説明

加熱冷却デバイスおよびそれを搭載した装置

【課題】 ウエハ載置面における均熱性に優れている上に急速昇温および急速冷却が可能であり、且つ高い剛性を備えた加熱冷却デバイスを提供する。
【解決手段】 ヒータ10と可動式冷却モジュール20とを備えた加熱冷却デバイス1であって、ヒータ10は、ウエハ載置面11aを有し金属からなる第1均熱板11と、第1均熱板11を支持しセラミックスなどからなる第2均熱板12と、これら均熱板11、12の間に設けられた抵抗発熱体13とを有している。均熱板11、12の熱伝導率をK1、K2、ヤング率をY1、Y2としたとき、K1>K2、Y2>Y1であり、均熱板11、12の厚みの合計は第1均熱板11の直径の1/40以下である。抵抗発熱体13はポリイミドなどの耐熱性絶縁物13bによって一体化されており、その厚みは0.5mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハの加熱および冷却を行う加熱冷却デバイスに関し、特に半導体製造装置または半導体検査装置に搭載される加熱冷却デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造工程においては、半導体基板(ウエハ)を加熱して処理した後冷却する工程として、コータデベロッパを用いたフォトリソグラフィーにおける感光性樹脂の加熱硬化、Low−k膜のような低誘電率の絶縁膜の加熱焼成、配線や絶縁層などを形成するためのCVD膜形成、およびエッチャーなどの工程がある。
【0003】
従来、これらの工程では、アルミニウムなどの金属またはセラミックスからなるヒータを用いてウエハの加熱処理を行っていた。すなわち、抵抗発熱体を備えたヒータのウエハ載置面上にウエハを載置し、加熱制御しながら上記感光性樹脂の加熱硬化やLow−k膜の加熱焼成、あるいはCVD膜の形成やエッチングなどの処理を行っていた。
【0004】
例えば、特許文献1には、焼結した金属粒子からなる抵抗発熱体を備えた、窒化物セラミックや炭化物セラミック製の板状体のヒータが示されている。そして、ヒータをセラミックで形成することによって、ヒータの厚みを薄くしても反りが発生せず、ヒータの温度制御も迅速に行い得ることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、抵抗発熱体を備えたセラミックス製の板状体の上に、被処理物であるウエハを載置して保持する金属製保持部を備え、これらをヒータとして使用する技術が示されている。そして、かかる構成のヒータを用いることによって、被処理物保持面での均熱性が向上する上、急速昇温および急速冷却が可能になることが記載されている。
【0006】
更に、特許文献3には、ヒータに対して相対的に移動可能なブロックを設け、該ブロックとヒータとを当接させたり分離させたりすることよって、加熱工程が終了した後のヒータの冷却速度を早めることができ、スループットを向上できることが記載されている。また、ヒータを急冷することによって被処理物の特性を高め得ることも記載されている。
【0007】
一方、上記したような半導体素子の製造工程のみならず、回路形成されたウエハを個々のチップに切断する前に行う半導体素子の検査工程においても、検査対象物であるウエハの加熱冷却処理が行われている。例えば、バーンイン処理では、金属製のヒータの上に回路形成されたウエハを載置し、通常の使用温度よりも高温に加熱して不良になる可能性のある半導体素子を加速的に不良化させる処理が行われている。不良化した素子は、測定子であるプローブカードをウエハに押し付けて電気的な性能を測定することによって取り除かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−040330号公報
【特許文献2】特開2007−150294号公報
【特許文献3】特開2004−014655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、半導体素子の製造工程におけるコスト低減のためウエハの大型化が進められており、8インチから12インチへと移行しつつある。これに伴い、フォトリソグラフィー用の感光性樹脂の加熱硬化やLow−k膜の加熱焼成に用いるコータデベロッパでは、ウエハを保持して加熱するヒータに対して、更なる均熱性の向上が要望されている。具体的には、ヒータの被処理物保持面における均熱性は、±1.0%以内が必要とされ、更に望むらくは±0.5%以内が要求されている。また、被処理物のスループットをより一層向上させることも求められており、加熱速度および冷却速度の更なる高速化が要望されている。
【0010】
一方、半導体素子の検査工程においては、近年の半導体プロセスの微細化に伴い、プロービング時の単位面積あたりの荷重が増加している。従って、上記の高い均熱性や加熱冷却速度の高速化の要望に加えて、ヒータには高い剛性が要求されている。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ウエハ載置面において高い均熱性を有していることに加えて急速昇温および急速冷却が可能であり、且つ高い剛性を備えた加熱冷却デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明が提供する加熱冷却デバイスは、ウエハを載置して加熱するヒータと、該ヒータの下部に設けられた可動式冷却モジュールとを備えており、ヒータは、ウエハの載置面を有し金属からなる第1均熱板と、該第1均熱板を支持しセラミックスまたは金属セラミックス複合体からなる第2均熱板と、これら第1均熱板と第2均熱板との間に設けられた抵抗発熱体とを有している。
【0013】
そして、第1均熱板と第2均熱板の熱伝導率を順にK1、K2としたときにそれらの関係がK1>K2であり、第1均熱板と第2均熱板のヤング率を順にY1、Y2としたときにそれらの関係がY2>Y1である。また、第1均熱板と第2均熱板の厚みの合計が第1均熱板の直径の1/40以下であり、抵抗発熱体は、ポリイミドもしくはテフロンまたはそれらの少なくとも一方を主原料とする耐熱性絶縁物によって一体化されており、該一体化された抵抗発熱体の厚みが0.5mm以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ウエハ載置面において高い均熱性を有していることに加えて急速昇温および急速冷却が可能であり、且つ高い剛性を備えた加熱冷却デバイスを低コストで提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】容器に収納された本発明に係る加熱冷却デバイスの一具体例を示す模式的断面図である。
【図2】容器に収納された本発明に係る加熱冷却デバイスの他の具体例を示す模式的断面図である。
【図3】図1に示す加熱冷却デバイスにおける可動式冷却モジュールが、ヒータから離間している状態(a)とヒータに当接している状態(b)とを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の加熱冷却デバイスの一具体例を説明する。図1は、ウエハを載置して加熱するヒータ10と、ヒータ10の下部に設けられた可動式冷却モジュール20とを備えた加熱冷却デバイス1の模式的な断面図である。ヒータ10は、第1均熱板11と、この第1均熱板11を下から支持する第2均熱板12と、これら第1均熱板11と第2均熱板12との間に設けられた抵抗発熱体13とを有している。第1均熱板11は円板形状を有しており、その片面側にウエハを載置するウエハ載置面11aを備えている。第2均熱板12および抵抗発熱体13の形状は特に限定するものではないが、第1均熱板11と同じ径の円板形状であることが好ましい。
【0017】
第1均熱板11は、ウエハ載置面11aでの高い均熱性を得るため、熱伝導率の高い材料である金属で形成されている。金属の種類は特に限定するものではないが、熱伝導率が100W/mK以上であることが好ましい。そのような金属としては、例えば、銅、アルミニウム、タングステン、モリブデン、またはこれらを含む合金などを挙げることができる。
【0018】
第2均熱板12は、ヒータ10が全体として高い剛性を具えるようにするため、ヤング率の高い材料であるセラミックスまたは金属セラミックス複合体で形成されている。セラミックスの種類は特に限定するものではないが、例えば、炭化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素などを挙げることができる。また、金属セラミックス複合体の例としては、アルミニウムやシリコンと、炭化珪素、窒化アルミニウムなどのセラミックスとの複合体などを挙げることができる。
【0019】
また、金属製や金属セラミックス複合体製の均熱板の場合には、Niなどの比較的硬い金属やアルマイトなどのセラミックス、テフロン系やポリイミド系樹脂など耐食性の高い材料で表面処理してもよい。このように表面処理することによって耐久性が向上するうえ、半導体製造装置などの製品に対して汚染源となるコンタミやパーティクルの発生を防ぐことができる。もちろんセラミックスの場合にも同様な表面処理をしてもかまわない。
【0020】
本発明においては、上記したような第1均熱板11と第2均熱板12の材料の組み合わせのうち、第1均熱板11の常温における熱伝導率をK1、ヤング率をY1、第2均熱板12の熱伝導率をK2、ヤング率をY2としたときに、これらはK1>K2およびY2>Y1の関係を有している。これにより、第1均熱板11にはウエハ載置面11aでの均熱性を高くする役割、第2均熱板12にはヒータ10全体としての剛性を高くする役割をそれぞれ担わせることができ、結果的に、高い均熱性と高剛性とを共に有するヒータ10を低コストで実現することができる。
【0021】
すなわち、上記熱伝導率とヤング率の関係を満たすように第1均熱板11の材料を熱伝導率の高い金属によって形成すると共に第2均熱板12の材料を剛性の高いセラミックスまたは金属セラミックス複合体で形成し、更にこれらの間に抵抗発熱体13を設けることによって、抵抗発熱体13で発生した熱は、熱伝導率の高い第1均熱板11を伝熱して素早くウエハ載置面11aの全面に行渡ることができる。よって、ウエハ載置面11aでは高い均熱性が得られる。
【0022】
また、ヒータ10の剛性は第2均熱板12に担わせることができるため、第1均熱板11の厚みを薄くすることができる。その結果、第1均熱板11の熱容量を抑えることができ、ウエハ載置面11aに載置したウエハの急速昇温や急速降温が可能となる。このように、図1に示すヒータ10は高剛性であるにもかかわらず急速な昇降温が可能である。これは、ウエハ載置面11aに対して垂直方向に強い力が加えられるウエハプローバのような検査装置にヒータ10を使用する場合に特に効果的である。
【0023】
第2均熱板12の具体的なヤング率の値は、特に限定するものではないが200GPa以上であることが好ましい。200GPa以上であれば、第2均熱板12の変形を著しく低減することができるため、第2均熱板12をより薄型化、軽量化できるからである。
【0024】
上記の通り、第2均熱板12は高い剛性を有し且つ第1均熱板11に比べて低い熱伝導率を有していることを特徴としているが、第2均熱板12の熱伝導率はある程度高いことが好ましい。なぜなら、第2均熱板12の下部には後述するように冷却モジュールが設けられているため、ヒータ10の熱をあまり時間をかけずに冷却モジュールに伝えることができるからである。この観点から、第2均熱板12の材料は、セラミックスの場合は炭化珪素、窒化アルミニウム、または窒化珪素であることが好ましく、金属セラミックス複合体の場合は、アルミニウムやシリコンと、炭化珪素や窒化アルミニウムとの複合体であることが好ましい。
【0025】
第2均熱板12と、これよりヤング率の低い第1均熱板11とは後述するようにネジ止めなどによって結合されるが、これにより、第1均熱板11と第2均熱板12とが抵抗発熱体13を介して互いに密着して固定されることになる。この状態で抵抗発熱体13や後述する可動式冷却モジュール20によって加熱と冷却が交互に繰り返された場合、抵抗発熱体13が介在しているにもかかわらず、第1均熱板11において抵抗発熱体13に当接する面は、第2均熱板12において抵抗発熱体13に当接する面の形状にならうようになる。換言すれば、後者の面の形状に沿って前者の面が変形するようになる。
【0026】
その結果、第2均熱板12において抵抗発熱体13に当接する面の平面度が悪ければ、第1均熱板11において抵抗発熱体13に当接する面の平面度も悪化し、その影響を受けて第1均熱板11のウエハ載置面11aの平面度が悪化する。これにより、ウエハ載置面11aでの均熱性が低下するおそれが生じる。このような問題を避けるため、第2均熱板12において抵抗発熱体13に当接する面の平面度は100μm以下であるのが好ましく、50μm以下がより好ましい。すなわち、上記平面度が100μmを超えると、ウエハ載置面11aの平面度が徐々に悪化し、これに伴ってウエハ載置面11aでの均熱性が低下するおそれがある。
【0027】
第2均熱板12において抵抗発熱体13に当接する面の平面度が100μm以下であっても、当該面の形状は上に凸ではなく上に凹すなわち面の略中央部が窪んだすり鉢状を有しているのが好ましい。なぜなら、第2均熱板12において抵抗発熱体13に当接する面が上に凹であれば、その形状に沿った第1均熱板11の変形がスムーズに進行するため、ウエハ載置面11aでの均熱性の低下の影響を抑えることができるからである。ここで、面の平面度とは、その面を間に挟む互いに平行な2つの平面の内、それらが離間する距離が最も短い2平面を想定したときの、その2平面間の距離のことをいう。
【0028】
第1均熱板11は、載置されたウエハを吸着固定するための穴や溝などの凹部をウエハ載置面11a側に有していてもよい。この凹部は、一般に機械加工で形成されるため、第1均熱板11は機械加工しやすい材料であることが好ましい。この点からも、第1均熱板11は第2均熱板12に比べてヤング率の低い材料であることが好ましい。
【0029】
これらを考慮にいれたヒータ10の最良の形態としては、第1均熱板11の材料に銅または銅合金を使用し、第2均熱板12の材料にSiC、AlN、Si−SiC(SiとSiCとの複合体)、またはAl−SiC(AlとSiCとの複合体)を使用する場合を挙げることができる。また、ヒータ10をより軽量化したい場合は、第1均熱板11の材料にアルミニウムやその合金を使用し、第2均熱板12の材料にSiCまたはSi−SiCを使用するのが好ましい。
【0030】
本発明においては、第1均熱板11の厚み(A1)と第2均熱板12の厚み(A2)の合計(A1+A2)は、第1均熱板11の直径(B)の1/40以下である。この値が1/40を超えると、ヒータ10全体としての熱容量が大きくなりすぎ、急速昇温や急速冷却を行うことが困難になる。また、第1均熱板11の厚み(A1)および第2均熱板12の厚み(A2)は、それぞれ1mm以上であることが好ましい。これより薄いと第1均熱板11や第2均熱板12が反ったり割れたりするおそれがあるからである。
【0031】
抵抗発熱体13は、導体に電気を流したときに発生するジュール熱によってウエハ載置面11aに載置されたウエハを加熱するものである。この導体には、限定するものではないが、微細加工した金属箔を使用するのが好ましい。導体の材料には、例えば、ニッケル、ステンレス、銀、タングステン、モリブデン、クロム、インコネルまたはこれらの合金を使用することができる。これらの中では、ステンレスが特に好ましい。微細な金属箔を、比較的精度よく加工できるからである。また、安価である上、耐酸化性を有するので、使用温度が高温であっても長期間の使用に耐えることができる点においても好ましい。尚、微細な金属箔の加工法としては、例えば、エッチングやレーザー加工などを挙げることができる。
【0032】
本発明においては、上記導体を有する抵抗発熱体13は、ポリイミドもしくはテフロンまたはそれらの少なくとも一方を主原料とする耐熱性絶縁物によって一体化された構造を有している。また、一体化された構造を有する抵抗発熱体13の厚み(C)は、0.5mm以下である。0.5mmを超えると、冷却時に伝熱抵抗となり、急速冷却を行うことが困難になるからである。尚、一体化された構造を有する抵抗発熱体13の厚み(C)の下限は特に限定するものではないが、一般に0.02mm以上である。これより薄い抵抗発熱体13を作製するのは技術的に困難であり、コスト的にも不利になるからである。
【0033】
この抵抗発熱体13を、第1均熱板11と第2均熱板12とによって両側から挟み込んで結合することによってヒータ10が得られる。この結合には、例えばネジ止め、クランプなどの機械的な結合手段を用いて第1均熱板11と第2均熱板12とを固定するのが好ましい。また、第1均熱板11と抵抗発熱体13との間や、第2均熱板12と抵抗発熱体13との間を接着剤などの接着手段で互いに接着することもできる。更に、第1均熱板11においてウエハ載置面11aとは反対側の面に真空吸着用の溝や穴などの凹部を機械加工し、第1均熱板11と抵抗発熱体13とを真空吸着させてもよい。これらの結合手法を組み合わせることで、抵抗発熱体13を介した第1均熱板11と第2均熱板12との密着性がより一層向上するので、伝熱速度を更に向上させることができる。
【0034】
尚、第1均熱板11に比べて機械加工しにくいが、第2均熱板12において抵抗発熱体13と対抗する面に真空吸着用の溝や穴などの凹部を設け、第2均熱板12と抵抗発熱体13とを真空吸着させてもよい。また、一体化された抵抗発熱体13を複数層積層して、それらを第1均熱板11と第2均熱板12とによって挟み込んでもよい。これにより、昇温速度をさらに高めたり、異なる金属箔パターンの抵抗発熱体を積層してより高精度な温度制御を行ったりできる。尚、図2には、抵抗発熱体13を2つ積層した例が示されている。
【0035】
第1均熱板11のウエハ載置面11aは、表面粗さがRaで0.5μm以下であることが好ましい。この値が0.5μmを超えると、発熱量の大きな半導体素子のプロービングの際に半導体素子自身の自己発熱を良好に第1均熱板11に伝熱させることが困難になり、半導体素子の温度が上がり過ぎて熱破壊にいたるおそれがあるからである。尚、この表面粗さはRaで0.02μm以下であれば効率よく放熱できるのでより好ましい。
【0036】
ヒータ10には図1に示すように温度センサ30が設けられているのが好ましい。これにより、ウエハを加熱する際の温度を高い精度で制御することが可能となる。温度センサ30の設置方法としては、特に限定するものではないが、例えば熱電対を使用する場合は、その先端部が第1均熱板11内の所定の位置に到達するように、第1均熱板11に凹部を設けると共に、抵抗発熱体13および第2均熱板12において該凹部に対応する位置に貫通孔を設けてそこに温度センサ30を挿通するのが好ましい。
【0037】
ヒータ10の下部には、可動式冷却モジュール20が設けられている。この可動式冷却モジュール20は、ウエハを加熱する際は図3(a)に示すようにヒータ10から離間し、ウエハを冷却する際は図3(b)に示すようにヒータ10に当接する。これにより、ヒータ10の急速な昇温および急速な冷却が可能となり、スループットを向上させることができる。
【0038】
また、ヒータ10をウエハプローバのような検査装置に使用する場合、プロービング時に可動式冷却モジュール20をヒータ10から離間させることによって、プローブカードの圧力が可動式冷却モジュール20に全くかからないようにすることができる。よって、可動式冷却モジュール20を簡易で軽量な構造にすることができる。尚、可動式冷却モジュール20の駆動方法としては、エアシリンダーなどの昇降手段を用いることができる。
【0039】
ヒータ10と可動式冷却モジュール20との間に、変形能と耐熱性を有し、且つ熱伝導率の高い軟性材(図示せず)を設けてもよい。これにより、ヒータ10と可動式冷却モジュール20とが互いに対向する両面における平面度や反りに起因する伝熱抵抗の問題を緩和することができる。その結果、可動式冷却モジュール20が本来備えている冷却能力を最大限まで発揮させることが出来るので、ヒータ10をより急速に冷却することができる。
【0040】
この軟性材の材質には、シリコン樹脂や、エポキシ、フェノール、ポリイミドなどの耐熱製樹脂、またはこれらの樹脂に熱伝導性を向上させるためにBNやシリカ、あるいはAlNなどのフィラーを分散させたものを使用することができる。あるいは、発泡金属を使用してもよい。
【0041】
可動式冷却モジュール20の材質は特に制約はないが、アルミニウムや銅、またはその合金が好ましい。これらの金属は、熱伝導率が比較的高いため、ヒータ10の熱を急速に奪うことができるからである。また、ステンレスやマグネシウム合金、ニッケル、その他の金属材料を使用してもよい。更に、可動式冷却モジュール20に耐酸化性を付与するために、ニッケルや金、銀といった耐酸化性を有する金属膜をメッキや溶射などの手法を用いて成膜してもよい。
【0042】
また、可動式冷却モジュール20の材質としてセラミックスを使用してもよい。この場合の材質としては特に限定するものではないが、窒化アルミニウムや炭化珪素が好ましい。これらの材料は熱伝導率が比較的高いため、ヒータ10の熱を素早く奪うことができるからである。あるいは、窒化珪素や酸窒化アルミニウムを使用してもよい。これらの材料は機械的強度が高く、耐久性に優れているからである。更に、比較的安価なアルミナ、コージェライト、ステアタイトなどの酸化物セラミックスを使用してもよい。
【0043】
以上のように可動式冷却モジュール20の材質は、種々のものの中から選択することができるため、用途に応じて選択することができる。これらの中では、アルミニウムにアルマイト処理を施したものや、銅にニッケルメッキを施したものが耐酸化性にも優れる上、熱伝導率も高く、価格も比較的安価であるため最も好ましい。
【0044】
可動式冷却モジュール20には冷媒を流すことも可能である。これにより、ヒータ10から伝達された熱を素早く系外に排出することができるため、より急速に冷却することができる。この冷媒の種類は、限定するものではないが、水やフロリナートなどの媒体が好ましく、比熱の高さや価格を考慮すると水がより好ましい。
【0045】
冷媒が流れる構造の可動式冷却モジュール20は、例えば、2枚の銅(無酸素銅)板を用意し、その一方の銅板に水を流す流路を機械加工などによって形成する。この銅板に、もう一方の銅板と冷媒出入り口用のステンレス製パイプとをロウ付け接合する。そして、接合した両銅板の耐食性、耐酸化性を向上させるために、ニッケルメッキを全面に施すことによって作製することができる。
【0046】
あるいは、冷媒が流れる他の構造として、アルミニウム板もしくは銅板などの冷却板に冷媒を流すパイプを取り付けてもよい。この場合、パイプの断面形状に近い形状のザグリ溝を冷却板に形成し、その中にパイプを密着させることで更に冷却効率を上げることができる。また、密着性を向上させるために、熱伝導性の高い樹脂やセラミックスなどをパイプと冷却板の間に介在させてもよい。
【0047】
また本発明においては、ヒータ10で発生した熱を加熱冷却デバイス1より下部に存在する部材に伝わらないようにするために、支持部材(図示せず)を具備することが好ましい。この支持部材の形状に関しては特に制約はないが、抵抗発熱体13に直接接触しないほうが好ましい。例えば、放射状に配置した複数の支柱で第2均熱板12の下面を直接支持する構造が好ましい。この場合は、可動式冷却モジュール20の形状によるが、支持部材に物理的に干渉しないように、可動式冷却モジュール20には貫通孔若しくは切り欠きを設けることが必要となる。尚、支持部材の形状や個数には特に限定はない。
【0048】
支持部材の熱伝導率は、第2均熱板12の熱伝導率、すなわち、前述したK2の値より低いことが好ましい。これにより、ヒータ10の熱が支持部材より下部に存在する部材に伝わりにくくなるため、例えば、下部に存在する部材であるウエハの位置合わせなどにかかわる駆動系の部材に熱が伝わるのを防ぐことができる。その結果、かかる駆動系の部材の熱膨張を防止することができ、ウエハなどの位置合わせ精度の低下を防ぐことができる。
【0049】
上記のヒータ10と可動式冷却モジュール20とを有する加熱冷却デバイス1は、図1に示すように容器40内に収納されていることが好ましい。これにより、ヒータ10の下側部分や可動式冷却モジュール20を覆うことができるので、これらヒータ10の下側部分や可動式冷却モジュール20を、加熱冷却デバイス1が設置されるチャンバ内の雰囲気から隔離することが可能となる。よって、ヒータ10の高い均熱性や急速昇温および急速冷却に対する様々な悪影響を抑えることができる。
【0050】
以上説明したように、本発明の加熱冷却デバイスは、ウエハ載置面において高い均熱性を有していることに加えて急速昇温および急速冷却が可能であり、且つ高い剛性を具えているので、半導体製造装置や半導体素子の検査装置に搭載することによって高品質の半導体素子を高いスループットで作製することができる。
【0051】
以上、本発明の加熱冷却デバイス、およびこれを備えた半導体製造装置や検査装置について具体例を挙げて説明したが、本発明は係る具体例に限定されるものではなく、本発明の主旨から逸脱しない範囲の種々の態様で実施可能である。すなわち、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲およびその均等物に及ぶものである。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
図1に示す第1均熱板11、第2均熱板12、および抵抗発熱体13からなる試料1のヒータ10を作製した。第1均熱板11には、厚み(A1)2mm、直径(B)340mmの銅製の板状体を使用した。一方、第2均熱板12には、厚み(A2)2mm、直径340mmのSi−SiC複合体からなる板状体を使用した。銅製の板状体の表面にはNiめっきを施した。更に、第1均熱板11のウエハ載置面11a側の平面度を50μmに仕上げ、第2均熱板12において抵抗発熱体13に当接する面の平面度を30μmに仕上げた。
【0053】
抵抗発熱体13は、ステンレスからなる微細加工した金属箔をポリイミド(PI)と共に一体化した。厚み(C)は0.15mmとなるようにした。この抵抗発熱体13を、第1均熱板11と第2均熱板12との間に挟みこんでネジ止めによって固定した。これにより、試料1のヒータ10が得られた。同様にして試料2〜8のヒータ10を作製したが、その際、第1均熱板11および第2均熱板12の厚みを様々に変えた。
【0054】
これら試料1〜8のヒータ10の下部には各々可動式冷却モジュール20を設置した。可動式冷却モジュール20は、厚み10mm、直径340mmの銅板2枚に、それぞれ冷媒として水が流れる流路を機械加工により形成し、これらをロウ付けによって接合し、その側面に冷媒の出入り口をそれぞれ取り付けることによって構成した。また、耐熱性を確保するため、表面にはニッケルメッキを施した。これら試料1〜8のヒータ10の構成を下記表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
上記表1の試料1〜8のヒータ10に対して、各々可動式冷却モジュール20を離間させた状態で抵抗発熱体13に給電して室温から150℃まで加熱した後、抵抗発熱体13への給電を停止すると共に水を流通させた可動式冷却モジュール20をヒータ10に当接させて冷却した。その際、150℃に加熱されたウエハ載置面11aの均熱性を測定した。また、100℃から150℃までの昇温に要した時間と、150℃から100℃までの冷却に要した時間を測定した。更に、昇温および冷却後のウエハ載置面11aの平面度変化を測定した。その結果を下記の表2に示す。ここで、○は表中に示す所定の条件を満たしたことを、×はその条件を満たさなかったことを示している。
【0057】
【表2】

【0058】
この表2から分かるように、試料1〜3、5および7のヒータ10は、いずれも均熱性、昇温速度、冷却速度、平面度変化、製造コストの全て点において良好な結果が得られた。一方、第1均熱板11の厚み(A1)と第2均熱板12の厚み(A2)の合計(A1+A2)が第1均熱板11の直径(B)の1/40を超えた試料4では、昇温速度および冷却速度に時間がかかった。尚、第1均熱板11の厚み(A1)が1mm未満の試料6では、第1均熱板11が大きく反って測定を続けることができなかった。また、第2均熱板12の厚み(A2)が1mm未満の試料8では、第2均熱板12が割れたため、測定を続けることができなかった。
【0059】
[実施例2]
第2均熱板12の材料をSi−SiC複合体に代えてAlNにした以外は実施例1と同様にして、下記表3に示す試料9〜16のヒータ10を作製した。
【0060】
【表3】

【0061】
上記表3の試料9〜16のヒータ10に対して、実施例1と同様に下部に可動式冷却モジュール20を設置し、実施例1と同様に昇温および冷却を行って均熱性などを測定した。その結果を下記の表4に示す。ここで、○は表中に示す所定の条件を満たしたことを、×はその条件を満たさなかったことを示している。
【0062】
【表4】

【0063】
この表4から、第2均熱板12の材料にAlNを使用しても、実施例1と同様の結果が得られることが分かった。
【0064】
[実施例3]
第2均熱板12の材料をSi−SiC複合体に代えてSiCにした以外は実施例1と同様にして、下記表5に示す試料17〜24のヒータ10を作製した。
【0065】
【表5】

【0066】
上記表5の試料17〜24のヒータ10に対して、実施例1と同様に下部に可動式冷却モジュール20を設置し、実施例1と同様に昇温および冷却を行って均熱性などを測定した。その結果を下記の表6に示す。ここで、○は表中に示す所定の条件を満たしたことを、×はその条件を満たさなかったことを示している。
【0067】
【表6】

【0068】
この表6から、第2均熱板12の材料にSiCを使用しても、実施例1と同様の結果が得られることが分かった。
【0069】
[実施例4]
第2均熱板12の材料をSi−SiC複合体に代えてAl−SiC複合体にした以外は実施例1と同様にして、下記表7に示す試料25〜32のヒータ10を作製した。
【0070】
【表7】

【0071】
上記表7の試料25〜32のヒータ10に対して、実施例1と同様に下部に可動式冷却モジュール20を設置し、実施例1と同様に昇温および冷却を行って均熱性などを測定した。その結果を下記の表8に示す。ここで、○は表中に示す所定の条件を満たしたことを、×はその条件を満たさなかったことを示している。
【0072】
【表8】

【0073】
この表8から、第2均熱板12の材料にAl−SiC複合体を使用しても、実施例1と同様の結果が得られることが分かった。
【0074】
[実施例5]
第1均熱板11の材料をCuに代えてAlにし、Niめっきに代えてアルマイト処理を施した以外は実施例1と同様にして、下記表9に示す試料33〜40のヒータ10を作製した。
【0075】
【表9】

【0076】
上記表9の試料33〜40のヒータ10に対して、実施例1と同様に下部に可動式冷却モジュール20を設置し、実施例1と同様に昇温および冷却を行って均熱性などを測定した。その結果を下記の表10に示す。ここで、○は表中に示す所定の条件を満たしたことを、×はその条件を満たさなかったことを示している。
【0077】
【表10】

【0078】
この表10から、第1均熱板11の材料にアルマイト処理を施したAlを使用しても、実施例1と同様の結果が得られることが分かった。
【0079】
[実施例6]
第1均熱板11の材料をCuに代えてAlにし、Niめっきに代えてアルマイト処理を施し、第2均熱板12の材料をSi−SiC複合体に代えてAlNにした以外は実施例1と同様にして、下記表11に示す試料41〜48のヒータ10を作製した。
【0080】
【表11】

【0081】
上記表11の試料41〜48のヒータ10に対して、実施例1と同様に下部に可動式冷却モジュール20を設置し、実施例1と同様に昇温および冷却を行って均熱性などを測定した。その結果を下記の表12に示す。ここで、○は表中に示す所定の条件を満たしたことを、×はその条件を満たさなかったことを示している。
【0082】
【表12】

【0083】
この表12から、第1均熱板11の材料にアルマイト処理を施したAlを使用し、第2均熱板12の材料にAlNを使用しても、実施例1と同様の結果が得られることが分かった。
【0084】
[実施例7]
第1均熱板11の材料をCuに代えてAlにし、Niめっきに代えてアルマイト処理を施し、第2均熱板12の材料をSi−SiC複合体に代えてSiCにした以外は実施例1と同様にして、下記表13に示す試料49〜56のヒータ10を作製した。
【0085】
【表13】

【0086】
上記表13の試料49〜56のヒータ10に対して、実施例1と同様に下部に可動式冷却モジュール20を設置し、実施例1と同様に昇温および冷却を行って均熱性などを測定した。その結果を下記の表14に示す。ここで、○は表中に示す所定の条件を満たしたことを、×はその条件を満たさなかったことを示している。
【0087】
【表14】

【0088】
この表14から、第1均熱板11の材料にアルマイト処理を施したAlを使用し、第2均熱板12の材料にSiCを使用しても、実施例1と同様の結果が得られることが分かった。
【0089】
[実施例8]
第1均熱板11の材料をCuに代えてAlにし、Niめっきに代えてアルマイト処理を施し、第2均熱板12の材料をSi−SiC複合体に代えてAl−SiC複合体にした以外は実施例1と同様にして、下記表15に示す試料57〜64のヒータ10を作製した。
【0090】
【表15】

【0091】
上記表15の試料57〜64のヒータ10に対して、実施例1と同様に下部に可動式冷却モジュール20を設置し、実施例1と同様に昇温および冷却を行って均熱性などを測定した。その結果を下記の表16に示す。ここで、○は表中に示す所定の条件を満たしたことを、×はその条件を満たさなかったことを示している。
【0092】
【表16】

【0093】
この表16から、第1均熱板11の材料にアルマイト処理を施したAlを使用し、第2均熱板12の材料にAl−SiC複合体を使用しても、実施例1と同様の結果が得られることが分かった。
【0094】
[比較例1]
比較のため、下記表17に示す試料65〜67のヒータを作製した。すなわち、試料65のヒータは、第1均熱板11の材質にAlNを使用し、第2均熱板12の材質に銅を使用した以外は実施例1の試料2と同様に作製した。試料66のヒータは、第1均熱板11の材質にAlNを使用してその厚み(A1)を6mmとし、第2均熱板12は設けなかった。抵抗発熱体は、第1均熱板11の下面側、すなわちウエハ載置面11aの反対側にスクリーン印刷によりタングステンペーストで発熱体の回路を形成して焼き付けた後、絶縁体および発熱体の厚みが150μmとなるように、発熱体の表面に絶縁性確保のためガラスペーストを塗布し、焼き付けた。試料67のヒータは、第1均熱板11の材質に銅を使用してその厚み(A1)を6mmとし、第2均熱板12は設けなかった。抵抗発熱体13は、ポリイミドで一体化した厚み(C)0.15mmのものを第1均熱板11の下面側に接着により取り付けた。
【0095】
【表17】

【0096】
上記表17に示す試料65〜67のヒータに対して実施例1と同様に下部に可動式冷却モジュール20を設置し、実施例1と同様に昇温および冷却を行って均熱性などを測定した。その結果を下記の表18に示す。ここで、○は表中に示す所定の条件を満たしたことを、×はその条件を満たさなかったことを示している。
【0097】
【表18】

【0098】
この表18から分かるように、試料65および試料66のヒータは、いずれも150℃の均熱性が0.5℃を超えた。また、試料66のヒータについては、抵抗発熱体をスクリーン印刷する工程が必要であったので、製造コストがかかった。また、試料67のヒータは、昇温速度および冷却速度に時間がかかった上、昇温冷却前に比べて昇温冷却後の平面度が、50μmを超えて変化していた。
【0099】
[実施例9]
下記表19に示す試料68〜71のヒータ10を作製した。すなわち、試料68のヒータ10は、図2に示す構造となるように一体化した抵抗発熱体13を2つ積層して使用したが、それ以外は実施例1の試料2と同様に作製した。試料69のヒータ10は、テフロンを用いて一体化して厚み(C)0.25mmの抵抗発熱体13を使用した以外は実施例1の試料2と同様に作製した。試料70のヒータ10は、試料69で用いた抵抗発熱体13を2つ積層した以外は試料69と同様にした。試料71のヒータ10は、マイカを用いて一体化した厚み(C)1mmの抵抗発熱体13を使用した以外は実施例1の試料2と同様に作製した。
【0100】
【表19】

【0101】
上記表19に示す試料68〜71のヒータ10に対して実施例1と同様に下部に可動式冷却モジュール20を設置し、実施例1と同様に昇温および冷却を行って均熱性などを測定した。その結果を下記の表20に示す。ここで、○は表中に示す所定の条件を満たしたことを、×はその条件を満たさなかったことを示している。
【0102】
【表20】

【0103】
この表20から分かるように、試料68〜70のヒータ10は、いずれも実施例1の試料1〜3、5および7同様、良好な結果が得られたが、マイカを用いて一体化した抵抗発熱体を用いた試料71のヒータ10については、均熱性が0.5℃を超えた上、昇温速度および冷却速度に時間がかかった。
【0104】
[実施例10]
第2均熱板12において抵抗発熱体13に当接する面の平面度を様々に変えた以外は実施例1の試料1と同様にして、試料72〜85のヒータ10を作製した。これら試料72〜85のヒータ10に対して、それぞれ実施例1と同様に下部に可動式冷却モジュール20を設置し、実施例1と同様の昇温および冷却からなるヒートサイクルを1000回繰り返した。その際、ヒートサイクルがウエハ載置面11aの平面度と均熱性に及ぼす影響を調べるため、ヒートサイクル1回終了後、100回終了後、200回終了後、300回終了後、500回終了後、および1000回終了後のウエハ載置面11aの平面度と均熱性を測定した。その結果を下記の表21に示す。ここで、○は表中に示す所定の条件を満たしたことを、×はその条件を満たさなかったことを示している。
【0105】
【表21】

【0106】
この表21から分かるように、第2均熱板12において抵抗発熱体13に当接する面の平面度が100μmを超えていた試料83〜85では、ウエハ載置面11aの平面度が悪化して均熱性も悪化し、所定の均熱性条件を満たすことができなかった。一方、第2均熱板12において抵抗発熱体13に当接する面の平面度を100μm以下にした試料72〜82では、ヒートサイクルを1000回繰り返しても所定の均熱性条件を満たすことができた。特に、第2均熱板12において抵抗発熱体13に当接する面の平面度を50μm以下にした試料72〜77では、ヒートサイクルの熱履歴によるウエハ載置面11aの平面度変化を抑えることができ、優れた信頼性を示していることが分かる。
【0107】
[実施例11]
第2均熱板12において抵抗発熱体13に当接する面の形状を上に凹又は上に凸にすると共にその平面度を40μmにした以外は実施例1の試料1と同様にして、試料86及び87のヒータ10を作製した。これら試料86及び87のヒータ10に対して、実施例10と同様にしてヒートサイクルを1000回繰り返してウエハ載置面11aの平面度と均熱性を調べた。その結果を下記の表22に示す。ここで、○は表中に示す所定の条件を満たしたことを、×はその条件を満たさなかったことを示している。
【0108】
【表22】

【0109】
この表22から分かるように、試料86及び87のいずれのヒータ10もヒートサイクルの熱履歴によるウエハ載置面11aの平面度変化を抑えることができ、優れた信頼性を示しているが、第2均熱板12において抵抗発熱体13に当接する面の形状を上に凹にした試料86の方が、上に凸にした試料87に比べてより平面度変化が少なかった。
【符号の説明】
【0110】
1 加熱冷却デバイス
10 ヒータ
11 第1均熱板
11a ウエハ載置面
12 第2均熱板
13 抵抗発熱体
13a 金属箔
13b 耐熱性絶縁物
20 可動式冷却モジュール
30 温度センサ
40 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを載置して加熱するヒータと、該ヒータの下部に設けられた可動式冷却モジュールとを備え、ウエハの高速昇降温を行う加熱冷却デバイスであって、
ヒータは、ウエハ載置面を有し金属からなる第1均熱板と、該第1均熱板を支持しセラミックスまたは金属セラミックス複合体からなる第2均熱板と、これら第1均熱板と第2均熱板との間に設けられた抵抗発熱体とを有しており、
第1均熱板と第2均熱板の熱伝導率を順にK1、K2としたときにそれらの関係がK1>K2であり、第1均熱板と第2均熱板のヤング率を順にY1、Y2としたときにそれらの関係がY2>Y1であり、
第1均熱板と第2均熱板の厚みの合計が第1均熱板の直径の1/40以下であり、抵抗発熱体は、ポリイミドもしくはテフロンまたはそれらの少なくとも一方を主原料とする耐熱性絶縁物によって一体化されており、該一体化された抵抗発熱体の厚みが0.5mm以下であることを特徴とする加熱冷却デバイス。
【請求項2】
前記第1均熱板および前記第2均熱板の厚みは、それぞれ1mm以上であることを特徴とする、請求項1記載の加熱冷却デバイス。
【請求項3】
前記第2均熱板において前記抵抗発熱体に当接する面の平面度が100μm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の加熱冷却デバイス。
【請求項4】
前記第2均熱板において前記抵抗発熱体に当接する面の形状が上に凹であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の加熱冷却デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の加熱冷却デバイスを備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の加熱冷却デバイスを備えたことを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−129577(P2011−129577A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284097(P2009−284097)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】