半導体装置及びその製造方法
【課題】アンテナ搭載ICチップの小型化、低コスト化を図りつつ、共振周波数の適切な調整を行うことが可能な半導体装置とその製造方法を提供する。
【解決手段】電極3Aを一方の面に有する半導体基板2の一面を覆うように絶縁樹脂層4を形成する。次いで、絶縁樹脂層4が形成された半導体基板2の上に、電極3Aと整合する位置に開口部を形成し、前記電極3Aを露出させる。次に、絶縁樹脂層4の上に、開口部の一つを通して一端5aが電極3Aと電気的に直接接続されるアンテナ本体5、及び図示しない他の開口部を介して一端6aa,6ba,6caが全て、図示しない他の電極と電気的に直接接続される、前記アンテナ本体5の長さを調整する長さの異なる複数の調整部6a,6b,6cを有するアンテナ長調整用配線6をそれぞれ形成することにより、半導体装置1とする。
【解決手段】電極3Aを一方の面に有する半導体基板2の一面を覆うように絶縁樹脂層4を形成する。次いで、絶縁樹脂層4が形成された半導体基板2の上に、電極3Aと整合する位置に開口部を形成し、前記電極3Aを露出させる。次に、絶縁樹脂層4の上に、開口部の一つを通して一端5aが電極3Aと電気的に直接接続されるアンテナ本体5、及び図示しない他の開口部を介して一端6aa,6ba,6caが全て、図示しない他の電極と電気的に直接接続される、前記アンテナ本体5の長さを調整する長さの異なる複数の調整部6a,6b,6cを有するアンテナ長調整用配線6をそれぞれ形成することにより、半導体装置1とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式ICタグなどに用いられる半導体基板上に無線通信用アンテナ配線が一体形成された半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から無線通信用アンテナ配線をICチップ等の半導体基板上に形成することによって小型化、微細化を図ったアンテナ搭載ICチップが提案されている。
特に、近年は非接触式ICタグ用としての用途が急速に拡大しており、アンテナ搭載ICチップの小型化、低コスト化、高機能化がこれまで以上に重要になっている。
【0003】
このような無線通信用アンテナ配線をICチップ上に形成する技術が種々開示されているが、アンテナ搭載ICチップは周波数特性にばらつきがあり、そのままでは通信距離を確保することが困難である。
そのため、チップ外にキャパシタやインダクタなどを設け、これらによって共振周波数の調整があった。具体的には、同じモジュール内に互いに容量(面積)の異なる複数の容量パッドを設けて、その中から適当なパッドを選択することによりインピーダンスを調整する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところが、チップ外のキャパシタやインダクタを用いる場合、アンテナ搭載ICチップ以外にも余分にスペースを取られるので、アンテナ搭載ICチップを使用する非接触式ICタグのような装置の小型化や低コスト化にとって不利である。仮に、チップ内にキャパシタやインダクタを設けても、それらの存在によりアンテナがチップ上で仕えるスペースが制限されるし、作製のために余分な工程が入るので製造コストが上がってしまうことがある。
【0005】
また、共振周波数の調整を行う手段として、いくつか提案されている。
たとえば、誘導基板上に形成された放射導体を構成する導体パターン上の任意の2点間を相互に接続するように、一対または複数のチップ部品実装用の部品取付部を設け、該導体パターン上の2点間にチップ部品を実装することにより放射導体の電気長を変化させ、共振周波数の調整を可能にしたアンテナ装置がある(特許文献2参照)。
また、ベースとなる基板上にミアンダ状のアンテナパターンを形成し、該アンテナパターンの折り返し点間を選択的に繋ぐことにより折り返し周期を調整し、共振周波数を大幅に変更するようにしたアンテナ素子がある(特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2及び特許文献3に記載の技術は、何れもプリント基板に関するものであり、無線通信用アンテナ配線をICチップ等の半導体基板上に搭載して一体形成された半導体装置に関するものではない。また、上記記載の技術は、幅広い周波数範囲において共振周波数の調整を行うことを目的とするものであり、所望の周波数に対するずれを微調整することに対応できるようにしたものではない。しかも、上記記載の技術は、何れも形成されたアンテナパターン内でアンテナ長を調整するものであって、該アンテナパターンのアンテナ長を超えて周波数に対するずれの調整を行うものではないため、半導体装置には到底応用できるものではない。したがって、ICチップの小型化や低コスト化を図りつつ、共振周波数の適切な調整を可能とした手段は、今のところ何ら提案されていない。
【特許文献1】特開2001−53215号公報
【特許文献2】特開2001−332924号公報
【特許文献3】特開2005−5985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、無線通信用アンテナ配線をICチップ等の半導体基板上に形成する半導体装置において、アンテナ搭載ICチップの小型化、低コスト化を図りつつ、共振周波数の適切な調整を行うことが可能な半導体装置とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る半導体装置は、一面に電極が設けられた半導体基板と、該半導体基板の一面を覆うように設けられ、前記電極と整合する位置に開口部を有する絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の一部を覆うように設けられ、前記開口部を通り前記電極と電気的に接続された配線層と、を少なくとも備え、前記配線層は、アンテナ本体をなす第一配線と、前記アンテナ本体の長さを調整する第二配線とを構成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る半導体装置は、請求項1に係る半導体装置において、前記第一配線は、その一端が前記電極の一つと電気的に接続され、また、前記第二配線は、長さの異なる複数の調整部を備え、該調整部を構成する一端が全て、前記電極の他の一つと電気的に接続されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る半導体装置は、請求項2に係る半導体装置において、前記第一配線の他端は、前記第二配線の各調整部を構成する他端の近傍に配置されており、導電性の接続部位により、前記各調整部を構成する他端の一つと電気的に接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る半導体装置は、請求項2に係る半導体装置において、前記絶縁樹脂層、前記第一配線及び前記第二配線を覆い、前記第一配線及び前記第二配線の各他端と整合する位置にそれぞれ開口部を有する封止樹脂層をさらに備え、前記第一配線の他端と前記第二配線の各調整部を構成する他端の一つは、前記封止樹脂層に有するそれぞれの開口部を通り、該封止樹脂層上に配した導電性の接続部位により電気的に接続されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る第一の半導体装置の製造方法は、一面に電極が設けられた半導体基板と、該半導体基板の一面を覆うように設けられ、前記電極と整合する位置に開口部を有する絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の一部を覆うように設けられ、前記開口部を通り前記電極と電気的に接続された配線層と、を少なくとも備え、前記配線層は、アンテナ本体をなす第一配線と、前記アンテナ本体の長さを調整する第二配線とを構成する半導体装置の製造方法であって、一面に電極が設けられた半導体基板を覆うように絶縁樹脂層を形成する工程Aと、前記絶縁樹脂層に、前記電極を露出させる開口部を形成する工程Bと、前記絶縁樹脂層の上に、前記開口部の一つを通り前記電極の一つと電気的に接続されるアンテナ本体をなす第一配線、及び前記開口部の他の一つを通り前記電極の他の一つと電気的に接続され、前記アンテナ本体の長さを調整する長さの異なる複数の調整部を備える第二配線をそれぞれ形成する工程Cと、前記第一配線の周波数特性を測定する工程Dと、前記周波数特性の測定に基づき、結線する第二配線の調整部を選択して前記第一配線と電気的に接続する工程Eと、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に係る第二の半導体装置の製造方法は、前記工程Dと前記工程Eの間に、前記絶縁樹脂層と前記第一配線及び前記第二配線を覆うように封止樹脂層を形成する工程Fと、前記周波数特性の測定に基づき、前記封止樹脂層の所定の位置に開口部を形成する工程Gと、を少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る半導体装置は、半導体基板に設けられた電極と電気的に接続された配線層が、アンテナ本体をなす第一配線と、前記アンテナ本体の長さを調整する第二配線とを構成している。ゆえに、ICチップ等の半導体基板において、アンテナ搭載チップの大きさを変えたり、共振周波数の調整を行うためにチップ外にキャパシタやインダクタを設けたりすることなく、前記第二配線によって前記第一配線のアンテナ長を調整することができる。しかも、共振周波数の調整を行うためのキャパシタやインダクタがないので、チップ上でアンテナ配線を設けるスペースを十分に取ることができ、キャパシタやインダクタの作製のための余分な工程が不要である。
したがって、小型化、低コスト化を図りつつ、適切な共振周波数をもつアンテナを備えた半導体装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明の請求項5に係る半導体装置の製造方法は、一面に電極が設けられた半導体基板を覆うように形成された絶縁樹脂層に、前記電極を露出させる開口部を形成し、さらに、前記絶縁樹脂層の上に、前記開口部の一つを通り前記電極の一つと電気的に接続されるアンテナ本体をなす第一配線、及び前記開口部の他の一つを通り前記電極の他の一つと電気的に接続され、前記アンテナ本体の長さを調整する長さの異なる複数の調整部を備える第二配線をそれぞれ形成し、前記第一配線の周波数特性の測定に基づき、結線する第二配線の調整部を選択して前記第一配線と電気的に接続する構成としたことにより、第一配線と、選択された第二配線の調整部とが電気的に接続された、一つのアンテナを形成できる。ゆえに、一つの半導体基板上に搭載されるアンテナの配線長を適切な共振周波数に調整することが可能な半導体装置を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、半導体装置の第一の構造を示す平面図であり、図2は、その構造を模式的に示す図であって、図1のI−I線における断面図である。なお、後述する実施形態においては、本実施形態と同様の構成部分については同じ符合を用い、その説明は省略することとし、特に説明しない限り同じであるものとする。
【0017】
まず、図1及び図2に示すとおり、本実施形態における第一の構造の半導体装置1は、 その一面に一対の電極3A,3Bが設けられた半導体基板2と、該半導体基板3の一面を覆うように設けられ、前記電極3A,3Bと整合する位置にそれぞれ開口部4aを有する絶縁樹脂層4と、該絶縁樹脂層4の一部を覆うように設けられた第一配線5と第二配線6とを構成する配線層とを少なくとも備えている。
【0018】
半導体基板2は、半導体ウエハをチップ寸法に切断(ダイシング)した半導体チップ(ICチップ)であり、たとえば厚みが500μmをしたウエハ(基板)におけるICチップ領域に、メモリ、CPU及び外部からの入力に応答して信号を発生する半導体回路を有する。半導体基板2は、外部機器と非接触で通信により応答する場合、メモリ内の特定情報を変調してアンテナ回路から出力するように構成されている。
【0019】
電極3A,3Bは、前記半導体基板2の半導体回路に電気的に接続されている。
絶縁樹脂層4は、たとえばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等からなり、その厚さは、たとえば1μm〜30μmとすると良い。この絶縁樹脂層4は、たとえばフォトリソグラフィ技術を利用したパターニングなどにより形成することができる。
【0020】
第一配線5は、アンテナ本体をなす(本実施形態では渦巻き型)アンテナ配線であり(以下、アンテナ本体を符号5で示す)、その一端5aは、前記絶縁樹脂層4に有する開口部4aを通り前記電極3Aと電気的に接続されている。このアンテナ本体5の材料としては、たとえばCuが用いられ、その厚さは、たとえば1μm〜20μmである。
これにより充分な導電性が得られる。このアンテナ本体5はAu等によって形成しても良い。また、アンテナ本体5は、たとえば電解銅メッキ法等のメッキ法などにより形成することができる。
【0021】
また、第二配線6は、前記アンテナ本体の長さを調整するアンテナ長調整用配線であり(以下、アンテナ長調整用配線を符号6で示す)、長さの異なる複数(本実施形態では三つ)の調整部6a,6b,6cを備え、該調整部6a,6b,6cを構成する一端6aa,6ba,6caは全て、前記絶縁樹脂層4に有する開口部4aを介して一つの前記電極3Bと電気的に接続されている。このアンテナ長調整用配線6の材料としては、前記アンテナ本体5と同様、たとえばCuやAu等が用いられ、その厚さは、たとえば1μm〜20μmである。
これにより充分な導電性が得られる。このアンテナ長調整用配線6は、たとえば電解銅メッキ法等のメッキ法などにより形成することができる。
【0022】
また、本実施形態の半導体装置1においては、前記第一配線5の他端5bは、前記第二配線6の各調整部6a,6b,6cを構成する他端6ab,6bb,6cbの近傍に配置されている。
なお、図2では、アンテナ長調整用配線6の三つの調整部6a,6b,6cの各一端6aa,6ba,6caが接続される電極3Bは示されていないが、奥行き方向に有する。以下、本発明の半導体装置の構造を模式的に示す断面図において同様とする。
【0023】
以上のように構成された半導体装置1は、アンテナ本体5の周波数特性を測定し、その結果から、所望の共振周波数を得るためのアンテナ長を算出し、アンテナ本体5の他端5bと、算出したアンテナ長を有するアンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cの一つとを、導電性の接続部材により電気的に接続することで、一つのアンテナを構成する。
【0024】
この際、アンテナ本体5の他端5bと電気的に接続するアンテナ長調整用配線6の調整部6a,6b,6cの一つの選択は、次のようにして行うことができる。
まず、アンテナ本体5の両端5a,5bとなるプロービング点で周波数特性を測定する。図3は、本実施形態の半導体装置1における周波数特性の測定結果であり、VSWR(Voltage Stainding Wave Ratio:電圧定在波比)−周波数の関係を示す。この図において、実線は実測値である。図3に示すように、測定結果は所望の共振周波数に対して高周波側(図では右側)にずれている。
【0025】
次に、測定したアンテナ本体5のアンテナ長と、測定した共振周波数と、前記アンテナ本体5とアンテナ長調整用配線の各調整部6a,6b,6cの一つとを結線した時の総アンテナ長を使って、周波数特性をそれぞれ予測する。この図において、三つの点線はそれぞれの予測値である。
【0026】
そして、図3に示すように、アンテナ長が一番長い調整部6aをアンテナとしたときに、所望の共振周波数が得られるとの予測が得られる。したがって、アンテナ本体5の他端5bとアンテナ長調整用配線6の調整部6aとを、導電性の接続部材により電気的に接続することで、所望の共振周波数が得られるアンテナを構成することができる。
【0027】
このように、本実施形態の半導体装置は、インピーダンス調整用のアンテナ長調整用配線6を予め設けておくことによって、個々のアンテナ特性に応じて調整部6a,6b,6cの一つを選択してアンテナ本体5のアンテナ長を調整することができ、共振周波数の適切な調整を可能としたものである。
したがって、本発明の半導体装置は、キャパシタやインダクタンスによらずアンテナ長の調整のみで、ICチップの小型化や低コスト化を図りつつ、所望の共振周波数を得ることができるものである。しかも、その作業性は容易なものである。
【0028】
また、本発明の半導体装置は、図4及び図5に示すように構成することもできる。
図4は、半導体装置の第二の構造の第一例を示す平面図であり、図5は、その構造を模式的に示す図であって、図4のII−II線における断面図である。
図4及び図5に示すとおり、本実施形態における第二の構造の第一例を示す半導体装置11Aは、その一面に一対の電極3A,3Bが設けられた半導体基板2と、該半導体基板2の一面を覆うように設けられ、前記電極3A,3Bと整合する位置にそれぞれ開口部4aを有する絶縁樹脂層4と、該絶縁樹脂層4の一部を覆うように設けられた第一配線としてのアンテナ本体5、及び第二配線としてのアンテナ長調整用配線6を構成する配線層とを備えている。さらに、半導体装置11Aは、前記アンテナ本体5及び前記アンテナ長調整用配線6を覆うように設けられ、前記アンテナ本体5とアンテナ長調整用配線6の所定の位置と整合する位置にそれぞれ開口部7b,7cを有する封止樹脂層7と、前記開口部7bを介して形成されたバンプ8、及び前記開口部7cを介してそれぞれ形成されたバンプ9a,9b,9cを少なくとも備えている。
すなわち、図4及び図5は、封止樹脂とバンプを形成した後の平面図と断面図である。
【0029】
封止樹脂層7は、断線やショートを避けるための絶縁層であり、前記アンテナ本体5及び前記アンテナ長調整用配線6の各他端5b,6a,6b,6cと整合する位置にそれぞれ開口部7b又は7cを有する。また、封止樹脂層7は、前記絶縁樹脂層4と同様、たとえばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等からなり、その厚さは、たとえば1μm〜30μmとすると良い。この絶縁樹脂層7は、たとえばフォトリソグラフィ技術を利用したパターニングなどにより形成することができる。
【0030】
バンプ8は、導電性の接続部材であり、アンテナ本体5の他端5bに前記封止樹脂層7に有する開口部7bを介して形成されている。
また、バンプ9a,9b,9cも、導電性の接続部材であり、アンテナ長調整用配線6の各他端6a,6b,6cに前記封止樹脂層7に有する開口部7cを介してそれぞれ形成されている。
そして、本実施形態の半導体装置11Aにおいても、前記アンテナ本体5の他端5bは、前記アンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cを構成する他端6ab,6bb,6cbの近傍に配置されている。
【0031】
この際、結合するバンプ同士が離れていると結合しにくいし、近すぎると必要の無いバンプまで一緒に結合してしまうことがあるので、バンプ形成用の開口部7b,7c同士の距離は、たとえば開口部直径の0.5〜2倍とするのが望ましい。
これにより、アンテナ本体5の他端5bとアンテナ長調整用配線6の他端6a,6b,6cの一つとは、封止樹脂層7の所定の位置に設けられた開口部7b,7cを介して接続されるため、他回路へのショートなどの悪影響を抑制することができる。
【0032】
以上のように構成された半導体装置11Aでは、前記封止樹脂層7を形成する前に、アンテナ本体5の周波数特性を測定し、その結果から、所望の共振周波数を得るためのアンテナ長を算出しておき、前記封止樹脂層7の形成後に、アンテナ本体5の他端5bと、算出したアンテナ長を有するアンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cの一つとを、導電性の接続部材により電気的に接続することで、一つのアンテナを構成する。
【0033】
また、本発明の半導体装置では、前記封止樹脂層7の形成後に、アンテナ本体5の周波数特性を測定し、その結果から、所望の共振周波数を得るためのアンテナ長を算出して、アンテナ本体5の他端5bと、算出したアンテナ長を有するアンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cの一つとを、導電性の接続部材により電気的に接続することで、一つのアンテナを構成することもできる。
【0034】
図6は、本発明に係る半導体装置の第二の構造の第二例を示す断面図であり、図4のII−II線に相当する断面図である。
図6に示すとおり、本実施形態における第二の構造の第二例を示す半導体装置11Bは、その一面に一対の電極3A,3Bが設けられた半導体基板2と、該半導体基板3の一面を覆うように設けられ、前記電極3A,3Bと整合する位置にそれぞれ開口部4aを有する絶縁樹脂層4と、該絶縁樹脂層4の一部を覆うように設けられたアンテナ本体5とアンテナ長調整用配線6とを構成する配線層と、前記絶縁樹脂層、前記アンテナ本体及び前記アンテナ長調整用配線を覆う封止樹脂層7とを少なくとも備え、前記アンテナ本体の一端と整合する位置に開口部7aを有する。
【0035】
このアンテナ本体5の他端5bには、前記封止樹脂層7に有する開口部7bを介して、導電性の接続部材であるバンプ8が設けられている。また、アンテナ長調整用配線6の各他端6a,6b,6cにも、前記封止樹脂層7に有する開口部7cを介して、導電性の接続部材であるバンプ9a,9b,9cがそれぞれ設けられている。
したがって、本実施形態の半導体装置11Bでは、開口部7aを介して露出するアンテナ本体5の一端5aと、アンテナ本体5の他端5bに開口部7bを介して設けられたバンプ8をプロービング点とすることにより、周波数特性を測定することができる。
【0036】
また、本発明の半導体装置は、図7及び図8に示すように構成することもできる。
図7は、半導体装置の第二の構造の第三例を示す平面図であり、図8は、その構造を模式的に示す図であって、図7のIII−III線における断面図である。
図7及び図8に示すとおり、本実施形態における第二の構造の第三例を示す半導体装置11Cは、その一面に一対の電極3A,3Bが設けられた半導体基板2と、該半導体基板2の一面を覆うように設けられ、前記電極3A,3Bと整合する位置にそれぞれ開口部4aを有する絶縁樹脂層4と、該絶縁樹脂層4の一部を覆うように設けられたアンテナ本体5とアンテナ長調整用配線6とを構成する配線層とを備えている。さらに、半導体装置11Cは、前記絶縁樹脂層、前記アンテナ本体5及び前記アンテナ長調整用配線6を覆う封止樹脂層7と、前記封止樹脂層7に有する開口部7bを介して設けられた導電性の接続部材であるバンプ8、前記封止樹脂層7に有する開口部7cを介してそれぞれ設けられた導電性の接続部材であるバンプ9a,9b,9c、及び前記バンプ8とバンプ9aとを電気的に接続する接続部位10を少なくとも備えている。
すなわち、図7及び図8は、アンテナ本体5とアンテナ長調整用配線6とを、バンプ8,9aによって結線した平面図と断面図である。
【0037】
導電性の接続部位10は、たとえばバンプ8,9a,9b,9cと同じ導電性の接続部材よりなる。
この本実施形態の半導体装置11Cにおいても、前記アンテナ本体5の他端5bは、前記アンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cを構成する他端6ab,6bb,6cbの近傍に配置されている。
また、バンプ8は、アンテナ本体5の他端5bに、前記封止樹脂層7に有する開口部7bを介して設けられ、バンプ9a,9b,9cは、アンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cを構成する他端6ab,6bb,6cbに、前記封止樹脂層7に有する開口部7cを介してそれぞれ設けられる。
【0038】
したがって、半導体装置11Cでは、前記封止樹脂層7を形成する前に、アンテナ本体5の周波数特性を測定し、その結果から、所望の共振周波数を得るためのアンテナ長を算出しておき、前記封止樹脂層7の形成後に、前記バンプ8と、算出したアンテナ長を有するアンテナ長調整用配線6の調整部(本実施形態では6a)に開口部7cを介して設けられたバンプ9aとを、前記接続部位10により電気的に接続する。
これにより、所望の共振周波数が得られるアンテナが構成される。
【0039】
次に、本発明における第一の構造の半導体装置の製造方法の一例について説明する。
図9及び図10は、本発明による第一の構造の半導体装置を製造する工程の一例を示す断面図である。
まず、図9に示すように、半導体基板2を用意する[(a)参照]。この半導体基板2としては、たとえば、表面に電極3Aを有するICチップがある。図中電極3Aは一つしか示されていないが、奥行き方向に対となる電極をもう一つ有する。
次いで、一面に電極が設けられた半導体基板を覆うように絶縁樹脂層4を形成する[(b)参照]。絶縁樹脂層4は、たとえばポリイミド系、エポキシ系又はシリコーン系の液状樹脂からなり、その厚さは、たとえば10μm程度である。絶縁樹脂層4に使われる材料は感光性をもち、フォトリソグラフィ技術を利用してパターニングすることができる。
次に、絶縁樹脂層4が形成された半導体基板2の上に、フォトリソグラフィ技術等を利用したパターニングなどにより、前記電極3Aと整合する位置に開口部4aを形成し、前記電極3Aを露出させる[(c)参照]。
【0040】
そして、図10に示すように、前記絶縁樹脂層4の上に、前記開口部4aの一つを介して一端5aが前記電極3Aと電気的に直接接続されるアンテナ本体5、及び図示しない他の開口部を介して一端6aa,6ba,6caが図示しない他の電極と電気的に直接接続されるアンテナ長調整用配線6の長さの異なる各調整部6a,6b,6cをそれぞれ形成する[(d)参照]。これにより、図1及び図2に示す本実施形態における第一の構造の半導体装置1とすることができる。
また、この半導体装置1において、アンテナ本体5の一端5aと他端5bをプロービングして周波数特性を測定し、その結果から所望の共振周波数を得るためのアンテナ長を算出する。
【0041】
次に、前記絶縁樹脂層4、前記アンテナ本体5及び前記アンテナ長調整用配線を覆うように封止樹脂層7を形成する[(e)参照]。この封止樹脂層7は、たとえば、前記絶縁樹脂層4と同様、ポリイミド系、エポキシ系又はシリコーン系の液状樹脂により形成することができるので、詳しい説明は省略する。
次いで、前記封止樹脂層7に、フォトリソグラフィ技術等を利用したパターニングなどにより、前記アンテナ本体5の他端5bと整合する位置に開口部7bを形成すると共に、前記アンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cを構成する他端6ab,6bb,6cbと整合する位置に開口部7cをそれぞれ形成する[(f)参照]。
【0042】
そして、前記開口部7bを介してバンプ8を形成すると共に、前記開口部7cを介してバンプ9a,9b,9cをそれぞれ形成することで、図4及び図5に示す本実施形態における第一の構造の第一例の半導体装置11Aとすることができる。
なお、前記封止樹脂層7に、前記アンテナ本体5の一端5aと整合する位置に開口部7aを形成しておけば、図6に示す本実施形態における第一の構造の第二例の半導体装置11Bとすることができる。
【0043】
次いで、先の周波数特性の測定に基づき、算出されたアンテナ長となるように、結線する前記アンテナ長調整用配線6の調整部6a,6b,6cの一つを選択し、前記アンテナ本体5の他端5bと導電性の接続部材により電気的に接続する(すなわち、バンプ同士を結合する)ことで、図7及び図8に示す本実施形態における第一の構造の第三例の半導体装置11Cとすることができる。
【0044】
このように、アンテナ本体の周波数特性の測定に基づいて接続点を選択することが可能であるため、アンテナ長調整用配線に備えられた長さの異なる複数の調整部によって、一つの半導体基板上に搭載されるアンテナの配線長を適切な共振周波数に調整することが可能な半導体装置を容易に製造することができる。
したがって、小型化を図りつつ、適切な共振周波数をもつアンテナを備えた半導体装置を提供することができる。
【0045】
また、本発明においてアンテナ本体のパターンは、前記第一の構造のように渦巻状に限らず、一方の縁部側から他方の縁部側に向かって当該基板の一面と直交する方向に略螺旋(スパイラル)型に形成されたものとすることもできる。
図11は、半導体装置の第二の構造の第四例を示す平面図であり、図12は、その構造を模式的に示す図であって、図11のIV−IV線における断面図である。
図11及び図12に示すとおり、本実施形態における第二の構造の半導体装置21は、 その一面に一対の電極3A,3Bが設けられた半導体基板2と、該半導体基板2の一面を覆うように設けられ、前記電極3A,3Bと整合する位置にそれぞれ開口部を有する第一絶縁樹脂層4Aと、該第一絶縁樹脂層4Aの一部を覆うように設けられた第一アンテナ配線15Aと、前記第一絶縁樹脂層4A及び前記第一アンテナ配線15Aを覆うように設けられ、前記電極3A,3Bと整合する位置にそれぞれ開口部を有する第二絶縁樹脂層4Bと、該第二絶縁樹脂層4Bの一部を覆うように設けられた第二アンテナ配線15Bとを備えている。さらに、半導体装置21は、前記第二絶縁樹脂層4B及び前記第二アンテナ配線15Bを覆う封止樹脂層7と、前記封止樹脂層7に有する開口部7bを介して設けられた導電性の接続部材であるバンプ8、前記封止樹脂層7に有する開口部7cを介してそれぞれ設けられた導電性の接続部材であるバンプ9a,9b,9cを少なくとも備えている。
【0046】
第一アンテナ配線15Aと第二アンテナ配線15Bは、共にアンテナ配線であり、両者15A,15Bによってアンテナ本体15を構成している。すなわち、一方の縁部側から他方の縁部側に向かって、互いに前記アンテナ配線15A,15Bの一端と他端とを連続して接続することで、一つのアンテナを形成する。また、アンテナ本体15は、その一端15aが、前記第一絶縁樹脂層4A及び前記第二絶縁樹脂層4Bに有する開口部を介して前記電極3Aと電気的にされている。
【0047】
バンプ8は、導電性の接続部材であり、アンテナ本体15の他端15bに前記封止樹脂層7に有する開口部7bを介して形成されている。
また、バンプ9a,9b,9cも、導電性の接続部材であり、アンテナ長調整用配線6の各他端6a,6b,6cに前記封止樹脂層7に有する開口部7cを介してそれぞれ形成されている。
そして、本実施形態の半導体装置21においても、前記アンテナ本体15の他端15bは、前記アンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cを構成する他端6ab,6bb,6cbの近傍に配置されている。
【0048】
したがって、半導体装置21によっても、前記封止樹脂層7を形成する前後いずれかに、アンテナ本体15の周波数特性を測定し、その結果から、所望の共振周波数を得るためのアンテナ長を算出しておき、前記封止樹脂層7の形成後に、前記バンプ8と、算出したアンテナ長を有するアンテナ長調整用配線6の調整部6aに開口部7cを介して設けられたバンプ9aとを、導電性の接続部材により電気的に接続することで、所望の共振周波数が得られるアンテナが構成される。
そして、本実施形態の第二の構造の半導体装置21では、前記第一の構造の半導体装置1または11とは磁束の方向が互いに異なる、特定の方向に感度を有する半導体装置とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、無線通信用アンテナ配線をICチップ等の半導体基板上に搭載する、たとえば非接触ICタグなどの各種半導体装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る半導体装置の第一の構造を示す平面図である。
【図2】図1のI−I線における断面図である。
【図3】図1に示した半導体装置において測定したVSWR(電圧定在波比)と周波数との関係を示す図である。
【図4】本発明に係る半導体装置の第二の構造の第一例を示す平面図である。
【図5】図4のII−II線における断面図である。
【図6】本発明に係る半導体装置の第二の構造の第二例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る半導体装置の第二の構造の第三例を示す平面図である。
【図8】図7のIII−III線における断面図である。
【図9】本発明に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
【図10】図9に示した工程に続く、製造工程の一例を示す断面図である。
【図11】本発明に係る半導体装置の第二の構造の第四例を示す平面図である。
【図12】図11のIV−IV線における断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1,11(11A,11B,11C),21 半導体装置、2 半導体基板(ICチップ)、3(3A,B3) 電極、4(4A,4B) 絶縁樹脂層、5,15 第一配線(アンテナ本体)、6(6a,6b,6c) 第二配線(アンテナ長調整用配線)、7 封止樹脂層、8 バンプ、9a,9b,9c バンプ、10 導電性接続部位。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式ICタグなどに用いられる半導体基板上に無線通信用アンテナ配線が一体形成された半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から無線通信用アンテナ配線をICチップ等の半導体基板上に形成することによって小型化、微細化を図ったアンテナ搭載ICチップが提案されている。
特に、近年は非接触式ICタグ用としての用途が急速に拡大しており、アンテナ搭載ICチップの小型化、低コスト化、高機能化がこれまで以上に重要になっている。
【0003】
このような無線通信用アンテナ配線をICチップ上に形成する技術が種々開示されているが、アンテナ搭載ICチップは周波数特性にばらつきがあり、そのままでは通信距離を確保することが困難である。
そのため、チップ外にキャパシタやインダクタなどを設け、これらによって共振周波数の調整があった。具体的には、同じモジュール内に互いに容量(面積)の異なる複数の容量パッドを設けて、その中から適当なパッドを選択することによりインピーダンスを調整する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところが、チップ外のキャパシタやインダクタを用いる場合、アンテナ搭載ICチップ以外にも余分にスペースを取られるので、アンテナ搭載ICチップを使用する非接触式ICタグのような装置の小型化や低コスト化にとって不利である。仮に、チップ内にキャパシタやインダクタを設けても、それらの存在によりアンテナがチップ上で仕えるスペースが制限されるし、作製のために余分な工程が入るので製造コストが上がってしまうことがある。
【0005】
また、共振周波数の調整を行う手段として、いくつか提案されている。
たとえば、誘導基板上に形成された放射導体を構成する導体パターン上の任意の2点間を相互に接続するように、一対または複数のチップ部品実装用の部品取付部を設け、該導体パターン上の2点間にチップ部品を実装することにより放射導体の電気長を変化させ、共振周波数の調整を可能にしたアンテナ装置がある(特許文献2参照)。
また、ベースとなる基板上にミアンダ状のアンテナパターンを形成し、該アンテナパターンの折り返し点間を選択的に繋ぐことにより折り返し周期を調整し、共振周波数を大幅に変更するようにしたアンテナ素子がある(特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2及び特許文献3に記載の技術は、何れもプリント基板に関するものであり、無線通信用アンテナ配線をICチップ等の半導体基板上に搭載して一体形成された半導体装置に関するものではない。また、上記記載の技術は、幅広い周波数範囲において共振周波数の調整を行うことを目的とするものであり、所望の周波数に対するずれを微調整することに対応できるようにしたものではない。しかも、上記記載の技術は、何れも形成されたアンテナパターン内でアンテナ長を調整するものであって、該アンテナパターンのアンテナ長を超えて周波数に対するずれの調整を行うものではないため、半導体装置には到底応用できるものではない。したがって、ICチップの小型化や低コスト化を図りつつ、共振周波数の適切な調整を可能とした手段は、今のところ何ら提案されていない。
【特許文献1】特開2001−53215号公報
【特許文献2】特開2001−332924号公報
【特許文献3】特開2005−5985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、無線通信用アンテナ配線をICチップ等の半導体基板上に形成する半導体装置において、アンテナ搭載ICチップの小型化、低コスト化を図りつつ、共振周波数の適切な調整を行うことが可能な半導体装置とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る半導体装置は、一面に電極が設けられた半導体基板と、該半導体基板の一面を覆うように設けられ、前記電極と整合する位置に開口部を有する絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の一部を覆うように設けられ、前記開口部を通り前記電極と電気的に接続された配線層と、を少なくとも備え、前記配線層は、アンテナ本体をなす第一配線と、前記アンテナ本体の長さを調整する第二配線とを構成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る半導体装置は、請求項1に係る半導体装置において、前記第一配線は、その一端が前記電極の一つと電気的に接続され、また、前記第二配線は、長さの異なる複数の調整部を備え、該調整部を構成する一端が全て、前記電極の他の一つと電気的に接続されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る半導体装置は、請求項2に係る半導体装置において、前記第一配線の他端は、前記第二配線の各調整部を構成する他端の近傍に配置されており、導電性の接続部位により、前記各調整部を構成する他端の一つと電気的に接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る半導体装置は、請求項2に係る半導体装置において、前記絶縁樹脂層、前記第一配線及び前記第二配線を覆い、前記第一配線及び前記第二配線の各他端と整合する位置にそれぞれ開口部を有する封止樹脂層をさらに備え、前記第一配線の他端と前記第二配線の各調整部を構成する他端の一つは、前記封止樹脂層に有するそれぞれの開口部を通り、該封止樹脂層上に配した導電性の接続部位により電気的に接続されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る第一の半導体装置の製造方法は、一面に電極が設けられた半導体基板と、該半導体基板の一面を覆うように設けられ、前記電極と整合する位置に開口部を有する絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の一部を覆うように設けられ、前記開口部を通り前記電極と電気的に接続された配線層と、を少なくとも備え、前記配線層は、アンテナ本体をなす第一配線と、前記アンテナ本体の長さを調整する第二配線とを構成する半導体装置の製造方法であって、一面に電極が設けられた半導体基板を覆うように絶縁樹脂層を形成する工程Aと、前記絶縁樹脂層に、前記電極を露出させる開口部を形成する工程Bと、前記絶縁樹脂層の上に、前記開口部の一つを通り前記電極の一つと電気的に接続されるアンテナ本体をなす第一配線、及び前記開口部の他の一つを通り前記電極の他の一つと電気的に接続され、前記アンテナ本体の長さを調整する長さの異なる複数の調整部を備える第二配線をそれぞれ形成する工程Cと、前記第一配線の周波数特性を測定する工程Dと、前記周波数特性の測定に基づき、結線する第二配線の調整部を選択して前記第一配線と電気的に接続する工程Eと、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に係る第二の半導体装置の製造方法は、前記工程Dと前記工程Eの間に、前記絶縁樹脂層と前記第一配線及び前記第二配線を覆うように封止樹脂層を形成する工程Fと、前記周波数特性の測定に基づき、前記封止樹脂層の所定の位置に開口部を形成する工程Gと、を少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る半導体装置は、半導体基板に設けられた電極と電気的に接続された配線層が、アンテナ本体をなす第一配線と、前記アンテナ本体の長さを調整する第二配線とを構成している。ゆえに、ICチップ等の半導体基板において、アンテナ搭載チップの大きさを変えたり、共振周波数の調整を行うためにチップ外にキャパシタやインダクタを設けたりすることなく、前記第二配線によって前記第一配線のアンテナ長を調整することができる。しかも、共振周波数の調整を行うためのキャパシタやインダクタがないので、チップ上でアンテナ配線を設けるスペースを十分に取ることができ、キャパシタやインダクタの作製のための余分な工程が不要である。
したがって、小型化、低コスト化を図りつつ、適切な共振周波数をもつアンテナを備えた半導体装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明の請求項5に係る半導体装置の製造方法は、一面に電極が設けられた半導体基板を覆うように形成された絶縁樹脂層に、前記電極を露出させる開口部を形成し、さらに、前記絶縁樹脂層の上に、前記開口部の一つを通り前記電極の一つと電気的に接続されるアンテナ本体をなす第一配線、及び前記開口部の他の一つを通り前記電極の他の一つと電気的に接続され、前記アンテナ本体の長さを調整する長さの異なる複数の調整部を備える第二配線をそれぞれ形成し、前記第一配線の周波数特性の測定に基づき、結線する第二配線の調整部を選択して前記第一配線と電気的に接続する構成としたことにより、第一配線と、選択された第二配線の調整部とが電気的に接続された、一つのアンテナを形成できる。ゆえに、一つの半導体基板上に搭載されるアンテナの配線長を適切な共振周波数に調整することが可能な半導体装置を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、半導体装置の第一の構造を示す平面図であり、図2は、その構造を模式的に示す図であって、図1のI−I線における断面図である。なお、後述する実施形態においては、本実施形態と同様の構成部分については同じ符合を用い、その説明は省略することとし、特に説明しない限り同じであるものとする。
【0017】
まず、図1及び図2に示すとおり、本実施形態における第一の構造の半導体装置1は、 その一面に一対の電極3A,3Bが設けられた半導体基板2と、該半導体基板3の一面を覆うように設けられ、前記電極3A,3Bと整合する位置にそれぞれ開口部4aを有する絶縁樹脂層4と、該絶縁樹脂層4の一部を覆うように設けられた第一配線5と第二配線6とを構成する配線層とを少なくとも備えている。
【0018】
半導体基板2は、半導体ウエハをチップ寸法に切断(ダイシング)した半導体チップ(ICチップ)であり、たとえば厚みが500μmをしたウエハ(基板)におけるICチップ領域に、メモリ、CPU及び外部からの入力に応答して信号を発生する半導体回路を有する。半導体基板2は、外部機器と非接触で通信により応答する場合、メモリ内の特定情報を変調してアンテナ回路から出力するように構成されている。
【0019】
電極3A,3Bは、前記半導体基板2の半導体回路に電気的に接続されている。
絶縁樹脂層4は、たとえばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等からなり、その厚さは、たとえば1μm〜30μmとすると良い。この絶縁樹脂層4は、たとえばフォトリソグラフィ技術を利用したパターニングなどにより形成することができる。
【0020】
第一配線5は、アンテナ本体をなす(本実施形態では渦巻き型)アンテナ配線であり(以下、アンテナ本体を符号5で示す)、その一端5aは、前記絶縁樹脂層4に有する開口部4aを通り前記電極3Aと電気的に接続されている。このアンテナ本体5の材料としては、たとえばCuが用いられ、その厚さは、たとえば1μm〜20μmである。
これにより充分な導電性が得られる。このアンテナ本体5はAu等によって形成しても良い。また、アンテナ本体5は、たとえば電解銅メッキ法等のメッキ法などにより形成することができる。
【0021】
また、第二配線6は、前記アンテナ本体の長さを調整するアンテナ長調整用配線であり(以下、アンテナ長調整用配線を符号6で示す)、長さの異なる複数(本実施形態では三つ)の調整部6a,6b,6cを備え、該調整部6a,6b,6cを構成する一端6aa,6ba,6caは全て、前記絶縁樹脂層4に有する開口部4aを介して一つの前記電極3Bと電気的に接続されている。このアンテナ長調整用配線6の材料としては、前記アンテナ本体5と同様、たとえばCuやAu等が用いられ、その厚さは、たとえば1μm〜20μmである。
これにより充分な導電性が得られる。このアンテナ長調整用配線6は、たとえば電解銅メッキ法等のメッキ法などにより形成することができる。
【0022】
また、本実施形態の半導体装置1においては、前記第一配線5の他端5bは、前記第二配線6の各調整部6a,6b,6cを構成する他端6ab,6bb,6cbの近傍に配置されている。
なお、図2では、アンテナ長調整用配線6の三つの調整部6a,6b,6cの各一端6aa,6ba,6caが接続される電極3Bは示されていないが、奥行き方向に有する。以下、本発明の半導体装置の構造を模式的に示す断面図において同様とする。
【0023】
以上のように構成された半導体装置1は、アンテナ本体5の周波数特性を測定し、その結果から、所望の共振周波数を得るためのアンテナ長を算出し、アンテナ本体5の他端5bと、算出したアンテナ長を有するアンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cの一つとを、導電性の接続部材により電気的に接続することで、一つのアンテナを構成する。
【0024】
この際、アンテナ本体5の他端5bと電気的に接続するアンテナ長調整用配線6の調整部6a,6b,6cの一つの選択は、次のようにして行うことができる。
まず、アンテナ本体5の両端5a,5bとなるプロービング点で周波数特性を測定する。図3は、本実施形態の半導体装置1における周波数特性の測定結果であり、VSWR(Voltage Stainding Wave Ratio:電圧定在波比)−周波数の関係を示す。この図において、実線は実測値である。図3に示すように、測定結果は所望の共振周波数に対して高周波側(図では右側)にずれている。
【0025】
次に、測定したアンテナ本体5のアンテナ長と、測定した共振周波数と、前記アンテナ本体5とアンテナ長調整用配線の各調整部6a,6b,6cの一つとを結線した時の総アンテナ長を使って、周波数特性をそれぞれ予測する。この図において、三つの点線はそれぞれの予測値である。
【0026】
そして、図3に示すように、アンテナ長が一番長い調整部6aをアンテナとしたときに、所望の共振周波数が得られるとの予測が得られる。したがって、アンテナ本体5の他端5bとアンテナ長調整用配線6の調整部6aとを、導電性の接続部材により電気的に接続することで、所望の共振周波数が得られるアンテナを構成することができる。
【0027】
このように、本実施形態の半導体装置は、インピーダンス調整用のアンテナ長調整用配線6を予め設けておくことによって、個々のアンテナ特性に応じて調整部6a,6b,6cの一つを選択してアンテナ本体5のアンテナ長を調整することができ、共振周波数の適切な調整を可能としたものである。
したがって、本発明の半導体装置は、キャパシタやインダクタンスによらずアンテナ長の調整のみで、ICチップの小型化や低コスト化を図りつつ、所望の共振周波数を得ることができるものである。しかも、その作業性は容易なものである。
【0028】
また、本発明の半導体装置は、図4及び図5に示すように構成することもできる。
図4は、半導体装置の第二の構造の第一例を示す平面図であり、図5は、その構造を模式的に示す図であって、図4のII−II線における断面図である。
図4及び図5に示すとおり、本実施形態における第二の構造の第一例を示す半導体装置11Aは、その一面に一対の電極3A,3Bが設けられた半導体基板2と、該半導体基板2の一面を覆うように設けられ、前記電極3A,3Bと整合する位置にそれぞれ開口部4aを有する絶縁樹脂層4と、該絶縁樹脂層4の一部を覆うように設けられた第一配線としてのアンテナ本体5、及び第二配線としてのアンテナ長調整用配線6を構成する配線層とを備えている。さらに、半導体装置11Aは、前記アンテナ本体5及び前記アンテナ長調整用配線6を覆うように設けられ、前記アンテナ本体5とアンテナ長調整用配線6の所定の位置と整合する位置にそれぞれ開口部7b,7cを有する封止樹脂層7と、前記開口部7bを介して形成されたバンプ8、及び前記開口部7cを介してそれぞれ形成されたバンプ9a,9b,9cを少なくとも備えている。
すなわち、図4及び図5は、封止樹脂とバンプを形成した後の平面図と断面図である。
【0029】
封止樹脂層7は、断線やショートを避けるための絶縁層であり、前記アンテナ本体5及び前記アンテナ長調整用配線6の各他端5b,6a,6b,6cと整合する位置にそれぞれ開口部7b又は7cを有する。また、封止樹脂層7は、前記絶縁樹脂層4と同様、たとえばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等からなり、その厚さは、たとえば1μm〜30μmとすると良い。この絶縁樹脂層7は、たとえばフォトリソグラフィ技術を利用したパターニングなどにより形成することができる。
【0030】
バンプ8は、導電性の接続部材であり、アンテナ本体5の他端5bに前記封止樹脂層7に有する開口部7bを介して形成されている。
また、バンプ9a,9b,9cも、導電性の接続部材であり、アンテナ長調整用配線6の各他端6a,6b,6cに前記封止樹脂層7に有する開口部7cを介してそれぞれ形成されている。
そして、本実施形態の半導体装置11Aにおいても、前記アンテナ本体5の他端5bは、前記アンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cを構成する他端6ab,6bb,6cbの近傍に配置されている。
【0031】
この際、結合するバンプ同士が離れていると結合しにくいし、近すぎると必要の無いバンプまで一緒に結合してしまうことがあるので、バンプ形成用の開口部7b,7c同士の距離は、たとえば開口部直径の0.5〜2倍とするのが望ましい。
これにより、アンテナ本体5の他端5bとアンテナ長調整用配線6の他端6a,6b,6cの一つとは、封止樹脂層7の所定の位置に設けられた開口部7b,7cを介して接続されるため、他回路へのショートなどの悪影響を抑制することができる。
【0032】
以上のように構成された半導体装置11Aでは、前記封止樹脂層7を形成する前に、アンテナ本体5の周波数特性を測定し、その結果から、所望の共振周波数を得るためのアンテナ長を算出しておき、前記封止樹脂層7の形成後に、アンテナ本体5の他端5bと、算出したアンテナ長を有するアンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cの一つとを、導電性の接続部材により電気的に接続することで、一つのアンテナを構成する。
【0033】
また、本発明の半導体装置では、前記封止樹脂層7の形成後に、アンテナ本体5の周波数特性を測定し、その結果から、所望の共振周波数を得るためのアンテナ長を算出して、アンテナ本体5の他端5bと、算出したアンテナ長を有するアンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cの一つとを、導電性の接続部材により電気的に接続することで、一つのアンテナを構成することもできる。
【0034】
図6は、本発明に係る半導体装置の第二の構造の第二例を示す断面図であり、図4のII−II線に相当する断面図である。
図6に示すとおり、本実施形態における第二の構造の第二例を示す半導体装置11Bは、その一面に一対の電極3A,3Bが設けられた半導体基板2と、該半導体基板3の一面を覆うように設けられ、前記電極3A,3Bと整合する位置にそれぞれ開口部4aを有する絶縁樹脂層4と、該絶縁樹脂層4の一部を覆うように設けられたアンテナ本体5とアンテナ長調整用配線6とを構成する配線層と、前記絶縁樹脂層、前記アンテナ本体及び前記アンテナ長調整用配線を覆う封止樹脂層7とを少なくとも備え、前記アンテナ本体の一端と整合する位置に開口部7aを有する。
【0035】
このアンテナ本体5の他端5bには、前記封止樹脂層7に有する開口部7bを介して、導電性の接続部材であるバンプ8が設けられている。また、アンテナ長調整用配線6の各他端6a,6b,6cにも、前記封止樹脂層7に有する開口部7cを介して、導電性の接続部材であるバンプ9a,9b,9cがそれぞれ設けられている。
したがって、本実施形態の半導体装置11Bでは、開口部7aを介して露出するアンテナ本体5の一端5aと、アンテナ本体5の他端5bに開口部7bを介して設けられたバンプ8をプロービング点とすることにより、周波数特性を測定することができる。
【0036】
また、本発明の半導体装置は、図7及び図8に示すように構成することもできる。
図7は、半導体装置の第二の構造の第三例を示す平面図であり、図8は、その構造を模式的に示す図であって、図7のIII−III線における断面図である。
図7及び図8に示すとおり、本実施形態における第二の構造の第三例を示す半導体装置11Cは、その一面に一対の電極3A,3Bが設けられた半導体基板2と、該半導体基板2の一面を覆うように設けられ、前記電極3A,3Bと整合する位置にそれぞれ開口部4aを有する絶縁樹脂層4と、該絶縁樹脂層4の一部を覆うように設けられたアンテナ本体5とアンテナ長調整用配線6とを構成する配線層とを備えている。さらに、半導体装置11Cは、前記絶縁樹脂層、前記アンテナ本体5及び前記アンテナ長調整用配線6を覆う封止樹脂層7と、前記封止樹脂層7に有する開口部7bを介して設けられた導電性の接続部材であるバンプ8、前記封止樹脂層7に有する開口部7cを介してそれぞれ設けられた導電性の接続部材であるバンプ9a,9b,9c、及び前記バンプ8とバンプ9aとを電気的に接続する接続部位10を少なくとも備えている。
すなわち、図7及び図8は、アンテナ本体5とアンテナ長調整用配線6とを、バンプ8,9aによって結線した平面図と断面図である。
【0037】
導電性の接続部位10は、たとえばバンプ8,9a,9b,9cと同じ導電性の接続部材よりなる。
この本実施形態の半導体装置11Cにおいても、前記アンテナ本体5の他端5bは、前記アンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cを構成する他端6ab,6bb,6cbの近傍に配置されている。
また、バンプ8は、アンテナ本体5の他端5bに、前記封止樹脂層7に有する開口部7bを介して設けられ、バンプ9a,9b,9cは、アンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cを構成する他端6ab,6bb,6cbに、前記封止樹脂層7に有する開口部7cを介してそれぞれ設けられる。
【0038】
したがって、半導体装置11Cでは、前記封止樹脂層7を形成する前に、アンテナ本体5の周波数特性を測定し、その結果から、所望の共振周波数を得るためのアンテナ長を算出しておき、前記封止樹脂層7の形成後に、前記バンプ8と、算出したアンテナ長を有するアンテナ長調整用配線6の調整部(本実施形態では6a)に開口部7cを介して設けられたバンプ9aとを、前記接続部位10により電気的に接続する。
これにより、所望の共振周波数が得られるアンテナが構成される。
【0039】
次に、本発明における第一の構造の半導体装置の製造方法の一例について説明する。
図9及び図10は、本発明による第一の構造の半導体装置を製造する工程の一例を示す断面図である。
まず、図9に示すように、半導体基板2を用意する[(a)参照]。この半導体基板2としては、たとえば、表面に電極3Aを有するICチップがある。図中電極3Aは一つしか示されていないが、奥行き方向に対となる電極をもう一つ有する。
次いで、一面に電極が設けられた半導体基板を覆うように絶縁樹脂層4を形成する[(b)参照]。絶縁樹脂層4は、たとえばポリイミド系、エポキシ系又はシリコーン系の液状樹脂からなり、その厚さは、たとえば10μm程度である。絶縁樹脂層4に使われる材料は感光性をもち、フォトリソグラフィ技術を利用してパターニングすることができる。
次に、絶縁樹脂層4が形成された半導体基板2の上に、フォトリソグラフィ技術等を利用したパターニングなどにより、前記電極3Aと整合する位置に開口部4aを形成し、前記電極3Aを露出させる[(c)参照]。
【0040】
そして、図10に示すように、前記絶縁樹脂層4の上に、前記開口部4aの一つを介して一端5aが前記電極3Aと電気的に直接接続されるアンテナ本体5、及び図示しない他の開口部を介して一端6aa,6ba,6caが図示しない他の電極と電気的に直接接続されるアンテナ長調整用配線6の長さの異なる各調整部6a,6b,6cをそれぞれ形成する[(d)参照]。これにより、図1及び図2に示す本実施形態における第一の構造の半導体装置1とすることができる。
また、この半導体装置1において、アンテナ本体5の一端5aと他端5bをプロービングして周波数特性を測定し、その結果から所望の共振周波数を得るためのアンテナ長を算出する。
【0041】
次に、前記絶縁樹脂層4、前記アンテナ本体5及び前記アンテナ長調整用配線を覆うように封止樹脂層7を形成する[(e)参照]。この封止樹脂層7は、たとえば、前記絶縁樹脂層4と同様、ポリイミド系、エポキシ系又はシリコーン系の液状樹脂により形成することができるので、詳しい説明は省略する。
次いで、前記封止樹脂層7に、フォトリソグラフィ技術等を利用したパターニングなどにより、前記アンテナ本体5の他端5bと整合する位置に開口部7bを形成すると共に、前記アンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cを構成する他端6ab,6bb,6cbと整合する位置に開口部7cをそれぞれ形成する[(f)参照]。
【0042】
そして、前記開口部7bを介してバンプ8を形成すると共に、前記開口部7cを介してバンプ9a,9b,9cをそれぞれ形成することで、図4及び図5に示す本実施形態における第一の構造の第一例の半導体装置11Aとすることができる。
なお、前記封止樹脂層7に、前記アンテナ本体5の一端5aと整合する位置に開口部7aを形成しておけば、図6に示す本実施形態における第一の構造の第二例の半導体装置11Bとすることができる。
【0043】
次いで、先の周波数特性の測定に基づき、算出されたアンテナ長となるように、結線する前記アンテナ長調整用配線6の調整部6a,6b,6cの一つを選択し、前記アンテナ本体5の他端5bと導電性の接続部材により電気的に接続する(すなわち、バンプ同士を結合する)ことで、図7及び図8に示す本実施形態における第一の構造の第三例の半導体装置11Cとすることができる。
【0044】
このように、アンテナ本体の周波数特性の測定に基づいて接続点を選択することが可能であるため、アンテナ長調整用配線に備えられた長さの異なる複数の調整部によって、一つの半導体基板上に搭載されるアンテナの配線長を適切な共振周波数に調整することが可能な半導体装置を容易に製造することができる。
したがって、小型化を図りつつ、適切な共振周波数をもつアンテナを備えた半導体装置を提供することができる。
【0045】
また、本発明においてアンテナ本体のパターンは、前記第一の構造のように渦巻状に限らず、一方の縁部側から他方の縁部側に向かって当該基板の一面と直交する方向に略螺旋(スパイラル)型に形成されたものとすることもできる。
図11は、半導体装置の第二の構造の第四例を示す平面図であり、図12は、その構造を模式的に示す図であって、図11のIV−IV線における断面図である。
図11及び図12に示すとおり、本実施形態における第二の構造の半導体装置21は、 その一面に一対の電極3A,3Bが設けられた半導体基板2と、該半導体基板2の一面を覆うように設けられ、前記電極3A,3Bと整合する位置にそれぞれ開口部を有する第一絶縁樹脂層4Aと、該第一絶縁樹脂層4Aの一部を覆うように設けられた第一アンテナ配線15Aと、前記第一絶縁樹脂層4A及び前記第一アンテナ配線15Aを覆うように設けられ、前記電極3A,3Bと整合する位置にそれぞれ開口部を有する第二絶縁樹脂層4Bと、該第二絶縁樹脂層4Bの一部を覆うように設けられた第二アンテナ配線15Bとを備えている。さらに、半導体装置21は、前記第二絶縁樹脂層4B及び前記第二アンテナ配線15Bを覆う封止樹脂層7と、前記封止樹脂層7に有する開口部7bを介して設けられた導電性の接続部材であるバンプ8、前記封止樹脂層7に有する開口部7cを介してそれぞれ設けられた導電性の接続部材であるバンプ9a,9b,9cを少なくとも備えている。
【0046】
第一アンテナ配線15Aと第二アンテナ配線15Bは、共にアンテナ配線であり、両者15A,15Bによってアンテナ本体15を構成している。すなわち、一方の縁部側から他方の縁部側に向かって、互いに前記アンテナ配線15A,15Bの一端と他端とを連続して接続することで、一つのアンテナを形成する。また、アンテナ本体15は、その一端15aが、前記第一絶縁樹脂層4A及び前記第二絶縁樹脂層4Bに有する開口部を介して前記電極3Aと電気的にされている。
【0047】
バンプ8は、導電性の接続部材であり、アンテナ本体15の他端15bに前記封止樹脂層7に有する開口部7bを介して形成されている。
また、バンプ9a,9b,9cも、導電性の接続部材であり、アンテナ長調整用配線6の各他端6a,6b,6cに前記封止樹脂層7に有する開口部7cを介してそれぞれ形成されている。
そして、本実施形態の半導体装置21においても、前記アンテナ本体15の他端15bは、前記アンテナ長調整用配線6の各調整部6a,6b,6cを構成する他端6ab,6bb,6cbの近傍に配置されている。
【0048】
したがって、半導体装置21によっても、前記封止樹脂層7を形成する前後いずれかに、アンテナ本体15の周波数特性を測定し、その結果から、所望の共振周波数を得るためのアンテナ長を算出しておき、前記封止樹脂層7の形成後に、前記バンプ8と、算出したアンテナ長を有するアンテナ長調整用配線6の調整部6aに開口部7cを介して設けられたバンプ9aとを、導電性の接続部材により電気的に接続することで、所望の共振周波数が得られるアンテナが構成される。
そして、本実施形態の第二の構造の半導体装置21では、前記第一の構造の半導体装置1または11とは磁束の方向が互いに異なる、特定の方向に感度を有する半導体装置とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、無線通信用アンテナ配線をICチップ等の半導体基板上に搭載する、たとえば非接触ICタグなどの各種半導体装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る半導体装置の第一の構造を示す平面図である。
【図2】図1のI−I線における断面図である。
【図3】図1に示した半導体装置において測定したVSWR(電圧定在波比)と周波数との関係を示す図である。
【図4】本発明に係る半導体装置の第二の構造の第一例を示す平面図である。
【図5】図4のII−II線における断面図である。
【図6】本発明に係る半導体装置の第二の構造の第二例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る半導体装置の第二の構造の第三例を示す平面図である。
【図8】図7のIII−III線における断面図である。
【図9】本発明に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
【図10】図9に示した工程に続く、製造工程の一例を示す断面図である。
【図11】本発明に係る半導体装置の第二の構造の第四例を示す平面図である。
【図12】図11のIV−IV線における断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1,11(11A,11B,11C),21 半導体装置、2 半導体基板(ICチップ)、3(3A,B3) 電極、4(4A,4B) 絶縁樹脂層、5,15 第一配線(アンテナ本体)、6(6a,6b,6c) 第二配線(アンテナ長調整用配線)、7 封止樹脂層、8 バンプ、9a,9b,9c バンプ、10 導電性接続部位。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に電極が設けられた半導体基板と、
該半導体基板の一面を覆うように設けられ、前記電極と整合する位置に開口部を有する絶縁樹脂層と、
該絶縁樹脂層の一部を覆うように設けられ、前記開口部を通り前記電極と電気的に接続された配線層と、
を少なくとも備え、
前記配線層は、アンテナ本体をなす第一配線と、前記アンテナ本体の長さを調整する第二配線とを構成することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第一配線は、その一端が前記電極の一つと電気的に接続され、また、
前記第二配線は、長さの異なる複数の調整部を備え、該調整部を構成する一端が全て、前記電極の他の一つと電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第一配線の他端は、前記第二配線の各調整部を構成する他端の近傍に配置されており、導電性の接続部位により、前記各調整部を構成する他端の一つと電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁樹脂層、前記第一配線及び前記第二配線を覆い、前記第一配線及び前記第二配線の各他端と整合する位置にそれぞれ開口部を有する封止樹脂層をさらに備え、
前記第一配線の他端と前記第二配線の各調整部を構成する他端の一つは、前記封止樹脂層に有するそれぞれの開口部を通り、該封止樹脂層上に配した導電性の接続部位により電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
一面に電極が設けられた半導体基板と、該半導体基板の一面を覆うように設けられ、前記電極と整合する位置に開口部を有する絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の一部を覆うように設けられ、前記開口部を通り前記電極と電気的に接続された配線層と、を少なくとも備え、前記配線層は、アンテナ本体をなす第一配線と、前記アンテナ本体の長さを調整する第二配線とを構成する半導体装置の製造方法であって、
一面に電極が設けられた半導体基板を覆うように絶縁樹脂層を形成する工程Aと、
前記絶縁樹脂層に、前記電極を露出させる開口部を形成する工程Bと、
前記絶縁樹脂層の上に、前記開口部の一つを通り前記電極の一つと電気的に接続されるアンテナ本体をなす第一配線、及び前記開口部の他の一つを通り前記電極の他の一つと電気的に接続され、前記アンテナ本体の長さを調整する長さの異なる複数の調整部を備える第二配線をそれぞれ形成する工程Cと、
前記第一配線の周波数特性を測定する工程Dと、
前記周波数特性の測定に基づき、結線する第二配線の調整部を選択して前記第一配線と電気的に接続する工程Eと、
を少なくとも備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁樹脂層と前記第一配線及び前記第二配線を覆うように封止樹脂層を形成する工程Fと、
前記周波数特性の測定に基づき、前記封止樹脂層の所定の位置に開口部を形成する工程Gと、
を少なくとも備えることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
一面に電極が設けられた半導体基板と、
該半導体基板の一面を覆うように設けられ、前記電極と整合する位置に開口部を有する絶縁樹脂層と、
該絶縁樹脂層の一部を覆うように設けられ、前記開口部を通り前記電極と電気的に接続された配線層と、
を少なくとも備え、
前記配線層は、アンテナ本体をなす第一配線と、前記アンテナ本体の長さを調整する第二配線とを構成することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第一配線は、その一端が前記電極の一つと電気的に接続され、また、
前記第二配線は、長さの異なる複数の調整部を備え、該調整部を構成する一端が全て、前記電極の他の一つと電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第一配線の他端は、前記第二配線の各調整部を構成する他端の近傍に配置されており、導電性の接続部位により、前記各調整部を構成する他端の一つと電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁樹脂層、前記第一配線及び前記第二配線を覆い、前記第一配線及び前記第二配線の各他端と整合する位置にそれぞれ開口部を有する封止樹脂層をさらに備え、
前記第一配線の他端と前記第二配線の各調整部を構成する他端の一つは、前記封止樹脂層に有するそれぞれの開口部を通り、該封止樹脂層上に配した導電性の接続部位により電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
一面に電極が設けられた半導体基板と、該半導体基板の一面を覆うように設けられ、前記電極と整合する位置に開口部を有する絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の一部を覆うように設けられ、前記開口部を通り前記電極と電気的に接続された配線層と、を少なくとも備え、前記配線層は、アンテナ本体をなす第一配線と、前記アンテナ本体の長さを調整する第二配線とを構成する半導体装置の製造方法であって、
一面に電極が設けられた半導体基板を覆うように絶縁樹脂層を形成する工程Aと、
前記絶縁樹脂層に、前記電極を露出させる開口部を形成する工程Bと、
前記絶縁樹脂層の上に、前記開口部の一つを通り前記電極の一つと電気的に接続されるアンテナ本体をなす第一配線、及び前記開口部の他の一つを通り前記電極の他の一つと電気的に接続され、前記アンテナ本体の長さを調整する長さの異なる複数の調整部を備える第二配線をそれぞれ形成する工程Cと、
前記第一配線の周波数特性を測定する工程Dと、
前記周波数特性の測定に基づき、結線する第二配線の調整部を選択して前記第一配線と電気的に接続する工程Eと、
を少なくとも備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁樹脂層と前記第一配線及び前記第二配線を覆うように封止樹脂層を形成する工程Fと、
前記周波数特性の測定に基づき、前記封止樹脂層の所定の位置に開口部を形成する工程Gと、
を少なくとも備えることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−129437(P2007−129437A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319753(P2005−319753)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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