を示す工程別の断面図である。
【0109】
図9は、図8に示した力学量センサ装置110の貼り合わせ前における第1の基板11を示す図である。前述の実施例では、第1の基板10のSOI層3として、多結晶シリコンからなる層を酸化膜2上に形成した。これに対して、図9に示す第1の基板11では、SOI層3として、単結晶シリコンからなる層を酸化膜2e上に形成している。すなわち、該第1の基板11は、単結晶シリコンからなる支持基板1に酸化膜2eを形成した後、N+型単結晶シリコン基板を接合し、該N+型単結晶シリコン基板を接合面と反対側から研削・研磨して、所定厚さの単結晶シリコンからなるSOI層3とする。以降は、図4(c)〜(e)および図5(b),(c)で説明した第1の基板10の準備工程と同様の工程で準備することができる。この場合、予備トレンチTaの上部に蓋をするために、エピタキシャル成長によりN+型の単結晶シリコン層を形成した。このようにすることにより、気密封止および強度等がさらに向上する。
【0110】
図10(a)〜(c)は、図8に示した力学量センサ装置110の貼り合わせ前における第2の基板21の準備工程を示す図である。
【0111】
最初に、図10(a)に示すように、例えば、厚さが100〜400μmで、(100)面のN+型単結晶シリコン基板20aを準備し、第1の基板11との貼り合わせ面側の所定位置に、例えばドライエッチングやウェットエッチング等で凹部L1〜L3を形成する。
【0112】
次に、図10(b)に示すように、貼り合わせ面と反対側の所定位置に凹部L4を形成した後、図8に示した貫通穴V1,V3,V4を、ドライエッチングやレーザ光により形成する。
【0113】
次に、図10(c)に示すように、熱酸化法やCVD法等により酸化膜20bを形成し、単結晶シリコン基板20aの表面全体を酸化膜20bで覆う。
【0114】
以上で、図8に示した貼り合わせ前の第2の基板21が準備できる。
【0115】
図11(a)〜(c)と図12(a),(b)は、それぞれ、図9と図10で準備した第1の基板11と第2の基板21の貼り合わせ工程、貼り合わせ後の図8に示した配線6の形成工程、および第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2空間K2の封止工程を示す図である。
【0116】
最初に、図11(a)に示すように、Arイオン等で接合表面を活性化した後、所謂常温接合を用い、第1の基板11と第2の基板21を真空中で接合する。この第1の基板11と第2の基板21の貼り合わせによって、互いに連通しない第1力学量センサR1の第1空間K1、第2力学量センサR2の第2空間K2および第3力学量センサR3の第3空間K3が、それぞれ形成される。また、真空中での第1の基板11と第2の基板21貼り合わせによって、第3力学量センサ(角速度センサ)R3の第3空間K3は、真空で封止される。
【0117】
続いて、図11(b)に示すように、第2の基板21の上面にフィルムレジストFRを貼り付け、配線貫通穴V4を除いて第1の貫通穴V1と第3の貫通穴V3を覆う所定のパターンに加工する。
【0118】
次に、図11(c)に示すように、配線貫通穴V4を埋め込むようにして、蒸着法やスパッタ法等で、アルミニウム(Al)等の導電材料6aを全面に堆積する。これによって、第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3のそれぞれの所定位置に、配線貫通穴V4を介して、導電材料6aが接続する。
【0119】
次に、図12(a)に示すように、導電材料6aをパターニングして図8の配線6とした後、フィルムレジストFRを除去する。この工程で、第1力学量センサ(圧力センサ)R1の第1の貫通穴(圧力導入穴)V1と第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第3の貫通穴V3が、外部雰囲気となる。
【0120】
次に、図12(b)に示すように、例えば1気圧の窒素(N2)雰囲気中で、第3の貫通穴V3の上部にインクジェット法やスクリーン印刷法等で封止部材F3を配置する。これによって、第2力学量センサ(加速度センサ)R2の第2空間K2は、1気圧の窒素(N2)雰囲気で封止される。
【0121】
以上の図9〜図12に示した工程によって、図8に示した力学量センサ装置110を製造することができる。
【0122】
図9〜図12に示した力学量センサ装置110の製造方法は、図10に示した第2の基板21の準備工程が、第2の基板21を貫通する配線貫通穴V4を形成する、配線貫通穴形成工程を有した準備工程となっている。また、図11と図12に示したように、図11(a)の基板貼り合わせ工程後において、配線貫通穴V4を導電材料6aで埋め込んで、それぞれ第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3に接続する配線6とする、第2の基板貫通配線形成工程を有した工程となっている。
【0123】
図13は、図8に示した力学量センサ装置110の変形例で、力学量センサ装置120の要部の断面を示す図である。尚、図13に示す力学量センサ装置120において、図8に示した力学量センサ装置110と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0124】
図13に示す力学量センサ装置120も、図8に示した力学量センサ装置110と同様に、第1力学量の圧力を検出する第1力学量センサ(圧力センサ)R1、第2力学量の加速度を検出する第2力学量センサ(加速度センサ)R2および第3力学量の角速度を検出する第3力学量センサ(角速度センサ)R3が一体化されてなる力学量センサ装置である。
【0125】
一方、図8に示した力学量センサ装置110では、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3に接続する配線6が、第2の基板21を貫通して形成されていた。これに対して、図13に示す力学量センサ装置120においては、第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3に接続する配線7が、第1の基板12の支持基板1と埋め込み酸化膜2eを貫通して形成されてなる構成を採用している。
【0126】
より詳細に説明すると、図13の力学量センサ装置120では、図8の力学量センサ装置110と同様に、第1力学量センサR1の第1力学量検出部M1、第2力学量センサR2の第2力学量検出部M2および第3力学量センサR3の第3力学量検出部M3が、第1の基板12における埋め込み酸化膜2e上のSOI層3に形成されている。一方、図13の力学量センサ装置120における第1の基板12には、図8の力学量センサ装置110と異なり、支持基板1と埋め込み酸化膜2eを貫通する配線貫通穴V5が形成されている。また、該配線貫通穴V5の側壁および埋め込み酸化膜2eと反対側の支持基板1の表面は、酸化膜1aで覆われており、配線7の導電材料が、配線貫通穴V5を埋め込むようにして、第1の基板12の外側表面にパターン化されて形成されている。
【0127】
一方、図13の力学量センサ装置120において第1の基板12と貼り合わされる第2の基板22には、図8の力学量センサ装置110における第2の基板21のような配線6を形成しないため、酸化膜20bのない単結晶シリコン基板20aだけからなる第2の基板22が採用されている。
【0128】
図13の第1の基板12に配線7が形成されている力学量センサ装置120においては、配線層や外部と電気接続するためのパッド部が第1の基板12の構成要素である支持基板1の下面に形成されている。従って、例えば図13に示すように、配線7上にボンディングボール7aを形成し、ここでは図示しないセラミック基板やプリント基板の配線層にフリップチップ実装して電気的に接続することができる。また、別の集積回路ICチップと接続し、各力学量センサR1〜R3への電源供給や信号の入出力を行ってもよい。尚、図13の力学量センサ装置120についても、図8の力学量センサ装置110と同様に、図1の力学量センサ装置100に較べて小型化が可能であることは言うまでもない。
【0129】
図13に示した力学量センサ装置120の製造は、例えば、図8の力学量センサ装置110の製造で用いた第2の基板21における配線6の形成工程を、図13の第1の基板12における配線7の形成に適用することで可能である。すなわち、図10(b)で説明した単結晶シリコン基板20aへの貫通穴V4の形成工程と、図10(c),図11(a)〜(c),図12(a)で説明した配線6の形成工程を、第1の基板12における配線貫通穴V5、酸化膜1a、および配線7の形成に適用する。尚、第1の基板12への配線7の形成は、例えば、SOI層3に第1力学量検出部M1、第2力学量検出部M2および第3力学量検出部M3を形成する前に予め形成しておいてもよいし、第2の基板22を貼り合わせた後で形成するようにしてもよい。
【0130】
次に、図1に示した力学量センサ装置100の変形例で、構造の異なる第1力学量センサ(圧力センサ)を有した力学量センサ装置について説明する。
【0131】
例えば、図1に示した力学量センサ装置100の第1力学量センサ(圧力センサ)Raにおいては、第1の壁部Waが、埋め込み酸化膜2に対して直交する方向に形成されている。これによって、図4(d)に示した予備トレンチTaや図5(b)に示したトレンチTを形成するにあたって、トレンチ加工の容易さと高い精度を確保することが可能である。しかしながらこれに限らず、SOI層3の厚さを変えずにダイヤフラムとして機能する第1の壁部Waの面積を大きくしたい場合には、第1の壁部Waが埋め込み酸化膜2に対して斜めに交わる方向に形成されていてもよい。
【0132】
図14は、図1と図2に示した第1力学量センサ(圧力センサ)R1における第1力学量検出部M1の別の構成例を示した断面図で、図14(a)は被測定媒体の圧力を印加する前の状態を示す図であり、図14(b)は圧力を印加した後の状態を示す図である。
【0133】
図14に示す構造では、対向する第1の壁部Waと第2の壁部Wbを有した第1の半導体領域S1aと第2の半導体領域S1bに、それぞれ、真空の中空部Haと中空部Hbが設けられている。このため、第1の壁部Waと第2の壁部Wbは、どちらも被測定媒体の圧力に応じて変形変位可能であり、両方がダイヤフラムとして機能する。従って、図14に示す構造は、図2(b)に示した構造に較べて被測定媒体の圧力に対する静電容量の変化が大きくなるため、より感度を高めることができる。
【0134】
図15は、図8に示した力学量センサ装置110の別の変形例で、別構造の第1力学量センサ(圧力センサ)R1aを有した力学量センサ装置111の要部の断面を示す図である。尚、図15に示す力学量センサ装置111において、図8に示した力学量センサ装置110と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0135】
図1と図8に示した力学量センサ装置100,110における第1力学量センサ(圧力センサ)R1では、第1の半導体領域S1aの中空部Haが封止されて所定の基準圧(例えば真空)とされると共に、第2の基板20を貫通して、該第2の基板20の外部と第1空間K1を連通する第1の貫通穴V1が形成されていた。そして、少なくとも第1の電極(第1の壁部Wa)が、第1の貫通穴V1を介して第1空間K1に導入される被測定媒体の圧力に応じて、第2の電極(第2の壁部Wb)に対して垂直方向に変形変位し、第1の電極と第2の電極の間隔変化に伴う静電容量の変化を測定して、圧力を検出する構成となっていた。
【0136】
一方、図15に示す力学量センサ装置111の第1力学量センサ(圧力センサ)R1aにおいては、第1の基板13と第2の基板23の貼り合わせによって、第1空間K1aが封止されて所定の基準圧(例えば真空)とされると共に、第1の基板13の支持基板1と埋め込み酸化膜2eを貫通して、第1の基板13の外部と第1の半導体領域S1aの中空部Haを連通する第2の貫通穴V2が形成されている。そして、第1力学量検出部M1aの第1の電極(第1の壁部Wa)が、第2の貫通穴V2を介して中空部Haに導入される被測定媒体の圧力に応じて、第2の電極(第2の壁部Wb)の対向面に対して垂直方向に変形変位し、第1の電極と第2の電極の間隔変化に伴う静電容量の変化を測定して、圧力を検出する構成となっている。
【0137】
図15に示す力学量センサ装置111においては、例えば、第1の基板13と第2の基板23の貼り合わせによって第3力学量センサ(角速度センサ)R3の真空の第3空間K3を形成すると同時に、第1力学量センサ(圧力センサ)R1aの真空の第1空間K1aを形成することができる。尚、第1の基板13の支持基板1と埋め込み酸化膜2eを貫通する第2の貫通穴V2の形成には、例えば、シリコンからなる支持基板1を裏面からアルカリエッチング(例えばKOH水溶液)して酸化シリコン(SiO2)からなる埋め込み酸化膜2eに到達するまでエッチングし、続いて、ドライエッチング等で埋め込み酸化膜2eに穴を開け、第1の半導体領域S1aの中空部Haへ連通させる。
【0138】
以上に説明した力学量センサ装置100,110,111において、静電容量型で高精度の他の力学量センサ(加速度センサ等)と共に一つのSOI基板に一体形成しているの第1力学量センサ(圧力センサ)R1,R1aは、いずれも、静電容量型の圧力センサであった。しかしながら、静電容量型で高精度の他の力学量センサ共に一つのSOI基板に一体形成できる圧力センサは、これに限らない。例えば、あまり高感度が要求されない場合やトレンチ加工の深さ方向精度が確保できる場合には、図20に示したようなSOI基板の埋め込み酸化膜に平行に形成されたダイヤフラムと該ダイヤフラムの変形をピエゾ抵抗素子で検出する従来構成の圧力センサであってもよい。
【0139】
次に、図1に示した力学量センサ装置100の変形例で、第2力学量センサ(加速度センサ)の第2空間を封止する別の構造と好ましい例について説明する。
【0140】
図1に示した力学量センサ装置100は、第2力学量センサR2が加速度センサであり、第2の基板20を貫通して、該第2の基板20の外部と第2空間K2を連通する第3の貫通穴V3が形成されていた。そして、第2の基板20において、第1の基板10との貼り合わせ面と反対側の外面における凹部L4に、第3の貫通穴V3を封止する封止部材F3が配置されていた。さらに、前記貼り合わせ面からの封止部材F3の最大高さは、第2の基板20における貼り合わせ面からの外面の最大高さより低く設定されていた。
【0141】
加速度センサである第2力学量センサR2においては、前述したように、スティクションの防止や不要な高周波振動を抑制するため、第2空間K2が所定気圧に封止されてなることが好ましい。第2空間K2を所定気圧に封止する方法としては、例えば、1気圧の窒素(N2)雰囲気中で第1の基板10と第2の基板20を貼り合わせる方法が考えられる。しかしながら、この方法は、図1に示した力学量センサ装置100のように真空の第3空間K3が好ましい第3力学量センサ(角速度センサ)R3も同時に一体化する場合、採用することができない。従って、上記のように第2の基板20に外部と第2空間K2を連通する第3の貫通穴V3を形成し、第1の基板10との貼り合わせ面と反対側の外面に第3の貫通穴V3を封止する封止部材F3を配置する方法が、最も簡単で、任意の力学量センサとの組合せにも適用可能である。
【0142】
封止部材F3としては、金属、多結晶シリコン、絶縁膜等のいずれであってもよいが、上記のように、貼り合わせ面からの封止部材F3の最大高さが、第2の基板20における外面の最大高さより低く設定され、封止部材F3が第2の基板20の最上面から頭を出さないようにすることが好ましい。
【0143】
加速度センサにおいて、所定気圧での気密封止は、性能を維持する上で重要なポイントである。従って、上記のように封止部材F3が第2の基板20の最上面から頭を出さないようにして、製造途中に封止部材F3が冶具や他の部品に接触し難くし、封止部材F3に亀裂や欠けが発生して気密封止が破れることを防止する。
【0144】
図1に示した力学量センサ装置100のように、第1の基板10と第2の基板20を貼り合わせて第1空間K1、第2空間K2および第3空間K3を形成するチップサイズパッケージにおいて、気密封止の破れは、ウエハ状態での取り扱いではあまり問題にならない。しかしながら、貼り合わせ後のウエハを切断分割してチップ状態になった後が重要であり、チップの移送やチップの取り扱い時に気密封止部に接触しないような構造が特に必要となる。
【0145】
尚、図1の力学量センサ装置100では、封止部材F3が、第2の基板20の外面から突き出ないようにして、凹部L4の底面全体に配置されていた。封止部材F4は、第3の貫通穴V3の開口部を覆っていれば、凹部L4の底面の一部に配置されていてもよい。
【0146】
図16〜図19は、第1力学量センサ(圧力センサ)と共にSOI基板に一体形成される第2力学量センサが加速度センサである場合において、第2空間を封止する各構造の例を説明する図である。
【0147】
図16(a),(b)は、加速度センサR2aを有した力学量センサ装置121の製造工程別の要部断面図である。
【0148】
図16に示す力学量センサ装置121は、第1の基板14と第2の基板24が貼り合わされて形成されており、加速度センサR2aを有している。加速度センサR2aの第2空間K2aは、図16(b)に示すように、封止部材F3aで所定気圧に封止されている。また、封止部材F3aの図中に一点鎖線で示した貼り合わせ面からの最大高さYaは、第2の基板24における外面の最大高さYbより低く設定されている。
【0149】
第2空間K2aの封止は、図16(a)に示すように、第2の基板24の外面に形成された凹部L4aに金(Au)またはシリコン(Si)含有金(Au)からなる金ボール7bを配置し、図16(b)に示すように、所定気圧の雰囲気中でレーザ光を照射して金ボール7bを溶かし、第3の貫通穴V3aに流し込む。この時、溶けた金ボール7bは、単結晶シリコンからなる第2の基板24との間で、金シリコン共晶合金化が起きる。これによって、第2空間K2aを所定気圧に封止する、封止部材F3aが形成される。
【0150】
図17は、加速度センサR2bを有した力学量センサ装置122の要部断面図である。
【0151】
図17に示す力学量センサ装置122は、第1の基板14と第2の基板25が貼り合わされて形成されており、加速度センサR2bを有している。加速度センサR2bの第2空間K2bは、第3の貫通穴V3bを覆う封止部材F3bで所定気圧に封止されている。また、第2の基板25においては、単結晶シリコン基板20cの上面に樹脂からなるガードリング8が形成されており、封止部材F3bの図中に一点鎖線で示した貼り合わせ面からの最大高さYaが、第2の基板25における外面の最大高さYbより低く設定されている。ガードリング8の形成には、例えば、ウエハ状態での樹脂フィルムの貼り付け、ドライフィルムレジスト、レジストディスペンス、インクジェット等を用いることができる。
【0152】
図18(a)〜(c)は、それぞれ、別の加速度センサR2b〜R2eを有した力学量センサ装置123〜125の要部断面図である。
【0153】
図18(a)に示す力学量センサ装置123は、第1の基板11と第2の基板26が貼り合わされて形成されており、加速度センサR2cを有している。加速度センサR2cの第2空間K2cは、第3の貫通穴V3cを覆う封止部材F3cで所定気圧に封止されている。また、第2の基板26の上面においては、配線6bが厚く形成されており、封止部材F3cの最大高さYaが、第2の基板26における外面の最大高さYbより低く設定されている。
【0154】
図18(b)に示す力学量センサ装置124は、第1の基板11と第2の基板27が貼り合わされて形成されており、加速度センサR2dを有している。加速度センサR2dの第2空間K2dは、第3の貫通穴V3dを覆う封止部材F3dで所定気圧に封止されている。また、第2の基板27の上面においては、配線6c上にボンディングボール7cが形成されており、封止部材F3dの最大高さYaが、第2の基板27における外面の最大高さYbより低く設定されている。
【0155】
図18(c)に示す力学量センサ装置125は、第1の基板10と第2の基板28が貼り合わされて形成されており、加速度センサR2eを有している。加速度センサR2eの第2空間K2eは、第3の貫通穴V3eを覆う封止部材F3eで所定気圧に封止されている。また、第2の基板28は、圧力センサR1、加速度センサR2eおよび角速度センサR3を取り囲む上面の周辺部28aが厚く設定されており、封止部材F3eの最大高さYaが、第2の基板28における外面の最大高さYbより低く設定されている。
【0156】
図19は、別の加速度センサR2fを有した力学量センサ装置126を示す図で、図19(a)は、力学量センサ装置126の要部の断面を示す図であり、図19(b)は、力学量センサ装置126の上面図である。尚、図19(a)は、図19(b)における一点鎖線III-IIIでの断面に対応している。
【0157】
図19に示す力学量センサ装置126は、第1の基板10と第2の基板29が貼り合わされて形成されており、加速度センサR2fを有している。加速度センサR2fの第2空間K2fは、第3の貫通穴V3fを覆う封止部材F3fで所定気圧に封止されている。また、第2の基板29は、圧力センサR1、加速度センサR2fおよび角速度センサR3をそれぞれ取り囲むようにして上面に枠状のリブ部29aが形成されており、図19(a)に示すように、封止部材F3fの最大高さYaが、第2の基板29における外面の最大高さYbより低く設定されている。
【0158】
以上の図16〜図19に示した力学量センサ装置121〜126についても、図1の力学量センサ装置100と同様に、製造途中に封止部材F3a〜F3fが冶具や他の部品に接触し難くなっており、第2空間K2a〜K2fの気密封止の破れを防止する構造となっている。また、図19に示した力学量センサ装置126においては、封止部材F3fが第2の基板29の最上面から頭を出さないようにできるだけでなく、第2の基板29を必要最小限の厚さにして軽くすることができ、第2の基板29に必要な強度は、上記枠状のリブ部29bによって確保することができる。また、本実施例では真空中で第1の基板10と第2の基板29を貼り合わせ、続いて1気圧のN2(窒素)中で加速度センサR2fの上部の貫通穴V3fを封止部材F3fで蓋をした。しかしながらこれに限らず、例えば角速度センサの上部に貫通穴を開けておき(加速度センサ上部には貫通穴なし)、1気圧のN2(窒素)雰囲気で第1の基板と第2の基板を貼り合わせ、続いて真空中で角速度センサの上部の貫通穴を封止部材で蓋をすることもできる。
【0159】
尚、以上に例示した力学量センサ装置は、いずれも、第1力学量センサ(圧力センサ)、および静電容量型で高精度の第2力学量センサ(加速度センサ)と第3力学量センサ(角速度センサ)の3個の力学量センサがSOI基板に一体化されてモジュール化された、小型の力学量センサ装置であった。しかしながらこれに限らず、本発明の力学量センサ装置は、第1力学量の圧力を検出する第1力学量センサと圧力以外の第2力学量を検出する静電容量型で高精度の第2力学量センサからなる2個の力学量センサだけがSOI基板に一体化されてモジュール化された力学量センサ装置であってもよい。例えば、圧力センサと加速度センサの組み合わせ、圧力センサと角速度センサ(コリオリ力センサ)の組み合わせ、圧力センサとローレンツ力センサの組み合わせ等である。また、例えば第1力学量センサ(圧力センサ)と共に一体化する静電容量型で高精度の第2力学量センサおよび第3力学量センサが、それぞれ面内の異なる方向の加速度を検出する加速度センサであってもよい。あるいは、第2力学量センサと第3力学量センサが、異なる方向の角速度センサであってもよい。
【0160】
さらに、本発明の力学量センサ装置は、第1力学量センサ(圧力センサ)および静電容量型で高精度の第2力学量センサと共に、より多くの力学量センサがSOI基板に一体化されてモジュール化されていてもよい。例えば、圧力センサ、加速度センサ、角速度センサおよびローレンツ力センサの組み合わせ等である。さらに、第1力学量センサとして、絶対圧を検出する圧力センサと相対圧を検出する圧力センサが、複数個、一体化されていてもよい。また、感度の異なる圧力センサを作製するため、ダイヤフラム厚や大きさの異なるダイヤフラムが、複数個、一体化されていてもよい。また、他の気密室を有するデバイスとして、イメージセンサ、発振子、光スキャン用のミラー等を、上記力学量センサと共に同時に搭載することも可能である。
【0161】
本発明の上記力学量センサ装置は、ウエハ状態で数百個のチップとして形成することができ、かつ1チップ上に上記複数の異なった力学量センサを搭載しているので、低コスト、かつ小型化で特性のそろったデバイスとすることが可能である。
【0162】
以上のようにして、上記力学量センサ装置は、圧力センサ(第1力学量センサ)と加速度センサ等の静電容量型で高精度の力学量センサ(第2力学量センサ)をまとめてモジュール化した小型の力学量センサ装置であって、圧力センサと他の力学量センサとが最適にモジュール化されて、各力学量センサの性能がモジュール化に伴い低下することのない安価な力学量センサ装置とすることができる。
【0163】
従って、上記力学量センサ装置は、図20に示したようなタイヤ空気圧と車輪の回転速度の検出だけでなく、上記第2力学量センサとして、車両の進行方向を検出するジャイロセンサ(角速度センサ)や進行方向に対する加速度を検出する加速度センサとしての機能も、第1力学量センサの圧力センサと共に組み込み可能である。また、上記力学量センサ装置の第1力学量センサは、タイヤ空気圧を検出する圧力センサだけでなく、走行に伴って車両位置の高度変化に伴った大気圧変化を検出する、高感度の圧力センサとすることもできる。上記した第1力学量センサと第2力学量センサの各検出機能を適宜組み合わせることで、車両の走行をより安定的に制御する小型で安価な力学量センサ装置を構成することができる。
【0164】
従って、上記力学量センサ装置は、車載用として好適である。
【符号の説明】
【0165】
100,110,111,120〜126 力学量センサ装置
R1,R1a 第1力学量センサ(圧力センサ)
R2,R2a〜R2f 第2力学量センサ(加速度センサ)
R3 第3力学量センサ(角速度センサ)
10〜14 第1の基板
20〜29 第2の基板
K1,K1a 第1空間
K2,K2a〜K2f 第2空間
K3 第3空間
F3,F3a〜F3f 封止部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1力学量の圧力を検出する第1力学量センサと、前記圧力以外の第2力学量を検出する第2力学量センサとが一体化されてなる力学量センサ装置であって、
前記圧力によって変位する第1力学量センサの第1力学量検出部と、前記第2力学量によって変位する第2力学量センサの第2力学量検出部とが、半導体からなる第1の基板の主面側に、所定の間隔を置いて変位可能な状態に形成され、
前記第1の基板の主面側に、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部をそれぞれ所定の間隔を置いて覆う、第2の基板が貼り合わされてなり、
前記第1の基板と第2の基板によって、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部を変位可能な状態でそれぞれ気密に収容する第1空間と第2空間が、互いに連通せずにそれぞれ形成されてなり、
前記第1の基板が、埋め込み酸化膜を間に挟んだ支持基板とSOI層からなるSOI基板からなり、
前記埋め込み酸化膜に達するトレンチにより、周囲から絶縁分離された複数のSOI層からなる半導体領域が形成されてなり、
前記複数の半導体領域のうち、一部の半導体領域で前記第1力学量センサの第1力学量検出部が構成されてなり、
前記複数の半導体領域のうち、一部の半導体領域で前記第2力学量センサの第2力学量検出部が構成されてなり、
前記第2力学量検出部は、
少なくとも一つの半導体領域が、前記埋め込み酸化膜の一部を犠牲層エッチングすることにより、変位可能に形成された第2可動電極を有する第2可動半導体領域であり、
少なくとももう一つの半導体領域が、前記第2可動電極と対向する第2固定電極を有する第2固定半導体領域であり、
前記第2可動電極と第2固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、
前記第2可動電極が、印加される前記第2力学量に応じて変位し、それに伴う前記静電容量の変化を測定して、前記第2力学量を検出することを特徴とする力学量センサ装置。
【請求項2】
前記第1力学量検出部は、
少なくとも一つの半導体領域が、前記埋め込み酸化膜に対して交わる方向に形成された第1の壁部を第1の電極として有してなり、内部に中空部が設けられることによって前記第1の壁部が薄肉化され、該第1の壁部がダイヤフラムとして変形変位可能に形成された第1の半導体領域であり、
少なくとももう一つの半導体領域が、前記第1の壁部と対向する第2の壁部を第2の電極として有する第2の半導体領域であり、
前記第1の電極と第2の電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、
少なくとも前記第1の電極が、被測定媒体の前記圧力に応じて前記第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位し、
前記第1の電極と第2の電極の間隔変化に伴う前記静電容量の変化を測定して、前記圧力を検出することを特徴とする請求項1に記載の力学量センサ装置。
【請求項3】
前記第1の壁部が、前記埋め込み酸化膜に対して直交する方向に形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の力学量センサ装置。
【請求項4】
前記中空部が封止されて所定の基準圧とされると共に、
前記第2の基板を貫通して、該第2の基板の外部と前記第1空間を連通する第1の貫通穴が形成されてなり、
少なくとも前記第1の電極が、前記第1の貫通穴を介して前記第1空間に導入される前記被測定媒体の圧力に応じて、前記第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位することを特徴とする請求項2または3に記載の力学量センサ装置。
【請求項5】
前記第1空間が封止されて所定の基準圧とされると共に、
前記支持基板と埋め込み酸化膜を貫通して、前記第1の基板の外部と前記中空部を連通する第2の貫通穴が形成されてなり、
少なくとも前記第1の電極が、前記第2の貫通穴を介して前記中空部に導入される前記被測定媒体の圧力に応じて、前記第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位することを特徴とする請求項2または3に記載の力学量センサ装置。
【請求項6】
前記第2力学量センサが、加速度センサ、角速度センサおよびローレンツ力センサのいずれかであり、
前記第2力学量センサが加速度センサの場合には、前記第2空間が所定気圧に封止されてなり、
前記第2力学量センサが角速度センサまたはローレンツ力センサの場合には、前記第2空間が真空に封止されてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の力学量センサ装置。
【請求項7】
前記第1力学量センサおよび第2力学量センサと共に、第3力学量を検出する第3力学量センサが一体化されてなり、
前記第3力学量によって変位する第3力学量センサの第3力学量検出部が、前記第1の基板の主面側に、前記第1力学量センサおよび第2力学量センサと所定の間隔を置いて変位可能な状態に形成され、
前記第3力学量検出部が、前記第2の基板で所定の間隔を置いて覆われてなり、
前記第3力学量検出部を変位可能な状態で気密に収容する第3空間が、前記第1空間および第2空間と互いに連通せずに形成されてなり、
前記複数の半導体領域のうち、一部の半導体領域で前記第3力学量センサの第3力学量検出部が構成されてなり、
前記第3力学量検出部は、
少なくとも一つの半導体領域が、前記埋め込み酸化膜の一部を犠牲層エッチングすることにより、変位可能に形成された第3可動電極を有する第3可動半導体領域であり、
少なくとももう一つの半導体領域が、前記第3可動電極と対向する第3固定電極を有する第3固定半導体領域であり、
前記第3可動電極と第3固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、
前記第3可動電極が、印加される前記第3力学量に応じて変位し、それに伴う前記静電容量の変化を測定して、前記第3力学量を検出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の力学量センサ装置。
【請求項8】
前記第2力学量センサと前記第3力学量センサが、加速度センサ、角速度センサおよびローレンツ力センサのいずれか2つの組み合わせであり、
前記第2力学量センサまたは前記第3力学量センサが加速度センサの場合には、対応する前記第2空間または前記第3空間が所定気圧に封止されてなり、
前記第2力学量センサまたは前記第3力学量センサが角速度センサまたはローレンツ力センサの場合には、対応する前記第2空間または前記第3空間が真空に封止されてなることを特徴とする請求項7に記載の力学量センサ装置。
【請求項9】
前記第1力学量センサ、第2力学量センサおよび第3力学量センサと共に、第4力学量を検出する第4力学量センサが一体化されてなり、
前記第4力学量によって変位する第4力学量センサの第4力学量検出部が、前記第1の基板の主面側に、前記第1力学量センサ、第2力学量センサおよび第3力学量センサと所定の間隔を置いて変位可能な状態に形成され、
前記第4力学量検出部が、前記第2の基板で所定の間隔を置いて覆われてなり、
前記第4力学量検出部を変位可能な状態で気密に収容する第4空間が、前記第1空間、第2空間および第3空間と互いに連通せずに形成されてなり、
前記複数の半導体領域のうち、一部の半導体領域で前記第4力学量センサの第4力学量検出部が構成されてなり、
前記第4力学量検出部は、
少なくとも一つの半導体領域が、前記埋め込み酸化膜の一部を犠牲層エッチングすることにより、変位可能に形成された第4可動電極を有する第4可動半導体領域であり、
少なくとももう一つの半導体領域が、前記第4可動電極と対向する第4固定電極を有する第4固定半導体領域であり、
前記第4可動電極と第4固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、
前記第4可動電極が、印加される前記第4力学量に応じて変位し、それに伴う前記静電容量の変化を測定して、前記第4力学量を検出することを特徴とする請求項7に記載の力学量センサ装置。
【請求項10】
前記第2力学量センサ、前記第3力学量センサおよび前記第4力学量センサが、それぞれ、加速度センサ、角速度センサおよびローレンツ力センサであり、
前記第2空間が所定気圧に封止されてなり、前記第3空間と前記第4空間が真空に封止されてなることを特徴とする請求項9に記載の力学量センサ装置。
【請求項11】
前記第2力学量センサまたは第3力学量センサが加速度センサである場合において、
前記第2の基板を貫通して、該第2の基板の外部と前記第2空間を連通する第3の貫通穴が形成されてなり、
前記第2の基板において、前記第1の基板との貼り合わせ面と反対側の外面に、前記第3の貫通穴を封止する封止部材が配置されてなり、
前記貼り合わせ面からの前記封止部材の最大高さが、前記貼り合わせ面からの前記外面の最大高さより低く設定されてなることを特徴とする請求項6、8または10に記載の力学量センサ装置。
【請求項12】
前記第2の基板の外面において、枠状のリブ部が形成されてなり、
前記外面の最大高さが、前記リブ部の上面に設定されてなることを特徴とする請求項11に記載の力学量センサ装置。
【請求項13】
前記第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線が、前記第2の基板を貫通して形成されてなることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の力学量センサ装置。
【請求項14】
前記第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線が、前記支持基板と埋め込み酸化膜を貫通して形成されてなることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の力学量センサ装置。
【請求項15】
前記第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線が、前記埋め込み酸化膜の中に形成されてなることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の力学量センサ装置。
【請求項16】
前記力学量センサ装置が、車載用であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の力学量センサ装置。
【請求項17】
請求項1に記載の力学量センサ装置の製造方法であって、
前記SOI基板のSOI層に前記トレンチを形成し、前記複数の半導体領域を形成すると共に、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部を構成する、第1の基板の準備工程と、
前記第1の基板の主面側に貼り合わせた時に、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部を変位可能な状態でそれぞれ気密に収容する第1空間と第2空間が互いに連通せずにそれぞれ形成されるように、前記第2の基板を準備する、第2の基板の準備工程と、
前記第1の基板の主面側に、前記第2の基板を貼り合わせる、基板貼り合わせ工程とを有してなることを特徴とする力学量センサ装置の製造方法。
【請求項18】
前記第2の基板の準備工程が、前記第2の基板を貫通する配線貫通穴を形成する、配線貫通穴形成工程を有してなり、
前記基板貼り合わせ工程後において、前記配線貫通穴を導電材料で埋め込んで、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線とする、第2の基板貫通配線形成工程を有してなることを特徴とする請求項17に記載の力学量センサ装置の製造方法。
【請求項19】
前記第1の基板の準備工程において、前記SOI層を形成する前に、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線を、予め前記埋め込み酸化膜の中の所定位置に形成しておくことを特徴とする請求項17に記載の力学量センサ装置の製造方法。
【請求項20】
請求項2に記載の力学量センサ装置の製造方法であって、
前記SOI層に前記トレンチを形成し、前記複数の半導体領域を形成すると共に、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部を構成する、第1の基板の準備工程と、
前記第1の基板の主面側に貼り合わせた時に、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部を変位可能な状態でそれぞれ気密に収容する第1空間と第2空間が互いに連通せずにそれぞれ形成されるように、前記第2の基板を準備する、第2の基板の準備工程と、
前記第1の基板の主面側に、前記第2の基板を貼り合わせる、基板貼り合わせ工程とを有してなり、
前記第1の基板の準備工程が、
前記支持基板の上に形成された酸化膜上に第1の多結晶シリコン層を堆積して、該酸化膜を前記埋め込み酸化膜とすると共に、該第1の多結晶シリコン層を前記SOI層の一部とするSOI基板の第1準備工程と、
前記第1の多結晶シリコン層に前記埋め込み酸化膜に達する予備トレンチを形成した後、前記第1の多結晶シリコン層の上に第2の多結晶シリコン層を堆積し、前記予備トレンチの開口部を蓋して前記中空部とすると共に、前記第1の多結晶シリコン層と第2の多結晶シリコン層の積層体を前記SOI層とするSOI基板の第2準備工程と、
前記トレンチを形成して、前記第1の壁部を有する第1の半導体領域と前記第2の壁部を有する第2の半導体領域を形成するSOI基板の第3準備工程とを有してなることを特徴とする力学量センサ装置の製造方法。
【請求項1】
第1力学量の圧力を検出する第1力学量センサと、前記圧力以外の第2力学量を検出する第2力学量センサとが一体化されてなる力学量センサ装置であって、
前記圧力によって変位する第1力学量センサの第1力学量検出部と、前記第2力学量によって変位する第2力学量センサの第2力学量検出部とが、半導体からなる第1の基板の主面側に、所定の間隔を置いて変位可能な状態に形成され、
前記第1の基板の主面側に、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部をそれぞれ所定の間隔を置いて覆う、第2の基板が貼り合わされてなり、
前記第1の基板と第2の基板によって、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部を変位可能な状態でそれぞれ気密に収容する第1空間と第2空間が、互いに連通せずにそれぞれ形成されてなり、
前記第1の基板が、埋め込み酸化膜を間に挟んだ支持基板とSOI層からなるSOI基板からなり、
前記埋め込み酸化膜に達するトレンチにより、周囲から絶縁分離された複数のSOI層からなる半導体領域が形成されてなり、
前記複数の半導体領域のうち、一部の半導体領域で前記第1力学量センサの第1力学量検出部が構成されてなり、
前記複数の半導体領域のうち、一部の半導体領域で前記第2力学量センサの第2力学量検出部が構成されてなり、
前記第2力学量検出部は、
少なくとも一つの半導体領域が、前記埋め込み酸化膜の一部を犠牲層エッチングすることにより、変位可能に形成された第2可動電極を有する第2可動半導体領域であり、
少なくとももう一つの半導体領域が、前記第2可動電極と対向する第2固定電極を有する第2固定半導体領域であり、
前記第2可動電極と第2固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、
前記第2可動電極が、印加される前記第2力学量に応じて変位し、それに伴う前記静電容量の変化を測定して、前記第2力学量を検出することを特徴とする力学量センサ装置。
【請求項2】
前記第1力学量検出部は、
少なくとも一つの半導体領域が、前記埋め込み酸化膜に対して交わる方向に形成された第1の壁部を第1の電極として有してなり、内部に中空部が設けられることによって前記第1の壁部が薄肉化され、該第1の壁部がダイヤフラムとして変形変位可能に形成された第1の半導体領域であり、
少なくとももう一つの半導体領域が、前記第1の壁部と対向する第2の壁部を第2の電極として有する第2の半導体領域であり、
前記第1の電極と第2の電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、
少なくとも前記第1の電極が、被測定媒体の前記圧力に応じて前記第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位し、
前記第1の電極と第2の電極の間隔変化に伴う前記静電容量の変化を測定して、前記圧力を検出することを特徴とする請求項1に記載の力学量センサ装置。
【請求項3】
前記第1の壁部が、前記埋め込み酸化膜に対して直交する方向に形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の力学量センサ装置。
【請求項4】
前記中空部が封止されて所定の基準圧とされると共に、
前記第2の基板を貫通して、該第2の基板の外部と前記第1空間を連通する第1の貫通穴が形成されてなり、
少なくとも前記第1の電極が、前記第1の貫通穴を介して前記第1空間に導入される前記被測定媒体の圧力に応じて、前記第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位することを特徴とする請求項2または3に記載の力学量センサ装置。
【請求項5】
前記第1空間が封止されて所定の基準圧とされると共に、
前記支持基板と埋め込み酸化膜を貫通して、前記第1の基板の外部と前記中空部を連通する第2の貫通穴が形成されてなり、
少なくとも前記第1の電極が、前記第2の貫通穴を介して前記中空部に導入される前記被測定媒体の圧力に応じて、前記第2の電極の対向面に対して垂直方向に変形変位することを特徴とする請求項2または3に記載の力学量センサ装置。
【請求項6】
前記第2力学量センサが、加速度センサ、角速度センサおよびローレンツ力センサのいずれかであり、
前記第2力学量センサが加速度センサの場合には、前記第2空間が所定気圧に封止されてなり、
前記第2力学量センサが角速度センサまたはローレンツ力センサの場合には、前記第2空間が真空に封止されてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の力学量センサ装置。
【請求項7】
前記第1力学量センサおよび第2力学量センサと共に、第3力学量を検出する第3力学量センサが一体化されてなり、
前記第3力学量によって変位する第3力学量センサの第3力学量検出部が、前記第1の基板の主面側に、前記第1力学量センサおよび第2力学量センサと所定の間隔を置いて変位可能な状態に形成され、
前記第3力学量検出部が、前記第2の基板で所定の間隔を置いて覆われてなり、
前記第3力学量検出部を変位可能な状態で気密に収容する第3空間が、前記第1空間および第2空間と互いに連通せずに形成されてなり、
前記複数の半導体領域のうち、一部の半導体領域で前記第3力学量センサの第3力学量検出部が構成されてなり、
前記第3力学量検出部は、
少なくとも一つの半導体領域が、前記埋め込み酸化膜の一部を犠牲層エッチングすることにより、変位可能に形成された第3可動電極を有する第3可動半導体領域であり、
少なくとももう一つの半導体領域が、前記第3可動電極と対向する第3固定電極を有する第3固定半導体領域であり、
前記第3可動電極と第3固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、
前記第3可動電極が、印加される前記第3力学量に応じて変位し、それに伴う前記静電容量の変化を測定して、前記第3力学量を検出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の力学量センサ装置。
【請求項8】
前記第2力学量センサと前記第3力学量センサが、加速度センサ、角速度センサおよびローレンツ力センサのいずれか2つの組み合わせであり、
前記第2力学量センサまたは前記第3力学量センサが加速度センサの場合には、対応する前記第2空間または前記第3空間が所定気圧に封止されてなり、
前記第2力学量センサまたは前記第3力学量センサが角速度センサまたはローレンツ力センサの場合には、対応する前記第2空間または前記第3空間が真空に封止されてなることを特徴とする請求項7に記載の力学量センサ装置。
【請求項9】
前記第1力学量センサ、第2力学量センサおよび第3力学量センサと共に、第4力学量を検出する第4力学量センサが一体化されてなり、
前記第4力学量によって変位する第4力学量センサの第4力学量検出部が、前記第1の基板の主面側に、前記第1力学量センサ、第2力学量センサおよび第3力学量センサと所定の間隔を置いて変位可能な状態に形成され、
前記第4力学量検出部が、前記第2の基板で所定の間隔を置いて覆われてなり、
前記第4力学量検出部を変位可能な状態で気密に収容する第4空間が、前記第1空間、第2空間および第3空間と互いに連通せずに形成されてなり、
前記複数の半導体領域のうち、一部の半導体領域で前記第4力学量センサの第4力学量検出部が構成されてなり、
前記第4力学量検出部は、
少なくとも一つの半導体領域が、前記埋め込み酸化膜の一部を犠牲層エッチングすることにより、変位可能に形成された第4可動電極を有する第4可動半導体領域であり、
少なくとももう一つの半導体領域が、前記第4可動電極と対向する第4固定電極を有する第4固定半導体領域であり、
前記第4可動電極と第4固定電極の対向する面の間の空間を誘電体層とする静電容量が形成され、
前記第4可動電極が、印加される前記第4力学量に応じて変位し、それに伴う前記静電容量の変化を測定して、前記第4力学量を検出することを特徴とする請求項7に記載の力学量センサ装置。
【請求項10】
前記第2力学量センサ、前記第3力学量センサおよび前記第4力学量センサが、それぞれ、加速度センサ、角速度センサおよびローレンツ力センサであり、
前記第2空間が所定気圧に封止されてなり、前記第3空間と前記第4空間が真空に封止されてなることを特徴とする請求項9に記載の力学量センサ装置。
【請求項11】
前記第2力学量センサまたは第3力学量センサが加速度センサである場合において、
前記第2の基板を貫通して、該第2の基板の外部と前記第2空間を連通する第3の貫通穴が形成されてなり、
前記第2の基板において、前記第1の基板との貼り合わせ面と反対側の外面に、前記第3の貫通穴を封止する封止部材が配置されてなり、
前記貼り合わせ面からの前記封止部材の最大高さが、前記貼り合わせ面からの前記外面の最大高さより低く設定されてなることを特徴とする請求項6、8または10に記載の力学量センサ装置。
【請求項12】
前記第2の基板の外面において、枠状のリブ部が形成されてなり、
前記外面の最大高さが、前記リブ部の上面に設定されてなることを特徴とする請求項11に記載の力学量センサ装置。
【請求項13】
前記第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線が、前記第2の基板を貫通して形成されてなることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の力学量センサ装置。
【請求項14】
前記第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線が、前記支持基板と埋め込み酸化膜を貫通して形成されてなることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の力学量センサ装置。
【請求項15】
前記第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線が、前記埋め込み酸化膜の中に形成されてなることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の力学量センサ装置。
【請求項16】
前記力学量センサ装置が、車載用であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の力学量センサ装置。
【請求項17】
請求項1に記載の力学量センサ装置の製造方法であって、
前記SOI基板のSOI層に前記トレンチを形成し、前記複数の半導体領域を形成すると共に、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部を構成する、第1の基板の準備工程と、
前記第1の基板の主面側に貼り合わせた時に、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部を変位可能な状態でそれぞれ気密に収容する第1空間と第2空間が互いに連通せずにそれぞれ形成されるように、前記第2の基板を準備する、第2の基板の準備工程と、
前記第1の基板の主面側に、前記第2の基板を貼り合わせる、基板貼り合わせ工程とを有してなることを特徴とする力学量センサ装置の製造方法。
【請求項18】
前記第2の基板の準備工程が、前記第2の基板を貫通する配線貫通穴を形成する、配線貫通穴形成工程を有してなり、
前記基板貼り合わせ工程後において、前記配線貫通穴を導電材料で埋め込んで、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線とする、第2の基板貫通配線形成工程を有してなることを特徴とする請求項17に記載の力学量センサ装置の製造方法。
【請求項19】
前記第1の基板の準備工程において、前記SOI層を形成する前に、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部に接続する配線を、予め前記埋め込み酸化膜の中の所定位置に形成しておくことを特徴とする請求項17に記載の力学量センサ装置の製造方法。
【請求項20】
請求項2に記載の力学量センサ装置の製造方法であって、
前記SOI層に前記トレンチを形成し、前記複数の半導体領域を形成すると共に、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部を構成する、第1の基板の準備工程と、
前記第1の基板の主面側に貼り合わせた時に、前記第1力学量検出部と第2力学量検出部を変位可能な状態でそれぞれ気密に収容する第1空間と第2空間が互いに連通せずにそれぞれ形成されるように、前記第2の基板を準備する、第2の基板の準備工程と、
前記第1の基板の主面側に、前記第2の基板を貼り合わせる、基板貼り合わせ工程とを有してなり、
前記第1の基板の準備工程が、
前記支持基板の上に形成された酸化膜上に第1の多結晶シリコン層を堆積して、該酸化膜を前記埋め込み酸化膜とすると共に、該第1の多結晶シリコン層を前記SOI層の一部とするSOI基板の第1準備工程と、
前記第1の多結晶シリコン層に前記埋め込み酸化膜に達する予備トレンチを形成した後、前記第1の多結晶シリコン層の上に第2の多結晶シリコン層を堆積し、前記予備トレンチの開口部を蓋して前記中空部とすると共に、前記第1の多結晶シリコン層と第2の多結晶シリコン層の積層体を前記SOI層とするSOI基板の第2準備工程と、
前記トレンチを形成して、前記第1の壁部を有する第1の半導体領域と前記第2の壁部を有する第2の半導体領域を形成するSOI基板の第3準備工程とを有してなることを特徴とする力学量センサ装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−11587(P2013−11587A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67706(P2012−67706)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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