説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いて得られる半導体装置

【課題】半導体装置の製造(封止)に用いられる、ポットライフ、流動性および硬化性に優れ、かつ塩素イオン量の少ない半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(C)成分を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。しかも、上記(C)成分が、エポキシ樹脂組成物中に分散されている。
(A)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂。
(B)1分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物。
(C)最大粒子径が30μm以下で、かつ標準偏差が5μm以下である、下記の一般式(1)で表される化合物からなる粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポットライフ,流動性および硬化性に優れ、塩素イオン等の不純物イオン量の少ない半導体封止用エポキシ樹脂組成物、および、それを用いて得られた高い信頼性を有する半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日では、半導体装置の製造の際には、エポキシ樹脂を主体とする熱硬化性樹脂組成物が幅広い用途で使用されており、例えば、半導体素子の封止材、ダイアタッチ材、プリプレグ、アンダーフィル材等として用いられている。このような用途において、熱硬化性樹脂組成物の形状としては、タブレット状や液状、シート状等、その用途に応じて適宜選択されているが、全てに共通して求められる特性としては、電気絶縁性、密着性、イオン性不純物の低減やポットライフの向上、流動性に基づく作業性等があげられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、液状樹脂組成物では、流動性の観点から、酸無水物を主体とする硬化剤がエポキシ樹脂と併用して用いられているが、酸無水物を硬化剤として用いた場合、熱硬化性樹脂組成物の硬化後において、カルボキシル基が硬化物中に存在することから耐湿信頼性の低下を引き起こすことが知られている。
【0004】
また、シート状接着剤では、ポットライフと硬化性を両立させるため、一般にある種の熱可塑性樹脂組成物中に硬化性成分としてエポキシ樹脂とイミダゾール系硬化促進剤が使用されているが、エポキシ樹脂単独で硬化した硬化物は硬くて脆く、また硬化促進剤としてイミダゾール系硬化促進剤を用いるため塩素イオンの低減が困難となるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、半導体装置の製造(封止)に用いられる、ポットライフ、流動性および硬化性に優れ、かつ塩素イオン量の少ない半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いて得られる半導体装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)〜(C)成分を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記(C)成分が、エポキシ樹脂組成物中に分散されている半導体封止用エポキシ樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂。
(B)1分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物。
(C)最大粒子径が30μm以下で、かつ標準偏差が5μm以下である、下記の一般式(1)で表される化合物からなる粉末。
【化1】

【0007】
そして、本発明は、上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を樹脂封止してなる半導体装置を第2の要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明者らは、ポットライフ、流動性および硬化性に優れ、しかも塩素イオン量の少ない封止材料を得るために、配合成分について鋭意検討を重ねた。中でも、硬化促進剤を中心に研究を重ねた結果、硬化促進剤として前記一般式(1)で表される四級ホスホニウム塩構造を有し、しかも最大粒子径および標準偏差を特定の値以下となる上記四級ホスホニウム塩の粉末を用いると、上記特定の四級ホスホニウム塩がエポキシ樹脂組成物中に均一に分散され、硬化反応が全体に均一に進行することから、良好な流動性、ポットライフと硬化性が得られるとともに、塩素イオン含有量が抑制されるという所期の目的が達成されることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明は、硬化促進剤として、最大粒子径および標準偏差が特定の値以下となる前記一般式(1)で表される四級ホスホニウム塩からなる粉末〔(C)成分〕が分散し含有してなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。このため、ポットライフ、流動性および硬化性の全てにおいて優れた封止材料となりうるエポキシ樹脂組成物が得られ、さらに塩素イオン量の少ないものとなる。したがって、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて樹脂封止してなる半導体装置は、良好な硬化性を備えることから効率良く製造され、しかも不純物イオンである塩素イオン量が少ないことから優れた耐湿信頼性等を備えた高信頼性のものが得られる。
【0010】
さらに、半導体封止用エポキシ樹脂組成物として、熱可塑性樹脂〔(D)成分〕を配合すると、シート状に加工成形することが容易となる。
【0011】
そして、半導体封止用エポキシ樹脂組成物として、示差走査熱量計にて測定される、昇温速度10℃/分での反応発熱ピーク温度が150〜200℃にあり、かつ上記反応発熱ピーク温度の±30℃の温度範囲における半導体封止用エポキシ樹脂組成物の反応発熱量が全反応発熱量の80%以上を占めるものを用いると、部分的なばらつきもなく均一に硬化反応が進行し、良好な樹脂封止がなされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A成分)と、フェノール化合物(B成分)と、特定の硬化促進剤(C成分)を用いて得られるものであって、通常、粉末状もしくはこれを打錠したタブレット状、あるいはシート状等にて使用に供される。
【0013】
上記エポキシ樹脂(A成分)としては、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定するものではなく従来公知の各種エポキシ樹脂が用いられ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントイン型エポキシ樹脂等の含窒素エポキシ樹脂、水添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、低吸水率硬化体タイプの主流であるビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等があげられる。これらエポキシ樹脂の中でも、流動性の観点から、50℃以下で液状であるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂が好適に用いられる。これらエポキシ樹脂は単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、エポキシ樹脂組成物の硬化体の機械的強度およびガラス転移温度の制御の観点から、一般に、エポキシ当量が90〜1000g/eqのものが好ましい。上記エポキシ樹脂の含有量は、耐熱性および耐湿性の観点から、エポキシ樹脂組成物全量に対して、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜80重量%に設定される。
【0014】
上記エポキシ樹脂(A成分)の硬化剤として作用するフェノール化合物(B成分)としては、1分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば特に限定するものではなく、例えば、クレゾールノボラック樹脂、フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン環型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールあるいは上記フェノール樹脂にアリル基を部分導入したアリル化フェノール樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、これらフェノール樹脂の中でも、流動性および硬化性の観点から、40〜70℃の軟化点を有するフェノール樹脂がより好適に用いられる。
【0015】
上記エポキシ樹脂(A成分)とフェノール化合物(B成分)の配合割合は、エポキシ樹脂成分(A成分)中のエポキシ基1当量に対してフェノール化合物(B成分)における反応性の水酸基が0.5〜1.5当量となるよう配合することが好ましい。特に好ましくは0.7〜1.2当量である。すなわち、水酸基が0.5当量未満の場合には、エポキシ樹脂組成物の硬化速度が遅くなるとともに、その硬化体のガラス転移温度が低くなる場合があり、一方、1.5当量を超える場合には、耐湿性が低下する傾向がみられるからである。なお、上記フェノール化合物(B成分)以外の硬化剤を併用する場合においても、その配合割合は、上記フェノール化合物(B成分)を用いた場合の配合割合(当量比)に準じればよい。
【0016】
上記A成分およびB成分とともに用いられる特定の硬化促進剤(C成分)は、下記の一般式(1)で表される四級ホスホニウム塩からなる粉末であり、さらに特定の粒度分布を有する粉末粒子である上記化合物をエポキシ樹脂組成物中に固体分散させることにより潜在性硬化促進剤として効果的に作用するものである。
【0017】
【化2】

【0018】
上記式(1)において、X1 〜X5 は、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基またはフッ素原子であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。特に、潜在的硬化促進性や硬化特性の点から、X1 〜X5 の全てが水素原子となる四級ホスホニウム塩、X1 〜X5 のいずれか一つが炭素数1〜3のアルキル基で残りが水素原子となる四級ホスホニウム塩、X1 〜X5 のいずれか一つがフッ素原子で残りが水素原子となる四級ホスホニウム塩が好ましい。具体的には、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ(4−メチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ(4−フルオロフェニル)ボレート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0019】
そして、上記一般式(1)で表される四級ホスホニウム塩からなる粉末は、それを用いたエポキシ樹脂組成物の硬化性および半田接合性の観点から、最大粒子径が30μm以下で、標準偏差が5μm以下でなければならない。より好ましくは、最大粒子径が10μm以下で、標準偏差が2μm以下である。すなわち、最大粒子径が30μmを超え、標準偏差が5μmを超えると、エポキシ樹脂組成物の硬化が不均一となり、所望の硬化性が得られなくなり、また、電極間同士の接触を阻害する恐れがあるからである。このような粒子分布を有する一般式(1)で表される四級ホスホニウム塩からなる粉末は、例えば、乳鉢やジェットミル、ビーズミル等により所定の粒子サイズに解砕してもよく、またエア分球等により所定のサイズの粒子を取り出してもよい。ここで、最大粒子径とは、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって検出される最大の粒子サイズを意味する。また、標準偏差とは、上記と同様、例えば、母集団から任意に抽出される試料に対して、下記の数式(a)により求められる粒子の分布の広がり具合を意味する。
【0020】
【数1】

【0021】
上記特定の硬化促進剤(C成分)の配合量は、エポキシ樹脂組成物の硬化性の観点から、所望の硬化時間にて硬化物が得られるよう適宜選択される。一般的には、エポキシ樹脂組成物中0.1〜10重量%の割合に設定することが好ましい。
【0022】
このような硬化性の指標となるものとして、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、示差走査熱量計の測定における昇温速度10℃/分での反応発熱ピーク温度が150〜200℃の範囲にあることが好ましく、かつ上記反応発熱ピーク温度の±30℃の温度範囲における半導体封止用エポキシ樹脂組成物の反応発熱量が全反応発熱量の80%以上を占めることが好ましい。これにより、上記エポキシ樹脂組成物は部分的なばらつきが生じず、全体に均一な熱硬化反応が進行することとなる。なお、ここで、示差走査熱量計による測定とは、測定対象となる試料および基準物質を加熱または冷却によって調節しながら等しい条件下とし、この二つの間の温度差を0(ゼロ)に保つために必要なエネルギーを時間または温度に対して記録する方法である。
【0023】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、上記A〜C成分に加えて、さらにシート状に加工するために熱可塑性樹脂(D成分)を必要に応じて配合することができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル酸アルキルエステル共重合物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合物、水添アクリロニトリル−ブタジエン共重合物、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合物、エポキシ変性スチレン−ブタジエン−スチレン共重合物等が用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0024】
そして、上記熱可塑性樹脂(D成分)の配合割合は、エポキシ樹脂組成物のシート化が可能であれば特に限定するものではなく適宜用いられるが、ウエハ貼り合わせ性、切断加工性、チップ実装性の観点から、有機樹脂成分の全量に対して、1〜60重量%に設定することが好ましく、より好ましくは3〜30重量%である。すなわち、熱可塑性樹脂の配合割合が、60重量%を超えると、密着性が著しく低下する場合があり、また1重量%を下回ると、シート加工時に熱硬化性樹脂組成物にクラックが発生する傾向がみられるからである。
【0025】
また、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機質充填剤を配合することができる。このような無機質充填剤としては、球状シリカ、破砕シリカ、シリカ−チタニア複合微粒子、シリカ−ゲルマニウム複合微粒子、金粒子、銀粒子、ニッケル粒子等の導電粒子や金メッキにより被覆されたアクリル粒子等の導電金属被覆有機ポリマー等があげられる。中でも、エポキシ樹脂組成物の透明性付与、耐湿性の観点から、シリカ−チタニア複合微粒子が好適に用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0026】
そして、上記無機質充填剤の配合割合は、例えば、エポキシ樹脂組成物全体の90重量%以下に設定することが好ましく、特に好ましくは10〜80重量%である。
【0027】
さらに、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、先に述べた各成分以外に、必要に応じて、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、表面調整剤、酸化防止剤、粘着付与剤、シリコーンオイルおよびシリコーンゴム、合成ゴム、反応性希釈剤等の成分を適宜配合することにより低応力化を図ったり、耐湿信頼性テストにおける信頼性向上を目的としてハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等のイオントラップ剤を配合してもよい。
【0028】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、前記エポキシ樹脂(A成分)およびフェノール化合物(B成分)を所定量配合し、各種材料の軟化点以上の温度でホモディスパー等を用いて予め溶融混合した後、これを40〜80℃に維持した状態で、硬化促進剤である前記特定の四級ホスホニウム塩(C成分)を所定量加え、ホモディスパー等により攪拌分散を行なうことにより製造することができる。
【0029】
あるいは、所定量のエポキシ樹脂(A成分)およびフェノール化合物(B成分)を、有機溶剤(例えば、トルエン,メチルエチルケトン,酢酸エチル等)に混合溶解した後、これに硬化促進剤である特定の四級ホスホニウム塩(C成分)を所定量加え、ホモディスパー等により攪拌分散を行なうことにより製造することができる。その後、必要に応じて減圧下で加熱することにより有機溶剤を除去してもよい。
【0030】
また、シート状のエポキシ樹脂組成物の場合は、つぎのようにして製造することができる。すなわち、エポキシ樹脂(A成分),フェノール化合物(B成分)および熱可塑性樹脂(D成分)を所定量配合し、有機溶剤(例えば、トルエン,メチルエチルケトン,酢酸エチル等)に混合溶解した後、特定の四級ホスホニウム塩(C成分)を所定量加え、ホモディスパー等により攪拌分散を行なう。ついで、この混合溶液を所定の剥離シート上に塗布した後、この塗布した剥離シートを加熱乾燥させ、有機溶剤を除去することにより、目的とするシート状のエポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0031】
このようにして得られたエポキシ樹脂組成物は、先に述べたように、その硬化性に関して、示差走査熱量計の測定における昇温速度10℃/分での反応発熱ピーク温度が150〜200℃の範囲にあることが好ましく、しかも上記反応発熱ピーク温度の±30℃の温度範囲における半導体封止用エポキシ樹脂組成物の反応発熱量が全反応発熱量の80%以上を占めることが好ましい。このような特性を備えることにより、上記エポキシ樹脂組成物は部分的なばらつきのない、均一な熱硬化反応が生じるのである。
【0032】
つぎに、上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子を封止する方法は、特に制限するものではなく各種封止態様に応じて適宜に公知の方法が選択され行なわれ、例えば、通常のトランスファー成形等の公知のモールド方法によって行なうことができる。このようにして、本発明の半導体装置を作製することができる。
【実施例】
【0033】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0034】
まず、下記に示す各成分を準備した。
【0035】
〔エポキシ樹脂a〕
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185g/eq、粘度14.4Pa・s/25℃)
〔エポキシ樹脂b〕
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(エポキシ当量170g/eq、軟化点60℃、粘度0.1Pa・s/150℃)
【0036】
〔硬化剤a〕
フェノールノボラック樹脂(水酸基当量104g/eq、軟化点63℃、粘度0.03Pa・s/150℃)
〔硬化剤b〕
キシリレン型フェノール樹脂(水酸基当量174g/eq、粘度0.4Pa・s/150℃)
〔硬化剤c〕
下記に示す硬化促進剤a0.67gを、予め上記硬化剤a56.2gと、170℃で1時間溶融混合することにより硬化剤cを調製した(硬化促進剤aと硬化剤aの溶融混合物)。
【0037】
〔熱可塑性樹脂〕
アクリル酸アルキルエステル共重合体(日本ゼオン社製、AR−51)
【0038】
〔硬化促進剤a〕
テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート
〔硬化促進剤b〕
テトラフェニルホスホニウム・テトラ(4−メチルフェニル)ボレート
〔硬化促進剤c〕
テトラフェニルホスホニウム・テトラ(4−フルオロフェニル)ボレート
〔硬化促進剤d〕
トリフェニルホスフィン
〔硬化促進剤e〕
2−フェニル−4,5−ジヒドロキシジメチルイミダゾール
【0039】
つぎに、目的とするエポキシ樹脂組成物を調製する前に、まず、上記各硬化促進剤をジェットミル(日本ニューマチック社製、PJM−80SP)を用いて、下記の表1に示す各種粒子サイズを有する硬化促進剤の微粉末A〜Hを準備した。なお、ジェットミルによる微粉化条件は、つぎの4つの条件を採用し行なった。そして、表1における最大粒子径および標準偏差は、先に述べた方法により測定した値である。
条件−1:解砕なし
条件−2:圧力1.0kg、流量10g/分
条件−3:圧力4.5kg、流量2g/分
条件−4:圧力0.5kg、流量30g/分
【0040】
【表1】

【0041】
〔実施例1〜7、比較例1〜5〕
上記各成分のうち、まず、エポキシ樹脂,硬化剤および熱可塑性樹脂の各成分を、溶媒にメチルエチルケトン40重量部を用いて、後記の表2および表3に示す割合で配合し、ホモミキサーを用いて溶融混合した。ついで、後記の表2および表3に示す各種硬化促進剤を同表に示す割合で配合し、ホモミキサーを用いて回転数3000rpmで10分間攪拌することにより分散させた。その後、100℃で5分間、加熱乾燥して溶媒を除去することにより目的とするエポキシ樹脂組成物を得た。
【0042】
このようにして得られたエポキシ樹脂組成物を用い、硬化促進剤の樹脂分散性、ポットライフ、硬化性、不純物イオン(塩素イオン)量に関して下記の方法に従って測定・評価した。これらの結果を後記の表2〜表3に併せて示す。
【0043】
〔硬化促進剤の樹脂分散性〕
得られたエポキシ樹脂組成物を、顕微鏡にて観察し、不溶物が樹脂中に分散しているものを○、不溶物が樹脂中に確認できなかったものを×と評価した。
【0044】
〔ポットライフ〕
得られたエポキシ樹脂組成物の初期粘度に対する、35℃で24時間放置した後の粘度上昇率(粘度変化率)を測定して下記の数式により算出し評価した。そして、粘度変化率が20%以下を○、20%を超えるものを×として表示した。なお、粘度測定は、E型粘度計(HAAKE社製、RS−1)を用いて、エポキシ樹脂組成物1g、回転プレートの直径35mm、ギャップを100μm、回転速度10(1/S)にて測定される値とした。
〔数2〕
粘度変化率(%)=〔V(24)−V(0)〕×100/V(0)
V(24):35℃で24時間放置したときの粘度
V(0):各成分配合直後の粘度
【0045】
〔硬化性〕
示差走査熱量計(セイコーインスツラメンツ社製、EXSTAR6000)を用いてエポキシ樹脂組成物10mg、昇温速度10℃/分にて測定することにより、1)反応発熱ピーク温度、および2)全発熱量に対する反応発熱ピーク温度±30℃の温度範囲における発熱量の占有割合を算出した。そして、上記算出した占有割合を記載するとともに、占有割合が80%以上のものを○、80%未満のものを×として評価した。
【0046】
〔不純物イオン(塩素イオン)量〕
得られたエポキシ樹脂組成物を175℃で1時間の条件で硬化させた後、この硬化物をミキサーにより粉砕した。そして、粒径100μm以下の粉砕粒子(試料)を篩により取り出した後、この試料5gを50ccの純水に分散させ160℃で20時間煮沸抽出した。得られた水溶液中の塩素イオン量をイオンクロマトグラフィーにより定量し、つぎの基準により判定した。すなわち、塩素イオン量が200ppm以下のものを○、200ppmを超えるものを×として評価した。
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
上記結果から、全ての実施例品は、硬化促進剤がエポキシ樹脂組成物中に固体粒子として分散し存在しており、35℃で24時間放置した後も、初期粘度と比較して大きな粘度変化はみられず、また、エポキシ樹脂組成物によって得られる反応発熱(DSC)ピーク温度は150〜200℃の範囲内に存在し、かつDSCピーク温度の±30℃の温度範囲において80%以上の反応発熱量を占めることから、良好な硬化性を有することが確認された。さらに、実施例品では、抽出された塩素イオン量はいずれも200ppm以下であり、不純物イオン量の低減が図られたことがわかる。
【0050】
これに対して、比較例1品は、硬化促進剤がエポキシ樹脂組成物中に固体粒子として存在し分散しているものの、その粒子サイズが大きいため、DSCピーク温度の±30℃の温度範囲における反応発熱量の占める割合が80%未満であり、得られるDSCカーブはブロードとなり良好な硬化性を得ることができなかった。また、比較例2および3品は、硬化促進剤がエポキシ樹脂組成物中に溶解した状態で分散しており、35℃で24時間放置した後の粘度は極めて大きく変化した。さらに、比較例3および4品は、塩素イオン量が200ppmを超えており、金属腐食やマイグレーション等の電気的不具合を生じる恐れがあるという欠点を有するものである。また、比較例5品は、硬化剤と硬化促進剤との溶融混合物を用いたものであることから、硬化促進剤がエポキシ樹脂組成物中に溶解した状態で分散しており、35℃で24時間放置した後の粘度は極めて大きく変化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(C)成分を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記(C)成分が、エポキシ樹脂組成物中に分散されていることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(A)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂。
(B)1分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物。
(C)最大粒子径が30μm以下で、かつ標準偏差が5μm以下である、下記の一般式(1)で表される化合物からなる粉末。
【化1】

【請求項2】
上記(A)〜(C)成分に加えて、さらに下記の(D)成分を含有する請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(D)熱可塑性樹脂。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の、示差走査熱量計にて測定される、昇温速度10℃/分での反応発熱ピーク温度が150〜200℃にあり、かつ上記反応発熱ピーク温度の±30℃の温度範囲における半導体封止用エポキシ樹脂組成物の反応発熱量が全反応発熱量の80%以上を占める請求項1または2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を樹脂封止してなる半導体装置。

【公開番号】特開2008−285592(P2008−285592A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131993(P2007−131993)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】