説明

動力出力装置およびその制御方法並びに車両

【課題】内燃機関の燃料カット時や始動の際の初爆時などに蓄電装置が過大な電力によって充放電されるのを抑制すると共にその際に生じ得るトルクショックを抑制する。
【解決手段】燃料カットや初爆のときには、モータリング用のトルクTm1tmpを駆動軸出力トルクの総和が値0〜要求トルクTr*の範囲内かつバッテリ入出力電力の総和が入出力制限Win,Woutの範囲内である関係から求めたトルク制限Tm1min,Tm1maxで制限してモータトルク指令Tm1*を設定し、燃料カットや初爆により駆動軸に作用するトルクTcut,Texpとした適合トルクTerajとトルク指令Tm1*から計算された直達トルクTerをトルク制限Tm1min,Tm1maxとバッテリ余裕電力αから得られる直達トルク制限Termin,Termaxで制限したトルクと要求トルクTr*からモータトルク指令Tm2*を設定する(S200〜S260)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力出力装置およびその制御方法並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の動力出力装置としては、エンジンと、エンジンの出力軸にキャリアが接続されると共に車軸側の駆動軸にリングギヤが接続されたプラネタリギヤと、プラネタリギヤのサンギヤに動力を入出力するモータMG1と、駆動軸に動力を入出力するモータMG2と、モータMG1およびモータMG2と電力のやりとりを行なうバッテリと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、エンジンへの燃料供給を停止する燃料カットを行なうときには、エンジンの回転数に応じた山形トルクをモータMG2から出力することにより、エンジンの燃料カットに伴って駆動軸に生じ得るトルクショックを打ち消している。
【特許文献1】特開平10−248114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の動力出力装置では、駆動軸への動力の出力の状態やバッテリの状態,モータMG2から出力する山形トルクの大きさなどにもよるが、エンジンの燃料カットの際にモータMG2から山形トルクを出力することにより、バッテリから過大な電力を放電するときが生じる。
【0004】
こうしたエンジンの燃料カットとの場合とは逆に、エンジンを始動する際には、その初爆のタイミングで初爆に伴って駆動軸に出力されるトルクを打ち消すようモータMG2からトルクを出力する場合には、バッテリを過大な電力で充電してしまうことが生じる。
【0005】
本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに車両は、内燃機関の燃料カット時や内燃機関の始動時における初爆時などの内燃機関の運転状態の急変に伴って二次電池などの蓄電装置が過大な電力によって充放電されるのを抑制することを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに車両は、内燃機関の燃料カット時や内燃機関の始動時における初爆時などの内燃機関の運転状態の急変時に生じ得るトルクショックを抑制することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに車両は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の動力出力装置は、
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
前記駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とにトルクを入出力する電力動力入出力手段と、
前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、
前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、
前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充放電してもよい許容最大電力である入出力制限を設定する入出力制限設定手段と、
前記電力動力入出力手段の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、
前記電動機の回転数である電動機回転数を検出する電動機回転数検出手段と、
前記駆動軸に要求される要求トルクを設定する要求トルク設定手段と、
前記設定された要求トルクに基づいて前記内燃機関を運転すべき目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、
前記検出された前記電力動力入出力手段の駆動状態と前記検出された前記電動機回転数と前記設定された要求トルクと前記設定された入出力制限とを用いて前記電力動力入出力手段を駆動してもよい範囲の上下限としての駆動制限を設定する駆動制限設定手段と、
前記設定された駆動制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するよう前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定する目標駆動状態設定手段と、
前記設定された駆動制限と前記蓄電手段の性能上の余裕電力とに基づいて前記電力動力入出力手段から前記駆動軸に出力されるトルクの許容範囲の上下限としてのトルク制限を設定するトルク制限設定手段と、
前記電力動力入出力手段を前記目標駆動状態で駆動したときに前記駆動軸に出力されるトルクである目標駆動状態作用トルクと前記内燃機関の運転状態の変更に伴って前記駆動軸に出力されるトルクである運転状態変更作用トルクとの和のトルクである駆動軸作用トルクを前記設定されたトルク制限により制限してなる制限後トルクおよび前記設定された要求トルクに基づいて前記設定された入出力制限の範囲内で前記電動機から出力すべきトルクの目標値である目標電動機トルクを設定する目標電動機トルク設定手段と、
前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転され、前記設定された目標駆動状態で前記電力動力入出力手段が駆動され、前記設定された目標電動機トルクが前記電動機から出力されるよう、前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の動力出力装置では、駆動軸に要求される要求トルクに基づいて内燃機関を運転すべき目標運転ポイントを設定し、電力動力入出力手段の駆動状態と電動機の回転数と要求トルクと蓄電手段を充放電してもよい許容最大電力である入出力制限とを用いて電力動力入出力手段を駆動してもよい範囲の上下限としての駆動制限を設定すると共に設定した駆動制限の範囲内で設定した目標運転ポイントで内燃機関を運転するよう電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定する。続いて、設定した駆動制限と蓄電手段の性能上の余裕電力とに基づいて電力動力入出力手段から駆動軸に出力されるトルクの許容範囲の上下限としてのトルク制限を設定すると共に電力動力入出力手段を目標駆動状態で駆動したときに駆動軸に出力されるトルクである目標駆動状態作用トルクと内燃機関の運転状態の変更に伴って駆動軸に出力されるトルクである運転状態変更作用トルクとの和のトルクである駆動軸作用トルクを設定したトルク制限により制限してなる制限後トルクおよび要求トルクに基づいて蓄電手段の入出力制限の範囲内で電動機から出力すべきトルクの目標値である目標電動機トルクを設定する。そして、設定した目標運転ポイントで内燃機関が運転され、設定した目標駆動状態で電力動力入出力手段が駆動され、設定した目標電動機トルクが電動機から出力されるよう、内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する。このように、電力動力入出力手段の目標駆動状態での駆動と内燃機関の運転状態の変更とを考慮して計算される駆動軸に出力される駆動軸作用トルクを、電力動力入出力手段の駆動制限と蓄電手段の性能上の余裕電力とに基づくトルク制限で制限して制限後トルクを求め、この制限後トルクと要求トルクとから電動機の目標電動機トルクを設定するから、内燃機関の運転状態の変更の際にも蓄電手段の入出力制限から余裕電力まで超過する範囲内で制御することができる。これにより、入出力制限から余裕電力を超える過大な電力による蓄電手段の充放電を抑制することができる。また、内燃機関の運転状態の変更を加味して電動機目標トルクを設定するから、内燃機関の運転状態の変更に伴って生じ得るトルクショックを抑制することができる。もとより、蓄電手段の入出力制限から余裕電力までの範囲内で要求トルクを駆動軸に出力することができる。
【0009】
こうした本発明の動力出力装置において、前記駆動制限設定手段は、前記駆動軸に出力されるトルクが値0から前記設定された要求トルクまでの範囲内となる関係と、前記電力動力入出力手段から入出力される電力と前記電動機から入出力される電力との和が前記設定された入出力制限の範囲内となる関係と、に基づいて前記駆動制限を設定する手段であるものとすることもできる。
【0010】
また、本発明の動力出力装置において、前記余裕電力は、所定時間内であれば前記設定された入出力制限を超えて前記蓄電手段を充放電しても該蓄電手段の性能に悪影響を与えない程度の超過分の電力であるものとすることもできる。
【0011】
さらに、本発明の動力出力装置において、前記目標電動機トルク設定手段は、前記要求トルクから前記制限後トルクを減じて得られるトルクを更に前記設定された入出力制限で制限して前記目標電動機トルクを設定する手段であるものとすることもできる。また、前記目標駆動状態作用トルクは、前記出力軸と前記駆動軸との回転数変化がないとしたときに計算上として前記電力動力入出力手段から前記駆動軸に出力されるトルクに対して前記出力軸と前記駆動軸との回転数変化を考慮した係数を用いて得られるトルクであるものとすることもできる。
【0012】
あるいは、本発明の動力出力装置において、前記運転状態変更作用トルクは、前記内燃機関を始動するときの初爆に基づいて前記駆動軸に作用するとして設定されたトルクであるものとすることもできる。また、前記運転状態変更作用トルクは、前記内燃機関への燃料供給の停止に基づいて前記駆動軸に作用するとして設定されたトルクであるものとすることもできる。この他、運転状態変更作用トルクとしては、排気を吸気系に供給する装置においては排気の吸気系への供給を開始する際に駆動軸に作用するとして設定されたトルクや排気の吸気系への供給を停止する際に駆動軸に作用するとして設定されたトルクなどを用いるものとすることもできる。
【0013】
また、本発明の動力出力装置において、前記電力動力入出力手段は、動力を入出力可能な発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段であり、前記駆動状態検出手段は前記発電機の回転数である発電機回転数を検出する手段であり、前記目標運転ポイント設定手段は前記内燃機関を運転すべき目標回転数と前記内燃機関から出力すべき目標トルクとを前記目標運転ポイントとして設定する手段であり、前記駆動制限設定手段は前記発電機から出力してもよいトルクの範囲の上下限としての発電機トルク制限を前記駆動制限として設定する手段であり、前記目標駆動状態設定手段は、前記内燃機関が前記設定された目標回転数で回転するよう前記発電機から出力すべきトルクの目標値である目標発電機トルクを前記目標駆動状態として設定する手段であり、前記制御手段は、前記設定された目標トルクが前記内燃機関から出力されるよう該内燃機関を制御し、前記設定された目標発電機トルクが前記発電機から出力されるよう該発電機を制御し、前記設定された目標電動機トルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御する手段である、ものとすることもできる。
【0014】
本発明の車両は、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置、即ち、基本的には、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、内燃機関と、前記駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とにトルクを入出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充放電してもよい許容最大電力である入出力制限を設定する入出力制限設定手段と、前記電力動力入出力手段の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、前記電動機の回転数である電動機回転数を検出する電動機回転数検出手段と、前記駆動軸に要求される要求トルクを設定する要求トルク設定手段と、前記設定された要求トルクに基づいて前記内燃機関を運転すべき目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、前記検出された前記電力動力入出力手段の駆動状態と前記検出された前記電動機回転数と前記設定された要求トルクと前記設定された入出力制限とを用いて前記電力動力入出力手段を駆動してもよい範囲の上下限としての駆動制限を設定する駆動制限設定手段と、前記設定された駆動制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するよう前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定する目標駆動状態設定手段と、前記設定された駆動制限と前記蓄電手段の性能上の余裕電力とに基づいて前記電力動力入出力手段から前記駆動軸に出力されるトルクの許容範囲の上下限としてのトルク制限を設定するトルク制限設定手段と、前記電力動力入出力手段を前記目標駆動状態で駆動したときに前記駆動軸に出力されるトルクである目標駆動状態作用トルクと前記内燃機関の運転状態の変更に伴って前記駆動軸に出力されるトルクである運転状態変更作用トルクとの和のトルクである駆動軸作用トルクを前記設定されたトルク制限により制限してなる制限後トルクおよび前記設定された要求トルクに基づいて前記設定された入出力制限の範囲内で前記電動機から出力すべきトルクの目標値である目標電動機トルクを設定する目標電動機トルク設定手段と、前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転され、前記設定された目標駆動状態で前記電力動力入出力手段が駆動され、前記設定された目標電動機トルクが前記電動機から出力されるよう、前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する制御手段と、を備える動力出力装置を搭載し、車軸が前記駆動軸に連結されてなることを要旨とする。
【0015】
この本発明の車両では、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置を搭載するから、本発明の動力出力装置が奏する効果、例えば、入出力制限から余裕電力を超える過大な電力による蓄電手段の充放電を抑制することができる効果や内燃機関の運転状態の変更に伴って生じ得るトルクショックを抑制することができる効果、蓄電手段の入出力制限から余裕電力までの範囲内で要求トルクを駆動軸に出力することができる効果などと同様な効果を奏することができる。
【0016】
本発明の動力出力装置の制御方法は、
内燃機関と、駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とにトルクを入出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備え、前記駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、
(a)前記駆動軸に要求される要求トルクに基づいて前記内燃機関を運転すべき目標運転ポイントを設定し、
(b)前記電力動力入出力手段の駆動状態と前記電動機の回転数と前記要求トルクと前記蓄電手段を充放電してもよい許容最大電力である入出力制限とを用いて前記電力動力入出力手段を駆動してもよい範囲の上下限としての駆動制限を設定し、
(c)前記設定した駆動制限の範囲内で前記設定した目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するよう前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、
(d)前記設定した駆動制限と前記蓄電手段の性能上の余裕電力とに基づいて前記電力動力入出力手段から前記駆動軸に出力されるトルクの許容範囲の上下限としてのトルク制限を設定し、
(e)前記電力動力入出力手段を前記目標駆動状態で駆動したときに前記駆動軸に出力されるトルクである目標駆動状態作用トルクと前記内燃機関の運転状態の変更に伴って前記駆動軸に出力されるトルクである運転状態変更作用トルクとの和のトルクである駆動軸作用トルクを前記設定したトルク制限により制限してなる制限後トルクおよび前記要求トルクに基づいて前記入出力制限の範囲内で前記電動機から出力すべきトルクの目標値である目標電動機トルクを設定し、
(f)前記設定した目標運転ポイントで前記内燃機関が運転され、前記設定した目標駆動状態で前記電力動力入出力手段が駆動され、前記設定した目標電動機トルクが前記電動機から出力されるよう、前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する、
ことを要旨とする。
【0017】
この本発明の動力出力装置の制御方法では、駆動軸に要求される要求トルクに基づいて内燃機関を運転すべき目標運転ポイントを設定し、電力動力入出力手段の駆動状態と電動機の回転数と要求トルクと蓄電手段を充放電してもよい許容最大電力である入出力制限とを用いて電力動力入出力手段を駆動してもよい範囲の上下限としての駆動制限を設定すると共に設定した駆動制限の範囲内で設定した目標運転ポイントで内燃機関を運転するよう電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定する。続いて、設定した駆動制限と蓄電手段の性能上の余裕電力とに基づいて電力動力入出力手段から駆動軸に出力されるトルクの許容範囲の上下限としてのトルク制限を設定すると共に電力動力入出力手段を目標駆動状態で駆動したときに駆動軸に出力されるトルクである目標駆動状態作用トルクと内燃機関の運転状態の変更に伴って駆動軸に出力されるトルクである運転状態変更作用トルクとの和のトルクである駆動軸作用トルクを設定したトルク制限により制限してなる制限後トルクおよび要求トルクに基づいて蓄電手段の入出力制限の範囲内で電動機から出力すべきトルクの目標値である目標電動機トルクを設定する。そして、設定した目標運転ポイントで内燃機関が運転され、設定した目標駆動状態で電力動力入出力手段が駆動され、設定した目標電動機トルクが電動機から出力されるよう、内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する。このように、電力動力入出力手段の目標駆動状態での駆動と内燃機関の運転状態の変更とを考慮して計算される駆動軸に出力される駆動軸作用トルクを、電力動力入出力手段の駆動制限と蓄電手段の性能上の余裕電力とに基づくトルク制限で制限して制限後トルクを求め、この制限後トルクと要求トルクとから電動機の目標電動機トルクを設定するから、内燃機関の運転状態の変更の際にも蓄電手段の入出力制限から余裕電力まで超過する範囲内で制御することができる。これにより、入出力制限から余裕電力を超える過大な電力による蓄電手段の充放電を抑制することができる。また、内燃機関の運転状態の変更を加味して電動機目標トルクを設定するから、内燃機関の運転状態の変更に伴って生じ得るトルクショックを抑制することができる。もとより、蓄電手段の入出力制限から余裕電力までの範囲内で要求トルクを駆動軸に出力することができる。
【0018】
こうした本発明の動力出力装置の制御方法において、前記ステップ(b)は、前記駆動軸に出力されるトルクが値0から前記要求トルクまでの範囲内となる関係と、前記電力動力入出力手段から入出力される電力と前記電動機から入出力される電力との和が前記入出力制限の範囲内となる関係と、に基づいて前記駆動制限を設定するステップであるものとすることもできる。また、前記余裕電力は、所定時間内であれば前記設定された入出力制限を超えて前記蓄電手段を充放電しても該蓄電手段の性能に悪影響を与えない程度の超過分の電力であるものとすることもできる。
【0019】
また、本発明の動力出力装置の制御方法において、前記電力動力入出力手段は、動力を入出力可能な発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段であり、前記電力動力入出力手段の駆動状態は、前記発電機の回転数である発電機回転数であり、前記ステップ(a)は、前記内燃機関を運転すべき目標回転数と前記内燃機関から出力すべき目標トルクとを前記目標運転ポイントとして設定するステップであり、前記ステップ(b)は、前記発電機から出力してもよいトルクの範囲の上下限としての発電機トルク制限を前記駆動制限として設定するステップであり、前記ステップ(c)は、前記内燃機関が前記設定された目標回転数で回転するよう前記発電機から出力すべきトルクの目標値である目標発電機トルクを前記目標駆動状態として設定するステップであり、前記ステップ(f)は、前記設定された目標トルクが前記内燃機関から出力されるよう該内燃機関を制御し、前記設定された目標発電機トルクが前記発電機から出力されるよう該発電機を制御し、前記設定された目標電動機トルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御するステップである、ものとすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0022】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化装置(三元触媒)134を介して外気へ排出される。
【0023】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室内に取り付けられた圧力センサ143からの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号AF,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0024】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0025】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0026】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。図3に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図4にバッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。
【0027】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0028】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0029】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にエンジン22の燃料カットするときやエンジン22の始動時の初爆のタイミングのときの動作について説明する。図5はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0030】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neはクランクポジションセンサ140からの信号に基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0031】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図6に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kvを乗じること(Nr=kv・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めることができる。
【0032】
続いて、エンジン22の運転状態を判定する(ステップS120)。エンジン22の運転状態としては、負荷運転の状態、燃料噴射しながらモータリングしている状態、燃料カットしながらモータリングしている状態、始動している最中の状態、運転停止している状態がある。本発明は、エンジン22の運転状態が急変するとき、特に燃料カットするときや始動時の初爆のタイミングのときの動作を考えているから、エンジン22が運転停止している状態は本発明の中核をなさないため、詳細な説明は省略する。以下、まず、通常の負荷運転をしているときを説明し、その後、モータリングの最中に燃料カットするときについて説明し、最後に始動時の初爆のタイミングのときについて説明する。
【0033】
エンジン22を負荷運転しているときには、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS130)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図7に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0034】
次に、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm1tmpを計算する(ステップS140)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図8に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0035】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/ρ (1)
Tm1tmp=ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0036】
続いて、次式(3)および式(4)を共に満たすようモータMG1からトルクを出力してもよい上下限としてのトルク制限Tm1min,Tm1maxを設定し(ステップS180)、設定した仮トルクTm1tmpを式(5)によりトルク制限Tm1min,Tm1maxで制限してモータMG1のトルク指令Tm1*を設定する(ステップ190)。ここで、式(3)はモータMG1やモータMG2によりリングギヤ軸32aに出力されるトルクの総和が値0から要求トルクTr*までの範囲内となる関係であり、式(4)はモータMG1とモータMG2とにより入出力される電力の総和が入出力制限Win,Woutの範囲内となる関係である。トルク制限Tm1min,Tm1maxの一例を図9に示す。トルク制限Tm1min,Tm1maxは、図中斜線で示した領域内のトルク指令Tm1*の最大値と最小値として求めることができる。
【0037】
0≦−Tm1/ρ+Tm2・Gr≦Tr* (3)
Win≦Tm1・Nm1+Tm2・Nm2≦Wout (4)
Tm1*=max(min(Tm1tmp,Tm1max),Tm1min) (5)
【0038】
次に、エンジン22の始動時における初爆のタイミングであるか或いはエンジン22をモータリングしている最中における燃料カットのタイミングであるか否かを判定し(ステップS200)、判定結果に基づいて適合トルクTerajを設定する(ステップS210〜S230)。ここで、初爆のタイミングであるか否かについては、実施例では、エンジン22の始動時にエンジン22をモータリングをしてその回転数Neが閾値Nrefに至ったときにエンジンECU24により燃料噴射制御と点火制御とが開始されるから、エンジン22の回転数Neが閾値Nrefに至るタイミングとして判定することができる。また、燃料カットのタイミングであるか否かについては、実施例では、エンジンECU24からハイブリッド用電子制御ユニット70に対して燃料カットする直前に燃料カットを実行する旨の制御信号を送信するから、この制御信号を受信しているか否かにより判定することができる。適合トルクTerajは、エンジン22の始動時における初爆やエンジン22をモータリングしている最中における燃料カットにより駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用するトルクとして設定されるものであり、実験などにより求めることができる。いま、エンジン22を負荷運転しているときを考えているから、初爆のタイミングでも燃料カットのタイミングでもないと判定され、ステップS210により値0が適合トルクTerajに設定される。
【0039】
こうして適合トルクTerajを設定すると、設定したモータMG1のトルク指令Tm1*と適合トルクTerajとを用いて動力分配統合機構30を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるトルクである直達トルクTerを次式(6)により計算する(240)。ここで、式(6)中の「ki」は、モータMG1から出力されるトルクのうちエンジン22の回転数変化やモータMG1の回転数変化に用いられるトルクの割合であり、エンジン22の回転数変化やモータMG1の回転数変化によって求めることができる。定常状態であれば、エンジン22もモータMG1も回転数変化しないから、「ki」には値0が設定されることになる。
【0040】
Ter=-Tm1*・(1-ki)/ρ+Teraj (6)
【0041】
次に、式(3),(4)により求めたトルク制限Tm1min,Tm1maxとバッテリ50の余裕電力αとを用いて次式(7),(8)により直達トルクTerとしてバッテリ50の性能上許容できる範囲の上下限としての直達トルク制限Termin,Termaxを設定し(ステップS250)、式(9)に示すように、計算した直達トルクTerを直達トルク制限Termin,Termaxで制限して得られるトルク(制限後トルク)を要求トルクTr*から減じてモータMG2から出力すべき仮のトルクとしての仮トルクTm2tmpを設定する(ステップS260)。ここで、バッテリ50の余裕電力αは、バッテリ50を充放電する電力が100msecや200msec程度の短時間であれば入出力制限Win,Woutを超えてもバッテリ50に支障がない程度の超過分の電力であり、バッテリ50の種類や容量などにより定めることができる。いま、負荷運転しているときを考えているから、適合トルクTerajには値0が設定されていること、直達トルクTerがバッテリ50の入出力制限Win,Woutによる制限を受けたモータMG1のトルク指令Tm1*により設定されていること、とを考えると、直達トルクTerは制限を受けないものと同一の値となる。なお、式(7),(8)中の「ki」は、式(6)の「ki」と同一であり、モータMG1から出力されるトルクのうちエンジン22の回転数変化やモータMG1の回転数変化に用いられるトルクの割合である。
【0042】
Termin=-Tm1min(1-ki)/ρ-α/(Nm2/Gr) (7)
Termax=-Tm1max(1-ki)/ρ+α/(Nm2/Gr) (8)
Tm2tmp=[Tr*-max(min(Ter,Termax),Termin)]/Gr (9)
【0043】
そして、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(10)および式(11)により計算すると共に(ステップS270)、設定した仮トルクTm2tmpを式(12)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS280)。
【0044】
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (10)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (11)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (12)
【0045】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS290)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0046】
次に、エンジン22をモータリングしている最中に燃料カットするときについて考える。この場合、ステップS120では、モータリング中と判定され、エンジン22の目標回転数Ne*にはエンジン22の回転数が徐々にエンジン下限回転数Neminに近づくようにそのときのエンジン22の回転数Neからレート値Trtを減じた値を更にエンジン下限回転数Neminで制限した値が設定され、目標トルクTe*には値0が設定される(ステップS160)。ここで、エンジン下限回転数Neminは、車速VやシフトポジションSP,走行モード(パワーモードであるか否か)などにより定められるものである。また、レート値Trtは、エンジン22に燃料供給が行なわれているときにはエンジン22が失火しない程度の大きさに設定されており、エンジン22に対して燃料カットを行なっているときには燃料供給を行なっているときより大きな値が設定されている。なお、その大きさの程度は、駆動制御ルーチンの起動頻度やエンジン22の性能などにより設定される。
【0047】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*と値0の目標トルクTe*とを設定すると、上述の式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とに基づいて次式(13)によりモータMG1の仮トルクTm1tmpを計算する(ステップS170)。ここで、式(13)は、上述した式(2)と同様に、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(13)中、右辺第2項の「k3」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k4」は積分項のゲインである。式(13)の右辺第1項は、エンジン22を目標回転数Ne*定常的に回転させるのにモータMG1から出力すべきトルクであり、エンジン22への燃料供給を行なっているときには目標回転数Ne*が大きくなるほどその絶対値も大きくなるが比較的小さな値が用いられ、エンジン22に対して燃料カットを行なっているときにはエンジン22の回転数に応じたフリクション仕事に応じた値が用いられる。
【0048】
Tm1tmp=f(Ne*)+k3(Nm1*-Nm1)+k4∫(Nm1*-Nm1)dt (13)
【0049】
そして、ステップS180,S190の処理によりモータMG1のトルク指令Tm1*を設定し、エンジン22をモータリングしていても燃料カットのタイミングではないと判定されたときには適合トルクTerajに値0を設定し(ステップS200,S210)、この適合トルクTerajを用いてステップS240〜S280の処理によりモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、設定したエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS290)、駆動制御ルーチンを終了する。エンジン22をモータリングしている最中の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図10に示す。
【0050】
ステップS200で燃料カットのタイミングであると判定されると、エンジン22をモータリングしている最中における燃料カットにより駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用するトルクとして設定されている燃料カット時作用トルクTcutを適合トルクTerajとして設定し(ステップS230)、この燃料カット時作用トルクTcutが設定された適合トルクTerajを用いて上述した式(6)により直達トルクTerを計算する(ステップS240)。そして、式(7),(8)により得られる直達トルク制限Termin,Termaxにより直達トルクTerを制限してモータMG2の仮トルクTm2tmpを設定すると共に(ステップS260)、式(10),(11)により得られるトルク制限Tm2min,Tm2maxで式(12)により仮トルクTm2tmpを制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS280)、目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、トルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS290)、駆動制御ルーチンを終了する。このように制御することにより、即ち、エンジン22の燃料カットのタイミングのときの燃料カット時作用トルクTcutが設定された適合トルクTerajを加算して得られる直達トルクTerを、バッテリ50の余裕電力αを用いた直達トルク制限Termin,Termaxによって制限することによりモータMG2の仮トルクTm2tmpを設定すると共にこれをトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限することによりモータMG2のトルク指令Tm2*を設定して、モータMG1とモータMG2とを制御することにより、入出力制限Win,Woutから余裕電力αを超える過大な電力によるバッテリ50の充放電を抑制することができる。また、燃料カットにより駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用する燃料カット時作用トルクTcutを適合トルクTerajとして設定してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータMG2を制御することにより、エンジン22の燃料カットの際に生じ得るトルクショックを抑制することができる。なお、燃料カットのタイミングは、100msec程度の時間を考えればよいから、入出力制限Win,Woutより余裕電力α分だけ大きな電力によるバッテリ50の充放電を長時間に亘って行なうことはない。
【0051】
次に、エンジン22の始動時における初爆のタイミングのときについて考える。この場合、ステップS120では、エンジン22の始動中と判定され、モータMG1の仮トルクTm1tmpには、始動時のトルクマップとエンジン22の始動開始からの経過時間tとに基づくトルクが設定される(ステップS150)。エンジン22の始動時のトルクマップの一例とエンジン22の回転数Neの変化の様子の一例とを図11に示す。実施例のトルクマップは、エンジン22の始動指示がなされた時間t11の直後からレート処理を用いて比較的大きなトルクを仮トルクTm1tmpとして設定してエンジン22の回転数Neを迅速に増加させる。エンジン22の回転数Neが共振回転数帯を通過したか共振回転数帯を通過するのに必要な時間以降の時間t12にエンジン22を安定して閾値Nref以上でモータリングすることができるトルクを仮トルクTm1tmpに設定し、電力消費や駆動軸としてのリングギヤ軸32aにおける反力を小さくする。そして、エンジン22の回転数Neが閾値Nrefに至った時間t13からレート処理を用いて仮トルクTm1tmpを値0とし、エンジン22の燃料噴射制御や点火制御を開始し、エンジン22の完爆が判定された時間t15から発電用のトルクを仮トルクTm1tmpに設定する。
【0052】
こうしてモータMG1の仮トルクTm1tmpを設定すると、ステップS180,S190の処理によりモータMG1のトルク指令Tm1*を設定し、エンジン22の始動時における初爆のタイミングではないと判定されたときには適合トルクTerajに値0を設定し(ステップS200,S210)、この適合トルクTerajを用いてステップS240〜S280の処理によりモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、設定したエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS290)、駆動制御ルーチンを終了する。エンジン22を始動している最中の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図12に示す。
【0053】
ステップS200でエンジン22の始動時の初爆のタイミングであると判定されると、初爆により駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用するトルクとして設定されている初爆時作用トルクTexpを適合トルクTerajとして設定し(ステップS220)、この初爆時作用トルクTexpが設定された適合トルクTerajを用いて上述した式(6)により直達トルクTerを計算する(ステップS240)。そして、式(7),(8)により得られる直達トルク制限Termin,Termaxにより直達トルクTerを制限してモータMG2の仮トルクTm2tmpを設定すると共に(ステップS260)、式(10),(11)により得られるトルク制限Tm2min,Tm2maxで式(12)により仮トルクTm2tmpを制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS280)、目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、トルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS290)、駆動制御ルーチンを終了する。このように制御することにより、即ち、エンジン22の始動時における初爆のタイミングのときの初爆時作用トルクTexpが設定された適合トルクTerajを加算して得られる直達トルクTerを、バッテリ50の余裕電力αを用いた直達トルク制限Termin,Termaxによって制限することによりモータMG2の仮トルクTm2tmpを設定すると共にこれをトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限することによりモータMG2のトルク指令Tm2*を設定して、モータMG1とモータMG2とを制御することにより、入出力制限Win,Woutから余裕電力αを超える過大な電力によるバッテリ50の充放電を抑制することができる。また、初爆により駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用する初爆時作用トルクTexpを適合トルクTerajとして設定してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータMG2を制御することにより、エンジン22の始動時における初爆の際に生じ得るトルクショックを抑制することができる。なお、初爆のタイミングは、100msec程度の時間を考えればよいから、入出力制限Win,Woutより余裕電力α分だけ大きな電力によるバッテリ50の充放電を長時間に亘って行なうことはない。
【0054】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22の燃料カットのタイミングのときには、エンジン22をモータリングするのに必要な仮トルクTm1tmpをモータMG1やモータMG2によりリングギヤ軸32aに出力されるトルクの総和が値0から要求トルクTr*までの範囲内となる関係(式(3))とモータMG1とモータMG2とにより入出力される電力の総和が入出力制限Win,Woutの範囲内となる関係(式(4))とを用いて得られるトルク制限Tm1min,Tm1maxにより制限してモータMG1のトルク指令Tm1*を設定し、燃料カットにより駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用する燃料カット時作用トルクTcutが設定された適合トルクTerajとモータMG1のトルク指令Tm1*とエンジン22およびモータMG1の回転数変化とにより直達トルクTerを計算すると共にこの直達トルクTerをトルク制限Tm1min,Tm1maxとバッテリ50の余裕電力αとを用いて設定される直達トルク制限Termin,Termaxによって制限して得られる制限後トルクと要求トルクTr*とに基づいてモータMG2の仮トルクTm2tmpを設定し、この仮トルクTm2tmpをバッテリ50の入出力制限Win,Woutから得られるトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、これらの設定値を用いてエンジン22やモータMG1,MG2を制御するから、エンジン22の燃料カット時に入出力制限Win,Woutから余裕電力αを超える過大な電力によるバッテリ50の充放電を抑制することができる。また、燃料カットにより駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用する燃料カット時作用トルクTcutを適合トルクTerajとして用いてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータMG2を制御するから、エンジン22の燃料カットの際に生じ得るトルクショックを抑制することができる。もとより、燃料カット時でも要求トルクTr*に基づくトルクを出力して走行することができる。
【0055】
また、実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22の始動時における初爆のタイミングのときには、エンジン22を始動するのに必要な仮トルクTm1tmpをトルク制限Tm1min,Tm1maxにより制限してモータMG1のトルク指令Tm1*を設定し、初爆により駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用する初爆時作用トルクTexpが設定された適合トルクTerajとモータMG1のトルク指令Tm1*とエンジン22およびモータMG1の回転数変化とにより直達トルクTerを計算すると共にこの直達トルクTerをトルク制限Tm1min,Tm1maxとバッテリ50の余裕電力αとを用いて設定される直達トルク制限Termin,Termaxによって制限して得られる制限後トルクと要求トルクTr*とに基づいてモータMG2の仮トルクTm2tmpを設定し、この仮トルクTm2tmpをバッテリ50の入出力制限Win,Woutから得られるトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、これらの設定値を用いてエンジン22やモータMG1,MG2を制御するから、エンジン22の始動時における初爆時に入出力制限Win,Woutから余裕電力αを超える過大な電力によるバッテリ50の充放電を抑制することができる。また、初爆により駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用する初爆時作用トルクTexpを適合トルクTerajとして用いてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータMG2を制御するから、エンジン22の始動時における初爆の際に生じ得るトルクショックを抑制することができる。もとより、初爆時でも要求トルクTr*に基づくトルクを出力して走行することができる。
【0056】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG1やモータMG2によりリングギヤ軸32aに出力されるトルクの総和が値0から要求トルクTr*までの範囲内となる関係(式(3))とモータMG1とモータMG2とにより入出力される電力の総和が入出力制限Win,Woutの範囲内となる関係(式(4))とによりトルク制限Tm1min,Tm1maxを設定するものとしたが、この手法に限定されるものではなく、如何なる手法によりトルク制限Tm1min,Tm1maxを設定するものとしてもよい。
【0057】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG1から出力されるトルクのうちエンジン22の回転数変化やモータMG1の回転数変化に用いられるトルクの割合(「ki」)を考慮して直達トルクTerを計算したり直達トルク制限Termin,Termaxを設定するものとしたが、式(6)中の「ki」を常に値0として直達トルクTerを計算したり直達トルク制限Termin,Termaxを設定するものとしても構わない。
【0058】
実施例のハイブリッド自動車20では、減速ギヤ35を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしたが、リングギヤ軸32aにモータMG2を直接取り付けるものとしてもよいし、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしても構わない。
【0059】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図13の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図13における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0060】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図14の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0061】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の車両や船舶,航空機などの移動体に搭載される動力出力装置の形態や建設設備などの移動しない設備に組み込まれた動力出力装置の形態としても構わない。さらに、こうした動力出力装置の制御方法の形態としてもよい。
【0062】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、動力分配統合機構30とモータMG1とが「電力動力入出力手段」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づくバッテリ50の残容量(SOC)とバッテリ50の電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算するバッテリECU52が「入出力制限設定手段」に相当し、回転位置検出センサ43とこの回転位置検出センサ43からの信号に基づいてモータMG1の回転数Nm1を演算するモータECU40とが「駆動状態検出手段」に相当し、回転位置検出センサ44とこの回転位置検出センサ44からの信号に基づいてモータMG2の回転数Nm2を演算するモータECU40とが「電動機回転数検出手段」に相当し、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS110の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求トルク設定手段」に相当し、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として要求パワーPe*を計算すると共に要求パワーPe*に基づいて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定したり、燃料供給時のレート値や燃料カット時のレート値を用いてエンジン22の目標回転数Ne*と値0の目標トルクTe*を設定したりする図5の駆動制御ルーチンのステップS110,S130,S160などの処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「目標運転ポイント設定手段」に相当し、モータMG1やモータMG2によりリングギヤ軸32aに出力されるトルクの総和が値0から要求トルクTr*までの範囲内となる関係(式(3))とモータMG1とモータMG2とにより入出力される電力の総和が入出力制限Win,Woutの範囲内となる関係(式(4))とを用いてトルク制限Tm1min,Tm1maxを設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS180の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「駆動制限設定手段」に相当し、エンジン22を目標回転数Ne*で回転させるよう計算されたモータMG1の仮トルクTm1tmpをトルク制限Tm1min,Tm1maxで制限することによりモータMG1のトルク指令Tm1*を設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS140,S150,S170,S190の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「目標駆動状態設定手段」に相当し、トルク制限Tm1min,Tm1maxとエンジン22やモータMG1の回転数変化とバッテリ50の余裕電力αとを用いて直達トルクTerとしてバッテリ50の性能上許容できる範囲の上下限としての直達トルク制限Termin,Termaxを設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS250の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「トルク制限設定手段」に相当し、モータMG1のトルク指令Tm1*にエンジン22およびモータMG1の回転数変化を加味して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるトルクと燃料カットや初爆により駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用する適合トルクTerajとの和である直達トルクTerを直達トルク制限Termin,Termaxによって制限して得られる制限後トルクと要求トルクTr*とに基づいてモータMG2の仮トルクTm2tmpを設定すると共にこれをトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限することによりモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS240,S260の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「目標電動機トルク設定手段」に相当し、設定したエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2の目標トルクTm1*,Tm2*をエンジンECU24やモータECU40に送信する図5の駆動制御ルーチンのステップS290の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24とトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40とが「制御手段」に相当する。また、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当する。また、対ロータ電動機230も「電力動力入出力手段」に相当する。
【0063】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電力動力入出力手段」としては、動力分配統合機構30とモータMG1とを組み合わせたものや対ロータ電動機230に限定されるされるものではなく、駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とにトルクを入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、電力動力入出力手段や電動機と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「入出力制限設定手段」としては、バッテリ50の残容量(SOC)とバッテリ50の電池温度Tbとに基づいて入出力制限Win,Woutを演算するものに限定されるものではなく、残容量(SOC)や電池温度Tbの他に例えばバッテリ50の内部抵抗などに基づいて演算するものなど、蓄電手段の状態に基づいて蓄電手段の充放電してもよい許容最大電力である入出力制限を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「駆動状態検出手段」としては、回転位置検出センサ43とこの回転位置検出センサ43からの信号に基づいてモータMG1の回転数Nm1を演算するものに限定されるものではなく、電力動力入出力手段の駆動状態を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機回転数検出手段」としては、回転位置検出センサ44とこの回転位置検出センサ44からの信号に基づいてモータMG2の回転数Nm2を演算するものに限定されるものではなく、電動機の回転数である電動機回転数を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「要求トルク設定手段」としては、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定するものに限定されるものではなく、アクセル開度Accだけに基づいて要求トルクを設定するものや走行経路が予め設定されているものにあっては走行経路における走行位置に基づいて要求トルクを設定するものなど、駆動軸に要求される要求トルクを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「目標運転ポイント設定手段」としては、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として要求パワーPe*を計算すると共に要求パワーPe*に基づいてエンジン22を効率よく運転する制約を用いて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定したり、燃料供給時のレート値や燃料カット時のレート値を用いてエンジン22の目標回転数Ne*と値0の目標トルクTe*を設定したりするものに限定されるものではなく、要求パワーPe*に基づいてエンジン22をできる限り大きなトルクを出力する制約を用いて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定したり、要求パワーPe*に基づいてエンジン22をできる限り小さな音で運転する制約を用いて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定したりするなど、設定された要求トルクに基づいて内燃機関を運転すべき目標運転ポイントを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「駆動制限設定手段」としては、モータMG1やモータMG2によりリングギヤ軸32aに出力されるトルクの総和が値0から要求トルクTr*までの範囲内となる関係(式(3))とモータMG1とモータMG2とにより入出力される電力の総和が入出力制限Win,Woutの範囲内となる関係(式(4))とを用いてトルク制限Tm1min,Tm1maxを設定するものに限定されるものではなく、式(3),(4)の関係を用いてモータMG1に供給してもよい電流値の上下限を設定するなど、電力動力入出力手段の駆動状態と電動機回転数と要求トルクと入出力制限とを用いて電力動力入出力手段を駆動してもよい範囲の上下限としての駆動制限を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「目標駆動状態設定手段」としては、エンジン22を目標回転数Ne*で回転させるよう計算されたモータMG1の仮トルクTm1tmpをトルク制限Tm1min,Tm1maxで制限することによりモータMG1のトルク指令Tm1*を設定するものに限定されるものではなく、エンジン22を目標回転数Ne*で回転させるよう計算されたモータMG1の仮目標電流を駆動制限として設定された電流範囲の上下限で制限することによりモータMG1の目標電流を設定するものとするなど、駆動制限の範囲内で目標運転ポイントで内燃機関を運転するよう電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「トルク制限設定手段」としては、トルク制限Tm1min,Tm1maxとエンジン22やモータMG1の回転数変化とバッテリ50の余裕電力αとを用いて直達トルクTerとしてバッテリ50の性能上許容できる範囲の上下限としての直達トルク制限Termin,Termaxを設定するものに限定されるものではなく、エンジン22やモータMG1の回転数変化を考慮せずに直達トルク制限Termin,Termaxを設定するものとしたり、バッテリ50の入力側の余裕電力と出力側の余裕電力とを異なるものを用いて直達トルク制限Termin,Termaxを設定するものとしたりするなど、駆動制限と蓄電手段の性能上の余裕電力とに基づいて電力動力入出力手段から駆動軸に出力されるトルクの許容範囲の上下限としてのトルク制限を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「目標電動機トルク設定手段」としては、モータMG1のトルク指令Tm1*にエンジン22およびモータMG1の回転数変化を加味して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるトルクと燃料カットや初爆により駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用する適合トルクTerajとの和である直達トルクTerを直達トルク制限Termin,Termaxによって制限して得られる制限後トルクと要求トルクTr*とに基づいてモータMG2の仮トルクTm2tmpを設定すると共にこれをトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限することによりモータMG2のトルク指令Tm2*を設定するものに限定されるものではなく、電力動力入出力手段を目標駆動状態で駆動したときに駆動軸に出力されるトルクである目標駆動状態作用トルクと内燃機関の運転状態の変更に伴って駆動軸に出力されるトルクである運転状態変更作用トルクとの和のトルクである駆動軸作用トルクをトルク制限により制限してなる制限後トルクおよび要求トルクに基づいて蓄電手段の入出力制限の範囲内で電動機から出力すべきトルクの目標値である目標電動機トルクを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「内燃機関の運転状態の変更」としては、エンジン22の始動時における初爆やエンジン22の燃料カットに限定されるものではなく、排気を吸気系に供給する排気供給装置(EGR)を備えるエンジンにおいては排気の吸気系への供給開始時や排気の吸気系への供給停止時など内燃機関の運転状態を変更するときであれば如何なる場合でもよい。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、目標回転数Ne*や目標トルクTe*に基づいてエンジン22を制御すると共にトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するものに限定されるものではなく、目標運転ポイントで内燃機関が運転され、目標駆動状態で電力動力入出力手段が駆動され、目標電動機トルクが電動機から出力されるよう、内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる作動作用を有するものなど、駆動軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0064】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、動力出力装置や車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】バッテリ50における電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。
【図4】バッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図5】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図7】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図8】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図9】トルク制限Tm1min,Tm1maxを設定する様子を説明する説明図である。
【図10】エンジン22をモータリングしている状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図11】エンジン22の始動時に用いられるトルクマップの一例とエンジン22の回転数Neの変化の様子の一例とを示す説明図である。
【図12】エンジン22の始動時においてエンジン22をモータリングしている状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図13】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図14】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0067】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136 スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
前記駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とにトルクを入出力する電力動力入出力手段と、
前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、
前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、
前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充放電してもよい許容最大電力である入出力制限を設定する入出力制限設定手段と、
前記電力動力入出力手段の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、
前記電動機の回転数である電動機回転数を検出する電動機回転数検出手段と、
前記駆動軸に要求される要求トルクを設定する要求トルク設定手段と、
前記設定された要求トルクに基づいて前記内燃機関を運転すべき目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、
前記検出された前記電力動力入出力手段の駆動状態と前記検出された前記電動機回転数と前記設定された要求トルクと前記設定された入出力制限とを用いて前記電力動力入出力手段を駆動してもよい範囲の上下限としての駆動制限を設定する駆動制限設定手段と、
前記設定された駆動制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するよう前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定する目標駆動状態設定手段と、
前記設定された駆動制限と前記蓄電手段の性能上の余裕電力とに基づいて前記電力動力入出力手段から前記駆動軸に出力されるトルクの許容範囲の上下限としてのトルク制限を設定するトルク制限設定手段と、
前記電力動力入出力手段を前記目標駆動状態で駆動したときに前記駆動軸に出力されるトルクである目標駆動状態作用トルクと前記内燃機関の運転状態の変更に伴って前記駆動軸に出力されるトルクである運転状態変更作用トルクとの和のトルクである駆動軸作用トルクを前記設定されたトルク制限により制限してなる制限後トルクおよび前記設定された要求トルクに基づいて前記設定された入出力制限の範囲内で前記電動機から出力すべきトルクの目標値である目標電動機トルクを設定する目標電動機トルク設定手段と、
前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転され、前記設定された目標駆動状態で前記電力動力入出力手段が駆動され、前記設定された目標電動機トルクが前記電動機から出力されるよう、前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備える動力出力装置。
【請求項2】
前記駆動制限設定手段は、前記駆動軸に出力されるトルクが値0から前記設定された要求トルクまでの範囲内となる関係と、前記電力動力入出力手段から入出力される電力と前記電動機から入出力される電力との和が前記設定された入出力制限の範囲内となる関係と、に基づいて前記駆動制限を設定する手段である請求項1記載の動力出力装置。
【請求項3】
前記余裕電力は、所定時間内であれば前記設定された入出力制限を超えて前記蓄電手段を充放電しても該蓄電手段の性能に悪影響を与えない程度の超過分の電力である請求項1または2記載の動力出力装置。
【請求項4】
前記目標電動機トルク設定手段は、前記要求トルクから前記制限後トルクを減じて得られるトルクを更に前記設定された入出力制限に基づいて制限して前記目標電動機トルクを設定する手段である請求項1ないし3いずれか記載の動力出力装置。
【請求項5】
前記目標駆動状態作用トルクは、前記出力軸と前記駆動軸との回転数変化がないとしたときに計算上として前記電力動力入出力手段から前記駆動軸に出力されるトルクに対して前記出力軸と前記駆動軸との回転数変化を考慮した係数を用いて得られるトルクである請求項1ないし4いずれか記載の動力出力装置。
【請求項6】
前記運転状態変更作用トルクは、前記内燃機関を始動するときの初爆に基づいて前記駆動軸に作用するとして設定されたトルクである請求項1ないし5いずれか記載の動力出力装置。
【請求項7】
前記運転状態変更作用トルクは、前記内燃機関への燃料供給の停止に基づいて前記駆動軸に作用するとして設定されたトルクである請求項1ないし5いずれか記載の動力出力装置。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか記載の動力出力装置であって、
前記電力動力入出力手段は、動力を入出力可能な発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段であり、
前記駆動状態検出手段は、前記発電機の回転数である発電機回転数を検出する手段であり、
前記目標運転ポイント設定手段は、前記内燃機関を運転すべき目標回転数と前記内燃機関から出力すべき目標トルクとを前記目標運転ポイントとして設定する手段であり、
前記駆動制限設定手段は、前記発電機から出力してもよいトルクの範囲の上下限としての発電機トルク制限を前記駆動制限として設定する手段であり、
前記目標駆動状態設定手段は、前記内燃機関が前記設定された目標回転数で回転するよう前記発電機から出力すべきトルクの目標値である目標発電機トルクを前記目標駆動状態として設定する手段であり、
前記制御手段は、前記設定された目標トルクが前記内燃機関から出力されるよう該内燃機関を制御し、前記設定された目標発電機トルクが前記発電機から出力されるよう該発電機を制御し、前記設定された目標電動機トルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御する手段である、
動力出力装置。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか記載の動力出力装置を搭載し、車軸が前記駆動軸に連結されてなる車両。
【請求項10】
内燃機関と、駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とにトルクを入出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備え、前記駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、
(a)前記駆動軸に要求される要求トルクに基づいて前記内燃機関を運転すべき目標運転ポイントを設定し、
(b)前記電力動力入出力手段の駆動状態と前記電動機の回転数と前記要求トルクと前記蓄電手段を充放電してもよい許容最大電力である入出力制限とを用いて前記電力動力入出力手段を駆動してもよい範囲の上下限としての駆動制限を設定し、
(c)前記設定した駆動制限の範囲内で前記設定した目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するよう前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、
(d)前記設定した駆動制限と前記蓄電手段の性能上の余裕電力とに基づいて前記電力動力入出力手段から前記駆動軸に出力されるトルクの許容範囲の上下限としてのトルク制限を設定し、
(e)前記電力動力入出力手段を前記目標駆動状態で駆動したときに前記駆動軸に出力されるトルクである目標駆動状態作用トルクと前記内燃機関の運転状態の変更に伴って前記駆動軸に出力されるトルクである運転状態変更作用トルクとの和のトルクである駆動軸作用トルクを前記設定したトルク制限により制限してなる制限後トルクおよび前記要求トルクに基づいて前記入出力制限の範囲内で前記電動機から出力すべきトルクの目標値である目標電動機トルクを設定し、
(f)前記設定した目標運転ポイントで前記内燃機関が運転され、前記設定した目標駆動状態で前記電力動力入出力手段が駆動され、前記設定した目標電動機トルクが前記電動機から出力されるよう、前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する、
動力出力装置の制御方法。
【請求項11】
前記ステップ(b)は、前記駆動軸に出力されるトルクが値0から前記要求トルクまでの範囲内となる関係と、前記電力動力入出力手段から入出力される電力と前記電動機から入出力される電力との和が前記入出力制限の範囲内となる関係と、に基づいて前記駆動制限を設定するステップである請求項10記載の動力出力装置の制御方法。
【請求項12】
前記余裕電力は、所定時間内であれば前記設定された入出力制限を超えて前記蓄電手段を充放電しても該蓄電手段の性能に悪影響を与えない程度の超過分の電力である請求項10または11記載の動力出力装置の制御方法。
【請求項13】
請求項10ないし12いずれか記載の動力出力装置の制御方法であって、
前記電力動力入出力手段は、動力を入出力可能な発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段であり、
前記電力動力入出力手段の駆動状態は、前記発電機の回転数である発電機回転数であり、
前記ステップ(a)は、前記内燃機関を運転すべき目標回転数と前記内燃機関から出力すべき目標トルクとを前記目標運転ポイントとして設定するステップであり、
前記ステップ(b)は、前記発電機から出力してもよいトルクの範囲の上下限としての発電機トルク制限を前記駆動制限として設定するステップであり、
前記ステップ(c)は、前記内燃機関が前記設定された目標回転数で回転するよう前記発電機から出力すべきトルクの目標値である目標発電機トルクを前記目標駆動状態として設定するステップであり、
前記ステップ(f)は、前記設定された目標トルクが前記内燃機関から出力されるよう該内燃機関を制御し、前記設定された目標発電機トルクが前記発電機から出力されるよう該発電機を制御し、前記設定された目標電動機トルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御するステップである、
動力出力装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−247226(P2008−247226A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91579(P2007−91579)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】