説明

半導体装置、および半導体装置の製造方法

【課題】導電性が良好でありながらも銅の拡散を十分に防止することが可能な銅配線の埋め込み構造を備えた半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】第1絶縁膜13に形成された配線溝13a内、第2絶縁膜22および第3絶縁膜に形成された配線溝24aと接続孔22a内に、拡散防止層15,25を介して銅配線17a,26aが埋め込まれた半導体装置27において、拡散防止層15,25は、ルテニウムカーバイト(RuCx)、ルテニウムシリサイド(RuSix)、またはルテニウム合金(RuTa)を用いて構成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層間絶縁膜に形成された接続孔や配線溝などの溝パターン内に銅含有の導電パターンが埋め込まれた半導体装置、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
0.18μm世代以降のシリコンLSIにおいては、トランジスタの高速化に対して配線のCR成分による遅延が無視できなくなったため、従来のAl(比抵抗3μΩ・cm)に代えて、より低抵抗なCu(比抵抗1.7μΩ・cm)またはCuを主成分とする銅合金を配線材料に用いる検討が進んでいる。尚、本明細書においては、銅または銅合金からなる配線を銅配線と称する。
【0003】
図5には、銅配線を用いた半導体装置の断面図を示す。この図に示す半導体装置においては、MOSトランジスタやその他の半導体素子を形成した半導体基板100上が下地絶縁膜101で覆われている。この下地絶縁膜101の表面側には、配線溝101aが設けられており、この配線溝101a内には、バリアメタル層102を介して銅配線103が埋め込まれている。さらに、下地絶縁膜101上には、第1窒化シリコン膜104、第2絶縁膜105、第2窒化シリコン膜106、第3絶縁膜107がこの順に積層されて、第3絶縁膜107には配線溝17aが設けられている。また、第2窒化シリコン膜106、第2絶縁膜105、および第1窒化シリコン膜104には、配線溝107aの底部から銅配線103に達する接続孔105aが設けられている。そして、配線溝107aと接続孔105a内には、バリアメタル層108を介して銅配線109が埋め込まれている。
【0004】
以上の構成において、バリアメタル層102,108は、銅配線103,109を構成する銅が絶縁膜101,105,107中に拡散することを防止するための層であり、例えばタンタル(Ta)などで構成されている。また近年においては、タンタルからなるバリアメタル層の酸化に起因する銅配線の抵抗の増大を防止ることを目的として、ルテニウム(Ru)やイリジウム(Ir)のような酸化されても導電性を失わない金属、またはこれらの金属酸化物を用いてバリアメタル層を形成する構成が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−75994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した半導体装置においては、バリアメタル層を構成するルテニウム(Ru)やイリジウム(Ir)の銅に対するバリア性が十分ではなかった。このため、配線の微細化がさらに進んだ場合には、バリアメタル層の更なる薄膜化が要求されることになるが、上述した金属や金属酸化物からなるバリアメタル層は、薄膜化によって銅の拡散を十分に防止することが困難になり、これが配線の微細化を妨げる要因ともなる。
【0007】
そこで本発明は、導電性が良好でありながらも銅の拡散を十分に防止することが可能な銅配線の埋め込み構造を備えた半導体装置、およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本発明は、絶縁膜に形成された溝パターン内に、拡散防止層を介して銅含有の導電性パターンが埋め込まれた半導体装置において、拡散防止層は、ルテニウムシリサイド、ルテニウムカーバイト、またはルテニウム合金からなることを特徴としている。
【0009】
また本発明は、上述した本発明構成の半導体装置の製造方法でもあり、先ず、絶縁膜に溝パターンを形成し、この溝パターンの内壁を覆う状態で絶縁膜上にルテニウムシリサイド、ルテニウムカラーバイト、またはルテニウム合金からなる拡散防止層を形成し、さらに拡散防止層を介して溝パターン内が埋め込まれるように銅含有の導電性材料膜を絶縁膜上に成膜し、次いで溝パターン内のみに導電性材料膜および前記拡散防止層を残すように、前記絶縁膜上における導電性材料膜おおび拡散防止層を研磨除去することを特徴としている。
【0010】
このような構成の半導体装置においては、拡散防止層を構成するルテニウムカーバイト、ルテニウムシリサイド、またはルテニウム合金は、導電性が良好であるとともに、非晶質または微結晶性の材料であるため銅等の金属材料に対するバリア性が良好である。
【発明の効果】
【0011】
以上から本発明の半導体装置およびその製造方法によれば、導電性および銅に対するバリア性が良好なルテニウムカーバイト、ルテニウムシリサイド、またはルテニウム合金を用いて拡散防止層を設けたことにより、導電性が良好でありながらも銅の拡散を十分に防止することが可能な銅配線構造が得られ、これにより銅配線構造の更なる微細化を達成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。尚、各実施形態においては、半導体装置の製造方法とこれによって形成された半導体装置の順に説明を行う。
【0013】
<第1実施形態>
図1および図2は、本発明の第1実施形態を説明する断面工程図である。以下、この図に基づいて、第1実施形態の製造方法とこれによって得られる半導体装置の詳細を説明する。
【0014】
先ず、図1(1)に示すように、MOSトランジスタやその他の半導体素子を形成した半導体基板10上に、例えば酸化シリコン(SiO2)からなる下地絶縁膜11を成膜する。そして、この下地絶縁膜11に、半導体基板10に形成した素子に達する接続孔11aを形成し、この内部にタングステン(W)などからなるプラグ12を形成する。
【0015】
次に、プラグ12および下地絶縁膜11上に、炭素含有酸化シリコン(SiOC)、またはポリアリールエーテル等の有機材料のような、酸化シリコンよりも誘電率の低い材料からなる第1絶縁膜13を成膜する。
【0016】
そして、第1絶縁膜13に、プラグ12の上面を露出させる状態で、溝パターンとして配線溝13aを形成する。この際、例えば、ここでの図示を省略したレジストパターンをマスクにした第1絶縁膜13のエッチングを行う。
【0017】
そして、配線溝13aの形成後には、不活性な雰囲気、例えばアルゴン(Ar)雰囲気内または真空雰囲気内において、300℃で60秒間の脱ガス処理を行う。
【0018】
次いで、図1(2)に示すように、配線溝13aの内壁を覆う状態で、第1絶縁膜13上に、本発明に特徴的な拡散防止層15を成膜する。この拡散防止層15は、a)ルテニウムカーバイト(RuCx)、b)ルテニウムシリサイド(RuSix)、またはc)ルテニウム合金(Ru合金)を用いて構成されていることが特徴的である。ここでは特に、ルテニウムカーバイト(RuCx)、ルテニウムシリサイド(RuSix)、またはルテニウム合金(Ru合金)からなる単層構造であることとする。尚、Ru合金としては、例えばルテニウムとタンタルとの合金(RuxTay)、ルテニウムとチタンとの合金(RuxTiy)、ルテニウムとジルコニウムの合金(RuxZry)、ルテニウムとタングステンとの合金(Ruxy)、ルテニウムとバナジウムとの合金(Ruxy)などが例示される。
【0019】
これら材料からなる拡散防止層15は、例えば原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition:ALD法)によって形成される。ALD法であれば、熱ALD法やプラズマALD法、さらにはその他のALD法が適用され、例えば次のように行われる。
【0020】
a)ルテニウムカーバイト(RuCx)からなる拡散防止層15の成膜は次のように行う。先ず、成膜処理を行う半導体基板を洗浄して成膜チャンバ内に収納し、成膜チャンバ内のガスを窒素に置換する。
【0021】
次に、第1ステップとして、ルテニウム(Ru)を含有する有機金属化合物(すなわちRuプリカーサ)を、キャリアガスと共に成膜チャンバ内に供給し、これにより成膜表面にRuプリカーサを化学的に単分子吸着させる。Ruプリカーサとしてはガス状で供給可能な材料として例えばRu(EtCp)2[ルテニウムジエチルシプロエン]が用いられ、キャリアガスとしては例えばアルゴン(Ar)が用いられる。
【0022】
次に、第2ステップとして、成膜チャンバ内に、アンモニア(NH3)ガス、アンモニアガスプラズマ、水素ガスプラズマ、水素ラジカルを導入し、成膜表面に吸着させたRuプリカーサ中の有機性分を有る程度残し、不必要な有機成分を除去する。
【0023】
以降、第1ステップと第2ステップとを繰り返し行うことにより、成膜表面にルテニウムカーバイト(RuCx)からなる拡散防止層15を成膜する。この際、拡散防止層15として所望の膜厚になるまで、第1ステップと第2ステップとを繰り返し行う。また、第2ステップにおいての窒素ガスに対する成膜表面の暴露時間を調整することにより、ルテニウム(Ru)中の炭素(C)量を制御する。
【0024】
b)ルテニウムシリサイド(RuSix)からなる拡散防止層15の成膜は、上述したルテニウムカーバイト(RuCx)からなる拡散防止層の成膜における第2ステップにおいて、窒素ガス等に換えてシラン(SiH4)ガスを流し、成膜表面に吸着させたRuプリカーサ中の有機性分をシリコン(Si)で十分に置換する。そして、第1ステップと、シラン(SiH4)ガスを流す第2ステップとを繰り返し行えば良い。
【0025】
またこの他にも、上述したルテニウムカーバイト(RuCx)からなる拡散防止層の成膜における第2ステップにおいてRuプリカーサ中の有機成分を十分に除去した後に、第3ステップとしてシラン(SiH4)ガスを流す工程を行うことでRuの単分子膜にシリコン(Si)を結合させる。そして、第1ステップ〜第3ステップを繰り返し行う方法でも良い。
【0026】
c)ルテニウム合金(Ru合金)からなる拡散防止層15の成膜は、上述したルテニウムカーバイト(RuCx)からなる拡散防止層の成膜における第1ステップで、Ruプリカーサと共にタンタル(Ta)などの金属を含有する有機金属化合物(すなわちTaプリカーサ)を成膜チャンバ内に供給すれば良い。そして、RuプリカーサとTaプリカーサとを流す第1ステップと、プリカーサ中の有機成分を除去する第2ステップとを繰り返し行えば良い。
【0027】
またこの他にも、上述したルテニウムカーバイト(RuCx)からなる拡散防止層の成膜におけるRuプリカーサを流す第1ステップおよびその後の第2ステップを行った後、Taプリカーサを流す第1ステップおよびその後の第2ステップを行い、これらを交互に繰り返し行う方法でも良い。
【0028】
尚、a)ルテニウムカーバイト(RuCx)、b)ルテニウムシリサイド(RuSix)、またはc)ルテニウム合金(Ru合金)からなる拡散防止層15の成膜は、上述した原子層蒸着(ALD)法による成膜に限定されることはなく、CVD法のような他の成膜方法を適用しても良い。
【0029】
以上の後、図1(3)に示すように、スパッタ法により、拡散防止層15上に銅膜からなる銅シード層16を成膜する。次いで、電解めっき法にて、配線溝13a内を完全に埋め込む状態で、銅シード層16上に銅めっき層17を成膜する。尚、配線溝13aを形成した後の脱ガス処理から銅シード層16の形成までは、半導体基板10を大気開放することなく連続して管理された雰囲気内で行うこととする。
【0030】
次に、銅めっき層17における結晶粒を成長させるために、銅めっき層17に対して熱処理(例えば150℃程度の温度下で1時間程度)を行う。またこれにより、銅シード層16と銅めっき層17とを一体化させる。尚、銅シード層16を設けずに、拡散防止層15上に直接、電解めっき法にて銅めっき層17を成膜しても良い。
【0031】
次に、図1(4)に示すように、例えば化学的機械研磨(chemical mechanical polishing:CMP)により、銅めっき層17(一体化した銅シード層16を含む)を上面側から研磨除去し、さらに拡散防止層15を研磨除去して第1絶縁膜13を露出させ、配線溝13a内のみに拡散防止層15および銅めっき層17を残す。これにより、配線溝13aの底部に露出させたプラグ12に接続させて、拡散防止層15を介して銅めっき層17からなる第1銅配線17aを形成する。
【0032】
その後、図2(5)に示すように、第1銅配線17a上を含む第1絶縁膜13上に、第1窒化シリコン膜21、第2絶縁膜22、第2窒化シリコン膜23、および第3絶縁膜24を順次堆積成膜する。ここで、第2絶縁膜22および第3絶縁膜24は、第1絶縁膜13と同様に、炭素含有酸化シリコン(SiOC)、またはポリアリールエーテル等の有機材料のような、酸化シリコンよりも誘電率の低い材料からなる。また、第1窒化シリコン膜21および第2窒化シリコン膜23は、銅に対するバリア性が得られる程度の膜厚を有していれば良いこととする。
【0033】
次に、第3絶縁膜24に、溝パターンとして配線溝24aを形成する。また、第2窒化シリコン膜23、第2絶縁膜22、および第1窒化シリコン膜21には、配線溝24aの底部から第1銅配線17aの上部を露出させる状態で、溝パターンとして接続孔22aを形成する。
【0034】
これらの配線溝24aおよび接続孔22aの形成は、ここでの図示を省略したレジストパターンをマスクにしたエッチングによって行われ、配線溝24aと接続孔22aとはどちらを先に形成しても良い。
【0035】
次いで、図2(6)に示すように、配線溝24aおよび接続孔22aの内壁を覆う状態で、第3絶縁膜24上に、本発明に特徴的な拡散防止層25を成膜する。この拡散防止層25は、先に図1(2)を用いて説明した拡散防止層15と同様に、(a)ルテニウムカーバイト(RuCx)、(b)ルテニウムシリサイド(RuSix)、または(c)ルテニウム合金(Ru合金)を用いて構成されていることが特徴的である。このような拡散防止層25の形成は、拡散防止層15の形成と同様に行われる。尚、拡散防止層15と拡散防止層25とは、同じ材料で構成されていることに限定されることはない。
【0036】
以上の後には、図1(3)および図1(4)を用いて説明したと同様に、拡散防止層25上に、銅シード層および銅めっき層を形成し、銅めっき層における結晶粒を成長させるための熱処理を行う。この際、銅シード層を設けずに電解めっき法にて銅めっき層のみを成膜しても良い。次に、銅めっき層および拡散防止層25を研磨除去して第3絶縁膜24を露出させ、配線溝24aおよび接続孔22a内のみに拡散防止層25および銅めっき層を残す。
【0037】
以上により、図2(7)に示すように、配線溝24aおよび接続孔22a内に、拡散防止層25を介して銅めっき層を埋め込んでなる第2銅配線26aを形成する。この第2銅配線26aは、拡散防止層25を介して第1銅配線17aに接続されたものとなる。
【0038】
そして以上により、配線溝13a内に拡散防止層15を介して第1銅配線17aが埋め込まれ、またこの第1銅配線17a上の配線溝24aおよび接続孔22a内に拡散防止層25を介して第2銅配線26aが埋め込まれた半導体装置27が得られる。そして特に、拡散防止層15,25が、ルテニウムカーバイト(RuCx)、ルテニウムシリサイド(RuSix)、またはルテニウム合金(Ru合金)からなる単層構造として構成されたものとなる。
【0039】
このような構成の半導体装置27においては、ルテニウムカーバイト(RuCx)、ルテニウムシリサイド(RuSix)、またはルテニウム合金(Ru合金)からなる単層構造の拡散防止層15,25を介して銅配線17a,26aが設けられている。拡散防止層15,25を構成するこれらの材料は、導電性が良好である。
【0040】
また、これらルテニウムカーバイト(RuCx)、ルテニウムシリサイド(RuSix)、またはルテニウム合金(Ru合金)は、非晶質または微結晶性の材料であるため銅等の金属材料に対するバリア性が良好である。このため、例えば、図2(5)を用いて説明した工程において、拡散防止層15および第1窒化シリコ膜21は、第2絶縁膜22とこれよりも上層の膜23,24を成膜する際の熱処理(例えば400℃程度)の際に、第1絶縁膜13や第2絶縁膜22に対して第1銅配線17aを構成する銅原子が拡散することを十分に防止することができる。
【0041】
したがって、拡散防止層15,25による配線の高抵抗化が防止されて導電性を良好に維持できると共に、薄膜化した拡散防止層15,25によっても絶縁膜13,22,24への銅の拡散を十分に防止することが可能な銅配線構造を得ることが可能である。
【0042】
以上の結果、上述した本発明の第1実施形態によれば、銅配線構造の更なる微細化を達成することが可能になる。
【0043】
また特に、拡散防止層15,25を構成するルテニウムカーバイト(RuCx)、ルテニウムシリサイド(RuSix)、またはルテニウム合金(Ru合金)などの膜は、上述したようにALD法やCVD法を適用して成膜することが可能である。したがって、スパッタ法などで成膜した場合と比較して、複雑な工程制御を必要とすることなく、均一な膜厚で配線溝や接続孔などの溝パターンの側壁にも拡散防止層15,25を成膜することができる。これにより、銅めっき層の埋め込み不良が防止できる。またこれにより、溝パターン側壁における拡散防止層15,25の膜厚不足に起因して、絶縁膜からの脱ガスによる拡散防止層の酸化抵抗上昇を防止することができる。
【0044】
<第2実施形態>
図3および図4は、本発明の第2実施形態を説明する断面工程図である。これらの図に示す第2実施形態が、先に説明した第1実施形態と異なるところは、拡散防止層の上下層の構成であり、その他の構成は同様である。したがって、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
先ず、図3(1)に示すように、MOSトランジスタやその他の半導体素子を形成した半導体基板10上に、下地絶縁膜11を成膜し、この下地絶縁膜11に形成した接続孔11a内にプラグ12を形成する。次に、下地絶縁膜11上に、低誘電率の第1絶縁膜13を成膜し、これに配線溝13aを形成する。
【0046】
次いで、図3(2)に示すように、配線溝13aの内壁を覆う状態で、第1絶縁膜13上に、本発明に特徴的な拡散防止層15を成膜する。つまり、この拡散防止層15は、先に図1(2)を用いて説明した拡散防止層15と同様に、(a)ルテニウムカーバイト(RuCx)、(b)ルテニウムシリサイド(RuSix)、または(c)ルテニウム合金(Ru合金)を用いて構成されていることが特徴的である。
【0047】
また本第2実施形態に特徴的な構成として、この拡散防止層15上に、ルテニウム層31を形成する。ルテニウム層31の成膜は、例えば原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition:ALD法)によって形成される。ALD法であれば、熱ALD法やプラズマALD法、さらにはガスフロー中に還元ガスを一定間隔で流すパルス−ALD法が適用され、例えば次のように行われる。
【0048】
先ず、拡散防止層15の成膜に引き続き、成膜処理を行う成膜チャンバ内のガスを窒素に置換する。
【0049】
次に、第1ステップとして、ルテニウム(Ru)を含有する有機金属化合物(すなわちRuプリカーサ)を、キャリアガスと共に成膜チャンバ内に供給し、これにより成膜表面にRuプリカーサを化学的に単分子吸着させる。Ruプリカーサとしてはガス状で供給可能な材料として例えばRu(EtCp)2[ルテニウムジエチルシプロエン]が用いられ、キャリアガスとしては例えばアルゴン(Ar)が用いられる。
【0050】
次に、第2ステップとして、アンモニア(NH3)ガス、アンモニアガスプラズマ、水素ガスプラズマ、水素ラジカルを導入し、成膜表面に吸着させたRuプリカーサ中の有機性分を十分に除去する。
【0051】
以降、第1ステップと第2ステップとを繰り返し行うことにより、成膜表面にルテニウム層31を成膜する。この際、ルテニウム層31として所望の膜厚になるまで、第1ステップと第2ステップとを繰り返し行う。
【0052】
尚、ルテニウム層31の成膜は、上述した原子層蒸着(ALD)法による成膜に限定されることはなく、CVD法のような他の成膜方法を適用しても良い。
【0053】
以上の後には、第1実施形態と同様の工程を行い、第1銅配線を形成する。
【0054】
すなわち先ず、図3(3)に示すように、ルテニウム層31上に、銅シード層16および銅めっき層17を形成し、銅めっき層17における結晶粒を成長させるための熱処理を行う。尚、銅シード層16を設けずに、拡散防止層15上に直接、電解めっき法にて銅めっき層17を成膜しても良い。
【0055】
次いで、図3(4)に示すように、銅めっき層17(銅シード層16を含む)、ルテニウム層31、および拡散防止層15を研磨除去して第1絶縁膜13を露出させ、配線溝13a内のみに、拡散防止層15、ルテニウム層17、および銅めっき層17を残す。これにより、配線溝13aの底部に露出させたプラグ12に接続させて、配線溝13a内に、拡散防止層15およびルテニウム層17を介して銅めっき層17からなる第1銅配線17aを形成する。
【0056】
その後、図4(5)に示すように、第1銅配線17a上を含む第1絶縁膜13上に、第1窒化シリコン膜21、第2絶縁膜22、第2窒化シリコン膜23、および第3絶縁膜24を順次堆積成膜する。次に、第3絶縁膜24に配線溝24aを形成し、さらに配線溝24aの底部から第1銅配線17aの上部を露出させる状態で接続孔22aを形成する。
【0057】
次いで、図4(6)に示すように、本第2実施形態に特徴的な構成として、配線溝24aおよび接続孔22aの内壁を覆う状態で、第3絶縁膜24上に、ルテニウム層32を成膜し、次いで拡散防止層25を成膜し、さらにルテニウム層33を成膜する。ルテニウム層32,33の成膜は、先に図3(2)を用いて説明したと同様に行われる。また、拡散防止層25は、本発明に特徴的な拡散防止層25であり、(a)ルテニウムカーバイト(RuCx)、(b)ルテニウムシリサイド(RuSix)、または(c)ルテニウム合金(Ru合金)を用いて構成されている。尚、拡散防止層15と拡散防止層25とは、同じ材料で構成されていることに限定されることはない。
【0058】
以上の後には、図3(3)および図3(4)を用いて説明したと同様に、ルテニウム層33上に、銅シード層および銅めっき層を形成し、銅めっき層における結晶粒を成長させるための熱処理を行い、さらに銅めっき層および拡散防止層25を研磨除去して第3絶縁膜24を露出させ、配線溝24aおよび接続孔22a内のみに拡散防止層25および銅めっき層を残す。
【0059】
以上により、図4(7)に示すように、配線溝24aおよび接続孔22a内に、ルテニウム層32,33で狭持された拡散防止層25を介して銅めっき層を埋め込んでなる第2銅配線26aを形成する。この第2銅配線26aは、ルテニウム層32,33で狭持された拡散防止層25を介して第1銅配線17aに接続されたものとなる。
【0060】
そして以上により、配線溝13a内に拡散防止層15およびルテニウム層31を介して第1銅配線17aが埋め込まれ、またこの第1銅配線17a上の配線溝24aおよび接続孔22a内にルテニウム層32,33で狭持された拡散防止層25を介して第2銅配線26aが埋め込まれた半導体装置34が得られる。
【0061】
このような構成の半導体装置34においては、ルテニウムカーバイト(RuCx)、ルテニウムシリサイド(RuSix)、またはルテニウム合金(Ru合金)からなる単層構造の拡散防止層15,25と銅配線17a,26aとの間にルテニウム層31,32,33が設けられている。ルテニウム層31,32,33は、拡散防止層15,25を構成する材慮と比較して、金属材料(特に銅)との密着性が良好な膜である。このため、拡散防止層15,25によって、絶縁膜13,22,24への銅の拡散を十分に防止しつつも、拡散防止疎15,25と銅配線17a,26aとの密着性を確実にしてストレスmaiグレーション耐性やエレクトロマイグレーション耐性の向上が図られた銅配線構造を得ることができる。
【0062】
またルテニウム層31,32,33も、上述したようにALD法やCVD法を適用して成膜することが可能である。したがって、銅めっき層の埋め込み不良やルテニウム層31,32,33の膜厚不足に起因して、絶縁膜からの脱ガスによる拡散防止層の酸化抵抗上昇を防止することができる。
【0063】
尚、本第2実施形態においては、(a)ルテニウムカーバイト(RuCx)、(b)ルテニウムシリサイド(RuSix)、または(c)ルテニウム合金(Ru合金)を用いて構成された拡散防止層15,25における銅配線17a,26a側にルテニウム層31,32,33を設けた構成を説明した。しかしながら、本第2実施形態の他の例として、拡散防止層15,25をルテニウムオキサイド(RuOx)で構成し、この拡散防止層15,25と銅配線17a,26aとの間にルテニウム層31,32,33を設けた構成を例示することもできる。
【0064】
ルテニウムオキサイド(RuOx)からなる拡散防止層の成膜は、例えば原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition:ALD法)によって形成される。ALD法であれば、熱ALD法やプラズマALD法、さらにはその他のALD法が適用され、例えば次のように行われる。
【0065】
先ず、成膜処理を行う成膜チャンバ内のガスを窒素に置換する。
【0066】
次に、第1ステップとして、ルテニウム(Ru)を含有する有機金属化合物(すなわちRuプリカーサ)を、キャリアガスと共に成膜チャンバ内に供給し、これにより成膜表面にRuプリカーサを化学的に単分子吸着させる。Ruプリカーサとしてはガス状で供給可能な材料として例えばRu(EtCp)2[ルテニウムジエチルシプロエン]が用いられ、キャリアガスとしては例えばアルゴン(Ar)が用いられる。
【0067】
次に、第2ステップとして、成膜チャンバ内に酸素(O2)ガスを導入し、成膜表面に吸着させたRuプリカーサ中の有機性分を十分に酸素で除去・置換する。
【0068】
以降、第1ステップと第2ステップとを繰り返し行うことにより、成膜表面にルテニウムオキサイド(RuOx)からなる拡散防止層を成膜する。この際、拡散防止層として所望の膜厚になるまで、第1ステップと第2ステップとを繰り返し行う。
【0069】
以上のような他の例であっても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1実施形態を説明するための断面工程図(その1)である。
【図2】第1実施形態を説明するための断面工程図(その2)である。
【図3】第2実施形態を説明するための断面工程図(その1)である。
【図4】第2実施形態を説明するための断面工程図(その2)である。
【図5】従来技術を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0071】
13…第1絶縁膜、13a,23a…配線溝(溝パターン)、15,25…拡散防止層、17a…第1銅配線(導電性パターン)、21…第1窒化シリコン膜、22…第2絶縁膜、22a…接続孔(溝パターン)、23…第2窒化シリコン膜、24…第3絶縁膜、26a…第2銅配線、27,34…半導体装置、31,32,33…ルテニウム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜に形成された溝パターン内に、拡散防止層を介して銅含有の導電性パターンが埋め込まれた半導体装置において、
前記拡散防止層は、ルテニウムカーバイト、ルテニウムシリサイド、またはルテニウム合金を用いて構成された
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記拡散防止層と前記導電性パターンとの間にルテニウム層が設けられた
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置において、
前記拡散防止層は、ルテニウム層で狭持されている
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
絶縁膜に溝パターンを形成するする工程と、
前記溝パターンの内壁を覆う状態で前記絶縁膜上に、ルテニウムカーバイト、ルテニウムシリサイド、またはルテニウム合金を用いた拡散防止層を形成する工程と、
前記拡散防止層を介して前記溝パターン内が埋め込まれるように銅含有の導電性材料膜を前記絶縁膜上に成膜する工程と、
前記溝パターン内のみに導電性材料膜および前記拡散防止層を残すように、前記絶縁膜上における当該導電性材料膜および拡散防止層を研磨除去する工程とを行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置の製造方法において、
前記拡散防止層の成膜を原子層蒸着法によって行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−258390(P2007−258390A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79930(P2006−79930)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】