説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】 ボイドの移動経路となるバウンダリーが顕著に低減されるため、SIV不良の発生を効果的に抑制することができ、信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】 相対的に広幅の第2銅配線110,126の上面において、銅のグレインが数10μm程度と非常に大きい。第2銅配線110,126の配線幅は0.3μm〜数10μm程度であるので、第2銅配線110,126の上面において配線幅方向のバウンダリーが顕著に低減され、第2銅配線110,126とビア113との接続部分にボイドが集中・合一して大きなボイドが形成されることを抑制することができ、SIVの発生が効果的に抑制される。相対的に狭幅の第1銅配線111,127の面方位はEM耐性を向上させるために主にCu(111)であり、相対的に広幅の第2銅配線110,126の面方位はSIV耐性を向上させるために主にCu(200)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅配線を適用した半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスにおいては、素子の高速動作性の要求からCu配線が広く用いられる。このような半導体装置の例として多層銅配線構造を有する半導体装置が挙げられる(特許文献1、特許文献2)
【0003】
図10(a)に、従来のCu配線の構造を示し、図10(b)に、その構造でのCu配線の面方位の一例を示す。図10は、銅配線の構造を模式的に示す図である。説明の都合上、縦横比を変更し、横方向を長くしている。図10(a)において、シリコン基板11上に、エッチングストッパー膜12、配線層間絶縁膜13が順に形成されている。エッチングストッパー膜12および配線層間絶縁膜13の一部が除去されており、その位置にCu拡散防止のためのバリアメタル15が形成され、バリアメタル15上にCu配線16が形成されている。また、Cu配線16上のビアホール層および該ビアホール層上に連続して形成されているCu配線層、Cu配線の下に設けられているコンタクトホール層の図示は省略されている。
【0004】
従来のシングルダマシンCu配線構造の製造プロセスの一例を以下に示す。
【0005】
まず、シリコン基板11上に、たとえば、SiN、SiC、もしくはSiCNからなる配線溝のエッチングストッパー膜12を成膜する。次に、エッチングストッパー膜12上に、配線層間絶縁膜13を成膜する。ここで、配線層間絶縁膜13として低誘電率膜を使用する場合には、さらに、その上にSiNもしくはSiOなどのハードマスクを成膜することもある。ついで、配線層間絶縁膜13にフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術により配線溝14を形成する(図11(a))。
【0006】
次に、配線溝14内に、PVD技術などを用いて、バリアメタル膜15(Ta/TaN)を成膜し、ついでCuを成膜する。続いて、電解めっき技術を用いてCuめっきを行うことで配線溝14内をCuで埋設し、グレイン成長のために150℃以上の温度でアニールを行う。次に、CMP技術などを用いてCu配線16を形成する(図11(b))。
【0007】
ついで、Cu配線16上に、CVD技術などを用いて、たとえば、SiN、SiC、SiCNなどのCu拡散防止用のバリア膜17を成膜する。続いて、ビア層間絶縁膜18を成膜する。ビア層間絶縁膜18を形成した後、ビア層間絶縁膜18にフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によりビアホール19を形成する(図11(c))。
【0008】
続いて、ビアホール19内にPVD技術によって、Ta/TaNなどのバリアメタル膜22を成膜し、次に、Cuを成膜する。次に、電解めっき技術を用いてCuめっきを行うことで溝内をCuで埋設し、アニール等を行った後、CMPを行ってビア21を形成する(図11(d))。
【0009】
この後、図11(a)〜図11(b)の工程を行うことで3層目の銅配線層が形成され、シングルダマシン構造のCu配線が形成される(図11(e))。
【0010】
【特許文献1】特開2001−68475号公報
【特許文献2】米国特許6291885号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の銅配線構造では、いわゆるStress Induced Void(以下SIV)とよばれる現象が起こることがあり、かかる現象の抑制が求められていた。SIVとは、大きなボイドが形成される現象であり、特に、銅配線と、その上部に接続するビアプラグとの界面近傍において発生することが多い。SIVが発生すると、コンタクト不良や配線抵抗増加を引き起こし、半導体装置の信頼性を著しく低下させる要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
こうしたSIVの発生を抑制するため、本発明者は、SIVの発生するメカニズムを鋭意検討し、以下の推論を得るに至った。すなわち、銅配線中に発生したボイドは、バウンダリーに沿って移動することが可能である。このため、銅配線に応力が加わった場合、応力分布の状況に対応して、銅配線中の特定の部位に向けてボイドが移動する。したがって、銅配線構造では、銅配線と、その上部に接続するビアプラグとの界面近傍にボイドが集中・合一し、大きなボイドが形成されるに至る。以上がSIV発生のメカニズムと推察した。
【0013】
本発明者が検討した結果、従来の銅配線構造においては、Cu(111)が多いことがわかった。この面方位を有するグレインは、グレインサイズが比較的小さいため、銅配線上面において、バウンダリーが比較的多数存在する。そのため、このバウンダリーに沿って、ボイドが配線とビアプラグとの界面近傍に移動し、SIVを引き起こす。そこで本発明者は、グレインサイズを大きくしバウンダリーを低減することで、ボイドの集中・合一を阻害し、SIVの抑制を図ることに想到した。以下、本発明の構成について説明する。
【0014】
本発明によれば、半導体基板と、該半導体基板上に設けられた絶縁膜と、該絶縁膜中において同一水準に設けられた複数の銅配線と、を備える半導体装置であって、銅配線は、相対的に狭幅の第1銅配線と、相対的に広幅の第2銅配線と、を含み、第1銅配線の上面は、主として銅の(111)面により構成され、第2銅配線の上面は、主として銅の(200)面により構成されていることを特徴とする半導体装置が提供される。
【0015】
本発明においては、第2銅配線の上面が、グレインが大きくバウンダリー(グレインの境界)の数が少ない銅の(200)面により構成される。上面が(200)面となる銅グレインは、たとえば、数10μm程度の大きさを有する。銅配線の幅は、通常、0.1μm〜数10μm程度であるから、配線幅方向には、ほとんどバウンダリーが存在しない。このように、本発明によれば、ボイドの移動経路となるバウンダリーが顕著に低減されるため、SIVの発生が効果的に抑制される。また、第1銅配線の上面が、密度が高い銅の(111)面により構成される。そのため、本発明によれば、エレクトロマイグレーションが効果的に抑制される。
【0016】
本発明によれば、半導体基板を用意し、該半導体基板上に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜を選択的に除去し、相対的に狭幅の第1配線溝と、相対的に広幅の第2配線溝とを形成する工程と、Taターゲットを用い基板バイアスを印加せずに窒素雰囲気中でスパッタリング法による成膜を行うことで、第1配線溝の内壁にTa膜を形成するとともに第2配線溝の内壁にTaN膜を形成する工程と、第1配線溝および第2配線溝を埋め込むように、めっき法により銅膜を形成する工程と、銅膜をアニールした後、配線溝外部の銅膜を除去することにより、第1配線溝中に第1銅配線を形成するとともに第2配線溝中に第2銅配線を形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0017】
本発明においては、基板バイアスを印加せずに窒素雰囲気中でスパッタリング法による成膜を行うことで、第1配線溝の内壁に、銅の(111)面が形成されやすいTa膜と、第2配線溝の内壁に、銅の(200)面が形成されやすいTaN膜とを同一の工程で形成することができる。このため、上述した構造の銅配線構造が安定的に得られる。すなわち、狭幅の配線溝には(111)配向の銅膜が、広幅の配線溝には(200)配向の銅膜が設けられた銅配線構造を安定的に形成することができる。
【0018】
本発明において、(111)配向の銅とは、上面の面方位が(111)の銅のことをいい、(200)配向の銅とは、上面の面方位が(200)の銅のことをいう。
【0019】
本発明によれば、半導体基板を用意し、該半導体基板上に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜を選択的に除去し、相対的に狭幅の第1配線溝と、相対的に広幅の第2配線溝とを形成する工程と、絶縁膜の上面全面にめっき膜を形成するめっき工程と、めっき膜をアニールした後、配線溝外部のめっき膜を除去することにより、第1配線溝中に第1銅配線を形成するとともに第2配線溝中に第2銅配線を形成する工程と、を含み、めっき工程は、相対的に低い成膜速度で第1配線溝に第1銅膜を埋設した後に、相対的に高い成膜速度で第2配線溝に第2銅膜を埋設することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0020】
本発明においては、相対的に低い成膜速度で第1配線溝に第1銅膜を埋設した後に、相対的に高い成膜速度で第2配線溝に第2銅膜を埋設することで、第1配線溝における銅の(111)面の形成と第2配線溝における銅の(200)面の形成とを連続した工程で形成することができる。このため、上述した構造の銅配線構造が安定的に得られる。すなわち、狭幅の配線溝には(111)配向の銅膜が、広幅の配線溝には(200)配向の銅膜が設けられた銅配線構造を安定的に形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ボイドの移動経路となるバウンダリーが顕著に低減されるため、SIV不良の発生を効果的に抑制することができ、信頼性の高い半導体装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、以下の実施の形態において、面方位とは銅配線の上面の面方位であるとする。さらに、以下の実施の形態において、一つの層間絶縁膜中には2つの銅配線が図示されているが、実際には多くの銅配線が設けられている。
【0023】
第1の実施の形態
図1(a)は、本実施形態に係る半導体装置100の構造を説明するための断面図であり、図1(b)は、半導体装置100の銅配線の面方位を説明するための断面図である。
【0024】
図1(a)に示すように、半導体装置100は、シリコン基板などの半導体基板102上に、第1層から第3層で構成される多層銅配線が設けられたシングルダマシン構造を有する。第1層の第2銅配線110と第1銅配線111は、エッチングストッパー膜104上の層間絶縁膜108に設けられた第2配線溝103と第1配線溝105の内部に銅膜が埋設された構成をとっている。層間絶縁膜108と第2銅配線110および第1銅配線111との間には、それぞれCuの拡散を防止するためのバリアメタル106とバリアメタル107が介在している。第2銅配線110の上部には第2層を構成するビア113が接続されている。第3層は第1層と同様の構造を有し、第2層の上に構成されている。第3層の第2銅配線126の下部にはビア113が接続されている。第2銅配線110と第1銅配線111とは層間絶縁膜108中において同一水準に設けられている。
【0025】
エッチングストッパー膜104は、配線溝のエッチング阻止膜としての機能を有し、たとえば、SiN、SiC、SiCN、SiONなどにより構成される。
【0026】
層間絶縁膜108は、たとえば、SiO、または、SiOF、SiOC、MSQ(Methyl Silses Quioxane)などの低誘電率膜などにより構成される。
【0027】
バリアメタル106およびバリアメタル120は、TaN膜により構成され、それぞれ、第2配線溝103の内壁および第2配線溝125の内壁を覆うように形成されている。また、バリアメタル106およびバリアメタル120の上に、第2銅配線110および第2銅配線126が形成される。
【0028】
本発明は、相対的に狭幅の第1銅配線については、上面を、主として銅の(111)面により構成し、相対的に広幅の第2銅配線については、上面を、主として銅の(200)面により構成するものである。本実施形態における第2銅配線110および第2銅配線126が、上記広幅の配線に該当する。また、第1銅配線111および第1銅配線127が上記狭幅の配線に該当する。
第2銅配線110および第2銅配線126は、以下の条件を満たす。ここで、ビア113の径をr、第2銅配線110および第2銅配線126の幅をD、第2銅配線110および第2銅配線126の高さをCとする。また、C/Dをアスペクト比と定義する。
(i)配線幅Dは0.3μm以上
(ii)3r<D
(iii)C/D<0.5
一方、第1銅配線111および第1銅配線127は、以下の条件を満たす。
(i)配線幅は0.3μm未満
【0029】
ここで、第2銅配線110、第1銅配線111、第2銅配線126、および第1銅配線127のそれぞれの上面のCuの面方位は、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)法を用いることによって解析することができる。
【0030】
バリアメタル107およびバリアメタル121は、Ta膜により構成され、それぞれ、第1配線溝105の内壁、第1配線溝129の内壁を覆うように形成されている。また、バリアメタル107およびバリアメタル121の上に、第1銅配線111および第1銅配線127が形成される。
【0031】
第2銅配線110の上面および第2銅配線126の上面は、グレインが数10μm程度と非常に大きく、配線幅は0.3μm〜数10μm程度なので、配線幅方向のバウンダリーが少ない。そのため、SIV不良の発生を抑制することができる。SIV不良とは、たとえば、太幅の銅配線(ビア径の約3倍以上の幅)において、ストレスによって、銅配線中に生じたボイドがグレインバウンダリーを伝ってビア直下に集まり、大きなボイドを形成し、ビアと配線との間の導通不良を引き起こすものである。グレインが大きく、バウンダリーが少ない銅として、面方位が(200)である銅が用いられ、第2銅配線110の上面および第2銅配線126の上面は、主として、Cu(200)面により構成される。
【0032】
第1銅配線111の上面および第1銅配線127の上面は、主として、Cu(111)面により構成され、配線を構成するCuグレインのサイズは0.1μm以下である。ここで、(111)は、稠密に配列される面方位である。そのため、第1銅配線111および第1銅配線127は、Cu(200)面などにより構成される銅配線と比較して密度が大きくなる。したがって、エレクトロマイグレーション耐性を向上させることができる。
【0033】
以下、図2から図6を用いて、本実施形態に係る半導体装置100の製造工程を説明する。
【0034】
まず、半導体基板102上に、エッチングストッパー膜104を成膜し、その上に層間絶縁膜108を成膜する(図2(a))。ここで、半導体基板上にトランジスタを形成する工程については図示を省略する。
【0035】
次に、層間絶縁膜108に、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、相対的に幅広の第2配線溝103および相対的に幅狭の第1配線溝105を形成する(図2(b))。
【0036】
ついで、層間絶縁膜108上と、第2配線溝103の内壁および第1配線溝105の内壁とに、バリアメタル106(TaN膜)とバリアメタル107(Ta膜)を成膜する。本実施形態では、成膜方法としてスパッタリング法を用い、Taをターゲットとして窒素ガス雰囲気中で成膜を行う。次に、銅のシード層(不図示)を形成する。ここで、バリアメタル106およびバリアメタル107を形成する際には、半導体基板102へはバイアスが印加されない。本発明者の知見によると、基板へのバイアスが無印加であるときには、相対的に狭幅の第1配線溝105には窒素が入りにくくなり、第1配線溝105に形成されるバリアメタル107は、主としてTa膜により構成されることとなる。一方、第1配線溝105と比較して相対的に広幅の第2配線溝103には窒素が入りやすいため、第2配線溝103に形成されるバリアメタル106は、主としてTaN膜により構成されることとなる(図2(c))。本発明者が検討した結果、Ta膜上には、(111)配向の銅膜が形成される傾向が強いことがわかった。また、本発明者は、検討の結果、主としてTaN膜により構成されるバリアメタル106上においては、めっき法などにより成膜された銅膜はアニ−ル処理によって面方位が(200)になりやすいとの知見を得た。これは、TaN膜はアモルファスに近いので、その上に形成される銅膜もアモルファス状となり、銅膜をアニ−ル処理した後に面方位が(200)になる銅膜が形成されやすくなることによるものと推察される。
【0037】
次に、電解めっき技術を用いて、層間絶縁膜108の上面全面とバリアメタル106およびバリアメタル107上とに銅をめっきする。本実施形態においては、最初に低電流を比較的長時間流して銅をめっきし、次に低電流とは逆向きに電流を短時間流して逆エッチングをし、ついで、高電流を比較的短時間流して銅をめっきする方法が用いられる。
【0038】
本実施形態においては、最初に1アンペア程度の低電流を110秒間程度流す。こうすることにより、狭幅の第1配線溝105に第1銅膜144を埋設する。このとき、広幅の第2配線溝103には、銅膜142が第2配線溝103の表層近傍に薄くめっきされるが、第2配線溝103が埋まるまでには至らない(図3(a))。次に、逆エッチングをするために、6.32アンペア程度の電流を低電流の向きとは逆方向に1.5秒間程度流す。ついで、30アンペア程度の高電流を低電流と同じ方向に13秒間流す。こうすることにより、広幅の第2配線溝103を第2銅膜143で完全に埋設する(図3(b))。最初に低電流を用いて、相対的に低い成膜速度でめっきすることで、狭幅の第1配線溝105にアニール処理の際に面方位が(111)になりやすい第1銅膜144が形成される。また、高電流を用いて、相対的に高い成膜速度でめっきすることで、太幅の第2配線溝103に第2銅膜143が埋設される。このとき、成膜速度が高いため、第2銅膜143には不純物が取り込まれにくい。このため、アニール処理後に、グレインが巨大になるとともに、面方位が(200)になりやすい銅膜が形成される。低電流を流す際の積算電流値と高電流を流す際の積算電流値とを比較すると、高電流を流す際の積算電流値の方が大きい。ここで、積算電流値とは、電流値と電流を流した時間との積のことである。
【0039】
次に、150℃以上の温度で第2銅膜143に対してアニールを行い、グレインを成長させるとともに上面の面方位を(200)にする。こうすることにより、第2配線溝103を埋設する第2銅膜143の上面の銅は、数10μm程度の巨大なグレインを有する。そのため、第2銅膜143のバウンダリーは少ない。次に、CMPにより、第2配線溝103および第1配線溝105の外部の銅膜を除去する。こうすることにより、第2銅配線110および第1銅配線111を形成する(図3(c))。ここで、第2銅配線110の上面を構成する銅は、数10μm程度の巨大なグレインを有するので、第2銅配線110の配線幅方向のバウンダリーは少ない。
【0040】
次に、エッチングストッパー膜112を成膜し、その上にビア層間絶縁膜116を成膜する(図3(d))。
【0041】
ついで、ビア層間絶縁膜116内に、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いてビアホール115を形成する(図4(a))。
【0042】
続いて、ビアホール115内に、主としてTa膜により構成されるバリアメタル114を成膜する(図4(b))。本実施形態では、成膜方法としてスパッタリング法を用い、Taをターゲットとして成膜を行う。次に、Cuシード層(不図示)を成膜する。
【0043】
次に、電解めっき技術を用いて、Cuめっきを行うことでビアホール115内をCuで埋設し、アニール処理を行った後、CMPを行ってビア113を形成する(図4(c))。アニール処理後、ビア113を構成する銅の上面の面方位は主に(111)となる。
【0044】
次に、エッチングストッパー膜118を成膜し、その上に層間絶縁膜124を成膜する(図5(a))。
【0045】
ついで、層間絶縁膜124に、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術により、相対的に広幅の第2配線溝125および相対的に狭幅の第1配線溝129を形成する(図5(b))。
【0046】
続いて、第1層を形成する工程と同様に、層間絶縁膜124上と、第2配線溝125の内壁および第1配線溝129の内壁とに、バリアメタル120(TaN膜)とバリアメタル121(Ta膜)を成膜する。成膜方法としては、窒素ガス雰囲気中でTaをターゲットとしたスパッタリング法が用いられる。次に、銅のシード層(不図示)を成膜する。ここで、バリアメタル120およびバリアメタル121が形成される際には、第1層を形成する工程と同様に、半導体基板102へのバイアスが印加されない(図5(c))。このとき、第1層同様、相対的に広幅の第2配線溝125内に形成されるバリアメタル120は、主としてTaN膜により構成されることとなる。一方、相対的に狭幅の第1配線溝129内に形成されるバリアメタル121は、主としてTa膜により構成されることとなる。
【0047】
次に、第1層を形成する工程と同様の電解めっき技術を用いて、銅膜147、第2銅膜146および第1銅膜148を形成する(図6(a))。ついで、第2銅膜146に150℃以上の温度でアニ−ルを行って、第2銅膜146を構成する銅のグレインを成長させるとともに上面の面方位を(200)にする。次に、CMPを行って、第2配線溝125および第1配線溝129の外部の銅膜を除去する。こうすることにより、第1銅配線127よりも相対的に広幅の第2銅配線126および第2銅配線126よりも相対的に狭幅の第1銅配線127を形成する(図6(b))。ここで、第2銅配線126の上面の銅は、数10μm程度の巨大なグレインを有する。また、第2銅配線の幅は0.3μm〜数10μm程度である。そのため、第2銅配線126の配線幅方向のバウンダリーは少ない。
【0048】
次に、層間絶縁膜124、第2銅配線126、および第1銅配線127の上に、エッチングストッパー膜128を形成する(図6(c))。
【0049】
以上のプロセスにより、半導体装置100が完成する。
【0050】
以下、本実施形態に係る半導体装置100およびその製造方法の効果について説明する。
【0051】
本実施形態においては、相対的に広幅の第2銅配線110および第2銅配線126の上面において、銅のグレインが数10μm程度と非常に大きい。第2銅配線110および第2銅配線126の配線幅は0.3μm〜数10μm程度であるので、第2銅配線110および第2銅配線126の上面において配線幅方向のバウンダリーは少ない。このため、ボイドの移動経路となるバウンダリーが顕著に低減されるため、第2銅配線110および第2銅配線126とビア113との接続部分にボイドが集中・合一し、大きなボイドが形成されることを抑制することができる。したがって、SIVの発生が効果的に抑制される。
【0052】
一般に、相対的に広幅の第2銅配線110および第2銅配線126においてはSIV不良が問題となる一方、相対的に狭幅の第1銅配線111および第1銅配線127においては、SIVよりもむしろエレクトロマイグレーションの発生が問題となる。ここで、本実施形態によれば、狭幅の銅配線が抱える問題と広幅の銅配線が抱える問題とを同時に解決できる。すなわち、本実施形態では、上記製造方法により、広幅の配線溝に(200)配向の銅配線を形成するとともに、狭幅の配線溝に(111)配向の銅配線を形成している。これにより、広幅の銅配線(第2銅配線110および第2銅配線126)におけるSIV不良の発生を抑制することができ、狭幅の銅配線(第1銅配線111および第1銅配線127)におけるエレクトロマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態においては、半導体基板へのバイアスを印加せずに、層間絶縁膜108上と、第2配線溝103の内壁および第1配線溝105の内壁とに、バリアメタル106(TaN膜)とバリアメタル107(Ta膜)とを同一工程で成膜する。本実施形態では、成膜方法としてスパッタリング法を用い、Taをターゲットとして窒素ガス雰囲気中で成膜を行う。ここで、本発明者の知見によると、相対的に狭幅の配線溝(第1配線溝105および第1配線溝129)には窒素が入りにくく、Taにより構成されるバリアメタル107およびバリアメタル121が形成されやすい。また、Ta膜上には、(111)配向の銅膜が形成されやすく、アニール処理後、面方位が(111)となる銅膜が形成されやすいことが知られている。したがって、第1銅配線111および第1銅配線127におけるエレクトロマイグレーションの発生を抑制することができる。すなわち、密度が高い、面方位が(111)である銅によって構成される銅配線は、高いエレクトロマイグレーション耐性を有するからである。一方、本発明者の知見によると、相対的に広幅の配線溝(第2配線溝103および第2配線溝125)には窒素が入り込みやすく、主としてTaNにより構成されるバリアメタル106およびバリアメタル120が形成されやすい。また、TaN膜上には、(200)配向の銅膜が形成されやすい。ここで、TaN膜の結晶構造はアモルファスに近いので、その上に形成される銅膜もアモルファス状となりやすいと考えられる。そのため、TaN膜上には、アニール処理後、面方位が(200)となる銅膜が形成されやすいと考えられるからである。したがって、広幅の銅配線(第2銅配線110および第2銅配線126)におけるSIV不良の発生を抑制することができる。すなわち、銅のグレインが数10μm程度と大きく、配線幅が0.3μm〜数10μm程度であるため、配線幅方向のバウンダリーが少ないからである。
【0054】
また、本実施形態においては、複数の段階にわたる電解めっき技術を用いている。まず、低電流めっきにより、狭幅の配線溝(第1配線溝105および第1配線溝129)は、第1銅膜144および第1銅膜148で完全に埋設され、広幅の配線溝(第2配線溝103および第2配線溝125)は、配線溝の表層近傍に銅膜142および銅膜147が薄く形成される。短時間の逆エッチングを経た後、高電流めっきにより、相対的に広幅の配線溝は第2銅膜143および第2銅膜146で完全に埋設される。最初に低電流めっきを用いることで、狭幅の配線溝には、(111)配向の銅膜を形成することができる。また、高電流を用いて、成膜速度を高くして、めっきすることで、不純物が取り込まれにくくなる。ここで、不純物とは、たとえば、めっき液中のレベラーおよびキャリアなどに含まれるC(炭素)、S(硫黄)、O(酸素)などのことをいう。そのため、広幅の配線溝には、(200)配向の銅膜を形成することができる。第2銅膜143および第2銅膜146が形成された後にアニール処理を行い、CMPを用いて配線溝外部の銅膜を除去する。こうすることにより、狭幅の銅配線(第1銅配線111および第1銅配線127)におけるエレクトロマイグレーションの発生を抑制することができる。また、広幅の銅配線(第2銅配線110および第2銅配線126)におけるSIVの発生を抑制することができる。
【0055】
第2の実施の形態
図7は、半導体装置100の製造方法の他の一例を説明するための工程断面図である。本実施形態において、相対的に広幅の配線溝、相対的に狭幅の配線溝、アスペクト比、およびビアの径と相対的に広幅の配線溝の幅の定義は、第1の実施の形態と同様とする。
【0056】
まず、第1の実施形態において説明した図2(b)の工程の後に、層間絶縁膜108上と第2配線溝103の内壁および第1配線溝105の内壁とに、バリアメタル136(Ta膜)を成膜する。本実施形態では、成膜方法としてスパッタリング法を用い、Taをターゲットとして窒素ガス雰囲気中で成膜を行う。次に、銅のシード層(不図示)が形成される。ついで、電解めっき技術により、シード層の上から銅膜130および銅膜139が成膜される(図7(a))。ここで、第1配線溝105は、(111)配向の銅膜139によって完全に埋設される。一方、相対的に広幅の第2配線溝103においては、配線溝の半分程度の深さが銅膜130によって埋められる。ここで、第2配線溝103における銅膜130の膜厚をtとする。
【0057】
次に、Cuスパッタチャンバ内において、バイアススパッタ銅層132が形成される。本実施形態においては、成膜方法としてスパッタリング法を用い、半導体基板102にバイアスを印加し、スパッタ成長表面をアルゴンイオンで照射しながら成膜を行う。こうすることにより、銅膜130の上にバイアススパッタ銅層132が形成される。ここで、バイアススパッタ銅層132の膜厚をtとし、tがtより大きくなるようにバイアススパッタ銅層132が形成される。すなわちt>tとなるように、バイアススパッタ銅層132が形成される(図7(b))。
【0058】
ついで、結晶制御のために、バイアススパッタ銅層132および銅膜130に、アルゴン雰囲気中、温度400℃の条件下で30分間の熱処理が行われる。熱処理により、バイアススパッタ銅層132および銅膜130の面方位が(200)になるとともに、数100μm程度の巨大なグレインが形成される。こうすることにより、グレインが大きく、バウンダリーの数が少ない、(200)配向の単結晶の銅膜134を形成することができる。また、銅膜139には、150℃程度の温度でアニール処理が行われる。アニール処理後、銅膜139を構成する銅の上面の面方位は主に(111)となる(図7(c))。
【0059】
続いて、CMPなどを用いて、第2配線溝103および第1配線溝105の外部の銅を除去する。こうすることにより、第2銅配線138および第1銅配線140を形成することができる(図7(d))。ここで、第2銅配線138の上面を構成する銅は、数100μm程度の巨大なグレインを有するので、第2銅配線138の配線幅方向のバウンダリーは少ない。
【0060】
次に、第1の実施の形態で説明した図3(d)から図6(c)までの工程のうち、銅配線の形成を本実施形態で説明した方法で行うことにより半導体装置100を完成することができる。
【0061】
本実施形態において、バリアメタルとしてTa膜を成膜する形態について説明したが、W膜、Ti膜、Nb膜など他のバリアメタル膜であってもよい。
【0062】
以下、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の効果について説明する。
【0063】
本実施形態において、銅膜130とバイアススパッタ銅層132に400℃程度の熱処理を施す。そのため、バイアススパッタ銅層132および銅膜130において、銅のグレインが大きくなるとともに、銅の面方位が(200)に変化する。こうすることにより、バウンダリーの数が少ない単結晶の銅膜134を形成することができる。そのため、第2銅配線138における配線の低抵抗化およびエレクトロマイグレーション耐性の向上を可能にすることができる。
【0064】
また、第1の実施形態同様、相対的に広幅の第2銅配線138において、銅配線とビアとの接続部分にボイドが集中することが原因となって起こるSIV不良の発生を抑制することができる。さらに、狭幅の第1銅配線140においてSIV不良の発生を抑制するとともに、エレクトロマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0065】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0066】
たとえば、上記実施形態においては、シングルダマシン構造を有する半導体装置100について説明したが、デュアルダマシン構造を有する半導体装置について用いてもよい。
【0067】
また、上記第1の実施形態において、銅配線を複数の段階にわたる電解めっき技術によって形成する際に、低電流を流す段階と、高電流を流す段階との間に逆向きに電流を流す段階を設けていたが、この段階は省略してもよい。
【実施例】
【0068】
実施例1
第1の実施形態と同様の方法を用いて、相対的に狭幅の配線溝にはTa膜を形成し、相対的に広幅の配線溝にはTaN膜を形成した。また、低電流を用いためっきにより、狭幅の配線溝に銅膜を埋設し、高電流を用いためっきにより、広幅の配線溝に銅膜を埋設した。広幅の配線溝には、幅が10μmの相対的に広幅の第2銅配線、狭幅の配線溝には、幅が0.2μmの相対的に狭幅の第1銅配線を含む多層銅配線構造を作製した。第1銅配線の大部分は、(111)面配向および(511)面配向であった。また、EBSP法を用いて確認したところ、第2銅配線の大部分は、(200)面配向であった。
【0069】
図8に、幅が10μmの配線溝に形成された第2銅配線の構造を示すFIBSEM写真を示す。図8中、矢印で示した部分をEBSP法を用いて撮影した写真が図9である。図9に示すように、本実施例において、第2銅配線の大部分は、(200)面配向であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施の形態に係る半導体装置の構造を模式的に示した断面図である。
【図2】実施の形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示した断面図である。
【図3】実施の形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示した断面図である。
【図4】実施の形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示した断面図である。
【図5】実施の形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示した断面図である。
【図6】実施の形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示した断面図である。
【図7】実施の形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示した断面図である。
【図8】実施例に係る半導体装置の構造を示した写真である。
【図9】実施例に係る半導体装置の構造を示した写真である。
【図10】従来の技術に係る半導体装置の構造を模式的に示した断面図である。
【図11】従来の技術に係る半導体装置の製造工程を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0071】
100 半導体装置
102 半導体基板
103 第2配線溝
104 エッチングストッパー膜
105 第1配線溝
106 バリアメタル
107 バリアメタル
108 層間絶縁膜
110 第2銅配線
111 第1銅配線
112 エッチングストッパー膜
113 ビア
114 バリアメタル
115 ビアホール
116 ビア層間絶縁膜
118 エッチングストッパー膜
120 バリアメタル
121 バリアメタル
124 層間絶縁膜
125 第2配線溝
126 第2銅配線
127 第1銅配線
128 エッチングストッパー膜
129 第1配線溝
130 銅膜
132 バイアススパッタ銅層
134 銅膜
136 バリアメタル
138 第2銅配線
139 銅膜
140 第1銅配線
142 銅膜
143 第2銅膜
144 第1銅膜
146 第2銅膜
147 銅膜
148 第1銅膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
該半導体基板上に設けられた絶縁膜と、
該絶縁膜中において同一水準に設けられた複数の銅配線と、
を備える半導体装置であって、
前記銅配線は、
相対的に狭幅の第1銅配線と、
相対的に広幅の第2銅配線と、
を含み、
前記第1銅配線の上面は、主として銅の(111)面により構成され、前記第2銅配線の上面は、主として銅の(200)面により構成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1銅配線の配線幅は0.3μm未満であり、前記第2銅配線の配線幅は0.3μm以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第2銅配線の上面に接続して設けられたビアプラグをさらに備え、
前記ビアプラグの直径をr、前記第2銅配線の配線幅をDとしたとき、
3r<D
なる関係を満たすことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の半導体装置において、
前記第2銅配線の高さをC、前記第2銅配線の配線幅をDとしたとき、
C/D<0.5
なる関係を満たすことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
半導体基板を用意し、該半導体基板上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜を選択的に除去し、相対的に狭幅の第1配線溝と、相対的に広幅の第2配線溝とを形成する工程と、
Taターゲットを用い基板バイアスを印加せずに窒素雰囲気中でスパッタリング法による成膜を行うことで、前記第1配線溝の内壁にTa膜を形成するとともに前記第2配線溝の内壁にTaN膜を形成する工程と、
前記第1配線溝および前記第2配線溝を埋め込むように、めっき法により銅膜を形成する工程と、
前記銅膜をアニールした後、配線溝外部の前記銅膜を除去することにより、前記第1配線溝中に第1銅配線を形成するとともに前記第2配線溝中に第2銅配線を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
半導体基板を用意し、該半導体基板上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜を選択的に除去し、相対的に狭幅の第1配線溝と、相対的に広幅の第2配線溝とを形成する工程と、
前記絶縁膜の上面全面にめっき膜を形成するめっき工程と、
前記めっき膜をアニールした後、配線溝外部の前記めっき膜を除去することにより、前記第1配線溝中に第1銅配線を形成するとともに前記第2配線溝中に第2銅配線を形成する工程と、
を含み、
前記めっき工程は、相対的に低い成膜速度で前記第1配線溝に第1銅膜を埋設した後に、相対的に高い成膜速度で前記第2配線溝に第2銅膜を埋設することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−49641(P2006−49641A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229779(P2004−229779)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】