説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】半導体チップと、前記半導体チップと電気的に接続された、金属を主構成材料とする複数のリードと、前記半導体チップを封止する封止体とを備えた半導体装置において、リードと封止体(モールド封止体)の密着性を向上させ、剥離を起こさない半導体装置を提供することにある。
【解決手段】半導体チップ5と、前記半導体チップと電気的に接続された、金属を主構成材料とする複数のリード3と、前記半導体チップを封止する封止体2とを備えた半導体装置において、リード3と封止封止体(モールド封止体)の密着性を向上させるため、リード3の表面材料と封止体2の組合せとして、格子整合性の良い材料の組合せを用い、アセン類を主構材料とする封止体2を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、有機物を半導体チップを封止する封止体として使用する構造を有する半導体装置およびその製造に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開平9−195068号公報)には、Cu合金からなるリード母材に下地めっきとしてCuストライクめっきをした後にワイヤボンディング用ないしダイボンディング用の銀,金,パラジウムなどを部分めっきし、リードが接続された半導体チップを封止体等で封止する方法が公開されている。また、特許文献2(特開2003−282798号公報)には、放熱性を向上させるために、熱伝導率の高い熱硬化性樹脂をマトリックスとし、無機セラミックス粉末をフィラー(充填材)とした封止体を用いる半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−195068号公報
【特許文献2】特開2003−282798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の携帯機器の発達に伴い、高性能化,小型軽量化のニーズから、半導体装置における実装密度がますます増大してきている。それに従い、パッケージ構造も、DIP(Dual Inline Plastic Package),SOP(Small Outline Plastic Package),SOJ(Small Outline J-lead Plastic Package),QFP(Quad Flat Plastic Package),TSOP(Thin Small Out-line Plastic package),TSOJ(Thin Small Outline J-lead Plastic Package),TQFP(Thin Quad Flat Plastic Package)とさまざまな構造が開発されている。こうした中で、チップの発熱密度が増加してきているため、特許文献2(特開2003−282798号公報)に記載されているような熱伝導率の高い熱硬化性樹脂をマトリックスとし、無機セラミックス粉末をフィラー(充填材)とした封止体を用いても、十分な放熱性が確保できなくなってきている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、放熱性を向上させた半導体装置を提供することにある。また、本発明の目的は、放熱性を向上させた半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
半導体チップと、前記半導体チップと電気的に接続された、金属を主構成材料とする複数のリードと、前記半導体チップを封止する封止体とを備えた半導体装置において、発明者らは、放熱性を向上させるための手段を得るために鋭意研究を行った結果、リードの表面材料と封止体用マトリックス有機物の組合せとして、リード表面材料と封止体マトリックス有機物の界面部ヤング率が、リード表面材料のヤング率よりも小さく、封止体用マトリックス有機物のヤング率よりも大きくなるような組合せを用いることが有効であることを見出した。また、封止体用マトリックス有機物とその中に充填材(フィラー)として含有させる無機セラミックス粉末の組合せとして、無機セラミックス粉末と封止体用マトリックス有機物の界面部ヤング率が、無機セラミックス粉末のヤング率よりも小さく、封止体用マトリックス有機物のヤング率よりも大きくなるような組合せを用いることが有効であることを見出した。
【0007】
具体的には、
(1)半導体チップと、前記半導体チップと電気的に接続された、金属を主構成材料とす る複数のリードと、前記半導体チップを封止する封止体とを備えた半導体装置におい て、前記封止体としてアセン類をマトリックス有機物とする材料を用いることが有効 である。
(2)半導体チップと、前記半導体チップと電気的に接続された、金属を主構成材料とす る複数のリードと、前記半導体チップを封止する封止体とを備えた半導体装置におい て、前記封止体としてテトラセン,ペンタセン,ヘキサセンの群から選ばれる少なく ともひとつのアセン類をマトリックス有機物とする材料を用いることが有効である。
(3)半導体チップと、前記半導体チップと電気的に接続された、金属を主構成材料とす る複数のリードと、前記半導体チップを封止する封止体とを備えた半導体装置におい て、前記封止体としてテトラセン,ペンタセン,ヘキサセンの群から選ばれる少なく ともひとつのアセン類をマトリックス有機物とする材料を用い、前記封止体に無機セ ラミックス粉末をフィラー(充填材)として含有させることが有効である。
(4)半導体チップと、前記半導体チップと電気的に接続された、金属を主構成材料とす る複数のリードと、前記半導体チップを封止する封止体とを備えた半導体装置におい て、前記封止体としてテトラセン,ペンタセン,ヘキサセンの群から選ばれる少なく ともひとつのアセン類をマトリックス有機物とする材料を用い、前記封止体に窒化ホ ウ素,窒化アルミニウムの群から選ばれる少なくともひとつからなる無機セラミック ス粉末をフィラー(充填材)として含有させることが有効である。
(5)半導体チップと、前記半導体チップと電気的に接続された、金属を主構成材料とす る複数のリードと、前記半導体チップを封止する封止体とを備えた半導体装置におい て、前記封止体としてテトラセン,ペンタセン,ヘキサセンの群から選ばれる少なく ともひとつのアセン類をマトリックス有機物とする材料を用い、前記アセン類が持つ CHのボンドのうち12%以上85%以下をCOOH,COH,CNH2,CSに置 き換え、前記封止体に窒化ホウ素,窒化アルミニウムの群から選ばれる少なくともひ とつからなる無機セラミックス粉末をフィラー(充填材)として含有させることがさ らに有効である。
(6)半導体チップと、前記半導体チップと電気的に接続された、金属を主構成材料とす る複数のリードと、前記半導体チップを封止する封止体とを備え、前記複数のリード のそれぞれの一部が前記封止体から露出するアウターリード部分と封止体に埋め込ま れたインナーリード部分を有する半導体装置において、前記封止体としてテトラセン ,ペンタセン,ヘキサセンの群から選ばれる少なくともひとつのアセン類をマトリッ クス有機物とする材料を用い、前記アセン類が持つCHのボンドのうち12%以上8 5%以下をCOOH,COH,CNH2,CSに置き換え、前記封止体に窒化ホウ素 ,窒化アルミニウムの群から選ばれる少なくともひとつからなる無機セラミックス粉 末をフィラー(充填材)として含有させ、さらに前記封止体にエポキシ樹脂,ポリエ ステル樹脂,フェノール樹脂,アクリル樹脂の群から選ばれる少なくともひとつから なる樹脂を添加物として含有させ、前記インナーリード部分の表面材料に銅またはパ ラジウムを主構成材料とする材料を用いることがさらに有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放熱性を向上させ、不良を起こさない半導体装置を提供できる。また、本発明の目的は、信頼性の高い半導体装置を提供できる。さらに、本発明の目的は、歩留りの高い半導体製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体装置の外観を示す図である。
【図2】図1のA−B線で切断した断面を示す断面図である。
【図3】図2に示す半導体装置に形成されているタブの一部を拡大した断面図である。
【図4】図3の周囲を含めて詳細に示した従来構造の図である。
【図5】従来構造について、ヤング率の関係を説明する図である。
【図6】図3の周囲を含めて詳細に示した本発明の構造を示す図である。
【図7】本発明の構造について、ヤング率の関係を説明する図である。
【図8】本発明の界面のヤング率に対する効果を示す図である。
【図9】本発明の界面の熱伝導率に対する効果を示す図である。
【図10】本発明の界面のヤング率に対する効果を示す図である。
【図11】本発明の界面の熱伝導率に対する効果を示す図である。
【図12】本発明のペンタセンCHボンド置換率と誘電率の比を示す図である。
【図13】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す図であって、ダイシングを説明する図である。
【図14】図13に続く半導体装置の製造工程を示す図であって、リードフレーム上に半導体チップを搭載する工程を示す図である。
【図15】図14に続く半導体装置の製造工程を示す図であって、半導体チップとリードとをワイヤで電気的に接続する工程を示す図である。
【図16】図15に続く半導体装置の製造工程を示す図であって、半導体チップを樹脂で封止する工程を示す図である。
【図17】実施の形態1における半導体装置の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例,詳細,補足説明等の関係にある。
【0011】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数,数値,量,範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0012】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0013】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状,位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0014】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図に示した実施例により詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明における第一の実施例である半導体装置の斜視図を図1に示す。また、図1のA−B線で切断した断面図を図2に示す。本実施例における半導体装置のパッケージ形態は、QFP(Quad Flat Package)である。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態1における半導体装置1は、有機物をマトリックス材料とする封止体2で覆われており、この封止体2の四側面からリード3が突出している。リード3は、L字型に曲げられた構造をしている。
【0018】
また、図2に示すように、リード3は、封止体2の側面から突出しているアウターリード3aと封止体2の内部に形成されているインナーリード3bから構成されている。左右のインナーリード3bで挟まれた(複数のインナーリード3bで囲まれた)中央部には、タブ4が形成されており、このタブ4上に半導体チップ5が配置されている。半導体チップ5には、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)などの回路素子や配線が形成されており、最上層にボンディングパッド5aが形成されている。ボンディングパッド5a上は、ワイヤ6と接続されており、このワイヤ6はインナーリード3bに接続されている。
【0019】
図3は、図2の領域Cを拡大した図である。すなわち、図3は、封止体2に埋め込まれているタブ4を拡大した断面図である。また、インナーリード3bを拡大した断面図も図3と同様である。図3に示すように、タブ4の表面(裏面も含む)には、表面層10が形成されている。また、インナーリード3bの表面(裏面も含む)にも表面層10が形成されている。タブ4およびリード3は銅,銅合金,ニッケル合金,鉄合金を主構成材料として構成されている。尚、ここで、主構成材料とは最も多く含有されている材料を意味する。表面層10は、銅,パラジウム,ニッケル,白金,ルテニウム,金,銀等を主構成材料とする。本発明では、以下に説明するように、タブ4およびインナーリード3bの表面(裏面も含む)から封止体2への放熱性を向上させるために、ナフタレン,アントラセン,テトラセン,ペンタセン,ヘキサセン等のアセン類を封止体2のマトリックス材料とする。また、さらに放熱性を向上させるために、フィラー(充填材)として、窒化ボロン,窒化アルミニウムを含有させる。
【0020】
図4は図3の周囲を含めて詳細に示した従来構造の図であるが、従来は、マトリックス材料201としては、エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,フェノール樹脂,アクリル樹脂等が用いられていたが、マトリックス材料201とタブ4およびインナーリード3bの表面(裏面も含む)との界面で熱の伝導がうまくいかず、近年増大してきているチップの発熱密度に対しては放熱性が十分ではなくなってきた。発明者らは、従来構造において放熱性が十分に高くない原因を探るために鋭意研究を行い、図4に示すような次の関係を見出した。すなわち、タブ4およびインナーリード3bの表面材料である銅やパラジウム等の金属のヤング率Em(簡単には原子間をつなぐバネのバネ定数)は数十GPa以上と大きく、エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂等の樹脂のヤング率Erは数GPaと小さいが、これらの金属と樹脂の界面のヤング率Ermは、樹脂の10分の1程度となり、樹脂よりも小さなヤング率となってしまうことが界面での熱伝導が低い原因であることを見出した。つまり、図5に示すように、界面でのヤング率Ermが極めて小さいために(バネ定数が極めて小さいために)、バネが熱振動を伝えにくいことを見出した。さらには、従来、マトリックス材料201として用いられてきたエポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,フェノール樹脂,アクリル樹脂等とフィラー202(シリカやアルミナのような無機セラミックス粒子)の界面における熱伝達も十分ではなくなってきた。発明者らは、この原因を解明するための研究も行い、次のことを見出した。すなわち、図4に示すように、フィラーとして用いられてきたシリカやアルミナのような無機セラミックス粒子のヤング率Ecが数十GPa以上と大きく、エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂等の樹脂のヤング率Erは数GPaと小さいが、これらの無機セラミックス粒子と樹脂の界面のヤング率Ercは、樹脂の10分の1程度となり、樹脂よりも小さなヤング率となってしまうことが界面での熱伝導が低い原因であることを見出した。つまり、図5に示すように、界面でのヤング率Ercが極めて小さいために(バネ定数が極めて小さいために)、バネが熱振動を伝えにくいことを見出した。以上の原因解明に基づき、発明者らは、図6に示すような良好なヤング率の関係を達成できるような材料構成を見出すための研究を行った。良好なヤング率の関係とは、図6,図7に示すように、タブ4およびインナーリード3bの表面材料である金属とマトリックス材料201の界面のヤング率Eomが、タブ4およびインナーリード3bの表面材料である金属のヤング率Emとマトリックス材料201のヤング率Eoの中間となるような関係である。発明者らが鋭意研究した結果、ナフタレン,アントラセン,テトラセン,ペンタセン,ヘキサセン等のアセン類を封止体2のマトリックス材料とすることで、良好なヤング率の関係が達成でき、放熱性が良好となることを見出した。この効果を図8に示す。アセン類をマトリックス材料201として用いた場合には、従来、マトリックス材料として用いられてきたエポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,フェノール樹脂,アクリル樹脂等の樹脂を用いるよりも、界面のヤング率が大きくなり、金属(図8では銅)のヤング率(数十GPa以上)とマトリックス材料(数GPa程度)の中間程度の値となっていることが図8からわかる。また、図9からわかるように、アセン類をマトリックス材料201として用いた場合には、従来、マトリックス材料として用いられてきたエポキシ樹脂,ポリエステル樹脂等の樹脂を用いるよりも、界面の熱伝導率が桁違いに高くなる。なお、図8,図9は、金属が銅の場合の結果であるが、他の金属についても同様の効果が得られる。また、同じ金属でも、めっき条件など形成方法の違いによって、ヤング率や熱伝導率が変わるが、それでも図8,図9と同様の効果が得られる。なお、特に効果が高いアセン類はこれらの図からわかるように、テトラセン,ペンタセン,ヘキサセンである。
【0021】
前述の他に、アセン類からなるマトリックス材料201とフィラー202の界面のヤング率を良好にするフィラー材料として、窒化ボロン,窒化アルミニウムが有効であることを見出した。この効果を図10に示す。また、界面の熱伝導率に対する効果を図11に示す。これらの図から、シリカ,アルミナよりも、酸化チタン,酸化ジルコニウム,酸化ハフニウムが良好であり、窒化ボロン,窒化アルミニウムがさらに良好であることがわかる。窒化ボロン,窒化アルミニウムを用いると、図10のような良好なヤング率の関係により、熱伝導だけではなく、封止体の強度が向上する効果も得られる。
【0022】
以上の他に、図12のように、アセン類(この図ではペンタセン)が持つCHのボンドのうち12%以上85%以下をCOOH,COH,CNH2,CSに置き換えると誘電率が下がることがわかった。誘電率が下がったほうが電気的な配線遅延が抑制されるので、電気特性としてはより好ましい。なお、図12では、置き換えを行う前の誘電率を1として表示している。また、図12は、アセン類のうちでペンタセンを用いた場合の図であるが、他のアセン類を用いた場合にも同様の効果が得られた(図は省略)。
【0023】
アウターリード3aにスズ(錫,Sn)を主構成材料とするめっき膜を形成する場合が従来からあるが、これは次のような理由によるものであり、本実施例においてもあるほうが好ましい。図1に示す半導体装置1は、実装基板上に実装されるが、このとき、実装基板上に形成されている端子と半導体装置1に形成されているリード3が電気的に接続される。この端子とリード3との電気的な接続には、半田が用いられる。したがって、銅よりなるリード3を直接端子と半田で接続することも可能であるが、リード3の半田に対する濡れ性を向上させるために、リード3の表面にめっき膜10が形成されるのである。このようにリード3の表面にめっき膜10を形成することにより、リード3と半田との間の濡れ性が向上し、半田を介したリード3と実装基板上の端子との接続信頼性を向上することができる。めっき膜10には、半田との濡れ性が良好なスズを主材料とする膜が使用される。さらに、リード3の表面にめっき膜10を形成することにより、リード3の腐食防止および酸化防止を図ることができる。
【0024】
次に、本実施の形態1における半導体装置の製造方法について説明する。本実施の形態1のパッケージ形態としてQFPについて説明したが、以下に示す製造方法ではQFPと同じ表面実装型のパッケージ形態であるSOP(Small Outline Package)について説明する。パッケージ形態がQFPやSOPであっても基本的な製造工程は同様である。
【0025】
まず、図13において、半導体ウェハ20を用意する。半導体ウェハ20は複数のチップ領域に区分けされており、複数のチップ領域のそれぞれにLSI(Large Scale Integration Circuit)が形成されている。LSIはいわゆるウェハプロセス(前工程)で形成される。続いて、ブレード21によって半導体ウェハ20を切断する。すなわち、半導体ウェハ20をチップ領域単位で切断することにより、半導体チップを取得する。一方、半導体チップを搭載するためのリードフレームを用意する。このリードフレーム22は、例えば、銅を主材料としている。続いて、リードフレームに形成されているリードの表面にめっき膜を形成する。このめっき工程で本実施の形態1における技術的思想が具現化される。例えば、上述したように、リードの表面にまず、電界めっき法により金膜を形成する。その後、金膜上に電解めっき法でスズを主材料とするめっき膜を形成する。
【0026】
そして、図14に示すように、めっき処理したリードパターンが形成されているリードフレーム22のタブ上に半導体チップ20aを搭載する。半導体チップ20aは、ダイボンダによりリードフレーム22に形成されているタブ上に搭載される。
【0027】
次に、図15に示すように、タブ上に搭載した半導体チップ20aに形成されているパッド(図示せず)と、リードフレーム22に形成されている複数のリード(インナーリード)をワイヤ23により接続する。ワイヤ23はキャピラリを使用することによりパッ
ドとリードとを接続する。
【0028】
その後、図16に示すように、リードフレーム22に搭載された半導体チップ20aとインナーリードを含む領域を封止体24によって封止する。封止体24による封止は、半導体チップ20aを外力による衝撃や水分の浸入から保護するために行われる。封止体24は、例えば、図7に示されるマトリックス材料201であるアセン類とフィラーである無機セラミックス粉末202を溶かした1,2,4−トリクロロベンゼンまたは3,4−ジクロロトルエンを塗布した後、180〜200℃の温度で加熱して溶剤を蒸発させることにより行う。なお、この後さらに、従来用いられていたセラミックフィラー入りエポキシ樹脂やポリエステル樹脂を、熱伝導性が悪くならない100ミクロン程度以下に薄く塗布して130〜200℃の温度で熱硬化させることにより、絶縁性の高い構造を形成するとさらに良い。
【0029】
次に、リードフレーム22から封止体24で封止した封止体を個片化する。これにより、図17に示す半導体装置25を得ることができる。半導体装置25は、封止体24による封止体と、この封止体から突出しているリード(アウターリード)26から構成される。そして、封止体から突出しているリード26の表面にめっき膜(図示せず)が形成されている。
【0030】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1,25 半導体装置
2,24 封止体
3,26 リード
3a アウターリード
3b インナーリード
4 タブ
5,20a 半導体チップ
5a ボンディングパッド
6,23 ワイヤ
10,15 めっき膜
20 半導体ウェハ
21 ブレード
22 リードフレーム
201 マトリックス有機物
202 セラミックス粉末
a,b,c 結晶軸
L,P 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、前記半導体チップと電気的に接続された、金属を主構成材料とする複数のリードと、前記半導体チップを封止する封止体とを備えた半導体装置において、前記封止体がアセン類をマトリックス材料とすることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記封止体が、テトラセン,ペンタセン,ヘキサセンの群から選ばれる少なくともひとつのアセン類をマトリックス材料とすることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記封止体が、無機セラミックス粉末をフィラーとして含有することを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記封止体が、窒化ホウ素,窒化アルミニウムの群から選ばれる少なくともひとつからなる無機セラミックス粉末をフィラーとして含有することを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記アセンが持つCHのボンドのうち12%以上85%以下がCOOH,COH,CNH2,CSに置き換えることを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記封止体が、エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,フェノール樹脂,アクリル樹脂の群から選ばれる少なくともひとつからなる樹脂を添加物として含有することを特徴とする請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体チップと、前記半導体チップと電気的に接続された、金属を主構成材料とする複数のリードと、前記半導体チップを封止する封止体とを備えた半導体装置において、前記封止体がアセン類を主構成材料とし、前記複数のリードのそれぞれの一部が前記封止体から露出するアウターリード部分と封止体に埋め込まれたインナーリード部分を有し、かつ前記インナーリード部分の表面材料が銅またはパラジウムを主構成材料とすることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記封止体が、テトラセン,ペンタセン,ヘキサセンの群から選ばれる少なくともひとつのアセン類をマトリックス材料とすることを特徴とする請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記封止体が、無機セラミックス粉末をフィラーとして含有することを特徴とする請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記封止体が、窒化ホウ素,窒化アルミニウムの群から選ばれる少なくともひとつからなる無機セラミックス粉末をフィラーとして含有することを特徴とする請求項9記載の半導体装置。
【請求項11】
前記アセン類が持つCHのボンドのうち12%以上85%以下がCOOH,COH,CNH2,CSに置き換えることを特徴とする請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】
前記封止体が、エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,フェノール樹脂,アクリル樹脂の群から選ばれる少なくともひとつからなる樹脂を添加物として含有することを特徴とする請求項11記載の半導体装置。
【請求項13】
(a)金属を主構成材料とするリードフレームを用意する工程と、
(b)前記リードフレームに形成されている複数のリードの表面に、銅またはパラジウムを主構成材料とするめっき膜を35℃以上で形成する工程と、
(c)前記リードフレームのタブ上に半導体チップを搭載する工程と、
(d)前記半導体チップと、前記リードフレームに形成されている前記複数のリードと
をワイヤで接続する工程と、
(e)前記半導体チップの周囲に、アセン類をマトリックス材料とする封止体が溶けた1,2,4−トリクロロベンゼンまたは3,4−ジクロロトルエンを塗布する工程と、
(f)180〜200℃の温度で加熱して封止体を形成する工程と、
(g)前記リードフレームを切断して前記封止体を個片化する工程とを備え、
前記アセン類がテトラセン,ペンタセン,ヘキサセンの群から選ばれる少なくともひとつであることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−54588(P2011−54588A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199189(P2009−199189)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】