説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置

【課題】熱伝導性を維持しつつパッシベーション膜のクラック発生を抑制するとともに、成形性にも優れた樹脂封止が可能な半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記A〜E成分を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。そして、上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置である。
A:エポキシ樹脂
B:下記b1成分およびb2成分を含み、b1成分およびb2成分の重量比率が、b1/b2=5/95〜25/75であるシリコーン混合物
b1:重量平均分子量が600〜900であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
b2:重量平均分子量が10000〜20000であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
C:フェノール樹脂
D:硬化促進剤
E:下記e1成分およびe2成分を含む無機質充填剤
e1:結晶性シリカ
e2:溶融シリカ

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシベーション処理を施した半導体素子を樹脂封止する際に、パッシベーション膜のクラック発生を抑制するとともに、成形性に優れた樹脂封止が可能な半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置は、パッシベーション膜とよばれる表面保護膜によって保護された半導体素子を、熱硬化性樹脂にシリカ粉末等の無機質充填剤を混合分散した封止樹脂を用いて封止することにより製造される。
【0003】
樹脂封止の際に発生する封止樹脂層の熱応力により、パッシベーション膜にクラックが発生することがある。熱応力を低減するために、シリコーン化合物等の可撓性材料を、応力緩和剤として封止樹脂に添加することが検討されている(特許文献1および2)。
【特許文献1】特開平8−151433号公報
【特許文献2】特開2002−194064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、パワートランジスタ等の封止樹脂層に熱伝導性が求められる半導体装置の場合は、封止樹脂層自体の厚みが大きくなるとともに、封止樹脂層中に高熱伝導性の結晶性シリカ粉末を多く含有させる必要があるために、封止樹脂層の線膨張係数が高くなる。このため、封止樹脂層により大きな熱応力が発生して、応力緩和剤のみでは熱応力を十分に低減することは困難であった。
【0005】
また、応力緩和剤を添加することにより、樹脂組成物の流動性低下や外観不良など、成形性に問題が生じる傾向があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、熱伝導性を維持しつつパッシベーション膜のクラック発生を抑制するとともに、成形性にも優れた樹脂封止が可能な半導体封止用エポキシ樹脂組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するために、本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、下記A〜E成分を含有することを特徴としている。
A:エポキシ樹脂
B:下記b1成分およびb2成分を含み、b1成分およびb2成分の重量比率が、b1/b2=5/95〜25/75であるシリコーン混合物
b1:重量平均分子量が600〜900であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
b2:重量平均分子量が10000〜20000であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
C:フェノール樹脂
D:硬化促進剤
E:下記e1成分およびe2成分を含む無機質充填剤
e1:結晶性シリカ
e2:溶融シリカ
【0008】
また、本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、下記A成分とB成分を反応させて得られるシリコーン変性エポキシ樹脂および下記C〜D成分を含有することを特徴としている。
A:エポキシ樹脂
B:下記b1成分およびb2成分を含み、b1成分およびb2成分の重量比率が、b1/b2=5/95〜25/75であるシリコーン混合物
b1:重量平均分子量が600〜900であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
b2:重量平均分子量が10000〜20000であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
C:フェノール樹脂
D:硬化促進剤
E:下記e1成分およびe2成分を含む無機質充填剤
e1:結晶性シリカ
e2:溶融シリカ
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、樹脂封止時に発生する熱応力を低減して、熱伝導性を維持しつつパッシベーション膜のクラック発生を抑制するとともに、成形性に優れた樹脂封止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】離型性の評価方法に用いるエポキシ樹脂組成物硬化体の成形方法を示す説明図である。
【図2】離型性の評価方法である離型荷重の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0012】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、下記A〜E成分を含有する。
A:エポキシ樹脂
B:下記b1成分およびb2成分を含み、b1成分およびb2成分の重量比率が、b1/b2=5/95〜25/75であるシリコーン混合物
b1:重量平均分子量が600〜900であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
b2:重量平均分子量が10000〜20000であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
C:フェノール樹脂
D:硬化促進剤
E:下記e1成分およびe2成分を含む無機質充填剤
e1:結晶性シリカ
e2:溶融シリカ
【0013】
A成分であるエポキシ樹脂は、特に限定されるものではない。例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。エポキシ樹脂の反応性およびエポキシ樹脂組成物の硬化体の靭性を確保する観点から、エポキシ当量150〜250、軟化点もしくは融点が50〜130℃の常温で固形のものが好ましく、中でも、信頼性の観点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0014】
A成分の含有率は、エポキシ樹脂組成物全体に対して5〜20重量%の範囲に設定することが好ましい。
【0015】
B成分は、下記b1成分およびb2成分を含み、b1成分およびb2成分の重量比率が、b1/b2=5/95〜25/75であるシリコーン混合物である。
b1:重量平均分子量が600〜900であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
b2:重量平均分子量が10000〜20000であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
B成分を用いることにより、パッシベーション膜のクラックを抑制しつつ、成形性に優れた樹脂封止が可能となる。
【0016】
b1成分およびb2成分は、成形性の観点から、重量比率がb1/b2=5/95〜25/75となるように用いる。b1の重量比率が5未満の場合は、エポキシ樹脂組成物の流動性が低下する傾向がみられる。また、b1の重量比率が25を超えると、パッケージ曇りなどの外観不良が生じる傾向がみられる。
【0017】
b1成分の重量平均分子量は600〜900であり、650〜850が好ましく、700〜800がより好ましい。重量平均分子量が600未満では、パッケージ曇りなどの外観不良となる傾向がみられる。重量平均分子量が900を超えると、エポキシ樹脂組成物の流動性が低下する傾向がみられる。
【0018】
b2成分の重量平均分子量は10000〜20000であり、12000〜18000が好ましく、14000〜16000がより好ましい。重量平均分子量が10000未満では、金型離型性が低下する傾向がみられる。重量平均分子量が20000を超えると、エポキシ樹脂組成物への相溶性が低下する傾向がみられる。
【0019】
なお、b1成分およびb2成分の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ分析法によって測定される。
【0020】
B成分の配合量は、エポキシ樹脂組成物の弾性率の観点から、A成分100重量部に対して3〜20重量部となるように設定するのが好ましい。
【0021】
なお、金型離型性の観点から、A成分とB成分を反応させてシリコーン変性エポキシ樹脂を得た後に、得られたシリコーン変性エポキシ樹脂に下記C〜D成分を加えて溶融混練させることが好ましい。その際の反応条件としては、加熱温度165〜185℃、加熱時間10〜50分が好ましい。
【0022】
C成分であるフェノール樹脂は、上記A成分との間で硬化反応を生起するものであれば特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾール樹脂等が用いられる。これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。A成分との反応性の観点から、水酸基当量が70〜250、軟化点が50〜110℃のものを用いることが好ましく、中でも硬化反応性が高いという観点から、フェノールノボラック樹脂を好適に用いることができる。また、信頼性の観点から、フェノールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂のような低吸湿性のものを用いることが好ましい。
【0023】
そして、C成分の配合量は、硬化反応性という観点から、A成分中のエポキシ基1当量に対して、C成分中の水酸基の合計が0.7〜1.5当量となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
【0024】
D成分である硬化促進剤は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の硬化を進行させるものであれば特に限定されるものではないが、硬化性の観点から、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン−5等のジアザビシクロアルケン系化合物、トリエチルアミンおよびベンジルジメチルアミン等のアミン化合物、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機リン系化合物、イミダゾール系化合物を用いることが好ましい。これら硬化促進剤は、単独で用いても良いし、他の硬化促進剤と併用しても構わない。
【0025】
D成分の含有量は、A成分およびC成分の合計含有量100重量部に対して、0.3〜1.5重量部とするのが好ましい。
【0026】
また、硬化性の観点から、D成分は予めC成分と溶融混合させることが好ましい。その際の溶融混合条件としては、加熱温度160〜230℃、加熱時間1〜5時間が好ましい。
【0027】
E成分は、下記e1成分およびe2成分を含む無機質充填剤である。
e1:結晶性シリカ
e2:溶融シリカ
e1成分およびe2成分を併用することにより、熱伝導性を維持しつつ流動性に優れたエポキシ樹脂組成物とすることが可能となる。
【0028】
e1成分は結晶性シリカである。e1成分は、天然石英を粉砕したものを用いることができ、通常、鋭利な形状を有しているが、研磨によって丸みを有する形状にしてもよい。中でも、e1成分の平均粒径は、1〜50μmであるものが好ましく、5〜20μmであるものがより好ましい。
【0029】
e2成分は溶融シリカである。e2成分としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが好ましい。中でも、平均粒径は、1〜50μmであるものが好ましく、5〜30μmであるものがより好ましい。
【0030】
なお、上記平均粒径は、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。
【0031】
パッケージ曇りなどの外観不良の観点から、e1成分およびe2成分の重量比率は、e1/e2=45/55〜75/25であることが好ましい。
【0032】
また、E成分の含有率は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、70〜93重量%が好ましく、75〜87重量%がより好ましい。
【0033】
さらに、本発明では、F成分として下記f1成分およびf2成分を含むワックス混合物を、離型剤として用いることが好ましい。f1成分およびf2成分を併用することにより、エポキシ樹脂組成物の硬化体の金型離型性をより向上させることが可能となる。
f1:アミドワックス
f2:エステルワックス
【0034】
f1成分であるアミドワックスは、高級脂肪酸と多価アミンとの反応生成物であり、特に限定されるものではないが、例えば、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド等があげられる。これらアミドワックスは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。中でも、離型性の観点から、炭素数が17〜50の高級脂肪酸を用いたアミドワックスが好ましい。
【0035】
f2成分であるエステルワックスは、高級脂肪酸と多価アルコールとの反応生成物であり、特に限定されるものではないが、例えば、モンタン酸エステルワックス、カルナバワックス等があげられる。これらアミドワックスは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。中でも、離型性の観点から、炭素数が17〜50の高級脂肪酸を用いたエステルワックスが好ましい。
【0036】
エポキシ樹脂組成物とパッシベーション膜の接着性および金型離型性の観点から、f1成分およびf2成分の重量比率は、f1/f2=20/80〜80/20であることが好ましい。
【0037】
また、F成分の含有率は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、0.1〜1重量%が好ましく、0.3〜0.6重量%がより好ましい。
【0038】
なお、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、上記A〜F成分以外に、必要に応じて、難燃剤、カーボンブラックをはじめとする顔料等の他の添加剤を適宜配合することができる。
【0039】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、前記A〜E成分および必要に応じてF成分ならびに他の添加剤を常法に準じて適宜配合し、ミキシングロール機等の混練機を用いて加熱状態で溶融混練して、目的とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0040】
なお、上述のように、金型離型性の観点から、A成分とB成分を予め反応させてシリコーン変性エポキシ樹脂を得た後に、得られたシリコーン変性エポキシ樹脂とその他の成分を溶融混練することが好ましい。
【0041】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、常法により粉砕して打錠したものを用いてもよいし、打錠せずに粉末状のまま用いても、シート状に形成したものを用いてもよい。
【0042】
このようにして得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた半導体素子の封止は、特に限定するものではなく、通常のトランスファー成形(トランスファーアンダーフィルを含む)、圧縮成形方法およびシート封止方法等の公知のモールド方法により行うことができる。
【実施例】
【0043】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0044】
まず、下記に示す各成分を準備した。
〔エポキシ樹脂〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成社製、KI−3000。軟化点70℃、エポキシ当量105)
〔シリコーン化合物X(前記b1成分に相当)〕
アミノ基含有ポリジメチルシロキサン(旭化成ワッカーシリコーン社製、L655。重量平均分子量800)
〔シリコーン化合物Y(前記b2成分に相当)〕
アミノ基含有ポリジメチルシロキサン(旭化成ワッカーシリコーン社製、L652。重量平均分子量12000)
〔シリコーン化合物Z〕
アミノ基含有ポリジメチルシロキサン(東レダウコーニング社製、SF−8417。重量平均分子量25000)
〔シリコーン変性エポキシ樹脂I〜V〕
表1に示した割合で、エポキシ樹脂、シリコーン化合物Xおよびシリコーン化合物Yを220℃にて2時間加熱撹拌することにより反応させて、シリコーン変性エポキシ樹脂I〜Vを得た。
〔フェノール樹脂〕
フェノールノボラック樹脂(群栄化学工業社製、GS−180。水酸基当量109、軟化点70℃)
〔硬化促進剤〕
1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7
〔無機質充填剤X(前記e1成分に相当)〕
平均粒径30μm、最大粒径128μmの結晶性シリカ粉末(電気化学工業社製、FB−9454)
〔無機質充填剤Y(前記e2成分に相当)〕
平均粒径15μm、最大粒径128μmの溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB−9454FC)
〔無機質充填剤Z〕
平均粒径22μm、最大粒径128μmの溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB−820)
〔離型剤X(前記f1成分に相当)〕
アミドワックス(花王社製、カオーワックス EB−FF)
〔離型剤Y(前記f2成分に相当)〕
モンタン酸部分ケン化エステルワックス(クラリアント社製、Licowax(登録商標) OP)
〔離型剤Z(前記f2成分に相当)〕
カルナバワックス
【0045】
〔実施例1〜7、比較例1〜6〕
後記の表2および表3に示す各成分を、同表に示す割合で配合し、ロール混練機を用いて100℃、3分間溶融混練してエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0046】
〔半導体装置の作製〕
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて175℃で120秒、銅製の80ピンQFP用リ−ドフレ−ムを用いトランスファ−成型し175℃で5時間後硬化して半導体装置を作製した。チップは7.5mm×7.5mm×厚み0.37mm、パッケ−ジは14mm×20mm×厚み2.7mmであり、ポリイミドのパッシベーション膜を有する。
【0047】
〔外観〕
得られた半導体装置の外観を目視し、パッケージに曇りがあるものを×、ないものを○とし、評価した。結果を表2および表3に示す。
〔パッシベーション膜クラック抑制〕
得られた半導体装置を、−65℃で5分間、150℃で5分間の熱サイクルを1000回繰り返し、目視によりパッシベーション膜にクラックの発生が認められたものを×とし、目視ではクラックは見られないが超音波探傷機で剥離が認められたものを△、いずれも変化の認められなかったものを○とし、評価した。結果を表2および表3に示す。
〔熱伝導性〕
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、175℃で2分間のトランスファー成形後、乾燥機内で、175℃で5時間後硬化して、直径50mm×厚さ1mmの円板状試験片となる成形物を作製した。この成形物の熱伝導率を、熱伝導率測定装置(KEMTHERMOQTM−D3、京都電子工業社製)を用いて測定した。そして、熱伝導率が2.5以上のものを◎、2.0以上2.5未満のものを○、1.5以上2.0未満のものを△、1.5未満のものを×として評価した。
〔流動性〕
スパイラルフロー測定用金型を用い、175±5℃,120秒,70kg/cm2の条件でEMMI 1−66の方法に準じて、スパイラルフロー値(cm)を測定した。スパイラルフロー値が120cm以上のものを◎、100cm以上120cm未満のものを○、100cm未満のものを×とし、評価した。結果を表2および表3に示す。
〔金型離型性〕
まず、図1に示すような3層構造(上型1,中型2,下型3)の成形型を用いて、175℃×60秒の条件で成形を行い、エポキシ樹脂組成物硬化体における離型時の荷重を測定した。図1において、4はカル、5はスプルー、6はランナー、7はキャビティーである。離型時の荷重の測定は、図2に示すように、成形型の中型2を支持台8上に載置し、プッシュプルゲージ9を用いて上方から中型2内のエポキシ樹脂組成物硬化体10を脱型した。このときの荷重値を測定した。荷重値が14.7N以下のものを◎、14.7以上19.6N未満のものを○、19.6N以上のものを×とし、評価した。結果を表2および表3に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
上記結果より、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、すべての評価項目で良好な結果であり、特に、エポキシ樹脂および特定のシリコーン化合物を予め反応させてシリコーン変性エポキシ樹脂とした実施例5〜7は、金型離型性がさらに良好であることがわかる。一方、特定の無機質充填剤を含まない比較例1、特定のシリコーン化合物を含まない比較例2および4、特定のシリコーン化合物の重量比率が条件を満たさない比較例3は、パッシベーション膜のクラックは抑制するが、その他の評価項目に不良が見られる。
【符号の説明】
【0052】
1 上型
2 中型
3 下型
4 カル
5 スプルー
6 ランナー
7 キャビティー
8 支持台
9 プッシュプルゲージ
10 エポキシ樹脂組成物硬化体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A〜E成分を含有する、半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
A:エポキシ樹脂
B:下記b1成分およびb2成分を含み、b1成分およびb2成分の重量比率が、b1/b2=5/95〜25/75であるシリコーン混合物
b1:重量平均分子量が600〜900であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
b2:重量平均分子量が10000〜20000であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
C:フェノール樹脂
D:硬化促進剤
E:下記e1成分およびe2成分を含む無機質充填剤
e1:結晶性シリカ
e2:溶融シリカ
【請求項2】
下記A成分とB成分を反応させて得られるシリコーン変性エポキシ樹脂および下記C〜D成分を含有する、半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
A:エポキシ樹脂
B:下記b1成分およびb2成分を含み、b1成分およびb2成分の重量比率が、b1/b2=5/95〜25/75であるシリコーン混合物
b1:重量平均分子量が600〜900であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
b2:重量平均分子量が10000〜20000であり、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物
C:フェノール樹脂
D:硬化促進剤
E:下記e1成分およびe2成分を含む無機質充填剤
e1:結晶性シリカ
e2:溶融シリカ
【請求項3】
E成分の含有率が、エポキシ樹脂組成物全体の70〜93重量%の割合である、請求項1または2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
e1成分およびe2成分の重量比率が、e1/e2=45/55〜75/25である、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、下記F成分を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
F:下記f1成分およびf2成分を含むワックス混合物
f1:アミドワックス
f2:エステルワックス
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物によって半導体素子を封止してなる半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−236303(P2011−236303A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108026(P2010−108026)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】