説明

加飾用積層シ―ト及び被覆成形品の製造方法

【課題】 表面層を有する加飾用成形シートであって、成形直前の高温加熱により硬化反応が進行しすぎず、成形時の伸び率が高く(真空成形法で300%以上の展開倍率を有する。)、得られる被覆成形品の外観や表面光沢に優れる加飾用積層シートを提供する。
【解決手段】 表面層(A)と透明又は半透明の熱可塑性樹脂層(B)とインキ層(C)と支持基材層(D)とがこの順に積層された加飾用積層シートであって、前記表面層(A)は、2級水酸基を含有し酸価が1.0(KOHmg/g)以下でありガラス転移温度が30〜100℃の熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネート化合物とを含有し、イソシアネート反応率20〜80%の範囲で半硬化させた層である加飾用積層シート、及び、金型表面に前記加飾用積層シートを密着させる際のシート温度が100℃以上である被覆成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車内外装部品、家電用部品、建材用部品などの装飾に有用な加飾用積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装飾用途の自動車内外装部品、家電用部品、建材用部品などは、射出成形、真空成形やインモールド成形等の成形加工を施した後、成形品表面をスプレー塗装などで塗料を塗布し、乾燥・加熱硬化させ、成形品の表面保護や着色、装飾等の意匠性を付与する。しかし、この様な塗装は、揮発性有機溶剤の排出に対する作業環境の問題や、成形品ごとの塗布、乾燥、加熱硬化等の作業行程と生産設備が必要となり、生産性が低い問題が有る。
【0003】
これに対し、近年、成形加工時に意匠性を有する軟質な熱可塑性樹脂からなる加飾用積層シートを供し、成形品表面に該加飾用積層シートを貼り合わせ、意匠性を有する被覆成型品を得る方法が数多く提案されている。加飾用シートは熱成形時の立体変形に追従できるような熱可塑性樹脂で構成されているので、成形時の塗膜の割れや破れ、剥離が生じるなどの問題はなく、塗装工程がないので作業環境や生産性に優れる。しかし、表面硬度に限界があり、耐擦傷性や耐溶剤性などに劣るといった問題が有った。
【0004】
この問題を解決するため、表面層に硬化性樹脂層を有する加飾用積層シートを使用し、成形加工後硬化させ、被覆成型品を得る方法が開発されている。この方法は、成形加工時の段階では表面層である硬化性樹脂層は未硬化のため延伸性が高く、また成形品を被覆した後は硬化性樹脂層を硬化させるので、得られる成型品表面は、高硬度で耐擦傷性に優れる。
しかし、成形時の熱により未硬化の硬化性樹脂が金型表面に付着し易く、その結果加飾用積層シートと一体化した成形品の外観が損なわれる恐れがあった。また、付着物を金型から除去しなければならず生産性が悪いといった問題もあった。
【0005】
成形前に、表面層である硬化性樹脂層を一部架橋させておき、成形加工後に再度硬化させる加飾用積層シートが開発されている。(例えば、特許文献1、2参照)これは、UV樹脂と熱硬化性樹脂との混合物を使用し、成形前に熱硬化性樹脂成分を架橋させておき(半硬化状態)、成形後UV照射してUV硬化樹脂成分を架橋させるものである。これにより、付着物が金型に付着する問題は解決できる。しかし、成形後UV照射を行う必要があるので煩雑であることや、UV硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とが相溶しずらいといった問題、あるいは、UV硬化性樹脂成分は一般に伸び率が低く成形時に割れ等が発生するといった問題があった。
【0006】
UV硬化方法を使用せず、熱硬化方法のみを利用する表面層を有する加飾用積層シートとしては、例えば特許文献3が知られている。これは、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を有する反応性アクリル樹脂と、ブロックイソシアネートとを主成分とした熱硬化性樹脂を表面層に有するシートであり、成形前に一部熱により架橋をさせておき、成形後熱硬化させる。しかし、真空成形やインモールド成形直前の高温加熱により硬化反応が進行しすぎ、成形時に該積層シートが延びることができず、特に該クリアー層に割れや剥離を起こし易いといった問題や、加熱時、ブロックイソシアネート基からフェノール類、有機カルポン酸等のマスク剤が脱離して金型や成形品表面に付着し、成形体の外観不良や表面光沢の低下を招くといった問題があった。
【特許文献1】特開2000−117925号公報
【特許文献2】特開2004−1350号公報
【特許文献3】特開平03−157414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、熱硬化方法のみを利用する、表面層を有する加飾用成形シートであって、成形直前の高温加熱により硬化反応が進行しすぎず、成形時の伸び率が高く(真空成形法で300%以上の展開倍率を有する。)、得られる被覆成形品の外観や表面光沢に優れる加飾用積層シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、真空成形やインモールド成形直前の高温加熱時の、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を有する反応性アクリル樹脂とブロックイソシアネートとの反応性が高く、短時間の加熱でも硬化反応が進みすぎてしまうことが、成形時の伸び率が低い原因であると考え、鋭意検討した結果、
反応性の遅い2級水酸基を有し、且つ、酸価をできるだけ押さえた熱可塑性樹脂と、マスク剤でブロックしていないポリイソシアネートとを組み合わせることで、成形直前の高温加熱により硬化反応が進行しすぎず(反応性遅延効果)、且つ、金型成形時には、成形時の熱のみでほぼ硬化が達成され、得られる被覆成形品の外観や表面光沢に優れることを見いだした。
【0009】
即ち、本発明は、表面層(A)と、透明又は半透明の熱可塑性樹脂層(B)と、インキ層(C)と、支持基材層(D)とが、この順に積層された加飾用積層シートであって、前記表面層(A)は、2級水酸基を含有し酸価が1.0(KOHmg/g)以下でありガラス転移温度が30〜100℃の熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネート化合物とを含有し、イソシアネート反応率20〜80%の範囲で半硬化させた層である加飾用積層シートを提供する。
【0010】
また、本発明は、金型表面に請求項1に記載の加飾用積層シートを密着させた後、金型に成形用樹脂を供給して被覆成形品を製造する方法であって、金型表面に前記加飾用積層シートを密着させる際のシート温度が100℃以上である被覆成形品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、成形直前の高温加熱により硬化反応が進行しすぎず、成形時の伸び率が高く(真空成形法で300%以上の展開倍率を有する。)、得られる被覆成形品の外観や表面光沢に優れる加飾用積層シートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(表面層(A))
本発明において表面層とは、真空成形やインモールド成形後、3次元成形体の最表面となる層のことである。
本発明で使用する表面層(A)は、2級水酸基を含有し酸価が1.0(KOHmg/g)以下でありガラス転移温度が30〜100℃の熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネート化合物を含有し、イソシアネート反応率20〜80%の範囲で半硬化させた層である。
2級水酸基を含有し酸価が1.0(KOHmg/g)以下でありガラス転移温度が30〜100℃の熱可塑性樹脂において、熱可塑性樹脂とは、アクリル系重合体やフルオロオレフィン系重合体に代表されるビニル系重合体、ポリエステル、アルキッド樹脂、ポリウレタンなどの重合体が挙げられる。中でも、ビニル系重合体が成形性と成形品の物性バランスが良好な点で特に好ましい。また、2級水酸基を含有し酸価が1.0(KOHmg/g)以下であるガラス転移温度が30〜100℃の熱可塑性樹脂を、熱可塑性樹脂Aと略す。
【0013】
(熱可塑性樹脂A)
前記熱可塑性樹脂Aは、公知の方法で単独重合または共重合させて得られる。例えば、熱可塑性樹脂Aがビニル系重合体である場合、2級水酸基を有するビニル系単量体を公知の方法で単独重合または共重合させて得られる。2級水酸基を有するビニル系単量体は、分子内に不飽和二重結合と2級水酸基を有する化合物で有れば良く、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチルなどの不飽和カルボン酸モノアルキルエステル化合物、不飽和カルボン酸とα−オレフィンエポキシドのようなモノエポキシ化合物との付加物、アクリル酸グリシジル又はメタクリル酸グリシジルとジオクチルアミンなどのジアルキル2級アミンとの付加物、アクリル酸グリシジル又はメタクリル酸グリシジルと酢酸、プロピオン酸などの脂肪酸との付加物、アクリル酸グリシジル又はメタクリル酸グリシジルと塩酸などの無機酸との付可物が挙げられる。
【0014】
前記2級水酸基を含有するビニル系重合体は、他の汎用のビニル系単量体を共重合させてもよい。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸(n−、iso−もしくはtert−)ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、
【0015】
メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸(n−、iso−もしくはtert−)ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜22のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;
【0016】
アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシブチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸エトキシブチル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステル等の(メタ)アクリル酸エステル類が、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキルアクリレート系単量体;
【0017】
アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
【0018】
また、1級水酸基を有するビニル系単量体を共重合させると、硬化速度や水酸基価を調節することができ好ましい。1級水酸基を有するビニル系単量体としては例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸モノアルキルエステル化合物、上述の水酸基含有モノマーとラクトン類(例えばε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等)との付加物が挙げられる。特に、上述の水酸基含有モノマーとラクトン類(例えばε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等)との付加物を使用すると、成形時の三次元深絞り性が向上し、より好ましい。
【0019】
また、得られた成形品の光沢性をより一層高めるためには、ジアリル化合物を共重合させると効果的である。ジアリル化合物としては、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ジアリル酢酸、ジアリルカルビノール、ジアリルエーテル、ジアリルクロロシラン等が挙げられるが、共重合体の安定性や原料化合物の入手しやすさといった観点から、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリルが好ましい。ジアリル化合物は、全単量体成分に対して0.5〜30重量%の範囲で使用することが好ましい。0.5重量%以上とすることにより、20°の光沢値が85以上になり、かつ、人の目で感じる光沢感の指標にもなる60°の光沢値が90以上になるので、外装材として極めて優れた光沢を得ることができる。ジアリル化合物の使用量が30重量%を越えると、製造時に反応装置内で反応混合物がゲル化するおそれがある。
【0020】
単独重合または共重合法としては、溶液ラジカル重合法、非水分散重合法又は塊状重合法等の公知の重合法を利用することができる。中でも、溶液ラジカル重合法が簡便で好ましい。溶液ラジカル重合法の一例としては、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、イソブタノール、n−ブタノール等のアルコール類、酢酸ブチル等のエステル類、メチルアミルケトン等のケトン類、セロソルブ、ブチルセロソブ、セロソルブアセテート等のエーテル類等の有機溶剤中で、N,N−アゾビスジイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物等のラジカル重合開始剤、n−ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤等を用いて、反応温度約50〜160℃で、約1〜30時間反応させる。
【0021】
熱可塑性樹脂Aの2級水酸基の割合は、熱可塑性樹脂Aが有する全水酸基量の50〜100モル%を占める割合であることが、三次元成形性が特に良好になる点で好ましい。2級水酸基の割合が50モル%未満になると、2級水酸基のイソシアネート基との反応遅延性の効果が不十分となり真空成形時の高温加熱によりクリアー硬化層の硬化反応が進行しすぎて成形時の延伸で塗膜の割れや剥離が起こり易いことがある。
【0022】
熱可塑性樹脂Aの水酸基価は、30〜120(KOHmg/g)の範囲であると、クリアー硬化層の架橋密度が1.0×10-5〜3.0×10-5[mol/cm3]の範囲で充分なものとなり成形性と塗膜物性とのバランスがとれ好ましい。水酸基価を30(KOHmg/g)以上とすることにより、硬化塗膜の架橋密度が充分なものとなり、耐溶剤性などが良好となる傾向があり、水酸基価を120(KOHmg/g)以下とすることにより成形時の延伸による塗膜の割れや剥離が著しく減少し三次元成形性が良好となる傾向がある。この水酸基価の特に好ましい範囲は40〜100(KOHmg/g)である。
【0023】
熱可塑性樹脂Aの数平均分子量(ポリスチレン換算の値)は5,000〜50,000の範囲が好ましい。数平均分子量が5,000以上であると硬化塗膜の耐溶剤性が良好となる傾向にあり、数平均分子量が50,000以下であると三次元成形性が良好となる傾向にある。より好ましい範囲は10,000〜30,000である。
【0024】
熱可塑性樹脂Aのfoxの計算式によって導かれるガラス転移温度(以下、Tgと略記)は30〜100℃である。この範囲とすることで、表面層(A)の成形性と塗膜物性とのバランスをとることができる。Tgを30℃以上とすることによって、硬化塗膜が硬くなり、成形時の延伸による塗膜の割れや剥離が著しく減少し、更には、耐溶剤性などが良好となる。また、Tgを100℃以下とすることにより、硬化塗膜が適度に軟らかくなって成形時の延伸による塗膜の割れや剥離が著しく減少し三次元成形性が良好となる。
【0025】
熱可塑性樹脂Aの酸価は1.0(KOHmg/g)以下である。この範囲とすることで、三次元成形性が良好になる。酸価が1.0(KOHmg/g)を超えると、酸成分の硬化触媒の効果が顕著になり、真空成形時の高温加熱によりクリアー硬化層の硬化反応が進行しすぎて成形時の延伸で塗膜の割れや剥離が起こり易くなる問題がある。
酸価を低減する方法は、例えば、表面層(A)を構成する成分から酸価成分となる化合物の使用量を減らす又は使用しないことにより容易に行うことが出来る。酸価成分としては特に限定はされないが、(1)2級水酸基含有熱可塑性樹脂に使用する重合性ビニルモノマーとして、カルボン酸官能基、酸無水物官能基、フェノール性水酸基などの酸価成分となる官能基を含有するビニルモノマー、(2)2級水酸基含有熱可塑性樹脂の合成に用いる重合触媒として、熱分解生成物にカルボン酸官能基を含有する重合触媒、(3)無機酸、有機酸等、フェノール類などを含有する反応溶剤、希釈用剤などが有り、熱可塑性樹脂Aの酸価が1.0以下となるように酸価成分の使用量を減らすことが出来る。
【0026】
本発明においては、2級水酸基量を全水酸基量の50〜100モル%を占める割合とし、更に酸価1.0(KOHmg/g)以下とすることで、より相乗効果が得られ、三次元成形性が特に良好になる。
【0027】
(ポリイソシアネート化合物)
本発明で用いられるポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を平均2個以上有する化合物である。数平均分子量(ポリスチレン換算の値)は10,000以下のものが好ましく、5,000以下がなお好ましく、特に好ましくは2,000以下である。中でも、1分子中に3つ以上のイソシアネート基を含有する、いわゆる3価以上のイソシアネート化合物を使用するのが好ましい。
【0028】
3価以上のイソシアネート化合物としては、具体的には、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、2,4,6−トリイソシアナトシクロヘプタン、1,2,5−トリイソシアナトシクロオクタンなどの脂肪族トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトナフタレンなどの芳香族トリイソシアネート、ジイソシアネート類を環化三量化せしめて得られる、いわゆるイソシアヌレート環構造を有するポリイソシアネート類が挙げられる。
【0029】
ポリイソシアネート化合物としては、これら3価以上の有機ポリイソシアネート化合物に、2価のイソシアネート化合物類、即ち、ジイソシアネート類を併用することが好ましい。ジイソシアネート類としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビスイソシアナートメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナートシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナートシクロヘキサン、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の環状脂肪族ジイソシアネート類、
【0030】
トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートキシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類が挙げられる。
【0031】
更に、3価以上のポリイソシアネート化合物は、2価以上のポリイソシアネートの2量体もしくは3量体、これらの2価又は3価以上のポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等とをイソシアネート基過剰の条件で反応させてなる付加物等、遊離のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物の遊離のイソシアネート基をフェノール類、オキシム類、ラクタム類、アルコール類、メルカプタン類などのブロック剤で封鎖したブロックポリイソシアネートや、遊離のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類と、水とを反応せしめて得られる、ビウレット構造を有するポリイソシアネート類、
【0032】
2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートもしくは(メタ)アクリロイルイソシアネートの如き、イソシアネート基を有するビニル単量体の単独重合体、又はこれらのイソシアネート基含有ビニル単量体を、これらと共重合可能な(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系もしくはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめて得られる、それぞれ、イソシアネート基含有の、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体又はフルオロオレフィン系共重合体などのような、種々のビニル系共重合体類などとも併用することができる。
【0033】
熱可塑性樹脂Aとポリイソシアネート化合物との配合比としては、熱可塑性樹脂Aの中の水酸基1当量当たりポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基が0.5〜1.5当量の範囲が好ましく、特に0.7〜1.2当量の範囲が硬化塗膜の各種性能のバランスから好ましい。
【0034】
(硬化触媒)
熱可塑性樹脂Aとポリイソシアネート化合物を反応硬化させる場合、必要に応じて公知の硬化触媒を添加することが出来る。
具体的には、例えば、N−メチルモルフォリン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、
トリ−n−ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、
【0035】
ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1,4−ジエチルイミダゾール、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランの如き各種のアミン化合物類、
【0036】
テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシルプロピル)アンモニウム塩、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム塩、テトラキス(ヒドロキシルメチル)アンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、o−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウム塩の如き、各種の4級アンモニウム塩類であって、且つ、代表的な対アニオンとしてのクロライド、ブロマイド、カルボキシレート、ハイドロオキサイドなどを有する、いわゆる4級アンモニウム塩類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫アセテート、ジオクチル酸鉛、ナフテン酸コバルトの如き、各種の有機金属化合物などがある。
【0037】
硬化触媒の添加量は特に制限はないが、あまり過剰に添加するとポットライフ(可使時間)が短くなり熱可塑性樹脂Aとポリイソシアネート化合物を含有する組成物がゲル化することがある。通常は、該組成物1000部に対して硬化触媒が0.01〜1部を添加することが好ましい。
【0038】
(表面層(A)の反応率)
表面層(A)は、イソシアネート反応率20〜80%の範囲で、成形前に半硬化させておく。成形加工時の加熱等の条件によるが、反応率が20%未満では硬化反応不足のため成形加工時の熱により硬化塗膜が金型付着して金型汚染を起こすことがある。また反応率が80%超では成形加工時の延伸で割れや剥離を起こすことがある。成形前の半硬化条件は、通常、50〜80℃(50℃が実施例)の範囲で5日〜1日程度行う。
本発明の加飾用積層シートで使用する表面層(A)は、2級水酸基を有し酸価を殆ど有さないため反応速度が非常に遅く、この硬化条件内であれば所望のイソシアネート反応率にすることが容易である。一方、反応温度が100℃以上になると反応速度が急速に上がる。成形加工時のヒーター温度は通常200℃以上であり、この場合成形加工時のシート温度は100℃以上となる。従って、このような通常の成形加工条件でほぼ硬化させることが可能である。
なお、本発明においては、被覆成型後の表面層(A)のイソシアネート反応率が100%であることは必須ではない。一般に、熱硬化型あるいはUV硬化型塗料やシートにおいては、反応率100%とすることは困難であり、大体90%以上で反応は頭打ちになる。それ以上のエネルギー付与は逆に塗膜劣化等の原因となることがある。
従って通常は(ものにもよるが)、90%以上の反応率を示せば性能が発現するように設計している。本発明の加飾用積層シートも同様であり、性能が発現できる位に反応しておればよく、通常はイソシアネート反応率が90%以上であればよい。
【0039】
なお、ここでいう反応率は、表面層(A)用組成物を適当な透明樹脂フィルム、例えば25μmPETフィルムを用いて塗布し、実際の乾燥・硬化条件と同様にして硬化させた試験用フィルムと完全硬化(110℃/2時間加熱処理)させた補正用フィルムの2種類を作製し、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて透過法又はATR法でイソシアネート官能基の硬化前後のIRスペクトルの吸光度ピーク高さを測定し、次式から求めた値である。
【0040】
【数1】

【0041】
(透明又は半透明の熱可塑性樹脂層(B))
本発明で使用する透明又は半透明の熱可塑性樹脂層(B)は、透明又は半透明の単層又は多層フィルムであって、加熱により展延性を有する樹脂層である。
具体的には、真空成形等の加熱による成形加工を行うため、軟化点が30〜300℃の範囲である熱可塑性樹脂を主体とするフィルムが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリル樹脂、シリコン−アクリル樹脂、アイオノマー、ポリスチレン、ポリウレタン、ナイロン、エチレン−ビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニルフルオネート、ポリビニリデンジフルオネート、ポリカーボネート樹脂等が好ましく用いられる。これらの中でも、一体成形可能性、耐候性の点から、ポリビニリデンジフルオネート、ポリカーボネート樹脂またはアクリル系樹脂を主成分とするフィルムが好ましい。厚みは特に制限しないが、インキ保護層の塗工性が良好なことから、30〜2000μmの範囲が好ましく、より好ましくは50〜500μmである。
また着色剤を含有してもよい。あるいは、衝撃強度や成形性が損なわれない範囲で、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐電防止剤、難燃剤および滑剤等の添加剤を配合してもよく、これらの添加剤は単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0042】
(インキ層(C))
本発明で使用するインキ層(C)は特に限定はなく、汎用のインキを使用できる。インキの膜厚は薄すぎると隠蔽性に劣り意匠性が損なわれる傾向があり、厚すぎると、後述の高輝性インキを使用した際、金属片の配向が乱れることがある。このため、インキ層の膜厚としては、5μm以下が好ましく、0.05〜5μmがより好ましく、特に好ましくは0.5〜3μmである。
中でも、金属薄膜細片を含有する鏡面状金属光沢インキ(以下、高輝性インキと言う。)を使用すると、鏡面状金属光沢を有する成形品を得ることができる。
金属薄膜細片のインキ中の不揮発分に対する含有量は3〜60質量%の範囲であることが好ましい。金属薄膜細片を使用した高輝性インキは、該インキを印刷又は塗布した際に金属薄膜細片が被塗物表面に対して平行方向に配向する結果、従来の金属粉を使用したメタリックインキでは得られない高輝度の鏡面状金属光沢が得られる。
【0043】
(金属薄膜細片)
インキ層に使用する高輝性インキに用いられる金属薄膜細片の金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等を使用することができる。金属を薄膜にする方法としては、アルミニウムのように融点の低い金属の場合は蒸着、アルミニウム、金、銀、銅など展性を有する場合は箔、融点が高く展性も持たない金属の場合は、スパッタリング等を挙げることができる。これらの中でも、蒸着金属薄膜から得た金属薄膜細片が好ましく用いられる。金属薄膜の厚さは、0.01〜0.1μmが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.08μmである。インキ中に分散させる金属薄膜細片の面方向の大きさは、5〜25μmが好ましく、さらに好ましくは10〜15μmである。大きさが5μm未満の場合は、塗膜の輝度が不十分となり、25μmを超えると金属薄膜細片が配向しにくくなるので輝度が低下するほか、インキをグラビア方式あるいはスクリーン印刷方式で印刷又は塗布する場合に、版の目詰まりの原因となる。
【0044】
(支持基材層(D))
本発明で使用する支持基材層(D)は、成形加工を行うため、軟化点が30〜300℃の範囲である熱可塑性樹脂を主体とするフィルムが好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル/アクリルゴム/スチレン(AAS)樹脂、アクリロニトリル/エチレンゴム/スチレン(AES)樹脂、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂、塩ビ系(PVC)系樹脂等の汎用樹脂、並びにオレフィン系エラストマー(TPO)、塩ビ系エラストマー(TPVC)、スチレン系エラストマー(SBC)、ウレタン系エラストマー(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリアミド系エラストマー(TPAE)等の熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができる。これらの中でも、自動車外装部品を代表とする複雑な形状を有する成形体を得る場合は、賦形性が優れていることからポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂及びそれらのブレンド品やAAS樹脂、ABS樹脂等がより好ましく使用される。これらの樹脂には衝撃強度等の改良を目的としてEPR、SBS、SEBS等のゴム系改質剤を添加しても構わない。厚みは特に制限しないが、支持基材層の厚みは10μm〜2000μmが好ましい。
【0045】
本発明の成形用積層シートは熱成形され三次元形状の成形体となる。このとき支持基材層(D)と透明又は半透明の熱可塑性樹脂層(B)に使用される熱可塑性樹脂の成形収縮率が異なると、成形体に変形が起こることがある。この場合には、支持基材層(D)に無機フィラーを添加することが好ましく、成形収縮率を小さく制御でき、支持基材層とインキ層との成形収縮率の差を小さくできる。
無機フィラーの種類は特に限定はされないが、タルク、炭酸カルシウム、クレー、珪藻土、マイカ、珪酸マグネシウム、シリカ等が上げられる。その平均粒径は4μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下である。無機フィラーの粒径が大きすぎると、支持基材層の表面に凹凸が生じ、その上に積層されているインキ層にも凹凸が影響することがあり、特にインキ層(C)が高輝性インキである場合、金属薄膜細片の配向に乱れが生じるおそれがある。
無機フィラーの支持基材層(D)の樹脂への添加量は、成形加工性と成形収縮率のバランスの点から5質量%〜60質量%が好ましい。
【0046】
また、支持基材層(D)は着色剤を含むと、成形体の下地色の隠蔽性が良好となるので好ましい。用いる着色剤は、特に限定されず、目的とする意匠に合わせて、一般の熱可塑性樹脂の着色に使用される慣用の無機顔料、有機顔料および染料などが使用できる。例えば、酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄、複合酸化物系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、バナジウム酸ビスマス、カーボンブラック、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク等の無機顔料;アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アンスラキノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、チオインジゴ系顔料及びジケトピロロピロール系顔料等の有機顔料;金属錯体顔料などが挙げられる。また染料としては主として油溶性染料のグループから選ばれる1種または2種を使用することが好ましい。
基材層に配合される着色剤の添加量は、着色剤の種類や目的とするシートの厚みや色調により異なるが、色相や下地色の隠蔽性を確保し、かつ衝撃強度を維持するために、着色層を構成する樹脂に対して0.1〜20質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%の範囲である。20質量%を超えて着色剤を添加すると、衝撃強度が低下し、着色剤の添加量が0.1%未満であると色相や下地色の隠蔽性が十分でない傾向にある。
【0047】
(インキ保護層)
前記インキ層(C)が高輝性インキを使用している場合は、前記インキ層(C)と前記透明又は半透明の熱可塑性樹脂層(B)との間に、耐熱性、耐溶剤性、意匠性、耐候性等を向上させる目的でインキ保護層を一層以上設けても良い。中でも、耐インキ溶剤性、成形時の耐熱性が良好であることから、熱硬化性組成物からなる架橋層からなるインキ保護層が好ましい
インキ保護層に使用できる樹脂の種類については、展延性を阻害しない限り特に制限はないが、架橋密度の調整の容易さ、耐候性、透明熱可塑性フィルムとの接着性などの点から、アクリル系樹脂が好ましい。架橋機構についても特に制限はなく、アクリル系樹脂の場合、UV硬化、EB硬化、水酸基含有ビニル共重合体/イソシアネート硬化、シラノール/水硬化、エポキシ/アミン硬化などが使用できるが、架橋密度の調整の容易さ、耐候性、反応速度、反応副生物の有無、製造コストなどの点から、水酸基含有ビニル共重合体/イソシアネート硬化が好ましい。
また、インキ保護層は、意匠性を付与するために着色層とすることもできる。その場合の着色剤の添加量は、着色剤の種類及び目的とする色調や保護層の厚みにより異なるが、鏡面状金属光沢を有するインキ層を隠蔽しないように保護層の全光線透過率は20%以上であることが好ましく、特に全光線透過率が40%以上であることがより好ましい。
【0048】
該着色剤としては、顔料が好ましい。用いる顔料は特に限定されず、着色顔料、メタリック顔料、干渉色顔料、蛍光顔料、体質顔料および防錆顔料などの公知慣用の顔料を使用することができる。
【0049】
着色顔料としては、例えば、キナクリドンレッド等のキナクリドン系、ピグメントレッド等のアゾ系、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンおよびペリレンレッド等のフタロシアニン系等の有機顔料;酸化チタンやカーボンブラック等の無機顔料が挙げられ、メタリック顔料としては、例えば、アルミニウム粉、ニッケル粉、銅粉、真鍮粉およびクロム粉等が挙げられる。
【0050】
干渉色顔料としては、真珠光沢状のパールマイカ粉や真珠光沢状の着色パールマイカ粉等を挙げられ、蛍光顔料としては、キナクリドン系、アンスラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、モノアゾ系、不溶性アゾ系、ナフトール系、フラバンスロン系、アンスラピリミジン系、キノフタロン系、ピランスロン系、ピラゾロン系、チオインジゴ系、アンスアンスロン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系およびインダンスロン系等の有機顔料や、ニッケルジオキシンイエローや銅アゾメチンイエロー等の金属錯体や、酸化チタン、酸化鉄および酸化亜鉛等の金属酸化物や、硫酸バリウムや炭酸カルシウム等の金属塩や、カーボンブラック、アルミニウムおよび雲母等の無機顔料が挙げられる。
【0051】
(加飾用積層シートの製造方法)
本発明の加飾用積層シートは、前記支持基材層(D)上に、インキ層(C)、透明又は半透明の熱可塑性樹脂層(B)、表面層(A)を順次積層して得る。前記支持基材層(D)とインキ層(C)との間には、接着剤層又は粘着剤層を設けるのが好ましい。接着剤又は粘着剤は、ドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、ホットメルトラミネーション法等で積層シートにすることが出来る。
【0052】
接着剤を構成する成分は、慣用のフェノール樹脂系接着剤、レゾルシノール樹脂系接着剤、フェノール−レゾルシノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤およびポリアロマチック系接着剤等の熱硬化性樹脂接着剤やエチレン不飽和カルボン酸等を用いた反応型接着剤、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、塩化ビニル、ナイロン及びシアノアクリレート樹脂等の熱可塑性樹脂系接着剤やクロロプレン系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、SBR系接着剤及び天然ゴム系接着剤等のゴム系接着剤等が挙げられる。特にアクリル樹脂とポリプロピレン系樹脂の接着性が良好でありかつ真空成形時の伸びの追随性が良好なことから、アクリルウレタン系の接着剤が好ましい。
また、粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、ポリアルキルシリコン系、ウレタン系、ポリエステル系等が好ましく用いられる。
【0053】
これらの塗工は、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーター、コンマコーター等を用いることが出来る。
【0054】
接着剤又は粘着剤の塗布量は、0.1〜30g/mの範囲が好ましく、特に好ましくは2〜10g/mである。2g/mより少なすぎると接着力が弱くなり、10g/mより多すぎると乾燥性が低下し外観不良となり易い。接着剤層の厚さとしては、0.1〜30μmの範囲が好ましく、より好ましくは、1〜20μm、特に好ましくは、2〜10μmである。
【0055】
また、支持基材層の接着面は、接着材との親和性を向上させる目的で、プラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理、電子線照射処理、粗面化処理、オゾン処理、等の表面処理、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のドライプレーティング処理が施されても良い。
【0056】
インキ層(C)、透明又は半透明の熱可塑性樹脂層(B)、表面層(A)の積層方法は、公知の印刷又は塗工方法で行えばよく、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷方法、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーター、キスタッチリバースコーター及びコンマコーター、コンマリバースコーター、マイクログラビアコーター等の塗工方法を用いることが出来る。
【0057】
(被覆成型品の製造方法)
本発明の加飾用積層シートは、各種成形法の表面層として用いることが出来る。具体的には、金型表面に本発明の加飾用積層シートを密着させた後、金型に成形用樹脂を供給して被覆成形品を製造する。
例えば、プリフォーム成形(真空成形とマッチモールド成形)後、インサート成形する場合は、雄型金型のみ使用の場合はクリアー硬化層が金型と反対面、支持基材層が金型面となるように設置後、雌型金型のみ使用の場合は雄型と逆でクリア硬化層が金型面、支持基材層が金型と反対面となるように設置後、雄型と雌型の両方使用の場合は支持基材層(D)を金型面に配置後、熱成形により三次元形状を有する成形体とする。このときの熱成形時の温度、即ち、金型表面に前記加飾用積層シートを密着させる際のシート温度は100℃以上であることが好ましく、2級水酸基とイソシアネート基とを一気に反応させることができる。
次に、射出成形金型内の雌型側にインサートし、射出樹脂と一体化するインサート射出成形法で成形することが出来る。
【0058】
(真空成形)
真空成形法で使用する金型は、特に制限はないが雄型金型のみ使用、雌型金型のみ使用、雄型金型と雌型金型の両方を使用することができ、使用目的に応じて金型を使い分けることが出来る。この成形法は雄型金型を使用する場合で説明すると、熱風、電気ヒーター、遠赤外線セラミックヒーター等を用いた加熱ゾーンで加熱されたシートを雄型とマッチングさせ、金型と加熱されたシートを密着させるため金型の真空口から真空吸引を行って成形を行うことを特徴とする。比較的高温で本成形を行うことにより、3次元立体成形で深絞り性に優れた鏡面状金属光沢を保持した成形体が成形可能である。
真空成形の設定条件は、成形体の型再現性が良好となるものであれば特に制限されるものでは無いが遠赤外線ヒーターを用いた場合、ヒーター温度で200〜500℃、間接加熱時間5〜30秒程度で加熱を行い、シート温度が100℃以上となるようにする。また、金型温度は、成形体の外観や収縮度合いを確認しながら決める必要があるが、シート加熱温度領域ではシートの剛性が低くなりシートが伸び易い状況にあるので、通常20〜120℃、真空・冷却時間は5〜100秒が好ましい。
【0059】
(マッチモールド成形)
マッチモールド成形は、加熱ゾーンで加熱されたシートを挟むようにして雌型と雄型をマッチングさせることにより成形を行う。ここで用いられる金型には通常金型内の空気の逃げ道としての真空口が設けられているが、この穴を用いて補助的に真空吸引を行っても構わない。低温で本マッチモールド成形を行うことにより、成形前のシートと同様の輝度の高い鏡面状金属光沢を維持した成形体が成形可能である。
【0060】
マッチモールド成形の設定条件は、通常遠赤外線ヒーターを用いた場合、ヒーター温度で200〜500℃、間接加熱時間5〜30秒程度とし加熱を行う。加熱されるシートは、通常、シート温度が100℃以上となるようにする。インキ層(C)として高輝度インキを使用する場合は、輝度の高い鏡面性金属光沢を保持した成形体が得られるよう、熱可塑性樹脂層(B)のJISK7121に示されるプラスチックの転移温度測定法で測定されるガラス転移温度+20℃となることが好ましく、より好ましくは該ガラス転移温度+10℃である。また、成形体の型再現性が良好になることから、加熱されるシートの下限温度は該ガラス転移温度−15℃以上が好ましく、より好ましくは該ガラス転移温度以上である。この温度領域ではシートの剛性が高くシートが伸び難いため、強いクランプ力で金型内にシートが引きずり込まれ無いように注意する必要がある。金型温度は成形体の外観や収縮度合いを確認しながら決める必要があり20〜120℃が好ましく、マッチモールド金型による冷却時間は5〜600秒が好ましい。
【0061】
(インサート成形)
インサート成形は、得られたプリフォーム成形体をそのクリアー硬化層側が雌型金型面に接するように金型内に配置し、プリフォーム成形体の支持基材層面に基材層と接着性のある熱可塑性樹脂を射出成形することにより一体成形する。射出樹脂の樹脂温度は特に制限されるものではないが、ポリプロピレン系樹脂、ABS系樹脂等の熱可塑性樹脂であれば、射出可能な180〜250℃程度が好ましい。金型温度は雄型、雌型共に20〜80℃程度が好ましいが、射出成形体に反り等が発生する場合は雄型金型及び雌型金型に温度勾配を付け、修正をすることが出来る。
【0062】
(鏡面状金属光沢及び光沢保持率)
本発明の加飾用積層シートは、成形前の熱成形用積層シートの光沢値を高いレベルで保持することができる。成形前の熱成形用積層シートの光沢値に対する成形後の成形体を上記方法で測定した光沢値の割合(%)を光沢値保持率と定義すると、本発明の成形方法では好ましくは60%以上の光沢値保持率を得ることができる。更に好ましくは80%以上を得ることができる。
【実施例】
【0063】
以下に具体例をもって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例及び比較例における物性評価は下記の測定法または試験法にて行った。また、実施例中の「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
【0064】
(成形前の加飾用積層シートの光沢値評価法)
成形前の加飾用積層シートの光沢値は、JIS−K7105に準拠し、入射角20°、受光角20°とした、20°グロス測定法で求めた。尚、光沢計は日本電色社製VGS−300Aを使用した。
【0065】
(成形体の輝度 光沢値評価法)
加飾用積層シートのクリアー硬化層を表面とした成形体の輝度は、マッチモールド成形法で成形した台形状成形体の天面の20°グロスをJIS−K7105に準拠した測定法で光沢値として求め、以下の通り判定した。
該評価で使用した台形状金型は、雌型金型が間口120×90mm、底部66×51.7mm、深さ25mmであり、雄型金型が間口120.3×90.5mm、底部66.6×52.3mm、深さ25mmであり、マッチモールド成形時は雄雌の両金型を用い成形を行った。加飾用積層シートは、雌型金型面にクリアー硬化層が接するように配置した。得られた台形状成形体のクリアー硬化層側の凸面を天面とし評価を行った。天面の展開率は約110%であった。なお、ここでいう展開率は、元の面積に比して全体の面積が1.5倍になった場合を150%として表した。また光沢保持率は、成形前の加飾用積層シートの光沢値に対する成形後の成形体を上記方法で測定した光沢値を下記の式で算出した割合(%)とする。
【0066】
◎:成形前の加飾用積層シートの光沢値に対して80%以上の光沢保持率を持つもの。
○:成形前の加飾用積層シートの光沢値に対して60%以上の光沢保持率を持つもの。
×:成形前の加飾用積層シートの光沢値に対して60%未満の光沢保持率のもの。
【0067】
【数2】

【0068】
(加飾用積層シートの最大展開率評価法)
加飾用積層シートの最大展開率は、加飾用積層シートを真空成形法で成形し、その面倍率を展開率として測定した。真空成形機は株式会社ハーミス社製小型真空成形機「FE38PH」を用いた。
加飾用積層シート表側のクリアー硬化層面をヒーターで加熱し、ヒーター退避後、加熱反対側から四角形箱形状の雌型金型を上昇させ、該シートに押しつけて真空引きし該シートの支持基材層側の面を金型面に密着させて冷却固化後、成形体を作製した。
次の様なサイズの雌型の金型(四角体形状)を用いて、成形体底面中央の表面層(A)にヒビ割れや剥離が無い場合の展開率を、それぞれ150%、200%、250%、300%として表した。
【0069】
展開率 入口サイズ 深さ 底面サイズ
150% 161×154mm40mm 125×120mm
200% 166×159 55 125×120
250% 166×159 70 125×120
300% 169×163 75 125×120
【0070】
なお、展開率は、元の面積に比して全体の面積が2倍になった場合を200%として表した。(例えば、厚さ100の成形体が成形後の厚さ50となった場合、成形後の成形体面積は2倍→面倍率200%(厚さ測定部分)となる。)
【0071】
【数3】

【0072】
◎:展開倍率が300%以上でトップコート層にヒビ割れや剥離が無いもの。
○:展開倍率が250%以上でトップコート層にヒビ割れや剥離が無いもの。
△:展開倍率が200%以上でトップコート層にヒビ割れや剥離が無いもの。
×:展開倍率が150%以上でトップコート層にヒビ割れや剥離が無いもの。
××:展開倍率が150%未満のもの。
【0073】
(耐擦傷性)
前記「成形体の輝度評価」と同様に作製した成形体から、長さ5cm、幅2cmに切り出した試験片の表面層(A)側を、耐摩擦・摩耗試験機で、荷重500gで300回摩擦後(#0000スチールウール)、脱脂綿で表面層(A)の汚れを拭き取り、光沢値(20度グロス)を測定して、試験前後での光沢保持率を求めた。光沢保持率より耐擦傷性を判断した。
【0074】
◎:光沢保持率が95%以上で、光沢が有り傷がほとんど目立たない
○:光沢保持率が95%未満から85%以上で、やや光沢が低下し傷が少し認められる
△:光沢保持率が85%未満から75以上で、光沢が低下し傷が目立つ
×:光沢保持率が75%未満で、光沢が著しく低下し多数の傷が目立つ
光沢保持率(%)=(試験後の成形体の光沢値/試験前の加飾用積層シートの光沢値)×100
【0075】
(耐溶剤性)
ラビングテスター(大平理化工業株式会社製)を用いて、前記「成形体の輝度評価」と同様に作製した成形体から長さ5cm、幅5cmに切り出した試験片を、表面層(A)側にキシレンを脱脂綿に十分に染み込ませてから載せ、その上を試験機端子で押さえ、1kgの荷重をかけて10往復した後、表面層(A)を目視評価し、以下の通り判定した。
【0076】
○:表面層(A)の光沢変化がない
△:表面層(A)の光沢低下と傷付有り
×:表面層(A)の光沢低下が著しく、傷付きが目立つ
【0077】
(耐酸性)
前記「成形体の輝度評価」と同様に作製した成形体から長さ5cm、幅5cmに切り出した試験片の表面層(A)表面に5%硫酸水溶液0.4mlをスポット状に滴下し、熱風乾燥機にて80℃で30分間加熱した後、水洗、乾燥させて、表面層(A)表面を目視評価し、以下の通り判定した。
○:表面層(A)に変化がない
△:表面層(A)にスポット跡が少し認められる
×:表面層(A)にスポット跡、シミ、白化、フクレ等の変化が認められる
【0078】
(密着性)
前記「成形体の輝度評価」と同様に作製した成形体から平らな部分を適宜切り出し、試験片とした。碁盤目テープ剥離法(JIS K5400) に準じて試験を行った。試験後、表面層(A)の升目の中で欠落した目の数を数え、以下の通り判定した。
【0079】
○:表面層(A)の升目に欠落が全く認められない
△:表面層(A)の升目の欠落の数が10%未満認められる
×:表面層(A)の升目の欠落の数が10%以上認められる
【0080】
(シートの表面層(A)の反応率)
反応率は、表面層(A)用の樹脂組成物を、厚さ25μmPETフィルムにバーコーター#30を用いて塗布し60℃乾燥器に1分間入れて乾燥させて、後述の実施例の表1,2に記載されたクリアー硬化層の硬化条件で硬化させたフィルム(F1)と、樹脂組成物を完全硬化(110℃/2時間加熱処理)させた補正用フィルム(F2)の2種類を作製した。
FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて透過法又はATR法でイソシアネート官能基の硬化前後のIRスペクトルの吸光度ピーク高さを測定し、次式から反応率を求めた。
【0081】
【数4】

【0082】
(但し、上記式中、「硬化前試験用吸光度ピーク高さ」とは、表面層(A)用樹脂組成物を塗布し溶剤乾燥させた状態での吸光度のピーク高さを表し、「完全硬化後補正用吸光度ピーク高さ」とは、補正用フィルム(F2)の吸光度のピーク高さを表し、「硬化後試験用吸光度ピーク高さ」とは、フィルム(F1)の吸光度のピーク高さを表す。
【0083】
(加飾用積層シートの作製)
製造例1〜4 表面層(A)の成分である熱可塑性樹脂の製造例である。
製造例5〜8 表面層(A)の成分の比較となる熱可塑性樹脂の製造例である。
数平均分子量:GPC測定結果のポリスチレン換算値を示す。
不揮発分:アルミ皿に試料1gを精秤し、トルエンにて薄く均一に拡げた後風乾し、更に108℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥し、乾燥前後の重量から求めた。
水酸基価は、水酸基含有モノマーの仕込み組成からKOH中和量として算出した。表面層(A)のTgはDSC法で測定し、酸価は0.05mol/リットル水酸化カリウム−トルエン溶液滴定法により測定した。
【0084】
(製造例1)2級水酸基が100モル%で酸価が0.1以下の樹脂(A−1)の合成
温度調節器、窒素導入管、滴下装置(2基)、撹拌装置を備え付けた3L反応容器に、酢酸エチル400部を仕込み、窒素置換後、75℃に昇温した。別途、メタクリル酸メチル446部、メタクリル酸n−ブチル164.5部、 メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル89.6部(2級水酸基が100モル%)をよく混合した溶液(以下、モノマー溶液と称する)と酢酸エチル70部、パーブチルO(商品名、日本油脂株式会社製)3部、ABN−V(商品名、日本ヒドラジン工業社製)3部、ABN−E(商品名、日本ヒドラジン工業社製)3部をよく混合した溶液(以下、触媒溶液と称する)、それぞれを滴下装置に仕込み、直ちに窒素置換した。
窒素雰囲気下で反応容器内に前述のモノマー溶液と触媒溶液をそれぞれ4時間かけて滴下仕込した。仕込中、急激な反応温度の上昇がないようにモノマー溶液と触媒溶液の滴下速度を調整した。滴下終了後、約2時間撹拌ホールドし、酢酸エチル233部を仕込んだ。仕込後、更に、10時間攪拌ホールドを行い反応を終了し、不揮発分50%の樹脂(A−1)を得た。得られた樹脂の固形分は、数平均分子量が18,600、水酸基当量が50、酸価が0.1以下、計算Tgが70℃であった。
【0085】
(製造例2)2級水酸基が70モル%で酸価が0.6の樹脂(A−2)の合成
使用する溶剤がメチルイソブチルケトン(MIBK)、モノマー溶液がメタクリル酸メチル494.7部、メタクリル酸2−エチルヘキシル117部、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル63部(2級水酸基が70モル%) メタクリル酸2−ヒドロキシエチル24.5部(1級水酸基が30モル%)、メタクリル酸0.7部を使用する以外は、製造例1と同様にして製造した。反応物の性状は、不揮発分50%の樹脂(A−2)を得た。得られた樹脂の固形分では、数平均分子量が20,500、水酸基当量が50、酸価が0.6、計算Tgが70℃であった。
【0086】
(製造例3)2級水酸基が100モル%で酸価が0.6の樹脂(A−3)の合成
使用する溶剤が酢酸ブチル、モノマー溶液がメタクリル酸メチル470.4部、メタクリル酸ターシャリーブチル85.4部、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル143.5部(2級水酸基が100モル%) メタクリル酸0.7部を使用し、反応温度を85℃にする以外は、製造例1と同様にして製造した。反応物の性状は、不揮発分50%の樹脂(A−3)を得た。得られた樹脂の固形分では、数平均分子量が15,200、水酸基当量が80、酸価が0.6、計算Tgが85℃であった。
【0087】
(製造例4)2級水酸基が100モル%で酸価が0.6の樹脂(A−4)の合成
使用する溶剤が酢酸ブチル、モノマー溶液がメタクリル酸メチル331部、メタクリル酸2−エチルヘキシル278.5部、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル89.6部(2級水酸基が100モル%) メタクリル酸0.7部を使用し、反応温度を85℃にする以外は、製造例1と同様にして製造した。反応物の性状は、不揮発分50%の樹脂(A−4)を得た。得られた樹脂の固形分では、数平均分子量が21,000、水酸基当量が50、酸価が0.6、計算Tgが40℃であった。
【0088】
(製造例5)2級水酸基が0モル%で酸価が0.1以下の樹脂(A−5)の合成
モノマー溶液がメタクリル酸メチル410.6部、メタクリル酸nブチル204.7部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル81.2部(1級水酸基が100モル%) を使用する以外は、製造例1と同様にして製造した。反応物の性状は、不揮発分50%の樹脂(A−5)を得た。得られた樹脂の固形分では、数平均分子量が21,800、水酸基当量が50、酸価が0.1以下、計算Tgが70℃であった。
【0089】
(製造例6)2級水酸基が30モル%で酸価が3.2の樹脂(A−6)の合成
使用する溶剤が酢酸ブチル、モノマー溶液がメタクリル酸メチル488.3部、メタクリル酸2−エチルヘキシル127.7部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル56.7部(1級水酸基が70モル%) メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル26.6部(2級水酸基が30モル%) メタクリル酸3.5部を使用し、反応温度を85℃にする以外は、製造例1と同様にして製造した。反応物の性状は、不揮発分50%の樹脂(A−6)を得た。得られた樹脂の固形分では、数平均分子量が16,200、水酸基当量が50、酸価が3.2、計算Tgが70℃であった。
【0090】
(製造例7)2級水酸基が0モル%で酸価が6.6の樹脂(A−7)の合成
使用する溶剤が酢酸ブチル、モノマー溶液がメタクリル酸メチル462部、メタクリル酸ターシャリーブチル103.4部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル128部(1級水酸基が100モル%) メタクリル酸6.6部を使用し、反応温度を80℃にする以外は、製造例1と同様にして製造した。反応物の性状は、不揮発分50%の樹脂(A−7)を得た。得られた樹脂の固形分では、数平均分子量が20,200、水酸基当量が80、酸価が6.6、計算Tgが95℃であった。
【0091】
(製造例8)2級水酸基が0モル%で酸価が3.2の樹脂(A−8)の合成
モノマー溶液がメタクリル酸メチル279部、メタクリル酸2−エチルヘキシル288部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル129.5部(1級水酸基が100モル%) メタクリル酸3.5部を使用した以外は、製造例1と同様にして製造した。反応物の性状は、不揮発分50%の樹脂(A−8)を得た。得られた樹脂の固形分では、数平均分子量が22,500、水酸基当量が80、酸価が3.2、計算Tgが40℃であった。
【0092】
(実施例1〜6、比較例1〜7)
(表面層(A)用組成物)
前記製造例1〜8で得た樹脂組成物(A−1)〜(A−8)を使用し表面層(A)用組成物を調製した。各々の成分は表1及び2に記載した。
【0093】
(熱可塑性樹脂(B))
熱可塑性樹脂(B)として透明で表面光沢値が140%、鉛筆硬度H、Tg104℃(JISK7121)、厚さ125μmのゴム変性PMMAフィルム(B−1)を使用した。
【0094】
(インキ層(C)用インキ)
(インキ用アルミニウム薄膜細片)
ニトロセルロース(HIG7)を、酢酸エチル:イソプロピルアルコール=6:4の混合溶剤に溶解して6%溶液とした。該溶液を、スクリーン線数175線/インチ、セル深度25μmのグラビア版でポリエステルフィルム上に塗布して剥離層を形成した。十分乾燥した後、剥離層上に厚さが0.04μmとなるようにアルミニウムを蒸着し、蒸着膜面に、剥離層に使用したものと同じニトロセルロース溶液を、剥離層の場合と同じ条件で塗布し、トップコート層を形成した。
上記蒸着フィルムを、酢酸エチル:イソプロピルアルコール=6:4の混合溶剤中に浸積してポリエステルフィルムからアルミニウム蒸着膜を剥離したのち、大きさが約150μmとなるよう攪拌機でアルミニウム蒸着膜を粉砕し、アルミニウム薄膜細片を調製した。
【0095】
(インキ用アルミニウム薄膜細片スラリー)
アルミニウム薄膜細片 10部
酢酸エチル 35部
メチルエチルケトン 30部
イソプロピルアルコール 30部
上記を混合し、撹拌しながら、下記組成のニトロセルロース溶液5部を加えた。
ニトロセルロース(HIG1/4) 25%
酢酸エチル:イソプロピルアルコール=6:4混合溶剤 75%
上記混合物を、温度を35℃以下に保ちながら、ターボミキサーを使用して、アルミニウム薄膜細片の大きさが5〜25μmになるまで攪拌し、アルミニウム薄膜細片スラリー(不揮発分10%)を調製した。
【0096】
(インキ調製)
アルミニウム薄膜細片スラリー(不揮発分10%) 30部
結着樹脂 カルボン酸含有塩ビ−酢ビ樹脂 3部
(UCC社製「ビニライト VMCH」)
カルボン酸含有ウレタン樹脂 7部
(大日本インキ化学製「タイホフォースNT810−45」不揮発分45%)
酢酸エチル 23部
メチルエチルケトン 26部
イソプロパノール 10部
上記を混合し、不揮発分中のアルミニウム薄膜細片濃度35質量%であるインキ(C−1)を調製した。
【0097】
(インキ保護層用熱硬化性樹脂溶液の調整)
温度調節器、窒素導入管、滴下装置(2基)、撹拌装置を備え付けた反応容器に酢酸ブチル850部、パーブチルZ(商品名、日本油脂株式会社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)1部を仕込み、窒素置換後、110℃まで1.5時間かけて昇温した。
別途、メタクリル酸メチル660部、メタクリル酸ターシャリーブチル148部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル183部、メタクリル酸4.5部をよく混合した溶液のモノマー溶液と、酢酸イソブチル200部、パーブチルO(商品名、日本油脂株式会社製、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)9部、パーブチルZ(商品名、日本油脂株式会社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)2部をよく混合した溶液の触媒溶液とを、それぞれを滴下装置に仕込み、直ちに窒素置換した。
窒素雰囲気下で反応容器内に前述のモノマー溶液と触媒溶液を反応温度の急激な上昇がないように仕込速度を調整しつつ、5時間かけて滴下した。滴下終了後、約15時間攪拌を続けた結果、不揮発分60%の樹脂組成物を得た。得られた樹脂の固形分では、数平均分子量が500,000、水酸基価が79KOHmg/g、酸価が3.59KOHmg/g、計算Tgが95℃であった。
【0098】
上述の水酸基含有ビニル共重合体の水酸基の当量数と、ポリイソシアネート化合物「URNOCK DN−981(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製、イソシアヌレート環含有ポリイソシアネート、数平均分子量約1000、不揮発分75%(溶剤:酢酸エチル(EtAc)、官能基数3、NCO濃度13.7%))のイソシアネート基の当量数が0.8〜1.2:を0.8〜1.2となる割合で配合、混合し、インキ保護層用熱硬化性樹脂溶液(P−1)を調製した。
【0099】
(接着剤)
二液型のポリエステルウレタン系接着剤(大日本インキ化学工業株式会社製「LX−630PX」とその硬化剤「KR−90」の二液混合型接着剤)を42:1の重量割合で混合し接着剤を調整した。
【0100】
(支持基材層(D))
支持基材層として住友化学社製ランダムPP(ノーブレンFS3611)を押出機ホッパーより投入し、加工温度200℃にてTダイから押出成形し、40℃に加熱されたキャストロールを通した後、巻き取り、無延伸原反シート(D−1)を製造した。
【0101】
(実施例1〜6、及び比較例1〜7)
(加飾用積層シートの作成方法)
熱可塑性樹脂(B−1)フィルムに前記表面層(A)用組成物(A−1)〜(A−8)をマイクログラビアコーターを使用して乾燥膜厚15.0μmとなるように塗布、乾燥後、前記表1及び2に記載の硬化条件に従って熱風乾燥器にて半硬化処理を行い、表面層(A)を得た。
次に、表面層(A)を有する面と反対面の熱可塑性樹脂(B−1)フィルムにインキ保護層となる熱硬化性樹脂溶液(P−1)を乾燥膜厚2μmとなるように塗工し乾燥させた。塗工後、50℃で4日間、熱風乾燥器に入れて硬化させ、インキ保護層を得た。
インキ保護層上に、前記インキ層(C)用インキ(C−1)をグラビアコーターを使用して乾燥膜厚1μmとなるように塗工した。
支持基材層(D−1)の接着面にコロナ処理を行い、接着剤をバーコーター#20番を用いて塗工した。40℃に設定したゴムロールラミ装置を用いてインキ層(C−1)と支持基材層(D−1)と張り合わせ、直ちに、50℃3日間、熱風乾燥器にいれて接着剤の硬化処理を行った。
本発明においては、表面層(A)/熱可塑性樹脂(B)フィルム/インキ保護層/インキ層(C)/接着剤層/支持基材層(D)の、厚さ約430μmの加飾用積層シートを作製した。
【0102】
(マッチモールド成形)
得られた加飾用積層シートを、株式会社ハーミス社製FE38PHの小型真空成形機を用いてクランプ後、シートを両面より間接加熱し、ヒーターが退避したのち、雌金型を上昇後、雄金型を下降させ、マッチモールド成形法により成形体を作製した。下面のヒーター温度は270℃、上面のヒーター温度は230℃とし、シートを加熱後成形した。
【0103】
(真空成形)
加飾用積層シートを株式会社ハーミス社製FE38PHの小型真空成形機を用いて、クランプ後、シートを両面より間接加熱し、ヒーターが退避したのち、雌金型を上昇させ真空成形法により成形体を作製した。加熱時間は20秒間、シート温度は160℃±3℃、ヒーター温度は370℃、シート・ヒーター間距離は130mm、金型温度は40±3℃、真空・冷却時間は8秒間であった。
【0104】
(インサート成形)
マッチモールド成形で得られた成形体の表面層(A)側の天面を、射出成形用金型の雌型に接触するように密着させ金型温度40℃で加熱後、200℃に加熱したノバテック社製PP樹脂(商品名「TX1868H5」)からなる溶融樹脂を金型内に射出して一体成形し、表層に加飾用積層シートを供する射出成形体を作成した。なお、射出成形機は住友重機械工業株式会社の住友ネスタール射出成形機プロマット80/40、金型は2段プレート成形体が取れる65mm×40mm×厚さ3mmと1.5mm(厚さが3mmと1.5mmの2段の階段状プレート)のものを用いた。
インサート成形時のシート温度は、射出樹脂と同じ約200℃であった。尚、シートの温度は、金型表面とシートとの間に熱電対温度計を取り付けて、射出成形時の温度を測定した。
【0105】
光沢値はマッチモールド成形法で得た成形体について、最大展開率は真空成形法で得た成形体についてそれぞれ評価した。耐擦傷性、耐溶剤性、耐酸性、密着性などの物性は、真空成形法で得られた150%と250%展開率の成形済み加飾用積層シートの底面部分を使用してインサート成形体を作成し、それについて評価した。
評価結果を表1及び表2に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
*1 硬化剤:BURNOCK DN−981(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製、イソシアヌレート環含有ポリイソシアネート、数平均分子量1000、不揮発分75%(溶剤:酢酸エチル)、イソシアネート(NCO)官能基濃度は13.7%である。
*2 (1%ジブチルチンジラウレート酢酸ブチル液)
*3 NCO/OH当量比:硬化剤のイソシアネート基量と熱可塑性樹脂の当量比
【0108】
【表2】

【0109】
*1 硬化剤:BURNOCK DN−981(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製、イソシアヌレート環含有ポリイソシアネート、数平均分子量1000、不揮発分75%(溶剤:酢酸エチル)、イソシアネート(NCO)官能基濃度は13.7%である。
*2 (1%ジブチルチンジラウレート酢酸ブチル液)
*3 NCO/OH当量比:硬化剤のイソシアネート基量と熱可塑性樹脂の当量比
*4 ブロックイソシアネート:タケネート B−815N(商品名、武田薬品工業株式会社製、水添ジフェニルメタンジイソシアネートのケトオキシムブロック体)、イソシアネート)(NCO)官能基濃度は7.3%である。
【0110】
比較例1は、イソシアネート反応率が20%に満たなかった例であるが、成形中の表面層の硬化が不十分であり、耐擦傷性や光沢が低下してしまった。
比較例2は、2級水酸基がない例であるが、耐擦傷性に劣った。比較例3〜6は、2級水酸基がない又は少なく、酸価が多すぎる例であるが、全て最大展開率が低く、割れが発生してしまった。
ブロックイソシアネートを使用した比較例7は、光沢値が下がってしまった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層(A)と、透明又は半透明の熱可塑性樹脂層(B)と、インキ層(C)と、支持基材層(D)とが、この順に積層された加飾用積層シートであって、前記表面層(A)は、2級水酸基を含有し酸価が1.0(KOHmg/g)以下でありガラス転移温度が30〜100℃の熱可塑性樹脂と、ポリイソシアネート化合物とを含有し、イソシアネート反応率20〜80%の範囲で半硬化させた層であることを特徴とする加飾用積層シート。
【請求項2】
前記表面層(A)の熱可塑性樹脂が、酸価が1.0(KOHmg/g)以下、水酸基価が30〜120(KOHmg/g)、且つ水酸基中の2級水酸基の割合が50〜100モル%であり数平均分子量が5000〜50000であるビニル共重合体である請求項1記載の加飾用積層シート。
【請求項3】
前記インキ層(C)が、金属薄膜細片を含有する鏡面状金属光沢インキ層である、請求項1記載の加飾用積層シート。
【請求項4】
金型表面に請求項1に記載の加飾用積層シートを密着させた後、金型に成形用樹脂を供給して被覆成形品を製造する方法であって、金型表面に前記加飾用積層シートを密着させる際のシート温度が100℃以上であることを特徴とする、被覆成形品の製造方法。







【公開番号】特開2006−289818(P2006−289818A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114448(P2005−114448)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】