説明

半導体装置の製造方法及び記憶媒体

【課題】被エッチング膜の上に積層された、有機膜と、その有機膜の上に積層されたレジストパターンが開口したレジスト膜とを備える、被エッチング膜のエッチングマスクとなる複数層レジストの前記有機膜に、高い垂直性を有するマスクパターンを形成すること。
【解決手段】前記複数層レジストの前記有機膜を、二酸化炭素と水素とを含む処理ガスをプラズマ化して得たプラズマにより前記レジストパターンに沿ってエッチングして、前記被エッチング膜をエッチングするためのマスクパターンを形成する。実験により複数層レジストを構成する有機膜に垂直性が高いマスクパターンを得ることができることが示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被エッチング膜のエッチングマスクとなる複数層レジストを構成する有機膜をエッチングしてマスクパターンを形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、例えば酸化シリコン(SiO2)からなる層間絶縁膜中に形成されるメタル配線の微細化は益々進んでおり、この微細化に対応するために前記層間絶縁膜上に例えば有機膜とSOG(Spin On Grass)法より形成されたSiO膜とフォトレジスト膜とを下からこの順序で積層した三層レジストを形成する場合がある。
【0003】
具体的にこの三層レジストを用いた配線形成方法について説明すると、前記フォトレジスト膜にはフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成し、その後このレジストパターンに沿ってSiO2膜をエッチングし、その側壁が斜めになり、下方へ向かうほどその開口面積が狭まるように当該SiO2膜にマスクパターンを形成する。然る後このSiO2膜に形成された前記マスクパターンに従って、その下層の有機膜をエッチングして当該有機膜にマスクパターンを形成し、その後各層に形成されたパターンに従って絶縁膜をエッチングして、前記レジストパターンの線幅よりも線幅の小さい微細な配線を埋め込むためのコンタクトホールやビアホールを構成する凹部を形成する。従来は前記有機膜をエッチングするにあたり、プラズマ化したO2ガスを用いていた。
【0004】
ところで半導体装置の動作についてより一層の高速化を図るために層間絶縁膜の比誘電率を低くすることが要求されており、層間絶縁膜として従来使用されていたSiO2に代わり、それよりも比誘電率が低い多孔質なシリコン、炭素、酸素及び水素を含む膜(SiCOH膜)が用いられる場合がある。しかしこのSiCOH膜は酸素プラズマに曝されると、ダメージを受けやすいという性質を持っている。またプラズマ化したO2ガスを用いて有機膜をエッチングすると、当該有機膜を等方的にエッチングする、つまり下方向だけでなく横方向にもエッチングする性質が強い酸素(O)ラジカルが発生することにより、有機膜にボーイング形状と呼ばれるパターンの側壁の縦断面が弓状に横方向に広がり、その側壁の垂直性が低いマスクパターンが形成されてしまう場合がある。このようにボーイング形状を有するマスクパターンが形成されると、絶縁膜のエッチング幅も大きくなるため、十分に絶縁膜の配線の線幅を小さくすることができないおそれがあった。
【0005】
そこで本発明者らはエッチングガスについて検討を重ねた結果、CO2ガスのプラズマを用いて有機膜のエッチングを行うことを考案した。このCO2ガスのプラズマを用いればSiCOH膜へのダメージを抑えることができ、また、O2ガスのプラズマを用いる場合に比べて酸素ラジカルの発生量を低くすることができるため、有機膜が等方的にエッチングされることが抑えられる結果として、当該有機膜に形成されるマスクパターンがボーイング形状となることが抑えられ、その有機膜及びその下層の絶縁膜のエッチング幅を精度高く制御できるので有効である。しかし配線の微細化が進むにつれて、さらに高い垂直性をもって有機膜をエッチングすることが求められており、このようにCO2ガスのプラズマを用いても、その要請に応えることができるように十分にボーイング形状の発生を抑えることが難しくなってきた。
【0006】
なお特許文献1には、H2及びCO2からなるガスを用いて低誘電率膜をエッチングすることが示されているが、本発明のようにマスクとなる複数層レジストの有機膜をエッチングすることは記載されていない。
【特許文献1】特開2002−16050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであって、その目的は基板に形成された被エッチング膜の上に積層された、有機膜と、その有機膜の上に積層されたレジストパターンが開口したレジスト膜とを備える、被エッチング膜のエッチングマスクとなる複数層レジストの前記有機膜に、高い垂直性を有するマスクパターンを形成することができる半導体装置の製造方法及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体装置の製造方法は、基板に形成された被エッチング膜の上に積層された、有機膜と、その有機膜の上に積層されたレジストパターンが開口したレジスト膜とを備える、被エッチング膜のエッチングマスクとなる複数層レジストの前記有機膜を、二酸化炭素と水素とを含む処理ガスをプラズマ化して得たプラズマにより前記レジストパターンに沿ってエッチングして、前記被エッチング膜をエッチングするためのマスクパターンを形成する工程を含むことを特徴とする。
【0009】
有機膜は、例えば基板に形成されたシリコン、炭素、酸素及び水素を含む低誘電率膜に埋め込まれており、その場合前記有機膜は、犠牲膜であり、また前記凹部は多層配線構造における上層と下層との配線同士を接続する電極を埋め込むためのビアホールであってもよい。前記有機膜は例えば炭素を主成分とする。
【0010】
本発明の記憶媒体は、基板に対してエッチングを行うプラズマ処理装置に用いられ、コンピュータ上で動作するコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは上述の半導体装置の製造方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二酸化炭素及び水素を含む処理ガスをプラズマ化して得たプラズマを用いて、複数層レジストにおける有機膜のエッチングを行うことで、後述の実験結果に示されるように複数層レジストを構成する有機膜に垂直性が高いマスクパターンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
先ず本発明の半導体装置の製造方法を実施するプラズマ処理装置の一例について、図1を参照しながら説明する。図1に示したプラズマ処理装置1は、例えば内部が密閉空間となっている真空チャンバからなる処理室11と、この処理室11内の底面中央に配設された載置台2と、載置台2の上方に当該載置台2と対向するように設けられた上部電極3とを備えている。
【0013】
前記処理室11は電気的に接地されており、また処理室11の底面の排気口12には排気管14を介して排気装置13が接続されている。この排気装置13には図示しない圧力調整部が接続されており、この圧力調整部は後述の制御部10Aからの信号によって処理室11内を真空排気して所望の真空度に維持するように構成されている。処理室11の壁面にはウエハWの搬送口15が設けられており、この搬送口15はゲートバルブ16によって開閉可能となっている。
【0014】
載置台2は、下部電極21とこの下部電極21を下方から支持する支持体22とからなり、処理室11の底面に絶縁部材23を介して配設されている。載置台2の上部には静電チャック24が設けられ、この静電チャック24を介して載置台2上にウエハWが載置される。静電チャック24は絶縁材料からなり、この静電チャック24の内部には高圧直流電源25に接続された電極箔26が設けられている。高圧直流電源25からこの電極箔26に電圧が印加されることによって静電チャック24表面に静電気が発生して、載置台2に載置されたウエハWは静電チャック24に静電吸着されるように構成されている。静電チャック24には後述するバックサイドガスをこの静電チャック24の上部に放出するための貫通孔24aが設けられている。
【0015】
載置台2内には所定の冷媒(例えば、従来公知のフッ素系流体、水等)が通る冷媒流路27が形成されており、冷媒がこの冷媒流路27を流れることで載置台2が冷却され、この載置台2を介して載置台2上に載置されたウエハWが所望の温度に冷却されるように構成されている。また、下部電極21には図示しない温度センサーが装着されており、この温度センサーによって下部電極21上のウエハWの温度が常時監視されている。
【0016】
また載置台2の内部にはHe(ヘリウム)ガス等の熱伝導性ガスをバックサイドガスとして供給するガス流路28が形成されており、このガス流路28は載置台2の上面の複数箇所で開口している。これらの開口部は静電チャック24に設けられた前記貫通孔24aと連通しており、ガス流路28にバックサイドガスを供給すると、このバックサイドガスは貫通孔24aを介して静電チャック24の上部へ流出する。このバックサイドガスが静電チャック24と静電チャック24上に載置されたウエハWとの隙間全体に均等に拡散することにより、この隙間における熱伝導性が高まるようになっている。
【0017】
前記下部電極21はハイパスフィルタ(HPF)2aを介して接地され、また下部電極21には高周波例えば13.56MHzの高周波電源21aが整合器21bを介して接続されている。また下部電極21の外周縁には静電チャック24を囲むようにフォーカスリング29が配置され、プラズマ発生時にこのフォーカスリング29を介してプラズマが載置台2上のウエハWに集束するように構成されている。
【0018】
上部電極3は中空状に形成され、その下面には処理室11内へ処理ガスを分散供給するための多数の孔31が例えば均等に分散して形成されてガスシャワーヘッドを構成している。また上部電極3の上面中央にはガス導入管32が設けられ、このガス導入管32は絶縁部材17を介して処理室11の上面中央を貫通している。そしてこのガス導入管32は上流側において、例えば5本に分岐して分岐管32A〜32Eを形成し、夫々バルブ33A〜33Eと流量制御部34A〜34Eとを介してガス供給源35A〜35Eに接続されている。このバルブ33A〜33E、流量制御部34A〜34Eはガス供給系36を構成して後述の制御部10Aからの制御信号によって各ガス供給源35A〜35Cのガス流量及び給断の制御を行うことができる。なおこの例ではガス供給源35A、ガス供給源35B、ガス供給源35C、ガス供給源35D、ガス供給源35Eは、夫々CFガス、Cガス、Nガス、Hガス、COガスの供給源である。
【0019】
上部電極3はローパスフィルタ(LPF)37を介して接地されており、またこの上部電極3には高周波電源21aよりも周波数の高い高周波例えば60MHzの高周波電源3aが整合器3bを介して接続されている。上部電極3に接続された高周波電源3aからの高周波は、処理ガスをプラズマ化するためのものであり、下部電極21に接続された高周波電源21aからの高周波は、ウエハWにバイアス電力を印加することでプラズマ中のイオンをウエハW表面に引き込むものである。尚、高周波電源3a,21aは夫々制御部10Aに接続されており、制御信号に従って上部電極3及び下部電極21に供給される電力が制御される。
【0020】
また、このプラズマ処理装置1には例えばコンピュータからなる制御部10Aが設けられており、この制御部10Aはプログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えており、前記プログラムには制御部10Aからプラズマ処理装置1の各部に制御信号を送り、後述の各ステップを進行させることでウエハWに対してプラズマ処理を施すように命令が組み込まれている。また、例えばメモリには処理圧力、処理時間、ガス流量、電力値などの処理パラメータの値が書き込まれる領域を備えており、CPUがプログラムの各命令を実行する際これらの処理パラメータが読み出され、そのパラメータ値に応じた制御信号がこのプラズマ処理装置1の各部位に送られることになる。このプログラム(処理パラメータの入力操作や表示に関するプログラムも含む)は、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、MO(光磁気ディスク)などの記憶部10Bに格納されて制御部10Aにインストールされる。
【0021】
次に前記プラズマ処理装置1に搬入され、処理を受ける基板である半導体ウエハ(以下ウエハと呼ぶ)W表面に形成された膜構造について図2(a)を用いて説明する。ウエハWにはTEOS(テトラエトキシシラン)を成膜原料として用いて形成された絶縁膜であるSiO2膜41が設けられており、このSiO2膜41上には例えばその厚さが200nmである有機膜42が形成されている。有機膜42は炭素を主成分としており、例えば炭素の含有率が80質量%以上である。
【0022】
有機膜42上にはSOG(Spin On Grass)法により形成されたSiO2膜43が形成されており、このSiO2膜43の厚さは例えば70nmである。SiO2膜43上には例えばその厚さが150nmに形成されたフォトレジスト(PR)膜44が積層されている。この例では有機膜42、SiO2膜43及びフォトレジスト膜44により三層レジスト4が形成されており、有機膜42が三層レジスト4の最下層膜を構成している。
【0023】
フォトレジスト膜44はArFを光源として露光された後、現像されており、図中L1で示す線幅(CD)が例えば65nmであるレジストパターン45が開口し、レジストパターン45の底部にはSiO2膜43が露出している。SiO2膜43はハードマスクとして機能すると共に後述するようにレジストパターンに沿ってエッチングされたときに下方に向かうようにつれて開口面積が狭くなるようなマスクパターン46が形成されることで有機膜42のエッチング幅がレジストパターン45のCDよりも小さくなるように制御する役割を有している。
【0024】
次に前記プラズマ処理装置1を用いた本発明の半導体装置の製造方法の実施の形態について説明する。先ずゲートバルブ16を開いて処理室11内へ図示しない搬送機構により上述の膜構造を備えた300mm(12インチ)ウエハWを搬入する。そしてこのウエハWを載置台2上に水平に載置した後、ウエハWを載置台2に静電吸着させる。その後搬送機構を処理室11から退去させてゲートバルブ16を閉じる。引き続きガス流路28からバックサイドガスを供給して、ウエハWを所定の温度例えばその上部、高さ中央部、下部が夫々60、60、20℃になるように温調する。その後例えば以下のステップを行う。
【0025】
(ステップ1:SiO2膜43のエッチング)
排気装置13により排気管14を介して処理室11内の排気を行う一方で、ガス供給系36から例えばCFガスを200sccm、C8ガスを5sccmの流量で夫々上部電極3を介してウエハW表面に供給して、処理室11内を所定の真空度例えば20Pa(150mTorr)に維持する。その後、高周波電源3aから整合器21bを介して60MHzのプラズマ生成用の高周波電圧が例えば500Wで上部電極3に印加され、CFガス及びC8ガスをプラズマ化すると共に、高周波電源41aから整合器3bを介して13.56MHzのバイアス用の高周波が例えば400Wで下部電極51に印加される。
【0026】
プラズマ中に含まれる炭素(C)とフッ素(F)との化合物の活性種によりフォトレジスト膜44をマスクとしてレジストパターン45に沿ってSiO2膜43がエッチングされ、深さ方向にマスクパターン46が形成されると共にフォトレジスト膜44の表面がエッチングされる。前記活性種はSiO2に対して横方向にエッチングし難いため、マスクパターン46は深さ方向に向かうに従ってその幅が狭くなるように形成され、そして図2(b)に示すようにマスクパターン46の底部に有機膜42が露出した段階で高周波電源41a、3aからの高周波の印加及びガス供給系36からのガスの供給を停止し、エッチングを終了する。
【0027】
(ステップ2:有機膜42のエッチング)
続いて排気装置13により処理室11内を所定の排気量で排気して残存するCFガス及びC8ガスを除去した後、排気量を所定の量に制御する一方で、ガス供給系36より例えばCOガスを200sccm、H2ガスを200sccm、N2ガスを200sccmで夫々上部電極3を介して処理室11に供給し、処理室11内を所定の真空度例えば2.0Pa(15mTorr)に維持する。その後、高周波電源3aから整合器3bを介して60MHzのプラズマ生成用の高周波が700Wで上部電極3に印加され、COガス、Hガス及びNガスをプラズマ化すると共に、高周波電源21aから13.56MHzのバイアス用の高周波が整合器21bを介して400Wで下部電極21に印加される。
【0028】
プラズマ中に含まれる二酸化炭素イオン(CO2+)はフォトレジスト膜44及び有機膜42を構成する有機物に対しては、下記の(1)式で示す反応を起こす一方でSiO2とは反応し難く、前記プラズマが生成すると、フォトレジスト膜44が除去されると共にSiO2膜43をマスクとして、マスクパターン46に沿って有機膜42がエッチングされ、マスクパターン47が形成される。
CO2++C→2CO・・・(1)
【0029】
マスクパターン47は深さ方向に向かって伸長し、その側壁48が高い垂直性を持つように形成されてゆく。このようにマスクパターン47の側壁48が高い垂直性を有するのは、次のような理由が考えられる。二酸化炭素ガスから生じた炭素イオン51及び炭素ラジカル52と水素ガスから生じた水素イオン53及び水素ラジカル54とが結合してCH系のポリマー成分55が生成し(図3(a))、マスクパターン47が下方へ向けて形成されると共にそのポリマー成分55がその側壁48表面に付着して保護膜56を形成する(図3(b))。そして図3(c)に示すように二酸化炭素ガスから発生したOラジカル57aや酸素イオン57bによる前記側壁48の横方向へのエッチングが、この保護膜56により抑えられる。
【0030】
図4(c)に示すようにマスクパターン47の底部にSiO2膜41が露出した段階で高周波電源41a、3aからの高周波の印加及びガス供給系36からのガスの供給を停止し、エッチングを終了する。この後は、例えばマスクパターン47を介して所定のエッチング条件でSiO2膜41をエッチングして凹部を形成し、配線用の金属例えば銅をその凹部に埋め込む。
【0031】
上記の実施形態によればレジストパターン45を介してSiO2膜53に形成されたマスクパターン46に沿って有機膜42をCO2ガスとH2ガスとの混合ガスを含むプラズマを用いてエッチングし、その有機膜42の下層のSiO2膜41をエッチングするためのマスクパターン47を形成している。これによって後述の実験で示されるようにマスクパターン47の側壁48が高い垂直性を有するように形成される。従ってマスクパターン46及び47を用いてSiO2膜41をエッチングするにあたり、SiO2膜41に形成されるパターンの線幅が大きくなることが抑えられ、そこに埋め込まれる配線の線幅の微細化を図ることができる。また後述の実験で示すように、このように形成されたマスクパターン46及び47の上部側が、その下部側及び高さ中央部に比べて大きく開口する肩落ちと呼ばれる形状となることが抑えられ、横方向に配列されたパターン間のリーク電流が低く抑えられるため好ましい。
【0032】
また上記実施形態の三層レジスト4はレジスト膜44と有機膜42との間に中間層としてSiO2膜43が設けられており、このSiO2膜43に上方側に比べて下方側の線幅が狭くなるようにマスクパターン46が形成されこのマスクパターン46を介して有機膜42がエッチングされるので、マスクパターン47の線幅が大きくなることがより抑えられる。
【0033】
複数層レジストとしては三層構造のものに限られず、図4(a)に示すように四層構造のものを用いてもよい。この四層レジスト6は、SiO2膜43とレジスト膜44との間に例えば有機膜からなる反射防止膜61が形成されている。この四層レジスト6をエッチングする工程について説明する。例えば先ず上記の実施形態のステップ1と同様にCF4などのガスから生成したプラズマを用いて、フォトレジスト44をマスクとしてレジストパターン45を介して反射防止膜62とSiO2膜43を相次いでエッチングして、これらの膜61,43にマスクパターン46同様の下方側が狭まったマスクパターン62を形成する(図4(b))。然る後このマスクパターン62を介して上記実施形態のステップ2と同様の手順で有機膜44をエッチングし、マスクパターン47を形成する。このような四層レジスト6を用いても上記の実施形態と同様の効果が得られる。
【0034】
また複数層レジストは図5(a)に示すように二層構造のものであってもよい。この二層レジスト60は有機膜44と、その上に積層されたフォトレジスト膜65とにより構成されている。フォトレジスト膜65にはレジストパターン45が形成されており、フォトレジスト膜65は有機膜44をエッチングするためのマスクとなる。またフォトレジスト膜65は、有機膜44のエッチング中にエッチングされて消失することを防ぐためにフォトレジスト膜44よりも多くのSi(シリコン)を含有している。この二層レジスト60は、上記の実施形態のステップ2の手順に従ってエッチングされ、図5(b)に示すように有機膜44にマスクパターン47が横方向へ広がることが抑えられながら形成される。
【0035】
また本発明は図6(a)に示すような構造の膜が形成されたウエハWをエッチングする場合にも適用できる。図6(a)に示した膜構造は後述のように下層層部に多層配線構造における上層の配線層を埋め込むための溝部(トレンチ)と、上層の配線層と下層の配線層とを接続する電極を埋め込むためのビアホールとを同時に形成するデュアルダマシン法を実施できるように構成されている。図中71は下層側の金属例えば銅の配線層、72は、銅配線層71がエッチングされることを防ぐためのストッパ膜であり、例えばSiC膜により構成される。図中73は絶縁膜をなす多孔質のSiCOH膜であり、これは例えば比誘電率が2.7以下の多孔質のシリコン、炭素、酸素及び水素を含む膜である。74は、例えばSiO膜よりなるハードマスクであり、多孔質SiCOH膜73を保護する当該多孔質SiCOH膜73のキャップ膜として機能する。
【0036】
さらに図中75は有機膜であり、例えば前記有機膜42と同様の成分により構成されている。76はハードマスクとして機能するSiO膜であり、77はレジストパターン78が形成されたフォトレジスト膜である。この例では、有機膜75、SiO2膜76及びフォトレジスト膜77により三層レジスト7が形成されている。有機膜75は、多孔質SiCOH膜73に形成された電極埋め込み用の凹部79に犠牲膜として埋め込まれており、凹部79上に前記レジストパターン78が形成されている。この例では、凹部79は、後の工程にて金属(例えば銅)が埋め込まれたときに、前記トレンチと前記ビアホールと、を構成するものである。
【0037】
続いて上記の三層レジスト7を含む膜構造をエッチングする手順について説明する。先ず上述の実施形態のステップ1と同様の手順でフォトレジスト膜77をマスクとしてレジストパターン78に沿ってSiO2膜76をエッチングして有機膜75が露出するようにマスクパターン81を形成し(図6(b))、続いて上述の実施形態のステップ2と同様の手順でマスクパターン81に沿って、有機膜75をエッチングし、有機膜75にマスクパターン82を形成すると共に残留しているフォトレジスト膜77を除去する。そしてマスクパターン82の底部にSiO2膜74が露出し、凹部79に埋め込まれた有機膜75が所定の高さだけエッチングされずに残るようにエッチングを終了する(図6(c))。
【0038】
然る後、例えば処理室11にCFガスなどの処理ガスを供給し、各処理ガスガスをプラズマ化して、有機膜75をマスクとして図7(a)に示すようにSiO2膜76をエッチングして除去すると共にマスクパターン82に露出したSiO膜74をエッチングして除去し、続けてマスクパターン82に露出した多孔質SiCOH膜83が所定の厚さになるようにエッチングする。
【0039】
然る後、例えば処理室11にN2ガス、COガス及びH2ガスを供給し、前記ステップ2と同様の手順でこれらの混合ガスをプラズマ化し、このプラズマを用いて図7(b)に示すようにSiO2膜74上の有機膜75と、凹部79に埋め込まれた有機膜75を除去する。続いて処理室11にCFガスなどの処理ガスを供給し、各処理ガスをプラズマ化させて、図7(c)に示すように、凹部79に露出したSiC膜72のエッチングを行い、下層の配線層71を露出させる。
【0040】
こうして形成された凹部83に金属例えば銅が埋め込まれ、図7(d)に示すように、上層の配線層84と、この配線層84と下層の配線層71とを接続する電極85とが同時に形成される。このような実施形態においても有機膜75に形成されるマスクパターンの側壁が高い垂直性を持つように形成される。これによって例えば上層配線84の線幅が大きくなることが抑えられるため好ましい。また凹部79に埋め込まれた有機膜75をエッチングするにあたり、O2ガスをプラズマ化したものを用いるような場合に比べて、CO2及びH2ガスの混合ガスをプラズマ化したものを用いることでSiCOH膜73に与えるダメージを抑えることができる。
【0041】
また図8は他のマスクパターン形成工程について示している。この工程に用いられるウエハWの表面には図8(a)に示すように、図2(a)のウエハW同様に三層レジスト4が形成されている。先ず、上述の実施の形態の手順のステップ1及びステップ2に従ってSiO2膜43にマスクパターン46を形成した後、マスクパターン46を介して有機膜42にマスクパターン47を形成する(図8(b))。然る後、例えばステップ1と同様にCFガス及びC8ガスをプラズマ化し、SiO2膜43を除去すると共にマスクパターン47に従ってSiO2膜41を深さ方向にエッチングして、SiO2膜41にパターン91を形成する(図8(c))。然る後ステップ2と同様にCO2ガス、H2ガス及びN2ガスを含んだ混合ガスをプラズマ化して、有機膜42を除去する(図8(d))。
【0042】
続いてパターン91が埋まるように有機膜42の構成材料を塗布して有機膜42を形成した後、SiO2膜43の構成材料、フォトレジスト膜44の構成材料をこの順にウエハWに塗布し、さらにレジストパターン45を形成して三層レジスト40を形成する(図8(e))。レジストパターン45がパターン91と重ならないように形成されることを除いて三層レジスト40は三層レジスト4と同様に構成される。そして前記ステップ1及びステップ2の処理を続けて行い、SiO2膜43及び有機膜42をエッチングしてマスクパターン46,47を形成した後(図8(f))、例えばステップ1と同様の手順で処理を行い、SiO2膜43を除去すると共にマスクパターン47に従ってSiO2膜41を深さ方向にエッチングしてSiO2膜41にパターン92を形成する(図8(g))。然る後ステップ2と同様の処理を行い、有機膜42を除去する(図8(h))。
【0043】
上述のように有機膜に形成されるパターンの大きさを制御するための中間層を備えた複数層レジストを形成することと、当該複数層レジストの有機膜にマスクパターンを形成することとを順に繰り返して行う手法は、有機膜をエッチングしてマスクパターンを形成するにあたり、横方向にエッチングが進みマスクパターン同士が互いに連通してしまうことが抑えられるため、有機膜の下層の膜に密にパターンを形成する場合において特に有効であるが、本発明を適用することでその有機膜のマスクパターンの側壁が高い垂直性を持って形成されるため、そのような隣り合うパターン間が連通する事がより抑えられ、好ましい。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
上記実施形態の図2に示したようにSiO2膜41上に三層レジスト4が積層されたウエハWについて、上述の手順に従ってエッチングを行い、有機膜42にマスクパターン47を形成し、ウエハW中心部、周縁部夫々の表面における縦断面を撮像した。処理を行ったウエハWの三層レジスト4の各膜厚は上述の実施の形態で示した各膜厚と同じであり、レジストパターン45の大きさも実施の形態で示したものと同じである。また上記手順のステップ1、ステップ2において、プラズマを発生させてエッチングを行う時間は夫々60秒、52秒に設定しており、その他の条件は上記実施形態と同じに設定している。
【0045】
図9(a)、(b)は上述のようにエッチングを行ったウエハWの夫々中央部、周縁部の撮像結果を模式的に示したものである。図9(a)に示したパターン101において有機膜に形成されている部分の縦方向の上部、下部、上部と下部との間の高さ中央部の線幅は夫々70nm、72nm、75nmであった。また図9(b)に示したパターン102において有機膜に形成されている部分の上部、下部、前記中央部の線幅は夫々72nm、77nm、78nmであった。図9(a)、(b)に示されるように各パターン101,102の側壁は、夫々高い垂直性を持って形成され、また上記の各高さ位置におけるパターンの線幅が夫々近い値であり、背景技術で説明したようなパターンの高さ中央部が広くなるボーイング形状や、実施形態で説明したような肩落ちと呼ばれる形状になることが抑えられていることが分かる。
【0046】
(比較例1)
次に比較例1として上述の実施例と同様にステップ1を実施した後、ステップ2においてCO2ガス、H2ガス及びN2ガスからなる混合ガスをウエハWに供給する代わりにCO2ガスのみをウエハWに供給し、それをプラズマ化してウエハWにエッチングを行った。ステップ2においてエッチング時間を43秒に設定した他は実施例のステップ2と同様の処理条件に設定した。
【0047】
図9(c)、(d)は上述のようにエッチングを行ったウエハWの中央部、周縁部の撮像結果を夫々模式的に示したものである。図9(c)に示したパターン103の有機膜に形成された部分における縦方向の上部、下部、上部と下部との間の中央部の線幅は夫々71nm、78nm、85nmであった。また図9(d)に示したパターン104の有機膜に形成された部分における縦方向の上部、下部、前記中央部の線幅は夫々74nm、81nm、82nmであった。図9(c)、(d)と、これらの線幅の測定結果とに示されるように各パターン103,104の側壁についてはボーイング形状となっている。この比較例1と実施例1とから、CO2ガスとH2ガスとを含むガスを用いたプラズマを用いた場合は、CO2ガスのみからなるプラズマを用いた場合に比べて有機膜に高い垂直性を持ったパターンを形成することができるという本発明の効果が示された。
【0048】
(比較例2)
次に比較例2として上述の実施例1と同様にステップ1を実施した後、ステップ2においてCO2ガス、H2ガス及びN2ガスからなる混合ガスをウエハWに供給する代わりにH2ガス及びN2ガスのみをウエハWに供給して、それをプラズマ化してエッチングを行うように設定した。そしてこのステップ2のエッチング時間はウエハWごとに夫々異なるように設定し、エッチング終了後に各ウエハWの縦断側面を撮像して、どれだけのエッチング時間で実施例1において形成された各パターン101,102と同じ深さまでエッチングできるかを調べた。用いるガス及びエッチング時間が異なることを除いてエッチング条件は実施例のステップ2と同じに設定している。
【0049】
上記の試験の結果、エッチング時間を144秒に設定したウエハWのパターンが実施例1のパターン101,102と同じ深さまで形成されていた。このようにCO2を含まずH2を含むガスを用いた場合にエッチング時間が長くなるのは、H2ガスがプラズマ化されて生じるH+イオンなどは質量が低く、ウエハWへのエッチング作用が小さいためであると考えられる。この試験の結果から、H2ガスを含みCO2ガスを含まない処理ガスをプラズマにより活性化してエッチングを行った場合と、本発明のようにH2ガス及びCO2ガスを含んだ処理ガスをプラズマにより活性化してエッチングを行った場合とでは後者の方がエッチング時間が短く、スループットの向上を図るために好ましいことが分かる。
なお図9(e)、(f)は144秒エッチングを行った前記ウエハWの中央部、周縁部の撮像結果を夫々模式的に示したものであり、図9(e)に示したパターン105の有機膜に形成された部分における上部、下部、中央部の線幅は夫々55nm、54nm、58nmである。また図9(f)に示したパターン106の有機膜に形成された部分における上部、下部、中央部の線幅は夫々55nm、49nm、54nmである。図からわかるように各パターン105,106は肩落ちが大きくなっており、パターンの形状についても実施例1の方が好ましいことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の半導体装置の製造方法を実施するプラズマ処理装置の一例を示した縦断側面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造方法を用いて三層レジストを備えたウエハをエッチングするプロセスを示した工程図である。
【図3】前記三層レジストに設けられる有機膜のパターンの側壁が保護される様子を示した説明図である。
【図4】本発明の半導体装置の製造方法を用いて四層レジストをエッチングするプロセスを示した工程図である。
【図5】本発明の半導体装置の製造方法を用いて二層レジストエッチングするプロセスを示した工程図である。
【図6】前記三層レジストとは異なる三層レジストを備えたウエハWをエッチングするプロセスを示した工程図である。
【図7】前記三層レジストとは異なる構造を有する三層レジストを備えたウエハをエッチングするプロセスを示した工程図である。
【図8】フォトリソグラフィと本発明のエッチング工程とを繰り返して行いパターンを形成する工程図である。
【図9】実施例及び比較例で形成されたパターンの縦断側面の模式図である
【符号の説明】
【0051】
W 半導体ウエハ
4 三層レジスト
41 SiO2膜
42 有機膜
43 SiO2膜
44 フォトレジスト膜
45 レジストパターン
46,47 マスクパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機膜と、この有機膜の上に積層されたSiO2からなる中間膜と、前記中間膜の上に積層されたレジストパターンが開口したレジスト膜とを備える複数層レジストを、基板に形成された被エッチング膜上に積層されるように形成する膜形成工程と、
前記中間膜を前記レジスト膜をマスクとして処理室内においてプラズマによりエッチングして、当該中間膜に下端側が上端側よりも狭まるテーパ状の第1の開口部を形成する第1のエッチング工程と、
次いで、前記第1のエッチング工程を行った処理室と同一の処理室内において、前記有機膜を、二酸化炭素と水素とを含む処理ガスをプラズマ化して得たプラズマにより前記第1の開口部に沿ってエッチングし、当該有機膜に第2の開口部を形成する第2のエッチング工程と、
前記第2の開口部に沿って前記被エッチング膜をプラズマによりエッチングして、当該被エッチング膜に第3の開口部を開口する第3のエッチング工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記膜形成工程、第1のエッチング工程、第2のエッチング工程及び第3のエッチング工程は、順次繰り返して行われ、
前記第3のエッチング工程後、次に膜形成工程が行われるまでの間に、被エッチング膜上に残留する前記複数層レジストを構成する膜を除去する膜除去工程が行われ、
各第3のエッチング工程で前記第3の開口部を被エッチング膜の互いに横方向にずれた位置に形成するために、各膜形成工程において前記レジストパターンは互いに横方向にずれた位置に形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2のエッチング工程において、前記処理室内に供給される二酸化炭素の流量と、水素の流量とは互いに等しいことを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2のエッチング工程において、前記処理ガスの総流量に対する二酸化炭素及び水素の合計の流量比が2/3であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
有機膜は、基板に形成されたシリコン、炭素、酸素及び水素を含む低誘電率膜に形成された凹部に埋め込まれていることを特徴とする請求項1、3、4のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記有機膜は、犠牲膜であることを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記凹部は多層配線構造における上層と下層との配線同士を接続する電極を埋め込むためのビアホールであることを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記有機膜は炭素を主成分とすることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基板に対してエッチングを行うプラズマ処理装置に用いられ、コンピュータ上で動作するコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは請求項1ないし8のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−182474(P2012−182474A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−101324(P2012−101324)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2007−210229(P2007−210229)の分割
【原出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】