半導体装置の製造方法
【課題】ダイシング前に半導体装置内に書き込まれた情報が、ダイシング後に読み出されたり、改ざんされるのを防ぐこと。
【解決手段】 半導体ウエハ20上に、記憶領域を内蔵するチップ領域21、半導体ウエハを切断するためのスクライブ領域24、記憶領域にデータを書き込むために外部から電気信号が供給されるパッド22、およびパッド22と記憶領域とを電気的に接続する引き出し配線23を形成する。その際、パッド22をスクライブ領域24内に形成する。そして、パッド22を介して記憶領域にデータを書き込んだ後、スクライブ領域24に沿って半導体ウエハを切断して半導体チップを得る。その切断の際にパッド22が一緒に切り落とされるか、または引き出し配線23がパッド22から切り離される。
【解決手段】 半導体ウエハ20上に、記憶領域を内蔵するチップ領域21、半導体ウエハを切断するためのスクライブ領域24、記憶領域にデータを書き込むために外部から電気信号が供給されるパッド22、およびパッド22と記憶領域とを電気的に接続する引き出し配線23を形成する。その際、パッド22をスクライブ領域24内に形成する。そして、パッド22を介して記憶領域にデータを書き込んだ後、スクライブ領域24に沿って半導体ウエハを切断して半導体チップを得る。その切断の際にパッド22が一緒に切り落とされるか、または引き出し配線23がパッド22から切り離される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特にICカード等に使用されるIC(集積回路)チップ等の半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
将来的に、鉄道等の乗車券カード、またはエレクトロニックコマーズ(電子商取引)などにおいて使用される電子マネー用カードなどのICカードの普及が見込まれる。ICカードには、種々の情報が書き込まれたICチップが搭載される。このICチップは、一般に、不揮発性記憶装置、たとえば、強誘電体記憶装置(FeRAM)で構成されている。
【0003】
たとえば、鉄道等の乗車券カードに使用されるICチップには、金額の情報や乗車区間などの情報が書き込まれる。電子マネー用カードでは、ICチップに暗証番号や金額や銀行の口座番号やクレジットカード番号などの情報が書き込まれる。これらの書き込み情報は、いずれも、他人に知られたり、別の金額などに書き直されては困る情報である。
【0004】
一般に、ICチップは、半導体ウエハ上に数ミリ角程度のチップ領域を複数形成し、それらを切断して分離することにより製造される。図21は、従来の半導体ウエハの要部を拡大して模式的に示す平面図である。半導体ウエハ1上には、複数のチップ領域11が形成される。
【0005】
各チップ領域11内には、図示省略するが、トランジスタなどの回路素子が形成されている。また、各チップ領域11内には複数のパッド12が形成されている。パッド12は、配線13を介して種々の回路素子に電気的に接続されている。なお、図示例では4個のパッド12が示されているが、一般には、パッド12の数は1ウエハ当たり数個から百数十程度である。
【0006】
各チップ領域11間はスクライブ領域14となっている。ダイシングの際、ウエハ1はスクライブ領域14に沿ってダイヤモンド刃のカッターやレーザビームにより切断される。その切断によって、個々のICチップが得られる。
【0007】
ICチップをICカード用に用いる場合には、ダイシングの前、すなわちウエハの段階で、チップ内の記憶領域に種々の情報を書き込む必要がある。この情報は、機密性が極めて高いため、他人に知られたり、改ざんされないような手段を講じなければならない。そのため、容易に書き込み情報を知られないために暗号等が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図21に示す従来構成のICチップをそのままICカード用に用いる場合には、種々の気密情報の書き込みは、ダイシング前に、パッド12を介しておこなわれる。そのため、ダイシング後、ICチップがICカードに搭載されてユーザの手に渡った後に、チップ領域11内に残ったパッド12を介して書き込み情報が読み出されるおそれがある。あるいは、その読み出された情報の暗号が解読されてしまえば、残ったパッド12を介して書き込み情報が改ざんされるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、ダイシング前に半導体装置内に書き込まれた機密性の高い情報が、ダイシング後に読み出されたり、改ざんされるのを防ぐことができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、半導体ウエハ上に、記憶領域を内蔵するチップ領域、半導体ウエハを切断するためのスクライブ領域、前記記憶領域にデータを書き込むために外部から電気信号が供給されるパッド、およびそのパッドと前記記憶領域とを電気的に接続する引き出し配線を形成する。その際、前記パッドをスクライブ領域内に形成する。そして、前記パッドを介して前記記憶領域にデータを書き込んだ後、前記スクライブ領域に沿って半導体ウエハを切断して半導体チップ(ICチップ)を得る。
【0011】
この発明によれば、半導体ウエハを切断する前に、スクライブ領域に形成されたパッドに電気信号を供給してチップ領域内の記憶領域にデータを書き込む。パッドは、ダイシングの際にスクライブ領域とともに切り落とされる。したがって、半導体チップに分離された後に、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのを防ぐことができる。
【0012】
この発明において、パッドと引き出し配線を同層の金属配線層に形成する構成としてもよいし、パッドと引き出し配線を異なる配線層に形成し、それらをコンタクト部を介して電気的に接続する構成としてもよい。また、この発明において、引き出し配線を複数の配線層に分けて形成し、互いにコンタクト部を介して電気的に接続する構成としてもよい。
【0013】
また、チップ領域内の記憶領域にデータを書き込んだ後、ダイシングをおこなう前に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング処理をおこなってスクライブ領域のパッドを除去するようにしてもよい。
【0014】
そうすれば、ダイシングにより実際に切り落とされる切断領域の幅がパッドの幅よりも狭い場合に、ダイシング後の半導体チップにパッドの一部が残ってしまうのを防ぐことができる。したがって、半導体チップに分離された後に、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0015】
また、チップ領域内の記憶領域にデータを書き込んだ後、ダイシングをおこなう前に、チップ領域内の引き出し配線を切断するようにしてもよい。
【0016】
そうすれば、ダイシング後の半導体チップにパッドの一部が残っていても、そのパッドは内部の記憶領域と絶縁されている。したがって、半導体チップに分離された後に、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0017】
引き出し配線を切断する方法として、引き出し配線の一部にヒューズ窓をあらかじめ形成しておき、そのヒューズ窓にレーザビームを照射するようにしてもよい。
【0018】
あるいは、引き出し配線を切断する方法として、引き出し配線の途中に電界効果トランジスタをあらかじめ形成しておき、そのトランジスタのゲートに高電圧を印加してトランジスタを破壊するようにしてもよい。
【0019】
そうすれば、ダイシング後の半導体チップにパッドの一部が残っていても、そのパッドは内部の記憶領域と絶縁されているため、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0020】
また、引き出し配線を切断する方法として、引き出し配線の途中にあらかじめ2個の電界効果トランジスタを直列に接続して形成しておき、チップ領域内の記憶領域に近い側のトランジスタをオフさせた状態でもう一方のトランジスタを破壊するようにしてもよい。
【0021】
そうすれば、ダイシング後の半導体チップから書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができるとともに、トランジスタの破壊時にその破壊の影響が記憶領域に及ぶのを防ぐことができる。
【0022】
また、本発明において、ダイシングの際に実際に切り落とされる切断領域内にて引き出し配線をパッドに接続させるか、または、引き出し配線を、切断領域を通過させるように配線してもよい。
【0023】
そうすれば、引き出し配線が途中で切断されるため、ダイシング後の半導体チップにパッドの一部が残っていても、そのパッドは内部の記憶領域と絶縁される。したがって、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0024】
また、本発明において、隣り合う2つのチップ領域に挟まれたスクライブ領域内に、各チップ領域のパッドを、ダイシングの際に実際に切り落とされる切断領域をまたぐように形成するようにしてもよい。
【0025】
そうすれば、ダイシング後の半導体チップにパッドの一部が残っていても、そのパッドは、別の半導体チップに対して形成されたパッドであるため、内部の記憶領域と絶縁される。したがって、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0026】
また、本発明において、各チップ領域に対して複数のパッドを形成し、各パッドの引き出し配線を、互いに絶縁させた状態で、複数の配線層を介して、複雑に交差させるように配線してもよい。
【0027】
そうすれば、半導体ウエハから分離された後の半導体チップを上から見た時に、引き出し配線の配線経路が分かりにくくなる。したがって、ダイシング後にパッドの一部が残っていても、いずれのパッドを介して半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータを読み出すことできるのかがわからないため、書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0028】
あるいは、本発明は、パッドに接続される引き出し配線を、スクライブ領域内に引き出し、そのスクライブ領域での切断によって引き出し配線がパッドから切り離されるように形成してもよい。その際、スクライブ領域内の引き出し配線を、半導体ウエハを半導体チップに分離する際に実際に切り落とされる切断領域内にて折り返して元のチップ領域内に形成されたパッドに接続させるようにしてもよい。あるいは、引き出し配線を、スクライブ領域を通過して他のチップ領域、たとえば隣のチップ領域内に形成されたパッドに接続させる構成としてもよい。
【0029】
そうすれば、ダイシングの際にスクライブ領域とともに引き出し配線の一部が切り落とされ、引き出し配線とパッドとが分離される。つまり、引き出し配線とパッドとが電気的に絶縁される。したがって、個々の半導体チップに分離された後に、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、チップ領域内の記憶領域にデータを書き込むためのパッドをスクライブ領域に形成し、チップ領域内の記憶領域にデータを書き込んだ後、ダイシングの際に、スクライブ領域とともにパッドを切り落とすため、半導体チップに分離された後に、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのを防ぐことができる。また、パッドをスクライブ領域に形成するため、チップサイズが小さくでき、コストダウンにつながるものである。
【0031】
また、つぎの発明によれば、パッドに接続される引き出し配線を、スクライブ領域内に引き出し、そのスクライブ領域での切断によって引き出し配線がパッドから切り離されるように形成し、スクライブ領域とともに引き出し配線の一部を切り落とすため、引き出し配線とパッドとが分離され、電気的に絶縁される。したがって、個々の半導体チップに分離された後に、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明にかかる半導体装置の製造方法の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1により製造される半導体ウエハの要部を拡大して模式的に示す平面図である。図2は、図1に示す半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。図3は、図2に示す半導体ウエハの切断線A−Aにおける縦断面図であり、(a)はダイシング前の状態、(b)はダイシング後の状態を示す。
【0034】
図1に示すように、半導体ウエハ20上には、複数のチップ領域21が形成される。各チップ領域21内には、図示を省略するが、トランジスタなどの回路素子が形成されている。その回路素子によって記憶領域が構成されている。その記憶領域は、暗号化された機密情報等の記憶に用いられる。
【0035】
各チップ領域21間はスクライブ領域24となっている。スクライブ領域24には複数のパッド22が形成されている。パッド22は、チップ領域21内の記憶領域に情報を書き込む際に、外部から電気信号を供給するために使用される。すなわち、パッド22は、引き出し配線23を介して記憶領域の回路素子に電気的に接続されている。なお、図示例では4個のパッド22が示されているが、一般には、パッド22の数は1チップ当たり数個から百数十程度である。
【0036】
ダイシングの際、半導体ウエハ20はスクラブ領域24に沿ってダイヤモンド刃のカッターやレーザビームにより切断される。その切断によって、個々のICチップが得られる。図2に、ダイシングによって実際に切り落とされる領域(以下、切断領域とする)25を示す。
【0037】
パッド22は、その大部分(全部でもよい)が切断領域25と重なるように配置される。そのため、図3(b)に示すように、ダイシングによって、パッド22の大部分(または全部)が切り落とされる。すなわち、ダイシング後に得られるICチップには、その内部の記憶領域に記憶された機密情報を読み出したり改ざんするために使用可能なパッドがほとんどないか、または全くないことになる。
【0038】
特に限定しないが、実施の形態1では、パッド22と引き出し配線23は、同じ配線層に形成されている。すなわち、図3(a)に示すように、半導体基板(または半導体領域)20およびフィールド酸化膜26上に層間絶縁膜27が積層される。そして、その上に配線層が積層される。その配線層に、パッド22および引き出し配線23が一続きとなって形成される。この配線層の材質は、たとえばアルミニウムまたは銅などである。
【0039】
つぎに、実施の形態1の半導体装置の製造方法について説明する。まず、半導体基板20にフィールド酸化膜26を形成し、チップ領域21とスクライブ領域24に分ける。チップ領域21内にトランジスタ等の回路素子を形成する。そして、半導体基板20上に層間絶縁膜27を積層する。
【0040】
層間絶縁膜27の所定箇所にコンタクトホール(図示せず)を開口する。半導体基板20上にアルミニウムまたは銅の配線層を積層する。この配線層をパターニングしてパッド22および引き出し配線23を形成する。それによって、チップ領域21の形成が終了する。ここまでの状態が図3(a)に示されている。
【0041】
パッド22はスクライブ領域24に配置される。引き出し配線23は、コンタクトホールに充填されたアルミニウムまたは銅よりなるコンタクト部を介して、チップ領域21内の回路素子等に電気的に接続する。
【0042】
パッド22に外部から電気信号を供給して、チップ領域21内の記憶領域にデータを書き込む。その後、ダイヤモンド刃のカッターやレーザビームを用いて、半導体基板20をスクライブ領域24に沿って切断する。切断の際、スクライブ領域24内の切断領域25が切り落とされる。それによって、個々のICチップが得られる。ここまでの状態が図3(b)に示されている。
【0043】
得られたICチップをパッケージングする。そして、そのICチップをたとえば略長方形のカードに搭載することによってICカードが製造される。
【0044】
上述した実施の形態1によれば、スクライブ領域24にパッド22を形成し、そのパッド22を用いてチップ領域21内の記憶領域にデータを書き込んだ後、ダイシングをおこなってスクライブ領域24とともにパッド22を切り落とす。したがって、チップ領域21をICチップに分離した後には、ICチップにはパッド22がほとんど残らないか、または全く残らない。よって、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのを防ぐことができる。
【0045】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。図5は、図4に示す半導体ウエハの切断線B−Bにおける縦断面図であり、(a)はダイシング前の状態、(b)はダイシング後の状態を示す。なお、実施の形態1と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0046】
実施の形態2は、実施の形態1がパッド22と同じ配線層に引き出し配線23を形成したのに対して、以下の点で実施の形態1と異なる。すなわち、図4および図5に示すように、データ書き込み用のパッド22よりも下層の配線層に、引き出し配線28およびそれと一続きとなるコンタクト用のパッド29を形成する。
【0047】
パッド22は、層間絶縁膜27を貫通するコンタクト部30を介して、パッド29に電気的に接続する。引き出し配線28は、図示しない記憶領域の回路素子に電気的に接続されている。引き出し配線28の材質は、たとえばタングステンまたはチタンまたは窒化チタンまたは銅などである。
【0048】
実施の形態2の半導体装置の製造方法については、多層配線技術を用いて配線を形成する点で実施の形態1と異なるが、多層配線技術を用いた配線形成は形成発明の要旨ではないので説明を省略する。
【0049】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、ダイシングの際にデータ書き込み用のパッド22が切り落とされるので、チップ領域21をICチップに分離した後には、ICチップにはパッド22がほとんど残らないか、または全く残らない。よって、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのを防ぐことができる。
【0050】
なお、上記実施の形態2においては、窒化チタンまたは銅などの配線層に引き出し配線28を形成したが、これに限らず、たとえば図6に示すように、ゲート配線層に引き出し配線31およびそれと一続きとなるコンタクト用のパッド32を形成する構成としてもよい。図6(a)はダイシング前の状態、(b)はダイシング後の状態である。
【0051】
この場合、パッド32とデータ書き込み用のパッド22とは、層間絶縁膜27を貫通するコンタクト部33を介して電気的に接続する。引き出し配線31は、たとえばポリシリコン、タングステンシリサイドとポリシリコンの2層構造、またはタングステンで構成される。
【0052】
また、たとえば図7に示すように、引き出し配線34,36を複数の配線層に分けて構成してもよい。引き出し配線34およびそれと一続きとなるコンタクト用のパッド35は、たとえばポリシリコンよりなるゲート配線層に形成される。引き出し配線36およびそれと一続きとなるコンタクト用のパッド37は、たとえば上層の窒化チタン配線層に形成される。図7(a)はダイシング前の状態、(b)はダイシング後の状態である。
【0053】
この場合、パッド35と上層の引き出し配線36とは、層間絶縁膜27を貫通するコンタクト部38を介して電気的に接続する。また、パッド37とデータ書き込み用のパッド22とは、層間絶縁膜27を貫通するコンタクト部39を介して電気的に接続する。図7に示すように、複数の配線層にまたがって引き出し配線34,36を構成することにより、ICチップを上から見て引き出し配線34,36の配線経路が分かりにくくなるという利点がある。
【0054】
(実施の形態3)
図8および図9は、本発明の実施の形態3にかかる製造方法により製造される半導体装置を製造工程順に示す要部縦断面図である。
【0055】
実施の形態3は、たとえば図2および図3に示す実施の形態1において、チップ領域21内の記憶領域にデータを書き込み、パッド22を除去した後、ダイシングをおこなうものである。実施の形態1と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0056】
すなわち、まず、半導体基板20上にチップ領域21、スクライブ領域24、パッド22および引き出し配線23を形成する(図8(a)を参照)。パッド22を介してチップ領域21内の図示しない記憶領域にデータを書き込む。しかる後、半導体基板20上にレジストを塗布する。そして、マスクを用いて露光処理をおこなう。
【0057】
続いて、現像処理をおこない、スクライブ領域24を露出させる(図8(b)を参照)。残留したレジスト40をマスクとして、エッチング処理をおこない、スクライブ領域24上のパッド22を除去する(図9(a)を参照)。その後、ダイシングをおこない、ICチップに分離する(図9(b)を参照)。
【0058】
実施の形態3によれば、ダイシングの前にパッド22を除去するため、切断領域25の幅がパッド22の幅よりも狭い場合に、ダイシング後のICチップにパッド22の一部が残ってしまうのを防ぐことができる。したがって、ICチップに分離された後に、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0059】
(実施の形態4)
図10は、本発明の実施の形態4により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。図11は、図10に示す半導体ウエハの切断線C−Cにおける縦断面図であり、(a)はダイシング前の状態、(b)はダイシング後の状態を示す。
【0060】
実施の形態4は、たとえば図4および図5に示す実施の形態2において、チップ領域21内の図示しない記憶領域にデータを書き込んだ後、引き出し配線28を切断してから、ダイシングをおこなうものである。実施の形態2と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0061】
すなわち、まず、半導体基板20上にチップ領域21、スクライブ領域24、データ書き込み用パッド22、引き出し配線28、コンタクト用パッド29およびコンタクト部30を形成する。また、引き出し配線28の上方に、たとえばフォトリソグラフィ技術およびエッチング処理により、ヒューズ窓41を形成する(図10および図11(a)を参照)。
【0062】
そして、パッド22を介してチップ領域21内の図示しない記憶領域にデータを書き込む。しかる後、ヒューズ窓41にたとえばレーザビームを照射し、引き出し配線28を切断する。その後、ダイシングをおこない、ICチップに分離する(図11(b)を参照)。
【0063】
実施の形態4によれば、ダイシングの前に引き出し配線28を切断するため、切断領域25の幅がパッド22の幅よりも狭い場合に、ダイシング後のICチップにパッド22の一部が残っていても、そのパッドを内部の記憶領域から絶縁させることができる。したがって、ICチップに分離された後に、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0064】
なお、引き出し配線28を切断する方法として、図12に示すように、あらかじめチップ領域21内において、引き出し配線28の途中に、MOSトランジスタ51を設けておき、ダイシングをおこなう前にこのトランジスタ51を破壊するようにしてもよい。MOSトランジスタ51のソースおよびドレインをそれぞれデータ書き込み用パッド22および内部の記憶領域に接続する。また、スクライブ領域24内にMOSトランジスタ51にゲート信号を供給するためのパッド52を形成する。
【0065】
記憶領域にデータを書き込む際には、外部から適当なゲート信号を供給してMOSトランジスタ51をオン状態にする。データの書き込みが終了したら、パッド52に高電圧を印加して、トランジスタ51を破壊する。トランジスタ51の破壊によって、引き出し配線28は切断される。その後、ダイシングをおこなう。
【0066】
また、図13に示すように、MOSトランジスタ51と内部の記憶領域との間に、もう一つMOSトランジスタ53を形成し、2つのMOSトランジスタ51,53を直列に接続するように構成してもよい。この場合、スクライブ領域24内にMOSトランジスタ53にゲート信号を供給するためのパッド54を追加する。
【0067】
記憶領域にデータを書き込む際には、2つのMOSトランジスタ51,53にそれぞれ外部から適当なゲート信号を供給して2つのMOSトランジスタ51,53をオン状態にする。データの書き込みが終了したら、記憶領域側のトランジスタ53をオフ状態にしてから、もう一方のトランジスタ51を破壊する。
【0068】
このようにすることによって、トランジスタ51を破壊する時の影響が記憶領域に及ぶのを防ぐことができる。トランジスタ51の破壊によって、引き出し配線28は切断される。その後、ダイシングをおこなう。
【0069】
(実施の形態5)
図14は、本発明の実施の形態5により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。なお、他の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
実施の形態5は、パッド22とチップ領域21内の図示しない記憶領域とを電気的に接続する引き出し配線61を、パッド22の一角部を含めてパッド22の周囲に4分の1周させ、切断領域25内においてパッド22に連なるようにしたものである。それによって、ダイシングの際に、引き出し配線61とパッド22との接続部分が切り落とされる。
【0071】
実施の形態5によれば、ダイシングによって、引き出し配線61が途中で切断されるため、ダイシング後のICチップにパッド22の一部が残っていても、そのパッドを内部の記憶領域から絶縁させることができる。したがって、ICチップに分離された後に、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0072】
なお、引き出し配線61に代えて、図15に示すように、引き出し配線62を、切断領域25を横切ってパッド22の周囲を2分の1周させるようにしてもよい。あるいは、図16に示す引き出し配線63,64,65のように、スクライブ領域24内においてパッド22のピッチよりも長くなるように配線経路を折り曲げて、切断領域25を通過させるようにしてもよい。
【0073】
図15または図16のように配線することによって、ダイシングの際に、引き出し配線62,63,64,65の一部が切除されるので、引き出し配線62,63,64,65とパッド22とが確実に絶縁される。したがって、ダイシング後のICチップにパッド22の一部が残っていても、そのパッドを内部の記憶領域から絶縁させることができる。
【0074】
(実施の形態6)
図17は、本発明の実施の形態6により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。なお、他の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0075】
実施の形態6は、隣り合うチップ領域21a,21bの間のスクライブ領域24内に、両チップ領域21a,21bのそれぞれのパッド22a,22bを配置したものである。
【0076】
一方のチップ領域21aのパッド22aは、他方のチップ領域21b寄りに配設させる。同様に、他方のチップ領域21bのパッド22bは、一方のチップ領域21a寄りに配設させる。パッド22a,22bは、それぞれ、引き出し配線23a,23bを介して各チップ領域21a,21b内の記憶領域に接続されている。
【0077】
実施の形態6によれば、各チップ領域21a,21bのパッド22a,22bが切断領域25をまたぐように形成されているため、ダイシング後のICチップにパッド22a,22bの一部が残っていても、そのパッドは、別のICチップに対して形成されたパッドであるため、内部の記憶領域と絶縁される。したがって、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0078】
(実施の形態7)
図18は、本発明の実施の形態7により製造される半導体ウエハの一部を拡大して模式的に示す平面図である。なお、他の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0079】
実施の形態7は、スクライブ領域24内に形成されたパッド22をチップ領域21内の図示しない記憶領域に接続させる各引き出し配線71,72,73,74を、互いに絶縁させた状態で、複数の配線層を介して、複雑に交差させるように配線したものである。チップ領域21を上から見た状態で引き出し配線71,72,73,74が交差するように見える箇所は、それら交差するように見える引き出し配線71,72,73,74が上下の異なる配線層に形成されているため、実際には接触していない。
【0080】
実施の形態7によれば、ダイシング後のICチップを上から見た時に、引き出し配線71,72,73,74の配線経路が分かりにくくなるため、ダイシング後にパッド22の一部が残っていても、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータを読み出すためにはいずれのパッドを用いればよいのかを知られにくくなる。したがって、記憶領域の書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0081】
(実施の形態8)
図19は、本発明の実施の形態8により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。なお、他の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0082】
実施の形態8では、チップ領域21内にパッド22を形成する。そのチップ領域21内の図示しない記憶領域に電気的に接続された引き出し配線81をスクライブ領域24内に延ばし、引き出し配線81を切断領域25内にて折り返して元のチップ領域21内のパッド22に電気的に接続させる。つまり、実施の形態8は、引き出し配線81が切断領域25内を通過するような配線パターンとし、ダイシングにより切断領域25を切り落とす際に、引き出し配線81の一部を完全に切除するようにしたものである。
【0083】
なお、パッド22と引き出し配線81を同じ配線層に形成してもよいし、異なる配線層に形成して、コンタクト部を介して互いに電気的に接続するようにしてもよい。また、引き出し配線81が切断領域25を通過し、スクライブ領域24内において切断領域25の外側部分で折り返されるような配線パターンとしてもよい。
【0084】
実施の形態8によれば、ダイシングによって引き出し配線81が途中で切断されるため、ダイシング後においてはパッド22をチップ内部の記憶領域から絶縁させることができる。したがって、ICチップに分離された後に、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0085】
(実施の形態9)
図20は、本発明の実施の形態9により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。なお、他の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0086】
実施の形態9は、一チップ領域内の図示しない記憶領域に接続された引き出し配線を、スクライブ領域内の切断領域を通過させて、別のチップ領域内に形成されたパッドに電気的に接続させるようにしたものである。たとえば図20に示す例では、隣り合うチップ領域21a,21bにおいて、一方のチップ領域21a内の図示しない記憶領域にデータを書き込むためのパッド22aを、他方のチップ領域21b内に形成する。
【0087】
そして、一方のチップ領域21a内から延びる引き出し配線82aを切断領域25を横切ってパッド22aに電気的に接続させる。他方のチップ領域21bに対するパッド22bおよび引き出し配線82bについても同様である。なお、パッドを形成する別のチップ領域は、隣に位置するチップ領域に限らない。
【0088】
実施の形態9によれば、ダイシング後のICチップにパッド22a,22bが残っていても、そのパッドは、別のICチップに対して形成されたパッドであるため、内部の記憶領域と絶縁される。したがって、ICチップに分離された後に、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態1により製造される半導体ウエハの要部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図2】図1に示す半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図3】図2に示す半導体ウエハの切断線A−Aにおける縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図5】図4に示す半導体ウエハの切断線B−Bにおける縦断面図である。
【図6】実施の形態2の変形例により製造される半導体ウエハを示す縦断面図である。
【図7】実施の形態2の他の変形例により製造される半導体ウエハを示す縦断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3にかかる製造方法により製造される半導体装置を製造工程順に示す要部縦断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3にかかる製造方法により製造される半導体装置を製造工程順に示す要部縦断面図である。
【図10】本発明の実施の形態4により製造される半導体ウエハの一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図11】図10に示す半導体ウエハの切断線C−Cにおける縦断面図である。
【図12】実施の形態4の変形例を模式的に示す平面図である。
【図13】実施の形態4の他の変形例を模式的に示す平面図である。
【図14】本発明の実施の形態5により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図15】実施の形態5の変形例を示す平面図である。
【図16】実施の形態5の他の変形例を示す平面図である。
【図17】本発明の実施の形態6により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図18】本発明の実施の形態7により製造される半導体ウエハの一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図19】本発明の実施の形態8により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図20】本発明の実施の形態9により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図21】従来の半導体ウエハの要部を拡大して模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0090】
20 半導体ウエハ(半導体基板)
21,21a,21b チップ領域
22,22a,22b,52,54 パッド
23,28,31,34,36,61,62,63,64,65,71,72,73,74,81,82a,82b 引き出し配線
24 スクライブ領域
25 切断領域
27 層間絶縁膜
30,33,38,39 コンタクト部
40 レジスト
51,53 トランジスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特にICカード等に使用されるIC(集積回路)チップ等の半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
将来的に、鉄道等の乗車券カード、またはエレクトロニックコマーズ(電子商取引)などにおいて使用される電子マネー用カードなどのICカードの普及が見込まれる。ICカードには、種々の情報が書き込まれたICチップが搭載される。このICチップは、一般に、不揮発性記憶装置、たとえば、強誘電体記憶装置(FeRAM)で構成されている。
【0003】
たとえば、鉄道等の乗車券カードに使用されるICチップには、金額の情報や乗車区間などの情報が書き込まれる。電子マネー用カードでは、ICチップに暗証番号や金額や銀行の口座番号やクレジットカード番号などの情報が書き込まれる。これらの書き込み情報は、いずれも、他人に知られたり、別の金額などに書き直されては困る情報である。
【0004】
一般に、ICチップは、半導体ウエハ上に数ミリ角程度のチップ領域を複数形成し、それらを切断して分離することにより製造される。図21は、従来の半導体ウエハの要部を拡大して模式的に示す平面図である。半導体ウエハ1上には、複数のチップ領域11が形成される。
【0005】
各チップ領域11内には、図示省略するが、トランジスタなどの回路素子が形成されている。また、各チップ領域11内には複数のパッド12が形成されている。パッド12は、配線13を介して種々の回路素子に電気的に接続されている。なお、図示例では4個のパッド12が示されているが、一般には、パッド12の数は1ウエハ当たり数個から百数十程度である。
【0006】
各チップ領域11間はスクライブ領域14となっている。ダイシングの際、ウエハ1はスクライブ領域14に沿ってダイヤモンド刃のカッターやレーザビームにより切断される。その切断によって、個々のICチップが得られる。
【0007】
ICチップをICカード用に用いる場合には、ダイシングの前、すなわちウエハの段階で、チップ内の記憶領域に種々の情報を書き込む必要がある。この情報は、機密性が極めて高いため、他人に知られたり、改ざんされないような手段を講じなければならない。そのため、容易に書き込み情報を知られないために暗号等が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図21に示す従来構成のICチップをそのままICカード用に用いる場合には、種々の気密情報の書き込みは、ダイシング前に、パッド12を介しておこなわれる。そのため、ダイシング後、ICチップがICカードに搭載されてユーザの手に渡った後に、チップ領域11内に残ったパッド12を介して書き込み情報が読み出されるおそれがある。あるいは、その読み出された情報の暗号が解読されてしまえば、残ったパッド12を介して書き込み情報が改ざんされるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、ダイシング前に半導体装置内に書き込まれた機密性の高い情報が、ダイシング後に読み出されたり、改ざんされるのを防ぐことができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、半導体ウエハ上に、記憶領域を内蔵するチップ領域、半導体ウエハを切断するためのスクライブ領域、前記記憶領域にデータを書き込むために外部から電気信号が供給されるパッド、およびそのパッドと前記記憶領域とを電気的に接続する引き出し配線を形成する。その際、前記パッドをスクライブ領域内に形成する。そして、前記パッドを介して前記記憶領域にデータを書き込んだ後、前記スクライブ領域に沿って半導体ウエハを切断して半導体チップ(ICチップ)を得る。
【0011】
この発明によれば、半導体ウエハを切断する前に、スクライブ領域に形成されたパッドに電気信号を供給してチップ領域内の記憶領域にデータを書き込む。パッドは、ダイシングの際にスクライブ領域とともに切り落とされる。したがって、半導体チップに分離された後に、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのを防ぐことができる。
【0012】
この発明において、パッドと引き出し配線を同層の金属配線層に形成する構成としてもよいし、パッドと引き出し配線を異なる配線層に形成し、それらをコンタクト部を介して電気的に接続する構成としてもよい。また、この発明において、引き出し配線を複数の配線層に分けて形成し、互いにコンタクト部を介して電気的に接続する構成としてもよい。
【0013】
また、チップ領域内の記憶領域にデータを書き込んだ後、ダイシングをおこなう前に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング処理をおこなってスクライブ領域のパッドを除去するようにしてもよい。
【0014】
そうすれば、ダイシングにより実際に切り落とされる切断領域の幅がパッドの幅よりも狭い場合に、ダイシング後の半導体チップにパッドの一部が残ってしまうのを防ぐことができる。したがって、半導体チップに分離された後に、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0015】
また、チップ領域内の記憶領域にデータを書き込んだ後、ダイシングをおこなう前に、チップ領域内の引き出し配線を切断するようにしてもよい。
【0016】
そうすれば、ダイシング後の半導体チップにパッドの一部が残っていても、そのパッドは内部の記憶領域と絶縁されている。したがって、半導体チップに分離された後に、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0017】
引き出し配線を切断する方法として、引き出し配線の一部にヒューズ窓をあらかじめ形成しておき、そのヒューズ窓にレーザビームを照射するようにしてもよい。
【0018】
あるいは、引き出し配線を切断する方法として、引き出し配線の途中に電界効果トランジスタをあらかじめ形成しておき、そのトランジスタのゲートに高電圧を印加してトランジスタを破壊するようにしてもよい。
【0019】
そうすれば、ダイシング後の半導体チップにパッドの一部が残っていても、そのパッドは内部の記憶領域と絶縁されているため、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0020】
また、引き出し配線を切断する方法として、引き出し配線の途中にあらかじめ2個の電界効果トランジスタを直列に接続して形成しておき、チップ領域内の記憶領域に近い側のトランジスタをオフさせた状態でもう一方のトランジスタを破壊するようにしてもよい。
【0021】
そうすれば、ダイシング後の半導体チップから書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができるとともに、トランジスタの破壊時にその破壊の影響が記憶領域に及ぶのを防ぐことができる。
【0022】
また、本発明において、ダイシングの際に実際に切り落とされる切断領域内にて引き出し配線をパッドに接続させるか、または、引き出し配線を、切断領域を通過させるように配線してもよい。
【0023】
そうすれば、引き出し配線が途中で切断されるため、ダイシング後の半導体チップにパッドの一部が残っていても、そのパッドは内部の記憶領域と絶縁される。したがって、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0024】
また、本発明において、隣り合う2つのチップ領域に挟まれたスクライブ領域内に、各チップ領域のパッドを、ダイシングの際に実際に切り落とされる切断領域をまたぐように形成するようにしてもよい。
【0025】
そうすれば、ダイシング後の半導体チップにパッドの一部が残っていても、そのパッドは、別の半導体チップに対して形成されたパッドであるため、内部の記憶領域と絶縁される。したがって、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0026】
また、本発明において、各チップ領域に対して複数のパッドを形成し、各パッドの引き出し配線を、互いに絶縁させた状態で、複数の配線層を介して、複雑に交差させるように配線してもよい。
【0027】
そうすれば、半導体ウエハから分離された後の半導体チップを上から見た時に、引き出し配線の配線経路が分かりにくくなる。したがって、ダイシング後にパッドの一部が残っていても、いずれのパッドを介して半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータを読み出すことできるのかがわからないため、書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0028】
あるいは、本発明は、パッドに接続される引き出し配線を、スクライブ領域内に引き出し、そのスクライブ領域での切断によって引き出し配線がパッドから切り離されるように形成してもよい。その際、スクライブ領域内の引き出し配線を、半導体ウエハを半導体チップに分離する際に実際に切り落とされる切断領域内にて折り返して元のチップ領域内に形成されたパッドに接続させるようにしてもよい。あるいは、引き出し配線を、スクライブ領域を通過して他のチップ領域、たとえば隣のチップ領域内に形成されたパッドに接続させる構成としてもよい。
【0029】
そうすれば、ダイシングの際にスクライブ領域とともに引き出し配線の一部が切り落とされ、引き出し配線とパッドとが分離される。つまり、引き出し配線とパッドとが電気的に絶縁される。したがって、個々の半導体チップに分離された後に、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、チップ領域内の記憶領域にデータを書き込むためのパッドをスクライブ領域に形成し、チップ領域内の記憶領域にデータを書き込んだ後、ダイシングの際に、スクライブ領域とともにパッドを切り落とすため、半導体チップに分離された後に、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのを防ぐことができる。また、パッドをスクライブ領域に形成するため、チップサイズが小さくでき、コストダウンにつながるものである。
【0031】
また、つぎの発明によれば、パッドに接続される引き出し配線を、スクライブ領域内に引き出し、そのスクライブ領域での切断によって引き出し配線がパッドから切り離されるように形成し、スクライブ領域とともに引き出し配線の一部を切り落とすため、引き出し配線とパッドとが分離され、電気的に絶縁される。したがって、個々の半導体チップに分離された後に、半導体チップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明にかかる半導体装置の製造方法の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1により製造される半導体ウエハの要部を拡大して模式的に示す平面図である。図2は、図1に示す半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。図3は、図2に示す半導体ウエハの切断線A−Aにおける縦断面図であり、(a)はダイシング前の状態、(b)はダイシング後の状態を示す。
【0034】
図1に示すように、半導体ウエハ20上には、複数のチップ領域21が形成される。各チップ領域21内には、図示を省略するが、トランジスタなどの回路素子が形成されている。その回路素子によって記憶領域が構成されている。その記憶領域は、暗号化された機密情報等の記憶に用いられる。
【0035】
各チップ領域21間はスクライブ領域24となっている。スクライブ領域24には複数のパッド22が形成されている。パッド22は、チップ領域21内の記憶領域に情報を書き込む際に、外部から電気信号を供給するために使用される。すなわち、パッド22は、引き出し配線23を介して記憶領域の回路素子に電気的に接続されている。なお、図示例では4個のパッド22が示されているが、一般には、パッド22の数は1チップ当たり数個から百数十程度である。
【0036】
ダイシングの際、半導体ウエハ20はスクラブ領域24に沿ってダイヤモンド刃のカッターやレーザビームにより切断される。その切断によって、個々のICチップが得られる。図2に、ダイシングによって実際に切り落とされる領域(以下、切断領域とする)25を示す。
【0037】
パッド22は、その大部分(全部でもよい)が切断領域25と重なるように配置される。そのため、図3(b)に示すように、ダイシングによって、パッド22の大部分(または全部)が切り落とされる。すなわち、ダイシング後に得られるICチップには、その内部の記憶領域に記憶された機密情報を読み出したり改ざんするために使用可能なパッドがほとんどないか、または全くないことになる。
【0038】
特に限定しないが、実施の形態1では、パッド22と引き出し配線23は、同じ配線層に形成されている。すなわち、図3(a)に示すように、半導体基板(または半導体領域)20およびフィールド酸化膜26上に層間絶縁膜27が積層される。そして、その上に配線層が積層される。その配線層に、パッド22および引き出し配線23が一続きとなって形成される。この配線層の材質は、たとえばアルミニウムまたは銅などである。
【0039】
つぎに、実施の形態1の半導体装置の製造方法について説明する。まず、半導体基板20にフィールド酸化膜26を形成し、チップ領域21とスクライブ領域24に分ける。チップ領域21内にトランジスタ等の回路素子を形成する。そして、半導体基板20上に層間絶縁膜27を積層する。
【0040】
層間絶縁膜27の所定箇所にコンタクトホール(図示せず)を開口する。半導体基板20上にアルミニウムまたは銅の配線層を積層する。この配線層をパターニングしてパッド22および引き出し配線23を形成する。それによって、チップ領域21の形成が終了する。ここまでの状態が図3(a)に示されている。
【0041】
パッド22はスクライブ領域24に配置される。引き出し配線23は、コンタクトホールに充填されたアルミニウムまたは銅よりなるコンタクト部を介して、チップ領域21内の回路素子等に電気的に接続する。
【0042】
パッド22に外部から電気信号を供給して、チップ領域21内の記憶領域にデータを書き込む。その後、ダイヤモンド刃のカッターやレーザビームを用いて、半導体基板20をスクライブ領域24に沿って切断する。切断の際、スクライブ領域24内の切断領域25が切り落とされる。それによって、個々のICチップが得られる。ここまでの状態が図3(b)に示されている。
【0043】
得られたICチップをパッケージングする。そして、そのICチップをたとえば略長方形のカードに搭載することによってICカードが製造される。
【0044】
上述した実施の形態1によれば、スクライブ領域24にパッド22を形成し、そのパッド22を用いてチップ領域21内の記憶領域にデータを書き込んだ後、ダイシングをおこなってスクライブ領域24とともにパッド22を切り落とす。したがって、チップ領域21をICチップに分離した後には、ICチップにはパッド22がほとんど残らないか、または全く残らない。よって、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのを防ぐことができる。
【0045】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。図5は、図4に示す半導体ウエハの切断線B−Bにおける縦断面図であり、(a)はダイシング前の状態、(b)はダイシング後の状態を示す。なお、実施の形態1と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0046】
実施の形態2は、実施の形態1がパッド22と同じ配線層に引き出し配線23を形成したのに対して、以下の点で実施の形態1と異なる。すなわち、図4および図5に示すように、データ書き込み用のパッド22よりも下層の配線層に、引き出し配線28およびそれと一続きとなるコンタクト用のパッド29を形成する。
【0047】
パッド22は、層間絶縁膜27を貫通するコンタクト部30を介して、パッド29に電気的に接続する。引き出し配線28は、図示しない記憶領域の回路素子に電気的に接続されている。引き出し配線28の材質は、たとえばタングステンまたはチタンまたは窒化チタンまたは銅などである。
【0048】
実施の形態2の半導体装置の製造方法については、多層配線技術を用いて配線を形成する点で実施の形態1と異なるが、多層配線技術を用いた配線形成は形成発明の要旨ではないので説明を省略する。
【0049】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、ダイシングの際にデータ書き込み用のパッド22が切り落とされるので、チップ領域21をICチップに分離した後には、ICチップにはパッド22がほとんど残らないか、または全く残らない。よって、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのを防ぐことができる。
【0050】
なお、上記実施の形態2においては、窒化チタンまたは銅などの配線層に引き出し配線28を形成したが、これに限らず、たとえば図6に示すように、ゲート配線層に引き出し配線31およびそれと一続きとなるコンタクト用のパッド32を形成する構成としてもよい。図6(a)はダイシング前の状態、(b)はダイシング後の状態である。
【0051】
この場合、パッド32とデータ書き込み用のパッド22とは、層間絶縁膜27を貫通するコンタクト部33を介して電気的に接続する。引き出し配線31は、たとえばポリシリコン、タングステンシリサイドとポリシリコンの2層構造、またはタングステンで構成される。
【0052】
また、たとえば図7に示すように、引き出し配線34,36を複数の配線層に分けて構成してもよい。引き出し配線34およびそれと一続きとなるコンタクト用のパッド35は、たとえばポリシリコンよりなるゲート配線層に形成される。引き出し配線36およびそれと一続きとなるコンタクト用のパッド37は、たとえば上層の窒化チタン配線層に形成される。図7(a)はダイシング前の状態、(b)はダイシング後の状態である。
【0053】
この場合、パッド35と上層の引き出し配線36とは、層間絶縁膜27を貫通するコンタクト部38を介して電気的に接続する。また、パッド37とデータ書き込み用のパッド22とは、層間絶縁膜27を貫通するコンタクト部39を介して電気的に接続する。図7に示すように、複数の配線層にまたがって引き出し配線34,36を構成することにより、ICチップを上から見て引き出し配線34,36の配線経路が分かりにくくなるという利点がある。
【0054】
(実施の形態3)
図8および図9は、本発明の実施の形態3にかかる製造方法により製造される半導体装置を製造工程順に示す要部縦断面図である。
【0055】
実施の形態3は、たとえば図2および図3に示す実施の形態1において、チップ領域21内の記憶領域にデータを書き込み、パッド22を除去した後、ダイシングをおこなうものである。実施の形態1と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0056】
すなわち、まず、半導体基板20上にチップ領域21、スクライブ領域24、パッド22および引き出し配線23を形成する(図8(a)を参照)。パッド22を介してチップ領域21内の図示しない記憶領域にデータを書き込む。しかる後、半導体基板20上にレジストを塗布する。そして、マスクを用いて露光処理をおこなう。
【0057】
続いて、現像処理をおこない、スクライブ領域24を露出させる(図8(b)を参照)。残留したレジスト40をマスクとして、エッチング処理をおこない、スクライブ領域24上のパッド22を除去する(図9(a)を参照)。その後、ダイシングをおこない、ICチップに分離する(図9(b)を参照)。
【0058】
実施の形態3によれば、ダイシングの前にパッド22を除去するため、切断領域25の幅がパッド22の幅よりも狭い場合に、ダイシング後のICチップにパッド22の一部が残ってしまうのを防ぐことができる。したがって、ICチップに分離された後に、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0059】
(実施の形態4)
図10は、本発明の実施の形態4により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。図11は、図10に示す半導体ウエハの切断線C−Cにおける縦断面図であり、(a)はダイシング前の状態、(b)はダイシング後の状態を示す。
【0060】
実施の形態4は、たとえば図4および図5に示す実施の形態2において、チップ領域21内の図示しない記憶領域にデータを書き込んだ後、引き出し配線28を切断してから、ダイシングをおこなうものである。実施の形態2と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0061】
すなわち、まず、半導体基板20上にチップ領域21、スクライブ領域24、データ書き込み用パッド22、引き出し配線28、コンタクト用パッド29およびコンタクト部30を形成する。また、引き出し配線28の上方に、たとえばフォトリソグラフィ技術およびエッチング処理により、ヒューズ窓41を形成する(図10および図11(a)を参照)。
【0062】
そして、パッド22を介してチップ領域21内の図示しない記憶領域にデータを書き込む。しかる後、ヒューズ窓41にたとえばレーザビームを照射し、引き出し配線28を切断する。その後、ダイシングをおこない、ICチップに分離する(図11(b)を参照)。
【0063】
実施の形態4によれば、ダイシングの前に引き出し配線28を切断するため、切断領域25の幅がパッド22の幅よりも狭い場合に、ダイシング後のICチップにパッド22の一部が残っていても、そのパッドを内部の記憶領域から絶縁させることができる。したがって、ICチップに分離された後に、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0064】
なお、引き出し配線28を切断する方法として、図12に示すように、あらかじめチップ領域21内において、引き出し配線28の途中に、MOSトランジスタ51を設けておき、ダイシングをおこなう前にこのトランジスタ51を破壊するようにしてもよい。MOSトランジスタ51のソースおよびドレインをそれぞれデータ書き込み用パッド22および内部の記憶領域に接続する。また、スクライブ領域24内にMOSトランジスタ51にゲート信号を供給するためのパッド52を形成する。
【0065】
記憶領域にデータを書き込む際には、外部から適当なゲート信号を供給してMOSトランジスタ51をオン状態にする。データの書き込みが終了したら、パッド52に高電圧を印加して、トランジスタ51を破壊する。トランジスタ51の破壊によって、引き出し配線28は切断される。その後、ダイシングをおこなう。
【0066】
また、図13に示すように、MOSトランジスタ51と内部の記憶領域との間に、もう一つMOSトランジスタ53を形成し、2つのMOSトランジスタ51,53を直列に接続するように構成してもよい。この場合、スクライブ領域24内にMOSトランジスタ53にゲート信号を供給するためのパッド54を追加する。
【0067】
記憶領域にデータを書き込む際には、2つのMOSトランジスタ51,53にそれぞれ外部から適当なゲート信号を供給して2つのMOSトランジスタ51,53をオン状態にする。データの書き込みが終了したら、記憶領域側のトランジスタ53をオフ状態にしてから、もう一方のトランジスタ51を破壊する。
【0068】
このようにすることによって、トランジスタ51を破壊する時の影響が記憶領域に及ぶのを防ぐことができる。トランジスタ51の破壊によって、引き出し配線28は切断される。その後、ダイシングをおこなう。
【0069】
(実施の形態5)
図14は、本発明の実施の形態5により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。なお、他の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
実施の形態5は、パッド22とチップ領域21内の図示しない記憶領域とを電気的に接続する引き出し配線61を、パッド22の一角部を含めてパッド22の周囲に4分の1周させ、切断領域25内においてパッド22に連なるようにしたものである。それによって、ダイシングの際に、引き出し配線61とパッド22との接続部分が切り落とされる。
【0071】
実施の形態5によれば、ダイシングによって、引き出し配線61が途中で切断されるため、ダイシング後のICチップにパッド22の一部が残っていても、そのパッドを内部の記憶領域から絶縁させることができる。したがって、ICチップに分離された後に、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0072】
なお、引き出し配線61に代えて、図15に示すように、引き出し配線62を、切断領域25を横切ってパッド22の周囲を2分の1周させるようにしてもよい。あるいは、図16に示す引き出し配線63,64,65のように、スクライブ領域24内においてパッド22のピッチよりも長くなるように配線経路を折り曲げて、切断領域25を通過させるようにしてもよい。
【0073】
図15または図16のように配線することによって、ダイシングの際に、引き出し配線62,63,64,65の一部が切除されるので、引き出し配線62,63,64,65とパッド22とが確実に絶縁される。したがって、ダイシング後のICチップにパッド22の一部が残っていても、そのパッドを内部の記憶領域から絶縁させることができる。
【0074】
(実施の形態6)
図17は、本発明の実施の形態6により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。なお、他の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0075】
実施の形態6は、隣り合うチップ領域21a,21bの間のスクライブ領域24内に、両チップ領域21a,21bのそれぞれのパッド22a,22bを配置したものである。
【0076】
一方のチップ領域21aのパッド22aは、他方のチップ領域21b寄りに配設させる。同様に、他方のチップ領域21bのパッド22bは、一方のチップ領域21a寄りに配設させる。パッド22a,22bは、それぞれ、引き出し配線23a,23bを介して各チップ領域21a,21b内の記憶領域に接続されている。
【0077】
実施の形態6によれば、各チップ領域21a,21bのパッド22a,22bが切断領域25をまたぐように形成されているため、ダイシング後のICチップにパッド22a,22bの一部が残っていても、そのパッドは、別のICチップに対して形成されたパッドであるため、内部の記憶領域と絶縁される。したがって、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0078】
(実施の形態7)
図18は、本発明の実施の形態7により製造される半導体ウエハの一部を拡大して模式的に示す平面図である。なお、他の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0079】
実施の形態7は、スクライブ領域24内に形成されたパッド22をチップ領域21内の図示しない記憶領域に接続させる各引き出し配線71,72,73,74を、互いに絶縁させた状態で、複数の配線層を介して、複雑に交差させるように配線したものである。チップ領域21を上から見た状態で引き出し配線71,72,73,74が交差するように見える箇所は、それら交差するように見える引き出し配線71,72,73,74が上下の異なる配線層に形成されているため、実際には接触していない。
【0080】
実施の形態7によれば、ダイシング後のICチップを上から見た時に、引き出し配線71,72,73,74の配線経路が分かりにくくなるため、ダイシング後にパッド22の一部が残っていても、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータを読み出すためにはいずれのパッドを用いればよいのかを知られにくくなる。したがって、記憶領域の書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0081】
(実施の形態8)
図19は、本発明の実施の形態8により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。なお、他の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0082】
実施の形態8では、チップ領域21内にパッド22を形成する。そのチップ領域21内の図示しない記憶領域に電気的に接続された引き出し配線81をスクライブ領域24内に延ばし、引き出し配線81を切断領域25内にて折り返して元のチップ領域21内のパッド22に電気的に接続させる。つまり、実施の形態8は、引き出し配線81が切断領域25内を通過するような配線パターンとし、ダイシングにより切断領域25を切り落とす際に、引き出し配線81の一部を完全に切除するようにしたものである。
【0083】
なお、パッド22と引き出し配線81を同じ配線層に形成してもよいし、異なる配線層に形成して、コンタクト部を介して互いに電気的に接続するようにしてもよい。また、引き出し配線81が切断領域25を通過し、スクライブ領域24内において切断領域25の外側部分で折り返されるような配線パターンとしてもよい。
【0084】
実施の形態8によれば、ダイシングによって引き出し配線81が途中で切断されるため、ダイシング後においてはパッド22をチップ内部の記憶領域から絶縁させることができる。したがって、ICチップに分離された後に、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【0085】
(実施の形態9)
図20は、本発明の実施の形態9により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。なお、他の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0086】
実施の形態9は、一チップ領域内の図示しない記憶領域に接続された引き出し配線を、スクライブ領域内の切断領域を通過させて、別のチップ領域内に形成されたパッドに電気的に接続させるようにしたものである。たとえば図20に示す例では、隣り合うチップ領域21a,21bにおいて、一方のチップ領域21a内の図示しない記憶領域にデータを書き込むためのパッド22aを、他方のチップ領域21b内に形成する。
【0087】
そして、一方のチップ領域21a内から延びる引き出し配線82aを切断領域25を横切ってパッド22aに電気的に接続させる。他方のチップ領域21bに対するパッド22bおよび引き出し配線82bについても同様である。なお、パッドを形成する別のチップ領域は、隣に位置するチップ領域に限らない。
【0088】
実施の形態9によれば、ダイシング後のICチップにパッド22a,22bが残っていても、そのパッドは、別のICチップに対して形成されたパッドであるため、内部の記憶領域と絶縁される。したがって、ICチップに分離された後に、ICチップ内の記憶領域から書き込みデータが読み出されたり、その書き込みデータが改ざんされるのをより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態1により製造される半導体ウエハの要部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図2】図1に示す半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図3】図2に示す半導体ウエハの切断線A−Aにおける縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図5】図4に示す半導体ウエハの切断線B−Bにおける縦断面図である。
【図6】実施の形態2の変形例により製造される半導体ウエハを示す縦断面図である。
【図7】実施の形態2の他の変形例により製造される半導体ウエハを示す縦断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3にかかる製造方法により製造される半導体装置を製造工程順に示す要部縦断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3にかかる製造方法により製造される半導体装置を製造工程順に示す要部縦断面図である。
【図10】本発明の実施の形態4により製造される半導体ウエハの一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図11】図10に示す半導体ウエハの切断線C−Cにおける縦断面図である。
【図12】実施の形態4の変形例を模式的に示す平面図である。
【図13】実施の形態4の他の変形例を模式的に示す平面図である。
【図14】本発明の実施の形態5により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図15】実施の形態5の変形例を示す平面図である。
【図16】実施の形態5の他の変形例を示す平面図である。
【図17】本発明の実施の形態6により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図18】本発明の実施の形態7により製造される半導体ウエハの一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図19】本発明の実施の形態8により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図20】本発明の実施の形態9により製造される半導体ウエハのスクライブ領域の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図21】従来の半導体ウエハの要部を拡大して模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0090】
20 半導体ウエハ(半導体基板)
21,21a,21b チップ領域
22,22a,22b,52,54 パッド
23,28,31,34,36,61,62,63,64,65,71,72,73,74,81,82a,82b 引き出し配線
24 スクライブ領域
25 切断領域
27 層間絶縁膜
30,33,38,39 コンタクト部
40 レジスト
51,53 トランジスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップが形成されるチップ領域と、前記チップ領域の間のスクライブ領域とを有する半導体ウエハから、半導体装置を形成する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップを前記チップ領域に形成するとともに、前記半導体チップの記憶領域と引き出し配線を介して接続されるパッドと、前記引き出し配線とパッドとの接続部を、前記半導体ウエハの前記スクライブ領域に形成し、更に、異なる配線層に形成される前記引き出し配線を、前記半導体ウエハの一方の面から見て互いに交差させる経路に形成する工程と、
前記スクライブ領域に沿って前記半導体ウエハを切断する工程とを有し、
前記切断する工程は、前記引き出し配線の接続部を含む領域を切り落とすことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
半導体チップが形成されるチップ領域と、前記チップ領域の間のスクライブ領域とを有する半導体ウエハから、半導体装置を形成する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップを前記チップ領域に形成するとともに、前記半導体チップの記憶領域と引き出し配線を介して接続されるパッドと、前記引き出し配線とパッドとの接続部を、前記半導体ウエハの前記スクライブ領域に形成し、更に、異なる配線層に形成される前記引き出し配線を、前記半導体ウエハの一方の面から見て互いに交差させる経路に形成する工程と、
前記スクライブ領域に沿って前記半導体ウエハを切断する工程とを有し、
前記切断する工程は、前記引き出し配線の接続部を含む領域を切り落とすことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−344989(P2006−344989A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213509(P2006−213509)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【分割の表示】特願2000−38777(P2000−38777)の分割
【原出願日】平成12年2月16日(2000.2.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【分割の表示】特願2000−38777(P2000−38777)の分割
【原出願日】平成12年2月16日(2000.2.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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