説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】低耐圧トランジスタ特性への影響なく、耐圧特性および動作特性が安定した高耐圧素子を組み込む。
【解決手段】同一の半導体基板2上に、トレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)によって素子分離された高耐圧素子20aと低耐圧素子20bを設けた半導体装置1において、高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の表面高さが低耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の表面高さよりも低く形成されている。高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の表面高さが、高耐圧素子20aのチャネルを形成する半導体基板2の表面に対して−10〜60nm(より好ましくは−10〜30nm)だけ高くなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶ドライバやLEDドライバなど、低耐圧のロジックと高耐圧素子が搭載されたシステムLSIなどを構成する半導体装置およびその製造方法に関し、特に、素子分離領域を有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子間を素子分離する技術の一つとして、基板上の半導体素子間にトレンチを設け、このトレンチに絶縁膜を充填するトレンチ分離技術がある。
【0003】
このトレンチ分離技術は、素子分離に必要とする面積を低減できるため、多くのロジックを持つシステムLSIなどに広く採用されている。
【0004】
液晶パネルを駆動する液晶ドライバや、LEDを駆動するLEDドライバなどでは、低耐圧のロジックと高耐圧素子が搭載されている。
【0005】
近年、LSIのシステム化に伴い、低耐圧のロジックの占有面積が増大しており、これを改善するため、従来、高耐圧素子では採用されていなかったトレンチ分離技術と高耐圧素子を共存させることが必要となってきた。
【0006】
低耐圧素子と高耐圧素子を同一基板に形成するためには、低耐圧用の薄膜のゲート酸化膜と高耐圧用の厚膜のゲート酸化膜とを形成する必要がある。トレンチ分離技術を採用した場合の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の一例について図18〜図24に示している。
【0007】
図18は、特許文献1に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の各ステップを示す工程図である。図19〜図24は、特許文献1に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の各ステップを示す要部縦断面図である。
【0008】
まず、図18のステップS1でパッド酸化処理を行って半導体基板210上にパッド酸化膜211を形成し、図18のステップS2で窒化膜成膜処理を行ってパッド酸化膜211上にストッパ層としてSIN膜212を形成する。さらに、図18のステップS3での活性化領域のパターニングにおいて、図19のパターン形成ステップに示すように、半導体基板210上に、パッド酸化膜211と、その上のストッパ層となるSIN膜212に対して、フォトリソ技術によるマスクを用いてエッチング処理して、所定パターンのSIN膜212およびその下のパッド酸化膜211を形成する。
【0009】
次いで、図18のステップS4でのトレンチエッチング工程において、図20に示すように、ストッパ層としてのSIN膜212をマスクとして、半導体基板210をエッチング処理し、トレンチ213を形成する。その後、図18のステップS5でのトレンチエッチング工程において熱処理を行うことにより、トレンチ213の内側面および底面における半導体基板210の露出面を熱酸化して、トレンチ酸化膜213aを形成する。
【0010】
続いて、図18のステップS6でのフィールド絶縁膜充填工程において、図21に示すように、トレンチ213内を埋め込むように、プラズマCVDによりプラズマ酸化膜214を全面に堆積する。その後、図18のステップS7でのSTICMP工程において、SIN膜212をストッパ層として、プラズマ酸化膜214をCMP法で平坦化する。さらに、図18のステップS8での窒化膜除去工程において、ストッパ層としてのSIN膜212を熱リン酸を用いて除去する。さらに、図18のステップS9でのPad酸化膜除去工程において、パッド酸化膜211をフッ酸を含むエッチャントで除去して、図22の素子分離領域形成ステップに示すようなトレンチ素子分離領域220を形成する。
【0011】
その後、図18のステップS10の厚膜ゲート酸化工程において、図23に示すように、熱酸化処理を行って、半導体基板210の表面に高耐圧素子のゲート酸化膜となる酸化膜215を成長させる。次に、高耐圧素子形成領域以外の酸化膜215を、フォトリソ技術によるマスクを用いてエッチング処理して除去した後に、再び熱酸化処理を行い、低耐圧素子のゲート酸化膜となる酸化膜216を成長させて図24に示すようなトレンチ素子分離と共に、高耐圧素子用のゲート酸化膜215と、低耐圧素子用のゲート酸化膜216とを膜厚を変えて形成する。
【0012】
しかしながら、上記従来の方法では、図25に示すように、シリコン基板210の表面の両端部Bにおいてゲート酸化膜215の膜厚が薄い薄膜部Cが形成されてしまう。このため、厚膜のゲート酸化膜215の耐圧が両端部Bで低下するという問題があった。その部分の実際の顕微鏡写真を図26に示している。図26において、ゲート酸化膜215の両端がくびれて薄くなった薄膜部Cの状態が分かる。ゲート酸化膜215の中央部の膜厚が115nmで有るのに対して、ゲート酸化膜215の両端部の薄膜部Cは、その膜厚が66nmで約半分の膜厚になっている。これによってゲート酸化膜215のゲート耐圧が大幅に低下すると共に、MOSトランジスタのトランジスタ特性にも問題が生じる。また、高耐圧素子のゲート酸化膜215用の厚膜の熱酸化を行うと、シリコンから酸化シリコンに変化するときの体積変化から、トレンチ底部の角部分Aに応力が集中するために角部分Aの近傍で欠陥Fが発生し、ドレインとウェル、基板間にリークが発生する。その部分の実際の顕微鏡写真を示す図26では、トレンチ底部の角部分Aに欠陥Fが存在している。
【0013】
これを解決するために、トレンチ分離領域形成前に熱処理によって高耐圧の厚膜のゲート酸化膜215を形成する方法が提案されている。その一例を図27に示している。
【0014】
図27は、特許文献2に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の各ステップを示す工程図である。
【0015】
図27に示すように、図18のステップS10の厚膜ゲート酸化工程をステップS10Aとして最初に行い、その後にトレンチ分離領域を形成する。要するに、ステップS10Aでトレンチ形成前の半導体基板210上に、図19のパッド酸化膜211の代わりに1000オングストローム程度の厚い高耐圧のゲート酸化膜215を形成する。その後のステップS2〜S8のトレンチ分離領域形成工程は上記図18の場合と同様である。
【0016】
ところが、図28に示すように、最初に半導体基板210上に厚膜のゲート酸化膜215を熱酸化により形成し、その後、ステップS4でエッチング処理によってSIN膜212をマスクとしてトレンチ213を形成したり、その後のステップS8でSIN膜212をエッチング処理によって除去したりしているために、厚膜のゲート酸化膜215の両端部の膜密度が低下しており、高耐圧用の厚膜のゲート酸化膜215をエッチング処理して低耐圧用の薄いゲート酸化膜216Aを形成する。このとき、ゲート酸化膜216Aの両端部分に溝Dができて極端二両端部で膜厚が薄くなってしまうという問題があった。これによってゲート酸化膜216Aのゲート耐圧が大幅に低下すると共に、MOSトランジスタのトランジスタ特性にも問題が生じる。
【0017】
これを解決するために、トレンチ分離領域形成後に熱処理による厚膜のゲート酸化膜215を形成する代わりに、トレンチ分離領域形成後にCVD法によって厚膜のゲート酸化膜215Aを形成する方法が提案されている。その一例を図29に示している。
【0018】
図29は、特許文献3に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の各ステップを示す工程図である。
【0019】
図29に示すように、ステップS1〜S9のトレンチ分離領域形成工程は上記図18の場合と同様であるが、その後のステップS11のゲート酸化工程で熱処理によりゲート酸化膜を形成し、その上に厚膜ゲートデポ工程として、図30に示すように基板表面全面にCVD法によって厚膜のゲート酸化膜215Aを形成する。
【0020】
次に、高耐圧素子形成領域以外のゲート酸化膜215Aを、フォトリソ技術によるマスクを用いてエッチング処理して除去した後に、再び、基板表面にCVDによって低耐圧素子用の薄膜のゲート酸化膜(図示せず)を形成する。
【0021】
本構造では、高耐圧素子のゲートを形成するための厚膜のゲート酸化膜215Aを形成するための熱酸化を行わないので、上記に示したトレンチ底部の欠陥Fと半導体基板210としてのシリコン基板表面の厚膜のゲート酸化膜215Aの両端部の薄膜化が防止された構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2001−85533号公報
【特許文献2】特開2004−247328号公報
【特許文献3】特開2006−222418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、特許文献3に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程では、高耐圧素子のためのゲート酸化膜215AをCVD法で形成する際にシリコン表面に対して、トレンチ分離埋め込み絶縁膜の高さが高い場合には、CVD法でゲート絶縁膜215Aをデポジションするときに、埋め込み絶縁膜側壁の形状が逆テーパになっており、図30および図31に示すように埋め込み絶縁膜側壁部とゲート絶縁膜215Aの間に、膜密度の希薄なボイドEが発生する。この場合、トランジスタを動作させた時に、ゲートリークを生じさせ、トランジスタの特性が不安定になるという問題があった。また、埋め込み絶縁膜側壁部とゲート絶縁膜215Aの間でゲート絶縁膜215Aが均一に形成されないため、ゲート耐圧不足やゲート破壊などの信頼性上の問題も懸念される。なお、図32は図31に対応した実際の顕微鏡写真を示す要部縦断面図であり、埋め込み絶縁膜側壁部近傍位置に膜密度の希薄なボイドEが発生している。
【0024】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、低耐圧トランジスタ特性への影響なく、耐圧特性および動作特性が安定した高耐圧素子を組み込むことができる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の半導体装置は、同一の半導体基板上に、トレンチ分離絶縁膜によって素子分離された高耐圧素子と低耐圧素子を設けた半導体装置において、該高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さが該低耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さよりも低く形成されているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0026】
また、好ましくは、本発明の半導体装置における高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さが、前記高耐圧素子のチャネルを形成する半導体基板の表面に対して−10〜60nmだけ高くなるように形成されている。
【0027】
さらに、好ましくは、本発明の半導体装置における高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さが、前記高耐圧素子のチャネルを形成する半導体基板の表面に対して−10〜30nmだけ高くなるように形成されている。
【0028】
さらに、好ましくは、本発明の半導体装置における高耐圧素子は、前記半導体基板のウェル上の所定領域に設けられた第1ゲート絶縁膜と、該第1ゲート絶縁膜上に設けられた第1ゲート電極と、該ウェル内の表層に、該第1ゲート電極を間に挟んで互いに対向する位置にそれぞれ設けられた、該ウェルと逆導電型の第1ソース領域および第1ドレイン領域とを有し、前記トレンチ分離絶縁膜が、該高耐圧素子と該低耐圧素子との間および、該第1ゲート電極下方のチャネル領域と該第1ソース領域および該第1ドレイン領域との間にそれぞれ設けられている。
【0029】
さらに、好ましくは、本発明の半導体装置における低耐圧素子は、前記半導体基板のウェル上の所定領域に設けられた第2ゲート絶縁膜と、該第2ゲート絶縁膜上に設けられた第2ゲート電極と、該ウェル内の表層に、前記第2ゲート電極を間に挟んで互いに対向する位置にそれぞれ設けられた、該ウェルと逆導電型の第2ソース領域および第2ドレイン領域とを有し、前記低耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さが、該低耐圧素子のチャネルを形成する半導体基板の表面よりも少なくとも30nm高くなるように形成されている。
【0030】
さらに、好ましくは、本発明の半導体装置における高耐圧素子のゲート絶縁膜の膜厚は50〜200nmである。
【0031】
さらに、好ましくは、本発明の半導体装置における高耐圧素子のゲート絶縁膜はHDP(高密度プラズマ膜;High Density Plasma)またはHTO(高温酸化膜;High Temperature Oxide)のCVD絶縁膜である。
【0032】
さらに、好ましくは、本発明の半導体装置において、前記高耐圧素子のゲート絶縁膜は前記低耐圧素子のゲート絶縁膜に比べて厚膜に構成されている。
【0033】
本発明の半導体装置の製造方法は、同一の半導体基板上に、トレンチ分離絶縁膜によって素子分離された高耐圧素子と低耐圧素子を設けた半導体装置の製造方法において、CMPストッパ窒化膜除去工程後に高耐圧素子形成領域以外をフォトレジスト膜で覆い、高耐圧素子形成領域のフィールド酸化膜を選択的にエッチングして、該高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さを該低耐圧素子の形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さよりも低く形成するエッチング工程と、該高耐圧素子のゲート酸化膜をCVD法で形成する工程とを有するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0034】
また、好ましくは、本発明の半導体装置の製造方法における高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さを、該高耐圧素子のチャネルを形成する半導体基板の表面に対して−10〜60nmとなるように形成する。
【0035】
さらに、好ましくは、本発明の半導体装置の製造方法における高耐圧素子の形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さを、該高耐圧素子のチャネルを形成する半導体基板の表面に対して−10〜30nmとなるように形成する。
【0036】
さらに、好ましくは、本発明の半導体装置の製造方法における高耐圧素子のゲート絶縁膜を50〜200nmの膜厚で形成する。
【0037】
さらに、好ましくは、本発明の半導体装置の製造方法における高耐圧素子のゲート絶縁膜をHDPまたはHTOのCVD絶縁膜で形成する。
【0038】
上記構成により、以下、本発明の作用を説明する。
【0039】
本発明においては、同一の半導体基板上に、トレンチ分離絶縁膜によって素子分離された高耐圧素子と低耐圧素子を設けた半導体装置において、高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さが低耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さよりも低く形成されている。高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さが、高耐圧素子のチャネルを形成する半導体基板の表面に対して−10〜60nm(より好ましくは−10〜30nm)だけ高くなるように形成されている。
【0040】
これによって、低耐圧トランジスタ特性への影響なく、従来、逆テーパポケット部に発生していたボイドを低減するので、耐圧特性および動作特性が安定した高耐圧素子を組み込むことが可能となる。
【発明の効果】
【0041】
以上により、本発明によれば、低耐圧トランジスタ特性への影響なく、従来、逆テーパポケット部に発生していたボイドを低減するため、耐圧特性および動作特性が安定した高耐圧素子を組み込むことができる。これによって、トレンチ分離構造での良好な電気的特性と安定した信頼性を備えた高耐圧素子と微細な低耐圧素子を共存させた半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態1における半導体装置の要部構成例を示す縦断面図であって、(a)は高耐圧素子の縦断面図、(b)は低耐圧素子の縦断面図である。
【図2】図1の高耐圧素子の特徴構成を説明するための要部縦断面図である。
【図3】図2の高耐圧素子の特徴構成と比較するために、特許文献3に開示されている従来の半導体装置におけるゲート酸化膜を説明する要部縦断面図である。
【図4】(a)は高耐圧素子の特徴構成を示す縦断面図、(b)は低耐圧素子の特徴構成を示す縦断面図である。
【図5】図1(a)のトレンチ分離絶縁膜のプラズマ酸化膜6とボイド発生率の関係を示す図である。
【図6】本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の各ステップを示す工程図である。
【図7】本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程のパターン形成ステップを示す要部縦断面図である。
【図8】本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程のトレンチ形成ステップを示す要部縦断面図である。
【図9】本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程のフィールド絶縁膜充填ステップを示す要部縦断面図である。
【図10】本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の高耐圧部フィールドエッチングステップを示す要部縦断面図である。
【図11】本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の素子分離領域形成ステップを示す要部縦断面図である。
【図12】本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の厚膜ゲートデポジションステップを示す要部縦断面図である。
【図13】本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程のゲート絶縁膜形成ステップを示す要部縦断面図である。
【図14】本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の高耐圧用ウェル領域形成ステップを示す要部縦断面図である。
【図15】本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の低耐圧用ウェル領域形成ステップを示す要部縦断面図である。
【図16】本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程のドリフト層形成ステップを示す要部縦断面図である。
【図17】本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程のゲート電極・ソース領域/ドレイン領域・配線形成ステップを示す要部縦断面図である。
【図18】特許文献1に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の各ステップを示す工程図である。
【図19】特許文献1に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程のパターン形成ステップを示す要部縦断面図である。
【図20】特許文献1に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程のトレンチ形成ステップを示す要部縦断面図である。
【図21】特許文献1に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程のフィールド絶縁膜充填ステップを示す要部縦断面図である。
【図22】特許文献1に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の素子分離領域形成ステップを示す要部縦断面図である。
【図23】特許文献1に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の厚膜ゲート酸化ステップを示す要部縦断面図である。
【図24】特許文献1に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の高耐圧/低耐圧用ゲート酸化膜形成ステップを示す要部縦断面図である。
【図25】特許文献1に開示されている従来の半導体装置におけるゲート酸化膜の問題点を説明するための要部縦断面図である。
【図26】図25に対応した実際の顕微鏡写真を示す要部縦断面図である。
【図27】特許文献2に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の各ステップを示す工程図である。
【図28】特許文献2に開示されている従来の半導体装置におけるゲート酸化膜の問題点を説明するための要部縦断面図である。
【図29】特許文献3に開示されている従来の半導体装置の素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の各ステップを示す工程図である。
【図30】図29の厚膜ゲートデポ工程におけるCVDゲート酸化膜形成工程を示す要部縦断面図である。
【図31】特許文献3に開示されている従来の半導体装置におけるゲート酸化膜の問題点を説明するための要部縦断面図である。
【図32】図31に対応した実際の顕微鏡写真を示す要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本発明の半導体装置およびその製造方法の実施形態1について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図における構成部材のそれぞれの厚みや長さなどは図面作成上の観点から、図示する構成に限定されるものではない。
【0044】
(実施形態1)
図1(a)および図1(b)は、本発明の実施形態1における半導体装置の要部構成例を示す縦断面図であって、(a)は高耐圧素子の縦断面図、(b)は低耐圧素子の縦断面図である。
【0045】
図1(a)および図1(b)において、本実施形態1の半導体装置1は、同一の半導体基板2上に高耐圧素子20aと低耐圧素子20bが形成されており、高耐圧素子20aおよび低耐圧素子20bはトレンチ内に埋め込まれたトレンチ分離絶縁膜(例えばプラズマ酸化膜6)によって素子分離されている。
【0046】
高耐圧素子20aは、図1(a)に示すように、半導体基板2内のウェル2a上の所定領域に熱酸化膜11およびその上を覆うようにCVD酸化膜(CVD絶縁膜)からなる高耐圧用のゲート絶縁膜12が設けられ、その上に高耐圧用のゲート電極13が設けられている。ウェル2a内の表層には、ゲート電極13を間に挟んで互いに対向する位置にウェル2aと逆導電型のソース領域14とドレイン領域15が設けられている。トレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の高さが、半導体基板2の基板表面(シリコン表面)よりも30nm以上高くならないように設定されている。ソース領域14はその上の層間膜16に形成されたコンタクトプラグ17を通して層間膜16上のメタル電極18に接続されている。また、ドレイン領域15はその上の層間膜16に形成された別のコンタクトプラグ17を通して層間膜16上のメタル電極19に接続されている。
【0047】
低耐圧素子20bは、図1(b)に示すように、半導体基板2内のウェル2b上の所定領域に熱酸化膜からなる低耐圧用のゲート絶縁膜11aが設けられ、その上に低耐圧用のゲート電極13が設けられている。ウェル2b内の表層には、ゲート電極13を間に挟んで互いに対向する位置にウェル2bと逆導電型のソース領域14とドレイン領域15が設けられている。トレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の高さが、半導体基板2の基板表面(シリコン表面)よりも低くなるように設定されている。ソース領域14はその上の層間膜16に形成されたコンタクトプラグ17を通して層間膜16上のメタル電極18に接続されている。また、ドレイン領域15はその上の層間膜16に形成された別のコンタクトプラグ17を通して層間膜16上のメタル電極19に接続されている。
【0048】
本実施形態1の半導体装置1では、トレンチ分離埋め込み絶縁膜としてのプラズマ酸化膜6の高さが、半導体基板2の基板表面(シリコン表面)よりも30nm以上高くならないように設定されているために、図2に示すように、高耐圧素子20aの厚膜のゲート酸化膜12となるCVD絶縁膜12aで成膜する際に、トレンチ分離埋め込み絶縁膜としてのプラズマ酸化膜6の側壁部が低くなって順テーパー状になる。このため、従来のように埋め込み酸化膜のプラズマ酸化膜6の側壁による凹部底面隅部分にポケットが形成されず、半導体基板2表面から側壁部分の順テーパー部分も含めて均一な膜厚でデポジションされる。これによって、従来例の図3にみられるトレンチ分離埋め込み絶縁膜のプラズマ酸化膜6とゲート絶縁膜12となるCVD絶縁膜12aとの間にボイドEが形成されない。高耐圧素子形成領域のトレンチ分離埋め込み絶縁膜としてのプラズマ酸化膜6の高さは、半導体基板2の基板表面(シリコン表面)に対し−10〜30nmに調整することが好ましく、30nmより高い場合には、トレンチ埋め込み絶縁膜側壁とゲート絶縁膜の間にボイドEが形成される可能性があり、−10nmより低くなると、半導体基板2全体の平坦性が損なわれるため、その後のゲート電極13の加工、フォト工程における加工で所望の値が得られないなどの悪影響を及ぼす可能性がある。
【0049】
半導体装置1を製造する方法において、CMPのストッパ層の除去後に、高耐圧素子20aの形成領域の分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の高さを調整している。CMPのストッパ層の除去前においても、高耐圧素子20aの形成領域以外をフォトレジスト膜で覆い、高耐圧素子20aの形成領域のフィールド酸化膜(プラズマ酸化膜6)を選択的にエッチングを行うことは可能であるが、この場合には、後のストッパ層除去後の埋め込み絶縁膜の側壁の形状が十分な順テーパーとならないため、埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)とゲート絶縁膜12の間のボイドが形成される可能性があるためである。
【0050】
高耐圧素子(高耐圧トランジスタ)20aの形成領域のゲート絶縁膜12の膜厚は、電源電圧が20Vを超え100Vよりも低い電圧(ここでは30V〜40V程度の電圧)を扱う場合であって、50〜200nmである。ゲート絶縁膜12の膜厚が50nm以下で、電源電圧が20V程度の電圧を扱う場合のゲート絶縁膜は、熱酸化による応力が小さいため、従来法で形成した方が、簡便で良好な素子特性を得ることができる。また、ゲート絶縁膜の膜厚が200nmを超え、電源電圧が100V以上の高耐圧素子においては、CVD法によるゲート絶縁膜12は絶縁膜リークの問題もあり好ましくない。また、電源電圧が100V以上の高耐圧素子の場合には、トレンチ分離を必要する大規模な低耐圧回路と同一基板上に共存させる用途も少ない。
【0051】
また、高耐圧素子(高耐圧トランジスタ)20aのゲート酸化膜として、HDPまたはHTOで形成されたCVD絶縁膜は、酸化膜特性が熱酸化膜に近いため、トランジスタのゲート酸化膜として好適である。
【0052】
上記構成の本実施形態1の半導体装置1について、以下に、さらに詳細に説明する。図1(a)および図1(b)は半導体装置1のデバイス構造を模式的に示す縦断面図である。なお、繰り返し述べるが、図1に示す断面構造図では、適宜、要部を強調して示すこととし、図面上の各構成部分の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致するものではない。これは以降の断面構造図についても同様とする。
【0053】
本実施形態1の半導体装置1は、図1(a)および図1(b)において、同一の半導体基板2上に、高耐圧素子20aとしての第1トランジスタおよび低耐圧素子20bとしての第2トランジスタが、P型の当該半導体基板2上に形成されたN型のウェル2aおよび2b上に形成されている。
【0054】
図1(a)において、高耐圧の第1トランジスタは、P型のウェル2a上の所定の領域にゲート絶縁膜12を介して形成されたゲート電極13、ドレイン電極19およびソース電極18を備え、ドレイン電極19は、層間絶縁膜16を貫通するコンタクトプラグ17を介してN型のドレイン領域(第1半導体層)15と接続し、ソース電極18は、層間絶縁膜16を貫通する別のコンタクトプラグ17を介してN型のソース領域(第2半導体層)14と接続している。
【0055】
N型のドレイン領域15およびソース領域14は、ゲート電極13を挟んで互いに対向するように、ウェル2aの表層に配置されている。
【0056】
N型のドレイン領域15の下方には、当該ドレイン領域15を覆うように、ドレイン領域15より低濃度のN型のドリフト領域(第4半導体層)9が、トレンチ分離領域を囲うように、ウェル2a内に形成され、且つ、ゲート電極13の方向に延伸している。
【0057】
一方、N型のソース領域14の下方には、当該ソース領域14を覆うように、当該ソース領域14より低濃度のN型のドリフト領域(第5半導体層)8が、トレンチ分離領域を囲うように、ウェル2a内に形成され、且つ、ゲート電極13の方向に延伸している。
【0058】
ここで、ゲート絶縁膜12の膜厚は50nm〜200nm程度である。ゲート電極13が、ゲート絶縁膜12上およびトレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)上に形成されている。
【0059】
これらの1トランジスタおよび第2トランジスタは周りをトレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)で囲まれており、更に、トレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の高さはチャネルとなるゲート絶縁膜12の直下のシリコン表面に対して−10〜30nmの高さで形成されている。
【0060】
このような構造の高耐圧素子20aにおいて、ゲート絶縁膜12とトレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の間はボイドがなく形成されているため、高耐圧素子20aとしての第1トランジスタのゲートとして好適な構造である。
【0061】
トレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の高さをチャネルとなるゲート絶縁膜12の直下のシリコン領域よりも30nm以上高く形成した場合は、前述したが、図3に示すように、ゲート絶縁膜12aの材料をデポジションする時のトレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の形状が逆テーパーになっている。このため、ゲート絶縁膜12aとトレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)との間にボイドEを生じる。
【0062】
このようなボイドEが生じた構造の場合、ゲート電極13とドレイン領域15およびソース領域14との間に電界をかけた場合、ゲートリークが懸念され、最終的にはゲート耐圧が無くなるという信頼性上の問題がある。
【0063】
それに対して、図2に示すように、トレンチ分離埋め込み絶縁膜としてのプラズマ酸化膜6の高さをチャネルとなるゲート絶縁膜12の直下のシリコン領域よりも30nm以下に形成した場合は、ゲート絶縁膜12aをデポジションする時のトレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の形状が順テーパーになるため、ゲート絶縁膜12aはシリコン領域上とトレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)上に均一に形成され、良好な形状で形成され、ゲート電極13とドレイン領域15およびソース領域14との間に電界をかけてもリークの無い安定した特性が得られる。
【0064】
図4(a)は高耐圧素子20aの特徴構成を示す縦断面図、図4(b)は低耐圧素子20bの特徴構成を示す縦断面図である。
【0065】
図4(a)および図4(b)に示すように、高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の表面高さが低耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の表面高さよりも低く形成されている。高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の表面高さが、高耐圧素子20aのチャネルを形成する半導体基板2の表面に対して−10〜60nm(より好ましくは−10〜30nm)となるように形成されている。高耐圧素子20aのチャネルを形成する半導体基板2の表面上にゲート絶縁膜12を介してゲート電極13が形成されている。また、低耐圧素子20bのチャネルを形成する半導体基板2の表面上にゲート絶縁膜11aを介して別のゲート電極13が形成されている。
【0066】
図5は、図1(a)のトレンチ分離絶縁膜のプラズマ酸化膜6とボイド発生率(パーセント)の関係を示す図である。
【0067】
図5において、トレンチ分離絶縁膜としてのプラズマ酸化膜6の高さが、シリコン表面よりも30nm以上高い場合には、ボイドEの発生率が順次高くなっている。高耐圧素子形成領域のトレンチ埋め込み絶縁膜としてのプラズマ酸化膜6の高さは、半導体基板2の基板表面(シリコン表面)に対し−10〜30nmに調整する。プラズマ酸化膜6の高さを多少なりとも低く調整すれば、ボイドEの発生率を抑えることができる。例えば、通常のプラズマ酸化膜6の高さが基板表面(シリコン表面)に対して70〜80nmであれば、60nm以下のプラズマ酸化膜6の高さであってもボイドEの発生率を抑えることができる。この場合、高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の表面高さが、高耐圧素子20aのチャネルを形成する半導体基板2の表面に対して−10〜60nm(より好ましくは−10〜30nm)となるように形成すればよい。
【0068】
一方、図1(b)に示すように、低耐圧の第2トランジスタは、低耐圧用のゲート絶縁膜11a、ゲート電極13、ドレイン電極19およびソース電極18を備え、P型のウェル2b内に、N型のドレイン領域(第1半導体層)15、N型のソース領域(第2半導体層)14、電界緩和を目的としたN型のドレイン領域15、ソース領域14よりも低濃度なLDD領域(第4半導体層)21が形成されている。低耐圧の第2トランジスタは高耐圧の第1トランジスタと同様に周りをトレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)で囲まれている。しかしながら、トレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の高さはチャネルとなるゲート絶縁膜11aの直下のシリコン領域よりも30nm以上高く形成されており、第1トランジスタの場合とは相違する。
【0069】
低耐圧の第2トランジスタでは、微細なパターンが多く使用されるため、トレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の高さはチャネルとなるゲート絶縁膜11aの直下のシリコン領域よりも低く形成された場合は、第2トランジスタを形成しているシリコンのサイズが小さくなった場合に、狭チャネル効果と呼ばれる閾値電圧がばらつく現象がみられる。これを防止するため、前記に示したように、トレンチ分離埋め込み絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の高さをチャネルとなるゲート絶縁膜11aの直下のシリコン領域よりも高く形成している。本構造のトランジスタは低耐圧素子20bの第2トランジスタとして好適である。
【0070】
上記構成により、以下、本実施形態1の半導体装置の製造方法について、図6〜図17を参照して詳細に説明する。
【0071】
図6は、本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の各ステップを示す工程図である。図7〜図17は、本実施形態1の半導体装置の製造方法における素子分離領域形成およびゲート酸化膜形成工程の各ステップを説明するための要部縦断面図である。なお、ここでは、高耐圧素子20aおよび低耐圧素子20b共にN型MOSFETの場合について説明を行うが、N型をP型に変えることにより、P型MOSFETに置き換えることが可能であることは言うまでもない。
【0072】
まず、図6のステップS21でパッド酸化処理を行って半導体基板2上にパッド酸化膜3を形成し、図6のステップS22で窒化膜成膜処理を行ってパッド酸化膜3上にストッパ層としてSIN膜4を形成する。さらに、図6のステップS23での活性化領域のパターニングにおいて、図7のパターン形成ステップに示すように、半導体基板2上に、パッド酸化膜3と、その上のストッパ層となるSIN膜4に対して、フォトリソ技術によるマスクを用いてエッチング処理して、所定パターンのSIN膜4およびその下のパッド酸化膜3を形成する。
【0073】
次いで、図6のステップS24でのトレンチエッチング工程において、図8に示すように、ストッパ層としてのSIN膜4をマスクとして、半導体基板2をエッチング処理し、トレンチ5を形成する。その後、図6のステップS25のトレンチ酸化工程において熱処理を行うことにより、トレンチ5の内側面および底面における半導体基板2の露出面を熱酸化してトレンチ酸化膜5aを形成する。
【0074】
続いて、図6のステップS26でのフィールド絶縁膜充填工程において、図9に示すように、トレンチ5内を埋め込むように、プラズマCVDによりプラズマ酸化膜6を全面に堆積する。その後、図6のステップS27でのSTICMP工程において、SIN膜4をストッパ層として、プラズマ酸化膜6をCMP法で平坦化する。さらに、図6のステップS28での窒化膜除去工程において、ストッパ層としてのSIN膜4を熱リン酸を用いて除去する。
【0075】
さらに、図6のステップS29でPad酸化膜除去工程において、パッド酸化膜3をフッ酸を含むエッチャントで除去した後に、図6のステップS30の低耐圧部レジストカバー工程および図6のステップS31の高耐圧部フィールドエッチング工程において、図10に示すように、フォトリソ技術により、高耐圧トランジスタ形成領域上のフォトレジスト膜10を開口し、高耐圧素子形成領域のトレンチ分離埋め込み絶縁膜であるプラズマ酸化膜6をエッチングして、各プラズマ酸化膜6がそれぞれシリコン表面より30nm以上高くならないように所定量だけ除去する。
【0076】
さらに、フォトレジスト膜10を除去して図11の素子分離領域形成ステップに示すようなトレンチ素子分離領域(プラズマ酸化膜6)を形成する。
【0077】
続いて、図6のステップS32の高耐圧ゲート酸化工程において、図12に示すように基板全面に8〜20nmの熱酸化膜11を形成する。さらに、図6のステップS33の厚膜ゲートデポジション工程において、図12に示すように、基板全面に20nmの熱酸化膜11を形成した後に、プラズマCVD法で酸化膜をデポジションし、高耐圧用のゲート絶縁膜12となる材料膜12Aを形成する。この高耐圧用のゲート絶縁膜12となる材料膜12Aの膜厚は、50〜200nmが好適である。さらに、ゲート絶縁膜形成工程において、図13に示すように、フォトリソ技術により、高耐圧トランジスタのチャネル形成領域を含む領域をフォトレジスト膜(図示せず)で覆い、その以外の領域を開口して高耐圧用のゲート絶縁膜12となる材料膜12Aをエッチング除去して高耐圧用のゲート酸化膜12を形成する。
【0078】
その後、図6のステップS34の高耐圧用ウェル領域形成工程において、図14に示すように、フォトリソ技術を用いて、高耐圧領域をフォトレジスト膜(図示せず)で開口し、ボロン等のP型イオンのイオン注入を行って、高耐圧用ウェル領域としてウェル2aを形成する。
【0079】
さらに、図6のステップS35での低耐圧用ウェル領域形成工程において、図15に示すように、フォトリソ技術を用いて、低耐圧領域をフォトレジスト膜(図示せず)で開口して、ボロン等のP型イオンのイオン注入を行って、低耐圧用ウェル領域としてウェル2bを形成する。
【0080】
さらに、図6のステップS36での高耐圧用ドリフト層形成工程において、図16に示すように、高耐圧素子形成領域内の所定領域に、リンなどのN型イオンのイオン注入を行い、ドリフト層8,9を形成する。
【0081】
次に、図6のステップS37での低耐圧用ゲート熱酸化工程において、図17に示すように、基板全面にさらに熱酸化処理を行って、低耐圧素子20bのゲート絶縁膜として膜厚が14nm程度の熱酸化膜11aを形成する。熱酸化膜11aは熱酸化膜11を除去後に再び形成してもよい。
【0082】
さらに、図6のステップS38のゲート電極形成工程において、図17に示すように、高耐圧用の熱酸化膜11およびゲート酸化膜12上と、低耐圧用のゲート絶縁膜としての熱酸化膜11a上にゲート電極13をそれぞれ形成する。さらに、図6のステップS39のソース/ドレイン形成工程において、図17に示すように、ソース領域14およびドレイン領域15を形成し、図6のステップS40の配線形成工程において、図17に示すように、基板全面に層間絶縁膜16を形成した後に、層間絶縁膜16内に、ソース領域14およびドレイン領域15とそれぞれ接続するコンタクトプラグ17を形成し、これらの各コンタクトプラグ17上に接続するようにメタル電極18,19の形成をそれぞれ行う。以上によって、同一半導体基板2上に高耐圧トランジスタ20aと低耐圧トランジスタ20bを形成することができる。21はN型の電界緩和領域(LDD領域)である。
【0083】
以上により、本実施形態1によれば、同一の半導体基板2上に、トレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)によって素子分離された高耐圧素子20aと低耐圧素子20bを設けた半導体装置1において、高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の表面高さが低耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の表面高さよりも低く形成されている。高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜(プラズマ酸化膜6)の表面高さが、高耐圧素子20aのチャネルを形成する半導体基板2の表面に対して−10〜60nm(より好ましくは−10〜30nm)だけ高くなるように形成されている。
【0084】
また、CMPストッパ窒化膜除去工程後に高耐圧素子形成領域以外をフォトレジスト膜10で覆い、高耐圧素子形成領域のフィールド酸化膜(トレンチ分離絶縁膜としてのプラズマ酸化膜6)を選択的にエッチングして、高耐圧素子20aの形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さを低耐圧素子20bの形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さよりも低く形成するエッチング工程と、高耐圧素子20aのゲート酸化膜12をCVD法で形成する工程とを有している。
【0085】
これによって、低耐圧素子特性への影響なく、従来、逆テーパポケット部に発生していたボイドEを低減するため、耐圧特性および動作特性が安定した高耐圧素子を組み込むことができる。これによって、トレンチ分離構造での良好な電気的特性と安定した信頼性を備えた高耐圧素子と微細な低耐圧素子を共存させた半導体装置1を得ることができる。
【0086】
このように、図7〜図17に示す製造工程により形成される高耐圧素子20aと低耐圧素子20bは、図1に示したように、それぞれ高耐圧用、低耐圧用にトレンチ分離埋め込み絶縁膜の高さがチャネルを形成するシリコン表面に対して、最適に形成されているため、良好な電気的特性と、安定した信頼性特性を得ることができる。
【0087】
なお、上記実施形態1において、高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜としてのプラズマ酸化膜6の表面高さが低耐圧素子20bの形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜としてのプラズマ酸化膜6の表面高さよりも低く形成されているが、これによって、高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜が低く形成されたことから、高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜が元の高い場合に比べて、低耐圧トランジスタ特性への影響なく、耐圧特性および動作特性が安定した高耐圧素子を組み込むことができるという本発明の目的を達成することができる。
【0088】
以上のように、本発明の好ましい実施形態1を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、例えば液晶ドライバやLEDドライバなど、低耐圧のロジックと高耐圧素子が搭載されたシステムLSIなどを構成する半導体装置およびその製造方法に関し、特に、素子分離領域を有する半導体装置およびその製造方法の分野において、低耐圧トランジスタ特性への影響なく、従来、逆テーパポケット部に発生していたボイドを低減するため、耐圧特性および動作特性が安定した高耐圧素子を組み込むことができる。これによって、トレンチ分離構造での良好な電気的特性と安定した信頼性を備えた高耐圧素子と微細な低耐圧素子を共存させた半導体装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 半導体装置
2 半導体基板
2a,2b ウェル
3 パッド酸化膜
4 SIN膜
5 トレンチ
5a トレンチ酸化膜
6 プラズマ酸化膜(トレンチ分離絶縁膜)
7 熱酸化膜
8,9 ドリフト領域
10 フォトレジスト膜
11 熱酸化膜
11a ゲート絶縁膜
12 高耐圧用のゲート絶縁膜
12a CVD絶縁膜
12A 材料膜
13 ゲート電極
14 ソース領域
15 ドレイン領域
16 層間膜
17 コンタクトプラグ
18 ソース電極(メタル電極)
19 ドレイン電極
20a 高耐圧素子
20b 低耐圧素子
21 電界緩和領域(LDD領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の半導体基板上に、トレンチ分離絶縁膜によって素子分離された高耐圧素子と低耐圧素子を設けた半導体装置において、
該高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さが該低耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さよりも低く形成されている半導体装置。
【請求項2】
前記高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さが、前記高耐圧素子のチャネルを形成する半導体基板の表面に対して−10〜60nmだけ高くなるように形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さが、前記高耐圧素子のチャネルを形成する半導体基板の表面に対して−10〜30nmだけ高くなるように形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記高耐圧素子は、
前記半導体基板のウェル上の所定領域に設けられた第1ゲート絶縁膜と、該第1ゲート絶縁膜上に設けられた第1ゲート電極と、該ウェル内の表層に、該第1ゲート電極を間に挟んで互いに対向する位置にそれぞれ設けられた、該ウェルと逆導電型の第1ソース領域および第1ドレイン領域とを有し、前記トレンチ分離絶縁膜が、該高耐圧素子と該低耐圧素子との間および、該第1ゲート電極下方のチャネル領域と該第1ソース領域および該第1ドレイン領域との間にそれぞれ設けられている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記低耐圧素子は、
前記半導体基板のウェル上の所定領域に設けられた第2ゲート絶縁膜と、該第2ゲート絶縁膜上に設けられた第2ゲート電極と、該ウェル内の表層に、前記第2ゲート電極を間に挟んで互いに対向する位置にそれぞれ設けられた、該ウェルと逆導電型の第2ソース領域および第2ドレイン領域とを有し、前記低耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さが、該低耐圧素子のチャネルを形成する半導体基板の表面よりも少なくとも30nm高くなるように形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記高耐圧素子のゲート絶縁膜の膜厚は50〜200nmである請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記高耐圧素子のゲート絶縁膜はHDP(高密度プラズマ膜)またはHTO(高温酸化膜)のCVD絶縁膜である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記高耐圧素子のゲート絶縁膜は前記低耐圧素子のゲート絶縁膜に比べて厚膜に構成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
同一の半導体基板上に、トレンチ分離絶縁膜によって素子分離された高耐圧素子と低耐圧素子を設けた半導体装置の製造方法において、
CMPストッパ窒化膜除去工程後に高耐圧素子形成領域以外をフォトレジスト膜で覆い、高耐圧素子形成領域のフィールド酸化膜を選択的にエッチングして、該高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さを該低耐圧素子の形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さよりも低く形成するエッチング工程と、該高耐圧素子のゲート酸化膜をCVD法で形成する工程とを有する半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記高耐圧素子形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さを、該高耐圧素子のチャネルを形成する半導体基板の表面に対して−10〜60nmとなるように形成する請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記高耐圧素子の形成領域におけるトレンチ分離絶縁膜の表面高さを、該高耐圧素子のチャネルを形成する半導体基板の表面に対して−10〜30nmとなるように形成する請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記高耐圧素子のゲート絶縁膜を50〜200nmの膜厚で形成する請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記高耐圧素子のゲート絶縁膜をHDPまたはHTOのCVD絶縁膜で形成する請求項9に記載の半導体製置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図26】
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【図32】
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【公開番号】特開2013−98444(P2013−98444A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241727(P2011−241727)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】