説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物、および半導体装置

【課題】連続成形性、半田リフロー性、半導体素子の封止成形時における離型性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)第1エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂系硬化剤、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、および/または、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2エポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)酸化ポリエチレンを含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、半導体封止用エポキシ樹脂組成物および電子部品装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、電子部品の高集積化が年々進み、また半導体装置の表面実装化が促進されてきている。更に地球環境へ配慮した企業活動が重要視され、有害物質である鉛を特定用途以外で全廃することが求められている。
しかしながら、鉛フリー半田の融点は従来の鉛/スズ半田に比べて高いため、赤外線リフロー、半田浸漬などの半田実装時の温度も従来の220〜240℃から、今後240℃〜260℃へと高くなる。このような実装温度の上昇により、実装時に樹脂部にクラックが入り易くなり、信頼性を保証することが困難になってきているという問題が生じている。
更にリードフレームについても、外装半田メッキも脱鉛する必要があるとの観点から、外装半田メッキの代わりに事前にニッケル・パラジウムメッキを施したリードフレームの適用が進められている。このニッケル・パラジウムメッキは一般的な封止材料との密着性が低く、実装時に界面において剥離が生じ易く、樹脂部にクラックも入り易い。
【0003】
このような課題に対し、半田耐熱性の向上に対して低吸水性のエポキシ樹脂や硬化剤を適用することにより(例えば、特許文献1、2、3参照。)、実装温度の上昇に対して対応が取れるようになってきた。その半面、このような低吸水・低弾性率を示すエポキシ樹脂組成物は架橋密度が低く、硬化直後の成形物は軟らかく、連続生産では金型への樹脂トラレなどの成形性での不具合が生じ、生産性を低下させる問題があった。
また、連続成形性向上への取り組みとしては、離型効果の高い離型剤の適用が提案されている(例えば、特許文献4参照。)が、離型効果の高い離型剤は必然的に樹脂硬化物の表面に浮き出しやすく、連続生産すると樹脂硬化物表面の外観および金型表面を著しく汚してしまう欠点があった。樹脂硬化物表面の外観に優れるエポキシ樹脂組成物として、特定の構造を有するシリコーン化合物を添加する手法などが提案されている(例えば、特許文献5、6参照。)が、離型性は不充分で連続成形においてエアベント部分で樹脂が付着してエアベントを塞ぐことにより、未充填などの成形不具合を生じさせるなど、連続成形性の低下を引き起こす問題があった。以上より、半田耐熱性、離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ全ての課題に対応した半導体封止用エポキシ樹脂組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−3161号公報
【特許文献2】特開平9−235353号公報
【特許文献3】特開平11−140277号公報
【特許文献4】特開2002−80695号公報
【特許文献5】特開2002−97344号公報
【特許文献6】特開2001−310930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、半田耐熱性が良好で、成形時における離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面
の外観、金型汚れ性などとのバランスに優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物および電子部品装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、
(A)第1エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂系硬化剤、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、および/または、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2エポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)酸化ポリエチレンを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)が下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンであるものとすることができる。
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、R1は水素、メチル基、フェニル基、またはポリカプロラクトン基を有する有機基から選ばれる基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つ以上がポリカプロラクトン基を有する有機基である。)
【0008】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記(D)酸化ポリエチレンの滴点が100℃以上、140℃以下である半導体封止用エポキシ樹脂組成物であるものとすることができる。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記(D)酸化ポリエチレンの酸価が1mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下である半導体封止用エポキシ樹脂組成物であるものとすることができる。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、 前記(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の配合量Ac1と前記(D)酸化ポリエチレンの配合量ADとの重量比W(Ac1/AD)が、1/5以上3/1以下である半導体封止用エポキシ樹脂組成物であるものとすることができる。
【0009】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記(A)第1エポキシ樹脂が下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(a1)を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物であるものとすることができる。
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、Ar1、Ar2は炭素数6〜20の芳香族基であ
り、互いに同じであっても異なっていてもよい。R5、R6は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R7、R8は水素、炭素数1〜4の炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R9は炭素数1〜4の炭化水素基で、W1は酸素原子または硫黄原子である。
OGはグリシドキシ基である。b、cは0〜10の整数、dは0〜3の整数、eは1〜3の整数である。m2は0〜20の整数であり、n2は1〜20の整数であり、かつm2/n2の平均は1/10〜1/1である。m2部分の構造の繰り返し単位とn2部分の構造の繰り返し単位は、それぞれが連続で並んでいても、お互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ず−CR7R8−を有する構造をとる。)
【0010】
本発明の半導体装置は、前述の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に従うと、電子部品装置実装時において優れた耐半田リフロー性を示すとともに、半導体素子の封止成形時における離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ性などとのバランスに優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、(A)第1エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂系硬化剤、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、および/または、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2エポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)酸化ポリエチレンを含有させることにより、半導体素子の封止成形時において離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面の外観が良好で金型汚れも発生し難いという優れた成形性を示すとともに、電子部品装置実装時の半田リフロー性にも優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置が得られるものである。
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いられる(A)第1エポキシ樹脂とは、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではない。
(A)第1エポキシ樹脂は、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、アントラセンまたはその水添化物の骨格を有するエポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フェノール性水酸基含有芳香族類とアルデヒド類とアルコキシ基もしくはチオアルキル基を含有する芳香族類とを共縮合して得られたフェノール樹脂類をエピクロルヒドリンでグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、などが挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。なかでも、半田リフロー性および耐燃性の観点からは、上記一般式(2)で表されるエ
ポキシ樹脂(a1)が好ましい。
【0015】
一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(a1)は、m2と、n2の値が異なる複数の繰り返し単位を有する集合体であり、各々の繰り返し単位はm2が0〜20の整数であり、n2が1〜20の整数であって、各々の繰り返し単位が互いに同じであっても異なっていてもよいが、m2/n2の平均値は1/10〜1/1であることが好ましく、1/9〜1/2であることがより好ましい。m2/n2の平均値が上記下限値以上であれば、半田リフロー性および耐燃性向上効果を得ることができる。また、上記上限値以下であれば、樹脂粘度が高くなることによる樹脂組成物の流動性の低下を引き起こす恐れが少なく、良好な流動性を得ることができる。
【0016】
一般式(2)で表される構造を有するエポキシ樹脂(a1)の具体例としては、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(一般式(2)において、Ar1:フェニレン基、Ar2:フェニレン基、R7:水素、R8:水素、b=0、c=0、d=0、e=1、m2/n2の平均値:1)、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(一般式(2)において、Ar1:ビフェニレン基、Ar2:フェニレン基、R7:水素、R8:水素、b=0、c=0、d=0、e=1、m2/n2の平均値:1)、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(一般式(2)において、Ar1:フェニレン基、Ar2:ナフタレン基、R7:水素、R8:水素、b=0、c=0、d=0、e=1、m2/n2の平均値:1)、メトキシナフタレンとフェノールとホルムアルデヒドを共縮合して得られるノボラック型フェノール樹脂のエポキシ化樹脂(一般式(2)において、Ar1:ナフタレン基、Ar2:フェニレン基、R7:水素原子、R8:水素原子、R9:メチル基、W1:酸素原子、b=0、c=0、d=1、e=1、m2/n2の平均値:1/10〜1/1)、メトキシナフタレンとクレゾールとホルムアルデヒドを共縮合して得られるノボラック型フェノール樹脂のエポキシ化樹脂(一般式(2)において、Ar1:ナフタレン基、Ar2:フェニレン基、R6:メチル基、R7:水素原子、R8:水素原子、R9:メチル基、W1:酸素原子、b=0、c=1、d=1、e=1、m2/n2の平均値:1/10〜1/1)などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0017】
本発明で用いられる(A)第1エポキシ樹脂全体の配合割合の下限値は、特に限定されないが、全半導体封止用エポキシ樹脂組成物中に、3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、樹脂組成物は成形時の流動性に優れたものとなる。また、(A)第1エポキシ樹脂全体の配合割合の上限値は、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、12重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、樹脂組成物は半田リフロー性に優れたものとなる。
【0018】
本発明で用いられる(B)フェノール樹脂系硬化剤は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではない。
(B)フェノール樹脂系硬化剤は、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂、ビスフェノール化合物、などが挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
これらのうち、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものが好ましい。
本発明で用いられる(B)フェノール樹脂系硬化剤のエポキシ樹脂組成物全体に対する
配合割合の下限値は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体に対して、2重量%以上であることが好ましく、4重量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、樹脂組成物は成形時の流動性に優れたものとなる。
また、(B)フェノール樹脂系硬化剤の配合割合の上限値は、10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましい。
配合割合の上限値が上記範囲内であると、樹脂組成物は半田リフロー性に優れたものとなる。
また、(A)第1エポキシ樹脂および(B)フェノール樹脂系硬化剤の配合比率としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と全フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基数(OH)との比(EP)/(OH)が0.8以上、1.3以下であることが好ましい。当量比がこの範囲であると、エポキシ樹脂組成物の硬化性が維持でき、または樹脂硬化物の物性を良好に保つことができる。
【0019】
本発明では、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、および/または、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)と、(D)酸化ポリエチレンと、を併用することが必須である。これにより、エポキシ樹脂成分と(D)酸化ポリエチレンとを適正な状態に相溶化させることができるため、これらを併用したエポキシ樹脂組成物は、その成形時において、樹脂硬化物表面の外観と離型性とを両立させることができ、連続成形性が良好になる。
しかし、(D)酸化ポリエチレンを使用せずに、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、および/または、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)のみを使用した場合では、離型性が不充分となり、連続成形性が低下する。
また、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、および/または、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を使用せずに、(D)酸化ポリエチレンのみを使用した場合では、エポキシ樹脂成分中における(D)酸化ポリエチレンの相溶化が不充分となり、樹脂硬化物表面の外観が悪化する。
ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の配合量Ac1と(D)酸化ポリエチレンの配合量ADとの重量比W(Ac1/AD)としては、1/5以上3/1以下の範囲が好ましく、この範囲内にあるときが最も両者を併用する効果が高くなる。尚、(C)成分としてポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を用いる場合のポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の配合量W(Ac1)とは、第2エポキシ樹脂と反応させる前のポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の全エポキシ樹脂組成物に対する配合量を意味する。
【0020】
本発明で用いられるポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)は、ポリカプロラクトンとオルガノポリシロキサンを混合し、白金触媒下50〜100℃で反応させることで得られる。ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)としては、特に限定するものではないが、上記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0021】
前記一般式(1)において、R1は水素、メチル基、フェニル基、またはポリカプロラクトン基を有する有機基から選ばれる基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つ以上がポリカプロラクトン基を有する有機基である。
ポリカプロラクトン基を有する有機基としては、下記一般式(3)で表されるものが好ましい。一般式(3)において、aの平均値は1以上、20以下の正数であり、R2は炭素数1〜30の有機基である。ポリカプロラクトン基を有する有機基の炭素数が上記範囲
内であると、エポキシ樹脂成分との相溶性が適正な状態となり、樹脂硬化物表面の外観が良好なものとなる。また、前記一般式(1)において、n1の平均値は1以上、50以下の正数である。n1の平均値が上記範囲内であると、オルガノポリシロキサン自体の粘度が適正な範囲となるため、流動性が良好なものとなる。
【化3】

【0022】
前記(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、および/または、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2エポキシ樹脂との反応生成物(c2)を使用すると、(D)酸化ポリエチレンのように樹脂との相溶性が悪い離型剤を用いた場合においても、流動性の低下を引き起こさず樹脂硬化物表面の外観を良好にすることができる。
ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)の製法については、特に限定するものではないが、例えば、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)を第2エポキシ樹脂とともに硬化促進剤により溶融・反応させることで得ることができる。
ここで言う硬化促進剤とは、オルガノポリシロキサン(c1)のポリカプロラクトン基と第2エポキシ樹脂のエポキシ基との硬化反応を促進させるものであればよく、後述する(A)第1のエポキシ樹脂のエポキシ基と(B)フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基との硬化反応を促進させる硬化促進剤と同じものを用いることができる。
また、ここで言う第2エポキシ樹脂とは、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、前述した(A)第1エポキシ樹脂と同じものを用いることができる。
(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2エポキシ樹脂との反応生成物(c2)を使用すると、更に、連続成形後の型汚れが発生し難く、連続成形性が極めて良好になる。なお、反応生成物(c2)に用いられる第2のエポキシ樹脂は流動性の観点からはビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、および/または、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)の配合量は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)での配合量は、全エポキシ樹脂組成物中0.01重量%以上、3重量%以下であることが好ましい。配合量が上記範囲内であると、(D)酸化ポリエチレンによる樹脂硬化物表面の外観汚れを抑えることができ、良好な外観を得ることができる。また、配合量が上記範囲内であると、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)自体による樹脂硬化物表面の外観悪化を抑えることができ、良好な外観を得ることができる。
また、本発明に用いられる(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、および/または、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を添加する効果を損なわない範囲で、他のオルガノポリシロキサンを併用することができる。
【0024】
本発明に用いられる(D)酸化ポリエチレンは、カルボン酸などからなる極性基と長い
炭素鎖からなる非極性基を有しているものであり、離型剤(ワックス)として用いられる。その例としては、市販のものを入手し、必要により粒度調整して使用することができる。その中で好ましい例としては、低圧重合法によって製造されたポリエチレンの酸化物、高圧重合法によって製造されたポリエチレンの酸化物、高密度ポリエチレンポリマーの酸化物などが好ましい。
本発明で用いられる酸化ポリエチレン(D)の特性として滴点が挙げられるが、その範囲は60℃以上、140℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以上、130℃以下である。
滴点は、ASTM D127に準拠した方法により測定することができる。
具体的には、金属ニップルを用いて、溶融したワックスが金属ニップルから最初に滴下するときの温度として測定される。
以下の例においても、同様の方法により測定することができる。滴点が上記範囲内であると、酸化ポリエチレン(D)は熱安定性に優れ、成形時に酸化ポリエチレン(D)が焼き付きにくい。そのため、金型からの硬化物の離型性に優れるとともに、連続成形性にも優れる。
さらに、上記範囲内であると、エポキシ樹脂組成物を硬化させる際、酸化ポリエチレン(D)が十分に溶融する。これにより、硬化物中に酸化ポリエチレン(D)が略均一に分散する。そのため、硬化物表面における酸化ポリエチレン(D)の偏析が抑制され、金型表面の汚れや樹脂硬化物の外観の悪化を低減することができる。
【0025】
酸化ポリエチレン(D)の酸価は、10mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以上、40mgKOH/g以下である。酸価は、樹脂硬化物と酸価ポリエチレン(D)との相溶性に影響を及ぼす。
酸価は、JIS K 3504に準拠した方法により測定することができる。
具体的にはワックス類1g中に含有する遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数として測定される。
以下の例においても、同様の方法により測定することができる。酸価が上記範囲内にあると、酸化ポリエチレン(D)は、硬化物中において、エポキシ樹脂成分と好ましい相溶状態となる。これにより、酸化ポリエチレン(D)と、エポキシ樹脂成分とが、相分離を起こすことがない。そのため、硬化物表面における酸化ポリエチレン(D)の偏析が抑制され、金型の汚れや硬化物の外観の悪化を低減することができる。さらに、酸化ポリエチレン(D)が硬化物表面に存在するため、金型からの硬化物の離型性に優れる。一方、酸化ポリエチレン(D)とエポキシ樹脂成分との相溶性が高すぎると、酸化ポリエチレン(D)が硬化物表面に染み出すことができず、十分な離型性を確保することができない場合がある。
【0026】
酸化ポリエチレン(D)の数平均分子量は、500以上、5000以下が好ましく、より好ましくは1000以上、4000以下である。数平均分子量が上記範囲内であると、酸化ポリエチレン(D)と、エポキシ樹脂成分とが、好ましい親和状態となる。そのため、硬化物は、金型からの離型性に優れる。一方、酸化ポリエチレン(D)と、エポキシ樹脂成分との相溶性が高いと、十分な離型性を得ることができない場合がある。逆に、相溶性が低いと相分離を起こし、金型の汚れや樹脂硬化物外観の悪化を引き起こす場合がある。
【0027】
酸化ポリエチレン(D)の密度は、0.94g/cm3以上、1.03g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.97g/cm3以上、0.99g/cm3以下である。密度は、ASTM D1505に準拠した浮遊法にて、20℃における密度測定により算出することができる。以下の例においても、同様の方法により測定することができる。密度が上記範囲内であると、酸化ポリエチレン(D)は熱安定性に優れ、成形時に酸化ポリエチレン(D)が焼き付きにくい。そのため、金型からの硬化物の離型性に優れるとともに、
連続成形性にも優れる。さらに、上記範囲内であると、エポキシ樹脂組成物が硬化する際、酸化ポリエチレン(D)が十分に溶融する。これにより、硬化物中に酸化ポリエチレン(D)が均一に分散する。そのため、硬化物表面における酸化ポリエチレン(D)の偏析が抑制され、金型の汚れや硬化物の外観の悪化を低減することができる。
また、酸化ポリエチレン(D)の平均粒径は、0.1μm以上、100μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以上、60μm以下である。平均粒径は、例えば(株)島津製作所製のSALD−7000などのレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、溶媒を水として、重量基準の50%粒子径を平均粒径として測定することができる。平均粒径が上記範囲内にあると、酸化ポリエチレン(D)は、硬化物中において、エポキシ樹脂成分と好ましい相溶状態となる。これにより、酸化ポリエチレン(D)が硬化物表面に存在し、金型からの硬化物の離型性に優れる。一方、エポキシ樹脂成分との相溶性が高すぎると、硬化物表面に染み出すことができず、十分な離型性を確保することができない。さらに、酸化ポリエチレン(D)と、エポキシ樹脂成分とが好ましい相溶状態にあるため、硬化物表面における酸化ポリエチレン(D)の偏析が抑制され、金型表面の汚れや樹脂硬化物の外観の悪化を低減することができる。またさらに、上記範囲にあると、エポキシ樹脂組成物を硬化させる際、酸化ポリエチレン(D)が十分に溶融する。そのため、エポキシ樹脂組成物は流動性に優れる。
【0028】
また、全酸化ポリエチレン(D)中における粒径106μm以上の粒子の含有比率は、0.1重量%以下であることが好ましい。この含有比率は、JIS Z 8801の目開き106μmの標準篩を用いて測定することができる。以下の例においても、同様の方法により測定することができる。上記の含有比率であれば、酸化ポリエチレン(D)が均一に分散し、金型の汚れや樹脂硬化物の外観の悪化を抑制することができる。また、エポキシ樹脂組成物を硬化させる際、酸化ポリエチレンが十分に溶融するため、流動性に優れる。
また、酸化ポリエチレン(D)の含有量は、エポキシ樹脂組成物中に0.01重量%以上、1重量%以下であることが好ましく、0.03重量%以上、0.5重量%以下がより好ましい。上記範囲内であると、金型からの硬化物の離型性に優れる。上記範囲内であると、さらに、リードフレーム部材または回路基板との密着性に優れるため、半田処理時において、リードフレーム部材または回路基板と樹脂硬化物との剥離を抑制することができる。また、成形時における金型表面の汚れや樹脂硬化物の外観の悪化を抑制することもできる。
【0029】
尚、本発明では、酸化ポリエチレン(D)を添加する効果を損なわない範囲であれば、それ以外にも他の離型剤を併用することができる。併用可能な離型剤としては、例えば、カルナバワックスなどの天然ワックス、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸の金属塩類、脂肪酸エステル類などが挙げられる。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)第1エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂系硬化剤、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、および/または、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2エポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)酸化ポリエチレンを必須成分とするが、その他の主要構成成分として(E)硬化促進剤、(F)無機充填材などを配合することができる。
【0031】
本発明に用いることができる(E)硬化促進剤としては、(A)第1エポキシ樹脂のエポキシ基と(B)フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを用いることができる。
例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などのジアザビシクロアルケンおよびその誘導体;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィンなど
の有機ホスフィン類;2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレートなどのテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレートなどが挙げられ、これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用しても差し支えない。
本発明に用いることができる(E)硬化促進剤の配合割合の下限値は、特に限定されないが、全半導体封止用樹脂組成物中0.05重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、硬化性の低下などを引き起こす恐れが少ない。
また、(E)硬化促進剤の配合割合の上限値は、特に限定されないが、全半導体封止用樹脂組成物中1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、流動性の低下などを引き起こす恐れが少ない。
【0032】
本発明に用いることができる(F)無機充填材は、一般に封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。
例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素などが挙げられ、最も好適に使用されるものは、球状の溶融シリカである。これらの(F)無機充填材は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用しても差し支えない。またこれらがカップリング剤により表面処理されていてもかまわない。(F)無機充填材の形状としては、流動性の観点から、できるだけ真球状であり、かつ粒度分布がブロードであることが好ましい。
本発明に用いることができる(F)無機充填材の含有量の下限値は、全エポキシ樹脂組成物中80重量%以上であることが好ましく、84重量%以上であることがより好ましい。含有量の下限値が上記範囲内であると、成形時における充分な流動性を得ることができる。
また、(F)無機充填材の含有量の上限値は、全エポキシ樹脂組成物中92重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。含有量の上限値が上記範囲内であると、実装時における良好な半田リフロー性を得ることができる。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記(A)〜(F)成分以外に、更に必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシランなどのシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤などのカップリング剤;カーボンブラックなどの着色剤;シリコーンオイル、ゴムなどの低応力添加剤;臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼンなどの難燃剤などの添加剤を適宜配合しても差し支えない。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記(A)〜(F)成分、その他の添加剤などを、ミキサーなどなど用いて充分に均一に混合したもの、その後、更に熱ロール、ニーダー、押出機などの混練機で溶融混練し、冷却後粉砕したものなど、必要に応じて適宜分散度や流動性などを調整したものを用いることができる。
【0034】
封止を行う半導体素子としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子などの半導体素子で特に限定されるものではなく、電子部品の形態も特に限定されない。低圧トランスファー成形などの方法で封止された半導体素子は、そのまま、或いは80〜200℃の温度で15秒〜10時間かけて完全硬化させた後、電子機器などに搭載される。
本発明の電子部品の形態としては、特に限定されないが、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・ア
ウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)などの半導体装置が挙げられる。
【0035】
図1は、本発明に係る封止用エポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間は金線4によって接続されている。半導体素子1は、封止用樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子などを封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールドなどの従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【実施例】
【0036】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
実施例1
エポキシ樹脂1:下記式(4)で表されるエポキシ樹脂であるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(n4=1である。但し、上記一般式(2)において、m2の平均値:1、m2/n2の平均値:1、Ar1:ビフェニル基、Ar2:フェニル基、R7:水素、R8:水素、b=0、c=0,d=0、e=1。日本化薬(株)製、NC3000P、エポキシ当量275、軟化点60℃。)8.64重量部
【化4】

【0037】
フェノール樹脂系硬化剤1:一般式(5)で表されるフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製、スミライトレジン(登録商標)PR−HF−3。式中、n5の平均値:3.0。水酸基当量104、軟化点80℃。) 3.26重量部
【化5】

【0038】
式(1)の構造を有するオルガノポリシロキサン1:一般式(1)の構造を有する下記式(6)で表されるオルガノポリシロキサン(ポリカプロラクトンとオルガノポリシロキサンを混合し、白金触媒下80℃で反応させることで得た。) 0.20重量部
【化6】

【0039】
酸化ポリエチレン:酸化ポリエチレン1(滴点120℃、酸価20mgKOH/g、平均粒径45μm、粒径106μm以上の粒子の含有量0.0重量%。)
0.20重量部
硬化促進剤1:1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという) 0.20重量部
無機質充填剤1:溶融球状シリカ(平均粒径21μm) 87.00重量部
シランカップリング剤1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
0.20重量部
着色剤1:カーボンブラック 0.30重量部
前記エポキシ樹脂1、フェノール樹脂系硬化剤1、オルガノポリシロキサン1、酸化ポリエチレン1、硬化促進剤1、無機質充填剤1、シランカップリング剤1、および着色剤1をそれぞれ混合し、熱ロールを用いて、95℃で8分間溶融混練して冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を、以下の方法で評価した。結果を表1に示した。
【0040】
評価方法
スパイラルフロー:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物を注入し、
流動長を測定した。単位はcmである。判定基準は70cm未満を不合格、70cm以上を合格とした。
連続成形性:低圧トランスファー自動成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間70秒で、半導体装置として80ピンクワッドフラットパッケージ(80pQFP;Cu製リードフレーム、パッケージ外寸:14mm×20mm×2mm厚、パッドサイズ:6.5mm×6.5mm、チップサイズ6.0mm×6.0mm×0.35mm厚)を、エポキシ樹脂組成物により連続で700ショットまで封止成形した。判定基準は未充填など全く問題なく700ショットまで連続成形できたものを◎、未充填など全く問題なく500ショットまで連続成形できたものを○、それ以外を×とした。
【0041】
半導体装置外観(樹脂硬化物表面の外観)および金型汚れ性:上記連続成形性の評価において、300、500および700ショット成形後の半導体装置表面および金型表面について、目視で汚れを評価した。半導体装置外観判断および金型汚れ基準は、700ショットまで汚れていないものを◎で、500ショットまで汚れていないものを○で、300ショットまで汚れていないものを△で、汚れているものを×で表した。また、上記連続成形性において、300ショットまで連続成形できなかったものについては、連続成形を断念
した時点での半導体装置外観および金型汚れ状況で判断した。
半田リフロー性:上記連続成形性の評価において成形した半導体装置を、175℃、8時間加熱処理を行って後硬化し、次いで85℃、相対湿度60%で168時間加湿処理後、260℃の半田槽に10秒間浸漬した。半田に浸漬させた半導体装置20個の半導体素子とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面の密着状態を、超音波探傷装置(日立建機ファインテック(株)製、mi−scope 10)により観察し、剥離発生率[(剥離発生半導体装置数)/(全半導体装置数)×100]を算出した。単位は%である。耐半田性の判断基準は、剥離が発生しなかったものは◎、剥離発生率が5%以上、10%未満のものは○、10%以上、20%未満のものは△、20%以上のものは×とした。
【0042】
実施例2〜9、比較例1〜5
表1および表2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表1および表2に示した。
実施例1以外で用いた原材料を以下に示す。
エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX−4000。エポキシ当量190g/eq、融点105℃。)
フェノール樹脂系硬化剤2:パラキシリレン変性ノボラック型フェノール樹脂(三井化学(株)製、XLC−4L。水酸基当量168g/eq、軟化点62℃。)
【0043】
式(1)の構造を有するオルガノポリシロキサン2:一般式(1)の構造を有する下記式(7)で表されるオルガノポリシロキサン(ポリカプロラクトンとオルガノポリシロキサンを混合し、白金触媒下80℃で反応させることで得た。)
【化7】

【0044】
一般式(1)の構造を有さないオルガノポリシロキサン:一般式(1)の構造を有さない下記式(8)で表されるオルガノポリシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製SILSOFT034)
【化8】

【0045】
反応生成物A:第2エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YL−6810、エポキシ当量170g/eq、融点47℃)66.1重量部を140℃で加温溶融し、一般式(1)の構造を有するオルガノポリシロキサン1(式(6)で表されるオルガノポリシロキサン)33.1重量部およびトリフェニルホスフィン0.8重量部を添加して、30分間溶融混合して反応生成物Aを得た。
酸化ポリエチレン:酸化ポリエチレン2(滴点110℃、酸価12mgKOH/g、平均粒径40μm、粒径106μm以上の粒子の含有量0.0重量%)
離型剤1:グリセリンジセロチン酸エステル(グリセリンとセロチン酸を混合し、減圧下、180℃の条件で脱水縮合、蒸留させ、得られた生成物を粉砕することによって得た。滴点75℃、酸価25mgKOH/g、平均粒径45μm、粒径106μm以上の粒子0.0重量%)
離型剤2:カルナバワックス(日興ファインプロダクツ(株)製、商品名ニッコウカルナバ。滴点83℃、酸価5mgKOH/g。)
離型剤3:グリセリントリモンタン酸エステル(クラリアントジャパン(株)製LICOLUBE WE4、滴点85℃、酸価25mgKOH/g、平均粒径45μm、粒径106μm以上の粒子0.0重量%)
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
実施例1〜11は、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、および/または、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2エポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)酸化ポリエチレンをともに含むものであり、(C)成分の配合量や種類を変えたもの、(D)成分の配合量や種類を変えたもの、あるいは、樹脂の種類や無機充填材の配合量を変えたものを含むものであるが、いずれにおいても、流動性(スパイラルフロー)、連続成形性、半導体装置外観、金型汚れ性、耐半田性の全てに亘って、良好な結果が得られた。
一方、比較例1は(D)酸化ポリエチレンを用いていないものであるが、離型性が不充分なため、連続成形性が低下する結果となった。
また、比較例2は(C)成分の代わりにポリカプロラクトン基を有さないオルガノポリシロキサン3を用いたものであるが、(D)酸化ポリエチレンの分散が不充分となり、半導体装置表面(樹脂硬化物表面)の外観が悪化し、金型キャビティが汚れる結果となった。
また、比較例3は(D)酸化ポリエチレンの代わりに、グリセリンジ脂肪酸エステルを用いたものであるが、充分な離型性が得られず、連続成形性が劣る結果となった。
また、比較例4は(D)酸化ポリエチレンの代わりに、カルナバワックスを用いたものであるが、ワックスが樹脂硬化物表面に均一に出てこないため、連続成形性が劣る結果となった。
比較例5は、(C)成分、(D)成分をともに用いていないものであるが、離型性が不充分なため、連続成形性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に従うと、流動性に優れるとともに、連続性成形性、半田リフロー性、半導体素子の封止成形時における離型性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ性などとのバランスに
優れる封止用エポキシ樹脂組成物が得られるため、半導体封止用として好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 半導体素子
2 ダイボンド材硬化体
3 ダイパッド
4 金線
5 リードフレーム
6 封止用樹脂組成物の硬化体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂系硬化剤、
(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、および/または
、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2エポキシ
樹脂との反応生成物(c2)、
並びに
(D)酸化ポリエチレンを含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)が、一般式(1)
【化1】

(ただし、一般式(1)において、R1は水素、メチル基、フェニル基、またはポリカプロラクトン基を有する基から選ばれる基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つ以上がポリカプロラクトン基を有する有機基である。)
で表されるオルガノポリシロキサンである請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)酸化ポリエチレンの滴点が、100℃以上、140℃以下である請求項1または請求項2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)酸化ポリエチレンの酸価が、1mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の配合量Ac1と前記酸化ポリエチレン(D)の配合量ADとの重量比W(Ac1/AD)が、1/5以上3/1以下である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)第1エポキシ樹脂が、一般式(2)
【化2】

(ただし、一般式(2)において、Ar1、Ar2は炭素数6〜20の芳香族基であり、
互いに同じであっても異なっていてもよい。R5、R6は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R7、R8は水素、炭素数1〜4の炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R9は炭素数1〜4の炭化水素基で、W1は酸素原子または硫黄原子である。
OGはグリシドキシ基である。b、cは0〜10の整数、dは0〜3の整数、eは1〜3の整数である。m2は0〜20の整数であり、n2は1〜20の整数であり、かつm2/n2の平均は1/10〜1/1である。m2部分の構造の繰り返し単位とn2部分の構造の繰り返し単位は、それぞれが連続で並んでいても、お互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ず−CR7R8−を有する構造をとる。)で表されるエポキシ樹脂(a1)を含む請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−74258(P2011−74258A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228045(P2009−228045)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】