説明

半導体装置の製造方法

【課題】下層導電体と上層導電体とを接続する低抵抗のコンタクトを安定して形成する。
【解決手段】コンタクト孔17の底部に露出したポリシリコンプラグ13の表面の自然酸化膜18を、密着層19を形成する直前に三フッ化窒素を用いたRIEより除去する。当該RIEは、エッチング機構が化学的エッチングが支配的となる条件で実施される。このためシリコン酸化膜15のエッチングが抑制される。したがって、コンタクト孔17底部にスパッタエッチされたシリコン酸化膜が再付着することが防止され、低抵抗で抵抗ばらつきの小さいコンタクトを安定して製造することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下層導電体と上層導電体とを接続するコンタクトを備えた半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等のメモリ回路とロジック回路とが混載された半導体装置では、集積度の向上のため高アスペクト比(該して3以上)のコンタクトが採用されている。特に、DRAMメモリセルのコンタクトには電気特性向上のため、ポリシリコンからなるコンタクトプラグ(以下、ポリシリコンプラグという。)とタングステンからなるコンタクトプラグ(以下、タングステンプラグという。)とを積層した構造のコンタクトが用いられている。
【0003】
図7は、このようなコンタクト構造の形成過程を示す工程断面図である。図7(a)に示すように、まず、シリコン基板51上に、シリコン酸化膜等からなる絶縁膜52にポリシリコンプラグ53が埋設された構造の下部構造が公知の微細加工技術により形成される。当該下部構造上には、後述のコンタクト孔を形成するドライエッチングの際にストッパ膜として機能するシリコン窒化膜等からなる絶縁膜54が堆積される。絶縁膜54上には、シリコン酸化膜等の絶縁膜55が層間絶縁膜として堆積される。
【0004】
次に、絶縁膜55上に、コンタクト孔形成位置に開口部56aを有するレジストパターン56がフォトリソグラフィ等により形成され、レジストパターン56をエッチングマスクとしたドライエッチングが行われる。当該エッチングにより、絶縁膜55と絶縁膜54が順に除去され、図7(b)に示すように、底部にポリシリコンプラグ53が露出されたコンタクト孔57が形成される。
【0005】
コンタクト孔57の形成が完了すると、レジストパターン56が除去され、次いで、絶縁膜55上のレジスト残渣や上記エッチングの際にコンタクト孔57の内部に付着した有機物を除去するための洗浄が行われる。当該洗浄には、例えば、硫酸を含む洗浄液が使用される。このようなレジスト除去や洗浄の過程で、コンタクト孔57底部に露出しているポリシリコンプラグ53の露出面には、自然酸化膜58が形成される(図7(c))。
【0006】
続いて、アルゴンガスを使用した逆スパッタ法により自然酸化膜58の除去処理(図7(d))が行われた後、タングステンプラグの密着層であるチタン膜60がスパッタ法により全面に成膜される。なお、逆スパッタ法とは、スパッタ成膜装置内で基板をスパッタエッチングするエッチング法を指す。
【0007】
自然酸化膜58の除去後にポリシリコンプラグ53に自然酸化膜が再度形成されることがないように、自然酸化膜除去とチタン膜形成とは、例えば、同一の真空処理室内で連続して行われる。そして、チタン膜60上にタングステン膜61が堆積されるとともに、コンタクト孔57以外の部位に堆積したチタン膜60及びタングステン膜61が除去され、図7(e)に示すチタン膜60とタングステン膜61からなるコンタクトが完成する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−324861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年の高アスペクト比のコンタクトを形成する場合、従来のコンタクトプラグ形成方法では、図7(d)に示した酸化膜除去工程の逆スパッタ法において、処理時間が増大する傾向にある。この現象は、大きな運動エネルギーを有するアルゴンイオンがコンタクト孔57の底面に到達しにくくなることに起因する。
【0009】
基板に入射するアルゴンイオンは、最表面(絶縁膜55の表面)では大きな運動エネルギーを有している。しかしながら、コンタクト孔57の内部に入射したアルゴンイオンは、側壁への衝突によりエネルギーが減少してしまう。このため、アスペクト比が高くなるにつれてコンタクト孔57の底部の自然酸化膜除去性が低下するのである。このため、高アスペクト比のコンタクト孔底部の自然酸化膜58を除去する場合、十分なエッチング量を確保するために長時間の処理が必要となる。
【0010】
処理時間が長くなると、基板の最表面に入射するアルゴンイオンは大きなエネルギーを有しているため、コンタクト孔上部57aがエッチングされやすくなる。この結果、コンタクト孔57の底部には、コンタクト上部57aでスパッタエッチングされたシリコン酸化膜59が再付着する。このような再付着が発生すると、自然酸化膜58の除去が阻害され、ポリシリコンプラグ53の表面に自然酸化膜58が残留してしまう。
【0011】
このように、完全に除去されずに残留した自然酸化膜58や再付着したシリコン酸化膜59は、コンタクト孔57の底部でのチタン膜60とポリシリコンプラグ53とのシリサイド反応を阻害する。このため、従来のコンタク形成方法では、コンタクト抵抗が増大し、抵抗ばらつきが大きくなるという問題が発生する。
【0012】
本発明は、上記従来の事情を鑑みて提案されたものであって、低抵抗のコンタクトを安定して形成することができる半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。まず、本発明は、下層導電体と上層導電体とを接続するコンタクトを備えた半導体装置の製造方法を前提としている。そして、本発明による半導体装置の製造方法では、まず、下層導電体を被覆する絶縁膜が形成され、当該絶縁膜に下層導電体に到達するコンタクト孔が形成される。次いで、コンタクト孔の底部に露出した下層導電体を選択的にエッチングする等方的なドライエッチングが行われ、当該下層導電体表面がエッチングされる。このエッチング工程と連続して、コンタクト孔に金属膜が形成される。
【0014】
本構成によれば、コンタクト抵抗を増大させる要因となる自然酸化膜等の下層導電体表面のコンタクト阻害物をエッチング除去する際に、コンタクト孔上部の絶縁膜がエッチングされない。したがって、絶縁膜がコンタクト底部に再付着することがなく、下層導電体表面のコンタクト阻害物を確実に除去することができる。これにより、低抵抗でかつ抵抗ばらつきが抑制された安定したコンタクトの製造を行うことができる。
【0015】
本構成は、コンタクト阻害物を除去するための下層導電体のエッチング時間が比較的長くなる高アスペクト比(3以上)のコンタクト孔を形成する場合に特に有効である。また、下層導電体の主成分がシリコンであり、前記金属膜の主成分が高融点金属である場合、従来法からの改善が著しい。
【0016】
上記下層導電体のエッチングは、例えば、三フッ化窒素ガスを含むエッチングガスを用いた反応性イオンエッチングにより行うことができる。このとき、反応性イオンエッチングは、5Pa〜100の圧力下で行われることが好ましい。
【0017】
なお、下層導電体に対する等方的なエッチングでは、下層導電体表面のコンタクト阻害物を下層導電体の一部とともに除去し、下層導電体に凹部を形成することが好ましい。これにより、金属膜と下層絶縁膜との接触面積が増大し、抵抗ばらつきをより低減することができる。
【0018】
また、上記金属膜形成は、例えば、化学的気相成長法により行うことができる。なお、酸化膜除去及び金属膜形成は真空下で連続して行うことも可能である。これにより、下層導電体表面のコンタクト阻害物を確実に除去することができる。
【0019】
さらに、上記下層導電体は、基板上に形成された下層絶縁膜を貫通する下層コンタクト孔に、ポリシリコンを堆積することで形成することができる。この場合、下層コンタクト孔内へのポリシリコンの堆積量は、下層コンタクト孔の容積に対して25〜75%であることか好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明よれば、例えば、ポリシリコンプラグ上にタングステンプラグを形成する場合等に、コンタクト孔底部に自然酸化膜残りや絶縁膜の再付着が発生することを確実に防止することができる。このため、コンタクト孔底部において、シリサイド反応が阻害されることなく進行し、コンタクト抵抗のばらつきを抑制することができる。したがって、低抵抗のコンタクトを極めて安定して形成することが可能となる。また、本発明では、下層導電体と金属膜との接触面積が従来に比べて増大するため、抵抗ばらつきをさらに抑制しコンタクト構造の形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、本発明を、ポリシリコンプラグとタングステンプラグとが積層された構造を有するコンタクトを備えた半導体装置の製造に適用している。図1及び図2は、当該半導体装置の製造過程を示す工程断面図である。
【0022】
図1(a)に示すように、まず、シリコン等からなる半導体基板11上に、BPSG(Boro-Phospho Silicate glass)等のシリコン酸化膜からなる絶縁膜12にポリシリコンプラグ13が埋設された下部構造が形成される。このような構造は、コンタクト孔が形成された絶縁膜12上にポリシリコンをCVD(Chemical Vapor Deposition)法等により堆積し、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等により、上面を平坦化することにより形成することができる。当該下部構造上には、シリコン窒化膜からなる絶縁膜14及びBPSGからなる絶縁膜15が堆積される。ここで、絶縁膜14は、後述のコンタクト孔を形成するドライエッチングの際にストッパ膜として機能する。
【0023】
次に、図1(b)に示すように、絶縁膜15上に、コンタクト孔形成位置に開口部16aを有するレジストパターン16がフォトリソグラフィ等により形成される。当該レジストパターン16をエッチングマスクとして、絶縁膜15及び絶縁膜14が順にエッチングされ、図1(c)に示すように、シリコンプラグ13に到達するコンタクト孔17が形成される。当該エッチングは、プラズマエッチング等のドライエッチングにより行うことができる。なお、図1(c)は、コンタクト孔17の形成後に、アッシングや有機洗浄等によりレジストパターン16が除去された状態を示している。
【0024】
続いて、絶縁膜15上のレジスト残渣やコンタクト孔17内に残留する有機物等を除去するための洗浄が行われる。当該洗浄は、例えば、硫酸を含む洗浄液(SPM:Sulfuric acid-hydrogen Peroxide Mixture等)が使用される。このようなレジスト除去や洗浄、並びに、洗浄後に半導体基板11が大気にさらされること等により、コンタクト孔17の底部に露出しているポリシリコンプラグ13には図1(d)に示すように、自然酸化膜18が1〜2nm程度成長する。
【0025】
さて、本実施形態では、続いて、自然酸化膜18がポリシリコンプラグ13の一部とともにエッチング除去される。当該エッチングは、例えば、三フッ化窒素(NF3)を含有するエッチングガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion etching)により行うことができる。この場合、RIEは、例えば、30Pa程度の圧力下で、1000W程度のRF(Radio Frequency)電力を印加することで実施できる。ここでは、三フッ化窒素の流量を100ml/min(標準状態)とし、基板温度を20℃としている。
【0026】
図3は、三フッ化窒素をエッチングガスとしたRIEにおける選択比とRIEが実施される反応室内の圧力との関係を示す図である。ここで、選択比とは、ポリシリコンプラグ13のエッチング速度とシリコン酸化膜(本実施形態では、自然酸化膜18及び絶縁膜15)のエッチング速度との比を指す。
【0027】
図3に示すように、低圧力域では選択比が小さくなっている。これは、低圧力域では基板に入射するイオンは、基板に到達するまでの間に他のイオン等の粒子とほとんど衝突することなく基板に入射するためである。すなわち、低圧力域では、基板に入射するイオンのエネルギーが大きく、エッチング機構は物理的なエッチングが支配的となる。このため、ポリシリコンプラグ13、自然酸化膜18、絶縁膜15の間のエッチング速度に大きな差が発生せず、ほぼ同等のエッチング速度でエッチングが進行する。
【0028】
これに対し、高圧力域では、イオンは基板に到達するまでの間に他のイオン等の粒子と衝突するため基板に入射するイオンのエネルギーが小さく、エッチング機構は化学的なエッチングが支配的となる。このため、エッチングガス種の反応性に応じてポリシリコンプラグ13、自然酸化膜18、絶縁膜15の間のエッチング速度に差が発生し、選択比が大きくなる。
【0029】
したがって、上述のように、30Pa程度の圧力下で三フッ化窒素をエッチングガスとしてRIEを行うと、エッチング機構は化学的なエッチングが支配的となる。すなわち、ポリシリコンプラグ13のエッチングは、図2(a)に示すように等方的に進行し、自然酸化膜18の除去が完了したときに、ポリシリコンプラグ13の表面はコンタクト孔17の中央に対応する位置が窪んだ椀状となる。例えば、アスペクト比が5(径200nm、深さ1000nm)であるコンタクト孔17の底部に形成された1〜2nmの自然酸化膜18を除去する場合には、当該窪みの深さは、50nm程度となる。また、ポリシリコンプラグ13に形成された窪み(凹部)の最大幅(ポリシリコンプラグ13の上端)17cは絶縁膜14の開口部17bに比べて大きくなっている(いわゆる、ボーイング形状。)。
【0030】
また、当該エッチング条件では、ポリシリコンプラグ13と絶縁膜15との間に選択比が確保されているため、コンタクト孔17の底部17b、及びコンタクト孔17の上部17aを拡大させることなく、ポリシリコンプラグ13の等方性エッチングを実施することができる。したがって、DRAM等のようにコンタクト孔17が近接して形成される状況下であっても、エッチング中に隣接するコンタクト孔17の上部が繋がり、後述のようにコンタクト孔17内に金属膜20を充填した場合に短絡を生じることもない。したがって、上述のエッチング条件によれば、絶縁膜15上部のエッチングを抑制しつつ、自然酸化膜18を除去することができる。すなわち、自然酸化膜18のエッチングの際に、エッチングされた絶縁膜15がコンタクト孔17底部へ再付着することを抑制できる。
【0031】
なお、自然酸化膜18のエッチングを行う際の圧力は上記条件に限定されるものではなく、絶縁膜15とポリシリコンプラグ13の選択比が確保できる条件、すなわち、化学的なエッチングが可能となる圧力であればよい。したがって、図3に示すように、圧力の下限は5Pa程度以上あることが望ましい。また、圧力の上限には特に制限はないが、500Pa程度あれば十分である。
【0032】
以上のようにして、等方性エッチングによる自然酸化膜18の除去が完了すると、タングステンプラグの密着層19であるチタン膜が全面に成膜される。ここでは、密着層19は、例えば、四塩化チタン(TiCl4)を原料とした無機プラズマCVD法により形成される。ここでは、成膜条件として、四塩化チタンの流量を2000ml/min(標準状態)、モノシラン(SiH4)の流量を2000ml/min(標準状態)として反応室内に導入し、1000WのRF電力を印加している。なお、反応室内の圧力は2000Paであり、成膜時の基板温度は650℃である。
【0033】
この後、図2(b)に示すように、密着層19上にコンタクトプラグの主部となる金属膜20であるタングステン膜が、例えば、六フッ化タングステン(WF6)を原料とした無機CVD法により堆積され、コンタクト孔17が充填される。当該成膜条件は、例えば、六フッ化タングステンを2000ml/min(標準状態)、モノシランを2000ml/min(標準状態)で反応室内に導入し、1000WのRF電力を印加する。このとき、反応室内の圧力は2000Paであり、成膜時の基板温度は650℃である。
【0034】
以上のような、無機CVD法で形成されたタングステン膜はボトムカバレッジに優れている。このため、図2(b)に示すように、高アスペクト比のコンタクト孔17の底部に、等方的にエッチングされたポリシリコンプラグ13が存在する場合であっても、コンフォーマルな成膜が可能である。したがって、コンタクト孔17を容易に埋め込むことができる。
【0035】
そして、コンタクト孔17以外の部位に堆積した密着層19及び金属膜20がCMP法やエッチバック等により除去され、図2(c)に示す密着層19と金属膜20からなるコンタクト構造が完成する。なお、コンタクト上には、公知の手法により上層導電体が形成される。また、本実施形態では、酸化膜18の除去及び密着層19の形成は、公知のマルチチャンバを備えた半導体製造装置等により、真空下で連続して行われる。したがって、ポリシリコンプラグ13の上面に自然酸化膜18が再形成されない。
【0036】
図4に、本実施形態により形成したポリシリコンプラグとタングステンプラグとが積層されたコンタクトと、従来法により形成したコンタクトの抵抗(コンタクト抵抗)の累積度数分布を示す。図4より、本発明により形成されたコンタクトは、従来に比べて低抵抗、かつ、抵抗ばらつきの小さいことが理解できる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、コンタクト孔上部がスパッタエッチングされることを抑制することができるため、コンタクト孔底部への絶縁膜(シリコン酸化膜)の再付着を確実に防止することができる。したがって、例えば、ポリシリコンプラグとタングステンプラグが積層された構造を有する高アスペクト比のコンタクトを形成する際であっても、両プラグの接合部にシリコン酸化膜が残留することがない。したがって、ポリシリコンプラグとタングステンプラグとの接合部におけるシリサイド反応が阻害されないため、低抵抗かつ抵抗ばらつきの小さいコンタクトを形成することができる。すなわち、高アスペクト比のコンタクトを安定して形成することが可能となる。また、本実施形態によれば、下層導電体と金属膜との接触面積が従来に比べて増大するため、抵抗ばらつきをさらに抑制したコンタクト構造の形成が可能となる。
【0038】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態を図面を参照しながら説明する。第1の実施形態と同様に、本実施形態も、ポリシリコンプラグとタングステンプラグとが積層された構造を有するコンタクトを備えた半導体装置の製造に本発明を適用している。
【0039】
図5及び図6は、当該半導体装置の製造過程を示す工程断面図である。図5(a)に示すように、まず、シリコン等からなる半導体基板11上に、BPSG(Boro-Phospho Silicate glass)等のシリコン酸化膜からなる絶縁膜12が形成CVD法によりされ、フォトリソグラフィ及ぶエッチングによりコンタクト孔12aが形成される。次いで、図5(b)に示すように、全面にポリシリコン膜31がCVD法等により形成される。コンタクト孔を完全に充填する場合、コンタクト孔へのポリシリコン膜は、通常、コンタクト孔の容積に対して150%程度の容積比(コンタクト孔内へのポリシリコンの堆積量/コンタクト孔の容積)で堆積される。しかしながら、本実施形態では、コンタクト孔12a内へのポリシリコン膜31の堆積量は、容積比で25〜75%程度としている。このため、ポリシリコン膜31は、コンタクト孔12aを完全に埋め込むことがなく、コンタクト孔12aの中央に凹部が形成される。
【0040】
続いて、CMP法等により、ポリシリコン膜31が形成されて基板の上面の平坦化が行われる。これにより、図5(c)に示すように、コンタクト孔12aの中央に凹部を備えたコンタクトプラグ32が形成される。
【0041】
コンタクトプラグ32が形成された後、図5(d)に示すように、全面に、シリコン窒化膜からなる絶縁膜14及びBPSGからなる絶縁膜15が堆積される。第1の実施形態と同様に、絶縁膜14は、後述のコンタクト孔を形成するドライエッチングの際にストッパ膜として機能する。
【0042】
次に、絶縁膜15上に、コンタクト孔形成位置に開口部16aを有するレジストパターン16がフォトリソグラフィ等により形成される。当該レジストパターン16をエッチングマスクとして、絶縁膜15及び絶縁膜14が順にエッチングされ、図5(e)に示すように、シリコンプラグ32に到達するコンタクト孔17が形成される。当該エッチングは、プラズマエッチング等のドライエッチングにより行うことができる。
【0043】
アッシングや有機洗浄等によりレジストパターン16が除去された後、絶縁膜15上のレジスト残渣やコンタクト孔17内に残留する有機物等を除去するための洗浄が行われる。当該洗浄は、例えば、硫酸を含む洗浄液(SPM等)が使用される。このようなレジスト除去や洗浄、並びに、洗浄後に半導体基板11が大気にさらされること等により、コンタクト孔17の底部に露出しているポリシリコンプラグ32には、図6(a)に示すように、自然酸化膜33が1〜2nm程度成長する。
【0044】
続いて、第1の実施形態と同様に、自然酸化膜33がポリシリコンプラグ13の一部とともにエッチング除去される。当該エッチングは、例えば、三フッ化窒素(NF3)を含有するエッチングガスを用いたRIEにより上記第1の実施形態で示したエッチング条件で行えばよい。
【0045】
本実施形態では、上述のようにポリシリコンプラグ32が凹部を備えるため、当該エッチングにおけるエッチング量が過大であると、ポリシリコンプラグ32が完全に除去され、半導体基板11がエッチングされてしまう。これを避けるため、当該エッチングにおけるエッチング量Teは、ポリシリコンプラグの最小膜厚Tp(凹部での膜厚)より小さくする必要がある。また、自然酸化膜33は、完全に除去される必要があるため、自然酸化膜33の膜厚をToとすると、To≦Te≦Tpが、当該エッチングが満足すべき条件となる。
【0046】
実際の製造工程では、エッチング量はエッチング時間により制御される。したがって、ポリシリコンプラグのエッチング速度ERp、自然酸化膜33のエッチング速度ERoとして、上記条件式を変換すると、自然酸化膜33をエッチング除去する際のエッチング時間teは、To/ERo≦te≦Tp/ERpを満足すればよい。
【0047】
以上のようにして、等方性エッチングによる自然酸化膜18の除去が完了すると、第1の実施形態と同様に、チタン膜からなる密着層19、タングステン膜からなる金属膜20が無機CVD法により順に堆積され、コンタクト孔17が充填される(図6(c))。そして、コンタクト孔17以外の部位に堆積した密着層19及び金属膜20がCMP法やエッチバック等により除去され、図6(d)に示す密着層19と金属膜20からなるコンタクト構造が完成する。なお、コンタクト上には、公知の手法により上層導電体が形成される。また、本実施形態では、酸化膜33の除去及び密着層19の形成は真空下で連続して行われる。このため、ポリシリコンプラグ13の上面に自然酸化膜18が再形成されない。
【0048】
本実施形態により形成したポリシリコンプラグとタングステンプラグとが積層されたコンタクトも、第1の実施形態と同様に、従来に比べて低抵抗、かつ、抵抗ばらつきの小さくなる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様にコンタクト孔上部がスパッタエッチングされることを抑制することができるため、コンタクト孔底部への絶縁膜(シリコン酸化膜)の再付着を確実に防止することができる。したがって、ポリシリコンプラグとタングステンプラグとの接合部におけるシリサイド反応が阻害されないため、低抵抗かつ抵抗ばらつきの小さいコンタクトを形成することができる。すなわち、高アスペクト比のコンタクトを安定して形成することが可能となる。また、本実施形態によれば、下層導電体と金属膜との接触面積が第1の実施形態に比べて増大するため、抵抗ばらつきをさらに抑制したコンタクト構造の形成が可能となる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲において、種々の変形及び応用が可能である。例えば、上記実施形態では、ポリシリコンプラグとタングステンプラグとが積層された構造を有するコンタクトの事例を説明したが、コンタクト孔の底部においてシリサイド化により低抵抗を実現する観点では、下層導電膜は、ポリシリコンに限らず、アモルファスシリコン、単結晶シリコン等のシリコンを主成分とする材料であってもよい。同様に密着層材料は、チタンに限るものではなく窒化チタンや他の高融点金属材料であってもよい。また、本発明は、シリコン基板に直接接続される積層構造を有しないコンタクトにも適用可能である。さらに、本発明は、下層導電体及び絶縁膜に応じた等方性エッチングガスを選択することにより、下層導電体や絶縁膜の材質に制限されることなく実施することが可能である。すなわち、本発明は、コンタクト孔を備える全ての半導体装置の製造に適用でき、低抵抗で抵抗ばらつきの小さいコンタクトを形成することができる。
【0051】
加えて、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、上記説明したリソグラフィ、成膜、エッチング等のプロセスは、他の等価なプロセスに置換することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、低抵抗でばらつきの小さいコンタクトを安定して形成できるという効果を有し、コンタクトを備えた半導体装置の製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態のコンタクトプラグ形成過程を示す工程断面図
【図2】本発明の第1の実施形態のコンタクトプラグ形成過程を示す工程断面図
【図3】酸化膜を除去するRIEでの反応室圧力と選択比との関係を示す図
【図4】本発明により形成されたコンタクトプラグのコンタクト抵抗を示す図
【図5】本発明の第2の実施形態のコンタクトプラグ形成過程を示す工程断面図
【図6】本発明の第2の実施形態のコンタクトプラグ形成過程を示す工程断面図
【図7】従来のコンタクトプラグ形成過程を示す工程断面図
【符号の説明】
【0054】
11 半導体基板
12 絶縁膜
13、32 ポリシリコンプラグ(下層導電体)
15 絶縁膜
16 レジストパターン
17 コンタクト孔
18、33 自然酸化膜(コンタクト阻害物)
19 密着層
20 金属膜
51 半導体基板
53 ポリシリコンプラグ
55 絶縁膜
56 レジストパターン
57 コンタクト孔
58 自然酸化膜
59 シリコン酸化膜(再付着した絶縁膜)
61 タングステンプラグ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層導電体と上層導電体とを接続するコンタクトを備えた半導体装置の製造方法において、
下層導電体を被覆する絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜に前記下層導電体に到達するコンタクト孔を形成する工程と、
前記コンタクト孔の底部に露出した下層導電体を選択的にエッチングする等方的なドライエッチングにより当該下層導電体表面をエッチングする工程と、
前記エッチング工程と連続して、前記コンタクト孔に金属膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記コンタクト孔のアスペクト比が3以上である請求項1記載の半導体装置の製造方法
【請求項3】
前記下層導電体の主成分がシリコンであり、前記金属膜の主成分が高融点金属である請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記下層導電体のエッチングは、三フッ化窒素ガスを含むエッチングガスを用いた反応性イオンエッチングにより行われる請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記反応性イオンエッチングは、5〜500Paの圧力下で行われる請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記下層導電体のエッチングは、下層導電体表面のコンタクト阻害物を前記下層導電体の一部とともにエッチング除去し、下層導電体に凹部を形成する請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記下層導電体のエッチング及び前記金属膜形成が、真空下で連続して行われる請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記金属膜形成が化学的気相成長法により行われる請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記下層導電体は、
基板上に下層絶縁膜を形成する工程と、
前記下層絶縁膜を貫通する下層コンタクト孔を形成する工程と、
前記下層コンタクト孔にポリシリコンを堆積する工程と、
を有し、
前記下層コンタクト孔内へのポリシリコンの堆積量が下層コンタクト孔の容積に対して25〜75%である請求項1記載の半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−142331(P2007−142331A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337272(P2005−337272)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】