半導体装置の製造方法
【課題】 電極を形成した後に可動部を形成し、その後に電極を保護する保護膜を除去する場合において、既に形成されている可動部が損傷を受けることを抑制する技術を提供する。
【解決手段】 ベース層14の上方に配置されている半導体層10に、ベース層14に対して移動不能に固定されている固定部と、ベース層14に対して移動可能な可動部が形成されている半導体装置の製造方法において、固定部と可動部となる領域以外の半導体層10を除去する半導体層除去工程を実施し、除去された半導体層10に対応する位置の絶縁体層12(中間層)と、可動部となる領域とベース層14の間にある絶縁体層12とを除去する中間層除去工程を実施し、半導体層除去工程によって半導体層10に形成された空間内にレジストP1を充填するレジスト充填工程を実施する。その後に、電極80を被覆している保護膜7を除去し、レジストP1を除去する。
【解決手段】 ベース層14の上方に配置されている半導体層10に、ベース層14に対して移動不能に固定されている固定部と、ベース層14に対して移動可能な可動部が形成されている半導体装置の製造方法において、固定部と可動部となる領域以外の半導体層10を除去する半導体層除去工程を実施し、除去された半導体層10に対応する位置の絶縁体層12(中間層)と、可動部となる領域とベース層14の間にある絶縁体層12とを除去する中間層除去工程を実施し、半導体層除去工程によって半導体層10に形成された空間内にレジストP1を充填するレジスト充填工程を実施する。その後に、電極80を被覆している保護膜7を除去し、レジストP1を除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース層の上方に配置されている半導体層に、ベース層に対して移動不能に固定されている固定部と、ベース層に対して移動可能な可動部が形成されている半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の半導体装置としては、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサが知られている。図15に示すMEMSセンサ100は、ベース層114と、ベース層114の上方に配置された半導体層110を備えている。半導体層110には、ベース層114に対して移動不能に固定されている固定部182と、ベース層114に対して移動可能な可動部131が形成されている。固定部182は、絶縁層112を介してベース層114に固定されている。固定部182の表面には、電極180が形成されている。可動部131は、ベース層114との間に空間が形成されている。可動部131は図示していない断面で、固定部182と連結している。MEMSセンサ100は、例えば、加速度や角速度などの力学量の検出に利用される。すなわち、MEMSセンサ100に加速度が作用すると、ベース層114に対する可動部131の相対位置が変位する。これによる静電容量の変化を電極180を介して検出することで、加速度を検出する。
【0003】
特許文献1には、MEMSセンサ100の製造方法が開示されている。特許文献1の製造方法では、まず、半導体層110の表面のうち固定部182となる領域の表面に電極180を形成する。次に、電極180をSiN等の保護膜で被覆する。次に、固定部182と可動部131となる領域以外の半導体層110をエッチングして除去する。その後に、除去された半導体層110に対応する位置の絶縁層112と、可動部131となる領域とベース層114の間にある絶縁層112を除去する。これにより、可動部131がベース層114に対して移動可能な状態(浮き上がった状態)となる。次に、電極180を被覆している保護膜を除去する。半導体層110や絶縁層112を除去する前に電極180を保護膜で被覆することにより、エッチング等による電極180の損傷を防止している。
【0004】
【特許文献1】特開2007−283470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極180を被覆している保護膜は、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)等の異方性エッチングによって除去する。反応性イオンエッチングでは、プラズマ内にMEMSセンサ100を載置する。すると、既に形成されている可動部131がプラズマ内において帯電し、可動部131同士か可動部131とベース層114とが衝突することがある。これにより、可動部131が損傷することがあった。
また、保護膜は、ケミカルドライエッチング(CDE)等の等方性エッチングによって除去することもある。この場合には、既に形成されている可動部131がエッチングによって削れてしまうことがあった。
【0006】
可動部131を形成した後に電極180を形成すれば、可動部131の損傷と電極180の損傷の双方を回避することができる。しかしながら、半導体層110の表面に電極180を形成するためには、通常、まず表面の全域に金属膜を形成し、その後に、不要な領域の金属膜を除去することで電極180を形成する。可動部131を形成した後には、半導体層110の一部が除去されており、また、可動部131とベース層114との間に空間が設けられているため、従来の方法で電極180を形成することは困難である。
本発明は、電極を形成した後に可動部を形成し、その後に電極を保護する保護膜を除去する場合において、既に形成されている可動部が損傷を受けることを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される製造方法は、ベース層の上方に配置されている半導体層に、ベース層に対して移動不能に固定されている固定部と、ベース層に対して移動可能な可動部が形成されている半導体装置の製造方法である。この製造方法では、電極形成工程と保護膜被覆工程と半導体層除去工程と中間層除去工程とレジスト充填工程と保護膜除去工程とレジスト除去工程をこの順で実施する。電極形成工程では、ベース層と半導体層の間に中間層が配置された状態で、半導体層の表面のうち固定部となる領域の表面に電極を形成する。保護膜被覆工程では、電極を保護膜で被覆する。半導体層除去工程では、固定部と可動部となる領域以外の半導体層を除去する。中間層除去工程では、半導体層除去工程で除去された半導体層に対応する位置の中間層と、可動部となる領域とベース層の間にある中間層とを除去する。レジスト充填工程では、半導体層除去工程によって半導体層に形成された空間内にレジストを充填する。保護膜除去工程では、電極を被覆している保護膜を除去する。レジスト除去工程では、充填したレジストを除去する。
なお、レジスト充填工程では、半導体層除去工程によって半導体層に形成された空間の全てがレジストで充填されていなくてもよい。また、レジスト充填工程を実施した後には、可動部同士又は可動部と他の部材(ベース層や中間層等)とが、レジストを介して仮に固定されるとともに、少なくとも可動部の側面がレジストで被覆されていることが好ましい。可動部の側面は、上記半導体装置の性能と関連が深い。
【0008】
上記した製造方法では、保護膜除去工程を実施する前に、レジスト充填工程で、半導体層に形成された空間内にレジストを充填することを特徴としている。これにより、可動部の表面をレジストで保護することができる。あるいは、可動部同士又は可動部と他の部材(ベース層や中間層等)とを、レジストを介して仮に固定することができる。したがって、保護膜除去工程で、例えばケミカルドライエッチングを利用して電極の保護膜を除去する場合は、レジストで保護された可動部の表面が削れない。保護膜除去工程で、例えば反応性イオンエッチングを利用して電極の保護膜を除去する場合には、可動部が帯電して何れかの部材と衝突することが防止される。さらに、充填したレジストは、可動部や固定部に損傷を与えることなく簡単に除去することができる。これによって、電極を保護する保護膜を除去する際に、可動部が損傷を受けることを抑制することができる。
【0009】
上記した半導体装置の製造方法は、さらにSOI(Silicon on Insulator)基板を準備する工程を有していてもよい。この場合には、ベース層と半導体層の間の「中間層」が絶縁層となる。SOI基板を用いることで、簡単に半導体装置を製造することができる。また、上記した製造方法は、ベース層上に配置された中間層の上に半導体層を積層する工程をさらに有していてもよい。この場合には、電極形成工程では、積層された半導体層上に電極を形成する。この方法によると、半導体層の厚みを任意の厚みとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書で開示された製造方法によると、半導体層の表面に形成された電極を保護する保護膜を除去する時に、既に形成されている可動部が損傷を受けることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書で開示される技術の特徴を整理しておく。
(1)半導体装置は、MEMSセンサである。
(2)空間を充填するレジストとしては、ノボラック型レジストやポリイミド等を用いる。
【実施例】
【0012】
図1に、本実施例の半導体装置1の要部を平面視した図を示す。図2は、図1のII-II線断面図である。
半導体装置1は加速度センサとして機能する。半導体装置1は、図1の上部に配置されている検出領域5と、図1の下部に配置されている振動力付与領域3を備えている。
まず、検出領域5の構成について説明する。検出領域5は、一対の電極80と、各々の電極80が形成されている電極台座部82と、各々の電極台座部82から配線されている2本のアーム部20と、中央に配置されている第1格子部40と、第1格子部40と各々のアーム部20との間に形成されている櫛歯電極部30を備えている。
【0013】
電極80は、図1の左右両端に形成されている。電極80はアルミニウム等の金属によって電極台座部82の表面に形成されている。図2に示すように、電極台座部82とベース層14の間には絶縁体層12が配されている。電極台座部82は、半導体層10によって形成されている。
各々の電極台座部82から中央に向けてアーム部20が伸びている。アーム部20は絶縁体層12を介してベース層14に固定されている。
第1格子部40には、平面視すると多数の孔が形成されている。第1格子部40とベース層14の間には空間が形成されており、第1格子部40はベース層14に対して移動可能となっている。第1格子部40は、梁52によって後述する振動力付与領域3の第2格子部42に連結している。
【0014】
櫛歯電極部30は、図1の第1格子部40の左右両側に形成されている。櫛歯電極部30は、アーム部20と接続しているアーム部側櫛歯32と、第1格子部40と接続している格子部側櫛歯31を備えている。アーム部側櫛歯32を構成する複数個の歯がアーム部20に等間隔に形成されており、各々の歯がアーム部20の支持部21から第1格子部40側に向けて伸びている。アーム部側櫛歯32と第1格子部40との間には所定の間隔が形成され、両者は接触していない。格子部側櫛歯31を構成する複数個の歯が第1格子部40に等間隔に配置されており、各々の歯が第1格子部40からアーム部20側に向けて伸びている。格子部側櫛歯31とアーム部20との間には所定の間隔が形成され、両者は接触していない。アーム部側櫛歯32の歯と格子部側櫛歯31の歯は互い違いに間隔を空けて組み合わせられている。図2に示すように、格子部側櫛歯31とベース層14の間には空間が形成されており、格子部側櫛歯31はベース層14に対して移動可能となっている。また、図示していないがアーム部側櫛歯32とベース層14の間にも空間が形成されており、アーム部側櫛歯32もベース層14に対して移動可能となっている。半導体装置1に加速度が加わると、アーム部側櫛歯32に対する格子部側櫛歯31の位置が変化する。
【0015】
次に振動力付与領域3の構成について説明する。前述した検出領域5と同一の構成要素には、同一の符号を付与することで詳細な説明を省略する。
振動力付与領域3は、一対の電極80と、各々の電極80が形成されている電極台座部82と、各々の電極台座部82から配線されている2本のアーム部20と、中央に配置されている第2格子部42と、第2格子部42と各々のアーム部20との間に形成されている2個の櫛歯電極部30と、アンカー部60を備えている。
【0016】
第2格子部42も、検出領域5の第1格子部40と同様に、平面視すると多数の孔が形成されている。第2格子部42も、ベース層14との間に空間が形成されており、ベース層14に対して移動可能となっている。第2格子部42は、梁52によって第1格子部40と連結されている。梁52も、ベース層14との間に空間が形成されており、ベース層14に対して移動可能となっている。
また、第2格子部42は、梁50によってアンカー部60の支持部61と連結している。梁50も、ベース層14との間に空間が形成されており、ベース層14に対して移動可能となっている。アンカー部60は、絶縁体層12を介してベース層14に固定されている。
【0017】
したがって、第1格子部40と、第1格子部40に形成されている格子部側櫛歯31と、梁52と、第2格子部42と、第2格子部42に形成されている格子部側櫛歯31は、梁50を介してアンカー部60の支持部61に連結している。
【0018】
半導体装置1で加速度を検出する際は、振動力付与領域3の一対の電極80間に交流電圧が印加される。これにより、振動力付与領域3側の櫛歯電極部30に力が発生し、第2格子部42が図1の左右に振動する。この振動の振動力や振動幅は、第2格子部42とアンカー部60を連結する梁50の剛性によって決まる。振動は、梁52を介して検出領域5の第1格子部40に伝わる。これにより、第1格子部40も図1の左右方向に振動する。図1の上下方向に加速度が発生すると、検出領域5の櫛歯電極部30の格子部側櫛歯31とアーム部側櫛歯32の間隔が変化する。これにより、検出領域5の櫛歯電極部30の静電容量が変化する。この静電容量の変化量を検出領域5の一対の電極80を介して検出し、検出した静電容量の変化量から加速度の大きさを算出する。
【0019】
図3〜図14を参照して半導体装置1の製造方法を説明する。図3〜図12と図14は図1のII-II線断面について各工程が実施された状態を示している。
まず図3に示すように、ベース層14と半導体層10の間に絶縁体層12が配されたSOI基板2を準備する。ベース層14と半導体層10の材料にはシリコンが用いられている。絶縁体層12の材料には酸化シリコンが用いられている。ベース層14の厚みは625μmであり、絶縁体層12の厚みは4.5μmであり、半導体層10の厚みは40μmである。
【0020】
次に図4に示すように、半導体層10の表面全体にアルミニウム膜8を堆積する。アルミニウム膜8の厚みは1.0μmとする。
次に図5に示すように、図4のアルミニウム膜8の一部を除去し、検出領域5と振動力付与領域3の電極80を形成する。
【0021】
次に図6に示すように、電極80を保護膜7で被覆する。保護膜7の材料にはSiNを用いる。保護膜7の厚みは2.0μmとする。
次に図7に示すように、基板2の表面側全体にマスクM1を塗布し、その後にマスクM1をパターニングする。これにより、保護膜7で被覆された電極80上と、可動部(31,32,40,42,50,52)を形成する領域(可動部形成領域)と、固定部(20,60,82)を形成する領域(固定部形成領域)上のマスクM1が残り、その他の領域上に形成されたマスクM1が除去される。なお、第1格子部40と第2格子部42を形成する領域(可動部形成領域の一部)内では、多数の孔(図1参照)を形成する部分でマスクM1を開口する。
【0022】
次に図8に示すように、マスクM1の開口から絶縁体層12に至るまで半導体層10をエッチングする。これにより、半導体層10のうち、可動部(31,32,40,42,50,52)と固定部(20,60,82)が残存する。図8では、格子部側櫛歯31と電極台座部82が残存している状態を示している。
次に図9に示すように、アッシングによってマスクM1を除去する。
【0023】
次に図10に示すように、基板2をフッ酸薬液処理し、露出している絶縁体層12を除去する。この際に、絶縁体層12は等方的に除去される。したがって、露出している絶縁体層12に加え、可動部(31,32,40,42,50,52)や固定部(20,60,82)の下方に残存している絶縁体層12も、側方から薬液によって侵食される。例えば、図10に示す格子部側櫛歯31では、格子部側櫛歯31の下方に残存している絶縁体層12が、図示左側と右側の両側から薬液に侵食されて除去される。格子部側櫛歯31は幅が狭いので、格子部側櫛歯31の下方の絶縁体層12は全て除去される。同様に、アーム部側櫛歯32及び梁50,52も幅が狭いので、それらの下方の絶縁体層12は全て除去される。第1格子部40と第2格子部42には多数の孔を形成したことにより、それぞれの孔に導入された薬液でそれぞれの孔の周囲の絶縁体層12が除去される。これにより、第1格子部40と第2格子部42の下方の絶縁体層12も全て除去される。その結果、櫛歯電極部30と梁50,52と第1格子部40と第2格子部42は、ベース層14から離間して可動部(31,32,40,42,50,52)となる。
【0024】
一方、電極台座部82と、アーム部20と、アンカー部60は、側面の面積に比して平面視したときの占有面積が広い。このため、これらの領域の下方の絶縁体層12も側方から侵食されるが、これらの領域がベース層14から離間するまでには至らない。したがって、アーム部20とアンカー部60と電極台座部82は、絶縁体層12を介してベース層14に固定されている。
【0025】
次に図11に示すように、基板2の上面全体にレジストP1を塗布する。レジストP1はスピンコート法によって塗布する。これにより、残存させた半導体層10の側方の空間がレジストP1で充填される。この際、可動部(31,32,40,42,50,52)の側面の側方の空間がレジストP1で充填されていればよく、可動部(31,32,40,42,50,52)の下方(ベース層14との間)が完全にレジストP1で充填されている必要はない。なお、充填したレジストP1は固化される。
【0026】
次に図12に示すように、表面側に形成されたレジストP1を除去する。これにより、可動部(31,32,40,42,50,52)の表面S1と、電極80を保護している保護膜7と、電極台座部82以外の固定部(20,60,82)の表面が露出する。図13は、この状態を上面視した図であり、理解し易くするために、レジストP1と保護膜7にハッチングを付している。また、図13では明確に示されていないが、第1格子部40と第2格子部42の多数の孔にもレジストP1が充填されている。
【0027】
次に図14に示すように、エッチングによって電極80を保護していた保護膜7を除去する。保護膜7を除去するエッチングには、ケミカルドライエッチングを実施してもよいし、反応性イオンエッチングを実施してもよい。次にアッシングによってレジストP1を除去する。
【0028】
半導体装置1を平面視すると、半導体層10の可動部(31,32,40,42,50,52)や固定部(20,60,82)に設けられている空間は、面積が広いところもあれば狭いところもある。例えばケミカルドライエッチングを利用して保護膜7を除去すると、既に形成してある可動部(31,32,40,42,50,52)や固定部(20,60,82)の側面や表面も削れる。表面はほぼ一様に削れるので、削れる予定の量を見込んで可動部(31,32,40,42,50,52)や固定部(20,60,82)の寸法を決定すればよい。しかしながら、側面が削れる量は、その側面が露出している空間の広さに依存するので、削れる量を予測することが難しい。保護膜7を除去する際に、可動部(31,32,40,42,50,52)のうちの櫛歯(31,32)の側面S2が削れてしまうと、隣接する櫛歯(31,32)の間隔の変化によって櫛歯電極部30において検出する静電容量の値が変化してしまう。これによって、加速度の検出精度が低下してしまう。
【0029】
本実施例の半導体装置1の製造方法では、電極80を被覆している保護膜7を除去するのに先立って、可動部(31,32,40,42,50,52)の側面が露出している空間をレジストP1で充填することを特徴としている。これにより、櫛歯電極部30の櫛歯(31,32)の側面S2がレジストP1で保護される。したがって、保護膜7を除去する際に、側面S2が損傷されることを抑制することができる。櫛歯電極部30の櫛歯(31,32)の側面S2が損傷されることを抑制するので、加速度の検出精度を向上させることができる。
【0030】
また、可動部(31,32,40,42,50,52)のうちの梁50,52の側面が削れると、梁50,52の幅(剛性)が変化してしまう。これにより、梁50を介してアンカー部60に連結している第2格子部42の振動力や振動周波数が変化してしまう。また、梁52を介して振動を伝えている第1格子部40に伝わる振動力や振動周波数が変化してしまう。また、第1格子部40と第2格子部42の側面が削れると、第1格子部40と第2格子部42の重量が変化してしまう。第1格子部40と第2格子部42は、半導体装置1に加速度がかかったときに変位する格子部側櫛歯31の錘の役割をしている。その重量が変化してしまうと、格子部側櫛歯31の変位量が変化してしまう。
本実施例の半導体装置1の製造方法では、保護膜7を除去する際に、可動部(31,32,40,42,50,52)の側面が露出している空間をレジストP1で充填するため、梁50,52の側面と第1格子部40の側面と第2格子部42の側面がレジストP1で保護され、損傷され難くなっている。したがって、加速度の検出精度を向上させることができる。
【0031】
また、可動部(31,32,40,42,50,52)の側面が露出している空間をレジストP1で充填することにより、可動部(31,32,40,42,50,52)とベース層14の相対位置が一時的に固定される。このため、例えば反応性イオンエッチングを利用して保護膜7を除去する場合であっても、可動部(31,32,40,42,50,52)が帯電して何れかの部材と衝突し難くなっている。また、充填したレジストP1は、可動部(31,32,40,42,50,52)に損傷を与えることなく簡単に除去することができる。
本実施例の製造方法によると、反応性イオンエッチングを利用して保護膜7を除去する場合でも、可動部(31,32,40,42,50,52)が損傷を受けることを抑制することができる。
【0032】
本実施例では、半導体装置1が加速度センサである場合について説明した。本実施例の製造方法は、ベース層上に半導体層が配置されており、ベース層と半導体層の少なくとも一部の間に空間が設けられることで半導体層に可動部が形成されている他の半導体装置の製造方法にも適用することができる。
【0033】
本実施例では、SOI基板を用いて半導体装置1を形成する場合について説明したが、SOI基板を用いなくても半導体装置1を製造することができる。たとえば、以下の工程を実施することで、半導体装置1を製造することができる。
すなわち、半導体ウェハ上に犠牲層膜を堆積し、犠牲層膜上に半導体層を堆積する。次いで、堆積した半導体層のうち固定部となる領域の表面に電極を形成する。以降は、上述した実施例と同様、保護膜被覆工程、半導体層除去工程、犠牲層膜除去工程、レジスト充填工程、保護膜除去工程、レジスト除去工程を実施する。
あるいは、以下の工程を実施してもよい。
すなわち、半導体ウェハの表面の固定部となる領域上に電極を形成し、その電極上に保護膜を形成する。次いで、可動部を形成する領域にのみ半導体ウェハ上に犠牲層膜を堆積し、その堆積した犠牲層膜上にのみ半導体層を堆積する。次いで、犠牲層膜を除去する。以降は、上述した実施例と同様、保護膜除去工程、レジスト除去工程を実施する。
【0034】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】可動部(31,32,40,42,50,52)を備えている半導体装置1を平面視した図である。
【図2】図1のII-II線断面図であり、格子部側櫛歯31が形成されている領域の要部断面を示す。
【図3】半導体装置1の製造方法を示す。
【図4】半導体装置1の製造方法を示す。
【図5】半導体装置1の製造方法を示す。
【図6】半導体装置1の製造方法を示す。
【図7】半導体装置1の製造方法を示す。
【図8】半導体装置1の製造方法を示す。
【図9】半導体装置1の製造方法を示す。
【図10】半導体装置1の製造方法を示す。
【図11】半導体装置1の製造方法を示す。
【図12】半導体装置1の製造方法を示す。
【図13】半導体装置1の製造方法を示す
【図14】半導体装置1の製造方法を示す。
【図15】従来の半導体装置100の要部断面を示す。
【符号の説明】
【0036】
1:半導体装置
2:基板
3:振動力付与領域
5:検出領域
7:保護膜
8:アルミニウム膜
10:半導体層
12:絶縁体層
14:ベース層
20:アーム部
30:櫛歯電極部
31:格子部側櫛歯
32:アーム部側櫛歯
40:第1格子部
42:第2格子部
50,52:梁
60:アンカー部
80:電極
82:電極台座部
M1:マスク
P1:レジスト
S2:側面
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース層の上方に配置されている半導体層に、ベース層に対して移動不能に固定されている固定部と、ベース層に対して移動可能な可動部が形成されている半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の半導体装置としては、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサが知られている。図15に示すMEMSセンサ100は、ベース層114と、ベース層114の上方に配置された半導体層110を備えている。半導体層110には、ベース層114に対して移動不能に固定されている固定部182と、ベース層114に対して移動可能な可動部131が形成されている。固定部182は、絶縁層112を介してベース層114に固定されている。固定部182の表面には、電極180が形成されている。可動部131は、ベース層114との間に空間が形成されている。可動部131は図示していない断面で、固定部182と連結している。MEMSセンサ100は、例えば、加速度や角速度などの力学量の検出に利用される。すなわち、MEMSセンサ100に加速度が作用すると、ベース層114に対する可動部131の相対位置が変位する。これによる静電容量の変化を電極180を介して検出することで、加速度を検出する。
【0003】
特許文献1には、MEMSセンサ100の製造方法が開示されている。特許文献1の製造方法では、まず、半導体層110の表面のうち固定部182となる領域の表面に電極180を形成する。次に、電極180をSiN等の保護膜で被覆する。次に、固定部182と可動部131となる領域以外の半導体層110をエッチングして除去する。その後に、除去された半導体層110に対応する位置の絶縁層112と、可動部131となる領域とベース層114の間にある絶縁層112を除去する。これにより、可動部131がベース層114に対して移動可能な状態(浮き上がった状態)となる。次に、電極180を被覆している保護膜を除去する。半導体層110や絶縁層112を除去する前に電極180を保護膜で被覆することにより、エッチング等による電極180の損傷を防止している。
【0004】
【特許文献1】特開2007−283470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極180を被覆している保護膜は、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)等の異方性エッチングによって除去する。反応性イオンエッチングでは、プラズマ内にMEMSセンサ100を載置する。すると、既に形成されている可動部131がプラズマ内において帯電し、可動部131同士か可動部131とベース層114とが衝突することがある。これにより、可動部131が損傷することがあった。
また、保護膜は、ケミカルドライエッチング(CDE)等の等方性エッチングによって除去することもある。この場合には、既に形成されている可動部131がエッチングによって削れてしまうことがあった。
【0006】
可動部131を形成した後に電極180を形成すれば、可動部131の損傷と電極180の損傷の双方を回避することができる。しかしながら、半導体層110の表面に電極180を形成するためには、通常、まず表面の全域に金属膜を形成し、その後に、不要な領域の金属膜を除去することで電極180を形成する。可動部131を形成した後には、半導体層110の一部が除去されており、また、可動部131とベース層114との間に空間が設けられているため、従来の方法で電極180を形成することは困難である。
本発明は、電極を形成した後に可動部を形成し、その後に電極を保護する保護膜を除去する場合において、既に形成されている可動部が損傷を受けることを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される製造方法は、ベース層の上方に配置されている半導体層に、ベース層に対して移動不能に固定されている固定部と、ベース層に対して移動可能な可動部が形成されている半導体装置の製造方法である。この製造方法では、電極形成工程と保護膜被覆工程と半導体層除去工程と中間層除去工程とレジスト充填工程と保護膜除去工程とレジスト除去工程をこの順で実施する。電極形成工程では、ベース層と半導体層の間に中間層が配置された状態で、半導体層の表面のうち固定部となる領域の表面に電極を形成する。保護膜被覆工程では、電極を保護膜で被覆する。半導体層除去工程では、固定部と可動部となる領域以外の半導体層を除去する。中間層除去工程では、半導体層除去工程で除去された半導体層に対応する位置の中間層と、可動部となる領域とベース層の間にある中間層とを除去する。レジスト充填工程では、半導体層除去工程によって半導体層に形成された空間内にレジストを充填する。保護膜除去工程では、電極を被覆している保護膜を除去する。レジスト除去工程では、充填したレジストを除去する。
なお、レジスト充填工程では、半導体層除去工程によって半導体層に形成された空間の全てがレジストで充填されていなくてもよい。また、レジスト充填工程を実施した後には、可動部同士又は可動部と他の部材(ベース層や中間層等)とが、レジストを介して仮に固定されるとともに、少なくとも可動部の側面がレジストで被覆されていることが好ましい。可動部の側面は、上記半導体装置の性能と関連が深い。
【0008】
上記した製造方法では、保護膜除去工程を実施する前に、レジスト充填工程で、半導体層に形成された空間内にレジストを充填することを特徴としている。これにより、可動部の表面をレジストで保護することができる。あるいは、可動部同士又は可動部と他の部材(ベース層や中間層等)とを、レジストを介して仮に固定することができる。したがって、保護膜除去工程で、例えばケミカルドライエッチングを利用して電極の保護膜を除去する場合は、レジストで保護された可動部の表面が削れない。保護膜除去工程で、例えば反応性イオンエッチングを利用して電極の保護膜を除去する場合には、可動部が帯電して何れかの部材と衝突することが防止される。さらに、充填したレジストは、可動部や固定部に損傷を与えることなく簡単に除去することができる。これによって、電極を保護する保護膜を除去する際に、可動部が損傷を受けることを抑制することができる。
【0009】
上記した半導体装置の製造方法は、さらにSOI(Silicon on Insulator)基板を準備する工程を有していてもよい。この場合には、ベース層と半導体層の間の「中間層」が絶縁層となる。SOI基板を用いることで、簡単に半導体装置を製造することができる。また、上記した製造方法は、ベース層上に配置された中間層の上に半導体層を積層する工程をさらに有していてもよい。この場合には、電極形成工程では、積層された半導体層上に電極を形成する。この方法によると、半導体層の厚みを任意の厚みとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書で開示された製造方法によると、半導体層の表面に形成された電極を保護する保護膜を除去する時に、既に形成されている可動部が損傷を受けることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書で開示される技術の特徴を整理しておく。
(1)半導体装置は、MEMSセンサである。
(2)空間を充填するレジストとしては、ノボラック型レジストやポリイミド等を用いる。
【実施例】
【0012】
図1に、本実施例の半導体装置1の要部を平面視した図を示す。図2は、図1のII-II線断面図である。
半導体装置1は加速度センサとして機能する。半導体装置1は、図1の上部に配置されている検出領域5と、図1の下部に配置されている振動力付与領域3を備えている。
まず、検出領域5の構成について説明する。検出領域5は、一対の電極80と、各々の電極80が形成されている電極台座部82と、各々の電極台座部82から配線されている2本のアーム部20と、中央に配置されている第1格子部40と、第1格子部40と各々のアーム部20との間に形成されている櫛歯電極部30を備えている。
【0013】
電極80は、図1の左右両端に形成されている。電極80はアルミニウム等の金属によって電極台座部82の表面に形成されている。図2に示すように、電極台座部82とベース層14の間には絶縁体層12が配されている。電極台座部82は、半導体層10によって形成されている。
各々の電極台座部82から中央に向けてアーム部20が伸びている。アーム部20は絶縁体層12を介してベース層14に固定されている。
第1格子部40には、平面視すると多数の孔が形成されている。第1格子部40とベース層14の間には空間が形成されており、第1格子部40はベース層14に対して移動可能となっている。第1格子部40は、梁52によって後述する振動力付与領域3の第2格子部42に連結している。
【0014】
櫛歯電極部30は、図1の第1格子部40の左右両側に形成されている。櫛歯電極部30は、アーム部20と接続しているアーム部側櫛歯32と、第1格子部40と接続している格子部側櫛歯31を備えている。アーム部側櫛歯32を構成する複数個の歯がアーム部20に等間隔に形成されており、各々の歯がアーム部20の支持部21から第1格子部40側に向けて伸びている。アーム部側櫛歯32と第1格子部40との間には所定の間隔が形成され、両者は接触していない。格子部側櫛歯31を構成する複数個の歯が第1格子部40に等間隔に配置されており、各々の歯が第1格子部40からアーム部20側に向けて伸びている。格子部側櫛歯31とアーム部20との間には所定の間隔が形成され、両者は接触していない。アーム部側櫛歯32の歯と格子部側櫛歯31の歯は互い違いに間隔を空けて組み合わせられている。図2に示すように、格子部側櫛歯31とベース層14の間には空間が形成されており、格子部側櫛歯31はベース層14に対して移動可能となっている。また、図示していないがアーム部側櫛歯32とベース層14の間にも空間が形成されており、アーム部側櫛歯32もベース層14に対して移動可能となっている。半導体装置1に加速度が加わると、アーム部側櫛歯32に対する格子部側櫛歯31の位置が変化する。
【0015】
次に振動力付与領域3の構成について説明する。前述した検出領域5と同一の構成要素には、同一の符号を付与することで詳細な説明を省略する。
振動力付与領域3は、一対の電極80と、各々の電極80が形成されている電極台座部82と、各々の電極台座部82から配線されている2本のアーム部20と、中央に配置されている第2格子部42と、第2格子部42と各々のアーム部20との間に形成されている2個の櫛歯電極部30と、アンカー部60を備えている。
【0016】
第2格子部42も、検出領域5の第1格子部40と同様に、平面視すると多数の孔が形成されている。第2格子部42も、ベース層14との間に空間が形成されており、ベース層14に対して移動可能となっている。第2格子部42は、梁52によって第1格子部40と連結されている。梁52も、ベース層14との間に空間が形成されており、ベース層14に対して移動可能となっている。
また、第2格子部42は、梁50によってアンカー部60の支持部61と連結している。梁50も、ベース層14との間に空間が形成されており、ベース層14に対して移動可能となっている。アンカー部60は、絶縁体層12を介してベース層14に固定されている。
【0017】
したがって、第1格子部40と、第1格子部40に形成されている格子部側櫛歯31と、梁52と、第2格子部42と、第2格子部42に形成されている格子部側櫛歯31は、梁50を介してアンカー部60の支持部61に連結している。
【0018】
半導体装置1で加速度を検出する際は、振動力付与領域3の一対の電極80間に交流電圧が印加される。これにより、振動力付与領域3側の櫛歯電極部30に力が発生し、第2格子部42が図1の左右に振動する。この振動の振動力や振動幅は、第2格子部42とアンカー部60を連結する梁50の剛性によって決まる。振動は、梁52を介して検出領域5の第1格子部40に伝わる。これにより、第1格子部40も図1の左右方向に振動する。図1の上下方向に加速度が発生すると、検出領域5の櫛歯電極部30の格子部側櫛歯31とアーム部側櫛歯32の間隔が変化する。これにより、検出領域5の櫛歯電極部30の静電容量が変化する。この静電容量の変化量を検出領域5の一対の電極80を介して検出し、検出した静電容量の変化量から加速度の大きさを算出する。
【0019】
図3〜図14を参照して半導体装置1の製造方法を説明する。図3〜図12と図14は図1のII-II線断面について各工程が実施された状態を示している。
まず図3に示すように、ベース層14と半導体層10の間に絶縁体層12が配されたSOI基板2を準備する。ベース層14と半導体層10の材料にはシリコンが用いられている。絶縁体層12の材料には酸化シリコンが用いられている。ベース層14の厚みは625μmであり、絶縁体層12の厚みは4.5μmであり、半導体層10の厚みは40μmである。
【0020】
次に図4に示すように、半導体層10の表面全体にアルミニウム膜8を堆積する。アルミニウム膜8の厚みは1.0μmとする。
次に図5に示すように、図4のアルミニウム膜8の一部を除去し、検出領域5と振動力付与領域3の電極80を形成する。
【0021】
次に図6に示すように、電極80を保護膜7で被覆する。保護膜7の材料にはSiNを用いる。保護膜7の厚みは2.0μmとする。
次に図7に示すように、基板2の表面側全体にマスクM1を塗布し、その後にマスクM1をパターニングする。これにより、保護膜7で被覆された電極80上と、可動部(31,32,40,42,50,52)を形成する領域(可動部形成領域)と、固定部(20,60,82)を形成する領域(固定部形成領域)上のマスクM1が残り、その他の領域上に形成されたマスクM1が除去される。なお、第1格子部40と第2格子部42を形成する領域(可動部形成領域の一部)内では、多数の孔(図1参照)を形成する部分でマスクM1を開口する。
【0022】
次に図8に示すように、マスクM1の開口から絶縁体層12に至るまで半導体層10をエッチングする。これにより、半導体層10のうち、可動部(31,32,40,42,50,52)と固定部(20,60,82)が残存する。図8では、格子部側櫛歯31と電極台座部82が残存している状態を示している。
次に図9に示すように、アッシングによってマスクM1を除去する。
【0023】
次に図10に示すように、基板2をフッ酸薬液処理し、露出している絶縁体層12を除去する。この際に、絶縁体層12は等方的に除去される。したがって、露出している絶縁体層12に加え、可動部(31,32,40,42,50,52)や固定部(20,60,82)の下方に残存している絶縁体層12も、側方から薬液によって侵食される。例えば、図10に示す格子部側櫛歯31では、格子部側櫛歯31の下方に残存している絶縁体層12が、図示左側と右側の両側から薬液に侵食されて除去される。格子部側櫛歯31は幅が狭いので、格子部側櫛歯31の下方の絶縁体層12は全て除去される。同様に、アーム部側櫛歯32及び梁50,52も幅が狭いので、それらの下方の絶縁体層12は全て除去される。第1格子部40と第2格子部42には多数の孔を形成したことにより、それぞれの孔に導入された薬液でそれぞれの孔の周囲の絶縁体層12が除去される。これにより、第1格子部40と第2格子部42の下方の絶縁体層12も全て除去される。その結果、櫛歯電極部30と梁50,52と第1格子部40と第2格子部42は、ベース層14から離間して可動部(31,32,40,42,50,52)となる。
【0024】
一方、電極台座部82と、アーム部20と、アンカー部60は、側面の面積に比して平面視したときの占有面積が広い。このため、これらの領域の下方の絶縁体層12も側方から侵食されるが、これらの領域がベース層14から離間するまでには至らない。したがって、アーム部20とアンカー部60と電極台座部82は、絶縁体層12を介してベース層14に固定されている。
【0025】
次に図11に示すように、基板2の上面全体にレジストP1を塗布する。レジストP1はスピンコート法によって塗布する。これにより、残存させた半導体層10の側方の空間がレジストP1で充填される。この際、可動部(31,32,40,42,50,52)の側面の側方の空間がレジストP1で充填されていればよく、可動部(31,32,40,42,50,52)の下方(ベース層14との間)が完全にレジストP1で充填されている必要はない。なお、充填したレジストP1は固化される。
【0026】
次に図12に示すように、表面側に形成されたレジストP1を除去する。これにより、可動部(31,32,40,42,50,52)の表面S1と、電極80を保護している保護膜7と、電極台座部82以外の固定部(20,60,82)の表面が露出する。図13は、この状態を上面視した図であり、理解し易くするために、レジストP1と保護膜7にハッチングを付している。また、図13では明確に示されていないが、第1格子部40と第2格子部42の多数の孔にもレジストP1が充填されている。
【0027】
次に図14に示すように、エッチングによって電極80を保護していた保護膜7を除去する。保護膜7を除去するエッチングには、ケミカルドライエッチングを実施してもよいし、反応性イオンエッチングを実施してもよい。次にアッシングによってレジストP1を除去する。
【0028】
半導体装置1を平面視すると、半導体層10の可動部(31,32,40,42,50,52)や固定部(20,60,82)に設けられている空間は、面積が広いところもあれば狭いところもある。例えばケミカルドライエッチングを利用して保護膜7を除去すると、既に形成してある可動部(31,32,40,42,50,52)や固定部(20,60,82)の側面や表面も削れる。表面はほぼ一様に削れるので、削れる予定の量を見込んで可動部(31,32,40,42,50,52)や固定部(20,60,82)の寸法を決定すればよい。しかしながら、側面が削れる量は、その側面が露出している空間の広さに依存するので、削れる量を予測することが難しい。保護膜7を除去する際に、可動部(31,32,40,42,50,52)のうちの櫛歯(31,32)の側面S2が削れてしまうと、隣接する櫛歯(31,32)の間隔の変化によって櫛歯電極部30において検出する静電容量の値が変化してしまう。これによって、加速度の検出精度が低下してしまう。
【0029】
本実施例の半導体装置1の製造方法では、電極80を被覆している保護膜7を除去するのに先立って、可動部(31,32,40,42,50,52)の側面が露出している空間をレジストP1で充填することを特徴としている。これにより、櫛歯電極部30の櫛歯(31,32)の側面S2がレジストP1で保護される。したがって、保護膜7を除去する際に、側面S2が損傷されることを抑制することができる。櫛歯電極部30の櫛歯(31,32)の側面S2が損傷されることを抑制するので、加速度の検出精度を向上させることができる。
【0030】
また、可動部(31,32,40,42,50,52)のうちの梁50,52の側面が削れると、梁50,52の幅(剛性)が変化してしまう。これにより、梁50を介してアンカー部60に連結している第2格子部42の振動力や振動周波数が変化してしまう。また、梁52を介して振動を伝えている第1格子部40に伝わる振動力や振動周波数が変化してしまう。また、第1格子部40と第2格子部42の側面が削れると、第1格子部40と第2格子部42の重量が変化してしまう。第1格子部40と第2格子部42は、半導体装置1に加速度がかかったときに変位する格子部側櫛歯31の錘の役割をしている。その重量が変化してしまうと、格子部側櫛歯31の変位量が変化してしまう。
本実施例の半導体装置1の製造方法では、保護膜7を除去する際に、可動部(31,32,40,42,50,52)の側面が露出している空間をレジストP1で充填するため、梁50,52の側面と第1格子部40の側面と第2格子部42の側面がレジストP1で保護され、損傷され難くなっている。したがって、加速度の検出精度を向上させることができる。
【0031】
また、可動部(31,32,40,42,50,52)の側面が露出している空間をレジストP1で充填することにより、可動部(31,32,40,42,50,52)とベース層14の相対位置が一時的に固定される。このため、例えば反応性イオンエッチングを利用して保護膜7を除去する場合であっても、可動部(31,32,40,42,50,52)が帯電して何れかの部材と衝突し難くなっている。また、充填したレジストP1は、可動部(31,32,40,42,50,52)に損傷を与えることなく簡単に除去することができる。
本実施例の製造方法によると、反応性イオンエッチングを利用して保護膜7を除去する場合でも、可動部(31,32,40,42,50,52)が損傷を受けることを抑制することができる。
【0032】
本実施例では、半導体装置1が加速度センサである場合について説明した。本実施例の製造方法は、ベース層上に半導体層が配置されており、ベース層と半導体層の少なくとも一部の間に空間が設けられることで半導体層に可動部が形成されている他の半導体装置の製造方法にも適用することができる。
【0033】
本実施例では、SOI基板を用いて半導体装置1を形成する場合について説明したが、SOI基板を用いなくても半導体装置1を製造することができる。たとえば、以下の工程を実施することで、半導体装置1を製造することができる。
すなわち、半導体ウェハ上に犠牲層膜を堆積し、犠牲層膜上に半導体層を堆積する。次いで、堆積した半導体層のうち固定部となる領域の表面に電極を形成する。以降は、上述した実施例と同様、保護膜被覆工程、半導体層除去工程、犠牲層膜除去工程、レジスト充填工程、保護膜除去工程、レジスト除去工程を実施する。
あるいは、以下の工程を実施してもよい。
すなわち、半導体ウェハの表面の固定部となる領域上に電極を形成し、その電極上に保護膜を形成する。次いで、可動部を形成する領域にのみ半導体ウェハ上に犠牲層膜を堆積し、その堆積した犠牲層膜上にのみ半導体層を堆積する。次いで、犠牲層膜を除去する。以降は、上述した実施例と同様、保護膜除去工程、レジスト除去工程を実施する。
【0034】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】可動部(31,32,40,42,50,52)を備えている半導体装置1を平面視した図である。
【図2】図1のII-II線断面図であり、格子部側櫛歯31が形成されている領域の要部断面を示す。
【図3】半導体装置1の製造方法を示す。
【図4】半導体装置1の製造方法を示す。
【図5】半導体装置1の製造方法を示す。
【図6】半導体装置1の製造方法を示す。
【図7】半導体装置1の製造方法を示す。
【図8】半導体装置1の製造方法を示す。
【図9】半導体装置1の製造方法を示す。
【図10】半導体装置1の製造方法を示す。
【図11】半導体装置1の製造方法を示す。
【図12】半導体装置1の製造方法を示す。
【図13】半導体装置1の製造方法を示す
【図14】半導体装置1の製造方法を示す。
【図15】従来の半導体装置100の要部断面を示す。
【符号の説明】
【0036】
1:半導体装置
2:基板
3:振動力付与領域
5:検出領域
7:保護膜
8:アルミニウム膜
10:半導体層
12:絶縁体層
14:ベース層
20:アーム部
30:櫛歯電極部
31:格子部側櫛歯
32:アーム部側櫛歯
40:第1格子部
42:第2格子部
50,52:梁
60:アンカー部
80:電極
82:電極台座部
M1:マスク
P1:レジスト
S2:側面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層の上方に配置されている半導体層に、ベース層に対して移動不能に固定されている固定部と、ベース層に対して移動可能な可動部が形成されている半導体装置の製造方法であり、
ベース層と半導体層の間に中間層が配置された状態で、半導体層の表面のうち固定部となる領域の表面に電極を形成する電極形成工程と、
電極形成工程後に、電極を保護膜で被覆する保護膜被覆工程と、
保護膜被覆工程後に、固定部と可動部となる領域以外の半導体層を除去する半導体層除去工程と
半導体層除去工程後に、半導体層除去工程で除去された半導体層に対応する位置の中間層と、可動部となる領域とベース層の間にある中間層とを除去する中間層除去工程と、
中間層除去工程後に、半導体層除去工程によって半導体層に形成された空間内にレジストを充填するレジスト充填工程と、
レジスト充填工程後に、電極を被覆している保護膜を除去する保護膜除去工程と、
保護膜除去工程後に、充填したレジストを除去するレジスト除去工程を備えている半導体装置の製造方法。
【請求項2】
SOI基板を準備する工程をさらに有しており、
電極形成工程では、SOI基板上に電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
ベース層上に配置された中間層の上に半導体層を積層する工程をさらに有しており、
電極形成工程では、積層された半導体層上に電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
ベース層の上方に配置されている半導体層に、ベース層に対して移動不能に固定されている固定部と、ベース層に対して移動可能な可動部が形成されている半導体装置の製造方法であり、
ベース層と半導体層の間に中間層が配置された状態で、半導体層の表面のうち固定部となる領域の表面に電極を形成する電極形成工程と、
電極形成工程後に、電極を保護膜で被覆する保護膜被覆工程と、
保護膜被覆工程後に、固定部と可動部となる領域以外の半導体層を除去する半導体層除去工程と
半導体層除去工程後に、半導体層除去工程で除去された半導体層に対応する位置の中間層と、可動部となる領域とベース層の間にある中間層とを除去する中間層除去工程と、
中間層除去工程後に、半導体層除去工程によって半導体層に形成された空間内にレジストを充填するレジスト充填工程と、
レジスト充填工程後に、電極を被覆している保護膜を除去する保護膜除去工程と、
保護膜除去工程後に、充填したレジストを除去するレジスト除去工程を備えている半導体装置の製造方法。
【請求項2】
SOI基板を準備する工程をさらに有しており、
電極形成工程では、SOI基板上に電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
ベース層上に配置された中間層の上に半導体層を積層する工程をさらに有しており、
電極形成工程では、積層された半導体層上に電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−147069(P2010−147069A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319615(P2008−319615)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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