説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】 微小開口の孔の形成が容易で、断線が発生しにくく、且つオーバーエッチングによる電極等の再付着現象を発生させないようにする。
【解決手段】 有機系の第2の絶縁層22を珪素系の第1の絶縁層21と第3の絶縁層23で挟んで絶縁膜20を形成し、その絶縁膜に対して、異方性エッチングと異方性の強いエッチングを交互に繰り返すことにより、第2の絶縁層22部分に段部29を有し、基板側に向かって凸型の孔30を形成し、回路素子1の電極1aと絶縁膜表面との間を接続する配線部として蒸着される導電材が、段部29に堆積する導電材を介して一体化するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体を含む回路素子が形成された基板の表面を絶縁材で覆って平坦化し、その絶縁膜に対しエッチング処理を行って回路素子の一部を露出させる孔を形成し、その孔を埋めるように導電材を蒸着して、回路素子の一部に導通する配線部を形成する半導体装置の製造方法において、微小開口の孔の形成が容易で、配線部の接触不良を発生させず、また、電極等の再付着現象を生じさせないようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の基板(ウエハ)上に形成される回路素子のうち、例えば、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(以下、HBTと記す)は、エミッタ、ベース、コレクタの各層と、それら各層の表面に形成された電極とからなるメサ構造を有している。
【0003】
このようなメサ構造のHBTの各電極には比較的大きな段差があり、HBTと同一基板上に形成される他の回路素子との間を直接配線しようとすると、上記段差に起因して配線の断線を招く。
【0004】
これを解消するために、従来では、HBT等の回路素子が形成されている基板の凹凸のある表面を、ベンゾシクロブテン(BCB)やポリイミド等の低誘電率の有機材からなる絶縁膜で覆ってその表面全体を平坦化し、この絶縁膜にエッチング処理により孔を開けて回路素子の電極部等を露出させ、その孔の内部と絶縁膜の表面に金属等の導電材を蒸着して、絶縁膜の表面側から各回路素子の電極部に導通する配線部を形成している。
【0005】
この孔は、有機系の絶縁膜に対して例えばフッ素系ガスによる異方性エッチングを行うことで得られるが、孔が深い場合(絶縁膜が厚い場合)、その孔の内部に蒸着する導電材と、絶縁膜表面の孔の周りに蒸着する導電材との間に隙間が生じやすく、断線が発生する。
【0006】
これを解決する方法として、孔の形状として、電極側の開口が狭く絶縁膜表面側の開口が広いテーパー形状となるようにエッチングする技術が知られている。
【0007】
図10はその製造例を示すもので、始めに、図10の(a)のように、回路素子1の電極1aをBCB等の有機系の絶縁膜3で覆ってその表面全体を平坦化した後、その表面のうち、孔の形成予定部(レジスト穴4a)を除く領域をレジスト4により覆う。
【0008】
次に、図10の(b)、(c)のように、三フッ化メタン(CHF)と酸素(O)の混合ガスを用いた等方性エッチング行い、絶縁膜3にテーパー状の孔3aを形成した後、レジスト4を除去して、図10の(d)のように、導電材を蒸着して配線部6を形成する。
【0009】
このようにテーパー状の孔3aを形成することで、回路素子1の電極1a表面だけでなく、孔3aの傾斜面にも導電材が蒸着されて、絶縁膜3の表面の孔3aの周りの導電材との間の隙間が生じにくくなり、断線の発生を防ぐことができる。
【0010】
なお、上記のように有機系の絶縁膜3にテーパー状の孔3aを形成してから配線部5を形成する技術は、例えば次の特許文献1に開示されている。
【0011】
【特許文献1】特開平6−291097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記のように等方性エッチングによって有機系の絶縁膜3にテーパー状の孔3aを形成する方法では、エッチングレートが絶縁膜3と変わらないレジスト4も大きく後退して、目的の孔より大きな開口となってしまうため、微小開口の孔を近接して設けることができないという問題がある。
【0013】
また、回路素子1の電極間に段差がある場合、絶縁膜3の表面から各電極の間に介在する絶縁膜3の厚さが異なるが、その膜厚が大きい部分に合わせてエッチング時間を設定すると、膜厚が小さい部分ではオーバーエッチングとなって、回路素子1の電極自体が再スパッタ等により孔3aの側壁やレジスト4に再付着するという問題があった。
【0014】
本発明は、これらの問題を解決し、微小開口の孔の形成が容易で、断線が発生しにくく、且つオーバーエッチングによる電極等の再付着現象を発生させない半導体装置の製造方法および半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の半導体装置の製造方法は、
半導体素子を含む回路素子(1)が形成されている基板(10)の表面を絶縁膜で覆って平坦化する絶縁膜形成工程(S2)と、前記絶縁膜に対するエッチング処理で孔(30)を形成し、前記回路素子の一部(1a)を露出させる孔形成工程(S3)と、前記絶縁膜の表面側から前記孔を埋めるように導電材(31)を蒸着して、前記回路素子の一部に導通する配線部(32)を形成する配線部形成工程(S4)とを含む半導体装置の製造方法において、
前記絶縁膜形成工程は、
前記基板の表面を珪素系の第1の絶縁層で覆う段階(S2a)と、
前記第1の絶縁層の表面を有機系の第2の絶縁層で覆って該表面全体を平坦化する段階(S2b)と、
前記第2の絶縁層の表面を珪素系の第3の絶縁層で覆う段階(S2c)とを含み、
前記孔形成工程は、
前記第3の絶縁層の表面に、前記孔の形成予定部を除く部分にレジスト(24)を形成する段階(S3a)と、
前記レジストの表面側から異方性エッチング処理を行い、前記第3の絶縁層のうち前記レジストで覆われていない部分を除去して前記第2の絶縁層を露出させる第1エッチング段階(S3b)と、
前記レジストの表面側から異方性の強いエッチング処理を行い、前記露出した前記第2の絶縁層を除去して前記第1の絶縁層を露出させるとともに、前記レジストを後退させる第2エッチング段階(S3c)と、
前記レジストの表面側から異方性エッチング処理を行い、前記露出した前記第1の絶縁層を除去して前記回路素子の一部を露出させるととともに、前記第3の絶縁層のうち前記後退したレジストから露出している部分を除去し、さらに、前記第2の絶縁層に段部(29)を形成し、前記基板側に向かって凸型の孔を形成する第3エッチング段階(S3d)とを含んでいることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の請求項2の半導体装置の製造方法は、請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記孔形成工程は、
前記第3エッチング段階の後に異方性の強いエッチング処理を行い、前記第2の絶縁層の前記段部の位置を前記第1の絶縁層側に移動させる第4エッチング段階(S3e)を含んでいることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項3の半導体装置の製造方法は、請求項1または請求項2記載の半導体装置の製造方法において、
前記回路素子にはヘテロ接合バイポーラトランジスタが含まれ、該トランジスタの電極が前記配線部の導通対象であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項4の半導体装置の製造方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の絶縁層がベンゾシクロブテンによって形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項5の半導体装置の製造方法は、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の絶縁層および第3の絶縁層が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素のいずれかによって形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項6の半導体装置の製造方法は、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1エッチング段階および第3エッチング段階の前記異方性エッチングがフッ素系ガスを用いたエッチングであることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項7の半導体装置の製造方法は、請求項1〜6のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2エッチング段階および第4エッチング段階の前記異方性の強いエッチングが酸素ガスを用いたエッチングであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項8の半導体装置は、
前記請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法によって製造されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項9の半導体装置は、
表面に回路素子(1)が形成された基板(10)と、
前記基板の表面を覆う絶縁膜(20)と、
前記絶縁膜に対するエッチングにより形成され、前記回路素子の一部を露出させる孔(30)と、
前記孔の内部と前記絶縁膜の表面に対する導電材の蒸着により形成され、前記絶縁膜の表面側から前記回路素子の一部までの間を導通させる配線部(32)とを有する半導体装置において、
前記絶縁膜は、
前記基板の表面を覆う珪素系の第1の絶縁層(21)と、
前記第1の絶縁層を覆い、その表面が平坦化された有機系の第2の絶縁層(22)と、
前記第2の絶縁層を覆う珪素系の第3の絶縁層(23)とにより構成され、
前記絶縁膜を貫通する前記孔は、前記基板側に向かって凸型で、且つ該凸型の段部(29)が前記第2の絶縁層の中間部分に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
上記のように、本発明の半導体装置の製造方法では、有機系の第2の絶縁層を珪素系の第1および第3の絶縁層で挟んで構成される絶縁膜に対して、異方性エッチングと異方性の強いエッチングを交互に行い、第2の絶縁層の中間部に段部を有し基板側に向かって凸型の孔を形成し、この孔に対して導電材を蒸着して配線部を形成している。
【0025】
このため、孔の底に堆積する導電材と絶縁膜表面に堆積する導電材が段部に堆積する導電材を介して一体化されることになり、狭い開口で確実な導通を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した半導体装置の製造方法を示すフローチャートであり、図2〜図5は、製造過程中の半導体装置の局部的な断面図である。以下、図1のフローチャートと図2〜図5に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0027】
先ず始めに、図2のように、ベースとなる基板10(例えばGaAs基板)の上にHBT等を含む回路素子1を、その電極1aを含めて形成する(S1)。
【0028】
次に、絶縁膜形成工程S2に移行する。この絶縁膜形成工程では、図3の(a)のように、回路素子1の表面を、所定厚(例えば150nm)の珪素系の第1の絶縁層21で覆う(S2a)。この珪素系の第1の絶縁層21としては、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、酸化窒化珪素(SiNxOy)のいずれかが使用できる。また、この処理は例えば周知のCVD法によって行う。
【0029】
続いて、図3の(b)のように、第1の絶縁層21の表面に、前記したBCBやポリイミド等の有機材を塗布し、遠心処理により表面を平坦化して、有機系の第2の絶縁層22を形成する(S2b)。ここで、第2の絶縁層22の厚さは、電極1aの表面を基準として例えば500nmとなるようにしている。
【0030】
最後に、図3の(c)のように、第2の絶縁層22の表面を、第1の絶縁層21と同様の処理により、所定厚(例えば275nm)の珪素系の第3の絶縁層23で覆う(S2c)。これにより、3層構造の絶縁膜20が形成される。なお、第1の絶縁層21および第3の絶縁層23は、珪素系のものであれば多層構造であってもよい。
【0031】
次に、孔形成工程S3に移行する。この孔形成工程では、始めに、図4の(a)に示しているように、第3の絶縁層23の表面のうち、孔の形成予定部(レジスト穴24aから露出している部分)を除く領域にレジスト24を形成する(S3a)。
【0032】
続いて、フッ素系ガス(SF)による異方性エッチングを厚み方向に行い、図4の(b)のように、第3の絶縁層23のうちレジスト穴24aから露出している部分を除去して、レジスト穴24aと連続する層穴23aを形成し、第2の絶縁層22を露出させる(S3b)。
【0033】
さらに、酸素ガスによる異方性の強い反応性イオンエッチング処理(即ち、酸素プラズマエッチング処理)を行い、図4の(c)のように、第2の絶縁層22のうち、層穴23aから露出している部分を除去して、層穴23aと連続する層穴22aを形成し、第1の絶縁層21を露出させる(S3c)。なお、異方性の強いエッチングとは、等方性エッチングと異方性エッチングとの中間のエッチングで、厚さ方向へのエッチングの強さが、それと直交する方向へのエッチングの強さより大である。
【0034】
よって、レジスト24は、酸素ガスにより厚み方向だけでなく、斜め方向のイオン成分によってエッチングされて後退する。
【0035】
また、酸素プラズマでは珪素系の絶縁層21、23はエッチングされないため、第2の絶縁層22がエッチングされる際に、第3の絶縁層23がエッチングマスクとして働くことになる。また、層穴の下部には斜め方向のイオン成分が達しにくいため、絶縁膜22は後退しない。
【0036】
したがって、第2の絶縁層22の層穴22aの大きさは、第3の絶縁層23の層穴23aの大きさと等しく、図4の(a)の状態におけるレジスト24のレジスト穴24aから広がることはない。
【0037】
さらに、第2の絶縁層22がエッチアウトされても、第1の絶縁層21がエッチングストッパ層として働くので、オーバーエッチングによる電極1aの再付着を防止できる。
【0038】
続いて、フッ素系ガスにより珪素系膜厚400nm相当の異方性エッチング処理を行い、図4の(d)のように、第1の絶縁層21を除去して回路素子1の電極1aの一部を露呈させる(S3d)。
【0039】
このエッチング処理は異方性であるので、第1の絶縁層21の層穴21aの大きさは第2の絶縁層22の層穴22aの下部の大きさと等しく、図4の(a)の状態におけるレジスト穴24aの大きさが維持される。
【0040】
ただし、前処理でレジスト24が後退した分だけ、第3の絶縁層23の表面が露出しているので、この第3の絶縁層23の層穴23aがレジスト穴24aと一致する位置まで広がる。
【0041】
そして、この層穴23aが拡大した分、第2の絶縁層22もエッチングされて、層穴22aの上部側が大きくなり、上から100nmの位置に段部29が形成されることになる。
【0042】
続いて、有機系膜厚100nm相当の酸素ガスによる異方性エッチングを行って、図4の(e)のように、第2の絶縁層22の段部29を上から200nmの深さに下げる(S3e)。
【0043】
このとき、レジスト24は後退するが、珪素系の第3の絶縁層23はエッチングされないので、第2の絶縁層22のエッチングは深さ方向にのみ進行することになり、このエッチング時間を選ぶことにより、段部29の深さを任意に設定できる。なお、第2の絶縁層22が薄い場合には、この4番目のエッチング処理を省略することもできる。
【0044】
このようにして、電極1aの一部を露出させる基板側に向かって凸型の孔30が形成された後、レジスト24を除去して(S3f)、配線部形成工程S4に移行する。
【0045】
この配線部形成工程S4では、図5の(a)に示すように、第3の絶縁層23の表面側から孔30の中およびその周りに導電材31を蒸着する(なお、蒸着マスク処理は省略している)。
【0046】
ここで、孔30の底部(即ち電極1aの表面)に蒸着される導電材31a、段部29に蒸着される導電材31bおよび第3の絶縁層23の表面の蒸着される導電材31cは、図5の(b)のように、時間の経過とともに上方に堆積してその厚さが増加する。
【0047】
そして、所定時間が経過すると、孔30の底部上に堆積した導電材31aと段部29の上に堆積した導電材31bとが、互いの側方位置でオーバラップして確実に一体化し、同様に、段部29の上に堆積した導電材31bと第3の絶縁層23の表面上に堆積した導電材31cについても互いの側方位置でオーバラップして確実に一体化し、図5の(c)のように、回路素子1の電極1aと第3の絶縁層23の表面との間が、孔30の内周に沿って階段状に連続する導電材により接続されて、電極1aに対して電気的に確実に導通する配線部32が形成される。
【0048】
このように、本発明の半導体装置の製造方法では、有機系の第2の絶縁層22を珪素系の第1の絶縁層21と第3の絶縁層23で挟んで絶縁膜20を形成し、その絶縁膜に対して、異方性エッチングと異方性の強いエッチングを交互に繰り返すことにより、第2の絶縁層22部分に段部29を有し、基板側に向かって凸型の孔30を形成している。
【0049】
このため、回路素子1の電極1aと絶縁膜表面との間を接続する配線部として蒸着される導電材が、段部29に堆積する導電材を介して一体化し、断線のない導通路を形成することができる。
【0050】
また、エッチングによって形成される凸型の孔30の下部側の開口の大きさは、初期のレジスト穴とほぼ等しく、また、上部側の開口の大きさは、レジスト24の後退量が少なく且つ第3の絶縁層23によるマスク作用により大きく広がらないので、微小な開口で狭い領域に断線のない多数の配線部を設けることができ、集積度の高い半導体装置にも適用できる。
【0051】
上記例は、回路素子1の一つの電極1aに対する動作であったが、段差のある複数の電極に配線を行う場合でも、上記処理工程がそのまま使用できる。
【0052】
その一例として、図6に示すように、GaAs等の基板10上に回路素子1としてエミッタアップ型HBTが形成され、そのベース電極1a、エミッタ電極1bおよびコレクタ電極1cに対する配線を行う場合について説明する。
【0053】
絶縁膜形成工程S2では、図7の(a)〜(c)のように、回路素子1の表面を前記同様に珪素系の所定厚(例えば150nm)の第1の絶縁層21で覆い、続いて、第1の絶縁層21の表面を、前記したBCB等の有機系の第2の絶縁層22で覆い、その表面全体を平坦化し、最後に、第2の絶縁層22の表面を珪素系の所定厚(例えば275nm)の第3の絶縁層23で覆う。
【0054】
このとき、第2の絶縁層22の厚さは各電極の高さによって異なるが、ここでは、最も低い位置のコレクタ電極1cに重なる部分の厚さが500nmとする。
【0055】
孔形成工程S3では、始めに、図8の(a)に示しているように、第3の絶縁層23の表面のうち、孔の形成予定部(レジスト穴24a〜24c)を除く部分にレジスト24を形成する(S3a)。
【0056】
続いて、フッ素系ガス(SF)による異方性エッチングを行い、図8の(b)のように、第3の絶縁層23のうちレジスト穴24a〜24cから露出している部分を除去し、各レジスト穴24a〜24cに連続する層穴23a〜23cを形成し、第2の絶縁層22を露出させる(S3b)。
【0057】
さらに、酸素ガスによる異方性の強いエッチング処理を行い、図8の(c)のように、第2の絶縁層22のうち、層穴23a〜23cから露出している部分を除去し、層穴23a〜23cにそれぞれ連続する層穴22a〜22cを形成し、第1の絶縁層21をそれぞれ露出させる(S3c)。
【0058】
このとき、前記同様にレジスト24は第3の絶縁層23に対して後退し、層穴23a〜23cが広がるが、酸素プラズマでは珪素系の絶縁層21、23はエッチングされないため、第2の絶縁層22は、第3の絶縁層23をエッチングマスクとしてエッチングされることになる。したがって、各層穴22a〜22cの大きさ図8の(a)の状態におけるレジスト穴24a〜24cの孔径から広がることはない。
【0059】
さらに、第2の絶縁層22に対するエッチングは、最初にエミッタ電極1bの上部が完了し、続いてベース電極1aの上部が完了し、最後にコレクタ電極1cの上部が完了することになり、コレクタ電極1cの上部のエッチングが完了するまでに、エミッタ電極1bおよびコレク電極1aの上部側はオーバーエッチングとなるが、その電極表面を覆っている第1の絶縁層21がエッチングストッパ層として働くので、オーバーエッチングによる電極1a、1bの再付着を防止できる。また、同様にコレクタ電極1cの再付着も防止できる。
【0060】
続いて、フッ素系ガスにより珪素系膜厚400nm相当の異方性エッチング処理を行い、図8の(d)のように、第1の絶縁層21のうち、層穴22a〜22cから露出している部分を除去して、層穴22a〜22cと連続する層穴21a〜21cを形成し、回路素子1の各電極1a〜1cの一部をそれぞれ露出させる(S3d)。
【0061】
このエッチング処理は異方性であるので、第1の絶縁層21の穴が第2の絶縁層22の穴より広がることはなく、図8の(a)の状態におけるレジスト24の各穴径が維持される。
【0062】
一方、前処理で各レジスト穴24a〜24cが広がった分だけ、第3の絶縁層23の表面が露出しているので、第3の絶縁層23の各層穴23a〜23cがそれぞれレジスト穴24a〜24cと一致する位置まで広がる。そして、層穴23a〜23cが拡大した分、第2の絶縁層22もエッチングされて、層穴22a〜22cの上部側が大きくなり、上から100nmの位置にそれぞれ段部29a〜29cが形成されることになる。
【0063】
続いて、第2の絶縁層(有機系膜)厚100nm相当の酸素ガスによる異方性の強いエッチングを行って、図8の(e)のように、第2の絶縁層22の段部29a〜29cを上から200nmの深さに下げる(S3e)。
【0064】
このとき、各レジスト穴24a〜24cは広がるが、珪素系の第3の絶縁層23はエッチングされないので、第2の絶縁層22に対するエッチングは深さ方向にのみ進行することになる。よって、このエッチング時間を選ぶことにより、段部29a〜29cの深さを任意に設定できる。また、前記同様に、第2の絶縁層22が全体的に薄い場合(即ち、電極間の段差が小さいとき)には、この4番目のエッチング処理を省略することもできる。
【0065】
また、この処理で、最も高い位置のエミッタ電極1bの上部側の第2の絶縁層22は薄いためエッチングが下端まで進み段部29bは無くなるが、第1の絶縁層21がエッチングされずに残り、この第1の絶縁層21が段部を形成することになる。
【0066】
このようにして、各電極1a〜1cの一部を露呈させ、内部に段部を有する孔30a〜30cが形成された後、図8の(f)のようにレジスト24を除去して(S3f)、配線部形成工程S4に移行する。
【0067】
この配線部形成工程S4では、図8の(f)の状態で、第3の絶縁層23の表面側から各孔30a〜30cの中およびその周りに導電材を所定時間蒸着する(蒸着マスク処理は省略)。
【0068】
この蒸着処理により、前記同様に、孔30a、30cの底部(即ち各電極1a、1cの表面)に堆積する導電材と、その段部29a、29cに堆積する導電材とは、互いの側方位置でオーバラップして確実に一体化し、同様に、段部29a、29cに堆積する導電材と、第3の絶縁層23の表面の孔30a、30cの周りに堆積する導電材との間も互いの側方位置でオーバラップして確実に一体化する。
【0069】
したがって、回路素子1のベース電極1a、コレクタ電極1cと、孔30a、30cの周りの導電材との間は、孔30a、30cの内周に沿って階段状に連続する導電材により接続されて、図9に示すように、電気的に確実に接続された階段状の配線部32a、32cが形成される。
【0070】
また、孔30bにおいて、回路素子1のエミッタ電極1bの表面に堆積する導電材と、第1の絶縁層21の上に堆積する導電材とが、互いの側方位置でオーバラップして確実に一体化し、第1の絶縁層21の上に堆積する導電材と、第3の絶縁層23の表面の孔30bの周りに堆積する導電材との間も互いの側方位置でオーバラップして確実に一体化する。
【0071】
したがって、回路素子1のエミッタ電極1bと孔30bの周りの導電材との間は、孔30bの内周に沿って階段状に連続する導電材により接続されて、図9に示しているように、電気的に確実に接続された階段状の配線部32bが形成される。
【0072】
このように、段差のある複数の電極1a〜1cに対しても、確実に導通する配線部32a〜32cを形成することができ、また、開口が広がらないので各配線部32a〜32cを近接して設けることができる。
【0073】
上記方法により構成された半導体装置は、配線部が確実に回路素子に接続されているので信頼性が高く、また、孔の開口が小さくて済むので、高い集積度で構成することができる。
【0074】
なお、図9のように形成された半導体装置の各配線部32a〜32cは、例えば外部接続用端子(図示せず)に配線され、樹脂モールドされてHBT素子となる。また、HBT以外にダイオード、抵抗、コンデンサ等の回路素子が形成されている半導体素子についても上記同様の処理により、各回路素子に対して確実に導通する配線部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態の処理手順を示すフローチャート
【図2】本発明の実施形態の工程を説明するための断面図
【図3】本発明の実施形態の工程を説明するための断面図
【図4】本発明の実施形態の工程を説明するための断面図
【図5】本発明の実施形態の工程を説明するための断面図
【図6】本発明の実施形態の工程を説明するための断面図
【図7】本発明の実施形態の工程を説明するための断面図
【図8】本発明の実施形態の工程を説明するための断面図
【図9】本発明の実施形態の工程を説明するための断面図
【図10】従来方法の工程を説明するための断面図
【符号の説明】
【0076】
1……回路素子、1a〜1c……電極、10……基板、20……絶縁膜、21……第1の絶縁層、21a〜21c……層穴、22……第2の絶縁層、22a〜22c……層穴、23……第3の絶縁層、23a〜23c……層穴、24……レジスト、24a〜24c……レジスト穴、29、29a〜29c……段部、30、30a〜30c……孔、31、31a〜31c……導電材、32、32a〜32c……配線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を含む回路素子(1)が形成されている基板(10)の表面を絶縁膜で覆って平坦化する絶縁膜形成工程(S2)と、前記絶縁膜に対するエッチング処理で孔(30)を形成し、前記回路素子の一部(1a)を露出させる孔形成工程(S3)と、前記絶縁膜の表面側から前記孔を埋めるように導電材(31)を蒸着して、前記回路素子の一部に導通する配線部(32)を形成する配線部形成工程(S4)とを含む半導体装置の製造方法において、
前記絶縁膜形成工程は、
前記基板の表面を珪素系の第1の絶縁層で覆う段階(S2a)と、
前記第1の絶縁層の表面を有機系の第2の絶縁層で覆って該表面全体を平坦化する段階(S2b)と、
前記第2の絶縁層の表面を珪素系の第3の絶縁層で覆う段階(S2c)とを含み、
前記孔形成工程は、
前記第3の絶縁層の表面に、前記孔の形成予定部を除く部分にレジスト(24)を形成する段階(S3a)と、
前記レジストの表面側から異方性エッチング処理を行い、前記第3の絶縁層のうち前記レジストで覆われていない部分を除去して前記第2の絶縁層を露出させる第1エッチング段階(S3b)と、
前記レジストの表面側から異方性の強いエッチング処理を行い、前記露出した前記第2の絶縁層を除去して前記第1の絶縁層を露出させるとともに、前記レジストを後退させる第2エッチング段階(S3c)と、
前記レジストの表面側から異方性エッチング処理を行い、前記露出した前記第1の絶縁層を除去して前記回路素子の一部を露出させるととともに、前記第3の絶縁層のうち前記後退したレジストから露出している部分を除去し、さらに、前記第2の絶縁層に段部(29)を形成し、前記基板側に向かって凸型の孔を形成する第3エッチング段階(S3d)とを含んでいることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記孔形成工程は、
前記第3エッチング段階の後に異方性の強いエッチング処理を行い、前記第2の絶縁層の前記段部の位置を前記第1の絶縁層側に移動させる第4エッチング段階(S3e)を含んでいることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記回路素子にはヘテロ接合バイポーラトランジスタが含まれ、該トランジスタの電極が前記配線部の導通対象であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の絶縁層がベンゾシクロブテンによって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の絶縁層および第3の絶縁層が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素のいずれかによって形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1エッチング段階および第3エッチング段階の前記異方性エッチングがフッ素系ガスを用いたエッチングであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2エッチング段階および第4エッチング段階の前記異方性の強いエッチングが酸素ガスを用いたエッチングであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置。
【請求項9】
表面に回路素子(1)が形成された基板(10)と、
前記基板の表面を覆う絶縁膜(20)と、
前記絶縁膜に対するエッチングにより形成され、前記回路素子の一部を露出させる孔(30)と、
前記孔の内部と前記絶縁膜の表面に対する導電材の蒸着により形成され、前記絶縁膜の表面側から前記回路素子の一部までの間を導通させる配線部(32)とを有する半導体装置において、
前記絶縁膜は、
前記基板の表面を覆う珪素系の第1の絶縁層(21)と、
前記第1の絶縁層を覆い、その表面が平坦化された有機系の第2の絶縁層(22)と、
前記第2の絶縁層を覆う珪素系の第3の絶縁層(23)とにより構成され、
前記絶縁膜を貫通する前記孔は、前記基板側に向かって凸型で、且つ該凸型の段部(29)が前記第2の絶縁層の中間部分に形成されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−156768(P2006−156768A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346231(P2004−346231)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】