説明

半導体レーザの製造方法

【課題】1チップ内に二つのレーザ構造を有する化合物二波長レーザ製品の製造過程における二回目のエピタキシャル成長前の基板洗浄における不具合を除去し、二回目のエピタキシャル成長時に発生する異常成長を防止する。
【解決手段】1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する化合物二波長レーザの製造工程において、二回目のエピタキシャル成長前のGaAs基板1に対する洗浄の際、洗浄液を硫酸97wt%、過酸化水素水30wt%、水、1:1:50〜250の割合で、温度20〜25℃にて20〜50秒処理する。この処理後、純水洗浄を5分以上実施し、乾燥処理した後、二回目のエピタキシャル成長膜4の形成を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザの製造方法に係り、特に、1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する化合物二波長レーザにおけるエピタキシャル成長前の基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体装置の製造工程において、化合物半導体基板の表面にパーティクルが付着し易く、特に、最近の1チップ内に赤色と赤外の二つの構造を有する高出力二波長レーザの製造工程では、前記パーティクルが付着した状態にてエピタキシャル成長処理を行った場合、プローブ検査による電気的不良の原因となる。そのため、製造工程の途中、エピタキシャル成長処理の前に基板洗浄作業が行われている。
【0003】
前記エピタキシャル成長前の基板の洗浄としては、一般的に塩酸と水との混合液を用いて、主に自然酸化膜を除去する目的のため洗浄を行う場合と、フッ酸とアンモニア水と過酸化水素水と水の混合液を用いて、有機物除去とパーティクル除去の目的のため洗浄を行う場合とがある。
【0004】
二波長レーザの製造の場合においては、一つのチップに赤色レーザと赤外レーザの二種類の異なるエピタキシャル成長構造を持つエピタキシャル成長を実施するが、特に、二回目のエピタキシャル成長前の基板洗浄においては、洗浄後の基板表面の清浄度を重視した洗浄が行われている。
【特許文献1】特許第3040067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する化合物二波長レーザの製造工程における二回目のエピタキシャル成長前の基板洗浄においては、洗浄により発生する基板表面の荒れと、洗浄前に付着しているパーティクル除去が不十分なことと、洗浄による基板へのパーティクルの再付着とによって、二回目のエピタキシャル成長処理時に、それらが原因となって異常成長が発生するという課題がある。
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、二波長レーザの製造工程における二回目のエピタキシャル成長前の基板洗浄において、洗浄により発生する基板表面の荒れと、洗浄前に付着しているパーティクルの除去と、洗浄による基板へのパーティクルの再付着とを防止することによって、二回目のエピタキシャル成長処理時の異常成長を発生させない半導体レーザの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、半導体基板の第1の領域に第1の波長の半導体レーザが形成され、前記半導体基板の第2の領域に第2の波長の半導体レーザが形成された二波長の半導体レーザの製造方法において、前記半導体基板に第1の波長の半導体レーザとなる第1のエピタキシャル成長を行う第1の半導体レーザ形成工程と、前記第2の領域に形成された前記第1の半導体レーザを除去する工程と、前記第1の半導体レーザの表面と前記半導体基板の第2の領域を洗浄する洗浄工程と、前記第2の領域に第2の波長の半導体レーザとなる第2のエピタキシャル成長を行う第2の半導体レーザ形成工程とを備え、前記洗浄において、硫酸と過酸化水素水と水とを1:1:50〜250の割合で混合された洗浄液で洗浄を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る半導体レーザの製造方法では、1チップ内に二波長のレーザ構造を有する半導体レーザの二回目のエピタキシャル成長前の半導体基板の洗浄方法において、洗浄後において二回目のエピタキシャル成長領域である半導体基板表面の荒れがSRaで1nm以下に低減され、かつ洗浄時の半導体基板へのパーティクルの再付着、および前工程の処理で付着したパーティクルを取り除くことができるため、1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する半導体レーザの二回目のエピタキシャル成長時に、塊状の異常成長の発生を抑制することが可能となり、二波長レーザ構造の半導体レーザにおけるチップ加工時の加工不良率が低減し、プローブ検査時に発生するコンタクト不良の発生率を従来比で2%程度低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の実施形態である1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する化合物二波長レーザの製造処理フローの説明図、図2は従来例における二回目のエピタキシャル処理膜とGaAs基板界面を拡大して示す図、図3は二回目のエピタキシャル処理膜とGaAs基板界面を拡大して示す図、図4は化合物二波長レーザのチップ加工前の状態を示す平面図、図5は化合物二波長レーザのチップ加工後の状態を示す平面図である。
【0011】
図1において、1は半導体基板であるGaAs基板、2は一回目のエピタキシャル成長膜、3は不要な一回目のエピタキシャル成長膜を除去するプロセスに使用するマスク、4は二回目のエピタキシャル成長膜、5は不要な二回目のエピタキシャル成長膜を除去するプロセスに使用するマスクを示す。
【0012】
図2において、6は荒れの大きいGaAs基板表面、7はパーティクルを示し、図3において、8は荒れの少ないGaAs基板表面を示す。
【0013】
図4において、9は1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する化合物二波長レーザ製品チップ、10は塊状の異常成長を示し、図5において、11は加工中あるいはプローブ検査にて不良となった化合物二波長レーザ製品チップを示す。
【0014】
図1を参照して、化合物二波長レーザの製造工程において二回目のエピタキシャル成長膜を作成するまでの工程フローを説明する。
【0015】
図1−1に示すGaAs基板1上に、図1−2に示すように、一回目のエピタキシャル成長膜2を成長させ、次に、図1−3に示すように、不要な一回目のエピタキシャル成長膜2を除去するために、不要な一回目のエピタキシャル成長膜2を除去するマスク3を形成する。図1−4に示すように、マスク3で覆われていない部分の一回目のエピタキシャル成長膜2が除去されるが、その際、不要な一回目のエピタキシャル成長膜2を除去した際のGaAs基板1は、一回目のエピタキシャル成長膜2を処理する前の状態より、基板表面に段差が発生する。
【0016】
次に、図1−5に示すように、不要な一回目のエピタキシャル成長膜を除去するプロセスに使用するマスク3を除去した後、二回目のエピタキシャル成長膜4を処理する前に、硫酸97wt%、過酸化水素水30wt%、水、1:1:50〜250の割合で調合した硫酸過水を用いて、処理温度は20〜25度、処理時間は20〜50秒で洗浄処理を実施する。
【0017】
その後、図1−6に示すように、純水にて5分以上洗浄した後に乾燥させ、二回目のエピタキシャル成長膜4の成長処理を実施する。
【0018】
次に、図1−7,図1−8に示すように、不要な二回目のエピタキシャル成長膜4を除去するプロセスを経て、不要な二回目のエピタキシャル成長膜4を除去するプロセスに使用するマスク5で覆われていない部分の二回目のエピタキシャル成長膜4を除去した後、図1−9に示すように、不要な二回目のエピタキシャル成長膜4を除去するプロセスに使用するマスク5を除去する。
【0019】
本実施形態において、GaAs基板1に対する前記洗浄処理を施した後、二回目のエピタキシャル成長膜4の成長処理を実施した直後のGaAs基板1は、図3に示すように、表面粗さがSRaで1nm以下であって、荒れが少ないGaAs基板表面8となり、二回目のエピタキシャル成長膜4を処理する際には、GaAs基板1の表面形状に沿った状態で、二回目のエピタキシャル成長膜4が平坦な状態で成長する。
【0020】
その後、化合物二波長レーザ製品チップに分離する処理を経て、プローブ検査を実施する。
【0021】
ここで、従来の洗浄方法で処理を行った直後のGaAs基板1は、図2に示すように、表面粗さがSRaで1nm以上で、荒れが大きいGaAs基板表面6となり、二回目のエピタキシャル成長膜4を処理する際には、荒れが大きいGaAs基板表面6の形状に沿った状態になり、二回目のエピタキシャル成長膜4の表面も荒れの大きな状態で成長するため異常成長となる。
【0022】
また、前記従来の洗浄処理の際に、洗浄前の工程で付着していたパーティクル7もしくは、洗浄処理中にGaAs基板1表面に再付着したパーティクル7が核となり、二回目のエピタキシャル成長膜4の成膜処理時に異常成長となる。この場合の異常成長は、パーティクル7を核として、直径10〜1000μmの円形の塊状の異常成長10となる。
【0023】
前記塊状の異常成長10が発生した1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する化合物レーザ製品チップ箇所は、1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する化合物二波長レーザ製品チップ9に加工する際、加工およびプローブ検査で不良の化合物二波長レーザ製品チップ11となる。
【0024】
以上のように本実施形態による硫酸と過酸化水素水と水との混合液で処理した洗浄方法と、従来の塩酸と水の混合液で処理した洗浄方法とにより、それぞれ1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する化合物二波長レーザ製品を作製し、加工不良とプローブ検査との比較を行った結果、加工不良とコンタクト不良率の合計が、本実施形態が従来比で2%程度低減した。
【0025】
本実施形態における洗浄方法は、バッチ方式の洗浄方法を用いて評価したが、枚葉式の洗浄方法を用いても、同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0026】
なお、本実施形態における洗浄方法は、1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する化合物二波長レーザ製品製造の二回目のエピタキシャル成長前の洗浄方法として説明したが、1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する化合物二波長レーザ製品製造プロセス中における全てのエピタキシャル成長前の洗浄に使用しても、同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0027】
さらに、本実施形態における洗浄方法は、短波長レーザのエピタキシャル成長前の洗浄に使用しても、また、全てのレーザ製品の製造プロセス中、エピタキシャル成長以外における成膜処理前の洗浄処理に使用した場合にも、同様の効果が得えられることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、化合物半導体の製造工程に適用され、特に、1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する化合物二波長レーザの製造におけるエピタキシャル成長前の基板洗浄方法に実施することにより、品質向上と不良率の低減化を図ることができ有効である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態である1チップ内に赤色と赤外の二つのレーザ構造を有する化合物二波長レーザの製造処理フローの説明図
【図2】従来例における二回目のエピタキシャル処理膜とGaAs基板界面を拡大して示す図
【図3】二回目のエピタキシャル処理膜とGaAs基板界面を拡大して示す図
【図4】化合物二波長レーザのチップ加工前の状態を示す平面図
【図5】化合物二波長レーザのチップ加工後の状態を示す平面図
【符号の説明】
【0030】
1 GaAs基板
2 一回目のエピタキシャル成長膜
3,5 マスク
4 二回目のエピタキシャル成長膜
6,8 GaAs基板表面
7 パーティクル
9 化合物二波長レーザ製品チップ
10 塊状の異常成長
11 不良の化合物二波長レーザ製品チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1の領域に第1の波長の半導体レーザが形成され、前記半導体基板の第2の領域に第2の波長の半導体レーザが形成された二波長の半導体レーザの製造方法において、
前記半導体基板に第1の波長の半導体レーザとなる第1のエピタキシャル成長を行う第1の半導体レーザ形成工程と、
前記第2の領域に形成された前記第1の半導体レーザを除去する工程と、
前記第1の半導体レーザの表面と前記半導体基板の第2の領域を洗浄する洗浄工程と、
前記第2の領域に第2の波長の半導体レーザとなる第2のエピタキシャル成長を行う第2の半導体レーザ形成工程とを備え、
前記洗浄において、硫酸と過酸化水素水と水とを1:1:50〜250の割合で混合された洗浄液で洗浄を行うことを特徴とする半導体レーザの製造方法。
【請求項2】
前記第1の半導体レーザおよび前記第2の半導体レーザが、赤外レーザ構造および赤色レーザ構造であることを特徴とする請求項1記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項3】
前記硫酸は約97wt%、前記過酸化水素水は約30wt%であることを特徴とする請求項1または2記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項4】
前記洗浄工程において、前記洗浄液の温度は20〜25℃であり、処理時間は20〜50秒であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項5】
前記洗浄工程の後、前記半導体基板の前記第2の領域の表面粗さがSRaで1nm以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項6】
前記洗浄工程において、前記洗浄液での洗浄後に、純水による5分以上の洗浄と前記半導体基板の乾燥を行うことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の半導体レーザの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−182005(P2009−182005A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17404(P2008−17404)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】