説明

半導体基板、電子デバイスおよび半導体基板の製造方法

【課題】シリコン基板を用いてGaN系の良質な半導体結晶層を形成する。
【解決手段】第1領域と第2領域とを表面に有する基板と、前記第1領域の上方に形成された第1半導体と、を含み、前記基板は、表面がSiGe1−x(0≦x≦1)であり、前記第1領域は、前記第2領域により囲まれ、前記第1半導体は、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、単結晶であり、且つ前記SiGe1−xと格子整合または擬格子整合し、前記第2領域は、前記第1領域とは性状が異なる半導体基板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、電子デバイスおよび半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、窒化物系半導体層の平坦性および結晶性を向上させることが可能な窒化物系半導体の形成方法を開示している。当該形成方法では、Si基板の上面を加工することによってSi基板の上面にSiからなる複数の円柱状部を形成し、その複数の円柱状部の上にn型GaN層を形成させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−22973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえばSiOからなる阻害体を基板上に形成し、基板に達する開口を阻害体に形成し、阻害体をマスクとして開口にGaNを選択エピタキシャル成長させれば、限られた領域に結晶を成長させることになるので、厚いGaN層が形成できる。ここで、基板としてSi基板を用いる場合には、GaによるSiの浸食を防止する目的で、AlN等の中間層をSi基板とGaNとの間に形成する必要がある。ただし、AlNは選択エピタキシャル成長ができないので、阻害体を形成する前にAlNをエピタキシャル成長させる必要があり、AlNとGaNとを連続して選択エピタキシャル成長させることはできない。AlNとGaNとを連続して選択エピタキシャル成長させることができない場合、製造コストが高くなるという課題がある。また、開口に選択エピタキシャル成長させたGaNは、阻害体との境界部において厚くなる傾向にあり、層厚の均一性が良くないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、第1領域と第2領域とを表面に有する基板と、前記第1領域の上方に形成された第1半導体と、前記第2領域の上方に形成された第2半導体と、を含み、前記基板の表面がSiGe1−x(0≦x≦1)であり、前記第2領域が前記第1領域を囲み、前記第1領域とは性状が異なり、前記第1半導体が単結晶であり、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、且つ前記基板の表面と格子整合または擬格子整合し、前記第2半導体が多結晶であり、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体である半導体基板を提供する。
【0006】
前記基板が前記第2領域を囲む第3領域を前記基板の表面にさらに有してもよく、前記第3領域の上方に形成された阻害体をさらに含んでもよい。ここで、前記阻害体は前記第1半導体および第2半導体の結晶成長を阻害する。
【0007】
本発明の第2の態様においては、第1領域、前記第1領域を囲む第2領域、および前記第2領域を囲む第4領域を表面に有する基板と、前記第4領域の前記表面に形成された複数の溝と、前記第1領域の上方に形成された第1半導体と、前記複数の溝に渡って形成された第3半導体と、を含み、前記基板の表面がSiGe1−x(0≦x≦1)であり、前記第2領域が前記第1領域とは性状が異なり、前記第1半導体が単結晶であり、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、且つ前記SiGe1−xと格子整合または擬格子整合し、前記第3半導体が窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、前記複数の溝の間隔が前記第1領域の幅より短い半導体基板を提供する。
【0008】
本発明の第3の態様においては、第1領域、前記第1領域を囲む第2領域、および前記第2領域を囲む第5領域を表面に有する基板と、前記第5領域の前記表面に形成された複数の溝と、前記第1領域の上方に形成された第1半導体と、前記複数の溝に渡って形成された第4半導体と、を含み、前記基板の表面がSiGe1−x(0≦x≦1)であり、前記第2領域が前記第1領域とは性状が異なり、前記第1半導体が単結晶であり、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、且つ前記SiGe1−xと格子整合または擬格子整合し、前記第4半導体が窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、前記複数の溝の間隔が前記第1領域の幅より長い半導体基板を提供する。
【0009】
前記第1領域と前記第2領域として各々の面方位が異なるものが挙げられる。前記第1領域と前記第2領域として各々の表面粗さが異なるものが挙げられる。前記第1領域と前記第2領域として各々の不純物濃度が異なるものが挙げられる。前記基板として前記第1領域を囲む溝を表面に有するものが挙げられ、前記第2領域として前記溝の側壁面であるものが挙げられる。前記基板として表面に溝を有するものが挙げられ、前記第1領域として前記溝の底面であるものが挙げられ、前記第2領域として前記溝の側壁面であるものが挙げられる。
前記第1半導体が、前記溝以外の前記基板の表面および前記溝の底面の両方の面上に形成され、前記溝の側壁を境に分断されているものが好ましい。前記基板の前記表面と前記第1半導体との間に形成された中間結晶をさらに含んでよく、前記中間結晶として、組成がBAlGaIn1−x−y−zN(0≦x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、かつ0<x+y+z≦1)であるものが挙げられ、前記SiGe1−xと前記中間結晶とは擬格子整合していることが好ましく、前記中間結晶と前記第1半導体とは擬格子整合していることが好ましい。性状が互いに異なる領域の上方に形成された複数の中間結晶は、下地の領域の性状の違いを引き継ぎ、互いに性状が異なる。前記第1領域が略方形の平面形状を有してよく、前記方形の長辺の長さとして300μm以下が挙げられる。
【0010】
本発明の第4の態様においては、前記した半導体基板における前記第1半導体を活性領域として得られる素子を有する電子デバイスを提供する。
【0011】
本発明の第5の態様においては、基板の表面に第1領域、および前記第1領域を囲む第2領域を形成する(a)段階と、前記第1領域および前記第2領域に、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体を形成する(b)段階と、を含み、前記基板の表面がSiGe1−x(0<x≦1)であり、前記(a)段階において、前記第2領域の性状を、前記第1領域の性状と異ならせ、前記(b)段階において、前記第1領域の前記半導体を、前記SiGe1−xと格子整合または擬格子整合させ且つ単結晶に形成し、前記第2領域の前記半導体を多結晶に形成する半導体基板の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】半導体基板100の断面例を示す。
【図2】半導体基板100の平面例を示す。
【図3】半導体基板300の断面例を示す。
【図4】半導体基板400の断面例を示す。
【図5】半導体基板500の断面例を示す。
【図6】半導体基板600の断面例を示す。
【図7】半導体基板600の平面例を示す。
【図8】半導体基板700の断面例を示す。
【図9】半導体基板800の断面例を示す。
【図10】半導体基板900の断面例を示す。
【図11】第1半導体108に形成したHEMTデバイスのドレイン電流−ドレイン電圧特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。図1は、半導体基板100の断面例を示す。図2は、半導体基板100の平面例を示す。半導体基板100は、ベース基板である基板102を有する。基板102の表面には第1領域104と第2領域106とを有する。基板102の第1領域104の上には第1半導体108が形成され、基板102の第2領域106の上には第2半導体110が形成されている。
【0014】
基板102は、表面がSiGe1−x(0≦x≦1)である。基板102は、表面およびバルクの全体に渡ってSiGe1−x(0≦x≦1)であってもよく、表面のみがSiGe1−x(0≦x≦1)であり、バルクがSiであってもよい。たとえば基板102として、シリコンウェハの表面をSiGe1−x化したものが挙げられる。基板102としてシリコンウェハを用いることにより、半導体基板100の材料コストが低減できる。また、半導体基板100を用いて形成する電子デバイスの熱特性が良好になる。基板102は、GaAs、サファイア、SiC、AlN、GaNであってもよい。
【0015】
第1領域104は、第2領域106により囲まれている。第1領域104は、略方形の平面形状を有することが好ましく、方形の長辺の長さが300μm以下であることが好ましい。第2領域106は、第1領域104とは性状が異なる。たとえば、第1領域104と第2領域106とは、各々の表面粗さが異なる。ここで「表面粗さ」とは、物質表面の粗さの程度を示す計測可能な値であり、たとえば5点平均粗さRaが例示できる。なお、第1領域104と第2領域106の性状の相違は、第1領域104における基板102の不純物濃度と、第2領域106における基板102の不純物濃度が異なるものであってもよい。
【0016】
性状の異なる第2領域106で第1領域104を囲むことで、第1領域104に形成される第1半導体108を、たとえば300μm以下の方形の小さな領域に区画することができる。この結果、第1半導体108の結晶性を良好にすることができる。すなわち、第1半導体108を小さな領域に形成し、アニール等熱処理を施すことで、第1半導体108に存在する結晶欠陥が第1半導体108の周辺部に移動され安定化される。この結果、第1半導体108の内部の結晶欠陥を無くすことができる。
【0017】
第1半導体108は、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、単結晶であり、且つSiGe1−xと格子整合または擬格子整合する。第1半導体108として、GaNが挙げられる。ここで、擬格子整合とは、互いに接する2つの半導体層のそれぞれの格子定数の差が小さいので、完全な格子整合ではないが、格子不整合による欠陥の発生が顕著でない範囲でほぼ格子整合して、互いに接する2つの半導体層を積層できる状態をいう。たとえば、Ge層とGaAs層との積層状態は擬格子整合と呼ばれる。
【0018】
第2半導体110は、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、且つ多結晶である。第2半導体108として、GaNが挙げられる。第2半導体110は、第1半導体108と同時に形成されるものであるが、第2領域106の性状が第1領域104と異なるので、単結晶にならず多結晶として成長する。
【0019】
上記した半導体基板100によれば、シリコンウェハを用いることでコストを低減でき、熱特性を良好にできる。また、第1半導体108の結晶性を高めることができる。なお、選択エピタキシャル成長の技術を用いることなく、第1半導体108を第1領域104に区画して形成できるので、第1半導体108としてGaNを適用し、中間層として選択エピタキシャル成長できないAlNを適用する場合であっても、AlNに続けてGaNを連続的にエピタキシャル成長させることができる。この結果、製造コストが低減できる。
【0020】
図3は、半導体基板300の断面例を示す。半導体基板100では、第2領域106の性状が第1領域104と異なる例として表面粗さを例示した。半導体基板300では、第1領域104と第2領域106の性状が異なる例として、面方位が異なる例を説明する。
【0021】
半導体基板300の第1領域104と第2領域106とは、各々の面方位が異なる。たとえば第1領域104の面方位をエピタキシャル成長に適した低次数の面方位とし、第2領域106の面方位を、単結晶がエピタキシャル成長されない高次数の面方位とする。このような場合、第1領域104には単結晶層が形成され、第2領域106には多結晶層が形成される。この結果、第1領域104に区画して第1半導体108が形成される。この結果、半導体基板100の場合と同様に、第1半導体108の結晶性が向上でき、中間層としてAlNを用いた場合であっても製造コストが低減できる。
【0022】
図4は、半導体基板400の断面例を示す。半導体基板400では、第1領域104と第2領域106の性状が異なる例として、溝が形成された例を説明する。
【0023】
半導体基板400の基板102は、第1領域104を囲む溝403を表面に有する。そして第2領域106は、溝403の側壁面である。また、溝403の底面に第5半導体414が形成されている。第5半導体414は、第1半導体108と同じ材料からなり、且つ単結晶からなる。第5半導体414と第1半導体108とは、溝403の側壁を境に分断されている。
【0024】
このような場合、第1領域104に形成される第1半導体108は、第5半導体414と分断されるので、第1領域104に区画して第1半導体108が形成される。この結果、半導体基板100の場合と同様に、第1半導体108の結晶性が向上でき、中間層としてAlNを用いた場合であっても製造コストが低減できる。また、第5半導体414と第1半導体108とが、溝403の側壁を境に分断されているので、第1半導体108の周辺部における応力が緩和され、クラックの発生が抑制される。
【0025】
また、第1領域104を囲む構造体として阻害体を用いた場合、第1領域104に形成される半導体の原料が阻害体の上で消費されず、第1領域104に形成される半導体の端部に半導体の原料が集中してしまう。この結果、第1領域104に形成される半導体の端部が厚くなる。しかし、阻害体を用いない本実施の形態の場合は、第1領域104あるいは溝403の底面における半導体原料のばらつきが少なくなるので、第1領域104あるいは溝403の底面に形成される第1半導体108および第5半導体414の層厚の均一性が向上する。
【0026】
図5は、半導体基板500の断面例を示す。半導体基板500では、半導体基板400と同様、第1領域104と第2領域106の性状が異なる例として、溝が形成された例を説明する。ただし、半導体基板500では第1半導体108が溝底部に形成される。
【0027】
半導体基板500の基板102は、表面に溝503を有する。そして第1領域104は、溝503の底面であり、第2領域106は、溝503の側壁面である。また、基板102の表面であって、溝503以外の箇所に第6半導体516が形成されている。第6半導体516は、第1半導体108と同じ材料からなり、且つ単結晶からなり、第6半導体516と第1半導体108とは、溝503の側壁を境に分断されている。
【0028】
このような場合、第1領域104に形成される第1半導体108は、第6半導体516と分断されるので、第1領域104に区画して第1半導体108が形成される。この結果、半導体基板100の場合と同様に、第1半導体108の結晶性が向上でき、中間層としてAlNを用いた場合であっても製造コストが低減できる。また、第6半導体516と第1半導体108とが、溝503の側壁を境に分断されているので、第1半導体108の周辺部における応力が緩和され、クラックの発生が抑制される。
【0029】
また、第1領域104を囲む構造体として阻害体を用いた場合、第1領域104に形成される半導体の原料が阻害体の上で消費されず、第1領域104に形成される半導体の端部に半導体の原料が集中してしまう。この結果、第1領域104に形成される半導体の端部が厚くなる。しかし、阻害体を用いない本実施の形態の場合は、第1領域104である溝503の底面あるいは溝503以外の箇所における半導体原料のばらつきが少なくなるので、溝503の底面あるいは溝503以外の箇所に形成される第1半導体108および第6半導体516の層厚の均一性が向上する。
【0030】
なお、半導体基板100における第2領域106の周囲を、図6および図7に示すように、阻害体で囲んでもよい。図6は、半導体基板600の断面例を示す。図7は、半導体基板600の平面例を示す。基板102は、第2領域106を囲む第3領域602を有する。第3領域602の上には阻害体604が形成されている。阻害体604は、第1半導体108および第2半導体110の結晶成長を阻害する。阻害体604により意図した領域にのみ結晶層をエピタキシャル成長させることができる。阻害体604上に余分なエピタキシャル成長層を形成させないので、余分なエピタキシャル成長層が形成されれば剥離等により発生するであろうパーティクル等の生成を抑制できる。また、阻害体604を酸化シリコン等の絶縁体で形成すれば、配線等を形成する領域として活用できる。なお、阻害体604は、第1領域104を囲む構造体として適用するものではない。よって発明が解決しようとする課題の欄で説明したような問題を生ずるものではない。すなわち阻害体604は、第1領域104に形成される第1半導体108の均一性を低下させるものではない。
【0031】
また、図8に示すように、基板102と第1半導体108との間に中間結晶を形成してもよい。図8は、半導体基板700の断面例を示す。基板102の表面と第1半導体108との間に中間結晶702が形成されている。中間結晶702は、組成がBAlGaIn1−x−y−zN(0≦x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、かつ0<x+y+z≦1)である。中間結晶702として、AlNが挙げられる。SiGe1−xと中間結晶702とは格子整合または擬格子整合することが好ましく、中間結晶702と第1半導体108とは格子整合または擬格子整合することが好ましい。中間結晶702により第1半導体108を基板102の上に結晶成長させやすくなる。
【0032】
図9は、半導体基板800の断面を示す。半導体基板800において、基板102の表面には第1領域104、第2領域106および第4領域802を有する。第2領域106は第1領域104を囲み、第4領域802は第2領域106を囲む。第4領域802の表面には複数の溝804が形成され、第1領域104の上に第1半導体108が形成されている。複数の溝804に渡って第3半導体806が形成されている。基板102の表面は、SiGe1−x(0≦x≦1)であり、第2領域106と第1領域104とは表面の性状が異なる。第1半導体108は単結晶であり、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、且つSiGe1−xと格子整合または擬格子整合する。第3半導体806は窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、複数の溝804の間隔は第1領域104の幅より短い。第2領域の上に第2半導体110が形成されていることが好ましい。
【0033】
すなわち、半導体基板800は、半導体基板100の構造を第4領域802の溝804および第3半導体806で囲んだ構造を有する。第4領域802に溝804を有するので、第4領域802に形成される第3半導体806は複数の溝804で分断され、応力が緩和される。このため、第3半導体806は剥離等しにくく、その結果、層の剥離等に起因するパーティクルの発生を抑制できる。半導体基板800では、複数の溝804の間隔は第1領域104の幅より短いので、第3半導体806が第1半導体108より細分化して形成され、第1半導体108よりも応力が小さく形成される。この結果、第3半導体806が第1半導体108より剥離しにくく形成される。
【0034】
図10は、半導体基板900の断面を示す。半導体基板900において、基板102の表面には第1領域104、第2領域106および第5領域902を有する。第2領域106は第1領域104を囲み、第5領域902は第2領域106を囲む。第5領域902の表面には複数の溝904が形成され、第1領域104の上に第1半導体108が形成されている。複数の溝904に渡って第4半導体906が形成されている。基板102の表面は、SiGe1−x(0≦x≦1)であり、第2領域106と第1領域104とは表面の性状が異なる。第1半導体108は単結晶であり、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、且つSiGe1−xと格子整合または擬格子整合する。第4半導体906は窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、複数の溝904の間隔は第1領域104の幅より長い。第2領域の上に第2半導体110が形成されていることが好ましい。
【0035】
すなわち、半導体基板900は、半導体基板100の構造を第5領域902の溝904および第4半導体906で囲んだ構造を有する。第5領域902に溝904を有するので、第5領域902に形成される第4半導体906は複数の溝904で分断され、応力が緩和される。このため、第4半導体906は剥離等しにくく、その結果、層の剥離等に起因するパーティクルの発生を抑制できる。半導体基板900では、複数の溝904の間隔は第1領域104の幅より長いので、第4半導体906の領域を大きくとることができる。大きな領域の第4半導体906の表面は、配線等の形成領域として利用することができる。
【0036】
なお、前記した半導体基板100から半導体基板700における第1半導体108を活性領域とする素子が形成できる。そのような素子として、たとえばヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、発光ダイオード、レーザダイオード、光センサ、太陽電池が挙げられる。
【0037】
また、前記した半導体基板100から半導体基板700は以下のような方法により製造できる。すなわち、基板102の表面に、第1領域104、および第1領域104を囲む第2領域106を形成する(a)段階の後、第1領域104および第2領域106に、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体を形成する(b)段階を実施する。ここで、基板102の表面は、SiGe1−x(0<x≦1)であり、(a)段階において、第2領域106の性状を、第1領域104の性状と異ならせ、(b)段階において、第1領域104の半導体を、SiGe1−xと格子整合または擬格子整合させ且つ単結晶に形成し、第2領域106の半導体を多結晶に形成する。
【0038】
基板102としてSi、GaAs、サファイア、SiC、AlNまたはGaNが挙げられる。基板102としてSiを用い、第1半導体108としてGaN系の結晶をエピタキシャル成長させる場合、基板102の(111)面または(110)面の上にエピタキシャル成長させてもよい。基板102のエピタキシャル成長面にオフ角を付与してもよい。オフ角の角度および方位は任意である。
【0039】
基板102に溝を形成し、面方位を異ならせ、あるいは表面荒れを形成する方法としてプラズマエッチングまたはウエットエッチングが挙げられる。パターニングにはリソグラフィーを用いたマスクを用いることができる。プラズマエッチングの原料ガスとして、SFやCFなどのフッ素原子を含む化合物、Arなどの不活性ガス、酸素およびこれらの組み合わせが挙げられる。ウエットエッチング液として、弗硝酸、NaOH、KOH、CsOHなどの無機塩基性化合物の水溶液、ヒドラジン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、エチレンジアミンなどの有機塩基性化合物の水溶液が挙げられる。形成する溝深さに制限は無いが、溝上部のエピタキシャル結晶と溝下部のエピタキシャル結晶とが、強い応力を及ぼしあわないように、お互いが干渉しない段差が形成される深さが好ましい。溝深さとして1μmから100μmの範囲が挙げられる。
【0040】
第1半導体108の大きさは、そこに形成するデバイス活性部のサイズと、第1半導体108の性状、厚み、転位排除処理の有無等に依存する。大きいデバイスを形成する場合は、第1半導体108の面積を大きくする必要があり、第1半導体108がシリコンとの間に大きな格子定数差、または大きな熱膨張係数差を有する場合は、それらの差に応じるクラックの発生の原因となる歪を抑制すべく、第1半導体108の面積を小さくする必要がある。また、第1半導体108の厚みが大きくなれば歪も大きくなるため、クラックの発生を抑制すべく第1半導体108の面積を小さくする。第1半導体108と基板102の間に中間層702を形成する場合であって、中間層702としてGeなどの熱処理により転位を結晶外に排除できる結晶層を適用する場合には、転移を排除するに適した第1半導体108の面積を選択する。第1半導体108の大きさとして、長辺の長さが1μmから1000μmの間が挙げられ、2μmから500μmが好ましく、3μmから200μmがさらに好ましい。第1半導体108のエピタキシャル成長方法として、MBE法、MOCVD法、HVPE法が挙げられる。なお、第2半導体110、第5半導体414、第6半導体516、第3半導体806および第4半導体906は第1半導体108と同時にエピタキシャル成長させる。
【0041】
(実施例)
半導体基板400を形成し、第1半導体108にGaN−HEMTを作成した。基板102として厚み525μm、エピタキシャル面(111)、オフ角なしのSi基板を用いた。ホトリソグラフィーにより、一辺が20μmの四角の開口を有するレジストをマスクとして形成した。マスクの開口により露出させたSi基板面に、反応性ガスとしてSFおよびCFを作用させ、プラズマエッチングにより20μmの深さの溝403を形成した。レジストをアセトンで除去した後、Si基板上にMOCVD法により第1半導体108をエピタキシャル成長させた。第1半導体108は、基板102の側から順に、AlN(厚み100nm)、AlGaN(厚み20nm)、GaN(厚み6000nm)、AlGaN(厚み25nm)のAlN/AlGaN/GaN/AlGaN積層体とした。なお、第1半導体108と同時に同様の構成の第5半導体414も形成された。MOCVDの原料ガスとして、テトラメチルガリウム(TMG)、テトラメチルアルミニウム(TMA)、アンモニア(NH)を用いた。キャリアガスとして、水素を用いた。反応炉圧力は15kPaとした。基板温度は、900℃から1150℃とした。各層におけるTMG/TMA/NHの供給量は、以下のとおりとした。
AlN(100nm)を形成時:0μmol/20μmol/7l。
AlGaN(20nm)を形成時:20μmol/4μmol/7l。
GaN(6000nm)を形成時:90μmol/0μmol/7l。
AlGaN(25nm)を形成時:22μmol/4.5μmol/7l。
【0042】
AlN/AlGaN/GaN/AlGaN積層体の最上層であるAlGaNは、鏡面成長され、AlGaNの平坦面が形成された。AlN/AlGaN/GaN/AlGaN積層体は、厚みが6000nm以上の厚い層であるにもかかわらず、平坦面にクラックは発生しなかった。従来の手法である、SiOなどの選択性成長用マスクを用い、かつ複数のエピタキシャル成長を実施して厚い層を成長させた場合と比較して、一度のエピタキシャル成長で途中マスクを用いずに、厚い層を成長させることができた。
【0043】
次に、作製した半導体基板400に感光性ネガ型ポリイミド樹脂をスピンコート法により塗布した。第1半導体108以外の部分の感光性ポリイミドを露光した。アルコール系現像液で、感光性ポリイミドを現像して、第1半導体108の部分の感光性ポリイミドを除去した。窒素雰囲気中、400℃にて10分間のキュアを行い、ポリイミド樹脂を硬化した。この一連の操作を複数回繰り返すことにより、第1半導体108とその周囲との段差を±1μm以下にした。
【0044】
第1半導体108にリソグラフィーと電子ビーム蒸着により、Ti(厚み20nm)/Au(厚み200nm)の積層金属膜を形成した。窒素雰囲気、400℃の環境で積層金属膜に30分間のアニールを施し、オーミック電極を形成した。リソグラフィーと電子ビーム蒸着により、Ni(厚み15nm)/Au(厚み200nm)の金属積層膜を形成し、ゲート電極とした。以上により第1半導体108にHEMTデバイスを作製した。作製したHEMTデバイスは、ソース−ドレイン間隔10μm、ゲート幅30μm、ゲート長2μmの寸法とした。
【0045】
図11は、第1半導体108に形成したHEMTデバイスのドレイン電流−ドレイン電圧特性を示す。ゲート電圧を0Vから−5Vの範囲で変化させたとき、ドレイン電流がゲート電圧に応じて変化することから、ゲート信号による変調動作が示された。また適正なピンチオフも観測され、良好なトランジスタ特性が得られた。
【0046】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システムおよび方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0047】
100 半導体基板
102 基板
104 第1領域
106 第2領域
108 第1半導体
110 第2半導体
300 半導体基板
400 半導体基板
403 溝
414 第5半導体
500 半導体基板
503 溝
516 第6半導体
600 半導体基板
602 第3領域
604 阻害体
700 半導体基板
702 中間結晶
802 第4領域
804 溝
806 第3半導体
902 第5領域
904 溝
906 第4半導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と第2領域とを表面に有する基板と、
前記第1領域の上方に形成された第1半導体と、
前記第2領域の上方に形成された第2半導体と、
を含み、
前記基板の表面がSiGe1−x(0≦x≦1)であり、
前記第2領域が前記第1領域を囲み、前記第1領域とは性状が異なり、
前記第1半導体が単結晶であり、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、且つ前記基板の表面と格子整合または擬格子整合し、
前記第2半導体が多結晶であり、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体である
半導体基板。
【請求項2】
前記基板が前記第2領域を囲む第3領域を前記基板の表面にさらに有し、
前記第3領域の上方に形成された阻害体をさらに含み、
前記阻害体が前記第1半導体および前記第2半導体の結晶成長を阻害する
請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
第1領域、前記第1領域を囲む第2領域、および前記第2領域を囲む第4領域を表面に有する基板と、
前記第4領域の前記表面に形成された複数の溝と、
前記第1領域の上方に形成された第1半導体と、
前記複数の溝に渡って形成された第3半導体と、
を含み、
前記基板の表面がSiGe1−x(0≦x≦1)であり、
前記第2領域が前記第1領域とは性状が異なり、
前記第1半導体が単結晶であり、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、且つ前記SiGe1−xと格子整合または擬格子整合し、
前記第3半導体が窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、
前記複数の溝の間隔が前記第1領域の幅より短い
半導体基板。
【請求項4】
第1領域、前記第1領域を囲む第2領域、および前記第2領域を囲む第5領域を表面に有する基板と、
前記第5領域の前記表面に形成された複数の溝と、
前記第1領域の上方に形成された第1半導体と、
前記複数の溝に渡って形成された第4半導体と、
を含み、
前記基板の表面がSiGe1−x(0≦x≦1)であり、
前記第2領域が前記第1領域とは性状が異なり、
前記第1半導体が単結晶であり、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、且つ前記SiGe1−xと格子整合または擬格子整合し、
前記第4半導体が窒素原子を含有する3−5族化合物半導体であり、
前記複数の溝の間隔が前記第1領域の幅より長い
半導体基板。
【請求項5】
前記第1領域と前記第2領域とは、各々の面方位が異なる
請求項1から請求項4の何れかに記載の半導体基板。
【請求項6】
前記第1領域と前記第2領域とは、各々の表面粗さが異なる
請求項1から請求項4の何れかに記載の半導体基板。
【請求項7】
前記第1領域と前記第2領域とは、各々の不純物濃度が異なる
請求項1から請求項4の何れかに記載の半導体基板。
【請求項8】
前記基板が前記第1領域を囲む溝を表面に有し、
前記第2領域が前記溝の側壁面である
請求項1から請求項4の何れかに記載の半導体基板。
【請求項9】
前記基板が表面に溝を有し、
前記第1領域が前記溝の底面であり、
前記第2領域が前記溝の側壁面である
請求項1から請求項4の何れかに記載の半導体基板。
【請求項10】
前記第1半導体が、前記溝以外の前記基板の表面および前記溝の底面の両方の面上に形成され、前記溝の側壁を境に分断されている
請求項8または請求項9に記載の半導体基板。
【請求項11】
前記基板の前記表面と前記第1半導体との間に形成された中間結晶をさらに含み、
前記中間結晶は、組成がBAlGaIn1−x−y−zN(0≦x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、かつ0<x+y+z≦1)であり、
前記SiGe1−xと前記中間結晶とは擬格子整合し、前記中間結晶と前記第1半導体とは擬格子整合する
請求項1から請求項10の何れかに記載の半導体基板。
【請求項12】
前記第1領域が略方形の平面形状を有し、前記方形の長辺の長さが300μm以下である
請求項1から請求項11の何れかに記載の半導体基板。
【請求項13】
請求項1から請求項12の何れかに記載の半導体基板における前記第1半導体を活性領域として得られる素子を有する電子デバイス。
【請求項14】
(a)基板の表面に第1領域、および前記第1領域を囲む第2領域を形成する段階と、
(b)前記第1領域および前記第2領域に、窒素原子を含有する3−5族化合物半導体を形成する段階と、
を含み、
前記基板の表面がSiGe1−x(0<x≦1)であり、
前記(a)段階において、前記第2領域の性状を、前記第1領域の性状と異ならせ、
前記(b)段階において、前記第1領域の前記半導体を、前記SiGe1−xと格子整合または擬格子整合させ且つ単結晶に形成し、前記第2領域の前記半導体を多結晶に形成する
半導体基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−129828(P2011−129828A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289408(P2009−289408)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】