説明

半導体基板の表面処理装置及び方法

【課題】パターンの倒壊を防止つつ基板を洗浄・乾燥させる半導体基板の表面処理装置および方法を提供する。
【解決手段】半導体基板Wに形成された凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成するために、基板表面に希釈した撥水化剤を供給する。撥水剤と希釈剤との混合から基板表面に供給される迄の時間が長くなるほど撥水能力は低下するので、撥水化剤と希釈剤を混合する混合バルブ61は、希釈撥水化剤を吐出するノズル64の直前に設けられ、撥水化剤の撥水化能力の低下を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の表面処理装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程には、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程などの様々な工程が含まれている。各工程の終了後、次の工程に移る前に、ウェーハ表面に残存した不純物や残渣を除去してウェーハ表面を清浄にするためのクリーニング(洗浄)工程及び乾燥工程が実施されている。
【0003】
近年、素子の微細化に伴い、リソグラフィ工程(露光・現像)後のレジストパターンを現像し、乾燥させる際に毛細管現象により、レジストパターンが倒壊する問題が生じた。このような問題を解決するため、レジストパターンの表面を撥水化し、レジストパターンと現像液及びリンス純水との間に働く毛管力を低下させる方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法では、レジストパターンの表面に有機物が付着するが、この有機物はレジストパターンと共に、リソグラフィ工程後のエッチング工程で除去される。
【0004】
また、例えば、エッチング工程後のウェーハの洗浄処理では、ウェーハの表面に洗浄処理のための薬液が供給され、その後に純水が供給されてリンス処理が行われる。リンス処理後は、ウェーハ表面に残っている純水を除去してウェーハを乾燥させる乾燥処理が行われる。
【0005】
乾燥処理を行う方法としては、IPA(イソプロピルアルコール)を用いてウェーハ上の純水をIPAに置換してウェーハを乾燥させるものが知られている(例えば特許文献2参照)。この乾燥処理時に、液体の表面張力によりウェーハ上に形成されたデバイス実パターンが倒壊するという問題があった。また、IPAより表面張力の低いHFE(ハイドロフルオロエーテル)を用いてもパターン倒壊を抑制することは困難であった。
【0006】
このような問題を解決するため、表面張力がゼロとなる超臨界乾燥が提案されている。しかし、超臨界乾燥は大口径ウェーハに対する処理設備としての完成度が低く、また、高圧ガスを用いることで生じる各種法規上の規制により、量産工程に適用することが困難である。また、超臨界雰囲気を実現するチャンバ内に水分等が持ち込まれた場合、パターンの倒壊を防止できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−142349
【特許文献2】特許第3866130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、パターンの倒壊を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させる半導体基板の表面処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理装置は、表面に凸形状パターンが形成された半導体基板を保持し、前記半導体基板を回転させる基板保持回転部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に薬液及び/又は純水を供給する第1供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に希釈撥水化剤を供給し、前記凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成する第2供給部と、を備え、前記第2供給部は、前記撥水化剤を貯留するバッファタンクと、前記バッファタンクにパージガスを供給する第1供給ラインと、希釈剤を供給する第2供給ラインと、前記バッファタンク内の撥水化剤を送り出すポンプと、前記ポンプから送り出される撥水化剤を供給する第3供給ラインと、前記第2供給ライン及び前記第3供給ラインに連結され、前記希釈剤及び前記撥水化剤を混合し、前記希釈撥水化剤を生成する混合バルブと、前記混合バルブで生成された前記希釈撥水化剤を前記半導体基板の表面に吐出するノズルと、を有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理方法は、半導体基板上にドライエッチング処理によって複数の凸形状パターンを形成し、前記凸形状パターン表面を薬液を用いて洗浄及び改質し、改質された前記凸形状パターン表面に、希釈した撥水化剤を用いて撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜形成後に水を用いて前記半導体基板をリンスし、前記半導体基板を乾燥させ、前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パターンの倒壊を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体基板の表面処理装置の概略構成図である。
【図2】同実施形態に係る半導体基板の表面処理方法を説明するフローチャートである。
【図3】洗浄シーケンスとパターンに対する水の接触角との関係を示すグラフである。
【図4】パターンにかかる液体の表面張力を説明する図である。
【図5】撥水性保護膜の形成を行った場合と行わなかった場合の乾燥処理後のパターン状態を示す図である。
【図6】撥水化剤と希釈剤との混合位置から希釈撥水化剤の吐出位置までの距離と、撥水化処理後のパターンに対する水の接触角との関係の一例を示すグラフである。
【図7】変形例による半導体基板の表面処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
半導体装置の製造工程における洗浄工程に課せられた課題は半導体基板上に形成された微細パターン構造に欠陥(パターン欠落、傷、パターン細り、基板掘れ等)を生じさせることなく、半導体基板表面を清浄な表面状態に戻すことである。具体的には、洗浄する対象は一般的には半導体製造プロセスに用いられるリソグラフィプロセスで用いるレジスト材料、又はドライエッチングプロセス時に半導体ウェーハ表面に残存した反応副生成物(残渣)、各プロセス後にウェーハ表面に残る金属不純物、有機汚染物質等であり、これら洗浄対象物を残したまま、次工程の製造プロセスへウェーハを流品させることは、デバイス製造歩留まりを確実に低下させてしまう。
【0014】
従って、洗浄プロセスには半導体基板上に形成された微細パターン構造に欠陥(パターン欠落、傷、パターン細り、基板掘れ等)を生じさせることなく、洗浄後に清浄な半導体ウェーハ表面を形成するという重要な役割がある。素子の微細化に伴い、洗浄工程に要求される清浄度は高くなってきている。
【0015】
一方、昨今の高アスペクトで凸形状の微細パターンをもつ構造(例えばパターンサイズが30nm以下でかつ、アスペクト比が10以上の構造)においては、レジストプロセスで用いられている撥水化技術を適用するだけでは撥水度が不十分であったため、パターン倒壊を抑制することは困難であった。また、この方法ではパターン表面を汚染する問題もあった。以下の実施形態により高アスペクトで凸形状の微細パターンを持つ構造に対して、パターン表面を清浄に保ちつつ、従来よりも高い撥水度を実現し、パターン倒壊を抑制することができる。
【0016】
図1に本発明の実施形態に係る半導体基板の表面処理装置の概略構成を示す。表面処理装置は、基板保持回転部10、希釈撥水化剤供給部20、及び薬液等供給部70を備える。
【0017】
基板保持回転部10は、処理チャンバを構成するスピンカップ11、回転軸12、スピンベース13、及びチャックピン14を有する。回転軸12は略鉛直方向に延び、回転軸12の上端に円盤状のスピンベース13が取り付けられている。回転軸12及びスピンベース13は、図示しないモータにより回転させることができる。
【0018】
チャックピン14はスピンベース13の周縁部に設けられている。チャックピン14が基板(ウェーハ)Wを狭持することで、基板保持回転部10は基板Wをほぼ水平に保持して回転させることができる。
【0019】
基板Wの表面の回転中心付近に、希釈撥水化剤供給部20又は薬液等供給部70から液体が供給されると、液体は基板Wの半径方向に広がる。基板Wの半径方向に飛散した余分な液体は、スピンカップ11に捕らえられ、廃液管15を介して排出される。
【0020】
希釈撥水化剤供給部20は、基板保持回転部10に保持された基板Wに希釈した撥水化剤を供給する。撥水化剤は基板Wの表面に形成された凸形状パターンの表面を撥水化する薬液である。凸形状パターンの表面の撥水化については後述する。
【0021】
撥水化剤は薬液供給ライン(配管)21を介してバッファタンク50に貯留される。撥水化剤は例えばシランカップリング剤である。シランカップリング剤は、分子中に無機材料と親和性、反応性を有する加水分解基と、有機材料と化学結合する有機官能基とを有するものであり、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラメチルシリルジエチルアミン(TMSDEA)等を用いることができる。
【0022】
薬液供給ライン21には流量計22及びバルブ23が設けられており、バッファタンク50への供給量を制御できる。
【0023】
撥水化剤は、水分を含む大気と接触すると劣化し、凸形状パターン表面の撥水化能力が低下する。そのため、ガス供給ライン51を介してバッファタンク50にNガス等の不活性ガス又は低湿度のガスをパージガスとして供給する。
【0024】
バッファタンク50内の撥水化剤は、ポンプ52により排出され、フィルタ53を通過して薬液供給ライン54を介して混合バルブ61に供給される。フィルタ53を通過した撥水化剤の一部は再びバッファタンク50に戻され、循環している。
【0025】
希釈剤は薬液供給ライン31を介して混合バルブ61に供給される。薬液供給ライン31には流量計32及びバルブ33が設けられており、混合バルブ61への供給量を制御できる。希釈剤は例えばシクロヘキサノン、IPA(イソプロピルアルコール)等のアルコール材料、シンナー系材料等の安価な薬液を用いる。
【0026】
混合バルブ61は、薬液供給ライン54及び薬液供給ライン31に連結されており、撥水化剤及び希釈剤を混合される。混合バルブ61から排出された希釈撥水化剤は、薬液供給ライン62を介してノズル64から吐出され、基板Wの表面に供給される。薬液供給ライン62にはバルブ63が設けられており、基板W表面への希釈撥水化剤の供給量や流速を制御できる。
【0027】
撥水化剤は、希釈剤に含まれるヒドロキシル基や、中間反応体として生じるヒドロキシル基と反応し、凸形状パターン表面の撥水化能力が低下する。撥水化剤と希釈剤との混合から基板W表面に供給されるまでの時間が長くなる程、撥水化能力は低下する。従って、撥水化剤と希釈剤とを混合する位置(混合バルブ61の位置)は、ノズル64に近い方が好ましい。撥水化剤と希釈剤とが混合されてから、ノズル64から吐出されるまでの時間が所定時間以内となるように、混合バルブ61やバルブ63の開度等が設定される。
【0028】
薬液供給ライン54は混合バルブ61の上流側で分岐しており、他の処理チャンバへ撥水化剤を供給する。他の処理チャンバにおいても、同様に、撥水化剤と希釈剤とがノズルからの吐出の直前で混合され、希釈撥水化剤が基板表面へ供給される。
【0029】
ウェーハWに形成された凸形状パターン表面の撥水化処理に必要な撥水化剤は少量である。しかし、直径300mm程度の大口径ウェーハに対して効率良く撥水化処理を行うためには、ウェーハ全面が浸漬する程度の液量が必要となる。撥水化剤を安価な希釈剤で希釈することで、必要量の撥水化剤をウェーハ表面に供給しつつ、撥水化処理を低コストで行うことができる。
【0030】
薬液等供給部70は、基板W表面に、IPAを供給するノズル71、及び純水を供給するノズル72を有する。また、薬液等供給部70は、SPM(Sulfuric acid Hydrogen Peroxide Mixture:硫酸と過酸化水素水の混合液)等の他の薬液を基板W表面に供給するノズル(図示せず)を有する。
【0031】
このような表面処理装置を用いて半導体基板の表面処理を行う方法について図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0032】
(ステップS101)表面の所定の領域に複数の凸形状パターンを有する処理対象の半導体基板Wが搬送部(図示せず)により搬入され、基板保持回転部10に保持される。凸形状パターンは、例えば、ラインアンドスペースパターン等である。凸形状パターンの少なくとも一部が、シリコンを含む膜で形成されていてもよい。凸形状パターンは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法等により形成される。
【0033】
(ステップS102)半導体基板Wを所定の回転速度で回転させ、薬液等供給部70から半導体基板Wの表面の回転中心付近に薬液を供給する。薬液は例えばSPMやSC−1(Standard Clean 1)である。
【0034】
薬液が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡り、半導体基板Wの薬液(洗浄)処理が行われる。
【0035】
(ステップS103)薬液等供給部70から半導体基板Wの表面の回転中心付近に純水を供給する。純水が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していた薬液を純水によって洗い流す純水リンス処理が行われる。
【0036】
(ステップS104)薬液等供給部70から半導体基板Wの表面の回転中心付近にIPA等のアルコールを供給する。IPAが半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していた純水をIPAに置換するアルコールリンス処理が行われる。
【0037】
(ステップS105)希釈撥水化剤供給部20から半導体基板Wの表面の回転中心付近に希釈撥水化剤を供給する。撥水化剤は例えばシランカップリング剤である。
【0038】
希釈されたシランカップリング剤が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、凸形状パターンの表面に濡れ性が低い保護膜(撥水性保護膜)が形成される。
【0039】
この撥水性保護膜は、シランカップリング剤のエステル反応が起きることで、形成される。従って、アニール処理を行って液温を上昇させたり、紫外線を照射したりすることで、反応を促進させるようにしてもよい。
【0040】
ノズル64の近傍に位置する混合バルブ61で撥水化剤と希釈剤とが混合される。混合後、短時間で希釈撥水化剤を半導体基板W表面に供給できるため、撥水化剤の凸形状パターン表面の撥水化能力の劣化を抑制できる。
【0041】
凸形状パターンがシリコン窒化膜やポリシリコン等のシリコン系膜の場合はシランカップリング剤を用いたシリル化処理を行ってもシリル化反応が不十分となり、パターンの倒壊を抑制するために十分な撥水性を得られない場合がある。その場合、シリコン系材料の表面を酸化可能な酸化剤を含む処理薬液による処理を追加し、シリコン系材料の表面をシリコン酸化物系の化学酸化膜に変えることが好適である。その後に、シリル化処理を行うことで、シリル化処理後の撥水性を向上させることができる。
【0042】
例えば、シリコン系膜の場合には、図3(a)に示すように、dHF処理のみを行って撥水性保護膜を形成すると、パターンに対する水の接触角は89度である。これにH処理を加えると、接触角は95度まで向上する。これはシリコン系膜の表面に適度な酸化膜が形成されたためと考えられる。
【0043】
また、シリコン窒化膜の場合には、図3(b)に示すように、dHF処理のみを行って撥水性保護膜を形成すると、水の接触角は約46度である。これにH処理を加えると54度まで向上し、SPM処理を追加すると、59度まで向上する。これは洗浄後の基板表面に撥水処理が施されやすいように最適な改質処理を加えること、つまりSiN表面が酸化剤によりSiO化され、撥水性保護膜を形成されやすくなったためと考えられる。
【0044】
また、RIE(Reactive Ion Etching)加工後には加工残渣が多く発生する。加工残渣が残った状態では撥水性保護膜は形成されにくい。そこで、SPM処理等で残渣を除去することは、撥水性保護膜を形成する上でも有効である。さらに、RIE加工で表面にプラズマダメージが蓄積され、ダングリングボンドができる。そこで、酸化効果のある薬液で改質処理すると、ダングリングボンドはOH基で修飾される。OH基が多く存在すると、シリル化反応確率が高くなり、水性保護膜が形成されやすくなるため、より高い撥水度を得ることができる。この例では、微細パターンがシリコン酸化膜の場合でも効果が得られる。
【0045】
なお、上記に記載した説明では、半導体基板Wの洗浄後に、洗浄薬液とは異なる処理薬液により半導体基板Wの表面を改質する例について説明した。洗浄薬液が改質効果を兼ねる、すなわち酸化効果を持つものであれば別途改質処理を行わなくても構わない。しかし、洗浄工程と改質工程とを分けることにより、凸形状の微細パターンの被洗浄面を清浄化した後、清浄化された面に対し改質を行うため、酸化効果を有する薬液を用いる場合に対して改質効果をさらに向上させることができるため望ましい。
【0046】
(ステップS106)薬液等供給部70から半導体基板Wの表面の回転中心付近にIPA等のアルコールを供給する。IPAが半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していた未反応のシランカップリング剤をIPAに置換するアルコールリンス処理が行われる。
【0047】
(ステップS107)薬液等供給部70から半導体基板Wの表面の回転中心付近に純水を供給する。純水が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していたIPAを純水によって洗い流す純水リンス処理が行われる。
【0048】
(ステップS108)半導体基板Wの乾燥処理を行う。例えば半導体基板Wの回転速度を所定のスピンドライ回転速度に上げて、半導体基板Wの表面に残っている純水を振り切って乾燥させるスピンドライ処理を行う。
【0049】
半導体基板Wに形成されている凸形状パターンは撥水性保護膜に覆われているため、液体の接触角θが大きく(90°に近く)なる。
【0050】
図4に半導体基板W上に形成されているパターン4の一部が液体5に濡れた状態を示す。ここで、パターン4間の距離をSpace、パターン4の高さをH、液体5の表面張力をγとすると、パターン4にかかる力PはP=2×γ×cosθ・H/Space・・・(式1)となる。
【0051】
θが90°に近付くことで、cosθが0に近づき、乾燥処理時にパターンに作用する液体の表面張力Pが小さくなることが分かる。これにより乾燥処理の際にパターンが倒壊することを防止することができる。
【0052】
(ステップS109)ドライアッシングやオゾンガス処理等の灰化処理を行い、凸形状パターン表面に形成された撥水性保護膜を除去する。本実施形態は半導体基板の表面を洗浄・乾燥させるものであるので、撥水性保護膜の除去を行うことにより清浄化工程が終了となる。なお、この工程の後の工程で撥水化保護膜が除去される場合には乾燥後、すぐに撥水化保護膜を除去しなくても構わない。
【0053】
このような撥水性保護膜の形成を行った場合と行わなかった場合の乾燥処理後のパターンの状態を図5に示す。ライン高さが150nm、170nm、200nmの3種類、ライン幅が普通、細、極細(普通>細>極細)の3種類のパターンについて表面処理を行った。
【0054】
図5(a)から分かるように、保護膜の形成を行わない場合、ライン幅が極細のパターンは150nm、170nm、200nmのいずれのライン高さにおいてもパターン倒壊が発生した。また、ライン幅が細で、ライン高さが200nmにおいてもパターン倒壊が発生した。
【0055】
一方、図5(b)から分かるように、撥水性保護膜の形成を行うと、ライン幅が極細で、ライン高さが200nmのパターン以外ではパターン倒壊を防止することができた。撥水性保護膜を形成することで、アスペクト比が高いパターンでも、洗浄・乾燥によるパターン倒壊を防止でき、倒壊マージンを向上させられることが分かる。
【0056】
このように、本実施形態による半導体基板の表面処理を行うことで、半導体基板W表面の洗浄を行う際に、基板表面に撥水性の保護膜を形成し、乾燥処理時の凸形状の微細パターン倒壊を防止することができる。また、撥水性保護膜の形成に、安価な希釈剤で希釈した撥水化剤を使用するため、コストを低減できる。
【0057】
基板上に形成されたパターンの倒壊を防止するためには、パターンにかかる力(上記式1で表されるP)を低減する必要がある。上記式1のパラメータのうち、Spaceはパターン寸法で決まる固定パラメータであり、濡れ性cosθは微細パターン(の表面)を構成する物質と液体との関係で決まる固定パラメータであるため、従来の基板処理では表面張力γに着目し、γの小さい液体を用いることによりパターンにかかる力の低減を図っていた。しかし、γを下げるにも限界があり、パターン倒壊を防止できなくなっていた。
【0058】
これに対し、上述したように、本発明の実施形態による表面処理方法は、パターン表面に撥水性保護膜を形成し、濡れ性cosθを制御することで乾燥処理時にパターンにかかる力を極めて小さくし、パターン倒壊を防止可能とした。
【0059】
上記実施形態による表面処理方法は、アスペクト比が8以上の時のパターン倒壊防止に特に効果がある。
【0060】
上記実施形態では撥水性保護膜の形成工程(ステップS105)の前後にアルコールリンス処理を行っていた(ステップS104、S106)。これは撥水性保護膜の形成時に使用するシランカップリング剤が種類によっては純水と置換可能ではない場合があるためである。従って、使用するシランカップリング剤が純水と置換可能である物質の場合は、このアルコールリンス処理を省略することができる。
【0061】
図6に、撥水化剤と希釈剤との混合位置(混合バルブ61の位置)から希釈撥水化剤の吐出位置(ノズル64の位置)までの距離と、撥水化処理後の凸形状パターンに対する水の接触角との関係の一例を示す。
【0062】
接触角は80°〜100°が好ましく、図6から混合位置から吐出位置までの距離(薬液供給ライン62の配管長)を2m以内にすることが好適であることが分かる。混合位置から吐出位置までの好適な距離は、薬液供給ライン62における希釈撥水化剤の流速にも依存し、流速が高速である場合は、混合位置から吐出位置までの距離を延ばすことができる。
【0063】
半導体基板W上の凸形状パターン表面の撥水化処理に必要な撥水化剤が微量(例えば希釈撥水化剤の濃度が1%程度)である場合は、図7に示すように、薬液供給ライン41を設けてバッファタンク50に希釈剤を供給し、前段希釈を行って、バッファタンク50に貯留しておいてもよい。前段希釈剤は、撥水化剤を劣化させない薬液であり、例えばシンナー等で使用されるトルエン等、化合物自体にヒドロキシル基を持たない溶剤、又は中間生成物としてヒドロキシル基を発生させない溶剤を用いる。バッファタンク50で希釈された撥水化剤は、混合バルブ61においてさらに希釈される。このように、希釈撥水化剤の撥水化剤濃度を小さくする場合は、2段階に分けて希釈を行ってもよい。
【0064】
また、撥水化剤や希釈剤が光に当たると劣化する薬液であり、配管等にこれらの薬液が光に曝される箇所がある場合は、当該箇所に遮光膜等の光を遮断できるものを設けることが好適である。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 基板保持回転部
11 スピンカップ
12 回転軸
13 スピンベース
14 チャックピン
15 廃液管
20 希釈撥水化剤供給部
50 バッファタンク
61 混合バルブ
64 ノズル
70 薬液等供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凸形状パターンが形成された半導体基板を保持し、前記半導体基板を回転させる基板保持回転部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に薬液及び/又は純水を供給する第1供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に希釈撥水化剤を供給し、前記凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成する第2供給部と、
を備え、
前記第2供給部は、
前記撥水化剤を貯留するバッファタンクと、
前記バッファタンクにパージガスを供給する第1供給ラインと、
希釈剤を供給する第2供給ラインと、
前記バッファタンク内の撥水化剤を送り出すポンプと、
前記ポンプから送り出される撥水化剤を供給する第3供給ラインと、
前記第2供給ライン及び前記第3供給ラインに連結され、前記希釈剤及び前記撥水化剤を混合し、前記希釈撥水化剤を生成する混合バルブと、
前記混合バルブで生成された前記希釈撥水化剤を前記半導体基板の表面に吐出するノズルと、
を有することを特徴とする半導体基板の表面処理装置。
【請求項2】
前記第2供給部は、前記バッファタンクに第2希釈剤を供給する第4供給ラインをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項3】
前記ポンプから送り出された撥水化剤の一部は、前記バッファタンクに戻されることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項4】
前記バッファタンクは、前記撥水化剤としてシランカップリング剤を貯留することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項5】
前記混合バルブと前記ノズルとを連結する配管の長さは2m以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項6】
半導体基板上にドライエッチング処理によって複数の凸形状パターンを形成し、
前記凸形状パターン表面を薬液を用いて洗浄及び改質し、
改質された前記凸形状パターン表面に、希釈した撥水化剤を用いて撥水性保護膜を形成し、
前記撥水性保護膜形成後に水を用いて前記半導体基板をリンスし、
前記半導体基板を乾燥させ、
前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する半導体基板の表面処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−129585(P2011−129585A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284361(P2009−284361)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】