説明

半導体発光素子、その製造方法、ランプ、電子機器及び機械装置

【課題】金属反射層の構成材料の拡散を防止することが可能な電極を備えた半導体発光素子、その製造方法、ランプ、電子機器及び機械装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基板101と、基板101上にn型半導体層104と発光層105とp型半導体層106とがこの順序で積層されてなる積層半導体層20と、p型半導体層106に接合された一方の電極111と、n型半導体層104に接合された他方の電極108と、を具備する半導体発光素子であって、一方の電極111または他方の電極108のいずれか一方または両方が、第1の拡散防止層51と金属反射層52と第2の拡散防止層53がこの順序で積層されてなる構造を有し、かつ、第1の拡散防止層51がIn、Zn、Al、Ga、Ti、Bi、Mg、W、Ce、Sn、Niのいずれかの金属を含む酸化物からなる半導体発光素子1を用いることにより、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子、その製造方法、ランプ、電子機器及び機械装置に関するものであり、特に、金属反射層の材料の拡散を防止した電極を備えた半導体発光素子、その製造方法、ランプ、電子機器及び機械装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、GaN系化合物半導体は、短波長発光素子用の半導体材料として注目を集めている。GaN系化合物半導体は、一般に、サファイア単結晶、種々の酸化物及びIII−V族化合物などの基板上に、有機金属気相化学反応法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)等の薄膜形成手段を用いて形成される。
【0003】
GaN系化合物半導体発光素子は、一般にn型のGaN系化合物半導体(以下、n型半導体層)、活性層(以下、発光層)及びp型のGaN系化合物半導体層(以下、p型半導体層)からなる積層半導体層と、前記p型半導体層上のp型電極と、前記n型半導体層上のn型電極とを備える。
このようなGaN系化合物半導体発光素子には、基板を上に、電極を下にして発光素子を配線基板に実装することで、発光層から発射される光を基板を介して外部に取り出す、所謂フリップチップ型半導体発光素子がある。
【0004】
フリップチップ型半導体発光素子においては、電極によって光を反射させるために、AgやAlなどの反射層を有する電極が形成される。しかし、Agは酸化されやすい金属であり、また300℃以上の高温域で容易にマイグレーションを起こすためにAgと反応しない金属でAgを覆うように取り囲む技術(特許文献1)や反射率の高い白金属、またはその合金を反射層として用いる技術(特許文献2)が開示されている。
【0005】
しかしながら、Agと反応しない金属でAgを覆うように取り囲んでも、Ag電極とGaN系化合物半導体との間の接触面が多い場合にはGaN系化合物半導体へのAgのマイグレーションが起こり、反射率の低下による発光効率の低下とコンタクト不良によるVF上昇することが起こること、Pt族もマイグレーションはしにくいがAgに比べるとそもそも反射率が低く、かつ400℃近い温度になるとマイグレーションが防止できないことが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−245232号公報
【特許文献2】特開2006−183400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、正負電極部(n型電極及び/またはp型電極)と半導体の積層半導体層(当該電極に接するn型半導体層及び/又はp型半導体層)との、良好なオーミックコンタクトを取りかつ過酷条件下でもAg(銀)の化合物半導体へのマイグレーションを有効に防止することにより、高信頼性、高品質の半導体発光素子、その製造方法、ランプ、電子機器及び機械装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、
(1) 基板と、前記基板上にn型半導体層と発光層とp型半導体層とがこの順序で積層されてなる積層半導体層と、前記p型半導体層に接合された一方の電極と、前記n型半導体層に接合された他方の電極と、を具備する半導体発光素子であって、前記一方の電極または前記他方の電極のいずれか一方または両方が、第1の拡散防止層と金属反射層と第2の拡散防止層がこの順序で積層されてなる構造を有し、かつ、前記第1の拡散防止層がIn、Zn、Al、Ga、Ti、Bi、Mg、W、Ce、Sn、Niのいずれかの金属を含む酸化物からなることを特徴とする半導体発光素子。
【0009】
(2) 前記第1の拡散防止層がITO、IZO、AZOまたはGZOのいずれかであることを特徴とする(1)に記載の半導体発光素子。
(3) 前記第1の拡散防止層の最大厚さが1nm〜500nmであることを特徴とする(1)または(2)に記載の半導体発光素子。
(4) 前記第1の拡散防止層の外縁部に外周側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面が形成されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【0010】
(5) 前記金属反射層がAgもしくはRhまたは前記金属のいずれかを含む合金からなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
(6) 前記金属反射層がAPC合金またはANC合金であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
(7) 前記金属反射層の最大厚さが20〜3000nmであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【0011】
(8) 前記金属反射層の外縁部に外周側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面が形成されていることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
(9) 前記第2の拡散防止層がTi、Ni、Ta、Cr、Nbのいずれかの金属、前記金属の窒化物または前記金属のいずれかを含む合金からなることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
(10) 前記第2の拡散防止層の外縁部に外周側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面が形成されていることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【0012】
(11) 前記積層半導体層が窒化ガリウム系半導体を主体として構成されていることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
(12) (1)〜(11)のいずれか1項に記載の半導体発光素子と、実装基板とを具備するランプであって、前記実装基板は一面上に一の配線部と前記一の配線部と離間して配設された他の配線部とを備えており、前記半導体発光素子は前記半導体発光素子の基板が前記実装基板と反対側となるように配置されており、前記半導体発光素子の一方の電極が前記一の配線部に接続されるとともに、前記半導体発光素子の他方の電極が前記他の配線部に接続されていることを特徴とするランプ。
【0013】
(13) (1)〜(11)のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法であって、前記半導体発光素子の一方の電極または他方の電極のいずれか一方または両方の電極を形成する工程が、p型半導体層またはn型半導体層のいずれか一方または両方の層上に第1の拡散防止層を形成する工程と、前記第1の拡散防止層を熱処理する工程と、前記第1の拡散防止層上に金属反射層と第2の拡散防止層とをこの順序で積層する工程と、を有することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
(14) (1)〜(11)のいずれか1項に記載の半導体発光素子を備えたことを特徴とするランプ。
(15) (12)または(14)に記載のランプが組み込まれていることを特徴とする電子機器。
(16) (15)に記載の電子機器が組み込まれていることを特徴とする機械装置。
【発明の効果】
【0014】
上記の構成によれば、正負電極部(n型電極及び/またはp型電極)と半導体の積層半導体層(当該電極に接するn型半導体層及び/又はp型半導体層)との、良好なオーミックコンタクトを取りかつ過酷条件下でもAg(銀)の化合物半導体へのマイグレーションを有効に防止することにより、高信頼性、高品質の半導体発光素子、その製造方法、ランプ、電子機器及び機械装置を提供することができる。
【0015】
本発明の半導体発光素子は、一方の電極または他方の電極のいずれか一方または両方が、第1の拡散防止層と金属反射層と第2の拡散防止層がこの順序で積層されてなる構造を有し、かつ、前記第1の拡散防止層がIn、Zn、Al、Ga、Ti、Bi、Mg、W、Ce、Sn、Niのいずれかの金属を含む酸化物からなる構成なので、第1の拡散防止層と第2の拡散防止層により金属反射層の構成材料の拡散を防止して、金属反射層の反射率の低減を防止できる。特に、フリップチップ接合時に電極に熱が加えられても、金属反射層の構成材料を拡散させることなく、金属反射層の反射率の低減を防止できる。また、第1の拡散防止層の透過率を高くして、半導体発光素子の発光効率を向上させることができる。さらに、第1の拡散防止層をp型半導体層とオーミックコンタクトさせて、p型電極とp型半導体層との間の導電性を高めて、半導体発光素子の発光効率を向上させることができる。
【0016】
本発明の半導体発光素子は、第1の拡散防止層がITO、IZO、AZOまたはGZOのいずれかである構成なので、金属反射層の構成材料の拡散を防止して、金属反射層の反射率の低減を防止できる。また、第1の拡散防止層の透過率を高くして、半導体発光素子の発光効率を向上させることができる。さらに、第1の拡散防止層をp型半導体層とオーミックコンタクトさせて、p型電極とp型半導体層との間の導電性を高めて、半導体発光素子の発光効率を向上させることができる。
【0017】
本発明の半導体発光素子は、金属反射層がAgもしくはRhまたは前記金属のいずれかを含む合金からなる構成なので、金属反射層の反射率を高めて、半導体発光素子の発光効率を向上させることができる。
【0018】
本発明の半導体発光素子は、金属反射層に外周側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面が形成されている構成なので、金属反射層の外縁部も覆うように第2の拡散防止層を形成することができ、第2の拡散防止層により金属反射層をシールド性高く覆い、金属反射層を構成する金属がボンディング層側へ拡散することを防止できる。
【0019】
本発明の半導体発光素子は、第2の拡散防止層がTi、Ni、Ta、Cr、Nbのいずれかの金属、前記金属の窒化物または前記金属のいずれかを含む合金からなる構成なので、金属反射層を構成する金属がボンディング層へ拡散することを防止できる。
【0020】
本発明のランプは、先に記載の半導体発光素子と、実装基板とを具備するランプであって、前記実装基板は一面上に一の配線部と前記一の配線部と離間して配設された他の配線部とを備えており、前記半導体発光素子は前記基板が前記実装基板と反対側となるように配置されており、前記一方の電極が前記一の配線部に接続されるとともに、前記他方の電極が前記他の配線部に接続されている構成なので、金属反射層の構成材料の拡散を防止して、金属反射層の反射率の低減を防止した半導体発光素子を具備したランプとすることができる。
【0021】
本発明の半導体発光素子の製造方法は、先に記載の半導体発光素子の製造方法であって、前記半導体発光素子の一方の電極または他方の電極のいずれか一方または両方の電極を形成する工程が、p型半導体層またはn型半導体層のいずれか一方または両方の層上に第1の拡散防止層を形成する工程と、前記第1の拡散防止層を熱処理する工程と、前記第1の拡散防止層上に金属反射層と第2の拡散防止層とをこの順序で積層する工程と、を有する構成なので、前記熱処理工程で第1の拡散防止層を結晶化して、金属反射層の構成材料の拡散防止性、透明性および導電性を向上させた後に、金属反射層を積層することができる。これにより、金属反射層の反射率を向上させるために、この後、金属反射層を熱処理しても、金属反射層の構成材料がp半導体層側に拡散することを防止できる。また、ランプ製造工程で、電極に熱が加えられても、金属反射層の構成材料がp半導体層側に拡散することを防止できる。さらに、金属反射層上に第2の拡散防止層を形成することにより、ランプ製造工程で、電極に熱が加えられた際に、金属反射層の構成材料がボンディング層側に拡散することも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の半導体発光素子の一例を示す断面模式図である。
【図2】図1に示す半導体発光素子の平面模式図である。
【図3】図1のB−B’線における断面模式図である。
【図4】本発明の半導体発光素子の積層半導体層の一例を示す断面模式図である。
【図5】本発明の半導体発光素子のp型電極の一例を示す拡大断面図である。
【図6】本発明の半導体発光素子のp型電極の工程断面図の一例である。
【図7】本発明の半導体発光素子のp型電極の工程断面図の一例である。
【図8】本発明の半導体発光素子のp型電極の工程断面図の一例である。
【図9】本発明のランプの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1〜図5は、本発明の実施形態である半導体発光素子の一例を示す図である。尚、以下の説明において参照する図面で、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の半導体発光素子等の寸法関係とは異なっている。
図1は本発明の実施形態である半導体発光素子の一例を示す断面模式図であり、図2は図1に示す半導体発光素子の平面模式図であり、図3は図2のB−B’線における断面模式図である。なお、図1は、図2のA−A’線における断面模式図である。図4は、図1に示す半導体発光素子を構成する積層半導体層の一例を示す断面模式図であり、図5は、図1に示す半導体発光素子のp型電極の拡大断面図である。
【0024】
(半導体発光素子)
図1及び図3に示すように、本発明の実施形態である半導体発光素子1は、基板101の一面101c上に、バッファ層102と、下地層103と、積層半導体層20とが順次積層されて構成されている。積層半導体層20は、基板101側から、n型半導体層104と、発光層105と、p型半導体層106とがこの順に積層されて構成されている。
【0025】
図1に示すように、積層半導体層20は一側面側が断面視矩形状に切り欠けられて切欠部16とされ、切り欠けられず残された部分が切欠残部17とされている。
切欠部16では、n型半導体層104の一面104c上にn型電極108が形成されている。また、n型電極108の側面、n型半導体層104の一面104cの露出された面および積層半導体層20の側面を覆うように絶縁保護膜10が形成されている。なお、n型電極108の上面は露出されている。
【0026】
切欠残部17では、p型半導体層106の基板101と反対側の面(以下、上面)106c上に第1の拡散防止層51と、金属反射層52と、第2の拡散防止層53と、ボンディング層55と、絶縁保護膜10とがこの順序で積層されるとともに、絶縁保護膜10の一部及びボンディング層55の一部を除去するように凹部111cが設けられ、p型電極111が形成されている。
また、p型電極111は傾斜形状(以下、テーパー形状)とされている。
また、半導体発光素子1の光の出射方向が矢印fで示されている。
【0027】
図2に示すように、本発明の実施形態である半導体発光素子1は平面視矩形状であり、一辺側に平面視半円半矩形状に切り欠けられた切欠部16が設けられており、切り欠けられず残された部分は切欠残部17とされている。
切欠部16には、平面視円形状のn型電極108が設けられている。また、切欠部16の露出された面を覆うように絶縁保護膜10が形成されている。n型電極108の上面は露出されているが、n型電極108の側面は絶縁保護膜10に覆われている。
切欠残部17は絶縁保護膜10に覆われている。絶縁保護膜10の領域内には平面視円形状の凹部111cが設けられ、凹部111cからボンディング層55が露出されて、p型電極111が構成されている。
以下、各部材について説明する。
【0028】
<基板>
基板101は、透明であり、III族窒化物半導体結晶が表面にエピタキシャル成長される基板であれば、特に限定されず、各種の基板を選択して用いることができる。例えば、サファイア、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムアルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、ハフニウム、タングステン、モリブデン等からなる基板を用いることができる。
また、上記基板の中でも、特に、c面を主面とするサファイア基板を用いることが好ましく、サファイアのc面上にバッファ層102を形成するとよい。
【0029】
なお、バッファ層102をスパッタ法により形成した場合、アンモニアを使用せずにバッファ層102を成膜することもでき、上記基板の内、高温でアンモニアに接触することで化学的な変性を引き起こすことが知られている酸化物基板や金属基板等を用いることができる。
また、基板101の温度を低く抑えることが可能なので、高温で分解してしまう性質を持つ材料からなる基板101を用いた場合でも、基板101にダメージを与えることなく基板上への各層の成膜が可能である。
【0030】
<積層半導体層>
積層半導体層20は、例えば、III族窒化物半導体からなる層であって、図1及び図3に示すように、基板101上に、n型半導体層104、発光層105及びp型半導体層106の各層がこの順で積層されてなる。なお、積層半導体層20は、さらに下地層103、バッファ層102を含めてもよい(但し、図1及び図3は分けて図示している)。
図4に示すように、n型半導体層104、発光層105及びp型半導体層106の各層はそれぞれ、複数の半導体層で構成することができる。
なお、積層半導体層20は、MOCVD法で形成すると結晶性の良いものが得られるが、スパッタ法によっても条件を最適化することで、MOCVD法よりも優れた結晶性を有する半導体層を形成できる。以下、順次説明する。
【0031】
<バッファ層>
バッファ層102は、多結晶のAlGa1−xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlGa1−xN(0≦x≦1)のものがより好ましい。
バッファ層102は、上述のように、例えば、多結晶のAlGa1−xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01〜0.5μmのものとすることができる。バッファ層102の厚みが0.01μm未満であると、バッファ層102により基板101と下地層103との格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、バッファ層102の厚みが0.5μmを超えると、バッファ層102としての機能には変化が無いのにも関わらず、バッファ層102の成膜処理時間が長くなり、生産性が低下する。
バッファ層102は、基板101と下地層103との格子定数の違いを緩和し、基板101の(0001)C面上にC軸配向した単結晶層の形成を容易にする働きがある。したがって、バッファ層102の上に単結晶の下地層103を積層すると、より一層結晶性の良い下地層103が積層できる。なお、本発明においては、バッファ層形成工程を行なうことが好ましいが、行なわなくても良い。
【0032】
バッファ層102は、III族窒化物半導体からなる六方晶系の結晶構造を持つものであってもよい。また、バッファ層102をなすIII族窒化物半導体の結晶は、単結晶構造を有するものであってもよく、単結晶構造を有するものが好ましく用いられる。III族窒化物半導体の結晶は、成長条件を制御することにより、上方向だけでなく、面内方向にも成長して単結晶構造を形成する。このため、バッファ層102の成膜条件を制御することにより、単結晶構造のIII族窒化物半導体の結晶からなるバッファ層102とすることができる。このような単結晶構造を有するバッファ層102を基板101上に成膜した場合、バッファ層102のバッファ機能が有効に作用するため、その上に成膜されたIII族窒化物半導体は良好な配向性及び結晶性を有する結晶膜となる。
また、バッファ層102をなすIII族窒化物半導体の結晶は、成膜条件をコントロールすることにより、六角柱を基本とした集合組織からなる柱状結晶(多結晶)とすることも可能である。なお、ここでの集合組織からなる柱状結晶とは、隣接する結晶粒との間に結晶粒界を形成して隔てられており、それ自体は縦断面形状として柱状になっている結晶のことをいう。
【0033】
<下地層>
下地層103としては、AlGaInN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)が挙げられるが、AlGa1−xN(0≦x<1)を用いると結晶性の良い下地層103を形成できるため好ましい。
下地層103の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAlGa1−xN層が得られやすい。
下地層103の結晶性を良くするためには、下地層103は不純物をドーピングしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合は、アクセプター不純物あるいはドナー不純物を添加することができる。
【0034】
<n型半導体層>
図4に示すように、n型半導体層104は、通常nコンタクト層104aとnクラッド層104bとから構成されるのが好ましい。なお、nコンタクト層104aはnクラッド層104bを兼ねることも可能である。また、前述の下地層をn型半導体層104に含めてもよい。
nコンタクト層104aは、n型電極を設けるための層である。nコンタクト層104aとしては、AlGa1−xN層(0≦x<1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。
また、nコンタクト層104aにはn型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017〜1×1020/cm、好ましくは1×1018〜1×1019/cmの濃度で含有すると、n型電極との良好なオーミック接触の維持の点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeが挙げられる。
nコンタクト層104aの膜厚は、0.5〜5μmとされることが好ましく、1〜3μmの範囲に設定することがより好ましい。nコンタクト層104aの膜厚が上記範囲にあると、半導体の結晶性が良好に維持される。
【0035】
nコンタクト層104aと発光層105との間には、nクラッド層104bを設けることが好ましい。nクラッド層104bは、発光層105へのキャリアの注入とキャリアの閉じ込めを行なう層である。nクラッド層104bはAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。nクラッド層104bをGaInNで形成する場合には、発光層105のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましいことは言うまでもない。
nクラッド層104bの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.005〜0.5μmであり、より好ましくは0.005〜0.1μmである。nクラッド層104bのn型ドープ濃度は1×1017〜1×1020/cmが好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cmである。ドープ濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および素子の動作電圧低減の点で好ましい。
【0036】
なお、nクラッド層104bを、超格子構造を含む層とする場合には、詳細な図示を省略するが、100Å以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第1層と、該n側第1層と組成が異なるとともに100Å以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第2層とが積層された構造を含むものであっても良い。
また、nクラッド層104bは、n側第1層とn側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであってもよい。また、好ましくは、前記n側第1層又はn側第2層の何れかが、活性層(発光層105)に接する構成とすれば良い。
【0037】
<発光層>
n型半導体層104の上に積層される発光層105としては、単一量子井戸構造あるいは多重量子井戸構造などの発光層105がある。
図4に示すような、量子井戸構造の井戸層105bとしては、Ga1−yInN(0<y<0.4)からなるIII族窒化物半導体層が通常用いられる。井戸層105bの膜厚としては、量子効果の得られる程度の膜厚、例えば1〜10nmとすることができ、好ましくは2〜6nmとすると発光出力の点で好ましい。
また、多重量子井戸構造の発光層105の場合は、上記Ga1−yInNを井戸層105bとし、井戸層105bよりバンドギャップエネルギーが大きいAlGa1−zN(0≦z<0.3)を障壁層105aとする。井戸層105bおよび障壁層105aには、設計により不純物をドープしてもしなくてもよい。
【0038】
<p型半導体層>
図4に示すように、p型半導体層106は、通常、pクラッド層106aおよびpコンタクト層106bから構成される。また、pコンタクト層106bがpクラッド層106aを兼ねることも可能である。
pクラッド層106aは、発光層105へのキャリアの閉じ込めとキャリアの注入を行なう層である。pクラッド層106aとしては、発光層105のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、発光層105へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、AlGa1−xN(0<x≦0.4)のものが挙げられる。
pクラッド層106aが、このようなAlGaNからなると、発光層へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。pクラッド層106aの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは5〜100nmである。
pクラッド層106aのp型ドープ濃度は、1×1018〜1×1021/cmが好ましく、より好ましくは1×1019〜1×1020/cmである。p型ドープ濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
また、pクラッド層106aは、複数回積層した超格子構造としてもよい。
【0039】
なお、pクラッド層106aを、超格子構造を含む層とする場合には、詳細な図示を省略するが、100Å以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるp側第1層と、該p側第1層と組成が異なるとともに100Å以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるp側第2層とが積層された構造を含むものであっても良い。また、p側第1層とp側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであっても良い。
【0040】
pコンタクト層106bは、正極を設けるための層である。pコンタクト層106bは、AlGa1−xN(0≦x≦0.4)が好ましい。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持およびpオーミック電極との良好なオーミック接触の点で好ましい。
p型不純物(ドーパント)を1×1018〜1×1021/cmの濃度、好ましくは5×1019〜5×1020/cmの濃度で含有していると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば好ましくはMgが挙げられる。
pコンタクト層106bの膜厚は、特に限定されないが、0.01〜0.5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2μmである。pコンタクト層106bの膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
【0041】
<p型電極>
図5は、図1に示す本発明の実施形態である半導体発光素子1のp型電極111の一例を示す拡大断面図である。
図5に示すように、p型電極111は、第1の拡散防止層51と、金属反射層52と、第2の拡散防止層53と、ボンディング層55と、絶縁保護膜10とが積層されて概略構成されている。
【0042】
<第1の拡散防止層>
図5に示すように、第1の拡散防止層51は、p型半導体層106の上面106cに形成されている。また、その外縁部51fには外周50g側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面51eが形成されている。
【0043】
第1の拡散防止層51は、In、Zn、Al、Ga、Ti、Bi、Mg、W、Ce、Sn、Niのいずれかの金属を含む酸化物からなることが好ましく、インジウム酸化物、亜鉛酸化物又はチタン酸化物が、特に好ましい。これらの材料は、透明性(透光性)及び導電性に優れるので、第1の拡散防止層51の透明性及び導電性を高くして、半導体発光素子の発光効率を向上させる。
【0044】
前記導電性のインジウム酸化物としては、酸化物中にインジウム元素を含む透明な導電性であるものならどんな組成であってもよく、例えば、ITO(酸化インジウム錫(In−SnO))、IZO(酸化インジウム亜鉛(In−ZnO))、IGO(酸化ガリウムインジウム(In−Ga))を例示できる。また。導電性のチタン酸化物には、ニオブドープ酸化チタンが挙げられる。さらにその他の透明な導電性材料には、AZO(酸化アルミニウム亜鉛(ZnO−Al))、GZO(酸化ガリウム亜鉛(ZnO−Ga))、フッ素ドープ酸化錫、ニオブドープ酸化チタン等を使用できる。特に、第1の拡散防止層51は、ITO、IZO、AZOまたはGZOのいずれかであることが好ましい。
【0045】
第1の拡散防止層51としては、アモルファス状態でもよいが、結晶化膜を用いることが好ましい。結晶化膜を用いることにより、第1の拡散防止層51の透明性及び導電性をより高くすることができ、半導体発光素子の発光効率をより向上させることができる。ITOやIZOの結晶化膜としては、たとえば、六方晶構造又はビックスバイト構造を有するIn結晶を含む膜を挙げることができる。
なお、結晶化膜の形成は、アモルファス状態で成膜された第1の拡散防止層51を成膜した後、これを熱処理すればよい。通常、成膜直後の第1の拡散防止層51はアモルファス状態だが、これを所定の条件で熱アニールすれば、結晶化膜に変えることができる。
【0046】
第1の拡散防止層51の最大厚さは、1nm〜500nmとすることが望ましく、2nm〜100nmとすることがより望ましく、3nm〜20nmとすることが更に望ましい。第1の拡散防止層51の最大厚さは1nm〜500nmとすることにより、後述する金属反射層52を構成するAgなどの金属材料のボンディング層などへ拡散を防止することができる。
また、第1の拡散防止層51の形成は、この技術分野でよく知られた慣用の手段を用いることができる。
【0047】
<金属反射層>
図5に示すように、金属反射層52は、第1の拡散防止層51を完全に覆うように形成されている。また、その外縁部52fには外周50g側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面52eが形成されている。
【0048】
金属反射層52は、AgもしくはRhまたは前記金属のいずれかを含む合金からなることが好ましい。AgもしくはRhまたは前記金属のいずれかを含む合金は、反射率の高い金属なので、発光層105からの光を効果的に反射させることができる。また、電極用の材料として一般的であり、入手のし易さ、取り扱いの容易さなどの点から優れている。
【0049】
金属反射層52は、公知なAPC合金またはANC合金であることが好ましい。APC合金またはANC合金は、Agを含む合金であり、光反射率が高く、入手のし易さ、取り扱いの容易さの点で優れている。
【0050】
金属反射層52の最大厚さは、20〜3000nmであることが望ましく、更に望ましくは50〜2000nmであり、最も望ましいのは100〜1500nmである。金属反射層52が薄すぎると充分な反射の効果を得ることができない。逆に厚すぎると特に利点は生じず、工程時間の長時間化と材料の無駄を生じるのみである。
【0051】
また、金属反射層52は、第1の拡散防止層51に密着させて形成することが好ましい。これにより、金属反射層52を第1の拡散防止層51に強固に接合することができ、金属反射層52と第1の拡散防止層51との間の接合強度を高めて、p型電極111の接合強度を高めることができる。また、発光層105からの光を効率良く反射させることができる。
【0052】
<第2の拡散防止層>
図5に示すように、金属反射層52を完全に覆うように、第2の拡散防止層53が形成されている。また、その外縁部53fには外周53g側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面53eが形成されている。
【0053】
第2の拡散防止層53は、Ti、Ni、Ta、Cr、Nbのいずれかの金属、前記金属の窒化物または前記金属のいずれかを含む合金からなることが好ましい。これらの材料を第2の拡散防止層53として用いることにより、金属反射層52を構成するAgなどの金属材料がボンディング層55側に拡散することを防止することができる。
【0054】
第2の拡散防止層53の最大厚さは、50nm以上の範囲とすることが望ましく、100nm以上の範囲とすることがより望ましく、200nm以上の範囲とすることが更に望ましい。
第2の拡散防止層53の最大厚さを50nm以上の範囲とすることにより、金属反射層52を構成するAgなどの金属材料のボンディング層などへ拡散を防止することができる。また、第2の拡散防止層53の最大厚さは5000nmよりも薄くすることが、材料のコストの点で好ましい。
【0055】
<ボンディング層>
図5に示すように、ボンディング層55は、第2の拡散防止層53を完全に覆うように形成されている。さらに、その外縁部55fに外周55g側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面55eが形成されている。また、ボンディング層55は、任意の材料からなる層を介して第2の拡散防止層53を完全に覆うように形成されてもよい。
【0056】
ボンディング層55は、Au、Alのいずれかの金属または前記金属のいずれかを含む合金からなることが好ましく、Auからなることがより好ましい。
AuおよびAlはバンプ(半田ボール、ボンディングボール)との密着性が高いので、バンプを介して実装基板に接合した場合には、実装基板とボンディング層55との間を強固に接合して、半導体発光素子1が実装基板から簡単に剥がれることがなくなる。
【0057】
ボンディング層55の最大厚みは、50nm〜2000nmとすることが好ましく、100nm〜1500nmとすることがより好ましく、200nm〜1000nmとすることが更に好ましい。
ボンディング層55の最大厚みを50nmより薄くすると、ボンディングボールとの密着性が悪くなる。また、ボンディング層55の最大厚みを2000nmより厚くしても、特に利点は生ぜず、コスト増大を招くのみなので好ましくない。
【0058】
<絶縁保護膜>
絶縁保護膜は必ずしも必要ではないが、信頼性の観点からは用いることが好ましい。
図5に示すように、絶縁保護膜10は、ボンディング層55を覆うように形成されている。また、絶縁保護膜10は、任意の材料からなる層を介してボンディング層55を覆うように形成されてもよい。さらに、絶縁保護膜10の外縁部10fに外周10g側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面10eが形成されてもよい。
さらに、図1に示すように、絶縁保護膜10は、p型半導体層106の上面106c、積層半導体20のエッチング露出側面およびn型半導体層104の露出面104c、n型電極108の側面等を完全に覆うように形成されている。
【0059】
絶縁保護膜10は、絶縁性の保護膜であればよく、たとえば、SiOのようなシリコン酸化物からなる膜を挙げることができる。
絶縁保護膜10の最大厚みは、50nm〜1000nmとすることが好ましく、100nm〜500nmとすることがより好ましく、150nm〜450nmとすることが更に好ましい。
【0060】
<凹部>
図1及び図5に示すように、絶縁保護膜10を貫通し、ボンディング層55を一部露出させるように、断面視矩形状、平面視円形状の凹部111cが形成されており、内底面111dが露出されている。
【0061】
凹部111cの内底面111dの直径は、60〜100μmとすることが好ましい。これにより、凹部111cの内底面111dの面積は、ランプ作製時に用いるバンプの直径よりもわずかに大きい程度にすることができ、実装作業を容易にできる。内底面111dの直径を100μmより大きくすると、実装作業はより容易になるが、絶縁保護膜を形成する面積が小さくなり、絶縁保護膜の効果が損なわれる恐れが生じ、半導体発光素子としての信頼性が低下する。逆に、内底面111dの直径を60μmよりも小さくすると、実装作業が困難となり、製品の製造収率を低下させる。
【0062】
なお、p型電極111の凹部111cの位置は、図1に示す位置に限られるものではなく、p型半導体層106の上面106cであればどこに形成してもよい。例えば、n型電極108から最も遠い位置に形成してもよいし、半導体発光素子1の中心に形成してもよい。
【0063】
<n型電極>
図1〜3に示すように、n型半導体層104の一面104c上には円柱状のn型電極108が形成されている。n型電極108の側面は、絶縁保護膜10によって覆われているが、上面108cは露出されている。上面108cはボンディングパットを兼ねており、バンプを介して実装基板を接合できる。
n型電極108の材料及び構成としては、Ti/Auからなる二層構造などの周知の電極材料及び電極構造を用いることができ、その形成方法としては、この技術分野でよく知られた慣用の手段を用いることができる。
n型電極108の形状は円柱状に限らず、多角柱状などとしてもよい。
【0064】
なお、本実施形態において図示を省略するものの、n型電極108をp型電極111と同様な構成とすることができる。つまり、n型電極108も、p型電極111と同様に、外周側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面を備えた構造としてもよく、オーミックコンタクト層51(第1の拡散防止層51に該当する)と、金属反射層52と、第2の拡散防止層53と、ボンディング層55とからなる多層構造としても良い。これにより、外部の空気または水分が、n型電極108とn型半導体層104の界面へ侵入することを防止することができ、n型電極108の耐食性を向上させることができる。
【0065】
(半導体発光素子の製造方法)
次に、本発明の実施形態である半導体発光素子の製造方法の一例について説明する。
<積層半導体層形成工程>
まず、サファイア基板等の基板101を用意し、基板101の上面に、スパッタ法によって、バッファ層102を積層する。チャンバ内において、基板101をArやNのプラズマ中に曝す事によって上面を洗浄する前処理を行なってもよい。
スパッタ法によって、単結晶構造を有するバッファ層102を形成する場合、チャンバ内の窒素原料と不活性ガスの流量に対する窒素流量の比を、窒素原料が50%〜100%、望ましくは75%程度となるようにすることが望ましい。
なお、バッファ層102は、上述したスパッタ法だけでなく、公知なMOCVD法で形成してもよい。
【0066】
次に、バッファ層102の上面に、単結晶の下地層103を形成する。
下地層103は、スパッタ法を用いて成膜することが望ましい。スパッタ法を用いる場合には、MOCVD法やMBE法等と比較して、装置を簡便な構成とすることが可能となる。
【0067】
下地層103を成膜する際の基板101の温度、つまり、下地層103の成長温度は、800℃以上とすることが好ましく、より好ましくは900℃以上の温度であり、1000℃以上の温度とすることが最も好ましい。これは、下地層103を成膜する際の基板101の温度を高くすることによって原子のマイグレーションが生じやすくなり、転位のループ化が容易に進行するからである。また、下地層103を成膜する際の基板101の温度は、結晶の分解する温度よりも低温である必要があるため、1200℃未満とすることが好ましい。下地層103を成膜する際の基板101の温度が上記温度範囲内であれば、結晶性の良い下地層103が得られる。
【0068】
次に、下地層103上に、nコンタクト層104a及びnクラッド層104bを積層してn型半導体層104を形成する。たとえば、スパッタ法またはMOCVD法を用いる。
次に、n型半導体層104上に発光層105を形成する。スパッタ法またはMOCVD法を用いることが好ましく、MOCVD法を用いることがより好ましい。
具体的には、障壁層105aと井戸層105bとを交互に繰り返して積層し、且つ、n型半導体層104側及びp型半導体層106側に障壁層105aが配される順で積層すればよい。
【0069】
次に、発光層105上にp型半導体層106を形成する。たとえば、スパッタ法またはMOCVD法を用いる。具体的には、pクラッド層106aと、pコンタクト層106bとを順次積層すればよい。
以上の工程により、基板101の一面101c上にバッファ層102、下地層103及び積層半導体層20を形成する。
【0070】
<電極形成工程>
本実施形態のp型電極形成工程は、p型半導体層上に第1の拡散防止層を形成する工程(以下、第1工程)と、前記第1の拡散防止層上に金属反射層と第2の拡散防止層とをこの順序で積層する工程(以下、第2工程)と、さらに、ボンディング層と、絶縁保護膜とをこの順序で積層する工程(以下、第3工程)を有する。
なお、前記p型電極形成工程に、前記第1の拡散防止層を熱処理する工程(以下、第4工程)を含めてもよい。また、ボンディング層上に絶縁保護膜を積層する工程(以下、第5工程)を行なってもよい。
まず、図6〜8に示す工程断面図を用いてp型電極の形成工程について説明する。
【0071】
<第1工程>
まず、図6(a)に示すように、p型半導体層106の上面106cにレジストを塗布して、これを乾燥して不溶性レジスト部21する。前記レジストとしては、たとえば、AZ5200NJ(製品名:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)などを用いる。
【0072】
次に、レジスト部21の前面にp型電極を形成する位置をカバーするように、1辺の長さl×他辺の長さlの略矩形状マスク(以下、p型電極形成用マスク)を配置する。
次に、図6(b)に示すように、所定強さ及び波長の光を矢印に示すように照射して、レジスト部21のマスク25によりカバーされていない部分を露光する(一部露光)。露光されたレジスト部21は、光反応により第1の可溶性レジスト部22とされる。なお、この光反応は光の強さに応じて進行するので、光照射面側では光反応の進行が早く、p型半導体層106側では光反応の進行が遅くなる。そのため、第1の可溶性レジスト部22は、その側面が下方に向かうほど後退した逆傾斜形状(逆テーパー形状)となるように形成される。逆に、マスクされた部分の不溶性レジスト部21は、側面が上方に向かうほど後退した傾斜形状(テーパー形状)となるように形成される。
【0073】
次に、たとえば、ホットプレートまたはオーブンなどを用いて、第1の可溶性レジスト部22が形成された基板101を加熱する。この加熱に伴う熱反応により、第1の可溶性レジスト部22は架橋されて、図6(c)に示すように、架橋高分子からなる硬化レジスト部23とされる。
次に、図7(a)に示すように、マスクを用いず、所定強さ及び波長の光を矢印に示すように照射する(全面露光)。これにより、一部露光において露光されなかった不溶性レジスト部21が、第2の可溶性レジスト部24とされる。
【0074】
次に、所定の有機溶媒を用いて、第2の可溶性レジスト部24を溶解除去する。これにより、図7(b)に示すように、架橋高分子からなる硬化レジスト部23が残される。硬化レジスト部23は、p型半導体層106の上面106cを露出させる幅lの開口部27cを備える。なお、開口部27cは、1辺の長さl×他辺の長さlの略矩形状に形成されている。開口部27cの側面(内壁面)27dは、下方に向かうほど後退する逆傾斜形状(逆テーパー形状)とされており、開口部27cの面積がp型半導体層106に近づくほど大きくされている。また、開口部27cの側面27dの傾斜角度はほぼ一定とされている。これをマスク27と呼称する。
【0075】
次に、図7(c)に示すように、スパッタ法により、マスク27を介して、p型半導体層106の上面106cに第1の拡散防止層51を形成する。
第1の拡散防止層51は、マスク27の開口部27cの各辺の長さl、lよりも少し広く、p型半導体層106の上面106c上にマスク27の内壁面27d近傍まで広がって形成される。また、マスク27の開口部27cの内壁面27dは下方に向かうほど後退しているので、スパッタ方向から影となる部分では、すなわち、第1の拡散防止層51の外縁部51fには、外周51g側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面51eが形成される。なお、傾斜面51eの傾斜角度は、膜厚に応じて決まる。
【0076】
<第2工程>
次に、スパッタ法により、マスク27を介して、第1の拡散防止層51上に金属反射層52を形成する。
金属反射層52の成膜では、第1の拡散防止層51の場合と同様にスパッタ法を用いる。そのため、金属反射層52は、マスク27の開口部27cの各辺の長さl、lよりも少し広く、p型半導体層106の上面106c上にマスク27の内壁面27d近傍まで広がって形成される。
また、マスク27の開口部27cの内壁面27dは下方に向かうほど後退しているので、図8(a)に示すように、スパッタ方向から影となる部分では、すなわち、金属反射層52の外縁部52fには、外周52g側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面52eが形成される。なお、傾斜面52eの傾斜角度は、膜厚に応じて決まる。
また、金属反射層52は、第1の拡散防止層51を完全に覆うように形成される。
【0077】
なお、金属反射層52を形成する前に、第1の拡散防止層51の表面を洗浄する前処理を施しても良い。洗浄の方法としてはプラズマなどに曝すドライプロセスによるものと薬液に接触させるウェットプロセスによるものがあるが、工程の簡便さの観点より、ドライプロセスが望ましい。
【0078】
なお、金属反射層52としてAgまたはAg合金を用いて成膜した場合、成膜後、熱処理(アニール)を行うことが好ましい。これにより、金属反射層52の反射率が高めることができる。たとえば、380〜400℃で熱処理すると、金属反射層52の反射率は約8%向上する。これは、金属反射層52は、第1の拡散防止層51と第2の拡散防止層53とに囲まれているので、熱処理の際Agが拡散せず、金属反射層52の密度が高くなったためであると推測している。
また、前記熱処理は、独立した処理として行ってもよく、フリップチップ接続の際の電極への加熱によって行ってもよい。
【0079】
次に、スパッタ法により、マスク27を介して、金属反射層52上に第2の拡散防止層53を形成する。
第2の拡散防止層53の成膜では、第1の拡散防止層51の場合と同様にスパッタ法を用いる。そのため、第2の拡散防止層53は、マスク27の開口部27cの各辺の長さl、lよりも少し広く、p型半導体層106の上面106c上にマスク27の内壁面27d近傍まで広がって形成される。
また、マスク27の開口部27cの内壁面27dは下方に向かうほど後退しているので、図8(b)に示すように、スパッタ方向から影となる部分では、すなわち、第2の拡散防止層53の外縁部53fには、外周53g側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面53eが形成される。なお、傾斜面53eの傾斜角度は、膜厚に応じて決まる。
また、第2の拡散防止層53は、金属反射層52を完全に覆うように形成される。
【0080】
<第3工程>
次に、スパッタ法により、マスク27を介して、第2の拡散防止層53上にボンディング層55を形成する。
ボンディング層55の成膜では、第1の拡散防止層51の場合と同様にスパッタ法を用いる。
また、マスク27の開口部27cの内壁面27dは下方に向かうほど後退しているので、スパッタ方向から影となる部分では、すなわち、ボンディング層55の外縁部55fには、外周55g側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面55eが形成される。なお、傾斜面55eの傾斜角度は、膜厚に応じて決まる。
また、ボンディング層55は、第2の拡散防止層53を完全に覆うように形成される。
【0081】
次に、レジスト剥離材などを用いてマスク27を除去することにより、p型半導体層106の上面106cに形成された第1の拡散防止層51、金属反射層52、第2の拡散防止層53、ボンディング層55からなる4層構造体が形成される。
【0082】
次に、フォトリソグラフィー法を用いて、p型電極111の所定の領域に凹部111cをエッチング形成して、内底面111dを露出させる。これにより、第1の拡散防止層51、金属反射層52、第2の拡散防止層53、ボンディング層55が積層され、凹部111cが設けられたp型電極111が、p型半導体層106の上面106cに形成される。また、任意にボンディング層55上に絶縁保護膜10が積層される<第5工程とも言う>。
【0083】
<第4工程>
次に、第1の拡散防止層51の熱処理(アニール)を任意に行うことができる。熱処理により、第1の拡散防止層51の結晶性を高め、第1の拡散防止層51の透明性および導電性を向上させることができる。
【0084】
次に,n型電極の形成工程について説明する。
まず、フォトリソグラフィー法を用いて、所定の領域の積層半導体層20をエッチングして、n型半導体層の一部を露出させるように、切欠部16を形成する。これにより、n型半導体層104の一面104cが露出される。なお、一面104cは、nコンタクト層104aに形成することが好ましい。
次に、スパッタ法などを用いてn型半導体層104の一面104c上にn型電極108を形成する。
次に、積層半導体層20の切欠部16側の側面と、n型半導体層104の露出面104c及びn型電極108の側面を覆うように絶縁保護膜10を形成する。
最後に、フォトリソグラフィー法を用いて、n型電極108の上面を露出させる。
以上のようにして、図1〜図5に示す半導体発光素子1を製造する。
【0085】
なお、n型電極形成工程と、p型電極形成工程の順序はどちらを先としてもよく、一部の工程を同時に行ってもよい。
また、p型電極111の各層に用いる金属元素は、同一の金属元素を用いてもよく、また異なる金属元素を組み合わせてもよい。
【0086】
本発明の実施形態である半導体発光素子1は、基板101と、基板101上にn型半導体層104と発光層105とp型半導体層106とがこの順序で積層されてなる積層半導体層20と、p型半導体層106に接合された一方の電極111と、n型半導体層104に接合された他方の電極108と、を具備する半導体発光素子1であって、一方の電極111または他方の電極108の一方または両方が、第1の拡散防止層51と金属反射層52と第2の拡散防止層53がこの順序で積層されてなる構造を有し、かつ、第1の拡散防止層51がIn、Zn、Al、Ga、Ti、Bi、Mg、W、Ce、Sn、Niのいずれかの金属を含む酸化物からなる構成なので、第1の拡散防止層51と第2の拡散防止層53とが、金属反射層52のAgなどの金属材料がp型半導体層106側やボンディング層55側へ拡散することを防止して、金属反射層52の反射率の低減を抑制できる。特に、フリップチップ接合時に電極に熱が加えられても、金属反射層52の反射率の低減を抑制できる。また、第1の拡散防止層51の光透過率が高く、発光層105からの光を金属反射層52側に効率よく取り出し、金属反射層52で反射した光を基板101方向へ効率よく取り出して、半導体発光素子の発光効率を向上させることができる。また、金属反射層52とp型半導体層106との間の接触抵抗よりも、第1の拡散防止層51とp型半導体層106との間の接触抵抗が小さく、第1の拡散防止層51をp型半導体層106とオーミックコンタクトさせて、p型電極からp型半導体層106への導電性を確保して、半導体発光素子の発光特性を向上させることができる。
【0087】
本発明の実施形態である半導体発光素子1は、第1の拡散防止層51がITO、IZO、AZOまたはGZOのいずれかが好ましい構成なので、金属反射層52の材料の拡散を防止して、金属反射層52の反射率の低減を抑制して、半導体発光素子1の発光効率を向上させることができる。
【0088】
本発明の実施形態である半導体発光素子1は、第1の拡散防止層51の最大厚さが好ましくは1〜500nmである構成なので、金属反射層52の材料の拡散を防止して、金属反射層52の反射率の低減を抑制した電極とすることができる。また、光を効率よく透過させて、半導体発光素子の発光特性を向上させることができる。
【0089】
本発明の実施形態である半導体発光素子1は、金属反射層52が好ましくはAgもしくはRhまたは前記金属のいずれかを含む合金からなる構成なので、金属反射層52の反射率を高めて、光を効率よく反射させて、半導体発光素子1の発光特性を向上させることができる。
【0090】
本発明の実施形態である半導体発光素子1は、金属反射層52が好ましくはAPC合金またはANC合金である構成なので、金属反射層52の反射率を高めて、光を効率よく反射させて、半導体発光素子1の発光特性を向上させることができる。
【0091】
本発明の実施形態である半導体発光素子1は、金属反射層52の最大厚さが好ましくは20〜3000nmである構成なので、金属反射層52の反射率を高めて、光を効率よく反射させて、半導体発光素子1の発光特性を向上させることができる。
【0092】
本発明の実施形態である半導体発光素子1は、金属反射層52の外縁部に好ましくは外周側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面52eが形成されている構成なので、金属反射層52上に形成する第2の拡散防止層53が、金属反射層52をシールド性高く覆うことができる。
【0093】
本発明の実施形態である半導体発光素子1は、第2の拡散防止層53が好ましくはTi、Ni、Ta、Cr、Nbのいずれかの金属、前記金属の窒化物または前記金属のいずれかを含む合金からなる構成なので、第2の拡散防止層53が金属反射層52の材料のボンディング層55側への拡散を防止して、金属反射層52の反射率の低減を抑制した電極とすることができる。特に、フリップチップ接合時に電極に熱が加えられても、金属反射層52の反射率の低減を抑制することができる。
【0094】
本発明の実施形態である半導体発光素子1は、第2の拡散防止層53の外縁部に好ましくは外周側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面が形成されている構成なので、第2の拡散防止層53上に形成するボンディング層55が、第2の拡散防止層53をシールド性高く覆うことができる。
【0095】
本発明の実施形態である半導体発光素子1は、積層半導体層20が窒化ガリウム系半導体を主体として構成されている構成なので、発光効率の高い半導体発光素子とすることができる。
【0096】
本発明の半導体発光素子の製造方法は、一方の電極または他方の電極のいずれか一方または両方の電極を形成する工程が、p型半導体層111またはn型半導体層108のいずれか一方または両方の層上に第1の拡散防止層51を形成する工程と、第1の拡散防止層51上に金属反射層52と第2の拡散防止層53とをこの順序で積層する工程と、を有する構成であって、任意に第1の拡散防止層51を熱処理する工程を含めてもよい。
前記熱処理工程では、第1の拡散防止層51を結晶化して、金属反射層52の構成材料の拡散防止性、透明性および導電性を向上させた後に、金属反射層52を積層することができる。これにより、金属反射層52の反射率を向上させるために、この後、金属反射層52を熱処理しても、金属反射層52の構成材料がp半導体層106側に拡散することを防止できる。また、ランプ製造工程で、p型電極111に熱が加えられても、金属反射層52の構成材料がp半導体層106側に拡散することを防止できる。さらに、金属反射層52上に第2の拡散防止層53を形成することにより、ランプ製造工程で、p型電極111に熱が加えられた際に、金属反射層52の構成材料がボンディング層55側に拡散することも防止できる。これにより、発光効率を向上させた半導体発光素子1を容易に製造することができる。
【0097】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の実施形態であるランプの一例を示す断面概略図である。
図9に示すように、本発明の実施形態であるランプ4は、基板実装用チップ型であり、第1の実施形態で示した半導体発光素子1が用いられている。
なお、本発明の実施形態であるランプ4は、例えば、半導体発光素子1と蛍光体とを組み合わせてなるものであって、当業者周知の手段によって当業者周知の構成とすることができる。また、半導体発光素子1と蛍光体と組み合わせることによって発光色を変えることができることが知られているが、このような技術を本発明の実施形態であるランプにおいても何ら制限されることなく採用することが可能である。
【0098】
本発明の実施形態であるランプ4は、可視光反射率の高い白色のアルミナセラミックスを用いた実装基板61の一面61aに他のリードワイヤ62と、一のリードワイヤ63が配設されており、それらの一端62a、一端63aは実装基板61のほぼ中央部に位置し、他端62b、他端63bはそれぞれ外部に出ていて、電気基板への実装時にはんだ付けされる電極となっている。
【0099】
半導体発光素子1は、その一方の電極(p型電極)111と他方の電極(n型電極)108が実装基板61の一面61aに向くように配置されている。つまり、半導体発光素子1は、基板101側が実装基板61と反対側となるように配置(フリップチップ配置)されている。そのため、半導体発光素子1からの光は主に、実装基板側から基板101側へ向けて放射される。
【0100】
半導体発光素子1のp型電極111とn型電極108はそれぞれバンプ74により他のリードワイヤ62の一端62aと、一のリードワイヤ63の一端63aに接合されている。これにより、半導体発光素子1のp型電極111は一のリードワイヤ63と電気的に接続され、n型電極108は他のリードワイヤ62と電気的に接続される。
【0101】
基板61上には、直方体状の壁面部材70が固定されている。壁面部材70の中央部には、半導体発光素子1をおさめるための椀状の穴70aが形成されている。穴70aの斜面70bは、白色または金属光沢を持った可視光線反射率の高い面で形成されるとともに、その曲面形が光の反射方向を考慮して決定されて、光を前方に取り出すための反射面(リフレクタ面)とされる。
【0102】
穴70aの内部に配置された半導体発光素子1を、透明な封止樹脂(モールド)76がドーム状に被覆している。更に、封止樹脂76を覆うように、透明な別の封止樹脂(モールド)78が穴70aに充填されている。
【0103】
封止樹脂76、78の材質は、耐熱性の高いシリコーン樹脂が好ましいが、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等の他の樹脂あるいはガラス等の透明材料であっても良い。できるだけ紫外線光による劣化の少ない材料を選定することが好ましい。
封止樹脂76、78は、同じ樹脂を用いても良いし、異なる樹脂を用いても良いが、製造の容易さや接着性の良さなどから、同じ樹脂を用いるほうが好ましい。
また、封止樹脂76、78には、蛍光体を分散してもよい。これにより、様々な発光色を呈するようにしたり、白色発光の場合には演色性を高くすることができる。
【0104】
実装基板61および/または壁面部材70は、樹脂製の部材またはセラミクス製部材を含むことが好ましい。樹脂製の部材は安価で、製造コストを低減することができる。また、特に、熱硬化性樹脂を用いることにより、耐熱性に優れたものとすることができる。樹脂としては、たとえば、高耐熱性および高反射率のナイロン樹脂、白色のシリコーン樹脂などを用いる。また、セラミクス製部材は、耐熱性に非常に優れているので、耐熱性に優れたものとすることができる。
なお、実装基板61としてプリント配線したガラス入りエポキシ基板(以下、配線基板)を用い、半導体発光素子1を前記配線基板上に直接実装したチップ・オン・ボード型デバイスとしてもよい。
なお、本実施形態では、バンプ74を用いて接合したが、共晶接合を用いてもよい。
【0105】
本発明の実施形態であるランプ4は、基板101と、基板101上にn型半導体層104と発光層105とp型半導体層106とがこの順序で積層されてなる積層半導体層20と、p型半導体層106に接合された一方の電極111と、n型半導体層104に接合された他方の電極108と、を具備する半導体発光素子1と、実装基板61とを具備するランプ4であって、実装基板61は一面上に一の配線部63と一の配線部63と離間して配設された他の配線部62とを備えており、半導体発光素子1は基板101が前記実装基板61と反対側となるように配置されており、一方の電極111が一の配線部63に接続されるとともに、他方の電極108が他の配線部62に接続されている構成なので、金属反射層の材料の拡散を防止して、金属反射層の反射率の低減を抑制して、発光効率が向上された半導体発光素子を具備したランプすることができる。
【0106】
また、本発明の実施形態である半導体発光素子1および本発明の実施形態であるランプ4は、例えば、照明装置に組み込んで使用することができる。この場合、図示しないが、配線やスルーホール等が形成された基板と、基板表面に取り付けられた複数の半導体発光素子1を用いたランプ4と、凹字状の断面形状を有し、凹部内側の底部に半導体発光素子1を用いたランプ4が取り付けられるように構成されたリフレクター又はシェードとを備えるようにして照明装置に使用できる。また、実施形態1に記載の半導体発光素子1を用いたランプ4を、特開2008−16412号公報に記載の内容に準じて照明装置用リフレクター内に固定し、複数の当該リフレクターを備えた照明装置に製作できる。
また、本発明の実施形態であるランプ4は、携帯電話、ディスプレイ、パネル類などの電子機器や、前記電子機器を組み込んだ自動車、コンピュータ、ゲーム機などの機械装置類に使用できる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0107】
(実施例1)
<半導体発光素子の作製>
第1の実施形態で示した窒化ガリウム系化合物半導体からなる半導体発光素子を次のようにして製造した。
まず、サファイアからなる基板上に、AlNからなるバッファ層を介して、厚さ8μmのアンドープGaNからなる下地層を形成した。
次に、厚さ2μmのSiドープn型GaNコンタクト層、厚さ250nmのn型In0.1Ga0.9Nクラッド層を形成した後、厚さ16nmのSiドープGaN障壁層および厚さ2.5nmのIn0.2Ga0.8N井戸層を5回積層し、最後に障壁層を設けた多重量子井戸構造の発光層を形成した。
さらに、厚さ10nmのMgドープp型Al0.07Ga0.93Nクラッド層、厚さ150nmのMgドープp型GaNコンタクト層を順に形成した。
なお、窒化ガリウム系化合物半導体層の積層は、MOCVD法により、当該技術分野においてよく知られた通常の条件で行なった。
【0108】
次に、フォトリソグラフィーの手法を用いてエッチングを施し、所望の領域にn型GaNコンタクト層を露出させ、この露出面上にTi/Auの二層構造のn型電極を形成した。
【0109】
次に、第1の実施形態で示したマスク形成工程にしたがって、350μm角の発光素子を作製するために、一辺の長さが320μmの略正方形状の開口部を備えるマスクを形成した。レジストとしては、AZ5200NJ(製品名:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を用いた。
次に、前記マスクを具備した状態で、スパッタ法により、厚さ5nmのIZOからなる第1の拡散防止層を形成した。
次に、前記マスクを具備した状態で、スパッタ法により、厚さ100nmのAgからなる金属反射層と、厚さ50nmのTaNからなる第2の拡散防止層を形成した。
次に、前記マスクを除去し、オーブンの内部に配置した後、所定の真空度に減圧した状態で、300℃まで昇温し、1時間保持して、Agの高密度化のための熱処理を行った。
次に、再度マスクを形成して、厚さ300nmのAuからなるボンディング層を形成した後、マスクを除去した。
【0110】
次に、スパッタ法により、p型半導体層106の上面および側面およびn型半導体層の露出面を覆うように厚さ250nmのSiOからなる絶縁保護膜を形成した。
次に、公知のフォトリソグラフィーの手法によってパターニングして、p型電極の所定の領域に凹部をエッチング形成して、ボンディング層の一部を露出させるとともに、n型電極の上面を露出して、実施例1の半導体発光素子を製造した。
【0111】
<半導体発光素子の評価>
実施例1の半導体発光素子について、順方向電圧を測定したところ、プローブ針による通電で電流印加値20mAにおける順方向電圧が3.1Vであった。
また、印加電流20mAにおける発光出力は22mWを示した。また、その発光面の発光分布は正極下の全面で発光しているのが確認できた。
【0112】
(実施例2)〜(実施例7)、(比較例1)、(比較例2)
表1に記載の各条件にした以外は、実施例1と同様に半導体発光素子を作製した。
なお、チップは、実施例1と同様に、460nm発光波長のチップであり、当該チップをN雰囲気下で常温、200℃、300℃、400℃の温度環境下にそれぞれ10分間保持した後、順方向の電圧(Vf)測定、発光出力(Po)を測定した。
発光出力の測定には、半導体発光素子をTO−18缶パッケージに実装してテスターによって印加電流20mAにおける発光出力を計測した。
印加電流20mAにおける、実施例1〜7の半導体発光素子の発光効率は、20℃で、20mW以上であった。しかし、比較例1、2に記載された条件では、高温下での金属反射層を形成する元素の拡散が抑制できず、金属反射層の反射率が悪化し、発光効率が低下した。
詳細を省略するが、表1で記載した本発明のチップを各種実装基板に具備したランプやそのランプを特開2008−16412号公報に記載の内容に準じて照明装置用リフレクター内に固定し、複数の当該リフレクターを備えた照明装置に製作した。またこのようなランプは、電子機器や各種機械装置類に使用した。
【0113】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、半導体発光素子、その製造方法、ランプ、電子機器及び機械装置に関するものであって、特に金属反射層の構成材料の拡散を防止する電極を備えた半導体発光素子を製造・利用する産業において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0115】
1…半導体発光素子、4…ランプ、10…絶縁保護膜、10e…傾斜面、10f…外縁部、10g…外周、16…切欠部、17…切欠残部、19…外周、20…積層半導体層、21…不溶性レジスト部、22…第1の可溶性レジスト部、23…硬化レジスト部、24…第2の可溶性レジスト部、27…マスク、27c…開口部、27d…内壁面、51…第1の拡散防止層、51e…傾斜面、51f…外縁部、51g…外周、52…金属反射層、52e…傾斜面、52f…外縁部、52g…外周、53…第2の拡散防止層、53e…傾斜面、53f…外縁部、53g…外周、55…ボンディング層、55e…傾斜面、55f…外縁部、55g…外周、61…実装基板、62…他のリードワイヤ、62a…一端、62b…他端、63…一のリードワイヤ、63a…一端、63b…他端、70…壁面部材、74…バンプ、76、78…封止樹脂(モールド)、101…基板、102…バッファ層、103…下地層、104…n型半導体層、104a…nコンタクト層、104b…nクラッド層、104c…露出面、105…発光層、105a…障壁層、105b…井戸層、106…p型半導体層、106a…pクラッド層、106b…pコンタクト層、106c…上面、108…n型電極、111…p型電極、111c…凹部、111d…内底面、111e…傾斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上にn型半導体層と発光層とp型半導体層とがこの順序で積層されてなる積層半導体層と、前記p型半導体層に接合された一方の電極と、前記n型半導体層に接合された他方の電極と、を具備する半導体発光素子であって、
前記一方の電極または前記他方の電極のいずれか一方または両方が、第1の拡散防止層と金属反射層と第2の拡散防止層がこの順序で積層されてなる構造を有し、かつ、前記第1の拡散防止層がIn、Zn、Al、Ga、Ti、Bi、Mg、W、Ce、Sn、Niのいずれかの金属を含む酸化物からなることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1の拡散防止層がITO、IZO、AZOまたはGZOのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1の拡散防止層の最大厚さが1nm〜500nmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1の拡散防止層の外縁部に外周側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記金属反射層がAgもしくはRhまたは前記金属のいずれかを含む合金からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記金属反射層がAPC合金またはANC合金であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記金属反射層の最大厚さが20〜3000nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記金属反射層の外縁部に外周側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記第2の拡散防止層がTi、Ni、Ta、Cr、Nbのいずれかの金属、前記金属の窒化物または前記金属のいずれかを含む合金からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記第2の拡散防止層の外縁部に外周側に向けて膜厚が漸次薄くなるような傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項11】
前記積層半導体層が窒化ガリウム系半導体を主体として構成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の半導体発光素子と、実装基板とを具備するランプであって、
前記実装基板は一面上に一の配線部と前記一の配線部と離間して配設された他の配線部とを備えており、前記半導体発光素子は前記半導体発光素子の基板が前記実装基板と反対側となるように配置されており、前記半導体発光素子の一方の電極が前記一の配線部に接続されるとともに、前記半導体発光素子の他方の電極が前記他の配線部に接続されていることを特徴とするランプ。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法であって、
前記半導体発光素子の一方の電極または他方の電極のいずれか一方または両方の電極を形成する工程が、p型半導体層またはn型半導体層のいずれか一方または両方の層上に第1の拡散防止層を形成する工程と、前記第1の拡散防止層を熱処理する工程と、前記第1の拡散防止層上に金属反射層と第2の拡散防止層とをこの順序で積層する工程と、を有することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の半導体発光素子を備えたことを特徴とするランプ。
【請求項15】
請求項12または14に記載のランプが組み込まれていることを特徴とする電子機器。
【請求項16】
請求項15に記載の電子機器が組み込まれていることを特徴とする機械装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−34989(P2011−34989A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176661(P2009−176661)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】