説明

半導体装置、および薄層歪緩和バッファ成長方法

本発明は、半導体基板を含み、その上部に少なくとも薄層歪緩和バッファを有し、本質的に3層のスタックから成っている半導体装置に関するものであり、その薄層歪緩和バッファは半導体装置のアクティブ部分でなく、さらに、薄層歪緩和バッファを形成する前記3層が本質的に一定のGe濃度を有することを特徴としている。前記3層は以下の通りである:Si1−xGeの第1エピタキシャル層、xはGe濃度である;前記第1エピタキシャル層上の、Si1−xGe:Cの第2エピタキシャル層、Cの量は少なくとも0.3%である;前記第2層上のSi1−xGeの第3エピタキシャル層。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の最上部上への高移動度装置の作成に適した、エピタキシャル多層バッファに関する。また、本発明は、こうしたバッファの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンの低価格、および、Si/SiOシステムの(構造的および電子的)特性により、デジタルエレクトロニクスは、長年にわたり、Si/SiOベースの技術が主流となってきた。無線通信および光通信において、新しいアプリケーションが注目されているため、従来のシリコンベースの装置は、もはや十分な高周波および光電子特性を提供しない。今日では、これら新しいアプリケーションに要求される機能性を、以下の2つの材料/システムが有している:III−V族材料(InP、GaAs、...)、およびIV−IV族ヘテロ構造(SiGe/Si)。
【0003】
今日まで、高周波数および光アプリケーションは、GaAsウエハ上に成長したIII−V族材料により、ほとんど決定的な差を生じさせているものの、SiOなどの自然酸化物に欠けること、これらのウエハ上で可能な集積化が低レベルであるということが、主要な欠点である。
【0004】
歪調整SiGe層と歪シリコン層を含むSiGe/Siヘテロ構造は、SiGeとSiとの間のヘテロ界面でのバンドオフセットにより、歪シリコンチャンネルへの電子伝達を改良し、それによって量子井戸内へ電子を閉じ込めている。バンド構造の変更は、SiとSiGeとの間の格子不整合に起因している。
【0005】
これらの新しいシステムの機能性と、シリコン技術(低価格、高生産性、および能力)の利点の双方から利益を得るための、1つの解決策は、Si基板上に、III−V族化合物またはSiGe/Siを一体化することである。その場合の主な課題は、異なる格子定数を有する基板へ、これらの材料を付着させることである。薄膜と基板との間の格子不整合は、転位の形成および伝搬をエピ層にもたらすことになる。エピタキシャル層のアクティブ部分の各転位は、電子特性、および散乱に起因するキャリヤー伝達の劣化を招く。
【0006】
エピタキシャル層の最上部に昇る転位の密度は、SiGeに対しては1×1011cm−2、GaAsに対しては1×1010cm−2程度に高くなり得るが、これは、いかなるアプリケーションにとっても高過ぎる。高機能性材料を成長させるためには、エピタキシャル層のアクティブ部分の転位の密度を可能な限り低くし、好適には(この仕様は未だ確立されたものではないが)1×10cm−2より低くしておく必要がある。
【0007】
Si基板の最上部上で、いかなる欠陥もないSiGeおよびIII−V族化合物を成長させる1つの解決策は、基板とヘテロシステムとの間に歪緩和SiGeバッファ(SRB)を挿入することである。SiGeの特性は、それをSRBアプリケーションのために適当な化合物にする。さらに、Si基板上に、SRB内のGe含有率により決定される、0(純粋なSi)〜4.16%(100%Ge)の格子不整合を伴うSiGe層システムを適合させることは可能である。
【0008】
かなり高い電子移動度、および低スレッディング転位密度を得ることはできるが、厚いグレーデッドバッファは、なお、以下のようないくつかの主要な経済的、および技術的な欠点を示している:成長時間、材料消費、Siマイクロエレクトロニクスとの一体化には大き過ぎるステップ高。これらの問題を克服するために、薄層歪緩和バッファ(TSRB)において、多くの努力がなされてきた。
【0009】
エピタキシャル層は、エピタキシャル層に転位を導入することにより、臨界厚みにわたって緩和可能となるだけである。この臨界厚みは、主に、成長条件(成長速度、温度、…)により、および、エピ層および/またはヘテロ界面に存在する欠陥により決定されている。TSRBは、この臨界厚みを減少させ、転位をヘテロ界面に閉じ込めるために、欠陥を使っている。
【0010】
これを実行するには3つの主要な方法がある。すなわち、現場での欠陥作成、実験施設内での欠陥作成、および規格に準拠した基板。本発明では、現場法が用いられており、点欠陥内成長(grown−in point defect)時導入がミスフィット転位に対する核形成部位として機能し、臨界厚みをかなり減少させることができる。この方法の原理は、SRBの付着の間に欠陥を成長させることである。
【0011】
数人の研究者が、分子線エピタキシー(MBE)、超高真空化学蒸着法(UHV−CVD)、または、低エネルギープラズマ助長化学蒸着法(LEPECVD)を使用することにより、このタイプのSRBに取り組んできた。これらの方法は、転位を低温エピ層内へ閉じ込める一方、非常に小さな厚み(200nm)に対して最上部層の高緩和度(>90%)を導く。
【0012】
これらの方法の主な欠点は、これらが、MBE、UHV−CVD、またはLEPECVDシステムのみに適用可能なことである。RPCVDシステムのように、成長速度は成長温度に強くリンクされている;超低温での成長は、非常に遅いか、または不可能でさえある。
【0013】
本発明に関連する特許は、マツシタ(Matsushita)による特許文献1である。これは、格子内で緩和され、ほぼ転位がない基質SiGeC結晶層、および層内に分散したSiC微結晶を含む、アニールされたSiGeC結晶層が、SiGeC結晶層が付着したSi基板を熱アニールすることにより、Si基板上に形成される方法を説明している。その後、Si結晶層は、最小の転位を伴う歪Si結晶層を形成するために、アニールされたSiGeC結晶層に付着される。本発明により提示された解決策との主な違いは、使われているスレッディング転位減少原理、および到達する緩和度の相違である。
【0014】
オスティン(Osten)他は、厚いSiGe層およびSiGeC層の付着により歪緩和バッファを作成している(非特許文献1)。この方法は、ステップで等級付けされたGe含有率の、標準の厚さのバッファの変更である。ここで、層の緩和は、高い内部応力により開始される。この内部応力は、温度に依存する、準安定臨界層厚みを越えて成長することにより増加する。置換炭素は、基礎を成すSi1−zGe層(x>z)を伴ったSi1−x−yGeの格子定数に合うように、さらに、転位グライドがSiGeC層内で遅れるのに従って、スレッディング転位が表面に達するのを避けるために使用される。置換炭素の使用は、炭素含有率に上限を設ける。この限界を越えて、格子間炭素が実行される。
【0015】
ランゼロッティ(Lanzerotti)他は、結果的にいかなる欠陥も持たない、SiGe/SiGeC/SiGe層スタックから成るベースを伴うHBT装置を開示している(非特許文献2)。Geは、エミッタからコレクタへのトランジット時間を減少させるために導入され、一方、置換Cはベース内でのホウ素の外方拡散を減少させるのに使用される。総層スタックは欠陥を持つべきではないので、炭素濃度に上限を設定する置換炭素が必要である。Siキャップ層は、歪SiGe上で成長するので、完全に緩和している。この層スタックは、確かに、SRBとしては使用されない。SRBは、その最上部上に、Geが豊富な歪SiGeまたはIII/IV族層を伴う歪Si層を付着させることを可能にする。これは、キャリヤーの移動度を高めるために、側部にある装置で実行される。欠陥は、SRB製作処理に固有である。SRBは、アクティブ装置領域の一部でなくてもよい。この文書では、SiGe/SiGeC/SiGe層スタックの総厚みは、層緩和のための臨界厚みより小さくなるべきである。矛盾するが、SRB層は、緩和が可能となる程度に厚くなければならない。
【特許文献1】国際特許公開第WO01/73827号公報
【非特許文献1】「低スレッディング転位濃度を伴う緩和Si1−xGex/Si1−x−yGexCyバッファ構造(Relaxed Si1−xGex/Si1−x−yGexCy buffer structures with low threading dislocation density)」、アプライドフィジックスレター(Appl.Phys.Lett.)70(21)、1997年5月26日、pp.2813−2815
【非特許文献2】「炭素取込によるSiGe HBTにおけるホウ素の外方拡散の抑止(Suppression of boron outdiffusion in SiGe HBTs by carbon incorporation)」、国際電子装置ミーティング(International Electron Devices Meeting)(IEDM)96、1996年12月8−11日、pp.249−252(IEEE、ニューヨーク、1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、高移動度装置のための、改良された特徴を有する、SiGe歪緩和バッファ(TSRB)を開示し、半導体基板上でTSRBを成長させる、簡単で、信頼できる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、半導体基板を含み、その最上部上に薄層歪緩和バッファを含み、本質的に3層のスタックから成っている半導体装置に関する。薄層歪緩和バッファは半導体装置のアクティブ部分ではない。前記薄層歪緩和バッファを形作るこれらの3層は、同じ一定のGe濃度を有している。3層は以下の通りである:
Si1−xGeの第1エピタキシャル層、xはGe濃度である;
前記第1エピタキシャル層上の、Si1−xGe:Cの第2エピタキシャル層、Cの量は少なくとも0.3%である;および、
前記第2層上の、Si1−xGeの第3エピタキシャル層。
【0018】
半導体装置の好適な実施例では、前記2エピタキシャル層の厚みは1〜20nmである。
【0019】
さらに特定の実施例では、前記2エピタキシャル層の厚みは1〜10nmである。
【0020】
理想的な実施例では、前記第2エピタキシャル層の厚みは5nmである。
【0021】
Ge濃度は、有利には5〜100%である。
【0022】
さらに特定の実施例では、Ge濃度は10〜65%である。
【0023】
有利な実施例では、C濃度は0.5%より高い。好ましくは、C濃度は0.5%〜1%である。好適な実施例では、C濃度は0.8%である。
【0024】
他の好適な実施例では、半導体装置は、TSRBの最上部にSiGe/Siヘテロ構造をさらに有している。ヘテロ構造は、歪調整SiGe層および歪シリコン層を含む。
【0025】
代替的、かつ好適な実施例では、薄層歪緩和バッファは、その最上部に、III−V族化合物を有している。
【0026】
他の実施例では、半導体装置は、さらに、前記スタックの前記第1エピタキシャルSiGe層の下に、追加エピタキシャルSi1−xGe:C層を含んでいる。有利には、半導体装置は、前記追加エピタキシャルSi1−xGe:C層の下に、追加エピタキシャルSi1−xGe層を含んでいる。
【0027】
第2の対象として、本発明は、薄層歪緩和バッファの成長方法であって、
半導体基板を提供するステップと、
前記半導体基板の少なくとも一部分上に、第1エピタキシャル層SiGeを、Ge濃度が前記第1層にわたって本質的に一定となるような形で付着させるステップと、
前記第1SiGeエピタキシャル層の上部に、少なくとも0.3%の炭素を組み込んだSiGeを成長させることにより、第2層SiGe:Cを、第1層におけるのと同様にGe濃度が前記SiGe:C層にわたって本質的に一定となるような形で付着させるステップと、
前記SiGe:C層の上部に、第2SiGeエピタキシャル層を、Ge濃度が前記第3層にわたって本質的に一定となるような形で付着させるステップと
を含むことを特徴とする。
【0028】
半導体基板は、有利には、シリコンである。
【0029】
好ましくは、Ge濃度は、5〜100%であり、さらに有利には、10〜65%である。
【0030】
有利な実施例では、C濃度は0.5%より大きい。C濃度は、好ましくは0.5%〜1%である。好適な実施例では、C濃度は0.8%である。
【0031】
特定の実施例によると、第1および第2先駆ガスが提供される。第1先駆ガスは、Siを含む化合物、または、zおよびwが1〜4に等しいSiHClグループからの化合物を含み、第2先駆ガスは、Geを含む先駆化合物である。層は、前記先駆ガスを利用して付着される。
【0032】
他の特定の実施例によると、いかなるCを含む化合物であれ、炭素を含むガスが供給される。
【0033】
他の実施例では、本方法は、前記半導体基板の少なくとも一部分上の、前記第1エピタキシャルSiGe層の下に、追加エピタキシャルSi1−xGe:C層を付着する追加ステップを含んでいる。有利には、本方法は、前記半導体基板の少なくとも一部分上の、前記追加エピタキシャルSi1−xGe:C層の下に、追加エピタキシャルSi1−xGe層を付着する追加ステップを含んでいる。
【0034】
他の実施例では、本方法は、前記第3エピタキシャル層の上部に、追加シリコンキャップ層を付着するステップをさらに含んでいる。
【0035】
他の実施例では、本方法は、前記半導体基板および前記3つのエピタキシャル層から成る構造が、最高温度が前記SiGe層の融点によって定義される、800℃以上の温度にさらされる追加ステップを含む。任意に、前記構造は、前記追加層の少なくとも1つをさらに含む。
【0036】
好ましい実施例では、本方法は、薄層歪緩和バッファの上部に歪調整SiGe層を付着する追加ステップを含んでいる。
【0037】
有利には、本方法は、前記歪調整SiGe層の上部に歪シリコン層を付着する、追加ステップを含んでいる。
【0038】
他の実施例では、少なくとも前記3つのエピタキシャル層を付着するステップ、任意に、シリコンキャップ層を付着するステップおよび構造を800℃以上の温度にさらすステップは、前記ステップ間において酸化雰囲気へさらすことなく実行される。
【0039】
さらなる実施例では、少なくとも、前記3つのエピタキシャル層を付着するステップから歪シリコン層を付着するステップまでのステップは、前記ステップ間に酸化雰囲気へさらすことなく実行される。
【0040】
さらなる実施例では、少なくとも前記3つのエピタキシャル層を付着するステップ、任意に、シリコンキャップ層を付着するステップおよび構造を800℃以上の温度にさらすステップは、同じツール内で、前記ステップ間において酸化雰囲気へさらすことなく実行される。
【0041】
好適な実施例では、少なくとも、前記3つのエピタキシャル層を付着するステップから歪シリコン層を付着するステップまでのステップは、同じツール内で、前記ステップ間に酸化雰囲気へさらすことなく実行される。
【0042】
特定の実施例では、前記基板はブランケットウエハである。
【0043】
代替的実施例では、前記基板はパターンドウエハである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明は、例えばシリコンのような半導体基板の最上部上に高移動度装置(例えば、SiGe/歪Siシステム)を一体化するための薄層歪緩和バッファ(TSRB)に関する。以下の説明では、薄層歪緩和バッファおよびその取得方法の両方が説明されている。
【0045】
y(C濃度)が少なくとも0.3%、好ましくは0.5%〜1%の、Si0.78Ge0.22/Si0.78Ge0.22:C/Si0.78Ge0.22多層システムに基づくTSRBを、エピタキシャル成長させる。TSRBの急速熱アニーリング(1000℃で30秒)の後に、非常に滑らかな表面(RMS〜1nm)を伴う、91%の緩和が達成される。エピタキシャル層表面に達するいかなる転位も観測されない。転位核生成のための異種中心の生成のために、現場法でのSiGeの成長の間、炭素が取り込まれる。
【0046】
図1では、その最上部にSiGe/Siへテロシステムが付着されたシリコン基板上の、本発明に従う230nm TSRBの完全な構造が示されている。TSRBは、そのSiGe/Siヘテロ構造およびIII−V族化合物の双方の最上部での調整に適しているが、この説明における関心の的は、TSRB上でのSiGe/Si一体化にある。SiGe/Siへテロシステムは、装置のアクティブ部分を構成する。TSRBは、装置のアクティブ部分としては使用されない。アクティブ層での電荷輸送は、TSRBを貫通してではなく、平行に起こる。
【0047】
薄層歪緩和バッファの成長前に、自然酸化物層が基板から取り除かれる。図1でのTSRBは、第1エピタキシャル層Si0.78Ge0.22、第2エピタキシャル層Si0.78Ge0.22:C、および第3エピタキシャル層Si0.78Ge0.22から成る。前記第2Si0.78Ge0.22層の厚みは1〜20nmで、理想的な値は5nmである。3層すべてにおいて、Ge濃度は本質的に一定値を有している:一定のGe濃度は、前記Geプロフィールにおいて、前記一定値から僅かに逸脱してもよいものとして理解されるべきである。図1の例では、Ge濃度22%が使用されている。Ge濃度は、成長状態が3次元成長を回避できるのならば、原則的に5〜100%の範囲のいかなる値でもよい。しかしながら、Ge濃度が高くなれば、有利な成長状態を保つことはより困難となる。
【0048】
TSRBのエピタキシャルデポジションのためには、いくつかの方法が予測可能である。例えばイプシロンワン(Epsilon−One)大気圧/減圧化学蒸着(AP/RPCVD)エピタキシャルリアクターを使用してもよい。これは、長方形のクォーツチューブ内のランプ加熱されたグラファイトサセプタを伴う、単一ウエハ(許容ウエハサイズ:4インチから12インチ)、水平およびロードロックリアクターである。Siを含む第1先駆ガス、およびGeを含む第2先駆ガスは、エピタキシャル層のデポジションに使用可能である。さらに、キャリヤーガス(例えば、H)が、おそらく使用可能である。第1先駆ガスは、シラン、ジシラン(disilane)、またはより高いシラン、またはzおよびwが1〜4に等しいSiHClグループからの任意の化合物のような、しかしこれに限定されない、事実上Siを含むいかなる化合物でもよい。第2先駆ガスは、GeH、GeCl、またはGeを含む任意の他の化合物のような、しかしこれに限定されない、Geを含むいかなる先駆化合物でもよい。TSRBの成長には、以下の手順が使用可能である:
ウエハをロードロックから成長チャンバへロードすること、
HF水溶液での酸化物溶解などの任意の方法により、必要なら、その後に標準手順に従うエピタキシーツール内での現場焼き付けを用いて、あらゆる自然シリコン酸化物または微量の酸化物を取り除くこと。
SiGeおよびSiGe:Cに対してはおよそ600℃で、Siに対してはおよそ650℃での、エピタキシャル層のデポジション。
炭素を加えるために、炭素を含むガスを供給する。これは、zおよびwが1〜4に等しいSiH(CHのような、しかしこれに限定されない、Cを含むいかなる化合物でもよい。少なくとも0.3%、理想的には0.5〜1%、の炭素が組み込まれる。
【0049】
TSRBは、本テキストで説明されているようにAP/RP CVDにより成長可能であるが、本発明で指定されているような層構造を付着できるなら、分子線エピタキシー、低圧CVD(LPCVD)、プラズマ支援CVD、および光支援CVDなどの、他のエピタキシャルSi含有層付着手段も適当である。
【0050】
代替的実施例では、半導体基板の少なくとも一部分の上の第1エピタキシャルSiGe層の下に付着した追加エピタキシャルSi1−xGe:C層が存在してもよい。有利には、半導体基板の少なくとも一部分の上のSi1−xGe:C層の下に付着した追加エピタキシャルSi1−xGe層が存在している。
【0051】
以下のステップでは、TSRBは、Ge濃度に依存して、800℃から融解温度までの範囲の高温にさらされる。純粋なSiの融解温度は1410℃であり、Si1−xGeの融解温度は純粋なGeに対する937℃である。例えば、高速熱アニーリング手順のような方法が適用可能である。TSRBの急速熱アニーリングに対しては、700℃、5秒の中間ステップで、50℃/秒の傾斜の温度プロフィールが選択される。サンプルは、窒素をキャリヤーガスとして、1000℃で、30秒間アニールされる。サンプルは、サンプル表面の酸化を避けるために、20分間炉で冷却される。第2方法は、サンプルが、10〜15℃/秒の傾斜の温度プロフィールおよび水素をキャリヤーガスとして、1050℃で30秒間アニールされる、イプシロンワン(Epsilon−One)エピタキシャルリアクターで使用される。
【0052】
TSRB上への歪調整Sil−xGe層の付着において、TSRBは最初に洗浄され、その後、HF(2%)内への30秒間のエッチング手順が行われる。その後、TSRBは、窒素パージのために、1時間、イプシロンロードロックに置かれる。デポジション前に、850℃で3分間焼き付けされる。同じ結果を得るために、他の手順に従ってもよい。
【0053】
本発明の方法の全ステップは、図2のフローチャートにまとめられている。
【0054】
各層の表面は、ノマルスキー(Nomarsky)干渉顕微鏡を用いてチェックされる。偏光解析分光法は、ケーエルエーテンコール(KLA−TENCOR)のASET−F5ツール(高度分光偏光解析技術(Advanced Spectroscopic Ellipsometry Technology))を用いて、Ge含有量および層の厚みの測定に使用される。IR吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外線吸収ツールにより測定される。二乗平均表面粗さは、AFM(タッピングモード)によりチェックされる。過度に長い測定時間を避けるために、光拡散ツール(SP1/ケーエルエーテンコール(KLA TENCOR))は、出力信号の低周波成分の測定に使用される。
【0055】
前では、ブランケットウエハ、すなわち、シリコンウエハー表面にパターンを有しないものが考慮されていた。しかしながら、説明された方法は、パターン加工されたウエハ上のTSRBの成長のために変更可能である。後者のウエハには、シリコン、およびSiOで満たされたシャロートレンチ絶縁体(STI)トレンチの両方が存在する。これらのSTI構造は、トランジスタ間の電気絶縁体として使用される。図3は、選択的TSRBの最終構造を示している。また、ロコス(LOCOS)など、他の絶縁構造が存在していてもよい。
【0056】
TSRBの選択的エピタキシャルデポジションの目的は、Si1−xGeバッファ(および、歪シリコン)内へのSTIトレンチの形成に起因する問題を避けることである。歪シリコンの熱不安定性、およびシリコンと異なるSiGeの化学反応性のために、このモジュールは、SiGe/Siの酸化、および溝形成後の抵抗剥離などの、若干の重要なステップを含んでいる。TSRBおよび歪シリコンの選択的成長の結果、STIモジュールは標準ステップを保持し、したがって、TSRB/歪Siシステムの一体化は、従来の非選択的成長の場合よりもはるかに簡単になる。
【0057】
デポジションに使用されるシステムは、非選択的成長で使われるものと同じである。処理は以下のとおりである:
a)HF水溶液での酸化物溶解などの任意の方法により、必要なら、その後に標準手順に従うエピタキシーツール内での現場焼き付けを用いて、あらゆる自然シリコン酸化物または微量酸化物を除去すること。
b)その後、TSRBは、先駆ガスとして、ジクロロシラン(DCS)、ジャーメイン エン(Germane en)モノメチルシラン(MMS)を用いて、650℃で成長させられる。デポジションの間、HClを用いることにより、TSRBは、その後に選択的(すなわち、シリコン上にのみ)成長が可能となる。他のSi、C、およびGe先駆ガスも、デポジションが選択性のままである限り、使用可能であろう。
【0058】
したがって、(酸化物構造を伴う)パターン形成されたウエハ上に、高緩和、滑らか、かつTSRB表面に達するスレッディング転位がないという同じ特性で、TSRBを選択的に付着することが可能となる:
【0059】
TSRBの選択的成長を用いることにより、TSRB+歪シリコンは、STI形成の後付着され、したがって、STIモジュールは変化しないままである(標準CMOS)。したがって、標準CMOS内へのTSRBの一体化処理フローは、はるかに簡単となる。したがって、TSRB/歪Siの酸化、およびSTI溝のエッチング後の抵抗剥離という、STIモジュール内の重要なステップはスキップ可能となる。
【0060】
図4は、Ge濃度に対する臨界厚みのグラフを最終的に示している。ボトムラインの下では、歪SiGeはエネルギー的に好適な状態にある。このボトムラインの上の層では、緩和SiGeはエネルギー的に好適な状態にある。転位の場合は、特定の活性化エネルギーに打ち勝たれなければならないという事実により、準安定領域が発生する。グラフのトップラインはまた、成長温度(高い温度−>臨界厚みの減少)、および層の質(欠陥多−>速い緩和)の関数である。この最後の効果は、炭素取り込みに起因する、内方成長ポイント欠陥を作成することにより影響を受ける。ポイント1は底部SiGe層の厚み、ポイント2は総SRBスタックの厚み、ポイント3はランゼロッティペーパー(Lamzerotti paper)におけるような層の厚みを表している。ポイント4は、理論上の臨界厚みを与える(カーブの下方:安定領域、歪SiGe)。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】TSRB SiGeエピタキシャル層を含む、システムのスキームを表す図である。
【図2】本発明の方法のステップを伴うフローチャートである。
【図3】選択的成長の場合のTSRB構造を表す図である。
【図4】従来技術の解決法、および本発明の方法に従う、Ge濃度に対する臨界厚みを表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を含み、その上部に少なくとも薄層歪緩和バッファを有し、本質的に3層のスタックから成っている半導体装置は、前記薄層歪緩和バッファが前記半導体装置のアクティブ部分でなく、さらに、前記薄層歪緩和バッファを形成する前記3層が本質的に一定のGe濃度を有することを特徴としており、前記3層は、
Si1−xGeであって、xはGe濃度である第1エピタキシャル層と、
前記第1エピタキシャル層上の、Si1−xGe:Cであって、Cの量は少なくとも0.3%である第2エピタキシャル層と、
前記第2層上のSi1−xGeの第3エピタキシャル層と
であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2エピタキシャル層の厚みが1〜20nmであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2エピタキシャル層の厚みが1〜10nmであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2エピタキシャル層の厚みが5nmであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
Ge濃度が5〜100%であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
Ge濃度10〜65%であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
C濃度が0.5%より高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
C濃度が0.5〜1%であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
C濃度が0.8%であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
薄層歪緩和バッファの最上部に、SiGe/Siヘテロ構造をさらに有し、前記ヘテロ構造が歪調整されたSiGe層および歪シリコン層を含むことを特徴とする請求項1から請求項9の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
その最上部にIII−V族化合物を有することを特徴とする請求項1から請求項9の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1エピタキシャルSiGe層の下に追加エピタキシャルSi1−xGe:C層をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項9の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記追加エピタキシャルSi1−xGe:Cの下に、追加エピタキシャルSi1−xGeをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
半導体基板を提供するステップと、
前記半導体基板の少なくとも一部分上に、第1エピタキシャル層SiGeを、Ge濃度が前記第1層にわたって本質的に一定となるような形で付着させるステップと、
前記第1SiGeエピタキシャル層の最上部上に、少なくとも0.3%の炭素を組み込んだSiGeを成長させることにより、前記第2層SiGe:Cを、前記第1層におけるのと同様にGe濃度が前記SiGe:C層にわたって本質的に一定となるような形で付着させるステップと、
前記SiGe:C層の最上部上に、第2SiGeエピタキシャル層を、Ge濃度が前記第3層にわたって本質的に一定となるような形で付着させるステップと
を含むことを特徴とする薄層歪緩和バッファの成長方法。
【請求項15】
前記半導体基板がシリコンであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記Ge濃度が5〜100%であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記Ge濃度が10〜65%であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記C濃度が0.5%より高いことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記C濃度が0.5〜1%であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記C濃度が0.8%であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項21】
第1および第2先駆ガスが設けられ、前記第1先駆ガスが、Siを含む化合物、または、zおよびwが1〜4に等しいSiHClグループからの化合物を含み、第2先駆ガスが、Geを含む先駆化合物であり、前記層は、前記先駆ガスを利用して付着されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項22】
Cを含むいかなる化合物であれ、炭素を含むガスが供給されることを特徴とする請求項14に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記半導体基板の少なくとも一部分上の、前記第1エピタキシャルSiGe層の下に、追加エピタキシャルSi1−xGe:C層を付着する追加ステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記半導体基板の少なくとも一部分上の、前記追加エピタキシャルSi1−xGe:C層の下に、追加エピタキシャルSi1−xGe層を付着する追加ステップを含むことを特徴とする請求項23に従う方法。
【請求項25】
前記第3エピタキシャル層の上部に、追加シリコンキャップ層を付着するステップをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記半導体基板および前記3つのエピタキシャル層から成る構造が、最高温度が前記SiGe層の融点によって定義される、800℃以上の温度にさらされる追加ステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項27】
前記構造は、少なくとも前記追加層の1つをさらに含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
薄層歪緩和バッファの上部に歪調整SiGe層を付着する追加ステップを含むことを特徴とする請求項14から請求項27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記歪調整SiGe層の上部に歪シリコン層を付着する、追加ステップを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記3つのエピタキシャル層を付着させ、さらに、800℃以上の温度にさらすステップが、異なるステップ間において酸化雰囲気へさらすことなく実行されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記3つのエピタキシャル層を付着させ、さらに追加シリコンキャップ層を付着させ、さらに800℃以上の温度にさらすステップが、異なるステップ間において酸化雰囲気へさらすことなく実行されることを特徴とする請求項25または請求項26に記載の方法。
【請求項32】
全てのステップが、異なるステップ間において酸化雰囲気へさらすことなく実行されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項33】
ステップが、異なるステップ間において酸化雰囲気へさらすことなく、同じツール内で実行されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記基板がブランケットウエハであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項35】
前記基板がパターン加工されたウエハであることを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−524219(P2007−524219A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500420(P2006−500420)
【出願日】平成16年1月14日(2004.1.14)
【国際出願番号】PCT/BE2004/000009
【国際公開番号】WO2004/064130
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(591060898)アンテルユニヴェルシテール・ミクロ−エレクトロニカ・サントリュム・ヴェー・ゼッド・ドゥブルヴェ (302)
【氏名又は名称原語表記】INTERUNIVERSITAIR MICRO−ELEKTRONICA CENTRUM VZW
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】