説明

半導体装置の製造方法

【課題】高速動作のために低電圧で相対的に大きな電流駆動力を必要とするMISFETと高耐圧を必要とするMISFETを有する半導体装置において、各素子を、それぞれの素子特性の向上を図りつつ簡素化した工程で製造する。
【解決手段】低耐圧MISFETのゲート電極4およびMONOSメモリのメモリゲート電極8のそれぞれの側壁にサイドウォールA、Bを形成する際、専用のマスクを用いず、低温下で堆積することのできる酸化膜をフォトレジスト膜が形成されたシリコン基板1上に形成し、ゲート電極4およびメモリゲート電極8のそれぞれの側壁に幅の違うサイドウォールA、Bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)メモリなど、同一半導体基板上にエクステンション領域の幅が異なる複数種類のMISFETを有する半導体装置の製造方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上の集積回路には、例えば半導体素子として、低電圧で作動し、大きい電流駆動力を必要とするMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)や、前記MISFETよりも高い電圧で動作し高耐圧を必要とするMISFET(以下、単に高耐圧MISFETという)が混在している場合がある。
【0003】
高耐圧を必要とするMISFETのひとつに、MONOS構造を有する書き換え可能な不揮発性メモリ(以下、単にMONOSメモリという)がある。MONOSメモリは、例えば2層の酸化シリコン膜の間に窒化シリコン膜の層が形成されたONO(Oxide Nitride Oxide)膜からなる絶縁膜を、ゲート電極と半導体基板の間に有するFETであり、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリのメモリセルとして広く使用されている。
【0004】
近年はMISFETの微細化に伴い、信頼性を向上させる目的で、MISFETのソース・ドレイン領域よりも低濃度の不純物が添加されたエクステンション領域を、半導体基板の主面であってゲート電極の端部の下部からソース・ドレイン領域にかけての領域に形成し、拡散層をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることが主流となっている。LDD構造を有するMISFETのエクステンション領域の幅は、通常、MISFETのゲート電極の側壁に形成されたサイドウォールの幅(スペーサー長)によって決まる。
【0005】
高耐圧MISFETやMONOSメモリのサイドウォールにおいては、それらのスペーサー長を周辺回路の低電圧で作動するMISFETのスペーサー長に対して異なる長さで形成することが望ましい。従来の一般的な半導体装置の製造方法では、同一半導体基板上にスペーサー長に違いのある2種以上のサイドウォールを形成するために、2種LDD形成用の専用マスクを用いてフォトレジスト膜を選択的に形成し、サイドウォールを作り分けている。ここで、2種LDDまたは2種LDD構造とは、同一の半導体基板上に幅の異なるサイドウォールを有し、幅の異なるエクステンション領域が形成されたMISFETを含む半導体装置の構造のことをいう。
【0006】
特許文献1(特開昭61−230324号公報)には、被エッチング物に開口を形成する際、被エッチング物上に堆積した物質層に第1開口を形成し、第1開口の内壁にサイドウォール状の酸化膜を形成した後に、物質層および酸化膜をマスクとして異方性エッチングを行うことで、被エッチング物に第1開口よりも小さい第2開口を形成する技術が開示されている。
【0007】
特許文献2(特開平4−94536号公報)には、通常のリソグラフィ技術によりレジストパターンを形成し、その後のプロセスによりさらに微細化したレジストパターンを形成することができる技術が開示されている。
【0008】
特許文献3(特開平8−195384号公報)には、層間絶縁膜を有する半導体基板上にフォトレジストを塗布し、コンタクトホールのパターンを形成した後、テトラエトキシフルオロシラン(TEFS)等を用いた常温常圧シリコン酸化膜をフォトレジスト上に成膜した後、シリコン酸化膜と層間絶縁膜を同時にエッチバックすることによって、リソグラフィ技術では開口困難な微細コンタクトを容易に開口できる技術が開示されている。ここでは、レジストパターンより小さいコンタクトホールをより少ない工程数で製造することを可能としている。
【0009】
特許文献4(特開2004−349680号公報)には、同一の半導体装置内において、それぞれの素子の素子特性を向上させつつ、簡素化した工程で、相対的に幅の広いサイドウォールと相対的に幅の狭いサイドウォールを形成する技術が開示されている。ここでは、2種類の幅をもつサイドウォールを形成するために、専用のマスクを用いて相対的に幅の広いサイドウォールを形成する領域をフォトレジストで覆い、フォトレジストで覆われていないゲートの側壁の酸化膜を除去することで、相対的に幅の狭いサイドウォールを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭61−230324号公報
【特許文献2】特開平4−94536号公報
【特許文献3】特開平8−195384号公報
【特許文献4】特開2004−349680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、従来の一般的な2種LDD構造の形成方法として、MONOSメモリおよび周辺回路のMISFETを有する半導体装置の製造方法を、図28〜図31を用いて説明する。なお、図28〜図31において、左側の領域はMONOSメモリの形成領域を示し、右側の領域はMONOSメモリの周辺回路の低耐圧MISFETの形成領域を示している。また、MONOSメモリの周辺回路は、nチャネル型低耐圧MISFET、pチャネル型低耐圧MISFET、nチャネル型高耐圧MISFETおよびpチャネル型高耐圧MISFETを有する。ここでは、MONOSメモリの周辺回路はnチャネル型低耐圧MISFETのみを図示し、他のMISFETの図示は省略する。
【0012】
まず、図28に示すように、シリコン基板1の主面上に、周知の技術によりpウエル1a、pウエル1bおよび素子分離層2を形成する。次に、低耐圧MISFET形成領域に低耐圧MISFETのゲート絶縁膜3およびゲート電極4を形成する。また、MONOSメモリ形成領域にMONOSメモリのボトム酸化膜5、窒化膜6およびトップ酸化膜7を順次形成して形成した三層からなるONO膜を形成し、その上部にメモリゲート電極8を形成する。その後、pウエル1a上およびpウエル1b上に不純物(例えばリン)を低濃度でイオン注入することにより、低耐圧MISFETおよびMONOSメモリ形成領域のpウエル1aおよびpウエル1bの表面にn型のエクステンション領域9a、9bをそれぞれ形成する。なお、エクステンション領域9aとエクステンション領域9bは、それぞれ異なる不純物濃度を有し、リソグラフィ技術を用いて別々の工程で形成するものとする。
【0013】
次に、図29に示すように、MONOSメモリのメモリゲート電極8および低耐圧MISFETのゲート電極4を覆うように、シリコン基板1の主面上に酸化シリコン膜10、窒化シリコン膜11および酸化シリコン膜12をCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて順次形成する。
【0014】
次に、図30に示すように、異方性ドライエッチングにより酸化シリコン膜12をエッチングし、ゲート電極4およびメモリゲート電極8を覆う窒化シリコン膜11の側壁に酸化シリコン膜12を残した後、リソグラフィ技術により、2種LDD専用マスクを用いてMONOSメモリ形成領域にフォトレジスト膜30を選択的に形成する。その後、ウェットエッチングにより、フォトレジスト膜30に覆われていない低耐圧MISFET形成領域の酸化シリコン膜12を除去する。
【0015】
次に、図31に示すように、フォトレジスト膜30をアッシングにより除去し、異方性ドライエッチングにより酸化シリコン膜12、窒化シリコン膜11および酸化シリコン膜10をエッチングする。これにより、ゲート電極4の側壁に酸化シリコン膜10および窒化シリコン膜11からなるサイドウォールAを形成し、メモリゲート電極8の側壁に酸化シリコン膜12、窒化シリコン膜11および酸化シリコン膜10からなるサイドウォールBを形成する。その後、シリコン基板1の主面に不純物(例えばリン)を高濃度でイオン注入することでn型の拡散層15a、15bを形成する。
【0016】
ここで、メモリゲート電極8の側壁には酸化シリコン膜12が形成されているため、この酸化シリコン膜12の下に形成され、露出していない窒化シリコン膜11は除去されない。従って、メモリゲート電極8の側壁に形成されたサイドウォールBは、ゲート電極4の側壁にされたサイドウォールAよりもゲート長方向において長い幅を有するようになる。これにより、サイドウォールBの下部のエクステンション領域9bは、サイドウォールAの下部のエクステンション領域9aよりもゲート長方向において長い幅を有するようになる。
【0017】
以上により、MONOSメモリのメモリゲート電極8と周辺の低耐圧MISFETのゲート電極4のそれぞれの側壁に、スペーサー長の異なるサイドウォールA、Bを形成し、その下のpウエル1aおよびpウエル1bの上面に幅の異なるエクステンション領域9a、9bをそれぞれ形成する。これ以降の工程は図示しないが、拡散層15a、15bおよびゲート電極4およびメモリゲート電極8の上面にシリサイドを形成し、周知の技術により配線を形成することで、半導体装置を完成する。
【0018】
大きい電流駆動力を必要とするMISFET(例えば、図31における低耐圧MISFET)と高耐圧MISFET(例えば、図31におけるMONOSメモリ)を有する半導体装置は、それぞれの素子特性、例えば書き換え可能な不揮発性メモリセルへの書き込み特性の向上を図りながら、なるべく簡素化した工程で製造する要望がある。
【0019】
しかし、前述したような、2種LDD専用マスクを用いてMONOSメモリの形成領域にフォトレジスト膜を選択的に形成する製造方法では、専用のマスクを作成し、それを露光に用いてフォトレジスト膜を形成する工程が必要となるため、プロセスコストがかさむという問題点がある。
【0020】
本発明の目的は、半導体装置の信頼性を確保すると共に、製造工程を簡略化することにある。特に、高速動作のために低電圧で相対的に大きな電流駆動力を必要とするMISFETと高耐圧MISFETとが同一半導体基板上に混在する半導体装置において、各MISFETを、それぞれの素子特性の向上を図りつつ簡素化した工程で製造する方法を提供することにある。
【0021】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0023】
本願の一発明による半導体装置の製造方法は、
半導体基板の主面の第1領域に第1MISFETを形成し、前記半導体基板の主面の第2領域に第2MISFETを形成する工程を含む半導体装置の製造方法であって、以下の工程を有するものである。
(a)前記第1領域の前記半導体基板の主面上に第1ゲート絶縁膜を介して第1ゲート電極を形成する工程。
(b)前記(a)工程の後、前記第1領域の前記半導体基板の主面に、前記第1MISFETの第1ソース領域および第1ドレイン領域の一部となる第1エクステンション領域を形成する工程。
(c)前記第2領域の前記半導体基板の主面上に第2ゲート絶縁膜を介して第2ゲート電極を形成する工程。
(d)前記(c)工程の後、前記第2領域の前記半導体基板の主面に、前記第2MISFETの第2ソース領域および第2ドレイン領域の一部となる第2エクステンション領域を形成する工程。
(e)前記(b)および(d)工程の後、前記半導体基板の主面の前記第2領域に、前記第2ゲート電極を覆うようにフォトレジスト膜を形成する工程。
(f)前記(e)工程の後、前記第1領域における前記半導体基板の主面上および前記第1ゲート電極の上面および側壁と、前記第2領域における前記フォトレジスト膜の上面および側壁に第1絶縁膜を形成する工程。
(g)前記(f)工程の後、前記第1絶縁膜をエッチングし、前記第1ゲート電極の側壁に前記第1絶縁膜からなる第1サイドウォールを形成する工程。
(h)前記(g)工程の後、前記フォトレジスト膜を除去する工程。
(i)前記(h)工程の後、前記第1サイドウォールの側壁に第2絶縁膜からなる第2サイドウォールを形成し、前記第2ゲート電極の側壁に前記第2絶縁膜からなる第3サイドウォールをそれぞれ形成する工程。
(j)前記(i)工程の後、前記第2サイドウォールをマスクとして前記第1領域の前記半導体基板の主面に不純物をイオン注入し、前記第1領域の前記半導体基板の主面に前記第1MISFETの前記第1ソース領域および前記第1ドレイン領域の一部となる第1拡散層を形成する工程。
(k)前記(i)工程の後、前記第3サイドウォールをマスクとして前記第2領域の前記半導体基板の主面に不純物をイオン注入し、前記第2領域の前記半導体基板の主面に前記第2MISFETの前記第2ソース領域および前記第2ドレイン領域の一部となる第2拡散層を形成する工程。
【発明の効果】
【0024】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0025】
半導体装置の信頼性を確保できると共に、製造工程を簡略化することができる。特に、低電圧のMISFETと高耐圧のMISFETを有する半導体装置において、各素子を簡素化した工程で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1である半導体装置の平面レイアウトである。
【図2】ホットキャリア注入方式を採用した従来のMONOS型メモリの書き込み動作を示す要部断面図である。
【図3】ホットキャリア注入方式を採用した従来のMONOS型メモリの消去動作を示す要部断面図である。
【図4】ホットキャリア注入方式を採用した従来のMONOS型メモリの読み出し動作を示す要部断面図である。
【図5】1個のメモリセルを2ビットとして用いる従来のMONOS型メモリの読み出し動作を示す要部断面図である。
【図6】図7に示す半導体装置のMONOSメモリを示す要部拡大断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1である半導体装置を示す要部断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1である半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図11】図10に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図12】図11に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図14】図13に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図15】図14に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図16】図15に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図17】図16に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図19】本発明の実施の形態1である半導体装置の平面レイアウトである。
【図20】図18に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図22】図21に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図23】本発明の実施の形態2である半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図25】図24に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図26】図25に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図27】図26に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図28】従来の2種LDD構造を有する半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図29】図28に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図30】図29に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図31】図30に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0028】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0029】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。また、実施の形態等において構成要素等について、「Aからなる」、「Aよりなる」というときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことはいうまでもない。
【0030】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0031】
また、材料等について言及するときは、特にそうでない旨明記したとき、または、原理的または状況的にそうでないときを除き、特定した材料は主要な材料であって、副次的要素、添加物、付加要素等を排除するものではない。例えば、シリコン部材は特に明示した場合等を除き、純粋なシリコンの場合だけでなく、添加不純物、シリコンを主要な要素とする2元、3元等の合金(例えばSiGe)等を含むものとする。
【0032】
また、以下の実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0033】
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1の半導体装置であるマイクロ・コンピュータが形成された半導体チップ40の平面レイアウトを示す。この半導体チップ40は、その主面上にCPU(Central Processing Unit)41、ROM42、RAM(Random Access Memory)43、EEPROM44およびアナログ回路45を備えている。
【0034】
CPU(回路)41は、中央演算処理装置とも呼ばれ、コンピュータなどの心臓部にあたる。このCPU41は、記憶装置から命令を読み出して解読し、それに基づいて多種多様な演算や制御を行なうものであり、処理の高速性が要求される。従って、CPU41を構成しているMISFETには、半導体チップ40に形成されている素子の中で、相対的に大きな電流駆動力が必要とされる。すなわち低耐圧MISFETで形成される。
【0035】
ROM(回路)42は、記憶情報が固定され変更できないメモリで、読み出し専用メモリと呼ばれる。ROM42の構成には、MISFETを直列接続したNAND型と、MISFETを並列接続したNOR型がある。NAND型は、集積密度重視であるのに対し、NOR型は、動作速度重視の目的で使用されることが多い。このROM42も動作の高速性が要求されるため、ROM42を構成しているMISFETには、相対的に大きな電流駆動力が必要とされる。すなわち低耐圧MISFETで形成される。
【0036】
RAM(回路)43は、記憶情報をランダムに、すなわち随時記憶されている記憶情報を読み出したり、記憶情報を新たに書き込んだりすることができるメモリであり、随時書き込み読み出しができるメモリとも呼ばれる。ICメモリとしてのRAMには、ダイナミック回路を用いたDRAM(Dynamic RAM)とスタティック回路を用いたSRAM(Static RAM)の2種類がある。DRAMは、記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリであり、SRAMは、記憶保持動作が不要な随時書き込み読み出しメモリである。これらRAM43も動作の高速性が要求されるため、RAM43を構成しているMISFETには、相対的に大きな電流駆動力が必要とされている。すなわち低耐圧MISFETで形成される。
【0037】
EEPROM44は、書き込み動作および消去動作とも電気的に書き換え可能な不揮発性メモリの一種であり、電気的消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリとも呼ばれる。このEEPROM44のメモリセルには、メモリセル選択用のMISFETと、記憶用の例えばMONOSメモリやMNOS(Metal Nitride Oxide Semiconductor)型のFETから構成される。ここで、メモリセル選択用のMISFETは高耐圧MISFETで形成されている。EEPROM44の書き込み動作は、例えばFNトンネル(Fowler-Nordheim Tunneling)現象またはホットエレクトロン注入を利用して、窒化シリコン膜92(電荷蓄積部)に電子を注入することで行なわれる。また、消去動作は、FNトンネル現象またはホットホール注入を利用することで行なわれる。
【0038】
本実施の形態では、窒化シリコン膜92に電子を注入する動作を書込み動作とし、窒化シリコン膜92から電子を引き抜く動作、または、窒化シリコン膜92に正孔を注入する動作を消去動作として例示している。以下の説明では、書込み動作にホットエレクトロン注入を用いた場合を例示し、消去動作にホットホール注入を用いた場合を例示しているが、これらの動作はFNトンネル現象を用いて行なってもよい。
【0039】
EEPROM44の書き込み動作時などには、記憶用のMONOSメモリに高い電位差(12V程度)が生じるため、記憶用のMONOSメモリとして、相対的に高耐圧のFETが必要とされる。
【0040】
アナログ回路45は、時間的に連続して変化する電圧や電流の信号、すなわちアナログ信号を扱う回路であり、例えば増幅回路、変換回路、変調回路、発振回路、電源回路などから構成されている。これらアナログ回路45は、半導体チップ40に形成された素子の中で、相対的に高耐圧のMISFETが使用される。
【0041】
上記のMONOS型メモリは、基本的にはMOSトランジスタのデバイス構造を採用し、ゲート絶縁膜を通常の酸化シリコン膜から、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜と酸化シリコン膜の3層絶縁膜に置き換えたものである。また、メモリアレイの構成法としては、ソース、ドレインを厚い素子分離酸化膜下に形成することや、ソース、ドレインをゲート電極の延在方向にライン状に形成して配線として用いることなども考えられている。いずれのメモリアレイにおいても、1つのメモリセルに着目すると、多くの場合、基本的なメモリセル動作は同様であり、以下に説明するものとなっている。
【0042】
上記MONOS型メモリの書き込み動作、消去動作および読み出し動作の1例を、図2〜図4を用いて説明する。図2〜図4に示すMONOS型メモリは、シリコン基板1上に形成された、酸化シリコン膜91、窒化シリコン膜92、酸化シリコン膜94が下から順に形成されて形成されたONO膜と、ONO膜上に形成されたドープドポリシリコン層からなるゲート電極50と、ゲート電極50の両端の下部のシリコン基板1(またはpウェル1b)の主面に形成された、ソース・ドレインを構成する拡散層60、70とを有している。
【0043】
書き込み時には、ホットエレクトロン注入の場合、図2に示すように、ゲート電極50(ワード線WL)に15V、拡散層60(ビット線BL1)を0V、拡散層70(ビット線BL2)を5Vとする。チャネルの電界によって加速された電子がホットエレクトロン状態となり、拡散層70(ビット線BL2)端部近傍の窒化シリコン膜92(電荷蓄積部)に注入される。このホットエレクトロンの生成法として、アバランシェ現象を用いることや、基板バイアス加速を用いることが知られている。なお、ゲート電極50と半導体基板1(pウェル1b)間に10V程度の電位差を発生させ、FNトンネル現象によって、基板側から電子を窒化シリコン膜92に注入してもよい。
【0044】
消去時には、ホットホール注入の場合、図3に示すように、ゲート電極50(ワード線WL)に−6V、拡散層60(ビット線BL1)に0V、拡散層70(ビット線BL2)に6Vを与える。拡散層70(ビット線BL2)端部でバンド間トンネル現象により正孔を発生させ、拡散層70(ビット線BL2)−シリコン基板1間バイアスで加速することにより、窒化シリコン膜92(電荷蓄積部)に正孔を注入する。これにより、窒化シリコン膜92に蓄積されていた電子と注入した前記正孔とを中和させることで、消去状態とすることができる。なお、書込み時とは逆の電位関係となるように、ゲート電極50と半導体基板1(pウェル1b)間に10V程度の電位差を発生させ、FNトンネル現象によって、窒化シリコン膜92に蓄積された電子を基板側に引き抜いてもよい。
【0045】
読み出し時には、図4に示すように、ゲート電極50(ワード線WL)に3V、拡散層60(ビット線BL1)に1V、拡散層70(ビット線BL2)に0Vを与えることにより、図4に示した矢印方向に流れるチャネル電流量を蓄積電荷情報として読み出す。すなわち、窒化シリコン膜92(電荷蓄積部)に電子が注入されているときにはしきい値電圧が高くなり、チャネル電流は流れないので、そのメモリセルが書込み状態であると判別できる。他方、窒化シリコン膜92に電子が注入されていないとき、窒化シリコン膜92に注入されている電子が少ないとき、または、窒化シリコン膜92に正孔が注入されているときにはしきい値電圧が低く、チャネル電流が流れるので、そのメモリセルが消去状態であると判別できる。
【0046】
また、上記MONOS型メモリの変形例を以下に示す。以下は、メモリセルの書込み動作をホットエレクトロン注入で行なった場合である。図5のメモリセルは、変形例の読出し動作時の図である。このメモリセルでは、窒化シリコン膜92の両端部において、それぞれ電子が蓄積された状態を示している。この状態は、書込み時の拡散層60(ビット線BL1)と拡散層70(ビット線BL2)の電圧を入れ替えて2回書き込むことで実現できる。また消去動作も拡散層60(ビット線BL1)と拡散層70(ビット線BL2)の電圧を入れ替えてホットホール注入を行うことで窒化シリコン膜92の両端部において個別に行うことができる。さらに読み出し動作も拡散層60(ビット線BL1)と拡散層70(ビット線BL2)の電圧を入れ替えることで窒化シリコン膜92の両端部において個別に行うことができる。このような方式、いわゆる“リバースリード方式”を用いることで1個のメモリセルで2ビットの情報を蓄積することができる。
【0047】
上記の通り、MONOSメモリの書き込み動作時などには、MONOSメモリに高い電位差が生じるため、記憶用のMONOSメモリとして、相対的に高耐圧のFETが必要となる。
【0048】
図7は、図1に示した本実施の形態のEEPROM44のMONOSメモリおよび周辺回路のnチャネル型低耐圧MISFETを示す要部断面図である。なお、周辺回路とは、図1に示すCPU41、ROM42、RAM43およびアナログ回路45のことをいう。
【0049】
図7の左側の領域にはMONOSメモリが形成され、右側の領域にはMONOSメモリの周辺回路の低耐圧MISFETが形成されている。なお、MONOSメモリの周辺回路はCMOS(Complementary MOS)構造を有しており、nチャネル型低耐圧MISFET、pチャネル型低耐圧MISFET、nチャネル型高耐圧MISFETおよびpチャネル型高耐圧MISFETを有する。ここでは、MONOSメモリの周辺回路はnチャネル型低耐圧MISFETのみを図示し、他のMISFETの図示は省略する。
【0050】
MONOSメモリは、電位障壁膜であるボトム酸化膜およびトップ酸化膜の間に、電荷蓄積膜である窒化シリコン膜を形成した3層からなる積層構造のゲート絶縁膜を有し、不揮発性メモリとして使用されるFETである。低耐圧MISFETは、MONOSメモリの周辺回路に形成されたMISFETであり、MONOSメモリよりも低い電圧で動作し、低抵抗で動作が速いなどの性能が要求されるMISFETである。
【0051】
図7において、シリコン基板(半導体基板)1にはpウエル1aおよびpウェル1bが形成されている。pウエル1bの主面には、MONOSメモリが形成されている。pウエル1aの主面には、低耐圧MISFETが形成されている。また、これらの領域の境界には素子分離層2が形成されている。低耐圧MISFETが形成された領域において、pウエル1aの表面にゲート絶縁膜3が形成され、ゲート絶縁膜3上にゲート電極4が形成されている。MONOSメモリが形成された領域では、pウエル1bの表面にボトム酸化膜5が形成され、ボトム酸化膜5上に窒化膜6が形成され、窒化膜6上にトップ酸化膜7が形成され、トップ酸化膜7上にメモリゲート電極8が形成されている。
【0052】
ゲート電極4の両側壁には、サイドウォールAが形成され、メモリゲート電極8の両側壁には、サイドウォールBが形成されている。サイドウォールAは酸化シリコン膜10aおよび窒化シリコン膜11aからなる。酸化シリコン膜10aはゲート電極4の側壁およびpウエル1aの上面に接して形成され、窒化シリコン膜11aは酸化シリコン膜10aを介してゲート電極4の側壁に形成されている。
【0053】
サイドウォールBは低温酸化膜14b、酸化シリコン膜10bおよび窒化シリコン膜11bからなる。低温酸化膜14bはメモリゲート電極8の側壁およびpウエル1bの上面に接して形成され、酸化シリコン膜10bは低温酸化膜14bの側壁およびpウエル1bの上面に接して形成されている。窒化シリコン膜11bは低温酸化膜14bおよび酸化シリコン膜10bを介してメモリゲート電極8の側壁に形成されている。
【0054】
サイドウォールAおよびBの下部であってpウエル1aおよびpウェル1bには、エクステンション領域9aおよび9bがそれぞれ浅く形成されている。低耐圧MISFETが形成された領域のpウエル1aには、エクステンション領域9aよりも深く形成された、低耐圧MISFETの拡散層15aが形成されている。拡散層15aは、エクステンション領域9aの端部であって低耐圧MISFETのゲート電極4のある方の端部の反対側の端部から素子分離層2にかけて形成されている。また、MONOSメモリが形成された領域のpウエル1bには、エクステンション領域9bよりも深く形成された、MONOSメモリの拡散層15bが形成されている。拡散層15bは、エクステンション領域9bの端部であってMONOSメモリのメモリゲート電極8のある方の端部の反対側の端部から素子分離層2にかけて形成されている。拡散層15a、15b、ゲート電極4およびメモリゲート電極8のそれぞれの上面には、シリサイド層16が形成されている。
【0055】
また、MONOSメモリと低耐圧MISFETとの境界に配置された素子分離層2の上部には、壁状のスペーサー23が形成されている。スペーサー23は低温酸化膜14a、酸化シリコン膜10cおよび窒化シリコン膜11cからなる。窒化シリコン膜11cは、低温酸化膜14aの側壁および素子分離層2の上面上に、酸化シリコン膜10cを介して形成されている。なお、スペーサー23の上面の高さは、ゲート電極4およびメモリゲート電極8のそれぞれの上面の高さよりも高い。また、壁状のスペーサー23は、後述する製造工程の途中で不可避的に形成されるものであり、素子分離層2の上に形成されているため、素子の動作に悪影響を及ぼすものではない。
【0056】
図7に示すように、MONOSメモリのゲート長方向におけるサイドウォールBの幅L2は、電流駆動力を必要とする低耐圧MISFETのゲート長方向におけるサイドウォールAの幅L1に比較して広くなっている(L2>L1)。MONOSメモリのサイドウォールBの幅L2は例えば約190nmであり、低耐圧MISFETのサイドウォールAの幅L1は、例えば約120nmである。これは、相対的に大きな電流駆動力を必要とする低耐圧MISFETにおいて、サイドウォールAの幅L1を狭くしてソース領域とドレイン領域の距離を近づけることにより、ソース領域とドレイン領域との間の抵抗を低くするためである。つまり、ソース領域とドレイン領域との間の抵抗を低くすることにより、低耐圧MISFETの電流駆動力の向上を図っている。このようにして、低耐圧MISFETを高速に動作させることができる。
【0057】
また、サイドウォールBの幅L2をサイドウォールAの幅L1よりも大きく形成しているので、MONOSメモリのエクステンション領域9bのゲート長方向における長さを、低耐圧MISFETのエクステンション領域9aのゲート長方向における長さよりも長く形成することができる。このように、サイドウォールBの幅L2を広げることにより、MONOSメモリのソース領域と半導体基板やドレイン領域と半導体基板の間のpn接合耐圧を向上させることができる。
【0058】
ここで、サイドウォールBの幅L2を広げるとpn接合耐圧が向上することについて図6を参照しながら説明する。図6は、図7に示したMONOSメモリの拡大断面図である。
【0059】
図6において、MONOSメモリは、LDD構造を有している。すなわち、ソース領域およびドレイン領域はそれぞれエクステンション領域9bと拡散層15bより構成され、メモリゲート電極8に近い領域にエクステンション領域9bが形成されている。このようにメモリゲート電極8に近い領域にエクステンション領域9bを形成するのは、メモリゲート電極8のエッジ端部下の領域における電界集中を防止するためである。すなわち、エクステンション領域9bは拡散層15bよりもキャリアの数が少ない領域であるから電流は流れにくく、その抵抗は拡散層15bよりも高い領域となる。従って、ソース・ドレイン領域間のゲート破壊電圧を向上することができる。また、エクステンション領域9b付近の空乏層の延びを大きくすることができるので、ドレイン領域となるエクステンション領域9b端での電界を緩和することができる。
【0060】
また、エクステンション領域9bと拡散層15bとの境界は、サイドウォールBの幅L2で規定されている。
【0061】
ここで、エクステンション領域9bと拡散層15bは、例えば不純物のイオン注入によって形成されるが、イオン注入の後には注入した不純物を活性化するための熱処理が行なわれる。特に、拡散層15bを形成した際に行なわれる熱処理により、注入した不純物がエクステンション領域9bに拡散する。つまり、図6の矢印で示すように、注入した一部の不純物が、拡散層15bからエクステンション領域9bへ移動する。
【0062】
従って、図6に示すサイドウォールBの幅L2をより狭くすると拡散層15bがメモリゲート電極8のエッジ端部下の領域に近づくため、電界集中が起こりやすいメモリゲート電極8のエッジ端部下の領域にまで不純物が移動してくる。そして、エッジ端部下の領域において不純物濃度が高まると電界集中が起こり、ソース領域(拡散層15b)とpウエル1bまたはドレイン領域(拡散層15b)とpウエル1bとの間のpn接合耐圧が低下することになる。
【0063】
しかし、図7に示すように、本実施の形態の半導体装置ではMONOSメモリのサイドウォールBの幅L2を低耐圧MISFETのサイドウォールAの幅L1に比較して広くしている。このため、拡散層15bとメモリゲート電極8のエッジ端部下の領域との距離は相対的に大きくなっており、不純物がエッジ端部下の領域に届きにくくなっている。従って、低耐圧MISFETのpn接合耐圧に比べて、MONOSメモリのpn接合耐圧を大きくすることができる。つまり、MONOSメモリ形成領域におけるソース領域(拡散層15b)とpウエル1bとの間、またはドレイン領域(拡散層15b)とpウエル1bとの間のpn接合耐圧を大きくすることができる。
【0064】
今、仮にMONOSメモリのサイドウォールBの幅L2が低耐圧MISFETのサイドウォールAの幅L1と同程度とした場合、高抵抗の領域であるエクステンション領域9bの幅が小さくなるので、pウエル1bの表面付近を電流が流れやすくなるため、メモリゲート電極8のエッジ部下に電界集中が起こりやすくなる。このような電界集中がおこると、メモリゲート電極8のエッジ部に集中したキャリアの一部に高いエネルギーをもつ正孔(ホットホール)が発生する。このようなホットホールがメモリゲート電極8に印加される電圧によって引き寄せられ、電荷蓄積層に注入されやすくなり、誤ってデータが消去されるという問題が発生してしまう。MONOSメモリはメモリゲート電極8に、低耐圧MISFETよりも高い電圧を印加するので、電界集中が起こりやすい。このような問題を回避するため、MONOSメモリのサイドウォールBの幅L2を、低耐圧MISFETのサイドウォールAの幅L1と比較して広くしているのである。
【0065】
このように、本実施の形態における半導体装置によれば、それぞれの素子において素子特性の向上を図ることができる。つまり、低耐圧MISFETは、動作時に比較的低電圧(例えば約1.5V程度)しか印加されないため、サイドウォールAの幅L1を相対的に狭くして動作の高速性向上を図っている。これに対し、MONOSメモリは、書き込みなどの動作を行なう際、比較的高い電位差(例えば約12V程度)が発生するため、サイドウォールBの幅L2を相対的に広くしてソース・ドレイン領域と半導体基板間のpn接合耐圧を向上させ、書き込み動作などの信頼性向上を図っている。
【0066】
以下に、図8〜図20を用いて本実施の形態のMONOSメモリおよび低耐圧MISFETの製造方法を工程順に説明する。ここで、図8〜図20は、左からそれぞれMONOSメモリ形成領域および低耐圧MISFET形成領域を示している。
【0067】
まず、図8に示すように、シリコン基板1の主面にドライエッチングによって深さ200〜400nm程度の溝を掘り、その溝の中に酸化シリコンを埋め込んだ後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法によってシリコン基板1の主面を平坦化し、所謂、STI(Shallow Trench Isolation)構造の素子分離層2を形成する。その後、シリコン基板1の主面にp型の不純物(例えばホウ素)を低濃度でイオン注入することにより、シリコン基板1の主面にpウエル1aおよびpウエル1bを形成する。pウエル1aおよびpウエル1bは異なる不純物濃度で形成されている。
【0068】
次に、図9に示すように、pウエル1aおよびpウェル1bの表面にボトム酸化膜5を形成する。ボトム酸化膜5の膜厚は1.1nm程度である。ボトム酸化膜5は、例えば酸化シリコン膜からなり、熱酸化法を使用して形成することができる。その後、ボトム酸化膜5上に電荷蓄積膜である窒化膜6を形成する。窒化膜6は、例えば窒化シリコン膜からなり、シランガス(SiH)とアンモニアガス(NH)とを化学反応させるCVD法を使用して形成することができる。また、他の製造方法としてALD(Atomic Layer Deposition)法で形成することもできる。また、窒化膜6の膜厚は16.5nm程度である。なお、窒化膜6として、窒化シリコン膜を使用したが、これに限らず、例えば酸窒化シリコン膜(SiON)等の膜中にトラップ準位を含む膜であってもよい。
【0069】
次に、窒化膜6上にトップ酸化膜7を形成する。トップ酸化膜7は、例えば酸化シリコン膜よりなり、シランガスと酸素ガス(O)とを化学反応させるCVD法によって形成することができる。また、トップ酸化膜7の膜厚は3.0nm程度である。これにより、pウエル1b上に、ボトム酸化膜5、窒化膜6およびトップ酸化膜7の三層からなるONO膜が形成される。
【0070】
続いて、トップ酸化膜7上にポリシリコン膜8aを形成する。ポリシリコン膜8aは、例えば、シランガスを窒素ガス(N)中で熱分解させるCVD法によって形成することができる。ポリシリコン膜8aの成膜時には、リンなどの不純物が添加される。なお、ポリシリコン膜8aの成膜が終了してから、イオン注入法を使用してポリシリコン膜8aに不純物を注入してもよい。
【0071】
その後、ポリシリコン膜8a上に、キャップ絶縁膜31を形成する。キャップ絶縁膜31は、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜の積層膜よりなる。これらの膜は、例えばCVD法を使用することによって形成することができる。キャップ絶縁膜31は、その後の工程で形成するメモリゲート電極8を保護する機能を有する。
【0072】
次に、キャップ絶縁膜31上にフォトレジスト膜を塗布した後、露光・現像することによりフォトレジスト膜33を形成する。フォトレジスト膜のパターニングは、メモリゲート電極8を形成する領域にフォトレジスト膜33が残るようにする。
【0073】
次に、図10に示すように、フォトレジスト膜33をマスクにしたエッチングにより、MONOSメモリのゲート電極形成領域以外のキャップ絶縁膜31、ポリシリコン膜8a、トップ酸化膜7、窒化膜6およびボトム酸化膜5を除去する。これにより、pウエル1bの上面にボトム酸化膜5、窒化膜6およびトップ酸化膜7を介してポリシリコン膜8aからなるメモリゲート電極8を形成する。
【0074】
次に、フォトレジスト膜33をアッシングにより除去した後、図11に示すように、シリコン基板1の主面上にゲート絶縁膜3を形成する。ゲート絶縁膜3は、例えば酸化シリコン膜からなり、熱酸化法を使用して形成することができる。その後、シリコン基板1の主面の全面上に導電膜として例えばポリシリコン膜13を形成する。ポリシリコン膜13は、例えばCVD法を使用して形成することができる。なお、ポリシリコン膜13の成膜中または成膜後には、不純物が添加される。この不純物は、ポリシリコン膜13の低抵抗化のために導入される。その後、ポリシリコン膜13上にフォトレジスト膜を塗布した後、露光・現像することによりフォトレジスト膜34を形成する。フォトレジスト膜のパターニングは、ゲート電極4を形成する領域にフォトレジスト膜34が残るようにする。
【0075】
次に、図12に示すように、フォトレジスト膜34をマスクとしてポリシリコン膜13およびゲート絶縁膜3をエッチングし、pウエル1aの上面にゲート絶縁膜3を介してポリシリコン膜13からなるゲート電極4を形成した後、フォトレジスト膜34をアッシングにより除去する。
【0076】
このとき、メモリゲート電極8のゲート長に比べ、ゲート電極4のゲート長は短く形成されている。これは、ゲート電極4のゲート長を短くすることにより、低耐圧MISFETのソース領域とドレイン領域との間の抵抗を減らし、電流駆動力を向上させるためである。一方、MONOSメモリには約12V程度の電圧を印加するため、メモリゲート電極8のゲート長を低耐圧MISFETのゲート長と同程度にすると、MONOSメモリのソース領域とドレイン領域の間でパンチスルーが生じてしまうためである。
【0077】
次に、図13に示すように、シリコン基板1の主面上にフォトレジスト膜を塗布した後、露光・現像することにより、MONOSメモリの形成領域を覆い、低耐圧MISFET形成領域を露出しているフォトレジスト膜35を形成する。その後、シリコン基板1の主面にn型の不純物(例えば砒素)を低濃度でイオン注入することにより、低耐圧MISFET形成領域のpウエル1aにエクステンション領域9aを形成する。なお、このエクステンション領域9aは、低耐圧MISFETのソース領域およびドレイン領域の一部を構成し、低耐圧MISFETのソース領域およびドレイン領域をLDD構造にするために形成する。
【0078】
次に、フォトレジスト膜35をアッシングにより除去した後、図14に示すように、シリコン基板1の主面上にフォトレジスト膜を塗布して露光・現像することにより、低耐圧MISFET形成領域のシリコン基板1の主面およびゲート電極4を覆い、MONOSメモリ形成領域を露出しているフォトレジスト膜36を形成する。その後、シリコン基板1の主面にn型の不純物(例えば砒素)を低濃度でイオン注入することにより、MONOSメモリ形成領域のpウエル1bにエクステンション領域9bを形成する。なお、このエクステンション領域9bは、MONOSメモリのソース領域およびドレイン領域の一部を構成し、MONOSメモリのソース領域およびドレイン領域をLDD構造にするために形成する。また、フォトレジスト膜35、36を用いてエクステンション領域9aおよび9bを別工程で形成するのは、エクステンション領域9aとエクステンション領域9bをそれぞれの不純物濃度をそれぞれ異なる濃度にするためである。
【0079】
次に、図15に示すように、低耐圧MISFET形成領域にフォトレジスト膜36を残した状態でシリコン基板1の主面上に低温酸化膜14を堆積する。このとき、MONOSメモリ形成領域の低温酸化膜14は、シリコン基板1の主面と、キャップ絶縁膜31およびメモリゲート電極8とを覆うように堆積される。また、低耐圧MISFET形成領域の低温酸化膜14は、フォトレジスト膜36の上面および側面を覆うように堆積される。
【0080】
ここで、低温酸化膜14は、酸化シリコン膜をALD法により堆積して形成し、その堆積条件として、シリコン基板1の温度を100℃以下とする。また、低温酸化膜14の堆積はCVD法により行ってもよく、その場合も堆積条件として、シリコン基板1の温度を100℃以下とする。
【0081】
通常、CVD法による酸化シリコン膜の堆積時には基板温度が350℃〜800℃程度になる。一方、フォトレジストは高温に弱く、150℃程度の温度下ではパターンが変形(レジスト流れ)し易い。そのため、シリコン基板1上にフォトレジスト膜36を残した状態で酸化シリコン膜を堆積すると、フォトレジスト膜36が変形し、シリコン基板1から剥離する可能性がある。また、フォトレジスト膜36が150℃以上の温度にさらされた場合は、パターンが流動し、逆にシリコン基板1から剥離困難になる。また、フォトレジスト膜36の成分が解離し、CVD装置内が汚染される恐れがある。従って、シリコン基板1上にフォトレジスト膜36を残した状態で酸化シリコン膜を堆積する場合は、フォトレジスト膜36を100℃を超える高温にさらさないようにする必要がある。このため、本実施の形態ではシリコン基板1上にフォトレジスト膜36が形成されている状態で酸化シリコン膜を堆積する際に、100℃以下で堆積可能な低温酸化膜14を使用する。
【0082】
次に、図16に示すように、低温酸化膜14を異方性の強いドライエッチングによりエッチングすることで、フォトレジスト膜36の側壁に低温酸化膜14からなる低温酸化膜14aがサイドウォール状に形成され、メモリゲート電極8の側壁に低温酸化膜14からなる低温酸化膜14bがサイドウォール状に形成される。
【0083】
次に、図17に示すように、アッシングによりフォトレジスト膜36を除去する。ここで、フォトレジスト膜36を除去する際、素子分離層2の上に低温酸化膜14aが壁状に残る。その後、ゲート電極4およびメモリ電極8が形成されたシリコン基板1の主面の全面に、CVD法により酸化シリコン膜10および窒化シリコン膜11を順次堆積する。
【0084】
次に、図18に示すように、キャップ絶縁膜31、窒化シリコン膜11および酸化シリコン膜10を異方性ドライエッチングする。これにより、低耐圧MISFETのゲート電極4の側壁に酸化シリコン膜10aと窒化シリコン膜11aとからなるサイドウォールAが形成される。また、MONOSメモリのメモリゲート電極8の側壁に、低温酸化膜14b、酸化シリコン膜10bおよび窒化シリコン膜11bからなるサイドウォールBが形成される。
【0085】
また、素子分離層2の上に低温酸化膜14aと低温酸化膜14aの側壁に形成された酸化シリコン膜10cと窒化シリコン膜11cとからなるスペーサー23が形成される。なお、スペーサー23はゲート電極4を覆うフォトレジスト膜36の側壁に形成されたものであるため、スペーサー23の上面の高さは、ゲート電極4およびメモリゲート電極8のそれぞれの上面の高さよりも高く形成される。
【0086】
なお、酸化シリコン膜10a、10bおよび10cは酸化シリコン膜10を加工して形成したものであり、窒化シリコン膜11a、11bおよび11cは窒化シリコン膜11を加工して形成したものである。
【0087】
このとき、pウエル1aおよびpウェル1bの上面に形成された酸化シリコン膜10を完全に除去せずに薄く残し、次の工程でpウエル1aおよびpウェル1bにn型の不純物(例えば砒素や燐)をイオン注入する際のスルー膜として使用してもよい。なお、ここで酸化シリコン膜10を完全に除去した場合は、次のイオン注入工程の前にシリコン基板1を熱酸化することで、pウエル1aおよびpウェル1bの表面にスルー膜を形成してもよい。なお、スルー膜とはイオン注入を行う際に、イオンを打ち込む対象の表面がダメージを負わないように保護するための膜である。
【0088】
本実施の形態の半導体装置では、図18に示すように、低耐圧MISFET形成領域およびMONOSメモリ形成領域の境界には、壁状のスペーサー23が形成される。低耐圧MISFET形成領域に形成される低耐圧MISFETは、例えば図1におけるCPU41、ROM42またはRAM43などの一部を構成する。また、MONOSメモリ形成領域に形成されるMONOSメモリはEEPROM44内に形成される。このため、壁状のスペーサー23は、EEPROM44を囲むように形成されている。
【0089】
スペーサー23からなる壁の高さはMONOSメモリや低耐圧MISFETの高さに比べて非常に高く、横方向の厚さも薄い。このため、図1に太線で示すスペーサー23からなる壁をシリコン基板1の主面側から見て直線状に配置した場合、シリコン基板1の主面を洗浄または加工する工程において倒壊または破損し、半導体装置にダメージを残す場合がある。また、スペーサー23が破損しやすい理由として、低温で形成された低温酸化膜が、一般的な温度下(例えば350℃〜800℃程度)で形成された酸化膜に比べ、密度が低くなり脆くなる可能性があることも挙げられる。
【0090】
これに対し、図14の工程においてフォトレジスト膜36の側壁を平面形状において直線的に形成するのではなく、平面形状において直線を折り曲げたジグザグ状になるように形成してもよい。これにより、フォトレジスト膜36の側壁に形成された低温酸化膜14aを含む壁状のスペーサー23を、図19に太線で示すように平面形状においてジグザグ状に形成することで、スペーサー23が倒壊または破損することを防ぐことができる。
【0091】
なお、スペーサー23の形状をジグザグ状に形成する以外に、平面形状において方形波のような凹凸を有する形状としてもよいし、曲線状の形状としてもよい。
【0092】
次に、図20に示すように、pウエル1aおよびpウェル1bにn型の不純物(例えば砒素や燐)をエクステンション領域9a、9bよりも高い不純物濃度になるようにイオン注入することにより、pウエル1aおよびpウェル1bに拡散層15a、15bを形成する。拡散層15aおよびエクステンション領域9aは低耐圧MISFETのソース・ドレイン領域を構成し、拡散層15bおよびエクステンション領域9bはMONOSメモリのソース・ドレイン領域を構成している。
【0093】
ここで、ゲート電極4のゲート長方向におけるサイドウォールAの幅L1は、同方向におけるサイドウォールBの幅L2よりも狭く形成されている。これにより、幅の異なるサイドウォールA、Bを作り分けることにより、その下のエクステンション領域9a、9bをそれぞれ違う幅で形成することが可能となる。
【0094】
従来の2種LDD構造の製造方法としては、図34に示すフォトレジスト膜30を形成するために専用のマスクを用い、幅の異なるサイドウォールAおよびサイドウォールBを形成するのが一般的であった。本実施の形態では、専用のマスクを用いることなく、図20に示すMONOSメモリ形成領域と低耐圧MISFET形成領域のエクステンション領域9aおよびエクステンション領域9bを作り分ける際のフォトレジスト膜を利用して低温酸化膜14を堆積し、2種類のサイドウォールAおよびサイドウォールBを形成している。このため、専用のマスクを用いてフォトレジスト膜を形成するのではなく、エクステンション領域9aおよびエクステンション領域9bの作り分けの際のフォトレジスト膜を利用しているので、フォトレジスト膜を形成する工程は増加していない。これにより、本実施の形態では図32〜図35の製造方法に比べて使用するマスクの枚数が1枚減るので、少ない工程で幅の異なるサイドウォールAおよびサイドウォールBを形成することができ、製造コストを低減することが可能となる。
【0095】
次に、図21に示すように、周知のサリサイドプロセスにより、拡散層15a、15bゲート電極4およびメモリゲート電極8の表面にシリサイド層16を形成し、シリコン基板1の主面上に、エッチングストッパ膜17を形成する。シリサイド化の手順としては、まずシリコン基板1の主面上にスパッタリングで金属膜を堆積し、次にシリコン基板1を熱処理した後、未反応の金属膜をウェットエッチングで除去することでシリサイド層16を形成する。シリサイド層16としては、ニッケルシリサイド、コバルトシリサイド、チタンシリサイド、またはプラチナシリサイドを例示することができる。また、エッチングストッパ膜17はCVD法により堆積された窒化シリコン膜からなる。
【0096】
ここで、エクステンション領域9a、9bは、サイドウォールA、Bの下部のシリコン基板1の表面にそれぞれ形成される。また、拡散層15a、15bは、上述のエクステンション領域9a、9bよりも接合深さが深い領域であり、上述のエクステンション領域9a、9bよりも高い不純物濃度を有する領域である。また、拡散層15a、15bは、MONOSメモリおよび低耐圧MISFETのそれぞれの領域のシリコン基板1の主面において、サイドウォールA、Bのそれぞれの、ゲートに接する側壁の反対側の側壁の下部から素子分離層2の側面にかけて形成される。
【0097】
次に、図22に示すように、公知の配線プロセスにより配線を形成する。すなわち、シリコン基板1上に厚い層間絶縁膜18を形成し、層間絶縁膜18の上面からゲート電極4、メモリゲート電極8および拡散層15a、15bのそれぞれの上面に形成されたシリサイド層16に達するコンタクトホール19を形成する。続いて、コンタクトホール19内に導体を充填してコンタクトプラグ20を形成した後、周知の技術であるダマシンプロセスによって、層間絶縁膜18およびコンタクトプラグ20上にダマシン配線21および層間絶縁膜22を形成することで、本実施の形態の半導体装置が完成する。ここで、コンタクトプラグ20は、チタンおよび窒化チタン等のバリアメタル膜と、タングステン膜によって構成される。また、ダマシン配線21は、タンタルまたは窒化タンタル等のバリアメタル膜と、銅を主成分とする導体膜によって構成される。
【0098】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では同一半導体基板上にMONOSメモリおよび低耐圧MISFETを形成する半導体装置の製造工程を記載した。本実施の形態ではMONOSメモリではなく、高耐圧MISFETおよび低耐圧MISFETを有する半導体装置において、それぞれの素子に異なる幅のサイドウォールを作り分ける方法を説明する。ここで、高耐圧MISFETとは、I/O領域の保護素子または電源の昇圧回路などに用いられ、低耐圧MISFETよりも高い電圧で動作するFETである。高耐圧MISFETは、MONOSメモリと同様に動作の際に比較的高い電位差が発生するため、サイドウォールの幅を相対的に広くさせ、ソース・ドレイン領域と半導体基板間のpn接合耐圧を向上させることで信頼性を向上させることが求められている。
【0099】
以下に、図23〜図27を用いて本実施の形態の高耐圧MISFETおよび低耐圧MISFETの製造方法を工程順に説明する。なお、図23〜図27において、左側の領域の高耐圧MISFET形成領域は高耐圧MISFETの形成領域を示し、右側の領域の低耐圧MISFET形成領域は低耐圧MISFETの形成領域をそれぞれ示している。
【0100】
まず、図23に示すように、前記実施の形態1と同様にしてシリコン基板1の主面に素子分離層2を形成する。その後、熱酸化によりシリコン基板1の主面の全面に酸化膜25を形成した後、酸化膜25をスルー膜としてシリコン基板1の主面にp型の不純物(例えばホウ素)をイオン注入することにより、シリコン基板1の主面にpウエル1aおよびpウェル1bを形成する。
【0101】
次に、図24に示すように、pウエル1a上の酸化膜25をウェットエッチングによって除去する。その後、周知の2種ゲート酸化プロセスにより高耐圧MISFET形成領域に厚膜ゲート酸化膜26を形成し、低耐圧MISFET形成領域にゲート絶縁膜3を形成する。
【0102】
すなわち、pウエル1a上の酸化膜25を除去した後、シリコン基板1の主面上の全面に厚い酸化シリコン膜を熱酸化法またはCVD法により形成する。その後、高耐圧MISFET形成領域をフォトレジストで覆う。その後、フォトレジストをマスクとして低耐圧MISFET形成領域の酸化シリコン膜をドライエッチングまたはウェットエッチングにより選択的に除去し、高耐圧MISFET形成領域に前記厚い酸化シリコン膜からなる厚膜ゲート酸化膜26を残した後、フォトレジストをアッシングにより除去する。その後、シリコン基板1を熱酸化して低耐圧MISFET形成領域にゲート絶縁膜3を形成する。このとき、高耐圧MISFET形成領域の厚膜ゲート酸化膜26の下のpウエル1bの上面も若干酸化される。
【0103】
これにより、高耐圧MISFET形成領域に相対的に膜厚の厚い厚膜ゲート酸化膜26が形成され、低耐圧MISFET形成領域に、相対的に膜厚の薄いゲート絶縁膜3が形成される。その後、CVD法によりシリコン基板1の主面側の全面上に、導体膜であるポリシリコン膜13を形成する。なお、この後、ゲート絶縁膜3および厚膜ゲート酸化膜26に対して、窒素および酸素雰囲気中で熱処理することで、酸窒化シリコン膜としてもよい。また、ゲート絶縁膜3および酸化膜25の製法は、熱酸化法に限られず、ISSG酸化処理またはCVD法によって形成してもよい。
【0104】
次に、図25に示すように、パターニングされたフォトレジスト膜を用いて、高耐圧MISFET形成領域のpウエル1b上に厚膜ゲート酸化膜26を介してゲート電極27を形成し、低耐圧MISFET形成領域のpウエル1a上にゲート絶縁膜3を介してゲート電極4を形成する。
【0105】
この後の工程は、前記実施の形態1における図13以降の工程と同様に行う。すなわち、ゲート電極27を覆うように高耐圧MISFET形成領域のシリコン基板1の主面上にフォトレジスト膜を形成する。続いて、前記フォトレジスト膜をマスクとしてpウエル1aにn型の不純物(例えば砒素)をイオン注入することで、低耐圧MISFET形成領域のpウエル1aの上面にエクステンション領域9aを形成する。その後、前記フォトレジスト膜を除去し、低耐圧MISFET形成領域のpウエル1aの上面上に、ゲート電極4を覆うようにフォトレジスト膜36を形成した後、高耐圧MISFET形成領域のpウエル1bにエクステンション領域9bを形成する。次に、シリコン基板1の主面側の全面上に低温酸化膜をCVD法により堆積し、pウエル1a、pウェル1bおよび素子分離層2が形成されたシリコン基板1の主面上、フォトレジスト膜36の上面上および側面に低温酸化膜14を形成する。
【0106】
次に、フォトレジスト膜36が形成されたシリコン基板1の主面上に低温酸化膜14を堆積する。ここで、低温酸化膜14は、酸化シリコン膜をALD法により堆積して形成するものであり、その形成工程における堆積条件として、半導体基板の温度は100℃以下とする。
【0107】
次に、シリコン基板1の主面を異方性の強いドライエッチングによりエッチングすることで、フォトレジスト膜36の側壁に低温酸化膜14からなる低温酸化膜14aが形成され、ゲート電極27の側壁に低温酸化膜14からなる低温酸化膜14bが形成される。
【0108】
次に、アッシングによりフォトレジスト膜36を除去した後、ゲート電極4およびメモリ電極8が形成されたシリコン基板1の主面側の全面上に、CVD法により酸化シリコン膜10および窒化シリコン膜11を順次堆積する。
【0109】
次に、シリコン基板1の主面を異方性の強いドライエッチングにより窒化シリコン膜11および酸化シリコン膜10をエッチングすることで、低温酸化膜14a、14bおよびゲート電極4のそれぞれの側壁に酸化シリコン膜10および窒化シリコン膜11からなるサイドウォールが残る。ここで、ゲート電極4の側壁に形成された酸化シリコン膜10からなる酸化シリコン膜10aおよび窒化シリコン膜11からなる窒化シリコン膜11aを低耐圧MISFETのサイドウォールAとする。また、ゲート電極27の側壁に形成された低温酸化膜14b、酸化シリコン膜10からなる酸化シリコン膜10bおよび窒化シリコン膜11からなる窒化シリコン膜11bを、高耐圧MISFETのサイドウォールBとする。また、高耐圧MISFETおよび低耐圧MISFET形成領域の境界に形成された低温酸化膜14aおよび低温酸化膜14aの側壁に形成された酸化シリコン膜10からなる酸化シリコン膜10cおよび窒化シリコン膜11からなる窒化シリコン膜11cを、スペーサー23とする。
【0110】
次に、図26に示すように、pウエル1aおよびpウェル1bにn型の不純物(例えば砒素や燐)をエクステンション領域9a、9bよりも高濃度でイオン注入することにより、pウエル1aおよびpウェル1bのそれぞれの上面に拡散層15a、15bを形成する。拡散層15aおよびエクステンション領域9aは低耐圧MISFETのソース・ドレイン領域を構成し、拡散層15bおよびエクステンション領域9bは高耐圧MISFETのソース・ドレイン領域を構成している。
【0111】
次に、周知のサリサイドプロセスにより、拡散層15a、15bゲート電極4およびゲート電極27の表面にシリサイド層16を形成し、シリコン基板1の主面上に、エッチングストッパ膜17を形成する。
【0112】
ここで、エクステンション領域9a、9bはそれぞれの領域に形成されたサイドウォールA、Bの下部のシリコン基板1の表面に形成されている。また、拡散層15a、15bは、上述のエクステンション領域9a、9bよりも接合深さが深い領域であり、上述のエクステンション領域9a、9bよりも高い不純物濃度を有する領域である。また、拡散層15a、15bは、高耐圧MISFETおよび低耐圧MISFETのそれぞれの領域のシリコン基板1の主面において、エクステンション領域9a、9bのゲート側の反対側の端部から素子分離層2の側面にかけて形成されている。
【0113】
次に、図27に示すように、公知の配線プロセスにより配線を行う。すなわち、シリコン基板1上に厚い層間絶縁膜18を形成し、層間絶縁膜18の上面からゲート電極4、ゲート電極27および拡散層15a、15bのそれぞれの上面に形成されたシリサイド層16のに達するコンタクトホール19をそれぞれ形成する。続いて、コンタクトホール19内に導体を充填して導体からなるコンタクトプラグ20を形成した後、周知の技術であるダマシンプロセスによって、層間絶縁膜18およびコンタクトプラグ20上にダマシン配線21および層間絶縁膜22を形成することで、本実施の形態の半導体装置を完成する。
【0114】
本実施の形態では、高耐圧MISFET形成領域および低耐圧MISFET形成領域において、異なる幅のサイドウォールおよびエクステンション領域を形成することにより、前記実施の形態1と同様の効果を得られる。
【0115】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、同一半導体基板上に複数種類のMISFETを有する半導体装置の製造に幅広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0117】
1 シリコン基板(半導体基板)
1a pウエル
1b pウェル
2 素子分離層
3 ゲート絶縁膜
4、27、50 ゲート電極
5 ボトム酸化膜
6 窒化膜
7 トップ酸化膜
8 メモリゲート電極
9a、9b エクステンション領域
10、10a、10b、12、91、94 酸化シリコン膜
11、11a、11b、92 窒化シリコン膜
13 ポリシリコン膜
14、14a 低温酸化膜
15a、15b 拡散層
16 シリサイド層
17 エッチングストッパ膜
18、22 層間絶縁膜
19 コンタクトホール
20 コンタクトプラグ
21 ダマシン配線
23 スペーサー
25 酸化膜
26 厚膜ゲート酸化膜
30、33〜36 フォトレジスト膜
31 キャップ絶縁膜
40 半導体チップ
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 EEPROM
45 アナログ回路
60、70 拡散層
WL ワード線
BL1、BL2 ビット線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主面の第1領域に第1MISFETを形成し、前記半導体基板の主面の第2領域に第2MISFETを形成する工程を含む半導体装置の製造方法であって、
(a)前記第1領域の前記半導体基板の主面上に第1ゲート絶縁膜を介して第1ゲート電極を形成する工程と、
(b)前記(a)工程の後、前記第1領域の前記半導体基板の主面に、前記第1MISFETの第1ソース領域および第1ドレイン領域の一部となる第1エクステンション領域を形成する工程と、
(c)前記第2領域の前記半導体基板の主面上に第2ゲート絶縁膜を介して第2ゲート電極を形成する工程と、
(d)前記(c)工程の後、前記第2領域の前記半導体基板の主面に、前記第2MISFETの第2ソース領域および第2ドレイン領域の一部となる第2エクステンション領域を形成する工程と、
(e)前記(a)および(c)工程の後、前記半導体基板の主面の前記第2領域に、前記第2ゲート電極を覆うようにフォトレジスト膜を形成する工程と、
(f)前記(e)工程の後、前記第1領域における前記半導体基板の主面上および前記第1ゲート電極の上面および側壁と、前記第2領域における前記フォトレジスト膜の上面および側壁に第1絶縁膜を形成する工程と、
(g)前記(f)工程の後、前記第1絶縁膜をエッチングし、前記第1ゲート電極の側壁に前記第1絶縁膜からなる第1サイドウォールを形成する工程と、
(h)前記(g)工程の後、前記フォトレジスト膜を除去する工程と、
(i)前記(h)工程の後、前記第1サイドウォールの側壁に第2絶縁膜からなる第2サイドウォールを形成し、前記第2ゲート電極の側壁に前記第2絶縁膜からなる第3サイドウォールをそれぞれ形成する工程と、
(j)前記(i)工程の後、前記第2サイドウォールをマスクとして前記第1領域の前記半導体基板の主面に不純物をイオン注入し、前記第1領域の前記半導体基板の主面に前記第1MISFETの前記第1ソース領域および前記第1ドレイン領域の一部となる第1拡散層を形成する工程と、
(k)前記(i)工程の後、前記第3サイドウォールをマスクとして前記第2領域の前記半導体基板の主面に不純物をイオン注入し、前記第2領域の前記半導体基板の主面に前記第2MISFETの前記第2ソース領域および前記第2ドレイン領域の一部となる第2拡散層を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記(b)工程は前記(e)工程の前に行い、前記(d)工程は前記(e)工程の後に行うことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記(g)工程では、前記第1サイドウォールの上面の高さを前記第1ゲート電極の上面の高さより低く形成し、
前記(i)工程では、前記第1サイドウォールの上面を前記第2サイドウォールにより覆うことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1ゲート絶縁膜は電位障壁膜および前記電位障壁膜上に形成された電位蓄積膜を含み、前記第1MISFETは不揮発性メモリであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1MISFETは、前記第2MISFETよりも高い電圧で作動する高耐圧MISFETであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2サイドウォールおよび前記第3サイドウォールは窒化シリコンを含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記(f)工程において形成される前記第1絶縁膜は酸化シリコンを含み、CVD法またはALD法によって形成され、
前記第1絶縁膜は、100℃以下の温度下で形成される低温酸化膜であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記(e)工程では、前記フォトレジスト膜の側壁を平面形状において直線を折り曲げたジグザグ状または曲線状に形成し、
前記(g)工程では前記フォトレジスト膜の側壁に第4サイドウォールを形成し、
前記第4サイドウォールを平面形状において直線を折り曲げたジグザグ状または曲線状に形成することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1MISFETまたは前記第2MISFETのゲート長方向において、前記第1サイドウォールの第1の幅および前記第2サイドウォールの第2の幅を合わせた第3の幅は、前記第3サイドウォールの第4の幅よりも長いことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記(e)工程において、前記フォトレジスト膜は前記第1領域が露出するように形成することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate


【公開番号】特開2011−96727(P2011−96727A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246785(P2009−246785)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】