説明

効率的診断のための解剖構造に関係した画像コンテキスト依存のアプリケーション

本発明は、セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得るシステムであって:ディスプレイ上に前記セグメント化された体積医療画像データのビューを表示するディスプレイ・ユニット(110)と;表示されたビュー上で位置を指示するための指示ユニット(115)と;イベントをトリガーするトリガー・ユニット(120)と;トリガーされたイベントに応答して、表示されたビュー上の指示された位置に基づいて、前記セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定する特定ユニット(125)と;特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行し、それにより前記セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得るための実行ユニット(130)とを有するシステムに関する。実行ユニット(130)によって実行される動作は、セグメント化された解剖学的構造の名前、セグメント化された解剖学的構造の短い説明、セグメント化された解剖学的構造の潜在的な形態異常または機能異常についての示唆を表示することであってもよい。こうして、システム(100)は、ディスプレイ上で医師によって閲覧される、前記体積医療画像データに関係する貴重な情報を得ることを許容し、それにより医療診断において医師を支援する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断において医師を支援する分野に、より詳細には医療画像データに含まれる解剖学的構造に関連した情報を得ることに関する。
【背景技術】
【0002】
解剖学的構造に関連した情報を得る方法が特許文献1に記載されている。この文献では、ディスプレイ上に人体の画像を表示するシステムが記載されている。ユーザーは標準的な仕方で、たとえばマウスを使って関心のある身体部分を選択しうる。ユーザーが身体部分を選択するのに応答して、選択された身体部分の物理的な側面に関連する、徴候および医学的条件を含む情報が与えられる。人体の画像は様式化された(stylized)画像または写真画像でありうる。しかしながら、特許文献1に記載された情報を得ることは、実際の人間の体積データをナビゲートすることは含まない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US2005/0039127、「生体の一部に関連する情報の電子的ナビゲーション(Electronic Navigation of Information Associated with Parts of a Living Body)」
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H・デランジェット(Delingette)、「単体メッシュに基づく一般的なオブジェクト再構成(General Object Reconstruction based on Simplex Meshes)」、インターナショナル・ジャーナル・オブ・コンピュータ・ビジョン(International Journal of Computer Vision)、第32巻、第11‐142頁、1999年
【非特許文献2】C・A・ココスコ(Cocosco)ら、「全自動かつ堅牢な脳MRI組織分類法(A Fully Automatic and Robust Brain MRI Tissue Classification Method)」、「医療画像解析(Medical Image Analysis)」、第7巻、第513‐527頁、2003年
【非特許文献3】バルトルド・リヒテンベルト(Barthold Lichtenbelt)、ランディ・クレーン(Randy Crane)およびシャズ・ナカヴィ(Shaz Naqvi)、「体積レンダリング入門(Introduction to Volume Rendering)」、ヒューレット・パッカード・プロフェッショナル・ブックス(Hewlett-Packard Professional Books)、プレンティス・ホール(Prentice Hall);書籍&CD-ROM版、1998年
【非特許文献4】T・ハー(He)ら、「統計的探索手法を用いた伝達関数の生成(Generation of Transfer Functions with Stochastic Search Techniques)」、「IEEE視覚化紀要(Proceedings of IEEE Visualization)」、第227‐234頁、1996年
【非特許文献5】J・アラキジャラ(Alakijala)ら、「テクスチャー・マッピング、レイ・キャスティングおよびスプラッティングによるデジタル放射線写真の再構成(Reconstructing of digital radiographs by texture mapping, ray casting and splatting)」、「医療および生物学におけるエンジニアリング(Engineering in Medicine and Biology)」、1996年、生物医学のための学問分野の橋渡し(Bridging Disciplines for Biomedicine)、第18回IEEE年次国際会議集録、第2巻、第643‐645頁、1996年
【非特許文献6】D・R・ナドー(Nadeau)、「体積シーン・グラフ(Volume scene graphs)」、「体積可視化に関するIEEEシンポジウム集録(Proceedings of the IEEE Symposium on Volume Visualization)」、第49‐56頁、2000年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
体積医療画像データ(volumetric medical image data)に含まれる解剖学的構造(anatomical structure)に関連した情報を得るために体積医療画像データをナビゲートできるシステムをもつことが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題によりよく対処するため、本発明のある側面では、セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得るシステムは:
・ディスプレイ上にセグメント化された体積医療画像データのビューを表示するディスプレイ・ユニットと;
・表示されたビュー上である位置を指示するための指示(indication)ユニットと;
・イベントをトリガーするトリガー・ユニットと;
・トリガーされたイベントに応答して、表示されたビュー上の指示された位置に基づいて、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定する特定(identification)ユニットと;
・特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行し、それによりセグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得る実行(execution)ユニットとを有する。
【0007】
セグメント化された体積医療画像データのビューはディスプレイ上に表示される。ビューはシステムのユーザーに、該ユーザーにとって関心のあるセグメント化された解剖学的構造を見、指示することを許容する。指示は、セグメント化された体積医療画像データを並進させ、回転させ、ズームインおよび/またはズームアウトするといった標準的な操作を含んでいてもよい。関心のある解剖学的構造は人間の患者の心臓であってもよい。指示ユニットおよびトリガー・ユニットは、マウス・デバイスを使って一緒に実装されてもよい。マウスはディスプレイ上に表示されるポインタの位置を制御する。ポインタは表示されるビュー上の位置を指示するために使用されうる。イベントは、ポインタを重ねるイベント(pointer-over event)であってもよい。ポインタを重ねるイベントは、ポインタがディスプレイ上のある位置に所定の継続時間にわたって表示されるときにトリガーされる。特定ユニットは、セグメント化された体積医療画像データのビュー内に示されるセグメント化された解剖学的構造、たとえば心臓を、トリガーされたイベントに応答して、マウスによって制御されるポインタの位置に基づいて、特定するよう構成される。その際、実行ユニットは、トリガーされたイベントに応答して、特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた、たとえば心臓に関連付けられた動作を実行するよう構成される。その動作は、セグメント化された解剖学的構造に固有の項目を含むメニューを表示することであってもよい。たとえば、心臓についての項目は、名前ラベル「心臓」、一般的な心臓病の説明を含む文書へのリンクおよび心臓の左心室の大きさを計算および表示するための動作を実行するためのシステム・コールを含みうる。こうして、本システムは、体積医療画像データに関係する情報を得ることを許容する。
【0008】
本システムのある実施形態では、システムは体積医療画像データをセグメント化し、それによりセグメント化された体積医療画像データを生成するセグメント化(segmentation)ユニットを有する。有利には、体積医療画像データは、本システムを使って、自動的に、半自動的にまたは手動でセグメント化されうる。さまざまなセグメント化方法が本発明のセグメント化ユニットによって使用されうる。たとえば、形状モデルを体積医療画像データに適合させるセグメント化方法である。
【0009】
本システムのある実施形態では、システムはさらに、セグメント化された解剖学的構造に動作を関連付ける関連付け(association)ユニットを有する。関連付けユニットは有利には、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造に動作を関連付けることを許容する。たとえば、セグメント化された解剖学的構造に関連付けられるべき動作は、そのセグメント化された解剖学的構造についての有用な情報をもつ文書を表示すること、あるいはそのセグメント化された解剖学的構造の大きさを計算および表示するためのアプリケーションを立ち上げることでありうる。動作は、システムのユーザーからの入力データに基づいて決定されてもよい。任意的に、関連付けユニットはさらに、あるイベントに、そのイベントに応答して実行される動作を関連付けるよう構成されてもよい。たとえば、第一のイベント、たとえばマウスを重ねるイベントが第一の動作に関連付けられてもよく、第二のイベント、たとえばマウスを重ねてクリックするイベントが第二の動作に関連付けられてもよい。
【0010】
本システムのある実施形態では、特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられる動作は、セグメント化された解剖学的構造に適合されたモデルに基づく。この実施形態は、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造に動作を関連付けるのを大いに容易にする。たとえば、解剖学的構造のモデルに含まれるまたは該モデルにリンクされたデータ・チャンク(data chunk)が、そのモデルによって記述される解剖学的構造についての有用な情報をもつウェブ・ページへのリンクを含むメニューを表示する動作を立ち上げるための命令を含んでいてもよい。モデル・ベースのセグメント化の間に、モデルは体積医療画像データに含まれる解剖学的構造に適合される。こうして、前記動作は、セグメント化の間に前記解剖学的構造に自動的に関連付けられる。任意的に、セグメント化された解剖学的構造に適合されたモデルに含まれるまたは該モデルにリンクされたデータ・チャンクはさらに、そのセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行するためのイベントの、たとえばマウスを重ねてクリックするイベントの記述子を含んでいてもよい。
【0011】
本システムのある実施形態では、特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられる動作は、セグメント化された解剖学的構造に含まれるデータ要素に割り当てられたクラスに基づく。この実施形態も、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造に動作を関連付けるのを大いに容易にする。たとえば、解剖学的構造を記述するクラスに含まれるまたは該クラスにリンクされたデータ・チャンクが、その解剖学的構造についての有用な情報をもつウェブ・ページを表示する動作を立ち上げるための命令を含んでいてもよい。データ要素のクラス分類(classification)の間、すなわちクラス・ベースのセグメント化の間、体積医療画像データに含まれるいくつかのデータ要素がその解剖学的構造に含まれるデータ要素として分類される。こうして、前記動作が、分類されたデータ要素に自動的に関連付けられる。この分類されたデータ要素は、体積医療画像データのデータ要素の分類の間に、セグメント化された解剖学的構造のデータ要素であると決定されたものである。任意的に、セグメント化された解剖学的構造を記述するクラスに含まれるまたは該クラスにリンクされたデータ・チャンクはさらに、その特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行するためのイベントの、たとえばマウスを重ねてクリックするイベントの記述子を含んでいてもよい。
【0012】
本システムのある実施形態では、特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられる動作は、セグメント化された体積医療画像データに含まれる、セグメント化された解剖学的構造を含むメンバー画像データに基づく。この実施形態も、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造に動作を関連付けるのを大いに容易にする。たとえば、解剖学的構造を含むメンバー画像データに含まれるまたは該メンバー画像データにリンクされたデータ・チャンクが、その解剖学的構造についての有用な情報を含むウェブ・ページを表示する動作を立ち上げるための命令を含んでいてもよい。任意的に、セグメント化された解剖学的構造を含むマンバー画像データに含まれるまたは該メンバー画像データにリンクされたデータ・チャンクはさらに、その特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行するためのイベントの、たとえばマウスを重ねてクリックするイベントの記述子を含んでいてもよい。
【0013】
本システムのある実施形態では、実行ユニットによる実行のための動作は、少なくとも一つの項目を有するメニューを表示することである。たとえば、メニューは、セグメント化された解剖学的構造のある属性を計算および表示するためのアプリケーションを立ち上げるための項目を含んでいてもよい。さらに、メニューは、ウェブ・ブラウザを立ち上げ、そのセグメント化された解剖学的構造に関係した個別的な疾病および/または治療を説明するウェブ・ページを表示するための項目を含んでいてもよい。メニュー動作は、本システムのユーザーに、指示されたセグメント化された解剖学的構造を記述および/または解析するための複数の有用な項目を提供しうる。
【0014】
本発明のあるさらなる側面では、画像取得装置が、セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得るシステムであって:
・ディスプレイ上にセグメント化された体積医療画像データのビューを表示するディスプレイ・ユニットと;
・表示されたビュー上である位置を指示するための指示ユニットと;
・イベントをトリガーするトリガー・ユニットと;
・トリガーされたイベントに応答して、表示されたビュー上の指示された位置に基づいて、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定する特定ユニットと;
・特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行し、それによりセグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得る実行ユニットとを有する、
システムを有する。
【0015】
本発明のあるさらなる側面では、ワークステーションが、セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得るシステムであって:
・ディスプレイ上にセグメント化された体積医療画像データのビューを表示するディスプレイ・ユニットと;
・表示されたビュー上である位置を指示するための指示ユニットと;
・イベントをトリガーするトリガー・ユニットと;
・トリガーされたイベントに応答して、表示されたビュー上の指示された位置に基づいて、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定する特定ユニットと;
・特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行し、それによりセグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得る実行ユニットとを有する、
システムを有する。
【0016】
本発明のあるさらなる側面では、セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得る方法が:
・ディスプレイ上にセグメント化された体積医療画像データのビューを表示する表示段階と;
・表示されたビュー上である位置を指示する指示段階と;
・イベントをトリガーするトリガー段階と;
・トリガーされたイベントに応答して、表示されたビュー上の指示された位置に基づいて、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定する特定段階と;
・特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行し、それによりセグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得る実行段階とを有する。
【0017】
本発明のあるさらなる側面では、コンピュータ装置によってロードされるべきコンピュータ・プログラム・プロダクトが、セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得るための命令を有しており、前記コンピュータ装置は処理ユニットおよびメモリを有しており、前記コンピュータ・プログラム・プロダクトはロードされたのち、前記処理ユニットに以下のタスク、すなわち:
・ディスプレイ上にセグメント化された体積医療画像データのビューを表示する段階と;
・表示されたビュー上である位置を指示する段階と;
・イベントをトリガーする段階と;
・トリガーされたイベントに応答して、表示されたビュー上の指示された位置に基づいて、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定する段階と;
・特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行し、それによりセグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得る段階とを実行する機能を与える。
【0018】
先述した前記システムの修正およびその変形に対応して、当業者は、前記画像取得装置、前記ワークステーション、前記方法および/または前記コンピュータ・プログラム・プロダクトの修正および変形を、本願の記載に基づいて実施できる。
【0019】
当業者は、前記方法が、さまざまな取得モダリティによって取得された体積画像データすなわち三次元(3D)画像データに適用されうることを理解するであろう。そのような取得モダリティは、これに限られないが、計算機断層撮影(CT)、磁気共鳴撮像(MRI)、超音波(US)、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放出計算機断層撮影(SPECT)および核医学(NM)といったものである。
【0020】
本発明のこれらおよびその他の側面は、付属の図面を参照して以下に記載される実装および実施形態から明白となり、これに鑑みて明快にされるであろう。
【0021】
図面を通じて、同一の参照符号は同様の部分を表すのに使われている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本システムの例示的な実施形態のブロック図を概略的に示す図である。
【図2】心臓を示す例示的なビューを示す図である。
【図3】心臓を、セグメント化された解剖学的構造をハイライトして概略的に示す図である。
【図4】右冠動脈に関連付けられた第一の例示的な動作を示す図である。
【図5】右冠動脈に関連付けられた第二の例示的な動作を示す図である。
【図6】メニュー中の第一の項目を選択するのに際して立ち上げられるアプリケーションを示す図である。
【図7】メニュー中の第五の項目を選択するのに際して立ち上げられるアプリケーションを示す図である。
【図8】本方法の例示的な実装のフローチャートである。
【図9】画像取得装置の例示的な実施形態を概略的に示す図である。
【図10】ワークステーションの例示的な実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得るためのシステム100の例示的な実施形態のブロック図を概略的に示している。システム100は:
・ディスプレイ上にセグメント化された体積医療画像データのビューを表示するディスプレイ・ユニット110と;
・表示されたビュー上の位置を指示するための指示ユニット115と;
・イベントをトリガーするトリガー・ユニット120と;
・トリガーされたイベントに応答して、表示されたビュー上の指示された位置に基づいて、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定する特定ユニット125と;
・特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行し、それによりセグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得るための実行ユニット130とを有する。
【0024】
システム100のこの例示的な実施形態はさらに以下のユニットを有する:
・体積医療画像データをセグメント化し、それによりセグメント化された体積医療画像データを生成するセグメント化ユニット103;
・セグメント化された解剖学的構造に動作を関連付ける関連付けユニット105;
・システム100における作業フローを制御する制御ユニット160;
・システム100のユーザーと連絡するためのユーザー・インターフェース165;
・データを記憶するためのメモリ・ユニット170。
【0025】
システム100のこの例示的な実施形態では、はいってくるデータのための三つの入力コネクタ181、182および183がある。第一の入力コネクタ181は、これに限られないが、ハードディスク、磁気テープ、フラッシュメモリまたは光ディスクといったデータ記憶装置からはいってくるデータを受領するよう構成されている。第二の入力コネクタ182は、これに限られないが、マウスまたはタッチスクリーンといったユーザー入力装置からはいってくるデータを受領するよう構成されている。第三の入力コネクタ183は、キーボードのようなユーザー入力装置からはいってくるデータを受領するよう構成されている。入力コネクタ181、182および183は入力制御ユニット180に接続されている。
【0026】
システム100の例示的な実施形態では、出ていくデータのための二つの出力コネクタ191および192がある。第一の出力コネクタ191は、ハードディスク、磁気テープ、フラッシュメモリまたは光ディスクといったデータ記憶装置にデータを出力するよう構成されている。第二の出力コネクタ192は、表示装置にデータを出力するよう構成されている。出力コネクタ191および192は出力制御ユニット190を介してそれぞれのデータを受領する。
【0027】
当業者は、入力装置を入力コネクタ181、182および183に接続し、出力装置をシステム100の出力コネクタ191および192に接続する数多くの方法があることを理解するであろう。そうした方法には、これに限られないが、有線および無線の接続、デジタル・ネットワークが含まれ、たとえば、これに限られないが、構内ネットワーク(LAN)および広域ネットワーク(WAN)、インターネット、デジタル電話網およびアナログ電話網といったものがある。
【0028】
システム100のこの例示的な実施形態では、システム100はメモリ・ユニット170を有する。システム100は、入力コネクタ181、182および183のいずれかを介して外部装置から入力データを受領し、受領した入力データをメモリ・ユニット170に記憶するよう構成されている。入力データをメモリ・ユニット170にロードすることが、システム100の諸ユニットによる関連するデータ部分への迅速なアクセスを許容する。入力データはたとえば、セグメント化された体積医療画像データを含んでいてもよい。あるいはまた、入力データは、セグメント化ユニット103によってセグメント化するための体積医療画像データを含んでいてもよい。メモリ・ユニット170は、これに限られないが、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)チップ、読み出し専用メモリ(ROM)チップおよび/またはハードディスク・ドライブおよびハードディスクといった装置によって実装されうる。メモリ・ユニット170は、出力データを記憶するようさらに構成されうる。出力データは、たとえば、システム100の使用を文書化したログ・ファイルを含みうる。メモリ・ユニット170は、セグメント化ユニット103、関連付けユニット105、ディスプレイ・ユニット110、指示ユニット115、トリガー・ユニット120、特定ユニット125、実行ユニット130、制御ユニット160およびユーザー・インターフェース165を含むシステム100の諸ユニットからおよび該諸ユニットへ、メモリ・バス175を介してデータを送達するようにも構成される。メモリ・ユニット170はさらに、出力データを、出力コネクタ191および192のいずれかを介して外部装置に対して利用可能にするよう構成される。システム100のユニットからのデータをメモリ・ユニット170に記憶することは、有利なことに、システム100のユニットのパフォーマンスならびにシステム100のユニットから外部装置への出力データの転送レートを改善しうる。
【0029】
あるいはまた、システム100は、メモリ・ユニット170およびメモリ・バス175を有さなくてもよい。システム100によって使用される入力データは、システム100のユニットに接続された、外部メモリまたはプロセッサといった少なくとも一つの外部装置によって供給されうる。同様に、システム100によって生成される出力データは、システム100のユニットに接続された、外部メモリまたはプロセッサといった少なくとも一つの外部装置に供給されうる。システム100の諸ユニットは、内部的な接続を介してまたはデータ・バスを介して、互いからデータを受領するよう構成されてもよい。
【0030】
図1に示されるシステム100の例示的な実施形態では、システム100は、システム100における作業フローを制御するための制御ユニット160を有する。制御ユニットは、システム100の諸ユニットから制御データを受領し、システム100の諸ユニットに制御データを提供するよう構成されうる。たとえば、トリガー・ユニット120によってイベントがトリガーされたのち、トリガー・ユニット120は、「イベントがトリガーされた」という制御データを制御ユニット160に渡すよう構成されてもよく、制御ユニット160は、指示された位置に基づいてセグメント化された解剖学的構造を特定するよう特定ユニット125に要請する、「セグメント化された解剖学的構造を特定せよ」という制御データを特定ユニット125に与えるよう構成されてもよい。あるいはまた、制御機能は、システム100の別のユニットで実装されてもよい。
【0031】
図1に示されるシステム100の例示的な実施形態では、システム100は、システム100のユーザーと対話するためのユーザー・インターフェース165を有する。ユーザー・インターフェース165は、ユーザーに、ディスプレイ上で閲覧されるセグメント化された体積医療画像データを回転および並進させるための手段を提供するよう構成されうる。任意的に、ユーザー・インターフェースは、システム100の動作モードを選択するためのユーザー入力を受領しうる。動作モードは、体積医療画像データをセグメント化するためにセグメント化ユニット103を使うモードといったものである。当業者は、システム100のユーザー・インターフェース165においてより多くの機能が有利に実装されうることを理解するであろう。
【0032】
体積医療画像データ、すなわち三次元(3D)医療画像データは要素を含む。体積医療画像データの各データ要素(x,y,z,I)は、典型的には画像データ座標系での三つのデカルト座標x,y,zによって表される位置(x,y,z)と、この位置での強度Iとを含む。体積医療画像データの体積は、画像データ要素(x,y,z,I)に含まれるすべての位置(x,y,z)を含む体積として定義されうる。医療画像データが複数のメンバー画像データを含むとき、各データ要素はさらに、そのデータ要素がどのメンバー画像データに属しているかを指示するデータ・メンバーシップ・インデックスmを有していてもよい。メンバー画像データは数多くの異なる方法で得られる。たとえば、第一のメンバー画像データが第一の画像データ取得モダリティを使って取得されてもよく、第二のメンバー画像データが第二の画像データ・モダリティを使って取得されてもよい。あるいはまた、メンバー画像データは、医療画像データを処理することによって、たとえば医療画像データをセグメント化し、セグメント化に基づいて医療画像データを複数のメンバー画像データに分割することによって、得られてもよい。当業者は、メンバー画像データが得られる方法は特許請求の範囲を限定しないことを理解するであろう。
【0033】
体積医療画像データはセグメント化される。セグメント化は、体積医療画像データ中の解剖学的構造を特定することを許容する。たとえば、心臓を記述する体積医療画像データをセグメント化したものは、たとえば左心室、右心室、左心房、右心房、左心室のまわりの心筋、冠動脈の本幹、心門(ostia)および弁といったセグメント化された解剖学的構造を含みうる。セグメント化は、種々の方法およびツールを使って達成されうる。それには、これに限られないが、剛性の、スケーラブルなまたは弾性変形可能なモデルを体積医療画像データに適合させる、体積医療画像データのデータ要素をクラス分類するクラス分類手段(classifier)(いわゆるボクセル・クラス分類器)を使う、マルチ体積可視化(multi-volume visualization)におけるデータ・メンバーシップに基づいて体積医療画像データのデータ要素をクラス分類するといったことが含まれる。セグメント化された体積医療画像データは、体積医療画像データおよびセグメント化結果を含む。
【0034】
システム100のある実施形態では、セグメント化結果は画像データ座標系における適合されたモデル・メッシュの頂点の座標を含む。モデル・メッシュは解剖学的構造に適合される。モデル・メッシュは、それが適合された解剖学的構造の表面を記述する。モデル・メッシュを体積医療画像データ中の解剖学的構造に適合させることに基づく画像セグメント化は、非特許文献1に記載されている。
【0035】
システム100のある実施形態では、各データ要素は、そのデータ要素の特徴に基づいておよび/または近傍のデータ要素の特徴に基づいて分類される。たとえば、そのデータ要素の特徴は、そのデータ要素に含まれる強度であってもよく、近傍の要素の特徴は、近傍の要素に含まれるパターンであってもよい。一つのクラスに割り当てられたデータ要素は、一つのセグメント化された解剖学的構造を定義する。セグメント化された解剖学的構造を定義するデータ要素のクラスは以下では、その解剖学的構造のクラスと称する。クラス分類はボクセルに適用されてもよい。ボクセルは、画像体積の小さな体積およびその小さな体積に割り当てられた強度を含む。当業者は、ボクセルが画像データ要素の等価物と考えられてもよいことを理解するであろう。MR脳画像データ中のデータ要素の分類に基づく磁気共鳴(MR)脳画像データ・セグメント化が、非特許文献2に記載されている。
【0036】
システム100のある実施形態では、医療画像データは、複数のメンバー画像データを含む。各メンバー画像データは、セグメント化された解剖学的構造を記述すると考えられる。この実施形態において、セグメント化は画像データ・メンバーシップに基づく。
【0037】
当業者は、体積医療画像データをセグメント化するために好適な数多くの方法があることを理解するであろう。特許請求の範囲は、セグメント化方法とは独立である。
【0038】
当業者はまた、セグメント化された体積医療画像データがさまざまなセグメント化された解剖学的構造、たとえば心臓の構造、肺の構造、結腸の構造、動脈樹の構造、脳の構造などを記述しうることをも理解するであろう。
【0039】
システム100のディスプレイ・ユニット110は、ディスプレイ上にセグメント化された体積医療画像データのビューを表示するよう構成されている。図2は、心臓を示す例示的なビューを示している。セグメント化された解剖学的構造は図2に示されたビューではハイライトされていない。ビューは、直接体積レンダリング(DVR: direct volume rendering)を使って計算される。当業者は、体積医療画像データのビューを計算するために用いてもよい、また用いることのできる数多くの方法があることを理解するであろう。たとえば、最大強度投影(MIP: maximum intensity projections)、等強度面投影(ISP: iso-surface projection)、デジタル再計算放射線写真(DRR: digitally recomputed radiographs)である。MIPでは、ディスプレイ上のあるピクセルが、投影射線に沿った最大値に設定される。ISPでは、投影射線は、関心のある等強度面に当たったときに終わりにされる。等強度面は、強度関数の同水準の集合、すなわち同じ強度をもつすべてのボクセルの集合として定義される。MIPおよびISPについてのさらなる情報は、非特許文献3に見出せる。DVRでは、伝達関数が、セグメント化された体積医療画像データに含まれる強度に対して、不透明度のようなレンダリング可能属性を割り当てる。非特許文献4にDVRの実装が記載されている。DRRでは、投影画像、たとえばX線画像が体積データから、たとえばCTデータから再構成される。非特許文献5にDRRの実装が記載されている。
【0040】
マルチ体積可視化では、表示される画像は複数のメンバー画像データに基づいて決定される。異なるメンバー画像データに属するいくつかのデータ要素が一つの位置に対応することがありうる。非特許文献6にマルチ体積DVRの方法が記載されている。
【0041】
体積医療画像データのビューを計算する方法の選択は、特許請求の範囲を限定するものではない。任意的に、セグメント化された解剖学的構造は表示されるビュー上でハイライトされてもよい。図3に示されるビューは、セグメント化された解剖学的構造がマークされている心臓を概略的に示している。セグメント化された解剖学的構造をマークするために色を使うことで、セグメント化された解剖学的構造を明瞭にマークしつつ、セグメント化された解剖学的構造のより多くの詳細を示すことができる。
【0042】
システム100のある実施形態では、システムは、体積医療画像データをセグメント化し、それによりセグメント化された体積医療画像データを生成するためのセグメント化ユニット103を有する。体積医療画像データは、システム100のセグメント化ユニット103を使って、自動的に、半自動的におよび/または手動でセグメント化されうる。当業者は、候補となるセグメント化システムが多数あり、良好な候補セグメント化システムがシステム100のセグメント化ユニット103に統合されてもよいことを理解するであろう。
【0043】
システム100の指示ユニット115は、表示されるビュー上の位置を指示するよう構成される。表示されるビュー上の位置は、特定ユニット115によって、ユーザーにとって関心のあるセグメント化された解剖学的構造を特定するために使われる。システム100のある実施形態では、指示ユニット115はマウス・デバイスを使って実装されてもよい。ユーザーは、マウス・デバイスを使ってポインタを制御してディスプレイ上のある位置を指示しうる。あるいはまた、ポインタはトラックボールを使って、あるいはキーボードを使って制御されてもよい。ポインタは別のツール、たとえば縦横の十字線で置き換えてもよい。縦横の十字線はマウスによって、あるいは他の仕方で制御されうる。当業者は、表示されるビュー上で位置を指示するために用いられる方法が特許請求の範囲を限定するものではないことを理解するであろう。
【0044】
システム100のトリガー・ユニット120はイベントをトリガーするよう構成される。トリガー・ユニット120によってトリガーされるイベントは、セグメント化された解剖学的構造の特定を開始するために、特定ユニット125によって使用される。トリガーされたイベントはさらに、特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられたどの動作が実行されるべきかを決定するために、実行ユニット130によって使用されてもよい。システム100のある実施形態では、トリガー・ユニット120は、指示ユニット115と一緒にマウス・デバイスとして実装される。トリガー・ユニット120は、一つのイベント、たとえばポインタを重ねるイベントまたはポインタを重ねてクリックするイベントをトリガーするよう構成されていてもよい。ポインタを重ねるイベントは、マウス・デバイスによって制御されるポインタがディスプレイ上のある位置に所定の時間期間、たとえば1秒にわたって留まるときに生起するよう構成されうる。ポインタを重ねてクリックするイベントは、ポインタがディスプレイ上のある位置にあってマウス・ボタンがクリックされるときに生起するよう構成されうる。任意的に、トリガー・ユニットは、複数のイベント、たとえばマウス・デバイスによって実装される、ポインタを重ねるイベントおよびポインタを重ねてクリックするイベントの両方をトリガーするよう構成されていてもよい。当業者は、他のイベントおよびイベントを実装する他の方法を知っていることであろう。本システムのトリガー・ユニット120の例示的な実施形態は本発明を例解するためであって、特許請求の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0045】
特定ユニット125は、トリガーされたイベントに応答して、表示されたビュー上の指示された位置に基づいて、セグメント化された体積医療画像データ中に含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定するよう構成される。指示された位置において可視化されているセグメント化された解剖学的構造が、特定されたセグメント化された解剖学的構造である。ある実施形態では、セグメント化された解剖学的構造は、ディスプレイ上の、すなわちビュー平面(viewing plane)内の指示された位置に実質的に始まり、ディスプレイに実質的に垂直な方向に、セグメント化された体積医療画像データの視覚化された体積中に伝搬される、探査射線(probing ray)に基づいて決定される。たとえば、特定ユニット125は、探査射線に沿った等間隔の諸位置でセグメント化された体積医療画像データを探査するよう構成されてもよい。探査射線上の各等間隔位置において、セグメント化された体積医療画像データから最も近いデータ要素が取得される。ISPの場合、該最も近いデータ要素の強度がISPの強度閾値と比較される。前記強度閾値より大きい強度をもつ最初のデータ要素の位置を含むセグメント化された解剖学的構造が、特定されたセグメント化された解剖学的構造である。同様に、MIPについては、検出されたデータ要素は、探査射線に沿った最高の強度をもつ最初のデータ要素である。探査射線に沿った最高の強度をもつ最初のデータ要素の位置を含むセグメント化された解剖学的構造が、特定されるセグメント化された解剖学的構造である。同様に、DVRを用いるマルチ体積可視化では、探査射線に沿った要素が、探査射線に沿った要素の強度に割り当てられた不透明度または代替的なレンダリング可能属性に基づいて選択される。不透明度閾値以上の不透明度をもつ要素が見出されるとき、この要素のデータ・メンバーシップ・インデックスがメンバー画像データ、よって、セグメント化された解剖学的構造を決定する。
【0046】
検出されたデータ要素は、特定されたセグメント化された解剖学的構造を決定する。システム100のある実施形態では、セグメント化された解剖学的構造を特定することは、体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造に適合されるモデル・メッシュに基づく。それぞれの適合されたモデル・メッシュは、適合されたメッシュの表面によって境されるセグメント化された解剖学的構造の体積を決定する。探査射線に沿って検出されたデータ要素を含むセグメント化された解剖学的構造の体積が、特定されたセグメント化された解剖学的構造を決定する。
【0047】
システム100のある実施形態では、セグメント化された解剖学的構造を特定することは、セグメント化された体積医療画像データのデータ要素の分類に基づく。探査射線に沿って検出されたデータ要素のクラスに関連付けられた解剖学的構造が、特定されたセグメント化された解剖学的構造を定義する。
【0048】
システム100のある実施形態では、セグメント化された解剖学的構造を特定することは、セグメント化された体積医療画像データのデータ要素のメンバーシップに基づく。探査射線に沿って検出されたデータ要素のメンバーシップ・インデックスは、メンバー画像データ、よってこのメンバー画像データに含まれる特定されたセグメント化された解剖学的構造を定義する。
【0049】
特定ユニット125が、指示ユニット115によってディスプレイ上で指示された位置に基づいてセグメント化された解剖学的構造を特定しそこなった場合、実行ユニット130は、デフォルトの「失敗」動作、たとえば「指示された位置に関連付けられたセグメント化された解剖学的構造はありません」というメッセージの表示を実行するよう構成されていてもよい。
【0050】
セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定するための記載された諸方法は、特定ユニット125の実施形態を例解するものである。特許請求の範囲は、特定ユニット125によって用いられる、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定する方法に依存しない。
【0051】
システム100の実行ユニット130は、特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行するよう構成される。図4ないし図7は、可能な動作を例示している。図4は、右冠動脈(RCA: right coronary artery)に関連付けられた第一の例示的動作を示している。第一の例示的動作は、RCAの可能な障害についての情報を含むウィンドウを立ち上げることである。この第一の例示的動作の実行につながる生起のシーケンスについてここで述べておく。指示ユニット115によって制御される矢印形のポインタの先端が指示された位置をポイントする。トリガー・ユニット120によってトリガーされる、ポインタを重ねるイベントに応答して、特定ユニット125はRCAをセグメント化された解剖学的構造として特定した。第一の例示的動作は、ポインタを重ねるイベントに応答して実行ユニット130によって実行された。
【0052】
図5は、RCAに関連付けられた第二の例示的動作を示している。第二の例示的動作は、5つの項目をもつメニューを含むウィンドウを表示することである。最初の4つの項目はRCAの解剖構造についての情報を含むローカルおよび/または外部の頁へのリンクを提供する。5番目の項目は、「冠動脈検査パッケージ(Coronary Inspection Package)」と呼ばれるアプリケーションを立ち上げるためのリンクである。このアプリケーションは、閲覧されるRCAについてのさらなる情報、たとえば流れ測定データをユーザーに与えうる。前記メニューの表示は、トリガー・ユニット120によってトリガーされる別のイベントに応答して、たとえばポインタを重ねてクリックするイベントに応答して実行されうる。指示される位置は、先の例で述べた位置と同じである。特定されたセグメント化された解剖学的構造は、先の例と同じRCAである。
【0053】
図6は、図5に示されたメニュー中の最初の項目の選択に際して立ち上げられるアプリケーションを示している。このアプリケーションは、解剖学的情報の参照情報ページを表示するウェブ・ブラウザである。このページは、システム100に記憶されていてもよいし、あるいは別のシステム、たとえばウェブ・サーバー上に記憶されていてもよい。あるいはまた、解剖学的情報の参照情報ページを表示するウェブ・ブラウザの立ち上げは、トリガー・ユニット120によってトリガーされるイベントに応答して、たとえばマウスを重ねてダブルクリックするイベントに応答して実行されるもう一つの例示的動作であってもよい。
【0054】
図7は、図5に示されたメニュー中の5番目の項目の選択に際して立ち上げられるアプリケーションを示している。このアプリケーションは、多平面再フォーマットおよび解析ツール(multi-planar reformatting and analysis tools)を有する冠動脈検査パッケージである。このアプリケーションはシステム100上で実行されてもよいし、あるいは別のシステム、たとえばアプリケーション・サーバー上で実行されてもよい。あるいはまた、冠動脈検査パッケージの立ち上げは、トリガー・ユニット120によってトリガーされるイベントに応答して、たとえばマウスを重ねてダブルクリックするイベントに応答して実行されるもう一つの例示的動作であってもよい。
【0055】
セグメント化された解剖学的構造に動作を関連付ける多数の方法がある。システム100のある実施形態では、システム100はさらに、セグメント化された解剖学的構造に動作を関連付ける関連付けユニット105を有する。関連付けユニットは、有利には、セグメント化された体積画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造に前記動作を関連付けることを許容する。たとえば、セグメント化された解剖学的構造を記述するデータ・チャンクが、前記セグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作のテーブルを有していてもよい。任意的に、前記テーブルはさらにイベントを含んでいて、そうしたイベントに応答してこれらの動作が実行されるのでもよい。当業者は、セグメント化された解剖学的構造に動作を関連付ける数多くの方法があることを理解するであろう。特許請求の範囲はセグメント化された解剖学的構造に動作を関連付けることの実装によって限定されるものではない。
【0056】
システム100のある実施形態では、特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作は、セグメント化された解剖学的構造に適合されたモデルに基づく。システム100のあるさらなる実施形態では、特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作は、セグメント化された解剖学的構造に含まれるデータ要素に割り当てられたクラスに基づく。システム100のあるさらなる実施形態では、特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作は、セグメント化された体積医療画像データに含まれる、セグメント化された解剖学的構造を含むメンバー画像データに基づく。いずれも上で述べてきたこれらすべての実施形態は、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造に動作を関連付けることを大いに容易にする。
【0057】
当業者は、システム100のいくつかの実施形態を組み合わせることが可能であることを認識するであろう。たとえば、メンバー画像データがさらにセグメント化されるおよび/または分類されることが可能である。特定ユニット125は、セグメント化されたおよび/またはクラス分類されたメンバー画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定するよう構成されてもよい。セグメント化されたおよび/またはクラス分類されたメンバー画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造はそれぞれ、ある動作に関連付けられてもよい。実行ユニット130は、指示されるメンバー画像データに含まれる指示されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行するよう構成されてもよい。
【0058】
システム100のある実装では、実行ユニット130による実行のための動作は、少なくとも一つの項目を有するメニューを表示することである。メニューに含まれてもよい可能で有用な項目は多数ある。たとえば、メニュー中の項目は:
・セグメント化された解剖学的構造の名前;
・セグメント化された解剖学的構造の短い説明;
・セグメント化された解剖学的構造の潜在的な形態異常(malformation)または機能異常
(malfunction)についての示唆;および/または
・セグメント化された解剖学的構造に関係する情報、たとえば心室の駆出率または動脈狭窄の確率、
であってもよい。
【0059】
メニュー中のさらなる例示的な項目は:
・セグメント化された解剖学的構造に固有のアプリケーションの立ち上げのためのコマンド;
・セグメント化された解剖学的構造の潜在的な疾病、形態異常および機能異常についての情報を含むデータベースへのリンク;
・医師によって治療される関連する症例についてのデータを含む医師に専用のデータベースへのリンク;
・医師が関心のある事例史にアクセスできるようにする参照情報へのリンク;および/または
・異なる視覚化モードへの切換のためのコマンド、
である。
【0060】
当業者は、メニュー項目は、トリガーされるイベントに応答してシステム100によって実行されるべき指示されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作として実装されてもよいことを理解するであろう。
【0061】
システム100のある実施形態では、指示ユニット115およびトリガー・ユニット120は、ディスプレイ上に表示されるポインタを制御し、トリガーされるイベントは、ポインタを重ねるイベント、ポインタを重ねてクリックするイベントまたはポインタを重ねてダブルクリックするイベントである。これら三つのイベントはたとえばマウス・デバイスを使って簡単に実装でき、今日、たいていのユーザーは、ポインタを重ねるイベント、ポインタを重ねてクリックするイベントおよびポインタを重ねてダブルクリックするイベントになじみがある。
【0062】
当業者は、本稿に記載されるシステム100が、医療診断において、特に医療画像データからの情報を解釈および抽出することにおいて、医師を支援する貴重なツールとなりうることを理解するであろう。
【0063】
当業者は、システム100の他の実施形態も可能であることをさらに理解するであろう。とりわけ、システムの諸ユニットを定義し直して、その機能を分配し直すことが可能である。たとえば、システム100のある実施形態では、指示ユニット115の機能はトリガー・ユニット120の機能と組み合わされてもよい。システム100のあるさらなる実施形態では、セグメント化ユニット103の代わりに複数のセグメント化ユニットがあることができる。この複数のセグメント化ユニットからの各セグメント化ユニットは、異なるセグメント化方法を用いるよう構成されていてもよい。システム100によって用いられる方法はユーザー選択に基づいていてもよい。
【0064】
システム100の諸ユニットは、プロセッサを使って実装されてもよい。通常、その機能はソフトウェア・プログラム・プロダクトの制御のもとで実行される。実行の間、ソフトウェア・プログラム・プロダクトは通常、RAMのようなメモリにロードされ、そこから実行される。前記プログラムはROM、ハードディスクまたは磁気および/または光記憶装置といったバックグラウンド・メモリからロードされてもよいし、あるいはインターネットのようなネットワークを介してロードされてもよい。任意的に、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit)が記載された機能性を提供してもよい。
【0065】
図8は、セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得る方法800の例示的な実装のフローチャートを示している。方法800は、体積医療画像データをセグメント化し、それによりセグメント化された体積医療画像データを生成するセグメント化段階803で始まる。体積医療画像データをセグメント化したのち、方法800は、セグメント化された解剖学的構造に動作を関連付ける関連付け段階805に進む。関連付け段階805ののち、方法800は、ディスプレイ上にセグメント化された体積医療画像データのビューを表示する表示段階810に進む。表示段階810ののち、本方法は、表示されたビュー上で位置を指示する指示段階815に続く。次いで、方法800はイベントをトリガーするトリガー段階820に続く。次の段階は、トリガーされたイベントに応答して、表示されたビュー上の指示された位置に基づいて、セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定する特定段階825である。特定段階825ののち、方法800は、特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行し、それによりセグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得る実行段階830に進む。実行段階830ののち、方法800は終了しうる。あるいはまた、ユーザーは、セグメント化された体積医療画像データに関係するさらなる情報を得るために方法800の使用を続けてもよい。
【0066】
セグメント化段階803および関連付け段階805は他の段階とは別個に、別の時間と場所で実行されてもよい。
【0067】
方法800における諸段階の順序は必須ではない。当業者は、本発明によって意図される概念から外れることなく、いくつかの段階の順序を変えてもよいし、あるいはスレッディング・モデル、マルチプロセッサ・システムまたは多重プロセスを使っていくつかの段階を並行して実行してもよい。任意的に、本発明の方法800の二つ以上の段階が一つの段階に組み合わされてもよい。任意的に、本発明の方法のある段階が複数の段階に分割されてもよい。
【0068】
図9は、システム100を用いる画像取得装置900の例示的な実施形態を概略的に示している。前記画像取得装置900は、内部的な接続を介してシステム100に接続された画像取得ユニット910と、入力コネクタ901と、出力コネクタ902とを有している。この構成は、セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得るためのシステム100の有利な機能を前記画像取得装置900に提供して、画像取得装置900の機能を有利に高める。画像取得装置の例としては、これに限られないが、CTシステム、X線システム、MRIシステム、USシステム、PETシステム、SPECTシステムおよびNMシステムが含まれる。
【0069】
図10は、ワークステーション1000の例示的な実施形態を概略的に示している。ワークステーションはシステム・バス1001を有する。プロセッサ1010、メモリ1020、ディスク入出力(I/O)アダプタ1030およびユーザー・インターフェース(UI)1040は動作的にシステム・バス1001に接続されている。ディスク記憶装置1031はディスクI/Oアダプタ1030に動作的に結合されている。キーボード1041、マウス1042およびディスプレイ1043はUI1040に動作的に結合されている。コンピュータ・プログラムとして実装される本発明のシステム100は、ディスク記憶装置1031に記憶されている。ワークステーション1000は、プログラムをロードおよび入力データをメモリ1020にロードし、プロセッサ1010上で前記プログラムを実行するよう構成されている。ユーザーは、キーボード1041および/またはマウス1042を使ってワークステーション1000に情報を入力できる。ワークステーションは表示装置1043におよび/またはディスク1031に情報を出力するよう構成される。当業者は、当技術分野で知られているワークステーション1000の数多くの他の実施形態があり、本実施形態は本発明を例解する目的を果たすものであってこの特定の実施形態に本発明を限定するものと解釈してはならないことを理解するであろう。
【0070】
上記の実施形態が本発明を限定するのではなく例解するものであり、当業者は付属の請求項の範囲から外れることなく代替的な実施形態を設計できるであろうことを注意しておくべきであろう。請求項において、括弧内に入れられた参照符号があったとしてもその請求項を限定するものと解釈してはならない。「有する」の語は、請求項においてまたは本記載において挙げられていない要素や段階の存在を排除するものではない。要素の単数形の表現はそのような要素の複数の存在を排除するものではない。本発明は、いくつかの相異なる要素を有するハードウェアによって、およびプログラムされたコンピュータによって実装されることができる。いくつかのユニットを列挙する請求項において、これらのユニットのいくつかは単一のハードウェアまたはソフトウェア項目によって具現されることができる。第一、第二、第三などの語の使用はいかなる順序付けを指示するものでもない。これらの語は名辞として解釈されるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得るシステムであって:
・ディスプレイ上に前記セグメント化された体積医療画像データのビューを表示するディスプレイ・ユニットと;
・表示されたビュー上である位置を指示するための指示ユニットと;
・イベントをトリガーするトリガー・ユニットと;
・トリガーされたイベントに応答して、表示されたビュー上の指示された位置に基づいて、前記セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定する特定ユニットと;
・特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行し、それにより前記セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得るための実行ユニットとを有するシステム。
【請求項2】
体積医療画像データをセグメント化し、それにより前記セグメント化された体積医療画像データを生成するセグメント化ユニットをさらに有する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
セグメント化された解剖学的構造に動作を関連付ける関連付けユニットをさらに有する、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられる動作は、そのセグメント化された解剖学的構造に適合されたモデルに基づく、請求項1ないし3のうちいずれか一項記載のシステム。
【請求項5】
特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられる動作は、そのセグメント化された解剖学的構造に含まれるデータ要素に割り当てられたクラスに基づく、請求項1ないし3のうちいずれか一項記載のシステム。
【請求項6】
特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられる動作は、前記セグメント化された体積医療画像データに含まれ、前記セグメント化された解剖学的構造を含むメンバー画像データに基づく、請求項1ないし3のうちいずれか一項記載のシステム。
【請求項7】
前記実行ユニットによる実行のための動作は、少なくとも一つの項目を有するメニューを表示することである、請求項1ないし6のうちいずれか一項記載のシステム。
【請求項8】
請求項1記載のシステムを有する画像取得装置。
【請求項9】
請求項1記載のシステムを有するワークステーション。
【請求項10】
セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得る方法であって:
・ディスプレイ上に前記セグメント化された体積医療画像データのビューを表示する表示段階と;
・表示されたビュー上で位置を指示する指示段階と;
・イベントをトリガーするトリガー段階と;
・トリガーされたイベントに応答して、表示されたビュー上の指示された位置に基づいて、前記セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定する特定段階と;
・特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行し、それによりセグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得る実行段階とを有する、
方法。
【請求項11】
セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得るための命令を有する、コンピュータ装置によってロードされるべきコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ装置は処理ユニットおよびメモリを有しており、当該コンピュータ・プログラムはロードされたのち、前記処理ユニットに:
・ディスプレイ上に前記セグメント化された体積医療画像データのビューを表示する段階と;
・表示されたビュー上で位置を指示する段階と;
・イベントをトリガーする段階と;
・トリガーされたイベントに応答して、表示されたビュー上の指示された位置に基づいて、前記セグメント化された体積医療画像データに含まれるセグメント化された解剖学的構造を特定する段階と;
・特定されたセグメント化された解剖学的構造に関連付けられた動作を実行し、それにより前記セグメント化された体積医療画像データに関係する情報を得る実行段階とを実行する機能を与える、コンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−500089(P2010−500089A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523415(P2009−523415)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053101
【国際公開番号】WO2008/018014
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】