説明

医用画像診断装置

【課題】医用画像診断装置において、動画再生を伴う読影作業上の効率化及び動画記録資源の有効利用を図ること。
【解決手段】被検体に関する医用画像データを動画として連続的に発生し、医用画像データを動画として即時表示する医用画像診断装置は、動画の時間スケール上の複数のタイミングで操作者が入力した複数種類の重要度に従って重要度時間変化を表すタイムカーブデータを発生する栞付加プロセッサ113と、医用画像データと前記タイムカーブデータと記憶する記録装置114とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像記録再生機能を持ったX線テレビシステム、超音波診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴映像装置等の医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術の進展に伴い超音波診断装置や磁気共鳴映像装置は、人体の解剖学的な断面図を非侵襲的に得る方法として極めて有効であり、X線等の侵襲性の高い電磁波を用いないため、連続的な撮影が可能である。とくに、超音波診断装置の通常検査で動画が発生し、MRIでも位置決めダイナミックロケーター、タイムレゾルブドMRA(MRアンギオ)、フルオロトリガードMRA、画像ガイダンスのもとで経皮経管治療などを行うインターベンショナル、リアルタイム位置決めなどのインタラクティブ的な使用方法が実用化されつつある。
【0003】
ところで、撮影は医師の指示に従って撮影専門の技師により行われるのが一般的である。このため動画データを磁気ディスク装置などに一旦記録しておき、読影診断に際しては、再生した動画を医師が観察することになる。
【0004】
しかし、長時間にわたって記録した動画データの内、実際に読影診断に必要とされるのは、ほんの一部分のシーンである。そのため記録された長時間の動画の中からその必要なシーンを探し出すのは、非常に時間と手間のかかる非効率な作業であった。
【0005】
その作業負担を軽減する方法として、従来では、撮影で発生する動画データの全てを記録するのではなく、技師が独自の判断で読影診断に必要と推定したシーンだけを記録しておき、読影時には医師がそのシーンだけを診ることがあった。
【0006】
しかし、この方法によると、記録部分が技師によって変わる。つまり、診断に必要なシーンが記録されていないという情報欠落や逆に記録部分が多くなって記録媒体の有効利用や読影作業効率の向上が期待できないという事態、さらには記録開始の指示から実際に動画記録が始まるまでに若干のタイムラグがあるので、所望するシーンが記録されていないという事態も起こることがある。
【0007】
また、動画での診断は静止画に比べはるかに情報量が豊富で診断能が高いと考えられる。これらの動画を記録し、診断に供する手段としてアナログ的なVTRもしくはデジタル的な全画像のアーカイブかのどちらかしかサポートされていなかった。
【0008】
さらに、動画での診断は有効性が高いが、動画のやり取りに時間がかかる、適切な機能を備えた診断用ワークステーションはハードウェア的に高価につく、ネットワークの転送に時間がかかるなどの決定があった。
これらの問題に関して以下に、具体的に説明する。例えば超音波診断においては、VTRによる検査記録では、一連の診断をビデオテープに記録する場合が多いが、この画像を検査後にレビューする際には、通常、早送り再生などの機能はあるがシーケンシャルに記録されているため、ランダムアクセスができず、このため所望の画像区間を検索するのに効率的でない、という問題点がある。この問題は、最近、普及の著しいMPEGなどに代表されるデジタルフォーマットで動画記録する手段により、一応の解決には至るが、一般的な規格の流用では、以下のような場合不便である。
【0009】
デジタル記録は普通、圧縮率が事前に設定される。高い圧縮率の場合はファイルサイズの低減や高速記録が可能となるが画質が低下する。低い圧縮率の場合、画質は保持されるがファイルサイズが大きくなる。またこれとは別に記録画像のピクセル数(いわゆる画像サイズ)もあらかじめ設定されるが、言うまでもなくサイズが大きい場合情報は増えるがファイルサイズは増加する。これらの設定は通常、動画記録の途中には変更されない。しかし診断画像の中にはあまり高解像を必要としない区間(例えば位置決め中の重要度の比較的低い期間)と高分解能で再生したい区間(例えば撮影位置が定まって重要度が比較的高くなる期間)が存在する。
【0010】
ディジタル記録では、ランダムアクセスは、機能上可能だが、実際にはアクセスするためのマーカー(栞)を診断中などに記録しなくてはならない。従来、積極的にこれを行う手段は存在しない。また、自動でこれを行う機能も存在しない。
【0011】
記録の際の有効な圧縮率は、動画であることが前提で決定される場合がある。すなわち、個々のフレーム画像は圧縮による画質劣化が確認されるが、動画像で次々と流れてゆく場合にはあまり知覚されない場合がある。しかしながら超音波診断では、心拍同期した画像を観察する場合がある。この場合、心拍にあわせてフレームが更新されるためいわゆるフレームレートは1Hz程度で、動画というよりは静止画の集合と言える。このような場合、圧縮率の高い記録フォーマットでは、経験的には画質劣化が露見してしまい診断には不向きとなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、医用画像診断装置において、動画再生を伴う読影作業上の効率化及び動画記録資源の有効利用を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本実施形態に係る医用画像診断装置は、被検体に関する医用画像データを動画として連続的に発生する手段と、医用画像データを動画として即時表示する手段と、動画の時間スケール上の複数のタイミングで操作者が入力した複数種類の重要度に従って重要度時間変化を表すタイムカーブデータを発生する手段と、医用画像データと前記タイムカーブデータと記憶する記録装置とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気共鳴映像装置の外観を示す図。
【図2】図1の画像記録装置の構成を示す図。
【図3】第1実施形態において、撮影時(記録時)の栞データの種類(重要度)の時間変化と、再生時に読影者(医師)により設定される重要度とを示す図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る医用画像診断装置の記録再生部分の構成を示す図。
【図5】第2実施形態において、造影剤注入を利用して栞データ発生タイミングを計る方法の説明図。
【図6】第2実施形態において、自動的に付加された栞データの確認修正画面例を示す図。
【図7】第2実施形態において、自動的に付加された栞データの確認修正画面の他の例を示す図。
【図8】第2実施形態に係る医用画像診断装置として超音波診断装置の構成例を示す図。
【図9】第2実施形態に係る医用画像診断装置として超音波診断装置の他の構成例を示す図。
【図10】第2実施形態において栞データの一例を示す図。
【図11】第2実施形態に係る医用画像診断装置として超音波診断装置のさらに他の構成例を示す図。
【図12】第2実施形態においてイメージメモリ回路の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、医用画像診断装置は、被検体を撮影して、医用画像データを動画として連続的に発生する装置であり、その例としては、X線テレビシステム、超音波診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴映像装置が想定され得る。本発明はそれらいずれの装置にも適用可能である。 (第1実施形態)
本実施形態では、医用画像診断装置として、磁気共鳴映像装置を例に説明するものとする。図1は、本発明の第1実施形態に係る磁気共鳴映像装置の外観を示す図である。当該装置は、周知の通り、MRIガントリ1とMRIコンピュータシステム2とから構成される。MRIガントリ1は、磁石部4と寝台部5とからなり、磁石部4には、撮影領域内に静磁場を発生する静磁場磁石、その静磁場に重畳される傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル、そして被検体の対象原子核のスピンに対して励起や反転等の作用を及ぼす高周波磁場を発生し、また対象原子核のスピンからの磁気共鳴信号を受信するためのRFコイル等が設けられている。これら傾斜磁場や高周波磁場の発生から磁気共鳴信号の受信に至る一連の動作及びその繰り返しは、パルスシーケンスデータに従ってMRIコンピュータシステム2のMRIコンピュータユニット8から発生される制御信号によって完全にコントロールされている。MRIコンピュータユニット8の主な機能としてはこのパルスシーケンスコントロール以外に、RFコイルを介して受信した磁気共鳴信号を処理して画像データを発生する機能がある。
【0016】
MRIコンピュータユニット8内の記憶要素には様々な種類のパルスシーケンスデータがプレインストールされており、操作者(撮影技師)は入力機器6を操作して特定のパルスシーケンスデータで撮影を行うことができるようになっている。プレインストールされているパルスシーケンスデータの中には、動画撮影用のダイナミック撮影、タイムゾルブドMRA(MRアンギオ)、フルオロトリガードMRA、画像ガイダンスのもとで経皮経管治療などを行うインターベンショナル、リアルタイム位置決め等の例えばエコープラナー法をベースとした時間分解能の高い種類のものも含まれている。
【0017】
ここで入力機器6は、従来と同様の撮影パラメータの設定等の機能の他に、撮影技師が撮影中に即時表示される画像(動画)を見ながら、その時間スケール上の任意の時刻に栞(栞)を挿入することを指示するための入力機能を備えている。操作者は、例えば動画を見ながら、重要と判断した部分に栞を挿入する。この栞としては、例えば2種類(2段階)が用意されており、操作者は画像の重要度に応じて疎の2種類の栞を使い分けることができる。栞の種類は、もちろん、それ以上の4種類(4段階)、8種類(8段階)が用意されていて、操作者が更に細かく判断した重要度に応じて更に細かく使い分けることができるようになっていてもよい。
【0018】
実際の操作部としては、栞入力ボタンとして特定のキーボードボタンを種類ごとに割り当てるようにしてもよいし、GUI(グラフィカルユーザインタフェース)を利用してもよい。また、それ専用のキーやダイヤルを設けるようにしてもよい。さらには、操作者(撮影技師)の両手を栞入力操作から開放するために、フットスイッチを採用するようにしてもよい。
【0019】
この栞データは、動画データとともにMRIコンピュータユニット8内の画像記録装置に供給される。図2に示すように、画像記録装置には、動画データを磁気ディスク、光磁気ディスク(MO)、CD−R、CD−RW、DVD−RW、DVD−RAM等の大容量記録媒体に記録するための記録装置本体114とともに、記録系統として、A/Dコンバータ111、バッファ112、栞付加プロセッサ113が設けられ、さらに再生系統として、バッファ115、再生プロセッサ116、D/Aコンバータ117が設けられている。
【0020】
栞付加プロセッサ113は、入力機器6からの栞データを動画データに付加又は関連付けるもので、栞データを関連付けた動画データを記録するために記録装置114に出力する。関連付けの方法としては、特に限定はしないが、例えば動画データにタグとして添付してもよいし、動画データを構成する静止画データのヘッダ領域に栞データの有無、種類(重要度)、タイムコードを書き込むようにしてもよい。また、栞データの時間変化を表すタイムカーブデータを、一連の動画データとともに記憶するようにしてもよい。
【0021】
なお、記憶装置114は、それに記録した動画データを読み出す際、常に栞データとともに読み出すように設定されており、これにより、動画データを他の媒体に移動したり、コピーする場合にもその栞データは引き継がれ、この栞データを使った再生作業の利便性が維持され得るようになっている。
【0022】
記録された動画データは、栞データとともに読み出され、バッファ115を介して再生プロセッサ116に取り込まれる。再生プロセッサ116は、動画データを、入力機器13からの指示に従って再生する。読影者は、入力機器13は、栞データに基づいた様々な再生方法を選択的に指定することができる。その方法としては、例えば、栞データの時刻の画像データだけを一覧表示する方法、任意の種類(重要度又はそれ以上の重要度)で栞データが付けられている動画の一部分だけを部分的に再生する方法、任意の種類(重要度又はそれ以上の重要度)で栞データが付けられている動画の一部分だけを実時間の速度で再生し、その重要度以外又はその重要度未満の栞データが付けられている部分を早送りで再生する方法が用意されている。
【0023】
図3には、撮影時(記録時)の栞データの種類(重要度)の時間変化を実線で、また再生時に読影者(医師)により設定される重要度を破線で示している。まず、撮影技師は、被検体の撮影の最中に、その画像(動画)をディスプレイ7でリアルタイムで観ながら、栞データの種類、つまり重要度を調整する。例えば、図3のダイナミック撮影Aに示すように、撮影位置を探索している(リアルタイム位置決め)期間は、栞を付けない、又は低い重要度(例えば最低レベルの“1”)に対応する種類の栞データを指定し、その撮影位置が決まって本撮影を行う動態観察期間には、栞をつける又は高い重要度(例えば最高レベルの“8”)の種類の栞データに切り換える。その本撮影が終わって、次の撮影位置を決めるための再位置決め期間には、重要度を例えば“2”に下げ、位置が決まった語の本撮影期間には例えば“4”に高くする。
【0024】
このような重要度を時間的に変えていくような状況は様々な種類の撮影で必要とされ、図3に示すように、フルオロトリガードMRA(B)では、血流をモニターしている期間は記録重要度を低く設定するであろうし、特定の時相(例えば動脈相)が訪れた期間には高く設定すべきである。また、造影剤を使ったダイナミック撮影Cでは、注目領域に造影剤が到達するのをモニターしている期間(造影剤が到達する前)には、記録重要度を低く設定し、造影剤が到達した期間には高く設定する。また、Dに示すように、フルオロスコピー位置決め期間には記録重要度を低く、動態観察期間にはそれよりも高くし、さらにその動態観察期間であっても撮影の状況によってはレベルを変更することもあり得る。
【0025】
このように撮影期間中に発生した動画データは、従来のように情報欠落することなく、全て揃った状態で、記録重要度データとともに、記録される。そして読影に際しては、まず、読影者により重要度(再生重要度)が設定されると、再生プロセッサ116により、記録重要度が再生重要度を超えている又は以上である動画データの一部分が抽出される。そして抽出した動画データの一部分だけがビデオデータとして出力され、ディスプレイ12に表示される。図3の再生重要度が“7”に設定された例では、記録重要度を“8”に設定した時刻t1〜t2の期間の部分だけが動画として再生される。ここで、医師が時刻t1〜t2の期間以外の期間の動画を観察したいときには、再生重要度を低く再設定すればよく、図3には、再生重要度を“3”に再設定した例が示されており、この再生レベルでは、記録重要度が“8”の期間(時刻t1〜t2)だけでなく、記録重要度が“4”に設定されている期間(時刻t3〜)の期間の動画部分も加わって再生表示される。具体的は、記録重要度が“8”の期間(時刻t1〜t2)の動画が再生され、それに引き続いて記録重要度が“4”に設定されている期間(時刻t3〜)の動画が直ちに再生される。 もちろんすべての動画データを再生することは、再生重要度を最低レベル(“1”又は“0”)に設定することで簡単に対処することができる。
【0026】
このように本実施形態によると、撮影期間中に発生した動画データの全てを記録するので、従来のような撮影期間中に発生した動画データを部分的に記録する場合に生じていた問題、つまり読影時に必要な情報が記録されていないという問題が発生しない。しかも、撮影記録時に、技師が重要度ベルを設定し、その重要度を必要に応じて変更し、その重要度データを動画データと時間的な関連性をもたせて記憶しておき、再生時には医師が設定した重要度に従って動画データの一部分を抽出して部分的に再生するようにしたので、医師はすべての動画を観察することを課せられたり、所望するシーンを早送り等により探索するといった手間が不要になり、読影作業を効率よく進めることができる。
【0027】
上述の説明では、重要度に応じて動画を部分的に再生するようになっていたが、これは次のように変形できる。例えば、読影者により重要度(再生重要度)が設定されると、再生プロセッサ116により、記録重要度が再生重要度を超えている又は以上である動画データの一部分だけを、撮影時と同じ時間スケールで実時間により再生し、その一方で、記録重要度が再生重要度以下又は下回っている動画データの他の部分に関しては、撮影時よりも時間スケールが短い、つまり早送りで再生するようにしてもよい。さらに、記録重要度が再生重要度を超えている又は以上である動画データの一部分だけを、撮影時と同じ時間スケールで実時間により再生し、その一方で、記録重要度が再生重要度以下又は下回っている動画データの他の部分に関しては、画面だけをブラックアウトし、そのまま当該他の期間が実時間で経過するまで継続させるようにしてもよい。これらの変形した機能は、記憶媒体がランダムアクセスに対応できないビデオカセットテープなどの場合に効果的である。もちろん、磁気ディスクのようなランダムアクセス対応の記憶媒体であっても同様の機能を付加して、読影者の指示に従って選択的に機能するようにしてもよい。
【0028】
このように本実施形態では、次のような効果を奏することができる。臨床現場の想定としては、撮影技師、放射線科もしくは内科の専門医、主治医の3つの立場からみて、使いやすく最大の診断効率が上がることを目標とする。この3者は、時間的にも空間的にも別の位置にいることを前提として、動画の重要な部分に栞を付けることにより、相互の連絡を支援する仕組みを構築することで、診療の効率向上を図る。検査技師以外の専門医と主治医が検査の流れ全体を把握するためには、全体の操作を見渡せるよう、断片ではなく動画部分の全スタディのデジタル録画が有効である。ただし、全部の画像を専門医が診るのでは診療の効率化は難しくなる。そのためデジタル動画像を一冊の本に見立て技師に、動画の中に栞をつけてもらい、その部分を中心に画像診断を行う。また、別の種類の栞を使って専門医から主治医に病因を説明する際の参照図を指定することができ、極めて有効である。このように、栞機能の有効性は高いが、いくらそれ以降のプロセスが簡略化できるからといって、最初の栞付けの機能が複雑であると、栞をつける作業が負担になって検査効率が低下する。したがって、栞をつける機能を装置側で支援する仕組みが不可欠となる。この仕組みを第2実施形態として以下に説明する。
【0029】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、撮影技師が独自に判断した重要度に従ってマニュアルで栞データをつける、または重要度に応じて栞データの種類を使い分けるという作業を伴うものであったが、上述したように、本第2実施形態は、その作業を自動化又は半自動化するものである。さらに、本第2実施形態は、動画データを圧縮して記録するに際して、栞データを付ける/付けない、及び栞データの種類(画像の重要度)に応じて、その圧縮率を経時的に変化させることを特徴とするものである。
【0030】
図4に第2実施形態の医用画像診断装置の記録再生部分の構成図を示している。同図において、圧縮プロセッサ120は、例えばMPEG2(Moving Picture Image Coding Experts Group Phase2)により動画データを圧縮する機能とともに、第1実施形態と同様に、栞データを動画データに関連付ける機能を備えている。MPEG2は、周知のとおり、画像信号やオーディオ信号を高能率符号化してデータを圧縮する国際標準方式であり、現行テレビジョン放送よりも高品質な画像を圧縮できる方法である。基本的な構成としては、入力バッファ、離散コサイン変換部、量子化部、可変長符号化部、出力バッファから構成され、圧縮プロセッサ120では、この基本的構成の他に、栞データ発生ユニット123からの栞データの有無及びその種類(重要度)に従って、圧縮率を意図的に可変にするための制御部が設けられている。もちろん、栞データが付けられている部分は圧縮率を低く抑えて(データ量は多くなる)、時間分解能と空間分解能との少なくとも一方を高くし、さらに高い重要度を表す種類の栞データが付けられている部分は圧縮率をさらに低く抑えて、分解能をさらに高くする。逆に、栞データが付けられていない部分は圧縮率を高くして、データ量を少なく抑える。また、低い重要度を表す種類の栞データが付けられている部分は圧縮率を高くして、データ量を少なく抑える。
【0031】
圧縮率を変える方法には、量子化係数の調整、入力又は出力バッファで読出しフレームレートを変える、入力又は出力バッファで読出しピクセルサイズを変える等の方法があり、そのいずれを採用してもよいし、任意に組み合わせてもよい。このように圧縮された動画データは再生プロセッサ121で伸長され、再生される。この再生方法のバリエーションは、第1実施形態と同様である。
【0032】
次に栞データの自動発生について説明する。第1実施形態でも説明した通り、基本的には、画像が重要であれば栞を付け、さらにその重要度に応じて栞データの種類を変える。第1実施形態ではこの判断を撮影技師が行っていたが、本実施形態ではこの判断を自動化又は半自動化する。判断するのは、栞データ発生ユニット123において行われ、その判断方法(判断基準)は撮影の目的や撮影方法、さらには画像診断装置の種類によっても変えるべきであり、その様々な判断方法について以下に順番に説明する。
【0033】
1)撮影断面の動きを利用する方法
通常の撮影手順としては、撮影断面を動かしながら撮影に適した位置や向きを探索し(位置決め)、それらが決まったとき、その位置及び向きで撮影断面を固定し、撮影(本撮影)を行う。従って、撮影断面の動きの大きさ(変位)が画像の重要度にほぼ対応しており、その変位に基づいて、栞を付けるタイミングを計ることが可能である。撮影断面の動きの大きさを判定する具体的な方法として、ここでは以下の3種類の具体的な方法を提案する。
【0034】
1−1)フレーム間の相関を利用する方法
この方法では、画像データのフレーム間の相関係数が計算される。低い相関係数はフレーム間で像の動きが大きいことを表しており、これは、撮影断面の比較的激しい移動を伴う位置決め作業中であると判断でき、この判断のもとで栞データを付けない又は低い重要度に相当する種類の栞データを付ける。逆に、高い相関係数はフレーム間で像の動きが少ないことを表しており、これは、撮影断面を固定して本撮影に取り掛かっていると判断でき、栞データをつける又は高い重要度に相当する種類の栞データを付ける。
【0035】
1−2)輝度変化を利用する方法
この方法では、フレーム間の輝度変化が計算される。輝度変化を表す指標値としては、フレーム間の輝度の差分合計を求めてもよいし、その平均値を求めてもよい。さらに、差分合計や平均値を、フレーム全体を対象として計算してもよいし、比較的関心の高い指定領域内のピクセルだけをその演算対象としてもよい。輝度変化を表すこれら指標値が高いことは、フレーム間で像の動きが大きいことを表しており、これは、撮影断面を移動しながら位置決め作業中であると判断でき、この判断に基づいて栞データを付けない又は低い重要度に相当する種類の栞データを付ける。逆に、輝度変化を表す指標値が低いことは、フレーム間で像の動きが少ないことを表しており、これは、撮影断面を固定して本撮影に取り掛かっていると判断でき、栞データをつける又は高い重要度に相当する種類の栞データを付ける。
【0036】
なお、上記1−1)、1−2)の方法は、造影剤撮影時にも有効である。造影剤撮影では造影剤が撮影断面に流入する時点から、流出し終わるまでの間が重要であり、造影剤が流入すると、その部分の輝度が極端に高くなる、つまりフレーム間相関係数や輝度変化が非常に高くなる。従って、フレーム間相関係数や輝度変化を監視することで、画像の重要性を判断し、栞データをつけると共に、その期間の画像の圧縮率を低く抑え、高い分解能を確保することができる。
【0037】
1−3)断面の動きを直接的に検出する方法
医用画像診断装置が例えば超音波診断装置の場合ならば、超音波プローブの並進移動量、あおりの回転角、それらの速度、加速度から、また磁気共鳴イメージング装置であれば、ダイナミックロケーターによる撮影対象の関心領域(ROI)の移動量、速度、加速度から、撮影領域の動きを捉えることができる。さらに、X線コンピュータ断層撮影であれば、天板の移動量、速度、加速度、またガントリチルトの移動量、速度、加速度から、断面の動きを捉えることができる。これらの指標値が大きい場合には、撮影断面を移動しながら位置決め作業中であると判断でき、栞データをつけない又は低い重要度に相当する種類の栞データを付ける。逆に、低い場合には、撮影断面を固定して本撮影に取り掛かっていると判断でき、栞データをつける又は高い重要度に相当する種類の栞データを付ける。2)生体情報を利用する方法
2−1)画像撮影の手法として、撮影又は画像記録のタイミングを、ECG(心電波形)、呼吸波形、血圧波形等の生体情報に同期させる同期撮影法があるが、この同期撮影を実際に行っているオン状態のときに得られる画像は重要度が高く、逆に、同期撮影がオフ状態のときに得られる画像は重要度が低い。従って、同期撮影がオン状態のときには、栞データをつける又は高い重要度に相当する種類の栞データを付け、逆に、同期撮影がオフ状態のときには、栞データをつけない又は低い重要度に相当する種類の栞データを付ける。
【0038】
2−2)また、ECG等の特定の時相における臓器の動きに関心が高い場合、ECG、呼吸波形、血圧波形等において当該関心の高い時相を表している波形を検出したときには、栞データを付ける又は高い重要度に相当する種類の栞データを付け、逆に、検出されていないときには、栞データを付けない又は低い重要度に相当する種類の栞データを付ける。
【0039】
3)造影剤注入を利用する方法
造影剤注入はインジェクタと呼ばれる装置で自動的に行われることが多い。このインジェクタ装置から造影剤注入開始と共に出力される注入信号を取り込み、タイミングを見計らって、栞データを発生することができる。つまり、上述したように、造影剤を用いた撮影では、造影剤が撮影断面に流入する時点から、造影剤が撮影断面から完全に流出し終わるまでの期間が重要である。この期間の始期は、図5に示すように、注入開始から、造影剤が血液と共に撮影断面に到達するまでに要する時間Δtだけ遅延した時点として推定することができ、従って注入信号が出力されてから当該推定した遅れ時間Δtを経過した時点に、栞データを付ける又は高い重要度に相当する種類の栞データを付けることができる。
【0040】
以上のように様々な方法で栞データの付加を自動化することができるが、実際には、撮影技師が最終的に確認し、必要に応じて、栞の位置を変更したり、栞を付けている時間幅を変更することが好ましいといえる。このユーザーインターフェーイスとしては、例えば、図6に示したように、上述した様々な指標、例えばプローブやMRIのダイナミックロケーターのROI位置の加速度の時間曲線を、例えば位置決め期間(栞データ付けない、又は低い重要度の栞データ付ける期間)と動態観察期間(栞データ付ける、又は低い重要度の栞データ付ける期間)とを判定した自動判定結果とともに表示すること、また、図7に示すように、圧縮後のデータフォーマットをグラフィカルに表示することが考えられる。
【0041】
また、自動判定した栞期間と他の期間との境界位置に対応する複数の画像を時間軸に沿ってサムネイル(粗描画像一覧)で帯状に並べて表示するとともに、自動判定した栞期間と他の期間とを表示色などを違えてバーグラフで表示することで、当該操作を簡易に且つ視覚的に分かりやすく行い得る。この場合、栞として指定する位置及び期間をバーグラフ上で例えばマウスでドラッグして、移動したり、広げたり、縮める。この操作に連動して、期間境界部の画像が粗描画像として別ウィンドウで表示される。また、期間境界部分をダブルクリックすると追加の栞画像が付加されるように機能する。
【0042】
これらの方法により検査技師は直前の検査を思い出しながら、適切な位置及び時間幅で栞を効率よくデータに貼り付けることが可能である。これら操作中の効率を向上させるため、撮影中の全画像データを圧縮なしに高速に閲覧するために、大容量記憶装置を準備することは当然である。
【0043】
このように自動又は半自動で設定された栞データに基づいて、圧縮プロセッサ120で画像データの圧縮率が時間的に変更される。栞は重要な部分につけられているので、その栞が付けられた位置では、圧縮率を下げて、画像を高分解能で保存することが望まれるが、どの程度の圧縮率の程度による画質劣化を検査技師がプレビューできる仕組みがあればよい。例えば、ぎりぎり画質的に耐えられると装置で算出した圧縮率でプレビューを行い、検査技師が圧縮率を手直しするなどすれば、必要最小限の画像データサイズに絞り込むことができる。心臓などの場合圧縮率100%(原画のまま)などという場合もありうる。また、栞の周りで徐々に圧縮率を変化させることで、画質を急激に変化させないことも有効である。
【0044】
(データの配布および栞の追加)
このようにして、適切に圧縮されたデータは、ネットワーク15経由もしくはCD−Rなどの外部記憶媒体でやり取りしても、転送・書き込みに時間を浪費せずに済む効果がある。特に、専門医から主治医にデータを提供する媒体として、CD−Rは、
1)準備された動画を一括で書き込む媒体として安価である、
2)殆どのコンピュータには、CD−Rを読み取り可能なCD−ROMドライブが装備されている、
3)書き換えが不可能である
などの点で有効であると考えられる。
【0045】
専門医による栞の追加の際、画像データだけでは判断できない場合が発生する。この際参考データとなるのは、上記位置の加速度情報の他に、位置そのものの情報、心電図などの生体情報などで、これらも画像と同時に一括して記録再生をおこなうことで有効性を高めることができる。
【0046】
(栞データを使った再生作業の効率化)
このように記録された動画データは、例えば読影時に再生される。その際、省力化のために、栞と連動した早回しモードが、再生プロセッサ121に装備されていて、操作者はそのモードを選択可能である。動画データは、例えば、栞データが付けられている位置、又は操作者により指定された重要度以上の栞が付けられている位置までは、自動的に早回しで高速再生が行われ、その栞の位置からは、通常速度もしくはスローモーションにて再生される。また、動画データは、例えば、操作者により指定された重要度以上の栞が付けられている期間の画像だけを断片的に再生表示し、他の期間は再生しないことモード選択も可能である。さらに、操作者により指定された重要度以上の栞が付けられている期間の最初の画像だけをサムネイルで表示し、操作者により再生希望する期間の画像が指定されると、その期間の画像だけが選択的に再生表示されるモードも選択可能である。
【0047】
次に本実施形態について超音波診断装置を例に、より具体的に説明する。図8に本実施形態に係る超音波診断装置の構成を示している。本装置は、装置本体11と、超音波プローブ12と、操作パネル13とから構成される。参照符号Pは被検体を表している。操作パネル13は、キーボード、ポインティングデバイス(トラックボール、マウス)等の入力デバイスを備え、操作者からの各種の指示や情報を装置本体に与える他、本発明に係る設定条件を変更するために使用される。
【0048】
プローブ12は、被検体Pと装置本体11との間で電気信号/超音波信号の相互変換を担うデバイスで、1次元又は2次元状に配列された複数の例えば圧電セラミック製の圧電振動子を備えている。なお、1つのチャンネルは、1又は近隣の幾つかの圧電振動子で構成される。超音波送信ユニット21は、チャンネル毎に送信遅延を施されたレートパルスを、プローブ12の対応する振動子に供給する。これにより超音波信号がプローブ12より放射される。
【0049】
被検体内の音響インピーダンスの不連続面で反射した反射波はプローブ12で受信される。プローブ12からチャンネル毎に出力されるエコー信号は、超音波受信ユニット22に送り込まれる。受信ユニット22は、プリアンプ、A/D変換器、受信遅延回路および加算機からなる。受信ユニット12に送られた信号は、チャンネル毎にプリアンプで増幅され、A/D変換器によってデジタル信号に変換され、その後、受信遅延回路により受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えられ、加算機で加算される。この加算により受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。この送信指向性と受信指向性とにより送受信の総合的な超音波ビームが形成される。その後、エコー信号はBモード像生成のためにBモードレシーバユニット23に送られ、またドプラ信号解析のためにドプラユニット24に送られる。
【0050】
Bモードレシーバユニット23は、エコーフィルタ、対数増幅器、包絡機検波回路から構成され、エコー信号の強度をビデオ信号すなわち視覚的な輝度画像に変換する。またエコーフィルタは通常高次のデジタルフィルタで構成され、例えば受信信号に含まれる高調波成分のみを画像化する、いわゆるハーモニックイメージング法を実施する場合に有効な帯域通過型フィルタとして機能する他、信号の形状を整形して画像の全領域で均一なスペックルパタンを形成する目的でも使用される。
【0051】
ドプラユニット24は、直交検波機、クラッタ除去フィルタ、ドプラ偏移周波数解析器、平均速度などの演算器、カラー処理回路などを備え、ドプラの偏移周波数すなわち血流の速度情報やそのパワ情報などがカラー画像データとして得られる。このカラーフローデータは、通常、イメージメモリ回路26においてBモード像に重畳した形式で表示される。
【0052】
レシーバユニット23およびドプラユニット24からの出力は、Bモード用DSC(ディジタルスキャンコンバータ)部として機能するイメージメモリ回路26により、超音波スキャンのラスタ信号列から、ビデオフォーマットのラスタ信号列に変換され、表示部27に表示される。もしくは、イメージメモリ回路26にデジタルデータとして記録され、例えば診断の後に操作者が呼び出して利用することが可能となっており、その場合、イメージメモリ回路26とは別に構成されたディジタルスキャンコンバータ(DSC)を経由して表示器27に出力される。
【0053】
また、レシーバユニット23およびドプラユニット24からの出力は、イメージコーディングユニット(ICU)25にも送られる。ICU25は本実施形態の主要部分であり、一連の診断画像群を動画像データとしてコーディングする基本的な機能とともに、コントローラ31からの指示により、その圧縮率を変化させる機能および動画像のある時刻に栞情報を付加する機能を具備している。このICU25のコーディング結果すなわち圧縮された動画像データは、ハードディスクドライブ(HDD)29に記録される。この記録された動画像データは、外部のコンピュータあるいはプリンタなどに転送するために、ネットワーク回路28を経由してネットワーク15に出力される。
【0054】
心電計(ECG計)14は、主に被検体Pの体表に付着させて心電波形を得るものである。心拍検出ユニット30は、心電計14で取得された心電波形をデジタル情報に変換して、表示部27へ送る。表示部27は、デジタル情報をいわゆる心電波形として表示する。
【0055】
コントローラ31は、操作パネル13からの指示を受け取ることで、既述のようにICU25の圧縮率を変化させたり栞付記の指示を行うほか、ICU25に送られる診断画像自体の監視とその画像分析処理を行い、その結果に基づきICU25に指示を再送する。(フレーム間の相関等を利用して栞を付けるタイミング及び圧縮率を変えるタイミングを自動的に指定する方法)
ICU25は連続的に得られるフレーム画像を監視しており、フレーム間の変化量を、栞を付けるタイミング及び圧縮率を変えるタイミングを計る指標として計算する。この手段は例えば連続する2フレーム間の相関係数を求めることで可能となる。あるいはピクセル毎の輝度変化の総和あるいは平均を算出することなどが考えられる。この相関が予め設定されたしきい値D以上の場合、画像の動きが少ないため、操作者が感心部位に注目していると判断され、高分解能設定(比較的低い圧縮率)に切り替わる。一方、演算結果がしきい値未満の場合、低分解能設定(比較的高い圧縮率)に切り替わる。
【0056】
上記切り替えのためのフレーム監視とその判定は、連続して行われるのが望ましいが、その結果としてありまにも煩雑に切り替えが行われる問題も生じる。これを防ぐために、別のパラメータTを設け、しきい値がD以上の時間がT[秒]以上の時に、分解能を切り替える機能も具備するものとする。
【0057】
本手法は、特に臓器自体の動きが少ない肝臓などの腹部臓器に対して有効な手段である。
【0058】
(断面の位置情報もしくは、位置変化の加速度情報を利用する方法)
図9に本方法に応じた装置構成を示す。図8と同様の動作を行う部分については同符号を付して詳細な説明は省略する。位置検出器15は、プローブ12に機械的に取り付けられるか、もしくは検知部のみをプローブ12に取り付けた例えば磁気センサであり、これによりプローブ12の空間的な位置情報を3次元的で検出することができる。
【0059】
座標演算回路32は、位置検出器15の出力に基づいて、その座標上の原点(基準位置)から、プローブ12の実際の現在位置までの移動距離を3軸に関して演算し、この演算した距離に対応した信号(位置情報)をコントローラ31へ送る。
【0060】
コントローラ31はこの位置情報の時間的変化、すなわちプローブ12の速度情報(移動距離、速度又は加速度)を演算し、プローブが移動状態にあるのか静止状態にあるのかを判断する。もしプローブ12が比較的静止状態にある場合、つまり速度等がしきい値より低い場合、操作者が感心部位に注目していると判断され、コーディングユニット25の圧縮率設定を高分解能(低圧縮率)対応に切り替える。
【0061】
この手法は、心臓など臓器自体が動いている場合有効な手段である。
【0062】
(生体情報を利用する方法)
図8に示したように、操作者が操作パネル13を利用して、ECG非同期モードから、ECG同期モードに切り替えた場合、このモード切替の通知がコントローラ31に送られる。コントローラ31は、予め定義されているECG同期モードに適した記録フォーマットに切り替えるための指示をICU25に送る。通常、ECG同期モードは、ECG非同期モードに比べて、フレームレートが数分の1又は数十分の1程度(例えば30Hzに対して1Hz)に、比較的低く(比較的遅く)抑えられている。ECG同期モードに適した記録フォーマットとは、通常と同様のフレームレートで、その一方で空間的な分解能として画像サンプリングレートが比較的高く設定される。
【0063】
(撮影中のオペレータの入力を利用する方法)
操作者の操作パネル13を使用した指示により、栞を付記するタイミングがコントローラ31に送られる。コントローラ31はICU25に記録中の動画像に栞を付記するよう指示する。
【0064】
この栞の例を図10に示す。本例では、記録開始からの通し番号と、現在の映像モードに限定した場合の通し番号、自動/手動を識別するための順番号が付記されている。
【0065】
(造影剤などの外部トリガーの入力を利用する方法)
図11に本方法に応じた装置構成を示す。図8と同様の動作を行う部分については同符号を付して詳細な説明は省略する。インジェクタ16は、周知のとおり、例えば造影剤を吸引した注射器がセットされた機械式ポンプであり、注入量および注入スピードが制御可能となっている。造影剤の抽出口は通常チューブと注射針で被検体の静脈中に投与される状態となっている。
【0066】
造影剤が投与されると、インジェクタ16は投与が開始されたことを知らせる信号をコントローラ31に送る。コントローラ31はこのタイミングもしくは予め設定された遅延時間後に、栞の付記と圧縮率の切り替え指示をICU25へ送る。例えば、造影剤投与前は低分解能設定であり、投与後は高分解能設定に切り替わる。また、造影剤投与から任意の遅延時間経過後に、低分解能設定から、高分解能設定に切り替わる。遅延時間を加味するのは、投与タイミングと実際の関心部位に造影剤が到達する時間には遅延があるからである。このような遅延の値を操作パネル13から任意に設定可能となっている。
【0067】
さらに、造影剤投与タイミングからの圧縮率は2回以上切り替えるためのプログラムを設定することが可能となっている。例えば、高分解能設定で記録する時間幅を以下のごとく複数指定しておくことができる。
選択肢1:30秒〜60秒 (造影剤流入の様子を詳細に記録)
選択肢2:180秒〜200秒 (造影剤が平衡状態に達した画像を詳細に記録) 選択肢3:300秒〜310秒 (造影剤が流出した画像を詳細に記録)
(モード変化に追従した記録フォーマットの変更)
動画記録中の記録フォーマットは、操作者が診断モードを変更することによっても自動的に変化する機能を具備する。例えば、超音波診断装置のMモードは、心臓の弁の速い動態などを観察するために使用されるため、このMモード2を起動した場合、高分解能設定に切り替える。また、造影剤を用いるコントラストエコーモードに遷移した場合も、高分解能設定となる。
【0068】
次に、圧縮率切り換えに伴うイメージメモリ回路26の好適な動作について説明する。イメージメモリ回路26は、図12に示すように、2つのイメージメモリA,Bが装備されている。動画記録の際、定常的には比較的低分解能の設定による記録がイメージメモリAを用いて行われる。「比較的低分解能設定」から、「高分解能設定」に切り替わったとき、イメージメモリAへの比較的低分解能での記録は継続した状態のままで、他方のイメージメモリBに高分解能設定で動画あるいは静止画データが記録される。イメージメモリAの当該位置には、栞が付記される。検査後のレビュー再生時には、イメージメモリAがアクセスされ、画像Aの再生が行われているが、栞データが認識されたタイミングで、イメージメモリBにアクセスを切り換え、高画質の画像表示に切り替える。
【0069】
なお、従来のビデオ画像のように、1画面に低分解能の画像Aと高分解能のBとを切り替えて表示してもよいし、画像Aをモニタ用として表示し、必要に応じて画像Bが並列に表示される表示形式も可能である。
【0070】
また、栞のタイミングで記録された画像(比較的高分解能で記憶された動画の先頭画像)がサムネイル画像として表示部27の一部に表示され、さらに時間経過を示すタイムチャートも並列されることも可能である。操作者は所望の栞のサムネイル画像をクリックすることで所望の観察区間へジャンプすることができる。サムネイル画像により、所望の画像が容易識別可能となる。
【0071】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
11…装置本体、12…超音波プローブ、13…操作パネル、14…心電計、
15…ネットワーク、16…インジェクタ、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモードレシーバユニット、24…ドプラユニット24、25…イメージコーディングユニット、26…イメージメモリ回路、27…表示器、28…ネットワーク回路、29…ハードディスクドライブユニット、30…心拍検出ユニット、31…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に関する医用画像データを動画として連続的に発生する手段と、
前記医用画像データを動画として即時表示する手段と、
前記動画の時間スケール上の複数のタイミングで操作者が入力した複数種類の重要度に従って重要度時間変化を表すタイムカーブデータを発生する手段と、
前記医用画像データと前記タイムカーブデータと記憶する記録装置とを具備したことを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
被検体に関する医用画像データを動画として連続的に発生する手段と、
前記医用画像データを動画として即時表示する手段と、
前記医用画像データを、前記動画の時間スケール上の複数のタイミングで発生される複数種類の栞データとともに記録する記録装置と、
前記記録された医用画像データを、操作者の選択指示に従って、前記栞データに対応する医用画像を一覧表示する再生方法、前記栞データに対応する前記動画の一部分に限定して再生する方法、前記複数種類の中の特定種類の栞データに対応する前記動画の一部分を実時間の速度で再生し、前記動画の他の部分を早送りで再生する方法の何れかに従って再生表示するための再生プロセッサとを具備することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項3】
造影剤を注入された被検体に関する医用画像データを動画として発生する手段と、
前記医用画像データの全体又は一部分の輝度が所定の閾値以上に上昇する時に栞データを発生する栞発生手段と、
前記医用画像データを前記発生された栞データとともに記録する記録装置とを具備することを特徴とする医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−31674(P2013−31674A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209678(P2012−209678)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2010−192564(P2010−192564)の分割
【原出願日】平成12年9月26日(2000.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】